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特許7566757圧延ストリップのストリップエッジの領域におけるロールギャップの局所的変更
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】圧延ストリップのストリップエッジの領域におけるロールギャップの局所的変更
(51)【国際特許分類】
   B21B 37/28 20060101AFI20241007BHJP
   B21B 37/40 20060101ALI20241007BHJP
   B21B 38/02 20060101ALI20241007BHJP
   B21B 38/04 20060101ALI20241007BHJP
   B21B 38/10 20060101ALI20241007BHJP
   B21C 51/00 20060101ALI20241007BHJP
【FI】
B21B37/28 120
B21B37/40 A
B21B38/02
B21B38/04 B
B21B38/10
B21C51/00 K
B21C51/00 L
B21C51/00 M
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021543432
(86)(22)【出願日】2020-01-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-27
(86)【国際出願番号】 EP2020050527
(87)【国際公開番号】W WO2020156781
(87)【国際公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-10-22
【審判番号】
【審判請求日】2023-06-06
(31)【優先権主張番号】19153870.1
(32)【優先日】2019-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516128728
【氏名又は名称】プライメタルズ・テクノロジーズ・ジャーマニー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ヨハンネス・ダグナー
【合議体】
【審判長】本庄 亮太郎
【審判官】菊地 牧子
【審判官】田々井 正吾
(56)【参考文献】
【文献】特開平1-284404(JP,A)
【文献】国際公開第2017/215595(WO,A1)
【文献】特開2008-229723(JP,A)
【文献】特開平1-166804(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21B37/00-37/78
B21C51/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧延機スタンド(2)内で、圧延ストリップ(1)のストリップエッジ(10)の領域においてロールギャップを局所的に拡大するための方法であって、
前記圧延機スタンド(2)が、
-上側ワークロール(3)と下側ワークロール(4)とを含んでおり、前記上側及び下側ワークロール(3、4)それぞれは、当該上側及び下側ワークロール(3、4)を回転するようにチョック(6)に取り付けるために、2つの端部(5)を有しており、
-前記上側及び下側ワークロール(3、4)それぞれは、軸方向(X)において、円錐形部分(7)と後続の圧延面(8)とを有しており、
-前記上側ワークロール(3)は、前記下側ワークロール(4)とは前記軸方向の逆向きに取り付けられており、
-前記上側及び下側ワークロールそれぞれは、当該上側及び下側ワークロール(3、4)を軸方向に変位させるための別個の変位装置(9)を有しており、
当該方法が、
-前記圧延機スタンド(2)において圧延材を熱間圧延するステップであって、当該熱間圧延当初において前記圧延ストリップ(1)の前記ストリップエッジ(10)が前記上側及び下側ワークロール(3、4)間の前記圧延面(8)間に位置し、前記上側及び下側ワークロール(3、4)それぞれの前記圧延面(8)の径方向延在部分が圧延の間にΔrだけ減少する、ステップと、
-前記圧延面(8)の摩耗Δrを決定するステップと、
-相反する方向において軸方向に変位距離
【数1】
だけ前記上側及び下側ワークロール(3、4)を変位させるステップであって、Δrが径方向(R)における前記圧延面(8)の摩耗を表し、αが前記上側及び下側ワークロール(3、4)それぞれの前記円錐形部分(7)のピッチ角を表している、ステップと、
を含んでいる方法。
【請求項2】
圧延機スタンド(2)内で、圧延ストリップ(1)のストリップエッジ(10)の領域においてロールギャップを局所的に拡大するための方法であって、
前記圧延機スタンド(2)が、
-上側ワークロール(3)と下側ワークロール(4)とを含んでおり、前記上側及び下側ワークロール(3、4)それぞれは、当該上側及び下側ワークロール(3、4)を回転するようにチョック(6)に取り付けるために、2つの端部(5)を有しており、
-前記上側及び下側ワークロール(3、4)それぞれは、軸方向(X)において、円錐形部分(7)と後続の圧延面(8)とを有しており、
-前記上側ワークロール(3)は、前記下側ワークロール(4)とは前記軸方向の逆向きに取り付けられており、
-前記上側及び下側ワークロール(3、4)それぞれは、前記上側及び下側ワークロール(3、4)を軸方向に変位させるための別個の変位装置(9)を有しており、
当該方法が、
-前記圧延機スタンド(2)において圧延材を熱間圧延するステップであって、当該熱間圧延当初において前記圧延ストリップ(1)の前記ストリップエッジ(10)が前記上側及び下側ワークロール(3、4)間の前記圧延面(8)間に位置し、前記上側及び下側ワークロール(3、4)の前記圧延面(8)の径方向延在部分が圧延の間に摩耗率
【数2】
だけ減少する、ステップと、
-前記圧延面(8)の摩耗率を決定するステップと、
-相反する方向において軸方向に変位速度
【数3】
だけ前記上側及び下側ワークロール(3、4)を変位させるステップであって、
【数4】
が径方向(R)における前記圧延面(8)の前記摩耗率を表し、αが前記上側及び下側ワークロール(3、4)それぞれの前記円錐形部分(7)のピッチ角を表している、ステップと、
を含んでいる方法。
【請求項3】
圧延機スタンド(2)内で、圧延ストリップ(1)のストリップエッジ(10)の領域においてロールギャップを局所的に縮小するための方法であって、
前記圧延機スタンド(2)が、
-上側ワークロール(3)と下側ワークロール(4)とを含んでおり、前記上側及び下側ワークロール(3、4)それぞれは、当該上側及び下側ワークロール(3、4)を回転するようにチョック(6)に取り付けるために、2つの端部(5)を有しており、
-前記上側及び下側ワークロール(3、4)それぞれは、軸方向(X)において、円錐形部分(7)と後続の圧延面(8)とを有しており、
-前記上側ワークロール(3)は、前記下側ワークロール(4)とは前記軸方向の逆向きに取り付けられており、
-前記上側及び下側ワークロール(3、4)それぞれは、当該上側及び下側ワークロール(3、4)を軸方向に変位させるための別個の変位装置(9)を有しており、
当該方法が、
-前記圧延機スタンド(2)において圧延材を熱間圧延するステップであって、当該熱間圧延当初において前記圧延ストリップ(1)の前記ストリップエッジ(10)が前記上側及び下側ワークロール(3、4)間の前記圧延面(8)間に位置し、前記上側及び下側ワークロール(3、4)それぞれの前記圧延面(8)の径方向延在部分が圧延の間にΔrだけ減少する、ステップと、
-前記圧延面(8)の摩耗Δrを決定するステップと、
-相反する方向において軸方向に変位距離
【数5】
だけ前記上側及び下側ワークロール(3、4)を変位させるステップであって、Δrが径方向(R)における前記圧延面(8)の摩耗を表し、αが前記上側及び下側ワークロール(3、4)それぞれの前記円錐形部分(7)のピッチ角を表している、ステップと、
を含んでいる方法。
【請求項4】
圧延機スタンド(2)内で、圧延ストリップ(1)のストリップエッジ(10)の領域においてロールギャップを局所的に縮小するための方法であって、
前記圧延機スタンド(2)が、
-上側ワークロール(3)と下側ワークロール(4)とを含んでおり、前記上側及び下側ワークロール(3、4)それぞれは、前記上側及び下側ワークロール(3、4)を回転するようにチョック(6)に取り付けるために、2つの端部(5)を有しており、
-前記上側及び下側ワークロール(3、4)それぞれは、軸方向(X)において、円錐形部分(7)と後続の圧延面(8)とを有しており、
-前記上側ワークロール(3)は、前記下側ワークロール(4)とは前記軸方向の逆向きに取り付けられており、
-前記上側及び下側ワークロール(3、4)それぞれは、前記上側及び下側ワークロール(3、4)を軸方向に変位させるための別個の変位装置(9)を有しており、
当該方法が、
-前記圧延機スタンド(2)において圧延材を熱間圧延するステップであって、当該熱間圧延当初において前記圧延ストリップ(1)の前記ストリップエッジ(10)が前記上側及び下側ワークロール(3、4)間の前記圧延面(8)間に位置し、前記上側及び下側ワークロール(3、4)の前記圧延面(8)の径方向延在部分が圧延の間に摩耗率
【数6】
だけ減少する、ステップと、
-前記圧延面(8)の摩耗率を決定するステップと、
-相反する方向において軸方向に変位速度
【数7】
だけ前記上側及び下側ワークロール(3、4)を変位させる方法ステップであって、
【数8】
が径方向(R)における前記圧延面(8)の摩耗率を表し、αが前記上側及び下側ワークロール(3、4)それぞれの前記円錐形部分(7)のピッチ角を表している、ステップと、
を含んでいる方法。
【請求項5】
厚さ0.5mm以上2mm以下の非常に薄いストリップ(1)の場合、前記ストリップ(1)の平坦性が設定される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
厚さが2mmより大きいストリップ(1)の場合、前記ストリップ(1)の断面プロファイルが設定される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
圧延機スタンド(2)内で、圧延ストリップ(1)のストリップエッジ(10)の領域においてロールギャップを局所的に変更するための装置であって、
前記圧延機スタンド(2)が、
-上側ワークロール(3)及び下側ワークロール(4)であって、前記上側及び下側ワークロール(3、4)それぞれは、当該上側及び下側ワークロール(3、4)を回転するようにチョック(6)に取り付けるために、2つの端部(5)を有しており、
-前記上側及び下側ワークロール(3、4)それぞれは、軸方向(X)において、円錐形部分(7)と後続の圧延面(8)とを有しており、前記圧延ストリップ(1)の熱間圧延当初において前記圧延ストリップ(1)の前記ストリップエッジ(10)が前記上側及び下側ワークロール(3、4)間の前記圧延面(8)間に位置し、
-前記上側ワークロール(3)は、前記下側ワークロール(4)とは前記軸方向で逆向きに配置されている、上側ワークロール(3)及び下側ワークロール(4)と、
-前記上側ワークロール(3)及び前記下側ワークロール(4)に関して、前記ワークロール(3、4)を軸方向に変位させるためのそれぞれ別個の変位装置(9)と、
-前記上側及び下側ワークロール(3、4)のうちの少なくとも一方の径方向における前記圧延面(8)の摩耗Δr又は摩耗率
【数9】
を決定するための装置(11)と、
-前記圧延ストリップ(1)の断面プロファイル及び/又は平坦性を決定するための測定器(12)であって、質量流の方向において前記圧延機スタンド(2)の下流に配置された、測定器(12)と、
-前記上側及び下側ワークロール(3、4)の摩耗Δr又は摩耗率
【数10】
と前記圧延ストリップ(1)の測定された断面プロファイルPRactual及び/又は測定された平坦性PLactualとに依存して、相反する方向において前記上側及び下側ワークロール(3、4)を軸方向変位させるための制御装置(13)であって、摩耗Δr又は摩耗率
【数11】
を決定するための装置(11)並びに前記圧延ストリップ(1)の断面プロファイル及び/又は平坦性を決定するための測定器(12)と信号技術的に接続されている制御装置(13)と、
を含んでいる装置。
【請求項8】
前記圧延面(8)の摩耗Δr又は摩耗率
【数12】
を決定するための装置(11)が、前記圧延ストリップ(1)の厚さを測定するための厚さ測定器(14)と、前記上側ワークロール(3)と前記下側ワークロール(4)との間の間隔を決定するための装置(15)と、に接続されていることを特徴とする、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記圧延面(8)の摩耗Δr又は摩耗率
【数13】
を決定するための装置(11)が、摩耗モデルを有しており、
前記摩耗モデルは、圧延力測定器によって決定される圧延力Fと、前記上側及び下側ワークロールそれぞれが移動した距離sextentと、時計によって決定される圧延時間とから成る群の内、少なくとも1つと結びつけられていることを特徴とする、請求項7に記載の装置。
【請求項10】
前記変位装置が、電気機械変位装置、又は、油圧式変位装置であることを特徴とする、請求項7から9のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧延技術の技術分野、具体的には圧延機スタンド内での金属材料、特に鋼又はアルミニウムの、圧延ストリップへの熱間圧延に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1からは、圧延機スタンドの上側ワークロールと下側ワークロールとがそれぞれ、円錐形の部分、内側に向かって延在する圧延面、及び、シリンダ形の端部を有していることが知られている。上側ワークロールは、下側ワークロールとは反対の方向において、圧延機スタンド内に取り付けられている。一連の圧延動作を延長するために、圧延の間に、ワークロールを相反する軸方向に変位させることが規定されている。この際、圧延ストリップのストリップエッジは、つねに、円錐形部分と圧延面との間のエッジに載置されている。この手段によって、一連の圧延動作におけるワークロールの寿命は、ワークロールの交換又は再研磨を行わずとも、150km以上にまで延長され得る。いかにして、上側ワークロールと下側ワークロールとの間のロールギャップを、圧延ストリップのストリップエッジの領域において局所的に、的確に変更することが可能であるかについては、特許文献1からは明らかにされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2017/215595号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、圧延機スタンド内で圧延されたストリップのストリップエッジの領域において、ロールギャップを局所的に変更するための方法及び装置を記載することにある。ロールギャップは、ストリップのストリップエッジの領域において局所的に、熱間圧延の間に、全体のロールギャップを変更することなく、的確に拡大又は縮小され得るべきである。ロールギャップの局所的変更は、ストリップのストリップエッジの領域における厚さの減少の局所的変化をもたらすべきである。ストリップの平坦性又は断面は、ロールギャップの局所的な変更の影響を受け得るべきである。それにもかかわらず、圧延機スタンド内でのストリップの熱間圧延は、ワークロールを交換又は再研磨せずとも、中断されずに長い時間にわたって維持され得るべきである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本課題は、請求項1から4に記載の方法それぞれによって、及び、請求項7に記載の装置によって解決される。好ましい実施形態は、それぞれ従属請求項の対象である。
【0006】
ロールギャップの局所的変更とは、局所的な、すなわち圧延ストリップのストリップエッジの領域に関わるロールギャップの変更(縮小又は拡大)を意味している。これによって、ロールギャップは、例えば上側ワークロールと下側ワークロールとの間における垂直方向の間隔によって調整される全体のロールギャップを変更せずとも、ストリップエッジの領域において局所的に変更され得る。ストリップエッジの局所的領域は、例えばストリップ幅の20%までであり得る。局所的ではない、すなわち全体のロールギャップの変更の場合、ロールギャップは、ストリップの全幅にわたって変更される。ロールギャップの拡大によって、厚さの減少がより少なくなり、ロールギャップの縮小によって、厚さの減少がより大きくなる。
【0007】
一方において、本発明に係る課題の解決は、圧延機スタンド内で、圧延ストリップのストリップエッジの領域においてロールギャップを局所的に拡大するための、請求項1に記載の方法によって行われ、
圧延機スタンドは、
-上側ワークロールと下側ワークロールとを含んでおり、各ワークロールは、ワークロールを回転するようにチョックに取り付けるために、2つの端部を有しており、
-各ワークロールは、軸方向において、円錐形部分と、後続の圧延面と、を有しており、
-上側ワークロールは、下側ワークロールとは反対の方向において取り付けられており、
-各ワークロールは、ワークロールの軸方向の変位のために、別個の変位装置を有しており、
当該方法は、
-圧延機スタンドにおける圧延材を熱間圧延する方法ステップであって、ワークロールの圧延面の径方向延在部分が圧延の間にΔrだけ減少する、方法ステップと、
-ワークロールを、相反する方向において軸方向に、変位距離
【数1】
だけ変位させる方法ステップであって、Δrが径方向における圧延面の摩耗を表し、αが各ワークロールの円錐形部分のピッチ角を表している、方法ステップと、
を含んでいる。
【0008】
ワークロールに関して、ストリップのストリップエッジの領域におけるロールギャップの局所的な拡大は、ストリップエッジの領域におけるワークロールの少なくとも局所的なロール直径の減少を伴う。
【0009】
圧延機スタンド及び圧延機スタンドのワークロールは、例えば特許文献1に従って形成されている。しかしながら、本発明においては、ワークロールの圧延面が内側に向かって延在するように設計されていることは、必ずしも必要ではない。圧延材は、圧延機スタンドの上側ワークロールと下側ワークロールとの間のロールギャップにおいて熱間圧延され、ワークロールは、圧延材との接触によって摩耗する。具体的には、ワークロールの圧延面が摩耗し、圧延面の半径は、Δrだけ減少する。ワークロールの圧延面におけるエッジの摩耗を回避するために、ワークロールは、それぞれ相反する軸方向に変位する。例えば、上側ワークロールが右に向かって変位し、下側ワークロールが左に向かって変位する。各ワークロールが、変位距離
【数2】
だけ変位する場合、局所的なロールギャップは、ストリップのストリップエッジの領域において拡大し、これによって、圧延ストリップの断面又は平坦性は、的確に影響を受け得る。ストリップエッジの領域におけるロールギャップの局所的な拡大によって、ストリップは、当該領域において、他の領域におけるよりもいくらか厚くなり(言い換えると、ストリップエッジの領域におけるいわゆるエッジドロップが減少する)、このことは、ストリップの断面又は平坦性に、直接かつ即時の影響を及ぼす。単純化して表現すると、ストリップのストリップエッジ、又は、ストリップエッジの領域は、ストリップエッジの領域におけるロールギャップの局所的な拡大によって、負荷を軽減される。Δrは、径方向におけるワークロールの圧延面の摩耗を表し、αは、各ワークロールの円錐形部分のピッチ角を表している。
【0010】
同等の方法で、圧延ストリップのストリップエッジの領域におけるロールギャップの局所的拡大のために、軸方向の変位速度v、すなわちワークロールの変位距離sの第1の時間導関数は、値
【数3】
に設定され得る。
【数4】
は、径方向におけるワークロールの圧延面の摩耗率を表している。この際、変位速度vを、比較的長い時間にわたって、
【数5】
よりも大きい値に設定すること、又は、変位速度vを、動作の間の限られた時間枠内でのみ、
【数6】
よりも大きい値に設定することが可能である。
【0011】
他方において、本発明に係る課題の解決は、圧延機スタンド内で、圧延ストリップのストリップエッジの領域においてロールギャップを局所的に縮小するための、請求項3に記載の方法によって行われ、
圧延機スタンドは、
-上側ワークロールと下側ワークロールとを含んでおり、各ワークロールは、ワークロールを回転するようにチョックに取り付けるために、2つの端部を有しており、
-各ワークロールは、軸方向において、円錐形部分と、後続の圧延面と、を有しており、
-上側ワークロールは、下側ワークロールとは反対の方向において取り付けられており、
-各ワークロールは、ワークロールの軸方向の変位のために、別個の変位装置を有しており、
当該方法は、
-圧延機スタンドにおける圧延材を熱間圧延する方法ステップであって、ワークロールの圧延面の径方向延在部分が圧延の間にΔrだけ減少する、方法ステップと、
-ワークロールを、相反する方向において軸方向に、変位距離
【数7】
だけ変位させる方法ステップであって、Δrが径方向における圧延面の摩耗を表し、αが各ワークロールの円錐形部分のピッチ角を表している、方法ステップと、
を含んでいる。
【0012】
ワークロールに関して、ストリップのストリップエッジの領域におけるロールギャップの局所的な縮小は、ストリップエッジの領域におけるワークロールの少なくとも局所的なロール直径の増大を伴う。
【0013】
請求項3に係る実施形態においても、圧延機スタンド又は圧延機スタンドのワークロールは、例えば特許文献1に従って形成されていてよい。当該実施形態においても、ワークロールの圧延面が内側に向かって延在するように設計されていることは、必ずしも必要ではない。請求項1とは異なり、各ワークロールは、変位距離
【数8】
だけ変位する。これによって、局所的なロールギャップは、圧延ストリップのストリップエッジの領域において縮小し、これによって、圧延ストリップの断面又は平坦性は、的確に影響を受け得る。ストリップエッジの領域におけるロールギャップの局所的な縮小によって、ストリップは、当該領域において、他の領域におけるよりもいくらか薄くなり(言い換えると、ストリップエッジの領域におけるいわゆるエッジドロップが増大する)、このことは、ストリップの断面又は平坦性に、直接かつ即時の影響を及ぼす。単純化して表現すると、ストリップのストリップエッジ、又は、ストリップエッジの領域は、ストリップエッジの領域におけるロールギャップの局所的な縮小によって、負荷を加えられる。Δrは、やはり、径方向におけるワークロールの圧延面の摩耗を表し、αは、各ワークロールの円錐形部分のピッチ角を表している。
【0014】
同等の方法で、圧延ストリップのストリップエッジの領域におけるロールギャップの局所的縮小のために、軸方向の変位速度v、すなわちワークロールの変位距離sの第1の時間導関数は、値
【数9】
に設定され得る。
【数10】
は、径方向におけるワークロールの圧延面の摩耗率を表している。この場合も、変位速度vを比較的長い時間にわたって
【数11】
よりも小さい値に設定すること、又は、変位速度vを動作の間の限られた時間枠内でのみ
【数12】
よりも小さい値に設定すること、が可能である。
【0015】
従って、請求項1及び2に記載の方法は、請求項3及び4に記載の方法と比較して、反対の目標設定を有している。請求項1及び2によると、ストリップエッジの領域における局所的なロールギャップが拡大し、ストリップエッジの負荷が軽減されるが、請求項3及び4によると、ストリップエッジの領域における局所的なロールギャップは縮小し、ストリップエッジに負荷が加えられる。両方の場合において、ストリップエッジの領域は、ストリップ幅の20%までを含み得る。
【0016】
特に非常に薄いストリップ、例えば0.5mm以上2mm以下の厚さのストリップを圧延機スタンドで熱間圧延する場合、特にストリップの平坦性は、本発明に係る方法の影響を受けるが、ストリップの断面が受ける影響は、より小さい。これは、いわゆる横断流が、非常に薄いストリップの場合は小さいことによる。これに対して、厚さが2mmより大きいストリップで本発明に係る方法を用いる場合、特にストリップの断面が影響を受け、ストリップの平坦性が受ける影響は、より小さい。
【0017】
出願人の調査において明らかになっていることは、圧延ストリップの断面及び/又は平坦性が、ワークロールの軸方向の変位距離s又は軸方向の変位速度vによって、摩耗Δr又は摩耗率
【数13】
に依存して、的確に影響を受け得ること、である。つまり、明らかになっていることは、変位距離
【数14】
だけの又は変位速度
【数15】
におけるワークロールの軸方向変位は、ストリップのストリップエッジの領域におけるロールギャップの局所的な縮小と、ストリップエッジへの負荷と、をもたらすこと、である。他方では、明らかになっていることは、変位距離
【数16】
だけの又は変位速度
【数17】
におけるワークロールの軸方向変位は、ストリップのストリップエッジの領域におけるロールギャップの局所的な拡大と、ストリップエッジの負荷軽減と、をもたらすこと、である。
【0018】
本発明に係る課題は、同様に、圧延機スタンド内で、圧延ストリップのストリップエッジの領域においてロールギャップを局所的に変更するための、請求項7に記載の装置によって解決され、
圧延機スタンドは、
-上側ワークロール及び下側ワークロールであって、各ワークロールは、ワークロールを回転するようにチョックに取り付けるために、2つの端部を有しており、
-各ワークロールは、軸方向において、円錐形部分と、後続の圧延面と、を有しており、
-上側ワークロールは、下側ワークロールとは反対の方向に配置されている上側ワークロール及び下側ワークロールと、
-上側ワークロール及び下側ワークロールに関して、ワークロールを軸方向に変位させるためのそれぞれ別個の変位装置と、
-径方向における圧延面の摩耗Δr又は摩耗率
【数18】
を決定するための装置と、
-圧延ストリップの断面及び/又は平坦性を決定するための測定器であって、質量流の方向において圧延機スタンドの下流に配置された測定器と、
-ワークロールの摩耗Δr又は摩耗率
【数19】
と圧延ストリップの測定された断面PRactual及び/又は測定された平坦性PLactualとに依存して、ワークロールを相反する方向において軸方向変位させるための制御装置であって、摩耗Δr又は摩耗率
【数20】
を決定するための装置、及び、圧延ストリップの断面及び/又は平坦性を決定するための測定器と信号技術的に接続されている、制御装置と、
を含んでいる。
【0019】
本発明に係る装置は、圧延機スタンド内の圧延ストリップのストリップエッジの領域におけるロールギャップの局所的な拡大にも、局所的な縮小にも適している。ストリップエッジの領域におけるロールギャップの拡大又は縮小によって、ストリップの断面及び/又は平坦性は、的確に影響を受け得る。
【0020】
ワークロールの圧延面の径方向摩耗又は摩耗率
【数21】
を決定するための装置によって、径方向における圧延面の摩耗を決定する。決定は、測定技術的に行われ得るか、又は、好ましくは摩耗モデルを用いて行われ得るものであり、当該摩耗モデルは、例えば圧延力F、ワークロールが移動した距離sextent、及び/又は、圧延時間を考慮している。ワークロールが移動した距離は、
【数22】
によって決定され、φは、ワークロールによって行われた回転に関する角度をラジアンで表している。摩耗モデルのさらなる詳細については、欧州特許第2548665号明細書を参照する。
【0021】
圧延ストリップの断面又は平坦性を決定するための測定器は、非接触式に、例えば光学的若しくは電磁気的に、又は、例えば測定ローラを用いて接触式に、測定変数を決定し得る。この際、測定器は、質量流の方向において、圧延機スタンドの下流ではあるが、好ましくは熱間圧延されたストリップを冷却するための冷却区間の上流に配置されている。
【0022】
有利な実施形態において、圧延面の摩耗Δr又は摩耗率
【数23】
を決定するための装置は、圧延ストリップの厚さを測定するための厚さ測定器、及び、上側ワークロールと下側ワークロールとの間の間隔を決定するための装置に接続されている。ワークロールの間の、典型的には垂直方向の間隔と、ストリップの測定された厚さとから、摩耗又は摩耗率が決定され得る。
【0023】
代替的な実施形態によると、圧延面の摩耗Δr又は摩耗率
【数1】
を決定するための装置は、摩耗モデル(欧州特許第2548665号明細書を参照)を有しており、当摩耗モデルは、圧延力測定器によって決定される圧延力Fと、ワークロールが移動した距離sextent と、時計によって決定される圧延時間とから成る群の内、少なくとも1つと結びつけられている。
【0024】
変位装置自体は、例えば電気機械駆動部(例えば電動機を備えたボールネジ)、又は、油圧式駆動部であってよい。
【0025】
本発明のさらなる利点及び特徴は、以下の限定的ではない実施例についての説明から明らかになる。示されている図面は以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】圧延ストリップのストリップエッジの領域においてロールギャップを局所的に変更するための上側ワークロール及び下側ワークロールを備えた圧延機スタンドを概略的に示す図である。
図2図1に係る圧延機スタンドを有する、圧延ストリップのストリップエッジの領域においてロールギャップを局所的に変更するための本発明に係る装置を概略的に示す図である。
図3a】圧延機スタンドのロールギャップにおいて圧延ストリップを熱間圧延するための、本発明とは異なる方法を示す図である。
図3b】圧延機スタンドのロールギャップにおいて圧延ストリップを熱間圧延するための、本発明とは異なる方法を示す図である。
図3c】圧延機スタンドのロールギャップにおいて圧延ストリップを熱間圧延するための、本発明とは異なる方法を示す図である。
図3d】圧延機スタンドのロールギャップにおいて圧延ストリップを熱間圧延するための、本発明とは異なる方法を示す図である。
図4a】圧延機スタンドのロールギャップにおいてストリップを熱間圧延するための、本発明とは異なる方法であって、ワークロールの変位が摩耗に従う方法を示す図である。
図4b】圧延機スタンドのロールギャップにおいてストリップを熱間圧延するための、本発明とは異なる方法であって、ワークロールの変位が摩耗に従う方法を示す図である。
図4c】圧延機スタンドのロールギャップにおいてストリップを熱間圧延するための、本発明とは異なる方法であって、ワークロールの変位が摩耗に従う方法を示す図である。
図4d】圧延機スタンドのロールギャップにおいてストリップを熱間圧延するための、本発明とは異なる方法であって、ワークロールの変位が摩耗に従う方法を示す図である。
図5a】圧延ストリップのストリップエッジの領域においてロールギャップを局所的に拡大するための本発明に係る方法を示す図である。
図5b】圧延ストリップのストリップエッジの領域においてロールギャップを局所的に拡大するための本発明に係る方法を示す図である。
図5c】圧延ストリップのストリップエッジの領域においてロールギャップを局所的に拡大するための本発明に係る方法を示す図である。
図5d】圧延ストリップのストリップエッジの領域においてロールギャップを局所的に拡大するための本発明に係る方法を示す図である。
図6a】圧延ストリップのストリップエッジの領域においてロールギャップを局所的に縮小するための本発明に係る方法を示す図である。
図6b】圧延ストリップのストリップエッジの領域においてロールギャップを局所的に縮小するための本発明に係る方法を示す図である。
図6c】圧延ストリップのストリップエッジの領域においてロールギャップを局所的に縮小するための本発明に係る方法を示す図である。
図6d】圧延ストリップのストリップエッジの領域においてロールギャップを局所的に縮小するための本発明に係る方法を示す図である。
図7】ワークロールの部分を概略的に示す図である。
図8】圧延ストリップのストリップエッジの領域を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、圧延ストリップ1のストリップエッジ10の領域においてロールギャップを局所的に変更するための装置の一部としての、圧延機スタンド2を概略的に示している。熱間圧延の間のストリップ1の断面及び/又は平坦性は、ストリップエッジ10の領域におけるロールギャップの局所的変更の影響を的確に受け得る。圧延材は、ロールギャップ内で、上側ワークロール3と下側ワークロール4との間で熱間圧延される。各ワークロール3、4は、2つの端部5を有しており、当該端部はそれぞれ、図示されていない圧延機スタンド2のロール支台内のチョック6内に変位可能なように取り付けられている。加えて、各ワークロール3、4は、円錐形部分7と圧延面8とを有している(図7も参照)。上側ワークロール3は、圧延機スタンド2において、下側ワークロール4とは反対の方向において取り付けられている。上側ワークロール3と下側ワークロール4とは、別個の変位装置9によって、動作の間、軸方向に変位し得る。上側ワークロール3は、動作の間、右に向かって変位し、これに対して、下側ワークロール4は、左に向かって変位する(矢印を参照)。加えて、上側ワークロール3と下側ワークロール4との間の全体のロールギャップは、調整装置16によって調整され得る。動作の間における上側ワークロール3の圧延面8の摩耗を検出可能にするために、上側ワークロールは、摩耗を決定するための装置11又は摩耗モデルを有している。ワークロール3、4が同じ材料から製造されている場合、唯一の装置11、又は、唯一の摩耗モデルで十分である。自明のことながら、上側ワークロール3と下側ワークロール4とが、それぞれ別個に、摩耗を決定するための装置11又は摩耗モデルを有していることも同様に可能である。径方向におけるワークロール3、4の圧延面8の摩耗Δr又は摩耗率
【数25】
の測定は、例えば圧延面8に接触するローラを用いて接触式に、又は、例えば光学的に非接触式に、行われ得る。摩耗を補償するための、圧延機スタンドにおけるワークロールの軸方向変位は、すでに特許文献1から知られているので、特許文献1は、参照によって組み込まれる。しかしながら、特許文献1からは、いかにしてストリップのストリップエッジの領域における局所的なロールギャップが的確に変更され得るかについては、知られていない。
【0028】
以下の図面では、見やすくするために、バックアップロールの描写は断念されている。圧延技術分野の当業者には、バックアップロールが一般的であり、ワークロールの曲げを防止することが知られている。
【0029】
図2には、例えば鋳造圧延複合設備の、5つのスタンドから成る仕上げ圧延機の圧延機スタンド2内での、圧延ストリップのストリップエッジの領域bにおけるロールギャップを局所的に変更するための装置が概略的に示されている。図示されていない圧延材は、ローラーコンベア17によって、圧延機スタンド2a~2eを有する仕上げ圧延機に供給され、高温状態で仕上げ圧延される。最後の圧延機スタンド2、2eでは、ワークロール3、4の圧延面8の摩耗Δr又は摩耗率
【数26】
が、装置11によって、測定技術的に検出される(図1を参照)。代替的に、Δr又は
【数27】
の検出を測定技術的にではなく、いわゆる摩耗モデルを用いて行うことも同様に可能である。当該装置は、さらに、圧延ストリップの断面又は平坦性を決定するための測定器12を含んでいる。当該測定器は、質量流の方向において、圧延機スタンド2の下流に配置されている。具体的な場合において、実際の断面PRactualが、制御装置13に供給される。実際の断面の他に、制御装置13には、目標の断面PRdesiredが供給される。制御装置13は、摩耗Δr又は摩耗率
【数28】
が共有される。測定された断面PRactual及び目標の断面PRdesiredを考慮して、上側ワークロール3及び下側ワークロール4に関する変位距離s又は変位速度
【数29】
を算出する(図1を参照)。ワークロール3、4のより高速な軸方向変位又はより低速な軸方向変位によって、ストリップのストリップエッジの領域における局所的なロールギャップは、的確に変更され得る。非常に薄いストリップの場合、これは特に、ストリップの平坦性に影響を及ぼすが、逆に、ストリップエッジの領域におけるロールギャップの局所的な変更は、より厚いストリップの場合、特に圧延ストリップの断面に影響を及ぼす。圧延ストリップは、仕上げ圧延の後、冷却区間18において冷却された後、搬出される。
【0030】
圧延ストリップのストリップエッジ10の領域bにおいて、ロールギャップを局所的に変更するための方法は、以下において、図3a~図3d、図4a~図4d、図5a~図5d及び図6a~図6dを用いて説明される。
【0031】
図3aでは、ストリップ1が、上側ワークロール3と下側ワークロール4との間のロールギャップ内で熱間圧延される。当初、ストリップは厚さD0を有している。両方のワークロール3、4はそれぞれ、2つの端部5と、円錐形部分7と、圧延面8と、を有している。上側ワークロール3は、下側ワークロールとは反対の方向において取り付けられている。
【0032】
一定の圧延時間の後、ワークロール3、4の圧延面8は、径方向において、Δrの量が摩耗している(図3bを参照)。両方のワークロール3、4の垂直方向の間隔が一定に保たれる場合、圧延ストリップ1は、D0+2Δrの厚さを有する。熱間圧延の継続によって、ワークロール3、4の圧延面8は、2・Δrの量が摩耗している(図3cを参照)ので、ストリップ1の厚さは、D0+4Δrとなる。
【0033】
圧延ストリップ1の厚さの変化を、少なくとも1つのワークロール3又は4の調整によって補償することが可能である(特許文献1を参照)。
【0034】
図3cの詳細を示す図3dから明らかであるように、ワークロール3、4には、顕著な摩耗エッジが形成されており、当該摩耗エッジによって、ストリップエッジ10の領域におけるロールギャップの局所的な縮小、又は、圧延ストリップ1のストリップエッジへの負荷がもたらされる。これによって、圧延ストリップ1は、ストリップエッジ10の領域において、ストリップ1の中央領域におけるよりも薄くなっている。ワークロール3、4は、熱間圧延の間に、軸方向には変位しないので、当該方法は、本発明に係る方法とは異なっている。
【0035】
図4a~図4dでは、ワークロール3、4は軸方向に変位しており、これによって、ストリップ1の上側及び下側ストリップエッジ10はつねに、各ワークロール3、4の円錐形部分7と、(摩耗のゆえに)新しく形成された圧延面8との間のエッジに載置されている。ワークロール3、4の軸方向における変位距離は、この場合、条件
【数30】
に従っており、Δrは、径方向におけるワークロール3、4の摩耗を表し、αは、円錐形部分のピッチ角を表している。同等の方法で、変位を、摩耗率
【数31】
によって表すことが可能であり、ワークロール3、4は、軸方向速度
【数32】
で軸方向に変位する。図4bによると、ワークロール3、4の圧延面8の摩耗量は、Δrであり、当該摩耗量から、変位距離
【数33】
が生じる。図4cによると、ワークロール3、4の圧延面8の摩耗量は、
【数34】
であり、当該摩耗量から、変位距離
【数35】
が生じる。この際、上側ワークロール3は右に向かって、下側ワークロール4は左に向かって変位する。
【0036】
図4dから明らかであるように、当該方法によって、溝のないワークロール3、4の場合、ストリップ1が、幅にわたって一定の厚さを有することがもたらされる。言い換えると、圧延ストリップ1は、ストリップエッジ10の領域において、ストリップ1の中央領域と同程度に薄い。この本発明に係る方法とは異なる方法によっては、ストリップエッジの領域における局所的なロールギャップは変更されないか、又は、ストリップのストリップエッジ10は、負荷を加えられも軽減されもしない。
【0037】
図5a~図5dでは、ワークロール3、4は軸方向に変位し、これによって、ストリップ1の上側及び下側ストリップエッジ10はつねに、各ワークロール3、4の円錐形部分7に載置されている。ワークロール3、4の軸方向における変位距離は、この場合、条件
【数36】
に従っており、
【数37】
は、径方向におけるワークロール3、4の摩耗を表し、αは、円錐形部分のピッチ角を表している。同等の方法で、変位を、摩耗率
【数38】
によって表すことが可能であり、ワークロール3、4は、軸方向速度
【数39】
で、軸方向に変位する。図5bによると、ワークロール3、4の圧延面8の摩耗量は、Δrであり、当該摩耗量から、変位距離
【数40】
が生じる。図5cによると、ワークロール3、4の圧延面8の摩耗量は、
【数41】
であり、当該摩耗量から、変位距離
【数42】
が生じる。この際、上側ワークロール3は右に向かって、下側ワークロール4は左に向かって変位する。
【0038】
図5cの詳細を示す図5dから明らかであるように、当該方法によって、圧延ストリップ1のストリップエッジ10の領域における局所的なロールギャップが拡大され、又は、ストリップエッジの負荷が軽減される。これによって、圧延ストリップ1は、ストリップエッジ10の領域において、ストリップ1の中央領域におけるよりも厚くなっている。
【0039】
図6a~図6dでは、ワークロール3、4は、軸方向におけるワークロール3、4の変位距離が、条件
【数43】
に従うように軸方向に変位し、Δrは、径方向におけるワークロール3、4の摩耗を表し、αは、円錐形部分のピッチ角を表している。同等の方法で、変位を、摩耗率
【数44】
を通じて表すことが可能であり、ワークロール3、4は、軸方向の速度
【数45】
で、軸方向に変位する。図5bによると、ワークロール3、4の圧延面8の摩耗量はΔrであり、当該摩耗量から、変位距離
【数46】
が生じる。図6cによると、ワークロール3、4の圧延面8の摩耗量は、
【数47】
である。当該摩耗量から、変位距離
【数48】
が生じる。この際、上側ワークロール3は右に向かって、下側ワークロール4は左に向かって変位する。
【0040】
図6cの詳細を示す図6dから明らかであるように、当該方法によって、圧延ストリップ1のストリップエッジ10の領域における局所的なロールギャップが縮小され、又は、ストリップエッジに負荷が加えられる。これによって、圧延ストリップ1は、ストリップエッジ10の領域において、ストリップ1の中央領域におけるよりも薄くなっている。
【0041】
図7は、ワークロールの円錐形部分7のピッチ角αの幾何学的定義を示している。
【0042】
最後に、図8は、ストリップ1のストリップエッジ10の領域bを概略的に示している。典型的には、ストリップエッジの両方の領域bの長手方向延在部分は、ストリップ幅Bの10%又は20%までである。すなわち、ストリップエッジの1つの領域bは、ストリップ幅Bの5%又は10%までであり得る。
【0043】
好ましい実施例を通じて、本発明を詳細に図示かつ説明してきたが、本発明は、開示された例によって限定されてはおらず、当業者は、本発明の保護範囲を離れることなく、他の変型例を引き出すことが可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 ストリップ
2,2a~2e 圧延機スタンド
3 上側ワークロール
4 下側ワークロール
5 ワークロールの端部
6 チョック
7 円錐形部分
8 圧延面
9 変位装置
10 ストリップエッジ
11 摩耗又は摩耗率を決定するための装置
12 断面及び/又は平坦性を決定するための測定器
13 上側及び下側ワークロールの軸方向変位のための制御装置
14 厚さ測定装置
15 上側ワークロールと下側ワークロールとの間の間隔を決定するための装置
16 調整装置
17 ローラーコンベア
18 冷却区間
B ストリップの幅
b ストリップエッジの領域
D ストリップの厚さ
F 圧延力
PRdesired 目標の断面
PRactual 実際の断面
r 半径
R 径方向
Δr 径方向における圧延面の摩耗
【数49】
径方向における圧延面の摩耗率
s 変位距離
extent ワークロールが移動した距離
v 変位速度
X 軸方向
α 円錐形部分のピッチ角
【数50】
第1の時間導関数
図1
図2
図3A-3C】
図3D
図4A-4C】
図4D
図5A-5C】
図5D
図6A-6C】
図6D
図7
図8