(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】インビボ検体モニタリング環境における電力供給方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/1459 20060101AFI20241007BHJP
H04Q 9/00 20060101ALI20241007BHJP
【FI】
A61B5/1459
H04Q9/00 311J
(21)【出願番号】P 2021148432
(22)【出願日】2021-09-13
(62)【分割の表示】P 2019142804の分割
【原出願日】2014-04-29
【審査請求日】2021-10-13
【審判番号】
【審判請求日】2023-08-21
(32)【優先日】2013-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2013-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2014-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500211047
【氏名又は名称】アボット ダイアベティス ケア インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT DIABETES CARE INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-ピエール コール
【合議体】
【審判長】榎本 吉孝
【審判官】萩田 裕介
【審判官】▲高▼見 重雄
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0078071(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0082821(US,A1)
【文献】特開2008-229269(JP,A)
【文献】国際公開第2012/090393(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00-5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インビボ検体モニタリング環境におけるセンサ制御装置への電力供給方法であって、
前記センサ制御装置により、各々がフレームフォーマットのデジタル情報を有する複数の連続的なワイヤレス通信の電力を受信するステップであって、該センサ制御装置が、
ユーザの体内に挿入されている間に検体データを収集するよう構成されているセンサと、
前記センサと結合した検体モニタリング回路
であって、前記受信した複数の連続的なワイヤレス通信の電力により受信した通信に応答する、検体モニタリング回路と、
前記センサ制御装置に動作電力を供給するよう構成されている電源であって、該電源は、前記複数の連続的なワイヤレス通信の電力を受信するとき、前記動作電力を前記センサ制御装置に供給しないよう構成されている、電源と、
を備えた、ステップと、
前記ワイヤレス通信の電力に続き移行コマンドを受信すると、前記センサ制御装置により、前記受信した複数の連続的なワイヤレス通信からの電力を用いて、前記センサ制御装置を、前記電源が前記動作電力を前記センサ制御装
置に供給する、より高い電力モードに移行させるステップと、
を有することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記複数の連続的なワイヤレス通信が、複数の近距離通信(NFC)供給コマンドを有し、前記動作電力を前記検体モニタリング回路に供給する、前記センサ制御装置のための移行コマンドが続くことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記複数の近距離通信(NFC)供給コマンドの受信された累積の電力が、前記センサ制御装置により前記複数の近距離通信(NFC)供給コマンドを読むのに用いられた累積的な電力、および前記複数の近距離通信(NFC)供給コマンドに応答するのに用いられた累積的な電力より大きいことを特徴とする、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記複数の近距離通信(NFC)供給コマンドの少なくとも1つが、NFCのInventoryコマンドであることを特徴とする、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記複数の連続的なワイヤレス通信の受信された累積の電力が、前記センサ制御装置により前記複数の連続的なワイヤレス通信に反応するのに用いられた累積的な電力より大きいことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記受信された複数の連続的なワイヤレス通信は、各々が、コマンド形式の情報を有するワイヤレス通信を含み、
前記受信された複数の連続的なワイヤレス通信の各々から受信した電力が、前記センサ制御装置により前記複数の連続的なワイヤレス通信を読むのに用いられた累積的な電力、および前記複数の連続
的なワイヤレス通信に反応するのに消費された電力より大きいことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記センサ制御装置が、前記電源を前記検体モニタリング回路に選択的に接続するよう構成されている制御回路を更に有することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記ワイヤレス通信の電力に続き移行コマンドを受信すると、前記センサ制御装置により、前記受信された複数の連続的なワイヤレス通信からの電力を用いて、前記センサ制御装置を、前記電源が前記動作電力を前記センサ制御装置または該センサ制御装置の大半に供給する、より高い電力モードに移行させるステップが、前記受信された複数の連続的なワイヤレス通信からの電力を用いて、前記制御回路が前記電源を前記検体モニタリング回路に接続するようにさせることを含むことを特徴とする、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記検体モニタリング回路がプロセッサを有し、
前記受信された複数の連続
的なワイヤレス通信からの電力を用いて、前記制御回路が前記電源を前記検体モニタリング回路に接続させることが、
前記受信された複数の連続的なワイヤレス通信からの電力を前記プロセッサに供給し、
前記プロセッサからの制御信号を前記制御回路に出力し、該出力により前記制御回路が前記電源を前記検体モニタリング回路に接続するようにさせることを含むことを特徴とする、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記受信された複数の連続的なワイヤレス通信からの電力を前記制御回路のコンデンサに充電し、
さらに、前記コンデンサを用いて前記プロセッサに電力を供給することをさらに含むことを特徴とする、請求項9記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載される主題は、一般的には、例えば検体モニタリング環境において、電気機器の電力消費状態を効率の良い方法で変更することに関する。
【背景技術】
【0002】
グルコース、ケトン、乳酸、酸素、ヘモグロビンA1C等の検体レベルを検出および/またはモニタリングすることは、糖尿病にかかっている個人の健康にとって極めて重要となり得る。糖尿病患者は、一般的に、自分のグルコースレベルをモニタリングして、グルコースレベルが臨床的に安全な範囲内に維持されていることを確認すると共に、この情報を用いて、体内のグルコースレベルを下げるためにインスリンが必要かどうか、および/もしくはインスリンがいつ必要か、または、体内のグルコースレベルを高めるために追加のグルコースがいつ必要かを決定し得る。
【0003】
臨床データの増大により、グルコースモニタリングの頻度と血糖管理との間には強い相関があることが示されている。そのような相関があるにも関わらず、糖尿病の状態があると診断されている多くの個人が、簡便性、検査の自由裁量、グルコース検査に伴う痛み、および費用を含む要因の組み合わせにより、グルコースレベルのモニタリングを然るべき頻度で行っていない。上記および他の理由により、改善された検体モニタリングシステム、装置、および方法の必要性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ユーザの体液(例えば、血液、間質液(ISF)、真皮中の液体、または他の体液)中の検体(グルコース等)の自動モニタリングのための多くのシステムが開発されている。これらのシステムには、ユーザの体液と接触して、そこに含まれる検体レベルを感知するために、少なくとも部分的にユーザにインビボに(例えば、経皮的に、皮下に、または皮膚に)配置可能なセンサを含むものがある。従って、これらのシステムはインビボ検体モニタリングシステムと称される。
【0005】
センサは、一般的に、ユーザの身体上(または身体内)に常駐するセンサ制御装置の一部であり、検体の感知を可能にすると共に制御する電子装置および電源を含む。センサ制御装置およびそのバリエーションは、例えば、“センサ制御ユニット”、“身体装着用電子装置またはユニット”、“身体装着用装置またはユニット”、または“センサデータ通信装置またはユニット”等と称され得る。
【0006】
センサ制御装置を用いて感知された検体データは、感知された検体データを処理し、且つ/またはユーザに対して任意の数の形態で表示する能力がある別個の装置に通信され得る。この装置およびそのバリエーションは、例えば“読取器装置”(または単に“読取器”)、“携帯型電子装置”(または“携帯”)、“携帯型データ処理装置またはユニット”、“データ受信器”、“受信器装置またはユニット”(または単に“受信器”)、または“リモート装置またはユニット”等と称され得る。読取器装置は、専用の装置、スマートフォン、タブレット、スマートグラス装置等のウェアラブルな電子装置等であり得る。
【0007】
インビボの検体モニタリングシステムは、読取器装置とセンサ制御装置との間のデータの通信方法に基づいて、広く分類され得る。インビボシステムの1つのタイプは“連続検体モニタリング”システム(または“連続グルコースモニタリング”システム)であり、このタイプでは、プロンプトを行うことなく(例えば、ブロードキャストスケジュールに従って自動的に)、センサ制御装置から読取器装置へと連続的にデータがブロードキャストされ得る。インビボシステムのもう1つのタイプは“フラッシュ検体モニタリング”システム(または“フラッシュグルコースモニタリング”システムもしくは単に“フラッシュ”システム)であり、このタイプでは、読取器装置によるスキャンまたはデータ要求に応答して(例えば近距離無線通信(NFC)プロトコルまたは無線自動識別(RFID)プロトコルを用いて)、センサ制御装置からデータが転送され得る。
【0008】
本明細書では、装置(例えばセンサ制御装置等)の電力消費の状態(またはモード)をエネルギー効率の良い方法で変更できるようにするシステム、装置、および方法の幾つもの例示的な実施形態を提供する。電力消費の状態の変更は、例えば、低電力状態(例えば、電源がオフにされた状態)からより高い電力状態(例えば、電源がオンにされた状態)へと変更することを含み得る。幾つかのケースでは、この状態の変更は「作動」と呼ばれ、例えば、センサ制御装置が装着者によって初めて使用される場合に用いられる。説明を容易にするために、本明細書に記載される実施形態の多くは、センサ制御装置の電力状態の変更に関して説明されるが、これらの実施形態はそのようには限定されない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
特定の実施形態では、作動センサにはセンサ制御装置が設けられ、作動センサが動作すると、内部電子装置が作動される。作動センサは、周囲の光学的な光または別の光源に露出された際に応答を生じる光作動センサであり得る。光(または磁場等の他の何らかのトリガ)に対する露出およびそれに続く作動は、装置をユーザの身体に適用する前に(例えば、アプリケータアセンブリをパッケージから出している間に)達成されてもよい。光作動センサは、センサ制御装置の作動回路の一部であり得る。光作動センサ(光学的に作動可能なスイッチの形態であってもよい)は、光に露出されると、作動回路に内蔵プロセッサを開始させることができる。そしてプロセッサは、センサ制御装置の使用期間中に、または装置の電源の寿命期間中に、内部電子装置を作動状態に維持することができる。ユーザによって、またはシステムによって自動的に、電子装置の開始の確認が(例えば、読取器装置においてユーザに対するメッセージまたは他の表示を生成することによって)行われてもよい。センサ制御作動センサ(例えば光学センサ等)を有するセンサ制御装置を製造する方法も提供される。
【0010】
他の実施形態では、センサ制御装置は、電力状態を変更するために、またはそのような変更を行うべきであるときを認識するために、無線通信プロトコルを介した送信を利用できる。
【0011】
例えば、センサ制御装置は、Bluetooth(登録商標)低エネルギー(BTLE)プロトコルに従った通信を送受信できてもよい。特定の実施形態では、センサ制御装置は、第1の電力状態(例えば、電源オフ即ち非作動状態、保管状態、またはスリープ状態等の低電力状態)で動作中は、読取器装置から上記の無線通信を受信することができ、その通信がBTLEアドバタイジングシーケンスもしくはその一部(または単一のアドバタイジングメッセージ)であることを認識できる。上記の認識は、ハードウェアまたはソフトウェアを介して行うことができる。そのような認識を行ったら、センサ制御装置は、第2のより高い電力状態(例えば、第1の電力状態よりも電力消費が大きい状態(例えば、電源オン即ち作動状態、またはアウェイク状態))への変更を行うことができる。特定の実施形態では、センサ制御装置は、最初に通信の復調を行うことなく、アドバタイジングシーケンスを認識できる。
【0012】
幾つかの実施形態では、センサ制御装置は、第2の電力状態にあるときに、読取器装置から第2の即ち次のアドバタイジングシーケンスを受信する。センサ制御装置は、第2のアドバタイジングシーケンスを復調して、第2のアドバタイジングシーケンスが作動要求メッセージを含むか否かを決定することができ、肯定された場合には、読取器装置に確認応答を送信できる。復調された通信が、作動要求メッセージを含まない場合には、センサ制御装置の状態が第1の電力状態に戻るよう変更され得る。幾つかの実施形態では、第1の電力モードはスリープ(または保管)モードであり、第2の電力モードは通常動作モードである。
【0013】
上述の実施形態に対する幾つかの変形も提供される。例えば、アドバタイジングシーケンスは、所定の時間間隔で送信される一続きのアドバタイジングパケットを含み得る。アドバタイジングシーケンスは、接続可能な有向アドバタイジングパケットタイプ、接続可能な無向アドバタイジングパケットタイプ、接続不可能な無向アドバタイジングパケットタイプ、またはスキャン可能な無向アドバタイジングパケットタイプを含み得るものであり、それらの各々が作動要求メッセージであり得る。
【0014】
更に別の実施形態では、連続的な無線周波数(RF)通信を用いて、例えばセンサ制御装置に電力を供給することができる。センサ制御装置は、完全な動作電力が供給されていない低電力状態(例えば、電力オフ即ち非作動モード、保管モード、またはスリープモード)にあり得る。センサ制御装置は、受信した無線通信の電力を利用して、ローカル電源に動作電力の供給を開始させ、それによってセンサ制御装置をより高い電力状態(例えば、通常状態、アウェイク状態、または作動状態)に移行させることができる。これらの実施形態の多くにおいては、無線通信は近距離無線通信(NFC)プロトコルに従って送受信されるが、他のプロトコルを用いることもできる。
【0015】
適応的な実施形態も記載され、これらの実施形態では、読取器装置がセンサ制御装置の電力モードを直接または間接的にモニタリングし、センサ制御装置がより高い電力モードに移行するのに十分な電力が供給されるまで、読取器装置が連続的な無線通信の数、タイプ、間隔、またはパワーの1以上を調節する。本明細書に記載されるこれらの実施形態は、読取器装置がスマートフォンの形態である場合に特に適している。
【0016】
本明細書に記載される主題の他のシステム、装置、方法、特徴および長所は、添付の図面および詳細な説明を検討すれば、当業者には自明である。そのような更なるシステム、装置、方法、特徴および長所は全て本明細書に含まれるものであり、本明細書に記載される主題の範囲内であり、添付の特許請求の範囲によって保護されることが意図される。例示的な実施形態の特徴は、それらの特徴が添付の特許請求の範囲に明確に記載されていない限り、特許請求の範囲を限定するものとは決して解釈されるべきではない。
【0017】
本明細書で述べる主題の構造および動作に関する詳細は、添付の図面を検討することによって明らかとなり得る。図面中、類似の参照番号は類似の部分を示す。図面中の構成要素は必ずしも縮尺通りではなく、むしろ、本主題の原理を示すために強調されている。更に、全ての図面は概念を伝えることを意図したものであり、相対的なサイズ、形状、および他の詳細な属性は、文字通りにまたは正確に示されるのではなく、模式的に示され得る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】リアルタイムの検体(例えば、グルコース)測定、データ取得および/または処理のための検体モニタリングシステムの例示的な実施形態を示す上位図
【
図2A】スマートフォンとして構成された読取器装置の例示的な実施形態を示すブロック図
【
図2B】センサ制御装置の例示的な実施形態を示すブロック図
【
図2C】センサ制御装置の例示的な実施形態を示すブロック図
【
図3】光学に基づく作動回路を有するセンサ電子装置の例示的な実施形態を示す模式的なブロック図
【
図4】光学センサを有する検体モニタリングシステムを用いる方法の例示的な実施形態を示すフローチャート
【
図5A】光学センサを有する検体モニタリングシステムを用いる方法の例示的な実施形態を行うステップを示す図
【
図5B】光学センサを有する検体モニタリングシステムを用いる方法の例示的な実施形態を行うステップを示す図
【
図5C】光学センサを有する検体モニタリングシステムを用いる方法の例示的な実施形態を行うステップを示す図
【
図5D】光学センサを有する検体モニタリングシステムを用いる方法の例示的な実施形態を行うステップを示す図
【
図5E】光学センサを有する検体モニタリングシステムを用いる方法の例示的な実施形態を行うステップを示す図
【
図5F】光学センサを有する検体モニタリングシステムを用いる方法の例示的な実施形態を行うステップを示す図
【
図5G】光学センサを有する検体モニタリングシステムを用いる方法の例示的な実施形態を行うステップを示す図
【
図5H】光学センサを有する検体モニタリングシステムを用いる方法の例示的な実施形態を行うステップを示す図
【
図5I】光学センサを有する検体モニタリングシステムを用いる方法の例示的な実施形態を行うステップを示す図
【
図6B】センサアセンブリの容器の例示的な実施形態の分解図
【
図7】磁気に基づく作動回路を有するセンサ電子装置の例示的な実施形態を示す模式的なブロック図
【
図8】磁気センサを有する検体モニタリングシステムを用いる方法の例示的な実施形態を示すフローチャート
【
図9E】完全なセンサ電子装置サブアセンブリの斜視図
【
図11A】
図9Eのアセンブリのスナップ式に嵌め合わせる別の実施形態の組立図
【
図11B】
図9Eのアセンブリのスナップ式に嵌め合わせる別の実施形態の組立断面図
【
図11C】
図9Eのアセンブリのスナップ式に嵌め合わせる別の実施形態の組立断面図
【
図12A】使用可能な状態の最終的なセンサ制御装置を製造する際の接着性の裏当ての適用を示す組立図
【
図12B】使用可能な状態の最終的なセンサ制御装置を製造する際の接着性の裏当ての適用を示す組立図
【
図12C】使用可能な状態の最終的なセンサ制御装置を製造する際の接着性の裏当ての適用を示す組立図
【
図13】センサ制御装置と読取器装置との間の通信を確立する方法の例示的な実施形態を示すブロック図
【
図14】センサ制御装置と読取器装置との間の通信を確立する方法の例示的な実施形態を示すブロック図
【
図15】センサ制御装置の別の例示的な実施形態を示すブロック図
【
図16】電源管理回路の例示的な実施形態を示すブロック図
【
図17A】読取器装置によって送信される連続的なRF通信を用いてセンサ制御装置に電力を供給する方法の例示的な実施形態を示すフロー図
【
図17B】読取器装置によって送信される連続的なRF通信を用いてセンサ制御装置に電力を供給する方法の例示的な実施形態を示すフロー図
【
図18】読取器装置およびセンサ制御装置の電力レベルと、これらの装置間の様々な通信および通信の試みとを示す概念的なタイミング図
【
図19】センサ制御装置に適応的に電力を供給する方法の例示的な実施形態を示すフロー図
【発明を実施するための形態】
【0019】
本主題は、記載される特定の実施形態に限定されず、これらの実施形態は単に例であり、当然ながら様々に変形され得る。同様に、本明細書で用いる用語は、単に特定の実施形態を説明する目的で用いられるものであり、本発明を限定することは意図されず、本開示の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0020】
従来の検体モニタリングシステムでは、センサ制御装置は、ユーザが目立たないように装着できるように小さい物理的形態を有する。このことは、装置の内部電子装置および電源のサイズの制約となる。センサ制御装置の寿命が、センサの長期の信頼性(例えば、14日間)によって決定される限られたものである場合には、センサ制御装置は使い捨てとなり、別の装置と交換される。各装置のコストを最小限にすることが望ましいことから、電源のサイズおよび電源の使用レートを最小限にするという更なるプレッシャーがかかる。従って、設計プロセスにおいて、センサ制御装置の電子装置の電力要求、およびソフトウェアがこれらの電子装置を動作させるレートが最小限にされる。
【0021】
この目的で、センサ制御装置は、電源が、センサ電子装置の全体または大半に動作電力を供給しない低電力モードで出荷および保管されることが多い。幾つかの実施形態では、無線通信回路のみが作動していて、作動RF信号を聴取するために最小限の休止電流を引き込むモードで動作する。
【0022】
この低電力モードでは、電源は、内部電子装置から機械的に(例えば、装置の接点と電源との間に着脱可能な絶縁体を配置することにより)接続解除されてもよく、電源からのリーク電流を最小限にするように電子的に(例えば、制御可能な分離回路を用いて)接続解除されてもよく、または別様で接続解除されてもよい。電源は、装着者がセンサの使用を開始する準備ができたら接続されてもよい。
【0023】
本明細書に記載される実施形態の多くは、従来の技術と比較して効率、コストを改善し(とりわけ)ハードウェアおよびソフトウェアを減少させた、センサ制御装置の電力状態を変更する技術を提供する。
【0024】
本明細書に記載される実施形態が用いられ得るインビボ検体モニタリングシステム100の例示的な実施形態が、
図1の説明的な図に示されている。ここで、システム100はセンサ制御装置102および読取器装置120を含み、センサ制御装置102および読取器装置120は、一方向または双方向であり得るローカル無線通信路(またはリンク)140を介して互いに通信可能である。リンク140を介して送信される通信は、或るフレーム形式(パケットを含む)のデジタルメッセージを含み、近距離無線通信(NFC)プロトコル(RFIDプロトコルを含む)、「Bluetooth」または「Bluetooth」 Low Energy(BTLE)プロトコル、Wi-Fiプロトコル、独自のプロトコル等に基づくものであり得る。また、読取器装置120は、通信経路(またはリンク)141および142を介して、コンピュータシステム170(例えば、ウェブサイトのサーバ、パーソナルコンピュータ、タブレット等)またはクラウドベースのストレージ190等の他のシステムまたは装置との有線、無線、またはそれらを組み合わせた通信を行うことができる。
【0025】
通信リンク140、141、および142には、任意のバージョンの「Bluetooth」を用いてよい。そのようなバージョンの1つは「Bluetooth」 Low Energy(BTLE、BLE)であり、これは「Bluetooth」 SMARTまたは「Bluetooth」 SMART Readyとも称される。BTLEのバージョンは、2010年6月30日に出版された「Bluetooth」仕様書バージョン4.0に記載されており、この記載を明示的に参照してあらゆる目的で本明細書に組み込む。なお、本明細書に記載される実施形態は、これらの「Bluetooth」プロトコルの後継バージョンとともに、または、本明細書に記載される「Bluetooth」プロトコルと同様に動作する新たなプロトコル(それらのプロトコルが本願の出願時に存在しているか否かに関わらず)とともに用いられ得ることが、当業者には容易に認識されよう。
【0026】
BTLE通信(または他の低エネルギー無線標準)を用いることにより、エネルギーの使用を低減でき、このことは、リンク140を介してセンサ制御装置102と読取器装置120との間でデータ送信を行う際に特に重要であり得る。そして、これにより、センサ制御装置102内の電池のサイズの低減または電池寿命の延長(またはそれらの組み合わせ)が可能になる。
【0027】
低エネルギー無線通信プロトコルを用いることで、個々の通信インターフェースの、例えば、デューティサイクルの低減(即ち、能動的な動作の頻度が低くなり、引き込まれる電池の電力が減る)、使用期間の短縮、またはそれらの任意の組み合わせが可能になる。リンク140、141、142には、BTLEの代わりに、またはそれに加えて、Wi-Fi、セルラー、Zigbee(登録商標)、およびカスタムのプロトコル等の他の無線プロトコルを使用してもよい。しかし、これらの他のプロトコルは、一般的に、BTLEよりも多くのエネルギーを必要とし、スマートフォンやタブレットに広く統合されておらず、または世界規模で使用が承認されているものではない。「Bluetooth」プロトコルのファミリーは、例えば、タブレットとタブレットの周辺機器(例えば、無線ヘッドセット、マウス、キーボード等)との近接通信を達成するのに最も便利であると広く見なされているため、今日、そして予見可能な将来においては、「Bluetooth」機能を有するスマートフォン、タブレット、および他の携帯型コンピューティング装置が顧客に提供されるであろう。
【0028】
センサ制御装置102および読取器装置120の他の実施形態、並びに本明細書で述べるシステム、装置、および方法の実施形態と共に用いるのに適したインビボベースの検体モニタリングシステムの他の構成要素は、米国特許出願公開第2011/0213225号明細書に記載されており、その全体を参照してあらゆる目的で本明細書に組み込む。
【0029】
センサ制御装置102は、インビボ検体モニタリング回路および電源(
図2B~
図2Cに示す)を含むハウジング103を含み得る。インビボ検体モニタリング回路は、パッチ105を通ってハウジング103から離れる方向に延出する検体センサ104と電気的に接続されている。パッチ105の基部には、ユーザの身体の皮膚表面への取り付けのための接着層(図示せず)が配置されてもよい。接着剤に加えて、またはその代わりに、他の形態の身体への取り付けが用いられてもよい。センサ104は、少なくとも部分的にユーザの身体に挿入されて、そこでユーザの体液と接触できるように構成されており、一旦作動されると、ユーザの検体に関するデータを測定および収集するためにインビボ検体モニタリング回路と共に用いられる。一般的に、センサ制御装置102およびその構成要素は、本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2011/0213225号明細書に記載されているように、機械的アプリケータ150を用いて1以上のステップで、または他の任意の所望の方法で身体に適用され得る。
【0030】
作動後、センサ制御装置102は、収集された検体データ(例えば、モニタリングされた検体レベルおよび/またはモニタリングされた温度データに対応するデータ、および/または格納されている検体関連履歴データ)を読取器装置120に無線通信でき、特定の実施形態では、それらのデータが読取器装置120においてアルゴリズムで処理されて、ユーザの検体レベルを表すデータとなり、ユーザに対して表示されたり、別様で糖尿病モニタリングのレジメンに組み込まれたりする。
【0031】
図1に示されるように、読取器装置120は、ユーザに情報を出力するため、且つ/またはユーザからの入力を受け付けるため(例えば、タッチスクリーンとして構成されている場合)のディスプレイ122と、任意に設けられる1つ(以上)のユーザインターフェース構成要素121(例えばボタン、アクチュエータ、タッチセンサスイッチ、静電容量式スイッチ、押圧感知スイッチ、ジョグホイール等)とを含む。読取器装置120は、コンピュータシステム170(後述する)等の外部装置との有線データ通信のための1以上のデータ通信ポート123も含み得る。また、読取器装置120は、インビトロ検体測定を行うためにインビトロ検体テストストリップを受け付けるためのインビトロテストストリップポート(図示せず)を含むインビトロ検体計測器も含んでもよい。
【0032】
コンピュータシステム170は、ユーザまたは医療の専門家によって、収集された検体データを、情報ソフトウェアプログラムを用いて表示および/または解析するために用いられ得る。コンピュータシステム170は、パーソナルコンピュータ、サーバ端末、ラップトップコンピュータ、タブレット、または他の適切なデータ処理装置であってもよく、データ管理および解析、並びに検体モニタリングシステム100の構成要素との通信のためのソフトウェアであってもよく、またはそのようなソフトウェアを含んでもよい。
【0033】
システム100内でのデータの処理およびソフトウェアの実行は、読取器装置120、コンピュータシステム170、および/またはセンサ制御装置102の1以上のプロセッサによって行われ得る。例えば、センサ104によって測定された生データをアルゴリズムで処理して、ユーザに対して表示するのに適した検体レベルを表す値にすることができる。これはセンサ制御装置102内で行われてもよく、または、読取器装置120もしくはコンピュータシステム170内で、センサ制御装置102から生データを受信した後に行われてもよい。生データから得られた上記および他の任意の情報は、センサ制御装置102、読取器装置120、またはコンピュータシステム170のいずれかにある任意のディスプレイ上に、(ディスプレイ122に関して)上述した方法のいずれかで表示され得る。この情報は、ユーザによって、検体レベルが許容可能および/または臨床的に安全な範囲内にあることを確実にするために必要な是正措置を決定するために用いられ得る。
【0034】
上述したように、読取器装置120は、例えば、Wi-Fiまたはインターネット対応のスマートフォン、タブレット、またはPDA等のモバイル通信装置であり得る。スマートフォンの例としては、WINDOWS(登録商標)オペレーティングシステム、ANDROID(登録商標)オペレーティングシステム、IPHONE(登録商標)オペレーティングシステム、PALM WEBOS(登録商標)、BLACKBERRY(登録商標)オペレーティングシステム、またはSYMBIAN(登録商標)オペレーティングシステムに基づくもので、インターネット接続および/またはローカルエリアネットワーク(LAN)を介したデータ通信のためのデータネットワーク接続機能を有するものが挙げられるが、それらに限定されない。
【0035】
また、読取器装置120は、例えば、ユーザの目を覆うようにまたは目の近くに装着可能な光学アセンブリ等のウェアラブルなモバイルスマート電子装置アセンブリ(例えば、GOOGLE GLASS(登録商標)等のスマートグラス)として構成されてもよい。この光学アセンブリは透明なディスプレイを有してもよく、このディスプレイは、ユーザの視野全体が遮られるのが最小限になるように、ユーザがディスプレイの向こう側を見通すことを可能にしつつ、(本明細書に記載されるように)ユーザの検体レベルに関する情報をユーザに対して表示する。この光学アセンブリは、スマートフォンと同様の無線通信が可能であってもよい。ウェアラブルな電子装置の他の例としては、ユーザの手首(例えば、腕時計等)、首(例えば、ネックレス等)、頭部(例えば、ヘッドバンド、帽子等)、胸等、またはその付近に着用される装置が挙げられる。
【0036】
図2Aは、スマートフォンの形態の読取器装置120の例示的な実施形態のブロック図である。ここで、読取器装置120は、入力要素121と、ディスプレイ122と、処理ハードウェア206とを含み、処理ハードウェア206は、それぞれが個別のチップであるかまたは幾つかの異なるチップ(の一部)に分散された1以上のプロセッサ、マイクロプロセッサ、コントローラ、および/またはマイクロコントローラを含み得る。処理ハードウェア206は、内蔵メモリ203を有する通信プロセッサ202と、内蔵メモリ205を有するアプリケーションプロセッサ204とを含む。読取器装置120は、RFアンテナ209と接続されたRF送受信器208、メモリ210、アンテナ217と接続されたNFC通信回路207、アンテナ220と接続された「Bluetooth」通信回路219、1以上のアンテナ214が関連づけられた多機能回路212、電源216、および電源管理回路218を更に含む。
図2Aは、スマートフォンの内部構成要素の簡略表現であり、当然ながら、他のハードウェアおよび機能性(例えば、コーデック、ドライバ、グルー・ロジック等)も含まれ得る。
【0037】
通信プロセッサ202は、RF送受信器208とのインターフェースを行い、アナログ-デジタル変換、符号化および復号化、デジタル信号処理、並びに、音声、ビデオ、およびデータ信号をRF送受信器208に供給するのに適した形式(例えば、同相の直角位相)に変換することを容易にする他の機能を行うことができ、次に、RF送受信器208はそれらの信号を無線送信できる。また、通信プロセッサ202は、無線送信を受信して、それをデジタルデータ、音声、およびビデオに変換するのに必要な逆の機能を行うためにも、RF送受信器208とのインターフェースを行い得る。
【0038】
アプリケーションプロセッサ204は、読取器装置120に常駐しているオペレーティングシステムおよび任意のソフトウェアアプリケーションの実行、ビデオおよびグラフィックの処理、およびRFアンテナ209を介して送受信される通信の処理と関係しない他の機能(例えば、NFCまたは「Bluetooth」通信のハンドリングおよびフォーマット)を行うよう構成され得る。読取器装置120上では、一度に任意の数のアプリケーションが実行されてよく、一般的に、他の一般的に用いられるアプリケーション(例えば、電子メール、カレンダー等)に加えて、糖尿病モニタリングのレジメンに関連する1以上のアプリケーションを含む。
【0039】
メモリ210は、読取器装置120内に存在する様々な機能的ユニットの1以上によって共有されてもよく、または、それらの2以上に(例えば、異なるチップ内に存在する別個のメモリとして)分散されてもよい。メモリ210は、独立したチップであってもよい。メモリ210は非一時的なものであり、揮発性メモリ(例えば、RAM等)および/または不揮発性メモリ(例えば、ROM、フラッシュメモリ、F-RAM等)であり得る。
【0040】
NFC通信回路207は、コントローラ機能(例えば、レベル検出およびデータモード検出、フレーミング等)、アナログ-デジタル変換(ADCおよびDAC)、およびアンテナ217とのアナログインターフェース(例えば、NFC通信の変調および復調)を行う1以上のチップおよび/または構成要素として実装され得る。回路207は、電圧制御発振器(VCO)、位相ロックループ(PLL)回路、通信を送信するための電力増幅器、および波形整形のための関連づけられたフィルタを含み得る。アンテナ217は、NFCプラットフォームにおいて一般的なループインダクタとして実装され得る。
【0041】
同様に、「Bluetooth」通信回路219は、コントローラ機能(例えば、レベル検出およびデータモード検出、フレーミング等)、アナログ-デジタル変換(ADCおよびDAC)、およびアンテナ220とのアナログインターフェース(例えば、変調および復調)を行う1以上のチップおよび/または構成要素として実装され得る。「Bluetooth」通信回路219は、本明細書に記載される「Bluetooth」標準のいずれかに準拠して動作するよう構成され得る。回路219は、電圧制御発振器(VCO)、位相ロックループ(PLL)回路、通信を送信するための電力増幅器、および波形整形のための関連づけられたフィルタを含み得る。
【0042】
多機能回路212も、他のローカル無線通信(例えば、Wi-Fi)のハンドリング、および読取器装置120(例えば、全地球測位システム(GPS)ハードウェア)の地理的位置の決定等の機能を行う、通信回路を含む1以上のチップおよび/または構成要素として実装され得る。1以上の他のアンテナ214は、必要に応じて多機能回路212と関連づけられる。読取器装置120は、NFC通信回路207、「Bluetooth」通信回路219、および多機能回路212の全てを含んでもよく、または、センサ制御装置102との通信方法が維持される限り、個々の用途では所望に応じてそれらのブロック(および関連づけられたアンテナ)の任意の1以上が省略されてもよい。
【0043】
電源216は、再充電可能電池または使い捨て電池であり得る1以上の電池を含み得る。電源管理回路218は、電池の充電を調整できると共に、電源モニタリング、パワーブースト、DC変換等を行い得る。
【0044】
他の形態の(例えば、専用装置、タブレット、ウェアラブルデバイス等としての)読取器装置120にも、
図2Aに関して説明したものと類似の構造的および機能的構成要素が存在し得る。専用装置として構成された読取器装置120の更なる例は、本明細書に組み込まれる米国特許仮出願シリアル番号第61/817,839明細書および米国特許出願公開第2011/0213225号明細書に記載されている。
【0045】
図2Bは、検体センサ104およびセンサ電子装置250(検体モニタリング回路を含む)を有するセンサ制御装置102の例示的な実施形態を示すブロック図である。任意の数のチップを用いてよいが、ここでは、センサ電子装置250の大半は、カスタムの特定用途向け集積回路(ASIC)であり得る単一の半導体チップ251に組み込まれている。ASIC251内には、アナログフロントエンド(AFE)252、電源管理(または制御)回路254、プロセッサ256、および装置102と読取器装置120との通信のための通信回路258を含む、特定の上位の機能的ユニットが示されている。この実施形態では、AFE252およびプロセッサ256の両者が検体モニタリング回路として用いられるが、他の実施形態では、いずれかの回路(またはその一部)が、検体モニタリング機能を行ってもよい。プロセッサ256は、1以上のプロセッサ、マイクロプロセッサ、コントローラ、および/またはマイクロコントローラを含み得る。
【0046】
ASIC251には非一時的なメモリ253も含まれ、メモリ253はASIC251内に存在する様々な機能的ユニットによって共有されてもよく、または、それらの2以上に分散されてもよい。メモリ253は、揮発性メモリおよび/または不揮発性メモリであり得る。この実施形態では、ASIC251は電源260(例えば、コイン電池)と接続されている。AFE252は、インビボ検体センサ104とのインターフェースを行い、インビボ検体センサ104から測定データを受信し、データ信号を整えて、アナログ形式のデータ信号をプロセッサ256に出力する。プロセッサ256はアナログ-デジタル変換器(ADC)を用いて、このデータをデジタル形式(図示せず)に変換してからデータを処理して、最終結果の検体の個別の値および傾向値等にする。
【0047】
このデータは通信回路258に供給され、アンテナ261を用いて読取器装置120(図示せず)に送信され、読取器装置120で更なる処理が行われ得る。通信回路258は、本明細書に記載されるNFC、「Bluetooth」、およびWi-Fi通信プロトコル、または、読取器装置120との選択された通信方法に応じた他の任意の所望の通信プロトコルのいずれかに準拠して動作し得る。例えば、通信回路258は、
図2Aに関して説明したNFC通信回路207または「Bluetooth」通信回路219のものと類似の機能的な個別の構成要素を含み得る。
【0048】
図2Cは、
図2Bと類似しているが、2つの個別の半導体チップ262および263を含み、これらは一体にパッケージされてもよく、別々にパッケージされてもよい。ここで、AFE252はASIC262上にある。プロセッサ256は、チップ263上で電源管理回路254および通信回路258と統合されている。例示的な一実施形態では、AFE252は1つのチップ上で電源管理回路254およびプロセッサ256と組み合わされており、通信回路258は別のチップ上にある。別の例示的な実施形態では、AFE252および通信回路258が共に1つのチップ上にあり、プロセッサ256および電源管理回路254は別のチップ上にある。記載された別々の機能を各チップが司る、またはフェイルセーフな冗長性のために1以上の機能を共有する3つ以上のチップを含む、他のチップの組み合わせも可能である。
【0049】
データ処理の大半または全てをセンサ制御装置102に組み込むことにより、読取器装置120はほとんどまたは完全にユーザに対する表示およびインターフェース装置として動作可能になる。高感度グルコース計算および関連処理は、市販のスマートフォン等の制御されていないデータ処理装置ではなく、センサ制御装置102上で行うことができるので、このことはシステム100の規制当局の承認の管理において長所を提供し得る。スマートフォン、または他の類似の市販の装置を、センサ制御装置102とのインターフェースに適した読取器装置120に変換することは、ハードウェアの追加や改造を行うことなく、スマートフォンに従来の方法でソフトウェアアプリケーション(または“アプリ”)をインストールすることによって達成できる。ソフトウェアアプリケーションがセンサ制御装置102からの最終結果データ(グルコースデータ、傾向データ等)受け付けて表示するために必要とするのは、このスマートフォンの適切な通信回路(例えば、207、219、212)とのインターフェースだけである。
【0050】
また、アルゴリズムによるデータ処理をセンサ制御装置102に組み込むことと、連続無線送信プロトコルを使用することとにより、センサ制御装置102が、サードパーティ即ち他の製造業者によって提供される製品(例えば、グルコースデータ処理機能および/またはアルゴリズムが内蔵されていない他のタイプの医療システム)と容易にインターフェースできるようになるという長所を提供できる。サードパーティのシステムの例としては、連続グルコースモニタリングシステム、家庭用の健康モニタリングシステム、病院のバイタルサインモニタ、および閉ループシステム(例えば、人工膵臓)やインスリンポンプ等が挙げられる。
【0051】
しかし、本明細書に記載されるデータ処理機能は、センサ制御装置102内(上述のように)、読取器装置120内、コンピュータシステム170内、またはそれらの任意の組み合わせにおいて行われ得る。これは、ユーザの検体値またはグルコース値の決定、時間の関数としてのモニタリングされた検体レベルの変化または変動の決定、経時的なグルコースの傾向の決定、グルコースの変化率の決定、低血糖もしくは高血糖、または切迫した低血糖もしくは高血糖等のアラーム条件の発生の決定、および本明細書に(または米国特許出願公開第2011/0213225号明細書のデータ処理モジュール160に関して)記載されている他の任意のデータ処理機能を含み得る。
光エネルギーまたは磁気エネルギー等の外部刺激を用いた電力状態の変更の例示的な実施形態
先に述べたように、製造プロセスの完了後の、例えば出荷待ちの間、“棚に残っている”間、または別様で顧客または被験者による最初の使用を待つ間等、システム100が用いられない長い期間が生じる場合がある。この期間に、センサ制御装置102は、内蔵電源260の寿命を節約するために、最小限の電力を用い得る。センサ制御装置102は低電力状態であり得るか、または、電源260がセンサ電子装置250の残りの部分から電気的に絶縁されている場合には、完全に非作動にされ得る。製造後の開始、即ち作動が無線信号を用いて行われる実施形態は、本明細書に組み込まれる米国特許仮出願シリアル番号第61/817,839号明細書に記載されている。以下の実施形態は、上記の無線に基づく実施形態と自由に置き換えることができる。
【0052】
図3は、作動回路301を有するセンサ電子装置250の例示的な実施形態を示す模式的なブロック図である。ここで、図示されている作動回路301は、センサ電子装置250の電源260と幾つかの機能的構成要素との間に配設されている。具体的には、これらの機能的構成要素は、
図2B~
図2Cに関して(ASIC251内にある)1つのチップの実施形態または(チップ263内にある)2つのチップの実施形態の構成要素として説明した電源管理回路254およびプロセッサ256として示されている。従って、
図3(および後述する
図7)に関して説明する実施形態は、1つのチップ、2つのチップ、またはそれ以上のチップを有する装置に適用可能である。
【0053】
この実施形態では、作動回路301は、P型MOSFET(PMOS)302、N型MOSFET(NMOS)304、抵抗器306、および、この例では光学的に作動可能なスイッチ308である光作動センサ308(本明細書では“光学センサ308”とも称する)を含む。電源260の正端子は、抵抗器306の第1の端子およびPMOS302のソースノードと接続される。PMOS302のゲートノードは、抵抗器306の反対側の端子、NMOS304のドレインノード、および光学的に作動可能なスイッチ308の第1の端子と接続される。PMOS302のドレインノードは電源管理回路254と接続され、NMOS304のゲートノードはプロセッサ256と接続される。電源260の負端子、光学的に作動可能なスイッチ308の反対側の端子、およびNMOS304のソースノードは、それぞれ接地、即ちリファレンスノード312と接続される。
【0054】
光学的に作動可能なスイッチ308は光学センサの1つのタイプである。光学的に作動可能なスイッチ308は、光学バンド(光学的な光)の放射が入射すると開回路(即ち、電流遮断状態)から閉回路(即ち、電流通過状態)へと移行する任意の装置であり得る。光学センサのより大きな分野は、光学的な光の存在に対して物理的、熱的、または電気的応答を生じる任意の装置を含み得る。この応答は、ノイズや他の無視できる応答から区別するのに十分な大きさのものであるべきであることを、当業者は容易に認識するであろう。スイッチを作動させるために、紫外線、赤外線等を含む他の無線周波数バンドが用いられてもよい。光学的に作動可能なスイッチ308は、例えば、光ダイオードまたは光トランジスタであり得る。ここでは、光学的に作動可能なスイッチ308は、十分な光の放射310を受光すると開状態(例えば、電流が流れられない低エネルギーの保管状態)から閉状態(即ち、電流が流れられる作動状態)へと遷移する光ダイオードとして図示されている。多くの実施形態では、スイッチ308を作動させるのに必要な光の放射310の量は、ユーザが適切なタイミングで容易に作動できることを確実にするために、比較的低い量である。
【0055】
光ダイオード308は、十分な量の放射310を受光したら、電流が抵抗器306を通って流れるのを可能にし、それにより、PMOSパストランジスタ302のゲートバイアスを降下させ、それにより、電流が電源260から電源管理回路254へと流れるのを可能にする。電源管理回路254はプロセッサ256と通信し、開始、即ちブートアップのためにプロセッサ256に1以上のコマンドまたは信号を供給し、この時点で、プロセッサ256は、センサ電子装置250の残りの部分をより高い電力状態にするセンサ制御装置102の作動ルーチンを行うことができる。
【0056】
光学、磁気、および本明細書の他の実施形態で実装されるこの技術は、従来の作動手法に対して大きな長所を提供するものである。そのような手法の1つは米国特許出願公開第2012/0078071号明細書(Bohmら)に記載されており、この手法では、センサ装置が保管モードまたは他の非作動モードから出る準備ができている旨の割り込み信号(もしくは他のインジケータ)をモニタリングするために、プロセッサは、低電力モードのアウェイク状態に留まることにより、または繰り返し(例えば、毎分)アウェイク状態にされることにより、作動し続けなければならない。プロセッサが(たとえモードが低電力モードであっても、または短い間隔だけであっても)作動モードにあるこれらの例では、プロセッサは機能しており、より高いレートで電源から電流を引きこんでおり、それにより、電源に蓄えられている電荷を減少させ、センサ装置の保管寿命を短くする。本明細書に記載される実施形態を用いれば、上記および他の欠点が克服される。
【0057】
特定の実施形態では、マイクロプロセッサ256は、電流がトランジスタ304を流れるのを可能にするために、NMOSパストランジスタ304のゲートにゲートバイアス電圧を印加(して保持)でき、それによりPMOS302を“オン”状態にラッチできる。換言すれば、プロセッサ256は、装置102の電力状態を変更した後は、光学センサをバイパスできる。従って、光学センサ(例えば、光ダイオード308)に入射する光が遮られても、センサ電子装置250は作動し続ける。
【0058】
多くの実施形態では、保管中の電源260の寿命にスイッチ308が大きく影響しないように、光学的に作動可能なスイッチ308は比較的低い暗電流(例えば、10ナノアンペア(nA)台以下)で動作する。
【0059】
この実施形態はMOSFETデバイスに関して説明されたが、ここで説明したトランジスタは任意の数の他のタイプのトランジスタに置き換えても同じ実際的結果を達成できることを、当業者は容易に認識するであろう。また、本明細書に含まれる開示および
図3に示されている模式図から、当業者は、同じまたは類似の結果を達成するために光学センサ308を利用できる幾つかの他の回路設計を容易に認識するであろう。別個の機能的構成要素としての電源管理回路254の存在は任意であり、この機能はプロセッサ256に埋め込まれてもよい。
【0060】
更に、作動回路301の構成要素は、“オンチップ”、“オフチップ”、またはそれらの任意の組み合わせで実装され得る。(オンチップとは、個々の構成要素を他の全ての構成要素と共に1つの半導体ダイ上に統合することを指す。)ここで、作動回路301の各構成要素は、オフチップ配置される光学的に作動可能なスイッチ308を除き、オンチップ配置される。光学的に作動可能なスイッチ308をオフチップ配置することにより、例えば、光学的に作動可能なスイッチ308が、所望の作動タイミングで十分な光を受光しやすい位置に配置できるようになり、センサ電子装置250のパッケージ設計全体に柔軟性を持たせることができる。
【0061】
光学センサ308は、光学センサ308がセンサ電子装置250の作動を可能にするためにセンサ電子装置250と通信可能に接続された状態が維持される限り、センサ制御装置102のハウジング内、センサ制御装置102の外面、またはアプリケータと接続された位置に配置され得る(後で、センサ制御装置102の配置の際にその位置から外される)。
【0062】
図4は、光学的に作動可能なシステム100の実施形態を用いるための例示的な方法400を示すフローチャートである。
図4は、
図5A~
図5Gの一連の図に関して説明される。
図5Aには、例示的な適用部位502および504を有するユーザ500が示されている。幾つかの実施形態では、他の適用部位が用いられてもよく、任意に、部位準備動作が行われてもよい。402(
図4)では、まず、ユーザ500は、
図5Bに示されているように、センサ容器506のパッケージを開ける。容器506は、この実施形態では、内部にセンサと挿入用入力要素と(または、幾つかの実施形態では、センサを制御するための電子装置アセンブリ)を保持しているケーシング510を含み得る。容器506のパッケージを開けることは、容器の内容物に対して滅菌シールを提供する容器カバー508を除去することを含み得る。
【0063】
404(
図4)では、ユーザ500がアプリケータ512のパッケージを開ける。これは、
図5C~
図5Dに示されるように、アプリケータアセンブリ516の内部に対して滅菌シールを提供するアプリケータカバー514(例えば、エンドキャップ)を除去することを含み得る。この実施形態では、センサ制御装置102の残りの部分(例えば、センサ電子装置250および電源216)、並びにセンサ制御装置102のハウジング全体は、アプリケーションアセンブリ516内に存在する(これらの図では見えない)。容器506がセンサ電子装置250を1つのアセンブリ内に保持する実施形態では、アプリケータアセンブリ516は、センサおよび挿入用入力要素を別のアセンブリとして保持し得る。2つのアセンブリを分ける理由の1つは、それぞれが別々の滅菌プロセスを受けられるようにするためである。
【0064】
幾つかの実施形態では、パッケージングおよび出荷を簡単にするために、容器506およびアプリケータ512は、最初は一体に接続されたパッケージにされる。従って、これらの実施形態では、最初のパッケージを開けるステップで、ケーシング510からカバー508を除去して、着脱可能なエンドキャップ514をアプリケータアセンブリ516から分離する前に、容器506とアプリケータ512とを互いから分離する。
【0065】
405(
図4)では、ユーザ500は、センサ制御装置102内に含まれる光学センサ308(例えば、光学的に作動可能なスイッチ)を開始させるために、センサ制御装置102を周囲の光、電球、LED、または他の光源に露出させる。この時点で、センサ電子装置250は作動され、センサ制御装置102は読取器装置120との通信を開始できる。ステップ405は、ユーザが感光性の光学センサ308を物理的に光源に向ける積極的なステップであってもよい。また、ステップ405は、ステップ404でアプリケータカバーを除去したことの直接的な結果であってもよく、この場合には、
図12Cに関して説明した構成のように、周囲の光が、
図5Dの破線の矢印で示されるようにアプリケータアセンブリ516内に直ちに伝搬して、光学センサ308に当たることができる。別の実施形態では、光学センサ308は、扉、パッチ、ステッカー、または他の不透明の構造によって覆われていてもよく、その扉、パッチ、ステッカー、または他の不透明の構造を除去することによって、必要な量の光に露出される。
【0066】
406(
図4)では、センサ電子装置250の初期化または作動の確認が行われる。これは、センサ制御装置102または読取器装置120によって自動的に行われてもよい。例えば、一実施形態では、センサ電子装置250が良好に初期化されると、センサ制御装置102から読取器装置120への通信の送信が可能になり、この時点で、読取器装置120は、センサ電子装置250が良好に作動された旨のユーザに対する表示またはメッセージを生成できる。別の実施形態では、センサ制御装置102によって、良好な作動をユーザに示す視覚的、聴覚的、振動、または触覚的出力が生成される。
【0067】
次に、組み立て動作407(
図4)において、センサアセンブリとセンサ電子装置アセンブリとを一体に結合または接続してセンサ制御装置102および挿入用の針または入力要素を構成するために、アプリケータ512が容器506に挿入される。
図5Eに示されるように、対応する位置合わせインジケータ518および520どうしが位置合わせされたら、アプリケータアセンブリ516を容器506にしっかりと押し込むことにより、センサおよび入力要素が容器506から取り出され、アプリケータアセンブリ516のガイドスリーブのロックが解除されて、ユーザによる組み立て動作407の最初の部分が実行される。次に、
図5Fに示されるように、アプリケータアセンブリ516が、センサおよび入力要素と共に、容器506から取り出される。
【0068】
次に、ユーザが適用部位を選択したら、センサ制御装置適用動作408(
図4)が行われる。
図5Gに示されるように、ユーザ500は、アプリケータアセンブリ516を挿入部位504の皮膚上に置き、制御されていない力を加えてセンサ制御装置102を設置する。アプリケータ516は手動で押されて、センサの遠位端部をユーザの皮膚を通して挿入すると共に、センサ制御装置102を皮膚表面に接着する。鋭利部材は、廃棄のために自動的にアプリケータアセンブリ516内に格納され、この時点で、
図5Hに示されるように、アプリケータアセンブリ516を手動で部位504から除去することができる。
【0069】
幾つかの実施形態では、ユーザ500は、アプリケータアセンブリ516に制御されていない力を加えることによって適用動作408を行う。この制御されていない力は、アプリケータアセンブリ516の縦軸に沿って1回押し続ける動きとして加えられ、この動きが開始されると、アプリケータアセンブリ516は適用動作408を行い、完了するまでアプリケータアセンブリ516の動きは止まらない。アプリケータに力に加えてトリガさせたことに応答して、上に挙げた3つの動作の全てが自動的に生じるように、アプリケータアセンブリ516はユーザ500に対して動作/可聴の合図を中継するよう構成され得る。
【0070】
センサ制御装置102の接着剤は、アプリケータアセンブリ516の下への移動が完了するまでユーザと接触しないのが長所である。従って、アプリケータアセンブリ516が皮膚上に配置された後でも、適用動作408が実際に行われるまでは、アプリケータアセンブリ516を何度でも異なる位置に移動させることができ、それによって装置や他のシステム構成要素を損傷することはない。適用後の段階410においては、センサ制御装置102が身体に装着されている間はユーザの検体レベルをモニタリングするために使用され、その後、適切に廃棄される。そのような段階の例が
図5Iに示されており、ここでは、センサ制御装置102のセンサによって検出された検体レベルが、読取器装置120によって無線通信リンク140を介して取り出され得る。読取器装置のディスプレイ122には、関連情報(例えば、検体レベル傾向データ、グラフ等)が提示される。
【0071】
ステップ405(光照射)および406(初期化)は、上記ではステップ407の前に行われるものとして説明したが、幾つかの実施形態では、ステップ405および406はステップ407の後に行われ、他の実施形態では、ステップ405および406はステップ408の後に行われる。また、ステップ406はステップ405の直後に行われてもよく、または、それらの間に1以上のステップがあってもよい。
【0072】
図4および
図5A~
図5Iに関して説明した方法のステップに関する更なる詳細は、本明細書に組み込まれる米国特許仮出願シリアル番号第61/817,839号明細書に見出すことができる。
【0073】
図5A~
図5Iに示されているアプリケータ512、容器506、および関連づけられた構成要素は、
図6Aおよび
図6Bにより詳細に示されている。更に、他の多くの変形を以下に詳細に説明する。これらの代替の実施形態は、それらの内部の仕組みに関しては動作が異なり得るが、ユーザの動作に関しては、違いは無いものであり得る。
【0074】
図6Aに移ると、アプリケータ512は、着脱可能なキャップ514(カバーの一種)およびアプリケータアセンブリ516を含む。着脱可能なキャップ514は、相補的な形状のねじ山606および606’によってアプリケータアセンブリ516に固定できる。エンドキャップ514はアプリケータアセンブリ516に嵌って、アプリケータの内部のための滅菌のパッケージを作る。従って、アプリケータアセンブリ516の内部の滅菌状態を維持するための更なるパッケージは必要ない。
【0075】
幾つかの実施形態では、着脱可能なエンドキャップ514の端部(図では見えない)は1以上の開口部を含んでもよく、それらは、シール608を構成するためにDuPont(商標)社のTyvek(登録商標)、または他の適切な材料等の滅菌バリア材料によって密閉され得る。そのような開口部を設けることにより、閉じられたシール608を通したアプリケータ512のエチレンオキシド(ETO)滅菌が可能になる。幾つかの実施形態では、着脱可能なキャップ514の開口部はなくてもよく、着脱可能なキャップ514は、キャップ514が嵌められた状態でアプリケータアセンブリ516の内部を滅菌できるように、滅菌処理が透過できる材料であって、滅菌処理後のキャップの内部の滅菌状態を維持する材料でできていてもよい。幾つかの実施形態では、センサ電子装置250内の電子装置および関連づけられた接着剤パッチ105にはETO滅菌が適合し、センサ電子装置250内の電子装置および関連づけられた接着剤パッチ105は、ユーザに対して適用されるまでは、アプリケータアセンブリ516内に解放可能に保持され得る。図示されるように、アプリケータアセンブリ516は、グリップ部616および平行移動シース、即ちガイドスリーブ618が一体に形成されたハウジング614を含む。
【0076】
図6Bを参照すると、容器506は、(例えば、箔等の着脱可能な材料でできた)カバー508およびケーシング510を含む。ケーシング510内には、乾燥剤本体612と、台またはプラットフォーム608とが収容されている。センサアセンブリ610は、スナップ式にまたは別様でセンサアセンブリ支持部613によって保持される。また、センサアセンブリ610は、スナップ式にまたは別様でプラットフォーム608(例えば、フィンガー部を用いて)にも保持され得る。カバー508で密閉された容器510は、(センサアセンブリ610に含まれるセンサに化学的に適合する手法である)ガンマ線または放射(例えば、電子線)滅菌を受けてもよい。アプリケータ512と同様に、容器506もそれ自体の滅菌パッケージであるため、ケーシングの内部の滅菌状態を維持するために、ケーシング510およびカバー508以外の更なるパッケージは必要ない。
【0077】
光学的な作動方法に加えて、他のタイプの作動方法をセンサ制御装置102に用いてもよい。そのような例の1つは磁気作動である。
図7は、磁気的に作動可能に構成されたセンサ電子装置250の例示的な実施形態を示す模式的なブロック図である。ここで、作動回路701は、
図3に示されているものと本質的に同じである(
図3に関して説明したものと同じ長所を有する)が、但し、光学的に作動可能なスイッチ308が、この実施形態では磁気的に作動可能なスイッチである磁気作動センサ702(本明細書では“磁気センサ702”とも称する)と置き換えられている。磁気センサ702は、磁場704の存在に応答して測定可能な出力を生じる任意の装置であってよい。磁気的に作動可能なスイッチ702は、十分な磁場704が加えられると閉状態から開状態へと遷移する任意のスイッチ、または、十分な磁場704が加えられると作動回路701内のパストランジスタをバイアスする電流の流れを生じる任意の装置であってよい。
図7は、磁気的に作動可能なスイッチ702をリードスイッチとして示しているが、ホール効果センサ等の他の静的な装置や、他の動的な装置を用いてもよい。
【0078】
図7の実施形態の動作は、
図3に関して説明したものと本質的に同じであるが、但し、十分な光を加える代わりに、十分な磁場704を加えることによって、磁気的に作動可能なスイッチ702を開状態から閉状態に遷移させ、電流が抵抗器306を通って流れられるようにする。磁場704は、永久磁石または時変磁場を、磁気的に作動可能なスイッチ702に近づけることによって加えられてもよい。例えば、システム100は、永久磁石と共にユーザに提供されてもよく、永久磁石は、ユーザが磁石をスイッチ702に物理的に近づけるまで、作動を防止するのに十分な距離でアクティベータアセンブリ516のパッケージに格納される。或いは、磁石は別のパッケージ等で提供されてもよい。
【0079】
磁気センサ702は、磁気センサ702が電子装置250の作動を許可するために磁気センサ702がセンサ電子装置250と通信可能に接続された状態が維持される限り、センサ制御装置102のハウジング内、センサ制御装置102の外面、またはアプリケータ512と接続された位置に配置され得る。
【0080】
図8は、磁気的に作動可能なシステム100の実施形態を用いるための例示的な方法800を示すフローチャートである。ここで説明するステップの多くは
図4に関して説明したものと同じあるため、幾つかの共通の詳細に関しては説明を繰り返さない。802で、まず、ユーザは容器506のパッケージを開け、804で、アプリケータ512のパッケージを開ける。802で容器506のパッケージを開けることは、容器の内容物に対して滅菌シールを提供するカバー510を除去することを含み得る。804でアプリケータ512のパッケージを開けることは、アプリケータアセンブリ516の内部に対して滅菌シールを提供するエンドキャップ514を除去することを含み得る。
【0081】
805で、ユーザは、センサ制御装置102内に含まれる磁気センサ702を開始させるために、例えば、センサ制御装置102および/または磁石を互いに近づけることにより、センサ制御装置102を磁場に露出させる。この時点で、センサ電子装置110は作動され、センサ制御装置102は読取器装置120との通信を開始できる。なお、ステップ805は、例えば、ユーザが感磁性のアプリケータ512を磁場源に物理的に近づける(またはその逆を行う)積極的なステップであってもよい、または、ステップ805は、アプリケータカバー514を除去したことの直接的な結果であってもよく、例えば、カバー514内またはカバー514上の磁石によって供給される磁場を除去することによって、電子装置250が作動されてもよいことに留意のこと。
【0082】
806では、センサ電子装置250の初期化または作動の確認が行われる。これは、センサ制御装置102と読取器装置120との通信によって自動的に行われてもよい。例えば、一実施形態では、センサ電子装置250が良好に初期化されると、センサ制御装置102から読取器装置120への通信の送信が可能になり、この時点で、読取器装置120は、センサ電子装置250が良好に作動された旨のユーザに対する表示またはメッセージを生成できる。別の実施形態では、センサ制御装置102によって、良好な作動をユーザに示す視覚的、聴覚的、振動、または触覚的出力が生成される。
【0083】
この使用方法は、
図4に関して説明したのと同様にステップ807、808、および810に進み得る。ステップ805(露出)および806(初期化)は、上記ではステップ807の前に行われるものとして説明したが、幾つかの実施形態では、ステップ805および806はステップ807の後に行われ、他の実施形態では、ステップ805および806はステップ808の後に行われる。また、ステップ806はステップ805の直後に行われてもよく、または、それらの間に1以上のステップがあってもよい。
【0084】
初期化方法の他の例としては、近距離無線通信(NFC)、セルラーエネルギー、「Bluetooth」エネルギー、Wi-Fiエネルギー等の使用が挙げられる。これらのタイプのRFエネルギーは、システム100と共に販売される専用の装置によって、または、ユーザによってシステム100に統合され得る市販の装置(例えばスマートフォンやタブレット等)によって加えられ得る。
【0085】
一実施形態では、センサ電子装置250を作動させるために用いられ得る温度感知装置によって、センサ制御装置102をユーザの皮膚または身体に近接させて配置したことが感知される。温度感知装置は、比較的高い周囲温度になり得るものからユーザの体温を区別できる微分装置であってもよい。温度感知装置が周囲温度と(一般的な人の体温であることが期待される)ユーザの体温との間の十分な勾配を検出したら、温度感知装置が有効にされ、例えば電源への回路を閉じることによって、電子装置250の動作を作動させる。
【0086】
或いは、装置102上に機械的スイッチが存在してもよく、該スイッチを作動させることにより、装置102内の電子装置250が開始される。更に別の代替の実施形態では、短絡バーまたは短絡経路を用いてもよい。例えば、センサアセンブリ610(
図6B)は、全体が露出した、または少なくとも2つの露出面を有する導電路を有してもよい。センサ制御装置102は、露出した複数のリード線を有してもよく、リード線の間の間隙が、電源または電池から電子装置250の残りの部分への電力の供給を防止する開回路となる。センサアセンブリ610をセンサ制御装置102の残りの部分と接触させると、装置102の露出したリード線が、センサアセンブリ610上またはセンサアセンブリ610内の導電路の露出した部分と接触する。そして、センサアセンブリ610の導電路によって、装置102の露出したリード線が短絡され、それによって電子装置250が作動される。
【0087】
以下の
図9A~
図12Cに関して説明するセンサ制御装置102の例示的な実施形態の構成は、2012年12月11日に出願された米国特許出願シリアル番号第13/710,460号明細書および2011年12月11日に出願された米国特許仮出願シリアル番号第61/569,287号明細書に記載されているものと類似しており、上記文献を参照してあらゆる目的で本明細書に組み込む。本明細書では、光学的な作動を容易にする特徴を有するセンサ制御装置102について説明する。
【0088】
図9A~
図9Dは、例示的なセンサ制御装置サブアセンブリの上から見た構造図(
図9A)および下から見た構造図(
図9B~
図9D)を提供する。ソケット902またはマウントが、プロセッサ904(例えば、通信能力を含むASIC)、サーミスタ/熱電対906、電池マウント908、光学センサ308等を含む他の関連づけられた構成要素を伴うプリント回路基板900のビアホールを通して嵌挿される。回路基板900にこれらの構成要素が取り付けられたら、
図9C~
図9Dに示されるように、ソケット902が回路基板900に(例えば、ヒートステークを用いて)固定される。
図9Eに示されるように、電池260が適切な位置にセットされると、回路基板900をセンサ制御装置102に組み込む準備ができる。
【0089】
回路基板900は、オーバーモールドプロセスまたは他の密閉方法を受ける準備ができている。
図10A~
図10Dに示されるように、回路基板900はまず、2つの部品からなるモールド1002、1004内にセットされる。
図10Bに示されるように、モールドスライド1006が挿入され、モールド1002、1004が閉じられる。
図10Cに示されるように、モールド1002、1004に熱可塑性材料が注入され、回路基板900を封入する。
図10Dに示されるように、モールド1002、1004が開かれ、最終品に近い部品が取り出される。
【0090】
或いは、
図11Aの組立図、
図11Bの組み立てられた図、および
図11Cの断面斜視図に示されるように、センサ制御装置102の電子装置アセンブリの封入体は、スナップ式に一体に嵌められる(または溶接/接着される)要素を含んでもよい。上部シェル1102および取付ベース1104を含む封入体を用いて、回路基板900を密閉可能に封入して保護することができる。光が光学センサ308(図示せず)に入射して光学センサ308を作動できるよう光を通すために、上部シェル1102(または光学センサ308に対向するハウジングの部分)は透明または半透明であるのが好ましい。
【0091】
スナップ式の場合には、様々な干渉要素またはスナップ式要素(例えば、環状リム1106)は、封入体の全体または周辺部の周囲に設けられてもよく、または、個別のスナップ式コネクタ(図示せず)として設けられてもよい。特に、このような手法では、液体の侵入を回避するために、O-リング密閉要素を追加することが有益であり得る。或いは、またはそれに加えて、特に連続した環状のスナップ式の要素1106に関しては、スナップ式の接合部にセットされた接着剤を用いて、良好な密閉を確実にしてもよい。
図11Cに示されるように、組み立て時に押し出され得る接着剤1110が、センサ制御装置102の動作または組み立ての邪魔になり得る領域に押し込まれないことを確実にするために、トラフ1108または他の要素が設けられてもよい。幾つかの実施形態では、接着剤1110のビードが図示される位置にある状態で、上部シェル1102および取付ベース1104が嵌め合わされた際に、トラフ1108は押し出される接着剤1110を捕捉するための空間を提供するたけでなく、接合部を密閉するために接着剤1110のより厚い層が形成されるための更なる表面領域も提供する。上部シェル1102全体が光を通過させるよう構成されてもよいが、別の実施形態では、光学センサ308(図示せず)の直近にある部分1116のみが透明または半透明(例えば、透光性)である。
【0092】
どのような構造であっても、センサ制御装置102の電子装置アセンブリの最終的なアセンブリは、接着剤パッチの設置を含む。
図12A~
図12Cに例示的な手法が示されている。まず、両面接着剤パッチ1204の内側のライナー1202が除去される。この露出した接着剤は、(温度センサ906が相補的な形状のポケット内に収容されるよう折り畳まれた状態の)センサ制御装置本体1206を覆うようにセットされ、第1の窓1208が温度感知のために位置合わせされ、第2の窓1210がセンサアセンブリを受容するよう位置合わせされ、第3の窓1218が光学センサ308(図示せず)の直近のシェル1102の部分1116と位置合わせされた状態で、貼り付けられる。センサ制御装置102のユーザ側の表面は、上述の窓を除き、接着剤で略覆われる。従って、外側の剥離ライナーを除去すると、アプリケータアセンブリ内へ配置の準備ができ、或いは、外側のライナーが元の位置にあるまたは無い状態で(容器内にライナーを剥離する要素が設けられているか否かに応じて異なる)、容器内への配置の準備ができる。
【0093】
アプリケータが滅菌パッケージされている状態では、(
図12Cに示されるように)窓1218が配置されているセンサ制御装置102の表面がエンドキャップ側に向く。従って、エンドキャップを除去すると、直ちに窓1218が周囲の光に対して露出され、ユーザによる更なる努力または工程をほとんどまたは全く必要とせずに、センサ制御装置102が初期化または作動される。
無線送信を用いて電力状態を変更するための例示的な実施形態
ここで、センサ制御装置102の作動、センサ制御装置102との通信の確立、および/または(例えば、前の通信セッションが修了した後の)センサ制御装置102との通信の再確立に用いられ得る更なる実施形態を述べる。これらの実施形態は、読取器装置120からセンサ制御装置102に1以上のRF送信を送信することを含む。幾つかの実施形態では、RF送信は、「Bluetooth」プロトコルに準拠して約2400~2480メガヘルツ(MHz)(または2.4~2.48ギガヘルツ(GHz))のRFバンドで送信され、他の実施形態では、通信はNFCプロトコルや他のプロトコルに準拠して行われ、他の周波数帯域が用いられてもよい。
【0094】
既に述べたように、センサ制御装置102は、電源オフ(または電力オフ、または非作動)状態でユーザに提供され、この状態では、センサ制御装置102の回路が消費する電源210からの電流は、あってもごく僅かである。センサ制御装置102は、状態を、この電源オフ(または保管)状態から、消費電力が比較的高い第2の状態へと変更するようにして作動され得る。
【0095】
保管状態にある場合には、第2の状態は通常動作状態であってもよい。完全に非作動の電源オフ状態にある場合には、第2の状態は、読取器装置120からの無線信号または送信の低電力モニタリングを行うために用いられる低電力状態として特徴づけられ得る。これらの送信は、センサ制御装置102との通信セッションを確立するための読取器装置120の可用性をアドバタイズするものであってもよい。この送信は、センサ制御装置102を作動させるために用いることができる。この低電力状態は、センサ制御装置102が読取器装置120からの無線送信の受信を待つ間、センサ制御装置102が比較的長時間動作できるようにするものであってもよい。
【0096】
センサ制御装置102が、読取器装置120からの、ユーザがセンサ制御装置102の通常の使用(例えば、感知された検体データの収集および送信)を開始する準備ができたことを示す1以上の無線送信を受信したら、センサ制御装置102は、任意に、第1の(例えば、完全に非作動)状態および第2の状態より電力消費が高い第3の状態へと移行してもよい。この第3の状態では、センサ制御装置102は、読取器装置120との通信リンクを完全に確立でき、ユーザの体液中の検体レベルを感知でき、感知されたデータに対する或る程度の処理を行うことができ、且つ/または感知されたデータを読取器装置120に送信することができる。この第3の状態における連続動作は、ほとんどの実施形態では、所定の期間(例えば、14日間)続く。
【0097】
当然ながら、本明細書に記載されるどの実施形態においても、センサ制御装置102の通常動作が開始された後であっても、エネルギーを節約するために、センサ制御装置102が一時的により低い電力状態に入ることも可能である。
【0098】
センサ制御装置102は、無線RF送信を用いて作動され得る(例えば、読取器装置120と通信する前の任意のタイミングで、電源オフ状態または保管状態からより高い電力状態へと移行され得る)。例えば、センサ制御装置102は、パッケージから取り出される前、パッケージから取り出された際、またはパッケージから取り出された後であって、ユーザの身体に適用される前、ユーザの身体に適用された際、またはユーザの身体に適用された後に、無線で作動されてもよい。
【0099】
図13は、「Bluetooth」プロトコルを用いてセンサ制御装置102と読取器装置120との間の通信を確立する方法1300の複数の例示的な実施形態の説明に用いられるブロック図である。これらの実施形態は、センサ制御装置102を作動されるため、または別様でセンサ制御装置102をより高い電力状態にするためにも用いられ得る。これらの実施形態は、更に、センサ制御装置102と、センサ制御装置102が前に通信していたのと同じまたは異なる読取器装置120との通信を再確立するために用いられ得る。
【0100】
1302では、センサ制御装置102は、センサ104が組織内に延出して体液(例えば、ISF、真皮中の液体等)と接触する状態で、接着剤パッチがユーザの皮膚に十分に接着されるように、ユーザの身体に適用される。この時点では、センサ制御装置102は、読取器装置120からの1以上の無線送信をモニタリングすることが望ましい。センサ制御装置102は、電力オフ状態、または通常動作状態よりも消費電力が低い低電力状態(例えばスリープ状態等)であり得る。
【0101】
センサ制御装置102が電源オフ状態にある場合には、その状態は、読取器装置120からの無線送信をモニタリングできるように、少なくとも最小限の量の電流を(適切な「Bluetooth」プロトコルに準拠して動作する)通信回路258に供給できるべきである。従って、通信回路258は、通常動作状態よりも消費電力が低い低電力機能または低電力状態を有し得るものであり、この低電力状態は、読取器装置120からの最初の無線送信をモニタリングするために用いられ得る。
【0102】
電源オフ状態において、(例えば、電源が電気的に接続解除されたことにより)無線送信をモニタリングするための十分な電流を供給できない場合には、センサ制御装置102は、電源オフ状態から、モニタリングが可能な低電力状態へと移行される。幾つかの実施形態では、電力を節約するために、センサ制御装置102の電源オフ状態または低電力状態ではメッセージの送信は許可されない。
【0103】
1304では、読取器装置120が(まだ作動されていない場合には)作動され、ユーザは、例えば、読取器装置120のユーザインターフェース上の接続開始の選択肢を選択することによって、センサ制御装置102との接続を開始する。1306では、ユーザは、読取器装置120がまだセンサ制御装置102の近くにない場合に、読取器装置120をセンサ制御装置102に近づける(例えば、6フィート未満、3フィート未満、2フィート未満、1フィート未満、または6インチ未満等)。
【0104】
これらの実施形態では、ステップ1304での接続開始により、読取器装置120は「Bluetooth」プロトコルに従った無線送信の送信を開始する。これらの実施形態の一部では、無線送信はBTLEプロトコルのアドバタイジングレジメンに従って送信され、読取器装置120が許容可能な最大出力レベルで送信される。アドバタイジングレジメンはBTLEのリンクレイヤモードであり、一般的には、読取器装置120がアドバタイジング状態にある間に、アドバタイジング事象を行うことによって行われ、これには、BTLEパケット構造(例えば、プロトコルデータユニット(PDU)ヘッダ、PDUペイロード、CRC)のリンクレイヤの1以上(例えば、1つ、2つ、または3つ)のアドバタイジングチャネルで1以上のアドバタイジング要求パケットを送信することが含まれ得る。各パケットは、各アドバタイジングチャネル上で特定の時間間隔で送信され得る。
【0105】
各アドバタイジングパケットは、センサ制御装置102によって通信セッションを開始する要求として解釈され得る所定のビットストリング、即ちビットコードであるアドバタイジング要求を含み得る。アドバタイジング要求の一例は、接続可能な有向アドバタイジング事象(ADV_DIRECT_IND)に対応するパケットデータ単位(PDU)タイプである。ADV_DIRECT_INDは、本明細書に組み込む「Bluetooth」仕様書バージョン4.0に、PDUヘッダの4つの最上位/最下位ビット(PDUタイプ)に現れる0001コードとして記載されている。特定の実施形態では、接続可能な有向アドバタイジングパケットの同じチャネル上で連続して送信される要求の時間間隔は3.75ミリ秒(ms)以下であり、これらの繰り返される送信は、所定の時間の長さ(例えば、約1.28秒間)にわたって続けられ得る。BTLEによって提供される2つのアドバタイジングチャネル上で送信される場合には、いずれのチャネル上で連続して送信される要求の間隔も約1.375ms以下であり、3つチャネル上で送信される場合には、間隔は約1.25ms以下である。
【0106】
接続可能な無向事象に対応する0000コードであり得るADV_IND、接続不可能な無向事象に対応する0010コードであり得るADV_NONCONN_IND、およびスキャン可能な無向事象に対応する0110コードであり得るADV_SCAN_IND等の他のPDUも同様に用いられ得る。
【0107】
センサ制御装置102は、1307でアドバタイジングメッセージまたはシーケンスを検出し、1308で送信を復調して、作動要求が存在するか否かを決定する。作動要求が存在するか否かの決定は、プロセッサ256または通信回路258(例えば、BTLE送受信器)によって行われ得る。作動要求が存在する場合には、センサ制御装置102は、1310で作動確認メッセージを送信し得る。作動確認メッセージは、読取器装置120によって、センサ制御装置102が接続を確立する準備ができていることの確認として認識される所定のビットコードであり得る。例えば、作動確認メッセージは、CONNECT_REQ(0101)またはSCAN_REQ(0011)PDUであってもよい。幾つかの実施形態では、センサ制御装置102は、作動確認メッセージを送信する前に、より高い電力の動作モード(例えば、メッセージを送信するための電力の使用を許可する通常動作状態等)に変更され得る。読取器装置120は、作動確認メッセージを受信したら、BTLEプロトコルに従ってアドバタイジング状態から接続状態へと移行し得る。
【0108】
作動要求が存在しない場合には、1311で、センサ制御装置102は、BTLEプロトコルのアドバタイジング機能に従って送信される次の送信のモニタリングを継続してもよい。幾つかの実施形態では、センサ制御装置102は、次の送信をモニタリングする前に、所定の期間(例えば、2~3秒間)待機してもよい。
【0109】
ユーザは、1312で接続が確立中または確立されたことを読取器装置120が示すまで、読取器装置120をセンサ制御装置102に近接した位置に保持し続ける。この表示は、読取器装置120のディスプレイ上での視覚的表示、可聴表示(例えば、ブザー、トーン、ジングル等)、触覚的表示(例えば、振動または一連の振動)、またはそれらの任意の組み合わせであってもよい。読取器装置120は、センサ制御装置102から作動確認メッセージを受信した際に、上記の表示を提供してもよい。次に、読取器装置120およびセンサ制御装置102は、通信リンクまたはペアリングの正式な確立を開始でき、ユーザの身体から感知された検体データのやりとりを開始できる。
【0110】
図14は、センサ制御装置102と読取器装置120との間の通信リンクを確立する方法1400の更なる複数の例示的な実施形態を説明するために用いられるブロック図である。これらの実施形態は、
図13に関して説明した実施形態と類似しており、従って、共通の態様の多くに関しては説明を繰り返さず、相違する態様に注目する。
【0111】
1402で、センサ制御装置102は低電力受信モードまたは状態にあるか、または移行する。本明細書で既に述べたように、センサ制御装置102はこの状態で出荷されてもよく、または、完全な電源オフ状態で出荷され、ユーザによって(例えば、スイッチまたは他のアクチュエータを用いて手動で)、または光センサもしくは磁気センサ等を用いて自動的に、この状態に移行されてもよい。
【0112】
1403で、センサ制御装置102は「Bluetooth」送信をモニタリングし、送信が受信された場合には、1404で、送信がアドバタイジングメッセージまたはシーケンスであるか否かを決定する。この決定は、無線送信を復調せずに達成され得るものであり、プロセッサ256または通信回路258によって行われ得る。例えば、2つ以上の送信のシーケンスが適切な時間間隔(例えば、3.75ms以下)および適切な周波数(例えば、約2.4GHz)で受信された場合には、プロセッサ256は、それらの送信がBTLEプロトコルに従ったダイレクトアドバタイジング(direct advertising)レジメンの一部であると見なしてもよい。1以上の送信がアドバタイジングメッセージまたはシーケンスではない場合には、センサ制御装置102は、任意に1405でまず所定の期間待機してから、次の無線送信のモニタリングに戻る。
【0113】
1または複数の送信がアドバタイジングメッセージまたはシーケンスである場合には、1406で、プロセッサ256は(そのプログラミングによって)センサ制御装置102を、1以上の無線送信の復調および応答の送信を可能にするより高い電力状態に移行させる。この状態は、例えば、センサ制御装置102の通常動作状態であってもよい。1408で、次の、または後続の無線送信がセンサ制御装置102によって(例えば、BTLE送受信器258によって)復調される。1410で、センサ制御装置102は、復調された送信が作動要求を含むか否かを決定する。否定された場合には、センサ制御装置102は、(1405で任意の所定の時間にわたって待機する前または後に)1402で低電力状態に戻ってもよく、その状態で、新たな無線送信のモニタリングを開始し得る。
【0114】
復調された送信が作動要求を含む場合には、センサ制御装置102は、1412で作動確認メッセージを送信する。次に、1414で、センサ制御装置102および読取器装置120はペアリングを完了させることができ、且つ/または別様で通常動作を続けることができる。
【0115】
別の例示的な実施形態では、読取器装置120は、接続可能な有向アドバタイジング事象の一部としてのアドバタイジング要求を、読取器装置120(スマートフォンであってもよい)が許容可能な最大出力レベルで送信する。センサ制御装置102は、これらの要求の1以上を受信して、状態を低電力状態(例えば、保管状態)からより高い電力状態(例えば、通常動作状態)へと変更する。次に、センサ制御装置102は、BTLEプロトコルの任意のアドバタイジングレジメン(例えば、接続可能な有向アドバタイジング事象でないアドバタイジングレジメン)に従って、読取器装置120との接続のためのアドバタイジングを開始し、読取器装置120は、そのアドバタイジング要求を受信して、それに従って応答し得る。このように、この実施形態では、ある時点で、センサ制御装置102および読取器装置120の両者がアドバタイザとして動作する。読取器装置120は、装置102をウェイクアップさせるアドバタイザとして動作し、次に、装置102は、読取器装置120との接続を確立するためのアドバタイザとして動作する。
【0116】
ここで他の実施形態に移ると、幾つかのケースでは、電源の電気的接続を達成するために、対応する回路を動作させるための別の電源が必要となり得る。本明細書に記載されるシステム、装置、および方法の実施形態は、特に、対応する接続回路を駆動するために読取器装置120からセンサ制御装置102へと送信される多数の無線RF通信(例えば、NFC通信)から引き出される電力(または電流)の利用に備えたものである。これらの多数のRF通信は、電源の接続に必要な電力を供給するか、または別様で電源にセンサ電子装置250への動作電力を供給させる。特定の実施形態では、このことは、センサ制御装置102が低電力モードからより高い電力モードに(例えば、非作動モードから作動モードに)移行することを指示する無線で受信された移行コマンドを、センサ制御装置102のプロセッサ256が復調して解釈できるようにするために十分な電力を引き出すことを伴う。一般的に、センサ制御装置の電源管理回路254の効率が高いほど、良好な移行に必要なRF通信の数は少なくなる。
【0117】
多数の無線RF通信を使用すると、同じタイプのRF通信を1つだけ用いた場合(の不十分であり得る電力)よりも大きい電力が供給される。このRF“スカベンジング”プロセスで入手可能な電力の量は、アンテナ効率(例えば、チューニング)、RFフィールドの位置合わせ(距離、位置、および平面角)、および読取器装置内の送信通信回路(例えば、送信器または送受信器)のパワー等といった幾つかの要因に依存する。
【0118】
上述したように、読取器装置120は、センサ制御装置102とのインターフェースを行うこと主目的(または唯一の目的)として設計された専用タイプの装置であってもよい。専用タイプの読取器装置120は、(必ずしもそうではないが)一般的に、センサ制御装置102の製造業者と同じ業者によって製造される。製造業者は専用読取器装置120の設計を管理しているため、専用読取器装置120を、制御装置102が最小限の数の通信を受信した後により高い電力モードに移行することを可能にする十分に高い出力レベルでRF通信を送信するよう構成できる。
【0119】
しかし、他の実施形態では、読取器装置120(幾つかの専用装置を含む)の機能はより限定されており、より低い出力レベルで送信を行う。その一例は、多機能スマートフォンであり、ここでは、センサ制御装置102とのインターフェースの機能は、その機能を必要とするユーザによってのみ完全に実装される補助的なものある。スマートフォンは、電池寿命を最大にして、センサ制御装置102との通信に用いられ得るNFC通信回路等の二次的な回路による電力消費を制限するよう設計される。また、サイズの制約のより、スマートフォンは、専用装置のアンテナよりも小さいNFCアンテナを有し得る。その結果、各RF通信からスカベンジされ得る電力の量は、非常に限られたものとなることが多い。一方、本明細書に記載されるシステム、装置、および方法は、そのように制限されず、RF通信を比較的低い出力で送信するスマートフォンおよび他の読取器装置に特に適している。
【0120】
図15は、受信したNFC通信から電力を引き出すよう構成されたセンサ制御装置102の例示的な実施形態を示している。この実施形態は、
図2Bに関して説明したものと類似しているが、但し、センサ電子装置250には、受信した無線通信から引きこまれた電荷を蓄積する内部容量リザーバ255および外部容量リザーバ249も関連づけられている。この実施形態の特徴も、
図2Cに関して説明したもののような構成に適用できる。内部リザーバ255は単独で用いられてもよく、外部リザーバ249も単独で用いられてもよく、または、図示されているように2つのリザーバ249および255を組み合わせて用いてもよい。容量リザーバ249および255は1以上のコンデンサを含み得るものであり、これらはプロセッサ256、(NFC通信を送受信するよう構成された)通信回路258および電源管理回路254と電気的に接続されている。リザーバ249および255内に存在する多数のコンデンサは、電荷蓄積能力を最大にするために並列に配置されてもよい。
【0121】
電源管理回路254は、電源260の電圧レベルのモニタリングを行うことができ、容量リザーバ249および255に蓄積された電荷のレベルをモニタリングでき、また、電源260がセンサ電子装置250の残りの部分に動作電力を供給するか否かを制御する制御回路を含み得る。
図16は、低リーク制御回路1600の例示的な実施形態を示すブロック図であり、この回路は、電源260が(動作電力を供給できるように)電子装置250の残りの部分に電気的に接続されるか、または電子装置250の残りの部分から電気的に接続解除されるか(センサ制御装置102が低電力モードにある場合)を決定するスイッチとして作用するよう構成された少なくとも1つのトランジスタを含む。このような制御回路1600の例は、2013年11月5日に出願された同時係属の米国特許仮出願シリアル番号第61/899,983号明細書に記載されており、その全体を参照してあらゆる目的で本明細書に組み込む。
【0122】
制御回路1600は、入力1602における、制御回路1600が電源260をセンサ電子装置250の残りの部分に接続するようにさせる第1の制御信号(例えば、接続コマンド)に応答し得る。制御回路1600は、入力1604における、制御回路1600が電源260をセンサ電子装置250の残りの部分から接続解除するようにさせる第2の制御信号(例えば、接続解除コマンド)にも応答し得る。これらの制御信号は、電源管理回路254またはプロセッサ256によって、容量リザーバ249および/または255に蓄積された電力を用いて生成され得る。
【0123】
ここで、RF電力転送技術の詳細な説明に移ると、
図17A~
図17Bは、読取器装置120によってNFCプロトコルに従って送信される無線通信を用いてセンサ制御装置102に電力を供給する方法400の例示的な実施形態を示すフロー図である。
【0124】
NFCは、装置どうしを互いに接触させるまたは近づける(限定しない例として、高々約1.5メートル(m)までの任意の離間された関係)ことによって装置間の無線通信を確立するための技術である。NFC装置は、一般的に、誘導アンテナを用いて約13.56MHzの周波数で磁場を生じることによって通信を送信する。この磁場は、受信NFC装置の類似の誘導アンテナに電流を生じさせ、その電流が復号されて、通信の内容が解釈される。NFC装置は“能動的”または“受動的”な装置であり得る。能動的な装置は、一般的に、NFC要求および応答の送信に用いられる電圧または電流を生じるための電源を含む。受動的な装置は、一般的に、電源を含まず、受信した通信からスカベンジされた電力を用いて、受信した通信に応答する。
【0125】
“NFC”という用語は、NFC装置の動作パラメータ、変調スキーム、符号化、転送速度、フレーム形式、およびコマンド定義を規定する幾つかのプロトコル(または標準)に適用される。以下は、これらのプロトコルの例の網羅的ではないリストであり、それぞれを(その下位区分の全てと共に)参照してその全体をあらゆる目的で本明細書に組み込む。ECMA-340、ECMA-352、ISO/IEC14443、ISO/IEC15693、ISO/IEC18000-3、ISO/IEC18092、およびISO/IEC21481。
【0126】
本明細書に記載される実施形態は、上述のNFCの特徴の任意のものを用いてよく、リンク140を介して電力を供給するために任意のNFCプロトコル(そのプロトコルが上述のリストに含まれるかまたは別様で本願の出願時に存在しているか否かに関わらず)を用いてよい。リンク140を介して電力を供給するために、NFC以外の通信プロトコルを用いてもよい。例えば、補助的な電力引き出し回路を用いて、リンク140の電力をセンサ制御装置102に転送するためにWi-Fi送信を用いることもできる。
【0127】
ここで、再び
図17Aを参照すると、1702で、ユーザは読取器装置120を、第1の低電力モードにあるセンサ制御装置102に近づける。1704で、ユーザは、読取器装置120からセンサ制御装置102へのNFC通信の送信を開始する。この手順のこの部分は、様々な設定で行われ得る。一例では、ユーザは、装置102をユーザの身体に適用する前または適用した後に、初めてセンサ制御装置102を作動中であってもよく、この場合には、センサ制御装置102は電力オフモードまたは保管モードにあり得る。ユーザは、ユーザの検体レベルをモニタリングする目的で装置の初期化を開始するために、読取器装置120上で、センサ制御装置102を作動させる選択肢を選択できる。この指示により、読取器装置120からのNFC通信の送信が開始される。
【0128】
別の例では、センサ制御装置102は既に作動されていて、ユーザの身体に適用されていてもよく、検体モニタリングに直接関与しないセンサ電子装置250の一部から電源260を接続解除する電力節約モードまたはスリープモードに入っている。このような例では、ユーザは、センサ制御装置102のスキャンを行ってユーザのごく最近の検体データを取り出す選択肢を選択してもよく、これにより、センサ制御装置102を“ウェイクアップ”させるためのNFC通信の送信が開始される。
【0129】
図17Aでは、読取器装置120によって行われる動作がボックス1701内に示されている。センサ制御装置102によって行われる対応する動作は、
図17Bのボックス1703内に示されている。どちらの場合にも、全ての動作は、それぞれの装置のプロセッサをある程度用いて行われ得る。
図17Aの1706では、読取器装置120は、NFCプロトコルに従った供給通信をセンサ制御装置102に送信する。以下により詳細に説明する供給通信は、供給通信を解釈し且つ供給コマンドに対する応答としてプログラムされた動作を行うために、センサ制御装置102によって消費される電力の量よりも大きい量の電力をセンサ制御装置102に供給するために選択される。
【0130】
センサ制御装置102は、1730(
図17B)で供給通信を受信し、1731で、供給通信に含まれているメッセージを復調して読む。1732で、センサ制御装置102は、通信が移行コマンドを含むか否かを決定する(この時点では含まない)。メッセージが供給コマンドを含むことが認識されると、1733で、センサ制御装置102は供給コマンドによって要求される適切な動作(あれば)を行い、コマンドに対するNFC応答を送信する。1734で、センサ制御装置102は、受信した通信からの余分な電荷(即ち電力)を容量リザーバ249および/または255に蓄積する。ステップ1734は、ステップ1733と同時に行われもよく、または(図示されるように)それより後に行われもよい。リザーバ249および255内への電荷の蓄積は、必要に応じて、有効な供給コマンドを受信した場合にのみ行われ得る(例えば、特定のランダムノイズから電荷を引き出せる場合には、電荷はリザーバ249および255内に自動的に蓄積されない)。
【0131】
読取器装置120は、1708(
図17A)でNFC応答を受信し、1710で、そのNFC応答が所定のまたは割り当てられた制限時間(または時間窓)内に受信されたか否かを決定する。NFC応答が所定の制限時間内に受信されなかった場合には、読取器装置120はステップ1706に戻り、センサ制御装置102に次の供給コマンドを送信する。この処理は、所定の制限時間内に有効なNFC応答が受信されるまで、または読取器装置120が供給コマンドの最大数を送信するまで、または別様で処理の最大制限時間に到達するまで、繰り返され得る。
【0132】
所定の制限時間内に有効なNFC応答が受信された場合には、読取器装置120は、1712で移行コマンドを送信する。移行コマンドは、センサ制御装置102に、電源260からセンサ電子装置250への動作電力の供給を行わせるよう指示する。これは、センサ制御装置102に低電力モードからより高い電力モードに移行するよう指示することを伴い得る。移行コマンドは、センサ制御装置102に、検体データの収集におけるセンサ制御装置102の使用に備えるための初期化処理を作動させて開始するよう指示する“作動コマンド”であり得る。
【0133】
再び
図17Bを参照すると、1730で、センサ制御装置102は、移行コマンドを含む通信を受信し、1731で、それを復調して読む。1732で、センサ制御装置102は、通信が移行コマンドを含むか否かを決定する(この時点では含む)。通信が移行コマンドであることを認識すると、センサ制御装置102は、様々な方法で先に進み得る。ここで示される例では、1735で、センサ制御装置102は、1以上の供給コマンドから十分な電荷が収集されたか否かを決定する。電源管理回路254は、十分な電荷が収集されたか否かを示すフラグを生成し、それをプロセッサ256に通信してもよく、プロセッサ256はそのフラグを感知して、ステップ1735における決定を行ってもよい。十分な電荷が存在する場合には、1736で、センサ制御装置102はその電荷を用いて、例えば、電源260をセンサ電子装置250の残りの部分に接続させる接続コマンドをプロセッサ256から制御回路1600へと出力することにより、電源260からの動作電力の供給を行わせることができる。また、センサ制御装置102は、読取器装置120に、センサ制御装置102が移行コマンドを良好に実行したことの確認を送信してもよい。十分な電荷が存在しない場合には、1738で、センサ制御装置102は、読取器装置120に、移行コマンドを実行できない旨のNFC応答を送信してもよい。或いは、電力を節約するために、センサ制御装置102は何も動作を行わなくてもよい。
【0134】
別の例では、移行コマンドが受信されたことを認識した後、センサ制御装置102は、十分な電荷が存在するか否かの決定(ステップ1735)に進み、コマンドを直接実行することを試みてもよい。十分な電荷が収集されたか否かに応じて、センサ制御装置102は成功するか、または成功しない。次に、センサ制御装置102は、任意に、ステップ1736および1738に関して説明した適切な動作を行うことができる。
【0135】
1714(
図17A)で、読取器装置120は、移行コマンドが実行されたことの確認の受信をモニタリングする。有効な確認が受信された場合には、センサ制御装置102に必要な電力が良好に供給されたので、読取器装置120は1716でルーチンから出てもよい。確認が受信されなかった場合、または否定の表示が受信された場合には、1706で、読取器装置120は供給コマンドの送信に戻り、上記の処理を、ソフトウェアによって許容される回数だけ繰り返すことができる。
【0136】
上述したように、供給コマンドを含む通信は、センサ制御装置102の正味電力利得が生じるように選択される。即ち、通信を読んで反応するのに必要な電力は、その通信の受信によってセンサ制御装置102にもたらされる電力よりも小さい。コマンドがセンサ制御装置102に行うよう指示する動作は、コマンドが読取器装置120によって送信された時点で必要なものでなくてもよい。換言すれば、コマンドの実行は、この電力共有技術の無視できるアーチファクトであると見なされてもよい。供給コマンドの一例は、ISO15693-3において規定されているInventoryコマンドであり、これは、センサ制御装置102に、そのプロトコルの衝突防止シーケンスを行うよう指示するものである。ISO15693では、各NFC要求は、フラグ、コマンドコード、コマンドに応じた必須および任意のパラメータフィールド、アプリケーションデータフィールド、および巡回冗長検査(CRC)を含み、一方、NFC応答は、上記と同様のフィールドを含むが、コマンドコードは省略している。センサ制御装置102は、ISO15693-3に記載されている他のコマンド(以下の表1に示す)から正味電力利得を達成するよう設計され得てもよい。
【0137】
【0138】
図17A~
図17Bに関して説明した方法1700の実施形態では、読取器装置120は、移行コマンドを送信する前に、多数の連続的な供給コマンドを送信することが許可される。これらの供給コマンドが同一のものである必要はなく、センサ制御装置102の正味電力利得を生じないコマンドを含む(しかし、最大の電力供給効果を得るためには、それらのコマンドの使用は最小限にされるべきである)任意の組み合わせのコマンドを用いてよい。一実施形態では、供給コマンドは、送信されるコマンドの多数を占める。最初に複数の供給コマンドが送信され、その後に1以上の非供給コマンドが続いてもよく、または、供給コマンドの前に幾つかの非供給コマンドが最初に送信されてもよく、または、任意の所望の組み合わせでコマンドが交互に送信されてもよい。同様に、移行コマンドの後に、追加の供給コマンドを含む他のコマンドが続いてもよい。
【0139】
更に、読取器装置120は、各供給コマンドに対するNFC応答をモニタリングする必要はなく、その代わりに、特定の数の供給コマンドを立て続けに送信するようプログラムされてもよい。読取器装置120は、それに移行コマンドを続けて、良好な応答をモニタリングしてもよい。供給コマンドを立て続けに送信することにより、処理の長さを最小限にしつつ(これは、ユーザが知覚可能な大きな遅延を回避するのに望ましい)センサ制御装置102に十分な電力が供給される可能性が高まる。実験的に行われた1つの限定しない例では、成功の確認が受信されるまで、130ミリ秒(ms)間隔で4つの供給コマンドが送信され、600ms毎に1つの移行コマンドが送信される。同じく実験的に行われた別の限定しない例では、10個の供給コマンドが続けて送信され、その後に1つの移行コマンドが続く。広範囲の市販のスマートフォンに対して、NFCリンクを構成するための最も一般的な位置合わせおよび離間の条件下で、10個の供給コマンドによって供給電力に十分な余裕が提供されることが実験的に決定された。他の例は、移行コマンドを送信する前にX個の供給コマンド(ここで、Xは2、3、5、6、7、8、9、11、12等である)を送信することを含み、所望の移行が実行されるまで、複数の供給コマンドに1つの移行コマンドが続く各送信サイクルが、X回または所望の回数だけ繰り返され得る。
【0140】
図18は、方法1700が実装される例示的な状況を示す概念図である。ここでは、幾つかの異なるパラメータが互いにタイミングされた関係で示されている。上部1802は、読取器装置120のRF搬送電力の作動を示す。ここで、RF搬送電力とは、リンク140を介した搬送波長の送信において、読取器装置120によって伝搬されるエネルギーの一般化表現である。NFCプロトコルに従った、リンク140を介したRF搬送電力の供給は、NFCコマンド(例えば、NFC要求)の送信が行われている間、継続され得る。RF搬送電力の供給は、時間T
0に開始され、時間T
Xに終了される。中間位置1803は、読取器装置120およびセンサ制御装置102の双方によるNFC通信の送信を示す。下部1804は、読取器装置120によって送信された各コマンドをセンサ制御装置102が受信して反応する際に使用可能な電圧V
CCを示す。
【0141】
T0においてRF搬送電力が開始されると、読取器装置120はコマンドの送信を開始し、VCCは0(または0に近い)値から、制御された最大電圧まで上昇し始める。T1において、供給コマンド1806-1を含む通信がセンサ制御装置102によって受信される。センサ制御装置102は通信を復調して、コマンド1806-1を解釈し、所定の制限時間1811-1内に応答の生成および送信を試みる。しかし、供給コマンド1806-1の受信後に生じるVCCの急激な降下によって示されるように、センサ制御装置102には応答を送信するのに不十分な電力しかなく、このことはTR1における応答の失敗1807によって示されている。
【0142】
T2において、読取器装置120は、第2の供給コマンド1806-2を送信する。ここで、センサ制御装置102におけるVCCは再び降下するが、リザーバ249および255が部分的に電荷を蓄積していることにより、この降下の大きさおよび持続時間はより小さいものとなっており、センサ制御装置102はTR2において遅延した応答1808-2を送信できる。この遅延した応答1808-2は、所定の制限時間1811-2内に読取器装置120によって受信されないため、読取器装置120は更なる供給コマンドの送信に進む。
【0143】
TNにおいて、センサ制御装置102によってN個目の供給コマンド1806-Nが受信される。ここでのVCCの降下の大きさおよび持続時間は、T1およびT2で生じたものよりも更に小さくなっており、TRNにおいて、センサ制御装置102は所定の制限時間1811-N内に有効な応答1808-Nを送信する。
【0144】
この有効な応答1808-Nを確認したら、読取器装置120は移行コマンド1810を送信し、これはTN+1においてセンサ制御装置102によって受信される。センサ制御装置102が良好なモード移行を行うのを可能にする十分な電荷が存在するため、TRN+1において、センサ制御装置102は移行の確認を有する応答1812を送信する。移行コマンド1810に応答するにはより高い電力が必要なため、VCCの降下は先の供給コマンド1806-Nに応答したときよりも大きく長いものとなる。
【0145】
本明細書では、センサ制御装置102の低電力モードからの移行の1回以上の失敗に基づき、センサ制御装置102への電力供給の量を調整できる適応的な技術も提供される。
図19は、センサ制御装置102に適応的に電力を供給する方法1900の例示的な実施形態を示すフロー図である。
【0146】
1902で、読取器装置120はセンサ制御装置102に、供給コマンドを含む第1の多数の連続的なNFC通信を送信する。この第1の多数の通信は、第1の正味電力をセンサ制御装置102にもたらすことができるように選択される。第1の多数の通信の各通信が供給コマンドを含んでもよく、または、これらの通信の1つ(例えば最後の通信)が移行コマンドを含んでもよい。本明細書に記載される上記および任意の実施形態において、センサ制御装置102が、正味電力利得を維持しつつ、移行コマンドを解釈してコマンドに反応できる場合には、全ての供給コマンドが移行コマンドであってもよい。1904で、読取器装置120は、第1の多数の通信のいずれかに対する、或いは送信されたいずれかの移行コマンドに対する、センサ制御装置102から有効な応答が受信されたか否かを決定するためのモニタリングを行う。
【0147】
供給コマンドの1つに対する有効な応答が受信され、移行コマンドが送信されていない場合には、1906で、読取器装置120は移行コマンドを送信し、1908で、移行コマンドに対する有効な応答が受信されたか否かを決定する。有効な応答が受信された場合には、1910で、読取器装置120はソフトウェアルーチンから出てもよく、任意に、センサ制御装置102がより高い電力モードに良好に移行した(例えば、作動された)旨をユーザに通知してもよい。供給コマンドの1つに対する有効な応答が受信されなかった場合(1904を参照)、または移行コマンドに対する有効な応答が受信されなかった場合(1908を参照)には、読取器装置120は1912に進み、そこで、直前に送信された多数の通信(この例では第1の多数の通信)の正味電力と同じかそれより大きい正味電力をもたらすことができる次の多数の連続的なNFC通信が送信される。
【0148】
センサ制御装置102にもたらされる正味電力は、幾つかの方法で増やすことができる。例えば、同じ期間または略同じ期間に、前の多数の通信で用いられた数よりも多くの通信を送信してもよい。或いは、前の多数の通信で用いられた期間よりも短い期間に、同じ数の通信を送信してもよい。この手法は、センサ制御装置102に受信した電力の漏洩の疑いがある場合に用いられ得る。また、第1の多数の通信で用いられたのと同じ期間に同じ数の通信を送信し、各通信をより高い出力で送信してもよい。更に別の例では、センサ制御装置102に電力を最も効率良く転送する供給コマンドのタイプを適応的に配置するために、前の多数の通信の供給コマンドとは異なるタイプの供給コマンドを用いてもよい。上述の手法の任意の2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
【0149】
1914で、読取器装置120は、ステップ1904と同様に、ごく最近送信された多数の通信のいずれかに対する有効な応答が受信されたか否かを決定する。肯定された場合には、読取器装置120は1906に進み、上述したのと同様にステップ1906を実行する。1914で、有効な応答が受信されなかった場合には、読取器装置120は1916に進み、反復処理を継続できるか否かを決定する。この評価で用いられるファクターは、読取器装置120が既に最大送信出力で通信を送信しているか否か、試みの最大回数に達したか否か、または処理全体の最大持続時間に達したか否かを含み得る。処理を継続できる場合には、読取器装置120は1912へと続き、より高い正味電力もたらすことができる更に次の(この例では第3の)多数の通信を送信する。1916で、最大値に達したと決定された場合には、1918で、読取器装置120はルーチンから出てもよく、任意に、ユーザに対する通知を行ってもよい。
【0150】
スマートフォンの形態である場合の読取器装置120は、アプリケーションプロセッサ204によって実行されるダウンロード可能なソフトウェアアプリケーションの制御下で、本明細書に記載される方法を行うことができる。スマートフォンアプリケーションは様々なスマートフォンモデルに対応した汎用のアプリケーションであってもよく、異なるスマートフォンモデルのそれぞれに電力を供給するのに最適な供給コマンドのタイミング、供給コマンドのタイプ、または供給コマンドの通信の数の組み合わせを決定するために、方法1900のような適応的な処理を実行してもよい。
【0151】
ソフトウェアアプリケーションがインストールされたら、そのような適応的な処理が、センサ制御装置102のスキャンに伴って、または再試行処理の一部としてのスキャン中に、周期的に実行され得る。センサ制御装置102が既に作動されている場合には、読取器装置120は、センサ制御装置102に、最適化処理を実行中である旨の通知を送信でき、その時点で、センサ制御装置102は、後続の供給コマンドから電力をスカベンジして、良好にスカベンジされた電力の量に関する通知を読取器装置120に送信してもよい。次に、読取器装置120は、センサ制御装置102からのスカベンジされた電力の量に関する表示を各回ごとに受信しながら、上述の様々な可変要素の異なる組み合わせを試みてもよい。次に、その最適な組み合わせを、センサ制御装置102の将来のまたは次のモード移行を達成するために用いることができ、読取器装置120は、最適な組み合わせを、例えばインターネットデータ接続を介して、将来の参照用に製造業者に通信してもよい。
【0152】
本明細書に記載される実施形態の多くが、移行コマンドを用いた、より低い電力モードからより高い電力モードへの移行の文脈で説明されたが、この電力スカベンジング技術は、他のでも同様に用いることができる。例えば、上記の実施形態は、センサ制御装置102がより高い電力モードに移行した(作動された)後も、供給コマンドを送信することによって電池寿命を延長するために用いられてもよい。供給コマンドは、読取器装置120とセンサ制御装置102との間の各通信セッション中に自動的に送信されてもよく、または、通常より大きい電力消費を必要とすることがわかっているコマンドを読取器装置120が送信する際にはいつでも供給コマンドが送信されてもよい。読取器装置120は、NFCコマンドの所定のサブセットが送信される際にはいつでも供給コマンドを送信するようプログラムされてもよい(例えば、ユーザの検体レベルのスキャンを行い、結果を処理し、読取器装置120に送信するためのNFCコマンドは、そのような大きな電力量を消費するコマンドの1つである)。また、読取器装置120は、通信セッション中にセンサ制御装置102によって要求されたときにはいつでも供給コマンドを送信してもよい。
【0153】
本明細書において特に明記しない限り、上記の実施形態で説明した各方法のステップは、プロセッサ256または通信回路258(例えば、送受信器、または別個の受信器もしくは送信器)によって実行され得る。これらの構成要素によって実行されるステップは、プロセッサ256によって実行されるソフトウェアプログラミングの指示で実行され得る。
【0154】
本明細書に記載される実施形態の多くは装置の作動に関するものであるが、上記の実施形態は相互排他的ではない。換言すれば、主題の装置は、装置を作動させるための複数の異なる機構を複合的に含む、本明細書に記載される実施形態の1以上の任意の組み合わせを含んでもよい。
【0155】
一般的に、本開示の実施形態は、(例えば、経皮的に、皮下のISFまたは血液内の、または真皮層の真皮中の液体内の)体液中の少なくとも1つの検体(例えば、グルコース)を検出するためのインビボのシステム、装置、および方法と共に用いられる。インビボの検体モニタリングシステムは、体外(または“エクスビボ”)で生物試料と接触し、ユーザの血糖値を決定するために解析され得るユーザの生物試料を担持した検体テストストリップを受け付けるポートを有する計測器装置を一般的に含む“インビトロ”システムとは区別され得る。多くのインビトロシステムは、生物試料を得るために“指先穿刺”を要する。しかし、インビボ検体モニタリングシステムは、指先穿刺の較正を必要とせずに動作できる。
【0156】
多くの実施形態は、身体の少なくとも1つの検体に関する情報を得るためにセンサの少なくとも一部がユーザの体内に配置されるよう構成されたインビボ検体センサを含む。しかし、本明細書に記載される実施形態は、インビトロの機能が組み込まれたインビボ検体モニタリングシステムや、純粋にインビトロまたはエクスビボの検体モニタリングシステムと共に用いられてもよい。更に、本明細書に記載される実施形態は、検体モニタリングの分野以外(他の医療装置分野、または1つの装置から別のへの電力の供給を必要とする他の任意の分野)のシステム、装置、および方法と共に用いられてもよい。
センサ構成
システム100を用いてモニタリングされ得る検体は、アセチルコリン、アミラーゼ、ビリルビン、コレステロール、絨毛性ゴナドトロピン、グリコシル化ヘモグロビン(HbAlc)、クレアチンキナーゼ(例えばCK-MB)、クレアチン、クレアチニン、DNA、フルクトサミン、グルコース、グルコース誘導体、グルタミン、成長ホルモン、ホルモン、ケトン、ケトン体、乳酸、酸素、過酸化物、前立腺特異抗原、プロトロンビン、RNA、甲状腺刺激ホルモン、およびトロポニンが挙げられるが、それらに限定されない。例えば、抗生物質(例えば、ゲンタマイシン、バンコマイシン等)、ジギトキシン、ジゴキシン、乱用薬物、テオフィリン、およびワルファリン等といった薬の濃度がモニタリングされてもよい。2以上の検体をモニタリングする実施形態では、単一のセンサを用いて、同じ電子装置を(例えば、同時に)用い得る複数のセンサを用いて、またはセンサ制御装置102の異なる電子装置を用いて、検体を同時にまたは異なる時間にモニタリングしてもよい。
【0157】
検体センサ104は、感知要素を提供するために検体応答性酵素を含んでもよい。酸素等の一部の検体は、センサ104上で、より具体的には、少なくともセンサ104の作用電極(図示せず)上で、直接電解酸化または電解還元可能である。グルコースや乳酸等の他の検体は、検体の電解酸化または電解還元を容易にするために、少なくとも1つの電子移動剤および/または少なくとも1つの触媒の存在を必要とする。作用電極上で直接電解酸化または電解還元可能な酸素等の検体に対しても触媒が用いられ得る。これらの検体については、各作用電極は、作用電極の近傍または表面に感知要素を含む。多くの実施形態では、感知要素は、少なくとも作用電極の小さい部分またはその近傍のみに形成される。
【0158】
各感知要素は、検体の電気化学的な酸化または還元を容易にするよう構成された1以上の構成要素を含む。感知要素は、例えば、検体の反応に触媒作用を及ぼして、作用電極において応答を生じる触媒、検体と作用電極(または他の構成要素)との間で電子を移動させる電子移動剤、またはそれらの両方を含み得る。
【0159】
用いられ得る電子移動剤は、標準甘汞電極(SCE)の酸化還元電位より数百ミリボルト高いまたは低い酸化還元電位を有する、電解還元可能および電解酸化可能なイオンまたは分子であってもよい。電子移動剤は、有機、有機金属、または無機のものであり得る。有機酸化還元種の例は、キノン類、および酸化状態でキノイド構造を有する種(例えばナイルブルーおよびインドフェノール)である。有機金属酸化還元種の例は、フェロセンを含むメタロセン類である。無機酸化還元種の例は、ヘキサシアノフェレート(III)、ルテニウムヘキサミン等である。更なる例としては、米国特許第6,736,957号明細書、第7,501,053号明細書、および第7,754,093号明細書に記載されているものが挙げられ、それぞれの開示の全体を参照して本明細書に組み込む。
【0160】
特定の実施形態では、電子移動剤は、試料が解析されている期間中の電子移動剤の拡散損失を防止または実質的に低減する構造または電荷を有する。例えば、電子移動剤は、例えば、作用電極上またはその近傍に配置され得るポリマーに結合された酸化還元種を含むが、それらに限定されない。酸化還元種とポリマーとの結合は、共有結合、配位結合、またはイオン結合であり得る。有機、有機金属、または無機の酸化還元種の任意のものをポリマーと結合して電子移動剤として用いてよいが、特定の実施形態では、酸化還元種は、遷移金属化合物または錯体であり、例えば、オスミウム、ルテニウム、鉄、およびコバルトの化合物または錯体である。なお、ポリマー成分との使用が記載されている多くの酸化還元種は、ポリマー成分を伴わずに用いられ得る。
【0161】
ポリマー電子移動剤の実施形態は、ポリマー組成において共有結合した酸化還元種を含み得る。このタイプのメディエータの例はポリ(ビニルフェロセン)である。他のタイプの電子移動剤は、イオン結合した酸化還元種を含む。このタイプのメディエータは、逆に荷電した酸化還元種と結合した荷電ポリマーを含み得る。このタイプのメディエータの例は、オスミウムまたはルテニウムポリピリジルカチオン等の正に荷電した酸化還元種と結合された負に荷電したポリマーを含む。
【0162】
イオン結合したメディエータの別の例は、フェリシアニドまたはフェロシアニド等の負に荷電した酸化還元種と結合した、四級化ポリ(4-ビニルピリジン)またはポリ(1-ビニルイミダゾール)を含む正に荷電したポリマーである。他の実施形態では、電子移動剤は、ポリマーに配位結合した酸化還元種を含む。例えば、このメディエータは、オスミウムまたはコバルト2,2’-ビピリジル錯体をポリ(1-ビニルイミダゾール)またはポリ(4-ビニルピリジン)に配位結合することによって形成され得る。
【0163】
適切な電子移動剤は、各配位子が窒素含有複素環(例えば、2,2’-ビピリジン、1,10-フェナントロリン、1-メチル、2-ピリジルビイミダゾール、またはそれらの誘導体)を有する1以上の配位子を有するオスミウム遷移金属錯体である。また、電子移動剤は、ポリマー中で共有結合した1以上の配位子であって、各配位子が少なくとも1つの窒素含有複素環(例えば、ピリジン、イミダゾール、またはそれらの誘導体)を有する配位子も有し得る。電子移動剤の一例は、(a)ピリジンまたはイミダゾール官能基を有するポリマーまたはコポリマーと、(b)各配位子が2,2’-ビピリジン、1,10-フェナントロリン、またはそれらの誘導体を含む2つの配位子であって、必ずしも同じでなくてもよい2つの配位子との錯体を形成するオスミウムカチオンとを含む。オスミウムカチオンと錯体を形成する2,2’-ビピリジンの幾つかの誘導体は、4,4’-ジメチル-2,2’-ビピリジン、並びに4,4’-ジメトキシ-2,2’-ビピリジンを含むモノ-、ジ-、およびポリアルコキシ-2,2’-ビピリジンを含むが、それらに限定されない。オスミウムカチオンと錯体を形成する1,10-フェナントロリンの誘導体は、4,7-ジメチル-1,10-フェナントロリン、並びに4,7-ジメトキシ-1,10-フェナントロリン等のモノ、ジ-、およびポリアルコキシ-l,10-フェナントロリンを含むが、それらに限定されない。オスミウムカチオンと錯体を形成するポリマーは、ポリ(1-ビニルイミダゾール)(“PVI”と称される)およびポリ(4-ビニルピリジン)(“PVP”と称される)のポリマーおよびコポリマーを含むが、それらに限定されない。ポリ(1-ビニルイミダゾール)のコポリマーの適切な置換基は、アクリロニトリル、アクリルアミド、および置換または四級化されたN-ビニルイミダゾールを含む(例えば、ポリ(1-ビニルイミダゾール)のポリマーまたはコポリマーと錯体を形成したオスミウムを有する電子移動剤)。
【0164】
複数の実施形態は、標準甘汞電極(SCE)に対して約-200mV~約+200mVの範囲の酸化還元電位を有する電子移動剤を用いてもよい。感知要素は、検体の反応に触媒作用を及ぼすことができる触媒も含み得る。幾つかの実施形態では、触媒は電子移動剤としても作用し得る。適切な触媒の一例は、検体の反応に触媒作用を及ぼす酵素である。例えば、対象の検体がグルコースである場合には、グルコースオキシダーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ(例えば、ピロロキノリンキノン(PQQ)依存性グルコースデヒドロゲナーゼ、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)依存性グルコースデヒドロゲナーゼ、またはニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)依存性グルコースデヒドロゲナーゼ)を含む触媒が用いられ得る。対象の検体が乳酸である場合には、乳酸オキシダーゼまたは乳酸デヒドロゲナーゼが用いられ得る。対象の検体が酸素である場合、または検体の反応に応答して酸素が生成または消費される場合には、ラッカーゼが用いられ得る。
【0165】
特定の実施形態では、触媒は、該触媒を(上述したようにポリマーであり得る)別の電子移動剤と架橋するポリマーに付加されてもよい。特定の実施形態では、第2の触媒も用いられ得る。この第2の触媒は、検体の触媒反応の結果として生成された化合物の反応に触媒作用を及ぼすために用いられ得る。第2の触媒は、電子移動剤と共に動作して、生じた化合物を電解し、作用電極において信号を生じるためのものであってもよい。或いは、第2の触媒は、干渉物質を除去する反応に触媒作用を及ぼすために、干渉物質除去層に設けられてもよい。
【0166】
特定の実施形態では、センサは低い酸化電位(例えばAg/AgClに対して約+40mVの電位)で動作する。これらの感知要素は、例えば低い電位で動作するよう構成された、オスミウム(Os)系のメディエータを用いる。従って、特定の実施形態では、感知要素は(1)(二座)配位子を含むオスミウム系メディエータ分子と、(2)グルコースオキシダーゼ酵素分子とを含む酸化還元活性成分である。これらの2つの構成要素は、センサの感知要素内で一体に組み合わされる。
【0167】
システム100において用いられ得るセンサ構成の幾つかの実施形態は、「Connectors for Making Connections between Analyte Sensors and Other Devices(検体センサと他の装置とを接続するためのコネクタ)」という名称の国際公開第WO2012/174538号、および「Biological Fuel Cell and Methods(生物燃料電池および方法)」という名称の米国特許第8,435,682号明細書に記載されており、それらを参照してその全体をあらゆる目的で本明細書に組み込む。特に、第’528号(’528 Publication)の段落121~145に注目し、その幾つかを本明細書でも述べた。
【0168】
本明細書で提供される任意の実施形態に関して説明した全ての特徴、要素、構成要素、機能、および工程は、他の任意の実施形態のものと自由に組み合わせ可能であり、置き換え可能であることが意図される。特定の特徴、要素、構成要素、機能、または工程が1つの実施形態のみに関して説明された場合には、特に明記しない限り、本明細書に記載される他の各実施形態においてその特徴、要素、構成要素、機能、または工程が用いられ得ることが理解されるべきである。従って、この段落は、それぞれ異なる実施形態の特徴、要素、構成要素、機能、および工程を組み合わせる特許請求の範囲、または1つの実施形態の特徴、要素、構成要素、機能、および工程を別の実施形態のものと置き換える特許請求の範囲が導入される際にはいつでも、たとえそのような組み合わせまたは置き換えが具体的な例において可能であることが以下の記載に明示的に述べられていなくても、そのための先行詞および裏付けの役割を果たす。特に、本明細書を読めば、そのような組み合わせおよび置き換えのそれぞれの許容可能性を当業者は容易に認識することを考慮すると、あらゆる可能な組み合わせおよび置き換えを明示的に述べることは過度な負担である。
【0169】
多くの例において、要素は他の要素と接続されているものとして本明細書に記載されている。本明細書で用いられる「接続される(coupled)」および「接続される(connected)」(または他の変化形)という用語は、互いに置き換え可能であり、どちらが使われている場合にも、2つの要素を(無視できない(例えば、寄生性の)介在要素が無い状態で)直接接続すること、および2つの要素を(1以上の無視できない介在要素がある状態で)間接的に接続することを一般的に述べていることが理解されるべきである。図示されている要素が直接接続されている場合、または介在要素の記載が無く接続されるものとして記載されている場合には、特に明記しない限り、それらの要素は間接的に接続することも可能であることが理解されるべきである。
【0170】
本明細書および添付の特許請求の範囲において用いられる名詞は、特に明記しない限り複数の意味も含む。
【0171】
実施形態には様々な変形および代替の形態があり得るが、本明細書では、その特定の例を図示するとともに詳細に説明した。しかし、これらの実施形態は特定の形態の開示に限定されず、むしろ、これらの実施形態は、本開示の趣旨に含まれるあらゆる変形、等価物、および代替物を網羅するものであることを理解されたい。更に、特許請求の範囲には、実施形態の任意の特徴、機能、工程、または要素が記載または追加され得ると共に、範囲内にない特徴、機能、工程、または要素によって本発明の特許請求の範囲を定義する否定による限定が記載または追加され得る。