(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】半芳香族ポリエーテルの合成プロセス
(51)【国際特許分類】
C08G 65/40 20060101AFI20241007BHJP
C09D 171/10 20060101ALI20241007BHJP
【FI】
C08G65/40
C09D171/10
(21)【出願番号】P 2021557213
(86)(22)【出願日】2020-04-03
(86)【国際出願番号】 EP2020059623
(87)【国際公開番号】W WO2020201532
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2023-01-10
(32)【優先日】2019-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】591169401
【氏名又は名称】ロケット フレール
【氏名又は名称原語表記】ROQUETTE FRERES
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】ジャック、ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】デグラ、サラ
(72)【発明者】
【氏名】メルシエ、レジス
【審査官】赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-533916(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0186624(US,A1)
【文献】特表2017-525818(JP,A)
【文献】特公昭42-007799(JP,B1)
【文献】特表2021-535247(JP,A)
【文献】特開2010-070658(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 65/00- 67/04
C09D 171/00-171/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールをベースとした半芳香族ポリエーテルの調製方法であって、以下の連続工程:
a) 有機溶媒中に脂肪族ジオール又は脂肪族ジオールの混合物、ジハロゲン化芳香族又はヘテロ芳香族化合物、ヒンダード強塩基を含む混合物を調製する工程、及び
b) 前記混合物を30℃~120℃の温度で12時間以下の時間加熱する工程、を含
み、
前記ヒンダード強塩基が、カリウムtert-ブチレート、ナトリウムtert-ブチレート、リチウムtert-ブチレート、カリウムtert-ペンチレート、ナトリウムtert-ペンチレート、カリウムトリメチルシラノレート、ナトリウムトリメチルシラノレート、リチウムトリメチルシラノレート、カリウムテトラメチルピペリジド、リチウムテトラメチルピペリジド、カリウムビス(トリメチルシリル)アミド、及びリチウムビス(トリメチルシリル)アミドから選択されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記脂肪族ジオールが、直鎖状脂肪族ジオール、分岐状脂肪族ジオール、及び環状脂肪族ジオールから選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記環状脂肪族ジオールが、前記1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールから選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ジハロゲン化芳香族又はヘテロ芳香族化合物が、ジハロゲン化芳香族スルホン、ジハロゲン化芳香族ケトン、ジハロゲン化ベンゾニトリル、ジハロゲン化ジアゼン、ビス(ハロフェニル)オキサジアゾール、ジハロゲン化ニトロベンゼン、ジハロゲン化ベンゾイルナフタレン、及びジハロゲン化ピリジンから選択されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ヒンダード強塩基/脂肪族ジオールのモル比が、1~3であることを特徴とする、請求項1~
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記有機溶媒が、極性非プロトン性溶媒又は極性非プロトン性溶媒の混合物であることを特徴とする、請求項1~
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
脂肪族ジオール/ジハロゲン化芳香族化合物のモル比が、0.5~1.5であることを特徴とする、請求項1~
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
式I:
【化1】
[式中、Arは、ジハロゲン化芳香族又はヘテロ芳香族化合物に由来し、
Rは、脂肪族ジオールに由来し、
Xはハロゲンであり、
nは2~100の整数であり、nはサイズ排除クロマトグラフィーによって決定される。]の脂肪族ジオールをベースとした半芳香族ポリエーテル
を得る、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記Rが、直鎖状脂肪族ジオール及び分岐状脂肪族ジオールから選択される脂肪族ジオールに由来することを特徴とする、請求項
8に記載の
方法。
【請求項10】
前記Rが、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールに由来することを特徴とする、請求項
8に記載の
方法。
【請求項11】
前記式Iの脂肪族ジオールをベースとした半芳香族ポリエーテルの多分散指数が1.5~5であることを特徴とする、請求項
8~
10のいずれか一項に記載の
方法。
【請求項12】
前記式Iの脂肪族ジオールをベースとした半芳香族ポリエーテルの数平均分子量が5,000g/mol以上であることを特徴とする、請求項
8~
11のいずれか一項に記載の
方法であって、前記数平均分子量が、70℃のジメチルホルムアミド中、0.7mL/分の流速、ポリスチレン較正を用いたサイズ排除クロマトグラフィーによって測定される、
方法。
【請求項13】
前記式Iの脂肪族ジオールをベースとした半芳香族ポリエーテルが100℃を超えるガラス転移温度を有することを特徴とする、請求項
8~
12のいずれか一項に記載の
方法。
【請求項14】
前記Xが塩素であることを特徴とする、請求項
8~
13のいずれか一項に記載の
方法。
【請求項15】
前記式Iの脂肪族ジオールをベースとした半芳香族ポリエーテルが100ppm未満の残留フッ素含有量を含むことを特徴とする、請求項
14に記載の
方法。
【請求項16】
前記式Iの脂肪族ジオールをベースとした半芳香族ポリエーテルが10~1,000ppmの残留ケイ素含有量を含むことを特徴とする、請求項
14に記載の
方法。
【請求項17】
前記式Iの脂肪族ジオールをベースとした半芳香族ポリエーテルが100~10,000ppmの残留塩素含有量を含むことを特徴とする、請求項
14に記載の
方法。
【請求項18】
膜、製造部品、及びコーティングの製造のため
に、
前記式Iの脂肪族ジオールをベースとした半芳香族ポリエーテルが使用される、請求項
8~
17のいずれか一項に記載の
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーの分野に関し、脂肪族ジオールをベースとした半芳香族ポリエーテルの合成方法、方法によって得られる脂肪族ジオールをベースとした半芳香族ポリエーテル、及び脂肪族ジオールをベースとした半芳香族ポリエーテルの膜、製造部品、及びコーティングの製造のための使用に関する。
【0002】
従来技術
芳香族の求核置換によって得られるポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、及びポリエーテルベンゾニトリルなどの芳香族ポリエーテルは、それらの優れた熱安定性と機械的特性により、高性能ポリマーとして認識されている。これらのポリマーの主な用途は、液相及び気相の分離膜である。市販で入手可能なポリエーテルスルホンは、特に、ビスフェノールA又は4,4’-ジヒドロキシフェニルなどの芳香族ジオールとジクロロジフェニルスルホンから合成される。したがって、製造業者は、内分泌攪乱物質であることが知られているビスフェノールAなどの芳香族ジオールを部分的に又は完全に脂肪族ジオールで置換することに注意を払ってきている。
【0003】
イソヘキシド、又は1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールは、糖に由来する剛性の二環式キラルジオールである。特に、イソソルビドは、グルコースの水素化反応に由来するソルビトールの二重脱水反応から得られる。イソヘキシドは、プラスチック産業など様々な分野での用途を有する多くの化合物の合成において一般に好まれる中間体であり、したがって、石油化学由来の対応物に置き換わっている。
【0004】
このように、Kricheldorfらは最初に、シリル化イソソルビドとジフルオロジフェニルスルホンからのイソソルビド含有ポリエーテルスルホンの調製と特徴付けを記載した(H.Kricheldorfら,J.Polymer Sci.,Part A:Polym.Chem,1995,33,2667~2671)。
【0005】
シリル化イソソルビドは高価であることから、KricheldorfとChattiは彼らの重合条件を変更して、炭酸カリウム存在下での非官能化イソソルビドとジフルオロジフェニルスルホンからのイソソルビド含有ポリエーテルスルホンの合成を記載した(S.Chattiら,High Perform.Polym.,2009,21,105~118)。
【0006】
国際特許出願第2013/023997A1号には、イソソルビドをベースとした芳香族ポリエーテルケトンの調製方法が記載されている。その方法は、210℃の温度、炭酸カリウムの存在下での4,4’-ジフルオロベンゾフェノンとイソソルビドとの間の反応を含む。
【0007】
国際特許出願第2014/072473A2号には、イソソルビドをベースとした芳香族ポリエーテルスルホンの調製方法が記載されている。その方法は、210℃の温度、炭酸カリウムの存在下でのジフルオロジフェニルスルホン又は任意でのフッ素化剤の存在下におけるジクロロジフェニルスルホンとイソソルビドとの反応を含む。
【0008】
米国特許出願第2015/0129487A1号には、シクロヘキサンジメタノール、1,5-シクロオクタンジオール、又はテトラメチルシクロブタンジオールなどの非芳香族環状ジオールをベースとした半芳香族ポリエーテルスルホンの調製方法が記載されている。その方法は、最低温度160℃、炭酸カリウム存在下での4,4’-ジフルオロジフェニルスルホンと非芳香族環状ジオールとの間の反応、及び最低温度210~215℃、炭酸カリウム存在下での4,4’-ジクロロジフェニルスルホンと非芳香族環状ジオールとの間の反応を含む。
【0009】
膜における用途の観点から、ポリスルホンの親水性を改善するために、一部の研究者は、ポリスルホンとPEG又はPEOとの共重合を試みてきた。共重合は、ビスフェノールA(H.W.Kimら,Journal of Membrane Science,vol.372,No.1,p.116~124,2011)、フルオレン-9-ビスフェノール(K.M.Diederichsenら,Macromolecules,vol.50,No.10,p.3831~3840,2017)、ヒドロキシフェニルフルオレン(H.J.Leeら,Journal of Membrane Science,vol.485,p.10~16,2015)又はビスフェノールAF(L.Jujie,X.Heら,J.Polym.Res,vol.24,no.1,p.1,2017)において統計的である。一般に、高温でジクロロジフェニルスルホンを使用した場合、オリゴマーのみが得られる(Mn=4,000~13,000g/mol)。ポリスルホン合成の従来の条件下でジフルオロジフェニルスルホンを使用した場合、高分子量のポリマーが得られる。
【0010】
2つのブロック間の求核芳香族置換(L.H.Hancockら,Biomaterials,vol.21,no.7,p.725~733,2000)又は強塩基であるNaHの存在下でのポリマーとPEGオリゴマーとの間のエステル交換(L.Wangら,Polymer Chemistry,vol.5,no.8,p.2836~2842,2014.)によるブロック共重合もまた検討されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、ジオールの反応性はビスフェノール(例えば、ビスフェノールA)と比較して低いため、従来技術のジオールとジクロロジフェニルスルホンをベースとしたポリエーテルスルホンの調製方法では、K2CO3などの弱塩基の存在下で高温(210~215℃)で加熱するか、又は温度を温和にすることができるNaHなどの強塩基の使用が必要になる。しかしながら、強塩基は、ジハロゲン化ジフェニルスルホンの副次的な加水分解反応を引き起こすことが知られている(R.N.Johnson,A.G.Farnham,J.Polym.Sci.A-1 Polym.Chem.,vol.5,no.9,p.2415~2427,1967)
【0012】
技術的問題
これらの既知の解決策は、反応性ではあるが高価なモノマーであるジフルオロジフェニルスルホン、又は反応温度が高く反応時間の長いジクロロジフェニルスルホンのいずれかを必要とするという欠点を有する。これらの既知の解決策は、工業的観点から、生産性、収益性、及びエネルギー節約の点で不利である。
【0013】
したがって、高価なモノマーも高温も長い反応時間も必要とせず、数平均分子量が高いポリマーを得ることができる脂肪族ジオールをベースとした半芳香族ポリエーテルの調製方法が必要とされている。
【0014】
本発明は、脂肪族ジオールをベースとした芳香族求核置換によって、高温で長時間加熱する必要がなく、高い数平均分子量を有する半芳香族ポリエーテルを得ることができるという点で状況を改善する。
【0015】
本発明は、以下の連続工程を含む脂肪族ジオールをベースとした半芳香族ポリエーテルの調製方法に関する:
a)有機溶媒中に脂肪族ジオール又は脂肪族ジオールの混合物、ジハロゲン化芳香族又はヘテロ芳香族化合物、ヒンダード強塩基を含む混合物を調製する工程、及び
b)混合物を30℃~120℃の温度で12時間以下の時間で加熱する工程。
【0016】
本発明はまた、方法によって得られる式Iの脂肪族ジオールをベースとした半芳香族ポリエーテルにも関する。
【0017】
【化1】
式中、
Arは、ジハロゲン化芳香族又はヘテロ芳香族化合物に由来し、
Rは、脂肪族ジオールに由来し、
Xはハロゲンであり、
nは2~100の整数であり、nはサイズ排除クロマトグラフィーによって決定される。
【0018】
本発明はまた、膜、製造部品、及びコーティングの製造のための本発明の半芳香族ポリエーテルの使用にも関する。
【0019】
以下の段落に開示する特徴は、任意で満たすことができる。それらは、互いに独立して、又は互いに組み合わせて満たすことができる。
【0020】
一実施形態において、本発明の方法の工程a)で使用される脂肪族ジオールは、直鎖状脂肪族ジオール、分岐状脂肪族ジオール、及び環状脂肪族ジオールから選択される。
【0021】
一実施形態において、本発明の方法の工程a)で使用される脂肪族ジオールは、分岐状脂肪族ジオールである。
【0022】
一実施形態において、本発明の方法の工程a)で使用される脂肪族ジオールは、環状脂肪族ジオールである。
【0023】
一実施形態において、本発明の方法の工程a)で使用される直鎖状ジオールは、直鎖状脂肪族ジオールである。
【0024】
一実施形態において、本発明の方法の工程a)で使用される脂肪族ジオールは、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールから選択される。
【0025】
一実施形態において、本発明の方法の工程a)で使用される1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールは、イソソルビドである。
【0026】
一実施形態において、本発明の方法の工程a)で使用されるジハロゲン化芳香族又はヘテロ芳香族化合物は、ジハロゲン化芳香族スルホン、ジハロゲン化芳香族ケトン、ジハロゲン化ベンゾニトリル、ジハロゲン化ジアゼン、ビス(ハロフェニル)オキサジアゾール、ジハロゲン化ニトロベンゼン、ジハロゲン化ベンゾイルナフタレン、及びジハロゲン化ピリジンから選択される。
【0027】
一実施形態において、本発明の方法の工程a)で使用されるヒンダード強塩基は、カリウムtert-ブチレート、ナトリウムtert-ブチレート、リチウムtert-ブチレート、カリウムtert-ペンチレート、ナトリウムtert-ペンチレート、カリウムトリメチルシラノレート、ナトリウムトリメチルシラノレート、リチウムトリメチルシラノレート、カリウムテトラメチルピペリジド、リチウムテトラメチルピペリジド、カリウムビス(トリメチルシリル)アミド、及びリチウムビス(トリメチルシリル)アミドから選択される。
【0028】
一実施形態において、ヒンダード強塩基/脂肪族ジオールのモル比は、1~3である。
【0029】
一実施形態において、本発明の方法の工程a)で使用される有機溶媒は、極性非プロトン性溶媒又は極性非プロトン性溶媒の混合物である。
【0030】
一実施形態において、脂肪族ジオール/ジハロゲン化芳香族化合物のモル比は、0.5~1.5である。
【0031】
一実施形態において、本発明の脂肪族ジオールをベースとした半芳香族ポリエーテルは、Rが直鎖状脂肪族ジオール及び分岐状脂肪族ジオールから選択される脂肪族ジオールに由来することを特徴とする。
【0032】
一実施形態において、本発明の脂肪族ジオールをベースとした半芳香族ポリエーテルは、Rが1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールに由来することを特徴とする。
【0033】
一実施形態において、本発明の脂肪族ジオールをベースとした半芳香族ポリエーテルは、その多分散指数が1.5~5であることを特徴とする。
【0034】
一実施形態において、本発明の脂肪族ジオールをベースとした半芳香族ポリエーテルは、その数平均分子量が5,000g/モル以上であり、数平均分子量が70℃のジメチルホルムアミド中、0.7mL/分の流速、ポリスチレン較正を用いたサイズ排除クロマトグラフィーによって測定されることを特徴とする。
【0035】
一実施形態において、本発明の脂肪族ジオールをベースとした半芳香族ポリエーテルは、100℃を超えるガラス転移温度を有することを特徴とする。
【0036】
一実施形態において、式Iの脂肪族ジオールをベースとした半芳香族ポリエーテルは、Xが塩素であることを特徴とする。
【0037】
一実施形態において、式Iの脂肪族ジオールをベースとした半芳香族ポリエーテルは、100ppm未満の残留フッ素含有量を含むことを特徴とする。
【0038】
一実施形態において、式Iの脂肪族ジオールをベースとした半芳香族ポリエーテルは、10~1,000ppmの残留ケイ素含有量を含むことを特徴とする。
【0039】
一実施形態において、式Iの脂肪族ジオールをベースとした半芳香族ポリエーテルは、100~10,000ppmの残留塩素含有量を含むことを特徴とする。
【0040】
技術的解決策
本発明及びその変形によって、一般に、脂肪族ジオールをベースとした半芳香族ポリエーテルの調製方法を提供することができる。
【0041】
驚くべきことに、かつ予想外に、出願人は、120℃以下の温度、12時間以下の時間で、ヒンダード強塩基の存在下で、脂肪族ジオール、特に二級脂肪族ジオールと、ジハロゲン化芳香族又はヘテロ芳香族化合物から半芳香族ポリエーテルを合成できることを示した。
【0042】
発明の効果
このような解決策により、既知の解決策に起因する問題を解決することができ、また、高温に加熱することなく、高い数平均分子量、すなわち5,000g/モル超、好ましくは6,000g/モル超、より好ましくは7,000g/モル超の数平均分子量を有する脂肪族ジオールをベースとした半芳香族ポリエーテルを得ることができ、ここで、数平均分子量は、70℃のジメチルホルムアミド中、0.7mL/分の流速、ポリスチレン較正を用いたサイズ排除クロマトグラフィーによって測定される。
【0043】
さらに、本出願人の記載する方法は、非毒性溶媒を使用し、通常の方法よりも速く、着色のないポリマーを得ることができるという利点を有する。
【0044】
本発明の他の特徴、詳細、及び効果は、以下の詳細な説明を読むことで明らかになる。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明は、以下の連続工程を含む脂肪族ジオールをベースとした半芳香族ポリエーテルの調製方法に関する:
a)有機溶媒中に脂肪族ジオール又は脂肪族ジオールの混合物、好ましくは脂肪族ジオール、ジハロゲン化芳香族又はヘテロ芳香族化合物、ヒンダード強塩基を含む混合物を調製する工程、及び
b)混合物を30℃~120℃の温度、好ましくは35℃~110℃の温度、より好ましくは約40℃~約100℃の温度で、12時間以下、好ましくは11時間以下、より好ましくは10時間以下の時間で加熱する工程。
【0046】
「半芳香族ポリエーテル」とは、本発明の目的において、2つのモノマーから形成されたポリエーテル型ポリマーを意味し、そのうちの1つは芳香族又はヘテロ芳香族であり、もう一方は非芳香族である。
【0047】
したがって、本発明の方法の第1の工程は、有機溶媒中に脂肪族ジオール又は脂肪族ジオールの混合物、好ましくは脂肪族ジオール、ジハロゲン化芳香族化合物、ヒンダード強塩基を含む混合物を調製することからなる。
【0048】
「脂肪族ジオール」とは、本発明の目的において、2つのヒドロキシル官能基を有する非芳香族有機化合物を意味する。脂肪族ジオールは、直鎖状、分岐状、又は環状であってもよい。本発明の目的において、「直鎖状脂肪族ジオール」及び「分岐状脂肪族ジオール」は、環構造を有さない。本発明の目的において、「環状脂肪族ジオール」は、1つ以上の環構造を有する。好ましくは、脂肪族ジオールは、分岐状脂肪族ジオール又は環状脂肪族ジオールである。更になお好ましくは、脂肪族ジオールは、分岐状脂肪族ジオールである。脂肪族ジオールは、2つのヒドロキシル基の酸素原子の他に、1つ以上のヘテロ原子、例えば酸素、窒素及び硫黄原子を含んでもよい。脂肪族ジオールは、半芳香族ポリエーテルを形成するためのモノマーとして本発明で使用される。直鎖状脂肪族ジオールの例としては、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール及び/又は1,10-デカンジオールを挙げることができる。分岐状脂肪族ジオールの例としては、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール及び/又はプロピレングリコールを挙げることができる。環状脂肪族ジオールの例としては、シクロヘキサンジメタノール、テトラメチルシクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノール、1,5-シクロオクタンジオール、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール、スピログリコール、アダマンタンジオール及び/又はトリシクロドデカンジメタノールを挙げることができる。
【0049】
「1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール」とは、本発明の目的において、マンニトール、ソルビトール及びイジトールなどのヘキシトールの二重脱水によって得られる複素環化合物を意味する。1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールは、主としてイソマンニド、イソソルビド、及びイソイジドの立体異性体の形態である。1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールは、半芳香族ポリエーテルを形成するためのモノマーとして本発明で使用される。好ましくは、本発明の方法の工程a)で使用される1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールはイソソルビドである。
【0050】
「ジハロゲン化芳香族化合物」とは、本発明の目的において、少なくとも1つの芳香環、好ましくは2つの芳香環、2つのハロゲン原子、及び電子求引型官能基を有する化合物を意味する。ハロゲン原子は、臭素、ヨウ素、塩素又はフッ素、好ましくは塩素及びフッ素から選択され、より好ましくはハロゲン原子は塩素原子である。有利には、2つのハロゲン原子は同じである。ジハロゲン化芳香族化合物は、半芳香族ポリエーテルを形成するためのモノマーとして本発明で使用される。
【0051】
用語「ジハロゲン化ヘテロ芳香族化合物」とは、本発明の目的において、少なくとも1つのヘテロ芳香環、及び2つのハロゲン原子を有する化合物を意味する。ハロゲン原子は、臭素、ヨウ素、塩素又はフッ素、好ましくは塩素及びフッ素から選択され、より好ましくはハロゲン原子は塩素原子である。有利には、2つのハロゲン原子は同じである。ジハロゲン化ヘテロ芳香族化合物は、半芳香族ポリエーテルを形成するためのモノマーとして本発明で使用される。
【0052】
本発明の方法の工程a)で使用されるジハロゲン化芳香族又はヘテロ芳香族化合物は、有利には、ジハロゲン化芳香族スルホン、ジハロゲン化芳香族ケトン、ジハロゲン化ベンゾニトリル、ジハロゲン化ジアゼン、ビス(ハロフェニル)オキサジアゾール、ジハロゲン化ニトロベンゼン、ジハロゲン化ベンゾイルナフタレン、及びジハロゲン化ピリジンから選択される。好ましくは、ジハロゲン化芳香族又はヘテロ芳香族化合物は、ジハロジフェニルスルホン、ジハロジフェニルケトン、ジハロゲン化ベンゾニトリル及びジハロゲン化ピリジンから選択される。更になお好ましくは、ジハロゲン化芳香族又はヘテロ芳香族化合物は、ジクロロジフェニルスルホン、ジクロロジフェニルケトン、ジクロロベンゾニトリル、及びジクロロピリジンから選択される。より好ましくは、ジハロゲン化芳香族又はヘテロ芳香族化合物は、4,4’-ジクロロジフェニルスルホン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、2,6-ジクロロベンゾニトリル、及び2,6-ジクロロピリジンから選択される。更により好ましくは、ジハロゲン化芳香族又はヘテロ芳香族化合物は、4,4’-ジクロロジフェニルスルホン、2,6-ジクロロベンゾニトリル、及び2,6-ジクロロピリジンから選択される。
【0053】
用語「ヒンダード強塩基」とは、本発明の目的において、分岐状脂肪族基などの大きな容積を占める原子団を有する塩基を意味する。好ましくは、ヒンダード強塩基は、カリウムtert-ブチレート、ナトリウムtert-ブチレート、リチウムtert-ブチレート、カリウムtert-ペンチレート、ナトリウムtert-ペンチレート、カリウムトリメチルシラノレート、ナトリウムトリメチルシラノレート、リチウムトリメチルシラノレート、カリウムテトラメチルピペリジド、リチウムテトラメチルピペリジド、カリウムビス(トリメチルシリル)アミド、及びリチウムビス(トリメチルシリル)アミドから選択される。更になお好ましくは、本発明の方法の工程a)で使用されるヒンダード強塩基はカリウムトリメチルシラノレートである。
【0054】
実際に、何の理論にも束縛されるものではないが、本発明者らは、ヒンダード強塩基を120℃以下の温度で使用することにより、アンヒンダード強塩基を使用した場合に引き起こされ得る副反応を制限することができ、したがって、数平均分子量が高い、すなわち、5,000g/モル超、好ましくは6,000g/モル超、更になお好ましくは7,000g/モル超の数平均分子量のポリマーを製造することができると考えており、ここで、数平均分子量は、70℃のジメチルホルムアミド中、0.7mL/分の流速、ポリスチレン較正を用いたサイズ排除クロマトグラフィーを用いて測定される。
【0055】
有利には、混合物中のヒンダード強塩基の割合は、脂肪族ジオールの量に対して1~3モル当量である。したがって、ヒンダード強塩基/脂肪族ジオールのモル比は1~3である。好ましくは、ヒンダード強塩基/脂肪族ジオールのモル比は約2である。
【0056】
本発明の方法の工程a)で使用される有機溶媒は、有利には極性非プロトン性溶媒から選択される。
【0057】
用語「極性非プロトン性溶媒」とは、本発明の目的において、酸性水素原子、すなわちヘテロ原子に結合した水素原子を有さない双極子モーメントを有する溶媒を意味する。
【0058】
好ましくは、溶媒は、少なくとも1つの硫黄原子又は少なくとも1つの窒素原子を含有する極性非プロトン性溶媒から選択される。更になお好ましくは、溶媒は、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、スルホラン、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ジイソプロピルスルホン、ジフェニルスルホン、テトラヒドロチオフェン-1-モノキシド、ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、フッ素メチル-5-(ジメチルアミノ)-2-メチル-5-オキソペンタノエート、N-メチル-2-ピロリドン、N-シクロヘキシル-2-ピロリドンの単独、又は混合物のいずれかから選択される。より好ましくは、溶媒はジメチルスルホキシドである。
【0059】
本発明の方法の工程a)で使用される脂肪族ジオールは、有利には、直鎖状脂肪族ジオール、分岐状脂肪族ジオール、及び環状脂肪族ジオールから選択される。好ましくは、本発明の方法の工程a)で使用される脂肪族ジオールは、分岐状脂肪族ジオール及び環状脂肪族ジオールから選択される。更になお好ましくは、本発明の方法の工程a)で使用される脂肪族ジオールは、分岐状脂肪族ジオールから選択される。
【0060】
一実施形態において、本発明の方法の工程a)で使用される脂肪族ジオールは、直鎖状脂肪族ジオールである。好ましくは、本発明の方法の工程a)で使用される直鎖状脂肪族ジオールは、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール及び1,10-デカンジオールの単独、又は混合物から選択される。
【0061】
好ましい実施形態において、本発明の方法の工程a)で使用される脂肪族ジオールは、分岐状脂肪族ジオールである。好ましくは、本発明の方法の工程a)で使用される分岐状脂肪族ジオールは、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール、及びプロピレングリコールの単独、又は混合物から選択される。更になお好ましくは、本発明の方法の工程a)で使用される分岐状脂肪族ジオールは、2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジオールである。
【0062】
好ましい実施形態において、本発明の方法の工程a)で使用される脂肪族ジオールは、環状脂肪族ジオールである。好ましくは、本発明の方法の工程a)で使用される環状脂肪族ジオールは、シクロヘキサンジメタノール、テトラメチルシクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノール、1,5-シクロオクタンジオール、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール、スピログリコール、アダマンタンジオール、及びトリシクロドデカンジメタノールの単独、又は混合物から選択される。更になお好ましくは、本発明の方法の工程a)で使用される環状脂肪族ジオールは、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールから選択される。より好ましくは、本発明の方法の工程a)で使用される環状脂肪族ジオールは、イソソルビドである。
【0063】
使用されるイソソルビドは、固体の形態、特に粉末、顆粒若しくはフレークの形態であってもよく、又は液体の形態、特に溶融した形態であってもよい。好ましくは、イソソルビドは固体の形態で存在する。
【0064】
別の特に好ましい実施形態では、本発明の方法の工程a)で使用されるジハロゲン化芳香族又はヘテロ芳香族化合物は、ジクロロ化芳香族化合物である。好ましくは、本発明の方法の工程a)で使用されるジハロゲン化芳香族又はヘテロ芳香族化合物は、ジクロロ化芳香族スルホン、ジクロロ化芳香族ケトン、ジクロロ化ベンゾニトリル、及びジクロロ化ピリジンから選択される。更になお好ましくは、本発明の方法の工程a)で使用されるジハロゲン化芳香族又はヘテロ芳香族化合物は、ジクロロジフェニルスルホン、ジクロロジフェニルケトン、ジクロロベンゾニトリル、及びジクロロピリジンから選択される。より好ましくは、本発明の方法の工程a)で使用されるジハロゲン化芳香族又はヘテロ芳香族化合物は、4,4’-ジクロロジフェニルスルホン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、2,6-ジクロロベンゾニトリル、及び2,6-ジクロロピリジンから選択される。更により好ましくは、本発明の方法の工程a)で使用されるジハロゲン化芳香族又はヘテロ芳香族化合物は、4,4’-ジクロロジフェニルスルホン、2,6-ジクロロベンゾニトリル、及び2,6-ジクロロピリジンから選択される。
【0065】
有利には、本発明の方法におけるジクロロ化芳香族誘導体の使用により、ジフルオロ化芳香族誘導体から調製される半芳香族ポリエーテルの場合に得られるものと同等に数平均分子量が高い半芳香族ポリエーテルを得ることができる。したがって、ジクロロ化芳香族誘導体の使用は、対応するジフルオロ化芳香族誘導体よりも多くの場合安価であるため経済的な利点を有する。
【0066】
更に本発明の方法は予期しないことに、ジクロロ化芳香族又はヘテロ芳香族化合物を工程a)で使用する場合、置換速度を改善することができる。実際、従来技術の方法では、通常、脂肪族ジオールの低反応性を補償するために、ジフルオロ化モノマーが使用される。
【0067】
使用されるハロゲン化誘導体の性質は、燃焼イオンクロマトグラフィーによるポリマーの分析によって同定することができる。
【0068】
有利には、混合物中のジハロゲン化芳香族又はヘテロ芳香族化合物/脂肪族ジオールのモル比は、0.5~1.5、好ましくは0.7~1.3、より好ましくは0.9~1.1である。より好ましくは、混合物中のジハロゲン化芳香族又はヘテロ芳香族化合物/脂肪族ジオールのモル比は、約1である。
【0069】
したがって、半芳香族ポリエーテルは、モノマーとしての脂肪族ジオールとジハロゲン化芳香族又はヘテロ芳香族化合物との間の反応によって形成される。有利には、モノマーの総割合、すなわち、脂肪族ジオールの量とジハロゲン化芳香族又はヘテロ芳香族化合物の量との合計は、溶媒の重量とモノマーの重量との合計に対して10重量%~50重量%、好ましくは20重量%~40重量%である。更になお好ましくは、モノマーの割合は、溶媒の重量とモノマーの重量に対して約30重量%である。
【0070】
本発明の方法の第2の工程は、工程a)で調製した混合物を、30℃~120℃の温度に12時間以下の時間で加熱することからなる。この加熱工程により、脂肪族ジオールとジハロゲン化芳香族又はヘテロ芳香族化合物との反応を開始させて半芳香族ポリエーテルを形成することができる。
【0071】
加熱工程は、好ましくは35℃~110℃、更になお好ましくは40℃~100℃の温度で、11時間以下、更になお好ましくは10時間以下の時間で行われる。
【0072】
このように、本発明の方法は、12時間以下の時間で半芳香族ポリエーテルを得ることができることから、生産性に関して特に有益であるだけでなく、また、120℃を超える温度に加熱する必要がないため、省エネルギーの点で特に有益である。
【0073】
特定の実施形態では、加熱工程は、30℃~50℃、好ましくは35℃~45℃、更になお好ましくは約40℃の温度で開始され、次いで温度を、80℃~120℃、好ましくは90℃~110℃、更になお好ましくは約100℃の温度まで徐々に上昇させる。
【0074】
30℃~50℃の温度で加熱工程を開始して温度を80℃~120℃の温度まで徐々に上昇させることにより、特に、ジハロゲン化芳香族又はヘテロ芳香族化合物が、ジハロゲン化芳香族スルホン、好ましくはジハロジフェニルスルホン、更になお好ましくはジクロロジフェニルスルホンから選択され、より好ましくは、ジハロゲン化芳香族又はヘテロ芳香族化合物が4,4’-ジクロロジフェニルスルホンである場合に、ジハロゲン化芳香族又はヘテロ芳香族化合物の分解を防止することができることを示したことは、本発明者の功績である。
【0075】
加熱工程の最後に、得られた半芳香族ポリエーテルは、当業者に既知の技術、例えば、半芳香族ポリエーテルの沈殿によって回収することができる。半芳香族ポリエーテルの沈殿のための好ましい技術は、反応媒体を大量の水、反応媒体の体積の約10倍の水に加えることからなる。次いで、半芳香族ポリエーテルを、当業者に既知の技術に従って、例えば、減圧下のオーブン中で乾燥させることができる。
【0076】
このように、本発明の方法によって、フィルムの製造に特に適した物理的特性を有する脂肪族ジオールをベースとした半芳香族ポリエーテルを得ることができる。
【0077】
したがって、本発明の別の主題は、本発明の方法によって得られる脂肪族ジオールをベースとした半芳香族ポリエーテルに関する。この半芳香族ポリエーテルは、式Iに対応することを特徴とする:
【0078】
【化2】
式中、
Arは、ジハロゲン化芳香族又はヘテロ芳香族化合物に由来し、
Rは、脂肪族ジオールに由来し、
Xはハロゲンであり、
nは2~100の整数であり、nはサイズ排除クロマトグラフィーによって決定される。
【0079】
本発明の脂肪族ジオールをベースとした半芳香族ポリエーテルの多分散指数は、当業者に既知の技術、具体的には、例えば、70℃のジメチルホルムアミド中、0.7mL/分の流速、ポリスチレン較正を用いたサイズ排除クロマトグラフィーによって決定することができる。本発明の脂肪族ジオールをベースとした半芳香族ポリエーテルは、1.5~5、好ましくは2~4.5の多分散指数を有する。
【0080】
本発明の脂肪族ジオールをベースとした半芳香族ポリエーテルの数平均分子量は、当業者に既知の技術、具体的には、例えば、70℃のジメチルホルムアミド中、0.7mL/分の流速、ポリスチレン較正を用いたサイズ排除クロマトグラフィーによって決定することができる。有利には、本発明の脂肪族ジオールをベースとした半芳香族ポリエーテルは、5,000g/モル以上、好ましくは6,000g/モル以上、より好ましくは7,000g/モル以上の数平均分子量を有する。一実施形態において、本発明の脂肪族ジオールをベースとした半芳香族ポリエーテルは、6,000~9,000g/モル、好ましくは6,500~9,000g/モル、更になお好ましくは7,000~9,000g/モルの数平均分子量を有し、ここで、数平均分子量は、70℃のジメチルホルムアミド中、0.7mL/分の流速、ポリスチレン較正を用いたサイズ排除クロマトグラフィーによって用いて測定される。
【0081】
本発明の脂肪族ジオールをベースとした半芳香族ポリエーテルのガラス転移温度は、当業者に既知の技術、特に、窒素中80mL/分の流速で10℃/分又は20℃/分、好ましくは10℃/分で20℃から300℃まで、穿孔されたアルミニウムるつぼ内での示差走査熱量測定(DSC)によって決定することができる。本発明の半芳香族ポリエーテルは、100℃超、好ましくは120℃超、更になお好ましくは140℃超のガラス転移温度を有する。
【0082】
脂肪族ジオールがイソソルビドである場合、本発明の脂肪族ジオールをベースとした半芳香族ポリエーテルのガラス転移温度は、140℃超、好ましくは140℃~260℃、更になお好ましくは150℃~250℃である。
【0083】
一実施形態において、本発明の脂肪族ジオールをベースとした半芳香族ポリエーテルは、半結晶性である。「半結晶性ポリマー」とは、結晶性領域と非晶質領域を有するポリマーを意味する。
【0084】
本発明の半芳香族ポリエーテルの接触角は、当業者に既知の技術、特にゴニオメータを用いた角度測定によって決定することができる。本発明の方法により得られる半芳香族ポリエーテルは、50°~70°、好ましくは約63°の水との接触角を有する。
【0085】
式Iの脂肪族ジオールをベースとした好ましい半芳香族ポリエーテルにおいて、Ar、R、X及びnは以下のように定義される。
Arは、ジハロゲン化芳香族スルホン、ジハロゲン化芳香族ケトン、ジハロゲン化ベンゾニトリル、又はジハロゲン化ピリジンに由来し、好ましくは、Arはジハロゲン化ジフェニルスルホン、ジハロゲン化ジフェニルケトン、ジハロゲン化ベンゾニトリル又はジハロゲン化ピリジンに、より好ましくは、Arは、ジクロロジフェニルスルホン、ジクロロジフェニルケトン、ジクロロベンゾニトリル、又はジクロロピリジンに由来し、より好ましくは、Arは、以下から選択される。
【0086】
【0087】
【0088】
【0089】
【化6】
更により好ましくは、Arは、以下から選択される:
【0090】
【0091】
【0092】
【化9】
Rは、脂肪族ジオールに由来し、好ましくは、Rは、直鎖状脂肪族ジオール、分岐状脂肪族ジオール及び環状脂肪族ジオールから選択される脂肪族ジオールに由来し、更になお好ましくは、Rは、直鎖状脂肪族ジオール及び分岐状脂肪族ジオールから選択される脂肪族ジオールに由来し、
Xはハロゲンであり、好ましくは、XはF及びClから選択され、更になお好ましくは、XはClであり、
nは2~100の整数であり、好ましくは、nは10~100の整数であり、ここで、nはサイズ排除クロマトグラフィー、好ましくは、70℃のジメチルホルムアミド中、0.7mL/分の流速、ポリスチレン較正を用いたサイズ排除クロマトグラフィーによって決定される。
【0093】
一実施形態において、脂肪族ジオールをベースとした半芳香族ポリエーテルは式Iで定義され、ただし、Arが4,4’-ハロジフェニルスルホンに由来する場合、Rはイソソルビド、シクロヘキサンジメタノール、テトラメチルシクロブタンジオール、又はシス-1,5-シクロオクタンジオールに由来せず、また、Arが4,4’-ジハロベンゾフェノンに由来する場合、Rはイソソルビドに由来しない。
【0094】
一実施形態において、本発明の方法の工程a)で使用される脂肪族ジオールは、直鎖状脂肪族ジオールである。この場合、Rは、直鎖状脂肪族ジオールに由来し、本発明の脂肪族ジオールをベースとした半芳香族ポリエーテルは、式Iaのものである。
【0095】
【化10】
式中、
X、Ar及びnは、式Iで定義されたとおりであり、
Lは、直鎖状脂肪族ジオールに由来し、好ましくは、Lは、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8オクタンジオール及び1,10-デカンジオールから選択される直鎖状脂肪族ジオールに由来する。
【0096】
一実施形態において、本発明の方法の工程a)で使用される脂肪族ジオールは、分岐状脂肪族ジオールである。この場合、Rは、分岐状脂肪族ジオールに由来し、本発明の脂肪族ジオールをベースとした半芳香族ポリエーテルは、式Ibのものである。
【0097】
【化11】
式中、
X、Ar及びnは、式Iで定義されたとおりであり、
Bは、分岐状脂肪族ジオールに由来し、好ましくは、Bは、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール及びプロピレングリコールから選択される分岐状脂肪族ジオールに由来し、なお好ましくは、Bは2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジオールに由来する。
【0098】
本実施形態の好ましい変形において、本発明の方法の工程a)で使用される脂肪族ジオールは、2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジオールである。この場合、Bは、2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジオールに由来し、本発明の脂肪族ジオールをベースとした半芳香族ポリエーテルは、式Ib-iのものである。
【0099】
【化12】
式中、X及びArは、式Ibで定義されたとおりである。
【0100】
好ましい実施形態において、本発明の方法の工程a)で使用される脂肪族ジオールは、環状脂肪族ジオールである。この場合、Rは、環状脂肪族ジオールに由来し、本発明の脂肪族ジオールをベースとした半芳香族ポリエーテルは、式Icのものである。
【0101】
【化13】
式中、
X、Ar及びnは、式Iで定義されたとおりであり、
Cyは、環状脂肪族ジオールに由来し、好ましくは、Cyは、シクロヘキサンジメタノール、テトラメチルシクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノール、1,5-シクロオクタンジオール、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール、スピログリコール、アダマンタンジオール、及びトリシクロドデカンジメタノールから選択される環状脂肪族ジオールに由来し、なお好ましくは、Cyは、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールから選択される環状脂肪族ジオールに由来し、更により好ましくは、Cyはイソソルビドに由来する。
【0102】
好ましい実施形態の変形において、本発明の方法の工程a)で使用される環状脂肪族ジオールは、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールである。この場合、Cyは、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールに由来し、本発明の脂肪族ジオールをベースとした半芳香族ポリエーテルは、式Ic-iのものである。
【0103】
【化14】
式中、Ar、X及びnは、式Iで定義されたとおりである。
【0104】
本実施形態の更により好ましい変形では、本発明の方法の工程a)で使用される環状脂肪族ジオールは、イソソルビドである。この場合、Cyは、イソソルビドに由来し、本発明の脂肪族ジオールをベースとした半芳香族ポリエーテルは、式Ic-iiのものである。
【0105】
【化15】
式中、Ar、X及びnは、式Iで定義されたとおりである。
【0106】
別の好ましい実施形態において、本発明の方法の工程a)で使用されるジハロゲン化芳香族又はヘテロ芳香族化合物は、4,4’-ジクロロジフェニルスルホンである。この場合、Arは、4,4’-ジクロロジフェニルスルホンに由来し、本発明の脂肪族ジオールをベースとした半芳香族ポリエーテルは、式IIのものである:
【0107】
【化16】
式中、n及びRは、式Iで定義されたとおりである。
【0108】
本実施形態の変形では、本発明の方法の工程a)で使用される脂肪族ジオールは、直鎖状脂肪族ジオールである。この場合、Rは、直鎖状脂肪族ジオールに由来し、本発明の脂肪族ジオールをベースとした半芳香族ポリエーテルは、式IIaのものである。
【0109】
【化17】
式中、n及びLは、式Iaで定義されたとおりである。
【0110】
本実施形態の別の変形では、本発明の方法の工程a)で使用される脂肪族ジオールは、分岐状脂肪族ジオールである。この場合、Rは、分岐状脂肪族ジオールに由来し、本発明の脂肪族ジオールをベースとした半芳香族ポリエーテルは、式IIbのものである。
【0111】
【化18】
式中、n及びBは、式Ibで定義されたとおりである。
【0112】
好ましくは、本発明の方法の工程a)で使用される分岐状脂肪族ジオールは、2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジオールである。この場合、Bは、2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジオールに由来し、本発明の脂肪族ジオールをベースとした半芳香族ポリエーテルは、式IIb-iのそれである。
【0113】
【化19】
式中、nは、式Ibで定義されたとおりである。
【0114】
本実施形態の別の変形では、本発明の方法の工程a)で使用される脂肪族ジオールは、環状脂肪族ジオールである。この場合、Rは、環状脂肪族ジオールに由来し、本発明の脂肪族ジオールをベースとした半芳香族ポリエーテルは、式IIcのものである。
【0115】
【化20】
式中、n及びCyは、式Icで定義されたとおりである。
【0116】
好ましくは、本発明の方法の工程a)で使用される環状脂肪族ジオールは、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールである。この場合、Cyは、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールに由来し、本発明の脂肪族ジオールをベースとした半芳香族ポリエーテルは、式IIc-iのものである。
【0117】
【化21】
式中、nは、式Icで定義されたとおりである。
【0118】
更になお好ましくは、本発明の方法の工程a)で使用される環状脂肪族ジオールは、イソソルビドである。この場合、Cyは、イソソルビドに由来し、本発明の脂肪族ジオールをベースとした半芳香族ポリエーテルは、式IIc-iiのそれである。
【0119】
【化22】
式中、nは、式Icで定義されたとおりである。
【0120】
別の好ましい実施形態では、本発明の方法の工程a)で使用されるジハロゲン化芳香族又はヘテロ芳香族化合物は、2,6-ジクロロベンゾニトリルである。この場合、Arは、2,6-ジクロロベンゾニトリルに由来し、本発明の脂肪族ジオールをベースとした半芳香族ポリエーテルは、式IIIのものである。
【0121】
【化23】
式中、n及びRは、式Iで定義されたとおりである。
【0122】
本実施形態の別の変形では、本発明の方法の工程a)で使用される脂肪族ジオールは、環状脂肪族ジオールである。この場合、Rは、環状脂肪族ジオールに由来し、本発明の脂肪族ジオールをベースとした半芳香族ポリエーテルは、式IIIaのものである。
【0123】
【化24】
式中、n及びCyは、式Icで定義されたとおりである。
【0124】
好ましくは、本発明の方法の工程a)で使用される環状脂肪族ジオールは、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールである。この場合、Cyは、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールに由来し、本発明の脂肪族ジオールをベースとした半芳香族ポリエーテルは、式IIIa-iのものである。
【0125】
【化25】
式中、nは、式Icで定義されたとおりである。
【0126】
更になお好ましくは、本発明の方法の工程a)で使用される環状脂肪族ジオールは、イソソルビドである。この場合、Cyは、イソソルビドに由来し、本発明の脂肪族ジオールをベースとした半芳香族ポリエーテルは、式IIIa-iiのそれである。
【0127】
【化26】
式中、nは、式Icで定義されたとおりである。
【0128】
別の好ましい実施形態において、本発明の方法の工程a)で使用されるジハロゲン化芳香族又はヘテロ芳香族化合物は、2,6-ジクロロピリジンである。この場合、Arは、2,6-ジクロロピリジンに由来し、本発明の脂肪族ジオールをベースとした半芳香族ポリエーテルは、式IVのものである。
【0129】
【化27】
式中、n及びRは、式Iで定義されたとおりである。
【0130】
この実施形態の別の変形では、本発明の方法の工程a)で使用される脂肪族ジオールは、環状脂肪族ジオールである。この場合、Rは、環状脂肪族ジオールに由来し、本発明の脂肪族ジオールをベースとした半芳香族ポリエーテルは、式IVaのものである。
【0131】
【化28】
式中、n及びCyは、式Icで定義されたとおりである。
【0132】
好ましくは、本発明の方法の工程a)で使用される環状脂肪族ジオールは、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールである。この場合、Cyは、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールに由来し、本発明の脂肪族ジオールをベースとした半芳香族ポリエーテルは、式IVa-iのものである。
【0133】
【化29】
式中、nは式Icで定義されたとおりである。
【0134】
更になお好ましくは、本発明の方法の工程a)で使用される環状脂肪族ジオールは、イソソルビドである。この場合、Cyは、イソソルビドに由来し、本発明の脂肪族ジオールをベースとした半芳香族ポリエーテルは、式IVa-iiのものである。
【0135】
【化30】
式中、nは式Icで定義されたとおりである。
【0136】
別の実施形態では、本発明の方法の工程a)で使用されるジハロゲン化芳香族又はヘテロ芳香族化合物は、ジクロロ化芳香族化合物である。この場合、本発明の脂肪族ジオールをベースとした半芳香族ポリエーテルは、式Iのものであり、ここで式中のXは塩素である。
【0137】
本実施形態によると、本発明の脂肪族ジオールをベースとした半芳香族ポリエーテルは、100ppm未満の残留フッ素含有量を有し、この残留フッ素含有量は、燃焼-イオンクロマトグラフィーにより決定される。
【0138】
本実施形態によると、本発明の脂肪族ジオールをベースとした半芳香族ポリエーテルはまた、10~1000ppmの残留ケイ素含有量を有し、この残留ケイ素含有量は、燃焼-イオンクロマトグラフィーにより決定される。
【0139】
本実施形態によると、本発明の脂肪族ジオールをベースとした半芳香族ポリエーテルは、100~10,000ppmの残留塩素含有量を有し、この残留塩素含有量は、燃焼-イオンクロマトグラフィーにより決定される。
【0140】
有利には、本発明の脂肪族ジオールをベースとした半芳香族ポリエーテルは、フィルムの製造に好適な溶媒に可溶であることができる溶解度パラメーターを有する。したがって、本発明の脂肪族ジオールをベースとした半芳香族ポリエーテル、好ましくは、式IIc-iiの脂肪族ジオールをベースとした半芳香族ポリエーテルは、ギ酸、アセトニトリル、酢酸、ジメチルスルホキシド、アクリロニトリル、エピクロロヒドリン、アセトン、酢酸メチル、N,N-ジメチルホルムアミド、2-メトキシエタノール、プロピレンカーボネート、ブタン-2-オン、2-エトキシエタノール、ジメチルエタノールアミン、ピリジン、フルフリルアルコール、N-メチル-2-ピロリジン、ベンズアルデヒド、ベンジルアルコール、イソホロン、ヒドラジン、ジメチルイソソルビド、メチル4-(ジメチルカルバモイル)-2-メチルブタノエート、好ましくはジメチルスルホキシド、アクリロニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリジン、及びメチル4-(ジメチルカルバモイル)-2-メチルブタノエートから選択される溶媒中、室温(20~25℃)で10mg/mLの濃度の良好な溶解度を有する。
【0141】
したがって、本発明の別の主題は、膜、製造部品、及びコーティングの製造のための、本発明の脂肪族ジオールをベースとした半芳香族ポリエーテルの使用に関する。
【0142】
当業者に既知の技術に従って、本発明の脂肪族ジオールをベースとした半芳香族ポリエーテルから、膜を製造することができる。
【0143】
特に、本発明の脂肪族ジオールをベースとした半芳香族ポリエーテルを用いて得られる膜は、親水性及び気体透過性において有益な特性を有する。膜は、多孔質フィルムの形態であってもよく、また、非多孔質フィルムの形態であってもよい。膜は、モノフィラメント又は中空繊維の形態で製造することができる。
【0144】
本発明の脂肪族ジオールをベースとした半芳香族ポリエーテルは、体液を含む水性媒体中で使用することができる。本発明の脂肪族ジオールをベースとした半芳香族ポリエーテルは、生体適合性であり、したがって、例えば、血液透析などの医療分野、又は消費者分野(食品及び飲料)、廃水処理分野において膜の形態で使用することができる。
【0145】
チューブ又は中空繊維の形態の多孔質膜は、それらの用途(精密濾過、限外濾過、ナノ濾過、逆浸透)に応じて、当業者に既知の様々な孔径を有することができる。本発明の半芳香族ポリエーテルを用いて得られる水用の膜の性能は、当業者に既知の技術、具体的には、スルホン化モノマーの使用、又は汚れを回避するためのスルホン化又は表面処理による膜の後処理によって改善され得る。
【0146】
気相中の膜は、窒素混合物の分離による窒素の製造、空気からの酸素の製造、メタンとCO2の分離によるメタンの製造に使用することができる。本発明の半芳香族ポリエーテルを用いて得られるガス用の膜の性能は、当業者に既知の技術、具体的には、ヒンダードモノマーの使用、又は置換ビスフェノール、ナフタレン若しくはフルオレンなどの添加剤の追加、又は熱的に不安定な化合物を使用しての細孔の形成によって改善され得る。
【0147】
フィルム又はシートの形態の膜は、光学用又は包装用に使用することができる。
【0148】
当業者に既知の技術に従って、本発明の脂肪族ジオールをベースとした半芳香族ポリエーテルから成形部品を製造することができる。本発明の脂肪族ジオールをベースとした半芳香族ポリエーテルの射出成形によって、金属、ガラス、及び他の使い捨て又は再利用可能な器具を代替する歯科用途での医療セクタに、また、航空、電子機器、及び自動車セクタに使用される部品を製造することができる。
【0149】
本発明の別の主題は、腐食を防止するための金属用コーティング樹脂としての本発明の脂肪族ジオールをベースとした半芳香族ポリエーテルの使用に関する。
【0150】
本発明の脂肪族ジオールをベースとした半芳香族ポリエーテルから得られるコーティングは、鋼、アルミニウム、銅、消費者セクタ(食品及び飲料)、船体での海洋セクタ、航空宇宙、自動車、ケーブルを有する電気機器セクタ及び回路を有する電子機器での電気セクタに使用される金属に適用することができる。本発明の脂肪族ジオールをベースとした半芳香族ポリエーテルの樹脂は、ガラス又は炭素繊維などの他の基材に適用して、樹脂から溶媒を蒸発させて複合体を形成することができる。本発明の脂肪族ジオールをベースとした半芳香族ポリエーテル樹脂から形成される複合体は、航空宇宙及び自動車分野に使用して金属部品を代替することができる。
【0151】
本発明は、以下の実施例を読むことによってより明確に理解されるが、それらは純粋に例示的であることを意図し、保護の範囲を何ら限定するものではない。
【実施例】
【0152】
略語:
DCBN:2,6-ジクロロベンゾニトリル、
DCDPS:4,4’-ジクロロジフェニルスルホン、
DCP:2,6-ジクロロピリジン、
DFBN:2,6-ジフルオロベンゾニトリル、
DFDPS:4,4’-ジフルオロジフェニルスルホン、
DFP:2,6-ジフルオロピリジン、
DMAc:ジメチルアセトアミド、
DMF:N,N-ジメチルホルムアミド、
DMSO:ジメチルスルホキシド、
DSC:示差走査熱量測定、
PDI:多分散指数、
Mn:数平均分子量、
NMP:N-メチル-2-ピロリドン、
PS:ポリスチレン、
SEC:サイズ排除クロマトグラフィー、
Tm:融点
Tg:ガラス転移温度、
THF:テトラヒドロフラン。
【0153】
以下に示す例示的な実施例について、以下の試薬を使用した。
イソソルビド(純度>99.5%):Polysorb(登録商標)LP(Roquette Freres)
DCDPS(純度>99%):Alfa Aesar、
SiOMe3K/THF(2M):Acros Organics、
2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジオール(>99%):Acros Organics、
ビスフェノールA(>99%):Sigma Aldrich、
K2CO3(>99%):Sigma Aldrich、
DFDPS(>99%):Sigma Aldrich、
DFP(>99%):Acros Organics、
DCP(>98%):Acros Organics、
DFBN(>99%):Acros Organics、
DCBN(>90%):Fluka、昇華によって精製。
【0154】
実施例1:イソソルビドをベースとした本発明の半芳香族ポリエーテルスルホンの調製
1.46g(0.01mol、1当量)のイソソルビド(デシケータ内で保存)及び2.87g(0.01mol、1当量)のDCDPSを、グースネック、撹拌翼、及び窒素入口を備えた三口フラスコ中で、10.11gのDMSO中に溶解させる。反応媒体を油浴に浸し、40℃に加熱して、両方のモノマーを溶解させる。THF(2M)中に溶解させた9.05g(0.0199モル、1.99当量)のSiOMe3Kを加える。塩基を加えた後、温度を数時間かけて100℃まで徐々に上昇させ、その後、100℃で2時間撹拌しながら媒体を置く。そのとき、媒体はより粘稠になる。次いで、媒体を300mLの蒸留水中で沈殿させ、得られた生成物を水で1回すすぎ、その後、80:20(v/v)の水/メタノール混合物で1回すすぐ。生成物をブフナー濾過して回収し、減圧下のオーブンで乾燥させる。
【0155】
実施例2:ジメチルプロパン-1,3-ジオールをベースとした本発明の半芳香族ポリエーテルスルホンの調製
1.04g(0.01mol、1当量)の2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジオール及び2.87g(0.01mol、1当量)のDCDPSを、グースネック、撹拌翼、及び窒素入口を備えた三口フラスコ中で、9.13gのDMSO中に溶解させる。反応媒体を油浴に浸し、40℃に加熱して、両方のモノマーを溶解させる。THF(2M)中に溶解させた9.05g(0.0199モル、1.99当量)のSiOMe3Kを加える。塩基を加えた後、温度を100℃まで徐々に上昇させ、この温度を1時間保持する。このとき、媒体はより粘稠になる。次いで、媒体を300mLの蒸留水中で沈殿させ、白色粉末の形態で得られた生成物をブフナー濾過して回収し、減圧下のオーブンで乾燥させる。ポリマーは、290℃の融点Tmを有する。
【0156】
実施例3:イソソルビドとジクロロベンゾニトリルからの本発明の半芳香族ポリエーテルニトリルの調製
1.46g(0.01mol、1当量)のイソソルビド(デシケータ内で保存)及び1.72g(0.01mol、1当量)のDCBNを、グースネック、撹拌翼、及び窒素入口を備えた三口フラスコ中で、7.42gのDMSO中に溶解させる。反応媒体を油浴に浸し、30℃に加熱してイソソルビドを溶解させる。THF(2M)中に溶解させた9.05g(0.0199モル、1.99当量)のSiOMe3Kを加える。塩基を加えた後、温度を30℃に1時間30固定する。次いで、温度を100℃に固定して、媒体を100℃で2時間撹拌しながら置く。このとき、媒体はより粘稠になる。次いで、媒体を300mLの蒸留水中で沈殿させる。生成物をブフナー濾過して回収し、減圧下のオーブンで乾燥させる。
【0157】
実施例4:イソソルビドとジクロロピリジンからの本発明の半芳香族ポリエーテルニトリルの調製
1.46g(0.01mol、1当量)のイソソルビド(デシケータ内で保存)及び1.48g(0.01mol、1当量)のDCPを、グースネック、撹拌翼、及び窒素入口を備えた三口フラスコ中で、6.86gのDMSO中に溶解させる。反応媒体を油浴に浸し、40℃に加熱してイソソルビドを溶解させる。THF(2M)中に溶解させた9.05g(0.0199モル、1.99当量)のSiOMe3Kを加える。塩基を加えた後、温度を100℃に2時間固定する。このとき、媒体はより粘稠になる。次いで、媒体を300mLの蒸留水中で沈殿させる。生成物をブフナー濾過して回収し、減圧下のオーブンで乾燥させる。
【0158】
反証例1:ビスフェノールAをベースとした芳香族ポリエーテルスルホンの調製
11.53g(0.050mol、1当量)のビスフェノールA、14.51g(0.050mol、1当量)のDCDPS及び15.35g(0.10mol、2当量)のK2CO3を、その上のコンデンサーを有するトルエンを満たしたDean-Stark装置、撹拌翼及び窒素入り口を備えた三口フラスコ中で、67:33のDMAc/トルエン混合物(DMAc69g及びトルエン34g、又は20%m)に溶解させる。フラスコを160℃で14時間加熱する。反応媒体をNMPで希釈し、次いで、水中で白色の糸状の形態で沈殿させる。ポリマーをブフナー濾過して回収し、減圧下のオーブンで乾燥させる。
【0159】
反証例2:国際公開第2014/072473A2号(実施例8)に記載の方法に従ったイソソルビドをベースとした半芳香族ポリエーテルスルホンの調製
2.0g(0.014mol、1当量)のイソソルビド(デシケータ内に置いた)、4.1g(0.014mol、1当量)のDCDPS及び3.78g(0.028mol、2当量)のK2CO3を、グースネック、撹拌翼、及び窒素入口を備えた三つ口フラスコ中で9gのスルホラン中に溶解させる。フラスコを、油浴で210℃に6時間加熱する。反応媒体をNMPで希釈し、次いで、300mLの50:50(v/v)の水/メタノール混合物中でベージュ色粉末の形態で沈殿させ、ブフナー濾過し、次いで減圧下のオーブンで乾燥させる。
【0160】
反証例3:140℃でのイソソルビドとDFDPSをベースとした半芳香族ポリエーテルスルホンの調製
2.92g(0.020mol、1当量)のイソソルビド(デシケータ内に置いた)、5.08g(0.020mol、1当量)のDFDPS及び5.58g(0.040mol、2当量)のK2CO3を、グースネック、撹拌翼、及び窒素入口を備えた三口フラスコ中で18.7gのDMSO中に溶解させる。丸底フラスコを、油浴を用いて24時間、140℃に加熱する。反応終了時に、15mLのDMSOを加えて媒体を希釈する。次いで、反応媒体を、1,000mLの水中で糸状の形態で沈殿させ、ブフナー濾過し、次いで減圧下のオーブンで乾燥させる。
【0161】
反証例4:市販のポリエーテルスルホン
Acros Organicsから購入した市販の粒状樹脂を、元素分析比較のために使用した(Acros code:17891,CAS:25135-51-7)
【0162】
反証例5:イソソルビドとジフルオロベンゾニトリルからの半芳香族ポリエーテルニトリルの調製
1.37g(9.4mmol、1当量)のイソソルビド(デシケータ内に置いた)、1.30g(9.4mmol、1当量)のDFBN、2.59g(18.7mmol、2当量)のK2CO3及び1.03g(10.3mmol、1.1当量)のCaCO3を、グースネック、撹拌翼、及び窒素入口を備えた三口フラスコ中で6.61gのDMSO中に溶解させる。丸底フラスコを、油浴を用いて140℃で24時間、次いで160℃で24時間加熱する。反応終了時に、10mLのDMSOを加えて媒体を希釈する。次いで、反応媒体を、300mLの水中で糸状の形態で沈殿させ、ブフナー濾過し、次いで減圧下のオーブンで乾燥させる。
【0163】
反証例6:イソソルビドとジクロロベンゾニトリルからの半芳香族ポリエーテルニトリルの調製
2.92g(20mmol、1当量)のイソソルビド(デシケータ内に置いた)、3.44g(20mmol、1当量)のDCBN及び5.58g(40mmol、2当量)のK2CO3を、グースネック及び窒素入口を備えた三つ口フラスコ中で25.45gのスルホラン中に溶解させる。丸底フラスコを、油浴を用いて210℃に4時間加熱する。反応終了時に、反応媒体を、300mLの水中で糸状の形態で沈殿させ、ブフナー濾過し、次いで減圧下のオーブンで乾燥させる。
【0164】
反証例7:イソソルビドとジフルオロピリジンからの半芳香族ポリエーテルピリジンの調製
1.46g(10mmol、1当量)のイソソルビド(デシケータに置いた)、1.15g(10mmol、1当量)のDFP、1.1g(11mmol、1当量)のCaCO3、及び2.76g(20mmol、2当量)のK2CO3を、グースネック、撹拌翼、及び窒素入口を備えた三口フラスコ中で、6.61gのDMSO中に溶解させる。フラスコを、油浴を用いて120℃で15時間、次いで140℃で48時間加熱する。反応終了時に、2mLのDMSOを加えて媒体を希釈する。次いで、反応媒体を、300mLの水中で糸状の形態で沈殿させ、ブフナー濾過し、次いで減圧下のオーブンで乾燥させる。
【0165】
得られたポリエーテルの数平均分子量(Mn)及び多分散指数(PDI)を、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって決定する。得られたポリエーテルのガラス転移温度(Tg)及び融点(Tm)を、示差走査熱量測定(DSC)によって決定する。
【0166】
実施例に適用する特徴付けを、下に記載する。
- 示差走査熱量測定(DSC):示差走査熱量測定分析は、窒素中80mL/分の流量、10℃/分又は20℃/分で20℃から300℃まで、穿孔されたアルミニウムるつぼ内で、DSC、Mettler Toledoで行った。
- サイズ排除クロマトグラフィー(SEC):数平均分子量の推定は、70℃のDMF中、0.7mL/分の流速、PS較正のAgilent PLgel 5μmのカラムを用いたSECによって行った。
- 元素分析:燃焼-イオンクロマトグラフィーによる20gの試料中のmg/kg(ppm)での原子の量の推定。
【0167】
本発明のポリマー(実施例1~4)の特徴付けを、反証例1~3及び5~7と比較して表1及び2に示す。
【0168】
【0169】
aDMFに不溶性の半結晶性ポリマー。
bポリスチレン較正による測定。
cガラス転移温度(Tg)。
d融点(Tm)。
【0170】
【0171】
表2は、SiOMe3K塩基を用いた短時間の低温反応の場合に、K2CO3を用いた反応と比較して、ハロゲン化モノマーから得られた試料のより高いガラス転移温度が得られることを示している。
【0172】
残留塩素、フッ素、及びケイ素含有量を、燃焼-イオンクロマトグラフィーによって、実施例1及び反証例3及び4について測定した。その結果を表3に示す。これらの結果は、実施例1が100ppm未満の残留フッ素含有量及びSiOMe3K塩基の使用に起因する80ppmのケイ素含有量を含むことを示している。
【0173】
【0174】
膜の調製
膜は、ガラスプレート上にキャストしたDMSO中20重量%のポリマーの溶液から調製することができる。次いで、溶媒を、以下の熱サイクルを用いて蒸発させる:80℃で1時間、100℃で1時間、120℃で1時間、150℃で1時間、180℃で2時間。実施例1では、硬化した後、透明で比較的無着色の膜を得る。
また、NMPを溶媒として用いて、反証例1及び3の膜を得る。
対照的に、反証例2ではフィルムは形成されない。
これらの結果を表4に示す。
【0175】
【0176】
これらの結果は、本発明の方法が、フィルムの製造を可能にするために十分な機械的特性を有するイソソルビドをベースとした半芳香族ポリエーテルを4,4’-ジクロロジフェニルスルホンから、低温、すなわち40℃~100℃の温度で得ることができることを示している。
【0177】
比較として、フィルムの製造を可能にするために十分な機械的特性を有するビスフェノールAをベースとした芳香族ポリエーテルスルホンの製造は、160℃で14時間の加熱を必要とし(反証例1)、また、フィルムの製造を可能にするために十分な機械的特性を有するイソソルビドと4,4’-ジフルオロジフェニルスルホンをベースとした芳香族ポリエーテルスルホンのK2CO3を塩基としての製造は140℃で24時間の加熱を必要とする(反証例3)。
【0178】
最後に、国際公開第2014/072473A2号に記載されている操作条件の再現では、フィルムの製造を可能にするために十分な機械的特性を有するイソソルビドをベースとした半芳香族ポリエーテルを製造することができない(反証例2)。
【0179】
膜に適用した特徴付けを下に記載する。
接触角:接触角はヤングの式に従って水で測定した。
【0180】
[数1]
σs=γsl+σ1・cosθ
式中、
σsは、固体/気体界面の表面張力であり、
γslは、固体/液体界面の表面張力であり、
σ1は、液体/気体界面の表面張力であり、
θは接触角である。
【0181】
【0182】
本発明の方法により得られた実施例1の半芳香族ポリエーテルから得られるフィルムの接触角は、ポリマーが、ビスフェノールをベースとした参照ポリスルホンよりも親水性が高いことを示している(表5)。半芳香族ポリエーテルの親水性は、水相の分離特性における利点である。
【0183】
引用文献の一覧
特許文献
全ての有用な目的のために、以下の特許文献を引用する:
- patcit1:国際公開第2013/023997A1号(公開番号)、
- patcit2:国際公開第2014/072473A2号(公開番号)、及び
- patcit3:米国特許第2015/0129487A1号(公開番号)。
【0184】
非特許文献
全ての有用な目的のために、以下の非特許要素を引用する:
- nplcit1:H.Kricheldorfら,J.Polymer Sci.,Part A:Polym.Chem.,1995,33,2667~2671;
- nplcit2:S.Chattiら,High perform.Polym.,2009,21,105~118;
- nplcit3:H.W.Kimら,Journal of Membrane Science,vol.372,no.1,p.116~124,2011;
- nplcit4:K.M.Diederichsenら,Macromolecules,vol.50,no.10,p.3831~3840,2017;
- nplcit5:H.J.Leeら,Journal of Membrane science,vol.485,p.10~16,2015;
- nplcit6:L.Jujie,X.Heら,J.Polym.Res,vol.24,no.1,p.1,2017;
- nplcit7:L.F.Hancockら,Biomaterials,vol.21,no.7,p.725~733,2000;
- nplcit8:L.Wangら,Polymer Chemsitry,vol.5、no.8、p.2836~2842,2014;及び
- nplcit9:R.N.Johnson,A.G.Farham,J.Polym.Sci.A-1 Polym.Chem.,vol.5,no.9,p.2415~2427,1967。