(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】像加熱装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20241007BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20241007BHJP
H05B 3/00 20060101ALI20241007BHJP
【FI】
G03G15/20 505
G03G21/00 370
H05B3/00 335
(21)【出願番号】P 2021038157
(22)【出願日】2021-03-10
【審査請求日】2024-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西田 聡
(72)【発明者】
【氏名】竹田 敢
(72)【発明者】
【氏名】三谷 隆徳
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-184133(JP,A)
【文献】特開平11-344899(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
G03G 21/00
H05B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱抵抗体を備え、記録材に形成された画像を加熱するヒータと、
ヒータが内面に接触する、回転可能な筒状のフィルムと、
前記フィルムとの間で前記記録材を搬送するニップ部を形成するローラと、
一定の制御周期ごとに通電オンと通電オフの比率を切り替えて、波数制御により制御する通電制御部と、
を備える像加熱装置において、
前記制御周期の中で通電オンとオフどちらも行う通電パターンの中で、最も長く連続して通電オンする最長連続通電期間をtON、最も長く連続して通電オフする最長連続遮断期間をtOFF、前記発熱抵抗体から前記ヒータの前記フィルムとの接触面までの最短距離での熱伝達の時定数をτとしたとき、tON≦τ、かつtOFF≦τの関係を有することを特徴とする像加熱装置。
【請求項2】
前記ヒータは、前記発熱抵抗体と前記フィルムとの接触面との間に、前記発熱抵抗体が設置される基板と前記フィルムに接触するコート層を備え、
前記時定数τは、前記基板と前記コート層それぞれの時定数の合計値であることを特徴とする請求項1に記載の像加熱装置。
【請求項3】
前記基板と前記コート層のそれぞれの時定数は、それぞれの厚みと熱容量に比例し、熱伝導率に反比例することを特徴とする請求項2に記載の像加熱装置。
【請求項4】
前記フィルムは、基層と、離型性に優れる離型層の二層で形成されることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の像加熱装置。
【請求項5】
前記フィルムの総厚みは160μm以下であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の像加熱装置。
【請求項6】
前記時定数τは、50msec以上、200msec未満であることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の像加熱装置。
【請求項7】
前記フィルムは、記録材上に形成された複数の色のトナーからなる画像を加熱定着する請求項1~6のいずれか1項に記載の像加熱装置。
【請求項8】
前記記録材の搬送方向に直交する長手方向において、複数の前記発熱抵抗体が備えられ、それぞれの発熱抵抗体が独立して制御されることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の像加熱装置。
【請求項9】
記録材に画像を形成する画像形成部と、
記録材に形成された画像を記録材に定着する定着部と、
を有する画像形成装置において、
前記定着部が請求項1~8のいずれか1項に記載の像加熱装置であることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式や静電記録方式を利用した複写機、プリンタ等の画像形成装置に搭載する定着器、あるいは記録材上の定着済みトナー画像を再度加熱することによりトナー画像の光沢度を向上させる光沢付与装置、等の像加熱装置に関する。また、この像加熱装置を備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真プリンタや電子写真複写機などに搭載される定着装置(定着器)として、フィルム加熱式の像加熱装置が広く用いられている(特許文献1)。このような像加熱装置では、セラミックヒータなどを熱源とし、定着部材としての薄膜の定着フィルムを介して、記録材および記録材上のトナー像を加熱する。
【0003】
像加熱装置においては、一般的に、加熱源はトライアック等のスイッチング制御素子を介して交流電源に接続されており、この交流電源により電力が供給される。そして、像加熱装置には温度検出素子が設けられており、この温度検出素子により、像加熱装置の温度が検出される。その検出温度情報を基に、エンジンコントローラがスイッチング素子をオン/オフすることにより、ヒータへの電力供給をオン/オフし、像加熱装置の温度が目標の一定温度となるように温度制御される。ヒータへの電力供給のオン/オフは、波数制御または位相制御などにより行われる。
【0004】
位相制御は、交流電圧の半波(半サイクル)毎に電力供給のオン/オフのタイミング(位相)を変えて、電力を調整する制御である。半波以下の期間で電力を調整できるので、きめ細かい電力調整が可能である。一方で、電圧波形が歪み、高調波ノイズが発生して、他の回路に妨害を与える場合があるため、フィルタなどの高調波阻止回路が合わせて必要となる。位相制御と波数制御を組み合わせた電力制御も用いられることあるが、位相制御と同様の電気回路が必要である。
【0005】
波数制御(サイクル制御)は、交流電圧の半波(半サイクル)毎にヒータへの電力供給をオン/オフし、一定周期でのオン/オフの比率を変えて、電力を調整するものである。高調波を発生させないため、高調波阻止回路を必要としないため、位相制御に比べて、低コストで、かつ電力制御回路を小型にできるというメリットがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、波数制御は、半波単位で電力供給がオン/オフされるため、ヒータへの電力供給の振れ、ひいてはヒータ温度の振れが大きくなりやすい。ヒータ温度の振れは、定着フィルムを介して記録材上のトナーへ伝わり、トナーの溶融度合いにムラができることで、記録材にスジ状の濃淡差をもたらす定着ムラを引き起こす。特に、低熱容量、高熱伝導の定着フィルムを用いた像加熱装置において、定着フィルムの熱抵抗が低いため、温度の振れの影響を受けやすく、定着ムラが顕在化しやすい。
【0008】
さらに近年ではトナーの低融点化、低粘弾性化が進んでおり、温度に対してトナーの溶融度合がより大きく変化するため、定着ムラが発生しやすくなっている。特にカラーの画
像形成装置のように、複数の色のトナーを多重形成し定着させる場合は、定着ムラが光沢ムラとして視認されやすくなる。
【0009】
本発明の目的は、波数制御でありながら、高熱伝導、低熱容量な定着部材を用いても、加熱ムラなく加熱できる像加熱装置、および、光沢ムラのない高画質な画像を提供できる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に係る像加熱装置は、
発熱抵抗体を備え、記録材に形成された画像を加熱するヒータと、
ヒータが内面に接触する、回転可能な筒状のフィルムと、
前記フィルムとの間で前記記録材を搬送するニップ部を形成するローラと、
一定の制御周期ごとに通電オンと通電オフの比率を切り替えて、波数制御により制御する通電制御部と、
を備える像加熱装置において、
前記制御周期の中で通電オンとオフどちらも行う通電パターンの中で、最も長く連続して通電オンする最長連続通電期間をtON、最も長く連続して通電オフする最長連続遮断期間をtOFF、前記発熱抵抗体から前記ヒータの前記フィルムとの接触面までの最短距離での熱伝達の時定数をτとしたとき、tON≦τ、かつtOFF≦τの関係を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、波数制御でありながら、高熱伝導、低熱容量な定着部材を用いても、加熱ムラなく加熱できる像加熱装置、および、光沢ムラのない高画質な画像を提供できる画像形成装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施例1における画像形成装置の概略構成を説明する図。
【
図2】実施例1における定着装置の概略構成を説明する図。
【
図3】実施例1におけるヒータの概略構成を説明する図。
【
図4】実施例1におけるヒータおよび駆動回路の概略構成を説明する図。
【
図5】実施例1における波数制御の通電パターンを説明する図。
【
図6】ヒータ加熱時のヒータ表面温度の変化を示すグラフ。
【
図7】切り替え周期τにおけるヒータ表面温度の変化を示すグラフ。
【
図8】切り替え周期3τにおけるヒータ表面温度の変化を示すグラフ。
【
図9】時定数及び切り替え周期と、ヒータ表面温度の振幅の関係を表したグラフ。
【
図10】比較例としての実験装置Dのヒータの概略構成を説明する図。
【
図12】変形例2におけるヒータおよび駆動回路の概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施例1)
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状それらの相対配置などは、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものである。すなわち、この発明の範囲を以下の実施の形態に限定する趣旨のものではない。本発明が適用可能な画像形成装置としては、電子写真方式や静電記録方式を利用したプリンタ、複写機などが挙げられ、ここではレーザプリンタに適用した場合について説明する。
【0014】
(1)画像形成装置P
本発明に係る画像形成装置Pについて説明する。
図1は、本実施例にて用いた電子写真記録技術を用いた画像形成装置Pの断面模式図である。画像形成装置Pは、略直線状に配列された4つの画像形成ステーション3Y,3M,3C,3Kと、を備えている。4つの画像形成ステーション3Y,3M,3C,3Kのうち、3Yはイエロー(以下Yと略記)色、3Mはマゼンタ(以下Mと略記)色、3Cはシアン(以下Cと略記)色、3Kはブラック(以下Kと略記)色の画像を形成する画像形成ステーションである。各画像形成ステーション3Y,3M,3C,3Kは、像担持体としての感光体ドラム4Y,4M,4C,4Kと、帯電手段としての帯電ローラ5Y,5M,5C,5Kと、を有している。さらに、各画像形成ステーション3Y,3M,3C,3Kは、露光手段としての露光装置6と、現像手段としての現像装置7Y,7M,7C,7Kと、クリーニング手段としてのクリーニング装置8Y,8M,8C,8Kと、を有している。
【0015】
画像情報を受信すると画像形成動作が開始する。画像形成に際し、画像形成ステーション3Yでは感光体ドラム4Yが不図示の回転制御部(駆動制御手段)によってプリント指令に応じて、
図1中の矢印方向に回転される。まず感光体ドラム4Yの外周面(表面)は帯電ローラ5Yにより一様に帯電され、その感光体ドラム4Y表面の帯電面に、露光装置6により画像データに応じたレーザー光が照射されることで露光され、静電潜像が形成される。その潜像は現像装置7YによりYトナーを用いて顕像化されYトナー画像となる。以上の工程により、感光体ドラム4Y表面にYトナー画像が形成される。画像形成ステーション3M,3C,3Kにおいても同様の画像形成プロセスが行なわれ、感光体ドラム4M表面にMトナー画像が、感光体ドラム4C表面にCトナー画像が、感光体ドラム4K表面にKトナー画像が、それぞれ形成される。
【0016】
画像形成ステーション3Y,3M,3C,3Kの配列方向に沿って設けられている中間転写ベルト9は、駆動ローラ9aと、従動ローラ9bと、従動ローラ9cと、により張架されている。駆動ローラ9aは、不図示の回転制御部(駆動制御手段)によってプリント指令に応じて、
図1中の矢印方向に回転する。これにより、中間転写ベルト9は、各画像形成ステーション3Y,3M,3C,3Kに沿って所定のプロセススピードで回転移動される。この中間転写ベルト9の外周面(表面)には、中間転写ベルト9を挟んで感光体ドラム4Y,4M,4C,4Kと対向配置されている一次転写ローラ10Y,10M,10C,10Kにより、各色のトナー画像が順次重ね転写される。以上の工程により、中間転写ベルト9表面に4色のフルカラートナー画像が形成される。
【0017】
一次転写後に感光体ドラム4Y,4M,4C,4K表面に残った転写残トナーは、クリーニング装置8Y,8M,8C,8Kに設けられている不図示のクリーニングブレードにより除去される。これにより感光体ドラム4Y,4M,4C,4Kは次の画像形成に備える。上述した、感光体ドラム4、帯電ローラ5、現象装置7、一次転写ローラ10、不図示のスキャナユニットが、記録材Sに未定着画像を形成する画像形成部を構成している。
【0018】
一方、画像形成装置P下部に設けられた給送カセット11に積載収納されている記録材Sは、給送ローラ12によって給送カセット11から一枚ずつ分離給送され、レジストローラ対13に給送される。レジストローラ対13は、給送された記録材Sを、中間転写ベルト9と二次転写ローラ14との間の転写ニップ部に送り出す。二次転写ローラ14は、中間転写ベルト9を挟んで従動ローラ9bと対向するように配置される。そして、二次転写ローラ14には、記録材Sが転写ニップ部を通過する際に不図示の高圧電源からバイアスが印加される。これにより転写ニップ部を通過する記録材Sに中間転写ベルト9表面からフルカラーのトナー画像が二次転写される。そのトナーを担持した記録材Sは定着装置F1に搬送される。その後、記録材Sは、定着部(像加熱部)としての定着装置F1にお
いてヒータの熱を利用して加熱、および加圧され、トナー画像が記録材S上に加熱定着される。そして記録材Sは、定着装置F1から画像形成装置P外部の排出トレイ15へ排紙ローラによって排出される。二次転写後に中間転写ベルト9表面に残った転写残トナーは、中間転写ベルトクリーニング装置16により除去される。これにより中間転写ベルト9は次の画像形成に備える。
【0019】
上記の画像形成装置は、2色以上のカラートナーを、中間転写ベルトを介して記録材上に転写し、画像形成するタンデム方式等のカラーレーザプリンタを代表例に説明を行っている。しかし、本発明の適用はこれに限られるものではなく、単色のモノクロトナーを使用したモノクロレーザプリンタに適用することも可能である。
【0020】
(2)定着装置F1
次に、トナー画像の定着手段である、像加熱装置としての定着装置F1について説明する。以下の説明において、定着装置および定着装置を構成する部材に関し、長手方向とは記録材の面において記録材搬送方向と直交する方向であり、短手方向とは記録材の面において記録材搬送方向と平行な方向である。また記録材に関し、長手幅とは記録材の面において記録材搬送方向と直交する方向の寸法である。
【0021】
図2は定着装置F1の断面模式図である。本実施例に示す定着装置F1は、加圧ローラ21と、定着フィルム22と、ヒータ23と、ヒータホルダ24と、剛性ステー25などを有している、フィルム加熱方式、加圧ローラ駆動方式のいわゆるテンションレスタイプの装置である。加圧ローラ21、定着フィルム22、ヒータ23、ヒータホルダ24および、剛性ステー25は、いずれも長手方向に細長い部材である。
【0022】
加圧回転体としての加圧ローラ21は、定着フィルム22の下方において定着フィルム22と並列に配置され、芯金211の長手方向両端部を、不図示の軸受け部材を介して回転自由に保持させている。そして、加圧ローラ21の芯金211と剛性ステー25は、長手方向両端部において不図示の加圧スプリングにより加圧ローラ21の外周面(表面)と定着フィルム22の外周面(表面)が接触するように加圧されている。その加圧力により、加圧ローラ21表面と定着フィルム22表面を接触させ、その間に記録材Sを挟持搬送する所定幅の定着ニップ部NFを形成している。
【0023】
加圧回転体としての加圧ローラ21は、定着フィルム22の下方において定着フィルム22と並列に配置され、芯金211の長手方向両端部を、不図示の軸受け部材を介して回転自由に保持させている。そして、加圧ローラ21の芯金211と剛性ステー25は、長手方向両端部において不図示の加圧スプリングにより加圧ローラ21の外周面(表面)と定着フィルム22の外周面(表面)が接触するように加圧されている。その加圧力により、加圧ローラ21表面と定着フィルム22表面を接触させ、その間に記録材Sを挟持搬送する所定幅の定着ニップ部NFを形成している。
【0024】
ヒータホルダ24は、液晶ポリマーのような耐熱樹脂からなる、ヒータ23を保持する部材である。またヒータホルダ24は、案内部241を備え、定着フィルム22の回転を案内するガイド機能も有している。
【0025】
加圧ローラ21は、プリント指令に応じて、不図示の回転制御部(駆動制御手段)により、プロセススピードで
図2中の矢印方向へ回転される。回転可能に備えられた定着フィルム22は、加圧ローラ21に従動するように、ヒータホルダ24の外周に沿うように、
図2中の矢印方向に従動回転する。またその際、定着ニップ部NFにおいて定着フィルム22の内周面がヒータ23と密着して摺動する。
【0026】
未定着のトナー画像Gを担持した記録材Sは、入口ガイド27を通って定着ニップ部NFに給送され、加圧ローラ21と定着フィルム22により挟持搬送される。その搬送過程において、記録材Sは定着フィルム22により熱と圧力が加えられ、未定着トナー画像Gが記録材Sの表面に加熱定着される。
【0027】
(2-1)定着フィルム22
定着フィルム22は、円筒状の基層221と、その外側に離型層222を有する。基層221は、可撓性を有する耐熱性材料を主成分として形成される。可撓性を有する耐熱性材料とは例えば、ポリイミド、ポリアミドイミド、PEEK、PESまたはPPSなどの耐熱性樹脂、または、SUS、ニッケルなどの金属である。基層221の外周には、フッ素樹脂などからなる、トナーに対する非粘着性を付加するための離型層222を有する。基層221と離型層222の間には必要に応じて各層を接着するための中間層を設けても良いが、中間層の材質および厚みは定着フィルム22全体の熱伝導を大きく阻害しないことが望ましい。
【0028】
ヒータ23の熱を効率良く記録紙上のトナー画像へ伝えるために、定着フィルム22は薄層、低熱容量であることが望ましい。定着フィルム22の総厚みは160μm以下が望ましく、好ましくは100μm以下である。
【0029】
本実施例では、定着フィルム22は、厚み50μmのポリイミドを主成分とする基層221と、厚み15μmのフッ素樹脂からなり、離型性に優れる離型層222の二層で構成される。定着フィルム22の外周長は57mmである。一般的に、基層と離型層の間にはシリコーンゴム等で形成される耐熱性弾性層が含まれることもあるが、本実施例においてはヒータ23の熱をより効率よく伝えるために、含めていない。
【0030】
(2-2)加圧ローラ21
加圧ローラ21は、丸軸状の芯金211と、芯金211の外周に芯金211と同心一体に形成されたシリコーンゴムから成る弾性層212と、弾性層212の周りには導電性のフッ素樹脂で形成される離型層213と、を有している。加圧ローラ21の外周長は、63mmである。なお、弾性層212は、フッ素ゴム等の耐熱性ゴム、あるいはシリコーンゴム等を発泡して形成したものでも良い。また、離型層213は、絶縁性のフッ素樹脂等でも良い。
【0031】
(2-3)ヒータ
図3は本実施例のヒータ23の断面模式図である。本実施例のヒータ23は、長手方向に細長い基板231を有し、その基板231の定着フィルム22接触面と反対側の面に基板長手方向に沿って、発熱抵抗体である発熱体234を形成具備させている。
【0032】
本実施例のヒータ23は、基板231の長手方向の両端部内側には発熱体234に給電するための給電電極(不図示)が設けられている。そして、発熱体234を覆う耐熱性の保護コート層232と、定着フィルム22と摺動接触する摺動コート層233と、を有している。ヒータ23の摺動コート層233と定着フィルム22の内面は直接、もしくはグリスなどを介して接触する。ヒータ23は、保護コート層232から摺動コート層233まで、分割できない一体部品として形成されている。
【0033】
基板231は、アルミナ(酸化アルミニウム)や、窒化アルミニウム、あるいは絶縁部材で被覆された金属などの熱伝導材からなる長手に長い板状部材であり、本実施例においては、アルミナ(酸化アルミニウム)からなる厚み1mmの長手に長い部材である。
【0034】
保護コート層232は、ガラス、またはポリイミドやフッ素樹脂などの樹脂などの耐熱
性材料からなり、発熱体234を保護し、また絶縁耐圧性を付与するためのものである。本実施例においては、厚み60μmのガラスである。
【0035】
摺動コート層233は、ガラス、またはポリイミドやフッ素樹脂などの樹脂などからなる、定着フィルム22の内面との摺動性、耐摩耗性を付与するためのものである。本実施例においては、厚み30μmのガラスである。
【0036】
基板231に配置されている発熱体234からの熱は、基板231と摺動コート層233を介して、定着フィルム22と接触するヒータ表面に熱が伝わる構成となっている。発熱体234は、銀やパラジウムなどの電気抵抗材料を、厚み約数十μmでスクリーンに係る印刷などによって塗工して形成される。以後、ヒータ23の定着フィルムに接触する摺動コート層233を有する面を表面、反対側の保護コート層232を有する面を裏面とする。
【0037】
ヒータ23の温度は、発熱体234への通電を制御することにより、所定の温度となるように制御されるが、発熱体234に通電し、発熱させ始めてから、ヒータ23の表面に所定の温度変化として現れるまでには遅れが生じる。この温度伝達の遅れ度合いは、時定数τで示すことができる。発熱体234の温度をT1からT2に変化させた場合、経過時間tとヒータ23の表面温度Tsには次の関係が成立する。
【0038】
(数1)
Ts=(T2-T1){1-exp(-t/τ)}+T1
この定数τを時定数という。式より、時定数τは、発熱体234の温度をT1からT2に急変させたときに、ヒータ23の表面温度Tsが、初期温度と、最終到達温度の63.2%変化するのに要する時間となる。また、時定数τは、介在する部材の熱伝導率と、熱容量、厚みに応じて決まり、以下の式で求めることができる。
【0039】
(数2)
時定数τ[sec]=厚みd[m]/熱伝導率λ[W/(m・K)]×単位面積当たりの熱容量C[J/(K・m^2)]
複数の部材が介在する場合は、介在する部材のそれぞれの時定数τの合計値となる。つまり、時定数τは介在する部材の厚みや熱容量に比例し、熱伝導率に反比例するため、介在する部材の熱伝導率が低く、熱容量が大きく、厚みが大きいほど時定数τが大きくなり、温度変化が鈍くなる。
【0040】
ヒータ23の時定数τが大きすぎると、定着装置F1の立ち上げに必要なエネルギーや時間が大きくなり、省エネルギー性や、ユーザーの利便性を損なう。一方で、ヒータ23の時定数τが小さすぎると、電力および発熱体234の温度の振れが、ヒータ23の表面温度の振れとして表れやすくなり、記録材および記録材上のトナーの加熱定着時に、溶融ムラを発生しやすくなる。したがって、ヒータ23は、時定数τが50msec以上、200msec未満となるように構成されることが望ましい。
【0041】
本実施例における時定数τは次のように算出される。基板231は厚み1mmのアルミナであり、アルミナの熱伝導率は25.6W/mK、単位面積当たりの熱容量は2700J/(K・m^2)である。したがって、先の数式に当てはめると、基板231の裏面側から表面側までの最短距離での熱伝達の時定数は、105.5msecとなる。
【0042】
また、摺動コート層233は、厚み30μmのガラスであり、ガラスの熱伝導率は、1.4W/(m・K)、単位面積当たりの熱容量は140J/(K・m^2)である。したがって、摺動コート層233の裏面側から表面側までの最短距離での熱伝達の時定数は、
3.0msecとなる。そして、発熱体234からヒータ23表面までの時定数τは、合計で108.5msecとなる。
【0043】
(2-4)駆動回路
図4は、ヒータ23および駆動回路の概略を示す模式図である。商用交流電源32は本画像形成装置を接続する交流電源であり、
図4に示すように、本画像形成装置は商用交流電源32を、トライアック28を介してヒータ23へ供給することにより、ヒータ23における発熱体234を発熱させる。このヒータ23への電力の供給は、電力供給手段としてのトライアック28で通電、遮断を行うことにより制御される。
【0044】
ゼロクロス検知回路29は、商用交流電源32のゼロクロスポイント(電圧の正負の切り替わるポイント)を検知し、通電制御部としての制御手段31に報知する。制御手段31は、このゼロクロス信号をトリガとし、波数制御によりトライアック28のオン/オフを切り替える。つまり、制御手段31からの信号にしたがって、トライアック28は動作し、ヒータ23への電力供給が制御される。
【0045】
ヒータ23の温度は、ヒータ23の裏面側に設けられている温度検知手段としてのサーミスタ26によって検知される。このサーミスタ26によって、検出された温度を制御手段31で監視し、制御手段31内部で設定されているヒータ23の設定温度と比較することによって、ヒータ23に供給するべき電力を算出する。その算出された供給電力に対応した通電パターンを用いた制御条件により、制御手段31がトライアック28にオン信号を送出する。以上のような制御回路により、ヒータ23の温度は所定の温度に維持される。例えば、通常の定着モードであれば、190℃に温調される。
【0046】
(3)波数制御
本実施例の波数制御の通電パターンの一例を
図5に示す。13半波を制御周期(例えば商用電源50Hzを使用した場合、1半波が10msec、130msec周期)とし、
図5の通電パターンに従って、13半波の中でオン/オフの切り替えを行い、複数段階の電力調整を行う。例えば、電源電力を100%入力した場合に対する割合(Duty比)を、46%とするには、13半波中の6半波をオン、7半波をオフとする。波数制御では、制御周期130msecの平均電力としては所望の電力となっているが、1半波単位で
は、通電がオン、オフのどちらかとなるため、瞬間的に過剰な電力、または過小な電力が供給されている。例えば、Duty比46%の通電パターンとした場合、13半波の平均電力がDuty比46%であっても、瞬間的にはDuty比100%、または、Duty比0%となっている。
【0047】
商用電源60Hzの波数制御では、少なくとも10msec単位で、電力オン、または電力オフとなる。定着フィルム表面、および定着動作中の記録材の移動距離に換算すると、プロセススピードが100mm/secの場合、10msecは1mmに相当する。複数の半波にわたって電力がオンされると、さらに長くなり、例えば5波連続オンの場合は、50msecとなり、5mmに相当する。
【0048】
上記のように、波数制御ではヒータ23が過剰な温度、または過小な温度となる温度の振れが発生しやすい。したがって、本実施例のように薄層の定着フィルムを組み合わせて定着装置F1を構成すると、加熱定着時のヒータ23表面温度の振れが、紙上のトナー画像Gの溶融ムラとなりうる。そして、加熱定着後のトナーの溶融ムラは、定着後画像の光沢ムラとして視認され、画像不良となりうる。
【0049】
(4)ヒータ時定数と電力制御の連続通電期間
本実施例の定着装置F1では、ヒータ23の時定数τと、後述する電力供給の通電パタ
ーンにおける最長連続通電期間tON、及び、最長連続遮断期間tOFFが、以下の関係を満たすことを特徴としている。
【0050】
最長連続通電期間tON≦ヒータ23の時定数τ
【0051】
最長連続遮断期間tOFF≦ヒータ23の時定数τ
【0052】
ここで波数制御の制御周期の中で、連続して通電オンされる期間を連続通電期間、連続して通電オフされる期間を連続遮断期間とする。そして通電オン/オフの切り替えをしないDuty比100%(全オン)や、Duty比0%(全オフ)の通電パターンを除いた通電パターンの中で、最も長い通電期間をそれぞれ最長連続通電期間tON、長連続遮断期間tOFFとする。例えば、
図5に示す通電パターンの中では、Duty比85%の通電パターンの連続通電期間が6半波連続となり、最も長く、最長連続通電期間tONは60msecとなる。また、Duty比15%の通電パターンの連続遮断期間が6半波連続となり、最も長く、最長連続遮断期間tOFFは60msecとなる。先述の通り、本実施例における発熱体234からヒータ23表面までの時定数τは108.5msecであるため、上記関係を満たす。
【0053】
本実施例の効果について説明する。発熱体234の温度をT1からT2に急激に変化させた場合のヒータ23の表面温度の変化を
図6に示す。発熱体234の温度を切り替えると、ヒータ23の表面温度は、ヒータ23の時定数τに応じて遅れて変化する。ヒータ23の表面温度は、発熱体234の温度が切り替わってから、τ時間後に最終到達温度の63.2%、2τ時間後に最終到達温度の86.5%、3τ時間後に最終到達温度の95.
0%まで変化する。
【0054】
次に、発熱体234の温度を、周期τで、周期的にT1とT2の間で切り替えた場合のヒータ23の表面温度の変化を
図7に示す。発熱体234の温度をT2からT1に戻すと、ヒータ23の表面温度もヒータ23の時定数τに応じて、遅れて変化する。発熱体234の温度を、時定数τ毎で切り替えると、ヒータ23の表面温度が大きく変化する前に、発熱体234の温度が切り替わるため、ヒータ23の表面温度の振幅は小さくなる。
【0055】
発熱体234の温度を、周期3τで、周期的にT1とT2の間で切り替えた場合のヒータ23の表面温度の変化を
図8に示す。発熱体234の温度の切り替え時間が大きいと、ヒータ23の表面温度も大きく変化し、ヒータ23の表面温度の振幅も大きくなる。
【0056】
発熱体234の温度を周期的に切り替えたときの、発熱体234の温度切り替え周期と、ヒータ23の時定数τと、ヒータ23の表面温度の振幅と、の関係を表したグラフを
図9に示す。
図9のグラフの縦軸は時定数τ、横軸は発熱体234の温度切り替え周期であり、発熱体234の温度切り替え周期が十分に長く、ヒータ23の表面温度が最終到達温度に達するときの振幅を100%としている。ヒータ23の時定数τに対して、発熱体234の温度切り替え周期を小さくすることで、ヒータ23の表面温度の振幅を小さくすることができる。
【0057】
以上、発熱体234の温度をT1とT2の間で瞬時に切り替えるモデルで説明をした。発熱体234の熱容量は十分に小さく、通電によって迅速に温度変化するため、通電オン/オフで切り替えた場合も、温度を切り替えた場合と同様の効果が期待できる。すなわち、波数制御においても、発熱体234に通電オンからオフ、オフからオンへ切り替えるまでの期間を、ヒータ23の時定数τに対して小さくすることで、ヒータ23の表面温度の変化を小さくすることができる。
【0058】
つまり、連続通電期間が最も長い最長連続通電期間tONと、連続遮断期間が最も長い最長連続遮断期間tOFFが、ヒータ23の時定数τに対して小さければ、どのような通電パターンにおいても、ヒータ23の表面温度のムラや振幅を小さくすることができる。ひいては、定着フィルム22の構成、熱容量や熱伝導に関わらず、紙上のトナーの溶融ムラ、光沢ムラを小さくすることができ、良好な画像を得ることができる。
【0059】
(5)実験
本実施例における画像形成装置および定着装置の効果を確認する実験を行った。実験に用いた画像形成装置のプロセススピードは100mm/sで、先行する記録材Sと次の記録材Sの間隔(紙間)は30mmである。実験は、環境温度23℃、湿度50%の環境に画像形成装置を設置して行った。実験には、一般的なLBP印刷用紙、坪量80g/m^2、LTR(幅216mm、縦279mm)サイズ紙を用いた。
【0060】
評価に用いた画像は、余白部としてページ先端、後端、右端、左端に5mmの余白を設け、ページ全体にトナーを載せたベタ画像で、Mトナー、Cトナーの2色のトナーを重ね、合わせて200%の画像濃度となるように形成している。
【0061】
画像形成および定着動作を行い、定着動作後の画像を目視で確認し、光沢ムラを評価した。定着装置F1のヒータ23の時定数τが異なる複数の実験装置で、最長連続通電期間tON、最長連続遮断期間tOFFを同値(60msec)にして実験を行った。
【0062】
実験装置Aは、本実施例としての画像形成装置および定着装置F1である。ヒータ23の時定数τは、先述の通り108.3msecである。現在温度と目標温調温度の差に応
じて、本実施例の通電パターンを使用して電力制御を行う。商用電源120V/60Hzにおけるヒータへの最大供給電力は700Wである。波数制御の最長連続通電期間tONと、最長連続遮断期間tOFFは60msecである。このとき、最長連続通電期間tONと、最長連続遮断期間tOFFは、時定数τの0.55倍であり、十分小さい。
【0063】
実験装置Bは、比較例1として、本実施例から基板231の厚みを変更した画像形成装置および定着装置F1である。実験装置Bの定着装置F1と、ヒータ23の基本構成は、本実施例の構成と同様であるが、基板231が、厚み0.635mmのアルミナを使用している点で異なる。このとき、基板231の時定数は、67.0msecとなる。摺動コート層233は、厚み30μmのガラスである。熱伝導率は、1.4W/(m・K)、単位面積当たりの熱容量は140J/(K・m^2)であり、摺動コート層233の裏から表までの時定数は、3.0msecとなる。したがって、発熱体234からヒータ23表面までの時定数τは、合計70.0msecとなる。波数制御は、本実施例と同等であり、最長連続通電期間tONと、最長連続遮断期間tOFFは60msecである。時定数τに対して、最長連続通電期間tONと、最長連続遮断期間tOFFは小さく、時定数τの0.86倍である。
【0064】
実験装置Cは、比較例2として、本実施例から基板231の材質と厚みを変更した画像形成装置および定着装置F1である。実験装置Cの定着装置F1と、ヒータ23の基本構成は、本実施例の構成と同様であるが、基板231は、厚み0.6mmの窒化アルミニウムを使用している。窒化アルミニウムの熱伝導率は65.7W/(m・K)、単位面積当たりの熱容量は1200J/(K・m^2)であり、基板231の裏から表までの時定数は、11.2msecとなる。摺動コート層233は、厚み30μmのガラスである。熱伝導率は、1.4W/(m・K)、単位面積当たりの熱容量は140J/(K・m^2)であり、摺動コート層233の裏から表までの時定数は、3.0msecとなる。発熱体234から、ヒータ23表面までの時定数τは、合計16.2msecとなる。波数制御は、本実施例と同等であり、最長連続通電期間tONと、最長連続遮断期間tOFFは6
0msecである。時定数τに対して、最長連続通電期間tONと、最長連続遮断期間tOFFの方が大きく、時定数τの3.7倍である。
【0065】
実験装置Dは、比較例3として、本実施例から構成を変更した画像形成装置および定着装置F1である。実験装置Dのヒータ23は、基板231の表側(定着フィルム22接触面)に発熱体234を形成している。発熱体234からヒータ23表面までは、ガラス製の摺動コート層233で覆われ、厚みは50μmである。実験装置Dのヒータの概略構成を
図10に示す。熱伝導率は、1.4W/(m・K)、単位面積当たりの熱容量は140J/(K・m^2)であり、発熱体234から摺動コート層233の表までの時定数τは、5.0msecとなる。波数制御は、本実施例と同様であり、最長連続通電期間tONと、最長連続遮断期間tOFFは60msecである。時定数τに対して、最長連続通電期間tONと、最長連続遮断期間tOFFが大きく、時定数τの12倍である。
【0066】
本実験の結果を
図11に示す。本実施例としての実験装置Aと実験装置Bの光沢ムラは良好であった。比較例としての実験装置C、実験装置Dでは光沢ムラが大きかった。
【0067】
以上のように、波数制御の最長連続通電期間tONと、最長連続遮断期間tOFFが、ヒータ23の時定数τよりも小さくなるように構成することで、波数制御でありながら、ヒータ23表面の温度振幅を小さくすることができる。ヒータ23表面の温度振幅を小さくできるので、定着フィルム22の構成、熱容量や熱伝導に関わらず、波数制御に起因する紙上のトナーの溶融ムラ、光沢ムラを小さくすることができ、良好な画像を得ることができる。
【0068】
(変形例)
以上、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形および変更が可能である。以下に、その変形例の一例を示す。
【0069】
(変形例1)
なお、本実施例のヒータ23は、基板231の裏側(定着フィルム22接触面と逆側)に発熱体234を配置される構成としたが、発熱体234からヒータ表面までが一体部品として構成されてもよい。時定数τと、最長連続通電期間tON、最長連続遮断期間tOFFとの関係が本実施例で示した範囲であれば、ヒータ23の構成および材料は問わず、同様の効果が得られる。
【0070】
(変形例2)
本発明が適用される画像形成装置は、実施例1と同様として、ヒータ23を独立に駆動できる複数の発熱体234Aと234Bを備える構成としてもよい。
図12に、本実施例におけるヒータ23および駆動回路の概略構成図を示す。発熱体234はヒータ23の長手方向に細長い構成で、ヒータ短手方向に並べて配置され、それぞれ独立に駆動できるが、同時には駆動されない。制御手段31によって、制御されたリレー34によって、商用交流電源32とトライアック28Aとトライアック28Bへの接続は切り替えられる。発熱体234Aはトライアック28Aによって駆動され、発熱体234Bはトライアック28Bによって駆動され、それぞれ実施例1と同様に波数制御で制御される。発熱体234
Aと発熱体234Bの切り替えは、連続的に行われる場合もある。実施例1と同様に、波
数制御時の最長連続通電期間tON、最長連続遮断期間tOFFを、ヒータ23の時定数τに対して小さくすることで、同様の効果が得られる。
【0071】
(変形例3)
本発明が適用される画像形成装置は、実施例1と同様として、ヒータ23を長手方向に
独立に駆動できる複数の発熱体234Aと234B、234Cを備える。
図13に、本実施例におけるヒータ23の長手方向の概略構成図を示す。発熱体234はヒータ23の長手方向に並べて配置され、それぞれ別々のトライアックによって独立に駆動できる。実施例1と同様に、それぞれ波数制御で制御される。それぞれの発熱体234は、別々のタイ
ミングで波数制御が行われるが、それぞれの領域においては、ヒータ23の表面温度の振れを発生させ、その領域を通過する記録材上のトナー像Gに溶融ムラを発生させる可能性がある。実施例1と同様に、最長連続通電期間tONと、最長連続遮断期間tOFFを、
ヒータ23の時定数τに対して小さくすることで、同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0072】
21…加圧ローラ、22…定着フィルム、23…ヒータ、31…制御手段