(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】抗Vβ17/抗CD123二重特異性抗体
(51)【国際特許分類】
C07K 16/46 20060101AFI20241007BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20241007BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20241007BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20241007BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20241007BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20241007BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20241007BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20241007BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20241007BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241007BHJP
【FI】
C07K16/46 ZNA
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
A61K39/395 T
A61P43/00 105
(21)【出願番号】P 2021553382
(86)(22)【出願日】2020-03-11
(86)【国際出願番号】 IB2020000342
(87)【国際公開番号】W WO2020183245
(87)【国際公開日】2020-09-17
【審査請求日】2023-03-09
(32)【優先日】2019-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509087759
【氏名又は名称】ヤンセン バイオテツク,インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100093676
【氏名又は名称】小林 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100153693
【氏名又は名称】岩田 耕一
(72)【発明者】
【氏名】ガネーシャン,ラージクマール
(72)【発明者】
【氏名】グレワル,イクバル,エス.
(72)【発明者】
【氏名】セプルベダ,マニュエル,アレハンドロ
【審査官】福間 信子
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-518753(JP,A)
【文献】特表2017-529838(JP,A)
【文献】特表2013-537418(JP,A)
【文献】特表2018-527954(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
SwissProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離された抗Vβ17/抗CD123二重特異性抗体又はその抗原結合断片であって、
a.第1の重鎖(HC1)と、
b.第2の重鎖(HC2)と、
c.第1の軽鎖(LC1)と、
d.第2の軽鎖(LC2)とを含み、
HC1が、LC1と会合し、HC2が、LC2と会合し、HC1が、配列番号1、配列番号2、及び配列番号3のアミノ酸配列をそれぞれ含む重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、HCDR2、及びHCDR3を含み、LC1が、配列番号4、配列番号5、及び配列番号6のアミノ酸配列をそれぞれ含む軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、LCDR2、及びLCDR3を含んで、Vβ17に特異的に結合する第1の抗原に対する結合部位を形成し、HC2が、配列番号34、配列番号35、及び配列番号36のアミノ酸配列をそれぞれ含む重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、HCDR2、及びHCDR3を含み、LC2が、配列番号37、配列番号38、及び配列番号39のアミノ酸配列をそれぞれ含む軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、LCDR2、及びLCDR3を含んで、CD123に特異的に結合する第2の抗原に対する結合部位を形成している、
前記単離された抗Vβ17/抗CD123二重特異性抗体又はその抗原結合断片。
【請求項2】
HC1が、配列番号13のアミノ酸配列を含み、LC1が、配列番号14のアミノ酸配列を含み、HC2が、配列番号15のアミノ酸配列を含み、LC2が、配列番号16のアミノ酸配列を含む、請求項
1に記載の単離された抗Vβ17/抗CD123二重特異性抗体又はその抗原結合断片。
【請求項3】
前記Vβ17が、CD8+又はCD4+T細胞の表面上にある、請求項
1又は2に記載の単離された抗Vβ17/抗CD123二重特異性抗体又はその抗原結合断片。
【請求項4】
前記CD123が、癌細胞又はCD34+幹細胞の表面上にある、請求項
1~3のいずれか一項に記載の単離された抗Vβ17/抗CD123二重特異性抗体又はその抗原結合断片。
【請求項5】
二重特異性抗体又はその抗原結合断片が、約0.2pM未満のEC
50でインビトロにおいて癌細胞のCD8+又はCD4+T細胞依存性細胞傷害を誘導する、請求項
1~4のいずれか一項に記載の単離された抗Vβ17/抗CD123二重特異性抗体又はその抗原結合断片。
【請求項6】
請求項
1~5のいずれか一項に記載の抗Vβ17/抗CD123二重特異性抗体又はその抗原結合断片の前記HC1及びLC1をコードする、単離された核酸。
【請求項7】
請求項
1~5のいずれか一項に記載の抗Vβ17/抗CD123二重特異性抗体又はその抗原結合断片の前記HC2及びLC2をコードする、単離された核酸。
【請求項8】
請求項
6又は7に記載の単離された核酸を含む、ベクター。
【請求項9】
請求項
8に記載のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項10】
請求項
1~5のいずれか一項に記載の単離された抗Vβ17/抗CD123二重特異性抗体又はその抗原結合断片を含む
、組成物。
【請求項11】
Vβ17発現CD8+又はCD4+T細胞を癌細胞に指向させる方法に使用するための組成物であって、請求項
1に記載の抗Vβ17/抗CD123二重特異性抗体又はその抗原結合断片を含む、前記組成物。
【請求項12】
癌細胞の成長又は増殖を阻害するための方法に使用するための組成物であって、請求項
1に記載の抗Vβ17/抗CD123二重特異性抗体又はその抗原結合断片を含む、前記組成物。
【請求項13】
前記癌細胞が、CD123発現癌細胞である、請求項
11又は12に記載の組成物。
【請求項14】
請求項
1~5のいずれか一項に記載の抗Vβ17/抗CD123二重特異性抗体又はその抗原結合断片と、そのための包装とを含む、キット。
【請求項15】
抗Vβ17/抗CD123二重特異性抗体又はその抗原結合断片を生成する方法であって、請求項
9に記載の宿主細胞を培養して、前記抗Vβ17/抗CD123二重特異性抗体又はその抗原結合断片を生成することと、前記抗Vβ17/抗CD123二重特異性抗体又はその抗原結合断片を前記細胞又は培養物から回収することとを含む、前記方法。
【請求項16】
単離されたヒト化Vβ17モノクローナル抗体又はその抗原結合断片であって、前記ヒト化Vβ17モノクローナル抗体又はその抗原結合断片が、配列番号28のアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含
み、
前記ヒト化Vβ17モノクローナル抗体又はその抗原結合断片は、配列番号1、配列番号2、及び配列番号3のアミノ酸配列をそれぞれ含む重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、HCDR2、及びHCDR3、並びに、配列番号4、配列番号5、及び配列番号6のアミノ酸配列をそれぞれ含む軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、LCDR2、及びLCDR3を含む、前記単離されたヒト化Vβ17モノクローナル抗体又はその抗原結合断片。
【請求項17】
前記ヒト化Vβ17モノクローナル抗体又はその抗原結合断片が、配列番号28のアミノ酸配列を含む、請求項
16に記載の単離されたヒト化Vβ17モノクローナル抗体又はその抗原結合断片。
【請求項18】
請求項
16又は17に記載の単離されたヒト化Vβ17モノクローナル抗体又はその抗原結合断片をコードする、単離された核酸。
【請求項19】
請求項
18に記載の単離された核酸を含む、ベクター。
【請求項20】
請求項
19に記載のベクターを含む、宿主細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2019年3月11日出願の米国特許仮出願第62/816,464号の優先権を主張し、その開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、モノクローナル抗Vβ17/抗CD123二重特異性抗体、当該抗体をコードする核酸及び発現ベクター、当該ベクターを含有する組換え細胞、並びに当該抗体を含む組成物に関する。抗体を作製する方法、及び癌細胞を殺傷するために抗体を使用する方法も提供される。
【0003】
(電子的に提出された配列表の参照)
本出願は、ファイル名「PRD4012WOPCT Sequence Listing」及び2020年3月11日の作成日で、ASCII形式の配列表として、EFS-Webを介して電子的に提出されている、85kbのサイズを有する配列表を含有する。EFS-Webを介して提出された配列表は、本明細書の一部であり、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0004】
細胞傷害性T細胞(例えば、CD8+T細胞)を利用して、癌細胞を直接殺傷することができる。細胞傷害性T細胞を癌細胞に指向させる方式を見出すことは、かかる細胞の殺傷、及び癌細胞の増殖の阻害をもたらし得る。細胞傷害性T細胞は、細胞傷害性T細胞及び癌細胞の両方に結合する二重特異性抗体を使用して、当該細胞傷害性T細胞を癌細胞に長期間接近させることによって、癌関連抗原を発現する癌細胞に対して活性化され得ることが実証されている。T細胞活性化を媒介するT細胞及び癌細胞抗原を選択すること、二重特異性抗体の関連で結合を媒介するのに十分な親和性を有する親抗体を選択すること、並びに非特異的T細胞活性化を誘発するのではなく、癌細胞に対して特異的に作用するようにT細胞を活性化させる癌細胞抗原を選択することなど、癌細胞を殺傷するこのアプローチに対する様々な潜在的な厄介な問題が存在する。これらの厄介な問題は、動物対象における癌細胞を破壊するためにT細胞を活性化しようと試みる関連のみで構成される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書では、T細胞と関連する抗原であるVβ17及び癌細胞と関連する抗原であるCD123に結合可能な二重特異性抗体が提供される。細胞傷害性T細胞は、Vβ17などのα及びβ鎖からなるT細胞受容体を発現する。Vβ17及びCD123などの癌関連抗原に結合する二重特異性抗体は、細胞傷害性T細胞を抗原発現癌細胞に指向させることができると仮定される。この種の二重特異性抗体を利用して、細胞傷害性T細胞を抗原発現癌細胞に動員又は再指向させることにより、T細胞が癌細胞を殺傷することが可能になる。
【0006】
一般的な一態様では、本発明は、Vβ17及びCD123に結合する単離二重特異性抗体又はその抗原結合断片に関する。
【0007】
本明細書では、単離されたVβ17二重特異性抗体又はその抗原結合断片が提供される。単離されたVβ17二重特異性抗体又はその抗原結合断片は、
a.第1の重鎖(HC1)と、
b.第2の重鎖(HC2)と、
c.第1の軽鎖(LC1)と、
d.第2の軽鎖(LC2)とを含み、
HC1は、LC1と会合し、HC2は、LC2と会合し、HC1は、配列番号1、配列番号2、及び配列番号3のアミノ酸配列をそれぞれ含む重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、HCDR2、及びHCDR3を含み、LC1は、配列番号4、配列番号5、及び配列番号6のアミノ酸配列をそれぞれ含む軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、LCDR2、及びLCDR3を含んで、第1の抗原に対する結合部位を形成し、HC2及びLC2は、第2の抗原に対する結合部位を形成している。ある特定の実施形態では、第1の抗原に対する結合部位は、CD8+又はCD4+T細胞の表面上にあるVβ17に結合する。ある特定の実施形態では、第2抗原に対する結合部位は、癌細胞の表面上に存在する腫瘍抗原に結合する。
【0008】
ある特定の実施形態では、CD8+又はCD4+T細胞の表面上に存在するVβ17への二重特異性抗体の結合、及び癌細胞の表面上に存在する腫瘍抗原の結合は、癌細胞の殺傷をもたらす。
【0009】
ある特定の実施形態では、HC2及びLC2は、CD123に結合する。
【0010】
ある特定の実施形態では、二重特異性抗体又はその抗原結合断片は、IgG4などのアイソタイプである。
【0011】
ある特定の実施形態では、二重特異性抗体又はその抗原結合断片は、約0.2pM未満のEC50でインビトロにおいて癌細胞のCD8+又はCD4+T細胞依存性細胞傷害を誘導する。
【0012】
また、単離された抗Vβ17/抗CD123二重特異性抗体又はその抗原結合断片も提供される。抗Vβ17/抗CD123二重特異性抗体又はその抗原結合断片は、
a.第1の重鎖(HC1)と、
b.第2の重鎖(HC2)と、
c.第1の軽鎖(LC1)と、
d.第2の軽鎖(LC2)とを含み、
HC1は、LC1と会合し、HC2は、LC2と会合し、HC1は、配列番号1、配列番号2、及び配列番号3のアミノ酸配列をそれぞれ含む重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、HCDR2、及びHCDR3を含み、LC1は、配列番号4、配列番号5、及び配列番号6のアミノ酸配列をそれぞれ含む軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、LCDR2、及びLCDR3を含んで、Vβ17に特異的に結合する第1の抗原に対する結合部位を形成し、HC2は、配列番号34、配列番号35、及び配列番号36のアミノ酸配列をそれぞれ含む重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、HCDR2、及びHCDR3を含み、LC2は、配列番号37、配列番号38、及び配列番号39のアミノ酸配列をそれぞれ含む軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、LCDR2、及びLCDR3を含んで、CD123に特異的に結合する第2の抗原に対する二重部位を形成している。ある特定の実施形態では、HC1は、配列番号13のアミノ酸配列を含み、LC1は、配列番号14のアミノ酸配列を含み、HC2は、配列番号15のアミノ酸配列を含み、LC2は、配列番号16のアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、Vβ17は、CD8+又はCD4+T細胞の表面上にある。ある特定の実施形態では、CD123は、癌細胞の表面上にある。ある特定の実施形態では、二重特異性抗体又はその抗原結合断片は、約0.2pM未満のEC50でインビトロにおいて癌細胞のCD8+又はCD4+T細胞依存性細胞傷害を誘導する。
【0013】
ある特定の実施形態では、抗Vβ17/抗CD123二重特異性抗体又はその抗原結合断片は、部分的にヒト化されている、又は完全にヒト化されているキメラである。
【0014】
単離されたヒト化Vβ17モノクローナル抗体又はその抗原結合断片も提供される。単離されたヒト化Vβ17モノクローナル抗体又はその抗原結合断片は、配列番号28のアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含み得る。ある特定の実施形態では、単離されたヒト化Vβ17モノクローナル抗体又はその抗原結合断片は、配列番号28のアミノ酸配列を含む。
【0015】
本明細書に開示されるモノクローナル抗体又はその抗原結合断片及び二重特異性抗体又はその抗原結合断片をコードする単離された核酸も提供される。
【0016】
本明細書に開示されるモノクローナル抗体又はその抗原結合断片及び二重特異性抗体又はその抗原結合断片をコードする単離された核酸を含むベクターも提供される。
【0017】
本明細書に開示される単離された核酸を含むベクターを含む宿主細胞も提供される。
【0018】
Vβ17発現CD8+又はCD4+T細胞を癌細胞に指向させる方法も提供される。この方法は、Vβ17発現CD8+又はCD4+T細胞を、本明細書に開示される抗Vβ17/抗CD123二重特異性抗体又はその抗原結合断片と接触させることを含む。Vβ17発現CD8+又はCD4+T細胞を、抗Vβ17/抗CD123二重特異性抗体又はその抗原結合断片と接触させることにより、Vβ17発現CD8+又はCD4+T細胞を癌細胞に指向させることができる。
【0019】
癌細胞の成長又は増殖を阻害するための方法も提供される。この方法は、癌細胞を本明細書に開示される二重特異性抗体と接触させることを含む。癌細胞を記載された抗体と接触させることは、例えば、癌細胞の成長若しくは増殖を阻害するか、又は癌細胞のT細胞媒介性殺傷を促進することができる。
【0020】
本明細書に開示される二重特異性抗体又はその抗原結合断片を生成する方法も提供される。この方法は、二重特異性抗体の1つの重鎖と軽鎖の対をコードする核酸を含む細胞を、重鎖及び軽鎖又はその抗原結合断片を生成する条件下で培養することと、二重特異性抗体又はその抗原結合断片の重鎖及び軽鎖を細胞又は培養物から回収することとを含む。二重特異性抗体の両方のアームの重鎖及び軽鎖の収集後、重鎖と軽鎖の対は、自己組織化を可能にするのに好適な条件で混合され、その後、自己組織化二重特異性抗体が収集される。
【0021】
緩衝組成物又は精製組成物などの、本明細書に開示される二重特異性抗体又は抗原結合断片を含む組成物を生成する方法も提供される。例えば、この方法は、二重特異性抗体又はその抗原結合断片を、二重特異性抗体の保存及び使用に許容可能な緩衝剤と組み合わせることを含み得る。
【0022】
本明細書に開示される二重特異性抗体又はその抗原結合断片を含むキット、及びそのための包装も提供される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
上記の概要、及び本出願の好ましい実施形態の以下の詳細な説明は、添付の図面と併せて読むことでより良く理解されるであろう。しかしながら、本出願は、図面に示される実施形態そのものに限定されないことを理解するべきである。
【
図1】T細胞を癌細胞に動員し、癌細胞死を誘発する抗Vβ17/抗腫瘍抗原二重特異性抗体の結合を実証する概略図を示す。
【
図2A】Vβ17+CD8+T細胞が健康な対象に存在し、M1ペプチドとの培養時に、これらの細胞をインビトロで増殖させることができることを示す。健康な対象からの細胞表面上でVβ17(Vβ17+)を発現しているCD8+T細胞についてのゲートされた末梢血単核球(PBMC)のFACSヒストグラムを示す。
【
図2B】Vβ17+CD8+T細胞が健康な対象に存在し、M1ペプチドとの培養時に、これらの細胞をインビトロで増殖させることができることを示す。0日目として同定された、様々なドナーのHLAサブタイプ及びVβ17+CD8+T細胞の存在、並びに14日間のM1ペプチドを用いたインビトロ増殖後(14日目)を示す。
【
図3】Vβ17+CD8+T細胞が、キラー細胞傷害性細胞の特徴を有することを示す。棒グラフは、0日目(M1なし)及びM1ペプチド(+M1)による刺激後14日目の細胞表面上でVβ17(Vβ17+)を発現しているCD8+T細胞に対するゲートされたPBMC上のCD107a、CD69、Granzyme B(Gzb)、及びインターフェロン-γ(IFNγ)の発現を示す。
【
図4】CD8+T細胞へのVB11[抗Vβ17/抗CD123]二重特異性、並びにVB13[Vβ17ヌル対照二重特異性]抗体の結合を示す。3人の異なるドナー(D203517、HPU09381、及びHPU08694)からのPBMCから単離されたCD8+T細胞から提示されるデータ。各グラフの下の表は、nMにおける結合のEC
50値を示す。
【
図5】VΒ17及びCD123二重特異性(VB11)、並びにVβ17ヌル対照二重特異性(VB13)抗体のAML癌細胞株への結合を示す。提示されるデータは、Kasumi3 AML細胞株への二重特異性抗体の結合を示す。グラフの下の表は、nMにおける結合のEC
50値を示す。
【
図6】AML癌細胞の効率的な殺傷を誘発する、二重特異性抗体によるVβ17+T細胞の再指向を示す。左のグラフのデータは、エフェクタ対標的(E:T)比0.5:1でのKasumi3癌細胞の殺傷、及び二重特異性抗体の用量滴定を示す。中央のグラフのデータは、E:T比1:1でのKasumi3癌細胞の殺傷、及び二重特異性抗体の用量滴定を示す。右のグラフのデータは、E:T比5:1でのKasumi3癌細胞の殺傷、及び二重特異性抗体の用量滴定を示す。グラフの下の表は、pMで与えられた上記のグラフから計算されたEC
50値を示す。
【
図7A】PBMCから単離されたCD8+T細胞への抗Vβ17/抗CD123二重特異性抗体(VB11)及びVβ17ぬる二重特異性抗体(VB13)の特異的結合を示す。健康な対象からの細胞表面上でVβ17(Vβ17+)を発現しているCD8+T細胞に対するゲートされたPBMC(左グラフ、Vβ17非枯渇)、及び陰性選択を使用してVβ17+T細胞を枯渇させたPBMC(右グラフ、Vβ17枯渇)からのFACSヒストグラムを示す。
【
図7B】PBMCから単離されたCD8+T細胞への抗Vβ17/抗CD123二重特異性抗体(VB11)及びVβ17ぬる二重特異性抗体(VB13)の特異的結合を示す。
図7AからのCD8+T細胞への抗Vβ17/抗CD123二重特異性抗体(VB11)及びVβ17ヌル二重特異性抗体(VB13)の特異的結合を示す。二重特異性抗体の用量応答を図に示す。グラフの下の表は、nMで与えられた上記のグラフから計算された結合に対するEC
50値を示す。
【
図8】Kasumi3癌細胞の殺傷のためのVβ17二重特異性抗体によるVβ17 T細胞の特異的動員を示す。左の図は、エフェクタ細胞が、細胞表面上でVβ17(Vβ17+)を発現しているCD8α+T細胞(非接触CD8 T細胞)を含有するPBMCから単離されたときのKasumi3 AML細胞株の殺傷を示す。挿入は、エフェクタ細胞集団における10.1%のVβ17+CD8 T細胞の存在を示す。右の図は、エフェクタCD8+T細胞は、PBMCから単離されたが、Vβ17+T細胞は、陰性選択によって枯渇したときのKasumi3 AML細胞株の殺傷を示す。挿入は、エフェクタ細胞集団における小集団(0.086%)のVβ17+CD8+T細胞の存在を示す。
【
図9A】Vβ17二重特異性抗体を使用するとき、T細胞のパン活性化が存在しないことを示す。Vβ17+及びVβ17-のゲートされたCD8+T細胞のFACSプロットを示す。T細胞をVβ17二重特異性抗体で活性化させた場合、Vβ17-CD8+T細胞(1.80%)と比較して、Vβ17+に対するCD69の上方調節が高かった(62.5%)。
【
図9B】Vβ17二重特異性抗体を使用するとき、T細胞のパン活性化が存在しないことを示す。Vβ17二重特異性抗体を使用して活性化されたときのVβ17+及びVβ17-のゲートされたCD8+T細胞上のCD69の上方調節の棒グラフを示す。
【
図10】HLA A2陰性ドナーからのVβ17+T細胞もエフェクタキラー細胞であり、Vβ17+細胞の事前刺激は必要としないことを示す。Kasumi3癌細胞のVβ17二重特異性抗体によって媒介される効率的な細胞傷害は、HLA A2陰性ドナー(HPU09381)からのVβ17+T細胞を含有するPBMCから示される。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本明細書に含まれる文書、操作、材料、デバイス、物品などの考察は、本発明のコンテキストを与えるためのものである。かかる考察は、これらの事物のいずれか又は全てが、開示又は特許請求されるいずれかの発明に対する先行技術の一部を構成することを容認するものではない。
【0025】
特に規定のない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般的に理解されるのと同じ意味を有する。そうでない場合、本明細書で使用される特定の用語は、本明細書に記載される意味を有するものである。
【0026】
特に明記しない限り、本明細書に記載される濃度又は濃度範囲などのあらゆる数値は、全ての場合において、「約」という用語によって修飾されているものとして理解されるべきである。したがって、数値は、典型的には、記載される値の±10%を含む。例えば、1mg/mLの濃度は0.9mg/mL~1.1mg/mLを含む。同様に、1%~10%(w/v)の濃度範囲は0.9%(w/v)~11%(w/v)を含む。本明細書で使用するとき、数値範囲の使用は、文脈上そうでない旨が明確に示されない限り、その範囲内の整数及び値の分数を含む、全ての可能な部分範囲、その範囲内の全ての個々の数値を明示的に含む。
【0027】
別途記載のない限り、一連の要素に先行する「少なくとも」という用語は、一連の全ての要素を指すと理解されるべきである。当業者であれば、単なる通常の実験手順を使用するだけで、本明細書に記載した本発明の特定の実施形態に対して多くの同等物を認識するか、又は確認することができよう。このような等価物は、本発明によって包含されることが意図される。
【0028】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されるとき、単数形「a」、「an」及び「the」は、特に文脈上明らかでない限り、複数の指示対象物を含むことに留意する必要がある。
【0029】
本明細書で使用するとき、用語「備える(comprises)、「備える(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」、「含有する(contains)」、又は「含有する(containing)」あるいはこれらの任意の他の変形形態は、述べられている整数又は整数群を含むことが意図されるが、これら以外の他の整数又は整数群を除外するものではなく、非排他的又は非制限的であることが意図されることが理解されよう。例えば、一連の要素を含む組成物、混合物、プロセス、方法、物品、又は装置は、必ずしもそれらの要素のみに限定されるものではなく、明示的に列挙されない、又はそのような組成物、混合物、プロセス、方法、物品、又は装置に本来存在しない他の要素を含んでもよい。更に、明示的に反対に明記されない限り、「又は」は包括的な「又は」を指すものであり、排他的な「又は」を指すものではない。例えば、条件A又はBは、Aが真であり(又は存在する)かつBが偽である(又は存在しない)場合、Aが偽であり(又は存在しない)かつBが真である(又は存在する)場合、並びにA及びBの両方が真である(又は存在する)場合、のいずれか1つによって充足される。
【0030】
本明細書で使用するとき、複数の列挙された要素間の接続的な用語「及び/又は」は、個々の及び組み合わされた選択肢の両方を包含するものとして理解される。例えば、2つの要素が「及び/又は」によって接続される場合、第1の選択肢は、第2の要素なしに第1の要素が適用可能であることを指す。第2の選択肢は、第1の要素なしに第2の要素が適用可能であることを指す。第3の選択肢は、第1及び第2の要素が一緒に適用可能であることを指す。これらの選択肢のうちのいずれか1つは、意味に含まれ、したがって、本明細書で使用されるとき、用語「及び/又は」の要件を満たすことが理解される。選択肢のうちの2つ以上の同時適用性もまた、意味に含まれ、したがって、用語「及び/又は」の要件を満たすことが理解される。
【0031】
好ましい発明の構成要素の寸法又は特徴を指すときに本明細書で使用される用語「約」、「およそ」、「概ね」、「実質的に」などの用語は、当業者には理解されるように、記載の寸法/特徴が厳密な境界又はパラメータではなく、機能的に同じ又は類似する、それらからのわずかな相違を除外するものではないことを示すことも理解すべきである。最小値では、数値パラメータを含むこのような参照は、当該技術分野において受け入れられている数学的及び工業的原理(例えば、四捨五入、測定、又は他の系統的誤差、製造公差など)を使用すると、最小有効数字は変化しない変形形態を含むであろう。
【0032】
用語「同一」又は「同一性」パーセントは、2つ以上の核酸又はポリペプチド配列(例えば、抗Vβ17/抗CD123二重特異性抗体及びそれをコードするポリヌクレオチド、Vβ17ポリペプチド及びそれをコードするVβ17ポリヌクレオチド、CD123ポリペプチド及びそれをコードするCD123ポリヌクレオチド)に関連して、以下の配列比較アルゴリズムのうちの1つを使用してか、又は目視検査によって測定したとき、一致が最大になるように比較及びアラインメントした場合に同じであるか、又は特定のパーセントの同じであるアミノ酸残基若しくはヌクレオチドを有する2つ以上の配列又はサブ配列を指す。
【0033】
配列比較のために、典型的には、1つの配列は、試験配列が比較される参照配列として作用する。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験及び参照配列がコンピュータに入力され、必要に応じて、サブシーケンス座標が指定され、配列アルゴリズムプログラムパラメータが指定される。次いで、配列比較アルゴリズムは、指定されたプログラムパラメータに基づいて、参照配列に対する試験配列の配列同一性パーセントを計算する。
【0034】
比較のための配列の最適なアライメントは、例えば、Smith & Waterman,Adv.Appl.Math.2:482(1981)の局所相同性アルゴリズム、Needleman & Wunsch,J.Mol.Biol.48:443(1970)の相同性アライメントアルゴリズム、Pearson & Lipman,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 85:2444(1988)の類似性検索方法、これらのアルゴリズムのコンピュータ化された実装(Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Dr.,Madison,WIにおけるGAP、BESTFIT、FASTA、及びTFASTA)、又は目視検査(全般的には、Current Protocols in Molecular Biology,F.M.Ausubel et al.,eds.,Current Protocols,a joint venture between Greene Publishing Associates,Inc.and John Wiley&Sons,Inc.,(1995 Supplement)(Ausubel)を参照)によって行うことができる。
【0035】
配列同一性及び配列類似性のパーセントを決定するのに好適なアルゴリズムの例は、Altschul et al.(1990)J.Mol.Biol.215:403-410及びAltschul et al.(1997)Nucleic Acids Res.25:3389-3402にそれぞれ記載されているBLAST及びBLAST 2.0アルゴリズムである。BLAST分析を行うソフトウェアは、国立生物工学情報センター(National Center for Biotechnology Information)を通じて公的に入手可能である。このアルゴリズムは、最初に、データベース配列における同じ長さのワードとアラインメントしたときに一致するか、又はいくつかの正の値の閾値スコアTを満たすかのいずれかの、クエリー配列における長さWの短いワードを同定することによって、高スコア配列対(high scoring sequence pair、HSP)を同定することを含む。Tは、隣接ワードスコア閾値(Altschul et al.、上記)と称される。これらの初期隣接ワードヒットは、それを含有するより長いHSPを見つけるための検索を開始するためのシードとして機能する。次いで、累積アラインメントスコアを増加させることができる限り、各配列に沿ってワードヒットを両方向に延長する。
【0036】
ヌクレオチド配列については、パラメータM(一致する残基の対についてのリワードスコア、常に>0)及びN(不一致の残基についてのペナルティスコア、常に<0)を使用して累積スコアを計算する。アミノ酸配列については、スコアリングマトリックスを使用して累積スコアを計算する。累積アラインメントスコアがその最大獲得値から量Xだけ低下したとき、1つ又は2つ以上の負のスコアリング残基のアラインメントの蓄積により、累積スコアがゼロ以下になったとき、又はいずれかの配列の末端に達したときに、各方向におけるワードヒットの延長を停止する。BLASTアルゴリズムのパラメータW、T、及びXが、アライメントの感度及び速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列について)は、デフォルトとして、ワード長(W)11、期待値10、M=5、N=-4、及び両方の鎖の比較を使用する。アミノ酸配列については、BLASTPプログラムは、デフォルトとして、ワード長(W)3、期待値(E)10、及びBLOSUM62スコアリングマトリックスを使用する(Henikoff&Henikoff,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915(1989)を参照)。
【0037】
配列同一性パーセントを計算することに加えて、BLASTアルゴリズムは、2つの配列間の類似性の統計解析も行う(例えば、Karlin & Altschul,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 90:5873-5787(1993)を参照)。BLASTアルゴリズムによって提供される類似性の1つの尺度は、最小合計確率(P(N))であり、これは、2つのヌクレオチド又はアミノ酸配列間の一致が偶然に生じる確率の指標を提供する。例えば、核酸は、試験核酸と参照核酸との比較における最小合計確率が、約0.1未満、より好ましくは約0.01未満、最も好ましくは約0.001未満である場合、参照配列に類似しているとみなされる。
【0038】
2つの核酸配列又はポリペプチドが実質的に同一であることの更なる指標は、以下に記載されるように、第1の核酸によりコードされるポリペプチドが、第2の核酸によりコードされるポリペプチドと免疫学的に交差反応性であることである。したがって、ポリペプチドは、典型的には、第2のポリペプチドと実質的に同一であり、例えば、2つのペプチドは保存的置換によってのみ異なる。2つの核酸配列が実質的に同一である別の指標は、2つの分子がストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズすることである。
【0039】
抗体
本明細書には、単離された抗Vβ17二重特異性抗体又はその抗原結合断片、当該抗体をコードする核酸及び発現ベクター、当該ベクターを含有する組換え細胞、並びに当該抗体を含む組成物が記載される。本発明は、更に、単離された抗Vβ17/抗CD123二重特異性抗体又はその抗原結合断片、当該抗体をコードする核酸及び発現ベクター、当該ベクターを含有する組換え細胞、並びに当該二重特異性抗体を含む組成物に関する。抗体を作製する方法、及び癌を含む疾患を治療するために抗体を使用する方法も提供される。本明細書に開示される抗体は、Vβ17及び/又はCD123に対する高親和性結合、Vβ17及び/又はCD123に対する高い特異性、並びに単独で又は他の抗癌療法と組み合わせて投与されたときに癌を治療又は予防する能力を含むがこれらに限定されない、1つ又は2つ以上の望ましい機能特性を有する。
【0040】
本明細書で使用するとき、用語「抗体」は、広義で使用され、免疫グロブリン、又はモノクローナル又はポリクローナルである、ヒト、ヒト化、複合、及びキメラ抗体を含む抗体分子並びに抗体断片を含む。全般的には、抗体とは、特定の抗原に対する結合特異性を示すタンパク質又はペプチド鎖である。抗体の構造は、周知である。免疫グロブリンは、重鎖定常ドメインのアミノ酸配列に応じて5つの主なクラス(すなわち、IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgM)に割り当てることができる。IgA及びIgGは、アイソタイプのIgA1、IgA2、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4として更に細分類される。脊椎動物種の抗体軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて2つの明確に異なるタイプ、すなわちκ及びλのうちの一方に割り当てることができる。したがって、本発明の抗体は、κ又はλ軽鎖定常ドメインを含有することができる。特定の実施形態によれば、本明細書に開示される抗体は、マウス又はヒト抗体からの重鎖及び/又は軽鎖定常領域を含む。重及び軽定常ドメインに加えて、抗体は、軽鎖可変領域及び重鎖可変領域からなる抗原結合領域を含有し、これらの各々は3つのドメイン(すなわち相補性決定領域1~3;CDR1、CDR2、及びCDR3)を含有する。軽鎖可変領域ドメインは、代替としてLCDR1、LCDR2、及びLCDR3と称され、重鎖可変領域ドメインは、代替としてHCDR1、HCDR2、及びHCDR3と称される。
【0041】
本明細書で使用するとき、用語「単離された抗体」は、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を指す(例えば、Vβ17に特異的に結合する単離された抗体は、Vβ17に結合しない抗体を実質的に含まない、CD123に特異的に結合する単離された抗体は、CD123に結合しない抗体を実質的に含まない)。更に、単離抗体は、他の細胞物質及び/又は化学物質を実質的に含まない。
【0042】
本明細書で使用するとき、用語「モノクローナル抗体」は、実質的に均質な抗体の集団から得られる抗体を指し、すなわち、集団を構成する個々の抗体は、微量に存在する可能性のある自然発生変異を除いて同一である。本明細書に開示されるモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法、ファージディスプレイ技術、単一リンパ球遺伝子クローニング技術、又は組換えDNA法によって作製することができる。例えば、モノクローナル抗体は、トランスジェニック非ヒト動物、例えば、トランスジェニックマウス又はラットから得られるB細胞を含むハイブリドーマによって生成され得、ヒト重鎖導入遺伝子及び軽鎖導入遺伝子を含むゲノムを有する。
【0043】
本明細書で使用するとき、用語「抗原結合断片」は、例えば、ダイアボディ、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv断片、ジスルフィド安定化Fv断片(dsFv)、(dsFv)2、二重特異性dsFv(dsFv-dsFv’)、ジスルフィド安定化ダイアボディ(dsダイアボディ)、単鎖抗体分子(scFv)、単一ドメイン抗体(sdab)scFv二量体(二価ダイアボディ)、1つ又は2つ以上のCDRを含む抗体の一部から形成される多重特異性抗体、ラクダ化単一ドメイン抗体、ナノボディ、ドメイン抗体、二価ドメイン抗体、又は抗原に結合するが完全な抗体構造を含まない任意の他の抗体断片などの抗体断片を指す。抗原結合断片は、親抗体又は親抗体断片が結合する同じ抗原に結合することができる。特定の実施形態によれば、抗原結合断片は、軽鎖可変領域、軽鎖定常領域、及び重鎖のFd断片を含む。他の特定の実施形態によれば、抗原結合断片はFab及びF(ab’)を含む。
【0044】
本明細書で使用するとき、用語「ヒト化抗体」とは、抗体の抗原結合特性が保持されるが、人体における抗原の抗原性が低下するように、改変により配列相同性をヒト抗体のそれに対して増加させた非ヒト抗体を意味する。
【0045】
本明細書で使用するとき、用語「多重特異性抗体」は、複数の免疫グロブリン可変ドメイン配列を含む抗体を指し、複数のうちの第1の免疫グロブリン可変ドメイン配列は、第1のエピトープに対する結合特異性を有し、複数のうちの第2の免疫グロブリン可変ドメイン配列は、第2のエピトープに対する結合特異性を有する。ある実施形態では、第1及び第2のエピトープは、重複しないか、又は実質的に重複しない。ある実施形態では、第1及び第2のエピトープは、異なる抗原、例えば、異なるタンパク質(又は異なる多量体タンパク質のサブユニット)上にある。ある実施形態では、多重特異性抗体は、第3、第4、又は第5の免疫グロブリン可変ドメインを含む。ある実施形態では、多重特異性抗体は、二重特異性抗体分子、三重特異性抗体分岐、又は四重特異性抗体分子である。
【0046】
本明細書で使用するとき、用語「二重特異性抗体」は、2つ以下のエピトープ又は2つ以下の抗原に結合する多重特異性抗体を指す。二重特異性抗体は、第1のエピトープ(例えば、Vβ17抗原上のエピトープ)に対する結合特異性を有する第1の免疫グロブリン重鎖及び軽鎖対、並びに第2のエピトープ(例えば、CD123抗原上のエピトープ)に対する結合特異性を有する第2の免疫グロブリン重鎖及び軽鎖対を特徴とする。ある実施形態では、第1及び第2のエピトープは、異なる抗原、例えば、異なるタンパク質(又は異なる多量体タンパク質のサブユニット)上にある。ある実施形態では、二重特異性抗体は、第1のエピトープに対する結合特異性を有する重鎖可変ドメイン配列及び軽鎖可変ドメイン配列と、第2のエピトープに対する結合特異性を有する重鎖可変ドメイン配列及び軽鎖可変ドメイン配列とを含む。ある実施形態では、二重特異性抗体は、第1のエピトープに対する結合特異性を有する半抗体又はその断片と、第2のエピトープに対する結合特異性を有する半抗体又はその断片とを含む。ある実施形態では、二重特異性抗体は、第1のエピトープに対する結合特異性を有するscFv又はその断片と、第2のエピトープに対する結合特異性を有するscFv又はその断片とを含む。ある実施形態では、第1のエピトープは、Vβ17上に位置し、第2のエピトープは、CD123に位置する。ある実施形態では、第1のエピトープは、Vβ17上に位置し、第2のエピトープは、PD-1、PD-L1、CTLA-4、EGFR、HER-2、CD19、CD20、CD3、及び/又は他の腫瘍関連免疫抑制因子若しくは表面抗原上に位置する。
【0047】
本明細書で使用するとき、用語「半抗体」は、1つの免疫グロブリン軽鎖と会合した1つの免疫グロブリン重鎖を指す。例示的な半抗体は、配列番号28に描かれる。当業者であれば、半抗体がその断片を包含することができ、例えば、ラクダ科由来の単一の可変ドメインからなる抗原結合ドメインを有することもできることを容易に理解するであろう。
【0048】
本明細書で使用するとき、用語「Vβ17」は、細胞傷害性T細胞上での免疫応答に応答して発現されるT細胞受容体を指す。Vβ17発現CD8+T細胞は、通常、対象におけるインフルエンザAウイルス曝露に応答して生成される。Vβ17発現CD8α+T細胞は、対象におけるインフルエンザ曝露に応答して大きなリコールを提供する。用語「Vβ17」は、細胞(T細胞を含む)により自然に発現されるか、又はポリペプチドをコードする遺伝子若しくはcDNAがトランスフェクトされた細胞上で発現し得る、任意のVβ17変異体、アイソフォーム、及び種間ホモログを含む。特に記載がない限り、Vβ17は、ヒトVβ17であることが好ましい。ヒトVβ17アミノ酸配列は、GenBankアクセッション番号AAB49730.1によって提供される。
【0049】
用語「CD123」は、免疫系において重要な可溶性サイトカインであるインターロイキン-3のシグナルを伝達するのに役立つ、細胞上に見られる分子を指す。CD123は、「インターロイキン-3受容体」とも称され得る。受容体は、I型サイトカイン受容体ファミリーに属し、共通のベータサブユニット(βc又はCD131)と対になった固有のアルファ鎖を有するヘテロ二量体である。CD123受容体は、多能性前駆細胞上に見られることがあり、細胞内でチロシンリン酸化を誘導し、造血細胞株内での増殖及び分化を促進することができる。CD123はまた、急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia、AML)サブタイプで発現させることもできる。用語「CD123」は、細胞(T細胞を含む)により自然に発現するか、又はそれらのポリペプチドをコードする遺伝子若しくはcDNAがトランスフェクトされた細胞上で発現し得る、任意のCD123変異体、アイソフォーム、及び種間ホモログを含み、特に記載がない限り、「CD123」は、ヒトCD123であることが好ましい。ヒトCD123アミノ酸配列は、GenBankアクセッション番号AY789109.1によって提供される。
【0050】
本明細書で使用するとき、「Vβ17に特異的に結合する」抗体は、1×10-7M以下、好ましくは1×10-8M以下、より好ましくは5×10-9M以下、1×10-9M以下、5×10-10M以下、又は1×10-10M以下のKDを有する、Vβ17、好ましくはヒトVβ17に結合する抗体を指す。用語「KD」は、Kd対Ka(すなわち、Kd/Ka)の比から得られ、モル濃度(M)として表される解離定数を指す。抗体のKD値は、本開示を考慮して当該技術分野における方法を用いて決定することができる。例えば、抗体のKDは、表面プラズモン共鳴を使用することによって、例えば、Biacore(登録商標)システムのバイオセンサーシステムを使用することなどによって、又はOctet RED96システムなどのバイオレイヤーインターフェロメトリ技術を使用することによって、求めることができる。
【0051】
本明細書で使用するとき、「CD123に特異的に結合する」抗体とは、CD123、好ましくはヒトCD123に対し、1×10-7M以下、好ましくは1×10-8M以下、より好ましくは5×10-9M以下、1×10-9M以下、5×10-10M以下、又は1×10-10M以下のKDで結合する抗体を指す。用語「KD」は、Kd対Ka(すなわち、Kd/Ka)の比から得られ、モル濃度(M)として表される解離定数を指す。抗体のKD値は、本開示を考慮して当該技術分野における方法を用いて決定することができる。例えば、抗体のKDは、表面プラズモン共鳴を使用することによって、例えば、Biacore(登録商標)システムのバイオセンサーシステムを使用することなどによって、又はOctet RED96システムなどのバイオレイヤーインターフェロメトリ技術を使用することによって、求めることができる。
【0052】
抗体のKDの値が小さいほど、抗体が標的抗原に結合する親和性が高い。
【0053】
特定の態様によれば、本発明は、単離されたVβ17二重特異性抗体又はその抗原結合断片に関し、(a)第1の重鎖(HC1)と、(b)第2の重鎖(HC2)と、(c)第1の軽鎖(LC1)と、(d)第2の軽鎖(LC2)とを含み、HC1は、LC1と会合することができ、HC2は、LC2と会合することができる。HC1は、配列番号1、配列番号2、及び配列番号3のアミノ酸配列をそれぞれ含む重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、HCDR2、及びHCDR3を含むことができ、LC1は、配列番号4、配列番号5、及び配列番号6のアミノ酸配列をそれぞれ含む軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、LCDR2、及びLCDR3を含むことができる。
【0054】
HC1及びLC1は、第1の抗原に対する結合部位を形成し、HC2及びLC2は、第2の抗原に対する結合部位を形成する。一例として、第1の抗原に対する結合部位は、CD8+又はCD4+T細胞上にあるVβ17に結合することができ、第2の抗原に対する結合部位は、例えば、癌細胞の表面上に存在する腫瘍抗原に結合することができる。CD8+又はCD4+T細胞の表面上に存在するVβ17へのVβ17二重特異性抗体の結合、及び癌細胞の表面上に存在する腫瘍抗原の結合は、例えば、癌細胞の殺傷をもたらし得る。
【0055】
抗Vβ17抗体又はその抗原結合断片及び抗CD123抗体又はその抗原結合断片を含む、抗Vβ17/抗CD123二重特異性抗体又はその抗原結合断片も本明細書に提供される。ある特定の実施形態では、抗Vβ17/抗CD123二重特異性抗体又はその抗原結合断片は、(a)第1の重鎖(HC1)と、(b)第2の重鎖(HC2)と、(c)第1の軽鎖(LC1)と、(d)第2の軽鎖(LC2)とを含み、HC1は、LC1と会合し、HC2は、LC2と会合している。ある特定の実施形態では、HC1は、配列番号1、配列番号2、及び配列番号3のアミノ酸配列をそれぞれ含む重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、HCDR2、及びHCDR3を含み、LC1は、配列番号4、配列番号5、及び配列番号6のアミノ酸配列をそれぞれ含む軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、LCDR2、及びLCDR3を含む。ある特定の実施形態では、HC2は、配列番号34、配列番号35、及び配列番号36のアミノ酸配列をそれぞれ含む重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、HCDR2、及びHCDR3を含み、LC2は、配列番号37、配列番号38、及び配列番号39のアミノ酸配列をそれぞれ含む軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、LCDR2、及びLCDR3を含む。
【0056】
ある特定の実施形態では、HC1は、例えば、配列番号13のアミノ酸配列を含むことができ、LC1は、例えば、配列番号14のアミノ酸配列を含んで、Vβ17に特異的に結合する第1の抗原に対する結合部位を形成することができる。HC2は、例えば、配列番号15のアミノ酸配列を含むことができ、LC2は、例えば、配列番号16のアミノ酸配列を含んで、CD123に特異的に結合する第2の抗原に対する結合部位を形成することができる。
【0057】
ある特定の実施形態では、Vβ17は、CD8+又はCD4+T細胞の表面上にある。ある特定の実施形態では、CD123は、癌細胞(例えば、白血病細胞)の表面上にある。
【0058】
一部の実施形態では、本明細書に開示される二重特異性抗体は、本明細書に記載されるように、制御されたFabアーム交換を介して得られるダイアボディ、交差体、又は二重特異性抗体の形態をとることができる。
【0059】
一部の実施形態では、二重特異性抗体には、ヘテロ二量体化を促進する相補性CH3ドメインを有するIgG様分子、組換えIgG様二重標的分子(分子の2つの側が各々、少なくとも2つの異なる抗体のFab断片又はFab断片の一部を含有する)、IgG融合分子(完全長IgG抗体が、余分のFab断片又はFab断片の一部に融合される)、Fc融合分子(一本鎖Fv分子又は安定化された二ダイアボディが、重鎖定常ドメイン、Fc領域、又はその一部に融合される)、Fab融合分子(異なるFab断片が1つに融合される)、ScFv及びダイアボディ抗体に基づく抗体及び重鎖抗体(例えば、ドメイン抗体、ナノボディ)(異なる一本鎖Fv分子又は異なるダイアボディ又は異なる重鎖抗体(例えば、ドメイン抗体、ナノボディ)を互いに融合するか、又は別のタンパク質若しくは担体分子に融合する)が挙げられる。
【0060】
一部の実施形態では、相補性CH3ドメイン分子を有するIgG様分子には、Triomab/Quadroma(Trion Pharma/Fresenius Biotech)、Knobs-into-Holes(Genentech)、CrossMAbs(Roche)及び静電的に調整されたもの(Amgen)、LUZ-Y(Genentech)、Strand Exchange Engineered Domain body(SEEDbody)(EMD Serono)、Biclonic(Merus)、並びにDuoBody(Genmab A/S)が挙げられる。
【0061】
一部の実施形態では、組換えIgG様二重標的分子には、Dual Targeting(DT)-Ig(GSK/Domantis)、Two-in-one Antibody(Genentech)、Cross-linked Mabs(Karmanos Cancer Center)、mAb2(F-Star)、及びCovX-body(CovX/Pfizer)が挙げられる。
【0062】
一部の実施形態では、IgG融合分子には、Dual Variable Domain(DVD)-Ig(Abbott)、IgG-like Bispecific(InnClone/Eli Lilly)、Ts2Ab(MedImmune/AZ)、及びBsAb(Zymogenetics)、HERCULES(Biogen Idec)、並びにTvAb(Roche)が挙げられる。
【0063】
一部の実施形態では、Fc融合分子には、ScFv/Fc Fusions(Academic Institution)、SCORPION(Emergent BioSolutions/Trubion,Zymogenetics/BMS)、Dual Affinity Retargeting Technology(Fc-DART)(MacroGenics)、及びDual(ScFv)2-Fab(National Research Center for Antibody Medicine-中国)が挙げられ得る。
【0064】
一部の実施形態では、Fab融合二重特異性抗体には、F(ab)2(Medarex/AMGEN)、Dual-Action又はBis-Fab(Genentech)、Dock-and-Lock(DNL)(ImmunoMedics)、Bivalent Bispecific(Biotecnol)、及びFab-Fv(UCB-Celltech)が挙げられる。ScFv抗体、ダイアボディに基づく抗体、及びドメイン抗体には、二重特異性T細胞エンゲージャ(Bispecific T Cell Engager、BiTE)(Micromet)、タンデムダイアボディ(Tandem Diabody、Tandab)(Affimed)、二重親和性再標的技術(Dual Affinity Retargeting Technology、DART)(MacroGenics)、一本鎖ダイアボディ(Academic)、TCR様抗体(AIT、ReceptorLogics)、ヒト血清アルブミンScFv融合体(Merrimack)、及びCOMBODY(Epigen Biotech)、二重標的ナノボディ(Ablynx)、二重標的重鎖のみドメイン抗体が含まれるが、これらに限定されない。
【0065】
本明細書に開示される完全長二重特異性抗体は、例えば、インビトロでの無細胞環境において又は共発現を使用してかのいずれかで、異なる特異性を有する2つの抗体半分子のヘテロ二量体形成を好むように、各半分子における重鎖CH3界面に置換を導入することによって、2つの単一特異性二価抗体間でのFabアーム交換(又は半分子交換)を使用して生成され得る。Fabアーム交換反応は、ジスルフィド結合異性化反応及びCH3ドメインの解離-会合の結果である。単一特異的親抗体のヒンジ領域における重鎖ジスルフィド結合は減少する。単一特異的親抗体のうちの1つについて生じる遊離システインは、第2の単一特異的親抗体分子のシステイン残基と重鎖内ジスルフィド結合を形成し、同時に、親抗体のCH3ドメインは、解離-会合により開放及び再形成する。FabアームのCH3ドメインは、ホモ二量体形成よりヘテロ二量体形成を好むように操作されてもよい。得られる生成物は、各々が異なるエピトープ、すなわち、Vβ17上のエピトープ及び腫瘍抗原上のエピトープに結合する、2つのFabアーム又は半分子を有する二重特異性抗体である。
【0066】
本明細書で使用されるとき、「ホモ二量体形成」は、同一のCH3アミノ酸配列を有する2本の重鎖の相互作用を意味する。本明細書で使用されるとき、「ホモ二量体」は、同一のCH3アミノ酸配列を有する2本の重鎖を有する抗体を意味する。
【0067】
本明細書で使用されるとき、「ヘテロ二量体形成」は、同一でないCH3アミノ酸配列を有する2本の重鎖の相互作用を意味する。本明細書で使用されるとき、「ヘテロ二量体」は、同一でないCH3アミノ酸配列を有する2本の重鎖を有する抗体を意味する。
【0068】
「knob-in-hole」戦略(例えば、PCT国際公開第2006/028936号を参照のこと)を使用して、全長二重特異性抗体を生成することができる。簡潔に、ヒトIgGにおけるCH3ドメインの界面を形成する選択されたアミノ酸は、ヘテロ二量体形成を促進するために、CH3ドメイン相互作用に影響を及ぼす位置において変異され得る。小さな側鎖を有するアミノ酸(ホール)が、第1の抗原に特異的に結合する抗体の重鎖内に導入され、大きな側鎖を有するアミノ酸(ノブ)が、第2の抗原に特異的に結合する抗体の重鎖内に導入される。2つの抗体の共発現後に、ヘテロ二量体が、「ホール」を有する重鎖と「ノブ」を有する重鎖との優先的な相互作用の結果として形成される。ノブ及びホールを形成する例示的なCH3置換の対は、T366Y/F405A、T366W/F405W、F405W/Y407A、T394W/Y407T、T394S/Y407A、T366W/T394S、F405W/T394S、及びT366W/T366S_L368A_Y407Vである(第1の重鎖の第1のCH3ドメインにおける改変位置/第2の重鎖の第2のCH3ドメインにおける改変位置として表現)。
【0069】
1つのCH3表面に正に荷電した残基及び第2のCH3表面に負に荷電した残基を置換することによる静電的相互作用を使用する重鎖ヘテロ二量体形成の促進などの他の戦略を、米国特許公開第US2010/0015133号、米国特許公開第US2009/0182127号、米国特許公開第US2010/028637号、又は米国特許公開第US2011/0123532号に記載されるように使用することができる。他の戦略では、ヘテロ二量体形成は、米国特許公開第US2012/0149876号又は米国特許公開第US2013/0195849号に記載されるように、L351Y_F405AY407V/T394W、T366I_K392M_T394W/F405A_Y407V、T366L_K392M_T394W/F405A_Y407V、L351Y_Y407A/T366A_K409F、L351Y_Y407A/T366V K409F Y407A/T366A_K409F、又はT350V_L351Y_F405A Y407V/T350V_T366L_K392L_T394Wの置換(第1の重鎖の第1のCH3ドメインにおける改変位置/第2の重鎖の第2のCH3ドメインにおける改変位置として表わされる)によって促進され得る。
【0070】
上記の方法に加えて、本明細書に開示される二重特異性抗体は、国際特許公開第W02011/131746号に記載された方法に従って、2つの単一特異的ホモ二量体抗体のCH3領域中に非対称な変異を導入し、ジスルフィド結合を異性化させる還元条件下において、2つの単一特異的ホモ二量体親抗体から二重特異性ヘテロ二量体抗体を形成することにより、インビトロにおいて無細胞環境下で生成することができる。この方法では、第1の単一特異性二価抗体(例えば、抗CD33抗体)及び第2の単一特異性二価抗体(例えば、抗CD3抗体)は、ヘテロ二量体の安定性を促進するCH3ドメインに特定の置換を有するように操作され、これらの抗体は、ヒンジ領域におけるシステインがジスルフィド結合を異性化させることを可能にするために十分な還元条件下において共にインキュベーションされ、それにより、Fabアーム交換により二重特異性抗体が生成される。インキュベート条件は、任意に非還元条件に戻されてもよい。使用され得る例示的な還元剤は、2-メルカプトエチルアミン(2-mercaptoethylamine、2-MEA)、ジチオスレイトール(dithiothreitol、DTT)、ジチオエリスリトール(dithioerythritol、DTE)、グルタチオン、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(tris(2-carboxyethyl)phosphine、TCEP)、L-システイン、及びβ-メルカプトエタノールであり、好ましくは、2-メルカプトエチルアミン、ジチオスレイトール、及びトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィンからなる群から選択される還元剤である。例えば、少なくとも20℃の温度において、少なくとも25mMの2-MEAの存在下又は少なくとも0.5mMのジチオスレイトールの存在下で、pH5~8、例えば、pH7.0又はpH7.4において、少なくとも90分のインキュベートが使用されてもよい。
【0071】
ある特定の実施形態では、抗Vβ17抗体又はその抗原結合断片は、重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、HCDR2、HCDR3、軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、LCDR2、及びLCDR3を含み、これらは、
a.それぞれ、配列番号1、2、3、4、5、及び6のポリペプチド配列を有し、
抗CD123抗体又はその抗原結合断片は、重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、HCDR2、HCDR3、軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、LCDR2、及びLCDR3を含み、これらは、
1.それぞれ、配列番号34、35、36、37、38、及び39のポリペプチド配列を有する。
【0072】
別の特定の態様によれば、本発明は、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity、ADCC)を誘導する、単離された抗Vβ17/抗CD123二重特異性抗体又はその抗原結合断片に関する。二重特異性抗体又はその抗原結合断片は、例えば、インビトロでADCCを誘導することができる。二重特異性抗体又はその抗原結合断片は、約1pM未満のEC50でADCCを誘導することができる。ある特定の実施形態では、EC50は、約1pM未満、約0.9pM未満、約0.8pM未満、約0.7pM未満、約0.6pM未満、約0.5pM未満、約0.4pM未満、約0.300pM未満、約0.2pM未満、約0.19pM未満、約0.18pM未満、約0.17pM未満、約0.16pM未満、約0.15pM未満、約0.14pM未満、約0.13pM未満、約0.12pM未満、約0.11pM未満、約0.1pM未満、約0.09pM未満、約0.08pM未満、約0.07pM未満、約0.06pM未満、約0.05pM未満、約0.04pM未満、約0.03pM未満、約0.02pM未満、又は約0.01pM未満である。ある特定の実施形態では、抗Vβ17/抗CD123二重特異性抗体又はその抗原結合断片は、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4骨格を含む。かかる一実施形態では、抗Vβ17/抗CD123二重特異性抗体又はその抗原結合断片は、IgG4アイソタイプの抗体骨格を有する。
【0073】
本明細書に記載される一部の実施形態では、抗Vβ17/抗CD123二重特異性抗体の免疫エフェクタ特性は、当業者に既知の技術によりFc改変を介して活性又は抑制させることができる。例えば、Fcエフェクタ機能、例えば、C1q結合、補体依存性細胞傷害(complement dependent cytotoxicity、CDC)、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞媒介性貪食(antibody-dependent cell-mediated phagocytosis、ADCP)、細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体、B cell receptor、BCR)のダウンレギュレーション等が、これらの活性を担うFc中の残基を改変することにより提供され、かつ/又は制御され得る。
【0074】
「抗体依存性細胞介在性細胞傷害」又は「ADCC」は、Fc受容体(Fc receptor、FcR)を発現する非特異的細胞傷害性細胞(例えば、ナチュラルキラー(Natural Killer、NK)細胞、好中球、及びマクロファージ)が標的細胞上に結合した抗体を認識し、続けて、標的細胞の溶解を引き起こす、細胞介在性反応を指す。
【0075】
ADCCを誘導する抗体の能力は、そのオリゴ糖成分を操作することにより増強され得る。ヒトIgG1又はIgG3は、Asn297においてN-グリコシル化される。ここで、グリカンの大部分は、周知の二分岐G0、G0F、G1、G1F、G2、又はG2Fの形態である。遺伝子操作されていないCHO細胞により生成される抗体は、典型的には、少なくとも約85%のグリカンフコース含量を有する。Fc領域に付着した二分岐の複雑なタイプのオリゴ糖からコアフコースを除去すると、抗原結合性又はCDC活性を変化させることなく改善されたFcγRIIIa結合を介して、抗体のADCCが増強される。かかるAbsは、二分岐の複雑なタイプのFcオリゴ糖を有する、比較的高い脱フコシル化抗体の成功した発現をもたらすことが報告された異なる方法、例えば、培養浸透圧の制御(Konno et al.,Cytotechnology 64:249-65,2012)、宿主細胞株としての変異体CHO株Lec13の適用(Shields et al.,J Biol Chem 277:26733-26740,2002)、宿主細胞株としての変異体CHO株EB66の適用(Olivier et al.,MAbs;2(4),2010、印刷に先立つ電子公開、PMID:20562582)、ラットハイブリドーマ細胞株YB2/0の宿主細胞株としての適用(Shinkawa et al.,J Biol Chem 278:3466-3473,2003)、α-1,6-フコシルトランスフェラーゼ(FUT8)遺伝子に対して特異的な低分子干渉RNAの導入(Mori et al.,Biotechnol Bioeng 88:901-908,2004)、又はβ-1,4-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII及びゴルジα-マンノシダーゼII若しくは強力なα-マンノシダーゼI阻害物質であるキフネンシンの共発現(Ferrara et al.,J Biol Chem281:5032-5036,2006、Ferrara et al.,Biotechnol Bioeng93:851-861,2006、Xhou et al.,Biotechnol Bioeng 99;652-65,2008)を使用して達成され得る。
【0076】
本明細書に記載される一部の実施形態では、抗Vβ17/抗CD123二重特異性抗体により惹起されるADCCはまた、抗体Fcにおけるある特定の置換によっても活性され得る。例示的な置換は、例えば、米国特許第6,737,056号に記載されるように、アミノ酸256、290、298、312、356、330、333、334、360、378、又は430位(残基の番号付けは、EUインデックスに準じる)における置換である。
【0077】
別の特定の態様によれば、本発明は、Vβ17発現細胞及びCD123発現細胞においてT細胞依存性細胞傷害を誘導することが可能な単離された抗Vβ17/抗CD123二重特異性抗体又はその抗原結合断片に関する。二重特異性抗体又はその抗原結合断片は、例えば、約2nM未満のEC50値でインビトロにおいてVβ17発現細胞/CD123発現細胞でT細胞依存性細胞傷害を誘導することができる。特定の実施形態では、EC50は、約2.0nM未満、約1.9nM未満、約1.8nM未満、約1.7nM未満、約1.6nM未満、約1.5nM未満、約1.4nM未満、約1.3nM未満、約1.2nM未満、約1.1nM未満、約1.0nM未満、約0.9nM未満、約0.8nM未満、約0.7nM未満、約0.6nM未満、約0.5nM未満、約0.4nM未満、約0.3nM未満、約0.2nM未満、及び約0.1nM未満である。
【0078】
別の特定の態様によれば、本発明は、単離された抗Vβ17/抗CD123二重特異性抗体又はその抗原結合断片に関し、抗Vβ17/抗CD123二重特異性抗体又はその抗原結合断片は、キメラである。
【0079】
別の特定の態様によれば、本発明は、単離された抗Vβ17/抗CD123二重特異性抗体又はその抗原結合断片に関し、抗Vβ17/抗CD123二重特異性抗体又はその抗原結合断片は、ヒト又はヒト化されている。
【0080】
別の一般的な態様では、本発明は、単離されたヒト化Vβ17モノクローナル抗体又はその抗原結合断片に関する。単離されたヒト化Vβ17モノクローナル抗体又はその抗原結合断片は、配列番号28のアミノ酸配列と少なくとも85%、好ましくは90%、より好ましくは95%以上、例えば、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、ヒト化Vβ17モノクローナル抗体又はその抗原結合断片は、配列番号28のアミノ酸配列を含む。
【0081】
別の一般的な態様では、本発明は、本明細書に開示されるモノクローナル抗体又はその抗原結合断片をコードする、単離された核酸に関する。別の一般的な態様では、本発明は、本明細書に開示される二重特異性抗体又はその抗原結合断片をコードする、単離された核酸に関する。タンパク質のアミノ酸配列を変えることなく、タンパク質のコード配列を変える(例えば置換する、欠失する、挿入するなど)ことができることが、当業者には理解されよう。したがって、タンパク質のアミノ酸配列を変えることなく、本明細書に開示されるモノクローナル抗体及び/又は二重特異性抗体をコードする核酸配列を変更することができることが、当業者には理解されよう。
【0082】
別の一般的な態様では、本発明は、本明細書に開示される単離された核酸を含むベクターに関する。プラスミド、コスミド、ファージベクター、又はウイルスベクターなどの、本開示の観点から当業者に既知の任意のベクターも使用することができる。一部の実施形態では、ベクターは、プラスミドなどの組換え発現ベクターである。ベクターは、例えば、プロモータ、リボソーム結合エレメント、ターミネータ、エンハンサ、選択マーカー、及び複製起点という、発現ベクターの従来の機能を確立するための任意のエレメントを含むことができる。プロモータは、常時発現型、誘導型、又は再形成可能なプロモータであり得る。細胞に核酸を送達することができる多数の発現ベクターが当該技術分野において知られており、細胞内で抗体又はその抗原結合断片を生成するために、本明細書で使用することができる。従来のクローニング技術又は人工遺伝子合成を使用して、本明細書に開示される実施形態に従って組換え発現ベクターを生成することができる。このような技術は、本開示の観点から、当業者に周知である。
【0083】
別の一般的な態様では、本発明は、本明細書に開示されるモノクローナル抗体及び/若しくは二重特異性抗体、又はこれらの抗原結合断片をコードする単離された核酸を含む宿主細胞に関する。本開示の観点から、当業者に知られている任意の宿主細胞を、本明細書に開示される抗体又は抗原結合断片の組換え発現に使用することができる。一部の実施形態では、宿主細胞は、大腸菌TG1若しくはBL21細胞(例えば、scFv又はFab抗体の発現の場合)、CHO-DG44若しくはCHO-K1細胞、又はHEK293細胞(例えば、完全長IgG抗体の発現の場合)である。特定の実施形態によれば、組換え発現ベクターは、組換え核酸が効果的に発現するように宿主細胞ゲノムに安定的に組み込まれる、化学的トランスフェクション、熱ショック、又はエレクトロポレーションなどの従来の方法によって宿主細胞に形質転換される。
【0084】
別の一般的な態様では、本発明は、本明細書に開示される二重特異性抗体又はその抗原結合断片を生成する方法に関する。この方法は、本明細書に開示される二重特異性抗体又はその抗原結合断片を生成する条件下で、二重特異性抗体又はその抗原結合断片をコードする核酸を含む細胞を培養することと、細胞又は細胞培養物から(例えば、上清から)抗体又はその抗原結合断片を回収することとを含む。発現した抗体又はその抗原結合断片を細胞から収集し、当該技術分野において既知の従来の技術に従って、そして、本明細書に記載のとおり精製することができる。
【0085】
使用方法
別の一般的態様では、本発明は、癌細胞の表面上にあるCD123を標的化する方法に関し、この方法は、癌細胞を抗Vβ1717/抗CD123二重特異性抗体又はその抗原結合断片に曝露することを含む。
【0086】
Vβ17及び/又はCD123に結合する二重特異性抗体及びその抗原結合断片の機能活性は、当該技術分野において既知の方法により、そして本明細書に記載のとおり特徴付けることができる。Vβ17及び/又はCD123に結合する抗体及びその抗原結合断片を特徴付けるための方法としては、Biacore、ELISA、及びOctetRedを含む親和性及び特異性アッセイ、FACSによる癌細胞上にあるCD123への抗体の結合を検出する結合アッセイ、CD8+又はCD4+T細胞上にあるVβ17への抗体の結合を検出する結合アッセイが挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態によれば、Vβ17及び/又はCD123に結合する抗体及びその抗原結合断片を特徴付けるための方法としては、以下に記載するものが挙げられる。
【0087】
別の一般的な態様では、本発明は、Vβ17発現CD8+又はCD4+T細胞を癌細胞に指向させる方法に関する。この方法は、Vβ17発現CD8+又はCD4+T細胞を、抗Vβ1717/抗CD123二重特異性抗体又はその抗原結合断片と接触させることを含み、抗体又は抗体断片は、Vβ17発現CD8+又はCD4+T細胞を、CD123を表面上に有する癌細胞に指向させる。
【0088】
別の一般的態様では、本発明は、癌細胞の成長又は増殖を阻害するための方法に関する。この方法は、Vβ17発現CD8+T細胞を、抗Vβ1717/抗CD123二重特異性抗体又はその抗原結合断片と接触させることを含み、癌細胞を抗体又は抗体断片と接触させることは、癌細胞の成長又は増殖を阻害する。
【0089】
本発明の実施形態によれば、記載された抗Vβ1717/抗CD123二重特異性抗体又はその抗原結合断片は、保存又は使用のための緩衝組成物中に提供され得る。記載された抗Vβ1771/抗CD123二重特異性抗体又はその抗原結合断片の保存のための好適な緩衝剤は、保存されている間の劣化を最小限に抑える、抗体若しくは抗体断片の凝集を促進さない、又は保存容器への接着を最小限に抑えることによって、抗体又は抗体断片の安定性を維持することに役立つ。
【0090】
実施形態
本発明は、以下の非限定的な実施形態を提供する。
【0091】
実施形態1は、単離されたVβ17二重特異性抗体又はその抗原結合断片であり、単離されたVβ17二重特異性抗体又はその抗原結合断片は、
a.第1の重鎖(HC1)と、
b.第2の重鎖(HC2)と、
c.第1の軽鎖(LC1)と、
d.第2の軽鎖(LC2)とを含み、
HC1は、LC1と会合し、HC2は、LC2と会合し、HC1は、配列番号1、配列番号2、及び配列番号3のアミノ酸配列をそれぞれ含む重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、HCDR2、及びHCDR3を含み、LC1は、配列番号4、配列番号5、及び配列番号6のアミノ酸配列をそれぞれ含む軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、LCDR2、及びLCDR3を含んで、第1の抗原に対する結合部位を形成し、HC2及びLC2は、第2の抗原に対する結合部位を形成する。
【0092】
実施形態2は、実施形態1に記載のVβ17二重特異性抗体又はその抗原結合断片であり、第1の抗原に対する結合部位は、CD8+又はCD4+T細胞上にあるVβ17に結合する。
【0093】
実施形態3は、実施形態1又は2に記載のVβ17二重特異性抗体又はその抗原結合断片であり、第2の抗原に対する結合部位は、癌細胞の表面上に存在する腫瘍抗原に結合する。
【0094】
実施形態4は、実施形態1~3のいずれか1つに記載のVβ17二重特異性抗体又は抗原結合断片であり、HC1及びLC1は、ヒト化されている。
【0095】
実施形態5は、実施形態1~4のいずれか1つに記載のVβ17二重特異性抗体又はその抗原結合断片であり、HC2及びLC2は、CD123に結合する。
【0096】
実施形態6は、実施形態1~5のいずれか1つに記載のVβ17二重特異性抗体又はその抗原結合断片であり、二重特異性抗体又はその抗原結合断片は、IgGアイソタイプである。
【0097】
実施形態7は、実施形態1~6のいずれか1つに記載のVβ17二重特異性抗体又はその抗原結合断片であり、二重特異性抗体又はその抗原結合断片は、IgG4アイソタイプである。
【0098】
実施形態8は、実施形態1~7のいずれか1つに記載のVβ17二重特異性抗体又はその抗原結合断片であり、二重特異性抗体又はその抗原結合断片は、約0.2pM未満のEC50でインビトロにおいて癌細胞のCD8+又はCD4+T細胞依存性細胞傷害を誘導する。
【0099】
実施形態9は、実施形態1~8のいずれか1つに記載のVβ17二重特異性抗体又はその抗原結合断片のHC1及びLC1をコードする、単離された核酸である。
【0100】
実施形態10は、実施形態1~8のいずれか1つに記載のVβ17二重特異性抗体又はその抗原結合断片のHC2及びLC2をコードする、単離された核酸である。
【0101】
実施形態11は、実施形態9又は実施形態10に記載の単離された核酸を含む、ベクターである。
【0102】
実施形態12は、実施形態11に記載のベクターを含む、宿主細胞である。
【0103】
実施形態13は、実施形態1~8のいずれか1つに記載の単離されたVβ17二重特異性抗体又はその抗原結合断片と、緩衝溶液とを含む、緩衝組成物である。
【0104】
実施形態14は、単離された抗Vβ17/抗CD123二重特異性抗体又はその抗原結合断片であり、単離された抗Vβ17/抗CD123二重特異性抗体又はその抗原結合断片は、
a.第1の重鎖(HC1)と、
b.第2の重鎖(HC2)と、
c.第1の軽鎖(LC1)と、
d.第2の軽鎖(LC2)とを含み、
HC1は、LC1と会合し、HC2は、LC2と会合し、HC1は、配列番号1、配列番号2、及び配列番号3のアミノ酸配列をそれぞれ含む重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、HCDR2、及びHCDR3を含み、LC1は、配列番号4、配列番号5、及び配列番号6のアミノ酸配列をそれぞれ含む軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、LCDR2、及びLCDR3を含んで、Vβ17に特異的に結合する第1の抗原に対する結合部位を形成し、HC2は、配列番号34、配列番号35、及び配列番号36のアミノ酸配列をそれぞれ含む重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、HCDR2、及びHCDR3を含み、LC2は、配列番号37、配列番号38、及び配列番号39のアミノ酸配列をそれぞれ含む軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、LCDR2、及びLCDR3を含んで、CD123に特異的に結合する第2の抗原に対する結合部位を形成する。
【0105】
実施形態15は、実施形態14に記載の単離された抗Vβ17/抗CD123二重特異性抗体又はその抗原結合断片であり、HC1は、配列番号13のアミノ酸配列を含み、LC1は、配列番号14のアミノ酸配列を含み、HC2は、配列番号15のアミノ酸配列を含み、LC2は、配列番号16のアミノ酸配列を含む。
【0106】
実施形態16は、実施形態14又は15に記載の単離された抗Vβ17/抗CD123二重特異性抗体又はその抗原結合断片であり、Vβ17は、CD8+又はCD4+T細胞の表面上にある。
【0107】
実施形態17は、実施形態14~16のいずれか1つに記載の単離された抗Vβ17/抗CD123二重特異性抗体又はその抗原結合断片であり、CD123は、癌細胞の表面上にある。
【0108】
実施形態18は、実施形態14~17のいずれか1つに記載の抗Vβ17/抗CD123二重特異性抗体又はその抗原結合断片であり、二重特異性抗体又はその抗原結合断片は、約0.2pM未満のEC50でインビトロにおいてCD8+又はCD4+T細胞依存性細胞傷害を誘導する。
【0109】
実施形態19は、実施形態14~18のいずれか1つに記載の抗Vβ17/抗CD123二重特異性抗体又はその抗原結合断片のHC1及びLC1をコードする、単離された核酸である。
【0110】
実施形態20は、実施形態14~18のいずれか1つに記載の抗Vβ17/抗CD123二重特異性抗体又はその抗原結合断片のHC2及びLC2をコードする、単離された核酸である。
【0111】
実施形態21は、実施形態19又は実施形態20に記載の単離された核酸を含む、ベクターである。
【0112】
実施形態22は、実施形態21に記載のベクターを含む、宿主細胞である。
【0113】
実施形態23は、実施形態14~18のいずれか1つに記載の抗Vβ17/抗CD123二重特異性抗体又はその抗原結合断片と、緩衝溶液とを含む、緩衝組成物である。
【0114】
実施形態24は、Vβ17発現CD8+又はCD4+T細胞を癌細胞に指向させる方法であり、この方法は、Vβ17発現CD8+又はCD4+T細胞を、実施形態1~8又は14~18のいずれか1つに記載の抗Vβ17/抗CD123二重特異性抗体又はその抗原結合断片と接触させることを含み、Vβ17発現CD8+又はCD4+T細胞を、抗Vβ17/抗CD123二重特異性抗体又はその抗原結合断片と接触させることは、Vβ17発現CD8+又はCD4+T細胞を、CD123を表面上に有する癌細胞に指向させる。
【0115】
実施形態24(a)は、実施形態24に記載の方法であり、Vβ17発現CD8+又はCD4+T細胞は、実施形態1~8又は14~18のいずれか1つに記載の抗Vβ17/抗CD123二重特異性抗体と接触する。
【0116】
実施形態24(b)は、実施形態24に記載の方法であり、Vβ17発現CD8+又はCD4+T細胞は、実施形態1~8又は14~18のいずれか1つに記載の抗Vβ17/抗CD123二重特異性抗体断片と接触する。
【0117】
実施形態25は、表面上でCD123を発現している癌細胞の成長又は増殖を阻害するための方法であり、その方法は、癌細胞を、実施形態1~8又は14~18のいずれか1つと、抗Vβ17/抗CD123二重特異性抗体又はその断片と接触させることを含み、癌細胞を該抗体又は抗体断片と接触させることは、癌細胞の成長又は増殖を阻害する。
【0118】
実施形態25(a)は、実施形態25に記載の方法であり、CD123発現癌細胞は、Vβ17発現CD8+T細胞の存在下にある一方で、抗Vβ17/抗CD123二重特異性抗体又はその断片と接触している。
【0119】
実施形態25(b)は、実施形態25又は25(a)に記載の方法であり、CD123発現癌細胞は、実施形態1~8又は14~18のいずれか1つに記載の抗Vβ17/抗CD123二重特異性抗体と接触する。
【0120】
実施形態25(c)は、実施形態25又は25(a)に記載の方法であり、CD123発現癌細胞は、実施形態1~8又は14~18のいずれか1つに記載の抗Vβ17/抗CD123二重特異性抗体断片と接触する。
【0121】
実施形態26は、実施形態1~8のいずれか1つに記載のVβ17二重特異性抗体又はその抗原結合断片と、そのための包装とを含む、キットである。
【0122】
実施形態27は、実施形態14~18のいずれか1つに記載の抗Vβ17/抗CD123二重特異性抗体又はその抗原結合断片と、そのための包装とを含む、キットである。
【0123】
実施形態28は、Vβ17二重特異性抗体又はその抗原結合断片を生成する方法であり、この方法は、実施形態12に記載の宿主細胞を、Vβ17二重特異性抗体又はその抗原結合断片を生成する条件下で培養することと、Vβ17二重特異性抗体又はその抗原結合断片を細胞又は培養物から回収することとを含む。
【0124】
実施形態29は、実施形態14~18のいずれか1つに記載の抗Vβ17/抗CD123二重特異性抗体又はその抗原結合断片を生成する方法であり、この方法は、実施形態22に記載の宿主細胞を、抗Vβ17/抗CD123二重特異性抗体又はその抗原結合断片を生成する条件下で培養することと、抗Vβ17/抗CD123二重特異性抗体又はその抗原結合断片を細胞又は培養物から回収することとを含む。
【0125】
実施形態30は、単離されたヒト化Vβ17モノクローナル抗体又はその抗原結合断片であり、Vβ17モノクローナル抗体又はその抗原結合断片は、配列番号28のアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0126】
実施形態31は、実施形態30に記載の単離されたヒト化Vβ17モノクローナル抗体又はその抗原結合断片であり、Vβ17モノクローナル抗体又はその抗原結合断片は、配列番号28のアミノ酸配列を含む。
【0127】
実施形態32は、実施形態30又は実施形態31に記載のヒト化Vβ17モノクローナル抗体又はその抗原結合断片をコードする、単離された核酸である。
【0128】
実施形態33は、実施形態32に記載の単離された核酸を含む、ベクターである。
【0129】
実施形態34は、実施形態33に記載のベクターを含む、宿主細胞である。
【0130】
実施形態35は、実施形態30又は実施形態31に記載の単離されたヒト化Vβ17モノクローナル抗体又はその抗原結合断片を含む緩衝組成物である。
【実施例】
【0131】
以下の実施例は、インフルエンザウイルス由来ペプチドM1が、T細胞の選択セットを増殖させることが可能であることを前提とする。これらの細胞は、TCRハプロタイプVβ17を発現し、これらの細胞の大部分は、腫瘍標的細胞の効率的な細胞傷害を示す。次いで、この能力は、1つのアームがVβ17構造に結合し、他方のアームが癌細胞によって発現される抗原に結合するように構築された二重特異性抗体を使用して利用される。したがって、二重特異性抗体は、エフェクタ及び標的細胞を一緒に架橋し、癌細胞殺傷をもたらす。この作用機構は、
図1に概説される概略図に記載される。
【0132】
次の実施例は、(1)CTL上にあるT細胞受容体(T-cell receptor、TCR)のVβ17アームに結合することが可能な二重特異性抗体の生成(実施例1及び2)、並びに(2)インビトロで増殖させたCTLによる二重特異性抗体により可能になった標的細胞殺傷の証拠(実施例3)のカテゴリに分けることができる。
【0133】
実施例1:抗Vβ17mAb E17.5Fのヒトフレームワーク適合
マウスIgG1抗ヒトT細胞受容体Vβ17クローンE17.5FをBeckmanCoulter,Inc(Brea,CA)から得た。試料調製及びLC/MSMS分析を、Protea Bioscience Inc.(Morgantown,WV)で行った。試料を還元し、アルキル化し、7つのアリコートに分割し、トリプシン/LysC、キモトリプシン、LysC、ペプシン、及びAspN、エラスターゼ、及びプロテイナーゼK酵素でタンパク分解した。得られたペプチドを、ZipTip C18ピペットチップを用いて脱塩し、逆相クロマトグラフィを用いてオンラインで分離した。HCDフラグメンテーションを使用して、Thermo Q-Exactive分光計で質量分析を行った。MSデータセットを、デノボ配列タグをIMGTベースの抗体配列データベースにマッチさせることによって、PEAKSソフトウェアを使用して分析した。配列中のギャップは、デノボ同定されたペプチドのContig配列アセンブリを使用して割り当てた。全てのCDR及び超変異は、MS/MSスペクトルを検査することによって確認された。
【0134】
得られた配列を表1及び2に示す。
【0135】
【0136】
【0137】
二重特異性抗体の調製のための配列において変更を行った(表3)。この変化には、(1)重鎖のフレームワーク突然変異Asn1が保存されておらず、そのため、配列をDVQLW配列を有するように改変し、(2)Fcで同定された別の変異、K337Yは、特徴的ではないと見なされ、したがって、この変異を有さない構築物を合成し、(3)重鎖上の潜在的な二級グリコシル化部位が観察され、したがって、N-結合部位(Chothia番号付けに基づくN82a)を有する及び有さないこのmAbの2つのバージョンを合成したこと、が含まれる。
【0138】
【0139】
2つの抗体(B17B1及びB17B2)をHEK293Expi細胞で発現させた。上清をVβ17結合(B17B1及びB17B2)について試験し、B17B1のみが結合を示した。したがって、Fc置換を有するIgG4定常領域を有するB17B1を発現させた。
【0140】
抗ヒトTCR Vβ17マウスmAb B17B1は、ヒトフレームワーク適応(HFA)法(Fransson J,et al.J.Mol.Biol.2010;398:214-231)を使用してヒト化した。ヒト化重鎖及び軽鎖の最良の組み合わせを見つけるために、いくつかのヒトV領域配列を試験のために選択した(表4)。ヒト生殖細胞系列の選択は、フレームワーク(FR)領域におけるマウス抗体との全体的な配列類似性にのみ基づいた。CDR配列も、その長さ又は標準構造も、この選択には考慮しなかった。
【0141】
HFAで使用されるCDR定義は、(Fransson J,et al.J.Mol.Biol.2010;398:214-231))に記載され、Martinの定義(Abhinandan KR and Martin AC.Mol.Immunol.2008;45:3832-3839)に対応する。CDR(表1)は、以下のように定義される(Chothia番号付けスキーム[Chothia C,and Lesk A.J.Mol.Biol.1987;196:901-917.]を使用)
HCDR1(配列番号1) 26~35
HCDR2(配列番号2) 50~58
HCDR3(配列番号3) 95~102
LCDR1(配列番号4) 24~34
LCDR2(配列番号5) 50~56
LCDR3(配列番号6) 89~97
【0142】
選択されたヒト生殖細胞系列を表4(IMGT表記で)に提供する。
【0143】
【0144】
いくつかの変異体における「復帰突然変異」は、VL/VH対形成及びCDR構造に重要であることが知られているFR位置に導入した。選択されたヒト生殖細胞系列を表5(IMGT表記で)に提供し、復帰突然変異が記載されている。
【0145】
【0146】
3つの重鎖及び3つの軽鎖の全9つの対の組み合わせのアミノ酸配列をDNAに逆翻訳し、遺伝子合成技術(米国特許第6,670,127号;同第6,521,427号)を使用してcDNAを調製した。CMVプロモータを含む自社製発現ベクターを使用し、標準的な分子生物学的手法を使用して、重鎖(HC)可変領域を、ヒトIgG4定常領域上にサブクローニングした。CMVプロモータを含む自社製発現ベクターを使用し、標準的な分子生物学的手法を使用して、軽鎖(LC)可変領域を、ヒトラムダ(λ)定常領域上にサブクローニングした。得られたプラスミドをHEK EXPI細胞(LifeTechnologies、カリフォルニア州カールズバッド)にトランスフェクトし、mAbを発現させた。プロテインAカラム(hiTrap MAbSelect SuReカラム)を使用する標準的な方法により精製した。溶出後、プールを、D-PBS、pH7.2の中に透析した。
【0147】
【0148】
ヒト化抗体を、TCRVβ17(配列番号27)/Va10.2-Fc(配列番号44)融合タンパク質への結合について、ELISAによりスクリーニングした。ビオチン化TCRVβ17/Va10.2-Fc融合タンパク質をストレプトアビジンでコーティングしたELISAプレートに添加した。非結合タンパク質を洗い流し、mAbを濃度範囲(0.01~10μg/mL)で添加した。プレートを洗浄し、抗カッパ:HRP検出抗体を添加した。プレートを洗浄し、化学発光検出試薬を添加し、発光についてPerkin Elmer EnVisionプレートリーダーでプレートを読み取った。B17B20及びB17B21は、TCR Vβ17タンパク質への陽性の結合を示した。B17B22は、このタンパク質への弱い結合を示した。次いで、更なる研究のために、これらの抗体を上記のように精製した。B17B21は、組換えTCR Vβ17タンパク質及びM1刺激T細胞への最良の結合を示し、したがって、更なる機能的研究、具体的には、二重特異性抗体としてT細胞再指向性癌細胞殺傷のための分子として選択された。
【0149】
したがって、B17B21(抗Vβ17)及びI3RB217(抗CD123抗体)の可変領域配列を使用して、急性骨髄性白血病(AML)細胞のT細胞再指向性殺傷について試験される二重特異性抗体を生成した。
【0150】
実施例2.抗Vβ17/抗CD123二重特異性抗体の調製
VB11(抗Vβ17/抗CD123)及びVB13(Vβ17×ヌル)二重特異性抗体を、前述のように、ヒトIgG4として、knob-into-hole形式の完全長抗体として生成した(Atwell et al.J.Mol.Biol.270:26-35,1997)。可変領域をコードする核酸配列を、標準的なPCR制限酵素ベースのクローニング技術を使用して、IgG4発現カセットの定常領域を含有するカスタム哺乳動物発現ベクターにサブクローニングした。二重特異性抗体は、中国ハムスター卵巣細胞株において一過性トランスフェクションによって発現させた。抗体を、Mab Select SuRe Protein Aカラム(GE healthcare、Piscataway,New Jersey)(Brown,Bottomley et al.1998)によって最初に精製した。カラムをpH7.2のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で平衡化し、2mL/分の流速で発酵上清を装填した。装填後、カラムをPBS(4CV)で洗浄し、続いてpH3.5の30mMの酢酸ナトリウムで溶出させた。Akta Explorer(GE healthcare)において280nmでの吸収度によって監視したタンパク質ピークを含有する画分を一緒にプールし、pH9.0の1%の3M酢酸ナトリウムを添加することによりpH5.0に中和した。研磨工程として、Superdex 200カラム(GE Healthcare)を使用して、予備的サイズ排除クロマトグラフィ(size exclusion chromatography、SEC)で抗体を精製した。試料の完全性を、エンドトキシン測定及びSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動により、還元及び非還元条件下で評価した。最終タンパク質濃度は、抗Vβ17/抗CD123に対して0.48mg/ml、Vβ17×ヌルに対して0.24mg/mLであった。これらのタンパク質濃度に基づく抗Vβ17/抗CD123及びVβ17×ヌルの最終EU濃度は、それぞれ、2.053EU/mg及び4.219EU/mgであった。
【0151】
【0152】
【0153】
【0154】
【0155】
【0156】
実施例3.Kasumi-3細胞及びヒトCD8
+T細胞を使用する抗Vβ17/抗CD123二重特異性抗体の結合及び細胞傷害性特性の評価
総PBMCからのVβ17
+CD8
+T細胞の刺激及び増殖
Vβ17
+CD8
+T細胞を増殖させるために、HLA A2ドナー(HPU-08694)からの全PBMCを、1μg/mLのFLU MP58ペプチド(DMSO中)で刺激した。総CD8
+T細胞間のVβ17
+細胞の頻度を、培養期間の8日目及び14日目に決定した。総CD8
+T細胞間でVβ17
+細胞の頻度を計数するために、総生PBMCを最初にゲートし、ダブレットを除外し、総CD8
+T細胞をゲートし、次いでVβ17
+細胞をゲートした(
図3A)。0日目の総CD8
+T細胞間のVβ17
+細胞の頻度と比較して、これらの細胞の大幅な増殖が培養期間の8日目に観察された(
図3B)。8日目のCD8
+T細胞のより大きな画分は、このドナーにおけるVβ17
+細胞(
図3B)であった。
【0157】
抗Vβ17/抗CD123二重特異性抗体結合アッセイ
Kasumi-3細胞上
抗Vβ17/抗CD123二重特異性抗体の結合動態を理解するために、Kasumi-3細胞を、抗Vβ17/抗CD123二重特異性抗体及びVβ17×ヌルアーム対照と共に様々な濃度(濃度範囲5μg/mL~0μg/mL)でインキュベートした。細胞結合二重特異性抗体を、マウス抗ヒトIgG4 Fc-PE二次抗体で検出した。表9は、異なる濃度の二重特異性抗体で処理した場合の、PE(二次抗体)に対して陽性のKasumi-3細胞の頻度を示す。抗Vβ17/抗CD123及びヌル×CD123のEC50をそれぞれ6及び42.7nMと決定した(表9)。
【0158】
【0159】
Kasumi-3細胞に対する二重特異性抗体結合親和性を、フローサイトメトリによって決定した。最大結合(PE陽性細胞)の50%を生む二重特異性濃度として、最大半量効果濃度(EC50)値を計算した。ND:未測定。
【0160】
濃縮されたCD8+T細胞上
濃縮されたFLU MP58ペプチド刺激CD8+T(14日目の培養から)を、様々な濃度の抗Vβ17/抗CD123二重特異性及びVβ17×ヌルアーム対照抗体と共にインキュベートした。マウス抗ヒトIgG4 Fc-PE二次抗体を使用して、二重特異性抗体を検出した。表10は、異なる濃度の二重特異性抗体で処理した場合の、PE(二次抗体)に対して陽性のCD8+T細胞の頻度を示す。抗Vβ17/抗CD123、Vβ17×ヌルのEC50を、それぞれ9.0nm及び18.7nmと決定した(表10)。
【0161】
【0162】
CD8+T細胞に対する二重特異性抗体結合親和性を、フローサイトメトリによって決定した。最大結合(PE陽性細胞)の50%を生む抗体濃度として、最大半量効果濃度(EC50)値を計算した。ND:未測定
【0163】
二重特異性媒介性細胞傷害アッセイ
抗Vβ17/抗CD123二重特異性抗体媒介性細胞傷害の有効性を分析するために、CFSE標識された標的(Kasumi-3)細胞を、様々な濃度の抗Vβ17/抗CD123二重特異性及びVβ17×ヌルアーム対照抗体を用いて、0.5:1、1:1、5:1のエフェクタ対標的(ET)比で14及び24時間、培養14日目から刺激CD8+T細胞と共培養した。市販の抗CD123抗体を使用して、標的Kasumi-3細胞上でのCD123発現を調べた。標的細胞(Kasumi-3)をCFSEで標識して、フローサイトメトリ分析中にCFSE+として同定した。共培養期間後、7-AADを添加して、細胞傷害の指標として7-AAD+CFSE+細胞の割合を分析した。二重特異性抗体の不在下で観察された基礎細胞傷害を減じて、二重特異性抗体に応答して特異的な細胞傷害を得た。アッセイは、単一ドナー(HPU-08694)で1回実施した。14時間の時点で、0.5:1、1:1、及び5:1のET比での抗Vβ17/抗CD123二重特異性抗体のEC50は、それぞれ3.7、0.1、及び0.133pMであった(表11)。
【0164】
【表11】
UD:適切な曲線適合に対して活性が低すぎるため、検出不可能である。
【0165】
24時間の時点で、0.5:1、1:1、及び5:1のET比での抗Vβ17/抗CD123二重特異性のEC50は、それぞれ0.4、0.2、及び1.0pMであった(表12)。
【0166】
【0167】
同様に、抗Vβ17/抗CD123二重特異性媒介性非刺激CD8+T細胞毒性を、14(表13)及び24(表14)時間、ET比0.5:1、1:1、5:1で試験した。5ng/mlの抗Vβ17/抗CD123二重特異性濃度及び14時間の時点で、0.5:1及び1:1のET比での非刺激CD8+T細胞は、刺激CD8+T細胞による77%及び73%の細胞毒性と比較して、それぞれ2.8%及び9.8%の標的細胞傷害を示した(表13)。5:1のET比では、非刺激CD8+T細胞は、刺激CD8+T細胞による70.9%と比較して、31.65%の標的細胞傷害を示した。同様の結果を24時間の時点から得た(表12、15、16、及び17)。試験された抗Vβ17/抗CD123二重特異性の最も高い濃度(5ng/ml)では、非刺激CD8+T細胞は、より高いET比で標的細胞に対してより高い細胞傷害を示した。
【0168】
【0169】
【0170】
【0171】
最大細胞毒性(CFSE+7AAD+)細胞の50%を生む抗体濃度として、最大半量効果濃度(EC50)値を計算した。ND:未測定。
【0172】
【0173】
最大細胞毒性(CFSE+7AAD+)細胞の50%を生む抗体濃度として、最大半量効果濃度(EC50)値を計算した。ND:未測定
【0174】
【0175】
最大細胞毒性(CFSE+7AAD+)細胞の50%を生む抗体濃度として、最大半量効果濃度(EC50)値を計算した。UD:検出不可能。
【0176】
当業者は、広い発明概念から逸脱することなく前述の実施形態に変更を行うことができることを理解するであろう。したがって、本発明は、開示された特定の実施形態に制限されず、本説明によって定義されるように本発明の趣旨及び範囲内の修正を包含することを意図するものと理解される。
【0177】
【0178】
【0179】
【0180】
【0181】
【0182】
【0183】
【0184】
【0185】
【0186】
【表18-10】
以下に、本願の当初の特許請求の範囲に記載の発明を列挙する。
[発明1]
単離されたVβ17二重特異性抗体又はその抗原結合断片であって、
a.第1の重鎖(HC1)と、
b.第2の重鎖(HC2)と、
c.第1の軽鎖(LC1)と、
d.第2の軽鎖(LC2)とを含み、
HC1が、LC1と会合し、HC2が、LC2と会合し、HC1が、配列番号1、配列番号2、及び配列番号3のアミノ酸配列をそれぞれ含む重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、HCDR2、及びHCDR3を含み、LC1が、配列番号4、配列番号5、及び配列番号6のアミノ酸配列をそれぞれ含む軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、LCDR2、及びLCDR3を含んで、第1の抗原に対する結合部位を形成し、HC2及びLC2が、第2の抗原に対する結合部位を形成している、
前記単離されたVβ17二重特異性抗体又はその抗原結合断片。
[発明2]
前記第1の抗原に対する前記結合部位が、CD8+又はCD4+T細胞上にあるVβ17に結合する、発明1に記載のVβ17二重特異性抗体又はその抗原結合断片。
[発明3]
前記第2の抗原に対する前記結合部位が、癌細胞の表面上に存在する腫瘍抗原に結合する、発明1又は2に記載のVβ17二重特異性抗体又はその抗原結合断片。
[発明4]
HC1及びLC1が、ヒト化されている、発明1~3のいずれか一つに記載のVβ17二重特異性抗体又は抗原結合断片。
[発明5]
HC2及びLC2が、CD123に結合する、発明1~4のいずれか一つに記載のVβ17二重特異性抗体又はその抗原結合断片。
[発明6]
前記二重特異性抗体又はその抗原結合断片が、IgGアイソタイプである、発明1~5のいずれか一つに記載のVβ17二重特異性抗体又はその抗原結合断片。
[発明7]
前記二重特異性抗体又はその抗原結合断片が、IgG4アイソタイプである、発明1~6のいずれか一つに記載のVβ17二重特異性抗体又はその抗原結合断片。
[発明8]
前記二重特異性抗体又はその抗原結合断片が、約0.2pM未満のEC
50
でインビトロにおいて癌細胞のCD8+又はCD4+T細胞依存性細胞傷害を誘導する、発明1~7のいずれか一つに記載のVβ17二重特異性抗体又はその抗原結合断片。
[発明9]
発明1~8のいずれか一つに記載のVβ17二重特異性抗体又はその抗原結合断片の前記HC1及び前記LC1をコードする、単離された核酸。
[発明10]
発明1~8のいずれか一つに記載のVβ17二重特異性抗体又はその抗原結合断片の前記HC2及び前記LC2をコードする、単離された核酸。
[発明11]
発明9又は10に記載の単離された核酸を含む、ベクター。
[発明12]
発明11に記載のベクターを含む、宿主細胞。
[発明13]
単離された抗Vβ17/抗CD123二重特異性抗体又はその抗原結合断片であって、
a.第1の重鎖(HC1)と、
b.第2の重鎖(HC2)と、
c.第1の軽鎖(LC1)と、
d.第2の軽鎖(LC2)とを含み、
HC1が、LC1と会合し、HC2が、LC2と会合し、HC1が、配列番号1、配列番号2、及び配列番号3のアミノ酸配列をそれぞれ含む重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、HCDR2、及びHCDR3を含み、LC1が、配列番号4、配列番号5、及び配列番号6のアミノ酸配列をそれぞれ含む軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、LCDR2、及びLCDR3を含んで、Vβ17に特異的に結合する第1の抗原に対する結合部位を形成し、HC2が、配列番号34、配列番号35、及び配列番号36のアミノ酸配列をそれぞれ含む重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、HCDR2、及びHCDR3を含み、LC2が、配列番号37、配列番号38、及び配列番号39のアミノ酸配列をそれぞれ含む軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、LCDR2、及びLCDR3を含んで、CD123に特異的に結合する第2の抗原に対する結合部位を形成している、
前記単離された抗Vβ17/抗CD123二重特異性抗体又はその抗原結合断片。
[発明14]
HC1が、配列番号13のアミノ酸配列を含み、LC1が、配列番号14のアミノ酸配列を含み、HC2が、配列番号15のアミノ酸配列を含み、LC2が、配列番号16のアミノ酸配列を含む、発明13に記載の単離された抗Vβ17/抗CD123二重特異性抗体又はその抗原結合断片。
[発明15]
前記Vβ17が、CD8+又はCD4+T細胞の表面上にある、発明13又は14に記載の単離された抗Vβ17/抗CD123二重特異性抗体又はその抗原結合断片。
[発明16]
前記CD123が、癌細胞又はCD34+幹細胞の表面上にある、発明13~15のいずれか一つに記載の単離された抗Vβ17/抗CD123二重特異性抗体又はその抗原結合断片。
[発明17]
二重特異性抗体又はその抗原結合断片が、約0.2pM未満のEC
50
でインビトロにおいて癌細胞のCD8+又はCD4+T細胞依存性細胞傷害を誘導する、発明13~16のいずれか一つに記載の単離された抗Vβ17/抗CD123二重特異性抗体又はその抗原結合断片。
[発明18]
発明13~17のいずれか一つに記載の抗Vβ17/抗CD123二重特異性抗体又はその抗原結合断片の前記HC1及びLC1をコードする、単離された核酸。
[発明19]
発明13~18のいずれか一つに記載の抗Vβ17/抗CD123二重特異性抗体又はその抗原結合断片の前記HC2及びLC2をコードする、単離された核酸。
[発明20]
発明18又は19に記載の単離された核酸を含む、ベクター。
[発明21]
発明20に記載のベクターを含む、宿主細胞。
[発明22]
発明13~17のいずれか一つに記載の単離された抗Vβ17/抗CD123二重特異性抗体又はその抗原結合断片を含む、緩衝組成物。
[発明23]
Vβ17発現CD8+又はCD4+T細胞を癌細胞に指向させる方法であって、Vβ17発現CD8+又はCD4+T細胞を、発明13に記載の抗Vβ17/抗CD123二重特異性抗体又はその抗原結合断片と接触させることを含み、前記Vβ17発現CD8+又はCD4+T細胞を、前記抗Vβ17/抗CD123二重特異性抗体又はその抗原結合断片と接触させることが、前記Vβ17発現CD8+又はCD4+T細胞を癌細胞に指向させる、前記方法。
[発明24]
癌細胞の成長又は増殖を阻害するための方法であって、前記癌細胞を、発明13に記載の抗Vβ17/抗CD123二重特異性抗体又はその抗原結合断片と接触させることを含み、前記癌細胞を前記抗Vβ17/抗CD123二重特異性抗体又はその抗原結合断片と接触させることが、前記癌細胞の前記成長又は増殖を阻害する、前記方法。
[発明25]
前記癌細胞が、CD123発現癌細胞である、発明23又は24に記載の方法。
[発明26]
発明1~8のいずれか一つに記載のVβ17二重特異性抗体又はその抗原結合断片と、そのための包装とを含む、キット。
[発明27]
発明13~17のいずれか一つに記載の抗Vβ17/抗CD123二重特異性抗体又はその抗原結合断片と、そのための包装とを含む、キット。
[発明28]
Vβ17二重特異性抗体又はその抗原結合断片を生成する方法であって、発明12に記載の宿主細胞を培養して、前記Vβ17二重特異性抗体又はその抗原結合断片を生成することと、前記Vβ17二重特異性抗体又はその抗原結合断片を前記細胞又は培養物から回収することとを含む、前記方法。
[発明29]
抗Vβ17/抗CD123二重特異性抗体又はその抗原結合断片を生成する方法であって、発明21に記載の宿主細胞を培養して、前記抗Vβ17/抗CD123二重特異性抗体又はその抗原結合断片を生成することと、前記抗Vβ17/抗CD123二重特異性抗体又はその抗原結合断片を前記細胞又は培養物から回収することとを含む、前記方法。
[発明30]
単離されたヒト化Vβ17モノクローナル抗体又はその抗原結合断片であって、前記ヒト化Vβ17モノクローナル抗体又はその抗原結合断片が、配列番号28のアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、前記単離されたヒト化Vβ17モノクローナル抗体又はその抗原結合断片。
[発明31]
前記ヒト化Vβ17モノクローナル抗体又はその抗原結合断片が、配列番号28のアミノ酸配列を含む、発明30に記載の単離されたヒト化Vβ17モノクローナル抗体又はその抗原結合断片。
[発明32]
発明30又は31に記載の単離されたヒト化Vβ17モノクローナル抗体又はその抗原結合断片をコードする、単離された核酸。
[発明33]
発明32に記載の単離された核酸を含む、ベクター。
[発明34]
発明33に記載のベクターを含む、宿主細胞。
【配列表】