(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】半導体装置および基板
(51)【国際特許分類】
H01L 23/14 20060101AFI20241007BHJP
H01L 23/12 20060101ALI20241007BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20241007BHJP
【FI】
H01L23/14 R
H01L23/14 Z
H01L23/12 501W
H05K1/03 610T
(21)【出願番号】P 2021015245
(22)【出願日】2021-02-02
【審査請求日】2023-09-11
(73)【特許権者】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100213654
【氏名又は名称】成瀬 晃樹
(72)【発明者】
【氏名】青木 秀夫
(72)【発明者】
【氏名】向田 秀子
(72)【発明者】
【氏名】築山 慧至
【審査官】秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-036710(JP,A)
【文献】国際公開第2008/056500(WO,A1)
【文献】特開2014-022622(JP,A)
【文献】特開2014-090027(JP,A)
【文献】特開平07-273414(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/14
H01L 23/12
H05K 1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に設けられる半導体チップと
、
前記基板上に設けられ、前記半導体チップを封止する封止樹脂と、を備え、
前記基板は、
前記半導体チップと電気的に接続される配線を有する配線層と、
前記配線層と接するように設けられ、樹脂を含有するガラス織布を有する絶縁層と、を有し、
前記ガラス織布は、前記ガラス織布に平行な2以上の方向に沿って設けられ、織り込まれた複数のガラス繊維を含み、
前記ガラス繊維は、前記ガラス織布に平行な方向に応じて、
種類、本数および太さの少なくとも1つが異な
り、
前記ガラス織布は、第1方向に沿って設けられる前記ガラス繊維、および、前記第1方向とは異なる第2方向に沿って設けられる前記ガラス繊維を含み、
前記第1方向に沿って設けられる前記ガラス繊維は、前記第2方向に沿って設けられる前記ガラス繊維よりも熱膨張係数が低く、
前記基板の基板面の法線方向から見た前記半導体チップの外縁形状は、略矩形状であり、
前記第1方向は、前記半導体チップの長辺に沿った方向であり、
前記第2方向は、前記半導体チップの短辺に沿った方向であり、
前記長辺に沿った断面積における前記封止樹脂の占める割合は、前記短辺に沿った断面積における前記封止樹脂の占める割合よりも小さい、半導体装置。
【請求項2】
前記ガラス繊維は、前記ガラス織布に平行な方向に応じて、熱膨張係数が異なる、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記ガラス繊維は、前記ガラス織布に平行な方向に応じて、
種類ごとの前記ガラス繊維の本数の割合が異なる、請求項1
または請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
基板と、
前記基板上に設けられる半導体チップと
、
前記半導体チップが設けられる前記基板の第1面とは反対側の第2面上に設けられる金属バンプと、を備え、
前記基板は、
前記半導体チップと電気的に接続される配線を有する複数の配線層と、
複数の前記配線層と交互に積層するように設けられ、それぞれが樹脂を含有するガラス織布を有する複数の絶縁層と、を有し、
前記ガラス織布は、織り込まれた複数のガラス繊維を含み、
前記ガラス繊維は、前記絶縁層に応じて、
種類、本数および太さの少なくとも1つが異な
り、
前記金属バンプと接続される前記配線層と接する第4絶縁層における前記ガラス繊維は、前記第4絶縁層よりも前記金属バンプと接続される前記配線層から離れた第5絶縁層における前記ガラス繊維よりも誘電率が低い、半導体装置。
【請求項5】
前記ガラス繊維は、前記絶縁層に応じて、熱膨張係数および誘電率の少なくとも一方が異なる、請求項
4に記載の半導体装置。
【請求項6】
複数の前記絶縁層のうち第1絶縁層における前記ガラス繊維は、前記第1絶縁層よりも前記半導体チップに近い第2絶縁層における前記ガラス繊維よりも熱膨張係数が低い、請求項
5に記載の半導体装置。
【請求項7】
複数の前記絶縁層のうち第1絶縁層における前記ガラス繊維は、前記第1絶縁層よりも前記半導体チップから離れた第3絶縁層における前記ガラス繊維よりも熱膨張係数が低い、請求項
5に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記ガラス織布は、前記ガラス織布に平行な2方向以上に沿って設けられ、織り込まれた複数の前記ガラス繊維を含み、
前記第1絶縁層および前記第3絶縁層の少なくとも一方における前記ガラス繊維は、前記ガラス織布に平行な方向に応じて、熱膨張係数が異なる、請求項
7に記載の半導体装置。
【請求項9】
他の配線よりも高速の信号が通過する高速信号配線を含む前記配線層と接する第6絶縁層における前記ガラス繊維は、前記第6絶縁層よりも前記高速信号配線を含む前記配線層から離れた第7絶縁層における前記ガラス繊維よりも誘電率が低い、請求項
5に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記ガラス織布は、前記ガラス織布に平行な2方向以上に沿って設けられ、織り込まれた複数の前記ガラス繊維を含み、
前記第6絶縁層のうち、前記高速信号配線の信号伝送方向に沿って設けられる前記ガラス繊維は、前記信号伝送方向とは異なる方向に沿って設けられる前記ガラス繊維よりも、誘電率が低い、請求項
9に記載の半導体装置。
【請求項11】
複数の前記絶縁層は、2層~4層の絶縁層である、請求項4に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記第4絶縁層と前記金属バンプとの間に、前記第4絶縁層よりも熱膨張係数の高い絶縁層が含まれない、請求項4に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記第4絶縁層は、前記金属バンプと直接接する、請求項4に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記金属バンプと接続される前記配線層はパッドを含み、
前記パッドは、前記金属バンプと直接接し、
前記パッドの面積は、前記配線層内の配線経路の面積よりも大きい、請求項4に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明による実施形態は、半導体装置および基板に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置のパッケージ構造において、メモリチップ等の半導体チップが基板上に設けられる。
【0003】
しかし、近年の大容量化およびパッケージの薄型化により、メモリチップのシリコン(Si)と基板との間における熱膨張係数の差によって、基板(パッケージ)に反りが生じてしまう場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
基板の反りが生じにくい半導体装置および基板を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態による半導体装置は、基板と、半導体チップと、を備える。半導体チップは、基板上に設けられる。基板は、配線層と、絶縁層と、を有する。配線層は、半導体チップと電気的に接続される配線を有する。絶縁層は、配線層と接するように設けられ、樹脂を含有するガラス織布を有する。ガラス織布は、ガラス織布に平行な2以上の方向に沿って設けられ、織り込まれた複数のガラス繊維を含む。ガラス繊維は、ガラス織布に平行な方向に応じて、材質、本数および太さの少なくとも1つが異なる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態による半導体装置の構成の一例を示す断面図。
【
図2】第1実施形態によるガラス織布の構成の一例を示す平面図。
【
図3】第1実施形態による半導体チップを基板面の法線方向から見た平面図。
【
図4A】温度によるパッケージの反りの一例を示す模式断面図。
【
図4B】温度によるパッケージの反りの一例を示す模式断面図。
【
図4C】温度によるパッケージの反りの一例を示す模式断面図。
【
図5】第1実施形態による半導体チップの長辺に沿った断面におけるパッケージの反りの一例を示す模式断面図。
【
図6】第1実施形態による半導体チップの短辺に沿った断面におけるパッケージの反りの一例を示す模式断面図。
【
図7】第1実施形態の第1変形例によるガラス織布の構成の一例を示す平面図。
【
図8】第1実施形態の第2変形例によるガラス織布の構成の一例を示す平面図。
【
図9】第2実施形態による配線基板の構成の一例を示す断面図。
【
図10】第2実施形態による半導体装置の構成の一例を示す断面図
【
図11】第2実施形態の第1変形例による配線基板の構成を示す断面図。
【
図12】第2実施形態の第1変形例による多面取り基板の構成を示す平面図。
【
図13】第2実施形態の第2変形例によるガラス織布の構成の一例を示す平面図。
【
図14】第3実施形態による半導体装置の構成の一例を示す断面図。
【
図15】第3実施形態の第1変形例による半導体装置の構成の一例を示す断面図。
【
図16】第3実施形態の第2変形例によるガラス織布の構成の一例を示す平面図。
【
図17】第3実施形態の第2変形例による高速伝送方向の一例を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態を説明する。本実施形態は、本発明を限定するものではない。以下の実施形態において、半導体基板の上下方向は、半導体素子が設けられる面を上とした場合の相対方向を示し、重力加速度に従った上下方向と異なる場合がある。図面は模式的または概念的なものであり、各部分の比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。明細書と図面において、既出の図面に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0009】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態による半導体装置1の構成の一例を示す断面図である。半導体装置1は、配線基板11と、接着層30、40と、半導体チップCH1、CH2と、ワイヤW1、W2と、樹脂23と、金属バンプBとを備える。
【0010】
配線基板11は、例えば、プリント基板等の基板である。配線基板11は、ワイヤW1およびワイヤW2を介してそれぞれ半導体チップCH1および半導体チップCH2と接続可能である。
【0011】
接着層30および接着層40は、例えば、フィルム状の樹脂(DAF、Die Attach Film)である。接着層30および接着層40は、配線基板11の上方に設けられる。
【0012】
半導体チップCH1は、例えば、メモリチップである。半導体チップCH1は、例えば、NANDチップである。半導体チップCH1は、例えば、半導体素子を含む。半導体素子とは、例えば、メモリセルアレイまたはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)回路である。半導体チップCH1は、接着層30によって、配線基板11上および他の半導体チップCH1上に接着されている。
図1に示す例では、半導体チップCH1は、接着層30を介して縦方向に4段に積層されている。縦方向は、配線基板11の基板上面F1に対して略垂直方向である。積層されている複数の半導体チップCH1のそれぞれは、例えば、同一構成を有するメモリチップである。尚、半導体チップCH1の積層数は、4段に限られず、任意に変更されてもよい。半導体チップCH1の積層数は、必要なメモリ容量に応じて設定される。また、半導体チップCH1は、
図1に示すように、階段状にずらされて積層されている。これにより、半導体チップCH1の電極パッド(図示せず)上に他の半導体チップCH1が重複することを抑制し、ワイヤW1が各半導体チップCH1の電極パッドに接続可能とする。
【0013】
半導体チップCH2は、例えば、コントローラチップである。半導体チップCH2は、例えば、CMOS回路を含む。半導体チップCH2は、半導体チップCH1と電気的に接続されて半導体チップCH1の動作を制御する。半導体チップCH2は、例えば、
図1に示すように、半導体チップCH1に隣接して設けられ、接着層40によって配線基板11に接着される。また、半導体チップCH2は、例えば、半導体チップCH1の上方に設けられていてもよい。
【0014】
ワイヤW1は、配線基板11と半導体チップCH1とを電気的に接続する。ワイヤW1の素材は、例えば、金、銀または銅等の導電性金属である。
【0015】
ワイヤW2は、配線基板11と半導体チップCH2とを電気的に接続する。ワイヤW2の素材は、例えば、金、銀または銅等の導電性金属である。
【0016】
樹脂23は、例えば、エポキシ樹脂である。樹脂23は、半導体チップCH1、CH2およびワイヤW1、W2を配線基板11の上面において封止する。これにより、樹脂23は、外部からの衝撃や外気から半導体チップCH1、CH2およびワイヤW1、W2を保護する。
【0017】
金属バンプBは、例えば、はんだボールである。この場合、半導体装置1は、BGA(Ball Grid Array)パッケージ構造を有する。金属バンプBは、半導体装置1を外部の実装基板等(図示せず)に電気的に接続する。金属バンプBの素材は、はんだ等の導電性金属である。金属バンプBは、配線基板11の下面に設けられている。すなわち、金属バンプBは、半導体チップCH1、CH2が設けられる配線基板11の面F1とは反対側の面F2上に設けられる。
図1に示す例では、金属バンプBは、配線層L3に接続されている。
【0018】
次に、配線基板11の内部構成について説明する。配線基板11は、例えば、多層基板である。配線基板11は、配線層L1~L3と、樹脂層112と、絶縁層113と、を有する。
【0019】
配線層L1~L3は、半導体チップCH1、CH2と電気的に接続される配線111を有する。配線111は、配線基板11の上面の電極パッド(パッド114、115)と、配線基板11の下面の金属バンプBとを電気的に接続する。尚、パッド114、115は、例えば、配線層L1の一部である。配線111の素材は、例えば、銅またはタングステン等の導電性金属である。配線111は、積層された複数の配線層L1~L3に含まれる。複数の配線層L1~L3の間は、絶縁層113によって絶縁されている。また、複数の配線層L1~L3は、例えば、ビアホールにより、一部において電気的に接続されていてもよい。
【0020】
樹脂層112は、例えば、ソルダーレジスト等の絶縁材料である。
【0021】
絶縁層113は、例えば、プリプレグである。絶縁層113は、例えば、ガラスクロス等の繊維状補強材とエポキシ等の熱硬化性樹脂との複合材料である。絶縁層113は、樹脂層112よりも強度および剛性が高い。
【0022】
絶縁層113は、配線基板11の基板面の法線方向に配線層L1~L3と接するように設けられ、樹脂を含有するガラス織布113aを有する。複数の絶縁層113は、配線基板11の基板面の法線方向に複数の配線層L1~L3と交互に積層するように設けられ、それぞれが樹脂を含有するガラス織布113aを有する。
図1に示す例では、3層の配線層L1~L3のそれぞれの間に配置される2層の絶縁層113が設けられる。尚、絶縁層113の積層数は、例えば、配線層の積層数に応じて変更されてもよい。絶縁層113の積層数は、2層に限られず、3層以上であってもよい。
【0023】
絶縁層113は、ガラス織布113aを含む。ガラス織布113aは、ガラス繊維の織物である。ガラス織布113aは、樹脂を含有する。従って、絶縁層113は、ガラス織布113aに樹脂が含浸されて形成される。
【0024】
次に、ガラス織布113aの内部構成について説明する。
【0025】
図2は、第1実施形態によるガラス織布113aの構成の一例を示す平面図である。尚、
図2は、基板面の法線方向(Z方向)からガラス織布113aを見た図である。
【0026】
ガラス織布113aは、繊維束FB1、FB2を有する。繊維束FB1、FB2は、例えば、互いに直行するように織り込まれている。
図2に示す例では、繊維束FB1、FB2は、平織りに編み込まれているが、他の織物構造を有していてもよい。尚、
図2に示す例では、繊維束FB1、FB2はそれぞれ2つずつしか示されていないが、ガラス織布113aには、XY平面に沿って、さらに多くの繊維束FB1、FB2が設けられていてもよい。
【0027】
繊維束FB1は、例えば、
図2のX方向に沿うように設けられる。また、複数の繊維束FB1は、例えば、
図2のY方向に並べて配置される。繊維束FB1は、複数のガラス繊維GF1を含む。1つの繊維束FB1には、例えば、数十本のガラス繊維GF1が含まれる。
【0028】
繊維束FB2は、例えば、
図2のY方向に沿うように設けられる。また、複数の繊維束FB2は、例えば、
図2のX方向に並べて配置される。繊維束FB2は、複数のガラス繊維GF2を含む。1つの繊維束FB2には、例えば、数十本のガラス繊維GF2が含まれる。
【0029】
従って、ガラス織布113aは、ガラス織布113aに平行な2以上の方向に沿って設けられ、交差するように織り込まれた複数のガラス繊維GF1、GF2を含む。より詳細には、ガラス織布113aは、交差するように織り込まれた、Y方向に沿って設けられるガラス繊維GF2、および、Y方向とは異なるX方向に沿って設けられるガラス繊維GF1を含む。
【0030】
ガラス繊維GF1、GF2は、ガラス織布113a(基板面)に平行な方向に応じて、材質、本数および太さ(繊維径)の少なくとも1つが異なる。より詳細には、ガラス繊維GF1、GF2は、ガラス織布113aに平行な方向に応じて、熱膨張係数が異なる。
図2に示す例では、ガラス織布113aに平行な方向は、XY平面である。
【0031】
ガラス繊維GF1は、例えば、Eガラスである。Eガラスの熱膨張係数は、例えば、約4.4ppm/℃である。ガラス繊維GF2は、例えば、Sガラスである。Sガラスの熱膨張係数は、例えば、約2.9ppm/℃である。
【0032】
図3は、第1実施形態による半導体チップCH1、CH2を基板面の法線方向から見た平面図である。
図3のA-A線は、断面図である
図1に対応する断面を示す。
【0033】
配線基板11の基板面の法線方向から見た半導体チップCH1の外縁形状は、略矩形状である。
図2および
図3に示す例では、半導体チップCH1の長辺方向は、Y方向である。半導体チップCH1の短辺方向は、X方向である。
【0034】
図2に示すように、半導体チップCH1の長辺に平行なガラス繊維GF2は、半導体チップCH1の短辺に平行なガラス繊維GF1よりも熱膨張係数が小さい。すなわち、Y方向に沿って設けられるガラス繊維GF2は、X方向に沿って設けられるガラス繊維GF1よりも熱膨張係数が低い。Y方向は、半導体チップCH1の長辺に沿った方向である。X方向は、半導体チップCH1の短辺に沿った方向である。これにより、方向に依存するパッケージの反りの大きさに応じて、パッケージの反りをより適切に抑制することができる。
【0035】
次に、パッケージの反りについて説明する。
【0036】
図4A~
図4Cは、温度によるパッケージの反りの一例を示す模式断面図である。
図4A~
図4Cは、半導体チップCH1の長辺に沿った断面におけるパッケージの反りを示す。すなわち、
図4A~
図4Cは、
図3のB-B線を断面とする断面図である。
図4は、比較例として、ガラス繊維GF1、GF2にEガラスが用いられる場合を示す。
【0037】
尚、通常、半導体チップCH2は、半導体チップCH1よりも積層数が小さい場合が多い。また、基板面の法線方向から見た半導体チップCH2の面積は、半導体チップCH1の面積よりも小さい場合が多い。従って、半導体チップCH2よりも、半導体チップCH1の方がパッケージの反りに強く影響する。
【0038】
図4A~
図4Cは、低温から高温にかけて順番にパッケージの反りを示す。
図4Aは、常温である約25℃におけるパッケージの反りを示す。
図4Bは、樹脂23(モールド樹脂)を硬化させる温度である約170~約180℃におけるパッケージの反りを示す。
図4Cは、リフロー温度である約250~約260℃におけるパッケージの反りを示す。
【0039】
パッケージの反りは、半導体チップCH1と配線基板11との間の熱膨張係数(CTE、Coefficient of Thermal Expansion)の差によって生じる。半導体チップCH1のうち大部分を占めるシリコン(Si)の熱膨張係数は、例えば、約2.5~約3.0ppm/℃である。一方、配線基板11の熱膨張係数は、例えば、約10~約15ppm/℃である。
【0040】
図4Bにおいてパッケージがほぼフラットな状態から温度が低下する場合、配線基板11は半導体チップCH1よりも収縮しやすい。この結果、
図4Aに示すように、パッケージは上凸に反る。一方、
図4Bにおいてパッケージがほぼフラットな状態から温度が上昇する場合、配線基板11は半導体チップCH1よりも膨張しやすい。この結果、
図4Cに示すように、パッケージは下凸に反る。反りの大きさは、例えば、最も低い位置の金属バンプBと最も高い位置の金属バンプBとの間の距離で示される。
図4Cに示す例では、パッケージにおける反りの大きさは、反りAである。
【0041】
近年の大容量化およびパッケージ薄型化により、半導体チップCH1上方の樹脂23が薄くなっている。これにより、熱膨張係数の差によるパッケージの反りが発生しやすくなってきている。また、反りの曲率は、熱膨張係数の差に依存する。パッケージの反りは、例えば、実装歩留まりの低下につながる。
【0042】
そこで、第1実施形態では、
図2を参照して説明したように、Y方向に沿って設けられるガラス繊維GF2には、ガラス織布113aに通常用いられるEガラスよりも低い熱膨張係数を有するSガラスが用いられる。
【0043】
図5は、第1実施形態による半導体チップCH1の長辺に沿った断面におけるパッケージの反りの一例を示す模式断面図である。すなわち、
図5は、
図3のB-B線を断面とする断面図である。
図5における配線基板11のY方向の熱膨張係数は、
図4Cにおける配線基板11のY方向の熱膨張係数よりも低い。Y方向において、配線基板11と半導体チップCH1との間の熱膨張係数の差を小さくすることができ、反りの曲率を小さくすることができる。この結果、
図5に示す反りBは、
図4Cに示す反りAよりも小さくすることができる。
【0044】
また、
図2を参照して説明したように、X方向に沿って設けられるガラス繊維GF1には、Eガラスが用いられる。
【0045】
図6は、第1実施形態による半導体チップCH1の短辺に沿った断面におけるパッケージの反りの一例を示す模式断面図である。すなわち、
図6は、
図3のA-A線を断面とする断面図である。
図6における配線基板11のX方向の熱膨張係数は、
図4Cにおける配線基板11のX方向およびY方向の熱膨張係数と略同じである。
図6に示す反りCは、
図4Cに示す反りAよりも小さい。通常、半導体チップCH1は、
図3に示すように、平面視で矩形状である。パッケージ断面のうち、半導体チップCH1の短辺に沿った半導体チップCH1の断面積は、半導体チップCH1の長辺に沿った半導体チップCH1の断面積よりも小さい。これにより、半導体チップCH1の長辺に沿った方向、および、短辺に沿った方向のいずれかによって、パッケージの反りの大きさが異なる。
【0046】
尚、
図4C、
図5および
図6では、
図4Bよりも高温におけるパッケージの反り比較を示す。しかし、
図4Bよりも低温におけるパッケージの反りも、ガラス繊維の熱膨張係数が小さくなるほど、また、半導体チップCH1の短辺側ほど、反りが小さくなる。
【0047】
以上のように、第1実施形態では、ガラス繊維GF1、GF2は、ガラス織布113aに平行な方向に応じて、材料が異なる。X方向とY方向との間でガラス繊維GF1、GF2の熱膨張係数を変えることにより、反りが大きくなりやすい半導体チップCH1の長辺に沿ったパッケージの反りをより適切に抑制することができる。
【0048】
また、ガラス繊維GF2だけでなく、ガラス繊維GF1、GF2の両方をSガラスにすることによっても、パッケージの反りを抑制することができる。ここで、半導体装置1から配線基板11を除去した上部構造体のみを考える。上部構造体は、主に半導体チップCH1と樹脂23のみがほとんどを占める。
図5に示すように上部構造体のY方向は半導体チップCH1と樹脂23とでは半導体チップCH1の占める割合が大きい。一方、
図6に示すように上部構造体のX方向は半導体チップCH1と樹脂23とでは長辺側よりも樹脂23の占める割合が大きくなる。上部構造体の線膨張係数は、Y方向において半導体チップCH1に近く、X方向においては樹脂23により近い値となる。すなわち上部構造体のX方向とY方向において線膨張係数の値が異なる。樹脂23の熱膨張係数はシリコンよりも大きく、たとえば約8~13ppm/℃である。つまり、上部構造体はX方向においてはY方向よりも大きい線膨張係数である。ゆえに、配線基板11のX方向にもSガラスを用いてしまうと、X方向の線膨張係数も小さくなり、上部構造体のX方向の線膨張係数との乖離が大きくなってしまい、X方向とY方向との間で、パッケージの反りのバランスが悪くなってしまう可能性がある。パッケージは、例えば、マザーボード上に実装される。この際、パッケージとマザーボードとの間の熱膨張係数の差によって、金属バンプBにストレスがかかる場合がある。パッケージの反りのバランスが悪い場合、例えば、金属バンプBに局所的に大きなストレスがかかってしまい、実装歩留まりが低下する可能性がある。
【0049】
これに対して、第1実施形態では、ガラス繊維GF1のEガラスは、ガラス繊維GF2のSガラスよりも熱膨張係数が大きい。これにより、X方向とY方向との間で、反りのバランスをより適切にすることができる。また、マザーボード等への実装の際に、金属バンプBへのストレスを抑制し、実装歩留まりを向上することができる。
【0050】
(第1実施形態の第1変形例)
図7は、第1実施形態の第1変形例によるガラス織布113aの構成の一例を示す平面図である。第1実施形態の第1変形例は、ガラス繊維GF2のうち、Sガラスの一部がEガラスに変更されている点で、第1実施形態とは異なっている。
【0051】
ガラス繊維GF1、GF2は、ガラス織布113aに平行な方向に応じて、材質の割合が異なる。ガラス繊維GF1、GF2の材質は、例えば、繊維束FB1、FB2単位で変更される。
【0052】
図7に示す例では、複数のガラス繊維GF2のうち、半分がSガラスであり、残りの半分がEガラスである。例えば、Sガラスの繊維束FB2とEガラスの繊維束FB2とが交互に配置される。これにより、ガラス織布113aのY方向の熱膨張係数を、例えば、ガラス繊維GF2が全てEガラスである場合と、ガラス繊維GF2が全てSガラスである場合と、の間に調整することができる。この結果、方向に応じてパッケージの反りを調整することができる。
【0053】
尚、ガラス繊維GF1の材質の比率が変更される場合も同様である。
【0054】
第1実施形態の第1変形例による半導体装置1および配線基板11は、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0055】
(第1実施形態の第2変形例)
図8は、第1実施形態の第2変形例によるガラス織布113aの構成の一例を示す平面図である。第1実施形態の第2変形例は、1つの繊維束FB1、FB2あたりのガラス繊維GF1、GF1の本数が方向に応じて変更されている点で、第1実施形態とは異なっている。
【0056】
ガラス繊維GF1、GF2は、ガラス織布113aに平行な方向に応じて本数が異なっていている。
【0057】
図8に示す例では、ガラス繊維GF2の本数は、ガラス繊維GF1の本数よりも少ない。これにより、方向に応じてガラス織布113aの剛性を変更することができる。これにより、方向に応じてパッケージの反りを調整することができる。
【0058】
尚、ガラス繊維GF1の本数が変更される場合も同様である。
【0059】
また、ガラス繊維GF1、GF2の本数に代えて、ガラス繊維GF1、GF2の太さ(繊維径)が変更されてもよい。
【0060】
第1実施形態の第2変形例による半導体装置1および配線基板11は、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。また、第1実施形態の第2変形例による半導体装置1および配線基板11に第1実施形態の第1変形例を組み合わせてもよい。
【0061】
(第2実施形態)
図9は、第2実施形態による配線基板11の構成の一例を示す断面図である。第2実施形態は、ガラス繊維GF1、GF2の材質が絶縁層113ごとに変更される点で、第1実施形態とは異なっている。
【0062】
図9では、平織りされた3層のガラス織布113aの断面が示されている。
図9に示す例では、配線層L1~L4が4層設けられ、絶縁層113が3層設けられる。
【0063】
ガラス繊維GF1、GF2は、絶縁層113に応じて、材質、本数および太さの少なくとも1つが異なる。より詳細には、ガラス繊維GF1、GF2は、絶縁層113に応じて、熱膨張係数が異なる。
【0064】
図10は、第2実施形態による半導体装置1の構成の一例を示す断面図である。
図10は、半導体チップCH1の長辺に沿った断面におけるパッケージの断面図を示す。尚、
図10では、接着層30等は省略されている。
【0065】
図10に示す例では、2層の絶縁層113が設けられる。
図4Aを参照して説明したように、常温では、パッケージ全体に上凸の反りが生じる。
【0066】
複数の絶縁層113のうち絶縁層1131におけるガラス繊維GF1、GF2は、絶縁層1131よりも半導体チップCH1に近い絶縁層1132におけるガラス繊維GF1、GF2よりも熱膨張係数が低い。絶縁層1131におけるガラス織布113aのガラス繊維GF1、GF2は、例えば、Sガラスである。絶縁層1132におけるガラス織布113aのガラス繊維GF1、GF2は、例えば、Eガラスである。この場合、配線基板11は、半導体チップCH1側の熱膨張係数が大きく、金属バンプB側の熱膨張係数が小さくなる。配線基板11の作成時、絶縁層1131、1132は、貼り合わされ、配線基板11の硬化温度(例えば、百数十℃~約200℃)まで加熱される。配線基板11は、硬化温度においてほぼフラットである。上記のように、半導体チップCH1側の絶縁層1132は、金属バンプB側の絶縁層1131よりも熱膨張係数が大きい。これにより、配線基板11の温度が常温に下がると、絶縁層1132は、絶縁層1131よりも大きく収縮する。従って、常温の配線基板11には、配線基板11単体で下凸に反るような応力が生じる。従って、
図10に示す配線基板11の上凸の反りを抑制することができ、パッケージの上凸の反りを抑制することができる。また、クラックを抑制することもできる。例えば、半導体チップCH1側の樹脂層112のクラックおよび配線111のクラックを抑制することができる。さらに、例えば、金属バンプBへのストレスを低下させることができ、接合部クラックを抑制することができる。この結果、寿命をより長くすることができる。
【0067】
尚、ガラス繊維GF1、GF2は、絶縁層113に応じて、材質の割合が異なっていてもよい。
【0068】
(第2実施形態の第1変形例)
図11は、第2実施形態の第1変形例による配線基板11の構成を示す断面図である。第2実施形態の第1変形例は、第2実施形態と比較して、絶縁層113の熱膨張係数の大小関係が逆である。尚、
図11は、半導体チップCH1等を実装する前の配線基板11を示す。
【0069】
複数の絶縁層113のうち絶縁層1131におけるガラス繊維GF1、GF2は、絶縁層1131よりも半導体チップCH1から離れた絶縁層1133におけるガラス繊維GF1、GF2よりも熱膨張係数が低い。絶縁層1131におけるガラス織布113aのガラス繊維GF1、GF2は、例えば、Sガラスである。絶縁層1133におけるガラス織布113aのガラス繊維GF1、GF2は、例えば、Eガラスである。この場合、配線基板11は、半導体チップCH1側の熱膨張係数が小さく、金属バンプB側の熱膨張係数が大きくなる。配線基板11の作成時、絶縁層1131、1133は、貼り合わされ、配線基板11の硬化温度(例えば、百数十℃~約200℃)まで加熱される。配線基板11は、硬化温度においてほぼフラットである。上記のように、金属バンプB側(
図11の紙面下側)の絶縁層1133は、半導体チップCH1側(
図11の紙面上側)の絶縁層1131よりも熱膨張係数が大きい。これにより、配線基板11の温度が常温に下がると、絶縁層1133は、絶縁層1131よりも大きく収縮する。従って、常温の配線基板11には、配線基板11単体で上凸に反るような応力が生じる。
【0070】
図12は、第2実施形態の第1変形例による多面取り基板10の構成を示す平面図である。
【0071】
効率的にパッケージを製造するために、例えば、複数の配線基板11を含む多面取り基板10上に、半導体チップCH1、CH2等を実装した後、配線基板11ごとに切り離して複数のパッケージを製造する場合がある。
図12に示す例では、1つの多面取り基板10に48個(4×12)の配線基板11が含まれる。組み立て工程では、多面取り基板10ごとに搬送が行われる。ここで、配線基板11の薄化が進むにつれて、配線基板11の剛性が小さくなってきている。この場合、自重によって、搬送工程または保管(マガジン収納時)等の際に多面取り基板10が反りやすくなってしまう。このような多面取り基板10の反りは、搬送時のトラブルにつながる可能性がある。多面取り基板10は、例えば、長辺10Lの両辺を保持されて搬送される。長辺10Lが保持される場合、多面取り基板10の短辺10Sに平行な断面は、自重によって下凸に反りやすくなってしまう。
【0072】
これに対して、第2実施形態の第1変形例では、
図11に示すように、配線基板11(多面取り基板10)には常温で上凸に反るような応力が生じる。従って、自重による多面取り基板10の下凸の反りを抑制することができる。例えば、自重による下凸の反りをキャンセルすることにより、多面取り基板10をフラットに保つことができる。この結果、多面取り基板10の搬送トラブルを抑制することができる。
【0073】
尚、ガラス繊維GF1、GF2は、絶縁層113に応じて、材質の割合が異なっていてもよい。
【0074】
(第2実施形態の第2変形例)
図13は、第2実施形態の第2変形例によるガラス織布113aの構成の一例を示す平面図である。第2実施形態の第2変形例は、ガラス織布113aに平行な方向に応じてガラス繊維GF1、GF2の材質が変更されている点で、第2実施形態の第1変形例とは異なっている。
【0075】
絶縁層1131および絶縁層1133の少なくとも一方におけるガラス繊維GF1、GF2は、ガラス織布113aに平行な方向に応じて、熱膨張係数が異なっている。より詳細には、多面取り基板10の短辺10Sに沿ったガラス繊維GF2は、多面取り基板10の長辺10Lに沿ったガラス繊維GF1よりも熱膨張係数が低い。
図13に示す例では、短辺10Sは、Y方向であり、長辺10Lは、X方向である。絶縁層1131におけるガラス繊維GF2は、例えば、Sガラスである。絶縁層1131におけるガラス繊維GF1は、例えば、Eガラスである。絶縁層1133におけるガラス繊維GF1、GF2は、例えば、Eガラスである。このように、長辺10Lに沿った方向には自重による多面取り基板10の反りはほぼ生じないため、短辺10Sに沿った方向のガラス繊維GF1の材質が変更されてもよい。
【0076】
尚、ガラス繊維GF1、GF2は、ガラス織布113aに平行な方向に応じて、材質の割合が異なっていてもよい。
【0077】
第2実施形態の第2変形例による半導体装置1および配線基板11は、第2実施形態の第1変形例と同様の効果を得ることができる。
【0078】
(第3実施形態)
図14は、第3実施形態による半導体装置1の構成の一例を示す断面図である。第3実施形態は、絶縁層113ごとにガラス繊維GF1、GF2の電気的特性が変更されている点で、第2実施形態とは異なっている。
【0079】
図14に示す例では、2層の絶縁層113が設けられている。
【0080】
ガラス繊維GF1、GF2は、絶縁層113に応じて、誘電率が異なる。金属バンプBと接続される配線層Laと接する絶縁層1134におけるガラス繊維GF1、GF2は、絶縁層1134よりも金属バンプBと接続される配線層Laから離れた絶縁層1135におけるガラス繊維GF1、GF2よりも誘電率が低い。絶縁層1134におけるガラス織布113aのガラス繊維GF1、GF2は、例えば、NEガラスまたはDガラスである。絶縁層1135におけるガラス織布113aのガラス繊維GF1、GF2は、例えば、Eガラスである。これにより、金属バンプBと接続される配線層Laと、配線層Laに隣接する配線層と、の間の容量を抑制することができる。これにより、金属バンプBと接続される配線層Laのボールパッド116におけるインピーダンス不整合を抑制することができる。
【0081】
通常、金属バンプBと接続する配線111は、金属バンプBと接続するためのボールパッド116を有する。ボールパッド116は、配線層La内の他の配線経路よりも面積が大きい。この場合、ボールパッド116における配線間の容量が大きくなる。容量Cは、誘電率ε、面積Sおよび間隔dを用いて、式1により表される。
【数1】
容量Cの増大は、配線の特性インピーダンスZ
0の低下につながる。特性インピーダンスZ
0は、インダクタンスLおよび容量Cを用いて、式2により表される。
【数2】
従って、ボールパッド116の特性インピーダンスZ
0は、配線層La内の他の配線の特性インピーダンスZ
0よりも小さくなる。この結果、インピーダンス不整合により、例えば、信号が反射されてしまう等により、信号のエネルギー損失が大きくなってしまう。
【0082】
これに対して、第3実施形態では、ボールパッド116と接する絶縁層1134の誘電率εを下げる。誘電率εを下げることにより、式1に示すように、面積Sが大きいボールパッド116の容量Cの増大を抑制することができる。これにより、ボールパッド116の特性インピーダンスZ0の低下を抑制することができ、インピーダンス不整合を抑制することができる。この結果、信号のエネルギー損失の低下を抑制することができ、信号の伝送不良を抑制することができる。
【0083】
尚、ガラス繊維GF1、GF2は、絶縁層113に応じて、材質の割合が異なっていてもよい。
【0084】
第3実施形態に第2実施形態を組み合わせてもよい。すなわち、ガラス繊維GF1、GF2は、絶縁層113に応じて、熱膨張係数および誘電率の少なくとも一方が異なっていてもよい。
【0085】
(第3実施形態の第1変形例)
図15は、第3実施形態の第1変形例による半導体装置1の構成の一例を示す断面図である。
図15は、半導体チップCH1の短辺に沿った断面におけるパッケージの断面図を示す。第3実施形態の第1変形例は、高速信号配線1111が設けられる配線層Lbの上下の絶縁層113に低誘電率のガラス繊維GF1、GF2が用いられる点で、第3実施形態とは異なっている。尚、
図15では、接着層30、40およびワイヤW1、W2等は省略されている。
【0086】
高速信号配線1111は、他の配線111よりも高速の信号が通過する配線である。高速信号配線1111は、例えば、差動配線である。高速信号配線1111は、半導体チップCH2と金属バンプBとの間に接続される。高速信号配線1111が設けられる配線層Lbとパッド115との間、および、配線層Lbとボールパッド116との間は、例えば、ビアホールにより電気的に接続されている。
【0087】
高速信号配線1111を含む配線層Lbと接する絶縁層1136におけるガラス繊維GF1、GF2は、絶縁層1136よりも高速信号配線を含む配線層Lbから離れた絶縁層1137におけるガラス繊維GF1、GF2よりも誘電率が低い。
図15に示す例では、絶縁層1136は、例えば、配線層Lbを挟む2層の絶縁層113である。絶縁層1137は、例えば、絶縁層1136以外の他の絶縁層113である。絶縁層1136におけるガラス織布113aのガラス繊維GF1、GF2は、例えば、NEガラスまたはDガラスである。また、絶縁層1137におけるガラス織布113aのガラス繊維GF1、GF2は、例えば、Eガラスである。これにより、高速信号配線1111付近の絶縁層113の誘電率を抑制し、高周波特性を向上させることができる。この結果、誘電損失を抑制することができ、誘電損失による信号の伝送不良を抑制することができる。
【0088】
尚、ガラス繊維GF1、GF2は、絶縁層113に応じて、材質の割合が異なっていてもよい。
【0089】
(第3実施形態の第2変形例)
図16は、第3実施形態の第2変形例によるガラス織布113aの構成の一例を示す平面図である。
【0090】
絶縁層1136のうち、高速信号配線1111の信号伝送方向Dに沿って設けられるガラス繊維GF1は、信号伝送方向Dとは異なる方向に沿って設けられるガラス繊維GF2よりも、誘電率が低い。絶縁層1136におけるガラス織布113aのガラス繊維GF1は、例えば、NEガラスまたはDガラスである。絶縁層1136におけるガラス織布113aのガラス繊維GF2は、例えば、Eガラスである。
図16に示す例では、信号伝送方向は、X方向である。
【0091】
図17は、第3実施形態の第2変形例による信号伝送方向Dの一例を示す平面図である。尚、
図17は、Z方向から見た一段目の半導体チップCH1、半導体チップCH2および高速信号配線1111を模式的に示す。実際の半導体チップCH1、CH2および高速信号配線1111の配置は、
図17に限られない。
【0092】
信号伝送方向Dは、配線基板11の基板面の法線方向から見て、高速信号配線1111が最も長く配置された方向である。
図17には、基板面の法線方向から見た、半導体チップCH2と接続するパッド115と、金属バンプBと接続するボールパッド116と、の間の高速信号配線1111が示されている。
図17に示す例では、X方向に沿った高速信号配線1111の距離は、Y方向に沿った高速信号配線1111の距離よりも長い。従って、信号伝送方向Dは、X方向である。
【0093】
また、ガラス繊維GF1だけでなく、ガラス繊維GF1、GF2の両方をNEガラスまたはDガラスにすることによっても、伝送信号の不良の発生を抑制することができる。しかし、ガラス繊維GF2もNEガラスまたはDガラスにすると、熱膨張係数が低くなりすぎて、X方向とY方向との間でパッケージの反りのバランスが悪化してしまう可能性がある。
【0094】
これに対して、第3実施形態の第2変形例では、ガラス繊維GF2がEガラスである。これにより、X方向とY方向との間のパッケージの反りのバランスをより適切にすることができる。すなわち、信号の伝送不良を抑制するとともに、パッケージの反りを考慮することができる。
【0095】
尚、
図16および
図17に示す例では、信号伝送方向Dは、半導体チップCH1の短辺沿った方向であるが、長辺に沿った方向であってもよい。
【0096】
また、ガラス繊維GF1、GF2は、ガラス織布113aに平行な方向に応じて、材質の割合が異なっていてもよい。
【0097】
第3実施形態の第2変形例による半導体装置1および配線基板11は、第3実施形態の第1変形例と同様の効果を得ることができる。
【0098】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0099】
1 半導体装置、11 配線基板、111 配線、1111 高速信号配線、113 絶縁層、1131~1137 絶縁層、113a ガラス織布、GF1 ガラス繊維、GF2 ガラス繊維、CH1 半導体チップ、CH2 半導体チップ、D 信号伝送方向、L1~L3 配線層、