IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キヤノン株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-装置、方法及び物品の製造方法 図1
  • 特許-装置、方法及び物品の製造方法 図2
  • 特許-装置、方法及び物品の製造方法 図3
  • 特許-装置、方法及び物品の製造方法 図4
  • 特許-装置、方法及び物品の製造方法 図5
  • 特許-装置、方法及び物品の製造方法 図6
  • 特許-装置、方法及び物品の製造方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】装置、方法及び物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20241007BHJP
   B29C 59/02 20060101ALI20241007BHJP
【FI】
H01L21/30 502D
B29C59/02 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021033663
(22)【出願日】2021-03-03
(65)【公開番号】P2022134513
(43)【公開日】2022-09-15
【審査請求日】2023-12-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【弁理士】
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】小御門 哲也
(72)【発明者】
【氏名】服部 正
【審査官】右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-201078(JP,A)
【文献】特開2008-279772(JP,A)
【文献】特開2020-72241(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
B29C 59/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
型と基板上の硬化性組成物とを接触させたのちに離型させて、基板上の硬化性組成物を硬化させる装置であって、
前記型を保持する型保持部と、
前記基板を保持する基板保持部と、
前記型保持部と前記基板保持部との少なくとも一方を駆動させ、前記型保持部で保持される型と前記基板保持部で保持される基板との相対距離を調整する駆動部と、
前記型保持部および前記基板保持部の少なくとも一方で、デチャック状態が生じた際に、当該デチャック状態が復旧可能であるかを判断し、前記復旧可能であると判断された際に、前記デチャック状態を復旧するように前記駆動部による前記相対距離の調整を含む自動復旧処理が行われるように制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、前記自動復旧処理中に異常が発生したと判断した場合に、前記自動復旧処理を停止する、
ことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記デチャック状態を復旧させる処理として、前記型保持部で保持される型と、前記基板保持部で保持される基板との相対距離が近づくように、前記駆動部を制御し、
前記自動復旧処理中に異常が発生したと判断した場合に、前記駆動部による駆動を停止させることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記自動復旧処理中に、前記基板が破損すると判断される状態が生じた場合に、異常が発生したと判断し、前記自動復旧処理を停止することを特徴とする請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記復旧処理中の、前記基板に加わる力、前記基板の傾き、前記基板保持部による前記基板の保持状態、前記型保持部による前記型の保持状態の少なくとも1つの情報を取得し、当該取得された情報に基づいて、前記異常が発生したと判断することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記型は、基板の複数のショット領域に順次、硬化性組成物を介した押型処理、当該硬化性組成物の硬化処理、前記型と前記基板との離型処理を行うことで、前記基板上に硬化性組成物を硬化させることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記基板保持部でのみデチャック状態が生じた際に、当該デチャック状態が復旧可能であると判断することを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記自動復旧処理として、
前記型と前記基板上の前記硬化性組成物とが接触する状態となるまで、前記駆動部により駆動させたのちに、
前記基板と前記型が離型するように、前記駆動部により駆動させる、
ことを特徴とする請求項2乃至6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
型と基板上の硬化性組成物とを接触させたのちに離型させて、基板上の硬化性組成物を硬化させる方法であって、
前記型を保持する型保持部および前記基板を保持する基板保持部の少なくとも一方で、デチャック状態が生じた際に、当該デチャック状態が復旧可能であるかを判断する判断工程と、
前記復旧可能であると判断された際に、前記型保持部と前記基板保持部との少なくとも一方を駆動させ、前記型保持部で保持される型と前記基板保持部で保持される基板との相対距離の調整を含む自動復旧処理工程とを有し、
前記自動復旧処理工程では、当該自動復旧処理中に異常が発生したと判断された場合には、前記自動復旧処理を停止することを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の装置を用いて基板上の硬化性組成物を硬化させる工程と、
前記工程で硬化された組成物が設けられた前記基板を加工する工程と、を含み、
加工された前記基板から物品を製造することを特徴とする物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装置、方法及び物品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスやMEMSなどの微細化の要求が進み、従来のフォトリソグラフィー技術に加えて、基板上に数ナノメートルオーダーの微細なパターン(構造体)を形成することができるインプリント技術が注目されている。インプリント技術は、基板上に未硬化のインプリント材を供給(塗布)し、かかるインプリント材とモールド(型)とを接触させて、モールドに形成された微細な凹凸パターンに対応するインプリント材のパターンを基板上に形成する微細加工技術である。
【0003】
インプリント技術において、インプリント材の硬化法の1つとして光硬化法がある。光硬化法は、基板上のショット領域に供給されたインプリント材とモールドとを接触させた状態で光を照射してインプリント材を硬化させ、硬化したインプリント材からモールドを引き離すことでインプリント材のパターンを基板上に形成する方法である。
【0004】
このようなインプリント技術で使うモールドは、モールド保持部のモールドチャックによる吸着圧によって吸着保持されており、基板は基板ステージの基板チャックによる吸着圧によって吸着保持されていることが一般的である。
【0005】
インプリント技術を採用したインプリント装置では、基板上の硬化したインプリント材からモールドを引き離す(離型する)際に、モールドとインプリント材との界面(モールドとインプリント材とが接触している面)に大きな応力が瞬間的に付加される。このような応力の強さによっては、インプリント材からモールドを正常に引き離すことができず、モールドや基板をそれぞれの保持部(チャック)で保持することができなくなり、モールドや基板が保持部から脱離してしまう可能性がある。
【0006】
モールドや基板が保持部から脱離した状態には、(1)モールドがモールドチャックに正しく吸着していない状態、(2)基板が基板チャックに正しく吸着していない状態が存在する(これらを総称してデチャック状態と呼ぶ)。このデチャック状態が生じると、インプリント処理を継続することができないため、インプリント時にデチャック状態が発生したかどうかを検知する方法が提案されています。
【0007】
そして特許文献1には、インプリント時にデチャック状態となったことを検知した場合に、いずれのマテリアル(基板もしくは型)においてデチャックが生じているかに応じて、デチャック状態を自動復旧処理により復旧可能か判断することが開示されています。具体的には、例えばデチャックしたマテリアルが基板である場合に、基板の全面が基板チャックの領域内に入るように、基板ステージを移動させる。そして基板が基板チャックの領域内に入ったことが確認された後に、インプリントヘッドをあらかじめ設定された接触位置まで下げて吸着させ、インプリントヘッドを少しずつ離型するように上昇させ、復旧処理を行うことが開示されています。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2019-201078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら特許文献1の方法では、基板の全面を基板チャックの領域内に入れてからインプリントヘッドを下げているが、何らかの原因により、下降中に基板が基板チャックの領域内から外れることも考えられる。また、高速化のために基板が基板チャックの領域内に入ったことを確認することを省略することも考えられる。
【0010】
このような状態で復旧のためにインプリントヘッドを下降させると、基板が基板チャックの領域外にある部材とぶつかり、破損してしまうことが懸念される。
【0011】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、型と基板との離型動作中にデチャックが発生して復旧処理を行う際に、基板もしくは型が破損してしまうことを回避することができる装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の装置は、型と基板上の硬化性組成物とを接触させたのちに離型させて、基板上の硬化性組成物を硬化させる装置であって、前記型を保持する型保持部と、前記基板を保持する基板保持部と、前記型保持部と前記基板保持部との少なくとも一方を駆動させ、前記型保持部で保持される型と前記基板保持部で保持される基板との相対距離を調整する駆動部と、前記型保持部および前記基板保持部の少なくとも一方で、デチャック状態が生じた際に、当該デチャック状態が復旧可能であるかを判断し、前記復旧可能であると判断された際に、前記デチャック状態を復旧するように前記駆動部による前記相対距離の調整を含む自動復旧処理が行われるように制御する制御部と、を有し、前記制御部は、前記自動復旧処理中に異常が発生したと判断した場合に、前記自動復旧処理を停止する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、型と基板との離型動作中にデチャックが発生して復旧処理を行う際に、基板もしくは型が破損してしまうことを回避するのに有利な構成を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】インプリント装置の構成を示す概略図である。
図2】インプリント処理の全体の流れを示すフローチャートである。
図3】自動復旧処理の流れを示すフローチャートである。
図4】基板外周部のインプリント処理を行っている際の自動復旧の様子を示す図である。
図5】基板中央部のインプリント処理を行っている際の自動復旧の様子を示す図である。
図6】自動復旧処理中に異常が発生している様子を示す図である。
図7】物品の製造方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施の形態について説明する。なお、各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0016】
図1は、本発明の一側面としての装置1の構成を示す概略図である。装置1は、型を硬化性組成物に接触させた状態で硬化性組成物を硬化することで、基板上に硬化性組成物の硬化物を設けるリソグラフィ装置である。本実施形態では、基板上に供給されたインプリント材(硬化性組成物)とパターンを有する型とを接触させ、インプリント材に硬化用のエネルギーを与えることにより、型の凹凸パターンが転写された硬化物のパターンを形成するインプリント装置を例に説明を行う。なお本実施形態は、パターンを有しない部材(型)を硬化性組成物に接触させた状態で硬化させることにより、基板上に硬化性組成物の硬化物による平坦化層を設ける平坦化装置に適用することも可能である。
【0017】
インプリント材料としては、硬化用のエネルギーが与えられることによって硬化する硬化性組成物(未硬化状態の樹脂と呼ぶこともある)が用いられる。硬化用のエネルギーとしては、電磁波、熱などが用いられる。電磁波としては、例えば、その波長が10nm以上1mm以下の範囲から選択される、赤外線、可視光線、紫外線などの光を用いる。
【0018】
硬化性組成物は、光の照射によって、或いは、加熱によって硬化する組成物である。光の照射によって硬化する光硬化性組成物は、重合性化合物と光重合開始剤とを少なくとも含有し、必要に応じて、非重合性化合物又は溶剤を含有してもよい。非重合性化合物は、増感剤、水素供与体、内添型離型剤、界面活性剤、酸化防止剤、ポリマー成分などの群から選択される少なくとも一種である。
【0019】
インプリント材は、スピンコーターやスリットコーターによって基板上に膜状に付与されてもよい。また、インプリント材は、液体噴射ヘッドによって、液滴状、或いは、複数の液滴が繋がって形成された島状又は膜状で基板上に付与されてもよい。インプリント材の粘度(25℃における粘度)は、例えば、1mPa・s以上100mPa・s以下である。
【0020】
インプリント装置1は、型3を保持して移動するインプリントヘッド6と、基板5を保持して移動する基板ステージ7と、硬化部2と、供給部8と、アライメント計測部17と、検出部14と、制御部9とを備える。なお、図1においては、基板の表面に平行な方向をXY平面とするXYZ座標系において方向を示す。XYZ座標系におけるX軸、Y軸、Z軸にそれぞれ平行な方向をX方向、Y方向、Z方向とし、X軸周りの回転、Y軸周りの回転、Z軸周りの回転をそれぞれθX、θY、θZとする。
【0021】
型3は、外周部が矩形で、基板5に対する対向面の中央部に、数十μm~数百μmの凸部に形成されたメサ4を有する。メサ4は、基板上に供給されたインプリント材に転写するための凹凸パターンが3次元状に形成されたパターン部を有する。型3のパターン部は、基板5上へ塗布されたインプリント材に転写される。型3の材質には、例えば、石英などの紫外線を透過させる素材が用いられる。型3は、インプリントヘッド6によって、保持され移動する。
【0022】
インプリントヘッド6は、型チャック10と、型保持力計測部15と、を備える。インプリントヘッド6は、例えば、リニアモータ、エアシリンダなどのアクチュエータなどによってZ方向に駆動可能である。インプリントヘッド6は、複数の軸(例えば、Z軸、θX軸、θY軸の3軸)について駆動するように構成されていても良い。また、インプリントヘッド6は、型3の高精度な位置決めを実現するために、粗動駆動系や微動駆動系など複数の駆動系を含んでいてもよい。また、インプリントヘッド6は、Z方向だけではなく、X方向、Y方向、θZ方向に型3を駆動する機能や型3の傾きを補正する機能を有していてもよい。インプリントヘッド6は、型3の周囲に配置された加圧フィンガ11などを用いて、基板5のショット領域の形状に応じて型3のパターン部の形状を補正することも可能である。加圧フィンガ11は、型3の側面に接触する接触部材である。型チャック10は、真空吸引力または静電力などによって型3を保持する型保持部である。型チャック10は、インプリントヘッド6に載置される。型保持力計測部15は、例えば、型チャック10の吸着圧や電流値を計測することにより、型チャック10による型3の保持力を計測する。型保持力計測部15は、型3の現在位置を検出し、型チャック10における型3のデチャック状態(脱離)が発生したことを検出する検出部としても機能しうる。
【0023】
基板5は、ガラス、セラミックス、金属、半導体または樹脂等で構成される部材でありうる。必要に応じて、該部材の表面に該部材とは別の材料からなる層が形成されていてもよい。基板5は、例えば、シリコンウエハ、化合物半導体ウエハ、または、石英ガラスプレートなどである。基板5は、基板ステージ7によって、保持され移動する。
【0024】
基板ステージ7は、基板チャック12と、基板保持力計測部16とを備える。基板ステージ7は、エアガイド19および駆動機構(不図示)有する。エアガイド19は、ベース定盤18の基板ステージ7と対向する面に対して気体を噴出させて基板ステージ7とベース定盤18との間に間隔を形成して基板ステージ7を支持する。駆動機構は、例えば、リニアモータ、エアシリンダなどのアクチュエータなどであって、基板ステージ7を、X軸方向及びY軸方向に駆動させる。駆動機構は、複数の軸(例えば、X軸、Y軸、θZ軸の3軸、好ましくは、X軸、Y軸、Z軸、θX軸、θY軸、θZ軸の6軸)について基板ステージ7を駆動するように構成されても良い。また、基板ステージ7は、粗動駆動系や微動駆動系など複数の駆動系を含んでいても良い。基板ステージ7は、Z軸方向やθ(Z軸周りの回転)方向に基板5を駆動する機能や基板5の傾きを補正する機能を有していてもよい。
【0025】
基板チャック12は、真空吸引力または静電力などによって基板5を保持する基板保持部である。基板チャック12は、基板ステージ7に載置される。基板チャック12の外周には、基板5を取り囲む保護板(同面板13)が配置される。同面板13は、基板5を基板チャック12に保持させる際の基板5の位置ずれを低減させるために、基板ステージ7に配置されている。基板チャック12が基板5を保持した際、同面板13と基板5は同等の高さとなる。基板保持力計測部16は、例えば、基板チャック12の吸着圧や電力値を計測することにより、基板チャック12による基板5の保持力を計測する。基板保持力計測部16は、基板5の現在位置を検出し、基板チャック12における基板5のデチャック状態(脱離)が発生したことを検出する検出部としても機能しうる。
【0026】
硬化部2は、基板5上のインプリント材を硬化させるためのエネルギー(例えば、紫外光などの光)をインプリント材に供給する。硬化部2により供給されたエネルギーにより、型3を離型した後の基板5上のインプリント材には、型3の凹凸のパターンに倣ったパターンが形成される。
【0027】
供給部8は、基板上にインプリント材を供給(塗布)する。アライメント計測部17は、例えば、基板上のインプリント材を硬化させない波長の光を発するHe-Neレーザなどの計測光源と、CCDイメージセンサなどの検出器とを含みうる。アライメント計測部17は、型3と基板5との位置合わせに用いられる。アライメント計測部17は、型3および基板5の現在位置を検出し、型チャック10または基板チャック12における型3または基板5の脱離の発生を検出する検出部として用いられても良い。検出部14は、型3および基板5の現在位置を検出し、型チャック10または基板チャック12における型3または基板5の脱離の発生を検出する検出部である。検出部14は、例えば、型チャック10または基板チャック12における保持力を計測する計測器であっても良いし、型チャック10または基板チャック12における保持状態を観察するスコープであっても良い。さらに、検出部14は、型3または基板5の位置を検出するレーザ干渉計などのセンサであっても良い。
【0028】
制御部9は、CPUやメモリなどを含み、インプリント装置1の各部を制御してインプリント処理を行う。インプリント処理は、供給処理と、押型処理と、硬化処理と、離型処理とを含む。押印処理は、型と基板上のインプリント材とを接触させる処理である。型と基板上のインプリント材とを接触させる、即ち、型をインプリント材に押し付けることによって、インプリント材が型のパターン領域(パターンの凹部)に充填される。硬化処理は、型と基板上のインプリント材とを接触させた状態でインプリント材を硬化させる処理である。離型処理は、基板上の硬化したインプリント材から型を引き離す処理である。なお、接触工程及び離型工程は、インプリントヘッド6および基板ステージ7の少なくとも一方を駆動部として機能し、当該駆動部が、制御部9によって、型と基板との間の相対距離を調整するように制御される。
【0029】
また、制御部9は、型チャック10または基板チャック12において、保持動作の異常が発生した場合の、自動復旧の可否判断、自動復旧処理、復旧制御の停止処理等も制御する。
【0030】
図2は、本実施形態に係る、インプリント処理のフローチャートである。本フローチャートにおける各ステップは、制御部9によって各部を制御することで実行される。以下の説明では、基板の複数のショット領域にインプリント材を塗布し、順次インプリント処理を行う例を用いて説明を行うが、基板と型を略同一のサイズに設け、全面を一括してインプリント処理を行ってもよい。また、型上にインプリント材を設け、インプリント処理を行ってもよい。
【0031】
ステップS201では、不図示の基板搬送ユニットによって、基板5がインプリント装置1内へ搬入され、基板ステージ7に保持される。ステップS202では、制御部9は、所定のショットにインプリント材が供給されるように基板ステージ7を移動させる。ステップS203では、制御部9は、供給部8に基板5上に形成されたショット領域にインプリント材を供給させる。ステップS204では、制御部9は、型3の直下にインプリント材が供給されたショット領域が位置するように基板ステージ7を移動させる。
【0032】
ステップS205では、制御部9は、型3と基板上のインプリント材とを接触させる(押型)。型3と基板上のインプリント材とを接触させる、即ち、型3をインプリント材に押し付けることによって、インプリント材が型3のパターン部に充填される。ステップS206では、制御部9は、硬化部2に型3と基板上のインプリント材とを接触させた状態でインプリント材を硬化させる。ステップS207では、制御部9は、基板上の硬化したインプリント材から型3を引き離す(離型)。なお、押型および離型は、インプリントヘッド6または基板ステージ7のいずれを駆動してもよく、両方を駆動してもよい。ここで、離型を開始すると、型チャック10および基板チャック12において保持動作の異常が発生していないか検出部による監視(異常発生監視)も開始する。例えば、検出部として機能する型保持力計測部15および基板保持力計測部16は、型3および基板5が真空吸着により保持されている場合、型チャック10および基板チャック12の吸着圧を計測する。これより、型チャック10および基板チャック12における吸着状態を監視することができる。すなわち基板チャック12における基板5のデチャック状態(脱離)が発生したことや、型チャック10における型3のデチャック状態(脱離)が検出されると保持状態が異常であると判断される。
【0033】
検出部によって型3または基板5の保持状態が異常であることが検出されると、ステップS209において、制御部9は、自動復旧処理の可否判断を行う。
【0034】
なお、自動復旧可能か否かは、デチャック状態となった基板5の位置や型3の位置、型3と加圧フィンガ11との相対位置を考慮して判断でき、これらの情報から自動復旧処理により基板5や型3が破損しないと判断できる際に自動復旧可能と判断される。
【0035】
自動復旧可能な異常であると判断された場合には、S210に進み、後述する自動復旧処理を実行し、自動復旧可能な異常ではないと判断された場合には、エラー状態であるとして処理を終了する。なお、この際に、装置オペレーションを停止、メンテナンスが行われるようにユーザに通知されることが好ましい。
【0036】
S210で自動復旧処理が行われた後、S211では、復旧が正常に完了したか否かを判断する。復旧したと判断される場合には、S212へ進み、復旧しなかった場合には、エラー状態であるとして処理を終了する。
【0037】
S212では、基板の複数のショット領域の全ショット領域に対してインプリント処理が完了しているかを判断し、処理が完了していない場合にはS202に戻り処理を継続する。一方、S212で全ショット領域に対するインプリント処理が完了していると判断された場合には、S213に進み、制御部9は、基板搬送ユニットを制御して基板ステージ7から基板5を搬出させる。
【0038】
図3に、S210で行われる自動復旧処理のサブフローを示す。本フローチャートにおける各ステップは、制御部9によって各部を制御することで実行される。なおここでは、型チャック10および基板チャック12は、真空吸着により、型3および基板5を保持する例を用いて説明する。また、以下の説明では、基板がデチャック状態となった場合の自動復旧処理を例に説明を行うが、型がデチャック状態となった場合にも同様に判断される。
【0039】
ステップS301では、制御部9は、インプリントヘッド6を少しずつ基板チャック12の方向(-Z方向)に少しずつ下降させること開始する。すなわち、デチャック状態を復旧する処理として、型保持部で保持される型と基板保持部で保持される基板との相対距離が近づく移動が開始する。
【0040】
ステップS302では、制御部9は、基板5の状態および型3の状態を取得する。基板の状態として、基板の位置(高さ)、基板の傾き、基板に加わる力、基板チャックでの基板吸着圧を取得する。基板に加わる力としては、力センサの値や、インプリントヘッド6を下降させるときの駆動電流値を用いる。また、型3の状態も、型の位置、型の傾き、型に加わる力、型チャックでの型吸着圧を取得することができる。
【0041】
ステップS303では、制御部9は、基板の傾きが、予め設定されている許容範囲を逸脱したかどうかで異常が生じたかを判断する。S303で逸脱していると判断された場合、基板破損の危険があると判断し、ステップ307で、自動復旧処理を停止(中断)する。すなわち、インプリントヘッド6の下降を停止する。S303で逸脱していないと判断された場合、ステップS304に進む。
【0042】
ステップS304では、制御部9は、例えば(1)乃至(3)のケースの少なくとも1つに該当する場合に異常であると判断する。(1)基板に加わる力が予め設定されている許容範囲を逸脱した場合、(2)基板に加わる力が検出されたが基板チャックにおける基板の吸着圧が検出されない場合、(3)前記基板チャックにおける基板の吸着圧が検出されたが基板に加わる力が検出されない場合。
【0043】
ステップS304で異常があると判断された場合には、基板破損の可能性があると判断し、ステップS307で、自動復旧処理を停止(中断)する。すなわち、インプリントヘッド6の下降を停止する。また、異常がないと判断された場合には、ステップS305に進む。
【0044】
ステップS305では、制御部9は、接触位置で異常があるか否かを判断する。具体的には、S301のインプリントヘッド6の下降開始以後に、基板に加わる力または基板チャックの基板吸着圧が最初に変化した際の基板の位置(高さ)を接触位置として認識する。そして、基板が基板チャックと接触すると推測される位置と、認識された接触位置とを比較して判断する。基板が基板チャックと接触されると推測される位置よりも高い場合には、基板が基板チャック12を取り囲む保護板(同面板13)と接触した可能性があり、基板破損の危険があると判断し、ステップ307で、自動復旧処理を停止(中断)する。すなわち、インプリントヘッド6の下降を停止する。また、異常がないと判断された場合には、ステップS306に進む。
【0045】
図4は、基板外周部のインプリント処理を行っている際の自動復旧の様子を示す図である。図4(A)は、基板5が基板チャックから脱離した状態の一例を示している。この場合、型が基板に付着している位置が、基板外周に近い為、基板の端で、型が基板を保持するような状況なる。これにより、図4(B)で示すように、基板は自重により歪む可能性が高い。このような歪みにより、インプリントヘッド6を下降させていくと図4(C)で示すように、前述の接触位置が想定以上に変化することになる。この現象や、基板の反り等の歪みを考慮し、基板が基板チャックと接触すると推測される位置(高さ)を定める必要がある。
【0046】
また、インプリントヘッド6が接触推定位置に達したにも関わらず、基板に加わる力、又は基板チャックにおける基板の吸着圧を検知しない場合にも、基板破損の危険があると判断し、自動復旧処理を停止させる処理をさらに入れてもよい。
【0047】
なお、基板が基板チャックと接触すると推定される位置よりも低い位置にインプリントヘッド6を下降させると、基板破損の可能性がある。そのためインプリントヘッド6は、基板が基板チャックと接触すると推定される位置から必要以上に下降されることがないように制御されることも必要である。また、図3に示すフローチャートでは、S303,304,305の処理をこの順で行う例を用いて説明を行ったが、処理の順番はこれ以外でもかまわない。
【0048】
ステップS306では、制御部9は、自動復旧処理が正常に完了したかを判断する。具体的には、基板チャック12での基板の吸着圧を確認し、基板5が基板チャック12に正しく吸着されているかどうかを確認する。そして基板5が基板チャック12に正しく吸着されていると確認された後に、インプリントヘッド6を予め設定された接触位置まで下げる。正しく吸着されている吸着圧となっていても、接触位置(押型位置)まで下降させずにインプリントヘッド6を離型させる方向(+Z方向)に駆動してしまうと、吸着圧の不足により再び保持動作の異常が発生する恐れがあるためである。さらに、接触位置まで下降させた後、インプリントヘッド6を少しずつ離型させる方向(+Z方向)に引き上げる。型チャック10と基板チャック12の吸着圧を確認する。以上のような処理を行うことで、自動復旧処理が正常に完了したかを判断し、正常に完了したと判断される場合には、S211へと進む。一方、自動復旧処理が正常に完了しなかった場合には、S302に戻り再度復旧処理を行ってもよいし、エラー状態であるとして処理を終了し、S211へと進んでもよい。
【0049】
図5は、基板中央部のインプリント処理を行っている際の自動復旧の様子を示す図である。図5(A)は、基板5が基板チャックから脱離した状態の一例を示している。この状態において、図3で示したフローチャートに沿って自動復旧処理を行うと、図5(B)で示す状態を経て、図5(C)で示す状態となり、自動復旧が完了する。
【0050】
図6は、自動復旧処理中に異常が発生している様子、すなわち自動復旧処理が停止される状態を説明する図である。図6(A)は、基板5が基板チャックから脱離した状態の一例を示している。この状態において、図3で示したフローチャートに沿って自動復旧処理を行うと、基板が基板チャック12を取り囲む保護板(同面板13)と接触する。このとき、図6(B)で示すような状態となる。この場合、図3のステップS303において、基板の傾きの異常を検知するか、又は図3のステップS305おいて、接触位置の異常を検知し、図3のステップS307において、自動復旧処理が停止される。
【0051】
この場合、装置の動作を停止させ、手作業で正常な状態に手動復旧させる必要がある。その作業を行うオペレータは、例えば、インプリント装置1のパネルを開き、型3、基板5、型チャック10または基板チャック12の状態を目視で確認する。また、確認した型3または基板5などの状態によっては、例えば、型3または基板5をインプリント装置1外へ取り出す、などのメンテナンスを行うことで、インプリント装置1を復旧させることになる。なお、自動復旧処理が停止された場合には、インプリント装置1は、エラー状態が発生していることをオペレータが認識できるように報知することが好ましい。
【0052】
以上のように、自動復旧処理を適宜処理中の状態に応じて停止できるようにすることで、自動復旧できるエラーは自動で対応させつつも、基板もしくは型が破損してしまうことを回避するのに有利な構成を提供することができる。
【0053】
なお、正常な状態に復帰したか判断する際に(図2、ステップS210)、正常な状態に復帰したと判断された場合、同じマテリアルを使用して再開するか、保持動作の異常の原因となったマテリアルのみを交換後に再開するか、選択できるようにしてもよい。さらに、保持動作の異常発生時のマテリアルを全て交換後に再開することを可能としても良い。
【0054】
また、本実施形態においては、型保持力計測部15、基板保持力計測部16、および、アライメント計測部17を検出部の一部として用いたが、これらとは別に検出部14を設けても良い。また、本実施形態においては、検出部14を設けたが、型保持力計測部15、基板保持力計測部16、および、アライメント計測部17などの型3および基板5を観察または監視できる部材を用いることにより、検出部14を別途設けなくても良い。このような構成とすることにより、コストを低減することが可能となる。さらに、検出部としてスコープやレーザ干渉計を用いる場合、これらを駆動可能に構成しても良い。このような構成とすることにより、1つの検出部により、検出できる範囲が広がり、検出部の設置数を低減することが可能となる。
【0055】
(物品の製造について)
以上説明したインプリント装置1を用いて形成される硬化物のパターンは、各種物品の少なくとも一部に恒久的に、或いは各種物品を製造する際に一時的に、用いられる。
【0056】
物品とは、電気回路素子、光学素子、MEMS、記録素子、センサ、或いは、型等である。電気回路素子としては、DRAM、SRAM、フラッシュメモリ、MRAMのような、揮発性或いは不揮発性の半導体メモリや、LSI、CCD、イメージセンサ、FPGAのような半導体素子等が挙げられる。型としては、インプリント用のモールド等が挙げられる。
【0057】
硬化物のパターンは、上記物品の少なくとも一部の構成部材として、そのまま用いられるか、或いは、レジストマスクとして一時的に用いられる。基板の加工工程においてエッチング又はイオン注入等が行われた後、レジストマスクは除去される。
【0058】
次に、図7を用いて、インプリント装置によって基板にパターンを形成し、該パターンが形成された基板を処理し、該処理が行われた基板から物品を製造する物品製造方法について説明する。まず図7(a)に示すように、絶縁体等の被加工材2zが表面に形成されたシリコンウエハ等の基板1zを用意し、続いて、インクジェット法等により、被加工材2zの表面にインプリント材3zを付与する。ここでは、複数の液滴状になったインプリント材3zが基板上に付与された様子を示している。
【0059】
図7(b)に示すように、インプリント用の型4zを、その凹凸パターンが形成された側を基板上のインプリント材3zに向け、対向させる。図7(c)に示すように、インプリント材3zが付与された基板1zと型4zとを接触させ、圧力を加える。インプリント材3zは型4zと被加工材2zとの隙間に充填される。この状態で硬化用のエネルギーとして光を型4zを介して照射すると、インプリント材3zは硬化する。
【0060】
図7(d)に示すように、インプリント材3zを硬化させた後、型4zと基板1zを引き離すと、基板1z上にインプリント材3zの硬化物のパターンが形成される。この硬化物のパターンは、型の凹部が硬化物の凸部に、型の凸部が硬化物の凹部に対応した形状になっており、即ち、インプリント材3zに型4zの凹凸パターンが転写されたことになる。
【0061】
図7(e)に示すように、硬化物のパターンを耐エッチングマスクとしてエッチングを行うと、被加工材2zの表面のうち、硬化物が無いか或いは薄く残存した部分が除去され、溝5zとなる。図7(f)に示すように、硬化物のパターンを除去すると、被加工材2zの表面に溝5zが形成された物品を得ることができる。ここでは硬化物のパターンを除去したが、加工後も除去せずに、例えば、半導体素子等に含まれる層間絶縁用の膜、つまり、物品の構成部材として利用してもよい。
【0062】
そして物品の製造方法には、基板に供給(塗布)されたインプリント材に上記のインプリント装置(インプリント方法)を用いてパターンを形成する工程と、かかる工程でパターンを形成された基板を加工する工程も含まれる。更に、かかる製造方法は、他の周知の工程(酸化、成膜、蒸着、ドーピング、平坦化、エッチング、レジスト剥離、ダイシング、ボンディング、パッケージング等)を含む。本実施形態の物品の製造方法は、従来の方法に比べて、物品の性能・品質・生産性・生産コストの少なくとも1つにおいて有利であるといえる。
【0063】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されないことはいうまでもなく、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7