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特許7566730グルカゴン様ペプチド-2(GLP-2)類似体の製剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】グルカゴン様ペプチド-2(GLP-2)類似体の製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/22 20060101AFI20241007BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20241007BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20241007BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20241007BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20241007BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20241007BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20241007BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20241007BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20241007BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20241007BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241007BHJP
【FI】
A61K38/22 ZNA
A61K47/22
A61K47/20
A61K47/12
A61K47/18
A61K47/26
A61K47/10
A61P1/00
A61P1/04
A61K45/00
A61P43/00 121
【請求項の数】 54
(21)【出願番号】P 2021517294
(86)(22)【出願日】2019-09-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-11
(86)【国際出願番号】 EP2019076305
(87)【国際公開番号】W WO2020065064
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2022-09-05
(31)【優先権主張番号】18197755.4
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519445576
【氏名又は名称】ジーランド・ファルマ・アー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100187540
【弁理士】
【氏名又は名称】國枝 由紀子
(72)【発明者】
【氏名】ギエーム,リセ
(72)【発明者】
【氏名】メランデル,セラエス
(72)【発明者】
【氏名】ムーレール,エバ・ホルン
【審査官】柴原 直司
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-539713(JP,A)
【文献】Amino Acids,2012年,43, [1],p.467-473
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/22
A61K 38/00-38/58
A61K 41/00-45/08
A61K 48/00
A61K 50/00-51/12
A61K 9/00-9/72
A61K 47/00-47/69
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グルカゴン様ペプチド2(GLP-2)類似体の薬学的に許容される酢酸塩を含む安定な液体医薬製剤の粘度を調節する方法であって、GLP-2類似体が、次式、
-Z-His-Gly-Glu-Gly-X5-Phe-Ser-Ser-Glu-Leu-X11-Thr-Ile-Leu-Asp-Ala-Leu-Ala-Ala-Arg-Asp-Phe-Ile-Ala-Trp-Leu-Ile-Ala-Thr-Lys-Ile-Thr-Asp-Z-R
(式中、
は、水素であり
X5は、SerまたはThrであり、
X11は、AlaまたはSerであり、
は、NHまたはOHであり、
は、存在せず、は、Lysの1~6個のアミノ酸単位のペプチド配列である)
によって表され、
方法が、(a)2mg/mL~30mg/mLの濃度のGLP-2類似体の薬学的に許容される酢酸塩を、(b)5mM~50mMの濃度で存在する、ヒスチジン緩衝液、メシル酸塩緩衝液、酢酸塩緩衝液、グリシン緩衝液、リジン緩衝液、トリス緩衝液、ビス-トリス緩衝液、またはMOPS緩衝液からなる群から選択される緩衝液と、(c)90mM~360mMの濃度で存在する、マンニトール、ショ糖、グリセロール、ソルビトール、およびトレハロースからなる群から選択される非イオン性張性調節剤と、(d)6.6~7.4のpHを有する製剤を得るための適量のアルギニンと、調合するステップを含み、
製剤中の総酢酸塩濃度が、GLP-2類似体1mg当たり11%以下の酢酸塩であり、製剤が、25℃で測定された0.8を超え2.0mPa/秒以下である粘度を有する、
方法。
【請求項2】
のC1~4アルキルがメチルである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
グルカゴン様ペプチド2(GLP-2)類似体の薬学的に許容される酢酸塩を含む安定な液体医薬製剤中での、GLP-2類似体の共有結合したオリゴマー生成物の形成を低減させる方法であって、GLP-2類似体が、次式、
-Z-His-Gly-Glu-Gly-X5-Phe-Ser-Ser-Glu-Leu-X11-Thr-Ile-Leu-Asp-Ala-Leu-Ala-Ala-Arg-Asp-Phe-Ile-Ala-Trp-Leu-Ile-Ala-Thr-Lys-Ile-Thr-Asp-Z-R
(式中、
は、水素であり
X5は、SerまたはThrであり、
X11は、AlaまたはSerであり、
は、NHまたはOHであり、
は、存在せず、は、Lysの1~6個のアミノ酸単位のペプチド配列である)
によって表され、
方法が、(a)2mg/mL~30mg/mLの濃度のGLP-2類似体の薬学的に許容される酢酸塩を、(b)5mM~50mMの濃度で存在する、ヒスチジン緩衝液、メシル酸塩緩衝液、酢酸塩緩衝液、グリシン緩衝液、リジン緩衝液、トリス緩衝液、ビス-トリス緩衝液、またはMOPS緩衝液からなる群から選択される緩衝液と、(c)90mM~360mMの濃度で存在する、マンニトール、ショ糖、グリセロール、ソルビトール、およびトレハロースからなる群から選択される非イオン性張性調節剤と、(d)6.6~7.4のpHを有する製剤を得るための適量のアルギニンと、調合するステップを含み、
製剤中の総酢酸塩濃度が、GLP-2類似体1mg当たり11%以下の酢酸塩であり、製剤が、共有結合したオリゴマー生成物の形態のGLP-2類似体を5%以下含有する、
方法。
【請求項4】
のC1~4アルキルがメチルである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
GLP-2類似体の共有結合したオリゴマーの形成が、製剤中のGLP-2類似体の濃度に反比例して依存する、請求項3または4に記載の方法。
【請求項7】
xが、4.0から6.0までである、請求項6に記載の固体組成物。
【請求項8】
xが、2.0から7.0までである、請求項6に記載の固体組成物。
【請求項9】
xが、3.0から6.0までである、請求項6に記載の固体組成物。
【請求項10】
xが、4.0から6.0までである、請求項6に記載の固体組成物。
【請求項11】
xは、4.0から8.0である、請求項6に記載の固体組成物。
【請求項12】
安定な水性医薬製剤であって、
(a)2mg/mL~30mg/mLの濃度の、請求項6~11に記載の固体組成物と、
(b)5mM~50mMの濃度で存在する、ヒスチジン緩衝液、メシル酸塩緩衝液、酢酸塩緩衝液、グリシン緩衝液、リジン緩衝液、トリス緩衝液、ビス-トリス緩衝液、およびMOPS緩衝液からなる群から選択される緩衝液と、
(c)90mM~360mMの濃度のマンニトール、ショ糖、グリセロール、ソルビトール、およびトレハロースからなる群から選択される非イオン性張性調節剤と、
(d)6.6~7.4のpHを有する製剤を得るための適量のアルギニン
とを含み、
共有結合したオリゴマー生成物の形態のGLP-2類似体を5%以下含有し、25℃で測定された0.8から2.0mPa/秒の間の粘度を有する製剤。
【請求項13】
2~8℃で保存される場合、少なくとも18カ月間、安定である、請求項12に記載の製剤。
【請求項14】
製剤中のGLP-2類似体が、2~8℃で18カ月の保存の後、その生物学的活性の少なくとも90%を保持している、請求項12または請求項13に記載の製剤。
【請求項15】
25℃で測定された0.8から2.0mPa/秒の間の粘度を有する、請求項12から14のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項16】
GLP-2類似体の薬学的に許容される酢酸塩が、15mg/mL~25mg/mlの濃度で製剤中に存在する、請求項12から15のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項17】
すぐ使用できる製剤である、請求項12から16のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項18】
GLP-2類似体の薬学的に許容される酢酸塩が、20mg/mLの濃度で製剤中に存在する、請求項12から17のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項19】
緩衝液が、5mM~25mMの濃度で製剤中に存在する、請求項12から18のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項20】
緩衝液が、ヒスチジン緩衝液である、請求項12から19のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項21】
ヒスチジン緩衝液が、15mMの濃度で製剤中に存在する、請求項20に記載の製剤。
【請求項22】
非イオン性張性調節剤が、150mM~250mMの濃度で製剤中に存在する、請求項12から21のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項23】
非イオン性張性調節剤が、マンニトールである、請求項12から22のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項24】
マンニトールが、230mMの濃度で製剤中に存在する、請求項23に記載の製剤。
【請求項25】
6.8~7.2のpHを有する、請求項12から24のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項26】
7.0のpHを有する、請求項25に記載の製剤。
【請求項27】
2mg/mL~30mg/mLの濃度のGLP-2類似体の薬学的に許容される酢酸塩と、5mM~50mMの濃度で存在する、ヒスチジン緩衝液、メシル酸塩緩衝液、および酢酸塩緩衝液からなる群から選択される緩衝液と、90mM~360mMの濃度の、マンニトール、ショ糖、グリセロール、およびソルビトールからなる群から選択される非イオン性張性調節剤と、6.6~7.4のpHを得るための適量のアルギニンとからなる、請求項12から26のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項28】
20mg/mLの濃度のGLP-2類似体の薬学的に許容される酢酸塩、15mMの濃度のヒスチジン緩衝液、230mMの濃度のマンニトール、および7.0のpHを得るための適量のアルギニンを含む、請求項12から27のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項29】
ヒスチジン緩衝液が、L-ヒスチジンである、および/またはマンニトールが、D-マンニトールである、および/またはアルギニンが、L-アルギニン/酢酸である、請求項12から28のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項30】
還元剤を含まない、および/または滅菌済である、請求項12から29のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項31】
注射によって対象に投与される、請求項12から30のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項32】
注射が、皮下注射である、請求項31に記載の製剤。
【請求項33】
請求項12~32のいずれか一項に記載の製剤を収納する容器を含む、製品またはキット。
【請求項34】
請求項12~32のいずれか一項に記載のGLP-2類似体の薬学的に許容される酢酸塩を含む液体製剤を含有する、送達装置。
【請求項35】
プレフィルドシリンジ、注射器装置、ペン型注射器、用量調整可能自己注射器、使い捨て自己注射器、着用型注射器、注入ポンプである、請求項34に記載の送達装置。
【請求項36】
治療法において使用するための、請求項12から32のいずれか一項に記載のグルカゴン様ペプチド2(GLP-2)類似体の製剤。
【請求項37】
ヒト患者における胃腸関連障害の治療および/または予防方法において使用するための、請求項12から32のいずれか一項に記載のグルカゴン様ペプチド2(GLP-2)類似体の製剤。
【請求項38】
胃腸関連障害が、潰瘍、消化障害、吸収不良症候群、短腸症候群、盲管症候群、炎症性腸疾患、セリアックスプルー、熱帯性スプルー、低ガンマグロブリン血症性スプルー、腸炎、限局性腸炎(クローン病)、潰瘍性大腸炎、小腸損傷、または短腸症候群(SBS)である、請求項37に記載の治療および/または予防方法において使用するためのグルカゴン様ペプチド2(GLP-2)類似体の製剤。
【請求項39】
セリアックスプルーが、グルテン過敏性腸症またはセリアック病から生じる、請求項38に記載の製剤。
【請求項40】
胃腸関連障害が、短腸症候群である、請求項38に記載の製剤。
【請求項41】
胃腸関連障害が、毒性薬剤もしくはその他の化学療法剤に起因する、放射線性腸炎、感染性もしくは感染後腸炎、または小腸損傷である、請求項37に記載の治療方法において使用するためのグルカゴン様ペプチド2(GLP-2)類似体の製剤。
【請求項42】
GLP-2類似体による処置が、1つまたは複数の抗がん療法と組み合わされる、請求項41に記載の製剤。
【請求項43】
抗がん療法の処置が、患者に1種もしくは複数種の化学療法剤を投与するステップ、または放射線療法によって患者を処置するステップを含む、請求項42に記載の製剤。
【請求項44】
化学療法または放射線治療の副作用の治療および/または予防において使用される、請求項41~43のいずれか一項に記載の治療方法において使用するためのグルカゴン様ペプチド2(GLP-2)類似体の製剤。
【請求項45】
化学療法の副作用が、下痢、腹部疝痛、嘔吐、または化学療法処置の結果生じる腸管上皮の構造的および機能的損傷である、請求項44に記載の製剤。
【請求項46】
ヒト患者が、SBS腸不全を有する患者である、請求項41~45のいずれか一項に記載の治療方法において使用するためのグルカゴン様ペプチド2(GLP-2)類似体の製剤。
【請求項47】
ヒト患者が、SBS腸機能不全を有する患者とSBS腸不全を有する患者との境界にある患者である、請求項46に記載の製剤。
【請求項48】
治療方法が、GLP-2類似体を患者に週1回投与するステップを含むか、または治療方法が、GLP-2類似体を患者に週2回投与するステップを含む、請求項36から47のいずれか一項に記載の治療方法において使用するためのグルカゴン様ペプチド2(GLP-2)類似体の製剤。
【請求項49】
安定な液体医薬製剤であって、グルカゴン様ペプチド2(GLP-2)類似体の薬学的に許容される酢酸塩を含み、GLP-2類似体が、次式、
-Z-His-Gly-Glu-Gly-X5-Phe-Ser-Ser-Glu-Leu-X11-Thr-Ile-Leu-Asp-Ala-Leu-Ala-Ala-Arg-Asp-Phe-Ile-Ala-Trp-Leu-Ile-Ala-Thr-Lys-Ile-Thr-Asp-Z-R
(式中、
は、水素であり
X5は、SerまたはThrであり、
X11は、AlaまたはSerであり、
は、NHまたはOHであり、
は、存在せず、は、Lysの1~6個のアミノ酸単位のペプチド配列である)
によって表され、
製剤が、20mg/mLの濃度のGLP-2類似体の薬学的に許容される酢酸塩、15mMの濃度のヒスチジン緩衝液、230mMの濃度のマンニトール、および7.0のpHを得るための適量のアルギニンを含み、製剤中の総酢酸塩濃度が、GLP-2類似体1mg当たり11%以下の酢酸塩である、
製剤。
【請求項50】
のC1~4アルキルがメチルである、請求項49に記載の製剤。
【請求項51】
GLP-2類似体が、
H-HGEGTFSSELATILDALAARDFIAWLIATKITDKKKKKK-NH(配列番号1)、または
H-HGEGSFSSELSTILDALAARDFIAWLIATKITDKKKKKK-NH(配列番号7)
である、請求項49または50に記載の製剤。
【請求項52】
アルギニンが、L-アルギニン/酢酸である、請求項49~51のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項53】
2~8℃で、少なくとも6カ月間、少なくとも12カ月間、少なくとも18カ月間、または少なくとも24カ月間、安定である、請求項49~52のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項54】
製剤中のGLP-2類似体が、2~8℃での18カ月の保存の後、その生物学的活性の少なくとも90%を保持している、請求項53に記載の製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グルカゴン様ペプチド-2(GLP-2)類似体の製剤、ならびにそれらの医学的使用、例えば、胃腸関連障害の治療および/または予防における使用ならびに化学療法および放射線療法の副作用を改善するための使用に関する。さらに、液体製剤を作製するために有用なグルカゴン様ペプチド2(GLP-2)類似体の酢酸塩を含む固体組成物もまた記載する。
【背景技術】
【0002】
ヒトGLP-2は、以下の配列を有する33個のアミノ酸のペプチドである:Hy-His-Ala-Asp-Gly-Ser-Phe-Ser-Asp-Glu-Met-Asn-Thr-Ile-Leu-Asp-Asn-Leu-Ala-Ala-Arg-Asp-Phe-Ile-Asn-Trp-Leu-Ile-Gln-Thr-Lys-Ile-Thr-Asp-OH。ヒトGLP-2は、腸の腸内分泌細胞L細胞において、また脳幹の特定の領域において、プログルカゴンの特異的な翻訳後プロセシングの結果生じる。GLP-2は、クラスIIグルカゴンセクレチンファミリーに属する1つのGタンパク質共役型受容体に結合する。
【0003】
GLP-2は、陰窩における幹細胞増殖の刺激を介して、また絨毛におけるアポトーシスの阻害によって、小腸粘膜上皮の著しい成長を誘導することが報告されている(Druckerら、1996年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:7911~7916)。GLP-2はまた、結腸への成長効果も有する。さらに、GLP-2は、胃内容排出および胃酸分泌を阻害し(Wojdemannら、1999年、J.Clin.Endocrinol.Metab.84:2513~2517ページ)、腸のバリア機能を増強し(Benjaminら、2000年、Gut 47:112~119ページ)、グルコーストランスポーターの上方調節を介して腸のヘキソース輸送を刺激し(Cheeseman、1997年、Am.J.Physiol.R1965~71ページ)、腸の血流を増加させる(Guanら、2003年、Gastroenterology、125:136~147ページ)。
【0004】
当技術分野において、グルカゴン様ペプチド-2受容体類似体が、腸疾患を治療する治療的潜在力を有することが認識されている。しかしながら、33個のアミノ酸の消化管ペプチドである天然hGLP-2は、ヒトでのその半減期が完全長GLP-2では約7分[1~33]、また切断型GLP-2では27分[3~33]ときわめて短いため、臨床環境では有用ではない。主に、この短い半減期は、酵素ジペプチジルペプチダーゼIV(DPP-IV)による分解が原因である。したがって、当技術分野では、より良好な薬物動態的特性を有するGLP-2受容体アゴニストを開発する試み、特にGLP-2分子の半減期を改良する試みがなされてきた。例として、置換を有するGLP-2類似体、例えば、2位にGly置換を含むGLP-2類似体([hGly2]GLP-2、テデュグルチド)などが提案されており、この置換によって半減期は7分(天然GLP-2)から約2時間まで増加する。脂肪酸鎖でのペプチド薬剤のアシル化も、全身循環を延ばすこと、および生物学的能力を妨害することなく酵素の安定性を高めることに有益であることが証明されている。しかしながら、これらの試みによってGLP-2類似体の薬物動態が改良され、GLP-2類似体が当技術分野において「長時間作用型」と記されることもある一方で、この改良は、分オーダーではなく数時間のオーダーの半減期を有する天然hGLP-2との比較であることを心に留めておかなければならない。これは、ひいては、GLP-2類似体が、依然として患者に1日当たり1回または複数回、投与される必要があることを意味するものである。
【0005】
米国特許第5,789,379号は、注射による投与のためのGLP-2類似体を開示している。GLP-2類似体は、粉末ペプチドとして提供されて、130mg/mlのGLP-2濃度のpH7.3~7.4での注射に先立ち、リン酸塩緩衝食塩水(PBS)と混合された。場合によって、GLP-2/PBS組成物は、ゼラチンと混合されて、PBS/15%ゼラチン中130mg/lのGLP-2の溶液から形成されたデポ剤を提供する。米国特許第5,789,379号では、GLP-2類似体の安定した水性液体製剤は開示されておらず、GLP-2類似体は、一般的に、注射に先立ち、粉末から再構成される。
【0006】
WO97/39031および米国特許第6,184,201号は、GLP-2類似体、[Gly]GLP-2を開示している。ここでは、2位のアラニンをグリシンで置き換えて、DPP IV切断に抵抗性のあるペプチドを作製した。米国特許第5,789,379号の場合と同様に、GLP-2類似体は、粉末ペプチドとして提供されており、注射に先立ち、生理食塩水、PBS、または5%デキストロースと混合され、任意選択で溶解促進剤として酢酸が加えられた。
【0007】
WO02/066511は、インビボでの半減期が延びたGLP-2類似体、およびこれらのGLP-2類似体の炎症性腸疾患などの胃腸障害の治療における医薬としての使用を記載している。これらのGLP-2類似体は、凍結乾燥された形態で保存され、溶媒中で投与されるように、例えば生理食塩水またはPBSを使用して再構成された。
【0008】
WO01/41779は、化学療法によって誘導されるアポトーシスを阻害し、細胞生存を促進するための、前処置としてのh[Gly]GLP-2の使用を記載している。h[Gly]GLP-2は、この類似体をPBS中で再構成させた後、皮下もしくは静脈内注射または輸注によって送達される。
【0009】
WO2001/049314は、高い温度での保存および/または高い温度への曝露の後に優れた安定性を示す、GLP-2ペプチドおよびそれらの類似体の製剤を対象としている。GLP-2組成物は、GLP-2ペプチドまたはその類似体、リン酸塩緩衝液、L-ヒスチジン、およびマンニトールを含む。
【0010】
WO2006/117565は、[hGly]GLP-2に比べて多数の置換のうちの1つを含み、インビボでの生物学的活性が改良され、かつ/または例えばインビトロでの安定性アッセイで評価した化学的安定性が改良されたGLP-2類似体を記載している。特に、GLP-2類似体は、野生型GLP-2配列の8、16、24、および/または28位のうちの1カ所または複数カ所での置換を、任意選択で2位ならびに3、5、7、10、および11位のうちの1カ所もしくは複数カ所でのさらなる置換、ならびに/またはアミノ酸31~33のうちの1つもしくは複数の欠失と組み合わせて有するものであると記載されている。またこれらの置換は、N末端またはC末端安定化ペプチド配列の付加とも組み合わせてもよい。これらのGLP-2類似体の1日1回または2回の投与も記載されている。WO2006/117565で開示された分子のうち、グレパグルチド(ZP1848)が液体製剤中で安定であるように設計されており、典型的には、ペン型注射器を使用して毎日投薬することによって投与される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
この領域では、GLP-2類似体の製剤を改良するという課題、特に、ペプチドの活性のある単量体形態の過度なレベルの物理的または化学的分解がなく長期保存が可能な安定な液体製剤を提供するという課題が残っている。ペプチド薬剤の液体製剤中では、作用し得る化学的経路に、ペプチドの共有結合した二量体およびオリゴマーの形成があり、これらの共有結合した高分子量のオリゴマー生成物の形成によって、ペプチドの活性のある単量体形態の量が減少する。質量作用の法則によれば、製剤中のペプチド薬剤の濃度が高くなればなるほど、共有結合したオリゴマー生成物の形成の確率が高くなる場合が一般的である。
【0012】
製剤をプレフィルドシリンジ、注入ポンプ、着用型注射器、または自己注射器などの送達装置中での使用に適切なものにする範囲内で製剤の粘度が制御されている製剤を提供することも、GLP-2類似体製剤の領域における目標であると考える。
【課題を解決するための手段】
【0013】
概して、本発明は、実施例で報告した研究に基づくものであり、これらの研究は、液体として長期保存に適したものにされ、かつ/または薬物送達装置による送達に特に適したものにされるGLP-2類似体の液体製剤に関して驚くべき知見を導くものであった。
【0014】
1つめの研究では、発明者らは、GLP-2類似体に由来する製剤中に存在する酢酸塩が、製剤の粘度に影響を及ぼすことを明らかにした。これは、酢酸塩濃度を変更および/または制御することによって製剤の粘度を制御する可能性を切り開くものである。低範囲の粘度の液体製剤は、製剤製造中および/または患者の使用中、破損、投薬の失敗、投薬の不正確さ、およびその他の不具合を潜在的に低減させることにより、薬物送達装置の開発および製造において利点をもたらすため、臨床的に有用である。さらに、低い粘度は、より速い注射および/またはより細い口径(すなわち、より高いゲージ)針の使用を可能とし、その結果、注射による不快感を低減する可能性がある。これは、プレフィルドシリンジ、用量調整可能自己注射器、使い捨て自己注射器、着用型注射器、または注入ポンプなどの、薬物送達装置の形態でのGLP-2類似体の製剤を提供し、これによって、より単純でより安全でより患者に優しい装置を用いた、すぐ使用できる(ready-to-use)製剤を患者に提供する可能性を切り開くものである。製剤をより高い粘度に制御することは、その他の薬物送達装置中で好適となる可能性がある。
【0015】
2つめの研究では、本発明者らは、ZP1848(グレパグルチド)を2~8℃で長期保存する間、共有結合したオリゴマーの形成が濃度依存性であることを明らかにした。ただし、質量作用の法則が、共有結合的オリゴマー形成がペプチド薬剤濃度の上昇に伴って増加することを含意する通常の状況に反して、本発明者らは、オリゴマー形成の濃度依存性が、GLP-2類似体の濃度上昇に反比例して依存することを明らかにした。特定の理論に縛られることを望むものではないが、本発明者らは、GLP-2類似体の濃度が上昇するに従って共有結合したオリゴマーの形成が低減するのは、GLP-2類似体のリジン尾部が、製剤中での共有結合したオリゴマーの形成を妨害する天然ペプチドの自己会合による構造的集合体の形成を促進する結果であると考える。これは、共有結合したオリゴマーが形成される際に起きるように、活性のある種の減少を引き起こすのではなくむしろ、患者に投与した後、弱く自己会合した種が解離して生物学的に活性のある単量体を放出できることを意味する。
【0016】
3つめの研究では、本発明者らは、本発明の製剤で使用されるGLP-2類似体は、再構成された粉末または凍結乾燥GLP-2組成物に対して従来技術で一般的に使用されるリン酸塩緩衝液と適合性がないことを明らかにした。本研究では、一部の緩衝液のみがこれらのGLP-2類似体の製剤化に適合性があり、その結果、これらのGLP-2類似体が液体剤形で長期保存に適していたことを明らかにした。
【0017】
したがって、第1の態様において、本発明は、グルカゴン様ペプチド2(GLP-2)類似体またはその薬学的に許容される塩もしくは誘導体を含む安定な液体医薬製剤であって、GLP-2類似体が、次式、
-Z-His-Gly-Glu-Gly-X5-Phe-Ser-Ser-Glu-Leu-X11-Thr-Ile-Leu-Asp-Ala-Leu-Ala-Ala-Arg-Asp-Phe-Ile-Ala-Trp-Leu-Ile-Ala-Thr-Lys-Ile-Thr-Asp-Z-R
(式中、
は、水素、C1~4アルキル(例えばメチル)、アセチル、ホルミル、ベンゾイル、またはトリフルオロアセチルであり、
X5は、SerまたはThrであり、
X11は、AlaまたはSerであり、
は、NHまたはOHであり、ならびに
およびZは、独立して、存在しないまたはLysの1~6個のアミノ酸単位のペプチド配列である)
によって表され、
(a)約2mg/mL~約30mg/mLの濃度のGLP-2類似体と、
(b)約5mM~約50mMの濃度で存在する、ヒスチジン緩衝液、メシル酸塩緩衝液、酢酸塩緩衝液、グリシン緩衝液、リジン緩衝液、トリス緩衝液、ビス-トリス緩衝液、およびMOPS緩衝液からなる群から選択される緩衝液と、
(c)約90mM~約360mMの濃度の、マンニトール、ショ糖、グリセロール、ソルビトール、およびトレハロースからなる群から選択される非イオン性張性調節剤と、
(d)約6.6~約7.4のpHを有する製剤を得るのに適量のアルギニン
とを含む製剤を提供する。
【0018】
一部の実施形態において、該製剤は、共有結合したオリゴマー生成物の形態のGLP-2類似体を5%以下含有する。別法としてまたは追加的に、製剤中のGLP-2類似体から生じる総酢酸塩濃度は、GLP-2類似体1mg当たり11%酢酸塩以下である。別法としてまたは追加的に、GLP-2類似体の共有結合したオリゴマーの形成は、製剤中のGLP-2類似体の濃度に反比例して依存する。
【0019】
製剤の成分およびそれらの量は、2~8℃での少なくとも18カ月間の保存で、少なくとも90%含有量のGLP-2類似体および10%未満の化学的分解物を含む製剤を提供するものである。
【0020】
さらなる態様において、本発明は、本発明の安定な医薬製剤を収納する容器を含む、製品またはキットを提供する。
さらなる態様において、本発明は、本発明のGLP-2類似体を含む液体製剤を含有する送達装置を提供する。
【0021】
さらなる態様において、本発明は、治療法において使用するための本発明のグルカゴン様ペプチド2(GLP-2)類似体の製剤を提供する。
さらなる態様において、本発明は、ヒト患者における胃腸関連障害の治療および/または予防方法において使用するための、本発明のグルカゴン様ペプチド2(GLP-2)類似体の製剤を提供する。
【0022】
さらなる態様において、本発明は、グルカゴン様ペプチド2(GLP-2)類似体またはその薬学的に許容される塩もしくは誘導体を含む安定な液体医薬製剤を製造する方法であって、GLP-2類似体が、次式、
-Z-His-Gly-Glu-Gly-X5-Phe-Ser-Ser-Glu-Leu-X11-Thr-Ile-Leu-Asp-Ala-Leu-Ala-Ala-Arg-Asp-Phe-Ile-Ala-Trp-Leu-Ile-Ala-Thr-Lys-Ile-Thr-Asp-Z-R
(式中、
は、水素、C1~4アルキル(例えばメチル)、アセチル、ホルミル、ベンゾイル、またはトリフルオロアセチルであり、
X5は、SerまたはThrであり、
X11は、AlaまたはSerであり、
は、NHまたはOHであり、
およびZは、独立して、存在しないまたはLysの1~6個のアミノ酸単位のペプチド配列である)
によって表され、
(a)約2mg/mL~約30mg/mLの濃度のGLP-2類似体を、(b)約5mM~約50mMの濃度で存在する、ヒスチジン緩衝液、メシル酸塩緩衝液、酢酸塩緩衝液、グリシン緩衝液、リジン緩衝液、トリス緩衝液、ビス-トリス緩衝液、およびMOPS緩衝液からなる群から選択される緩衝液と、(c)約90mM~約360mMの濃度で存在する、マンニトール、ショ糖、グリセロール、ソルビトール、およびトレハロースからなる群から選択される非イオン性張性調節剤と、(d)約6.6~約7.4のpHを有する製剤を得るための適量のアルギニンと、調合するステップを含む方法であり、
製剤が、共有結合したオリゴマー生成物の形態のGLP-2類似体を5%以下含有する、
方法を提供する。
【0023】
さらなる態様において、本発明は、2~8℃で保存された場合、24カ月間安定である液体医薬製剤を提供するための、グルカゴン様ペプチド2(GLP-2)類似体またはその薬学的に許容される塩もしくは誘導体を含む製剤の使用であって、GLP-2類似体が、次式
-Z-His-Gly-Glu-Gly-X5-Phe-Ser-Ser-Glu-Leu-X11-Thr-Ile-Leu-Asp-Ala-Leu-Ala-Ala-Arg-Asp-Phe-Ile-Ala-Trp-Leu-Ile-Ala-Thr-Lys-Ile-Thr-Asp-Z-R
(式中、
は、水素、C1~4アルキル(例えばメチル)、アセチル、ホルミル、ベンゾイル、またはトリフルオロアセチルであり、
X5は、SerまたはThrであり、
X11は、AlaまたはSerであり、
は、NHまたはOHであり、
およびZは、独立して、存在しないまたはLysの1~6個のアミノ酸単位のペプチド配列である)
によって表され、
製剤が、
(a)約2mg/mL~約30mg/mLの濃度のGLP-2類似体と、
(b)約5mM~約50mMの濃度で存在する、ヒスチジン緩衝液、メシル酸塩緩衝液、酢酸塩緩衝液、グリシン緩衝液、リジン緩衝液、トリス緩衝液、ビス-トリス緩衝液、およびMOPS緩衝液からなる群から選択される緩衝液と、
(c)約90mM~約360mMの、濃度のマンニトール、ショ糖、グリセロール、ソルビトール、およびトレハロースからなる群から選択される非イオン性張性調節剤と、
(d)約6.6~約7.4のpHを有する製剤を得るための適量のアルギニン
とを含む、
使用を提供する。
【0024】
さらなる態様において、本発明は、グルカゴン様ペプチド2(GLP-2)類似体またはその薬学的に許容される塩もしくは誘導体を含む安定な液体医薬製剤の粘度を調節する方法であって、GLP-2類似体が、次式、
-Z-His-Gly-Glu-Gly-X5-Phe-Ser-Ser-Glu-Leu-X11-Thr-Ile-Leu-Asp-Ala-Leu-Ala-Ala-Arg-Asp-Phe-Ile-Ala-Trp-Leu-Ile-Ala-Thr-Lys-Ile-Thr-Asp-Z-R
(式中、
は、水素、C1~4アルキル(例えばメチル)、アセチル、ホルミル、ベンゾイル、またはトリフルオロアセチルであり、
X5は、SerまたはThrであり、
X11は、AlaまたはSerであり、
は、NHまたはOHであり、
およびZは、独立して、存在しないまたはLysの1~6個のアミノ酸単位のペプチド配列である)
によって表され、
方法が、(a)約2mg/mL~約30mg/mLの濃度のGLP-2類似体を、(b)約5mM~約50mMの濃度で存在する、ヒスチジン緩衝液、メシル酸塩緩衝液、酢酸塩緩衝液、グリシン緩衝液、リジン緩衝液、トリス緩衝液、ビス-トリス緩衝液、またはMOPS緩衝液からなる群から選択される緩衝液と、(c)約90mM~約360mMの濃度で存在する、マンニトール、ショ糖、グリセロール、ソルビトール、およびトレハロースからなる群から選択される非イオン性張性調節剤と、(d)約6.6~約7.4のpHを有する製剤を得るための適量のアルギニンと調合するステップを含み、
製剤中のGLP2類似体から生じる総酢酸塩濃度が、GLP-2類似体1mg当たり11%酢酸塩以下であり、製剤が、25℃で測定された0.8を超え2.0mPa/秒以下である粘度を有する、
方法を提供する。
【0025】
さらなる態様において、本発明は、グルカゴン様ペプチド2(GLP-2)類似体またはその薬学的に許容される塩もしくは誘導体を含む安定な液体医薬製剤中での、GLP-2類似体の共有結合したオリゴマー生成物の形成を低減させる方法であって、GLP-2類似体は、次式、
-Z-His-Gly-Glu-Gly-X5-Phe-Ser-Ser-Glu-Leu-X11-Thr-Ile-Leu-Asp-Ala-Leu-Ala-Ala-Arg-Asp-Phe-Ile-Ala-Trp-Leu-Ile-Ala-Thr-Lys-Ile-Thr-Asp-Z-R
(式中、
は、水素、C1~4アルキル(例えばメチル)、アセチル、ホルミル、ベンゾイル、またはトリフルオロアセチルであり、
X5は、SerまたはThrであり、
X11は、AlaまたはSerであり、
は、NHまたはOHであり、
およびZは、独立して、存在しないまたはLysの1~6個のアミノ酸単位のペプチド配列である)
によって表され、
方法が、(a)約2mg/mL~約30mg/mLの濃度のGLP-2類似体を、(b)約5mM~約50mMの濃度で存在する、ヒスチジン緩衝液、メシル酸塩緩衝液、酢酸塩緩衝液、グリシン緩衝液、リジン緩衝液、トリス緩衝液、ビス-トリス緩衝液、またはMOPS緩衝液からなる群から選択される緩衝液と、(c)約90mM~約360mMの濃度で存在する、マンニトール、ショ糖、グリセロール、ソルビトール、およびトレハロースからなる群から選択される非イオン性張性調節剤と、(d)約6.6~約7.4のpHを有する製剤を得るための適量のアルギニンと、調合するステップを含み、
製剤が、共有結合したオリゴマー生成物の形態のGLP-2類似体を5%以下含有する、方法を提供する。場合によって、本発明のこの態様において、GLP-2類似体の共有結合したオリゴマーの形成は、製剤中のGLP-2類似体の濃度に反比例して依存する。
【0026】
さらなる態様において、本発明は、2~8℃で保存された場合、24カ月間安定である液体医薬製剤において、グルカゴン様ペプチド2(GLP-2)類似体またはその薬学的に許容される塩もしくは誘導体の共有結合したオリゴマー生成物の形成を低減させるための製剤の使用であって、GLP-2類似体が、次式
-Z-His-Gly-Glu-Gly-X5-Phe-Ser-Ser-Glu-Leu-X11-Thr-Ile-Leu-Asp-Ala-Leu-Ala-Ala-Arg-Asp-Phe-Ile-Ala-Trp-Leu-Ile-Ala-Thr-Lys-Ile-Thr-Asp-Z-R
(式中、
は、水素、C1~4アルキル(例えばメチル)、アセチル、ホルミル、ベンゾイル、またはトリフルオロアセチルであり、
X5は、SerまたはThrであり、
X11は、AlaまたはSerであり、
は、NHまたはOHであり、
およびZは、独立して、存在しないまたはLysの1~6個のアミノ酸単位のペプチド配列である)
によって表され、
製剤が、
(a)約2mg/mL~約30mg/mLの濃度のGLP-2類似体と、
(b)約5mM~約50mMの濃度で存在する、ヒスチジン緩衝液、メシル酸塩緩衝液、酢酸塩緩衝液、グリシン緩衝液、リジン緩衝液、トリス緩衝液、ビス-トリス緩衝液、およびMOPS緩衝液からなる群から選択される緩衝液と、
(c)約90mM~約360mMの濃度の、マンニトール、ショ糖、グリセロール、ソルビトール、およびトレハロースからなる群から選択される非イオン性張性調節剤と、
(d)約6.6~約7.4のpHを有する製剤を得るのに適量のアルギニン
とを含み、
共有結合したオリゴマー生成物の形態のGLP-2類似体を5%以下含有する、
使用を提供する。場合によって、本発明のこの態様において、GLP-2類似体の共有結合したオリゴマーの形成は、製剤中のGLP-2類似体の濃度に反比例して依存する。
【0027】
さらなる態様において、本発明は、2~8℃で保存された場合、24カ月間安定である液体医薬製剤において、グルカゴン様ペプチド2(GLP-2)類似体またはその薬学的に許容される塩もしくは誘導体を含む液体医薬製剤の粘度を調節するための製剤の使用であって、GLP-2類似体が、次式、
-Z-His-Gly-Glu-Gly-X5-Phe-Ser-Ser-Glu-Leu-X11-Thr-Ile-Leu-Asp-Ala-Leu-Ala-Ala-Arg-Asp-Phe-Ile-Ala-Trp-Leu-Ile-Ala-Thr-Lys-Ile-Thr-Asp-Z-R
(式中、
は、水素、C1~4アルキル(例えばメチル)、アセチル、ホルミル、ベンゾイル、またはトリフルオロアセチルであり、
X5は、SerまたはThrであり、
X11は、AlaまたはSerであり、
は、NHまたはOHであり、
およびZは、独立して、存在しないまたはLysの1~6個のアミノ酸単位のペプチド配列である)
によって表され、
製剤が、
(a)約2mg/mL~約30mg/mLの濃度のGLP-2類似体と、
(b)約5mM~約50mMの濃度で存在する、ヒスチジン緩衝液、メシル酸塩緩衝液、酢酸塩緩衝液、グリシン緩衝液、リジン緩衝液、トリス緩衝液、ビス-トリス緩衝液、およびMOPS緩衝液からなる群から選択される緩衝液と、
(c)約90mM~約360mMの濃度の、マンニトール、ショ糖、グリセロール、ソルビトール、およびトレハロースからなる群から選択される非イオン性張性調節剤と、
(d)約6.6~約7.4のpHを有する製剤を得るための適量のアルギニン
とを含み、
製剤中のGLP2類似体から生じる総酢酸塩濃度が、GLP-2類似体1mg当たり11%酢酸塩以下であり、製剤が、25℃で測定された0.8から2.0mPa/秒の間の粘度を有する、
使用を提供する。
【0028】
さらなる態様において、本発明は、次式、
(H-HGEGTFSSELATILDALAARDFIAWLIATKITDKKKKKK-NH2),x(CHCOOH)(式中、xは1.0~8.0である)
を有するグルカゴン様ペプチド2(GLP-2)類似体の酢酸塩を含む固体組成物を提供する。
【0029】
さらなる態様において、本発明は、安定な水性医薬製剤であって、
(a)約2mg/mL~約30mg/mLの濃度の本発明の固体組成物と、
(b)約5mM~約50mMの濃度で存在する、ヒスチジン緩衝液、メシル酸塩緩衝液、酢酸塩緩衝液、グリシン緩衝液、リジン緩衝液、トリス緩衝液、ビス-トリス緩衝液、およびMOPS緩衝液からなる群から選択される緩衝液と、
(c)約90mM~約360mMの濃度の、マンニトール、ショ糖、グリセロール、ソルビトール、およびトレハロースからなる群から選択される非イオン性張性調節剤と、
(d)約6.6~約7.4のpHを有する製剤を得るための適量のアルギニン
とを含み、
共有結合したオリゴマー生成物の形態のGLP-2類似体を5%以下含有し、25℃で測定された0.8から2.0mPa/秒の間の粘度を有する製剤を提供する。
【0030】
本明細書に記載の本発明の態様のすべてにおいて、緩衝液は、ヒスチジン緩衝液、メシル酸塩緩衝液、および酢酸塩緩衝液からなる群から選択してもよい。
本明細書に記載の本発明の態様のすべてにおいて、非イオン性張性調節剤は、マンニトール、ショ糖、グリセロール、およびソルビトールからなる群から選択され得る。
【0031】
一部の実施形態において、製剤は、共有結合したオリゴマー生成物の形態のGLP-2類似体を5%以下含有する。別法としてまたは追加的に、製剤中のGLP-2類似体から生じる総酢酸塩濃度は、GLP-2類似体1mg当たり11%酢酸塩以下である。別法としてまたは追加的に、GLP-2類似体の共有結合したオリゴマーの形成は、製剤中のGLP-2類似体の濃度に反比例して依存する。
【0032】
さらなる態様において、本発明は、グルカゴン様ペプチド2(GLP-2)類似体またはその薬学的に許容される塩もしくは誘導体を含む安定な液体医薬製剤であって、GLP-2類似体が、次式、
-His-Gly-Glu-Gly-X5-Phe-Ser-Ser-Glu-Leu-X11-Thr-Ile-Leu-Asp-Ala-Leu-Ala-Ala-Arg-Asp-Phe-Ile-Ala-Trp-Leu-Ile-Ala-Thr-Lys-Ile-Thr-Asp-Z-R
(式中、
は、水素、C1~4アルキル(例えばメチル)、アセチル、ホルミル、ベンゾイル、またはトリフルオロアセチルであり、
X5は、SerまたはThrであり、
X11は、AlaまたはSerであり、
は、NHまたはOHであり、
は、Lysの6アミノ酸単位のペプチド配列である)
によって表され、本明細書で示された本発明の態様のいずれか1つに記載されるような成分を含む製剤に関する。
【0033】
本発明のこの態様では、グルカゴン様ペプチド2(GLP-2)類似体またはその塩を含む製剤は、潰瘍、消化障害、吸収不良症候群、短腸症候群、盲管症候群、炎症性腸疾患、セリアックスプルー(例えばグルテン過敏性腸症またはセリアック病から生じる)、熱帯性スプルー、低ガンマグロブリン血症性スプルー、腸炎、限局性腸炎(クローン病)、潰瘍性大腸炎、小腸損傷、または短腸症候群(SBS)などの胃腸関連障害の治療および/または予防のために使用してもよい。別法としてまたは追加的に、グルカゴン様ペプチド2(GLP-2)類似体は、放射線性腸炎、感染性もしくは感染後腸炎、または毒性物質もしくはその他の化学療法剤に起因する小腸損傷のような、胃腸関連障害の治療および/または予防のために使用してもよい。この場合、GLP-2類似体による処置は、任意選択で、1つまたは複数の抗がん療法と組み合わせてもよく、したがって、患者に1種もしくは複数種の化学療法剤を投与するステップ、または放射線療法によって患者を処置するステップを含んでもよい。
【0034】
本発明の一部の実施形態において、上記式中、X5はThrであり、かつ/またはX11はAlaである。これらのグルカゴン様ペプチド2(GLP-2)類似体の例としては、以下が挙げられる。
ZP1848 H-HGEGTFSSELATILDALAARDFIAWLIATKITDKKKKKK-NH(配列番号1)
ZP2949 H-HGEGTFSSELATILDALAARDFIAWLIATKITDKKK-OH(配列番号2);
ZP2711 H-HGEGTFSSELATILDALAARDFIAWLIATKITDKK-OH(配列番号3);
ZP2469 H-HGEGTFSSELATILDALAARDFIAWLIATKITDK-OH(配列番号4);
ZP1857 H-HGEGTFSSELATILDALAARDFIAWLIATKITD-NH(配列番号5);または
ZP2530 H-HGEGTFSSELATILDALAARDFIAWLIATKITD-OH(配列番号6)
本発明の一部の実施形態において、上記式中、X5はSerであり、かつ/またはX11はSerである。これらのグルカゴン様ペプチド2(GLP-2)類似体の例としては、以下が挙げられる。
ZP1846 H-HGEGSFSSELSTILDALAARDFIAWLIATKITDKKKKKK-NH(配列番号7)、
ZP1855 H-HGEGSFSSELSTILDALAARDFIAWLIATKITD-NH(配列番号8)、または
ZP2242 H-HGEGSFSSELSTILDALAARDFIAWLIATKITDK-OH(配列番号9)。
【0035】
ここで、本発明の実施形態を、添付の図面に照らして非制限的な例として記載する。ただし、本開示を考慮すると、様々なさらなる態様および本発明の実施形態が当業者には明らかとなるであろう。本明細書において使用する場合、「および/または」は、2つの指定した特徴または要素の各々の、もう一方を含むまたは含まない具体的な開示として用いるものである。例えば、「Aおよび/またはB」は、あたかも本明細書において各々が個々に説明されているかのように、(i)A、(ii)B、ならびに(iii)AおよびB、の各々の具体的な開示として用いられるものである。
【0036】
別段の指示がない限り、上記の特徴の記載および定義は、いかなる本発明の特定の態様または実施形態にも限定されるものではなく、記載されるすべての態様および実施形態に等しく適用する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】ZP1848ペプチドからのオリゴマーの分離を示す典型的なクロマトグラムを示す図である。
図2】製剤の製造後、粘度(四角)および流体力学的半径(z-平均)(丸)が、酢酸塩濃度に応じてどのように変化したかを示す図である。データは、11%酢酸塩を超えると、粘度および流体力学的半径(z-平均)が増加し始めることを示す。
図3】40℃で0~3週間、様々な緩衝液を使用した、20mg/mLでの安定性の評価(開始時100%に対して正規化した)を示す図である。
図4】40℃で0~3週間、様々な緩衝液を使用した、2mg/mLでの安定性(開始時100%に対して正規化した)を示す図である。
図5】40℃で0~3週間、様々な等張化剤を使用した、20mg/mLでの安定性の評価(開始時100%に対して正規化した)を示す図である。
図6】40℃で0~3週間、様々な等張化剤を使用した、2mg/mLでの安定性の評価(開始時100%に対して正規化した)を示す図である。
図7】様々な濃度のZP1848酢酸塩、様々な塩形態、様々な等張化剤および様々な緩衝液を使用した、製剤1~5の純度を示す図である。
図8】25℃で13週間、様々な防腐剤と組み合わせた、ペプチドの安定性を示す図である。
図9】25℃で検討した製剤のHPLC純度を示す図である(加速条件)。
【発明を実施するための形態】
【0038】
定義
別段の指定がない限り、以下の定義は、上記の記載で使用された特定の用語について示すものである。
【0039】
記載および特許請求の範囲を通して、天然アミノ酸については、慣用的な一文字および三文字のコードを使用する。本発明のペプチドのすべてのアミノ酸残基は、好ましくはL-立体配置のアミノ酸残基であるが、D-立体配置アミノ酸が存在していてもよい。
【0040】
好ましい本発明の化合物は、特に腸の成長において、少なくとも1つのGLP-2生物学的活性を有する。GLP-2生物学的活性は、例えば、(例えば)WO2006/117565の実施例に記載されているように、試験動物をGLP-2類似体で処置したまたはGLP-2類似体に曝露させた後、腸全体または腸の一部を測定するインビボでのアッセイで評価することができる。
【0041】
本発明の一部の態様において、GLP-2類似体を含む液体製剤は、製剤中、GLP-2類似体1mg当たり11%以下の酢酸塩の総酢酸塩濃度、より好ましくはGLP-2類似体1mg当たり10%以下の酢酸塩、より好ましくはGLP-2類似体1mg当たり9%以下の酢酸塩、より好ましくはGLP-2類似体1mg当たり8%以下の酢酸塩、より好ましくはGLP-2類似体1mg当たり7%以下の酢酸塩、より好ましくはGLP-2類似体1mg当たり6%以下の酢酸塩、より好ましくはGLP-2類似体1mg当たり5%以下の酢酸塩、より好ましくはGLP-2類似体1mg当たり4%以下の酢酸塩、より好ましくはGLP-2類似体1mg当たり3%以下の酢酸塩、およびより好ましくはGLP-2類似体1mg当たり2%以下の酢酸塩の総酢酸塩濃度を有する。凍結乾燥された原薬中の酢酸塩濃度は、最終的なクロマトグラフィー工程の間に使用される移動相中の酢酸の濃度を調整することによって制御することができる。これによって、11%未満の酢酸塩含有量の原薬が得られることとなる。よって、例えば、GLP-2類似体を20mg/mL有する製剤の場合、総酢酸塩濃度は37mM以下となる。参照として、10%総酢酸塩濃度は34mMに相当し、9%は30mMに、8%は27mMに、7%は24mMに、6%は20mMに相当する。総酢酸塩濃度は、当技術分野で公知の方法、例えばHPLCを使用して決定してもよい。
【0042】
下記の実施例において、本発明の液体製剤の粘度は、総酢酸塩濃度に依存することが示されている。好ましくは、該製剤は、25℃で測定された場合、0.8から2.0mPa/秒の間の粘度を有する。簡便には、粘度は、microVISC(商標)を使用することによって測定してもよい。並行して、流体力学的半径を、動的光散乱(DLS)プレートリーダー(Wyatt DynaPro II)を使用して測定してもよい。試料は、6%酢酸塩を含有するGLP-2類似体の原薬(DS)を含んで調製し、次いで、7.8~15%酢酸塩を有するDSを模倣するために、酢酸塩を加えた。6.7~15%まで様々な酢酸塩濃度を有する製剤を製造して得られたデータを、図2において下記に示す。総酢酸塩濃度を制御する効果は、例えば総酢酸塩濃度を下げることによって本発明の製剤の注入性を調節して、より容易に注射できるより低い粘性の製剤を提供することが可能になることである。
【0043】
本発明による液体製剤は、好ましくは等張液体製剤である。「等張性」は、本発明の製剤が体液と同じまたは同様の浸透圧を有することを意味する。好ましくは、本発明の製剤は、浸透圧計によって測定される場合、約300±60mOsmの浸透圧重量モル濃度を有する。
【0044】
追加的にまたは別法として、本発明は、GLP-2類似体の共有結合したオリゴマーの形成が、製剤中のGLP-2類似体の濃度に反比例して依存することを実証するものである。実施例に示すように、共有結合したオリゴマーのこの量は、サイズ排除クロマトグラフィーを使用し、単量体GLP-2類似体およびオリゴマーそれぞれについてピーク下面積を決定して、決定することができる。これは、Dionex Ultimate3000 HPLCシステムを使用して行うことが可能であり、0.5ml/分の流速の直線勾配を分析のために用いた。移動相は、45%アセトニトリルおよび55%Milli-Q水中0.1%TFAからなった。検出には、215nmの波長を使用した。これは、本発明の製剤が、約2mg/mL~約30mg/mLの濃度の、より好ましくは約15mg/mL~約25mg/mlの濃度の、および最も好ましくは約20mg/mLの濃度のGLP-2類似体を、一般的に含有することを意味する。本発明の一部の態様において、GLP-2類似体の濃度は、製剤が、好ましくは18カ月の保存の後に、共有結合したオリゴマー生成物の形態のGLP-2類似体を、10%以下、より好ましくは5%以下、より好ましくは4%以下、より好ましくは3%以下、およびより好ましくは2%以下含有するように選択されることが好ましい。例示として、共有結合したオリゴマー生成物の量は、2%から5%の間の範囲、より好ましくは2%から4%の間の範囲、および最も好ましくは2%から3%の間の範囲であってもよい。
【0045】
場合によって、本発明の製剤は、1日1回または2回の投与計画で使用してもよい。場合によって、本発明の製剤は、週1回または2回の投与計画で使用してもよい。別法としてまたは追加的に、本発明のGLP-2類似体の投与計画は、2日、2.5日、3日、3.5日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、または12日、期間を隔てた複数回またはコースの投薬を含んでもよい。好ましい実施形態において、投薬は、3日、3.5日、4日、5日、6日、7日、または8日、期間を隔てる。好ましい実施形態において、投薬は、3日、3.5日、4日、または7日、期間を隔てる。当技術分野では理解されるように、投薬間の期間は、ある程度違っていてもよいため、投薬ごとおよびすべての投薬は、正確に同じ期間で隔てられていない。これは、多くの場合、医師の判断下で定められることとなる。よって、投薬は、臨床的に許容できる範囲の期間、例えば、約2日から約10日間までの、または約3日もしくは4日から約7日もしくは8日までの期間を隔ててもよい。
【0046】
本発明の製剤は、GLP-2類似体の安定な液体医薬製剤である。「安定な」製剤とは、その中のペプチドが、保存中、その物理的安定性および/もしくは化学的安定性ならびに/または生物学的活性を実質的に保持する製剤である。好ましくは、該製剤は、保存中、その物理的および化学的安定性ならびにその生物学的活性を実質的に保持する。保存期間は、一般的に、製剤の所期の有効期間に基づいて選択される。本発明の製剤は、安定な液体製剤、例えば安定な水性液体製剤として提供される。タンパク質の安定性を測定する様々な分析技術が当技術分野で利用可能であり、例えば、Peptide and Protein Drug Delivery、247~301ページ、Vincent Lee編、Marcel Dekker,Inc.、New York、N.Y.、出版(1991年)およびJones,A.Adv.Drug Delivery Rev.10:29~90ページ(1993年)の中で概説されている。本発明において、「安定な」製剤には、2~8℃で少なくとも18カ月間保存された後に、製剤中、少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、および最も好ましくは少なくとも99%のGLP-2類似体が活性である製剤が含まれる。
【0047】
安定性は、選択した期間のために選択した温度で、例えば、製剤を試験する期間を短くするために温度を上げて測定してもよい。一般的に、2から8℃の間の温度での保存は、通常の冷蔵条件下での保存を意味する。ある実施形態において、製剤は、そのような条件下で、少なくとも12カ月間、より好ましくは少なくとも18カ月間、より好ましくは少なくとも24カ月間、安定である。安定性は、凝集体形成の評価(例えば、サイズ排除クロマトグラフィーを使用して、濁度を測定することによって、かつ/または視覚的検査によって);陽イオン交換クロマトグラフィー、撮像キャピラリー等電点電気泳動(icIEF)、またはキャピラリーゾーン電気泳動を使用して電荷不均一性を評価することによって;アミノ末端またはカルボキシ末端配列解析;質量分光分析;還元された抗体とインタクトな抗体とを比較するためのSDS-PAGE分析;ペプチドマップ(例えばトリプシンまたはLYS-Cによる)分析;抗体の生物学的活性または抗原結合機能の評価などを含む、実に様々な方法で、定性的および/または定量的に評価することができる。不安定性は、凝集、脱アミド化(例えばAsn脱アミド化)、酸化(例えばMet酸化)、異性化(例えばAsp異性化)、クリッピング/加水分解/断片化(例えばヒンジ領域断片化)、スクシンイミド形成、不対システイン、N末端伸長、C末端プロセシング、グリコシル化の違いなどのうちのいずれか1つまたは複数に関係していてもよい。
【0048】
ペプチドが、例えば、色および/もしくは透明度の視覚的検査で、またはUV光散乱、動的光散乱、円偏光二色性によって、もしくはサイズ排除クロマトグラフィーによって測定される場合に凝集、沈殿、および/または変性の徴候を示さず(またはきわめてわずかな徴候しか示さない)、その生物学的活性をなお保持すると考えられる場合、ペプチドは、医薬製剤中で「その物理的安定性を保持する」。
【0049】
所与の期間における化学的安定性が、ペプチドが下記に定義したようなその生物学的活性なお保持すると考えられるようなものである場合、ペプチドは、医薬製剤中で「その化学的安定性を保持する」。化学的安定性は、ペプチドの化学的に改変された形態を検出し、定量することによって評価することができる。化学的改変は、例えば、HPLCもしくはサイズ排除クロマトグラフィー、SDS-PAGE、および/または質量分析を使用して評価することができる、異性化、酸化、サイズ変更(例えばクリッピング)を含んでいてもよい。その他のタイプの化学的改変としては、例えば、HPLCもしくはイオン交換クロマトグラフィーまたはicIEFによって評価することができる、電荷改変n(例えば脱アミド化の結果として生じる)が挙げられる。
GLP-2類似体
本発明の製剤中に存在するGLP-2類似体は、天然GLP-2と比較して、上記で定義した1つまたは複数のアミノ酸置換、欠失、逆位、または付加を有する。この定義には、同義語のGLP-2ミメティックおよび/またはGLP-2アゴニストも含まれる。さらに、本発明の類似体は、そのアミノ酸側基、α-炭素原子、末端アミノ基、または末端カルボン酸基のうちの1つまたは複数の化学的修飾を、追加的に有してもよい。化学的修飾には、化学的部分の付加、新規結合の創出、および化学的部分の除去が含まれるが、それらだけに限定されない。アミノ酸側基における修飾には、リジンε-アミノ基のアシル化、アルギニン、ヒスチジン、またはリジンのN-アルキル化、グルタミン酸またはアスパラギン酸のカルボン酸基(glutamic or aspartic carboxylic acid group)のアルキル化、およびグルタミンまたはアスパラギンの脱アミド化が含まれるが、限定されない。末端アミノの修飾には、脱アミノ、N-低級アルキル、N-ジ-低級アルキル、およびN-アシル修飾が含まれるが、限定されない。末端カルボキシ基の修飾には、アミド、低級アルキルアミド、ジアルキルアミド、および低級アルキルエステル修飾が含まれるが、限定されない。好ましくは、本明細書において、低級アルキルは、C~Cアルキルである。さらに、1つまたは複数の側基、または末端基は、当業者であるペプチド化学者に公知の保護基によって保護されていてもよい。アミノ酸のα-炭素は、モノ-またはジ-メチル化されていてもよい。
【0050】
一部の態様において、本発明の液体製剤は、次式、
-Z-His-Gly-Glu-Gly-X5-Phe-Ser-Ser-Glu-Leu-X11-Thr-Ile-Leu-Asp-Ala-Leu-Ala-Ala-Arg-Asp-Phe-Ile-Ala-Trp-Leu-Ile-Ala-Thr-Lys-Ile-Thr-Asp-Z-R
(式中、
は、水素、C1~4アルキル(例えばメチル)、アセチル、ホルミル、ベンゾイル、またはトリフルオロアセチルであり、
X5は、SerまたはThrであり、
X11は、AlaまたはSerであり、
は、NHまたはOHであり、ならびに
およびZは、独立して、存在しないまたはLysの1~6個のアミノ酸単位のペプチド配列である)
によって表されるグルカゴン様ペプチド2(GLP-2)類似体、またはその薬学的に許容される塩もしくは誘導体を使用する。
【0051】
本発明の一部の実施形態において、上記式中、X5はThrであり、かつ/またはX11はAlaである。これらのグルカゴン様ペプチド2(GLP-2)類似体の例としては、以下が挙げられる。
ZP1848 H-HGEGTFSSELATILDALAARDFIAWLIATKITDKKKKKK-NH(配列番号1)
ZP2949 H-HGEGTFSSELATILDALAARDFIAWLIATKITDKKK-OH(配列番号2);
ZP2711 H-HGEGTFSSELATILDALAARDFIAWLIATKITDKK-OH(配列番号3);
ZP2469 H-HGEGTFSSELATILDALAARDFIAWLIATKITDK-OH(配列番号4);
ZP1857 H-HGEGTFSSELATILDALAARDFIAWLIATKITD-NH(配列番号5);または
ZP2530 H-HGEGTFSSELATILDALAARDFIAWLIATKITD-OH(配列番号6)
本発明の実施形態において、グルカゴン様ペプチド2(GLP-2)類似体は、ZP1848 H-HGEGTFSSELATILDALAARDFIAWLIATKITDKKKKKK-NH(配列番号1)である。
【0052】
本発明の一部の実施形態において、上記式中、X5はSerであり、かつ/またはX11はSerである。これらのグルカゴン様ペプチド2(GLP-2)類似体の例としては、以下が挙げられる。
ZP1846 H-HGEGSFSSELSTILDALAARDFIAWLIATKITDKKKKKK-NH(配列番号7)、
ZP1855 H-HGEGSFSSELSTILDALAARDFIAWLIATKITD-NH(配列番号8)、または
ZP2242 H-HGEGSFSSELSTILDALAARDFIAWLIATKITDK-OH(配列番号9)
本発明の実施形態において、グルカゴン様ペプチド2(GLP-2)類似体は、ZP1846 H-HGEGSFSSELSTILDALAARDFIAWLIATKITDKKKKKK-NH(配列番号7)である。
【0053】
本発明のペプチド(原薬)は、塩またはその他の誘導体の形態でも提供される可能性があることを理解されたい。塩には、酸付加塩および塩基性塩などの、薬学的に許容される塩が含まれる。酸付加塩の例としては、塩酸塩、クエン酸塩、塩化物塩、および酢酸塩が挙げられる。好ましくは、塩は酢酸塩である。一般的に、塩は、塩化物塩ではないことが好ましい。塩基性塩の例としては、カチオンが、ナトリウムおよびカリウムなどのアルカリ金属、カルシウムなどのアルカリ土類金属、およびアンモニウムイオンN(R(R)(式中、RおよびRは、独立して、場合によって置換されているC1~6-アルキル、場合によって置換されているC2~6-アルケニル、場合によって置換されているアリール、または場合によって置換されているヘテロアリールを表わす)から選択される塩が挙げられる。薬学的に許容される塩のその他の例は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」、第17版、Alfonso R.Gennaro編、Mark Publishing Company、Easton、PA、U.S.A.、1985年、およびそれ以降の版、ならびにEncyclopaedia of Pharmaceutical Technologyに記載されている。
【0054】
好ましい実施形態において、本発明のGLP-2類似体の酢酸塩は、ZP1848-酢酸塩、ZP2949-酢酸塩、ZP2711-酢酸塩、ZP2469-酢酸塩、ZP1857-酢酸塩、ZP2530-酢酸塩、ZP1846-酢酸塩、ZP1855-酢酸塩、およびZP2242-酢酸塩からなる群から選択される。本文脈において、「ZP1848-酢酸塩」という用語は、酢酸塩の形態であるZP1848分子を指す。GLP-2類似体の酢酸塩は、次式、(GLP-2類似体),x(CHCOOH)(式中、xは1.0~8.0であり、すなわち、式中、xは1.0、2.0、3.0、4.0、5.0、6.0、7.0、または8.0である)によって表わすことができる。GLP-2類似体の酢酸塩のいかなる組成物でも、異なる数の酢酸塩分子を有する分子が存在する可能性があるため、xは必ずしも整数ではない。場合によって、xは、4.0から8.0であり、xは6.0から8.0であり、またはxは4.0から6.5である。場合によって、xは4.0から6.0であり、xは2.0から7.0であり、xは3.0から6.0であり、xは4.0から6.0であり、またはxは4.0から8.0である。
【0055】
好ましい実施形態において、GLP-2類似体は、ZP1848-酢酸塩、またはH-HGEGTFSSELATILDALAARDFIAWLIATKITDKKKKKK-NH酢酸塩(配列番号1)もしくは(H-HGEGTFSSELATILDALAARDFIAWLIATKITDKKKKKK-NH),x(CHCOOH)(式中、xは1.0~8.0である)である。
【0056】
したがって、さらなる態様において、本発明は、グルカゴン様ペプチド2(GLP-2)類似体の酢酸塩を含む固体組成物を提供する。固体組成物は、本発明の液体製剤を作製するために使用される賦形剤との調合に有用である。一実施形態において、本発明は、次式、
(H-HGEGTFSSELATILDALAARDFIAWLIATKITDKKKKKK-NH2),x(CHCOOH)(式中、xは1.0~8.0である)
を有するグルカゴン様ペプチド2(GLP-2)類似体の酢酸塩を含む固体組成物を提供する。
【0057】
GLP-2類似体当たり8.0酢酸塩分子という上限は、11%未満の酢酸塩という酢酸塩含有量に相当し、これを調合して、25℃で測定された0.8から2.0mPa/秒の間の粘度を有することが可能である。
【0058】
GLP-2類似体の各分子に結合した酢酸塩分子の数の範囲が、製剤のこの成分の分子量範囲を定める。例えば、ZP1848の酢酸塩の場合、GLP-2類似体の各分子に結合した酢酸塩分子の数の範囲が、ZP1848-酢酸塩の分子量範囲を定める。例として、ZP1848の各分子と1酢酸塩当量とでは、分子量=4316+60=4376Daとなる。したがって、ZP1848に酢酸塩当量を増していく場合の分子量は、1酢酸塩当量=4376Da、2酢酸塩当量=4436Da、3酢酸塩当量=4496Da、4酢酸塩当量=4556Da、5酢酸塩当量=4616Da、6酢酸塩当量=4676Da、7酢酸塩当量=4736Da、および8酢酸塩当量=4796Daである。これによって、次いで、分子量範囲は、1~8酢酸塩当量=4376Da~4796Da;4~8酢酸塩当量=4556Da~4796Da、および6~8酢酸塩当量=4676Da~4796Daと定められる。
【0059】
本発明のGLP-2類似体のその他の誘導体には、Mn2+およびZn2+などの金属イオン、インビボで加水分解性のエステルなどのエステル、遊離酸もしくは塩基、水和物、プロドラッグ、または脂質を有する、配位化合物が含まれる。エステルは、当技術分野で公知の技術を使用して、化合物中に存在するヒドロキシルまたはカルボン酸基と適切なカルボン酸またはアルコール反応パートナーとの間で形成することができる。化合物のプロドラッグとしての誘導体は、インビボまたはインビトロで、親化合物のうちの1つに転換可能である。典型的には、化合物の生物学的活性のうちの少なくとも1つは、化合物のプロドラッグ形態では低減されることとなり、プロドラッグの転換によって活性化されて、化合物またはその代謝産物を放出することができる。プロドラッグの例としては、生体内の本来の場所で除去され活性化合物を放出することができる、またはインビボで薬剤の排除を阻害するよう作用することができる保護基の使用が挙げられる。
【0060】
およびZは、独立して存在し、かつ/もしくは存在せず、またはLysの1~6個のアミノ酸単位のペプチド配列、すなわち、1、2、3、4、5、または6個のLys残基である。Lys残基は、D-またはL-立体配置のどちらかを有してもよいが、L-立体配置を有する。特に好ましい配列は、Zは4、5、または6個の連続したリジン残基、および特に6個の連続したリジン残基の配列である。例示的な配列Zが、WO01/04156に示されている。ある実施形態において、Zは存在しない。そのような場合、Zは存在しても存在していなくてもよい。
GLP-2類似体の製剤
GLP-2類似体の製剤は、すぐ使用できる製剤である。本明細書において使用される「すぐ使用できる」という用語は、指定の投与経路による使用の前に、所定の量の希釈剤、例えば、注射用の水、またはその他の好適な希釈剤による構成または希釈を必要としない製剤を指す。
【0061】
本明細書に記載したように、本発明のGLP-2類似体の液体製剤は、緩衝液、非イオン性張性調節剤、および最終製剤のpHを得るための適量のアルギニンを含む。通常の製薬慣行に従い、本発明の製剤は、滅菌済であり、かつ/または還元剤を含まない。場合によって、本発明の液体製剤は、水性の液体製剤である。場合によって、本発明の液体製剤は、非水性の液体製剤である。
【0062】
本明細書において使用される「緩衝液」という用語は、医薬製剤のpHを安定化する薬学的に許容される賦形剤を意味する。好適な緩衝液は、当技術分野では公知であり、文献でみつけることができる。実施例におけるスクリーニング実験は、ヒスチジン緩衝液、メシル酸塩緩衝液、酢酸塩緩衝液、グリシン緩衝液、リジン緩衝液、トリス緩衝液、ビス-トリス緩衝液、およびMOPS緩衝液から選択される緩衝液がGLP-2類似体を溶解し、粘性にせず、濁らせず、またはペプチド薬剤を沈殿させない安定な製剤をもたらしたため、本発明の製剤がこれらの緩衝液を含むことが好ましいことを示している。好ましい実施形態において、緩衝液は、ヒスチジン緩衝液、例えばL-ヒスチジンである。一般的に、緩衝液は、約5mM~約50mMの濃度、より好ましくは約5mM~約25mMの濃度、および最も好ましくは約15mMの濃度で存在することとなる。本出願における実験に基づくと、緩衝液は、リン酸塩緩衝液、クエン酸塩緩衝液、クエン酸塩/トリス緩衝液、および/またはコハク酸塩緩衝液ではないことが好ましい。
【0063】
本明細書において使用される「張性調節剤」という用語は、製剤の張性を調節するために使用される薬学的に許容される等張化剤を意味する。本発明の製剤は好ましくは等張性であり、すなわち、本発明の製剤は、ヒト血清と実質的に同じである浸透圧を有する。製剤中で使用される張性調節剤は、好ましくは非イオン性張性調節剤であり、好ましくはマンニトール、ショ糖、グリセロール、ソルビトール、およびトレハロースからなる群から選択される。好ましい非イオン性張性調節剤は、マンニトール、例えばD-マンニトールである。張性調節剤の濃度は、特に製剤が等張であることが意図される場合、その他の製剤の成分の濃度に依存することとなる。典型的には、非イオン性張性調節剤は、約90mM~約360mMの濃度、より好ましくは約150mM~約250mMの濃度、および最も好ましくは約230mMの濃度で使用されることとなる。
【0064】
一般的に、本発明の液体製剤の成分および量は、約6.6~約7.4のpH、より好ましくは約6.8~約7.2のpH、および最も好ましくは約7.0のpHを有する製剤が得られるように選択される。所望のpH範囲内となるように、アルギニンを適量(q.s.)加えてpHを調整してもよい。実施例に示した実験に基づくと、pH調整は塩酸または水酸化ナトリウムを使用して行わないことが好ましい。
【0065】
一実施形態において、本発明の液体製剤は、約2mg/mL~約30mg/mLの濃度のGLP-2類似体と、約5mM~約50mMの濃度で存在する、ヒスチジン緩衝液、メシル酸塩緩衝液、酢酸塩緩衝液、グリシン緩衝液、リジン緩衝液、トリス緩衝液、ビス-トリス緩衝液、およびMOPS緩衝液からなる群から選択される緩衝液と、約90mM~約360mMの濃度のマンニトール、ショ糖、グリセロール、ソルビトール、およびトレハロースからなる群から選択される非イオン性張性調節剤と、約6.6~約7.4のpHを得るための適量のアルギニンとからなる。
【0066】
一実施形態において、本発明の液体製剤は、約2mg/mL~約30mg/mLの濃度のGLP-2類似体と、約5mM~約50mMの濃度で存在する、ヒスチジン緩衝液、メシル酸塩緩衝液、および酢酸塩緩衝液からなる群から選択される緩衝液と、約90mM~約360mMの濃度のマンニトール、ショ糖、グリセロール、およびソルビトールからなる群から選択される非イオン性張性調節剤と、約6.6~約7.4のpHを得るための適量のアルギニンとからなる。
【0067】
さらなる実施形態において、本発明の液体製剤は、約20mg/mLの濃度のGLP-2類似体、約15mMの濃度のヒスチジン緩衝液、約230mMの濃度のマンニトール、および約7.0のpHを得るための適量のアルギニンを含む。
【0068】
さらなる実施形態において、本発明の液体製剤は、約20mg/mLの濃度のGLP-2類似体、約15mMの濃度のヒスチジン緩衝液、約230mMの濃度のマンニトールを含み、pHが約7.0である。
【0069】
さらなる実施形態において、本発明の液体製剤は、約20mg/mLの濃度のZP1848-酢酸塩またはH-HGEGTFSSELATILDALAARDFIAWLIATKITDKKKKKK-NH酢酸塩(配列番号1)、約15mMの濃度のヒスチジン緩衝液、約230mMの濃度のマンニトール、および約7.0のpHを得るための適量のアルギニンを含む。
【0070】
さらなる実施形態において、本発明の液体製剤は、約20mg/mLの濃度のZP1848-酢酸塩またはH-HGEGTFSSELATILDALAARDFIAWLIATKITDKKKKKK-NH酢酸塩(配列番号1)、約15mMの濃度のヒスチジン緩衝液、約230mMの濃度のマンニトールを含み、pHが約7.0である。
【0071】
さらなる実施形態において、本発明の液体製剤は、約20mg/mLの濃度の、次式、
(H-HGEGTFSSELATILDALAARDFIAWLIATKITDKKKKKK-NH2),x(CHCOOH)(式中、xは1.0~8.0である)を有するグルカゴン様ペプチド2(GLP-2)類似体の酢酸塩、約15mMの濃度のヒスチジン緩衝液、約230mMの濃度のマンニトールを含み、pHが約7.0である。
【0072】
さらなる実施形態において、1日1回または2回の投与計画において、本発明の液体製剤は、約20mg/mLの濃度の、次式、
(H-HGEGTFSSELATILDALAARDFIAWLIATKITDKKKKKK-NH2),x(CHCOOH)(式中、xは1.0~8.0である)を有するグルカゴン様ペプチド2(GLP-2)類似体の酢酸塩、約15mMの濃度のヒスチジン緩衝液、約230mMの濃度のマンニトールを含み、pHが約7.0である。
【0073】
さらなる実施形態において、週1回または2回の投与計画において、本発明の液体製剤は、約20mg/mLの濃度の、次式、
(H-HGEGTFSSELATILDALAARDFIAWLIATKITDKKKKKK-NH2),x(CHCOOH)(式中、xは1.0~8.0である)を有するグルカゴン様ペプチド2(GLP-2)類似体の酢酸塩、約15mMの濃度のヒスチジン緩衝液、約230mMの濃度のマンニトールを含み、pHが約7.0である。
【0074】
さらなる実施形態において、本発明の液体製剤は、約20mg/mLの濃度のZP1846 H-HGEGSFSSELSTILDALAARDFIAWLIATKITDKKKKKK-NH2(配列番号7)、約15mMの濃度のヒスチジン緩衝液、約230mMの濃度のマンニトール、および約7.0のpHを得るための適量のアルギニンを含む。
【0075】
さらなる実施形態において、本発明の液体製剤は、約20mg/mLの濃度のZP1846 H-HGEGSFSSELSTILDALAARDFIAWLIATKITDKKKKKK-NH(配列番号7)、約15mMの濃度のヒスチジン緩衝液、約230mMの濃度のマンニトールを含み、pHが約7.0である。
【0076】
場合によって、本発明の液体製剤は、防腐剤をさらに含む。場合によって、防腐剤は、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、メチルパラベンおよびソルビン酸カリウムからなる群から選択される防腐剤である。一般的に、防腐剤は、最終製剤量の約0.1%~約1%の濃度で存在する。
【0077】
さらなる実施形態において、液体製剤は、水性液体製剤、様々な親水性または疎水性溶媒中液体製剤、乳剤、および液体懸濁剤からなる群から選択される。好ましい実施形態において、液体製剤は、水性液体製剤である。
【0078】
例として、本発明の液体製剤は、GLP-2類似体の原液、緩衝液、非イオン性張性調節剤、および任意選択で防腐剤を水で混合するステップ、任意選択で、得られた溶液を希釈するステップならびに目標のpHに調整するステップによって調製してもよい。簡便には、各賦形剤の所望の濃度を得るために、緩衝液および非イオン性張性調節剤の溶液をはじめに混合してもよい。次いで、GLP-2類似体の溶液を加え、必要に応じて、例えば酢酸/0.5M L-アルギニンを使用してpH調整してもよい。最終液量に達するまで水を加えた。
【0079】
好ましくは、グルカゴン様ペプチド2(GLP-2)類似体は、非経口的に、好ましくは注射によって、最も典型的には皮下注射、筋肉内注射、静脈内注射、または腹腔内注射によって患者に投与される。皮下注射による投与が好ましい。注射は、医師、看護師、もしくはその他の医療従事者が行ってもよく、または患者が自己投与してもよい。本明細書に記載したように、一部の態様において、本発明の製剤は、製剤のプレフィルドシリンジ、注射型ペンまたはその他の注射器装置への充填を容易にする粘度を有する。これは、例えば複数回使用するバイアルから計量する必要性なく、患者に投与する製剤の用量が事前に決定しているという利点を有し得る。したがって、その他の態様において、本発明は、安定な、例えば、本発明によるGLP-2類似体の水性の安定な医薬製剤、または本発明によるGLP-2類似体を含む水性液体製剤を含有するプレフィルドシリンジもしくは注射器装置もしくはペン型注射器などを、収納する容器を含む、製品またはキットを提供する。
病状
本発明のGLP-2類似体製剤は、有効量のGLP-2類似体または本明細書に記載したようなその塩を投与することによって食道の上部消化管を含む胃腸障害を患う個人を予防または処置する医薬品として有用である。胃腸関連障害には、あらゆる病因の潰瘍(例えば、消化性潰瘍、薬剤誘発潰瘍、感染またはその他の病原体に関連した潰瘍)、消化障害、吸収不良症候群、短腸症候群、盲管症候群、炎症性腸疾患、セリアックスプルー(例えば、グルテン過敏性腸症またはセリアック病から生じる)、熱帯性スプルー、低ガンマグロブリン血症性スプルー、腸炎、潰瘍性大腸炎、小腸損傷、および化学療法に誘発された下痢/粘膜炎(CID)が挙げられる。
【0080】
上述のように、一般的に、小腸量の増大ならびにこの結果としての小腸粘膜構造および機能の正常化、ならびに/または正常な小腸粘膜構造および機能の維持から利益を得ると考えられる個人が、本GLP-2類似体による処置の候補である。GLP-2類似体で処置され得る特定の状態には、様々な形態のスプルー:加熱によるα-グリアジンに対する中毒反応に起因し、グルテン性腸症またはセリアック病の結果であることもあり、小腸の絨毛の著しい喪失を特徴とするセリアックスプルー;感染に起因し、絨毛の部分的扁平化を特徴とする熱帯性スプレー;分類不能型免疫不全症または低ガンマグロブリン血症を有する患者において一般に認められ、絨毛高の著しい減少を特徴とする低ガンマグロブリン血症性スプレーなどが挙げられる。GLP-2類似体処置の治療有効性は、絨毛形態を調べる腸の生検によって、栄養吸収の生化学的評価によって、患者の体重増加によって、またはこれらの状態に伴う症状の改善によってモニタリングしてもよい。
【0081】
本発明のGLP-2類似体で処置され得る、またはGLP-2類似体が治療的および/または予防的に有用であり得る別の特定の状態は、短腸(short bowel)症候群(SBS)、別名、短腸(short gut)症候群または単純短腸(simply short gut)であり、これは、外科的切除、先天性欠損、もしくは疾患に関連した腸の吸収の低下の結果、次いで患者が通常の食事において体液平衡、電解質平衡、および栄養バランスを維持することができないことに起因する。一般的には切除の2年後に順応するにもかかわらず、SBS患者では、食物摂取量が低下し、体液が減少している。
【0082】
本発明のGLP-2類似体で処置され得る、またはGLP-2類似体が予防的に有用であり得るその他の状態には、上述の状態に加えて、放射線性腸炎、感染性または感染後腸炎、およびがん化学療法剤または毒性薬剤に起因する小腸損傷が挙げられる。
【0083】
GLP-2類似体は、栄養失調、例えば悪液質および食欲不振の治療にも使用してもよい。
本発明の特定の実施形態は、腸の損傷および機能障害の予防および/または治療のために本ペプチドを使用することに関する。そのような損傷および機能障害は、がん化学療法の処置の周知の副作用である。化学療法の適用は、粘膜炎、下痢、細菌移行、吸収不良、腹部疝痛、胃腸出血、および嘔吐などの胃腸系に関連した望まない副作用を頻繁に伴う。これらの副作用は、腸管上皮の構造的および機能的損傷の臨床的帰結であり、しばしば化学療法の投与量および頻度を減らさざるを得なくなる。
【0084】
本GLP-2ペプチド類似体の投与は、腸陰窩における栄養作用を増強し、化学療法によって損傷した腸管上皮に取って代わる新しい細胞を迅速にもたらし得る。本ペプチドの投与によって達成される究極の目標は、がんの治療のための最適な化学療法計画を創出すると同時に、化学療法処置を受ける患者の胃腸損傷関連の罹患率を低下させることである。放射線療法を受けているまたは受けようとしている患者に、本発明に従って予防的または治療的処置を併用して提供してもよい。
【0085】
小腸粘膜の幹細胞は、増殖速度が速いため、化学療法の細胞傷害性作用に特に影響を受けやすい(Keefeら、Gut、47:632~7ページ、2000年)。小腸粘膜に対する化学療法誘発性損傷は、臨床的に胃腸粘膜炎と呼ばれることが多く、小腸の吸収およびバリア機能障害を特徴とする。例えば、広範に使用される化学療法剤、5-FU、イリノテカン、およびメトトレキサートは、げっ歯類の小腸において、アポトーシスを増加させ、その結果、絨毛萎縮および陰窩形成不全をもたらすことが示されている(Keefeら、Gut 47:632~7ページ、2000年;Gibsonら、J Gastroenterol.Hepatol.9月号;18(9):1095~1100ページ、2003年;Tamakiら、J.Int.Med.Res.31(1):6~16ページ、2003年)。ヒトでは、化学療法剤は、投与後24時間で腸陰窩においてアポトーシスを増加させ、次いで、化学療法の3日後に、絨毛面積、陰窩長、陰窩当たりの有糸分裂数、および腸細胞高を減少させることが示されている(Keefeら、Gut、47:632~7ページ、2000年)。このように、小腸内の構造的変化が、直接的に、腸機能障害、および場合によって下痢をもたらす。
【0086】
がん化学療法の後の胃腸粘膜炎は、さらに大きな問題であり、徐々に緩和するもののいったん確立すると本質的に治療不能である。一般に使用される細胞分裂抑制性がん薬剤、5-FUおよびイリノテカンを用いて行われた研究では、これらの薬剤による有効な化学療法は、主として小腸の構造的完全性および機能に影響を与え、一方で結腸はさほど影響を受けず、主に粘液形成の増加に反応することが実証された(Gibsonら、J.Gastroenterol.Hepatol.9月号;18(9):1095~1100ページ、2003年;Tamakiら、J Int.Med.Res.31(1):6~16ページ、2003年)。
【0087】
GLP-2類似体を含む本発明の製剤は、胃腸損傷および化学療法剤の副作用の予防および/または治療において有用であり得る。この潜在的に重要な治療的適用は、現在使用されている化学療法剤、例えば、これらに限定されるものではないが、5-FU、アルトレタミン、ブレオマイシン、ブスルファン、カペシタビン、カルボプラチン、カルムスチン、クロラムブシル、シスプラチン、クラドリビン、クリサンタスパーゼ、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキソルビシン、エピルビシン、エトポシド、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシカルバミド、イダルビシン、イホスファミド、イリノテカン、リポソームドキソルビシン、ロイコボリン、ロムスチン、メルファラン、メルカプトプリン、メスナ、メトトレキサート、マイトマイシン、ミトキサントロン、オキサリプラチン、パクリタキセル、ペメトレキセド、ペントスタチン、プロカルバジン、ラルチトレキセド、ストレプトゾシン、テガフール-ウラシル、テモゾロミド、チオテパ、チオグアニン(Tioguanine)/チオグアニン(Thioguanine)、トポテカン、トレオスルファン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、ブレオマイシン、ブスルファン、カペシタビン、カルボプラチン、カルムスチン、クロラムブシル、シスプラチン、クラドリビン、クリサンタスパーゼ、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキソルビシン、エピルビシン、エトポシド、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシカルバミド、イダルビシン、イホスファミド、イリノテカン、リポソームドキソルビシン、ロイコボリン、ロムスチン、メルファラン、メルカプトプリン、メトトレキサート、マイトマイシン、ミトキサントロン、オキサリプラチン、パクリタキセル、ペメトレキセド、ペントスタチン、プロカルバジン、ラルチトレキセド、ストレプトゾシン、テガフール-ウラシル、テモゾロミド、チオテパ、チオグアニン/チオグアニン、トポテカン、トレオスルファン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、およびビノレルビンなどに対して適用することができる。
製剤の送達
一部の態様において、本発明は、非経口投与を目的とし、例えばバイアル、プレフィルドシリンジ、注入ポンプ、着用型注射器、使い捨て自己注射器、または用量調整可能自己注射器中での使用に好適である、GLP-2類似体のすぐ使用できる製剤に関する。
【実施例
【0088】
下記の実施例は、本発明の好ましい態様を例示するためのものであり、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。本明細書に記載の投与計画に従って投与されるGLP-2類似体は、内容が全体として参照により明らかに組み込まれるWO2006/117565に記載されている固相ペプチド合成などの方法によって調製してもよい。
【0089】
実施例1
ZP1848-酢酸塩および類似のGLP-2類似体の合成
ZP1848-酢酸塩ペプチドを、標準的なカップリング条件のFmoc固相ペプチド合成(SPPS)手法を使用して合成した。合成が完了した後、ペプチド配列を脱保護し、固形支持体から切断し、分取用逆相HPLCを使用して粗ペプチドを精製した。適切な濃度の酢酸を含む最終クロマトグラフィー工程の間、このペプチドを、移動相にかけ、続いて凍結乾燥することによって所望の酢酸塩の形態に転換した。得られた原薬生成物は、11%未満の酢酸塩含有量または8当量未満の酢酸塩を有した:バッチ1(6%酢酸塩、4.6当量の酢酸塩)、バッチ2(7%酢酸塩、5.4当量の酢酸塩)、およびバッチ3(6%酢酸塩、4.6当量の酢酸塩)。この合成および精製プロトコールは、本発明の製剤中で使用されるその他のGLP-2類似体を作製するために改変してもよい。
【0090】
実施例2
GLP-2類似体ZP1848-酢酸塩の医薬製剤中での共有結合したオリゴマーの形成の調査
材料および方法
共有結合したオリゴマーの検出には、Dionex Ultimate3000 HPLCシステムを0.5ml/分の流速の直線勾配で使用して分析した。移動相は、45%アセトニトリルおよび55%Milli-Q水中0.1%TFAから構成した。検出には215nmの波長を使用した。注入量は、4μgペプチドとした。共有結合型ペプチドの分離用に使用するカラムは、4μm粒径および300*4.6mmの寸法のTSKgel SuperSW2000(TSK BioScience)とした。全実行時間は25分とした。ペプチド単量体の化学的安定性評価には、酸性移動相およびアセトニトリル勾配のC18カラムを使用した。
【0091】
水(Milli-Q)で、マンニトール(700mM)、L-ヒスチジン(200mM)、およびZP1848ペプチド(酢酸塩;60mg/mL)の原液を調製した。マンニトールおよびヒスチジン溶液を適切な量で混合して、230mMマンニトールおよび15mMヒスチジンを得た。ペプチド原液を、0.2、2、および20mg/mLの最終濃度までそれぞれ加えた。水を、最終量の90%まで加えた。必要に応じて、1M酢酸/0.5M L-アルギニンを使用して、pHをpH7に調整した。水を、最終量に達するまで加えた。
結果および考察
液体製剤中のペプチドまたはタンパク質薬剤の濃度を上げると、より高い確率で共有結合反応をもたらす質量作用効果の結果として二量体、三量体、およびより高次のオリゴマーの濃度が上がることは、当技術分野では既知である(van Maarschalkerweerdら、Intrinsically Disord.Proteins.2015年;3(1):e1071302を参照されたい)。よって、共有結合した高分子量分解物(cHMWDP)の形成は、原薬濃度に応じて増加し、製剤中で利用可能な生物学的に活性である単量体ペプチドの量を低減させる作用を有する。したがって、このことを、GLP-2類似体の製剤であるZP1848-酢酸塩中で検討した。
【0092】
ZP1848-酢酸塩単量体からのオリゴマーの分離について、典型的なクロマトグラムを図1に示す。ZP1848-酢酸塩のオリゴマーは、ZP1848-酢酸塩単量体から十分に分離され、すべて1つピークとして集約している。ピークの面積百分率を使用して、オリゴマー、特に共有結合した二量体および三量体の量を定量化した。
【0093】
同じ製剤で0.2、2、および20mg/mL ZP1848を含有する製剤を、2~8℃で24カ月保存した後に分析した。主に二量体(共有結合した2つのZP1848-酢酸塩分子)が形成しているが、三量体もある程度ある(LC-MSにより検証)。0.2mg/mLを含有する製剤はオリゴマーを2.6%有しており、2mg/mLでは1.91%有し、20.0mg/mLでは1.35%有する。オリゴマー量の初期値は、0.1%未満であった。
【0094】
【表1】
【0095】
驚くべきことに、ZP1848-酢酸塩(グレパグルチド)を2~8℃で長期保存する間、共有結合したオリゴマーの形成は濃度依存性であるが、一般の予想に反して、オリゴマー形成の濃度依存はGLP-2類似体の濃度の上昇に反比例して依存することが明らかとなった。特定の理論に縛られることを望むものではないが、本発明者らは、薬物濃度の上昇に従った共有結合したオリゴマーの形成の減少は、GLP-2類似体のリジン尾部が、GLP-2類似体分子が共有結合するのではなく弱くまとまって会合しているより高次の種の形成をもたらす競争反応を促進する結果であると考える。このことは、これらの弱く会合した種が、共有結合したオリゴマーが形成する際に起こるように活性のある種の減少を引き起こすのではなく、生物学的に活性のある単量体を放出するために解離することができることを意味する。
【0096】
実施例3
GLP-2類似体ZP1848酢酸塩の製剤用の緩衝液のスクリーニング
ZP1848-酢酸塩(4mg/mL)製剤の安定性に対する様々な緩衝液塩の影響を調べるために研究を行った。製剤中の全緩衝液濃度は20mMとした。
材料および方法
下記の表2に記載した緩衝液を調製した。緩衝液のpHは、1M HCl/1M NaOHで調整した。ZP1848ペプチド(酢酸塩)を、最終製剤で4mg/mLとなるように、最終試料液量の80%で当該緩衝液に溶解した。必要に応じて、次いで、200mM酢酸または100mM L-アルギニンのいずれかを使用して、pHを所望の製剤pHに調整した。緩衝液を、最終液量に達するまで加えた。各製剤を、安定性試験用に、適切なバイアル(1ml/バイアル)に充填した。
結果および考察
外観から、クエン酸塩緩衝液、クエン酸塩/トリス緩衝液、またはコハク酸塩緩衝液を含有するすべての製剤が、粘性および/または濁りがあることが示された(表2を参照されたい)。酢酸塩緩衝液(20mM、pH5)、メシル酸塩緩衝液(20mM、pH6)、ヒスチジン緩衝液(15mM、pH7)、およびヒスチジン-アルギニン(15+5mM、pH7)では、透明および非粘性であるとして視覚的検査に合格した製剤が得られた。
【0097】
【表2】
【0098】
実施例4
リン酸塩緩衝液のGLP-2類似体ZP1848-酢酸塩との不適合性
材料および方法
水(Milli-Q)で、マンニトール(700mM)、リン酸塩緩衝液(200mM)、およびZP1848-酢酸塩ペプチド(60.2mg/mL)の原液を調製した。原液を適切な量で混合して、下記の表3に示した製剤を得た。水を、最終液量の90%まで加えた。必要に応じて、次いで、1M酢酸/0.5M L-アルギニンを使用して、pHを所望の製剤pHに調整した。水を、最終液量に達するまで加えた。室温で24時間後、試料容器を、透明度および粘度について視覚的に検査した。
【0099】
【表3】
【0100】
結果および考察
視覚的検査から、20~50mMリン酸塩緩衝液を含有する、pH6.5~7.5の20mg/mLのZP1848-酢酸塩の製剤は、室温で24時間後、濁りがあり、かつ/または高度に粘性であったことが示された。したがって、リン酸塩緩衝液は、これらの製剤中では、ZP1848-酢酸塩と適合性がないと判断された。
【0101】
実施例5
GLP-2類似体ZP1848-酢酸塩の製剤の粘度に対する酢酸塩含有量の影響
ZP1848-酢酸塩製剤の粘度に対する酢酸塩含有量の影響を確かめるために研究を行った。
材料および方法
試料は、6%酢酸塩を含有するGLP-2類似体ZP1848-酢酸塩の原薬(DS)を使用して調製した。酢酸塩を加えて7.8~15%酢酸塩の範囲で酢酸塩含有量を増加させた影響を探索した(表4を参照されたい)。
【0102】
Milli-Q水で、マンニトール(700mM)、酢酸(1000mM)、ヒスチジン(200mM)、およびZP1848-酢酸塩ペプチド(60mg/ml)の原液を調製した。原液を適切な量で混合して、下記の表4に示した製剤を得た。水を、最終液量の90%まで加えた。必要に応じて、次いで、250mMアルギニンを使用して、pHを所望の製剤pHに調整した。水を、最終液量に達するまで加えた。各製剤を、安定性試験用に適切なバイアルに充填した。
【0103】
バイアルを、透明度および粘度について視覚的に検査した。粘度は、マイクロVISC(商標)粘度計を使用して測定した。流体力学的半径は、Wyatt DynaPro II動的光散乱(DLS)プレートリーダーを使用して測定した。プレートに載せる試料のサイズは、170μlとした。
【0104】
【表4】
【0105】
結果および考察
様々な酢酸塩濃度を有する製剤の粘度および流体力学的半径を、図2に示す。結果は、ZP1848-酢酸塩製剤の粘度が、より高い酢酸塩濃度では予想外に非線形で高まることを実証している。したがって、製剤中の総酢酸塩濃度がGLP-2類似体1mg当たり11%酢酸塩以下であることは、薬物送達装置の形態でのGLP-2類似体の製剤を提供する可能性を切り開くため、製剤中の総酢酸塩濃度がこの場合、低い/不変のレベルでの粘度の制御に有利である。
【0106】
実施例6
2および20mg/mLのGLP-2類似体ZP1848-酢酸塩の製剤の安定性に対する緩衝液塩の影響
ZP1848-酢酸塩(2および20mg/mL)製剤の安定性に対する様々な緩衝塩の影響を調べるために研究を行った。緩衝液はすべて、15mM濃度とした。
材料および方法
水(Milli-Q)で、マンニトール(700mM)、L-ヒスチジン(200mM)、グリシン(400mM)、リジン(200mM)、トリス(200mM)、ビス-トリス(200mM)、MOPS(100mM)、コハク酸(200mM)、MES(2-(N-モルフォリノ)エタンスルホン酸)(200mM)、メシル酸塩(200mM)、リン酸塩(200mM)、およびZP1848ペプチド(酢酸塩;約50mg/ml)原液を調製した。賦形剤溶液を適切な量で混合して、下記の表5および表6に示した製剤を得た。すべての製剤に、230mMマンニトールおよび15mMの緩衝剤を含有させた。ペプチド原液を加えた。水を、最終液量の90%まで加えた。必要に応じて、1M酢酸/0.5M L-アルギニンを使用して、pHをpH7に調整した。水を、最終液量に達するまで加えた。製剤をバイアルに充填し、40℃での安定性試験に配置した。
結果および考察
観察された結果によれば、緩衝剤については、15mM濃度のヒスチジン、グリシン、リジン、トリス、ビス-トリス、MOPS、メシル酸塩、およびMESが、2mg/mLおよび20mg/mLペプチドならびにpH7.0のZP1848-酢酸塩製剤中での使用に許容されるものであった。
【0107】
【表5】
【0108】
【表6】
【0109】
共有結合したオリゴマーの形成を、様々な緩衝液について評価した(表6)。20mg/mLでは、コハク酸が1週間後にゲルを形成し、2および3週間では安定性を評価することができなかった。同じ緩衝液では、共有結合したオリゴマーの形成率は、2mg/mLの方が有意に高かった(2.1%)。全体的な傾向として、3週間の40℃での加速保存の後、共有結合したオリゴマーの形成率は、2mg/mL製剤の方が20mg/mLと比較して高かった。
【0110】
リン酸塩緩衝液およびコハク酸塩緩衝液は、これらの製剤中で2および20mg/mLのZP1848-酢酸塩と適合性がなかった。
ペプチド単量体の安定性は、40℃での3週間の安定性についてHPLC純度を決定することによって評価した。結果を図3および表7に示す。コハク酸は、先に述べたゲル形成により、20mg/mLでは最初の時点の評価しかできなかった。2mg/mLでは、3週間の試験について結果を得ることができた。評価した緩衝液間では、軽微な、有意ではない差異しか検出されなかった。よって、緩衝液の選択は、ペプチド単量体の安定性に影響を与えないと思われる。
【0111】
【表7】
【0112】
実施例7
2および20mg/mLのGLP-2類似体ZP1848-酢酸塩の製剤の安定性に対する張性調節剤の影響
ZP1848-酢酸塩(2および20mg/mL)製剤の安定性に対する様々な張性調節剤の影響を調べるために研究を行った。
材料および方法
水(Milli-Q)で、L-ヒスチジン(200mM)、ショ糖(730mM)、グリセロール(977mM)、D-ソルビトール(801mM)、無水D-(+)トレハロース(500mM)、D-マンニトール(700mM)、およびZP1848-酢酸塩ペプチド(酢酸塩;約50mg/ml)の原液を調製した。賦形剤溶液を適切な量で混合して、下記の表8に示した製剤を得た。すべての製剤は、15mMヒスチジンを含有した。必要に応じてペプチド原液を加えて、表8に示したペプチド含有量を得た。水を、最終液量の90%まで加えた。必要に応じて、1M酢酸/0.5M L-アルギニンを使用して、pHをpH7に調整した。水を、最終液量に達するまで加えた。各製剤をバイアルに充填し、40℃での安定性試験に配置した。試料容器を、透明度および粘度について視覚的に検査し、DLS(動的光散乱)分析によって流体力学的半径を分析した。
結果および考察
表8に示した観察された結果によれば、マンニトール、ショ糖、グリセロール、ソルビトール、およびトレハロースは、2mg/mLおよび20mg/mLのpH7.0のZP1848-酢酸塩を含むこれらの製剤中での使用に許容されるものであった。
【0113】
【表8】
【0114】
共有結合のオリゴマーの形成を、製剤1~10について、40℃で3週間まで測定した。結果を表9に示す。10個の製剤の共有結合のオリゴマーの形成の差異は、安定性試験の1週間後に既にみられる。さらに、割合(勾配)は、試験期間を通してほぼ一定であった。製剤3(20mg/mL-グリセロール)、製剤7(2mg/mL-ショ糖)、製剤8(2mg/mL-グリセロール)、製剤9(2mg/mL-ソルビトール)は、その他の錠剤より共有結合したオリゴマーの形成率が有意に高かった。マンニトールは、最も低い共有結合したオリゴマーの形成率を示した。全体的な傾向としては、検討したすべての等張化剤で、2mg/mLの方が20mg/mLと比較して共有結合したオリゴマーの形成率が高かった。
【0115】
【表9】
【0116】
ペプチド単量体の安定性を、40℃での3週間の安定性についてHPLC純度を決定することによって評価した。共有結合したオリゴマーと同様に、グリセロールを使用した場合の化学的安定性は不十分であり、その他の等張化剤から逸脱している。結果を図5および図6に示す。
【0117】
実施例8
GLP-2類似体ZP1848-酢酸塩の製剤のpH調整のために使用した酸および塩基の物理的安定性の影響
材料および方法
水中マンニトール、ヒスチジン、およびZP1848-酢酸塩ペプチドの原液を調製した。マンニトールおよびヒスチジンの原液を水に加え、混合し、10mg/mLの最終ペプチド含有量が得られるようにペプチド溶液を加えた。水を、最終液量の90%まで加えた。次いで、250mMアルギニン/1M AcOHまたは1M NaOH/1M HClを使用して、pHをpH7に調整した(表10を参照されたい)。水を、最終液量に達するまで加えた。各製剤を安定性試験用にバイアルに充填し、5℃、25℃、および40℃での安定性試験に配置した。試料容器を、透明度および粘度について視覚的に検査した。
結果および考察
表10に示した結果は、pH調整のための1M NaOH/1M HClの使用は、ZP1848-酢酸塩製剤の物理的安定性に対し有害作用を及ぼすことを示している。
【0118】
【表10】
【0119】
実施例9
GLP-2類似体ZP1848ペプチドの製剤のための、ZP1848ペプチド酢酸塩およびZP1848ペプチド塩化物塩の使用
選択したZP1848製剤中でZP1848ペプチド酢酸塩およびZP1848ペプチド塩酸塩を使用して、塩の影響を調べる研究を行った。40℃での加速保存の後に、塩の種類、濃度、緩衝液、および張性調節剤の影響を調べた。ZP1848ペプチドナトリウム塩の合成を試みたが、可能であることはわらなかった。
材料および方法
Milli-Q水で、マンニトール(700mM)、ヒスチジン(200mM)、ソルビトール(700mM)、メシル酸塩(200mM)、およびZP1848ペプチド溶液(塩化物塩;約50mg/mL)の原液を調製した。賦形剤溶液を適切な量で混合して、下記の表11および表12に示した製剤を得た。ペプチド原液を加えて、所望の最終ペプチド含有量を得た。水を、最終液量の90%まで加えた。必要に応じて、1M酢酸/0.5M L-アルギニンを使用して、pHを所望の製剤pHに調整した。水を、最終液量に達するまで加えた。各製剤をバイアルに充填し、40℃での安定性試験に配置した。試料容器は、透明度および粘度について視覚的に検査し、DLSによって流体力学的半径を分析した。
結果および考察
表11および12に示した結果は、外観およびDLSによって評価した場合、40℃で3週間後、製剤1、2、3、および4のZ-平均、粘度、および外観は安定性が変化しなかったことを示す。製剤5は、Z-平均、粘度、および外観によって評価した場合、経時的に安定性が変化したことが示された。
【0120】
【表11】
【0121】
【表12】
【0122】
製剤1~5の化学的安定性を、40℃で4週間まで追跡した。得られた純度は、放出時を100%として正規化した。結果を図に示す。製剤1、2、4、および5については、ペプチド単量体の化学的安定性に有意差はみられなかった。製剤3は、4週間後にわずかに低下したが許容される化学的安定性を示し、これは、この製剤の濃度が低いことが原因であると思われる。
【0123】
共有結合したオリゴマーの形成を、製剤1~5について、40℃で4週間まで測定した。結果を表13に示す。5つの製剤の共有結合したオリゴマーの形成の差異は、安定性試験の1週間後でも認められた。さらに、割合(勾配)は、試験期間を通してほぼ一定であった。製剤1(20mg/mL、ZP1848の酢酸塩、等張化剤としてヒスチジン)が最も安定な製剤であり、40℃で4週間の安定性の後、共有結合したオリゴマーの形成は約1.1%であった。製剤5(20mg/mL、ZP1848の塩化物塩、等張化剤としてメシル酸塩)が2番目に安定な製剤であり、40℃で4週間の安定性の後、共有結合したオリゴマーの形成率は約2.1%であった。3番目に安定であったのは製剤3(2mg/mL、ZP1848の塩化物塩、等張化剤としてヒスチジン)であった。4番目に安定なのは製剤2(20mg/mL、ZP1848の塩化物塩、等張化剤としてヒスチジン)である。最も安定性が低い製剤は、製剤4(20mg/mL、ZP1848の塩化物塩、等張化剤としてソルビトール)である。
【0124】
ZP1848の酢酸塩について、ソルビトールを使用した場合、40℃で3週間後の安定性は、マンニトールと比較してわずかに低い傾向があることを先に認めた(マンニトールで0.9%、ソルビトールで1.1%)。実施例7を参照されたい。ソルビトール含有とマンニトール含有の製剤間での差異は、酢酸塩と、塩化物塩、すなわち塩化物塩およびソルビトールを含有する20mg/mLの製剤の共有結合したオリゴマーの形成率が約3.9%である塩化物塩とを比較した場合、より顕著である。この塩化物塩の2mg/mL製剤と20mg/mL製剤とを比較した場合、40℃で4週間後、共有結合したオリゴマーの形成は、2mg/mLでは2.4%(1週あたり0.53%の増加)であり、20mg/mLでは3.3%(1週あたり0.75%の増加)であった。これは酢酸塩では観察されないことであるため、これは驚くべきことである。20mg/mLの酢酸塩では、40℃で3週間後、共有結合したオリゴマーの形成は0.9%(1週あたり0.21%の増加)であったのに対し、2mg/mLでは1.2%(1週あたり0.27%の増加)である。このように酢酸塩の濃度が低いほど共有結合したオリゴマーの形成率が高いことは、長期安定性の間に認められることとも一致する。しかしながら、塩化物塩の場合は、状況は逆であり、ZP1848濃度の上昇に従い、共有結合したオリゴマーの形成率は高くなった。
【0125】
【表13】
【0126】
実施例10
20mg/mLのGLP-2類似体ZP1848ペプチドの製剤のための、ZP1848ペプチド酢酸塩および防腐剤の使用
ZP1848ペプチド酢酸塩と一般的に使用される防腐剤との適合性を調べるために研究を行った。防腐剤および温度の影響を、加速保存の後に調べた。
材料および方法
Milli-Q水で、マンニトール(700mM)、ヒスチジン(200mM)、およびZP1848ペプチド溶液(酢酸塩;約50mg/mL)の原液を調製した。ペプチドの最終濃度は20mg/mLとし、マンニトールは230mM、ヒスチジンは15mMとした。防腐剤溶液を適切な量で混合して、下記の表14に示した製剤を得た。ペプチド原液を加えて、所望の最終ペプチド含有量を得た。水を、最終液量の90%まで加えた。必要に応じて、次いで、1M酢酸/0.5M L-アルギニンを使用して、pHを所望の製剤pHに調整した。水を、最終液量に達するまで加えた。各製剤をバイアルに充填した。試料容器を、透明度および粘度について視覚的に検査し、共有結合したオリゴマーをSECによって、またペプチド単量体の安定性をHPLCによって分析した。
結果および考察
本研究からの結果を表14、表15、および図8に記す。その製剤は、防腐剤を加えない製剤1と比較して、防腐剤の添加によって影響を受けないように思われる。
【0127】
化学的安定性は、共有結合したオリゴマーおよびペプチド単量体の安定性(純度)を決定することによって評価した。製剤4(ソルビン酸カリウム)は、共有結合したオリゴマーの形成率がより高かったが、許容される範囲内である。その他の製剤はすべて、同様の量の共有結合したオリゴマーを有する。25℃で13週間の後の正規化した純度は、ZP1848-酢酸塩はやはり同様の安定性を有し、製剤4でわずかに低下しているが許容される純度を有することを示している。
【0128】
【表14】
【0129】
【表15】
【0130】
実施例11
2および20mg/mLのGLP-2類似体ZP1848ペプチド製剤のための、ZP1848ペプチド酢酸塩および防腐剤の使用
材料および方法
Milli-Q水で、マンニトール(700mM)、ヒスチジン(200mM)、およびZP1848ペプチド溶液(酢酸塩;約50mg/mL)の原液を調製した。ペプチドの最終濃度は20および2mg/mLとし、マンニトールは230mM、およびヒスチジンは15mMとした。防腐剤溶液(m-クレゾールおよびフェノール)を適切な量で混合して、下記の表14に示した製剤を得た。水を、最終液量の90%まで加えた。必要に応じて、次いで、1M酢酸/0.5M L-アルギニンを使用して、pHを所望の製剤pH(7.0)に調整した。水を、最終液量に達するまで加えた。各製剤をバイアルに充填した。試料容器を、透明度および粘度について視覚的に検査し、ペプチド単量体の安定性についてHPLCによって分析した。
結果および考察
本研究からの結果を、下記の表16に記す。すべての製剤を、5℃での52週間の長期安定性について試験した。試験溶液はすべて、検討期間を通して透明かつ非粘性のままであった。
【0131】
【表16】
【0132】
25℃での加速安定の後のZP1848-酢酸塩の、HPLCによる評価を図9に示す。フェノールを含有する製剤では、化学的安定性のわずかな低下がみられ、m-クレゾールでは、防腐処理していない製剤と同様の化学的安定性が得られた。5℃での長期安定性については、12カ月の安定の後、試料間の明らかな差異はみられず、すべての試料で、正規化したZP1848-酢酸塩純度が94%を超えている(データ非表示)。よって、検討した製剤はすべて、少なくとも52週間の長期安定性について安定である。
【0133】
上記の実施形態とともに本発明を記載してきたが、本開示により、数多くの等価の修正および変形が当業者には明らかとなるであろう。したがって、記載された本発明の実施形態は、例示的であって限定的なものではないとみなされる。記載した実施形態に対する様々な変更は、本発明の精神と範囲から逸脱することなく行うことができる。本明細書に引用されたすべての文書は、あらゆる目的のために全体として参照により明らかに組み込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【配列表】
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