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特許7566686個々のサウンド領域を提供するための装置および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】個々のサウンド領域を提供するための装置および方法
(51)【国際特許分類】
   H04R 3/12 20060101AFI20241007BHJP
【FI】
H04R3/12 Z
【請求項の数】 17
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021077776
(22)【出願日】2021-04-30
(62)【分割の表示】P 2018553932の分割
【原出願日】2017-04-11
(65)【公開番号】P2021132385
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2021-05-31
【審判番号】
【審判請求日】2023-09-11
(31)【優先権主張番号】16164984.3
(32)【優先日】2016-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591037214
【氏名又は名称】フラウンホッファー-ゲゼルシャフト ツァ フェルダールング デァ アンゲヴァンテン フォアシュンク エー.ファオ
(74)【代理人】
【識別番号】100079577
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 全啓
(72)【発明者】
【氏名】シュナイダー マルリン
(72)【発明者】
【氏名】ヴェッツェル シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ワルサー アンドレーアス
(72)【発明者】
【氏名】ウーレ クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ヘルムート オリヴァー
(72)【発明者】
【氏名】プロカイン ペーター
(72)【発明者】
【氏名】ハベツ エマヌエル
【合議体】
【審判長】千葉 輝久
【審判官】樫本 剛
【審判官】坂本 聡生
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-95082(JP,A)
【文献】国際公開第2010/044439(WO,A1)
【文献】特開2010-109579(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 3/00 - 3/12
H04R 1/40
H04S 1/00 - 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つ以上の音源信号から複数のスピーカー信号を生成するための装置であって、前記2つ以上の音源信号の各々は2つ以上のサウンド領域のうちの1つ以上で再生され、且つ、前記2つ以上の音源信号のうちの少なくとも1つは、前記2つ以上のサウンド領域のうちの少なくとも1つにおいては再生されてはならず、
前記装置は、
2つ以上の初期音声信号のそれぞれを修正して2つ以上の前処理された音声信号を得るように構成された音声前処理装置(110)、および
前記2つ以上の前処理された音声信号に依存して前記複数のスピーカー信号を生成するように構成されたフィルター(140)を含み、
前記音声前処理装置(110)は、前記2つ以上の音源信号を前記2つ以上の初期音声信号として使用するように構成される、または、前記音声前処理装置(110)は、前記2つ以上の音源信号の各音源信号について、当該音源信号を修正することによって、前記2つ以上の初期音声信号のうちの1つの初期音声信号を生成するように構成され、
前記音声前処理装置(110)は、前記2つ以上の初期音声信号の各初期音声信号を、前記2つ以上の初期音声信号のうちの別の初期音声信号の信号電力またはラウドネスに依存して修正するように構成され、
前記フィルター(140)は、前記2つ以上の音源信号が前記2つ以上のサウンド領域のうちのどれにおいて再生されるべきかに依存して、且つ、前記2つ以上の音源信号が前記2つ以上のサウンド領域のうちのどれにおいて再生されてはならないかに依存して、前記複数のスピーカー信号を生成するように構成される、装置。
【請求項2】
前記音声前処理装置(110)は、前記2つ以上の初期音声信号の各初期音声信号を、前記2つ以上の初期音声信号のうちの当該初期音声信号を第1の値と第2の値との比に応じて修正することによって、前記2つ以上の初期音声信号のうちの別の初期音声信号の前記信号電力または前記ラウドネスに応じて修正するように構成され、
前記第2の値は当該初期音声信号の信号電力に依存し、そして、前記第1の値は前記2つ以上の初期音声信号の前記別の初期音声信号の前記信号電力に依存する、または
前記第2の値は当該初期音声信号の前記ラウドネスに依存し、そして、第1の値は前記2つ以上の初期音声信号のうちの前記別の初期音声信号の前記ラウドネスに依存する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記音声前処理装置(110)は、前記2つ以上の初期音声信号の各初期音声信号を、当該初期信号についての利得を決定すること、および、当該初期音声信号に前記利得を適用することにより、前記2つ以上の初期音声信号のうちの別の初期音声信号の前記信号電力または前記ラウドネスに依存して修正するように構成され、
前記音声前処理装置(110)は、前記第1の値と前記第2の値との間の前記比に依存して前記利得を決定するように構成され、前記比は、前記2つ以上の初期音声信号のうちの前記別の初期音声信号の前記信号電力と前記第2の値としての前記初期音声信号の前記信号電力との間の比である、または、前記比は、前記2つ以上の初期音声信号のうちの前記別の初期音声信号の前記ラウドネスと前記第2の値としての前記初期音声信号の前記ラウドネスとの間の比である、請求項1または請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記音声前処理装置(110)は、前記第1の値と前記第2の値との比によって単調増加する関数に依存して前記利得を決定するように構成される、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
【請求項6】
【請求項7】
【請求項8】
前記音声前処理装置(110)は、前記2つ以上の音源信号の各々の電力を正規化することによって前記2つ以上の初期音声信号を生成するように構成される、請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
【請求項10】
【請求項11】
前記フィルター(140)は、FIRフィルターのフィルター係数を決定することによって、前記2つ以上の音源信号が前記2つ以上のサウンド領域のうちのどれにおいて再生されるべきかに依存して、且つ、前記2つ以上の音源信号が前記2つ以上のサウンド領域のうちのどれにおいて再生されてはならないかに依存して、前記複数のスピーカー信号を生成するように構成される、請求項1~請求項10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
【請求項13】
前記フィルター(140)は、波面合成法を実行することによって、前記2つ以上の音源信号が前記2つ以上のサウンド領域のうちのどれにおいて再生されるべきかに依存して、且つ、前記2つ以上の音源信号が前記2つ以上のサウンド領域のうちのどれにおいて再生されてはならないかに応じて、前記複数のスピーカー信号を生成するように構成される、請求項1~請求項10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項14】
前記装置は、前記2つ以上の前処理された音声信号に、複数の帯域分割された音声信号への帯域分割を施すように構成された2つ以上の帯域分割器(121,122)をさらに含み、
前記フィルター(140)は、前記複数の帯域分割された音声信号に依存して前記複数のスピーカー信号を生成するように構成される、請求項1~請求項13のいずれか1項に記載の装置。
【請求項15】
前記装置は、前記複数の帯域分割された音声信号のうちの1つ以上の帯域分割された音声信号のスペクトルエンベロープを修正して、1つ以上のスペクトル整形された音声信号を得るように構成された1つまたは複数のスペクトル整形器(131,132,133,134)をさらに含み、
前記フィルター(140)は、前記1つ以上のスペクトル整形された音声信号に依存して、前記複数のスピーカー信号を生成するように構成される、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
2つ以上の音源信号から複数のスピーカー信号を生成するための方法であって、前記2つ以上の音源信号の各々は2つ以上のサウンド領域のうちの1つ以上で再生され、且つ、前記2つ以上の音源信号のうちの少なくとも1つは、前記2つ以上のサウンド領域のうちの少なくとも1つにおいては再生されてはならず、
前記方法は、
2つ以上の前処理された音声信号を得るために2つ以上の初期音声信号のそれぞれを修正するステップと、
前記2つ以上の前処理された音声信号に依存して前記複数のスピーカー信号を生成するステップを含み、
前記2つ以上の音源信号は前記2つ以上の初期音声信号として使用される、または、前記2つ以上の音源信号の各音源信号について、前記2つ以上の初期音声信号のうちの1つの初期音声信号が、当該音源信号を修正することによって生成され、
前記2つ以上の初期音声信号の各初期音声信号は、前記2つ以上の初期音声信号のうちの別の初期音声信号の信号電力またはラウドネスに依存して修正され、
前記複数のスピーカー信号を生成するステップは、前記2つ以上の音源信号が前記2つ以上のサウンド領域のうちのどれにおいて再生されるべきかに依存して、且つ、前記2つ以上の音源信号が前記2つ以上のサウンド領域のうちのどれにおいて再生されてはならないかに依存して行われる、
方法。
【請求項17】
コンピュータまたは信号プロセッサ上で実行されるときに、請求項16に記載の方法を実施するためのコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音声信号処理に関し、特に、個々のサウンド領域を提供するための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
音響障壁を挟まずに近くに位置する複数の音響領域で異なる音響シーンを再生することは、音声信号処理においてよく知られているタスクであり、これはしばしばマルチゾーン再生と呼ばれる([1]を参照)。技術的な観点から見ると、マルチゾーン再生は、スピーカーアレイの開口部がリスナーを囲む可能性のある、近距離場のシナリオが考慮されるとき、スピーカビームフォーミングまたはスポットフォーミング([2]参照)と密接に関連している。
【0003】
マルチゾーン再生シナリオにおける問題は、例えば、個々のサウンド領域を占有する聴取者に実質的に異なるアコースティックシーン(例えば、異なる映画の異なる音楽または音声コンテンツ)を提供することであり得る。
【0004】
【0005】
実世界のエンクロージャーで複数の信号を再生する場合、音波を音響障壁なしで停止することはできないため、完全な分離は不可能である。したがって、個々のリスナーが占有する個々のサウンド領域間には常にクロストークが存在する。
【0006】
【0007】
【0008】
【0009】
これを克服するアプローチは、指向性ラウドスピーカーを使用することであり、ラウドスピーカーの指向性は典型的には高周波数の方が高い([35]:JP 5345549、及び[21]:US 2005/0190935 A1参照)。残念ながら、この手法はよ
り高い周波数にのみ適している([1]を参照)。
【0010】
別のアプローチは、パーソナライズされた音声再生のための適切なプレフィルターと組み合わせてラウドスピーカーアレイを利用することである。
【0011】
図4はアレイによるマルチゾーン再現の最小例を示す。特に、図4は、2つの信号源211,212、2つのスピーカーおよび2つの領域221,222を有する基本的な構成を示している。図4の例は、実際のアプリケーションで発生するより複雑なシナリオのプレースホルダである。
【0012】
【0013】
図6はアレイによるマルチゾーン再生の一般的な信号モデルを示す。信号源610、プレフィルター615、インパルス応答417およびサウンド領域221,222が示されている。
【0014】
【0015】
ここで、式(3)の表現は、
【0016】

【0017】
各音源信号には、信号が再現されるべきサウンド領域、いわゆる「ブライト領域」がある。同時に、個々の信号を再現すべきでない領域、「ダーク領域」が存在する。
【0018】
例えば、図3では、信号源211がサウンド領域221において再生されるが、サウンド領域222においては再生されない。さらに、図3では、信号源212がサウンド領域222において再生されるが、サウンド領域221においては再生されない。
【0019】
【0020】
結果として生じる音響コントラストを伴うブライト領域とダーク領域における再生レベルの例を図5に示す。特に、図5は、(a)においてブライト領域とダーク領域の再生レベルの例を示し、(b)は結果として得られる音響コントラストを示す。
【0021】
【0022】
【0023】
指向性の音声再生が行われると、困難が生じる。
【0024】
上記のアプローチのいくつかは、指向性の音響放射によるマルチゾーン再生を実現しようとしています。このようなアプローチは、以下に説明する主要な物理的課題に直面しています。
【0025】
【0026】
音響波は同じ波動方程式に従うので、この規則は音響波にも適用可能である。最終的に、技術的理由によりスピーカー振動膜またはホーンのアパーチャのサイズが制限され、指向性再生が効果的に可能な周波数の下限を意味する。さらに、個々のラウドスピーカーのサイズは関係なく、ラウドスピーカーアレイ全体の寸法であるラウドスピーカーアレイについても同様である。個々のラウドスピーカーのドライバーとは異なり、アレイの寸法は主に経済的ではあるが技術的な理由で制限されている。
【0027】
ソリューションには有効な周波数制限がある。
【0028】
さらに、複数のサウンド領域を作成する必要があるエンクロージャーは、達成される放射パターン自体に影響を与える可能性がある。より高い周波数、大きなエンクロージャー、まっすぐな壁の場合、スピーカーアレイ再生用の指向性ラウドスピーカーまたはプレフィルターの設計におけるエンクロージャーのジオメトリを分析的に考慮するモデルが見つかる。しかし、エンクロージャーが(一般的な)湾曲を示す場合、任意形状の障害物がエンクロージャー内に配置される場合、またはエンクロージャーの寸法が波長の大きさのオーダーである場合、これはもはや不可能である。そのような設定は、例えば車内に存在し、以下では複雑な設定と呼ばれる。このような状況下では、エンクロージャーから反射された音が正確にモデル化できないため、指向性スピーカーや電気的に操舵されたアレイによって制御された音場を励起することは非常に困難である。このような条件下では、無指
向性の個別に駆動されるラウドスピーカーであっても、制御されない指向性パターンを効果的に発揮することができる。
【0029】
先行技術文献のいくつかは、(クロス)信号依存利得制御に関する。
【0030】
米国特許出願公開第2005/0152562号明細書([8]参照)は、個々の座席上の異なるラウドネスパターンおよび異なる等化パターンに関連する異なる動作モードを用いた車内サラウンド再生に関する。
【0031】
米国特許出願公開第2013/170668号明細書([9]参照)は、アナウンス音をエンターテインメント信号に混合することを記載している。両方の信号のミックスは、2つの領域ごとに個別である。
【0032】
米国特許出願公開第2008/0071400号明細書([10]参照)は、ドライバーが「音響的に過負荷になる」ことを軽減するために、2つの異なる信号を考慮して、ソースまたはコンテンツ情報に依存する信号処理を開示している。
【0033】
米国特許出願公開第2006/0034470号明細書([11]参照)は、品質の向上した高騒音状態で音声を再生するための等化、圧縮、および「鏡像」等化に関する。
【0034】
米国特許出願公開第2011/0222695号明細書([12]参照)は、周囲雑音および心理音響モデルを考慮して、続いて再生される音声トラックの音声圧縮を開示する。
【0035】
米国特許出願公開第2009/0232320号明細書([13]参照)は、エンタテインメントプログラムよりもアナウンス音が大きく、ユーザの対話を伴う圧縮を記載している。
【0036】
米国特許出願公開第2015/0256933号明細書([14]参照)は、コンテンツの音響漏れを最小限に抑えるための電話および娯楽コンテンツのバランスレベルを開示している。
【0037】
米国特許第6,674,865号明細書([15]参照)は、ハンズフリー電話のための自動利得制御に関する。
【0038】
独国特許出願公開第3045722号明細書([16]参照)は、アナウンスのためのノイズレベルおよびレベル増加に対する並列圧縮を開示している。
【0039】
他の先行技術文献は、マルチゾーン再現に関する。
【0040】
米国特許出願公開第2012/0140945号明細書([17]参照)は、明示的なサウンド領域の実装に関する。高周波数はスピーカーによって再生され、低周波数は振幅位相および遅延を操作することによって建設的および破壊的干渉を使用する。振幅、位相、遅延をどのように操作しなければならないかを決定するために、[17]は、特殊技法、「Tan Theta」法または固有値問題を解くことを提案する。
【0041】
米国特許出願公開第2008/0273713号明細書([18]参照)は、各座席の近くに配置されたスピーカーアレイを含むサウンド領域を開示しており、ラウドスピーカーアレイは各領域に明示的に割り当てられている。
【0042】
米国特許出願公開第2004/0105550号明細書([19]参照)は、聴取者から離れた非指向性の頭部に近い方向のサウンド領域に関する。
【0043】
米国特許出願公開第2006/0262935号明細書([20]参照)は、明示的にパーソナルサウンド領域に関する。
【0044】
米国特許出願公開第2005/019035号明細書([21]参照)は、パーソナライズされた再生のためのヘッドレストまたはシートバックラウドスピーカーに関する。
【0045】
米国特許出願公開第2008/0130922号明細書([22]参照)には、前部座席付近の指向性スピーカー、後部座席付近の無指向性スピーカー、および前後が互いに漏れないようにする信号処理を用いた健全な領域の実装が開示されている。
【0046】
米国特許出願公開第2010/0329488号明細書([23]参照)は、少なくとも1つのスピーカーと各領域に関連付けられた1つのマイクロホンとを備えた車両のサウンド領域を記載している。
【0047】
独国特許出願公開第102014210105号明細書([24]参照)は、(耳の間の)クロストークキャンセルと、領域間のクロストークの低減を使用して、バイノーラル再生によって実現されるサウンド領域に関する。
【0048】
米国特許出願公開第2011/0286614号明細書([25]参照)は、クロストークキャンセルおよびヘッドトラッキングに基づく両耳再生を伴う健全な領域を開示している。
【0049】
米国特許出願公開第2007/0053532号明細書([26]参照)は、ヘッドレストラウドスピーカーを開示している。
【0050】
米国特許出願公開第2013/0230175号明細書([27]参照)は、明示的にマイクロホンを使用するサウンド領域に関する。
【0051】
国際公開第2016/008621号([28]参照)は頭部及び胴体シミュレータを開示している。
【0052】
さらなる先行技術文献は指向性再生に関する。
【0053】
米国特許出願公開第2008/0273712号明細書([29]参照)は、車両シートに取り付けられた指向性ラウドスピーカーを開示している。
【0054】
米国特許第5,870,484号明細書([30]参照)は、指向性ラウドスピーカーによるステレオ再生を記載している。
【0055】
米国特許第5,809,153号明細書([31]参照)は、3つのラウドスピーカーが3つの方向を回路として指し、それらをアレイとして使用することに関する。
【0056】
米国特許出願公開第2006/0034467号明細書([32]参照)は、特別なトランスデューサーによるヘッドライナの励起に関連する健全な領域を開示している。
【0057】
米国特許出願公開第2003/0103636号明細書([33]参照)は、個人化された再生及び消音、及び消音を含む聴取者の耳で音場を生成するヘッドレストアレイに関
する。
【0058】
米国特許出願公開第2003/0142842号明細書([34]参照)は、ヘッドレストスピーカーに関する。
【0059】
日本国特許第5345549号公報([35]参照)は、前部座席のパラメトリックスピーカーを指し示している。
【0060】
米国特許出願公開第2014/0056431号明細書([36]参照)は指向性再生に関する。
【0061】
米国特許出願公開第2014/0064526号明細書([37]参照)は、ユーザに両耳性かつ局在化された音声信号を生成することに関する。
【0062】
米国特許出願公開第2005/0069148号明細書([38]参照)は、遅延に応じたヘッドライニングにおけるラウドスピーカーの使用を開示している。
【0063】
米国特許第5,081,682号明細書([39]参照)、独国実用新案登録第9015454号明細書([40]参照)、米国特許第5,550,922号明細書([41]参照)、米国特許第5,434,922号明細書([42]参照)、米国特許第6,078,670号明細書([43]参照)、米国特許第6,674,865号明細書([44]参照)、独国特許出願公開第10052104号明細書([45]参照)および米国特許出願公開第2005/0135635号明細書([46]参照)は、利得適応に関し、または、測定された周囲雑音または推定周囲雑音、例えば速度からの信号のスペクトル変更に関する。
【0064】
独国特許出願公開第10242558号明細書([47]参照)は、反平行なボリューム制御を開示している。
【0065】
米国特許出願公開第2010/0046765号明細書([48]参照)および独国特許出願公開第102010040689号明細書([49]参照)は、後で再生される音響シーン間の最適化されたクロスフェードに関する。
【0066】
米国特許出願公開第2008/0103615号明細書([50]参照)は、事象に依存するパンニングのバリエーションを記載している。
【0067】
米国特許第8,190,438B1号明細書([51]参照)は、音声ストリーム内の信号に依存する空間レンダリングの調整を記載している。
【0068】
国際公開第2007/098916号([52]参照)は、警告音を再生することを記載している。
【0069】
米国特許出願公開第2007/0274546号明細書([53]参照)は、どの楽曲が別の楽曲と組み合わせて演奏され得るかを決定する。
【0070】
米国特許出願公開第2007/0286426号明細書([54]参照)は、1つの音声信号(例えば、電話機)を別の音声信号(例えば、音楽)に混合することを記載している。
【0071】
一部の先行技術文献には、音声圧縮および利得制御が記載されている。
【0072】
米国特許第5,018,205号明細書([55]参照)は、周囲雑音の存在下での利得の帯域選択的調整に関する。
【0073】
米国特許第4,944,018号明細書([56]参照)は、速度制御増幅を開示している。
【0074】
独国特許出願公開第10351145号明細書([57]参照)は、周波数依存性閾値に打ち勝つための周波数依存性増幅に関する。
【0075】
いくつかの先行技術文献は雑音相殺に関連する。
【0076】
日本国特開2003-255954号公報([58]参照)には、聴取者の近くに設置されたスピーカーを用いた能動的な雑音除去が開示されている。
【0077】
米国特許第4,977,600号明細書([59]参照)は、個々の座席の拾い上げノイズの減衰を開示している。
【0078】
米国特許第5,416,846号明細書([60]参照)は、適応フィルターを用いたアクティブノイズキャンセルを記載している。
【0079】
さらなる先行技術文献は、音声のためのアレイビームフォーミングに関する。
【0080】
米国特許出願公開第2007/0030976号明細書([61]参照)および日本国特開2004-363696号公報([62]参照)は、音声再生、遅延および合計ビーム形成のためのアレイビーム形成を開示している。
【0081】
可聴周波数スペクトルの十分な範囲内でマルチゾーン再生を提供する改善された概念が提供される場合、非常に望ましいことであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0082】
本発明の目的は、音声信号処理のための改良された概念を提供することである。本発明の目的は、請求項1に記載の装置、請求項16に記載の方法、請求項17に記載のコンピュータプログラムによって解決される。
【課題を解決するための手段】
【0083】
2つ以上の音源信号から複数のスピーカー信号を生成するための装置が提供される。2つ以上の音源信号の各々は、2つ以上のサウンド領域のうちの1つ以上で再生され、2つ以上の音源信号の少なくとも1つは、2つ以上のサウンド領域の少なくとも1つにおいて再生されないものとする。この装置は、2つ以上の前処理された音声信号を得るために、2つ以上の初期音声信号のそれぞれを修正するように構成された音声前処理装置を備える。さらに、この装置は、2つ以上の前処理された音声信号に応じて複数のスピーカー信号を生成するように構成されたフィルターを備える。
音声前処理装置は、2つ以上の音源信号を2つ以上の初期音声信号として使用するように構成され、または、前記音源信号を修正することによって、前記2つ以上の初期音声信号の初期音声信号を前記2つ以上の音源信号の各音源信号に対して生成するように構成されている。さらに、音声前処理装置は、2つ以上の初期音声信号の信号パワーまたは別の初期音声信号のラウドネスに応じて、2つ以上の初期音声信号の各初期音声信号を変更するように構成される。
フィルターは、2つ以上の音源信号が再生されるべきである2つ以上のサウンド領域のいずれに依存するかに応じて、複数のスピーカー信号を生成するように構成され、そして、2つ以上の音源信号が再生されてはならないことに応じて、2つ以上のサウンド領域のうちのどのサウンド領域で再生されるべきであるかに依存する。
【0084】
さらに、2つ以上の音源信号から複数のスピーカー信号を生成する方法が提供される。2つ以上の音源信号の各々は、2つ以上のサウンド領域のうちの1つ以上で再生され、2つ以上の音源信号の少なくとも1つは、2つ以上のサウンド領域の少なくとも1つにおいて再生されないものとする。この方法は、
- 2つ以上の初期音声信号の各々を修正して、2つ以上の前処理された音声信号を得る。そして:
- 2つ以上の前処理された音声信号に応じて複数のスピーカー信号を生成する。
【0085】
2つ以上の音源信号は、2つ以上の初期音声信号として使用され、または、前記2つ以上の音源信号の各音源信号について、前記2つ以上の初期音声信号の初期音声信号が、前記音源信号を変更することによって生成される。2つ以上の初期音声信号の各初期音声信号は、2つ以上の初期音声信号のうちの別の初期音声信号の信号パワーまたはラウドネスに応じて変更される。複数のスピーカー信号は、2つ以上の音源信号が再生されるべきである2つ以上のサウンド領域のうちのいずれにあるかに応じて生成され、2つ以上のサウンド領域のうち、2つ以上の音源信号は再生されないものとする。
【0086】
さらに、コンピュータプログラムが提供され、コンピュータプログラムの各々は、コンピュータまたは信号プロセッサ上で実行されるとき、上記の方法のうちの1つを実装するように構成される。
【0087】
いくつかの実施形態は、独立した娯楽信号の指向性再生のための尺度を使用するときに、知覚される音響漏れを低減する信号依存のレベル変更を提供する。
【0088】
実施形態では、オプションとして、異なる周波数帯域に対する差分再生概念の組み合わせが採用される。
【0089】
任意選択的に、いくつかの実施形態は、一度測定されたインパルス応答に基づいて最小自乗最適化FIRフィルター(FIR=有限インパルス共鳴)を使用する。いくつかの実施形態の詳細は、実施形態によるプレフィルターが記載されるとき、以下に記載される。
【0090】
いくつかの実施形態は、場合によっては自動車シナリオで使用されるが、このようなシナリオに限定されない。
【0091】
いくつかの実施形態は、ヘッドホンなどを使用せずに同じエンクロージャーを占有する聴取者に個々の音声コンテンツを提供する概念に関する。とりわけ、これらの実施形態は、高いレベルの音声品質を保持しながら大きな知覚音響コントラストが達成されるような、信号依存の前処理を伴う異なる再生アプローチのスマートな組み合わせによって最新技術とは異なる。
【0092】
いくつかの実施形態は、フィルター設計を提供する。
【0093】
いくつかの実施形態は、追加の信号依存処理を使用する。
【0094】
以下では、本発明の実施形態を、図面を参照してより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0095】
図1】一実施形態による2つ以上の音源信号から複数のスピーカー信号を生成するための装置を示す。
図2】理想的なマルチゾーン再生を示す。
図3】実際には複数の信号の再生を示す。
図4】アレイによるマルチゾーン再生の最小例を示す。
図5】ブライト領域とダーク領域の再生レベルの一例を(a)に示し、(b)の結果として得られる音響コントラストを示す。
図6】アレイを用いたマルチゾーン再生の一般的な信号モデルを示す。
図7】一実施形態によるアレイによるマルチゾーン再生を示す。
図8】一実施形態による音声前処理装置の実装例を示す。
図9】(a)は、異なる再生方法によって達成される音響コントラストを示し、そして、(b)は、音声クロスオーバーの選択された振幅応答を示す実施形態による分波器の例示的な設計を示す。
図10】実施形態による分波器の例示的な設計を示すものであって、(a)は、特定の再生方法によって達成される音響コントラストを示し、(b)は、スペクトル成形フィルターの選択された振幅応答を示している、
図11】一実施形態によるエンクロージャー内の例示的なラウドスピーカーセットアップを示す。
【発明を実施するための形態】
【0096】
図1は、一実施形態による2つ以上の音源信号から複数のスピーカー信号を生成するための装置を示す。2つ以上の音源信号の各々は、2つ以上のサウンド領域のうちの1つ以上で再生され、2つ以上の音源信号の少なくとも1つは、2つ以上のサウンド領域の少なくとも1つにおいて再生されないものとする。
【0097】
装置は、2つ以上の前処理された音声信号を得るために、2つ以上の初期音声信号のそれぞれを変更するように構成された音声前処理装置110を備える。さらに、この装置は、2つ以上の前処理された音声信号に応じて複数のスピーカー信号を生成するように構成されたフィルター140を備える。
音声前処理装置110は、2つ以上の音源信号を2つ以上の初期音声信号として使用するように構成され、または、音声前処理装置110は、前記2つ以上の音源信号の各音源信号について、前記2つ以上の初期音声信号の初期音声信号を、前記音源信号を変更することによって生成するように構成される。さらに、音声前処理装置110は、2つ以上の初期音声信号の信号パワーまたは他の初期音声信号のラウドネスに応じて、2つ以上の初期音声信号の各初期音声信号を変更するように構成される。
【0098】
フィルター140は、2つ以上の音源信号が再生されるべきである2つ以上のサウンド領域のいずれに依存するかに応じて、複数のスピーカー信号を生成するように構成され、そして、2つ以上の音源信号が再生されてはならないことに応じて、2つ以上のサウンド領域のうちのどのサウンド領域で再生されるべきであるかに依存する。
【0099】
現状の技術のアプローチはかなりの音響コントラストを達成することができるが、先行技術の方法によって達成されるコントラストは、典型的には、複数の無関係な音響シーンを同じエンクロージャーのインハビタントに提供するのに十分ではなく、いつでも高品質の音声再生が必要である。
【0100】
聴取者によって知覚される音響コントラストは改善され、これは、上記の式(14)で定義されるような音響コントラストに依存するが、それと同一ではない。音響エネルギーのコントラストを最大にするのではなく、リスナーによって知覚される音響コントラスト
が増加することが達成されなければならない。知覚される音響コントラストは、主観的音響コントラストと呼ばれ、音響エネルギーのコントラストは、以下において客観的な音響コントラストと呼ばれる。いくつかの実施形態は、指向性音声再生を容易にするための手段を使用し、音漏れを目立たなくするように音響漏洩を整形する手段を使用する。
【0101】
図1に加えて、図7の装置は、2つの(オプションの)帯域分割器121,122および4つの(選択的な)スペクトル成形器131,132,133,134をさらに備える。
【0102】
いくつかの実施形態によれば、装置は、例えば、2つ以上の前処理された音声信号を複数の帯域分割された音声信号に帯域分割するように構成された2つ以上の帯域分割器121,122をさらに備えることができる。フィルター140は、例えば、複数の帯域分割された音声信号に応じて複数のスピーカー信号を生成するように構成することができる。
【0103】
いくつかの実施形態では、装置は、例えば、1つ以上のスペクトル成形器131,132,133,134をさらに備え、1つ以上のスペクトル成形された音声信号を得るために、複数の帯域分割された音声信号のうちの1つ以上のスペクトル包絡線を修正するように構成される。
【0104】
【0105】
図7に示す2つの信号源があり、2つの独立した信号が供給され、「前処理」段階に供給されます。この前処理段階は、例えば、いくつかの実施形態では、両方の信号のための並列処理(すなわち、ミキシングなし)を実施することができる。他の処理ステップとは異なり、この処理ステップは、LT1システム(線形時間不変システム)を構成しない。代わりに、この処理ブロックは、再生レベルの差が小さくなるように、処理されたすべての音源信号の時間的に変化する利得を決定する。この背後にある根拠は、各領域の音響漏れは、それぞれの他の領域で再現されるシーンに常に線形に依存するということである。同時に、意図的に再生されたシーンは、音響漏れを遮蔽することができる。したがって、知覚される音響漏れは、それぞれの領域において意図的に再生されるシーン間のレベル差に比例する。結果として、再生されたシーンのレベル差を低減することは、知覚される音響漏れを減少させ、したがって、主観的音響コントラストを増加させる。以下では、前処理を説明する。
【0106】
【0107】
上述したように、後に適用される指向性再生のための手段は、ある領域から他の領域への一定の漏れを常に示す。この漏れは、領域間の音響コントラストのブレークダウンとして測定することができる。複雑な設定では、これらのブレークダウンは、想定される指向性再生方法のそれぞれについて、周波数スペクトルの複数のポイントで発生する可能性があり、これらの方法の適用における大きな障害となっている。音色の変化はある程度は許容できることはよく知られている。これらの自由度は、コントラストクリティカルな周波数帯域を減衰させるために使用できます。
【0108】
したがって、(オプションの)スペクトル成形器131,132,133,134は、後で再生される信号が周波数スペクトルのこれらの部分で減衰するように設計され、低い音響コントラストが期待される。分波器とは異なり、スペクトル成形器は、再生音の音色を変更することを意図している。さらに、この処理段階は、故意に再生された音響場面が空間的に音響漏洩をマスクできるように、遅延および利得を含むこともできる。
【0109】
【0110】
他の実施形態は、計算されたインパルス応答で動作することによって上記のアプローチを採用する。特定の実施形態では、インパルス応答は、スピーカーからマイクロフォンへの自由場インパルス応答を表すように計算される。
【0111】
さらなる実施形態では、エンクロージャーの画像ソースモデルを使用して得られた計算されたインパルス応答で動作することによって、上記のアプローチを採用する。
【0112】
インパルス応答は、動作中にマイクロフォンが必要でないように1回測定されることに留意されたい。ACCとは異なり、圧力マッチングアプローチは、それぞれのブライト領域で所定の大きさと位相を規定します。これは、高い再生品質をもたらす。従来のビームフォーミング手法は、高周波を再現する必要がある場合にも適しています。
【0113】
【0114】
以下では、本発明の実施形態をより詳細に説明する。
【0115】
まず、実施形態による前処理について説明する。特に、図7の「前処理」によって示されるブロックの実装が提示される。理解を深めるために、以下の説明は1つの領域につき1つのモノラル信号にのみ集中している。しかし、マルチチャネル信号への一般化は容易である。したがって、いくつかの実施形態は、領域ごとにマルチチャネル信号を示す。
【0116】
【0117】
【0118】
【0119】
【0120】
【0121】
信号の正規化によって、それらの相対レベル差は既に低減されている。しかし、これは典型的には、意図された効果のためには十分ではない。なぜなら、電力推定値は長期的なものであり、典型的な音響シーンのレベル変動は、むしろ短期間のプロセスである。以下では、個々の信号の相対的パワーの差が、短期的に明示的に低減され、前処理ブロックの主な目的をどのように構成するかが説明される。
【0122】
【0123】
【0124】
【0125】
【0126】
これらの信号は、例えば、
【0127】
【0128】
【0129】
【0130】
いくつかの実施形態によれば、音声前処理装置110は、前記初期音声信号に対する利得を決定することと、前記初期音声信号に前記利得を適用することとを含むことによって、例えば、2つ以上の初期音声信号のうちの別の初期音声信号の信号パワーまたはラウドネスに応じて、2つ以上の初期音声信号の各初期音声信号を変更するように構成することができる。さらに、音声前処理装置110は、例えば、第1の値と第2の値との間の比に応じて利得を決定するように構成されてもよく、前記比は、前記2つ以上の初期音声信号の前記別の初期音声信号の信号パワーと前記初期音声信号の信号パワーとの間の比であり、または、前記比率は、2つ以上の初期音声信号の前記別の初期音声信号のラウドネスと前記第2の値としての前記初期音声信号のラウドネスとの間の比である。
【0131】
いくつかの実施形態では、音声前処理装置110は、例えば、第1の値と第2の値との間の比によって単調に増加する関数に応じて利得を決定するように構成することができる。
【0132】
【0133】
【0134】
【0135】
【0136】
【0137】
【0138】
【0139】
【0140】
【0141】
【0142】
【0143】
【0144】
【0145】
【0146】
【0147】
【0148】
【0149】
【0150】
【0151】
【0152】
【0153】
【0154】
【0155】
【0156】
以下では、実施形態による前処理のさらなる特徴について説明する。
【0157】
【0158】
【0159】
一実施形態によれば、電力推定器は、例えば、ITU-R勧告BS.1770-4に記載されているようなラウドネス推定器で置き換えることができる。これは、知覚されたラウドネスは、このモデルによって良好にマッチングされるので、再生品質が改善される。
【0160】
【0161】
【0162】
【0163】
入力 - 出力経路の所望の周波数応答は、例えば、通過帯域における平坦な周波数応答
と阻止帯域における高い減衰とを有する帯域通過とすることができる。通過帯域および阻止帯域の境界は、個々の出力に接続された再生手段がそれぞれの音響帯域間で十分な音響コントラストを達成することができる周波数範囲に応じて選択される。
【0164】
図9は、実施形態による1つ以上の分波器の例示的な設計を示し、前記(a)は異なる再生方法によって達成される音響コントラストを示し、そして前記(b)は、音声クロスオーバの選択された振幅応答を示す。特に、図9は、達成された音響コントラストに関するフィルター振幅応答の例示的な設計を示す。
【0165】
図9から分かるように、スペクトル成形器は、例えば、音響コントラストに応じて音声信号のスペクトルエンベロープを修正するように構成されてもよい。
【0166】
1つまたは複数の帯域分割器の実際の実装を実現するために、様々な概念を採用することができる。例えば、いくつかの実施形態はFIRフィルターを使用し、他の実施形態はIIRフィルターを使用し、さらなる実施形態はアナログフィルターを使用する。分波器を実現するための可能なコンセプトは、例えば、そのトピックに関する一般的な文献に示されている任意のコンセプトを採用することができる。
【0167】
いくつかの実施形態は、例えば、スペクトル成形を行うためのスペクトル成形器を含むことができる。音声信号に対してスペクトル成形を行う場合、その音声信号のスペクトルエンベロープは、例えば、変更されてもよく、例えばスペクトル的に成形された音声信号を得ることができる。
【0168】
【0169】
しかしながら、スペクトルフィルターの最終的な周波数応答は、等化器とは全く異なる
方法で設計されている。スペクトルフィルターは、聴取者によって受け入れられる最大スペクトル歪みを考慮し、スペクトルフィルターは、音響漏れを生成することが知られている周波数を減衰させるように設計される。
【0170】
この背景にある合理的なことは、人間の知覚は、特定の周波数での音響シーンのスペクトル歪みに対して異なって敏感であり、周囲の周波数の励起に依存し、ひずみが減衰であるか増幅であるかに依存する。
【0171】
例えば、広帯域音声信号に帯域幅の小さいノッチフィルターを適用すると、リスナーは、もしあれば、わずかな違いしか認識しません。しかしながら、同じ帯域幅を有するピークフィルターが同じ信号に適用される場合、リスナーはかなりの違いを感じるでしょう。
【0172】
実施形態は、音響コントラストにおける帯域制限された破壊が音響漏れのピークをもたらすので、この事実を利用することができるという知見に基づいている(図5参照)。ブライト領域で再生された音響シーンがノッチフィルターによってフィルタリングされる場合、この領域のリスナーにはほとんど感知されないでしょう。一方、ダーク領域で知覚される音響漏れのピークは、この測定によって補償される。
【0173】
対応するフィルター応答の一例を図10に示す。特に、図10は、実施形態によるスペクトル成形器の例示的な設計を示しており、前記(a)は、特定の再生方法により得られる音響コントラストを示し、前記(b)は、スペクトル成形フィルターの選択された振幅応答を示す。
【0174】
上記で概説したように、フィルター140は、2つ以上の音源信号が再生されるべきである2つ以上のサウンド領域のいずれかに応じて、複数のスピーカー信号を生成するように構成され、2つ以上の音源信号が再生されてはならないことに応じて、2つ以上のサウンド領域のうちのどのサウンド領域で再生されるべきであるかに依存する。
【0175】
以下では、実施形態によるフィルター140、例えば、プレフィルターについて説明する。
【0176】
一実施形態では、例えば、1つまたは複数の音源信号は、第1のサウンド領域では再生されるが、第2のサウンド領域では再生されず、少なくとも1つのさらなる音源信号は、第2のサウンド領域では再生されるが、第1のサウンド領域では再生されない。
【0177】
【0178】
【0179】
音源信号が、第1のサウンド領域では再生されるが、第2のサウンド領域では再生されないことを達成する適切な手段が使用されてもよく、また、第2のサウンド領域よりも大きなラウドネスで第1のサウンド領域で再生されることを少なくとも達成する(および/または、少なくとも、音源信号が第2のサウンド領域よりも大きな信号エネルギーで第1のサウンド領域で再生されることを達成する)適切な手段を採用することができる。
【0180】
例えば、フィルター140を使用することができ、例えば、第1のサウンド領域では再生されるが第2のサウンド領域では再生されない第1の音源信号は、第2のサウンド領域よりも大きなラウドネス(および/またはより大きな信号エンゲージ)で第1のサウンド領域で再生されるように、フィルター係数を選択することができる。さらに、フィルター係数は、例えば、第1のサウンド領域ではなく第2のサウンド領域で再生される第2の音源信号は、第1のサウンド領域よりも大きなラウドネス(および/またはより大きい信号エンゲージ)で第2のサウンド領域で再生されるように、選択されてもよい。
【0181】
例えば、FIRフィルター(有限インパルス応答フィルター)を使用することができ、フィルター係数は、例えば、以下で説明するように、適切に選択することができる。
【0182】
あるいは、(例えば、多くの例[69]のうちの1つとして、Wave Field Synthesisに関する一般的な情報については)音声処理の分野でよく知られているWave Field Synthesis(WFS)が採用されてもよい。
【0183】
あるいは、音声処理の分野でよく知られているHigher-Order Ambis
onicsを使用することができる(例えば、Higher-Order Ambiso
nicsに関する一般的な情報については、多くの例[70]の1つとして参照されたい)。
【0184】
ここで、いくつかの特定の実施形態によるフィルター140について、より詳細に説明する。
【0185】
ルターが、同じ周波数範囲で主に励起される複数のラウドスピーカーに少なくとも1つの入力信号を供給するときは常に、複数のラウドスピーカーのセットがラウドスピーカーアレイと見なされる。個々のラウドスピーカーは複数のアレイの一部であり、複数の入力信号が1つのアレイに供給され、次にそれらが異なる方向に放射される可能性がある。
【0186】
[1]、[3]、[4]、[5]および[6]を参照すると、無指向性ラウドスピーカーのアレイが指向性放射パターンを示すように線形プレフィルターを決定するための周知の異なる方法がある。
【0187】
いくつかの実施形態は、測定されたインパルス応答に基づく圧力マッチング手法を実現する。そのようなアプローチを採用するこれらの実施形態のいくつかは、単一のスピーカーアレイのみが考慮される以下に説明される。他の実施形態は、複数のラウドスピーカーアレイを使用する。複数のラウドスピーカーアレイへの応用は簡単である。
【0188】
【0189】
【0190】
【0191】
【0192】
【0193】
【0194】
【0195】
方程式(34)を最大化することは、一般化された固有値問題[3]として解くことが
できることに留意すべきである。
【0196】
【0197】
【0198】
【0199】
【0200】
【0201】
【0202】
【0203】
【0204】
フィルター係数の計算に関して、式(36)が必要なフィルター係数を明示的に与えることに注目すると、その計算は実際には非常に要求されている。この問題と、リスニングルームの等化の問題との類似性のため、そこで使用されている方法を適用することもできる。
【0205】
したがって、式(36)を計算するための非常に効率的なアルゴリズムは、参考文献[71]: SCHNEIDER, Martin; KELLERMANN, Walter: "Iterative DFT-domain inverse filter determination for adaptive listening room equalization." In: Acoustic Signal Enhancement; Proceedings of IWAENC 2012; International Workshop on. VDE, 2012,
S. 1-4. に記載されている。
【0206】
以下では、実施形態によるラウドスピーカエンクロージャーマイクシステム(LEMS)について説明する。特に、実施形態によるLEMSの設計について説明する。いくつかの実施形態では、上記の手段は、例えば、LEMSの異なる特性に依存することができる。
【0207】
図11は、一実施形態によるエンクロージャー内の例示的なラウドスピーカーセットアップを示す。特に、図11は、4つのサウンド領域を有する例示的なLEMSを示す。個々の音響シーンは、それぞれのサウンド領域で再生する必要がある。この目的のために、図11に示されるスピーカーは、互いに対する相対的な位置およびサウンド領域に関連して、特定の方法で使用される。
【0208】
「アレイ1」および「アレイ2」によって示される2つのスピーカーアレイは、それに応じて決定されたプレフィルター(上記を参照)とともに使用される。この方法では、それらのアレイの放射を「領域1」および「領域2」に向けて電気的に操縦することが可能である。両方のアレイが数センチメートルのスピーカー間距離を示し、アレイが数デシメートルのアパーチャサイズを示すと仮定すると、ミッドレンジ周波数に対して効果的なステアリングが可能である。
【0209】
明瞭ではないが、例えば、互いに離れて1~3メートルに位置することができる全方向性スピーカー「LS1」、「LS2」、「LS3」、および「LS4」は、例えば300Hz以下の周波数を考慮すると、スピーカーアレイとして駆動される。プレフィルターによれば、上記の方法を用いて決定することができる。
【0210】
スピーカー「LS5」および「LS6」は、領域3および4のそれぞれに高周波音声を提供する指向性スピーカーである。
【0211】
上述したように、指向性再生のための尺度は、可聴周波数範囲全体に対して十分な結果をもたらさないことがある。この問題を補うために、例えば、近くに位置するラウドスピーカーまたはそれぞれのサウンド領域内に位置するラウドスピーカーとすることができる。この配置は、知覚される音質に関して準最適であるが、他の領域との距離と比較して割り当てられた領域に対するスピーカーの距離の差は、周波数とは無関係に、空間的に焦点を合わせた再生を可能にする。したがって、これらのラウドスピーカーは、例えば、他の方法が満足のいく結果に至らない周波数範囲で使用することができる。
【0212】
【0213】
音響リークは、周波数帯域ごとに異なるように選択された再生方法に依存するので、そのような実施形態は、前処理パラメータを再生方法の要求に適合させることができるという利点を有する。
【0214】
さらに、そのような実装を選択する場合、1つの周波数帯域における漏れを補償することは、別の周波数帯域に影響を与えない。「前処理」ブロックはLTIシステムではないので、この交換は、システム全体が同じ問題を確実に解決するにもかかわらず、システム全体の機能の変更を意味する。
【0215】
さらに、いくつかの実施形態は、動作に先立ち、すべてのスピーカーからの複数のマイクロフォンへのインパルス応答の測定を使用することができることに留意されたい。したがって、動作中にマイクロフォンは必要ない。
【0216】
提案された方法は、一般に、車内シナリオなどのマルチゾーン再現シナリオに適している。
【0217】
特定の実施要件に応じて、本発明の実施形態は、ハードウェアまたはソフトウェアで、または少なくとも部分的にハードウェアで、または少なくとも部分的にソフトウェアで実施することができる。実装は、電子的に読み取り可能な制御信号が記憶されたフロッピーディスク、DVD、ブルーレイ、CD、ROM、PROM、EPROM、EEPROMまたはフラッシュメモリなどのデジタル記憶媒体を使用して実行することができ、そして、それは、それぞれの方法が実行されるようにプログラム可能なコンピュータシステムと協働する(または協働することができる)。したがって、デジタル記憶媒体はコンピュータ可読であってもよい。
【0218】
本発明によるいくつかの実施形態は、プログラム可能なコンピュータシステムと協働して、本明細書に記載の方法の1つが実行されるように、電子的に読み取り可能な制御信号を有するデータキャリアを備える。
【0219】
一般に、本発明の実施形態は、コンピュータプログラム製品がコンピュータ上で動作するときに、方法の1つを実行するように動作するプログラムコードを有するコンピュータプログラム製品として実施することができる。プログラムコードは、例えば、機械読み取り可能なキャリアに格納することができる。
【0220】
他の実施形態は、機械可読キャリアに格納された、本明細書に記載の方法の1つを実行するためのコンピュータプログラムを含む。
【0221】
言い換えると、したがって、本発明の方法の実施形態は、コンピュータプログラムがコンピュータ上で実行されるときに、本明細書に記載の方法の1つを実行するためのプログラムコードを有するコンピュータプログラムである。
【0222】
したがって、本発明の方法のさらなる実施形態は、本明細書に記載の方法のうちの1つを実行するためのコンピュータプログラムを含むデータキャリア(またはデジタル記憶媒体またはコンピュータ可読媒体)である。データ担体、デジタル記憶媒体または記録媒体は、典型的には有形および/または非一時的である。
【0223】
したがって、本発明の方法のさらなる実施形態は、本明細書に記載の方法のうちの1つを実行するためのコンピュータプログラムを表すデータストリームまたは一連の信号である。データストリームまたは信号のシーケンスは、例えば、インターネットを介して、デ
ータ通信接続を介して転送されるように構成することができる。
【0224】
さらなる実施形態は、本明細書に記載の方法のうちの1つを実行するように構成された、または適用される処理手段、例えばコンピュータまたはプログラマブル論理装置を含む。
【0225】
さらなる実施形態は、本明細書で説明される方法の1つを実行するためのコンピュータプログラムがインストールされたコンピュータを含む。
【0226】
本発明によるさらなる実施形態は、本明細書で説明される方法の1つを実行するためのコンピュータプログラムを受信機に(例えば、電子的にまたは光学的に)転送するように構成された装置またはシステムを含む。受信機は、例えば、コンピュータ、モバイルデバイス、メモリデバイスなどであってもよい。装置またはシステムは、例えば、コンピュータプログラムを受信機に転送するためのファイルサーバを備えることができる。
【0227】
いくつかの実施形態では、プログラマブルロジックデバイス(例えば、フィールドプログラマブルゲートアレイ)を使用して、本明細書に記載の方法の機能の一部または全部を実行することができる。いくつかの実施形態では、フィールドプログラマブルゲートアレイは、本明細書で説明する方法の1つを実行するためにマイクロプロセッサと協働することができる。一般に、これらの方法は、好ましくは、任意のハードウェア装置によって実行される。
【0228】
本明細書に記載の装置は、ハードウェア装置を使用して、またはコンピュータを使用して、またはハードウェア装置とコンピュータの組み合わせを使用して実装することができる。
【0229】
ここに記載された方法は、ハードウェア装置を使用して、またはコンピュータを使用して、またはハードウェア装置とコンピュータの組み合わせを使用して実行されてもよい。
【0230】
上述の実施形態は、本発明の原理の単なる例示である。本明細書に記載された構成および詳細の修正および変形は、当業者には明らかであることが理解される。したがって、差し迫った特許請求の範囲によってのみ限定され、本明細書の実施形態の説明および説明によって示される特定の詳細によっては限定されないことが意図される。
【0231】
参考文献
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[12] 米国特許出願公開第2011/0222695号明細書
[13] 米国特許出願公開第2009/0232320号明細書
[14] 米国特許出願公開第2015/0256933号明細書
[15] 米国特許第6,674,865号明細書
[16] 独国特許出願公開第3045722号明細書
[17] 米国特許出願公開第2012/0140945号明細書
[18] 米国特許出願公開第2008/0273713号明細書
[19] 米国特許出願公開第2004/0105550号明細書
[20] 米国特許出願公開第2006/0262935号明細書
[21] 米国特許出願公開第2005/019035号明細書
[22] 米国特許出願公開第2008/0130922号明細書
[23] 米国特許出願公開第2010/0329488号明細書
[24] 独国特許出願公開第102014210105号明細書
[25] 米国特許出願公開第2011/0286614号明細書
[26] 米国特許出願公開第2007/0053532号明細書
[27] 米国特許出願公開第2013/0230175号明細書
[28] 国際公開第2016/008621号
[29] 米国特許出願公開第2008/0273712号明細書
[30] 米国特許第5,870,484号明細書
[31] 米国特許第5,809,153号明細書
[32] 米国特許出願公開第2006/0034467号明細書
[33] 米国特許出願公開第2003/0103636号明細書
[34] 米国特許出願公開第2003/0142842号明細書
[35] 日本国特許第5345549号公報
[36] 米国特許出願公開第2014/0056431号明細書
[37] 米国特許出願公開第2014/0064526号明細書
[38] 米国特許出願公開第2005/0069148号明細書
[39] 米国特許第5,081,682号明細書
[40] 独国実用新案登録第9015454号明細書
[41] 米国特許第5,550,922号明細書
[42] 米国特許第5,434,922号明細書
[43] 米国特許第6,078,670号明細書
[44] 米国特許第6,674,865号明細書
[45] 独国特許出願公開第10052104号明細書
[46] 米国特許出願公開第2005/0135635号明細書
[47] 独国特許出願公開第10242558号明細書
[48] 米国特許出願公開第2010/0046765号明細書
[49] 独国特許出願公開第102010040689号明細書
[50] 米国特許出願公開第2008/0103615号明細書
[51] 米国特許第8,190,438B1号明細書
[52] 国際公開第2007/098916号
[53] 米国特許出願公開第2007/0274546号明細書
[54] 米国特許出願公開第2007/0286426号明細書
[55] 米国特許第5,018,205号明細書
[56] 米国特許第4,944,018号明細書
[57] 独国特許出願公開第10351145号明細書
[58] 日本国特開2003-255954号公報
[59] 米国特許第4,977,600号明細書
[60] 米国特許第5,416,846号明細書
[61] 米国特許出願公開第2007/0030976号明細書
[62] 日本国特開2004-363696号公報
[63] Wikipedia: "Angular resolution",
https://en.wikipedia.org/wiki/Angular_resolution , retrieved from the Internet on 8 April 2016.
[64] Wikipedia: "Nyquist-Shannon sampling theorem",
https://en.wikipedia.org/wiki/Nyquist-Shannon_sampling_theorem , retrieved from the Internet on 8 April 2016.
[65] Wikipedia: "Dynamic range compression",
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[66] Wikipedia: "Weighting filter", https://en.wikipedia.org/wiki/Weighting_filter , retrieved from the Internet on 8 April 2016.
[67] Wikipedia: "Audio crossover - Digital"
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[68] Wikipedia: "Equalization (audio) - Filter functions",
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[69] 国際公開第2004/114725号
[70] 欧州特許出願公開第2450880号明細書
[71] SCHNEIDER, Martin; KELLERMANN, Walter: "Iterative DFT-domain inverse
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