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特許7566680電子写真感光体、並びにプロセスカートリッジおよび電子写真装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】電子写真感光体、並びにプロセスカートリッジおよび電子写真装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 5/14 20060101AFI20241007BHJP
   G03G 5/00 20060101ALI20241007BHJP
【FI】
G03G5/14 101E
G03G5/14 101D
G03G5/14 101F
G03G5/00 101
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021063070
(22)【出願日】2021-04-01
(65)【公開番号】P2022158293
(43)【公開日】2022-10-17
【審査請求日】2024-03-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100136799
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 亜希
(72)【発明者】
【氏名】黒岩 育世
(72)【発明者】
【氏名】滝沢 久美子
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 剛志
【審査官】中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-061051(JP,A)
【文献】特開2012-063447(JP,A)
【文献】国際公開第2017/109926(WO,A1)
【文献】特開2019-003131(JP,A)
【文献】特開2018-010240(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 5/14
G03G 5/00
G03G 5/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体、前記支持体上の下引き層、および前記下引き層上の感光層を有する電子写真感光体において、
前記下引き層が、
下記式(1)で示されるシランカップリング剤で表面処理された金属酸化物粒子、
2つ以上のヒドロキシ基を有するポリオール化合物、および
2つ以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物
を含む組成物の硬化膜であることを特徴とする電子写真感光体。
【化1】
(式(1)中、Rは、ヒドロキシ基、または炭素数1~4のアルコキシ基を示す。Rは、ヒドロキシ基、または炭素数1~4のアルコキシ基を示す。Rは、ヒドロキシ基、アルコキシ基、または炭素数1~4のアルキル基を示す。Rは、炭素数1~4のアルキレン基を示す。)
【請求項2】
前記金属酸化物粒子がアナターゼ型酸化チタン粒子である請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項3】
前記金属酸化物粒子がチタン酸ストロンチウム粒子である請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項4】
前記下引き層が、下記式(2)で示される化合物からなる群より選択される化合物を含有する請求項1~3のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
【化2】

(式(2)中、R11~R15は、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、または、アミノ基を示す。
は、ヒドロキシ基、炭素数1~4のアルキル基、または、炭素数1~4のアルコキシ基を示す。)
【請求項5】
前記式(2)で示される化合物が、アミノサリチル酸である請求項4に記載の電子写真感光体。
【請求項6】
前記下引き層の膜厚が、1.0μm以上である請求項1~5のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
【請求項7】
前記下引き層の膜厚が、5.0μm以下である請求項6に記載の電子写真感光体。
【請求項8】
走査型電子顕微鏡を用いて、加速電圧2.0kVで前記下引き層の断面反射電子像を10箇所撮影し、合計10個の断面反射電子像画面(一辺0.9μm×の正方形)を得て、
得られた合計10個の前記断面反射電子像画面のそれぞれを9個(3個×3個)に等分割し、合計90個の断面反射電子像分割画面を得て、
得られた前記断面反射電子像分割画面の断面積をS(α)μm(=0.09μm)とし、得られた90個の前記断面反射電子像分割画面のそれぞれにおいて、観察される前記金属酸化物粒子の断面積の和をS(β)(mは1~90)μmとし、S(β)÷S(α)をA(mは1~90)とし、Aの平均値をA(ave.)とし、Aの標準偏差をA(σ)としたときに、A(ave.)が0.50以上0.90以下であり、かつA(σ)が0.1以下である請求項6または7に記載の電子写真感光体。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の電子写真感光体と、帯電手段、現像手段、転写手段およびクリーニング手段からなる群より選ばれた少なくとも1つの手段と、を一体に支持し、電子写真装置本体に着脱自在であることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか1項に記載の電子写真感光体、帯電手段、露光手段、現像手段、および転写手段を有することを特徴とする電子写真装置。
【請求項11】
支持体、下引き層、感光層を有する電子写真感光体の製造方法において、
下記式(1)で示されるシランカップリング剤で表面処理された金属酸化物粒子、
2つ以上のヒドロキシ基を有するポリオール化合物、
2つ以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物、
を含有し、
乾燥後に前記表面処理された金属酸化物粒子の含有量が50質量%以上90質量%以下となる下引き層形成用塗布液を調製する塗布液調製工程、
前記下引き層形成用塗布液を前記支持体上に塗布し、塗布膜を形成する塗布工程、
前記塗布膜を高温下で乾燥させる乾燥工程、
を備え、
前記下引き層上に感光層を形成する工程を有する電子写真感光体の製造方法。
【化3】
(式(1)中、Rは、ヒドロキシ基、または炭素数1~4のアルコキシ基を示す。Rは、ヒドロキシ基、または炭素数1~4のアルコキシ基を示す。Rは、ヒドロキシ基、炭素数1~4のアルコキシ基、または炭素数1~4のアルキル基である。Rは炭素数1~4のアルキレン基である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体、並びに該電子写真感光体を有するプロセスカートリッジおよび電子写真装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機電子写真感光体(以下、「電子写真感光体」と称する。)に用いる下引き層として、金属酸化物粒子を含有する下引き層が提案されている。含有する金属酸化物粒子の分散性や電気特性の向上を目的として、シランカップリング剤などで表面処理をした金属酸化物粒子を含有する下引き層も提案されている。
【0003】
特許文献1には、下引き層にシランカップリング剤で表面処理された金属酸化物粒子およびヒドロキシ基またはアミノ基を有するベンゾフェノン化合物を含有させることで、電位変動を抑制する技術が開示されている。このような置換基を有する有機化合物は、金属酸化物粒子と相互作用することで、下引き層中の金属酸化物粒子間または感光層から下引き層への電子の授受をスムーズにしていると推測される。
【0004】
また、特許文献2では、電子写真感光体の電気特性のうち電位変動を向上させる手段として、チタン酸ストロンチウムを含有する下引き層が開示されている。特許文献2によるとチタン酸ストロンチウム粒子を含有する下引き層は残電に優れた効果を発揮する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-181804号公報
【文献】特開2019-61219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らが検討したところ、電子写真感光体の支持体上に下引き層を設ける場合において、シランカップリング剤で表面処理をした金属酸化物粒子を用いた場合、表面処理に用いるシランカップリング剤と下引き層の樹脂との組合せによって、下引き層の上に積層される感光層との相性に影響が生じ、画質に改善の余地が生じることがあった。
具体的には、シランカップリング剤で表面処理をした金属酸化物粒子は、シランカップリング剤の種類によっては、膜化したときの下引き層の膜表面と下引き層の上に積層する感光層の密着性に影響する。従来、下引き層中の金属酸化物粒子の分散性を良好にするためには、金属酸化物粒子表面の疎水性を高めると良いことが知られている。一方、疎水性を高めた金属酸化物粒子は、下引き層を膜化したときに感光層との密着性が低下してしまう原因のひとつとなる。感光層と下引き層の密着性が低下したところは、結果として白ポチなどの画像不良を引き起こしてしまう。
【0007】
本発明者らが鋭意検討した結果、イソシアネート基を有するシランカップリング剤で表面処理した金属酸化物粒子を含有し、2つ以上のヒドロキシ基を有するポリオール化合物と、2つ以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物とを含む組成物の硬化膜を下引き層として用いることで、感光層と下引き層との密着性と、金属酸化物粒子の下引き層中の分散性とを、両立した電子写真感光体を得られることがわかった。これは、シランカップリング剤の中でも、イソシアネート基を有するシランカップリング剤を用いると、下引き層の疎水化が抑えられるため、下引き層の上に積層した感光層との密着性が維持できるためと考えられる。また、イソシアネート基を有するシランカップリング剤で表面処理された金属酸化物粒子はイソシアネート基を表面に有している。そのため、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを含む組成物が硬化膜を形成する際に、金属酸化物粒子が硬化膜に組み込まれ、金属酸化物粒子が下引き層中で分散性を得られると考えている。下引き層中で金属酸化物粒子の分散性が十分に得られていないと下引き層内の電荷の授受が阻害され、画像上の黒ポチの原因になる。
【0008】
本発明の目的は、下引き層と下引き層の上に積層される感光層との密着性と、下引き層中の金属酸化物粒子の分散性に改善効果がある電子写真感光体、該電子写真感光体を有するプロセスカートリッジおよび電子写真装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
よって本発明は、支持体、該支持体上に下引き層、該下引き層上に感光層が積層されている電子写真感光体において、該下引き層が
下記式(1)で示されるシランカップリング剤で表面処理された金属酸化物粒子、
2つ以上のヒドロキシ基を有するポリオール化合物、および
2つ以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物
を含む組成物の硬化膜であることを特徴とする電子写真感光体である。
【化1】
式(1)中、RおよびRは、それぞれヒドロキシ基または炭素数1~4のアルコキシ基を示す。Rは、ヒドロキシ基、炭素数1~4のアルコキシ基、または炭素数1~4のアルキル基を示す。Rは、炭素数1~4のアルキレン基を示す。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、下引き層と、該下引き層上の感光層との密着性が良好で、下引き層中の金属酸化物粒子の分散性に優れた電子写真感光体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の電子写真感光体の層構成の1例を示す図である。
図2】本発明の電子写真感光体を有するプロセスカートリッジを備えた電子写真装置の1例を示す図である。
図3】(a)は、モールドを示す上面図である。(b)は、凸部のS-S’断面図である。(c)は、凸部のT-T’断面図である。
図4】電子写真感光体の周面に凹部を形成するための圧接形状転写加工装置の例を示す図である。
図5】研磨シートを用いた研磨機の1例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、支持体、該支持体上に下引き層、該下引き層上に感光層が積層されている電子写真感光体において、該下引き層が、下記式(1)で示されるシランカップリング剤で表面処理された金属酸化物粒子、2つ以上のヒドロキシ基を有するポリオール化合物、および2つ以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物を含む組成物の硬化膜であることを特徴とする電子写真感光体である。
【化2】
式(1)中、RおよびRは、それぞれヒドロキシ基または炭素数1~4のアルコキシ基を示す。Rは、ヒドロキシ基、アルコキシ基、または炭素数1~4のアルキル基を示す。Rは、炭素数1~4のアルキレン基を示す。
【0013】
以下、本発明の電子写真感光体の詳細を説明する。はじめに本発明の電子写真感光体の層構成を説明し、各層の説明を続けてする。そのなかで下引き層の説明をする。
各層の説明の後、電子写真感光体への表面加工について説明し、電子写真感光体を収容するプロセスカートリッジや電子写真装置について説明する。
【0014】
[電子写真感光体]
本発明の実施形態に係る電子写真感光体は、図1に示すように、支持体101の直上に下引き層102を有し、さらに下引き層102の直上に感光層103を有する。これらの層は積層されている。
電子写真感光体を製造する方法としては、後述する各層となる塗布液、すなわち下引き層形成用塗布液、電荷発生層形成用塗布液、電荷輸送層形成用塗布液、保護層形成用塗布液などをそれぞれ調製し、順番に塗布して、乾燥させて得る方法が挙げられる。塗布方法としては、浸漬塗布、スプレー塗布、インクジェット塗布、ロール塗布、ダイ塗布、ブレード塗布、カーテン塗布、ワイヤーバー塗布、リング塗布などが挙げられる。これらの中でも、効率性および生産性の観点から、浸漬塗布が好ましい。
【0015】
<支持体>
支持体は非導電性のものでもよいが導電性を有する導電性支持体であることが好ましい。また、支持体の形状は、円筒状、ベルト状、シート状などが挙げられる。なかでも、円筒状であることが好ましい。
また、支持体の表面に、陽極酸化などの電気化学的な処理や、ブラスト処理、切削処理、センタレス研削処理などを施してもよい。なかでも切削処理を施すことが好ましい。
支持体の材質としては、金属が好ましい。金属としては、アルミニウム、鉄、ニッケル、銅、金、ステンレスや、これらの合金などが挙げられる。中でも、アルミニウムを用いたアルミニウム製支持体であることが好ましい。
支持体は母材がガラスなどの非導電性であって、下引き層が配置される側の面が導電膜を有したものでもよい。
支持体の上に、導電層を設けてもよい。その場合、導電層は、導電性粒子と、樹脂と、を含有することが好ましい。導電性粒子は、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛などの金属酸化物粒子であることが好ましい。樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂であることが好ましい。
【0016】
<下引き層>
本発明の実施の形態に係る下引き層は金属酸化物粒子を含有する。金属酸化物粒子の一次粒子径(体積個数平均)は、1nm以上200nm以下であり、その中でも1nm以上50nm以下のものが好ましい。金属酸化物粒子は、式(1)で示される化合物によって表面処理されたものである。
金属酸化物粒子はイソシアネート基を有するシランカップリング剤である式(1)で示される化合物で疎水化処理される。
【化3】
式(1)中、RおよびRは、それぞれヒドロキシ基または炭素数1~4のアルコキシ基を示す。Rは、ヒドロキシ基、炭素数1~4のアルコキシ基、または炭素数1~4のアルキル基を示す。Rは、炭素数1~4のアルキレン基を示す。
【0017】
式(1)中、R~Rとしての炭素数1~4のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、s-ブトキシ基、t-ブトキシ基、イソブトキシ基などが挙げられる。式(1)中、Rとしての炭素数1~4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、イソブチル基などが挙げられる。式(1)中、Rとしての炭素数1~4のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、メチルエチレン基、ブチレン基、メチルプロピレン基、ジメチルプロピレン基、エチルエチレン基などが挙げられる。
【0018】
式(1)で示される化合物の具体的例としては、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルメチルジエトキシシラン、3-イソシアネートプロピルメチルジエトキシシラン、3-イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン、3-イソシアネートメチルトリエトキシシラン、3-イソシアネートメチルトリメトキシシランなどが挙げられる。ただし、式(1)で示される化合物はこれらに限定されるものではない。また、式(1)で示される化合物を2種以上混合して使用してもよい。
【0019】
式(1)で示される化合物のR~Rが、ヒドロキシ基またはアルコキシ基である場合、ヒドロキシ基およびアルコキシ基が加水分解されて生じたヒドロキシ基が、金属酸化物粒子表面に存在するヒドロキシ基と脱水反応する。これにより、式(1)で示される化合物に結合することで、金属酸化物粒子が表面処理される。つまり、式(1)で示される化合物により金属酸化物粒子は疎水化処理される。
【0020】
金属酸化物粒子を式(1)で示される化合物により表面処理する方法は、たとえば、乾式法や湿式法が挙げられる。
乾式法は、金属酸化物粒子をヘンシェルミキサーのような高速攪拌可能なミキサーの中で攪拌しながら、式(1)で示される化合物を含有するアルコール水溶液、有機溶媒溶液、または水溶液を添加し、均一に分散した後に乾燥を行うものである。
湿式法は、金属酸化物粒子と式(1)で示される化合物とを溶剤中で攪拌、またはガラスビーズなどを用いてサンドミルなどを用いて分散するものであり、分散後、ろ過、または減圧留去により溶剤除去が行われる。溶剤の除去後は、さらに100℃以上で焼き付けを行うことが好ましい。
【0021】
金属酸化物粒子は、酸化亜鉛粒子、酸化スズ粒子、酸化チタン粒子、酸化アルミニウム粒子、チタン酸ナトリウム粒子、チタン酸バリウム粒子などが挙げられるが、中でも、アナターゼ型酸化チタン粒子、チタン酸ストロンチウム粒子が好ましい。
【0022】
本発明において、金属酸化物粒子としては、1種のみを使用してもよいし、金属酸化物の種類が異なるものや、表面処理の有無や種類が異なるものや、比表面積の異なるものなど、2種以上を併用することもできる。
【0023】
下引き層中の金属酸化物の含有量は、下引き層の全質量に対して、50質量%以上90質量%以下であることが好ましい。
【0024】
また、下引き層は結着樹脂を含む。
結着樹脂は、重合性官能基を有するモノマー、オリゴマー、プレポリマーなどを含有する組成物に加熱や電子線照射を行うことでモノマーを重合させることで得る。なお、本発明において、重合により結着樹脂を構成するモノマーは電子輸送能を有する構造を含まない。
【0025】
モノマーとしては、イソシアネート基、メチロール基、アルキル化メチロール基、エポキシ基、金属アルコキシド基、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基、チオール基、カルボン酸無水物基、炭素-炭素二重結合基を持つ化合物などが挙げられる。本発明におけるイソシアネート基には、ブロック剤で保護されていないイソシアネート基(-N=C=Oで示される基)、およびイソシアネート基(-N=C=Oで示される基)がブロック剤で保護されたブロックイソシアネート基が含まれる。本発明では、これらモノマーの中でも、少なくとも、2つ以上のヒドロキシ基を有するポリオール化合物と、2つ以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物と、を用いる。
【0026】
ポリイソシアネート化合物としては、これらに限定されるものではないが、例えば、エチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、シクロヘキサン-1,3-ジイソシアネート、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、およびナフタレンジイソシアネート、並びにこれイソシアネート化合物の共重合物やイソシアヌレート体、並びにイソシアネート化合物のTMPアダクト体およびイソシアネート化合物のビウレット体などのブロックイソシアネート基を有する化合物が挙げられる。
【0027】
ポリオール化合物としては、これらに限定されるものではないが、例えば、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリカーボネート系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、ポリブタジエン系ポリオール、(メタ)アクリル系ポリオール、ポリシロキサン系ポリオールなどが挙げられる。
【0028】
式(1)で示されるシランカップリング剤で表面処理された金属酸化物粒子、2つ以上のヒドロキシ基を有するポリオール化合物、および2つ以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物を含む組成物からなる下引き層形成用塗布液では、硬化の際、水酸基とイソシアネート基が反応し、ウレタン結合が生じ、その反応の連続によりウレタン樹脂が生成される。このとき、下引き層形成用塗布液に分散している式(1)で示されるシランカップリング剤で金属酸化物粒子が樹脂内部に取り込まれた状態で硬化する。従来の下引き層では、樹脂と金属酸化物粒子は結合しているわけではなく、下引き層形成用塗布液が流動的に硬化していく中で、金属酸化物粒子の分散状態が変化し、樹脂内部に偏ってしまうことがあった。これに対し、本発明では、金属酸化物粒子が式(1)で示されるシランカップリング剤で表面処理されていることにより、金属酸化物粒子表面のイソシアネート基とポリオール化合物との間でもウレタン結合が生じ、金属酸化物粒子と結着樹脂としてのウレタン樹脂が結合されるため、樹脂内部での分散状態が保たれたまま硬化が進み下引き層において金属酸化物粒子が偏在することを防ぐことができる。
【0029】
また、本発明の下引き層は、電気特性を高める目的で、電子輸送物質、金属、導電性高分子などをさらに含有してもよい。
電子輸送物質は、式(2)で示される化合物からなる群から選ばれることが好ましい。
【化4】
【0030】
式(2)中、R11~R15は、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、または、アミノ基を示す。
【0031】
は、ヒドロキシ基、炭素数1~4のアルキル基、または、炭素数1~4のアルコキシ基を示す。
【0032】
式(2)中、R11~R15としての炭素数1~6のアルキルとしては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、へキシル基などが挙げられる。式(2)中、R11~R15としての炭素数1~8のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、s-ブトキシ基、t-ブトキシ基、イソブトキシ基、ペントキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基などが挙げられる。
【0033】
式(2)中、Aとしての炭素数1~4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、イソブチル基などが挙げられる。式(2)中、Aとしての炭素数1~4のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、s-ブトキシ基、t-ブトキシ基、イソブトキシ基などが挙げられる。
【0034】
式(2)で示される化合物を金属酸化物粒子とともに下引き層に含有させることで、下引き層中の金属酸化物粒子の分散均一性が向上する。この効果の理由に関して、本発明者らは、式(2)で示される化合物が金属酸化物粒子に配位する、あるいは、金属酸化物表面上に付与されたイソシアネート基と結合することで、下引き層形成用塗布液中の金属酸化物粒子が硬化前まで良好な分散状態が保たれるためであると考えている。式(2)で示される化合物の下引き層における含有量は、金属酸化物粒子の質量に対して、2.0質量%であることが好ましい。
【0035】
電子輸送物質は、重合性官能基を有してもよく、上述の重合性官能基を有するモノマーと共重合させてもよい。
【0036】
以下に、式(2)で示される化合物の具体例として、以下の式(2-1)~(2-16)で示される化合物を示すが、これらに限定されるものではない。
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【0037】
これらの中でも、イソシアネート基と反応性の高いヒドロキシ基、アミノ基を有する式(2-15)で示されるアミノサリチル酸がよい。
【0038】
下引き層の平均膜厚は、0.1μm以上30μm以下であることが好ましく、1.0μm以上5.0μm以下であることがより好ましい。
【0039】
下引き層は、上述の各材料および溶剤を含有する下引き層形成用塗布液を調製し、この塗膜を形成し、乾燥および/または硬化させることで形成することができる。下引き層形成用塗布液に用いる溶剤としては、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤などが挙げられる。
【0040】
下引き層形成用塗布液の調製は、これに限定されるものではないが、例えば以下の塗布液調製工程が挙げられる。まず、金属酸化物粒子を式(1)で示されるシランカップリング剤で表面処理する。次いで、表面処理された金属酸化物粒子、2つ以上のヒドロキシ基を有するポリオール化合物、および2つ以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物並びに必要に応じて式(2)で示される化合物を含む電子輸送物質、金属、導電性高分子などを溶媒に混合する。最後に、混合液にガラスビーズを加え、サンドミルなどで撹拌し、ろ過によりガラスビーズを除き下引き層形成用塗布液とする。下引き層形成用塗布液は、乾燥後に表面処理された金属酸化物粒子の含有量が50質量%以上90質量%以下となるように表面処理された金属酸化物粒子を含む。
【0041】
得られた下引き層形成用塗布液は、塗布工程において支持体上に塗布されることで下引き層形成用塗布液の塗布膜を形成し、次いで乾燥工程において塗布膜を高温下で乾燥させることで下引き層が形成される。下引き層上に、公知の方法、例えば以下に示す感光層を形成する工程や保護層を形成する工程を経て、本発明の電子写真感光体を製造することができる。
【0042】
<感光層>
本発明の電子写真感光体は、下引き層の上に、感光層を有する。電子写真感光体の感光層は、主に、(1)積層型感光層と、(2)単層型感光層とに分類される。(1)積層型感光層は、電荷発生物質を含有する電荷発生層と、電荷輸送物質を含有する電荷輸送層と、を有する。(2)単層型感光層は、電荷発生物質と電荷輸送物質を共に含有する感光層を有する。
【0043】
(1)積層型感光層
積層型感光層は、電荷発生層と、電荷輸送層と、を有する。
【0044】
(1-1)電荷発生層
電荷発生層は、電荷発生物質と、樹脂と、を含有することが好ましい。
電荷発生物質としては、アゾ顔料、ペリレン顔料、多環キノン顔料、インジゴ顔料、フタロシアニン顔料などが挙げられる。これらの中でも、アゾ顔料、フタロシアニン顔料が好ましい。フタロシアニン顔料の中でも、オキシチタニウムフタロシアニン顔料、クロロガリウムフタロシアニン顔料、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料が好ましい。
電荷発生層中の電荷発生物質の含有量は、電荷発生層の全質量に対して、40質量%以上85質量%以下であることが好ましく、60質量%以上80質量%以下であることがより好ましい。
樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂が好ましい。
【0045】
また、電荷発生層は、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの添加剤をさらに含有してもよい。具体的には、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物、硫黄化合物、リン化合物、ベンゾフェノン化合物、などが挙げられる。
【0046】
電荷発生層の平均膜厚は、0.1μm以上1μm以下であることが好ましく、0.15μm以上0.4μm以下であることがより好ましい。
【0047】
電荷発生層は、上述の各材料および溶剤を含有する電荷発生層形成用塗布液を調製し、この塗膜を形成し、乾燥させることで形成することができる。塗布液に用いる溶剤としては、アルコール系溶剤、スルホキシド系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤などが挙げられる。
【0048】
(1-2)電荷輸送層
電荷輸送層は、電荷輸送物質と、樹脂と、を含有することが好ましい。
【0049】
電荷輸送物質としては、これらに限定されるものではないが、例えば、多環芳香族化合物、複素環化合物、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、エナミン化合物、ベンジジン化合物、トリアリールアミン化合物や、これらの物質から誘導される基を有する樹脂などが挙げられる。これらの中でも、トリアリールアミン化合物、ベンジジン化合物が好ましい。
電荷輸送層中の電荷輸送物質の含有量は、電荷輸送層の全質量に対して、25質量%以上70質量%以下であることが好ましく、30質量%以上55質量%以下であることがより好ましい。
【0050】
樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂などが挙げられる。これらの中でも、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂が好ましい。ポリエステル樹脂としては、特にポリアリレート樹脂が好ましい。
電荷輸送物質と樹脂との含有量比(質量比)は、4:10~20:10が好ましく、5:10~12:10がより好ましい。
【0051】
また、電荷輸送層は、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、レベリング剤、滑り性付与剤、耐摩耗性向上剤などの添加剤を含有してもよい。具体的には、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物、硫黄化合物、リン化合物、ベンゾフェノン化合物、シロキサン変性樹脂、シリコーンオイル、フッ素樹脂粒子、ポリスチレン樹脂粒子、ポリエチレン樹脂粒子、シリカ粒子、アルミナ粒子、窒化ホウ素粒子などが挙げられる。
【0052】
電荷輸送層の平均膜厚は、5μm以上50μm以下であることが好ましく、8μm以上40μm以下であることがより好ましく、10μm以上30μm以下であることが特に好ましい。
【0053】
電荷輸送層は、上述の各材料および溶剤を含有する電荷輸送層形成用塗布液を調製し、この塗膜を形成し、乾燥させることで形成することができる。塗布液に用いる溶剤としては、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤が挙げられる。これらの溶剤の中でも、エーテル系溶剤または芳香族炭化水素系溶剤が好ましい。
【0054】
(2)単層型感光層
単層型感光層は、電荷発生物質、電荷輸送物質、樹脂および溶剤を含有する感光層形成用塗布液を調製し、この塗膜を形成し、乾燥させることで形成することができる。電荷発生物質、電荷輸送物質、樹脂としては、上記「(1)積層型感光層」における「(1-2)電荷輸送層」と同様でポリカーボネート樹脂が好ましい。
【0055】
<保護層>
本発明において、感光層の上に、保護層を設けてもよい。保護層を設けることで、耐久性を向上することができる。
保護層は、導電性粒子および/または電荷輸送物質と、樹脂とを含有することが好ましい。
導電性粒子としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物の粒子が挙げられる。
電荷輸送物質としては、多環芳香族化合物、複素環化合物、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、エナミン化合物、ベンジジン化合物、トリアリールアミン化合物や、これらの物質から誘導される基を有する樹脂などが挙げられる。これらの中でも、トリアリールアミン化合物、ベンジジン化合物が好ましい。
樹脂としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。中でも、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂が好ましい。
【0056】
また、保護層は、重合性官能基を有するモノマーを含有する組成物を重合することで硬化膜として形成してもよい。その際の反応としては、熱重合反応、光重合反応、放射線重合反応などが挙げられる。重合性官能基を有するモノマーが有する重合性官能基としては、アクリル基、メタクリル基などが挙げられる。重合性官能基を有するモノマーとして、電荷輸送能を有する材料を用いてもよい。
【0057】
保護層は、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、レベリング剤、滑り性付与剤、耐摩耗性向上剤、などの添加剤を含有してもよい。具体的には、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物、硫黄化合物、リン化合物、ベンゾフェノン化合物、シロキサン変性樹脂、シリコーンオイル、フッ素樹脂粒子、ポリスチレン樹脂粒子、ポリエチレン樹脂粒子、シリカ粒子、アルミナ粒子、窒化ホウ素粒子などが挙げられる。
【0058】
保護層の平均膜厚は、0.5μm以上10μm以下であることが好ましく、1μm以上7μm以下であることが好ましい。
【0059】
保護層は、上述の各材料および溶剤を含有する保護層形成用塗布液を調製し、この塗膜を形成し、乾燥および/または硬化させることで形成することができる。塗布液に用いる溶剤としては、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、スルホキシド系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤が挙げられる。
【0060】
<電子写真感光体の表面加工>
本発明の電子写真感光体は、該電子写真感光体に接触させるクリーニング手段の挙動をより安定化させる目的で、クリーニング手段が当接する電子写真感光体の表面に凹部または凸部を設けたり、該表面を研磨により粗さを付与することができる。クリーニング手段としては、例えば、クリーニングブレードなどが挙げられる。
【0061】
凹部を形成する場合は、凹部に対応した凸部を有するモールドを電子写真感光体の表面に圧接し、形状転写を行うことにより、電子写真感光体の表面に凹部を形成することができる。
凸部を形成する場合は、凸部に対応した凹部を有するモールドを電子写真感光体の表面に圧接し、形状転写を行うことにより、電子写真感光体の表面に凸部を形成することができる。モールドとしては、例えば図3に示す複数の凸形状を有するモールドを用いることができる。図3(a)はモールドの概略を示す上面図、図3(b)はモールドの凸部の電子写真感光体の軸方向の概略断面図(図3(a)のS-S’断面における断面図)である。図3(c)はモールドの凸部の電子写真感光体の周方向の断面図(図3(a)のT-T’断面の断面図)である。
電子写真感光体の表面への凹部の形成は、概ね図4に示す構成の圧接形状転写加工装置に、図3に示すモールドを設置し、作製した凹部形成前の電子写真感光体に対して表面加工を行う。401は被処理体(加工を行う前の電子写真感光体)、402はモールド型、403は加圧部材、404は支持部材である。
【0062】
電子写真感光体の表面を研磨し粗さを付与する場合は、電子写真感光体に研磨具を当接させ、いずれか一方あるいは両方を相対的に移動させて電子写真感光体の表面を研磨することにより、粗さを付与することができる。研磨具としては、基材上に研磨砥粒が結着樹脂中に分散された層を設けてなる研磨部材などが挙げられる。
【0063】
[プロセスカートリッジ、電子写真装置]
本発明のプロセスカートリッジは、これまで述べてきた電子写真感光体と、帯電手段、現像手段、転写手段およびクリーニング手段からなる群より選択される少なくとも1つの手段とを一体に支持し、電子写真装置本体に着脱自在である。
また、本発明の電子写真装置は、これまで述べてきた電子写真感光体、帯電手段、露光手段、現像手段および転写手段を有する。
【0064】
図2に、電子写真感光体を備えたプロセスカートリッジ11を有する電子写真装置の概略構成の一例を示す。
円筒状の電子写真感光体1は、軸2を中心に矢印方向に所定の周速度で回転駆動される。電子写真感光体1の表面は、帯電手段3により、正または負の所定電位に帯電される。
【0065】
なお、図2においては、ローラー型帯電部材によるローラー帯電方式を示しているが、コロナ帯電方式、近接帯電方式、注入帯電方式などの帯電方式を採用してもよい。ローラー帯電方式の場合、ローラー型帯電部材に印加する電圧を直流電圧のみにしたDC帯電方式と、直流電圧に交流電圧を重畳したAC/DC帯電方式があるが、どちらを用いてもよい。
帯電された電子写真感光体1の表面には、露光手段(不図示)から露光光4が照射され、目的の画像情報に対応した静電潜像が形成される。
電子写真感光体1の表面に形成された静電潜像は、現像手段5内に収容されたトナーで現像され、電子写真感光体1の表面にはトナー像が形成される。電子写真感光体1の表面に形成されたトナー像は、転写手段6により、転写材7に転写される。
トナー像が転写された転写材7は、定着手段8へ搬送され、トナー像の定着処理を受け、電子写真装置の外へプリントアウトされる。電子写真装置は、転写後の電子写真感光体1の表面に残ったトナーなどの付着物を除去するための、クリーニング手段9を有していてもよい。
電子写真装置は、電子写真感光体1の表面を、前露光手段(不図示)からの前露光光10により除電処理する除電機構を有していてもよい。また、本発明のプロセスカートリッジ11を電子写真装置本体に着脱するために、レールなどの案内手段12を設けてもよい。
【0066】
本発明の電子写真感光体は、レーザービームプリンター、LEDプリンター、複写機、およびファクシミリ、並びにこれらの複合機などに用いることができる。
【0067】
(実施例)
以下、実施例および比較例を用いて本発明をさらに詳細に説明する。本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例の記載において、「部」とあるのは特に断りのない限り質量基準である。
【0068】
[チタン酸ストロンチウム粒子S-1の生成]
硫酸チタニル水溶液を加水分解して得られた含水酸化チタンスラリーをアルカリ水溶液で洗浄した。
次に、上記の含水酸化チタンのスラリーに塩酸を添加して、pHを0.7に調整してチタニアゾル分散液を得た。
得られたチタニアゾル分散液の1.8モル(酸化チタン換算)に対し、1.1倍モル量の塩化ストロンチウムを含む水溶液を加えて反応容器に入れ、窒素ガスで置換した。さらに、チタンの濃度が酸化チタン換算濃度で0.9モル/Lになるように純水を加えた。次に、これを撹拌混合し、80℃に加温した後、5N水酸化ナトリウム水溶液792mLを40分かけて添加し、その後、20分間反応を行った。反応後のスラリーを30℃以下になるまで冷却した後、上澄み液を除去した。さらに、スラリーに対してpH5.0の塩酸水溶液を加えて1時間撹拌した後、純水で洗浄を繰り返した。さらに、水酸化ナトリウムにて中和して、ヌッチェで濾過を行い、純水で洗浄した。得られたケーキを乾燥し、チタン酸ストロンチウム粒子S-1を得た。一次粒径は35nmであった。
【0069】
[表面処理された金属酸化物粒子の製造例]
<金属酸化物粒子S-1Aの製造例>
チタン酸ストロンチウム粒子S-1の100部をトルエン500部と撹拌混合し、これにシランカップリング剤として、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン3.0部を添加し、6時間攪拌した。その後、トルエンを減圧留去して、130℃で6時間加熱乾燥し、表面処理された金属酸化物粒子S-1Aを得た。
【0070】
<金属酸化物粒子S-1Bの製造例>
金属酸化物粒子S-1Aの製造例において、シランカップリング剤を3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン3.0部に変更した以外は、金属酸化物粒子S-1Aの製造例と同様にして、表面処理された金属酸化物粒子S-1Bを製造した。
【0071】
<金属酸化物粒子S-1Cの製造例>
金属酸化物粒子S-1Aの製造例において、シランカップリング剤を3-イソシアネートプロピルメチルジエトキシシラン3.0部に変更した以外は、金属酸化物粒子S-1Aの製造例と同様にして、表面処理された金属酸化物粒子S-1Cを製造した。
【0072】
<金属酸化物粒子S-1Dの製造例>
金属酸化物粒子S-1Aの製造例において、シランカップリング剤を3-イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン4.0部に変更した以外は、金属酸化物粒子S-1Aの製造例と同様にして、表面処理された金属酸化物粒子S-1Dを製造した。
【0073】
<金属酸化物粒子S-1Eの製造例>
金属酸化物粒子S-1Aの製造例において、シランカップリング剤を3-イソシアネートメチルトリエトキシシラン3.0部に変更した以外は、金属酸化物粒子S-1Aの製造例と同様にして、表面処理された金属酸化物粒子S-1Eを製造した。
【0074】
<金属酸化物粒子S-1Fの製造例>
金属酸化物粒子S-1Aの製造例において、シランカップリング剤を3-イソシアネートメチルトリメトキシシラン3.0部に変更した以外は、金属酸化物粒子S-1Aの製造例と同様にして、表面処理された金属酸化物粒子S-1Fを製造した。
【0075】
<金属酸化物粒子T-1Aの製造例>
酸化チタン粒子T-1(商品名:TKP101、テイカ株式会社製、一次粒径6nm)、100部をトルエン500部と攪拌混合し、シランカップリング剤として、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン3.0部を添加し、2時間攪拌した。その後、トルエンを減圧蒸留にて留去し、120℃で3時間焼き付けを行い、表面処理された金属酸化物粒子T-1Aを得た。
【0076】
<金属酸化物粒子T-1Bの製造例>
酸化チタン粒子T-1(商品名:TKP101、テイカ株式会社製、一次粒径6nm)、100部をトルエン500部と攪拌混合し、シランカップリング剤として、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン3.0部を添加し、2時間攪拌した。その後、トルエンを減圧蒸留にて留去し、120℃で3時間焼き付けを行い、表面処理された金属酸化物粒子T-1Bを得た。
【0077】
<金属酸化物粒子T-2Aの製造例>
酸化チタン粒子T-2(商品名:AMT-600、テイカ株式会社製、一次粒径30nm)、100部をトルエン500部と攪拌混合し、シランカップリング剤として、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン3.0部を添加し、2時間攪拌した。その後、トルエンを減圧蒸留にて留去し、120℃で3時間焼き付けを行い、表面処理された金属酸化物粒子T-2Aを得た。
【0078】
<金属酸化物粒子Z-1Aの製造例>
酸化亜鉛粒子Z-1(比表面積:19m/g、一次粒径50nm)、100部をトルエン500部と攪拌混合し、シランカップリング剤として、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン1.0部を添加し、2時間攪拌した。その後、トルエンを減圧蒸留にて留去し、120℃で3時間焼き付けを行い、表面処理された金属酸化物粒子Z-1Aを得た。
【0079】
【表1】
【0080】
(実施例1)
支持体として、アルミニウムシリンダーを、旋盤を用いて以下の切削条件で表面の切削加工を行い、長さ370mm、外径30.6mm、厚さ1.0mmのアルミニウム製の素管を用意した。切削条件として、R0.1のバイトを用い、主軸回転数=10000rpm、バイトの送り速度を0.03~0.06mm/rpmの範囲で連続的に変化させて加工した。
【0081】
次に、2つ以上のヒドロキシ基を有するポリオール化合物としてのブチラール樹脂(商品名:BM-1、積水化学工業(株)製)15部および2つ以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物としてのブロック化イソシアネート(商品名:スミジュールBL3175、住化バイエルンウレタン(株)製)15部をメチルエチルケトン300部と1-ブタノール300部の混合液に溶解した。この溶液に、金属酸化物粒子S-1Aを120部と、電荷輸送剤として5-アミノサリチル酸(東京化成工業(株)製)1.2部を加え、これを直径0.8mmのガラスビーズを用いたサンドミル装置で23±3℃雰囲気下で4時間分散した。分散後、シリコーンオイル(商品名:SH28PA、東レ・ダウコーニング(株)製)0.01部を分散液に加えて攪拌し、下引き層用塗布液を得た。 得られた下引き層用塗布液を上記の支持体上に浸漬塗布し、これを30分間165℃で乾燥させることによって、膜厚が2μmの下引き層を形成した。
【0082】
次に、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角2θ±0.2°の7.4°および28.2°に強いピークを有する結晶形のヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶(電荷発生物質)20部、式(A)で示されるカリックスアレーン化合物0.2部、ポリビニルブチラール樹脂(商品名:エスレックBX-1、積水化学工業(株)製)10部、および、シクロヘキサノン600部を、直径1mmガラスビーズを用いたサンドミルに入れ、4時間分散処理した後、酢酸エチル600部を加えることによって、電荷発生層形成用塗布液を調製した。
この電荷発生層形成用塗布液を上記の下引き層上に浸漬塗布し、得られた塗膜を15分間80℃で乾燥させることによって、膜厚0.19μmの電荷発生層を形成した。
【化9】
【0083】
次に、
下記式(B)で示される化合物(電荷輸送物質)60部、
下記式(C)で示される化合物(電荷輸送物質)30部、
下記式(D)で示される化合物(電荷輸送物質)10部、
ポリカーボネート樹脂(商品名:ユーピロンZ400、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、ビスフェノールZ型のポリカーボネート)100部、
下記式(E)で示されるポリカーボネート(粘度平均分子量Mv:20000)0.02部を、
o-キシレン600部およびジメトキシメタン200部の混合溶剤に溶解させることによって、電荷輸送層用塗布液を調製した。
この電荷輸送層用塗布液を上記の電荷発生層上に浸漬塗布して塗膜を形成し、得られた塗膜を30分間100℃で乾燥させることによって、膜厚18μmの電荷輸送層を形成した。
【化10】
【化11】
【0084】
次に、
下記式(F1)で示される繰り返し構造単位および下記式(F2)で示される繰り返し構造単位を有する樹脂(重量平均分子量:130,000、共重合比(F1)/(F2)=1/1(モル比))1.65部を、
1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタン(商品名:ゼオローラH、日本ゼオン(株)社製)40部および1-プロパノール55部の混合溶剤に溶解した。
その後、四フッ化エチレン樹脂粉体(商品名:ルブロンL-2、ダイキン工業(株)製)30部を加えた液を、高圧分散機(商品名:マイクロフルイダイザーM-110EH、米Microfluidics(株)製)に通し、分散液を得た。
その後、
下記式(G)で示される正孔輸送性化合物52.0部、
下記式(H)で示される化合物(アロニックスM-315、東亞合成(株)製)16.0部、
下記式(I)で示される化合物(シグマ-アルドリッチ製)2.0部、
シロキサン変性アクリル化合物0.75部(BYK-3550、ビックケミー・ジャパン(株)製)、
1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタン35部および1-プロパノール15部を上記の分散液に加え、
ポリフロンフィルター(商品名:PF-040、アドバンテック東洋(株)製)で濾過を行い、保護層用形成用塗布液を調製した。
この保護層用形成用塗布液を上記の電荷輸送層上に浸漬塗布し、得られた塗膜を5分間40℃で乾燥した。乾燥後、窒素雰囲気下にて、加速電圧70KV、吸収線量15kGyの条件で1.6秒間電子線を塗膜に照射した。その後、窒素雰囲気下にて、塗膜の温度が135℃になる条件で15秒間加熱処理を行った。なお、電子線の照射から15秒間の加熱処理までの酸素濃度は15ppmであった。
次に、大気中において、塗膜が105℃になる条件で1時間加熱処理を行い、膜厚5μmである保護層を形成した。このようにして、電子写真感光体を製造した。
【化12】
【0085】
[モールド圧接形状転写による凹部の形成]
次に、図4に示す圧接形状転写加工装置に図3に示すモールド403を設置し、作製した凹部形成前の電子写真感光体401に対して表面加工を行った。
具体的には、実施例および比較例で用いたモールドにおいて、図3(b)に示される凸形状の最大幅(モールド上の凸部を上から見たときの電子写真感光体の軸方向の最大幅のこと)Xは50μmであった。また、図3(c)に示される凸形状の最大長さ(モールド上の凸部を上から見たときの電子写真感光体の周方向の最大長さのこと)Yは75μmであった。モールドにおける凸形状の面積率は56%、凸形状の高さHは4μmであった。 なお、面積率とは、モールドを上から見たときに表面全体に占める凸部の面積の比率である。加工時には、電子写真感光体の表面の温度が120℃になるように電子写真感光体およびモールドの温度を制御した。そして、7.0MPaの圧力で電子写真感光体と加圧部材をモールドに押し付けながら、電子写真感光体を周方向に回転させて、電子写真感光体の表面(周面)の全面に凹部を形成した。
以上のようにして、実施例1の画像評価用の電子写真感光体を作製した。
【0086】
[画像評価]
評価用の電子写真装置として、キヤノン(株)製の複写機imagePRESS C800を使用した。感光体は、上記の方法で作製した電子写真感光体を使用した。帯電手段としては、交流電圧と直流電圧の重畳電圧をローラー型の接触帯電部材(帯電ローラー)に印加する方式を用いて、評価を行った。
評価装置を温度25℃湿度50%RHの環境下に設置し、作製した電子写真感光体を使用して、300,000枚印字動作を行った後、ハーフトーン画像に白ポチな、感光層剥がれが原因の画像不良が発生していないか確認した。評価結果を表2に示す。
【0087】
[密着性評価]
下引き層と感光層の密着性は、以下の方法で評価した。
製造した電子写真感光体の10箇所に関し、微小硬さ測定装置を用いて、以下の条件で、荷重をかけた後、レーザー顕微鏡(商品名:VK-200、キーエンス(株)製)で20倍レンズを用いて表面観察し、膜の剥離が起こった面積の平均値を算出した。面積が小さいほど密着性が高いことを意味する。微小硬さ測定装置として、FISCHERSCOPE HM2000(フィッシャーインストルメンツ製)を用い、気温23℃、相対湿度50%の常温常湿環境下において、測定を行った。剥離面積が、0以上0.005μm未満のときの密着性の評価を(A)、0.005μm以上0.015μm未満のときの密着性の評価を(B)、0.015μm以上のときの密着性の評価を(C)として、評価結果を表2に示す。評価結果がAまたはBのとき、本発明の効果が得られている。
【0088】
(荷重条件)
圧子:対面角が136°の正四角錐型のダイヤモンド圧子(ビッカース圧子)
最大設定押し込み荷重:2,000mN
荷重をかけた時間:0秒
【0089】
[下引き層中の金属酸化物粒子の分散性評価]
下引き層中の金属酸化物粒子の分散性は、以下の方法で評価した。
走査型電子顕微鏡を用いて、加速電圧2.0kVで電子写真感光体の下引き層の断面反射電子像を10箇所撮影した。10箇所の撮影箇所は、電子写真感光体の長手方向を5分割、周方向を2分割した箇所とした。走査型電子顕微鏡は、S-4800(日立製作所社製)を使用した。撮影された断面反射電子像画面は、それぞれ一辺0.9μmの正方形であった。
得られた合計10個の断面反射電子像画面のそれぞれを9個(3個×3個)に等分割し、合計90個の断面反射電子像分割画面を用いて、次の計算を行った。
得られた断面反射電子像分割画面の断面積をS(α)としたときS(α)は0.09μmであった。得られた90個の断面反射電子像分割画面のそれぞれにおいて、観察される金属酸化物粒子の断面積の和をS(β)(mは1~90)μmとした。金属酸化物粒子の断面積は画像処理ソフトImage-Pro Plus5.1J(MediaCybernetics社製)を使用して、「輝度レンジ選択」で、輝度レンジを140~255の範囲に設定して、画像中の輝度の高い部分の抽出を行い断面積の値を得た。断面反射電子像分割画面の断面積をS(α)中を占める金属酸化物粒子の断面積の和S(β)をA(mは1~90)とし、それぞれの断面反射電子像分割画面において、Aを算出した。さらに、Aの平均値をA(ave.)と、Aの標準偏差A(σ)を算出し、A(ave.)とA(σ)について比較し、評価を行った。A(ave.)は測定箇所に平均的に含まれる金属酸化物粒子の量の目安となる。そのため、A(ave.)は0.50以上0.90以下であることが好ましい。標準偏差A(σ)が小さいほど、下引き層のいずれの断面においても金属酸化物粒子がばらつきが少なく分布していると言える。そのため、A(ave.)は0.15以下であることが好ましい。A(σ)が0.1以下の場合の分散性の評価を(A)、0.15以下の場合の分散性の評価を(B)、0.15より大きい場合の分散性の評価を(C)とした。評価結果を表2に示す。評価結果がAまたはBのとき、本発明の効果が得られている。
【0090】
(実施例2~6)
下引き層用塗布液に用いた金属酸化物粒子S-1Aを、金属酸化物粒子S-1B~S-1Fにそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2~6の電子写真感光体を作製し、評価を行った。結果を表2に示す。
【0091】
(実施例7~9)
下引き層用塗布液に用いた金属酸化物粒子S-1Aを、金属酸化物粒子T-1A、T-1B、およびT-2Aにそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例7~9の電子写真感光体を作製し、評価を行った。結果を表2に示す。
【0092】
(実施例10)
下引き層用塗布液に用いた金属酸化物粒子S-1Aを、金属酸化物粒子Z-1Aに変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例10の電子写真感光体を作製し、評価を行った。結果を表2に示す。
【0093】
(実施例11)
下引き層用塗布液に用いたシリコーンオイル、5-アミノサリチル酸を除いた以外は、実施例1と同様にして、実施例11の電子写真感光体を作製し、評価を行った。結果を表2に示す。
【0094】
(実施例12~14)
下引き層の膜厚2.0μmを、それぞれ5.0μm、1.1μm、および0.9μmに変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例12、13、および14の電子写真感光体を作製し、評価を行った。結果を表2に示す。
【0095】
(実施例15)
下引き層用塗布液に用いた2つ以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物を2官能イソシアネート化合物(商品名:デュラネートD101、旭化成(株)製)に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例15の電子写真感光体を作製し、評価を行った。結果を表2に示す。
【0096】
(実施例16)
実施例1において、電子写真感光体の表面加工を、以下に記載する研磨装置を用いた加工に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例16の電子写真感光体を作製し、評価を行った。結果を表2に示す。
表面研磨前の電子写真感光体の表面を研磨した。研磨は図5の研磨装置を用い、以下の条件で行った。501は研磨シート、502a~502dはガイドローラー、503はバックアップローラー、504は被処理体(研磨を行う前の電子写真感光体)、505は巻き取り手段、そして506は中空の軸である。
研磨シートの送りスピード;400mm/min
電子写真感光体の回転数;450rpm
電子写真感光体のバックアップローラーへの押し込み;3.5mm
研磨シートと電子写真感光体の回転方向;ウィズ
バックアップローラー;外径100mm、アスカーC硬度25
研磨装置に装着する研磨シートAは、理研コランダム株式会社製のGC3000とGC2000を用いて作成した。
GC3000(研磨シート表面粗さRa0.83μm)
GC2000(研磨シート表面粗さRa1.45μm)
研磨シートA(研磨シート表面粗さRa1.12μm)
研磨シートAを用いた研磨の時間は20秒間とした。
【0097】
(実施例17)
実施例1において、保護層の形成において、保護層形成用塗布液を以下に記載した方法で調製した保護層形成用塗布液とした以外は、実施例1と同様にして、実施例17の電子写真感光体を作製し、評価を行った。結果を表2に示す。
下記式(L)で示される化合物95部、
下記式(M)で示される化合物であるビニルエステル化合物(東京化成工業(株)製)5部、
シロキサン変性アクリル化合物(商品名:BYK-3550、ビックケミー・ジャパン(株)製)3.5部、
下記式(N)で示されるウレア化合物5部、
1-プロパノール200部、
1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタン(商品名:ゼオローラH、日本ゼオン(株)製)100部、を混合し、撹拌した。
その後ポリフロンフィルター(商品名:PF-020、アドバンテック東洋(株)製)でこの溶液を濾過することによって、保護層形成用塗布液を調製した。
【化13】
この保護層用塗布液を電荷輸送層上に浸漬塗布して塗膜を形成し、得られた塗膜を10分間50℃で乾燥した。その後、窒素雰囲気下にて、加速電圧70kV、ビーム電流5.0mAの条件で支持体(被照射体)を200rpmの速度で回転させながら、1.6秒間電子線を塗膜に照射した。なお、このときの電子線の吸収線量を測定したところ、15kGyであった。
その後、窒素雰囲気下にて、塗膜の温度が25℃から117℃になるまで30秒かけて昇温させ、塗膜の加熱を行った。電子線照射から、その後の加熱処理までの酸素濃度は15ppm以下であった。次に、大気中において、塗膜の温度が25℃になるまで自然冷却し、塗膜の温度が105℃になる条件で30分間加熱処理を行い、膜厚5μmの保護層を形成した。
【0098】
(実施例18)
実施例1において、支持体と下引き層の間に以下に示す方法で導電層を設けたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例18の電子写真感光体を作製し、評価を行った。結果を表2に示す。
被覆層を有する酸化チタン粒子(商品名:パストランLRS、三井金属鉱業(株)製)57部、レゾール型フェノール樹脂(商品名:フェノライト J-325CAK、DIC(株)製、固形分60%のメタノール溶液)35部、2-メトキシ-1-プロパノール33部を、直径1mmのガラスビーズを用いたサンドミルで3時間分散して、分散液を調製した。この分散液に含有される粉体の平均粒径は、0.30μmであった。
この分散液に、シリコーン樹脂(商品名:トスパール120、東芝シリコーン(株)製)8部を2-メトキシ-1-プロパノール8部に分散した液を添加した。
さらに、シリコーンオイル0.008部(商品名:SH28PA、東レシリコーン(株)製)を添加した。
このようにして調製した分散液を、アルミニウムシリンダー上に浸漬法によって塗布し、これを150℃に調整した熱風乾燥機中で30分間加熱硬化し、分散液の塗布膜を硬化させることにより、膜厚30μmの導電層を形成した。
【0099】
(比較例1)
下引き層用塗布液に用いた金属酸化物粒子S-1Aを以下の方法で製造した粒子に変更した。
それ以外は、実施例1と同様にして、比較例1の電子写真感光体を作製し、評価を行った。結果を表2に示す。
酸化亜鉛粒子(比表面積:19m/g、一次粒径50nm)100部をトルエン500部と撹拌混合した。これに、シランカップリング剤としてN-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン(商品名:KBM602、信越化学社製)0.8部を添加し、6時間攪拌した。その後、トルエンを減圧留去して、130℃で6時間加熱して乾燥させ、表面処理された酸化亜鉛粒子を得た。
【0100】
(比較例2)
下引き層用塗布液に用いた金属酸化物粒子S-1Aを以下の方法で製造した粒子に変更した。それ以外は、実施例1と同様にして、比較例2の電子写真感光体を作製し、評価を行った。結果を表2に示す。
チタン酸ストロンチウム粒子S-1の100部をトルエン500部と攪拌混合し、ドデシルトリメトキシシラン2.5部を添加し、2時間攪拌した。その後、トルエンを減圧蒸留にて留去し、120℃で3時間焼き付けを行い、表面処理されたチタン酸ストロンチウム粒子を得た。
【0101】
(比較例3)
下引き層用塗布液に用いた2つ以上のヒドロキシ基を有するポリオール化合物と2つ以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に代えてフェノール樹脂(商品名:フェノライトJ325CAK、DIC株式会社製)を用いた。それ以外は、実施例1と同様にして、比較例3の電子写真感光体を作製し、評価を行った。結果を表2に示す。
【0102】
【表2】
【0103】
表2の結果から、実施例における電子写真感光体は、比較例における電子写真感光体に比べて、分散性や密着性に優れており、画像評価(ポチ)の発生も良化していることが明らかである
【符号の説明】
【0104】
1 電子写真感光体
2 軸
3 帯電手段
4 露光光
5 現像手段
6 転写手段
7 転写材
8 定着手段
9 クリーニング手段
10 前露光光
11 プロセスカートリッジ
12 案内手段
101 支持体
102 下引き層
103 感光層
図1
図2
図3
図4
図5