(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】サブマージアーク溶接用ボンドフラックス
(51)【国際特許分類】
B23K 35/362 20060101AFI20241007BHJP
B23K 35/30 20060101ALN20241007BHJP
C22C 38/00 20060101ALN20241007BHJP
C22C 38/44 20060101ALN20241007BHJP
【FI】
B23K35/362 310B
B23K35/362 310C
B23K35/30 320A
C22C38/00 301A
C22C38/44
(21)【出願番号】P 2021025040
(22)【出願日】2021-02-19
【審査請求日】2023-10-05
(31)【優先権主張番号】P 2020031621
(32)【優先日】2020-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】302040135
【氏名又は名称】日鉄溶接工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【氏名又は名称】安彦 元
(72)【発明者】
【氏名】横尾 友美
(72)【発明者】
【氏名】戸塚 康仁
【審査官】川口 由紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-039604(JP,A)
【文献】特開平06-328291(JP,A)
【文献】特開昭63-013694(JP,A)
【文献】特開2010-110819(JP,A)
【文献】特開2020-131221(JP,A)
【文献】特開2016-083674(JP,A)
【文献】特開2007-260696(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103934594(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0221997(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 35/362
B23K 35/30
C22C 38/00-38/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フラックス全質量に対する質量%で、
SiO
2:5~20%、
CaO:5~20%、
MgO:25~35%、
Al
2O
3:5~20%、
CaF
2:20~30%、
金属炭酸塩の1種または2種以上のCO
2換算値の合計:2.0~8.0%、
Si:0.3~1.0%、
Al:0.1~0.8%、
Na
2O及びK
2Oの1種または2種の合計:1.0~4.5%を含有し、
残部は鉄合金からのFe分及び不純物からなることを特徴とするサブマージアーク溶接用ボンドフラックス。
【請求項2】
フラックス全質量に対する質量%で、前記残部は、2.0%以下であることを特徴とする請求項1に記載のサブマージアーク溶接用ボンドフラックス。
【請求項3】
フラックス全質量に対する質量%で、
Mn:0.8%以下
をさらに含有することを特徴とする請求項1または2に記載のサブマージアーク溶接用ボンドフラックス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、780MPa級高張力鋼のサブマージアーク溶接用ボンドフラックスに関し、安定した溶接金属の低温靭性が得られ、かつ、溶接金属の拡散性水素量が低く、溶接欠陥が無く、溶接作業性が良好なサブマージアーク溶接用ボンドフラックスに関する。
【背景技術】
【0002】
サブマージアーク溶接は、高能率で良好な溶接作業性及び優れた機械性能を有する溶接金属が得られることから、造船、鉄骨、造管、橋梁、車両など幅広い分野で適用されている。
【0003】
近年、エネルギー産業の発展に伴い、鋼材の高強度化及び高靭性化、また構造物の大型化に伴う板厚の極厚化などが検討されており、品質及び生産性の面からサブマージアーク溶接の適用比率が年々増加している。このような高張力鋼のサブマージアーク溶接では、溶接施工における生産性の向上や安全性、耐久性の確保のため、更なる品質向上が求められている。その要求を満足するためには、鋼材特性に見合った溶接金属の強度及び低温靭性、低温割れ防止のために溶接金属の拡散性水素量の低減とともに、良好な溶接作業性が必要となる。高張力鋼のサブマージアーク溶接は、鋼材に見合った溶接金属の強度及び靭性を確保するため、溶接金属の化学成分を自由に調整することができるボンドフラックスが適用されており、従来から種々の技術開発が行われてきた。
【0004】
例えば、特許文献1には、焼成型フラックス組成を適正化して引張強度が780MPa以上、-80℃における吸収エネルギーが3.5kgf・m以上の優れた低温靭性を有する溶接金属が得られるサブマージアーク溶接用焼成型フラックス及びワイヤが開示されている。しかし、特許文献1に記載の焼成型フラックスでは、溶接金属の拡散性水素が高く、耐低温割れ性が不良であった。また、アーク安定剤を含有しないので、アークが不安定で、溶接作業性も不良であった。
【0005】
また、特許文献2には、焼成型フラックス組成とワイヤ組成を適正化することにより、引張強度が780MPa以上、-60℃における吸収エネルギーが69J以上の優れた低温靭性を有する溶接金属が得られるサブマージアーク溶接用焼成型フラックス及びワイヤが開示されている。しかし、特許文献2に記載の焼成型フラックスは、金属Caが添加されているので、アークが不安定でビード形状が不良であった。
【0006】
さらに、特許文献3には、ソリッドワイヤとフラックスの組合せで得られるサブマージ溶接に関し、溶接金属の成分を適正化することで溶接金属の強度と安定した靭性が得られ、溶接欠陥もなく、溶接作業性も良好なサブマージアーク溶接で多層盛溶接される溶接金属が開示されている。しかし、特許文献3に記載のフラックスは、CaF2が少ないので、安定した低温靭性が得られないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平3-52796号公報
【文献】特開2013-39604号公報
【文献】特開2007-260696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、780MPa級高張力鋼のサブマージアーク溶接を行う上において、溶接作業性が良好で、溶接金属の拡散性水素量が低く、溶接欠陥が無く、かつ、安定した低温靭性の溶接金属が得られるサブマージアーク溶接用ボンドフラックスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の要旨は、サブマージアーク溶接用ボンドフラックスにおいて、フラックス全質量に対する質量%で、SiO2:5~20%、CaO:5~20%、MgO:25~35%、Al2O3:5~20%、CaF2:20~30%、金属炭酸塩の1種または2種以上のCO2換算値の合計:2.0~8.0%、Si:0.3~1.0%、Al:0.1~0.8%、Na2O及びK2Oの1種または2種の合計:1.0~4.5%を含有し、残部は鉄合金からのFe分及び不純物からなることを特徴とする。
【0010】
また、フラックス全質量に対する質量%で、前記不純物は、2.0%以下であることを特徴とする。
【0011】
さらに、フラックス全質量に対する質量%で、成分の一部に替えてMn:0.8%以下をさらに含有することを特徴とするサブマージアーク溶接用ボンドフラックスにある。
【発明の効果】
【0012】
本発明を適用したサブマージアーク溶接用ボンドフラックスによれば、780MPa級高張力鋼のサブマージアーク溶接において、溶接作業性が良好で、溶接金属の拡散性水素量が低く、溶接欠陥が無く、かつ、安定した低温靭性の溶接金属が得られるなど、高能率で高品質な溶接金属を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明者らは、780MPa級の高張力鋼のサブマージアーク溶接を行う上で、溶接作業性が良好で、溶接金属の拡散性水素量が低く、溶接欠陥が無く、かつ、安定した低温靭性の溶接金属を得ることが可能な、サブマージアーク溶接用ボンドフラックスの成分組成について種々検討を行った。
【0014】
その結果、フラックス中のCaO、MgO、CaF2を適量含有させてスラグの塩基度を高め、かつ、脱酸元素であるSi、Alを適量添加することで溶接金属の強度及び酸素量を適正化し安定した低温靭性が得られることを見出した。また、金属炭酸塩及びNa2OとK2Oを適量化することで拡散性水素量を低減できることを見出した。
【0015】
さらに、スラグ剥離性及びビード形状にはSiO2、Al2O3の適量化、アーク安定性には、Na2OとK2O及びAl2O3を適量含有することによってこれらの溶接作業性が良好になることを見出した。
【0016】
また、Mnを適量添加することで溶接金属の引張強さをさらに向上できることも見出した。
【0017】
以下に本発明のサブマージアーク溶接用ボンドフラックス成分組成の限定理由について説明する。なお、成分については、ボンドフラックス全質量に対する質量%を示すこととし、その質量%を表わすときは単に%と記載して表すこととする。
【0018】
[SiO2:5~20%]
SiO2は、スラグ形成剤として作用し、良好なスラグ剥離性及びビード形状を得るためには重要な成分である。SiO2が5%未満では、この効果が得られずスラグ剥離性及びビード形状が不良となる。一方、SiO2が20%を超えると、溶接金属中の酸素量が増加して靭性が低下する。したがって、SiO2は5~20%とする。なお、SiO2は原料として例えば珪砂、水ガラス等を用いることができる。
【0019】
[CaO:5~20%]
CaOは、スラグの塩基度を高めて溶接金属の酸素量を低減させる効果がある。CaOが5%未満では、この効果が得られず溶接金属の靭性が低下する。一方、CaOが20%を超えると、スラグの塩基度が高くなって、アークが不安定となり、ビード形状及びスラグ剥離性が不良となる。したがって、CaOは5~20%とする。また、CaOは、CaCO3のCaO分を含む。なお、CaOは原料として例えば珪灰石等を用いることができる。
【0020】
[MgO:25~35%]
マグネシアクリンカー等を原料とするMgOは、スラグの塩基度を高めて溶接金属の酸素量を低減させる効果がある。MgOが25%未満では、この効果が得られず溶接金属の靭性が低下する。一方、MgOが35%を超えると、スラグの融点が高くなって、スラグ剥離性が不良となる。また、スラグ巻込みなどの溶接欠陥が発生しやすくなる。したがって、MgOは25~35%とする。また、MgOは、MgCO3のMgO分を含む。なお、MgOは原料として例えばマグネシアクリンカー等を用いることができる。
【0021】
[Al2O3:5~20%]
Al2O3は、スラグ形成剤として作用し、良好なスラグ剥離性及びビード形状を得るためには重要な成分である。またAl2O3は、アーク安定性を高める効果もある。Al2O3が5%未満では、アークが不安定となり、スラグ剥離性及びビード形状が不良となる。このような溶接作業性の観点から、Al2O3は、5%以上の添加が必要であり、より好ましくは8%以上の添加が望ましい。一方、Al2O3が20%を超えると、スラグの融点が高くなりスラグ剥離性が不良となる。またAl2O3が20%を超えると、スラグ巻込み等の溶接欠陥が発生しやすくなる。このため、Al2O3は20%以下である必要があり、より好ましくは18%以下が望ましい。したがって、Al2O3は5~20%とする。なお、Al2O3は原料として例えばアルミナ等を用いることができる。
【0022】
[CaF2:20~30%]
CaF2は、スラグの塩基度を高めて溶接金属の酸素量を低減させる効果があるが、融点が低いため過多になるとポックマークが発生しやすくなる。CaF2が20%未満では、この効果が得られず溶接金属の靭性が低下する。一方、CaF2が30%を超えると、アークが不安定となりビード形状及びスラグ剥離性が不良となる。またCaF2が30%を超えると、ポックマークが発生しやすくなる。したがって、CaF2は20~30%とする。なお、CaF2は原料として例えば蛍石等を用いることができる。
【0023】
[金属炭酸塩の1種または2種以上のCO2換算値の合計:2.0~8.0%]
金属炭酸塩は、溶接中に分解して発生するCOまたはCO2ガスがアーク雰囲気中の水蒸気分圧を下げ、溶接金属の拡散性水素量を低下させる効果がある。金属炭酸塩の1種または2種以上のCO2換算値の合計が2.0%未満では、溶接金属の拡散性水素量が高くなって低温割れ感受性が高くなる。一方、金属炭酸塩の1種または2種以上のCO2換算値の合計が、8.0%を超えると、溶接金属の酸素量が高くなり靭性が劣化する。また金属炭酸塩の1種または2種以上のCO2換算値の合計が、8.0%を超えると、ビード表面にポックマークが発生しやすくなる。したがって、金属炭酸塩の1種または2種以上のCO2換算の合計は2.0~8.0%とする。なお、金属炭酸塩は例えばCaCO3、MgCO3及びLi2CO3等を用いることができ、CO2換算値はそれらに含有されるCO2量の合計である。
【0024】
[Si:0.3~1.0%]
Siは、脱酸元素であり溶接金属の酸素量を低減する。Siが0.3%未満では、脱酸効果が得られず溶接金属の強度及び靭性が低下する。一方、Siが1.0%を超えると、溶接金属中に過剰に歩留り靭性が劣化する。したがって、Siは0.3~1.0%とする。なお、Siは原料として例えば金属Si、Fe-Si及びFe-Si-Mn等を用いることができる。
【0025】
[Al:0.1~0.8%]
Alは、Siと同様に脱酸剤として作用して溶接金属の酸素量を低減する。Alが0.1%未満であると、脱酸効果が得られず溶接金属の強度及び靭性が低下する。一方、Alが0.8%を超えると、溶接金属中に過剰に歩留り靭性が劣化する。したがって、Alは0.1~0.8%とする。なお、Alは原料として例えば金属Al、Fe-Al等を用いることができる。
【0026】
[Na2O及びK2Oの1種または2種の合計:1.0~4.5%]
Na2O及びK2Oは、アークを安定にする効果がある。Na2O及びK2Oの1種または2種の合計が1.0%未満であると、アークが不安定になる。一方、Na2O及びK2Oの1種または2種の合計が4.5%を超えると、アンダーカットが生じやすくなり、ビード形状が不良となる。またNa2O及びK2Oの1種または2種の合計が4.5%を超えると、溶接金属の拡散性水素量も高くなる。したがって、Na2O及びK2Oの1種または2種の合計は1.0~4.5%とする。なお、Na2O及びK2Oは主原料として例えば水ガラス(珪酸ソーダ、珪酸カリウム)を用いることができる。
【0027】
[Mn:0.8%以下]
金属Mn、Fe-Mn及びFe-Si-Mn等を原料とするMnは、添加しなくても良い。添加する場合は溶接金属の強度を向上させる効果があるので求められる強度に応じて添加すれば良い。この効果を発現するために、Mnは0.2%以上添加することが好ましい。一方、Mnが0.8%を超えると、溶接金属の強度が過剰に高くなり靭性が低下する。したがって、Mnは0.8%以下とする。なお、Mnは原料として例えば金属Mn、Fe-Mn及びFe-Si-Mn等を用いることができる。
【0028】
ボンドフラックスの上記成分以外の残部は、Fe-Si、Fe-Al、Fe-Mn、Fe-Si-Mn等の鉄合金からのFe分及び不純物である。残部は、強度が高いほど総量は低い方が望ましく、2.0%以下で調整することが望ましい。
【0029】
不純物は、MnO、FeO、B2O3、C、P、S等である。そのなかでもP及びSは共に低融点の化合物を生成して溶接金属の靭性を低下させるので、できる限り低いことが好ましい。
【実施例】
【0030】
以下、実施例により本発明の効果をさらに詳細に説明する。
【0031】
表1に示す各種成分のボンドフラックスを試作し、表2に示す3種のソリッドワイヤを組み合せ、表3に示す化学成分からなる板厚25mmの780MPa級鋼板を開先角度30°、ルート間隔13mmの開先形状に加工し、裏当金を当てて表4に示す溶接条件で多層盛溶接試験を実施した。また、表1のボンドフラックスと表2に示すソリッドワイヤを組み合せで溶接金属の拡散性水素量についても測定した。
【0032】
なお、表1に示すボンドフラックスは各種鉱物原材料を配合、混合した後、水ガラスを固着剤として造粒した後、450~500℃で2時間焼成して0.15×1.4mmに整粒した。また、表2に示すソリッドワイヤは、原線を縮径、焼鈍、めっきして素線とし、それらの素線を4.0mmまで伸線して用いた。
【0033】
【0034】
【0035】
【0036】
【0037】
溶接金属の機械的性能評価は、AWS.5.23に準拠した引張試験片及び衝撃試験片を採取して機械試験を実施した。引張試験の評価は、引張強さが760~860MPaを良好とした。衝撃試験の評価は、-40℃におけるシャルピー衝撃試験を行い、繰返し3本の吸収エネルギーの平均が80J以上を良好とした。溶接金属の拡散性水素量の測定は、JIS Z3118に準じて行った。溶接金属の拡散性水素量は5ml/100g以下を良好とした。溶接作業性は、初層を除く多層盛溶接時のアークの安定性、スラグ剥離性及びビード外観・形状を調べた後、X線透過試験により溶接欠陥の有無を調査した。これらの調査結果を表5にまとめて示す。
【0038】
アーク安定性は、溶接時の溶接電圧変動が±5V以内であれば良好とした。
【0039】
スラグ剥離性は、溶接後のスラグは自然剥離するため刷毛でスラグを除去し、目視で確認できる残存スラグの面積を推定し、スラグ剥離率98%以上を良好とした。
【0040】
ビード外観・形状のビード形状は、溶接ビード健全部から10ヵ所ビード幅を測定し、最小値と最大値の差が8mm以内を良好とした。ビード外観は、部分的な変色がなく均一に揃っているものを良好とした。
【0041】
X線透過試験では、JIS Z 3104:1995に示す鋼溶接継手の放射線透過試験法に基づいて試験を行い、一つも疵が発生しない場合に、無欠陥とした。
【0042】
【0043】
表1及び表5中フラックス記号F1~F12、F14~F15、F26~F35が本発明例、フラックス記号F16~F20、F36~F45は比較例である。本発明例であるフラックス記号F1~F12、F14~F15、F26~F35は、フラックスのSiO2、CaO、MgO、Al2O3、CaF2、金属炭酸塩の1種または2種以上のCO2換算値の合計、Si、Al、Na2O及びK2Oの1種または2種の合計が適量であるので、溶接金属の良好な引張強さ及び吸収エネルギーが得られ、溶接金属の拡散性水素量も低く、アークが安定でスラグ剥離性及びビード外観・形状が良好で極めて満足な結果であった。
【0044】
なお、フラックス記号F26、F29、F35は、残部が多いので溶接金属の吸収エネルギーがやや低い傾向を示したが目標範囲内であった。また、フラックス記号F3、F6、F10、F12、F26、F28、F30、F33及びF35は、Mnが適量添加されているので、引張強さは810MPa以上が得られた。
【0045】
比較例中フラックス記号F36は、Al2O3が少ないので、アークが不安定で、スラグ剥離性及びビード形状が不良であった。また、Mnが多いので、溶接金属の引張強さが高く、吸収エネルギーが低値であった。
【0046】
フラックス記号F37は、Al2O3が多いので、スラグ剥離性が不良で、溶接金属中にスラグ巻込みが発生した。また、Siが少ないので、溶接金属の引張強さが低く、吸収エネルギーが低値であった。
【0047】
フラックス記号F38は、MgOが少ないので、溶接金属の吸収エネルギーが低値であった。また、金属炭酸塩の1種または2種以上のCO2換算値の合計が少ないので、溶接金属の拡散性水素量が高かった。
【0048】
フラックス記号F39は、MgOが多いので、スラグ剥離性が不良で、溶接金属中にスラグ巻込みが発生した。また、Siが多いので、溶接金属の吸収エネルギーが低値であった。
【0049】
フラックス記号F40は、CaF2が少ないので、溶接金属の吸収エネルギーが低値であった。また、Na2O及びK2Oの1種または2種の合計が多いので、ビード形状が不良で、アンダーカットも発生し、溶接金属の拡散性水素量も高かった。
【0050】
フラックス記号F41は、SiO2が少ないので、スラグ剥離性及びビード形状が不良であった。また、Alが少ないので、溶接金属の引張強さが低く、吸収エネルギーが低値であった。
【0051】
フラックス記号F42は、SiO2が多いので、溶接金属の吸収エネルギーが低値であった。また、CaF2が多いので、アークが不安定で、スラグ剥離性及びビード形状が不良となり、ポックマークも発生した。
【0052】
フラックス記号F43は、CaOが多いので、アークが不安定で、スラグ剥離性及びビード形状が不良であった。また、Alが多いので、溶接金属の吸収エネルギーが低値であった。
【0053】
フラックス記号F44は、CaOが少ないので、溶接金属の吸収エネルギーが低値であった。また、Na2O及びK2Oの1種または2種の合計が少ないので、アークが不安定であった。
【0054】
フラックス記号45は、金属炭酸塩の1種または2種以上のCO2換算値の合計が多いので、溶接金属の吸収エネルギーが低値であった。また、ビード形状が不良で、ポックマークも発生した。
【0055】
比較例中フラックス記号F16は、Alが多いので、溶接金属の吸収エネルギーが低値であった。
【0056】
フラックス記号F17は、SiO2が多いので、溶接金属の吸収エネルギーが低値であった。また、CaOが多いので、アークが不安定で、スラグ剥離性及びビード形状が不良であった。
【0057】
フラックス記号F18は、CaOが少ないので、溶接金属の吸収エネルギーが低値であった。また、CaF2が多いので、アークが不安定で、スラグ剥離性及びビード形状が不良となり、ポックマークも発生した。
【0058】
フラックス記号F19は、MgOが少ないので、溶接金属の吸収エネルギーが低値であった。また、Al2O3が多いので、スラグ剥離性が不良で、溶接金属中にスラグ巻込みが発生した。
【0059】
フラックス記号F20は、MgOが多いので、スラグ剥離性が不良で、溶接金属中にスラグ巻込みが発生した。また、金属炭酸塩の1種または2種以上のCO2換算値の合計が多いので、溶接金属の吸収エネルギーが低値であり、ポックマークも発生した。