(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】組織圧縮を変化させるための傾斜したステープルデッキを有する外科用ステープラ
(51)【国際特許分類】
A61B 17/072 20060101AFI20241007BHJP
【FI】
A61B17/072
(21)【出願番号】P 2021537830
(86)(22)【出願日】2019-12-09
(86)【国際出願番号】 IB2019060543
(87)【国際公開番号】W WO2020136482
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-10-19
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506157570
【氏名又は名称】シラグ・ゲーエムベーハー・インターナショナル
【氏名又は名称原語表記】Cilag GMBH International
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ポージー・ライアン・ピー
(72)【発明者】
【氏名】コートライト・ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】ゲレシー・スティーブン・ディー
(72)【発明者】
【氏名】サケット・ケビン・ディー
(72)【発明者】
【氏名】シェルトン・ザ・フォース・フレデリック・イー
【審査官】和田 将彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-525140(JP,A)
【文献】国際公開第2018/089051(WO,A1)
【文献】特開2014-171866(JP,A)
【文献】特開2005-211651(JP,A)
【文献】特開2007-307373(JP,A)
【文献】特開2015-077406(JP,A)
【文献】特表2017-511220(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/072
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科用器具と共に使用するためのカートリッジであって、
(a)湾曲した本体と、
(b)前記湾曲した本体によって画定されるデッキであって、アンビルに対して組織をクランプするように構成されている、デッキと、
(c)前記デッキ内に形成された複数のステープル開口部であって、複数のステープルを収容するように構成されている、複数のステープル開口部と、
(d)前記デッキ上に配置された複数のスタンドオフ部材であって、前記スタンドオフ部材が、組織と係合するように構成されている、複数のスタンドオフ部材と、
(e)前記デッキ内に形成された弓状スロットであって、内部を通して切断部材を摺動可能に受容するように構成されている、弓状スロットと、を備え、
前記デッキが、前記弓状スロットの長さを横断する方向に前記弓状スロットから離れて傾斜する、傾斜したデッキ部分を含み、前記傾斜したデッキ部分が、前記デッキの幅にわたって組織の様々な圧縮を提供するように構成されており、
前記複数のスタンドオフ部材のうちの少なくともいくつかが、前記傾斜したデッキ部分上に配置されており、
前記複数のスタンドオフ部材の上部表面が、上部平面を集合的に画定し、前記傾斜したデッキ部分が前記上部平面に対して傾斜して
おり、
前記デッキが、第1の細長い側縁部と、対向する第2の細長い側縁部とを含み、前記傾斜したデッキ部分が、
(i)前記第1の細長い側縁部に向かう方向に前記弓状スロットから離れて傾斜する前記デッキの第1の側部と、
(ii)前記第2の細長い側縁部に向かう方向に前記弓状スロットから離れて傾斜する前記デッキの第2の側部と、を含み、
前記第1の側部と前記第2の側部とは、前記弓状スロットから離れて、異なる角度だけ下向きに傾斜している、カートリッジ。
【請求項2】
前記傾斜したデッキ部分が、前記弓状スロットの全長に沿って延在する、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項3】
前記複数のステープル開口部のうちの少なくともいくつかが、前記傾斜したデッキ部分上に配置されている、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項4】
前記複数のスタンドオフ部材が、前記弓状スロットから横方向にオフセットされている、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項5】
前記複数のスタンドオフ部材のそれぞれが、隣接する前記ステープル開口部の少なくとも一部分の周囲に巻き付いている、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項6】
前記複数のスタンドオフ部材のうちの少なくともいくつかが、第1のステープル開口部の端部分の周囲に少なくとも部分的に巻き付いている第1の端部特徴部と、第2のステープル開口部の端部分の周囲に少なくとも部分的に巻き付いている、対向する第2の端部特徴部とを含む、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項7】
前記第1の端部特徴部が、凹状ブリッジ部分によって前記第2の端部特徴部と接続されている、請求項
6に記載のカートリッジ。
【請求項8】
前記弓状スロットの両側に沿って延在する一対の隆起部を更に備える、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項9】
前記弓状スロットの端部に隣接して前記デッキ内に形成された円形開口部を更に備え、前記円形開口部が、内部を通してピンを摺動可能に受容するように構成されている、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項10】
前記円形開口部が、前記弓状スロットと連通する、請求項
9に記載のカートリッジ。
【請求項11】
前記複数のステープル開口部のうちの少なくとも1つが、前記デッキの対応する端部に向かう方向に前記円形開口部を越えて延在する、請求項
9に記載のカートリッジ。
【請求項12】
前記複数のスタンドオフ部材は、前記複数のスタンドオフ部材の上部表面が、前記上部平面を集合的に画定するように、前記傾斜したデッキ部分に対する高さが異なっている、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項13】
前記複数のスタンドオフ部材は、内側の複数のスタンドオフ部材と外側の複数のスタンドオフ部材とを含み、前記外側の複数のスタンドオフ部材は、前記内側の複数のスタンドオフ部材よりも前記傾斜したデッキ部分に対する高さが大きい、請求項
12に記載のカートリッジ。
【請求項14】
外科用器具と共に使用するためのカートリッジであって、
(a)湾曲した本体と、
(b)前記湾曲した本体によって画定されるデッキであって、アンビルに対して組織をクランプするように構成され、第1の細長い側縁部及び対向する第2の細長い側縁部を含む、デッキと、
(c)前記デッキ内に形成された弓状スロットであって、前記デッキに沿って前記第1の細長い側縁部と前記第2の細長い側縁部との間に延在し、前記弓状スロットを通して切断部材を摺動可能に受容するように構成されている、弓状スロットと、
(d)前記デッキ内に形成された複数のステープル開口部であって、複数のステープルを収容するように構成されており、前記
複数のステープル開口部の第1の列が、前記デッキに沿って前記第1の細長い側縁部と前記弓状スロットとの間に延在し、前記
複数のステープル開口部の第2の列が、前記デッキに沿って前記第2の細長い側縁部と前記弓状スロットとの間に延在する、複数のステープル開口部と、
(e)前記デッキ上に配置され、かつ組織と係合するように構成された複数のスタンドオフ部材であって、各前記スタンドオフ部材が、前記複数のステープル開口部のうちの第1のステープル開口部の端部分の周囲に少なくとも部分的に巻き付いている第1の端部特徴部と、前記複数のステープル開口部のうちの第2のステープル開口部の端部分の周囲に少なくとも部分的に巻き付いている第2の端部特徴部とを含み、前記第1の端部特徴部は、前記デッキの上方の位置で前記第2の端部特徴部に一体的に接続されている、複数のスタンドオフ部材と、を備え、
前記第1の細長い側縁部と前記第1の列との間に延在する前記デッキの第1の外側部分が、前記弓状スロットの組織接触部分に対して凹んでおり、
前記第2の細長い側縁部と前記第2の列との間に延在する前記デッキの第2の外側部分が、前記弓状スロットの前記組織接触部分に対して凹んでおり、
前記弓状スロットと前記第1の列との間に延在する前記デッキの第1の内側部分が、第1の方向に前記弓状スロットから離れて傾斜して
おり、
前記複数のスタンドオフ部材の上部表面が、上部平面を集合的に画定し、前記デッキの前記第1の外側部分及び前記第2の外側部分が、前記上部平面に対して傾斜しており、
前記第1の外側部分と前記第2の外側部分とは、前記弓状スロットから離れて、異なる角度だけ下向きに傾斜している、カートリッジ。
【請求項15】
前記デッキが、前記弓状スロットと前記第2の列との間に延在する第2の内側部分を含み、前記第1の外側部分が、前記第1の方向に前記弓状スロットから離れて傾斜し、前記第2の内側部分及び前記第2の外側部分が、反対の第2の方向に前記弓状スロットから離れて傾斜する、請求項
14に記載のカートリッジ。
【請求項16】
前記第1および第2のステープル開口部が、前記第1の列の隣り合うステープル開口部である、請求項
14に記載のカートリッジ。
【請求項17】
前記第1および第2のステープル開口部が、前記第2の列の隣り合うステープル開口部である、請求項
14に記載のカートリッジ。
【請求項18】
外科用器具であって、
(a)本体と、
(b)前記本体から遠位に延在するシャフト組立体と、
(c)前記シャフト組立体の遠位端にあるエンドエフェクタであって、
(i)支持構造体と、
(ii)前記支持構造体に対して固定されたアンビルであって、複数のステープル形成ポケットを含む、アンビルと、
(iii)請求項1に記載のカートリッジであって、前記アンビルに対して前記組織をクランプするために前記支持構造体に対して移動可能である、カートリッジと、を備える、エンドエフェクタと、を備える、外科用器具。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
外科用ステープラのいくつかは、1つ以上の患者の組織層をクランプし、組織層を通してステープルを形成して、形成されたステープルの付近の組織層同士を実質的に封止し、組織層を切断して、作動的に封止された組織の切断端を形成するように動作可能である。例示的なステープル留め器具は、一対の協働する細長い顎部材を含むことがあり、各顎部材が患者に挿入され、ステープル留め及び/又は切開される組織に対して位置付けられるように適合され得る。顎部材のうちの一方は、横方向に間隔を置いて配置された少なくとも2列のステープルを中に収容したステープルカートリッジを支持することができ、他方の顎部材は、ステープルカートリッジ内のステープル列と位置合わせされたステープル形成ポケットを有するアンビルを支持することができる。概して、ステープル留め器具は、顎部材に対して摺動可能な押し込みバー及びナイフブレードを更に含むことがあり、これらが押し込みバー上のカム面、及び/又は押し込みバーによって押し込まれるウェッジスレッド上のカム面を介して、ステープルカートリッジからステープルを連続的に又は同時に排出することができる。ステープルをアンビルに対して押し込み、顎部材の間で把持された組織内に横方向に間隔を置いて配置された変形したステープルの列を形成するために、カートリッジによって保持され、ステープルと関連付けられた1つ以上のステープルドライバを作動させるように、カム面を構成し得る。このような列は、患者の組織を所定のパターンの形態で連続的に又は同時にステープル留め及び切断するための直線状の列及び/又は弓状の列として配置され得る。ナイフブレードは、カム面を追跡し、組織内に形成されたステープルの列の間の直線状又は弓状の線に沿って組織を切断し得る。
【0002】
単に例示的な外科用ステープラが、2006年1月24日に発行された「Retaining Pin Lever Advancement Mechanism for a Curved Cutter Stapler」と題する米国特許第6,988,650号;2006年11月14日に発行された「Knife Retraction Arm for a Curved Cutter Stapler」と題する米国特許第7,134,587号;2006年12月12日に発行された「Closure Plate Lockout for a Curved Cutter Stapler」 と題する米国特許第7,147,139号、2006年12月12日に発行された「Cartridge Retainer for a Curved Cutter Stapler」と題する米国特許第7,147,140号;2007年4月17日に発行された「Slotted Pins Guiding Knife in a Curved Cutter Stapler」と題する米国特許第7,204,404号;及び2007年4月24日に発行された「Cartridge with Locking Knife for a Curved Cutter Stapler」と題する米国特許第7,207,472号に開示されている。上に引用した米国特許の各々の開示内容は、参照により本明細書に組み込まれる。更なる単に例示的な外科用ステープラは、2005年6月30日に公開された「Replaceable Cartridge Module for a Surgical Stapling and Cutting Instrument」と題する米国特許出願公開第2005/0139636号;2005年6月30日に公開された「Curved Cutter Stapler Shaped for Male Pelvis」と題する米国特許出願公開第2005/0143759号;及び2005年7月7日に公開された「Curved Cutter Stapler with Aligned Tissue Retention Feature」と題する米国特許出願公開第2005/0145672号に開示されている。上に引用した米国特許出願公開の各々の開示内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
外科用ステープラを患者に挿入して、結腸直腸外科手術を行うことができる。このような手術は、患者の結腸を全体的に又は部分的に作動的に封止、切断、及び除去するためにステープラを使用することを含み得る。例えば、結腸直腸癌細胞の拡散を処置及び防止するための低位前方切除(「LAR」)の間に直腸結腸切除を行うことができる。当然のことながら、外科用ステープラは、様々な他の状況及び処置において使用され得る。
【0004】
様々な種類の外科用ステープル留め器具及び関連構成要素が作製され使用されてきたが、本発明者ら以前には、添付の特許請求の範囲に記載されている発明を誰も作製又は使用したことがないものと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0005】
本明細書に組み込まれ、その一部をなす添付の図面は、本発明の実施形態を示すものであり、上記の本発明の一般的説明、及び以下の実施形態の詳細な説明と共に、本発明の原理を説明する役割を果たすものである。
【
図1A】ピン作動機構が開放位置にあり、ステープルカートリッジが開放位置にある、例示的な外科用ステープル留め器具の右前方斜視図を示す。
【
図1B】ピン作動機構が閉鎖位置にあり、ステープルカートリッジが開放位置にある、
図1Aの外科用ステープル留め器具の右前方斜視図を示す。
【
図1C】ピン作動機構が閉鎖位置にあり、閉鎖機構の作動によりステープルカートリッジが閉鎖位置にある、
図1Aの外科用ステープル留め器具の右前方斜視図を示す。
【
図1D】ピン作動機構及びステープルカートリッジが閉鎖位置にあり、患者の組織をステープル留め及び切断するための発射トリガが発射位置にある、
図1Aの外科用ステープル留め器具の右前方斜視図を示す。
【
図2】エンドエフェクタの残部から取り外されたステープルカートリッジを示す、
図1Aの外科用ステープル留め器具の部分分解前方斜視図を示す。
【
図3】
図2のステープルカートリッジの前方斜視図を示す。
【
図4】
図2のステープルカートリッジの後方斜視図を示す。
【
図5】
図2のステープルカートリッジの分解後方斜視図を示す。
【
図6】
図1Aの外科用ステープル留めユニットと共に使用するように構成された別の例示的なカートリッジハウジングの前方斜視図を示す。
【
図7】デッキの内側部分上に形成された組織係合特徴部の詳細を示す、
図6のカートリッジハウジングのデッキの内側部分の拡大斜視図を示す。
【
図8】デッキの第1の端部分上に形成された組織係合特徴部の詳細を示す、
図6のカートリッジハウジングのデッキの第1の端部分の拡大斜視図を示す。
【
図9】デッキの第2の端部分上に形成された組織係合特徴部の詳細を示す、
図6のカートリッジハウジングのデッキの対向する第2の端部分の拡大斜視図を示す。
【
図10】デッキの傾斜構成を示す、
図6のカートリッジハウジングの断面図を示す。
【0006】
図面は、いかなる方式でも限定することを意図しておらず、本発明の様々な実施形態は、図面に必ずしも描写されていないものを含め、他の様々な方式で実施し得ることが企図される。本明細書に組み込まれ、その一部をなす添付図面は、本発明のいくつかの態様を図示したものであり、本説明文と共に本発明の原理を説明する役割を果たすものである。しかしながら、本発明が、示される正確な配置に限定されない点は理解される。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の特定の実施例の以下の説明文は、本発明の範囲を限定する目的で用いられるべきではない。本発明の他の実施例、特徴、態様、実施形態、及び利点は、本発明を実施するために想到される最良の形態の1つを実例として示す以下の説明文より、当業者には明らかとなろう。理解されるように、本発明は、いずれも本発明から逸脱することなく、他の異なるかつ明白な態様が可能である。したがって、図面及び説明は、限定的な性質のものではなく、例示的な性質のものと見なされるべきである。
【0008】
本明細書に記載される教示、表現、実施形態、実施例などの任意の1つ以上のものを、本明細書に記載される他の教示、表現、実施形態、実施例などの任意の1つ以上のものと組み合わせることができる点も、更に理解されよう。したがって、以下に記載される教示、表現、実施形態、実施例などは、互いに対して切り離して考慮されるべきではない。本明細書の教示に照らして、本明細書の教示を組み合わせることができる様々な好適な方法が、当業者には容易に明らかとなろう。このような修正及び変形は、「特許請求の範囲」内に含まれるものとする。
【0009】
本開示の明瞭さのために、「近位」及び「遠位」という用語は、人間又はロボットである外科用器具の操作者に対して、本明細書で定義される。「近位」という用語は、人間又はロボットである外科用器具の操作者により近く、かつ、外科用器具の外科用エンドエフェクタから更に離れた要素の位置を意味する。「遠位」という用語は、外科用器具の外科用エンドエフェクタにより近く、かつ、人間又はロボットである外科用器具の操作者から更に離れた要素の位置を意味する。便宜的にかつ明確にするために、「垂直」、「水平」、「下側」、「上側」、「前方」、及び「後方」など、空間に関する用語は、本明細書において、図面を基準にして用いられることが更に理解されるだろう。しかしながら、外科用器具は、多くの配向及び位置で使用されるものであり、これらの用語は限定的及び/又は絶対的であることを意図したものではない。
【0010】
本明細書で使用するとき、任意の数値又は値の範囲に関連した「約」、「およそ」などの用語は、参照される正確な値、並びに参照された特徴又は特徴の組み合わせが本明細書に記載される意図された目的のために機能するのを可能にする好適な寸法公差を包含することが意図される。
【0011】
I.例示的な外科用ステープラ
図1A~
図1Dは、ハンドル組立体(12)と、ハンドル組立体(12)から遠位に延在するシャフト組立体(14)と、シャフト組立体(14)の遠位端にあるエンドエフェクタ(16)とを含む例示的な外科用ステープラ(10)を示す。本明細書では、「近位」、「遠位」、「右」、「左」といった用語は、外科用ステープラ(10)のハンドル組立体(12)を握っている臨床医を基準として使用されることを理解されたい。したがって、エンドエフェクタ(16)は、比較的近位にあるハンドル組立体(12)に対して遠位にある。本明細書に別途記載のある場合を除き、外科用ステープラ(10)は、その開示が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2005/0143759号、発明の名称「Curved Cutter Stapler Shaped for Male Pelvis」(2005年6月30日公開)、及び/又はその開示が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2017/0027571号、発明の名称「Surgical Instrument Comprising Systems for Assuring the Proper Sequential Operation of the Surgical Instrument」(2017年2月2日公開)の教示の少なくとも一部に従って構成され、動作可能であってもよい。
【0012】
ハンドル組立体(12)は、外科手術中にエンドエフェクタ(16)を操作するためのいくつかの作動機構を含む。このために、例示的なハンドル組立体(12)が、鞍状の摺動部(18)と、閉鎖トリガ(20)と、シャフト組立体(14)を介してエンドエフェクタ(16)と連通する発射トリガ(22)とを含む。
図1Aは、エンドエフェクタ(16)内に取り付けられた交換可能なカートリッジユニット(24)の、アンビル(26)とカートリッジユニット(24)のカートリッジハウジング(28)との間の間隙(25)内に横方向に組織を受容するようにエンドエフェクタ(16)が構成されるように、開いた構成にある摺動部(18)及び閉鎖トリガ(20)を示す。以下により詳細に記載されるように、摺動部(18)をエンドエフェクタ(16)に向けて遠位に並進させることにより、
図1Bに示されるように、エンドエフェクタ(16)の保持ピン(30)が遠位に摺動し、アンビル(26)とカートリッジハウジング(28)との間に組織を捕捉する。
図1C及び
図1Dに示すように、閉鎖トリガ(20)及び発射トリガ(22)をそれぞれ、連続的に作動させることにより、閉じた構成にあるアンビル(26)とカートリッジハウジング(28)との間の組織を圧縮し、次いで、組織内に複数のステープル(図示せず)を形成し、湾曲したナイフ(32)(
図6参照)で組織を切断する。
【0013】
A.外科用ステープラのハンドル組立体及びシャフト組立体
図1Aに示すように、外科用ステープラ(10)のハンドル組立体(12)は、ハンドルハウジング(34)と、ハンドルハウジング(34)内に収容された近位部分(図示せず)と、シャフト組立体(14)に沿って遠位に延在する細長い遠位部分とを有する一対のハンドルフレームプレート(35、36)とを含む。簡潔に上述したように、ハンドル組立体(12)は、鞍状の摺動部(18)と、閉鎖トリガ(20)と、発射トリガ(22)とを更に含む。ハンドルハウジング(34)は、操作者が少なくとも片手の掌で把持することができるハンドグリップ(38)を画定する。本実施例のハンドルハウジング(34)は、右シュラウドハンドル部分(40)及び左シュラウドハンドル部分(42)によって形成される。閉鎖トリガ(20)は発射トリガ(22)に対して近位に位置付けられる。各トリガ(20、22)はフレームプレート(35、36)に枢動可能に取り付けられ、ハンドルハウジング(34)の下面を通って露出されて、操作者の指によって操作される。
図1Aは、エンドエフェクタ(16)の閉鎖、及びステープル(図示せず)及び湾曲したナイフ(32)の発射の前の、非作動位置にある閉鎖及び発射トリガ(20、22)を示す。これに応じて、カートリッジハウジング(28)とアンビル(26)との間の間隙(25)内に組織を受容するために、カートリッジハウジング(28)はアンビル(26)から離間している。
【0014】
外科用ステープラ(10)は、閉鎖及び発射トリガ(20、22)の作動より前に、組織保持ピン作動機構(37)によって組織を捕捉するように動作可能である。組織保持ピン作動機構(37)は、ハンドル組立体(12)の摺動部(18)と、エンドエフェクタ(16)の組織保持ピン(30)と、シャフト組立体(14)の細長いプッシュロッド(50)とを含む。摺動部(18)はハンドルハウジング(34)の上面に取り付けられており、近位位置と遠位位置との間で直線的に並進するように構成されている。プッシュロッド(50)は、摺動部(18)を組織保持ピン(30)と動作可能に連結し、これにより、摺動部(18)が長手方向に並進すると、プッシュロッド(50)を介して、近位開放位置(
図1Aを参照)と遠位閉鎖位置(
図1Bを参照)との間での組織保持ピン(30)の長手方向の作動が駆動される。
【0015】
外科用ステープラ(10)の閉鎖機構(52)は、カートリッジハウジング(28)とアンビル(26)との間に組織をクランプするために、カートリッジユニット(24)のカートリッジハウジング(28)を近位開放位置(
図1A)と遠位閉鎖位置(
図1C)との間で選択的に作動させるように構成されている。閉鎖機構(52)は、ハンドル組立体(12)の閉鎖トリガ(20)と、その近位端において閉鎖トリガ(20)と連結された細長い閉鎖部材(54)とを含む。閉鎖部材(54)は、概ねU字形の断面を有しており、ハンドル組立体(12)からシャフト組立体(14)を通ってエンドエフェクタ(16)内へと遠位に延在し、これにより、閉鎖部材(54)の遠位端は、
図2に示すように、カートリッジユニット(24)をエンドエフェクタ(16)内に受容するように構成されている。閉鎖部材(54)の近位端は、閉鎖トリガ(20)の枢動運動を閉鎖部材(54)の並進に変換するように構成された複数のリンク部(図示せず)によって閉鎖トリガ(20)と作動的に接続されている。したがって、閉鎖トリガ(20)をピストルグリップ(38)に向かって閉鎖位置(
図1C)まで枢動させると、閉鎖部材(54)が遠位に駆動され、これによってカートリッジハウジング(28)がアンビル(26)に向かって遠位に駆動されて、カートリッジハウジング(28)とアンビル(26)との間に組織をクランプする。続いて、閉鎖トリガ(20)をピストルグリップ(38)から離れて開放位置(
図1A)まで枢動させると、閉鎖部材(54)が近位に駆動され、これによりカートリッジハウジング(28)がアンビル(26)から離れて近位に駆動されて、ステープル留めされた組織を解放する。
【0016】
いくつかの変形形態では、閉鎖部材(54)は、操作者が閉鎖トリガ(20)を圧搾したときに、組織保持ピン作動機構(37)と協働して、保持ピン(30)をその閉鎖位置まで遠位に自動的に作動させるように更に構成されてもよい。このような自動化は、操作者が閉鎖トリガ(20)を圧搾する前に摺動部(18)を介して保持ピン(30)を遠位に手動で作動させなかった場合に有用であり得る。閉鎖トリガ(20)は、ハンドルハウジング(34)内に収容された弾性部材(図示せず)によって開放位置に向かって付勢されてもよい。
【0017】
外科用ステープラ(10)の発射機構(80)は、ハンドル組立体(12)の発射トリガ(22)の操作に応答してエンドエフェクタ(16)を作動させ、アンビル(26)とカートリッジハウジング(28)との間にクランプされた組織をステープル留め及び切断するように構成されている。その点で、発射機構(80)は、発射トリガ(22)と、カートリッジユニット(24)と、シャフト組立体(14)を通って長手方向に延在して、発射トリガ(22)をカートリッジユニット(24)と動作可能に連結する細長い発射バー(図示せず)とを含む。発射トリガ(22)は、閉鎖トリガ(20)が最初に枢動閉鎖されたときだけ発射トリガ(22)が閉鎖され得るように、閉鎖トリガ(20)の遠位に位置付けられている。発射トリガ(22)を開放位置(
図1C)から閉鎖(又は「発射」)位置(
図1D)に向かって枢動させると、発射バーが遠位に駆動され、次にカートリッジハウジング(28)の内部構成要素が遠位に駆動され、それによって、以下により詳細に記載されるように、エンドエフェクタ(16)によってクランプされた組織をステープル留め及び切断する。
【0018】
閉鎖トリガ(20)及び発射トリガ(22)の一方又は両方は、1つ又は2つ以上の枢動位置に、例えば、完全に閉鎖された位置、及び/又は完全に開放(すなわち、非作動)と完全に閉鎖(すなわち、完全に作動される)との間の1つ又は2つ以上の中間位置などに、解放可能にロックするように構成されてもよい。したがって、有利には、操作者は、外科手術中に別のタスクを実施するために、トリガ(20、22)及びハンドグリップ(38)から1つ又は2つ以上の手を解放することができるが、トリガ(20、22)はその位置を維持する。次いで、操作者は、ハンドル組立体(12)の近位端に配置された解放ボタン(23)を押下することによって、トリガ(20、22)をそのロック状態から解放することができる。
【0019】
図示されていないが、外科用ステープラ(10)のシャフト組立体(14)は、関節接合部など様々な追加の構成要素を含んでもよく、あるいは、シャフト組立体(14)がハンドル組立体(12)に対してモジュール化されるように、様々な構成要素の再配置を含んでもよい。
【0020】
B.外科用ステープラのエンドエフェクタ
図3~
図5に最もよく示されるように、本実施例のエンドエフェクタ(16)は、C字形の支持構造体(128)と、C字形の支持構造体(128)によって取り外し可能に受容される交換可能なカートリッジユニット(24)とを含む。本実施例の支持構造体(128)は、ショルダリベット(129)及び一対のポスト(130)によって、シャフト組立体(14)の遠位端においてハンドルフレームプレート(35、36)の遠位端に固定される。用語「C字形」という用語は、本明細書では、それぞれが互いに対向する凹状の第1の外側部及び凸状の第2の外側部を有する支持構造体(128)及びカートリッジユニット(24)の湾曲に関して使用される。このような構造は、機能性及び患者内の組織へのアクセス性を高める。あくまで一例として、支持構造体(128)及びカートリッジユニット(24)のC字形構造は、例えば、直腸結腸切除術において低位前方切除術(「lower anterior resection、LAR」)を行うために、エンドエフェクタ(16)が患者の骨盤の凹み内の結腸下部に容易にアクセスすることを可能にし得る。したがって、本明細書で使用するとき、「C字形」という用語は、外科用ステープル留め及び切断器具の機能性を同様に向上させるであろう様々な凹形状を含むと解釈されるべきである。
【0021】
交換可能なカートリッジユニット(24)は、以下により詳細に記載されるように、ガイドピン(166)及びアンビルアーム(196)によって互いに移動可能に連結されたアンビル(26)及びカートリッジハウジング(28)を含む。カートリッジハウジング(28)の遠位端は、組織に接触するように構成された遠位に面するステープルデッキ(134)を画定する。ステープルデッキ(134)は、弓状ナイフスロット(152)の両側の一対の列に互い違いの構成で形成された複数のステープル開口部(136)を含む。ステープル開口部(136)の様々な他の数の列が、他の変形形態において提供されてもよい。カートリッジハウジング(28)は、ステープル開口部(136)を通って、かつアンビル(26)に対して遠位に駆動され、それによって患者組織内にステープルを形成するように構成された複数のステープル(図示せず)を収容する。図示されていないが、カートリッジユニット(134)は、リテーナを更に含んでもよく、このリテーナは、カートリッジユニット(24)の使用前に(例えばカートリッジユニット(24)が保管されているとき)、及び場合によりカートリッジユニット(24)の使用後にも、ステープル開口部(136)及びナイフスロット(152)を覆うようにステープルデッキ(134)に取り外し可能に結合するように構成されている。
【0022】
図6に示すように、カートリッジハウジング(28)は、保持ピン(30)、ステープルドライバ組立体(140)、及びナイフホルダ(142)を更に収容する。ステープルドライバ組立体(140)は、カートリッジハウジング(28)内に、かつナイフホルダ(142)の遠位に収容されたステープル(図示せず)のすぐ近位に位置付けられる。本実施例のステープルドライバ組立体(140)は、複数のステープルドライバ(141)を画定する単一構造体として形成される。したがって、「組立体」という用語は、ステープルドライバ組立体(140)との関連で使用されるとき、個々の構成要素からなる1つの組立体に限定されることを意図するものではなく、単一構造を有する一体的に形成された構成要素同士を含むこともできる。ドライバ組立体(140)は、カートリッジハウジング(28)内で遠位に並進するように構成されており、これにより、ステープルドライバ(141)はステープルをそれぞれのステープル開口部開口部(136)からアンビル(26)に向かって遠位に駆動して、アンビル(26)とカートリッジハウジング(28)との間にクランプされた組織内で形成する。
【0023】
ナイフホルダ(142)は、カートリッジハウジング(28)内の、ステープルドライバ組立体(140)のすぐ近位に移動可能に配設される。ナイフホルダ(142)は、その遠位側に沿って、湾曲したナイフ(32)を支持する。ナイフホルダ(142)は、湾曲したナイフ(32)がドライバ組立体(140)の弓状スロット(150)及びステープルデッキ(134)の弓状スロット(152)を通って遠位に延びるように、カートリッジハウジング(28)内で並進するように構成されている。ナイフホルダ(142)の近位側は、スロット(144)と棚部(146)とを含み、これらは、例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第10,045,780号、発明の名称「Method of Applying Staples in Lower Anterior Bowel Resection」(2018年8月14日発行)に開示されているように、カートリッジユニット(24)の発射後に、湾曲したナイフ(32)を後退させるためのナイフリトラクタフック(図示せず)と連結するように構成されている。
【0024】
図4に示すように、カートリッジハウジング(28)の外側部は、対面する一対の弾性部材の間に画定された長手方向に延在する戻り止めスロット(155)を含む。戻り止めスロット(155)の第1の側は、第1の近位戻り止め突起部(156)を含み、戻り止めスロット(155)の対向する第2の側は、第2の近位戻り止め突起部(159)及び遠位戻り止め突起部(160)を含む。戻り止めスロット(155)は、ナイフホルダ(142)の戻り止めポスト(154)及びステープルドライバ組立体(140)の戻り止めポスト(158)を摺動可能に受容するように構成されている。ステープルドライバ組立体(140)及びナイフホルダ(142)がカートリッジハウジング(28)内で遠位に並進すると、戻り止めポスト(154)は戻り止め突出部(156)と弾性的に係合し、戻り止めポスト(158)は戻り止め突出部(159、160)と弾性的に係合する。
【0025】
図3に示すように、カートリッジハウジング(28)は、ステープルデッキ(134)上の弓状ナイフスロット(152)のそれぞれの上端及び下端に、2つの長手方向に延在する概ね円形の孔(162、164)を含んでいる。本実施例の孔(162、164)は、ステープル開口部(136)、及びステープル開口部(136)から射出されたステープルが、ステープルデッキ(134)の上端及び下端において孔(162、164)を越えて延在するように位置付けられる。下側孔(162)は、カートリッジハウジング(28)とアンビル(26)との間で長手方向に延在するガイドピン(166)を摺動可能に受容するような形状及び寸法である。上側孔(164)は、内部を通して保持ピン(30)を摺動可能に受容するような形状及び寸法であり、これにより、保持ピン(30)は、カートリッジハウジング(28)及びアンビル(26)に対して近位後退位置(
図1A)と遠位延出位置(
図1B)との間で長手方向に作動することができる。
【0026】
図5に示すように、保持ピン(30)の近位端は、連結具(170)の対応する連結特徴部(図示せず)(例えば、溝)と連結するように構成された第1の連結特徴部(172)(例えば、突起)を含み、これにより、保持ピン(30)は連結具(170)に固定されることになる。連結具(170)及び保持ピン(30)は、カートリッジハウジング(28)の上部アーム(176)内に摺動可能に配設され、連結具(170)に近接して上部アーム(176)に固定されたエンドキャップ(178)によって上部アーム(176)内に近位に捕捉される。上述した組織保持ピン作動機構(37)のプッシュロッド(50)の遠位端は、連結具(170)と動作可能に連結される。したがって、ハンドル組立体(12)の摺動部(18)を介したプッシュロッド(50)の長手方向の作動は、連結具(170)、よって保持ピン(30)を、カートリッジハウジング(28)に対して長手方向に駆動して、エンドエフェクタ(16)によってステープル留めされる組織を捕捉する。
【0027】
本実施例のアンビル(26)は、プラスチック製の切断ワッシャ(168)と、切断ワッシャ(168)の近位側に固定された金属製のステープル形成面(138)とを含む。ステープル形成面(138)は細長い弓状スロット(192)を含み、この弓状スロット(192)は、内部を通して切断ワッシャ(168)の弓状突起(169)を受容して、ステープル形成面(138)を切断ワッシャ(168)に対して固定するように構成されている。ステープル形成面(138)は、弓状スロット(192)の両側に沿って列状に配置された複数のポケットを更に含む。これらのポケットは、ステープルデッキ(134)のステープル開口部(136)から遠位に駆動されたステープルの脚部を受容及び形成するように構成されている。これに応じて、アンビル(26)は、ステープルデッキ(134)から遠位に離間され、かつ、ステープル形成面(138)の各ポケットが対応のステープル開口部(136)と整列するようにステープルデッキ(134)と整列される。
【0028】
アンビル(26)のステープル形成面(138)は、弓状スロット(192)の上端に配設された第1の円形開口部(194)と、弓状スロット(192)の下端に配設された第2の円形開口部(
図4を参照)とを更に含む。第1の開口部(194)は、組織保持ピン(30)が遠位に作動されてアンビル(26)とカートリッジハウジング(28)との間に位置付けられた組織を捕捉するときに、組織保持ピン(30)の尖った遠位先端を摺動可能に受容するように構成されている。ステープル形成面(138)の下側の第2の開口部は、内部を通してガイドピン(166)の遠位端(190)を受容する。ガイドピン(166)の遠位端(190)は、切断ワッシャ(168)の下端に及んでこれに固定して連結され、これにより、ガイドピン(166)はアンビル(26)に対して長手方向に固定されるイドピン(166)はアンビル(26)に対して長手方向に固定される。
【0029】
ガイドピン(166)の近位端(188)は、上述のように、カートリッジハウジング(28)のステープルデッキ(134)内に形成された下側孔(162)を通して摺動可能に受容される。ステープル形成面(138)の下端から近位に突出するアンビルアーム(196)は、カートリッジハウジング(28)の開放下端を通って移動可能に受容され、それによって、ガイドピン(166)の近位端(188)をカートリッジハウジング(28)内に捕捉すると同時に、カートリッジハウジング(28)がアンビル(26)に向かって作動することも可能にする。したがって、カートリッジハウジング(28)は、上述の閉鎖トリガ(20)の作動に応答して、アンビル(26)に対してガイドピン(166)(及び組織保持ピン(30))に沿って長手方向に摺動するように構成されている。
図4に示すように、ガイドピン(166)の内側は、カートリッジハウジング(28)がアンビル(26)に対して長手方向に作動すると、湾曲したナイフ(32)の対応する下端(184)を摺動可能に受容するように構成された長手方向スロット(180)を含む。組織保持ピン(30)の内側は、カートリッジハウジング(28)がアンビル(26)に対して長手方向に作動すると、湾曲したナイフ(32)の対応する上端(186)を摺動可能に受容するように構成された同様の長手方向スロット(図示せず)を含み得る。
【0030】
C.外科用ステープラの例示的な作動
カートリッジユニット(24)を含む、上記の外科用ステープラ(10)の様々な構造的特徴について説明してきたが、ここで外科手術中の外科用ステープラ(10)の例示的な作動について以下に説明する。外科用ステープラ(10)は、最初に、患者の体腔内で適切に操作されて、アンビル(26)とカートリッジハウジング(28)との間の間隙(25)(
図1A参照)内に患者組織を位置付ける。
図1Bに示すように、次に、摺動部(18)が遠位に作動されてプッシュロッド(50)を遠位に駆動し、それによって組織保持ピン(30)をカートリッジハウジング(28)からアンビル(26)に向かって遠位に駆動する。組織保持ピン(30)の尖った遠位先端は、組織をしっかりと係合し(例えば、穿孔し)、それによって組織を間隙(25)内に捕捉する。
【0031】
図1Cに示すように、次いで、閉鎖トリガ(20)がピストルグリップ(38)に向かって圧搾されて閉鎖部材(54)を遠位に駆動し、それによって、カートリッジハウジング(28)を、組織保持ピン(30)及びガイドピン(166)に沿ってアンビル(26)に向かって遠位に駆動して、カートリッジデッキ(134)とアンビル(26)との間に組織をクランプする。カートリッジハウジング(28)は、上述したように、閉鎖トリガ(20)を圧搾位置に保持するハンドル組立体(12)の内部ロック機構(図示せず)によって、アンビル(26)に対してこの閉鎖位置に維持されてもよい。
図1Dに示すように、カートリッジユニット(24)がこの閉鎖位置に留まる間に、次に、発射トリガ(22)が閉鎖トリガ(20)及びピストルグリップ(38)に向かって圧搾されて、細長い発射バー(図示せず)を遠位に駆動し、それによって、ステープルドライバ組立体(140)及びナイフホルダ(142)をカートリッジハウジング(28)内で遠位に駆動する。ドライバ組立体(140)のステープラードライバ(141)は、ステープル(図示せず)を、捕捉された組織を通して遠位に駆動し、アンビル(26)のステープル形成面(138)に接触させて、組織内にステープルを形成し、それによって組織を流体封止する。ステープルが形成されているとき、湾曲したナイフ(32)は、弓状スロット(150、152)を通って、クランプされた組織内へとナイフホルダ(142)によって遠位方向に駆動され、それによって、形成されたステープルの2つの最も内側の列の間に延びる弓状経路に沿って組織を切断する。閉鎖トリガ(20)と同様に、発射トリガ(22)は、ハンドル組立体(12)の内部ロック機構(図示せず)によってその圧搾位置に保持されてもよい。外科用ステープラ(10)は、いくつかの変形形態では、エンドエフェクタ(16)によって間隙(25)内にクランプされた組織が、同時にステープル留め及び切断されるように構成されてもよく、あるいは、他の変形形態では、組織が完全にステープル留めされ、続いて連続的な工程で切断されるように構成されてもよいことが理解されるであろう。
【0032】
外科用ステープラ(10)が上記のように患者組織内に完全に発射されたら、操作者は、ハンドル組立体(12)の解放ボタン(23)を押下して、発射トリガ(22)及び閉鎖トリガ(20)をそれらの圧搾位置から解放することができる。このようにして、湾曲したナイフ(32)は、カートリッジハウジング(28)内に近位に後退させられてもよく、カートリッジハウジング(28)は、ピン(20、166)に沿って近位に後退させられることによって、新たにステープル留めされ及び切断された組織をアンビル(26)とカートリッジデッキ(134)との間から解放することができる。次いで、発射されたカートリッジユニット(24)は、エンドエフェクタ(16)の支持構造体(128)から取り外され、廃棄され、必要であれば更なる処置のために交換されることができる。
【0033】
外科用ステープラ(10)は、上記参照により組み込まれた米国特許第10,045,780号を含む、本明細書に引用される参考文献の教示のいずれかに従って更に構成され、動作可能であってもよい。
【0034】
II.傾斜したデッキを有する例示的なカートリッジハウジング
場合によっては、カートリッジユニット(24)の作動中の組織の把持及び安定化を強化する特徴部を含む、カートリッジハウジング(28)の変形形態を提供することが望ましい場合がある。そのような構成は、首尾の良い組織の切断及びステープル留めを促進し、そのような処置中に組織に生じるあらゆる損傷を軽減することができる。
図6は、そのように構成され、カートリッジハウジング(28)の代わりに上述のカートリッジユニット(24)に容易に組み込まれることができる、例示的な代替のカートリッジハウジング(200)を示す。カートリッジハウジング(200)は、以下に別途記載される場合を除いて、カートリッジハウジング(28)と同様の方法で構成され、動作可能である。
【0035】
カートリッジハウジング(200)は、湾曲した本体(202)を含み、この湾曲した本体(202)は、弓状経路に沿って延在し、かつ開放本体下端(204)と、閉鎖本体上端(206)と、本体上端(206)から近位に延在する上部アーム(208)とを含む。本実施例の湾曲した本体(202)及び上部アーム(208)は、互いに連通する中空内部を有しており、上記のカートリッジハウジング(28)と同様のそれぞれの可動構成要素を収容するように構成されている。具体的には、湾曲した本体(202)は、
図5に示されるステープルドライバ組立体(140)、複数のステープル(図示せず)、ナイフホルダ(142)、及び湾曲したナイフ(32)を移動可能に収容するように構成されている。上部アーム(208)は、同様に
図5に示されるエンドキャップ(178)によって上部アーム(208)内に保持される組織保持ピン(30)及び連結具(170)を移動可能に収容するように構成されている。カートリッジハウジング(200)は、上記のカートリッジハウジング(28)と同様の様式でアンビル(26)と連結して、カートリッジユニット(24)と同様のカートリッジユニットを画定するように構成されている。得られたカートリッジユニットは、エンドエフェクタ(16)のC字形の支持構造体(128)によって取り外し可能に受容されるように構成されており、これにより、湾曲した本体(202)は、閉鎖機構(52)のフレームプレート(35、36)の遠位端と連結し、結合具(170)は、組織保持ピン作動機構(37)のプッシュロッド(50)の遠位端と連結し、また、ステープルドライバ組立体(140)及びナイフホルダ(142)は、発射機構(80)の発射バー(図示せず)の遠位端と連結する。
【0036】
カートリッジハウジング(200)の湾曲した本体(202)の遠位面は、遠位に面するステープルデッキ(210)を画定し、このステープルデッキ(210)は、湾曲した本体(202)の弓状経路に沿って延在し、かつ、湾曲した本体(202)の凸状側に沿って延在する第1の細長い側縁部(212)と、湾曲した本体(202)の凹状側に沿って延在する対向する第2の細長い側縁部(214)とを有する。
図10に関連して以下により詳細に記載されるように、本実施例のステープルデッキ(210)は、デッキ側縁部(212、214)に向かって下方方向に弓状ナイフスロット(218)から離れて傾斜している。上述のステープルデッキ(134)と同様に、ステープルデッキ(210)は、カートリッジハウジング(200)がアンビル(26)に向かって遠位に作動されると、アンビル(26)のステープル形成面(138)に対して組織をクランプするように構成されている。ステープルデッキ(210)は、複数のステープル開口部(216)を含み、この開口部(216)は、発射機構(80)の作動に応答してクランプされた組織をステープル留めするために、ステープルドライバ組立体(140)のステープルドライバ(141)によってステープル開口部(216)を通って遠位に駆動される複数のステープル(図示せず)を収容するように構成されている。
【0037】
図7に最もよく示されているように、ステープルデッキ(210)は、デッキ(210)を第1の細長い側部と第2の細長い側部とに分割するようにデッキ(210)の弓状中心線に沿って延在する、弓状ナイフスロット(218)を更に含む。弓状ナイフスロット(218)は、発射機構(80)の作動に応答してクランプされた組織を切断するために、遠位に、弓状ナイフスロットを通して湾曲したナイフ(32)を摺動可能に受容するように構成されている。ステープル開口部(216)は、デッキ(210)の第1の側部及び第2の側部上に、弓状ナイフスロット(218)に平行な弓状経路に沿って延在する、複数の列で配置される。本変形形態では、デッキ(210)の各側部は、ステープル開口部(216)の内側列及び外側列を含み、これにより、ステープル開口部の2つの列が弓状ナイフスロット(218)の各側に配置されるようになっている。隣接する内側列及び外側列のステープル開口部(216)は、互いに対して互い違いの構成で配置される。ステープル開口部(216)は、他の変形形態において、様々な他の列の数及び構成で配置され得ることが理解されるであろう。
【0038】
図8に最も良く示されるように、ステープルデッキ(210)は、本体上端(206)に隣接する、弓状ナイフスロット(218)の第1の端部に配置された第1の円形開口部(220)を更含む。第1の円形開口部(220)は、弓状ナイフスロット(218)の第1の端部と位置合わせされ、それと直接連通しており、また、第1の円形開口部を通して組織保持ピン(30)(
図5を参照)を摺動可能に受容するように構成されている。ステープル開口部(216)の端部対は、第1の円形開口部(220)を越えて、本体上端(206)に向かう方向に延在している。したがって、有利には、ステープル開口部(216)の端部対によって射出されるステープルは、組織保持ピン(30)によって組織内に形成された穴がその後の隣接するステープルラインが組織に適用される前に流体の漏れをほとんど又は全く呈さないように、組織内に形成される。
図9に最も良く示されるように、ステープルデッキ(210)は、本体下端(204)に隣接する、弓状ナイフスロット(218)の第2の端部に配置された第2の円形開口部(222)を更に含む。第2の円形開口部(222)は、弓状ナイフスロット(218)の第2の端部と位置合わせされ、それと直接連通しており、また、第2の円形開口部を通してガイドピン(166)の近位部分(
図5を参照)を受容するように構成されている。
【0039】
図8に示すように、本実施例のステープルデッキ(210)は、環状壁部(224)を更に含み、この環状壁部(224)は、第1の円形開口部(220)を実質的に取り囲み、デッキ(210)から離れて突出して、デッキ(210)からオフセットした隆起した環状表面(226)を画定する。本実施例では、環状壁部(224)は、環状壁部(224)の対向する外側部上に配設された、後述する隣接する一対のクリート(240)と一体的に接続されている。デッキ(210)は、弓状ナイフスロット(218)の両側に沿って延在し、かつデッキ(210)から離れて突出して、隆起した隆起面(230)を画定する、一対の細長い隆起部(228)を更に含む。隆起した隆起面(230)は、弓状ナイフスロット(218)の対応する第1の端部において環状壁部(224)の隆起した環状表面(226)と面一に相互接続する。細長い隆起部(228)は、
図9に示すように、弓状ナイフスロット(218)の対向する第2の端部で終端する。隆起した環状表面(226)は、組織をアンビル(26)に対してクランプし、それによって組織を第1の円形開口部(220)に対して固定して、組織の切断及びステープル留め中の、及びその後のカートリッジハウジング(200)内への組織保持ピン(30)の近位後退中の、組織保持ピン(30)の周りの組織の流れを最小限に抑えるように構成される。同様に、隆起した隆起面(230)は、組織をアンビル(26)に対してクランプし、それによって組織を弓状ナイフスロット(218)に対して固定して、組織の切断及びステープル留め中のナイフスロット(218)の周りの組織の流れを最小限に抑えるように構成される。
【0040】
図6及び
図8に示されるように、組織間隙ポスト(232)が、本体上端(206)に向かう方向に第1の円形開口部(220)をわずかに越えたところのステープルデッキ(210)上に、1の円形開口部(220)及び弓状ナイフスロット(218)と整列して配設される。組織間隙ポスト(232)は、デッキ(210)から離れて突出しており、カートリッジハウジング(200)がアンビル(26)に対して遠位に駆動されると、アンビル(26)の第1の端部に当接するように構成されている。このようにして、組織間隙ポスト(232)は、ステープルデッキ(210)とアンビル(26)のステープル形成面(138)との間の最小組織間隙を規定する。
【0041】
図6及び
図9に示されるように、組織停止タブ(234)が、本体下端(204)に向かう方向に第2の円形開口部(222)をわずかに越えたところのステープルデッキ(210)上に、第2の円形開口部(222)及び弓状ナイフスロット(218)と整列して配設される。組織停止タブ(234)はデッキ(210)から離れて突出しており、組織の切断及びステープル留め中に組織が本体下端(204)を越えて流れるのを防止する停止特徴部として機能する。いくつかの変形形態では、組織停止タブ(234)は、カートリッジハウジング(200)が遠位に駆動されたときにアンビル(26)の第2の端部に当接するように更に構成されており、これにより、組織停止タブ(234)は、組織間隙ポスト(232)と協働して、ステープルデッキ(210)とアンビル(26)のステープル形成面(138)との間の最小組織間隙を規定する。
【0042】
図7~
図9に示されるように、カートリッジハウジング(200)のステープルデッキ(210)は、デッキ(210)から離れて突出するスタンドオフ部材(240、250、252、254)の形態の複数の組織係合特徴部を更に含む。スタンドオフ部材(240、250、252、254)は、デッキ(210)の長さに沿って分布されており、弓状ナイフスロット(218)から横方向にオフセットされて、それぞれの1つ又は2つ以上のステープル開口部(216)と整列し、それに開口する。後述するように、スタンドオフ部材(240、250、252、254)は、デッキ(210)がアンビル(26)に対してクランプされたときに組織を把持し、それによって組織を安定化させるように構成されており、更に、ステープル位置における組織の圧縮を最適化して、組織の効果的なステープル留め及び切断を促進する。
【0043】
図7に最も良く示されるように、ステープルデッキ(210)上の第1の組のスタンドオフ部材は、弓状ナイフスロット(218)の長さに沿ってステープル開口部(216)と位置を合わせるように離散的に配置された、クリート(240)の形態で示されている。各クリート(240)は、ステープル開口部(216)の所与の列内の第1のステープル開口部(216)の端部分の周囲に部分的に巻き付いている第1の端部特徴部(242)と、ステープル開口部(216)の当該列内の隣接する第2のステープル開口部(216)の端部分の周囲に部分的に巻き付いている、対向する第2の端部特徴部(244)とを含む。第1及び第2の端部特徴部(242、244)は、凹状ブリッジ部分(246)によって一体的に接続される。
【0044】
クリート(240)の各端部特徴部(242、244)は、概ねU字形であり、それぞれのステープル開口部(216)の内壁と接合し、かつそこから外側に突出する内壁を画定する。このようにして、各端部特徴部(242、244)は、それぞれのステープル開口部(216)に開口し、これと連通する。したがって、各端部特徴部(242、244)は、ステープルがステープルドライバ(141)によってステープル開口部(216)から遠位に射出される際に、対応するステープル(図示せず)のそれぞれのステープル脚部を案内するように構成されている。したがって、各端部特徴部(242、244)は、隣接するクリート(240)の対面する端部特徴部(242、244)、又は以下に記載されるエンドキャップ(250、252、254)と協働して、ステープルのこのような案内を提供する。本変形形態では、クリート(240)の隣接する列の端部特徴部(242、244)と横方向に向かい合う、各端部特徴部(242、244)の外側部は、同じ端部特徴部(242、244)の対向する外側部と比べて、壁厚を減少させて形成される。
【0045】
本実施例のクリート(240)は、各クリート(240)が独立型であり、隣接するクリート(240)から離間されているように互いに対して離散的に形成されているが、他の実施例では、クリート(240)は、ステープルデッキ(210)の1つ又は2つ以上の部分に沿って互いに相互接続されてもよい。
【0046】
図8及び
図9に示されるように、ステープルデッキ(210)は、ステープル開口部(216)の外側列の両端に配設された外側列エンドキャップ(250)の形態の追加のスタンドオフ部材を含む。本変形形態では、各外側列エンドキャップ(250)は、クリート(240)の端部特徴部(242、244)と同様のU字形状を有し、ステープル開口部(216)のそれぞれの外側列の端部分においてそれぞれのステープル開口部(216)の端部分の周囲に部分的に巻き付いている。したがって、各外側列エンドキャップ(250)は、同じ列内の隣接するクリート(240)の対面する端部特徴部(242、244)と協働して、ステープルが射出される際にそれぞれのステープル(図示せず)を組織内に遠位に案内する。本実施例では、各外側列エンドキャップ(250)の内面は、クリート(240)の隣接する内側列の隣接するクリート(240)の端部特徴部(242、244)と一体的に接続されている。
【0047】
図8に示すように、一対の第1の端部の内側列エンドキャップ(252)は、本体上端(206)においてステープル開口部(216)の内側列の端部に配設される。本実施例の第1の端部の内側列エンドキャップ(252)は、組織間隙ポスト(232)の対向する外側部に配設され、組織間隙ポスト(232)と一体的に接合される(1つのエンドキャップ(252)のみが
図8に示されている)。第1の端部の内側列エンドキャップ(252)は、各エンドキャップ(252)が、一番端のステープル開口部(216)の端部分の周囲に部分的に巻き付いているU字形の開口部を有し、ステープルを遠位に射出する間に同じ列内のクリート(240)の対面する端部特徴部(242、244)と協働してステープルを案内するという点で、その他の点では外側列エンドキャップ(250)と同様である。
【0048】
図9に示すように、一対の第2の端部の内側列エンドキャップ(254)は、本体下端(204)においてステープル開口部(216)の内側列の端部に配設される。本実施例の第2の端部の内側列エンドキャップ(254)は、組織停止タブ(234)の対向する外側部に配設され、組織停止タブ(234)と一体的に接合される。第2の端部の内側列エンドキャップ(254)は、各エンドキャップ(254)が、一番端のステープル開口部(216)の端部分の周囲に部分的に巻き付いているU字形の開口部を有し、ステープルを遠位に射出する間に同じ列内のクリート(240)の対面する(242、244)と協働してステープルを案内するという点で、外側列エンドキャップ(250)と同様である。
【0049】
本実施例では、クリート(240)、外側列エンドキャップ(250)、及び第1の端部の内側列エンドキャップ(252)はそれぞれ、同様の第1の最大高さでデッキ(210)から突出し、したがって、上面を集合的に画定する。対照的に、第2の端部の内側列エンドキャップ(254)はそれぞれ、デッキ(210)から、第1の最大高さよりも大きい第2の最大高さで突出しているので、部材(240、250、252)の上面より上方に、上方に延出する。このような構成及び対応する利点は、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、本明細書と同日に出願された米国特許出願第 号[代理人整理番号END9082USNP1]、発明の名称「Surgical Stapler with Tissue Engagement Features Around Tissue Containment Pin」により詳細に開示されている。
【0050】
図10に示すように、ステープルデッキ(210)の各側部は、デッキ(210)のそれぞれの側縁部(212、214)に向かって下方方向に弓状ナイフスロット(218)から離れて傾斜している。したがって、クリート(240)の横方向外側に配設された各デッキ側部の最も外側の部分は、弓状ナイフスロット(218)の全長に沿って、クリート(240)の横方向内側に配設されたデッキ側部の対応する最も内側の部分より下方へ凹んでいる。更に、デッキ(210)の各側部は、クリート(240)の上面、外側列エンドキャップ(250)、及び第1の端部の内側列エンドキャップ(252)によって画定される上面に対して同じ角度(θ)で、弓状ナイフスロット(218)から離れて均一に傾斜している。代替的な変形形態では、デッキ(210)の第1の側部及び第2の側部は、弓状ナイフスロット(218)から離れて、異なる角度(θ)だけ下向きに傾斜してもよい。有利には、ステープルデッキ(210)の側部の下方傾斜構成は、デッキ(210)の横方向幅にわたって組織の様々な圧縮を提供する。具体的には、比較的高度な組織圧縮が、弓状ナイフスロット(218)の近くに適用され、比較的軽度な圧縮が、デッキ側縁部(212、214)の近くに適用される。したがって、デッキ(210)のこの傾斜構成は、以下に更に説明するように、スタンドオフ部材(240、250、252、254)と協働して、組織切断線及びステープル位置における組織圧縮を最適化し、ステープル留め及び切断中に組織を効果的に安定させながらも、組織の過剰圧縮を防ぐためにデッキ側縁部(212、214)における組織圧縮を最小限に抑える。
【0051】
デッキ(210)に対するスタンドオフ部材(240、250、252、254)の突出構成は、多数の利点を提供することを理解されたい。具体的には、上述したように、組織がデッキ(210)とアンビル(26)との間で圧縮されるとき、圧縮された組織の一部分は、スタンドオフ部材(240、250、252、254)内及びその周りの陥凹領域(例えば、凹状ブリッジ部分(246)及び分離間隙)に入ることになる。一部の組織がこれらの陥凹領域に入る結果として、スタンドオフ部材(240、250、252、254)に対応するステープル位置における組織圧縮が最適化される一方、圧縮された組織に加えられる全圧力は、ステープルデッキ(210)が平坦である理論的な代替構成と比べて減少する。圧縮された組織に加えられる全圧力を低減することにより、過剰圧縮によって組織を損傷するリスクが低減される。圧縮された組織に加えられる全圧力を低減することに加えて、スタンドオフ部材(240、250、252、254)内及びその周りの陥凹領域への組織部分の進入は、ステープルデッキ(210)が平坦である理論的な代替的構成と比べて増強された、圧縮された組織に対する強化された把持効果を提供する。強化された組織把持力は、ナイフ(32)によるよりきれいな切断、及び組織内へのステープルのより効果的な展開を促進することができる。したがって、タンドオフ部材(240、250、252、254)を設けることによって、組織の過剰圧縮のリスクを低減すること、及び組織を切断してステープル留めする際に一層大きな成功を促進することの両方が可能になる。
【0052】
III.例示的な組み合わせ
以下の実施例は、本明細書の教示を組み合わせるか又は適用することができる、様々な非網羅的な方法に関する。以下の実施例は、本出願における又は本出願の後の書類提出におけるどの時点でも提示され得る、いずれの請求項の適用範囲をも限定することを目的としたものではないと理解されよう。一切の否定要素を意図するものではない。以下の実施例は、単なる例示の目的で与えられるものに過ぎない。本明細書の様々な教示は、他の多くの方法で構成及び適用が可能であると考えられる。また、いくつかの変形では、以下の実施例において言及される特定の特徴部を省略してよいことも考えられる。したがって、本発明者又は本発明者の利益の承継者により、後日、そうである旨が明示的に示されない限り、以下に言及される態様又は特徴部のいずれも重要なものとして見なされるべきではない。以下に言及される特徴部以外の更なる特徴部を含む請求項が本出願において、又は本出願に関連する後の書類提出において示される場合、それらの更なる特徴部は、特許性に関連するいかなる理由によっても追加されたものとして仮定されるべきではない。
【実施例1】
【0053】
外科用器具と共に使用するためのカートリッジであって、(a)湾曲した本体と、(b)湾曲した本体によって画定されるデッキであって、アンビルに対して組織をクランプするように構成されている、デッキと、(c)デッキ内に形成された複数のステープル開口部であって、複数のステープルを収容するように構成されている、複数のステープル開口部と、(d)デッキ内に形成された弓状スロットであって、内部を通して切断部材を摺動可能に受容するように構成されている、弓状スロットと、を備え、デッキが、弓状スロットの長さを横断する方向に弓状スロットから離れて傾斜する、傾斜したデッキ部分を含み、傾斜したデッキ部分が、デッキの幅にわたって組織の様々な圧縮を提供するように構成されている、カートリッジ
【実施例2】
【0054】
傾斜したデッキ部分が、弓状スロットの全長に沿って延在する、実施例1に記載のカートリッジ。
【実施例3】
【0055】
ステープル開口部のうちの少なくともいくつかが、傾斜したデッキ部分上に配置されている、実施例1又は2に記載のカートリッジ。
【実施例4】
【0056】
デッキが、第1の細長い側縁部と、対向する第2の細長い側縁部とを含み、傾斜したデッキ部分が、(i)第1の細長い側縁部に向かう方向に弓状スロットから離れて傾斜するデッキの第1の側部と、(ii)第2の細長い側縁部に向かう方向に弓状スロットから離れて傾斜するデッキの第2の側部と、を含む、実施例1~3のいずれかに記載のカートリッジ。
【実施例5】
【0057】
デッキ上に配置された複数のスタンドオフ部材を更に備え、スタンドオフ部材が、組織と係合するように構成されている、実施例1~4のいずれかに記載のカートリッジ。
【実施例6】
【0058】
スタンドオフ部材のうちの少なくともいくつかが、傾斜したデッキ部分上に配置されている、実施例5に記載のカートリッジ。
【実施例7】
【0059】
スタンドオフ部材の上部表面が、上面を集合的に画定し、傾斜したデッキ部分が上面に対して傾斜している、実施例5又は6に記載のカートリッジ。
【実施例8】
【0060】
スタンドオフ部材が、弓状スロットから横方向にオフセットされている、実施例5~7のいずれかに記載のカートリッジ。
【実施例9】
【0061】
スタンドオフ部材のそれぞれが、隣接するステープル開口部の少なくとも一部分の周囲に巻き付いている、実施例1~8のいずれかに記載のカートリッジ。
【実施例10】
【0062】
スタンドオフ部材のうちの少なくともいくつかが、第1のステープル開口部の端部分の周囲に少なくとも部分的に巻き付いている第1の端部特徴部と、第2のステープル開口部の端部分の周囲に少なくとも部分的に巻き付いている、対向する第2の端部特徴部とを含む、実施例1~9のいずれかに記載のカートリッジ。
【実施例11】
【0063】
第1の端部特徴部が、凹状ブリッジ部分によって第2の端部特徴部と接続されている、実施例10に記載のカートリッジ。
【実施例12】
【0064】
弓状スロットの両側に沿って延在する一対の隆起部を更に備える、実施例1~11のいずれかに記載のカートリッジ。
【実施例13】
【0065】
弓状スロットの端部に隣接してデッキ内に形成された円形開口部を更に備え、円形開口部が、内部を通してピンを摺動可能に受容するように構成されている、実施例1~12のいずれかに記載のカートリッジ。
【実施例14】
【0066】
円形開口部が、弓状スロットと連通する、実施例13に記載のカートリッジ。
【実施例15】
【0067】
ステープル開口部のうちの少なくとも1つが、デッキの対応する端部に向かう方向に円形開口部を越えて延在する、実施例13又は14に記載のカートリッジ。
【実施例16】
【0068】
外科用器具と共に使用するためのカートリッジであって、(a)湾曲した本体と、(b)湾曲した本体によって画定されるデッキであって、アンビルに対して組織をクランプするように構成され、第1の細長い側縁部及び対向する第2の細長い側縁部を含む、デッキと、(c)デッキ内に形成された弓状スロットであって、デッキに沿って第1の細長い側縁部と第2の細長い側縁部との間に延在し、弓状スロットを通して切断部材を摺動可能に受容するように構成されている、弓状スロットと、(d)デッキ内に形成された複数のステープル開口部であって、複数のステープルを収容するように構成されており、ステープル開口部の第1の列が、デッキに沿って第1の細長い側縁部と弓状スロットとの間に延在し、ステープル開口部の第2の列が、デッキに沿って第2の細長い側縁部と弓状スロットとの間に延在する、複数のステープル開口部と、を備え、第1の細長い側縁部と第1の列との間に延在するデッキの第1の外側部分が、弓状スロットの組織接触部分に対して凹んでおり、第2の細長い側縁部と第2の列との間に延在するデッキの第2の外側部分が、弓状スロットの組織接触部分に対して凹んでいる、カートリッジ。
【実施例17】
【0069】
デッキが、弓状スロットと第1の列との間に延在する第1の内側部分と、弓状スロットと第2の列との間に延在する第2の内側部分とを含み、第1の内側部分及び第1の外側部分が、第1の方向に弓状スロットから離れて傾斜し、第2の内側部分及び第2の外側部分が、反対の第2の方向に弓状スロットから離れて傾斜している、実施例16に記載のカートリッジ。
【実施例18】
【0070】
デッキ上に配置されており、かつ組織と係合するように構成されている複数のスタンドオフ部材を更に備え、スタンドオフ部材の上部表面が、上面を集合的に画定し、デッキの第1の外側部分及び第2の外側部分が、上面に対して傾斜している、実施例16又は17に記載のカートリッジ。
【実施例19】
【0071】
外科用器具であって、(a)本体と、(b)本体から遠位に延在するシャフト組立体と、(c)シャフト組立体の遠位端にあるエンドエフェクタであって、(i)支持構造体と、(ii)支持構造体に対して固定されたアンビルであって、複数のステープル形成ポケットを含む、アンビルと、(iii)カートリッジハウジングであって、アンビルに対して組織をクランプするために支持構造体に対して移動可能であり、(A)湾曲した本体と、(B)湾曲した本体によって画定されるデッキと、(C)デッキ内に形成された複数のステープル開口部であって、複数のステープルを収容するように構成されている、複数のステープル開口部と、(D)デッキ内に形成された弓状スロットであって、内部を通して切断部材を摺動可能に受容するように構成されている、弓状スロットと、(E)弓状スロットの長さに沿ってデッキ上に配置された複数のスタンドオフ部材と、を備え、デッキの側部が、スタンドオフ部材から離れて傾斜している、カートリッジハウジングと、を備える、エンドエフェクタと、を備える、外科用器具。
【実施例20】
【0072】
デッキの側部が、弓状スロットを横断する方向にスタンドオフ部材から離れて傾斜している、実施例19に記載の外科用器具。
【0073】
IV.その他
本明細書に記載の教示、表現、実施形態、実施例などのうちのいずれか1つ又は2つ以上を、本明細書に記載の他の教示、表現、実施形態、実施例などのうちのいずれか1つ又は2つ以上と組み合わせることができる点が理解されるべきである。したがって、上記の教示、表現、実施形態、実施例などは、互いに対して独立して考慮されるべきではない。本明細書の教示に照らして、本明細書の教示を組み合わせることができる様々な好適な方法が、当業者には容易に明らかとなろう。このような修正及び変形は、「特許請求の範囲」内に含まれるものとする。
【0074】
本明細書に参照により組み込まれると言及されるあらゆる特許、公報、又はその他の開示内容は、全体的に又は部分的に、組み込まれる内容が現行の定義、見解、又は本開示に記載されるその他の開示内容とあくまで矛盾しない範囲でのみ本明細書に組み込まれると理解されるべきである。それ自体、また必要な範囲で、本明細書に明瞭に記載される開示内容は、参照により本明細書に組み込まれるあらゆる矛盾する記載に優先するものとする。参照により本明細書に組み込まれると言及されているが、現行の定義、見解、又は本明細書に記載される他の開示内容と矛盾する任意の内容、又はそれらの部分は、組み込まれた内容と現行の開示内容との間に矛盾が生じない範囲においてのみ、組み込まれるものとする。
【0075】
本明細書に記載される外科用器具システムは、ステープルの展開及び変形に関連して説明されてきた。しかしながら、本明細書に記載される実施形態は、これに限定されない。例えば、クランプ又はタックなど、ステープル以外の締結要素を展開する様々な実施形態が想定される。更に、組織を封止するための任意の好適な手段を利用する、様々な実施形態も想到される。例えば、様々な実施形態によるエンドエフェクタは、組織を加熱して封止するように構成された電極を備え得る。また例えば、特定の実施形態によるエンドエフェクタは、組織を封止するために振動エネルギーを加えることができる。
【0076】
上記のデバイスの変形形態は、医療専門家により行われる従来の医療処置及び手術における用途のみではなく、ロボット支援された医療処置及び手術における用途をも有することができる。あくまで一例として、本明細書の様々な教示は、ロボット外科用システム、例えばIntuitive Surgical,Inc.(Sunnyvale,California)によるDAVINCI(商標)システムなどに容易に組み込まれ得る。同様に、当業者であれば、本明細書における様々な教示が、以下のうちのいずれかの様々な教示と容易に組み合わされ得ることを認識するであろう:2013年7月9日発行の「Drive Interface for Operably Coupling a Manipulatable Surgical Tool to a Robot」と題する米国特許第8,479,969号、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、2014年8月12日発行の「Robotically-Controlled Cable-Based Surgical End Effectors」と題する米国特許出願公開第8,800,838号、及び/又はその開示が参照により本明細書に組み込まれる、2013年11月5日発行の「Robotically-Controlled Surgical End Effector System with Rotary Actuated Closure Systems」と題する米国特許第8,573,465号。
【0077】
上述のデバイスの変形形態は、1回の使用後に処分するように設計することができ、又はそれらは、複数回使用するように設計することができる。変形形態は、いずれか又は両方の場合においても、少なくとも1回の使用後に再利用のために再調整され得る。再調整は、デバイスの分解工程、それに続く特定の部品の洗浄又は交換工程、及びその後の再組み立て工程の、任意の組み合わせを含み得る。特に、デバイスのいくつかの変形形態は分解することができ、また、デバイスの任意の数の特定の部品若しくは部分を、任意の組み合わせで選択的に交換又は取り外してもよい。特定部分の洗浄及び/又は交換の際、デバイスのいくつかの変形形態は、再調整用の施設において、又は手術の直前に操作者によって、のいずれかで、その後の使用のために再組み立てされてもよい。当業者であれば、デバイスの再調整において、分解、洗浄/交換、及び再組み立てのための様々な技術を利用することができることを理解するであろう。かかる技術の使用、及び結果として得られる再調整されたデバイスは、全て本発明の範囲内にある。
【0078】
あくまで一例として、本明細書に記載される変形形態は、処置の前及び/又は後に滅菌されてもよい。1つの滅菌技術では、デバイスをプラスチック製又はTYVEK製のバックなど、閉鎖及び封止された容器に入れる。次いで、容器及びデバイスを、γ線、X線、又は高エネルギー電子線などの、容器を透過し得る放射線場に置いてもよい。放射線は、デバイス上及び容器内の細菌を死滅させ得る。次に、滅菌されたデバイスを、後の使用のために、滅菌容器内に保管してもよい。β線若しくはγ線、エチレンオキシド、又は水蒸気が挙げられるがこれらに限定されない、当該技術分野で既知のその他の任意の技術を用いて、デバイスを滅菌してもよい。
【0079】
以上、本発明の様々な実施形態を示し、記載したが、当業者による適切な改変により、本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書に記載の方法及びシステムの更なる適合化を実現することができる。そのような可能な改変のうちのいくつかについて述べたが、他の改変も当業者には明らかになるであろう。例えば、上記の実施例、実施形態、形状、材料、寸法、比率、工程などは例示的なものであって、必須のものではない。したがって、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲の観点から考慮されるべきものであり、本明細書及び図面に示され記載された構造及び動作の細部に限定されないものとして理解される。
【0080】
〔実施の態様〕
(1) 外科用器具と共に使用するためのカートリッジであって、
(a)湾曲した本体と、
(b)前記湾曲した本体によって画定されるデッキであって、アンビルに対して組織をクランプするように構成されている、デッキと、
(c)前記デッキ内に形成された複数のステープル開口部であって、複数のステープルを収容するように構成されている、複数のステープル開口部と、
(d)前記デッキ内に形成された弓状スロットであって、内部を通して切断部材を摺動可能に受容するように構成されている、弓状スロットと、を備え、
前記デッキが、前記弓状スロットの長さを横断する方向に前記弓状スロットから離れて傾斜する、傾斜したデッキ部分を含み、前記傾斜したデッキ部分が、前記デッキの幅にわたって組織の様々な圧縮を提供するように構成されている、カートリッジ。
(2) 前記傾斜したデッキ部分が、前記弓状スロットの全長に沿って延在する、実施態様1に記載のカートリッジ。
(3) 前記ステープル開口部のうちの少なくともいくつかが、前記傾斜したデッキ部分上に配置されている、実施態様1に記載のカートリッジ。
(4) 前記デッキが、第1の細長い側縁部と、対向する第2の細長い側縁部とを含み、前記傾斜したデッキ部分が、
(i)前記第1の細長い側縁部に向かう方向に前記弓状スロットから離れて傾斜する前記デッキの第1の側部と、
(ii)前記第2の細長い側縁部に向かう方向に前記弓状スロットから離れて傾斜する前記デッキの第2の側部と、を含む、実施態様1に記載のカートリッジ。
(5) 前記デッキ上に配置された複数のスタンドオフ部材を更に備え、前記スタンドオフ部材が、組織と係合するように構成されている、実施態様1に記載のカートリッジ。
【0081】
(6) スタンドオフ部材のうちの少なくともいくつかが、前記傾斜したデッキ部分上に配置されている、実施態様5に記載のカートリッジ。
(7) 前記スタンドオフ部材の上部表面が、上面を集合的に画定し、前記傾斜したデッキ部分が前記上面に対して傾斜している、実施態様5に記載のカートリッジ。
(8) 前記スタンドオフ部材が、前記弓状スロットから横方向にオフセットされている、実施態様5に記載のカートリッジ。
(9) 前記スタンドオフ部材のそれぞれが、隣接するステープル開口部の少なくとも一部分の周囲に巻き付いている、実施態様1に記載のカートリッジ。
(10) 前記スタンドオフ部材のうちの少なくともいくつかが、第1のステープル開口部の端部分の周囲に少なくとも部分的に巻き付いている第1の端部特徴部と、第2のステープル開口部の端部分の周囲に少なくとも部分的に巻き付いている、対向する第2の端部特徴部とを含む、実施態様1に記載のカートリッジ。
【0082】
(11) 前記第1の端部特徴部が、凹状ブリッジ部分によって前記第2の端部特徴部と接続されている、実施態様10に記載のカートリッジ。
(12) 前記弓状スロットの両側に沿って延在する一対の隆起部を更に備える、実施態様1に記載のカートリッジ。
(13) 前記弓状スロットの端部に隣接して前記デッキ内に形成された円形開口部を更に備え、前記円形開口部が、内部を通してピンを摺動可能に受容するように構成されている、実施態様1に記載のカートリッジ。
(14) 前記円形開口部が、前記弓状スロットと連通する、実施態様13に記載のカートリッジ。
(15) 前記ステープル開口部のうちの少なくとも1つが、前記デッキの対応する端部に向かう方向に前記円形開口部を越えて延在する、実施態様13に記載のカートリッジ。
【0083】
(16) 外科用器具と共に使用するためのカートリッジであって、
(a)湾曲した本体と、
(b)前記湾曲した本体によって画定されるデッキであって、アンビルに対して組織をクランプするように構成され、第1の細長い側縁部及び対向する第2の細長い側縁部を含む、デッキと、
(c)前記デッキ内に形成された弓状スロットであって、前記デッキに沿って前記第1の細長い側縁部と前記第2の細長い側縁部との間に延在し、前記弓状スロットを通して切断部材を摺動可能に受容するように構成されている、弓状スロットと、
(d)前記デッキ内に形成された複数のステープル開口部であって、複数のステープルを収容するように構成されており、前記ステープル開口部の第1の列が、前記デッキに沿って前記第1の細長い側縁部と前記弓状スロットとの間に延在し、前記ステープル開口部の第2の列が、前記デッキに沿って前記第2の細長い側縁部と前記弓状スロットとの間に延在する、複数のステープル開口部と、を備え、
前記第1の細長い側縁部と前記第1の列との間に延在する前記デッキの第1の外側部分が、前記弓状スロットの組織接触部分に対して凹んでおり、
前記第2の細長い側縁部と前記第2の列との間に延在する前記デッキの第2の外側部分が、前記弓状スロットの前記組織接触部分に対して凹んでいる、カートリッジ。
(17) 前記デッキが、前記弓状スロットと前記第1の列との間に延在する第1の内側部分と、前記弓状スロットと前記第2の列との間に延在する第2の内側部分とを含み、前記第1の内側部分及び前記第1の外側部分が、第1の方向に前記弓状スロットから離れて傾斜し、前記第2の内側部分及び前記第2の外側部分が、反対の第2の方向に前記弓状スロットから離れて傾斜する、実施態様16に記載のカートリッジ。
(18) 前記デッキ上に配置され、かつ組織と係合するように構成された複数のスタンドオフ部材を更に備え、前記スタンドオフ部材の上部表面が、上面を集合的に画定し、前記デッキの前記第1の外側部分及び前記第2の外側部分が、前記上面に対して傾斜している、実施態様16に記載のカートリッジ。
(19) 外科用器具であって、
(a)本体と、
(b)前記本体から遠位に延在するシャフト組立体と、
(c)前記シャフト組立体の遠位端にあるエンドエフェクタであって、
(i)支持構造体と、
(ii)前記支持構造体に対して固定されたアンビルであって、複数のステープル形成ポケットを含む、アンビルと、
(iii)カートリッジハウジングであって、前記アンビルに対して組織をクランプするために前記支持構造体に対して移動可能であり、
(A)湾曲した本体と、
(B)前記湾曲した本体によって画定されるデッキと、
(C)前記デッキ内に形成された複数のステープル開口部であって、複数のステープルを収容するように構成されている、複数のステープル開口部と、
(D)前記デッキ内に形成された弓状スロットであって、内部を通して切断部材を摺動可能に受容するように構成されている、弓状スロットと、
(E)前記弓状スロットの長さに沿って前記デッキ上に配置された複数のスタンドオフ部材と、を備え、
前記デッキの側部が、前記スタンドオフ部材から離れて傾斜している、カートリッジハウジングと、を備える、エンドエフェクタと、を備える、外科用器具。
(20) 前記デッキの前記側部が、前記弓状スロットを横断する方向に前記スタンドオフ部材から離れて傾斜している、実施態様19に記載の外科用器具。