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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】光検出器
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/4863 20200101AFI20241007BHJP
   H01L 31/107 20060101ALI20241007BHJP
   H01L 27/146 20060101ALI20241007BHJP
【FI】
G01S7/4863
H01L31/10 B
H01L27/146 D
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2021049153
(22)【出願日】2021-03-23
(65)【公開番号】P2022147766
(43)【公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-02-08
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】国分 弘一
(72)【発明者】
【氏名】松本 展
(72)【発明者】
【氏名】千石 光洋
【審査官】▲高▼場 正光
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2021/0029311(US,A1)
【文献】特開2020-161736(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0256961(US,A1)
【文献】特表2020-515085(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0080733(US,A1)
【文献】特開2003-142674(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48 - G01S 7/51
G01S 17/00 - G01S 17/95
H01L 27/14 - H01L 27/148
H04N 5/30 - H04N 5/33
H04N 23/11
H04N 23/20 - H04N 23/30
H04N 25/00
H04N 25/20 - H04N 25/61
H04N 25/615 - H04N 25/79
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の上方に設けられ、トレンチ部によって囲まれた複数のアバランシェフォトダイオードと、
隣り合う前記トレンチ部の間且つ前記トレンチ部の側面を囲むように設けられた第1ウェル領域と、
前記第1ウェル領域の上面近傍に設けられ、トランジスタ及びダイオードの少なくとも一方を含む第2ウェル領域と、
前記複数のアバランシェフォトダイオードを覆うように設けられたマイクロレンズアレイと、
を備え、
前記基板は、第1導電型であり、
前記第1ウェル領域は、前記第1導電型と異なる第2導電型であり、
前記複数のアバランシェフォトダイオードの各々は、前記第1導電型の第1半導体層と、前記第1半導体層の上に設けられた前記第2導電型の第2半導体層と、を含む、
光検出器。
【請求項2】
前記マイクロレンズアレイは、複数のマイクロレンズを有し、
前記複数のマイクロレンズは、前記複数のアバランシェフォトダイオードにそれぞれ重なるように設けられる、
請求項1に記載の光検出器。
【請求項3】
前記マイクロレンズアレイは、マイクロレンズを有し、
前記マイクロレンズは、隣り合う前記アバランシェフォトダイオードを覆うように設けられる、
請求項1に記載の光検出器。
【請求項4】
基板と、
前記基板の上方に設けられ、トレンチ部によって囲まれた複数のアバランシェフォトダイオードと、
隣り合う前記トレンチ部の間且つ前記トレンチ部の側面を囲むように設けられた第1ウェル領域と、
前記第1ウェル領域の上面近傍に設けられ、トランジスタ及びダイオードの少なくとも一方を含む第2ウェル領域と、
前記複数のアバランシェフォトダイオードを覆うように設けられたマイクロレンズアレイと、
を備え、
前記複数のアバランシェフォトダイオードは、第1アバランシェフォトダイオードを含み、
一端が前記第1アバランシェフォトダイオードのカソードに接続された第1抵抗部と、
前記第1抵抗部の他端に接続された第1ダイオードと、
一端が前記第1抵抗部の前記他端に接続された第2抵抗部と、
前記第2抵抗部の他端に接続された第1トランジスタと、
さらに備える
検出器。
【請求項5】
各々が、前記第1アバランシェフォトダイオードと、前記第1抵抗部と、前記第1ダイオードと、前記第2抵抗部と、前記第1トランジスタと、を含む複数のセンサ回路をさらに備え、
前記複数のセンサ回路の各々は、前記第1トランジスタに接続された第2トランジスタをさらに備え、
前記第1トランジスタの一端は、前記第2抵抗部の前記他端に接続され、
前記第1トランジスタの他端は、前記第2トランジスタの一端に接続され、
前記第1トランジスタのゲートには、第1選択信号が入力され、
前記第2トランジスタのゲートには、第2選択信号が入力され、
第1方向に並んだ複数のセンサ回路にロウアドレスが割り当てられ、前記第1方向と異なる第2方向に並んだ複数のセンサ回路にカラムアドレスが割り当てられ、前記第1選択信号と前記第2選択信号とに基づいて、前記複数のセンサ回路の少なくとも1つが選択される、
請求項に記載の光検出器。
【請求項6】
前記複数のセンサ回路は、第1センサ回路、第2センサ回路、第3センサ回路、及び第4センサ回路を含み、
前記第1センサ回路と前記第2センサ回路は、前記第2方向に隣り合い、
前記第2センサ回路は、前記第3センサ回路と前記第4センサ回路とによって前記第1方向に挟まれ、
前記第1センサ回路は、前記第1センサ回路に入力された第1選択信号又は第2選択信号を、前記第2センサ回路、前記第3センサ回路、及び前記第4センサ回路の何れかに転送するシフト回路をさらに備える、
請求項に記載の光検出器。
【請求項7】
前記第1ダイオードは、カソードが前記第1抵抗部の前記他端に接続された整流ダイオードである、
請求項に記載の光検出器。
【請求項8】
前記第1ダイオードは、アノードが前記第1抵抗部の前記他端に接続されたツェナーダイオードである、
請求項に記載の光検出器。
【請求項9】
前記複数のアバランシェフォトダイオードは、第2アバランシェフォトダイオードを含み、
一端が前記第2アバランシェフォトダイオードのカソードに接続された第3抵抗部と、
前記第2抵抗部の他端に接続された第2ダイオードと、
一端が前記第2抵抗部の前記他端に接続され、他端が前記第1トランジスタに接続された第4抵抗部と、をさらに備える、
請求項に記載の光検出器。
【請求項10】
前記第1抵抗部は、前記第1アバランシェフォトダイオードを含むセンサ回路の保護抵抗として機能し、前記第2抵抗部は、前記センサ回路のクエンチ抵抗として機能する、
請求項に記載の光検出器。
【請求項11】
選択されたセンサ回路に対する第1選択信号及び第2選択信号のそれぞれが第1論理レベルになると、前記選択されたセンサ回路に含まれた第1アバランシェフォトダイオードが、光を検出することが可能なアクティブ状態になる、
請求項に記載の光検出器。
【請求項12】
前記選択されたセンサ回路では、前記第1アバランシェフォトダイオードのアノードに、前記第1アバランシェフォトダイオードの前記カソードよりも高い電圧が印加される、
請求項11に記載の光検出器。
【請求項13】
前記トレンチ部は、前記第1半導体層と前記第2半導体層との側面を囲んだ環状に設けられた部分を有する第1絶縁体を含む、
請求項に記載の光検出器。
【請求項14】
第3ウェル領域と第4ウェル領域とをさらに備え、
前記第2ウェル領域は前記第1絶縁体と第1方向に隣り合い、前記第3ウェル領域は前記第1絶縁体と第2方向に隣り合い、前記第4ウェル領域は前記第1絶縁体と第3方向に隣り合い、
前記第2ウェル領域に、N型トランジスタが設けられ、
前記第3ウェル領域に、P型トランジスタが設けられ、
前記第4ウェル領域に、ダイオードが設けられる、
請求項13に記載の光検出器。
【請求項15】
各々が前記第1絶縁体と前記第1半導体層と前記第2半導体層とを含み、マトリクス状に配置された複数のセンサ部をさらに備える、
請求項13に記載の光検出器。
【請求項16】
前記マイクロレンズアレイは、前記複数のセンサ部のそれぞれの上方にそれぞれ設けられ、等間隔に配置された複数のマイクロレンズを含む、
請求項15に記載の光検出器。
【請求項17】
前記第2半導体層の形状に沿って設けられた部分を有する半導体層をさらに備え、
前記半導体層の一端部分が、少なくとも1本のコンタクトプラグを介して前記第2半導体層に接続され、
前記半導体層の中間部分が、少なくとも1本のコンタクトプラグを介して前記ダイオードに接続され、
前記半導体層の他端部分が、少なくとも1本のコンタクトプラグを介して前記P型トランジスタに接続される、
請求項14に記載の光検出器。
【請求項18】
前記第4ウェル領域は、前記第1導電型であり、上面近傍に前記第2導電型の第1半導体領域と、前記第4ウェル領域よりも前記第1導電型の不純物濃度が高い第2半導体領域とを有し、
前記第1半導体領域が、少なくとも1本のコンタクトプラグを介して前記半導体層の前記中間部分に接続され、
前記第2半導体領域は、少なくとも1本のコンタクトプラグを介して定電圧ノードに接続される、
請求項17に記載の光検出器。
【請求項19】
前記第1導電型がP型であり、前記第2導電型がN型である、
請求項18に記載の光検出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、光検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
LiDAR(Light Detection and Ranging)と呼ばれる距離計測装置が知られている。LiDARは、レーザ光を対象物に照射し、対象物から反射された反射光の強度をセンサ(光検出器)によって検出する。そして、LiDARは、センサから出力される光強度信号に基づいて、LiDARから対象物までの距離を計測する。LiDARで使用されるセンサは多々有るが、今後有望なものとして、2次元に配列された複数のシリコンフォトマルチプライヤを備える二次元センサ(2Dセンサ)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-148670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光検出器の特性を改善させる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の光検出器は、基板と、複数のアバランシェフォトダイオードと、ウェル領域と、マイクロレンズアレイと、を含む。複数のアバランシェフォトダイオードは、基板の上方に設けられる。複数のアバランシェフォトダイオードの各々は、トレンチ部によって囲まれている。ウェル領域は、隣り合う前記トレンチ部の間に設けられる。ウェル領域は、トランジスタ及びダイオードの少なくとも一方を含む。マイクロレンズアレイは、複数のアバランシェフォトダイオードを覆うように設けられる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1実施形態に係る距離計測装置の全体構成の一例を示す概略図。
図2】第1実施形態に係る距離計測装置の測距方法の概要を示す概略図。
図3】第1実施形態に係る距離計測装置の備える出射部及び受光部の構成の一例を示す概略図。
図4】第1実施形態に係る距離計測装置における出射部のスキャン方法の一例を示すテーブル。
図5】第1実施形態に係る距離計測装置が備える受光部の平面レイアウトの一例を示す平面図。
図6】第1実施形態に係る距離計測装置の備える計測部の構成の一例を示す概略図。
図7】第1実施形態に係る光検出器の構成の一例を示すブロック図。
図8】第1実施形態に係る光検出器が備える画素に含まれたAPDユニット及び選択回路の回路構成の一例を示す回路図。
図9】第1実施形態の変形例における選択回路とAPDユニットの回路構成の一例を示す回路図。
図10】第1実施形態に係る光検出器が備える画素に含まれたシフト回路の回路構成の一例を示す回路図。
図11】第1実施形態に係る光検出器が備える画素に含まれたシフト回路の他の構成例を示す回路図。
図12】第1実施形態に係る光検出器が備えるアバランシェフォトダイオードの構造の一例と単一光子アバランシェダイオードの動作原理とを示す概略図。
図13】第1実施形態に係る光検出器におけるアクティブ領域の設定の一例を示す平面図。
図14】第1実施形態に係る光検出器におけるアクティブ領域の設定の一例を示す平面図。
図15】第1実施形態に係る光検出器の平面レイアウトの一例を示す平面図。
図16】第1実施形態に係る光検出器が備える画素の平面レイアウトの一例を示す平面図。
図17】第1実施形態に係る光検出器が備える画素の平面レイアウトの一例を示す平面図。
図18】第1実施形態に係る光検出器が備える画素の断面構造の一例を示す、図17のXVIII-XVIII線に沿った断面図。
図19】第1実施形態に係る光検出器が備える画素の断面構造の一例を示す、図17のXIX-XIX線に沿った断面図。
図20】第1実施形態に係る光検出器が備える画素の断面構造の一例を示す、図17のXX-XX線に沿った断面図。
図21】第1実施形態に係る光検出器が備える画素の断面構造の一例を示す、図17のXXI-XXI線に沿った断面図。
図22】第1実施形態の比較例に係る光検出器の平面レイアウトの一例を示す平面図。
図23】アバランシェ現象による2次発光の波長依存性を示す説明図。
図24】比較例と第1実施形態とのそれぞれにおいて、アバランシェフォトダイオードに到達する光を模式的に示した説明図。
図25】第2実施形態に係る光検出器が備える画素に含まれたAPDユニット及び選択回路の回路構成の一例を示す回路図。
図26】第2実施形態に係る光検出器が備える画素の平面レイアウトの一例を示す平面図。
図27】第2実施形態に係る光検出器が備える画素の断面構造の一例を示す、図26のXXVII-XXVII線に沿った断面図。
図28】第1実施形態の第1変形例に係る光検出器が備える受光部の平面レイアウトの一例を示す平面図。
図29】第1実施形態の第2変形例に係る光検出器が備える受光部の平面レイアウトの一例を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、実施形態について図面を参照して説明する。各実施形態は、発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示している。図面は模式的又は概念的なものであり、各図面の寸法及び比率等は必ずしも現実のものと同一とは限らない。図面に示された“X方向”、“Y方向”及び“Z方向”は、互いに交差する方向に対応している。本発明の技術的思想は、構成要素の形状、構造、配置等によって特定されるものではない。
【0008】
尚、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一の符号が付されている。参照符号を構成する文字の後の数字等は、同じ文字を含んだ参照符号によって参照され、且つ同様の構成を有する要素同士を区別するために使用される。同じ文字を含んだ参照符号で示される要素を相互に区別する必要がない場合、これらの要素はそれぞれ文字のみを含んだ参照符号により参照される。
【0009】
[1]第1実施形態
第1実施形態に係る距離計測装置1は、例えば当該距離計測装置1と対象物TGと間の距離を計測することが可能なLiDAR(Light Detection and Ranging)の一種である。以下に、第1実施形態に係る距離計測装置1について説明する。
【0010】
[1-1]距離計測装置1の構成
[1-1-1]距離計測装置1の全体構成
図1は、第1実施形態に係る距離計測装置1の全体構成の一例を示す概略図である。図1に示すように、本例では、距離計測装置1の前方に、測距の対象物TGとして車両が配置されている。そして、第1実施形態に係る距離計測装置1は、制御部10、出射部20、受光部30、及び計測部40を備えている。
【0011】
制御部10は、距離計測装置1の全体の動作を制御する。制御部10は、例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、発振器を含んでいる(図示せず)。ROMは、距離計測装置1の動作に使用されるプログラム等を記憶している。CPUは、ROMに格納されたプログラムに従って、出射部20、受光部30、及び計測部40を制御する。RAMは、CPUの作業領域として使用される。発振器は、間欠的なパルス信号の生成に使用される。制御部10は、様々なデータ処理や、演算処理を実行することも可能である。
【0012】
出射部20は、レーザ光を間欠的に生成及び出射する。生成及び出射されたレーザ光は、対象物TGに照射され、距離計測装置1と対象物TGとの間の距離の計測に使用される。本明細書では、出射部20から出射されたレーザ光のことを、“出射光L1”と呼ぶ。対象物TGによって反射された出射光L1のことを、“反射光L2”と呼ぶ。尚、出射部20は、投光部と呼ばれても良い。
【0013】
受光部30は、距離計測装置1に入射した光を検出して、受光結果を計測部40に転送する。言い換えると、受光部30は、距離計測装置1に入射した光を電気信号に変換して、変換した電気信号を計測部40に転送する。受光部30は、距離計測装置1に間欠的に入射する反射光L2の検出に使用される。
【0014】
計測部40は、受光部30から転送された受光結果に基づいて、受光部30が反射光L2を検出した時刻を計測する。そして、計測部40は、出射部20から出射光L1が出射された時刻と、受光部30が反射光L2を検出した時刻とに基づいて、距離計測装置1と対象物TGとの間の距離を計測する。出射部20から出射光L1が出射された時刻は、例えば制御部10から通知される。
【0015】
図2は、第1実施形態に係る距離計測装置1の測距方法の概要を示す概略図である。入力電圧の波形は、出射部20に含まれた光源に供給される電圧の時間変化を示している。受光結果の波形は、受光部30が検出した光に基づいた電気信号の強度の時間変化を示している。図2に示すように、出射部20の光源にパルス信号が供給されると、パルス信号の立ち上がりに基づいて出射光L1が生成及び出射される。そして、当該出射光L1が対象物TGに照射され、受光部30が、対象物TGから反射した反射光L2を検出する。
【0016】
計測部40は、出射部20から出射光L1が出射された出射時刻T1と、受光部30が反射光L2を検出した受光時刻T2との差に基づいて、出射光L1の飛行時間(ToF:Time of Flight)を算出する。そして、計測部40は、出射光L1の飛行時間とレーザ光の速度とに基づいて、距離計測装置1と対象物TGとの間の距離を計測(測距)する。このような距離計測装置1の測距方法は、“ToF方式”とも呼ばれる。計測部40は、距離計測装置1が出射及び受光する出射光L1及び反射光L2の組毎に、測距結果を出力する。
【0017】
尚、計測部40は、少なくとも出射光L1の出射に関する時間に基づいて出射時刻T1を決定し、反射光L2の受光に関する時間に基づいて受光時刻T2を決定していれば良い。例えば、計測部40は、出射時刻T1及び受光時刻T2を、信号の立ち上がり時間に基づいて決定しても良いし、信号のピーク時刻に基づいて決定しても良い。制御部10は、出射部20、受光部30、及び計測部40毎に設けられても良い。計測部40の処理が制御部10によって実行されても良い。距離計測装置1は、計測部40の測距結果に基づいた画像を生成する画像処理部を有していても良い。このような画像は、距離計測装置1を搭載した車両等の制御プログラムによって参照される。
【0018】
[1-1-2]出射部20の構成
図3は、第1実施形態に係る距離計測装置1の備える出射部20及び受光部30の構成の一例を示す概略図である。図3に示すように、第1実施形態における出射部20は、駆動回路21及び22、光源23、光学系24、及びミラー25を含む。
【0019】
駆動回路21は、制御部10の発振器から入力されたパルス信号に応じて駆動電流を生成する。そして、駆動回路21は、生成した駆動電流を光源23に供給する。つまり、駆動回路21は、光源23の電流供給源として機能する。
【0020】
駆動回路22は、制御部10による制御に応じて駆動電流を生成する。そして、駆動回路22は、生成した駆動電流をミラー25に供給する。つまり、駆動回路22は、ミラー25の電源回路として機能する。
【0021】
光源23は、レーザダイオード等のレーザ光源である。光源23は、駆動回路21から供給された間欠的な駆動電流(パルス信号)に基づいて、レーザ光(出射光L1)を間欠的に出射する。光源23により出射されたレーザ光は、光学系24に入射する。
【0022】
光学系24は、複数のレンズや光学素子を含み得る。光学系24は、光源23により出射される出射光L1の光路上に配置される。例えば、光学系24は、入射した出射光L1をコリメートして、コリメートした出射光L1をミラー25に導光する。光学系24は、ビームシェイパや、ビームスプリッタ等を含んでいても良い。
【0023】
ミラー25は、駆動回路22から供給される駆動電流に基づいて駆動し、当該ミラー25に入射した出射光L1を反射する。例えば、ミラー25の反射面は、互いに交差する2つの軸を中心として回転或いは揺動可能に構成される。ミラー25によって反射された出射光L1が、距離計測装置1の外部の対象物TGに照射される。
【0024】
第1実施形態に係る距離計測装置1において、制御部10は、ミラー25を制御して出射光L1の出射方向を変更することによって、測距したい領域をスキャンする。出射部20は、レーザ光を用いたスキャンをすることが可能な構成を有していれば良く、その他の構成であっても良い。例えば、出射部20は、ミラー25によって反射されたレーザ光の光路上に配置された光学系をさらに備えていても良い。
【0025】
本明細書では、距離計測装置1によって測距される領域のことを、“スキャン領域SA”と呼ぶ。距離計測装置1は、スキャン領域SA内で複数点の計測動作を実行し、様々な対象物TGとの距離を計測する。また、1回のスキャンに対応する複数点の測距結果の組のことを“フレーム”と呼ぶ。距離計測装置1は、スキャンを連続的に実行することによって、距離計測装置1の前方の対象物TGとの距離を逐次取得することが出来る。
【0026】
図4は、第1実施形態に係る距離計測装置1によるスキャン方法の一例を示すテーブルである。図4に示されたテーブルは、スキャン方法の名称とスキャン方法の具体例との3種類の組み合わせを示している。図4において、符号“L1”は、関連付けられたスキャン方法における出射光L1の形状及び出射タイミングを示している。“スキャン位置”の矢印は、スキャン領域SA内で、複数の出射光L1が順に照射される経路を模式的に示している。“左方向”及び“右方向”は、紙面上の左方向及び右方向をそれぞれ示している。
【0027】
図4(1)に示されたスキャン方法では、例えばドット状の照射面を有する出射光L1が使用される。そして、距離計測装置1は、左右方向のスキャンを繰り返し実行する。具体的には、距離計測装置1が、右方向にスキャンした後に、折り返して左方向にスキャンして、再び右方向にスキャンした後に、再び折り返して左方向にスキャンする。このようなスキャン方法は、“ラスタスキャン”と呼ばれている。ラスタスキャンを実現する手段としては、ミラー25として、例えば2軸のミラーを使用すること等が考えられる。尚、この例では折り返して左方向にスキャンしているが、折り返しが省略され、右方向のスキャンだけであってもよい。
【0028】
図4(2)に示されたスキャン方法では、縦方向に細長い形状の照射面を有する出射光L1が使用される。この場合、出射部20が、例えばコリメータレンズ及びシリンドリカルレンズを有している。そして、距離計測装置1が、縦一列に複数の画素PXを同時に照射して、右方向にスキャンする。このようなスキャン方法は、“マルチチャネルスキャン”と呼ばれている。マルチチャネルスキャンを実現する手段としては、ミラー25として、ポリゴンミラー、回転ミラーや1軸のMEMSミラーを使用することが考えられる。マルチチャネルスキャンは、ミラー25を使用せずに、距離計測装置1自身を回転させることによって実現されても良い。マルチチャネルスキャンは、一度のレーザ出射で複数の画素PXを同時に照射することができる。このため、マルチチャネルスキャンが使用されることによって、ラスタスキャンよりも、高解像及び/或いは高フレームレートが可能とされる。
【0029】
図4(3)に示されたスキャン方法では、縦方向に細長い形状の照射面を有する出射光L1が使用される。この場合、出射部20が、例えば異方性のある非球面コリメータレンズを有している。そして、距離計測装置1が、縦一列に複数の画素を同時に照射して、右方向にスキャンした後に、垂直位置がずらされたスキャンを繰り返し実行する。このようなスキャン方法は、“マルチチャネルラスタスキャン”と呼ばれている。マルチチャネルラスタスキャンを実現する手段としては、ミラー25として、異なるチルト角を有するポリゴンミラー、回転ミラー及び2軸のミラー等を使用すること等が考えられる。マルチチャネルラスタスキャンも、一度のレーザ出射で複数の画素PXを同時に照射できるため、ラスタスキャンよりも、高解像及び/或いは高フレームレートが可能となる。逆に、ある程度の高解像及び高フレームレートを得るためには、ラスタスキャン或いはマルチチャネルラスタスキャンが使用されることが好ましい。
【0030】
以上で説明されたスキャン方法は、あくまで一例である。図4(1)~(3)に示されたスキャン方法は、機械的な方法に対応している。距離計測装置1は、別のスキャン方法として、OPA方法(Optical Phased Array)を使用しても良い。1回のスキャンにおける直線経路の数やスキャン方向は、その他の設定であっても良い。第1実施形態に係る距離計測装置1による動作及び効果は、出射光L1のスキャン方法に依存しない。このため、第1実施形態に係る距離計測装置1は、機械的な方法とOPA方法とのいずれを用いて、スキャンを実行しても良い。以下では、距離計測装置1がマルチチャネルラスタスキャンを使用する場合について説明する。
【0031】
[1-1-3]受光部30の構成
再び図3を参照して、第1実施形態に係る距離計測装置1が備える受光部30の構成について説明する。図3に示すように、受光部30は、例えば、光学系31、光検出器32、及び出力回路33を含む。
【0032】
光学系31は、少なくとも1つのレンズを含み得る。光学系31は、距離計測装置1に入射した反射光L2を光検出器32に集める。
【0033】
光検出器32は、光学系31を介して当該光検出器32に入射した光を電気信号に変換する。光検出器32は、例えば、半導体を用いた光電子増倍素子を含む。光電子増倍素子としては、例えば、アバランシェフォトダイオードの一種である、単一光子アバランシェダイオード(SPAD:Single-Photon Avalanche Diode)が使用される。光検出器32によって変換された電気信号(受光結果)は、出力回路33に転送される。
【0034】
出力回路33は、光検出器32から転送された電気信号をデジタル信号に変換して、受光結果に対応するデジタル信号を計測部40に出力する。
【0035】
第1実施形態に係る距離計測装置1において、受光部30の光検出器32の光軸は、出射部20の光源23の光軸と異なっている。つまり、距離計測装置1は、出射部20及び受光部30の間で非同軸の光学系を有している。尚、受光部30は、距離計測装置1に入射した反射光L2を検出可能であれば、その他の構成、例えば同軸光学系や、分離光学系であっても良い。
【0036】
図5は、第1実施形態に係る距離計測装置1が備える受光部30の平面レイアウトの一例を示す平面図であり、光検出器32の一部を拡大して示している。図5に示すように、光検出器32は、例えば矩形の受光面を有する。そして、受光部30は、光検出器32と重なるように設けられたマイクロレンズアレイMLAをさらに有している。
【0037】
マイクロレンズアレイMLAは、例えば光学系31に含まれる。マイクロレンズアレイMLAは、複数のマイクロレンズMLを有する。複数のマイクロレンズMLは、例えばマトリクス状に配置される。複数のマイクロレンズMLは、複数のアバランシェフォトダイオードAPDにそれぞれ重なっている。また、マイクロレンズMLは、自身を透過した光が、関連付けられたアバランシェフォトダイオードAPDに入射するように構成される。
【0038】
アバランシェフォトダイオードAPDは、制御部10によってアクティブ状態又は非アクティブ状態に設定可能に構成される。アクティブ状態のアバランシェフォトダイオードAPDは、当該アバランシェフォトダイオードAPDに入射した光を検知し、検知結果を示す光信号を出力回路33に出力する。非アクティブ状態のアバランシェフォトダイオードAPDは、省電力な状態であり、光を検知することができない。第1実施形態に係る光検出器32では、Y方向に隣り合う2つのアバランシェフォトダイオードAPDが、1つの画素PXを構成している。図5において、受光部30の拡大部分に付加された破線のグリッドは、各画素PXの領域を例示している。
【0039】
画素PXは、光検出器32が光を検出することが可能な領域の最小単位として使用される。画素PXを構成するアバランシェフォトダイオードAPDの数は、少なくとも1つ以上であれば良い。複数のアバランシェフォトダイオードAPDを含む画素PXは、シリコン光増倍素子(SiPM:Silicon Photomultiplier)とも呼ばれる。光検出器32が検出可能な光のダイナミックレンジは、1つの画素PXが含むアバランシェフォトダイオードAPDの数に応じて変化し得る。各画素PXには、例えばカラムアドレスCA及びロウアドレスRAの組が割り当てられる。すなわち、各画素PXは、カラムアドレスCA及びロウアドレスRAの組によって特定され得る。本明細書では、説明を簡単にするために、マイクロレンズアレイMLAの左上を原点としてカラムアドレスCA及びロウアドレスRAが割り当てられる場合について説明する。
【0040】
[1-1-4]計測部40の構成
図6は、第1実施形態に係る距離計測装置1の備える計測部40の構成の一例を示す概略図である。図3に示すように、計測部40は、例えば、アンプ(例えばTIA:Trans Impedance Amplifier)、アナログデジタル変換器ADC、及び平均化回路SATを含む。
【0041】
TIA及びADCのそれぞれの数は、光検出器32の出力、すなわち選択された画素PXの出力と等しい。具体的には、選択された画素PXの出力は、TIA及びADCを介して、SATに入力される。SATは、選択された画素PXの信号と、周囲の画素PXからの信号を平均化(時分割積算)した結果(距離値やピーク輝度等)を出力する。SATは、他の平均化回路と異なり、画素PX毎に結果を出力する。このため、SATは、解像度の低下を抑制し得る。
【0042】
具体的には、SATは、光検出器32の出力毎に、少なくとも1つの輝度バッファLBを備えている。本例では、SATは、光検出器32の出力毎に、n番目の出射光L1の輝度値を保持する輝度バッファLB(n)と、(n-1)番目の出射光L1の輝度値を保持する輝度バッファLB(n-1)とを有している。SATに含まれた各輝度バッファLB(n)及びLB(n-1)の出力は、SATの演算部に入力される。
【0043】
演算部は、積算ゲートを用いた時分割積算処理や、突出部(ピーク)の検出及び補間処理等を実行し得る。SATでは、一つ前の計測(マルチチャネルラスタスキャンの場合、例えば、左側の画素PXの計測結果)のADCサンプリング結果、つまり輝度の時系列信号が、輝度バッファLB(n-1)によって保持される。また、SATでは、周辺の画素PXの類似性を判別して、類似している時系列信号が抽出されて積算される。画素PXの類似性の判別基準としては、例えば、各々の時系列信号の底部(フロア)値の類似性と、突出部(ピーク)の値の類似性との両方が使用される。
【0044】
これにより、SATは、対象物の類似・同一性を高い確度で判別でき、異なる対象物からの信号、すなわちノイズを除外して、信号のS/N比(Signal to Noise Ratio)を高めることが出来る。また、SATは、画素PXのダイナミックレンジを実効的に高めることが出来る。以下で説明される画素PXは、高解像を実現することが可能である。一方で、画素PXは、ダイナミックレンジが低くなる傾向を有する。このため、第1実施形態に係る距離計測装置1は、SATを利用することによって、高解像を維持しつつ、ダイナミックレンジの問題を緩和している。
【0045】
[1-2]光検出器32の構成
図7は、第1実施形態に係る光検出器32の構成の一例を示すブロック図であり、1つの画素PXに関連付けられた構成要素を表示している。図7に示すように、光検出器32は、カラム選択線CSL(n,m)と、ロウ選択線RSL(m)と、画素PX(n,m)とを含む。“n”及び“m”は、それぞれカラムアドレスCA及びロウアドレスRAを示している。“n”、“m”のそれぞれは、1以上の整数である。1つの画素PXは、カラムアドレスCAとロウアドレスRAとの組によって特定され得る。
【0046】
カラム選択線CSL(n,m)は、画素PX(n,m)に接続され、画素PX(n,m)に対してカラム選択信号を転送するための配線である。光検出器32では、例えば画素PX毎に、カラム選択線CSLが設けられる。
【0047】
ロウ選択線RSL(m)は、同じロウアドレスRAを共有する複数の画素PXに接続され、当該画素PXに対してロウ選択信号を転送するための配線である。光検出器32は、例えばY方向に並んだ画素PXの数に対応して、複数のロウ選択線RSLを備えている。
【0048】
各画素PXは、例えば、2つのAPDユニット51A及び51Bと、選択回路52と、シフト回路53とを含む。APDユニット51A及び51Bのそれぞれは、光の検出に使用可能なアバランシェフォトダイオードAPDを含む回路である。APDユニット51A及び51Bのそれぞれの出力は、選択回路52に入力される。
【0049】
選択回路52は、カラム選択線CSL(n,m)と、ロウ選択線RSL(m)とに接続される。選択回路52は、入力されたカラム選択信号及びロウ選択信号に基づいて、画素PX(n,m)をアクティブ状態又は非アクティブ状態にする。アクティブ状態の画素PXは、受光結果を、選択回路52を介して計測部40に出力する(“OUT”)。非アクティブ状態の画素PXは、受光結果を計測部40に出力しない。尚、この例では、選択回路52とAPDユニット51とが分離されているが、選択回路の一部がAPDユニット51に含まれていても良い。
【0050】
シフト回路53は、制御信号R_Shiftx及びL_Shiftxに基づいて、画素PX(n,m)に入力されたカラム選択信号を、画素PX(n,m+1)に接続されたカラム選択線CSL(n,m+1)、画素PX(n-1,m+1)に接続されたカラム選択線CSL(n-1,m+1)、又は画素PX(n+1,m+1)に接続されたカラム選択線CSL(n+1,m+1)に転送する。
【0051】
制御信号R_Shiftx及びL_Shiftxのそれぞれは、制御部10によって生成され、シフト回路53に入力される。制御信号R_Shiftxは、光検出器32のアクティブ領域の一部を右側(X座標の正側)にシフトさせるための信号である。制御信号L_Shiftxは、光検出器32のアクティブ領域の一部を左側(X座標の負側)にシフトさせるための信号である。アクティブ領域は、光検出器32内で反射光L2の検出に使用され、少なくとも1つの画素PXによって構成される領域である。アクティブ領域の設定の一例については後述する。この例では、カラム選択線CSLに対してシフト回路が適用されているが、ロウ選択線RSLに対してシフト回路によるシフト機能が適用されても良い。また、光検出器32が2つのシフト回路を備えることによって、カラム選択線CSLとロウ選択線RSLとの両方に、シフト回路によるシフト機能が適用されても良い。
【0052】
[1-2-1]画素PXの回路構成
以下に、第1実施形態における画素PXの回路構成について説明する。
【0053】
(APDユニット51A及び51B及び選択回路52の回路構成)
図8は、第1実施形態に係る光検出器32が備える画素PXに含まれたAPDユニット51A及び51B並びに選択回路52の回路構成の一例を示す回路図である。図8に示すように、APDユニット51Aは、アバランシェフォトダイオードAPD0、保護抵抗Rs0、ダイオードDI0、及びクエンチ抵抗Rq0を含む。APDユニット51Bは、アバランシェフォトダイオードAPD1、保護抵抗Rs1、ダイオードDI1、及びクエンチ抵抗Rq1を含む。選択回路52は、P型トランジスタPM0及びPM1を含む。また、画素PXは、ノードN0~N3、並びに配線W0~W4を含む。
【0054】
アバランシェフォトダイオードAPD0のアノードは、基板電圧Vsubが印加されるノードに接続される。アバランシェフォトダイオードAPD0のカソードは、保護抵抗Rs0の一端に接続される。保護抵抗Rs0の他端は、ノードN0に接続される。ダイオードDI0は、整流ダイオードである。ダイオードDI0のカソードは、ノードN0に接続される。ダイオードDI0のアノードは、ノードN2に接続される。クエンチ抵抗Rq0の一端は、ノードN0に接続される。クエンチ抵抗Rq0の他端は、ノードN3に接続される。
【0055】
アバランシェフォトダイオードAPD1のアノードは、基板電圧Vsubが印加されるノードに接続される。アバランシェフォトダイオードAPD1のカソードは、保護抵抗Rs1の一端に接続される。保護抵抗Rs1の他端は、ノードN1に接続される。ダイオードDI1は、整流ダイオードである。ダイオードDI1のカソードは、ノードN1に接続される。ダイオードDI1のアノードは、ノードN2に接続される。クエンチ抵抗Rq1の一端は、ノードN1に接続される。クエンチ抵抗Rq1の他端は、ノードN3に接続される。
【0056】
ノードN2は、定電圧ノードDOUTに接続される。定電圧ノードDOUTに印加される電圧は、通常、アバランシェフォトダイオードAPD0において電子雪崩が停止する電圧とダイオードDI0の閾値電圧Vthとの和と、アバランシェフォトダイオードAPD1において電子雪崩が停止する電圧とダイオードDI1の閾値電圧Vthとの和とのそれぞれよりも低い電圧に設定される。
【0057】
P型トランジスタPM0のソースは、ノードN3に接続される。P型トランジスタPM0のボディは、電源ノードVDDに接続される。P型トランジスタPM0のゲートには、カラム選択線CSLが接続され、カラム選択信号が入力される。P型トランジスタPM1のソースは、P型トランジスタPM0のドレインに接続される。P型トランジスタPM1のボディは、電源ノードVDDに接続される。P型トランジスタPM1のゲートには、ロウ選択線RSLが接続され、ロウ選択信号が入力される。P型トランジスタPM1のドレインは、画素PXの出力ノードOUTに接続される。つまり、アクティブ状態の画素PXは、P型トランジスタPM1のドレインから、アバランシェフォトダイオードAPDの受光結果に相当する出力信号を出力する。尚、P型トランジスタPM0及びPM1の接続順番は、逆であっても良い。この場合、アクティブ状態の画素PXは、P型トランジスタPM0のドレインから、出力信号を出力する。
【0058】
配線W0は、アバランシェフォトダイオードAPD0と保護抵抗Rs0とを接続する配線に対応している。配線W1は、ノードN0とダイオードDI0とを接続する配線に対応している。配線W2は、アバランシェフォトダイオードAPD1と保護抵抗Rs1とを接続する配線に対応している。配線W3は、ノードN1とダイオードDI1とを接続する配線に対応している。配線W4は、ノードN3に接続された配線に対応している。
【0059】
尚、画素PXは、ノードN3に接続されたN型トランジスタをさらに備えても良く、非アクティブ状態においてノードN3に蓄積されたキャリアを、当該N型トランジスタを介して放出させても良い。例えば、ノードN3に2つのN型トランジスタが並列に接続され、当該2つのN型トランジスタの他端が電位の低い電源線VSSに接続される。そして、当該2つのN型トランジスタのそれぞれのゲートに、それぞれカラム選択線CSLとロウ選択線RSLとが接続される。非アクティブ時には、カラム選択線CSLとロウ選択線RSLとの何れかの電圧が“H”レベルとなり、並列に接続された2つのN型トランジスタの何れかがオン状態になる。これにより、ノードN3に不要に蓄積されたキャリアが、ノードN3に2つのN型トランジスタが接続されない場合よりも、電源線VSSに放出され得る。
【0060】
また、クエンチ抵抗Rq0は、トランジスタの様なアクティブ素子であっても良い。図9は、第1実施形態の変形例における選択回路52とAPDユニット51の回路構成の一例を示す回路図である。図9に示すように、第1実施形態の変形例における選択回路52及びAPDユニット51は、例えば、電源線100及び110、P型トランジスタ120及び121、N型トランジスタ130及び131、インバータ140、141、142、143及び144、NAND回路150、並びにノードN11、N12及びN13を含む。
【0061】
電源線100には、電源電圧Vddが印加される。電源線110は、接地される(接地電圧Vss)。P型トランジスタ120のソースは、電源線100に接続される。P型トランジスタ120のドレインは、ノードN11に接続される。P型トランジスタ120のゲートは、ノードN12に接続される。P型トランジスタ121のソースは、電源線100に接続される。P型トランジスタ121のドレインは、ノードN12に接続される。P型トランジスタ121のゲートは、ノードN13に接続される。N型トランジスタ130のドレインは、ノードN11に接続される。N型トランジスタ130のソースは、電源線110に接続される。N型トランジスタ131のドレインは、ノードN12に接続される。N型トランジスタ131のソースは、電源線110に接続される。N型トランジスタ131のゲートは、ノードN11に接続される。
【0062】
インバータ140の入力端は、ノードN11に接続される。インバータ140の出力端は、インバータ141の入力端に接続され、出力ノードOUTに対応している。インバータ142の出力端は、インバータ143の入力端に接続される。インバータ143の出力端は、NAND回路150の第1入力端に接続される。NAND回路150の第2入力端は、カラム選択線CSLに接続される。NAND回路150の第3入力端は、ロウ選択線RSLに接続される。NAND回路150の出力端は、インバータ144の入力端と、P型トランジスタ121のゲートとのそれぞれに接続される。インバータ144の出力端は、N型トランジスタ130のゲートに接続される。アバランシェフォトダイオードAPDのアノードは、ノードN12に接続される。アバランシェフォトダイオードAPDのカソードには、基板電圧Vsubが印加される。
【0063】
第1実施形態の変形例における選択回路52及びAPDユニット51によるクエンチの方式は、アクティブ・クエンチと呼ばれている。図9に示された回路は、カラム選択線CSLとロウ選択線RSLとのそれぞれが選択されている場合に、出力ノードOUTからパルスが出力される。カラム選択線CSLとロウ選択線RSLとのそれぞれが選択されていない場合は、出力ノードOUTからの出力が無い。カラム選択線CSLとロウ選択線RSLとのそれぞれが選択されている際に、アバランシェフォトダイオードAPDにてアバランシェ降伏が起きると、ノードN12の電圧(Vcathode)が低下し、ノードN11の電圧(Midpoint)が高くなる。すると、N型トランジスタ131がオン状態になり、ノードN12の電圧が低くなり、クエンチングが発生する。その後、一定の遅延を伴って、ノードN13の電圧(Pdrive)が“L”レベルとなり、P型トランジスタ121がオン状態になる。また、ノードN11の電圧も低下して、素早く元の状態に戻ろうとする。
【0064】
第1実施形態の変形例における選択回路52及びAPDユニット51は、クエンチ抵抗Rq0とアバランシェフォトダイオードAPDとの接合容量で時定数が決定される図8の回路と比べて、リカバリ時間を短くすることが出来る。すなわち、第1実施形態の変形例における選択回路52及びAPDユニット51は、次のフォトンを、図8の回路と比べてより早く検出できるようになるため、光検出器32のダイナミックレンジを大きくすることが出来る。
【0065】
(シフト回路53の回路構成)
図10は、第1実施形態に係る光検出器32が備える画素PXに含まれたシフト回路53の回路構成の一例を示す回路図であり、カラム選択線CSL(n,m)に関連付けられたシフト回路53に注目して示している。図10に示すように、シフト回路53は、第1シフト回路531、インバータ532、第2シフト回路533、及びインバータ534を含む。また、シフト回路53は、入力端子FR(From Right)及びFL(From Left)と、出力端子TR(To Right)及びTL(To Left)と、ノードN4~N10とを含む。
【0066】
第1シフト回路531は、P型トランジスタPM2及びN型トランジスタNM0を含む。P型トランジスタPM2のソースは、ノードN4に接続される。P型トランジスタPM2のドレインは、出力端子TLに接続される。画素PX(n,m)のシフト回路53の出力端子TLは、画素PX(n-1,m)のシフト回路53の入力端子FRに接続される。P型トランジスタPM2のボディは、電源ノードVDDに接続される。P型トランジスタPM2のゲートは、ノードN5に接続される。N型トランジスタNM0のドレインは、ノードN4に接続される。N型トランジスタNM0のソースは、ノードN6に接続される。N型トランジスタNM0のボディは、接地ノードVSSに接続される。N型トランジスタNM0のゲートは、ノードN5に接続される。
【0067】
ノードN5には、制御信号L-Shiftxが入力される。制御信号L-Shiftxは、例えば制御部10及び光検出器32内の論理回路によって生成される。第1シフト回路531は、制御信号L-Shiftxが“L”レベルである場合に、画素PX(n,m)に入力されたカラム選択信号を、出力端子TLを介して、画素PX(n-1,m)のシフト回路53の入力端子FRに転送する。一方で、第1シフト回路531は、制御信号L-Shiftxが“H”レベルである場合に、画素PX(n,m)に入力されたカラム選択信号を、ノードN6に転送する。つまり、第1シフト回路531は、制御部10及び光検出器32内の論理回路による制御信号L-Shiftxの制御に基づいて、カラム制御信号を、画素PX(n-1,m)に転送する機能を有する。
【0068】
ノードN6には、入力端子FRが接続される。つまり、画素PX(n,m)のシフト回路53のノードN6には、画素PX(n+1,m)のシフト回路53の出力端子TLを介して出力されたカラム選択信号が入力され得る。具体的には、制御信号L-Shiftxが“L”レベルである場合に、画素PX(n+1,m)に入力されたカラム選択信号が、画素PX(n,m)のシフト回路53のノードN6に入力される。
【0069】
インバータ532は、P型トランジスタPM3及びN型トランジスタNM1を含む。P型トランジスタPM3及びN型トランジスタNM1のそれぞれのゲートは、ノードN6に接続される。P型トランジスタPM3のソース及びボディは、電源ノードVDDに接続される。N型トランジスタNM1のソース及びボディは、接地ノードVSSに接続される。P型トランジスタPM3及びN型トランジスタNM1のそれぞれのドレインは、ノードN7に接続される。これにより、インバータ532は、ノードN6の電圧が“L”レベルである場合に、ノードN7と電源ノードVDDとの間の電流経路を形成して、ノードN7の電圧を“H”レベルに上昇させる。一方で、インバータ532は、ノードN6の電圧が“H”レベルである場合に、ノードN7と接地ノードVSSとの間の電流経路を形成して、ノードN7の電圧を“L”レベルに下降させる。
【0070】
第2シフト回路533は、P型トランジスタPM4及びN型トランジスタNM2を含む。P型トランジスタPM4のソースは、ノードN7に接続される。P型トランジスタPM4のドレインは、出力端子TRに接続される。画素PX(n,m)のシフト回路53の出力端子TRは、画素PX(n+1,m)のシフト回路53の入力端子FLに接続される。P型トランジスタPM4のボディは、電源ノードVDDに接続される。P型トランジスタPM4のゲートは、ノードN8に接続される。N型トランジスタNM2のドレインは、ノードN7に接続される。N型トランジスタNM2のソースは、ノードN9に接続される。N型トランジスタNM2のボディは、接地ノードVSSに接続される。N型トランジスタNM2のゲートは、ノードN8に接続される。
【0071】
ノードN8には、制御信号R-Shiftxが入力される。制御信号R-Shiftxは、例えば制御部10及び光検出器32内の論理回路によって生成される。第2シフト回路533は、制御信号R-Shiftxが“L”レベルである場合に、画素PX(n,m)に入力されたカラム選択信号を、出力端子TRを介して、画素PX(n+1,m)のシフト回路53の入力端子FLに転送する。一方で、第2シフト回路533は、制御信号R-Shiftxが“H”レベルである場合に、画素PX(n,m)に入力されたカラム選択信号を、ノードN9に転送する。つまり、第2シフト回路533は、制御部10及び光検出器32内の論理回路による制御信号R-Shiftxの制御に基づいて、カラム制御信号を、画素PX(n+1,m)に転送する機能を有する。
【0072】
ノードN9には、入力端子FLが接続される。つまり、画素PX(n,m)のシフト回路53のノードN9には、画素PX(n-1,m)のシフト回路53の出力端子TRを介して出力されたカラム選択信号が入力され得る。具体的には、制御信号R-Shiftxが“L”レベルである場合に、画素PX(n-1,m)に入力されたカラム選択信号が、画素PX(n,m)のシフト回路53のノードN9に入力される。
【0073】
インバータ534は、P型トランジスタPM5及びN型トランジスタNM3を含む。P型トランジスタPM5及びN型トランジスタNM3のそれぞれのゲートは、ノードN9に接続される。P型トランジスタPM5のソース及びボディは、電源ノードVDDに接続される。N型トランジスタNM3のソース及びボディは、接地ノードVSSに接続される。P型トランジスタPM5及びN型トランジスタNM3のそれぞれのドレインは、ノードN10に接続される。これにより、インバータ534は、ノードN9の電圧が“L”レベルである場合に、ノードN10と電源ノードVDDとの間の電流経路を形成して、ノードN10の電圧を“H”レベルに上昇させる。一方で、インバータ534は、ノードN9の電圧が“H”レベルである場合に、ノードN10と接地ノードVSSとの間の電流経路を形成して、ノードN10の電圧を“L”レベルに下降させる。
【0074】
ノードN10は、カラム選択線CSL(n,m+1)に接続される。つまり、ノードN10の電圧は、画素PX(n,m+1)に入力されるカラム選択信号に対応している。シフト回路53に入力されたカラム選択信号は、偶数個のインバータを介して次のシフト回路53に転送される。このため、シフト回路53に入力されたカラム選択信号と、当該シフト回路53によって画素PX(n-1,m+1)、PX(n,m+1)、又はPX(n+1,m+1)に転送されるカラム選択信号との論理レベルは一致する。
【0075】
尚、以上で説明されたシフト回路53の回路構成は、あくまで一例である。各画素PXのシフト回路53は、入力されたカラム選択信号を、Y方向(ロウ方向)に隣り合う画素PXと、当該Y方向に隣り合う画素PXをX方向(カラム方向)に挟む2つの画素PXのそれぞれとの何れかに転送する機能を有していれば良い。シフト回路53は、光検出器32がアクティブ領域のシフト機能を利用しない場合に省略されても良い。例えば、制御信号L-Shiftx及びR-Shiftxとのそれぞれは、制御部10によって生成され、光検出器32内の周辺回路でロウ毎に生成される。
【0076】
また、シフト回路53は、以上で説明された機能を実現することが可能であれば、その他の回路構成であっても良い。図11は、第1実施形態に係る光検出器32が備える画素PXに含まれたシフト回路53の他の構成例を示す回路図である。図11に示された演算結果“A”、“B”、及び“C”は、それぞれ“A=/R・/L+R・L”、“B=R・/L”、“C=/R・L”により算出される。これらの数式の“R”及び“L”は、それぞれ制御信号R-Shiftx及びL-Shitxに対応している。信号名の先頭に“/”が付された信号は、反転信号であることを示している。
【0077】
図11に示すように、シフト回路53Aは、NAND回路200、210、220及び230を含む。NAND回路200には、カラム選択線CSL(n,m)と、“A”の演算結果とが入力される。NAND回路210には、カラム選択線CSL(n-1,m)と、“B”の演算結果とが入力される。NAND回路220には、カラム選択線CSL(n+1,m)と、“C”の演算結果とが入力される。NAND回路230には、NAND回路200、210及び220のそれぞれの出力が入力される。NAND回路230の出力が、カラム選択線CSL(n,m+1)に接続される。
【0078】
シフト回路53Aも、シフト回路53と同様に動作し得る。このように、第1実施形態に係る光検出器32が備えるシフト回路は、図10に示されたようなトランスファーゲートを用いたシフト回路53に限定されず、図11に示されたようなトランスファーゲートを用いないシフト回路53Aであっても良い。但し、シフト回路53Aは、シフト回路53と比べて、1画素PX辺りのトランジスタ数と、シフト制御線とが多くなる。シフト回路53の回路構成は、光検出器32のレイアウトに応じて、自由に設計され得る。
【0079】
[1-2-2]SPADの動作の概要
図12は、第1実施形態に係る光検出器32が備えるアバランシェフォトダイオードAPDの構造の一例と単一光子アバランシェダイオードSPADの動作原理とを示す概略図である。図12に示すように、第1実施形態におけるアバランシェフォトダイオードAPDは、半導体基板SUB、P型半導体層EP及びPDP、並びにN型半導体層PDNを含む。
【0080】
半導体基板SUBは、例えばP型の半導体基板である。半導体基板SUBの上に、P型半導体層EP及びPDP、及びN型半導体層PDNが、この順番に積層されている。P型半導体層EPは、例えばエピタキシャル層であり、P型半導体層PDPよりも厚く形成される。P型半導体層PDPにドープされたP型不純物の濃度は、P型半導体層EPにドープされたP型不純物の濃度よりも高い。P型半導体層PDPとN型半導体層PDNとの接触部分には、PN接合が形成される。これにより、P型半導体層PDP及びN型半導体層PDNが、アバランシェフォトダイオードAPDのアノード及びカソードとしてそれぞれ使用される。
【0081】
光検出器32において、アバランシェフォトダイオードAPDは、ガイガーモードで使用される。そして、アバランシェフォトダイオードAPDを用いたSPADは、フォトン単位の光を検出して、電気信号に変換する。以下に、図12に示されたアバランシェフォトダイオードAPDを用いたSPADの動作原理について説明する。
【0082】
アバランシェフォトダイオードAPDに高い逆バイアスが印加されると、P型半導体層PDPとN型半導体層PDNとの間に強い電界が発生する(図12(1))。すると、P型半導体層PDPとN型半導体層PDNとのPN接合部分からP型半導体層EPの領域に亘って、空乏層が形成される(図12(2))。このとき、アバランシェフォトダイオードAPDが、光を検出可能な状態(以下、アクティブ状態と呼ぶ)になる。アクティブ状態のアバランシェフォトダイオードAPDに光が照射されると、光エネルギーの一部が空乏層に到達する(図12(3))。すると、空乏層に、電子と正孔の対、すなわちキャリアが発生する(図12(4))。
【0083】
空乏層に発生したキャリアは、PN接合の近傍の強い電界によりドリフトする(図12(5))。具体的には、発生したキャリアのうち正孔が、半導体基板SUB側に向かって加速され、発生したキャリアのうち電子が、N型半導体層PDN側に向かって加速される。N型半導体層PDN側に向かって加速された電子は、PN接合の近傍の強い電界の下で、原子と衝突する。すると、原子に衝突した電子が、当該原子をイオン化させて、新たな電子と正孔の対を発生させる。このような電子と正孔の対の発生は、アバランシェフォトダイオードAPDに印加された逆バイアスの電圧が、アバランシェフォトダイオードAPDのブレークダウン電圧を超えている場合に繰り返される(図12(6)アバランシェ降伏)。
【0084】
アバランシェ降伏が発生すると、アバランシェフォトダイオードAPDが放電する(図12(7)ガイガー放電)。アバランシェフォトダイオードAPDから出力された電流は、例えばクエンチ抵抗Rqに流れる。すると、画素PXの出力ノードOUTにおいて、電圧降下が発生する(図12(8)クエンチング)。クエンチングによって、アバランシェフォトダイオードAPDに印加された逆バイアスの電圧がブレークダウン電圧未満になると、ガイガー放電が停止する。それから、アバランシェフォトダイオードAPDに対するリカバリ電流が流入され、PN接合における容量の充電が行われる。ガイガー放電が止まった暫く後に、アバランシェフォトダイオードAPDが、光を検出可能な状態に戻る。
【0085】
尚、画素PXが含むアバランシェフォトダイオードAPDは、その他の構造であっても良い。例えば、P型半導体層PDPが省略されても良い。P型半導体層EP、P型半導体層PDP、及びN型半導体層PDNのそれぞれの厚さは、アバランシェフォトダイオードAPDの設計に応じて変更され得る。アバランシェフォトダイオードAPDのPN接合は、半導体基板SUBと、半導体基板SUBの上の半導体層との接触部分に形成されても良い。アバランシェフォトダイオードAPDは、図12に示されたP型半導体層とN型半導体層とが入れ替えられた構造を有していても良い。
【0086】
[1-2-3]アクティブ領域の設定例
以下に、光検出器32に対するアクティブ領域の設定例について説明する。
【0087】
第1実施形態に係る距離計測装置1に入射する反射光L2は、出射光L1のスキャン位置と光学系31の設計とに基づいて、光検出器32の一部に照射される。これに対して、制御部10は、各画素PXを、反射光L2の照射位置に基づいて、アクティブ状態又は非アクティブ状態にする。以下では、アクティブ状態の画素PXのことを“オン画素”とも呼び、非アクティブ状態の画素PXのことを“オフ画素”とも呼ぶ。つまり、オン画素を含む領域が、光検出器32のアクティブ領域に対応している。アクティブ領域は、距離計測装置1の計測動作において、出射光L1毎に設定される。
【0088】
アクティブ領域の設定において、制御部10は、例えば、出射光L1が出射されたタイミングのミラー25の傾きに関連付けられた画素PXのX座標及びY座標を選択する。そして、制御部10は、選択したX座標及びY座標を光検出器32に通知する。それから、光検出器32は、制御部10によって通知(選択)されたX座標及びY座標に基づいて、アクティブ領域を設定する。
【0089】
アクティブ領域の設定に使用されるX座標及びY座標は、例えば、アクティブ領域の左上の画素PXの座標を示している。マルチチャネルスキャンが実行される場合、アクティブ領域は、スキャン方向と交差する方向(例えばY方向)に沿って並んだ複数のオン画素によって形成される。尚、アクティブ領域は、スキャン方向(例えばX方向)に広がりを有していても良い。アクティブ領域の位置及び形状は、少なくとも制御部10によって指定された座標に基づいて設定されていれば良い。
【0090】
光検出器32は、アクティブ領域AA内の画素PXによる受光結果を、例えばロウアドレスRAを共有する画素PX毎に出力する。これにより、アクティブ領域外の画素PXからのノイズが、光検出器32の受光結果から除去され、受光結果のS/N比が高くなる。また、アクティブ領域外の画素PXに対する電圧の印加が適宜省略されるため、光検出器32の消費電力が抑制される。
【0091】
また、第1実施形態に係る距離計測装置1において、光検出器32は、シフト回路53によってアクティブ領域の形状を変更することが出来る。以下に、マルチチャネルラスタスキャンにおいて、シフト回路53によるシフト機能が利用されない場合のアクティブ領域の設定例と、シフト回路53によるシフト機能が利用される場合のアクティブ領域の設定例とについて順に説明する。
【0092】
(シフト機能が利用されない場合のアクティブ領域の設定例)
図13は、第1実施形態に係る光検出器32におけるアクティブ領域の設定の一例を示す平面図であり、シフト機能が利用されない場合のアクティブ領域の設定を例示している。また、図13は、光検出器32内で、カラムアドレスCAに関連付けられたX座標“0”~“7”と、ロウアドレスRAに関連付けられたY座標“0”~“3”とに対応する部分を表示している。選択された画素PXは、太線で囲われている。オン画素には、ハッチングが付加されている。
【0093】
図13に示すように、座標(2(X座標),0(Y座標))が選択された場合、光検出器32は、選択された画素PXを基準として、ロウ方向(Y方向)に沿った複数の画素PXをオン画素に設定する。本例では、光検出器32が、座標(2,0)の画素PXが選択されたことに基づいて、座標(2,1)の画素PXと、座標(2,2)の画素PXと、座標(2,3)の画素PXとのそれぞれをオン画素に設定し、その他の画素PXをオフ画素に設定している。つまり、座標(2,0)、(2,1)、(2,2)及び(2,3)のそれぞれの画素PXによって、アクティブ領域が形成される。そして、座標(2,0)、(2,1)、(2,2)及び(2,3)のそれぞれの画素PXが、個別に受光結果を出力する。
【0094】
シフト機能が利用されない場合、制御部10は、例えば、制御信号L_Shiftx及びR_Shiftxのそれぞれを“H”レベルにする。すると、例えば画素PX(n,m)のシフト回路53に入力されたカラム選択信号が、画素PX(n,m+1)に転送される。その結果、選択された画素PXを基準として、下側で隣り合うオン画素がY方向に隣り合ったアクティブ領域が設定される。尚、選択された座標を基準としてオン画素に設定される画素PXの数は、X方向とY方向とのそれぞれにおいて自由に設定され得る。
【0095】
(シフト機能が利用される場合のアクティブ領域の設定例)
図14は、第1実施形態に係る光検出器32におけるアクティブ領域の設定の一例を示す平面図であり、シフト機能が利用される場合のアクティブ領域の設定を例示している。また、図14は、光検出器32内で、カラムアドレスCAに関連付けられたX座標“0”~“7”と、ロウアドレスRAに関連付けられたY座標“0”~“3”とに対応する部分を表示している。選択された画素PXは、太線で囲われている。オン画素には、ハッチングが付加されている。
【0096】
図14に示すように、座標(2(X座標),0(Y座標))が選択された場合、光検出器32は、選択された画素PXを基準として、ロウ方向(Y方向)に沿った複数の画素PXをオン画素に設定し、本例では、アクティブ領域を右側(X座標の正側)にシフトさせる。具体的には、光検出器32が、座標(2,0)の画素PXが選択されたことに基づいて、座標(3,1)の画素PXと、座標(4,2)の画素PXと、座標(5,3)の画素PXとのそれぞれをオン画素に設定し、その他の画素PXをオフ画素に設定する。つまり、座標(2,0)、(3,1)、(4,2)及び(5,3)のそれぞれの画素PXによって、アクティブ領域が形成される。そして、座標(2,0)、(3,1)、(4,2)及び(5,3)のそれぞれの画素PXが、個別に受光結果を出力する。
【0097】
アクティブ領域を右側(X座標の正側)にシフトさせる場合、制御部10は、例えば、制御信号L_Shiftxを“H”レベルにして、制御信号R_Shiftxを“L”レベルにする。すると、例えば画素PX(n,m)のシフト回路53は、入力されたカラム選択信号を、画素PX(n+1,m+1)に転送する。その結果、選択された画素PXを基準として、下側で隣り合うオン画素が右側に1画素ずつシフトされたアクティブ領域が設定される。アクティブ領域を左側(X座標の負側)にシフトさせる場合の動作は、シフト方向が逆である点を除いて、アクティブ領域を右側にシフトさせる場合の動作と同様である。
【0098】
尚、制御部10は、スキャン位置に応じてシフト機能を適宜使用することが出来る。選択された座標を基準としてオン画素に設定される画素PXの数は、X方向とY方向とのそれぞれにおいて自由に設定され得る。シフト回路53によるアクティブ領域のシフト機能は、X方向に並んだ複数の画素PXがアクティブ状態に設定される場合についても同様に使用され得る。
【0099】
[1-3]光検出器32の構造
以下に、第1実施形態に係る距離計測装置1が備える光検出器32の構造の一例について説明する。尚、以下で参照される図面において、Z方向は、光検出器32の形成に使用される半導体基板の上面に対する鉛直方向に対応している。平面図には、図を見易くするためにハッチングが適宜付加されている。平面図に付加されたハッチングは、ハッチングが付加された構成要素の素材や特性とは必ずしも関連していない。断面図では、図を見易くするために、構成の図示が適宜省略されている。上側、下側、左側、及び右側は、それぞれ図面が記載された紙面の上側、下側、左側、及び右側に対応している。
【0100】
[1-3-1]光検出器32の平面レイアウト
図15は、第1実施形態に係る光検出器32の平面レイアウトの一例を示す平面図であり、画素PXの詳細な形状とアバランシェフォトダイオードAPDの配置とを表示している。図15に示すように、光検出器32は、X方向に沿って分割された複数の領域C1及びC2を含み、Y方向に沿って分割された複数の領域R1、R2、R3及びR4を含む。
【0101】
領域C1と領域C2との組は、X方向に繰り返し配置される。領域R1、R2、R3及びR4の組は、Y方向に繰り返し配置される。以下では、説明を簡単にするために、奇数番目に配置された領域C1のことを“C1o”とも呼び、偶数番目に配置された領域C1のことを“C1e”とも呼ぶ。同様に、奇数番目に配置された領域1のことを“R1o”とも呼び、偶数番目に配置された領域R1のことを“R1e”とも呼ぶ。
【0102】
アバランシェフォトダイオードAPDは、領域C2と領域R2とが重なる領域(C2,R2)毎に配置される。各画素PXは、Y方向に隣り合う2つのアバランシェフォトダイオードAPD0及びAPD1を含む。複数の画素PXは、マトリクス状に配置される。また、各画素PXに含まれた回路素子は、画素PXを構成する2つのアバランシェフォトダイオードAPDの近傍の領域に分散して配置される。
【0103】
領域C1oの右側と領域C1eの左側と領域R1oの下側と領域R1eの上側とによって囲まれた部分に対応する画素PX0に注目すると、画素PX0の回路素子は、領域C1oと領域R1eとが重なる領域(C1o,R1e)と、領域C2と領域R1oとが重なる領域(C2,R1o)と、領域C2と領域R3とが重なる領域(C2,R3)と、領域C1eと領域R2とが重なる領域(C1e,R2)と、領域C1eと領域R4とが重なる領域(C1e,R4)とのそれぞれに分散して配置される。
【0104】
領域C1eの右側と領域C1oの左側と領域R1oの下側と領域R1eの上側とによって囲まれた部分に対応する画素PX1に注目すると、画素PX1の回路素子は、領域C1eと領域R1eとが重なる領域(C1e,R1e)と、領域C2と領域R1oとが重なる領域(C2,R1o)と、領域C2と領域R3とが重なる領域(C2,R3)と、領域C1oと領域R2とが重なる領域(C1o,R2)と、領域C1oと領域R4とが重なる領域(C1o,R4)とのそれぞれに分散して配置される。
【0105】
領域C1oの右側と領域C1eの左側と領域R1eの下側と領域R1oの上側とによって囲まれた部分に対応する画素PX2に注目すると、画素PX2の回路素子は、領域C1oと領域R1oとが重なる領域(C1o,R1o)と、領域C2と領域R1eとが重なる領域(C2,R1e)と、領域C2と領域R3とが重なる領域(C2,R3)と、領域C1eと領域R2とが重なる領域(C1e,R2)と、領域C1eと領域R4とが重なる領域(C1e,R4)とのそれぞれに分散して配置される。
【0106】
領域C1eの右側と領域C1oの左側と領域R1eの下側と領域R1oの上側とによって囲まれた部分に対応する画素PX3に注目すると、画素PX3の回路素子は、領域C1eと領域R1oとが重なる領域(C1e,R1o)と、領域C2と領域R1eとが重なる領域(C2,R1e)と、領域C2と領域R3とが重なる領域(C2,R3)と、領域C1oと領域R2とが重なる領域(C1o,R2)と、領域C1oと領域R4とが重なる領域(C1o,R4)とのそれぞれに分散して配置される。
【0107】
画素PX0及びPX1は、X方向に交互に配置される。画素PX2及びPX3は、X方向に交互に配置される。画素PX0及びPX2は、Y方向に交互に配置される。画素PX1及びPX3は、Y方向に交互に配置される。領域(C1,R1)と、領域(C2,R1)、領域(C2,C3)、領域(C1,R2)と、領域(C1,R4)とのそれぞれにおいて、配置される回路素子の構成は、画素PX毎に共通である。
【0108】
言い換えると、領域(C1,R1)内の回路素子は、右上で隣り合う画素PXに関連付けられている。領域(C2,R1)内の回路素子は、下側で隣り合う画素PXに関連付けられている。領域(C2,R3)は、当該領域(C2,R3)を挟むアバランシェフォトダイオードAPD0及びAPD1を含む画素PXに関連付けられている。領域(C1,R2)内の回路素子は、左側で隣り合う画素PXに関連付けられている。領域(C1,R4)内の回路素子は、左側で隣り合う画素PXに関連付けられている。
【0109】
以上で説明されたように、画素PXに含まれた回路素子は、当該画素PXの近傍において非対称に配置される。このため、画素PXの形状は、X方向及びY方向のそれぞれで非対称である。尚、画素PXの形状は、その他の形状であっても良い。例えば、図15に示された画素PXの形状が、左右に反転されても良いし、上下に反転されても良いし、上下及び左右のそれぞれで反転されても良い。画素PXに含まれた回路素子は、少なくとも当該画素PXを構成するアバランシェフォトダイオードAPDの近傍に配置されていれば良い。画素PXの形状は、画素PXに含まれた回路素子の配置に応じて適宜変更され得る。
【0110】
[1-3-2]画素PXの平面レイアウト
次に、画素PXの詳細な平面レイアウトの一例について説明する。尚、画素PX0~PX3は、互いに類似した平面レイアウトを有する。このため、以下では画素PX0に注目して、画素PXについて説明する。図16及び図17のそれぞれは、第1実施形態に係る光検出器32が備える画素PXの平面レイアウトの一例を示す平面図である。
【0111】
図16は、画素PX0を含む領域を拡大して示しており、光検出器32が備える一部の構成の平面レイアウトを表示している。図16に示すように、光検出器32は、複数のトレンチ部DTと、ウェル領域DNWとを備えている。
【0112】
複数のトレンチ部DTのそれぞれは、絶縁体あるいは金属等が埋め込まれた構造を有する。各トレンチ部DTは、アバランシェフォトダイオードAPDを囲んだ環状に設けられる。トレンチ部DTの平面形状は、例えば八角形の環状である。ウェル領域DNWは、N型不純物を含む半導体領域である。ウェル領域DNWは、例えば、各トレンチ部DTによって囲まれていない領域に設けられる。
【0113】
具体的には、画素PX0が形成される領域は、トレンチ部DT0及びDT1を含む。トレンチ部DT0及びDT1は、それぞれ領域(C2,R2)及び(C2,R4)に設けられる。トレンチ部DT0は、アバランシェフォトダイオードAPD0が形成される領域を囲んでいる。トレンチ部DT1は、アバランシェフォトダイオードAPD1が形成される領域を囲んでいる。言い換えると、トレンチ部DT0は、ウェル領域DNWと、アバランシェフォトダイオードAPD0との間に設けられる。トレンチ部DT1は、ウェル領域DNWと、アバランシェフォトダイオードAPD1との間に設けられる。
【0114】
図17は、図16と重なる領域を示しており、光検出器32が備える一部の構成の平面レイアウトを表示している。図17に示すように、画素PX0が形成される領域において、光検出器32は、例えば、N型半導体層PDN0及びPDN1と、ウェル領域PW0、PW1及びPW2と、ウェル領域NW0及びNW1と、複数のコンタクトプラグCPと、複数のゲート電極GEとをさらに備えている。
【0115】
N型半導体層PDN0及びPDN1のそれぞれは、N型不純物を含む半導体領域である。N型半導体層PDN0及びPDN1は、それぞれトレンチ部DT0及びDT1によって囲まれている。N型半導体層PDN0及びPDN1は、それぞれアバランシェフォトダイオードAPD0及びAPD1の一部として使用される。N型半導体層PDN0及びPDN1のそれぞれに、少なくとも1本のコンタクトプラグCPが接続される。
【0116】
ウェル領域PW0、PW1及びPW2のそれぞれは、P型不純物を含む半導体領域である。ウェル領域PW0は、各領域(C2,R1)に配置される。ウェル領域PW1は、各領域(C1,R1)に配置される。ウェル領域PW2は、X方向に延伸して設けられ、各領域R3に配置される。ウェル領域PW0及びPW1のそれぞれは、N型半導体領域PN及びP型半導体領域PPを含む。ウェル領域PW2は、少なくとも1つのN型半導体領域PNとP型半導体領域PPとを含む。N型半導体領域PNが含むN型不純物の濃度は、ウェル領域PWが含むP型不純物の濃度よりも高い。P型半導体領域PPが含むP型不純物の濃度は、ウェル領域PWが含むP型不純物の濃度よりも高い。N型半導体領域PN及びP型半導体領域PPのそれぞれに、コンタクトプラグCPが接続される。
【0117】
ウェル領域PW0は、N型半導体領域PNに接続されたコンタクトプラグCPを介して配線W1に接続され、P型半導体領域PPに接続されたコンタクトプラグCPを介してノードN2に接続される。ウェル領域PW0とN型半導体領域PNとの接触部分は、ダイオードDI0の一部として機能するPN接合を形成している。
【0118】
ウェル領域PW1は、N型半導体領域PNに接続されたコンタクトプラグCPを介して配線W3に接続され、P型半導体領域PPに接続されたコンタクトプラグCPを介してノードN2に接続される。ウェル領域PW1とN型半導体領域PNとの接触部分は、ダイオードDI1の一部として機能するPN接合を形成している。
【0119】
ウェル領域PW2内の各N型半導体領域PNには、少なくとも1本のゲート電極GEが重なるように設けられる。そして、ウェル領域PW2内の各N型半導体領域PNには、少なくとも1本のゲート電極GEを挟むように、少なくとも2本のコンタクトプラグCPが接続される。ウェル領域PW2内でN型半導体領域PNとゲート電極GEとが組み合わされた部分が、N型トランジスタNMとして機能する。また、ウェル領域PW2に設けられたN型トランジスタNMのボディには、P型半導体領域PPに接続されたコンタクトプラグCPを介して電圧が印加される。ウェル領域PW2には、例えば4つのN型トランジスタNMが設けられる。
【0120】
ウェル領域NW0及びNW1のそれぞれは、N型不純物を含む半導体領域である。ウェル領域NW0は、各領域(C1,R2)に配置される。ウェル領域NW1は、各領域(C1,R4)に配置される。また、ウェル領域NW0及びNW1のそれぞれは、少なくとも1つのP型半導体領域NPと、N型半導体領域NNとを含む。P型半導体領域NPが含むP型不純物の濃度は、ウェル領域NWが含むN型不純物の濃度よりも高い。N型半導体領域NNが含むN型不純物の濃度は、ウェル領域NWが含むN型不純物の濃度よりも高い。P型半導体領域NP及びN型半導体領域NNのそれぞれに、少なくとも1本のコンタクトプラグCPが接続される。
【0121】
ウェル領域NW0内の各N型半導体領域PNには、少なくとも1本のゲート電極GEが重なるように設けられる。そして、ウェル領域NW0内の各P型半導体領域NPには、少なくとも1本のゲート電極GEを挟むように、少なくとも2本のコンタクトプラグCPが接続される。ウェル領域PW0内でP型半導体領域NPとゲート電極GEとが組み合わされた部分が、P型トランジスタPMとして機能する。また、ウェル領域NW0に設けられたP型トランジスタPMのボディには、N型半導体領域NNに接続されたコンタクトプラグCPを介して電圧が印加される。ウェル領域NW0には、例えば3つのP型トランジスタPMが設けられる。
【0122】
ウェル領域NW1内の各N型半導体領域PNには、少なくとも1本のゲート電極GEが重なるように設けられる。そして、ウェル領域NW1内の各P型半導体領域NPには、少なくとも1本のゲート電極GEを挟むように、少なくとも2本のコンタクトプラグCPが接続される。ウェル領域PW1内でP型半導体領域NPとゲート電極GEとが組み合わされた部分が、P型トランジスタPMとして機能する。また、ウェル領域NW1に設けられたP型トランジスタPMのボディには、N型半導体領域NNに接続されたコンタクトプラグCPを介して電圧が印加される。ウェル領域NW1には、例えば3つのN型トランジスタNMが設けられる。
【0123】
画素PX0の選択回路52は、例えば、領域(C1e,R2)内に配置された2つのP型トランジスタPMによって構成される。画素PX0のシフト回路53は、例えば、領域(C1e,R2)内に配置された1つのP型トランジスタPMと、領域(C1e,R4)内に配置された3つのP型トランジスタPMと、領域R3内に配置された4つのN型トランジスタNMとによって構成される。
【0124】
配線W0は、例えば、X方向に沿って延伸した部分と、Y方向に沿って延伸した部分とを有する。配線W0は、N型半導体層PDN0に接続されたコンタクトプラグCPと、保護抵抗Rs0の一端部分に接続されたコンタクトプラグCPとの間を接続している。保護抵抗Rs0は、例えばX方向に延伸して設けられた部分を有する。保護抵抗Rs0の他端部分は、クエンチ抵抗Rq0の一端部分に対応している。保護抵抗Rs0とクエンチ抵抗Rq0との境界部分に、コンタクトプラグCPが接続される。
【0125】
配線W1は、例えば、X方向に沿って延伸した部分と、Y方向に沿って延伸した部分とを有する。配線W1は、保護抵抗Rs0及びクエンチ抵抗Rq0の境界部分に接続されたコンタクトプラグCPと、ウェル領域PW0内のN型半導体領域PNに接続されたコンタクトプラグCPとの間を接続している。クエンチ抵抗Rq0は、例えば、アバランシェフォトダイオードAPD0の周縁部に沿って延伸して設けられた部分を有する。クエンチ抵抗Rq0の他端部分は、例えば、領域(C1e,R2)の近傍に配置される。クエンチ抵抗Rq0は、少なくともアバランシェフォトダイオードAPD0が形成された領域と重なっていなければ良い。
【0126】
配線W2は、例えば、X方向に沿って延伸した部分と、Y方向に沿って延伸した部分とを有する。配線W2は、N型半導体層PDN1に接続されたコンタクトプラグCPと、保護抵抗Rs1の一端部分に接続されたコンタクトプラグCPとの間を接続している。保護抵抗Rs1は、例えばX方向に延伸して設けられた部分を有する。保護抵抗Rs1の他端部分は、クエンチ抵抗Rq1の一端部分に対応している。保護抵抗Rs1とクエンチ抵抗Rq1との境界部分に、コンタクトプラグCPが接続される。
【0127】
配線W3は、例えば、X方向に沿って延伸した部分と、Y方向に沿って延伸した部分とを有する。配線W3は、保護抵抗Rs1及びクエンチ抵抗Rq1の境界部分に接続されたコンタクトプラグCPと、ウェル領域PW1内のN型半導体領域PNに接続されたコンタクトプラグCPとの間を接続している。クエンチ抵抗Rq1は、例えば、アバランシェフォトダイオードAPD1の周縁部に沿って延伸して設けられた部分を有する。クエンチ抵抗Rq1の他端部分は、例えば、領域(C1e,R4)の近傍に配置される。クエンチ抵抗Rq1は、少なくともアバランシェフォトダイオードAPD1が形成された領域と重なっていなければ良い。
【0128】
配線W4は、例えば、クエンチ抵抗Rq0の他端部分に接続されたコンタクトプラグCPと、クエンチ抵抗Rq1の他端部分に接続されたコンタクトプラグCPと、ウェル領域NW0内で選択回路52を構成するP型トランジスタPMに対応するP型半導体領域NPに接続されたコンタクトプラグCPとの間を接続している。配線W4は、回路の配置に応じて分割されても良い。また、分割された配線W4が、他の配線層に設けられた配線を介して電気的に接続されても良い。
【0129】
以上で説明された第1実施形態に係る光検出器32の一部について言い換えると、ウェル領域DNWが、上面の近傍に、例えば、トレンチ部DTと第1方向に隣り合うウェル領域PW0と、トレンチ部DTと第2方向に隣り合うウェル領域NW0と、トレンチ部DTと第3方向に隣り合うウェル領域PW2と、を含む。ウェル領域PW0に、ダイオードDI0が設けられる。ウェル領域NW0に、P型トランジスタPMが設けられる。ウェル領域PW2に、N型トランジスタNMが設けられる。
【0130】
尚、光検出器32は、アバランシェフォトダイオードAPDの周囲に複数種類のウェル領域が配置され、当該複数種類のウェル領域に画素PXを構成する回路素子が適宜割り当てられた構成を有していれば良い。例えば、第1実施形態で説明された光検出器32は、アバランシェフォトダイオードAPDの左右にN型のウェル領域を有し、アバランシェフォトダイオードAPDの上下にP型のウェル領域を有している。これに限定されず、光検出器32は、アバランシェフォトダイオードAPDの左右にP型のウェル領域を有し、アバランシェフォトダイオードAPDの上下にN型のウェル領域を有していても良い。アバランシェフォトダイオードAPDの周囲に配置されるウェル領域の設計は、画素PXの回路構成に応じて自由に設計され得る。
【0131】
[1-3-3]画素PXの断面構造
次に、第1実施形態に係る光検出器32が備える画素PXの断面構造の一例について説明する。図18図21のそれぞれは、第1実施形態に係る光検出器32が備える画素PXの断面構造の一例を示す断面図である。以下では、アバランシェフォトダイオードAPDを含む断面と、ダイオードDIを含む断面と、N型トランジスタNMを含む断面と、P型トランジスタPMを含む断面とについて順に説明する。
【0132】
(アバランシェフォトダイオードAPDを含む断面)
図18は、図17のXVIII-XVIII線に沿った断面図であり、アバランシェフォトダイオードAPDと保護抵抗Rsとの接続部分を含む断面を表示している。図18に示された一点鎖線は、XVIII-XVIII線に沿った断面の曲がった部分を示している。図18に示すように、アバランシェフォトダイオードAPDと保護抵抗Rsとの接続部分を含む断面において、光検出器32は、例えば、半導体基板SUB、P型半導体層EP、ウェル領域DNW、P型半導体層PDP、N型半導体層PDN、トレンチ部DT、絶縁体層60、導電体層70、コンタクトプラグ80及び81、並びに導電体層90を含む。
【0133】
具体的には、図示された領域では、半導体基板SUBの上に、P型半導体層EPが設けられる。アバランシェフォトダイオードAPDの領域内で、P型半導体層EPの上に、P型半導体層PDPが設けられる。P型半導体層PDPの上に、N型半導体層PDNが設けられる。これらの半導体基板SUB、P型半導体層EP及びPDP、並びにN型半導体層PDNは、図12を用いて説明された半導体基板SUB、P型半導体層EP及びPDP、並びにN型半導体層PDNにそれぞれ対応している。すなわち、P型半導体層EPは、エピタキシャル層であり、PN接合がP型半導体層PDPとN型半導体層PDNとによって形成される。これにより、当該部分がアバランシェフォトダイオードAPDとして機能する。
【0134】
アバランシェフォトダイオードAPDの領域外で、P型半導体層EPの上に、ウェル領域DNWが設けられる。アバランシェフォトダイオードAPDの領域内と領域外との間に、トレンチ部DTが設けられる。トレンチ部DTは、少なくともウェル領域DNWと、N型半導体層PDN及びP型半導体層PDPの組との間を分断している。N型半導体層PDNと、P型半導体層PDと、ウェル領域DNWと、トレンチ部DTとのそれぞれは、半導体基板SUBの上に形成されたエピタキシャル層を基に形成される。そして、N型半導体層PDNと、ウェル領域DNWと、トレンチ部DTとのそれぞれの上面は揃っている。
【0135】
P型半導体層PDNと、ウェル領域DNWと、トレンチ部DTとのそれぞれの上に、絶縁体層60が設けられる。絶縁体層60は、図示された領域外で、N型トランジスタNMやP型トランジスタPMのゲート絶縁膜としても使用される。ウェル領域DNWの上方、且つ絶縁体層60の上に、導電体層70が設けられる。導電体層70は、例えば、不純物がドープされたポリシリコンである。図示された導電体層70の部分は、保護抵抗Rsの一端部分に対応している。コンタクトプラグ80は、導電体層70の上に設けられる。コンタクトプラグ81は、N型半導体層PDNの上に設けられ、絶縁体層60を貫通している。導電体層90は、コンタクトプラグ80及び81の上に設けられ、コンタクトプラグ80及び81の間を接続している。導電体層90は、配線W0に対応している。
【0136】
(ダイオードDIを含む断面)
図19は、図17のXIX-XIX線に沿った断面図であり、ダイオードDIと導電体層70との接続部分を含む断面を表示している。図19に示された一点鎖線は、XIX-XIX線に沿った断面の曲がった部分を示している。図19に示すように、ダイオードDIと導電体層70との接続部分を含む断面において、光検出器32は、例えば、半導体基板SUB、P型半導体層EP、ウェル領域DNW及びPW、N型半導体領域PN、P型半導体領域PP、絶縁体層60、導電体層70、コンタクトプラグ82、83及び84、並びに導電体層91及び92を含む。
【0137】
具体的には、図示された領域では、半導体基板SUBの上に、P型半導体層EPが設けられる。P型半導体層EPの上に、ウェル領域DNWが設けられる。ウェル領域DNWの上面近傍に、ウェル領域PWが設けられる。ウェル領域PWの上面近傍に、N型半導体領域PNとP型半導体領域PPとのそれぞれが設けられる。ウェル領域DNWと、N型半導体領域PNと、P型半導体領域PPとのそれぞれは、半導体基板SUBの上に形成されたエピタキシャル層を基に形成される。そして、ウェル領域DNWと、N型半導体領域PNと、P型半導体領域PPとのそれぞれの上面は揃っている。
【0138】
ウェル領域DNWと、N型半導体領域PNと、P型半導体領域PPとのそれぞれの上に、絶縁体層60が設けられる。ウェル領域DNWの上方、且つ絶縁体層60の上に、導電体層70が設けられる。図示された導電体層70の部分は、保護抵抗Rsの他端部分に対応している。コンタクトプラグ82は、導電体層70の上に設けられる。コンタクトプラグ83は、N型半導体領域PNの上に設けられ、絶縁体層60を貫通している。コンタクトプラグ84は、P型半導体領域PPの上に設けられ、絶縁体層60を貫通している。導電体層91は、コンタクトプラグ82及び83の上に設けられ、コンタクトプラグ82及び83の間を接続している。導電体層91は、配線W1に対応している。導電体層92は、コンタクトプラグ84の上に設けられ、ノードN2に接続される。
【0139】
(N型トランジスタNMを含む断面)
図20は、図17のXX-XX線に沿った断面図であり、直列に接続された2つのN型トランジスタNMを含む断面を表示している。図20に示すように、直列に接続された2つのN型トランジスタNMを含む断面において、光検出器32は、例えば、半導体基板SUB、P型半導体層EP、ウェル領域DNW及びNW、P型半導体領域NP1、NP2及びNP3、絶縁体層60、導電体層71及び72、コンタクトプラグ85及び86、並びに導電体層93及び94を含む。
【0140】
具体的には、図示された領域では、半導体基板SUBの上に、P型半導体層EPが設けられる。P型半導体層EPの上に、ウェル領域DNWが設けられる。ウェル領域DNWの上面近傍に、ウェル領域NWが設けられる。ウェル領域NWの上面近傍に、P型半導体領域NP1、NP2及びNP3のそれぞれが設けられる。ウェル領域DNWと、ウェル領域NWと、P型半導体領域NP1、NP2及びNP3とのそれぞれは、半導体基板SUBの上に形成されたエピタキシャル層を基に形成される。このため、ウェル領域DNWと、ウェル領域NWと、P型半導体領域NP1、NP2及びNP3とのそれぞれの上面は揃っている。
【0141】
ウェル領域NWと、P型半導体領域NP1、NP2及びNP3とのそれぞれの上に、絶縁体層60が設けられる。P型半導体領域NP1及びNP2の間の部分の上方、且つ絶縁体層60の上に、導電体層71が設けられる。P型半導体領域NP2及びNP3の間の部分の上方、且つ絶縁体層60の上に、導電体層72が設けられる。導電体層71及び72のそれぞれは、例えば、導電体層70よりも高濃度に不純物がドープされたポリシリコンであり、P型トランジスタPMのゲート電極GEに対応している。コンタクトプラグ85は、P型半導体領域NP1の上に設けられ、絶縁体層60を貫通している。コンタクトプラグ86は、P型半導体領域NP3の上に設けられ、絶縁体層60を貫通している。導電体層93は、コンタクトプラグ85の上に設けられ、P型トランジスタPMの電流経路の一端に接続されている。導電体層94は、コンタクトプラグ86の上に設けられ、P型トランジスタPMの電流経路の他端に接続されている。
【0142】
(P型トランジスタPMを含む断面)
図21は、図17のXXI-XXI線に沿った断面図であり、1つのP型トランジスタPMを含む断面を表示している。図21に示すように、1つのP型トランジスタPMを含む断面において、光検出器32は、例えば、半導体基板SUB、P型半導体層EP、ウェル領域DNW及びPW、N型半導体領域PN1及びPN2、絶縁体層60、導電体層73、コンタクトプラグ87及び88、並びに導電体層95及び96を含む。
【0143】
具体的には、図示された領域では、半導体基板SUBの上に、P型半導体層EPが設けられる。P型半導体層EPの上に、ウェル領域DNWが設けられる。ウェル領域DNWの上面近傍に、ウェル領域PWが設けられる。ウェル領域PWの上面近傍に、N型半導体領域PN1及びPN2のそれぞれが設けられる。ウェル領域DNWと、ウェル領域PWと、N型半導体領域PN1及びPN2とのそれぞれは、半導体基板SUBの上に形成されたエピタキシャル層を基に形成される。そして、ウェル領域DNWと、ウェル領域PWと、N型半導体領域PN1及びPN2とのそれぞれの上面は揃っている。
【0144】
ウェル領域PWと、N型半導体領域PN1及びPN2とのそれぞれの上に、絶縁体層60が設けられる。N型半導体領域PN1及びPN2の間の部分の上方、且つ絶縁体層60の上に、導電体層73が設けられる。導電体層73は、N型トランジスタNMのゲート電極GEに対応している。コンタクトプラグ87は、N型半導体領域PN1の上に設けられ、絶縁体層60を貫通している。コンタクトプラグ88は、N型半導体領域PN2の上に設けられ、絶縁体層60を貫通している。導電体層95は、コンタクトプラグ87の上に設けられ、N型トランジスタNMの電流経路の一端に接続されている。導電体層96は、コンタクトプラグ88の上に設けられ、N型トランジスタNMの電流経路の他端に接続されている。
【0145】
[1-4]第1実施形態の効果
以上で説明された第1実施形態に係る距離計測装置1に依れば、光検出器32の特性を改善させることが出来る。以下に、第1実施形態の効果の詳細について説明する。
【0146】
距離計測システムの一種であるLIDAR(Light Detection and Ranging)は、レーザを計測対象物に照射し、計測対象物から反射された反射光の強度をセンサで感知し、センサの出力に基づいて時系列のデジタル信号に変換する。そして、LIDARと計測対象物との間の距離が、例えばレーザが発光してから感知した反射光のピークまでの時間差に基づいて計算される。LIDARの計測データは、例えば車両の制御に使用することが想定されるため、遠距離の物体を高解像で検出できることと、高い精度が求められている。
【0147】
また、LIDARを安価に製造するためには、可能な限り簡素な構成であることが好ましい。コストを抑制する方法としては、非同軸光学系と2Dセンサとの組み合わせにより、光学系のコストを抑制することが考えられる。
【0148】
図22は、第1実施形態の比較例に係る光検出器32Aの平面レイアウトの一例を示す平面図であり、2Dセンサにおける画素と画素の制御回路との配置の一例を表示している。図22に示すように、光検出器32Aは、Y方向に沿って交互に並んだ画素領域PAと帯状回路BCとを備える。画素領域PAは、マトリクス常に配置されたアバランシェフォトダイオードAPD(SPAD)を含み、各アバランシェフォトダイオードAPDに、マイクロレンズMLが重なって配置されている。帯状回路BCは、Y方向に隣り合う画素領域Aに含まれたアバランシェフォトダイオードAPDの制御回路を含む。このような複数の帯状回路BCは、光を検出することが出来ない領域(感度のない領域、盲点とも呼ばれる)となり、マイクロレンズアレイMLAで覆うことが出来ない。つまり、2Dセンサとしての開口率が低下し、LIDARの信頼性の低下の要因となる。さらに、感度のない領域が設けられることは、監視範囲であるスキャン領域SAの中に、決して検出の出来ない領域のあることを意味する。車載用途の様な見落としが重大な事故に繋がる応用では、感度のない領域は、致命的な欠点となり得る。
【0149】
これに対して、第1実施形態に係る光検出器32は、アバランシェフォトダイオードAPD(センサ)がトレンチ部DT(分離構造体)で囲われ、トレンチ部DTの周辺にアバランシェフォトダイオードAPDの制御回路が配置された構成を有する。トレンチ部DTの周辺には、半導体基板SUB上のエピタキシャル層(P型半導体層EP)と異なる型の深いウェル領域DNWが設けられる。ウェル領域DNWには、トレンチ部DTの一方部分(例えば上下部分)にP型のウェル領域PWが設けられ、他方部分(例えば左右部分)にN型のウェル領域NWが設けられる。そして、ウェル領域NW及びPWが利用されて、例えば、トレンチ部DTの第1辺側にP型トランジスタPMが設けられ、トレンチ部DTの第2辺側にN型トランジスタNMが設けられ、トレンチ部DTの第3辺側にダイオードDIが設けられる。これらのP型トランジスタPMとN型トランジスタNMとダイオードDIとが利用されて、各画素PXの選択回路52及びシフト回路53が構成される。
【0150】
これにより、第1実施形態に係る光検出器32は、マイクロレンズMLの中央部にアバランシェフォトダイオードAPDを配置することが出来、マイクロレンズアレイMLAによって覆われた受光領域の比率を高めることが出来る。具体的には、第1実施形態の比較例に光検出器32Aの開口率は40%程度であるのに対して、第1実施形態に係る光検出器32の開口率は80%程度に改善する。すなわち、第1実施形態に係る光検出器32は、2Dセンサの開口率を高めることが出来、光検出器32Aよりもセンサの感度を高めることが出来る。さらに、第1実施形態に係る光検出器32は、帯状回路BCを有しないため、受光領域を感度のある領域で満たすことが出来る。その結果、第1実施形態に係る光検出器32は、対象物TGを検出する信頼性を向上させることが出来る。
【0151】
トレンチ部DTによってセンサが囲われた構造は、センサが配置された領域内と領域外との間で、光に限らず、電気的にも分離する機能を有する。これにより、画素PXに含まれた回路素子が、トレンチ部DTが無い場合よりもセンサの近くに配置され得る。また、深いウェル領域DNWが、接地電圧付近の電圧に維持されることによって、センサの周囲の電界集中が緩和される。その結果、第1実施形態に係る光検出器32は、センサの耐圧を保持させることが出来る。
【0152】
また、第1実施形態に係る光検出器32は、2Dセンサであることから、光クロストークノイズを減少させることが出来、Vov(APDの動作バイアス電圧-APDのブレークダウン電圧)を高くすることが出来る。具体的には、光クロストークは、まず、トレンチ部DTにより低減される。しかしながら、トレンチ部DTが絶縁体からなる場合、ある程度の光がトレンチ部DTを透過する。これに対して、第1実施形態に係る光検出器32では、透過した光が他のアバランシェフォトダイオードAPDに達することが、3つの理由により、少なくなる。
【0153】
クロストークが減る第1の理由は、隣接するアバランシェフォトダイオードAPDの間に2つのトレンチ部DTが存在し、それにより、透過率がほぼ2乗で減少するからである。図23は、光クロストークの元になる、アバランシェ現象による2次発光の波長依存性を示す説明図である。図23は、N. Akil, et al, "A Multimechanism Model for Photon Generation by Silicon Junctions in Avalanche Breakdown," IEEE Trans. on Electron Devices vol. 46, No. 5 (1999): 1022-1028.を引用している。図23に示すように、アバランシェ減少による2次発光の波長依存性は、比較的短波長の~2eVにピークを有する。当該波長依存性は、より長波長の発光も有するが、図23の表に示されているように、あまり長波長の光は吸収されない。
【0154】
クロストークが減る第2の理由は、第1実施形態に係る光検出器32では、隣接したアバランシェフォトダイオードAPD間の距離が増えるからである。これにより、短波長の光は、隣接したSPADに達するまでに吸収され得る。例えば、~2eVの光について、左端で発生した光が左側で隣接するSPADに到達する割合は、23.8%(@3.44um(マイクロメートル))から4.29%(@7.54um)のように、~18%まで減少する。
【0155】
クロストークが減る第3の理由は、隣接したSPADに入らない長波長の光が増えるからである。図24は、比較例と第1実施形態とのそれぞれにおいて、アバランシェフォトダイオードに到達する光を模式的に示した説明図である。長波長の光は、隣接するアバランシェフォトダイオードAPDに届き易い。例えば、図24の(A)に示すように、比較例では、アバランシェフォトダイオードAPD間の距離が近いため、長波長の光が、隣接したアバランシェフォトダイオードAPDに届き易い。一方で、図24の(B)に示すように、第1実施形態では、アバランシェフォトダイオードAPD間の距離が、比較例よりも離れているため、比較例よりも、長波長の光が、隣接したアバランシェフォトダイオードAPDに届きにくい。すなわち、第1実施形態の方が、比較例よりも、隣接したアバランシェフォトダイオードAPDに入らない光が増える。
【0156】
以上の3つの理由により、第1実施形態に係る光検出器32は、光クロストークを小さくすることが出来る。その結果、第1実施形態に係る光検出器32は、Vovを高くすることが出来、高いVovにより、光を検出する効率を高くすることが出来る。
【0157】
また、第1実施形態に係る光検出器32は、トレンチ部DTの周囲に規則的にウェル領域NW及びPWが配置された構造を有することによって、トランジスタの配置の面積効率を最適化させることが出来る。そいて、第1実施形態に係る光検出器32では、画素PXに関連付けられた回路素子が、画素PXの周囲の4方向にバランス良く配置される。また、保護抵抗Rsやクエンチ抵抗Rqとして機能する半導体層(ポリシリコン)と、トランジスタのゲート電極GEとして使用される半導体層(ポリシリコン)とが離れて配置され得る。このように、第1実施形態に係る光検出器32は、画素PXが含む回路素子の接続に使用される配線を、信号の流れに沿って最適な配置にすることが出来、配線長を短くすることが出来る。その結果、第1実施形態に係る光検出器32は、ほぼ等間隔に複数の画素PXをマトリクス状に配置することが出来る。さらに、第1実施形態に係る光検出器32は、マトリクス状且つ等間隔に配置されたマイクロレンズMLを有するマイクロレンズアレイMLAが光検出器32の受光領域を覆うことが出来るため、感度のない領域(盲点)を発生させず、開口率を改善させることが出来る。
【0158】
また、第1実施形態に係る光検出器32が備える画素PXは、アバランシェフォトダイオードAPDのカソードに保護抵抗Rsの一端が接続され、保護抵抗Rsの他端がダイオードDIとクエンチ抵抗Rqの一端とのそれぞれに接続され、クエンチ抵抗Rqの他端が選択回路52に含まれたP型トランジスタPMに接続された構成を有する。
【0159】
これにより、画素PXは、大きな光量が照射され、非常に多くのキャリアが生成された場合に、キャリアを早期に放出することが出来、早期にリカバリすることが出来る。また、画素PXは、非選択(非アクティブ状態)である場合に余分なキャリアを定電圧ノードDOUTに逃がすことが出来、且つ、保護抵抗Rsによる電圧降下によって選択回路52等のトランジスタに対する高電圧の印加を避けることが出来る。その結果、画素PXは、非選択時にキャリアを排出するためのトランジスタを省略することができ、画素PXのサイズを小さく設計することが可能となる。従って、画素PXは、センサとして、実質的な開口率を改善させることが出来る。
【0160】
また、画素PXが備える選択回路52は、クエンチ抵抗Rqの他端に直列に接続されたP型トランジスタPM0及びPM1を含む。そして、P型トランジスタPM0及びPM1が、それぞれカラム選択線CSLとロウ選択線RSLとに接続される。これにより、距離計測装置1の制御部10は、垂直方向(ロウ方向)の画素PXと、水平方向(カラム方向)の画素PXとを選択することが出来、光検出器32内の画素PXを選択的にアクティブ状態にすることが出来る。その結果、第1実施形態に係る光検出器32は、消費電力を抑制することが出来る。
【0161】
また、画素PXが備えるシフト回路53は、カラム選択信号を水平方向にシフトする機能を有する。シフト回路53は、制御部10の制御に応じて、水平方向の一方側及び他方側の何れかにカラム選択信号を伝達させることが出来る。さらに、シフト回路53は、水平方向の一方側にシフトさせるための第1シフト回路531の後にインバータ532が接続され、水平方向の他方側にシフトさせるための第2シフト回路533の後にインバータ534が接続された構成を有する。シフト回路53は、インバータ532及び534を介してカラム選択信号を伝達することによって、次の画素PXに受け渡すカラム選択信号の品質を維持することが出来る。
【0162】
これにより、光検出器32は、トランジスタの数を抑制しつつ、アクティブ領域内の画素PXの配置をシフトさせることが出来る。制御部10は、スキャン位置に応じてシフト機能を適宜使用することによって、2Dの光学系において発生し得る傾斜した反射光L2とアクティブ領域の形状とを近づけることが出来る。すなわち、シフト領域が適切に利用されることによって、オン画素の数を最小限に設定され得るため、光検出器32の消費電力が抑制され得る。また、このようなシフト回路53は、トランジスタの数を少なくでき、アバランシェフォトダイオードAPDの周りに効率よく実装させることが出来る。
【0163】
[2]第2実施形態
第2実施形態に係る距離計測装置1は、第1実施形態と異なる回路構成のAPDユニット51を用いて、第1実施形態と同様の効果を実現する。以下に、第2実施形態に係る距離計測装置1について、第1実施形態と異なる点を説明する。
【0164】
[2-1]画素PXの回路構成
図25は、第2実施形態に係る光検出器32が備える画素PXに含まれたAPDユニット51A及び51B並びに選択回路52の回路構成の一例を示す回路図である。図25に示すように、第2実施形態に係る光検出器32が備える画素PXは、第1実施形態で説明された画素PXに対して、ダイオードDI0及びDI1がそれぞれツェナーダイオードTD0及びTD1に置き換えられた回路構成を有する。
【0165】
具体的には、ツェナーダイオードTD0は、ダイオードDI0が省略されたAPDユニット51Aに含まれる。ツェナーダイオードTD1は、ダイオードDI1が省略されたAPDユニット51Bに含まれる。ツェナーダイオードTD0のアノードは、ノードN0に接続される。ツェナーダイオードTD1のカソードは、ノードN2に接続される。ツェナーダイオードTD1のアノードは、ノードN1に接続される。ツェナーダイオードTD1のカソードは、ノードN2に接続される。第2実施形態に係る光検出器32が備える画素PXのその他の回路構成は、第1実施形態に係る光検出器32が備える画素PXの回路構成と同様である。
【0166】
[2-2]光検出器32の構造
[2-2-1]画素PXの平面レイアウト
図26は、第2実施形態に係る光検出器32が備える画素PXの詳細な平面レイアウトの一例を示す平面図である。図26は、図16と重なる領域を示しており、画素PX0を含む領域の平面レイアウトを表示している。図26に示すように、画素PX0が形成される領域において、第2実施形態に係る光検出器32は、第1実施形態で説明された光検出器32で、ウェル領域PW0及びPW1が省略され、ツェナーダイオードTD0及びTD1に関する構成が追加された構成を有する。
【0167】
具体的には、ツェナーダイオードTD0に対応して、領域(C2,R1)に、N型半導体領域ZNと、P型半導体領域ZPとが設けられる。同様に、ツェナーダイオードTD1に対応して、領域(C1,R1)に、N型半導体領域ZNと、P型半導体領域ZPが設けられる。N型半導体領域ZN及びP型半導体領域ZPのそれぞれは、ウェル領域DNW内に形成される。N型半導体領域ZNが含むN型不純物の濃度は、ウェル領域DNWが含むN型不純物の濃度よりも高い。P型半導体領域ZPが含むP型不純物の濃度は、ウェル領域DNWが含むN型不純物の濃度よりも高い。N型半導体領域ZN及びP型半導体領域ZPのそれぞれに、コンタクトプラグCPが接続される。
【0168】
領域(C2,R1)内のN型半導体領域ZNに接続されたコンタクトプラグCPは、例えば配線W1に接続される。領域(C2,R1)内のP型半導体領域ZPに接続されたコンタクトプラグCPは、ノードN2(ツェナーダイオードTD0のN側電極)に接続される。領域(C1,R1)内のN型半導体領域ZNに接続されたコンタクトプラグCPは、例えば配線W3に接続される。領域(C1,R1)内のP型半導体領域ZPに接続されたコンタクトプラグCPは、ノードN2(ツェナーダイオードTD1のN側電極)に接続される。第2実施形態に係る光検出器32では、ウェル領域NW0及びNW1と、ツェナーダイオードTD0及びTD1のN側電極とが電気的に接続されている。
【0169】
第2実施形態に係る光検出器32のその他の平面レイアウトは、第1実施形態に係る光検出器32の平面レイアウトと同様である。尚、本例では、N型半導体領域ZNと配線W1との間を接続するコンタクトプラグCPが2本である。このように、半導体領域と配線とを接続するためのコンタクトプラグCPの本数は、2本以上であっても良い。第2実施形態における画素PXの形状は、第1実施形態と同様に、その他の形状であっても良い。例えば、図26に示された画素PXの形状が、左右に反転されても良いし、上下に反転されても良いし、上下及び左右のそれぞれで反転されても良い。第2実施形態における画素PXの形状は、画素PXに含まれた回路素子の配置に応じて適宜変更され得る。
【0170】
[2-2-2]画素PXの断面構造
図27は、第2実施形態に係る光検出器32が備える画素PXの断面構造の一例を示す、図26のXXVII-XXVII線に沿った断面図である。図27は、ツェナーダイオードTDと保護抵抗Rsとの接続部分を含む断面を表示している。図27に示された一点鎖線は、XXVII-XXVII線に沿った断面の曲がった部分を示している。図27に示すように、ツェナーダイオードTDと保護抵抗Rsとの接続部分を含む断面において、光検出器32は、例えば、半導体基板SUB、P型半導体層EP、ウェル領域DNW、N型半導体領域ZN1及びZN2、P型半導体領域ZP、絶縁体層60、導電体層70、コンタクトプラグ82、83、84及び89、並びに導電体層91及び92を含む。
【0171】
具体的には、図示された領域では、半導体基板SUBの上に、P型半導体層EPが設けられる。P型半導体層EPの上に、ウェル領域DNWが設けられる。ウェル領域DNWの上面近傍に、P型半導体領域ZP及びN型半導体領域ZN1の組と、N型半導体領域ZN2とのそれぞれが設けられる。N型半導体領域ZN1は、P型半導体領域ZPとウェル領域DNWとの間に設けられる。ウェル領域DNWと、P型半導体領域ZPと、N型半導体領域ZN1及びZN2とのそれぞれは、半導体基板SUBの上に形成されたエピタキシャル層を基に形成される。そして、ウェル領域DNWと、P型半導体領域ZPと、N型半導体領域PN2とのそれぞれの上面は揃っている。
【0172】
ウェル領域DNWと、P型半導体領域ZPと、N型半導体領域ZN2とのそれぞれの上に、絶縁体層60が設けられる。絶縁体層60の上に、導電体層70が設けられる。導電体層71は、保護抵抗Rsの他端部分に対応している。コンタクトプラグ82は、導電体層70の上に設けられる。コンタクトプラグ83及び89のそれぞれは、P型半導体領域ZPの上に設けられ、絶縁体層60を貫通している。コンタクトプラグ84は、N型半導体領域ZN2の上に設けられ、絶縁体層60を貫通している。導電体層91は、コンタクトプラグ82、83及び89の上に設けられ、コンタクトプラグ82と、コンタクトプラグ83及び89との間を接続している。導電体層91は、配線W1に対応している。導電体層92は、コンタクトプラグ84の上に設けられ、ノードN2に接続される。第2実施形態に係る距離計測装置1のその他の構成及び構造は、第1実施形態に係る距離計測装置1と同様である。
【0173】
[2-3]第2実施形態の効果
以上で説明されたように、第2実施形態に係る光検出器32は、保護抵抗Rsとクエンチ抵抗Rqとの間に接続されたダイオードとして、ツェナーダイオードTDを使用する。ツェナーダイオードTDは、深いウェル領域DNWを利用して形成される。ツェナーダイオードのN側の電極は、例えばP型トランジスタPMの電源と電気的に接続される。
【0174】
このような場合においても、ツェナーダイオードTDは、第1実施形態で説明されたダイオードDIと同様の整流効果を実現させることが出来る。その結果、第2実施形態に係る光検出器32は、第1実施形態と同様に、光検出器32の性能を改善させることが出来る。また、第2実施形態に係る光検出器32は、ツェナーダイオードTDの出力端子を電源ノードVDDと兼ねることが出来、配線スペース等を節約することが出来る。
【0175】
[3]その他
図28は、第1実施形態の第1変形例に係る光検出器32Bが備える受光部30の平面レイアウトの一例を示す平面図である。図28に示すように、光検出器32Bは、マトリクス状に配置された受光領域DAを備えている。隣り合う受光領域DAの間には、回路領域CRが配置されている。各受光領域DAに、1つのマイクロレンズMLが重なって配置されている。光検出器32Bでは、1つのマイクロレンズMLに、4つのアバランシェフォトダイオードAPDを含む画素PXが重なって配置されている。光検出器32Bでは、1つの画素PXに含まれた複数のアバランシェフォトダイオードAPDのそれぞれが、個別のトレンチ部DTによって囲まれている。同じマイクロレンズMLに重なるトレンチ部DT同士の間隔は、デザインルールで許される最小の間隔となっている。そして、光検出器32Bでは、例えば、トレンチ部DTによって囲まれていない部分に、ウェル領域DNWが設けられる。各画素PXの選択回路52やシフト回路53は、隣り合う回路領域CRの部分に配置される。回路領域CRは、水平に細長い領域(CRAと呼ぶ)、垂直に細長い領域(CRBと呼ぶ)、及びそれらが交わる領域を有する。例えば、CRAの中にP型不純物を含むウェル領域が配置され、CRBの中にN型不純物を含むウェル領域が配置されても良い。また、各CRAの高さが等しく設計されても良いし、各CRBの幅が等しく設計されても良い。更に、各受光領域の選択及びシフト回路が、各受光領域と相対的に同じ位置に配置され、並進対称性を呈させても良い。
【0176】
図29は、第1実施形態の第2変形例に係る光検出器32Cが備える受光部30の平面レイアウトの一例を示す平面図である。光検出器32Cは、光検出器32Bに対して、トレンチ部DTの設計が異なる。具体的には、光検出器32Cでは、1つの画素PXに含まれた複数のアバランシェフォトダイオードAPDのそれぞれが、アバランシェフォトダイオードAPD毎に区切りつつ、連続的に設けられたトレンチ部DTによって囲まれている。光検出器32Cのその他の構成は、光検出器32Bと同様である。回路領域CRは、水平に細長い領域(以下、CRAと呼ぶ)、垂直に細長い領域(以下、CRBと呼ぶ)、及びそれらが交わる領域を有する。例えば、CRAの中にP型不純物を含むウェル領域が配置され、CRBの中にN型不純物を含むウェル領域が配置されても良い。また、各CRAの高さが等しく設計されても良いし、各CRBの幅が等しく設計されても良い。更に、各受光領域の選択及びシフト回路が、各受光領域と相対的に同じ位置に配置され、並進対称性を呈させても良い。
【0177】
以上で説明された光検出器32B及び32Cのそれぞれのように、マイクロレンズMLは、必ずしもアバランシェフォトダイオードAPD毎に設けられていなくても良い。言い換えると、1つのマイクロレンズMLは、隣り合うアバランシェフォトダイオードAPDを覆うように設けられても良い。第1実施形態の第1変形例における受光部30の平面レイアウトと、第1実施形態の第2変形例における受光部30の平面レイアウトとのそれぞれは、第2実施形態と組み合わされても良い。
【0178】
図28及び図29において、同じマイクロレンズMLに含まれるアバランシェフォトダイオードAPDの中心あるいは重心は、マイクロレンズMLの中心とほぼ等しいという特徴を有する。そして、同じマイクロレンズMLに含まれるアバランシェフォトダイオードAPDは、マイクロレンズMLの中心の近くに可能な限り集まっている。これらの特徴により、マイクロレンズMLにより光は中央近くに集光されるため、光はアバランシェフォトダイオードAPDに入り易い。特に、図29の場合は、隣接するアバランシェフォトダイオードAPDの間の間隔が小さいため、多くの光がアバランシェフォトダイオードAPDに入り、高い感度が得られる。一方、各受光領域の光が照射される領域は、ウェル領域と集光により離れているため、画素間の光クロストークは抑制される。また、各画素PXの回路の相対位置が等しいため、画素PXの特性が均一になるという特徴も有する。更に、P型ウェル領域がCRAに集まり、N型ウェル領域がCRBに集まっているため、面積効率よくトランジスタを配置することが出来、解像度をより高く出来る。
【0179】
また、以上で説明された光検出器32B及び32Cのそれぞれでは、1つのマイクロレンズMLに対して4つのアバランシェフォトダイオードAPDが配置される場合について例示したが、1つのマイクロレンズMLが覆うアバランシェフォトダイオードAPDの数は、自由に設計され得る。また、以上の説明では、1つのマイクロレンズMLに対して1つの画素PXが配置される場合について例示したが、1つのマイクロレンズMLが覆う画素PXの数は、自由に設計され得る。各アバランシェフォトダイオードAPDは、少なくとも隣り合うアバランシェフォトダイオードAPD間が分離されるように、トレンチ部DTによって囲まれていれば良い。トレンチ部DTは、連続的に設けられていても良いし、分割されて設けられていても良い。
【0180】
上記実施形態では、制御部10が、出射光L1の出射時刻T1を計測部40に通知する場合について例示したが、これに限定されない。出射時刻T1は、出射光L1が出射部20内で分光され、分光された出射光L1が受光部30に設けられたセンサによって検出された時刻に基づいて設定されても良い。この場合、出射時刻T1は、受光部30から計測部40に通知される。
【0181】
距離計測装置1の各構成の分類は、その他の分類であっても良い。計測部40は、上記実施形態で説明された動作を実現することが可能であれば、その他の分類であっても良い。制御部10に含まれたCPUは、その他の回路であっても良い。例えば、CPUの替わりに、MPU(Micro Processing Unit)等が使用されても良い。また、各実施形態において説明された処理のそれぞれは、専用のハードウェアによって実現されても良い。ソフトウェアにより実行される処理と、ハードウェアによって実行される処理とが混在していても良いし、どちらか一方のみであっても良い。各実施形態において、動作の説明に用いたフローチャートでは、処理の順番が可能な範囲で入れ替えられても良いし、その他の処理が追加されても良い。
【0182】
本明細書において“アクティブ領域”は、受光領域と呼ばれても良い。制御部10の制御に基づきパルス信号が入力された光源23が出射する出射光L1が、パルス信号と呼ばれても良い。“出射部20”は、“投光部”と呼ばれても良い。“H”レベルの電圧は、ゲートに当該電圧が印加されたN型トランジスタがオン状態になり、ゲートに当該電圧が印加されたP型トランジスタがオフ状態になる電圧である。“L”レベルの電圧は、ゲートに当該電圧が印加されたN型トランジスタがオフ状態になり、ゲートに当該電圧が印加されたP型トランジスタがオン状態になる電圧である。“L”レベル及び“H”レベルのそれぞれは、論理レベルと表現されても良い。“導電型”は、“N型”又は“P型”に対応している。“囲う”は、少なくとも半導体基板SUBの表面と平行な面(XY平面)において囲っていれば良い。マイクロレンズMLがアバランシェフォトダイオードAPDを覆っているか否かは、例えばZ方向に重なっている部分に基づいて判断され得る。マイクロレンズMLがアバランシェフォトダイオードAPDを覆っていることは、マイクロレンズMLが、アバランシェフォトダイオードAPDを囲むトレンチ部DTによって囲まれた部分を覆っているか否かに応じて判断されても良い。“2次元に配置されたアバランシェフォトダイオードAPD”は、少なくとも、カラム方向に並んだ複数のアバランシェフォトダイオードと、ロウ方向に並んだ複数のアバランシェフォトダイオードとを含んでいれば良い。“選択された画素PX”は、アクティブ状態の画素PXに対応している。
【0183】
本明細書において“接続”とは、電気的に接続されている事を示し、例えば間に別の素子を介することを除外しない。“上面”は、半導体基板SUBでは回路素子が形成される側の面に対応し、その他の構成では半導体基板SUBから遠い側の面に対応する。“オン状態”とは、対応するトランジスタのゲートに当該トランジスタの閾値電圧以上の電圧が印加されていることを示している。“オフ状態”とは、対応するトランジスタのゲートに当該トランジスタの閾値電圧未満の電圧が印加されていることを示し、例えばトランジスタのリーク電流のような微少な電流が流れることを除外しない。“トランジスタの電流経路”は、トランジスタのチャネルに対応している。“トランジスタの電流経路の一端及び他端”、及び“トランジスタの一端及び他端”のそれぞれは、トランジスタのドレイン又はソースに対応している。“画素PX”は、センサ回路と呼ばれても良い。“アバランシェフォトダイオードAPD”は、センサと呼ばれても良い。“ダイオードDI”は、整流ダイオードと呼ばれても良い。
【0184】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことが出来る。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0185】
1…距離計測装置、10…制御部、20…出射部、21…駆動回路、22…駆動回路、23…光源、24…光学系、25…ミラー、30…受光部、31…光学系、32…光検出器、33…出力回路、40…計測部、51…APDユニット、52…選択回路、53…シフト回路、531…第1シフト回路、532…インバータ、533…第2シフト回路、534…インバータ、60…絶縁体層、70…導電体層、71~73…導電体層、80~89,CP…コンタクトプラグ、90~97…導電体層、100,110…電源線、120,120…トランジスタ、130,131…N型トランジスタ、140~144…インバータ、150,200,210,220,230…NAND回路、PX…画素、APD…アバランシェフォトダイオード、DI…ダイオード、TD…ツェナーダイオード、PM…P型トランジスタ、NM…N型トランジスタ、Rq…クエンチ抵抗、Rs…保護抵抗、N1~N10…ノード、W0~W4…配線、DT…トレンチ部、PDN…N型半導体層、PDP…P型半導体層、C1,C2,R1~R4…領域、NW,PW,DNW…ウェル領域、PN,NN,ZN…N型半導体領域、NP,PP,ZP…P型半導体領域、R-Shiftx,L-Shiftx…制御信号、L1…出射光、L2…反射光、T1…出射時刻、T2…受光時刻
図1
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