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特許7566656トナー、トナーの製造方法、及び画像の読み取り方法
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  • 特許-トナー、トナーの製造方法、及び画像の読み取り方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】トナー、トナーの製造方法、及び画像の読み取り方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/08 20060101AFI20241007BHJP
   G03G 9/097 20060101ALI20241007BHJP
   G03G 9/09 20060101ALI20241007BHJP
【FI】
G03G9/08 391
G03G9/097 368
G03G9/097 365
G03G9/09
G03G9/08 381
G03G9/08 384
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021020061
(22)【出願日】2021-02-10
(65)【公開番号】P2022122678
(43)【公開日】2022-08-23
【審査請求日】2024-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【弁理士】
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】大橋 良太
(72)【発明者】
【氏名】山火 智
(72)【発明者】
【氏名】吉正 泰
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 宏
(72)【発明者】
【氏名】山本 毅
【審査官】福田 由紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-219103(JP,A)
【文献】特開2006-070300(JP,A)
【文献】特開2006-118036(JP,A)
【文献】特開2006-079020(JP,A)
【文献】特開2005-099295(JP,A)
【文献】特開2004-238504(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/08-9/097
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー粒子を有するトナーであって
前記トナーは金ナノロッドを含有し、
前記金ナノロッドは、
アスペクト比分布の測定において、アスペクト比6.0~13.0の範囲にピークを有する金ナノロッドA、及び
アスペクト比分布の測定において、アスペクト比1.6~2.6の範囲にピークを有する金ナノロッドB、を含有し
前記金ナノロッドBの光吸収波長を測定したとき、580~650nmの範囲にピークを有する
ことを特徴とするトナー。
【請求項2】
前記金ナノロッドAの光の吸収波長を測定したとき、1000~1600nmの範囲にピークを有する請求項1に記載のトナー。
【請求項3】
前記金ナノロッドBが、アスペクト比分布の測定において、アスペクト比2.0~2.2の範囲にピークを有する金ナノロッドである請求項1又は2に記載のトナー。
【請求項4】
前記トナー中に含有される、前記金ナノロッドA及び前記金ナノロッドBの質量比が、(0.99/0.01)~(0.85/0.15)である請求項1~3の何れか一項に記載のトナー。
【請求項5】
前記トナー中の前記金ナノロッドAの含有割合が、0.001~0.200質量%である請求項1~4の何れか一項に記載のトナー。
【請求項6】
トナー粒子を有するトナーであって、
前記トナーが、金ナノロッド及び添加剤を含有し、
前記トナーに含有される前記金ナノロッドのアスペクト比分布を測定したとき、アスペクト比が6.0~13.0の範囲にピークを有し、
前記添加剤の光の吸収波長を測定したとき、580~650nmの範囲にピークを有する
ことを特徴とするトナー。
【請求項7】
前記トナー中に含有される、前記金ナノロッド及び前記添加剤の質量比が、(0.99/0.01)~(0.95/0.05)である請求項6に記載のトナー。
【請求項8】
前記トナー中の前記金ナノロッドの含有割合が、0.001~0.200質量%である請求項6又は7に記載のトナー。
【請求項9】
前記トナーが、不可視画像形成用トナーである請求項1~8の何れか一項に記載のトナー。
【請求項10】
前記トナーを用いて、トナーの載り量を0.30mg/cmとして形成した定着画像の分光分析において、波長900nm以上1800nm以下の範囲における光の吸収率の最大値が3%以上である請求項1~9の何れか一項に記載のトナー。
【請求項11】
画像の読み取り方法であって、
請求項1~10の何れか一項に記載のトナーを用いて形成された画像を、近赤外線センサを搭載した装置を用いて読み取る工程を有する、画像の読み取り方法。
【請求項12】
トナー粒子を有するトナーの製造方法であって、
金ナノロッドA、及び金ナノロッドBを含有するトナー粒子を得る工程を含み、
前記金ナノロッドAのアスペクト比分布を測定したとき、アスペクト比が6.0~13.0の範囲にピークを有し、
前記金ナノロッドBのアスペクト比分布を測定したとき、アスペクト比が1.6~2.6の範囲にピークを有し、
前記金ナノロッドBの光吸収波長を測定したとき、580~650nmの範囲にピークを有する
ことを特徴とするトナーの製造方法。
【請求項13】
トナー粒子を有するトナーの製造方法であって、
金ナノロッド、及び添加剤を含有するトナー粒子を得る工程を含み、
前記金ナノロッドのアスペクト比分布を測定したとき、アスペクト比が6.0~13.0の範囲にピークを有し、
前記添加剤の光吸収波長を測定したとき、580~650nmの範囲にピークを有する
ことを特徴とするトナーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、トナー、トナーの製造方法、及び画像の読み取り方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、著作権保護や偽造防止などのセキュリティ強化を目的として、目には見えない情報を印刷物に埋め込む「不可視印刷」が注目されている。不可視印刷は、可視画像と重なっても見た目を劣化させにくいため、通常の印刷物としての品質を保ちつつ、埋め込まれた情報も合せて利用でき、セキュリティー分野などの多分野で応用が期待されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、特定の金属ナノロッドをトナーに含有させることにより、可視画像の画質を損なうことない不可視画像を形成できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-219103号公報
【文献】特開2006-118036号公報
【文献】特開2006-169544号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】Y.Yuhoka,J.Phys.Chem.B,101,6661(1997)
【文献】N.R.Janahoka,J.Phys.Chem.B,105,4065(2001)
【文献】Chem.Commun.(2003),pp.2376-2377.
【文献】Li.S他、Nano Res.4,723-728(2011)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のトナーについて本発明者らが検討した結果、可視光領域における画像の不可視性について、より一層の改善が必要であることを認識した。
【0007】
本開示の一態様は、近赤外領域における優れた読み取り性を有し得るとともに、可視光領域における優れた不可視性を有し得る画像が得られるトナーの提供に向けたものである。
【0008】
また、本開示の他の態様は、本開示に係るトナーの製造方法の提供に向けたものである。
【0009】
また、本開示の他の態様は、本開示に係るトナーを用いて形成した画像の読み取り方法の提供に向けたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の一態様によれば、トナー粒子を有するトナーであって
前記トナーは金ナノロッドを含有し、
前記金ナノロッドは、
アスペクト比分布の測定において、アスペクト比6.0~13.0の範囲にピークを有する金ナノロッドA、及び
アスペクト比分布の測定において、アスペクト比1.6~2.6の範囲にピークを有する金ナノロッドB、を含有し
前記金ナノロッドBの光吸収波長を測定したとき、580~650nmの範囲にピークを有する
ことを特徴とするトナーが提供される。
【0011】
また、本開示の他の態様によれば、トナー粒子を有するトナーであって、
前記トナーが、金ナノロッド及び添加剤を含有し、
前記トナーに含有される前記金ナノロッドのアスペクト比分布を測定したとき、アスペクト比が6.0~13.0の範囲にピークを有し、
前記添加剤の光の吸収波長を測定したとき、580~650nmの範囲にピークを有する
ことを特徴とするトナーが提供される。
【0012】
また、本開示の他の態様によれば、トナー粒子を有するトナーの製造方法であって、
金ナノロッドA、及び金ナノロッドBを含有するトナー粒子を得る工程を含み、
前記金ナノロッドAのアスペクト比分布を測定したとき、アスペクト比が6.0~13.0の範囲にピークを有し、
前記金ナノロッドBのアスペクト比分布を測定したとき、アスペクト比が1.6~2.6の範囲にピークを有し、
前記金ナノロッドBの光吸収波長を測定したとき、580~650nmの範囲にピークを有する
ことを特徴とするトナーの製造方法が提供される。
【0013】
また、本開示の他の態様によれば、トナー粒子を有するトナーの製造方法であって、
金ナノロッド、及び添加剤を含有するトナー粒子を得る工程を含み、
前記金ナノロッドのアスペクト比分布を測定したとき、アスペクト比が6.0~13.0の範囲にピークを有し、
前記添加剤の光吸収波長を測定したとき、580~650nmの範囲にピークを有する
ことを特徴とするトナーの製造方法が提供される。
【0014】
また、本開示の他の態様によれば、画像の読み取り方法であって、
本開示のトナーを用いて形成された画像を、近赤外線センサを搭載した装置を用いて読み取る工程を有する、画像の読み取り方法が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本開示の一態様によれば、近赤外領域における優れた読み取り性を有し得るとともに、可視光領域における優れた不可視性を有し得る画像が得られるトナーを提供できる。
【0016】
また、本開示の他の態様によれば、本開示に係るトナーの製造方法を提供できる。
【0017】
また、本開示の他の態様は、本開示に係るトナーを用いて形成した画像の読み取り方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】画像の読み取り方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
数値範囲を表す「○○以上××以下」や「○○~××」の記載は、特に断りのない限り、端点である下限及び上限を含む数値範囲を意味する。数値範囲が段階的に記載されている場合、各数値範囲の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。
【0020】
本開示に係るトナーは、不可視画像形成用トナーであることが好ましい。
【0021】
<発明に至った経緯>
金ナノロッドを含有させたトナーを用いて画像形成を行うと、近赤外領域において画像の読み取りが可能な画像が得られやすい。このトナーについて、本発明者らが検討を進めた結果、アスペクト比分布のピークが6.0~13.0に制御された金ナノロッドを含有させたトナー用いると、近赤外領域の光吸収量が大きくなるため、優れた画像の読み取り性を有し得ることを見出した。
【0022】
その一方で、上記のようにアスペクト比が制御された金ナノロッドを含有させたトナーを用いて形成した定着画像を目視で観察した際に、薄く色を呈する場合があることを、本発明者らは発見した。該定着画像の光吸収スペクトルを測定したところ、上記の画像は近赤外領域において最大吸収を示すものの、530nm付近にも小さな光吸収のピークが存在することを発見し、これにより、薄く色を呈する定着画像が得られる場合があると考えた。不可視画像を形成するために用いられるトナーには、当然、視認しにくい画像を形成できることが求められる。そのため、本発明者らは、上記の530nm付近の光吸収による呈色を視認しにくくさせるための改善が必要であるとの認識を得た。
【0023】
本発明者らが鋭意検討した結果、アスペクト比分布のピークが6.0~13.0に制御された金ナノロッドAと、580~650nmに光吸収のピークを有する材料Bとを含有するトナーが、上記の如き特性を備えた画像の形成に有効であることを見出した。以下に、推測メカニズム及びそれぞれの構成要件について詳細に説明する。
【0024】
<本開示の効果が発現する推測メカニズム>
アスペクト比6.0~13.0の範囲に分布のピークを有する、金ナノロッドAがトナーに含有されることで、近赤外領域(1000~1600nm)の光を吸収するため、近赤外領域における優れた読み取り性を有する画像が得られやすくなる。
【0025】
また、上記の金ナノロッドAは530nm付近の光も一部吸収するが、580~650nmに光吸収のピークを有する材料Bが含有されることで、可視光領域の光吸収特性がよりフラットな画像、即ち、より彩度が小さく、視認しにくい画像が得られやすくなる。
【0026】
本開示においては、上記の材料Bの具体例として、
(i)580~650nmに光吸収のピークを有し、アスペクト比1.6~2.6の範囲の分布のピークを有する金ナノロッドB
(ii)580~650nmに光吸収のピークを有する添加剤B
を挙げている。
【0027】
<金ナノロッド>
本開示に係るトナーは、金ナノロッドを含有する。また、金ナノロッドとは、金の含有割合が80%以上であるナノロッドであると取り扱う。
【0028】
金ナノロッド中における、金元素と金以外の金属元素の配置は、原子レベルで複合化された合金状であっても、金単体のナノロッドを金以外の金属元素で被覆したコア-シェル状でも良い。また、金ナノロッドは、例えば、シリカやポリスチレンなどで構成されたシェルで被覆されていても良い。更に、金ナノロッドを媒質中に分散させるため等、目的に応じて、金ナノロッド表面は界面活性剤等の適当な分子で修飾されていてもよい。
【0029】
金ナノロッドとは、TEM画像において長軸径と短軸径を有する金ナノ材料を指す。即ち、TEM画像における金ナノロッドは、略長方形として観察される。一般に、短軸の長さが1nm~60nm、長軸の長さが20nm~500nmである。また、金ナノロッドの長軸の長さを短軸の長さで除した値を、アスペクト比と呼ぶ。本開示においては、アスペクト比が1.5以上のものを金ナノロッドとして取り扱う。
【0030】
<金ナノロッドA>
トナーは、金ナノロッドを含有し、該金ナノロッドは、アスペクト比分布の測定において、アスペクト比6.0~13.0の範囲にピークを有する金ナノロッドAを有する。
【0031】
ここで、アスペクト比分布において、アスペクト比が6.0~13.0の範囲にピークを有する金ナノロッドの、光吸収が最大となるピーク波長は、1000~1600nmの範囲に存在しやすく、近赤外領域の波長に対する優れた吸収性を示す。即ち、金ナノロッドAの光の吸収波長を測定したとき、1000~1600nmの範囲にピークを有することが好ましい。このために、上記の金ナノロッドを有するトナーにより、近赤外領域における優れた読み取り性を有し得る不可視画像が得られやすい。
【0032】
上記のアスペクト比としてより好ましくは9.0以上であることが好ましく、また、11.0以下であることが好ましい。
【0033】
また、トナーに含有される金ナノロッドAのアスペクト比分布を測定したときの標準偏差が4.5以下であることが好ましく、3.5以下であることがより好ましく、2.0以下であることがさらに好ましい。下限は特に制限されず、0.5以上であることが好ましい。
【0034】
<金ナノロッドAの含有割合>
トナー中の金ナノロッドAの含有割合は、0.001~0.200質量%であることが好ましい。0.001質量%以上であれば、赤外線を照射した際に不可視画像が可視化されやすく、優れた読み取り性を有する画像が得られやすい。そのため0.001質量%以上であることが好ましく、0.005質量%以上であることがより好ましい。また、0.200質量%以下であれば、トナーの体積抵抗率が低下しづらく、高品位な画質の不可視画像が得られやすく、近赤外領域における読み取り性に優れやすい。そのため、0.200質量%以下であることが好ましく、0.100質量%以下であることがより好ましく、0.050質量%以下であることがさらに好ましい。
【0035】
<材料B>
上述したように、上記の金ナノロッドAだけでなく、580~650nmに光吸収のピークを有する材料Bをトナーに含有させることで、視認しにくい画像が得られやすくなることを発見した。本開示における材料Bの具体例として、下記の金ナノロッドB及び添加剤Bを挙げている。
【0036】
<金ナノロッドB>
上記の材料Bの態様の1つとして下記の金ナノロッドBが挙げられる。即ち、本開示の一態様に係るトナーは、アスペクト比分布の測定において、アスペクト比1.6~2.6の範囲にピークを有する金ナノロッドBを含有し、金ナノロッドBの光吸収波長を測定したとき、580~650nmの範囲にピークを有する。上記のアスペクト比の範囲として好ましくは、アスペクト比2.0~2.2の範囲である。
【0037】
上記のようにアスペクト比が制御された金ナノロッドは、光吸収のピーク波長が580~650nmの範囲存在しやすいため、上記の材料Bとして好ましく、可視光領域における優れた不可視性を有する画像が得られやすい。
【0038】
また、トナーに含有される金ナノロッドBのアスペクト比分布を測定したときの標準偏差が4.5以下であることが好ましく、3.5以下であることがより好ましく、2.0以下であることがさらに好ましい。下限は特に制限されず、0.5以上であることが好ましい。
【0039】
可視光領域の不可視性及び近赤外領域の読み取り性の観点から、トナーに含有される金ナノロッドA及び金ナノロッドBの質量比が、(0.99/0.01)~(0.85/0.15)であることが好ましい。
【0040】
<添加剤B>
上記の材料Bの他の態様として、光吸収波長のピークが580~650nmの範囲となる添加剤(以下、添加剤Bとも表記する)が挙げられる。即ち、本開示の一態様に係るトナーは添加剤を含有し、該添加剤の光吸収波長を測定したとき、580~650nmの範囲にピークを有する。
【0041】
また、可視光領域の不可視性及び近赤外領域の読み取り性の観点から、金ナノロッドA及び上記の添加剤Bの質量比が、(0.99/0.01)~(0.95/0.05)であることが好ましい。
【0042】
光吸収のピーク波長が580nmから650nmの範囲となるような添加剤Bとしては、上記を満たすシアントナー用の着色剤や、マゼンタトナー用の着色剤を用いることができ、シアントナー用の着色剤がより好ましい。
【0043】
シアントナー用顔料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントブルー2、3、15:2、15:3、15:4、16、17;C.I.バットブルー6;C.I.アシッドブルー45、フタロシアニン骨格にフタルイミドメチル基を1~5個置換した銅フタロシアニン顔料。
【0044】
シアントナー用染料としては、C.I.ソルベントブルー70が挙げられる。
【0045】
マゼンタトナー用顔料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、39、40、41、48:2、48:3,48:4、49、50、51、52、53、54、55、57:1、58、60、63、64、68、81:1、83、87、88、89、90、112、114、122、123、146、147、150、163、184、202、206、207、209、238、269、282;C.I.ピグメントバイオレット19;C.I.バットレッド1、2、10、13、15、23、29、35。
【0046】
マゼンタトナー用染料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ソルベントレッド1、3、8、23、24、25、27、30、49、81、82、83、84、100、109、121;C.I.ディスパースレッド9;C.I.ソルベントバイオレット8、13、14、21、27;C.I.ディスパーバイオレット1のような油溶染料、C.I.ベーシックレッド1、2、9、12、13、14、15、17、18、22、23、24、27、29、32、34、35、36、37、38、39、40;C.I.ベーシックバイオレット1、3、7、10、14、15、21、25、26、27、28のような塩基性染料。
【0047】
また、色度調整の為に、イエロートナー用の着色剤を含有していてもよい。
【0048】
イエロートナー用顔料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントイエロー1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、15、16、17、23、62、65、73、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、127、128、129、147、151、154、155、168、174、175、176、180、181、185;C.I.バットイエロー1、3、20。
【0049】
イエロートナー用染料としては、C.I.ソルベントイエロー162が挙げられる。
【0050】
顔料を単独で使用してもかまわないが、染料と顔料とを併用してその鮮明度を向上させた方が色度調整の点からより好ましい。
【0051】
<金ナノ粒子>
トナーが、金ナノ粒子を含有しない、又は金ナノロッドの個数に対して30個数%以下の割合で金ナノ粒子を含有することが好ましい。本開示において、金ナノ粒子とは、金を主成分とする金属ナノ粒子であると取り扱う。また、金属ナノ粒子とは、アスペクト比が1.5未満のナノ粒子であると取り扱う。金ナノ粒子は、金ナノロッドの調製時に生成されることがある。また、金ナノ粒子は、その粒径に応じた可視光領域での吸収を示す。例えば、該粒径が20nmであると、520nm付近に光吸収を示す。トナー中の金ナノ粒子の量が小さいことで、該金ナノ粒子の吸収波長に該当する可視光領域の光吸収率が小さくなり、優れた不可視性を有する画像が得られやすい。
【0052】
金ナノ粒子の個数割合は後述する反応条件、精製条件により制御することができる。
【0053】
<金ナノロッドの調製方法>
金ナノロッドを調製する方法としては、電解法(非特許文献1)、化学的合成法(非特許文献2)などの方法が挙げられる。
【0054】
例えば、四級アンモニウム塩である臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)を過剰に含む水溶液中で金イオンを還元して金ナノロッド粒子を合成する方法を用いることができる。当該方法の詳細については、例えば、特許文献2、特許文献3、非特許文献3等を参照することができる。この方法では、まず、塩化金酸四水和物の水溶液にCTAB水溶液を加え、水素化ホウ素ナトリウムを添加することで、シード粒子を有する溶液を調製する。その溶液に対して、硝酸銀、塩化金酸四水和物、L-アスコルビン酸、CTABを混合した溶液を添加し一定時間保持する、または少量ずつ該溶液を添加することで、核としてのシード粒子を異方的に成長させやすく、金ナノロッドが得られる。
【0055】
また、シード粒子を成長させる際に、塩化ベンジルジメチルヘキサデシルアンモニウムを加えることで、アスペクト比の大きい金ナノロッドを得ることができる。他にも、一段階目で強い還元剤である水素化ホウ素ナトリウムによる還元を行い、続いて弱い還元剤であるトリエチルアミンによる還元を行うことによっても、アスペクト比の大きい金ナノロッドを得ることができる。
【0056】
また、必要に応じて金ナノロッドを精製してアスペクト比分布を調整して用いることができる。精製には、一般に知られている方法のいずれも使用することができるが、例えば密度勾配超遠心分離法を用いることができる。当該方法の詳細については、例えば非特許文献4等を参照することができる。具体的には、まず濃度の異なるショ糖とCTABの混合溶液を用意し、遠心チューブ内に濃度勾配順に重層する。その上に金ナノロッドのサンプルを重層し、遠心することにより、密度や大きさによる分離を行う。このように分離、精製することで、上記の標準偏差σが小さくなり、よりアスペクト比分布を狭い金ナノロッドが得られる。
【0057】
<トナー及びトナー粒子>
トナー粒子は、結着樹脂を含有することが好ましい。結着樹脂は特に限定されず、具体的には、ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等が例示でき、これらは単独で、あるいは混合して使用できる。また、結着樹脂は、分子構造が線状の樹脂、分岐状の樹脂、架橋された樹脂の何れでも良く、これらの混合物でも良い。
【0058】
<近赤外領域における光の吸収率>
また、トナーの載り量を0.30mg/cmとして形成した定着画像の分光分析において、波長900nm以上1800nm以下の範囲における光の吸収率の最大値が3%以上であることが好ましい。この波長範囲は近赤外領域に対応する波長領域であり、光の吸収率が3%以上であれば、近赤外線カメラなどを用いて不可視画像を読み取りやすい。より好ましくは、10%以上であり、さらに好ましくは、15%以上である。
【0059】
上記の吸収率は金ナノロッドのアスペクト比分布を調整することなどにより制御できる。
【0060】
<トナー粒子の重量平均粒径(D4)>
トナー粒子の重量平均粒径(D4)は、4.0μm以上9.0μm以下であることが好ましく、5.0μm以上7.0μm以下であることがさらに好ましい。この範囲であると、高精細な画像形成に有利である。
【0061】
<トナーの製造方法>
トナーの製造方法は特に限定されないが、態様の1つとして、上記金ナノロッドA及び上記金ナノロッドBを含有するトナー粒子を得る工程を含むことが好ましい。また、他の態様として、上記金ナノロッドA及び上記添加剤Bを含有するトナー粒子を得る工程を含むことが好ましい。
【0062】
トナーの製造方法としては例えば下記のトナーの製造方法(1)~(3)が例示できる。
【0063】
(1)粉砕法
粉砕法によりトナーを製造する際には、まず、金ナノロッドを分散媒である結着樹脂や他の添加剤とともにヘンシェルミキサー、ボールミル等の混合機により充分混合する。その混合物をニーダー、エクストルーダー等の熱及び機械的剪断力による熱混練機を用いて溶融混練して樹脂類を互いに相溶させる。溶融混練物を冷却固化後に固化物を粉砕し、粉砕物を分級して目的とする粒径のトナー粒子を得る。
【0064】
(2)重合法
重合法では、例えば、金ナノロッド、結着樹脂を形成しうる重合性単量体、必要に応じて重合開始剤、架橋剤、荷電制御剤及びその他の添加剤を、均一に分散させて重合性単量体組成物を得る。その後、分散安定剤を含有する連続層(例えば水相)中に、適当な攪拌器を用いて、得られた重合性単量体組成物を分散・造粒し、重合開始剤を用いて重合反応を行い、所望の粒径を有するトナー粒子を得る。
【0065】
(3)乳化凝集法
乳化凝集法によりトナーを製造する際には、まず金ナノロッド、結着樹脂、他の添加剤などの各材料を、分散安定剤を含有する水系媒体中で分散混合する。水系媒体中には、界面活性剤が添加されていてもよい。その後、凝集剤を添加することによって所望のトナーの粒径となるまで凝集させ、その後又は凝集と同時に、樹脂微粒子間の融着を行う。さらに必要に応じて、熱による形状制御を行うことにより、トナー粒子を形成する。その後、濾過洗浄工程、乾燥工程を経て、トナー粒子を得る。
【0066】
また、必要に応じて、一連のトナー製造工程の中に金ナノロッドを結着樹脂中に分散させる工程を設けてもよい。
【0067】
金ナノロッドを結着樹脂中に分散させる方法としては、例えば、トナー製造工程中においてマスターバッチを用いる方法が例示できる。即ち、金ナノロッドが高濃度となるように結着樹脂の一部と混合し、高いシェアをかけながら溶融混練して金ナノロッドが微分散したマスターバッチを製造する。そして、その後、マスターバッチを残りの結着樹脂で希釈しながら溶融混練する方法である。マスターバッチを製造する際に好適に用いられる溶融混練装置としては、ニーダー、バンバリーミキサー、2本ロール、3本ロールミル等が例示でき、これらは単独、あるいは組み合わせて使用できる。希釈混練する際に用いる溶融混練装置としては、二軸混練機等が例示できる。
【0068】
また、必要に応じて、一連のトナー製造中に金ナノロッド粒子の凝集を抑制する工程を設けてもよい。
【0069】
トナー製造中に金ナノロッド粒子の凝集を抑制する方法としては、例えば、溶融混練工程の後の冷却を急速に行う方法が例示できる。例えば、水冷した金属ベルト上に溶融混練物をシート状に展延することで、溶融混練物を急速に冷却することが可能である。急速に冷却することで、冷却中に生じる金ナノロッドの凝集を抑制することができる。急速冷却するための好適な冷却装置としては、「高粘度用NRダブル・ベルトクーラー(日本ベルティング社製)」、「冷却固化機ベルトドラムフレーカ(日本コークス工業社製)」、「冷却固化装置ドラムフレーカ(カツラギ工業社製)」等が例示できる。
【0070】
金ナノロッド粒子を結着樹脂中に分散する工程と、金ナノロッド粒子の凝集を抑制する方法は組み合わせて用いてもよい。
【0071】
<画像の読み取り方法>
本開示に係るトナーを用いて形成された画像の読み取り方法は特に制限されない。本開示に係るトナーを用いて形成された画像は、近赤外領域の波長を吸収しやすいため、波長900~2500nmの光を用いる画像読み取り方法であることが好ましい。より好ましくは900~1800nmである。
【0072】
また、該波長の光を読み取りやすいため、近赤外線センサを搭載した装置を用いる画像の読み取り方法であることが好ましく、InGaAsセンサを搭載した装置を用いる画像の読み取り方法であることがより好ましい。より好ましくはInGaAsカメラである。
【0073】
画像の読み取り方法の一例として、本発明者らが行った操作を以下に示す。
【0074】
本開示に係るトナーと用いて評価画像を形成した後、図1に示すように光源202とカメラ203を設置し、評価画像201の観察を行った。即ち、机上に評価画像を静置し、評価画像に対して15°の角度で約1m離れたところから光源202を用いて赤外線を照射した。また、評価画像の真上15cmのところにカメラ203を設置し、撮影した。光源202としては、可視光カットフィルターユニットを取り付けたハロゲンランプ光源(商品名:PCS-UHX-150、日本ピー・アイ社製)を使用した。また、カメラ203としては、800nm以下の波長成分をカットするフィルタをレンズ部に装着した近赤外カメラ(商品名:NVU3VD、アイアールスペック社製、InGaAsカメラ)を使用した。該近赤外カメラの分光感度波長域は、970~1650nmであった。
【0075】
<各種添加剤>
トナーは必要により、ワックス、荷電制御剤、及び外添剤などから選ばれる1種以上の添加剤を含有してもよい。
【0076】
<ワックス>
ワックスとしては特に限定されないが、無色あるいは淡色のワックスが好ましく、以下のものが挙げられる。
【0077】
炭化水素ワックス、エステルワックス、アミドワックス、高級脂肪族アルコール、高級脂肪酸など。ワックスは1種を単独で用いても、複数種を併用してもよい。
【0078】
<荷電制御剤>
荷電制御剤としては特に限定されないが、無色あるいは淡色の荷電制御剤が好ましく、以下のものが挙げられる。
【0079】
芳香族オキシカルボン酸、芳香族オキシカルボン酸の金属化合物、ホウ素化合物、4級アンモニウム塩、カリックスアレーン、スルホン酸(塩)基を有する樹脂、スルホン酸エステル基を有する樹脂など。荷電制御剤は1種を単独で用いても、複数種を併用してもよい。
【0080】
<外添剤>
外添剤としては特に限定されないが、無色あるいは淡色のものが好ましく、以下のものが挙げられる。
【0081】
シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸ストロンチウム、窒化ケイ素、ポリテトラフルオロエチレン、ステアリン酸亜鉛など。また、外添剤の表面が疎水化処理されていてもよい。
【0082】
また、外添剤の一次粒子の平均粒径は、トナー粒子の重量平均粒径(D4)の1/10以下の粒径であることが好ましい。
【0083】
<現像剤>
トナーは、一成分現像剤として使用することもできるが、キャリアと混合して二成分現像剤として使用してもよい。キャリアとしては、例えば鉄、フェライト、マグネタイトなどの金属、それらの金属とアルミニウム、鉛などの金属との合金など、公知の材料からなる磁性粒子を用いることができる。また、キャリアの表面を樹脂などの被覆剤で被覆したコートキャリアや、バインダー樹脂中に磁性粒子を分散した樹脂分散型キャリアを用いてもよい。キャリアの体積平均粒径は、15μm以上100μm以下が好ましく、25μm以上80μm以下がより好ましい。
【0084】
<各種測定方法等>
以下、各種の測定方法等に関して記載する。
【0085】
<トナー粒子の重量平均粒径(D4)の測定方法>
トナー粒子の重量平均粒径(D4)は、以下のようにして算出する。
【0086】
測定装置としては、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)を用いる。測定条件の設定及び測定データの解析は、付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いる。なお、測定は実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで行う。
【0087】
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)を用いることができる。
【0088】
なお、測定、解析を行う前に、以下のように上記専用ソフトの設定を行う。
【0089】
上記専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更」画面において、コントロールモードの総カウント数を50,000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。「閾値/ノイズレベルの測定ボタン」を押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、「測定後のアパーチャーチューブのフラッシュ」にチェックを入れる。上記専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定」画面において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。
【0090】
具体的な測定法は以下のとおりである。
【0091】
(1)Multisizer 3専用のガラス製250mL丸底ビーカーに上記電解水溶液約200mLを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、専用ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
【0092】
(2)ガラス製の100mL平底ビーカーに上記電解水溶液約30mLを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、富士フィルム和光純薬製)をイオン交換水で約3質量倍に希釈した溶液を約0.3mL加える。
【0093】
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispersion System Tetora150」(日科機バイオス社製)を準備する。超音波分散器の水槽内に約3.3lのイオン交換水を入れ、この水槽中にコンタミノンNを約2mL添加する。
【0094】
(4)上記(2)のビーカーを上記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
【0095】
(5)上記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー粒子約10mgを少量ずつ上記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。なお、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
【0096】
(6)サンプルスタンド内に設置した上記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナー粒子を分散した上記(5)の電解質水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50,000個になるまで測定を行う。
【0097】
(7)測定データを装置付属の上記専用ソフトにて解析を行い、重量平均粒径(D4)を算出する。なお、上記専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、「分析/体積統計値(算術平均)」画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)である。
【0098】
<金ナノロッドのアスペクト比分布におけるピークアスペクト比及び標準偏差の測定方法>
溶媒に金ナノロッドを分散させた測定試料を支持膜に滴下して乾燥させ、透過型電子顕微鏡「Technai F30(FEI社製)」等によるTEM観察を行う。観察された金ナノロッドの長軸と短軸の長さを、photoshop等の画像処理ソフトにより求めることで、アスペクト比分布におけるピークアスペクト比及び標準偏差などを求めることができる。
【0099】
トナーに含有される金ナノロッドのアスペクト比分布を測定する際には、トナーに含有される金ナノロッドを分離して回収してから、上記の測定を行う。
【0100】
その手順はまず、結着樹脂を溶解することのできる溶媒を用いてトナーを溶解する。次に、遠心分離により金ナノロッドを沈降させ、上澄み液を分離する。新たに溶媒を加えて再び遠心分離を行い、上澄み液を分離する。この操作を何度か繰り返すことで洗浄し、最終的に溶媒を乾燥除去することで、金ナノロッドをトナーから分離して回収することができる。また、溶媒に再分散させる前に質量を測ることもできる。
【実施例
【0101】
以下、実施例により本開示をさらに詳細に説明するが、これらにより本開示は限定されるものではない。
【0102】
<本開示に係る金ナノロッドAを含有する、分散液Aの製造例>
[シード粒子溶液の調製]
0.0005mol/Lの塩化金酸四水和物(キシダ化学株式会社)水溶液500mLと0.2mol/Lの臭化セチルトリメチルアンモニウム(キシダ化学株式会社)水溶液500mLを混合した。この水溶液に0.01mol/Lの水素化ホウ素ナトリウム(東京化成工業株式会社)60mLを添加することによって、シード粒子溶液(溶液A)を得た。
【0103】
[工程a]
0.15mol/L塩化ベンジルジメチルヘキサデシルアンモニウム(東京化成工業株式会社)水溶液500mLに臭化セチルトリメチルアンモニウム10gを溶解した。この二種類の界面活性剤を含有した水溶液に0.004mol/Lの硝酸銀水溶液20mLを添加した。この水溶液に0.001mol/L塩化金酸四水和物水溶液500mLを添加した後、更に、0.078mol/LのL-アスコルビン酸水溶液(キシダ化学株式会社)7mLを添加した。この溶液を溶液Bとした。
【0104】
続いて、0.15mol/L塩化ベンジルジメチルヘキサデシルアンモニウム(東京化成工業株式会社)水溶液500mLに臭化セチルトリメチルアンモニウム10gを溶解した。この二種類の界面活性剤を含有した水溶液に0.004mol/Lの硝酸銀水溶液20mLを添加した。この水溶液に0.0005mol/L塩化金酸四水和物水溶液500mLを添加した後、更に、0.078mol/LのL-アスコルビン酸水溶液(キシダ化学株式会社)3.6mLを添加した。この溶液を溶液Cとした。
【0105】
溶液Bに、溶液Aを1.2mL滴下し、続いて、溶液Cを1.0mL/20分の速度で2.0mL添加し、核としてのシード粒子を異方的に成長させた。10,000×gで5分遠心分離後、THFが99.98質量部、金ナノロッドが0.02質量部となるようにTHFに再分散させ、粒子分散液を得た。
【0106】
[精製工程]
得られた粒子分散液6mLを、10,000×gで5分間遠心し、得られたペレットを0.01MのCTAB水溶液0.05mLに再懸濁した。
【0107】
また、0.01MのCTAB溶液に10重量%、15重量%、20重量%、25重量%となるようにショ糖を加えた溶液を調製した。これらの液を15mLポリアロマーチューブ内に、ショ糖濃度が高い順に3mLずつ重ねて入れ、最後に再懸濁した粒子分散液を重層した。高速冷却遠心機 Avanti JXN-30を用いて25℃、10,750×gで15分間遠心処理した。遠心後、300μLずつフラクションに分けた。各フラクション中の金ナノロッドのTEM画像を測定した。各フラクションのTEM画像から算出されるアスペクト比と標準偏差を確認して、所望のフラクションを回収し、それらを集めた溶液を10,000×gで5分間遠心した。その沈殿物である金ナノロッドが0.02質量部になるように分散媒(THF)に再分散させ、最終濃度をTHF99.98質量部、金ナノロッド0.02質量部となるようにした。こうして、分散液Aを調製した。分散液Aに含有される金ナノロッドの物性を表1に示す。
【0108】
<本開示に係る金ナノロッドAを含有する、分散液B~Fの製造例>
工程aにおける溶液Cの量、精製工程の有無、精製工程においてどのフラクションを回収するかを調整することにより、ピークアスペクト比及び標準偏差を表1のように変更したこと以外は分散液Aの製造例と同様の操作を行い、分散液B~F得た。分散液に含有される金ナノロッドの物性を表1に示す。
【0109】
但し、分散液Dは、最終的な分散媒としてTHFに代えてスチレンを使用し、最終濃度をスチレン99.9質量部、金ナノロッド0.1質量部とした。
【0110】
<本開示に係る金ナノロッドBを含有する、分散液Gの製造例>
[シード粒子溶液の調製]
先ず、上記と同様のシード粒子溶液(溶液A)を調製した。
【0111】
[工程b]
0.2mol/Lの臭化セチルトリメチルアンモニウム水溶液500mLに0.004mol/L硝酸銀(キシダ化学株式会社)水溶液を3.8mL添加した。この水溶液に0.001mol/Lの塩化金酸四水和物水溶液500mLを添加した後、更に、0.078mol/LのL-アスコルビン酸水溶液(キシダ化学株式会社)7mLを添加した。この溶液を溶液Bとした。
【0112】
そして、溶液Bに溶液Aを1.2mL滴下した。この溶液を30℃で20分間保持し、核としてのシード粒子を異方的に成長させ、粒子分散液を得た。
【0113】
[精製工程]
分散液Aの製造例における精製工程と同様の操作を、工程bで得られた粒子分散液を用いて行い、分散液Gを調製した。分散液Gに含有される金ナノロッドの物性を表1に示す。
【0114】
<本開示に係る金ナノロッドBを含有する、分散液H~Oの製造例>
工程bにおける硝酸銀水溶液の添加量、及び精製工程においてどのフラクションを回収するかを調整することにより、ピークアスペクト比及び標準偏差を表1のように変更したこと以外は分散液Gの製造例と同様の操作を行い、分散液H~Oを得た。各分散液に含有される金ナノロッドの物性を表1に示す。
【0115】
但し、分散液Oは、最終的な分散媒としてTHFに代えてスチレンを使用し、最終濃度をスチレン99.9質量部、金ナノロッド0.1質量部とした。
【0116】
<本開示に係る添加剤Bを含有する、分散液Pの製造例>
・顔料(C.I.ピグメントブルー15:3) 1000質量部
・アニオン界面活性剤 150質量部
・イオン交換水 9000質量部
上記材料を混合し、溶解した後、高圧衝撃式分散機を用いて分散したものを分散液Pとした。分散液に含有される顔料の物性を表1に示す。
【0117】
<比較例用分散液Q~Tの製造例>
工程bにおける硝酸銀水溶液の添加量、及び精製工程においてどのフラクションを回収するかを調整することにより、ピークアスペクト比及び標準偏差を表1のように変更したこと以外は分散液Gの製造例と同様の操作を行い、分散液Q~Tを得た。各分散液に含有される金ナノロッドの物性を表1に示す。
【0118】
【表1】
【0119】
表1における、アスペクト比分布における、ピークのアスペクト比及び標準偏差は、上記した測定方法で測定した。
【0120】
また、光吸収のピーク波長が400~800nmの範囲内であったものは、紫外可視近赤外分光光度計(商品名:UV-3600、島津製作所製)を用いて測定した。また、光吸収のピーク波長が900~1800nmの範囲内であったものは、紫外可視近赤外分光光度計(商品名:MV-3300、日本分光社製)を用いて測定した。
【0121】
<実施例1>
<トナー1の製造例(溶融混練法)>
[飽和ポリエステル1分散液の製造例]
・飽和ポリエステル1(エチレンオキサイド変性ビスフェノールAとテレフタル酸との重縮合物、ガラス転移温度60℃、重量平均分子量29000、数平均分子量6000) 20.0質量部
・THF 80.0質量部
上記材料を十分に混合し、飽和ポリエステル1分散液を得た。
【0122】
[トナー粒子1の製造例]
・分散液I 2.0質量部
・分散液B 31.0質量部
・飽和ポリエステル1分散液 67.0質量部
上記材料をマグネチックスターラーを用いてよく攪拌し、ヘプタン(キシダ化学社製)に滴下することで再沈殿させた。沈殿物を吸引濾過により回収することで金ナノロッドと飽和ポリエステルの混合物を粉末状態で得た。この混合物100質量部にエステルワックス(融点73℃)5.0質量部を加え、FMミキサ(日本コークス工業社製)を用いて上記の材料を十分に混合した後、温度130℃に設定したPCM-30型(池貝社製)を用いて溶融混練し、混練物を得た。得られた混練物を水冷した金属ベルト上にシート状に展延して急冷後、ハンマーミルにて1mm以下に粗粉砕し、粗砕物を得た。得られた粗砕物をT-250(フロイント・ターボ社製)にて微粉砕した。さらに200TSP(ホソカワミクロン社製)を用いて分級を行い、重量平均粒径(D4)が5.9μmのトナー粒子1を得た。
【0123】
[外添工程]
得られたトナー粒子1を100.0質量部と、ヘキサメチルジシラザンで表面処理された疎水性シリカ微粉体(一次粒子の個数平均粒径7nm)1.0質量部とをFMミキサ(日本コークス工業社製)を用いて混合し、トナー1を得た。
【0124】
[評価]
次に、得られたトナー1を用いて下記の評価を行った。
【0125】
<可視光領域における不可視性の評価>
<波長400nm以上800nm以下の範囲における光の吸収率の測定方法>
画像形成装置として、現像コントラストを自由に変更できるように改造したカラープリンター(商品名:LBP652C、キヤノン社製)を使用し、ブラック現像器内のトナーを、トナー1と入れ替えた。用紙は、A4用紙(商品名:GF-C081、キヤノンマーケテイングジャパン社)を使用し、温度25℃、相対湿度60%の環境下で、トナー1の載り量が0.30mg/cmとなるように1cm×10cmの長方形画像を形成し、サンプル画像を得た。
【0126】
上記で出力された画像を目視で確認し、不可視性を評価した。
【0127】
評価基準は以下の通りである。
A:長方形画像の判別が困難
B:長方形画像の判別がやや困難
C:長方形画像の判別が容易とも困難ともいえない
D:長方形画像の判別がやや容易
E:長方形画像の判別が容易
上記の評価基準において、A又はBであったものを、優れた不可視性を有するものと判断した。
【0128】
<近赤外領域における読み取り性の評価>
<波長900nm以上1800nm以下の範囲における光の吸収率の測定方法>
上記の不可視性の評価で用いたサンプル画像について、紫外可視近赤外分光光度計(商品名:MV-3300、日本分光社製)を使用して、波長900nm以上1800nm以下の範囲の分光分析測定を行った。該測定から得られる最大の吸収率をサンプル画像の測定値とした。ブランクとして紙単体の測定も行い、サンプル画像の測定値からブランクの測定値を差し引いた値を赤外吸収率(%)とし、この値を用いてトナー1の読み取り性を評価した。結果を表3に示す。該赤外吸収率(%)が3%以上であるものを本開示の効果が得られているものと判断した。赤外吸収率が3%の画像を、近赤外カメラ(商品名:NVU3VD、アイアールスペック社製)を用いて確認したところ、不可視画像として読み取れる程度であった。一方で、赤外吸収率が2%の画像を上記の近赤外カメラを用いて確認したところ、不可視画像として読み取れる程度を超えていたと判断した。
【0129】
<実施例2~10、12~14>
分散液の種類及び量を表2に示すように変更する以外は、実施例1と同様の操作を行って、トナー2~10、12~14を製造し、評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0130】
<実施例11>
<トナー11の製造例(重合法)>
[水系媒体の調製工程]
反応容器にイオン交換水1000.0質量部、リン酸ナトリウム・12水和物14.0質量部を投入し、窒素パージしながら65℃で1時間保温した。
【0131】
高速撹拌機「T.K.ホモミクサー」(プライミクス社製)を用いて、12000rpmにて攪拌した。そこにイオン交換水20.0質量部に9.2質量部の塩化カルシウム・2水和物を溶解した塩化カルシウム水溶液を一括投入し、微細な分散安定剤を含む水系媒体を調製した。
【0132】
[重合性単量体組成物の調製工程]
下記材料を混合し、混合物を得た。
・分散液O 2.8質量部
・分散液D 42.0質量部
・スチレン 128.9質量部
・n-ブチルアクリレート 34.0質量部
・サリチル酸アルミニウム化合物(オリエント化学工業社製 ボントロンE-88) 1.0質量部
・飽和ポリエステル2(プロピレンオキサイド変性ビスフェノールAとイソフタル酸との重縮合物、ガラス転移温度65℃、重量平均分子量10000、数平均分子量6000) 5.0質量部
・エステルワックス(DSC測定における最大吸熱ピークのピーク温度=70℃、Mn=704) 10.0質量部
・ジビニルベンゼン 0.1質量部
この混合物を65℃に保温し、T.K.ホモミクサーを用いて、500rpmにて均一に溶解、分散し、重合性単量体組成物を調製した。
【0133】
[造粒工程]
上記の分散安定剤を含む水系媒体の温度を70℃とし、T.K.ホモミクサーの回転数を12000rpmに保ちながら、水系媒体中に上記の重合性単量体組成物を投入し、重合開始剤であるt-ブチルパーオキシピバレート10.0質量部を添加した。その後、回転数12000rpmを維持しつつ、10分間造粒した。
【0134】
[重合工程]
造粒工程の後、攪拌機をプロペラ撹拌羽根に換え150rpmで攪拌しながら70℃を保持して5時間重合を行い、85℃に昇温して2時間加熱することで重合反応を完結させた。
【0135】
[洗浄、乾燥工程]
重合工程終了後、液温を室温まで冷却し、希塩酸を加えてpH1.5に調整した後、3時間撹拌した。その後、濾過、洗浄を繰り返し、トナーケーキを得た。
【0136】
得られたトナーケーキを解砕後、気流乾燥機にて乾燥を行い、さらにコアンダ効果を利用した多分割分級機を用いて微粗粉をカットして、重量平均粒径(D4)が6.3μmのトナー粒子11を得た。
【0137】
[外添工程]
得られたトナー粒子11を100.0質量部と、ヘキサメチルジシラザンで表面処理された疎水性シリカ微粉体(一次粒子の個数平均粒径7nm)1.0質量部とを高速混合機「FMミキサ」(日本コークス工業社製)を用いて混合し、トナー11を得た。
【0138】
[評価]
得られたトナー11を用いて、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0139】
<比較例1~4>
分散液の種類及び量を表2に示すように変更する以外は、実施例1と同様の操作を行って、トナー15~18を製造し、評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0140】
【表2】
【0141】
【表3】

図1