(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】絶縁性樹脂組成物、絶縁性樹脂硬化体、積層体及び回路基板
(51)【国際特許分類】
C08G 59/50 20060101AFI20241007BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20241007BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20241007BHJP
B32B 15/092 20060101ALI20241007BHJP
B32B 27/38 20060101ALI20241007BHJP
H05K 1/05 20060101ALI20241007BHJP
【FI】
C08G59/50
C08L63/00 C
C08K3/013
B32B15/092
B32B27/38
H05K1/05 A
(21)【出願番号】P 2021542838
(86)(22)【出願日】2020-08-21
(86)【国際出願番号】 JP2020031633
(87)【国際公開番号】W WO2021039630
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2023-03-29
(31)【優先権主張番号】P 2019154510
(32)【優先日】2019-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【氏名又は名称】中塚 岳
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 良太
(72)【発明者】
【氏名】八島 克憲
(72)【発明者】
【氏名】木元 裕紀
(72)【発明者】
【氏名】山下 幸彦
【審査官】今井 督
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-103526(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102532486(CN,A)
【文献】特開2017-082091(JP,A)
【文献】特開2008-266535(JP,A)
【文献】特開2002-012653(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00- 59/72
C08L 63/00- 63/10
C08K 3/00- 13/08
B32B 15/00- 15/20
H05K 1/00- 1/18
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂と、アミン系硬化剤と、無機充填材と、を含有し、
前記アミン系硬化剤が、式(A-1)で表される第一のアミン化合物と、式(A-2)で表される第二のアミン化合物と、を含み、
前記アミン系硬化剤中の-NH
2の総数M
1に対する-NHR
1の総数M
2の比(M
2/M
1)が、0.05~0.3である、絶縁性樹脂組成物。
【化1】
[式(A-1)中、n
1は0~4の整数を示し、X
1はアルカンジイル基、酸素原子又は硫黄原子を示す。n
1が1以上のとき、複数存在するX
1は互いに同一でも異なっていてもよい。]
【化2】
[式(A-2)中、n
2は0~4の整数を示し、X
2はアルカンジイル基、酸素原子又は硫黄原子を示し、Yは、-NH
2又は-NHR
1(R
1は式(Y-1)で表される基を示す。)を示す。複数存在するYは互いに同一でも異なっていてもよい。但し、Yのうち少なくとも一つは-NHR
1である。n
2が1以上のとき、複数存在するX
2は互いに同一でも異なっていてもよい。]
【化3】
[式(Y-1)中、R
2はアルキル基を示す。]
【請求項2】
前記X
1及び前記X
2がメタンジイル基である、請求項1に記載の絶縁性樹脂組成物。
【請求項3】
前記アミン系硬化剤中の前記第一のアミン化合物の含有量が30~60質量%であり、
前記アミン系硬化剤中の前記第二のアミン化合物の含有量が40~70質量%である、請求項1又は2に記載の絶縁性樹脂組成物。
【請求項4】
前記エポキシ樹脂のエポキシ当量に対する、前記アミン系硬化剤の活性水素当量の比が、0.3~1.5である、請求項1~3のいずれか一項に記載の絶縁性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の絶縁性樹脂組成物の硬化体である、絶縁性樹脂硬化体。
【請求項6】
前記無機充填材の含有量が35~80体積%である、請求項5に記載の絶縁性樹脂硬化体。
【請求項7】
架橋密度が、4.0×10
-2~5.0×10
-1mol/cm
3である、請求項
5又は6に記載の絶縁性樹脂硬化体。
【請求項8】
-40℃における貯蔵弾性率が100GPa以下である、請求項5~7のいずれか一項に記載の絶縁性樹脂硬化体。
【請求項9】
金属板と、
前記金属板上に配置された請求項5~8のいずれか一項に記載の絶縁性樹脂硬化体と、
前記絶縁性樹脂硬化体上に配置された金属箔と、
を備える、積層体。
【請求項10】
金属板と、
前記金属板上に配置された請求項5~8ののいずれか一項に記載の絶縁性樹脂硬化体と、
前記絶縁性樹脂硬化体上に配置された回路部と、
を備える、回路基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属ベース回路基板の製造に好適に用いられる絶縁性樹脂組成物及びその硬化体に関する。また、本発明は、絶縁性樹脂組成物を用いて形成された積層体及び回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子をはじめとする電子・電気部品を搭載して混成集積回路を形成するための回路基板として、これまで様々な回路基板が実用化されている。回路基板は、基板材質に基づいて、樹脂回路基板、セラミックス回路基板、金属ベース回路基板等に分類されている。
【0003】
樹脂回路基板は、安価ではあるが基板の熱伝導性が低いので比較的小さな電力で利用される用途に制限される。セラミックス回路基板は、電気絶縁特性及び耐熱特性が高いというセラミックスの特徴から、比較的大きな電力で利用される用途に適するが、高価であるという欠点を有している。一方、金属ベース回路基板は、両者の中間的な性質を有し、比較的大きな電力で利用される汎用的な用途、例えば、冷蔵庫用インバーター、業務用空調用インバーター、産業用ロボット用電源、自動車用電源等の用途に好適である。
【0004】
例えば、特許文献1には、特定のエポキシ樹脂、硬化剤及び無機充填材を必須成分とする回路基板用組成物を用いて、応力緩和性、耐熱性、耐湿性及び放熱性に優れる回路基板を得る方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
セラミックス回路基板を金属ベース回路基板に代替することができれば、生産性の向上が期待できる。しかし、金属ベース回路基板は一般的に、セラミックス回路基板と比較して放熱性が低い傾向にある。また、セラミックス回路基板が用いられている産業用モジュール分野等においては、過酷な条件下で高電圧を印加される場合があり、このような条件下での高い信頼性が必要となる。
【0007】
そこで本発明は、高温高湿度かつ高電圧印加の条件下における優れた絶縁信頼性、及び、高い耐ヒートサイクル性を有する絶縁層を形成可能な絶縁性樹脂組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、上記絶縁性樹脂組成物の硬化体で構成された絶縁層を備え、高温高湿度かつ高電圧印加の条件下における絶縁信頼性及び耐ヒートサイクル性に優れた回路基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下に示す態様を含む。
(1)エポキシ樹脂と、アミン系硬化剤と、無機充填材と、を含有し、上記アミン系硬化剤が、式(A-1)で表される第一のアミン化合物と、式(A-2)で表される第二のアミン化合物と、を含む、絶縁性樹脂組成物。
【化1】
[式(A-1)中、n
1は0~4の整数を示し、X
1はアルカンジイル基、酸素原子又は硫黄原子を示す。n
1が1以上のとき、複数存在するX
1は互いに同一でも異なっていてもよい。]
【化2】
[式(A-2)中、n
2は0~4の整数を示し、X
2はアルカンジイル基、酸素原子又は硫黄原子を示し、Yは、-NH
2又は-NHR
1(R
1は式(Y-1)で表される基を示す。)を示す。複数存在するYは互いに同一でも異なっていてもよい。但し、Yのうち少なくとも一つは-NHR
1である。n
2が1以上のとき、複数存在するX
2は互いに同一でも異なっていてもよい。]
【化3】
[式(Y-1)中、R
2はアルキル基を示す。]
(2)上記X
1及び上記X
2がメタンジイル基である、(1)に記載の絶縁性樹脂組成物。
(3)上記アミン系硬化剤中の上記第一のアミン化合物の含有量が30~60質量%であり、上記アミン系硬化剤中の上記第二のアミン化合物の含有量が40~70質量%である、(1)又は(2)に記載の絶縁性樹脂組成物。
(4)上記アミン系硬化剤中の-NH
2の総数M
1に対する-NHR
1の総数M
2の比(M
2/M
1)が、0.05~0.30である、(1)~(3)のいずれかに記載の絶縁性樹脂組成物。
(5)上記エポキシ樹脂のエポキシ当量に対する、上記アミン系硬化剤の活性水素当量の比が、0.3~1.5である、(1)~(4)のいずれかに記載の絶縁性樹脂組成物。
(6)(1)~(5)のいずれかに記載の絶縁性樹脂組成物の硬化体である、絶縁性樹脂硬化体。
(7)上記無機充填材の含有量が35~80体積%である、(6)に記載の絶縁性樹脂組成物。
(8)架橋密度が、4.0×10
-2~5.0×10
-1mol/cm
3である、(6)又は(7)に記載の絶縁性樹脂硬化体。
(9)-40℃における貯蔵弾性率が100GPa以下である、(6)~(8)のいずれかに記載の絶縁性樹脂硬化体。
(10)金属板と、上記金属板上に配置された(6)~(9)のいずれかに記載の絶縁性樹脂硬化体と、上記絶縁性樹脂硬化体上に配置された金属箔と、を備える、積層体。
(11)金属板と、上記金属板上に配置された(6)~(9)のいずれかに記載の絶縁性樹脂硬化体と、前記絶縁性樹脂硬化体上に配置された回路部と、を備える、回路基板。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高温高湿度かつ高電圧印加の条件下における優れた絶縁信頼性、及び、高い耐ヒートサイクル性を有する絶縁層を形成可能な絶縁性樹脂組成物が提供される。また、本発明によれば、上記絶縁性樹脂組成物の硬化体で構成された絶縁層を備え、高温高湿度かつ高電圧印加の条件下における絶縁信頼性及び耐ヒートサイクル性に優れた回路基板が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【発明を実施するための形態】
【0011】
(絶縁性樹脂組成物)
本実施形態に係る絶縁性樹脂組成物は、エポキシ樹脂と、アミン系硬化剤と、無機充填材と、を含有する。本実施形態において、アミン系硬化剤は、式(A-1)で表される第一のアミン化合物と、式(A-2)で表される第二のアミン化合物と、を含む。
【0012】
【0013】
式(A-1)中、n1は0~4の整数を示し、X1はアルカンジイル基、酸素原子又は硫黄原子を示す。n1が1以上のとき、複数存在するX1は互いに同一でも異なっていてもよい。
【0014】
【0015】
式(A-2)中、n2は0~4の整数を示し、X2はアルカンジイル基、酸素原子又は硫黄原子を示し、Yは、-NH2又は-NHR1(R1は式(Y-1)で表される基を示す。)を示す。複数存在するYは互いに同一でも異なっていてもよい。但し、Yのうち少なくとも一つは-NHR1である。n2が1以上のとき、複数存在するX2は互いに同一でも異なっていてもよい。
【0016】
【0017】
式(Y-1)中、R2はアルキル基を示す。
【0018】
本実施形態に係る絶縁性樹脂組成物は、上述の特定のアミン系硬化剤をエポキシ樹脂と組み合わせることで、高温高湿度(例えば、85℃、85%RH)かつ高電圧印加(例えば、直流1200V)の条件下であっても優れた絶縁信頼性を維持(例えば、200時間以上)することが可能な絶縁性樹脂硬化体を形成できる。このため、本実施形態に係る絶縁性樹脂組成物によれば、高温高湿度かつ高電圧印加の条件下における絶縁信頼性及び耐ヒートサイクル性に優れた回路基板を製造できる。
【0019】
上述の効果が得られる理由は必ずしも明らかではないが、第二のアミン化合物の使用によって、硬化体の架橋密度の低下及びアルキル基の導入がなされ、これらに起因して硬化体の柔軟性が向上し、ヒートサイクル性に優れた絶縁層が形成されるためと考えられる。
【0020】
エポキシ樹脂は、アミン系硬化剤によって硬化し得るものであればよい。エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ポリプロピレングリコール型エポキシ樹脂、ポリテトラメチレングリコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラキスフェノールメタン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリアジン環を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物型のエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。エポキシ樹脂は、一種を単独で用いてよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
エポキシ樹脂は、耐熱性の観点からは、ベンゼン環構造、ナフタレン環構造及びトリアジン環構造からなる群より選択される少なくとも一つの環構造を含むものが好ましい。
【0022】
アミン系硬化剤は、アミノ基を有し、エポキシ樹脂を硬化可能な硬化剤である。本実施形態において、アミン系硬化剤は、式(A-1)で表される第一のアミン化合物と、式(A-2)で表される第二のアミン化合物と、を含む。
【0023】
式(A-1)中、n1は0~4であり、好ましくは0~2、より好ましくは0又は1である。
【0024】
式(A-1)中、X1はアルカンジイル基、酸素原子又は硫黄原子であり、好ましくはアルカンジイル基である。アルカンジイル基の炭素数は、1~5であることが好ましく、1~3であることがより好ましく、1であることが更に好ましい。
【0025】
複数存在するX1は互いに同一でも異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
【0026】
式(A-2)中、n2は0~4であり、好ましくは0~2、より好ましくは0又は1である。
【0027】
式(A-2)中、X2はアルカンジイル基、酸素原子又は硫黄原子であり、好ましくはアルカンジイル基である。アルカンジイル基の炭素数は、1~5であることが好ましく、1~3であることがより好ましく、1であることが更に好ましい。
【0028】
複数存在するX2は互いに同一でも異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
【0029】
X2は、X1と同じ基であってよい。このような態様であると、アミン系硬化剤の製造が容易となる。
【0030】
式(A-2)中、Yは、-NH2又は-NHR1である。複数存在するYは互いに同一でも異なっていてもよいが、Yのうち少なくとも一つは-NHR1である。
【0031】
好適な一態様において、アミン系硬化剤は、Yのうち一部が-NH2であり、他部が-NHR1であるアミン化合物(A-2-1)と、Yの全てが-NHR1であるアミン化合物(A-2-2)と、を含んでいてもよい。
【0032】
式(A-2)において、R1は、式(Y-1)で表される基である。式(Y-1)中、R2は、アルキル基であり、好ましくは炭素数1~8のアルキル基、より好ましくは炭素数3~5のアルキル基である。R2のアルキル基は、直鎖状、分岐状又は環状のいずれであってもよく、硬化体の柔軟性がより向上する観点からは直鎖状であることが好ましい。
【0033】
アミン系硬化剤中の-NH2の総数M1に対する-NHR1の総数M2の比(M2/M1)は、例えば0.05以上であり、好ましくは0.08以上、より好ましくは0.10以上である。これにより、高温高湿下での絶縁信頼性に一層優れる硬化体が得られる。また、上記比(M2/M1)は、例えば0.30以下であり、好ましくは0.25以下、より好ましくは0.20以下である。これにより、硬化体の絶縁性がより向上する傾向がある。すなわち、比(M2/M1)は、例えば、0.05~0.30、0.08~0.30、0.10~0.30、0.05~0.25、0.08~0.25、0.10~0.25、0.05~0.20、0.08~0.20又は0.10~0.20であってよい。
【0034】
アミン系硬化剤中の第一のアミン化合物の含有量は、硬化体の絶縁性がより向上する観点から、例えば15質量%以上であってよく、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上である。また、アミン系硬化剤中の第一のアミン化合物の含有量は、高温高湿下での絶縁信頼性に一層優れる硬化体が得られる観点から、例えば75質量%以下であってよく、好ましくは60質量%以下、より好ましくは55質量%以下である。すなわち、アミン系硬化剤中の第一のアミン化合物の含有量は、例えば、15~75質量%、30~75質量%、40~75質量%、15~60質量%、30~60質量%、40~60質量%、15~55質量%、30~55質量%又は40~55質量%であってよい。
【0035】
アミン系硬化剤中の第二のアミン化合物の含有量は、高温高湿下での絶縁信頼性に一層優れる硬化体が得られる観点から、例えば30質量%以上であってよく、好ましくは40質量%以上、より好ましくは45質量%以上である。また、アミン系硬化剤中の第二のアミン化合物の含有量は、硬化体の絶縁性がより向上する観点から、例えば80質量%以下であってよく、好ましくは70質量%以下、より好ましくは55質量%以下である。すなわち、アミン系硬化剤中の第二のアミン化合物の含有量は、例えば、30~80質量%、40~80質量%、45~80質量%、30~70質量%、40~70質量%、45~70質量%、30~55質量%、40~55質量%又は45~55質量%であってよい。
【0036】
アミン系硬化剤は、第一のアミン化合物及び第二のアミン化合物以外の他のアミン系硬化剤を更に含有していてもよいが、第一のアミン化合物及び第二のアミン化合物を主成分とすることが好ましい。具体的には、アミン系硬化剤中の第一のアミン化合物及び第二のアミン化合物の合計含有量は、例えば50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上であり、95質量%以上であってもよく、99質量%以上であってもよく、100質量%であってもよい。
【0037】
第一のアミン化合物及び第二のアミン化合物以外の他のアミン系硬化剤としては、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、セキサメチレンジアミン、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルスルフォン、ペンタエチレンジアミン、ジエチレングリコールビスプロピルアミン等が挙げられる。
【0038】
アミン系硬化剤の含有量は、高温高湿下での絶縁信頼性に一層優れる硬化体が得られ観点から、エポキシ樹脂のエポキシ当量に対するアミン系硬化剤の活性水素当量の比が下記の範囲となる量であることが好ましい。エポキシ樹脂のエポキシ当量に対するアミン系硬化剤の活性水素当量の比は、例えば0.2以上であってよく、好ましくは0.3以上、より好ましくは0.5以上である。また、エポキシ樹脂のエポキシ当量に対するアミン系硬化剤の活性水素当量の比は、例えば1.8以下であってよく、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.2以下である。すなわち、エポキシ樹脂のエポキシ当量に対するアミン系硬化剤の活性水素当量の比は、例えば、0.2~1.8、0.3~1.8、0.5~1.8、0.2~1.5、0.3~1.5、0.5~1.5、0.2~1.2、0.3~1.2又は0.5~1.2であってよい。
【0039】
無機充填材は特に限定されず、絶縁性及び熱伝導性が求められる用途に用いられる公知の無機充填材を特に制限無く用いることができる。無機充填材は、無機フィラーと称することもできる。
【0040】
無機充填材としては、例えば、窒化ホウ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、窒化アルミニウム、窒化珪素、酸化珪素、酸化亜鉛等から構成される無機充填材が挙げられる。
【0041】
無機充填材の形状は特に限定されず、鱗片状、粒子状、およびこれらの凝集体等であってよく、粒子状であることが好ましい。
【0042】
無機充填材は、絶縁性樹脂硬化体中の含有量が所定の範囲となるように絶縁性樹脂組成物中に配合されていてよい。絶縁性樹脂硬化体中の無機充填材の含有量は、熱伝導率がより向上する観点からは、35体積%以上が好ましく、40体積%以上がより好ましい。また、絶縁性樹脂硬化体中の無機充填材の含有量は、絶縁性樹脂組成物の塗工性が向上して、硬化時の空隙の形成等が抑制される観点から、80体積%以下が好ましく、75体積%以下がより好ましい。すなわち、絶縁性樹脂硬化体中の無機充填材の含有量は、35~80体積%、35~75体積%、40~80体積%又は40~75体積%であってよい。なお、無機充填材の体積は、無機充填材の質量を、無機充填材の真比重で除して求めることができる。また、絶縁性樹脂硬化体中の無機充填材の含有量は、絶縁性樹脂硬化体の総体積に対する、無機充填材の体積の割合を示す。
【0043】
絶縁性樹脂組成物は、上記以外の他の成分を更に含有していてよい。絶縁性樹脂組成物は、例えば、必要に応じて、硬化促進剤、変色防止剤、界面活性剤、カップリング剤、着色剤、粘度調整剤、酸化防止剤、イオン捕捉剤等を更に含有していてよい。
【0044】
他の成分の含有量は、絶縁性樹脂組成物の全量基準で、5質量%以下が好ましく、2質量%以下であることがより好ましく、0質量%であってもよい。
【0045】
(絶縁性樹脂硬化体)
本実施形態に係る絶縁性樹脂硬化体は、上述の絶縁性樹脂組成物の硬化体である。絶縁性樹脂硬化体は、高温高湿度かつ高電圧印加の条件下における優れた絶縁信頼性、及び、高い耐ヒートサイクル性を有する絶縁層を形成できる。
【0046】
絶縁性樹脂硬化体の架橋密度は、4.0×10-2mol/cm3以上であることが好ましく、6.0×10-2mol/cm3以上であることがより好ましい。これにより、硬化体の強度がより向上し、ヒートサイクル試験におけるクラックの発生が一層抑制されるため、耐ヒートサイクル性により優れた絶縁層を形成できる。また、絶縁性樹脂硬化体の架橋密度は、5.0×10-1mol/cm3以下であることが好ましく、3.0×10-1mol/cm3以下であることがより好ましい。これにより、硬化体の柔軟性がより向上し、応力緩和性に一層優れる絶縁層を形成できる。架橋密度は、アミン系硬化剤中の-NH2の総数M1に対する-NHR1の総数M2の比(M2/M1)を調整したり、エポキシ樹脂の分子量及び官能基数を調整したりすることで、適宜調整することができる。
【0047】
本明細書中、絶縁性樹脂硬化体の架橋密度は、下記の方法で算出される値を示す。
<架橋密度の測定方法>
(1)測定試料の作製
絶縁性樹脂組成物を真空中で脱泡した後、厚さ1mmのシリコーン樹脂性型枠に樹脂組成物を流し込み、50℃で3時間硬化させたのち、160℃で6時間硬化させる硬化条件で硬化して、絶縁性樹脂硬化体を得る。得られた絶縁性樹脂硬化体をダイヤモンドカッターで切り出し、1mm×3mm×40mmの板状の測定試料を得る。
(2)貯蔵弾性率の測定
測定試料について、動的粘弾性測定器(T&Aインスツルメント社製、「RSA 3」)を用いて、DMA法(JIS K 0129(2005))により、温度T1(K)における貯蔵弾性率を測定する。なお、温度T1は、絶縁性樹脂硬化体を構成する樹脂分のガラス転移点+30(K)とする。測定は、周波数は10Hz、昇温速度10℃/minの条件下、-50℃~+250℃の温度範囲で行う。
(3)架橋密度の算出
上記測定結果から、下記式によって架橋密度(mol/cm3)を算出する。なお、気体定数は、8.31429J/(mol・K)である。
架橋密度=貯蔵弾性率/(3×気体定数×T1)
【0048】
絶縁性樹脂硬化体の-40℃における貯蔵弾性率は、100GPa以下であることが好ましく、50GPa以下であることがより好ましい。これにより、ヒートサイクル性が一層向上する傾向がある。絶縁性樹脂硬化体の-40℃における貯蔵弾性率の下限は特に限定されない。
【0049】
本明細書中、絶縁性樹脂硬化体の貯蔵弾性率は、下記の方法で測定される値を示す。
<貯蔵弾性率の測定方法>
(1)測定試料の作製
絶縁性樹脂硬化体を1mm×3mm×40mmの板状のサイズに切り出して、測定試料を作成する。
(2)貯蔵弾性率の測定
動的粘弾性測定器(T&Aインスツルメント社製、「RSA 3」)を用い、周波数10Hz、昇温速度10℃/minの条件下、-50℃~+250℃の温度範囲で貯蔵弾性率を測定する。
【0050】
絶縁性樹脂硬化体の製造方法は特に限定されない。例えば、絶縁性樹脂硬化体は、絶縁性樹脂組成物を熱処理して硬化させることで製造することができる。熱処理は、1段階で行ってよく、2段階で行ってもよい。熱処理を2段階で行うことで、絶縁性樹脂組成物の半硬化体を経由して、絶縁性樹脂硬化体を形成できる。
【0051】
熱処理を1段階で行う場合、熱処理の温度は、例えば40~220℃であってよく、好ましくは70~180℃であり、熱処理の時間は、例えば0.5~48時間であってよく、好ましくは1~6時間である。
【0052】
熱処理を2段階で行う場合、1段階目の熱処理の温度は、例えば40~150℃であってよく、好ましくは50~100℃であり、熱処理の時間は、例えば0.2~8時間であってよく、好ましくは0.5~5時間である。また、2段階目の熱処理の温度は、例えば70~220℃であってよく、好ましくは120~180℃であり、熱処理の時間は、例えば0.5~9時間であってよく、好ましくは1~6時間である。
【0053】
絶縁性樹脂組成物又はその半硬化体を所定の形状に維持しつつ熱処理を行うことで、所定の形状を有する絶縁性樹脂硬化体を得ることができる。例えば、金属板上に絶縁性樹脂組成物を塗布し、必要に応じて金属箔を積層し、硬化させることで、金属板上に層状の絶縁性樹脂硬化体を形成することができる。
【0054】
(積層体)
本実施形態に係る積層体は、金属板と、金属板上に配置された絶縁性樹脂硬化体と、絶縁性樹脂硬化体上に配置された金属箔と、を備える。本実施形態に係る積層体は、金属板と金属箔とが絶縁性樹脂硬化体によって隔離されていてよく、絶縁性樹脂硬化体が絶縁層として機能していてよい。
【0055】
金属板を構成する金属材料は特に制限されず、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、鉄、ステンレス等の鉄合金等が挙げられる。金属板は、一種の金属材料から構成されていてよく、二種以上の金属材料から構成されていてもよい。また、金属板は、単層構造であってよく、多層構造であってもよい。
【0056】
金属板の厚みは特に制限されず、回路基板の作成に好適となる観点からは、例えば0.5~3.0mmであってよい。
【0057】
金属箔を構成する金属材料は特に制限されず、例えば、銅、アルミニウム、ニッケル等が挙げられる。金属箔は、一種の金属材料から構成されていてよく、二種以上の金属材料から構成されていてもよい。また、金属箔は、単層構造であってよく、多層構造であってもよい。
【0058】
金属箔の厚みは特に制限されず、回路基板の作成に好適となる観点からは、例えば0.009~1.0mmであってよい。
【0059】
絶縁性樹脂硬化体の厚みは特に制限されず、回路基板の作成に好適となる観点からは、例えば0.05~0.30mmであってよい。
【0060】
積層体は、85℃における金属箔の90度剥離強度が2N/cm以上であることが好ましく、4N/cm以上であることがより好ましい。このような積層体は、高温高湿度かつ直流電圧印加の条件下でも金属箔と絶縁性樹脂硬化体との接着が十分に維持されやすいため、当該積層体によれば、耐ヒートサイクル性に優れた回路基板が得られる。当該剥離強度は、上述の方法で測定される。
【0061】
積層体の製造方法は特に限定されない。例えば、積層体は、金属板上に絶縁性樹脂組成物を塗布し、硬化又は半硬化させる工程と、硬化又は半硬化させた絶縁性樹脂組成物(すなわち、絶縁性樹脂硬化体又は半硬化体)上に金属箔を接合する工程と、を含む方法によって製造できる。当該方法は、絶縁性樹脂組成物の半硬化体を硬化させる工程を更に含んでいてもよい。金属箔の接合は、例えばロールラミネート法、積層プレス法等の方法で行ってよい。
【0062】
また、積層体は、金属箔上に絶縁性樹脂組成物を塗布し、硬化又は半硬化させる工程と、硬化又は半硬化させた絶縁性樹脂組成物(すなわち、絶縁性樹脂硬化体又は半硬化体)上に金属板を接合する工程と、を含む方法によっても製造できる。当該方法は、絶縁性樹脂組成物の半硬化体を硬化させる工程を更に含んでいてもよい。
【0063】
図1は、積層体の好適な一実施形態を示す断面図である。
図1に示す積層体10は、金属板1と、金属箔3と、金属板1及び金属箔3の間に介在する絶縁性樹脂硬化体から構成される絶縁層2とを備えている。積層体10の金属箔3を所定のパターンに加工することで、回路基板を容易に形成することができる。
【0064】
(回路基板)
本実施形態に係る回路基板は、金属板と、金属板上に配置された絶縁性樹脂硬化体と、絶縁性樹脂硬化体上に配置された回路部と、を備える。本実施形態に係る回路基板は、金属板と回路部とが絶縁性樹脂硬化体によって隔離されていてよく、絶縁性樹脂硬化体が絶縁層として機能していてよい。
【0065】
金属板は、上述の積層体における金属板と同じものが例示できる。
【0066】
回路部は、金属材料から構成されていてよい。回路部を構成する金属材料としては、上述の金属箔を構成する金属材料と同じものが例示できる。回路部は、上述の金属箔を所定パターンに加工したものであってよい。
【0067】
回路部の厚みは特に制限されず、電流量及び放熱性の観点からは、例えば0.035~0.5mmであってよい。
【0068】
絶縁性樹脂硬化体の厚みは特に制限されず、絶縁性及び放熱性の観点からは、例えば0.07~0.2mmであってよい。
【0069】
回路基板の製造方法は特に限定されない。例えば、回路基板は、上述の積層体の金属箔を所定のパターンに加工する工程を含む方法によって製造できる。金属箔の加工(エッチング)の方法は特に限定されず、従来公知の方法を適用すればよい。
【0070】
図2は、回路基板の好適な一実施形態を示す断面図である。
図2に示す回路基板20は、金属板1と、回路部4と、金属板1及び回路部4の間に介在する絶縁性樹脂硬化体から構成される絶縁層2とを備えている。回路基板20は、例えば、積層体10の金属箔3を回路部4に加工したものであってよい。
【0071】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【実施例】
【0072】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0073】
<実施例1>
(アミン系硬化剤)
アミン系硬化剤として、下記式(A-1-1)で表されるアミン化合物37質量%、下記式(A-1-2)で表されるアミン化合物17質量%、下記式(A-2-1)で表されるアミン化合物32質量%、下記式(A-2-2)で表されるアミン化合物12質量%を含有するアミン系硬化剤(1)を準備した。なお、これらのアミン化合物は公知の方法で合成することができる。
【0074】
【0075】
(絶縁性樹脂組成物の調製)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(EXA850CRP、三菱化学株式会社製、表中では「エポキシ樹脂(1)」と表す。)35.9体積部と上記アミン系硬化剤(1)14.07体積部とを25℃で撹拌して混合した。次いで、窒化ホウ素フィラー(デンカ社製、平均粒径60μm、表中では「無機充填材(1)」と表す。)50.0体積部、硬化促進剤(2E4MZ、四国化成工業社製、比重0.975g/cm3)0.2体積部を添加し、プラネタリーミキサーで15分間、撹拌混合して、絶縁性樹脂組成物を得た。
【0076】
(回路基板の作製)
絶縁性樹脂組成物を、厚さ0.05mmのポリエチレンテレフタレート(PET)製のフィルム上に、硬化後の厚さが0.20mmになるように塗布し、100℃で15分加熱して、Bステージ(半硬化)状態のシートを作製した。
【0077】
次いで、作製したシートをPETフィルムから剥離し、厚さ2.0mmの銅板上に置き、その上に厚さ0.035mmの銅箔(GTS-MP、古河サーキットフォイル社製)を配置した。プレス機によって面圧100kgf/cm2をかけながら180℃180分間加熱硬化し、積層体を得た。
【0078】
次いで、所定の位置をエッチングレジストでマスクした後、硫酸-過酸化水素混合溶液をエッチング液として銅箔をエッチングした。エッチングレジストを除去し、洗浄乾燥することで、銅箔による直径20mmの円電極を有する回路基板を得た。
【0079】
<実施例2>
ビスフェノールA型エポキシ樹脂に代えてナフタレン型エポキシ樹脂(HP4032D、DIC株式会社製、表中では「エポキシ樹脂(2)」と表す。)を用い、各成分の配合量を表1に示すとおり変更したこと以外は、実施例1と同様にして回路基板を得た。
【0080】
<実施例3>
アミン系硬化剤として、式(A-1-1)で表されるアミン化合物50質量%、式(A-1-2)で表されるアミン化合物18質量%、式(A-2-2)で表されるアミン化合物30質量%、その他のアミン化合物2質量%を含有するアミン系硬化剤(2)を準備した。
アミン系硬化剤(1)に代えてアミン系硬化剤(2)を用い、各成分の配合量を表1に示すとおり変更したこと以外は、実施例1と同様にして回路基板を得た。
【0081】
<実施例4~6>
各成分の配合量を表1又は表2に示すとおり変更したこと以外は、実施例1と同様にして回路基板を得た。
【0082】
<実施例7>
無機充填材(1)に代えて窒化ホウ素フィラー(デンカ社製、平均粒径40μm、表中では「無機充填材(2)」と表す。)を用い、各成分の配合量を表2に示すとおり変更したこと以外は、実施例1と同様にして回路基板を得た。
【0083】
<比較例1>
アミン系硬化剤(1)に代えてジアミノジフェニルスルフォン(DDS)を硬化剤として用い、各成分の配合量を表2に示すとおり変更したこと以外は、実施例1と同様にして回路基板を得た。
【0084】
<比較例2>
アミン系硬化剤(1)に代えてメチレンジアニリン(ジアミノジフェニルメタン、DDM)を硬化剤として用い、各成分の配合量を表2に示すとおり変更したこと以外は、実施例1と同様にして回路基板を得た。
【0085】
<比較例3>
アミン系硬化剤(1)に代えてノボラック型フェノール樹脂(VH-4150、DIC株式会社製)を硬化剤として用い、各成分の配合量を表2に示すとおり変更したこと以外は、実施例1と同様にして回路基板を得た。
【0086】
実施例及び比較例について、以下の方法で評価した。結果を表1及び表2に示す。
【0087】
[熱伝導性の評価]
上述の方法で得たBステージ(半硬化)状態のシートを積層し、プレス加熱成形することで、縦10mm、横10mm、厚さ0.5mmの熱伝導性シートを作製し、レーザーフラッシュ法により熱拡散率αを測定し、下記式から熱伝導率λを評価した。
λ=α×Cp×ρ
比熱CpはDSC測定から算出した。
熱伝導性シートの比重ρは、株式会社エー・アンド・デイの比重測定キットAD-1653(商品名)を用いて、温度25℃、気圧1013hPaにおけるシートの空気中の重さと蒸留水中の重さを測定し、次の式により算出した。
ρ=A/(A-B)×(ρ0-d)+d
(式中、Aは空気中の熱伝導性シートの質量、Bは蒸留水中の熱伝導性シートの質量、ρ0は蒸留水の密度、dは空気の密度を表す。)
結果を表1及び表2に示す。なお、熱伝導率は8W/mK以上が望ましい。
【0088】
[絶縁性の評価]
上述の方法で得た回路基板の絶縁強度をJIS C 6481に基づき、菊水電子工業株式会社製のTOS 8650(商品名)を用いて測定した。結果を表1及び表2に示す。なお、熱伝導性シートが0.20mmのとき、絶縁強度は、8kV以上(40kV/mm以上)の値が望ましい。
【0089】
[絶縁性樹脂硬化体の貯蔵弾性率及び架橋密度]
絶縁性樹脂組成物を真空中で脱泡した後、50℃3時間+160℃6時間の硬化条件で硬化して、絶縁性樹脂硬化体を得た。得られた絶縁性樹脂硬化体をダイヤモンドカッターで切り出し、1mm×3mm×40mmの板状の測定試料を得た。この測定試料について、動的粘弾性測定器(T&Aインスツルメント社製、「RSA 3」)を用いて、DMA法(JIS K 0129(2005))により、温度T1(K)における貯蔵弾性率を測定した。なお、温度T1は、絶縁性樹脂硬化体を構成する樹脂分のガラス転移点+30(K)とし、周波数10Hz、昇温速度10℃/minの条件下、-50℃~+250℃の温度範囲で貯蔵弾性率を測定した。上記測定結果から、下記式によって架橋密度(mol/cm3)を算出した。
架橋密度=貯蔵弾性率/(3×気体定数×T1)
【0090】
[高温高圧バイアス試験(THB)による信頼性の評価]
85℃85湿度%環境下で、金属箔-金属板間に直流1200Vの電圧を印加する試験条件で、高温高圧バイアス試験(THB)を行った。耐久時間が350時間以上であった場合をA、200時間未満であった場合をCとして評価した。
【0091】
[耐ヒートサイクル性の評価]
回路基板上にチップサイズ2.0mm×1.25mmのチップ抵抗を6個、鉛-錫共晶半田で搭載し、-40℃7分~+125℃7分を1サイクルとして、500回のヒートサイクル試験を行なった。試験実施後、50倍の顕微鏡にて半田と部品との接続部を断面観察し、クラック発生状況を調べた。同じ試験を3回実施し、18個(6個×3回)の接続部のうちクラックが発生した個数を求め、評価した。
【0092】
【0093】
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明によれば、高温高湿度かつ高電圧印加の条件下における優れた絶縁信頼性、及び、高い耐ヒートサイクル性を有する絶縁層を形成できる。そして本発明によれば、上記絶縁層を備え、高温高湿度かつ高電圧印加の条件下における絶縁信頼性及び耐ヒートサイクル性に優れた回路基板が得られる。このため、本発明は、半導体分野等に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0095】
1…金属板、2…絶縁層、3…金属箔、4…回路部、10…積層体、20…回路基板。