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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】無線中継システムの運搬装置
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/3888 20150101AFI20241007BHJP
   H04B 1/03 20060101ALI20241007BHJP
   H04B 1/08 20060101ALI20241007BHJP
   A45C 13/00 20060101ALI20241007BHJP
   A45C 11/00 20060101ALI20241007BHJP
   G03B 15/00 20210101ALN20241007BHJP
   G03B 17/00 20210101ALN20241007BHJP
   G03B 17/56 20210101ALN20241007BHJP
【FI】
H04B1/3888
H04B1/03 Z
H04B1/08 Z
A45C13/00 H
A45C11/00 E
G03B15/00 P
G03B15/00 S
G03B15/00 W
G03B17/00 B
G03B17/56 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021125801
(22)【出願日】2021-07-30
(65)【公開番号】P2023020437
(43)【公開日】2023-02-09
【審査請求日】2024-02-16
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 建設技術フェア2020in中部への出展 令和2年10月14日;https://www.decn.co.jp/kengi2020/index.htmlでの公開 令和3年2月16日;https://www.ihi.co.jp/iik/technology/gbrain/index.htmlでの公開 令和3年2月16日;建設技術公開「EE東北’21」への出展 令和3年6月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】395013212
【氏名又は名称】株式会社IHIインフラ建設
(74)【代理人】
【識別番号】110001863
【氏名又は名称】弁理士法人アテンダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 公雄
(72)【発明者】
【氏名】山村 哲矢
【審査官】赤穂 美香
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-061492(JP,A)
【文献】特許第4854818(JP,B1)
【文献】特開2020-184679(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0305406(US,A1)
【文献】米国特許第05404583(US,A)
【文献】特表2003-521262(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/3888
H04B 1/03
H04B 1/08
A45C 11/00
A45C 13/00
G03B 15/00
G03B 17/00
G03B 17/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体通信網と無線LANとを中継する第1の無線中継装置と無線LANを中継する第2の無線中継装置とを備えた無線中継システムを運搬するための運搬装置であって、
開口部が略矩形のシェル本体及びシェル蓋体を開閉可能に連結具で連結してなり且つ運搬時には第1の無線中継装置を収納する箱状の第1のケースと、
開口部が略矩形のシェル本体及びシェル蓋体を開閉可能に連結具で連結してなり且つ運搬時には第2の無線中継装置を収納する箱状の第2のケースとを備え、
前記第1のケースは、シェル本体に設けられるとともにシェル本体の底面に対して平行な方向に伸縮可能な棒状部材と、棒状部材の端部に設けられたハンドルと、シェル本体の前記ハンドルとは反対側に設けられた車輪とを備え、
前記運搬装置は、前記第1のケースのシェル蓋体の上面と前記第2のケースのシェル本体の底面とを対向させた状態で第1のケースと第2のケースとを着脱自在に連結するケース連結具を備えた
ことを特徴とする無線中継システムの運搬装置。
【請求項2】
前記ケース連結具は、スライドレール機構からなり、且つ、前記スライドレール機構のスライド方向が前記棒状部材の伸縮方向と平行である
ことを特徴とする請求項1記載の無線中継システムの運搬装置。
【請求項3】
前記第1の無線中継装置は、移動体通信網用通信装置と、無線LAN用通信装置とを備え、
前記無線中継システムの運搬装置は、さらに、前記第1のケースのシェル本体の前記ハンドル側の側面に前記無線LAN用通信装置を固定するための着脱自在の第1の固定具を備えた
ことを特徴とする請求項1又は2記載の無線中継システムの運搬装置。
【請求項4】
前記移動体通信網用通信装置は、通信装置本体と外部アンテナとを備え、
前記無線中継システムの運搬装置は、さらに、前記ハンドルに前記外部アンテナを固定するための着脱自在の第2の固定具を備えた
ことを特徴とする請求項3記載の無線中継システムの運搬装置。
【請求項5】
前記無線LAN用通信装置と前記移動体通信網用通信装置との間のデータ通信用の通信ケーブルに前記無線LAN用通信装置用の電力を重畳する電力重畳装置を前記第1のケース内に配置した
ことを特徴とする請求項3又は4記載の無線中継システムの運搬装置。
【請求項6】
前記第2のケースのシェル蓋体の上面に前記第2の無線中継装置を固定するための着脱自在の第3の固定具を備えた
ことを特徴とする請求項1乃至5何れか1項記載の無線中継システムの運搬装置。
【請求項7】
前記第1のケースのシェル本体の底面に設けられた転倒防止用の支持脚を備えた
ことを特徴とする請求項1乃至6何れか1項記載の無線中継システムの運搬装置。
【請求項8】
前記第1のケース又は前記第2のケースの少なくとも一方は、収容する前記第1の無線中継装置又は前記第2の無線中継装置の収納位置を固定するための固定具をシェル本体及びシェル蓋体の内側に備えた
ことを特徴とする請求項1乃至7何れか1項記載の無線中継システムの運搬装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠隔監視システムなど移動体通信網との通信が必要なシステムにおいて用いられる無線中継システムを運搬するための運搬装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネルや橋梁や水門などの種々の建造物及びこれに付帯する設備は定期的な保守・点検・整備作業が必須である。以下、保守・点検・整備の対象となる建造物や付帯設備を単に「保守対象設備」と呼ぶものとする。保守対象設備は、地震、豪雨、火災などの災害が生じた場合にも保守・点検・整備作業や、動作状況の監視作業が必要になる。このような保守対象設備に対する作業には豊富な知識と経験が必要である場合が多いため、熟練した作業員が現場まで移動する必要があった。一方、昨今の人手不足により熟練した作業員の数が減少してきており、今後保守対象設備の運用を適切に行うことが困難になることが予想されている。
【0003】
そこで、遠隔で保守・点検するため、また整備に際し遠隔地にいる熟練した作業員が、現地にいる作業員に対してタイムリーに指導するために、ネットワークカメラ(例えば特許文献1参照)を保守対象設備に運搬・設置することが行われている。ネットワークカメラは、遠隔地にいる作業員の利用者端末或いはインターネットのクラウドサーバ上のサーバに映像を配信するための通信手段を備えている。ネットワークカメラは、通信手段として有線のLAN(Local Area Network)インタフェースを有しているものが多い。このため、ネットワークカメラの運用の際には、移動体通信網と接続するための通信装置であって有線LANインタフェースを備えたものを併用することが一般的である。
【0004】
しかし、ネットワークカメラの設置場所が移動体通信網の通信圏内でない場合には上述のネットワークカメラを用いた保守・点検を行うことができない。このため以下のような運用が行われている。すなわち、まず移動体通信網の通信圏内に、移動体通信網と無線LANとを中継する第1の無線中継装置を配置する。また、前記第1の無線中継装置とネットワークカメラとの間に、無線LANを中継する第2の無線中継装置を配置する。そして、ネットワークカメラとして無線LANインタフェースを備えたものを用いる、或いは、ネットワークカメラに無線LANインタフェースを備えた第3の無線中継装置を有線接続する。これにより、ネットワークカメラは無線LANを介して移動体通信網に接続可能となる。
【0005】
ところで、保守・点検作業で用いられる各機器は、保守対象設備に常設する場合もあるが、作業員が赴いて実施される保守・点検作業のときだけ一時的に設置される場合も多い。ここで、後者の場合であって、しかも保守対象設備及びその近傍が移動体通信網の通信圏内でない場合には、通信経路を確保するために前述したような通信に関わる多数の機器が必要となる。そして、このような多数の機器の運搬や設置は煩雑且つ大きな労力が必要であるだけでなく、似たような機器が多いことから設置時に機器の取り違え等が生じるおそれがある。
【0006】
そこで、出願人は、特許文献2に記載の運搬装置を開発した。特許文献2に記載の運搬装置は、第1の無線中継装置を収納する第1の収納ボックスと、第2の無線中継装置を収納する第2の収納ボックスとを備えている。第1の収納ボックスは、上面が開口しており当該開口部には内蓋が着脱自在に配置されている。また、第1の収納ボックスは、底部に付設された車輪と、鉛直方向に延びる伸縮自在のパイプと、パイプの上端を接続するハンドルとを備えている。第2の収納ボックスは、第1の収納ボックスと平面寸法が略同一に形成されており、第1の収納ボックスの上面に積み重ねて載置される。このような構成により、各中継装置及びその付属品の運搬が容易となるとともに、各中継装置と当該中継装置に対応する付属品とをそれぞれ対応する収納ボックスに収容することにより機器の取り違え等を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2019-102833号公報
【文献】特開2021-061492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献2に記載の運搬装置は、運搬時には、第1の収納ボックスの開口上面に第2の収納ボックスを載置する構成となっている、すなわち第1の収納ボックスと第2の収納ボックスを鉛直方向に積み重ねているので重心位置が高く、したがって床面等に置いた際や移動時の安定性に欠けるという問題があった。このような問題は、多くの機器を運搬する必要がある場合に顕著である。また、特許文献2に記載の運搬装置はサイズが大きく、さらにコンパクトな運搬装置が要望されていた。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その第1の目的とするところは、無線中継システムの運搬及び設置を効率的且つ容易に行うことができるとともに床面等への載置時や移動時における安定性が高い運搬装置を提供することにある。また、第2の目的とするところは、よりコンパクト化が可能な運搬装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記第1の目的を達成するために、本願発明は、移動体通信網と無線LANとを中継する第1の無線中継装置と無線LANを中継する第2の無線中継装置とを備えた無線中継システムを運搬するための運搬装置であって、開口部が略矩形のシェル本体及びシェル蓋体を開閉可能に連結具で連結してなり且つ運搬時には第1の無線中継装置を収納する箱状の第1のケースと、開口部が略矩形のシェル本体及びシェル蓋体を開閉可能に連結具で連結してなり且つ運搬時には第2の無線中継装置を収納する箱状の第2のケースとを備え、前記第1のケースは、シェル本体に設けられるとともにシェル本体の底面に対して平行な方向に伸縮可能な棒状部材と、棒状部材の端部に設けられたハンドルと、シェル本体の前記ハンドルとは反対側に設けられた車輪とを備え、前記運搬装置は、前記第1のケースのシェル蓋体の上面と前記第2のケースのシェル本体の底面とを対向させた状態で第1のケースと第2のケースとを着脱自在に連結するケース連結具を備えたことを特徴とする。
【0011】
また、上記第2の目的を達成するために、本願発明は、上記の無線中継装置の運搬装置において、前記第1のケース又は前記第2のケースの少なくとも一方は、収容する前記第1の無線中継装置又は前記第2の無線中継装置の収納位置を固定するための固定具をシェル本体及びシェル蓋体の内側に備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、運搬時には、第1のケースと第2のケースとを連結した状態で運搬可能であり、しかも第1のケースに車輪及びハンドルが付設されているので効率的な運搬が可能となる。また、使用場所では、第1のケースと第2のケースとの連結を解除して、第1のケースを移動体通信網の通信圏内に配置し、通信の主体となる装置と第1のケースとの間に第2のケースを配置し、各ケースに収容されている無線中継装置を使用状態にすることで、通信経路を容易且つ確実に形成することができる。さらに、運搬時には、第1のケースと第2のケースを厚み方向に積み重ねた状態で、且つ、第1のケースに設けられた車輪が接地した状態で、床や地面のうえに縦置きしたり移動したりする。すなわち、第1のケースと第2のケースが水平又は略水平で連結された状態で、床や地面のうえに縦置きしたり移動したりする。したがって、第1のケースと第2のケースを鉛直方向に積み重ねた場合と比較して、重心位置を下げることができるので、床面等への載置時や移動時の安定性が向上したものとなる。
【0013】
また、本発明によれば、固定具により、シェル本体だけでなくシェル蓋体の内側にも各機器を収容できるのでケースの収容効率を高めることができ、したがってコンパクト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】遠隔監視システムの構成図
図2】遠隔監視装置の概略外観図
図3】遠隔監視装置の機能ブロック図
図4】無線中継システムの運搬装置の第1のケースの構成図
図5】無線中継システムの運搬装置の第2のケースの構成図
図6】運搬時における無線中継システムの運搬装置の外観斜視図
図7】は第1のケースと第2のケースの連結構造を説明する無線中継システムの運搬装置を側方から見た図
図8】無線中継システムの使用時における第1のケースの外観斜視図
図9】第1のケースにおける第1の無線中継装置の使用形態
図10】第1のケースにおける第1の無線中継装置の使用形態
図11】無線中継システムの使用時における第2のケースの外観斜視図
図12】第2のケースにおける第2の無線中継装置の使用形態
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施の形態に係る無線中継システムの運搬装置についての説明に先立ち、無線中継システムを使用するシステムの一例として遠隔監視システムについて図面を参照して説明する。図1は遠隔監視システムの構成図である。
【0016】
遠隔監視システムは、図1に示すように、保守対象設備に設置される遠隔監視装置1と、テレビ会議サーバ2と、遠隔制御サーバ3と、利用者端末4とを備えている。
【0017】
遠隔監視装置1は、LTE(Long Term Evolution)網や5G(5th Generation)網などの移動体通信網10に対して、ローカルの中継網20を介して接続可能に構成されている。移動体通信網10は、インターネット30と接続している。
【0018】
テレビ会議サーバ2及び遠隔制御サーバ3は、それぞれインターネット30に配備されている。典型的な例では、テレビ会議サーバ2及び遠隔制御サーバ3は、インターネット30に配備されたデータセンタ内に設置されている。テレビ会議サーバ2及び遠隔制御サーバ3の実装形態は不問である。すなわち、ハードウェアとして実装されていてもよいし、物理コンピュータや仮想コンピュータにプログラムをインストールすることにより実装されていてもよい。また、テレビ会議サーバ2及び遠隔制御サーバ3は、複数の装置や複数の環境に分散して実装されていてもよい。テレビ会議サーバ2と遠隔制御サーバ3とは、それぞれ同一の場所に配備されていてもよいし、互いに異なる場所に配備されていてもよい。
【0019】
利用者端末4は、任意の通信経路を介してインターネット30に接続可能に構成されている。任意の通信経路は、例えば遠隔監視装置1を収容する移動体通信網10であってもよい。図1では、利用者端末4を1つのみ図示したが、利用者端末4は複数であってもよい。利用者端末4が複数である場合、それぞれインターネット30への通信経路は異なっていてよい。
【0020】
このような通信環境により、遠隔監視装置1は、ローカル中継網20及び移動体通信網10を介して、インターネット30に配備されたテレビ会議サーバ2及び遠隔制御サーバ3と通信可能である。また、利用者端末4も、任意の経路を介して、インターネット30に配備されたテレビ会議サーバ2及び遠隔制御サーバ3と通信可能である。
【0021】
次に、遠隔監視装置1の構成について図2及び図3を参照して詳述する。図2は遠隔監視装置の概略外観図、図3は遠隔監視装置の機能ブロック図である。
【0022】
遠隔監視装置1は、図2に示すように、自身の周囲の全方位を撮像する全方位カメラ100と、全方位カメラ100の姿勢を維持しながら全方位カメラ100を三次元空間内で移動させる移動機構200と、無線通信端末300と、移動制御装置400とを備えている。
【0023】
移動機構200は、直方体空間を囲繞するように形成された枠体210と、枠体210の上面であってY軸に平行に配置された第1電動スライドレール220と、枠体210の上面であってX軸に平行に配置された第2電動スライドレール230と、第2電動スライドレール230に付設された移動ステージ240と、移動ステージ240からZ軸に平行で下方に延びる電動伸縮ロッド250とを備えている。
【0024】
第1電動スライドレール220は、移動ステージ(図示省略)と、この移動ステージをY軸方向に摺動させるY軸駆動モータ221を備えている。第2電動スライドレール230は、一端側が第1電動スライドレール220の移動ステージ(図示省略)に固定されており、他端側が枠体210の上面において摺動可能に配置されている。第2電動スライドレール230には、前記移動ステージ240が付設されており、この移動ステージ240をX軸方向に摺動させるX軸駆動モータ231を備えている。電動伸縮ロッド250は、移動ステージ240の下面に付設されており、Z軸駆動モータ251の駆動によりZ軸方向に伸縮する。電動伸縮ロッド250の先端部には、全方位カメラ100が付設されている。
【0025】
前記移動ステージ240の上面には、前記無線通信端末300及び移動制御装置400が配置されている。
【0026】
無線通信端末300は、例えばスマートフォンと呼ばれる高機能な携帯通信端末などの周知の情報処理端末により実現される。本実施の形態では、無線通信端末300としてスマートフォンを用いた。
【0027】
無線通信端末300は、図3に示すように、移動体通信網10とのインタフェースである移動体通信網通信部301と、自身の近傍の装置と通信するためのインタフェースである近距離無線通信部302と、無線LANに接続するためのインタフェースである無線LAN通信部303と、テザリング機能部305を含む通信制御部304と、テレビ会議サーバ2に対して全方位カメラ100で撮像された全方位画像情報をリアルタイムに送信する全方位画像送信処理部306とを備える。移動体通信網通信部301、近距離無線通信部302、無線LAN通信部303、通信制御部304は、スマートフォンに標準的機能として実装されているものを用いた。
【0028】
移動体通信網通信部301の通信規格は、接続先である移動体通信網10の通信規格に準拠している。
【0029】
近距離無線通信部302の通信規格は、無線を用いた種々の通信規格だけでなく光を用いた通信規格など種々のものを用いることができる。無線を用いた通信規格としては、例えばBluetooth(登録商標)やNFC(Near Field Communication)が挙げられる。光を用いた通信規格としては、例えばIrDA(Infrared Data Association)が挙げられる。
【0030】
無線LAN通信部303の通信規格は、接続先であるローカル中継網20の通信規格に準拠している。
【0031】
通信制御部304は、無線通信端末300内の各種アプリケーション(前記全方位画像送信処理部306もアプリケーションの1つである)が行う通信について通信経路の確立などの各種通信制御を行う。通信制御部304に含まれるテザリング機能部305は、近距離無線通信部302を介して通信可能に接続した他の端末に対して、移動体通信網通信部301を介した移動体通信網10への通信を提供する。また、通信制御部304は、移動体通信網通信部301を用いて移動体通信網10に接続できない場合又は利用者の選択により、移動体通信網10への通信経路をローカル中継網20経由に切り替える機能を備える。
【0032】
全方位画像送信処理部306は、スマートフォンのアプリケーションとして、予め所定のアプリケーション配信サイトから当該アプリケーションをインストールすることにより実装される。全方位画像送信処理部306は、テレビ会議サーバ2のクライアントアプリケーションに相当する。全方位画像送信処理部306は、テレビ会議サーバ2からの呼び出しに対して自動応答し、全方位カメラ100で撮像した全方位画像のテレビ会議サーバ2への送信を開始するよう設定されている。ここで、全方位画像のテレビ会議サーバ2への送信は、通信制御部304により接続が確立された移動体通信網10を介して行われる。全方位画像の送信処理におけるフレームレート等の各種設定は、テレビ会議サーバ2から又は無線通信端末300の入力手段(図示省略)から行うことができる。
【0033】
移動制御装置400は、小型のPC(Personal Computer)や、例えばスマートフォンと呼ばれる高機能な携帯通信端末などの周知の情報処理端末により実現される。本実施の形態では、移動制御装置400は、無線通信端末300とは別体として、小型のPCにプログラムをインストールすることにより実装されている。
【0034】
移動制御装置400は、図3に示すように、自身の近傍の装置と通信するためのインタフェースである近距離無線通信部401と、遠隔制御サーバ3から移動体通信網10を介して受信した移動指示情報に基づき移動機構200を制御する移動制御部402とを備えている。
【0035】
近距離無線通信部401は、無線通信端末300の近距離無線通信部302に対応するものである。移動制御装置400は、近距離無線通信部401と無線通信端末300の近距離無線通信部302との間で接続を確立させ、無線通信端末300のテザリング機能部305を用いて移動体通信網10を介した通信が可能に構成されている。
【0036】
移動制御部402は、遠隔制御サーバ3から移動体通信網10・無線通信端末300を介して受信した移動指示情報に基づき、移動機構200の各駆動モータ221,231,251を駆動する。これにより、全方位カメラ100は、自身の姿勢を維持しながら三次元空間内で移動する。
【0037】
全方位カメラ100は、略直方体のケースの一側面及び当該側面の反対側の側面にそれぞれ魚眼レンズを備え、自身の周囲の全方位(360度)を撮像して得られた撮像画像をリアルタイムに出力する。全方位カメラ100は、無線通信端末300と有線により接続されており、全方位画像送信処理部306に対して全方位画像を出力する。
【0038】
テレビ会議サーバ2は、クライアント端末に対してテレビ会議サービスを提供する。すなわち、本願発明は、クラウド型のテレビ会議システムを利用して全方位画像の配信を行うものである。本実施の形態における無線通信端末300及び利用者端末4は、それぞれテレビ会議サービスにおけるクライアント端末に相当する。テレビ会議サーバ2は、自身にアクセスしてきた無線通信端末300及び利用者端末4に対して、予め設定しておいた仮想的な会議室を形成し、無線通信端末300の全方位画像送信処理部306からリアルタイムに受信した全方位画像を、加工することなく、利用者端末4に配信する。なお、前述したように、利用者端末4は複数であってもよい。この場合、各利用者端末4に送信される全方位画像は共通である。
【0039】
また、テレビ会議サーバ2は、任意で、各利用者端末4に配信する全方位画像を所定の記憶手段に記録することができる。
【0040】
遠隔制御サーバ3は、利用者端末4に対して、移動機構200に対する移動指示情報を移動制御装置400に送信するためのインタフェースを提供する。前記インタフェースの形態は不問である。本実施の形態ではHTTP(Hypertext Transfer Protocol)を利用したWebインタフェースを利用者端末4に提供する。遠隔制御サーバ3は、利用者端末4から前記インタフェースを介して入力された移動指示情報に対して、必要に応じてチェック処理や加工処理等を行い、当該移動指示情報を移動制御装置400に対して送信する。なお、移動制御装置400は無線通信端末300を介して遠隔制御サーバ3と通信を行うので、遠隔制御サーバ3からの移動指示情報は、無線通信端末300に向けて送信される。無線通信端末300では、通信制御部304のテザリング機能部305が、前記移動指示情報を移動制御装置400に中継する。
【0041】
利用者端末4は、PCや、例えばスマートフォンと呼ばれる高機能な携帯通信端末などの周知の情報処理端末により実現される。ユーザが全方位カメラ100の移動制御を行う場合、利用者端末4を、テレビ会議サーバ2のクライアント端末として動作させるともに、遠隔制御サーバ3のクライアント端末として動作させる。一方、ユーザが全方位カメラ100の移動制御を行うことなく専ら全方位画像の視聴のみ行う場合、利用者端末4を、テレビ会議サーバ2のクライアント端末として動作させる。
【0042】
本実施の形態では、テレビ会議サービスの提供者が提供するクライアントアプリケーションを情報処理端末にインストールし、当該クライアントアプリケーションを実行することにより、利用者端末4をテレビ会議サーバ2のクライアント端末として動作させる。このクライアントアプリケーションは、ユーザの指示操作に応じて、リアルタイムに受信する全方位画像について任意の方向・画角・倍率で利用者端末4のディスプレイに表示させる。ここで、利用者端末4が複数ある場合、各利用者端末4が受信する全方位画像情報は共通であるが、利用者端末4に表示される画像は当該利用者端末4を操作するユーザの指示によるものなので、当該表示画像の内容(方向・画角・倍率等)は利用者端末4によって異なる。
【0043】
また、本実施の形態では、Webブラウザを情報処理端末にインストールし、当該ブラウザで遠隔制御サーバ3にアクセスすることにより、利用者端末4を遠隔制御サーバ3のクライアント端末として動作させる。
【0044】
また、本実施の形態では、利用者端末4は、情報処理端末のディスプレイ上において、クライアントアプリケーションのウィンドウとWebブラウザのウィンドウを並置して表示させる機能を有する。なお、当該機能は、情報処理端末のOS(Operating System)に標準的に組み込まれている。
【0045】
この遠隔監視システムでは、移動体通信網10の通信圏外に位置する設備等を監視したい場合がある。そこで、本実施の形態では、第1の無線中継装置500及び第2の無線中継装置600を備えた無線中継システムを用いる。より具体的には、WAN(Wide Area Network)側が移動体通信網10に接続するとともにLAN(Local Area Network)側に無線LANを形成する第1の無線中継装置500を移動体通信網10の圏内に配置し、さらに無線LANの通信可能領域を拡張する第2の無線中継装置600を前記第1の無線中継装置500と無線通信端末300との間に配置することによりローカル中継網20を構築する。なお、第1の無線中継装置500と無線通信端末300との間の距離や電波の伝搬環境等によっては第2の無線中継装置600を省略することもできる。
【0046】
第1の無線中継装置500及び第2の無線中継装置600の構成について図4及び図5を参照して説明する。
【0047】
第1の無線中継装置500は、図4に示すように、移動体通信網10と接続するための通信装置510と、無線LAN中継装置520と、電力重畳装置530と、バッテリ540とを備えている。
【0048】
通信装置510は、移動体通信網10と接続するための各種機器を備えているとともに、LAN側のインタフェースとして有線のLANインタフェースを備えている。通信装置510の通信規格は、接続先である移動体通信網10の通信規格に準拠している。通信装置510は、一対の外部アンテナ511を備えている。外部アンテナ511はアンテナケーブル511aにより通信装置510と接続する。通信装置510は、バッテリ540から供給される電力により動作する。
【0049】
無線LAN中継装置520は、WAN側及びLAN側のインタフェースとして有線のLANインタフェースを備えているとともに、LAN側のインタフェースとして無線LANインタフェースを備えている。無線LAN中継装置520はアクセスポイントとして動作する。無線LAN中継装置520は、有線のLANインタフェースに接続したLANケーブル552及び553に重畳された電力により動作する機能を有する。なおLANケーブル552とLANケーブル553は中継コネクタ740により接続されている。
【0050】
電力重畳装置530は、一対のLANインタフェースを備えている。電力重畳装置530の一方のLANインタフェースはデータ通信用のLANケーブル551により通信装置510のLANインタフェースに接続している。電力重畳装置530の他方のLANインタフェースはデータ通信用のLANケーブル552及び553により無線LAN中継装置520のWAN側のLANインタフェースに接続している。電力重畳装置530は、バッテリ540から供給される電力により動作し、無線LAN中継装置520と接続するLANケーブル552及び553に対して電力を重畳する。
【0051】
第2の無線中継装置600は、図5に示すように、無線LAN中継装置610と、電力重畳装置620と、バッテリ630とを備えている。
【0052】
無線LAN中継装置610は、LAN側のインタフェースとして有線のLANインタフェースを備えているとともに、LAN側のインタフェースとして2つの無線LANインタフェースを備えている。無線LAN中継装置610はブリッジとして動作する。無線LAN中継装置610は、有線のLANインタフェースに接続したLANケーブル641及び642に重畳された電力により動作する機能を有する。なおLANケーブル641とLANケーブル642は中継コネクタ830により接続されている。
【0053】
電力重畳装置620は、LANインタフェースを備えている。電力重畳装置620のLANインタフェースはデータ通信用のLANケーブル641及び642により無線LAN中継装置610のLANインタフェースに接続している。電力重畳装置620は、バッテリ630から供給される電力により動作し、無線LAN中継装置610と接続するLANケーブル641及び642に対して電力を重畳する。
【0054】
本実施の形態によれば、遠隔監視装置1の設置場所が移動体通信網10の圏外であっても、ローカル中継網20を介して移動体通信網10に接続できるので、通信環境が貧弱な過疎地、ダム堤体内、トンネル等にある種々の設備も監視対象とすることができる。
【0055】
次に、本発明の一実施の形態に係る無線中継システムの運搬装置について図面を参照して説明する。図6は運搬時における無線中継システムの運搬装置の外観斜視図、図7は第1のケースと第2のケースの連結構造を説明する無線中継システムの運搬装置を側方から見た図である。
【0056】
本実施の形態に係る運搬装置は、図6に示すように、運搬時には第1の無線中継装置500を収納する箱状の第1のケース700と、運搬時には第2の無線中継装置600を収納する箱状の第2のケース800とを備えている。
【0057】
第1のケース700は、開口部が略矩形のシェル本体701及びシェル蓋体702を開閉可能に連結具で連結してなる箱状のケースである。シェル本体701及びシェル蓋体702の厚みはほぼ同じである。すなわち、第1のケース700の開口面は厚み方向の略中央に形成されるとともに、シェル本体701の内側だけでなくシェル蓋体702の内側も収容可能領域となる。第1のケース700は、運搬装置の運搬時や使用時には、厚み方向すなわちシェル本体701とシェル蓋体702とを積み重ねた方向を水平方向又は略水平となるように配置されている。以下の第1のケース700についての説明においては、理解を容易にするために、厚み方向すなわちシェル本体701とシェル蓋体702とを積み重ねた方向を上下方向として説明する。連結具はシェル本体701とシェル蓋体702の当接部のうちの一辺を軸として開閉するようにシェル本体701及びシェル蓋体702の側面に亘って設けられている。シェル本体701の側面であって連結具とは反対側の面には、ケースハンドル703と、ケースの密閉性を高める機構の一部としてダイヤル704が設けられている。
【0058】
第1のケース700は、棒状部材である一対のキャリーバー705と、バーハンドル706と、一対の車輪707を備えている。一対のキャリーバー705は、シェル本体701の底面において、シェル本体701の底面に対して平行な方向であって、連結具側から当該連結具とは反対側の方向に伸縮可能であり、且つ、互いに平行に配置されている。バーハンドル706は、一対のキャリーバー705の先端部を架け渡すように設けられている。一対の車輪707は、シェル本体701の前記バーハンドル706とは反対側、すなわち前記連結具側に設けられている。このような構成により、第1のケース700は、厚み方向すなわちシェル本体701とシェル蓋体702とを積み重ねた方向をキャリーバー705と直交する方向で固定された状態で、連結部側の側面及び車輪707を下にして床や地面のうえに縦置きしたり、車輪707を用いて容易に運搬したりすることができる。
【0059】
また、第1のケース700の底面、すなわちキャリーバー705が付設されている面には、転倒防止用の支持脚708が着脱自在に設けられている。支持脚708は、一端側が、第1のケース700の底面であって前記ケースハンドル703側に着脱自在且つ回動自在に連結している。すなわち、支持脚708は折り畳み可能な構成になっている。また、支持脚708は伸縮自在に構成されている。支持脚708は、運搬時には第1のケース700に収容することができる。この支持脚708により、第1のケース700を縦置きした際に、換言すれば厚み方向すなわちシェル本体701とシェル蓋体702とを積み重ねた方向を水平方向又は略水平とした際に、安定性が向上する。
【0060】
第2のケース800は、開口部が略矩形のシェル本体801及びシェル蓋体802を開閉可能に連結具で連結してなる箱状のケースである。シェル本体801及びシェル蓋体802の厚みはほぼ同じである。すなわち、第2のケース800の開口面は厚み方向の略中央に形成されるとともに、シェル本体801の内側だけでなくシェル蓋体802の内側も収容可能領域となる。第2のケース800は、運搬装置の運搬時や使用時には、厚み方向すなわちシェル本体801とシェル蓋体802とを積み重ねた方向が水平方向又は略水平となるように配置されている。以下の第2のケース800についての説明においては、理解を容易にするために、厚み方向すなわちシェル本体801とシェル蓋体802とを積み重ねた方向を上下方向として説明する。連結具はシェル本体801とシェル蓋体802の当接部のうちの一辺を軸として開閉するようにシェル本体801及びシェル蓋体802の側面に亘って設けられている。シェル本体801の側面であって連結具とは反対側の面には、ケースハンドル803と、ケースの密閉性を高める機構の一部としてダイヤル804が設けられている。
【0061】
本実施の形態に係る運搬装置は、図7に示すように、第1のケース700と第2のケース800は、第1のケースのシェル蓋体702の上面と第2のケース800のシェル本体801の底面とを対向させた状態、すなわち第1のケース700と第2のケース800を厚み方向に積み重ねた状態で着脱自在に連結するケース連結機構を有する。本実施の形態では、ケース連結機構としてスライドレール機構を用いた。
【0062】
具体的には、第1のケース700のシェル蓋体702の上面中央部には、キャリーバー705の伸縮方向と平行であり且つ互いに所定の間隔をおいて配置された一対のアウターレール709が設けられている。アウターレール709の車輪707側の端部にはストッパー710が設けられている。一方、第2のケース800のシェル本体801の底面中央部には、連結具側からケースハンドル803側への方向と平行であり且つ所定の間隔をおいて配置された一対のインナーレール805が設けられている。
【0063】
このような構成により、運搬時には、第1の無線中継装置500を第1のケース700に収容し、第2の無線中継装置600を第2のケース800に収容する。そして、第1のケース700と第2のケース800とを厚み方向に連結することにより両者を一体として容易に運搬することができる。
【0064】
さらに、本実施の形態に係る運搬装置は、無線中継システムの使用の際に用いる各種治具、及び、無線中継システムの使用に適した構成を有している。まず、第1のケース700について図8乃至図10を参照して説明する。図8は無線中継システムの使用時における第1のケースの外観斜視図、図9及び図10は第1のケースにおける第1の無線中継装置の使用形態について説明する図である。
【0065】
第1のケース700は、図8に示すように、第1の無線中継装置500を動作させる際には無線LAN中継装置520及び外部アンテナ511の支持台としても機能する。本実施の形態に係る運搬装置は、図9に示すように、第1のケース700のシェル本体701の側面であって前記バーハンドル706側の側面、すなわち連結具とは反対側の側面に、無線LAN中継装置520を固定するための第1の固定具720を備える。第1の固定具720は、前記ダイヤル704とシェル本体701との間に挿入する板状の挿入片721と、挿入片721から立設して無線LAN中継装置520の下部を厚み方向に挟持する挟持部722とを一体に形成してなる。無線LAN中継装置520の筐体には上下方向に延びるリブ521が形成されている。また、前記挟持部722の内側は無線LAN中継装置520のリブ521と係合する凹凸が形成されている。第1の固定具720は第1の無線中継装置500の付属品として第1のケース700に収納して運搬される。なお、無線LAN中継装置520はアンテナ522が着脱自在になっており、運搬時にはアンテナ522を取り外した状態で第1のケース700に収容される。
【0066】
また、本実施の形態に係る運搬装置は、図10に示すように、通信装置510の一対の外部アンテナ511をバーハンドル706の固定するための着脱自在の第2の固定具730を備えている。第2の固定具730は略直方体形状の部材からなり、第2の固定具730の底面にはバーハンドル706を上部から嵌合する凹部731が形成されている。第2の固定具730の両側面には、外部アンテナ511を着脱自在に付設するための係合部732が設けられている。一方、外部アンテナ511の基台512には前記係合部732に対応する係合部513が設けられている。なお、本実施の形態では、外部アンテナ511と第2の固定具730の着脱自在な係合手段としてインナーレール及びアウターレールを有するスライドレール機構を用いた。第2の固定具730は第1の無線中継装置500の付属品として第1のケース700に収納して運搬される。
【0067】
また、第1のケース700のシェル本体701の側面には、図8に示すように、無線LAN中継装置520に接続する有線のLANケーブルを中継する中継コネクタ740が設けられている。また、第1のケース700のシェル本体701の側面には、外部アンテナ511と接続するアンテナケーブル511aを挿通する挿通孔741が形成されている。
【0068】
また、第1のケース700の内部には、すなわちシェル本体701及びシェル蓋体702の内側には、ケース内部に収納する各機器の収納位置を固定するための固定具(図示省略)が設けられている。なお、第1のケース700の内部に、ケース内部に固定した機器への外部からの衝撃を吸収するための緩衝材(図示省略)を設けてもよい。この場合、固定具に緩衝機能を持たせて固定具と緩衝材を共通なものとしてもよい。このような固定具や緩衝材により、ケース内部に収納する各機器の運搬中の損傷や使用中の誤動作を未然に防止できる。また、このような固定具により、シェル本体701だけでなくシェル蓋体702の内側にも各機器を収容できるのでケースの収容効率を高めることができ、したがってコンパクト化を図ることができる。
【0069】
第1の無線中継装置500を使用する際には、図8に示すように、第1の固定具720を用いて無線LAN中継装置520をシェル本体701に立設させ、無線LAN中継装置520と中継コネクタ740との間を有線のLANケーブル553で接続する。また、第2の固定具730を用いて外部アンテナ511をバーハンドル706に付設し、アンテナケーブル511aを挿通孔741に挿通させる。第1のケース700内では、通信装置510、電力重畳装置530、バッテリ540を所定のケーブル類で接続した状態で格納する。
【0070】
次に、第2のケース800について図11及び図12を参照して説明する。図11は無線中継システムの使用時における第2のケースの外観斜視図、図12は第2のケースにおける第2の無線中継装置の使用形態について説明する図である。
【0071】
第2のケース800は、図11に示すように、第2の無線中継装置600を動作させる際には無線LAN中継装置610の支持台としても機能する。本実施の形態に係る運搬装置は、図12に示すように、第2のケース800のシェル蓋体802の上面に、無線LAN中継装置610を固定するための第3の固定具810を備える。第3の固定具810は、板状の固定具本体811と、固定具本体811の上面に着脱自在に設けられた固定ブロック812とを備えている。固定ブロック812には無線LAN中継装置610の下部を厚み方向に挟持する挟持部813が形成されている。無線LAN中継装置610の筐体には上下方向に延びるリブ611が形成されている。また、前記挟持部813の内側は無線LAN中継装置610のリブ611と係合する凹凸が形成されている。
【0072】
固定具本体811の上面には、固定ブロック812の下面に形成された係合部(図示省略)と着脱自在に係合する係合部814が形成されている。また、また、固定具本体811の底面には、シェル蓋体802の上面に着脱自在に付設するための係合部815が設けられている。一方、シェル蓋体802の上面には前記係合部815と対応する係合部820が設けられている。なお、本実施の形態では、シェル蓋体802と第3の固定具810の着脱自在な係合手段としてインナーレール及びアウターレールを有するスライドレール機構を用いた。第3の固定具810は第2の無線中継装置600の付属品として第2のケース800に収納して運搬される。なお、無線LAN中継装置610はアンテナ612が着脱自在になっており、運搬時にはアンテナ612を取り外した状態で第1のケース700に収容される。
【0073】
また、第2のケース800のシェル本体801の側面には、無線LAN中継装置610に接続する有線のLANケーブルを中継する中継コネクタ830が設けられている。
【0074】
また、第2のケース800の内部には、すなわちシェル本体801及びシェル蓋体802の内側には、ケース内部に収納する各機器の収納位置を固定するための固定具(図示省略)が設けられている。なお、第2のケース800の内部に、ケース内部に固定した機器への外部からの衝撃を吸収するための緩衝材(図示省略)を設けてもよい。この場合、固定具に緩衝機能を持たせて固定具と緩衝材を共通なものとしてもよい。このような固定具や緩衝材により、ケース内部に収納する各機器の運搬中の損傷や使用中の誤動作を未然に防止できる。また、このような固定具や緩衝材により、シェル本体801だけでなくシェル蓋体802の内側にも各機器を収容できるのでケースの収容効率を高めることができ、したがってコンパクト化を図ることができる。
【0075】
第2の無線中継装置600を使用する際には、図11に示すように、第3の固定具810を用いて無線LAN中継装置610をシェル蓋体802に立設させ、無線LAN中継装置610と中継コネクタ830との間を有線のLANケーブル642で接続する。第2のケース800内では、電力重畳装置620、バッテリ630を所定のケーブル類で接続した状態で格納する。
【0076】
このような無線中継システムの運搬装置によれば、運搬時には、第1のケース700と第2のケース800とを連結した状態で運搬可能であり、しかも第1のケース700に車輪707及びバーハンドル706が付設されているので効率的な運搬が可能となる。また、使用場所では、第1のケース700と第2のケース800との連結を解除して、第1のケース700を移動体通信網10の通信圏内に配置し、通信の主体となる装置と第1のケースとの間に第2のケース800を配置し、各ケース700及び800に収容されている無線中継装置500及び600を使用状態にすることで、通信経路を容易且つ確実に形成することができる。
【0077】
また、本実施の形態に係る無線中継システムの運搬装置によれば、運搬時には、第1のケース700と第2のケース800を厚み方向に積み重ねた状態で、且つ、第1のケース700に設けられた車輪707が接地した状態で、床や地面のうえに縦置きしたり移動したりする。すなわち、第1のケース700と第2のケース800が水平又は略水平で連結された状態で、床や地面のうえに縦置きしたり移動したりする。したがって、第1のケース700と第2のケース800を鉛直方向に積み重ねた場合と比較して、重心位置を下げることができるので、縦置き時や移動時の安定性が向上したものとなる。さらに、本実施の形態に係る無線中継システムの運搬装置では、第1のケース700に支持脚708が設けられているので、運搬中の縦置き時や、第1の無線中継装置500の使用時における縦置き時の安定性がさらに向上したものとなる。
【0078】
また、本実施の形態に係る無線中継システムの運搬装置では、各ケース700,800は、ケース内部に収納する各機器の収納位置を固定するための固定具がシェル本体701,801及びシェル蓋体702,802の内側に設けられている。この固定具により、ケース内部に収納する各機器の運搬中の損傷や使用中の誤動作を未然に防止できる。また、このような固定具により、シェル本体701,801だけでなくシェル蓋体702,802の内側にも各機器を収容できるのでケースの収容効率を高めることができ、したがってコンパクト化を図ることができる。
【0079】
また、本実施の形態に係る無線中継システムの運搬装置では、第1のケース700と第2のケース800とは各ケース700,800の外面に設けられたケース連結機構により着脱自在に連結している。すなわち、第1のケース700と第2のケース800の着脱作業時に、何れかのケース700,800のシェル蓋体702,802を開く必要がない。これにより、着脱作業時にケース700,800に収容している各無線中継装置500,600が落下して損傷したり、紛失したりする不慮の事故を未然に防止することができる。また、ケース連結機構としてスライドレール機構を採用しているので、第1のケース700と第2のケース800の着脱作業を容易且つ確実に行うことができる。
【0080】
また、本実施の形態に係る無線中継システムの運搬装置では、第1のケース700に、第1の無線中継装置500を構成する無線LAN中継装置520と通信装置510との有線接続を中継する中継コネクタ740が設けられている。このため、第1の無線中継装置500の使用時において第1のケース700の密閉性が向上したものとなる。また、本実施の形態に係る無線中継システムの運搬装置では、無線LAN中継装置520と通信装置510とを接続するデータ通信用のLANケーブル552及び553に、バッテリ540からの電力を重畳させている。これにより、ケース内外に亘るケーブルが少なくなるので、第1の無線中継装置500の使用時において第1のケース700の密閉性が向上したものとなるとともに、配線作業の省力化及び誤配線の防止を図ることができる。第2のケース800についても同様である。
【0081】
以上、本発明の一実施の形態について詳述したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよい。
【0082】
例えば、上記実施の形態では、第1のケース700には一対のキャリーバー705を設けたがキャリーバー705は一本であってもよい。また、上記実施の形態では、第1のケース700側にアウターレール709を設け、第2のケース800側にインナーレール805を設けたが、第1のケース700側にインナーレールを設け、第2のケース800側にアウターレールを設けてもよい。また、上記実施の形態では、第1のケース700と第2のケース800の着脱自在な連結手段としてスライドレール機構を用いたが、他の機構を用いてもよい。
【0083】
また、上記実施の形態では、無線中継システムの運搬装置による運搬対象である無線中継システムの使用用途として遠隔監視システムについて説明したが、他の用途での使用であっても本願発明を適用できる。
【符号の説明】
【0084】
1…遠隔監視装置
2…テレビ会議サーバ
3…遠隔制御サーバ
4…利用者端末
10…移動体通信網
20…ローカル中継網
500…第1の無線中継装置
510…通信装置
511…外部アンテナ
520…無線LAN中継装置
530…電力重畳装置
540…バッテリ
600…第2の無線中継装置
610…無線LAN中継装置
620…電力重畳装置
630…バッテリ
700…第1のケース
701…シェル本体
702…シェル蓋体
705…キャリーバー
706…バーハンドル
707…車輪
709…アウターレール
720…第1の固定具
730…第2の固定具
800…第2のケース
805…インナーレ-ル
810…第3の固定具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12