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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】散水状況把握方法
(51)【国際特許分類】
   A01G 27/00 20060101AFI20241007BHJP
【FI】
A01G27/00 504B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021081504
(22)【出願日】2021-05-13
(65)【公開番号】P2022175256
(43)【公開日】2022-11-25
【審査請求日】2024-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000195971
【氏名又は名称】西松建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】本多 宗一郎
(72)【発明者】
【氏名】石渡 寛之
(72)【発明者】
【氏名】永山 智之
(72)【発明者】
【氏名】ドゥアンチャック マニーヴォン
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 大毅
【審査官】星野 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-220998(JP,A)
【文献】特開2018-126138(JP,A)
【文献】特開2021-010312(JP,A)
【文献】特開平09-149737(JP,A)
【文献】特開2010-046052(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥した状態の土壌の温度の経時変化または判断時における気温の経時変化を測定する第一測定工程と、
判断対象の土壌の温度の経時変化を測定する第二測定工程と、
前記第二測定工程で測定した温度の経時変化に基づいて、前記判断対象の土壌に散水がなされたか否かを判断する第一判断工程と、
前記第二測定工程で測定した温度の経時変化に基づいて、前記判断対象の土壌が湿潤しているか否かを判断する第二判断工程と、を有し、
前記第二判断工程では、前記第二測定工程で測定した温度の経時変化が、前記第一測定工程で測定した温度または気温の経時変化よりも緩やかである場合に、土壌が湿潤していると判断することを特徴とする散水状況把握方法。
【請求項2】
前記土壌に温度センサを配置する準備工程を有し、
前記第二測定工程で、前記温度センサの出力に基づいて、前記温度の経時変化を測定することを特徴とする請求項1に記載の散水状況把握方法。
【請求項3】
前記第一判断工程で、前記温度の経時変化に急激な変化が見られた場合に、前記土壌に散水がなされたと判断することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の散水状況把握方法。
【請求項4】
前記準備工程で、複数の前記温度センサを、前記土壌の複数個所にそれぞれ配置し、
前記第二測定工程で、複数の前記温度センサの各出力に基づいて、前記土壌の各箇所における前記温度の経時変化をそれぞれ測定し、
前記第一判断工程で、前記土壌の各箇所における前記温度の各経時変化に基づいて、前記土壌に散水がなされたか否かを、箇所毎に判断することを特徴とする請求項2に記載の散水状況把握方法。
【請求項5】
前記判断対象の土壌は、散水設備が設けられたものであることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか一項に記載の散水状況把握方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緑化基盤等における散水状況の把握方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、緑化基盤等を構成する土壌の水分量の管理は、タイマーや流量計を備える自動散水設備を用いて定期的且つ自動的に行われるのが一般的である。
しかし、自動散水設備を用いた管理には、設備の故障による植物の枯損、ホースの破損による灌漑水の大量ロス等の潜在的リスクがあった。
そこで、こうしたリスクを回避するため、ロードセル等の荷重センサを用いてプランタの重量を測定し、その測定結果に基づいて灌水を自動制御することが行われている(例えば、特許文献1参照)。
また、近年では、測定した重量に基づく灌水(給液)の自動制御を、トマト等の高付加価値の植物の栽培に適用することも提案されている(例えば、特許文献2、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実全平02-138547号公報
【文献】特開2017-158449号公報
【非特許文献】
【0004】
【文献】大石直記他2名,“高糖度トマト養液栽培におけるロードセルを用いた植物重量計測に基づく給液制御システムの開発”,植物環境工学,2018年,第30巻,第2号,p94-102
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記各種先行技術文献に記載されたような従来の土壌重量に基づく土壌水分量の管理方法は、管理対象となる土壌の状況によって適用することが困難な場合があった。
例えば、管理対象となる土壌が壁面に設けられた緑化基盤のものである場合、緑化基盤は壁面に固定されているため、緑化基盤の荷重を荷重センサに作用させることは困難である。
【0006】
一方、誘電率を用いた水分センサを利用して土壌の水分量を把握するという方法も考えられる。
しかしながら、こうした水分センサは、土壌の密度や塩分濃度の影響を受け易いため、設置する際に土壌に応じたキャリブレーションを行う必要がある。近年は、緑化基盤が多様化しているため、水分センサの設置には大変な手間がかかってしまうことになる。
また、広範な土壌の温度を測定する際には水分センサが複数必要になるが、水分センサは高額であるため、コストが増大してしまう。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、対象となる土壌の設置条件に関わらず低コストで散水状況を把握できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の発明者は、温度センサに着目して以下の実験を行った。
具体的には、まず、図1に示すような実験器具100を用意した。
実験器具100は、緑化基盤1(土壌S)と、プランタ2と、荷重計3と、温度計4と、を備えている。
プランタ2には、緑化基盤1を構成する土壌と同様の土壌Sが入れられている。
荷重計3は、プランタ2の総重量を測定するためのもので、プランタ2の下に配置されている。
温度計4は、緑化基盤1の表層部に差し込まれた温度センサ41と、温度センサ41が出力した電気信号に基づいて土壌Sの温度を算出する図示しない演算装置と、を有している。
【0009】
そして、荷重計3を用いてプランタ2の総重量の経時変化を測定するとともに、温度計4を用いて緑化基盤1の温度の経時変化を測定し、図2に示すようなグラフを得た。
そして、発明者は、測定結果から、緑化基盤1(特に温度センサ41が配置された箇所)及びプランタ2への散水があり荷重計3に作用する荷重が増加したタイミングT1,T2で、緑化基盤1の温度が変化(上昇)することを確認した。なお、この実験で散水時に緑化基盤1の温度が上昇したのは、散水に用いた水の温度の方が緑化基盤1の温度よりも高かったためであると考えられる。
この実験により、発明者は、土壌の温度変化のみに基づいて、緑化基盤の散水状況を間接的に把握できることを見出し、本発明に想到するに至った。
【0010】
また、発明者は、以下の実験も行った。
具体的には、まず、図3に示すような実験器具200を用意した。
実験器具200は、第一の実験器具200aと、第二の実験器具200bと、を備えている。
第一,第二の実験器具200a,200bは、土壌Sの入ったプランタ2と、温度計4と、水位計5と、カバー6と、をそれぞれ備えている。
この実験での温度計4の温度センサ41は、土壌Sの深さ方向中央部(深さ約15cmの位置)に配置されている。
水位計5は、土壌Sが湿潤しているか否かを確認するためのもので、温度センサ41の近傍に配置されている。
カバー6は、各プランタ2の上を覆っている。
第一の実験器具200aの土壌は、常に湿潤した状態に保たれている。
第二の実験器具200bの土壌は、常に乾燥した状態に保たれている。
【0011】
そして、温度計4を用いて各プランタ2の土壌Sの温度の経時変化をそれぞれ測定し、図4に示すようなグラフを得た。
そして、発明者は、測定結果から、気温が上昇していくとそれに伴い土壌Sの温度も上昇していくが、湿潤している(第一の実験器具200aの)土壌Sは、乾燥している(第二の実験器具200bの)土壌Sに比べ、温度の上昇が緩慢になる傾向があることを確認した。
この実験により、発明者は、土壌の温度変化のみに基づいて、緑化基盤の湿潤状態も把握できることを見出した。
【0012】
上記課題を解決するため、請求項1に係る散水状況把握方法は、
乾燥した状態の土壌の温度の経時変化または判断時における気温の経時変化を測定する第一測定工程と、
判断対象の土壌の温度の経時変化を測定する第二測定工程と、
前記第二測定工程で測定した温度の経時変化に基づいて、前記判断対象の土壌に散水がなされたか否かを判断する第一判断工程と、
前記第二測定工程で測定した温度の経時変化に基づいて、土壌が湿潤しているか否かを判断する第二判断工程と、を有し、
前記第二判断工程では、前記第二測定工程で測定した温度の経時変化が、前記第一測定工程で測定した温度または気温の経時変化よりも緩やかである場合に、土壌が湿潤していると判断することを特徴とする。
【0013】
また、請求項2に係る発明は、
請求項1に記載の散水状況把握方法であって、
前記土壌に温度センサを配置する準備工程を有し、
前記第二測定工程で、前記温度センサの出力に基づいて、前記温度の経時変化を測定することを特徴とする。
【0014】
また、請求項3に係る発明は、
請求項1又は請求項2に記載の散水状況把握方法であって、
前記第一判断工程で、前記温度の経時変化に急激な変化が見られた場合に、前記土壌に散水がなされたと判断することを特徴とする。
【0017】
また、請求項に係る発明は、
請求項2に記載の散水状況把握方法であって、
前記準備工程で、複数の前記温度センサを、前記土壌の複数個所にそれぞれ配置し、
前記第二測定工程で、複数の前記温度センサの各出力に基づいて、前記土壌の各箇所における前記温度の経時変化をそれぞれ測定し、
前記第一判断工程で、前記土壌の各箇所における前記温度の各経時変化に基づいて、前記土壌に散水がなされたか否かを、箇所毎に判断することを特徴とする。
【0018】
また、請求項に係る発明は、
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の散水状況把握方法であって、
前記判断対象の土壌は、散水設備が設けられたものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、対象となる土壌の設置条件に関わらず低コストで散水状況を把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に至るための実験に用いた一の実験器具を示す縦断面図である。
図2図1の実験器具を用いた実験により得られた緑化基盤の総重量の経時変化及び温度の経時変化を示すグラフである。
図3】本発明に至るための実験に用いた他の実験器具を示す縦断面図である。
図4図3の実験器具を用いた実験により得られた緑化基盤の温度の経時変化を示すグラフである。
図5】本発明の実施形態に係る散水状況把握方法で用いられる散水状況把握システムを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
ただし、本発明の技術的範囲は、下記実施形態や図面に例示したものに限定されるものではない。
【0022】
<1.散水状況把握システム>
初めに、本実施形態に係る散水状況把握方法で用いられる散水状況把握システム(以下、システム300)について説明する。
図5は、システム300の一例を示すブロック図である。
【0023】
本実施形態に係るシステム300は、図5に示すように、温度計4と、気温計7と、表示装置8と、を備えている。
また、本実施形態に係るシステム300は、温度計4を複数備えている。
各装置4,7,8は、通信ネットワークNを介して互いに通信するようになっている。
本実施形態に係るシステム300は、LPWA(Low Power Wide Area-network、例えばSigfox(登録商標))と呼ばれる通信技術を用いて各種データを送受信するようになっている。
こうすることで、各種データを、少ない消費電力で長距離に亘って送信することができる。
【0024】
〔温度計〕
本実施形態に係る温度計4は、熱電式のもので、温度センサ41と、第一演算装置42と、を備えている。
温度センサ41と第一演算装置42とは第一ケーブル43で接続されている。
このような温度計4は、例えばOKIPPA Green T/T(登録商標)等を用いて構成することができる。
なお、各温度計4は、温度センサ41を複数備えていてもよい。
【0025】
温度センサ41は、土壌Sに配置される。
そして、温度センサ41は、周囲の土壌Sの温度に応じた電気信号を第一演算装置42へ出力する
【0026】
第一演算装置42は、第一制御部421と、接続部422と、第一通信部423と、を備えている。
各部421~423は、バス等で電気的に接続されている。
【0027】
第一制御部421は、図示しないCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を備えている。
そして、CPUが、ROMに記憶されている各種処理プログラムを読み出してRAMに展開し、当該処理プログラムに従って各種処理を実行することで、第一演算装置42各部の動作を統括的に制御するようになっている。
【0028】
接続部422は、温度センサ41から延びる第一ケーブル43が接続される。
そして、接続部422には、温度センサ41が出力した電気信号が入力される。
【0029】
本実施形態に係る第一通信部423は、無線通信モジュールで構成されている。
そして、第一通信部423は、通信ネットワークNを介して接続された表示装置8へ各種データを無線で送信するようになっている。
なお、第一通信部423は、有線通信モジュールで構成され、各種データを有線で送信するようになっていてもよい。
【0030】
このように構成された第一演算装置42の第一制御部421は、以下のように動作する。
【0031】
(測定処理)
例えば、第一制御部421は、測定処理を実行する。
この測定処理で、第一制御部421は、土壌Sの温度の経時変化を測定する。
本実施形態に係る測定処理で、第一制御部421は、温度センサ41の出力に基づいて、土壌Sの温度の経時変化を測定する。
具体的には、入力されている電気信号の、測定処理開始時における大きさに応じた温度を算出する。
この温度の算出を定期的に繰り返すことで、温度の経時変化を測定したことになる。
【0032】
(送信処理)
温度の経時変化を測定している間、第一制御部421は、送信処理を実行する。
この送信処理で、第一制御部421は、測定した温度のデータを、第一通信部423を介して表示装置8へ送信する。
本実施形態に係る送信処理で、第一制御部421は、温度を算出する度に当該温度のデータを送信する。こうすることで、表示装置8側で温度の経時変化をリアルタイムで把握することができる。
また、上述したように、本実施形態に係るシステム300は、LPWAと呼ばれる通信技術を用いてデータを送受信するため、表示装置8が遠隔地に設置されている場合であっても温度のデータを少ない消費電力で容易に送信することができる。
【0033】
〔気温計〕
本実施形態に係る気温計7は、気温センサ71と、第二演算装置72と、を備えている。
気温センサ71と第二演算装置72とは第二ケーブル73で接続されている。
気温センサ71は、所定位置(例えば、土壌Sに立設されたポールの、地面から所定高さ離れた箇所等)に配置される。
そして、気温センサ71は、周囲の空気の温度に応じた電気信号を第二演算装置72へ出力する。
第二演算装置72は、上記第一演算装置42と同様に構成されている。
このように構成された気温計7は、気温の経時変化を測定し、それを表示装置8へ送信する。
【0034】
〔表示装置〕
表示装置8は、PC、専用の機器等で構成されている。
本実施形態に係る表示装置8は、第二制御部81と、第二通信部82と、記憶部83と、表示部84と、を備えている。
各部81~84は、バス等で電気的に接続されている。
【0035】
第二制御部81は、図示しないCPU、RAM、ROM等を備えている。
そして、CPUが、ROMに記憶されている各種処理プログラムを読み出してRAMに展開し、当該処理プログラムに従って各種処理を実行することで、表示装置8各部の動作を統括的に制御するようになっている。
【0036】
第二通信部82は、無線通信モジュールで構成されている。
そして、第二通信部82は、通信ネットワークNを介して接続された温度計4の第一演算装置42から温度のデータを無線で受信するようになっている。
【0037】
記憶部83は、不揮発性のメモリーやハードディスク等により構成されている。
そして、記憶部83は、温度のデータ等を記憶することが可能となっている。
【0038】
表示部84は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)、CRT(Cathode Ray Tube)等で構成されている。
そして、表示部84は、第二制御部81から受信した信号に応じた画面を表示するようになっている。
【0039】
このように構成された表示装置8の第二制御部81は、以下のように動作する。
【0040】
(受信処理)
例えば、第二制御部81は、受信処理を実行する。
この受信処理で、第二制御部81は、温度計4から、第二通信部82を介して温度のデータを繰り返し受信する。
また、第二制御部81は、温度のデータを受信する度に、受信した温度のデータを、測定日、測定時刻等と共に記憶部83に記憶させる。こうすることで、記憶部83に記憶された複数の温度のデータは、温度の経時変化のデータとなる。
【0041】
(第二受信処理)
また、第二制御部81は、第二受信処理を実行する。
この第二受信処理で、第二制御部81は、気温計7から、第二通信部82を介して気温のデータを繰り返し受信する。
また、第二制御部81は、気温のデータを受信する度に、受信した気温のデータを、測定日、測定時刻等と共に記憶部83に記憶させる。こうすることで、記憶部83に記憶された複数の気温のデータは、気温の経時変化のデータとなる。
【0042】
(出力処理)
温度のデータ及び気温のデータを受信した後、第二制御部81は、出力処理を実行する。
この出力処理で、第二制御部81は、少なくとも温度の経時変化のデータを出力する。
本実施形態に係る出力処理では、第二制御部81は、温度の経時変化を示すグラフを、気温の経時変化を示すグラフと重ねて表示部84に表示させる。
また、本実施形態に係る出力処理では、第二制御部81は、温度のデータを受信する度に出力内容を更新する。
【0043】
〔システム300その他〕
なお、上記システム300は、複数の温度計4を備え、各温度計4が温度センサ41及び第一演算装置42を一つずつ備えるものとなっていたが、システム300は、一の演算装置及び複数の温度センサ41を備える温度計を備える(複数個所の温度測定を一の演算装置がまとめて行う)ものであってもよい。
また、温度計4は、土壌Sに配置された温度センサ41を用いて土壌Sの温度を測定するものとなっていたが、サーモグラフィー等、土壌Sから離れた場所から土壌Sの温度を測定できるものであってもよい。
【0044】
<2.散水状況把握方法>
次に、上記システム300を用いた散水状況把握方法(以下、把握方法)について説明する。
【0045】
把握方法は、測定工程(ステップS2)と、判断工程(ステップS3)と、を有する。
本実施形態に係る把握方法は、準備工程(ステップS1)と、第二測定工程(ステップS4)と、を更に有する。
【0046】
(準備工程)
初めの準備工程では、上記システム300を設置する。
具体的には、土壌Sに温度計4の温度センサ41を配置し、所定位置に気温計7の気温センサ71を配置する。
そして、温度計4及び気温計7を、所定の管理場所に配置された表示装置8と通信可能な状態とする。
システム300を設置する対象となる土壌Sは、自動散水設備が設けられたものである。
本実施形態に係る準備工程では、複数の温度センサ41を、土壌Sの複数個所にそれぞれ配置する。
【0047】
なお、温度センサ41は、土壌Sの表層部に差し込んでもよいし、土壌Sの深さ方向中央部付近まで差し込んでもよい。
土壌Sは散水によって表層部から湿潤していくため、温度センサ41を表層部に配置しておけば、散水の有無をよりリアルタイムで把握することができる。
また、この準備工程で、温度センサ41を、土壌Sの各箇所の表層部及び深さ方向中央部にそれぞれ配置してもよい。
また、温度センサ41を配置する土壌Sは、自動散水設備が設けられていないものであってもよい(人が手動で灌水するようになっていてもよい)。
【0048】
(測定工程)
準備した後は、測定工程に移る。
この測定工程では、土壌Sの温度の経時変化を測定する。
本実施形態に係る測定工程では、温度計4の温度センサ41の出力に基づいて、第一演算装置42が土壌Sの温度の経時変化を測定する。
また、本実施形態に係る測定工程では、複数の温度センサ41の各出力に基づいて、第一演算装置42が土壌Sの各箇所における温度の経時変化をそれぞれ測定する。
【0049】
(第二測定工程)
また、土壌Sの温度の経時変化を測定するのと並行して、第二測定工程に移る。
この第二測定工程では、気温計7の気温センサ71の出力に基づいて、第二演算装置72が気温の経時変化を測定する。
【0050】
土壌Sの温度の経時変化及び気温の経時変化の測定と並行して、判断工程に移る。
この判断工程では、測定した温度の経時変化に基づいて、土壌Sに散水がなされたか否かを管理者が判断する。
本実施形態に係る判断工程で、管理者は、表示部84に表示された温度グラフに基づいて、土壌Sに散水がなされたか否かを判断する。
具体的には、温度の経時変化に急激な変化(上昇又は下降)が見られた場合に、管理者は土壌Sに散水がなされたと判断する。
経時変化が急激であるかどうかの判断は、例えば、散水時の温度の経時変化を示すグラフが縦軸と略平行な直線になっているか、グラフの傾きが所定以上になっているか等を見ることにより行うことができる。
【0051】
また、本実施形態に係る把握方法では、複数の温度センサ41を土壌Sの複数個所にそれぞれ配置している。このため、本実施形態に係る判断工程で、管理者は、土壌Sの各箇所における温度の各経時変化に基づいて、土壌Sに散水がなされたか否かを、箇所毎に判断する。
なお、本実施形態に係る判断工程では、温度グラフに基づいて土壌Sに散水がなされたか否かを判断する機能を有する表示装置が、土壌Sに散水がなされたか否かを自動で判断してもよい。
【0052】
(第二判断工程)
本実施形態に係る把握方法では、測定工程の後、又は測定工程と並行して、第二判断工程に移る。
この第二判断工程では、温度の経時変化に基づいて、土壌Sが湿潤しているか否かを管理者が判断する。
本実施形態に係る第二判断工程で、管理者は、表示部84に表示された温度グラフに基づいて、土壌Sが湿潤しているか否かを判断する。
具体的には、温度の経時変化が、基準となる変化よりも緩やかである場合に、管理者は土壌Sが湿潤していると判断する。
本実施形態に係る基準となる変化は、気温の経時変化である。
経時変化が相対的に緩やかであるかどうかの判断は、例えば、気温が上昇している間の土壌Sの温度の経時変化を示すグラフが、気温のグラフよりも右側に(時間的に後に)来ているか、最高気温の方が土壌Sの温度の最大値よりも大きいか等を見ることにより行うことができる。
【0053】
また、本実施形態に係る把握方法では、複数の温度センサ41を土壌Sの複数個所にそれぞれ配置している。このため、本実施形態に係る第二判断工程で、管理者は、土壌Sの各箇所における温度の各経時変化に基づいて、土壌Sに散水がなされたか否かを、箇所毎に判断する。
なお、本実施形態に係る第二判断工程では、温度グラフに基づいて土壌Sが湿潤しているか否かを判断する機能を有する表示装置が、土壌Sが湿潤しているか否かを自動で判断してもよい。
また、基準となる変化は、土壌Sとは別に用意された乾燥した土壌の温度の経時変化であってもよい。
【0054】
〔把握方法その他〕
なお、土壌Sの種類、設置場所、時期によっては、土壌Sの温度の経時変化が図2,4に示したようなパターンにならない事も起こり得る。このため、測定工程に入る前に、必要に応じて、土壌Sの複数個所のいずれかを代表地点に設定し、荷重計及び温度計4によって土壌Sの水分量の経時変化と温度の経時変化との相関をデータ化したものを蓄積しておき、散水による温度変化の傾向を特定しておいてもよい。
【0055】
<3.効果>
以上説明してきた把握方法は、土壌Sの温度の経時変化を測定する測定工程と、温度の経時変化に基づいて、土壌Sに散水がなされたか否かを判断する判断工程と、を有する。
測定工程で用いられる温度センサ41は、土壌Sの表面から差し込むだけで設置できるため、緑化基盤のように建物や構造物に固定された土壌であっても容易に設置することができる。
また、温度センサ41は、水分センサに比べて安価である。
このため、この把握方法によれば、対象となる土壌の設置条件に関わらず低コストで散水状況を把握することができる。
【0056】
また、この把握方法を用いて、気温、土壌Sの温度、散水状況等のデータを蓄積していくことにより、管理者は、最適な緑地管理方法(散水タイミング散水量や)を得ることができる。
その結果、植物の枯損や灌漑水のロス等が発生するのを防ぐことができる。
また、この把握方法を施設園芸農業に適用すれば、営農者は、生産性向上に資するデータを得ることができる。
また、この把握方法は、システム300を用いるため、自動散水設備の故障(散水の停止、水漏れ等)を土壌Sから離れた場所からでも検知することができる。このため、この把握方法によれば、管理者による自動散水設備及び土壌Sの定期的な現地確認の手間を低減することができる。
【符号の説明】
【0057】
100 実験器具
1 緑化基盤
S 土壌
2 プランタ
3 荷重計
4 温度計
41 温度センサ
42 第一演算装置
421 第一制御部
422 接続部
423 第一通信部
43 第一ケーブル
200 実験器具
200a 第一の実験器具
200b 第二の実験器具
5 水位計
6 カバー
300 散水状況把握システム
7 気温計
71 気温センサ
72 第二演算装置
73 第二ケーブル
8 表示装置
81 第二制御部
82 第二通信部
83 記憶部
84 表示部
N 通信ネットワーク
図1
図2
図3
図4
図5