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特許7566790固体撮像装置、撮像装置及び撮像システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】固体撮像装置、撮像装置及び撮像システム
(51)【国際特許分類】
   H01L 27/146 20060101AFI20241007BHJP
   H04N 5/33 20230101ALI20241007BHJP
   H04N 25/70 20230101ALI20241007BHJP
【FI】
H01L27/146 F
H04N5/33
H04N25/70
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021569827
(86)(22)【出願日】2020-12-23
(86)【国際出願番号】 JP2020048291
(87)【国際公開番号】W WO2021140920
(87)【国際公開日】2021-07-15
【審査請求日】2023-11-01
(31)【優先権主張番号】P 2020001209
(32)【優先日】2020-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 三佐男
(72)【発明者】
【氏名】辻 清茂
【審査官】柴山 将隆
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/194030(WO,A1)
【文献】特開2017-92781(JP,A)
【文献】特開2015-5533(JP,A)
【文献】特開2008-236158(JP,A)
【文献】特開2018-182020(JP,A)
【文献】特開2013-232529(JP,A)
【文献】国際公開第2013/084529(WO,A1)
【文献】特開2014-241376(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/146
H04N 5/33
H04N 25/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンよりもバンドギャップエネルギーが小さい材料を用いて構成された光電変換部と、
前記光電変換部に接合される回路基板と、
を備え、
前記回路基板は、
前記光電変換部で発生した電荷に応じた電圧値の画素信号を生成する画素信号生成回路と、
前記回路基板の温度を検出する温度計回路と、
を備える固体撮像装置。
【請求項2】
前記画素信号生成回路は、前記回路基板の第1面における第1領域に配置され、
前記光電変換部は、前記回路基板の前記第1領域に接合されている
請求項1に記載の固体撮像装置。
【請求項3】
前記温度計回路は、前記回路基板の前記第1面における前記第1領域以外の領域に形成されている
請求項2に記載の固体撮像装置。
【請求項4】
前記回路基板は、前記回路基板の前記第1面における前記第1領域の周囲に位置し、前記画素信号を処理するロジック回路が配置された第2領域を含み、
前記温度計回路は、前記第2領域の近傍に配置されている
請求項2に記載の固体撮像装置。
【請求項5】
前記温度計回路は、前記第1領域と前記第2領域との間に配置されている
請求項4に記載の固体撮像装置。
【請求項6】
前記温度計回路から出力されたアナログ信号をデジタル信号に変換する変換回路をさらに備える
請求項1に記載の固体撮像装置。
【請求項7】
前記光電変換部は、化合物半導体にて構成されている
請求項1に記載の固体撮像装置。
【請求項8】
前記光電変換部は、InGaP、InAlP、InGaAs、InAlAs、カルコパイライト構造の化合物半導体、アモルファスシリコン、ゲルマニウム、量子ドット光電変換膜、及び、有機光電変換膜のうちの少なくとも1つを含む
請求項1に記載の固体撮像装置。
【請求項9】
前記温度計回路は、シリコンダイオード及びPNPトランジスタのうちの少なくとも1つを含む
請求項1に記載の固体撮像装置。
【請求項10】
複数の前記温度計回路を備える
請求項1に記載の固体撮像装置。
【請求項11】
1200nm(ナノメートル)以上の波長の光に対して感度を持つ材料を用いて構成された光電変換部と、
前記光電変換部に接合される回路基板と、
を備え、
前記回路基板は、
前記光電変換部で発生した電荷に応じた電圧値の画素信号を生成する画素信号生成回路と、
前記回路基板の温度を検出する温度計回路と、
を備える固体撮像装置。
【請求項12】
請求項1に記載の固体撮像装置と、
前記固体撮像装置を収容するパッケージと、
を備える撮像装置。
【請求項13】
前記パッケージ内に配置され、前記回路基板における前記画素信号生成回路及び前記温度計回路が配置された第1面と反対側の第2面側に配置された温度制御素子をさらに備える
請求項12に記載の撮像装置。
【請求項14】
前記温度計回路は、前記第1面と垂直な方向において前記温度制御素子と重畳する領域に配置されている
請求項13に記載の撮像装置。
【請求項15】
前記温度制御素子は、ペルチェ素子である
請求項13に記載の撮像装置。
【請求項16】
請求項1に記載の固体撮像装置と、前記固体撮像装置の温度を制御するための温度制御素子とを備える撮像装置と、
前記温度制御素子を制御する温度制御装置と、
前記固体撮像装置及び温度制御装置を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記温度計回路で検出された温度に基づいて、前記温度制御装置を制御する
撮像システム。
【請求項17】
前記固体撮像装置は、前記温度計回路から出力されたアナログ信号をデジタル信号に変換する変換回路をさらに備え、
前記撮像装置は、前記固体撮像装置及び前記温度制御素子を収容するパッケージをさらに備え、
前記パッケージは、前記固体撮像装置と前記制御装置との間でデジタル信号を送信又は受信するための端子を備え、
前記固体撮像装置は、前記端子を介して、前記デジタル信号を前記制御装置へ送信する
請求項16に記載の撮像システム。
【請求項18】
前記固体撮像装置と前記制御装置とは、I2C(Inter-Integrated Circuit)又はSPI(Serial Peripheral Interface)を介して接続されている
請求項17に記載の撮像システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、固体撮像装置、撮像装置及び撮像システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ(CIS:CMOS Image Sensor)等の固体撮像素子の普及が著しく、様々な分野でフィルム式の撮影装置と置き換えて活用されている。固体撮像素子は、通常の可視光の撮影においてフィルム式の撮影装置に代えて活用されていることはもちろん、紫外線や赤外線、X線やガンマ線といった非可視光の撮影における活用も顕著である。
【0003】
さらに、固体撮像素子の中に光電変換膜を有する撮像装置の中には、光電変換のキャリアとして正孔を取り扱う撮像装置が存在する。例えば、正孔を光電変換のキャリアとする光電変換膜には、量子(Q:Quantum)dot、InGaAs(イリジウムガリウムヒ素)センサ、有機化合物などがある。特に光電変換膜としてInGaAsを用いた固体撮像素子は、暗電流が低く、且つバンドギャップエネルギーがシリコンより狭く赤外光などの長波長の光を捉えられるため、高感度の赤外線カメラなどへの応用が期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-130364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、InGaAsなどのシリコンよりもバンドキャップエネルギーが狭い物質を光電変換膜に使用したイメージセンサは、シリコンを光電変換膜に使用したイメージセンサと比べて温度変動に対する感度が高い。そのため、高温になるほど多くの暗電流が発生してしまい、それにより、画質が低下してしまうという課題が存在する。
【0006】
そこで本開示では、画質の低下を抑制することが可能な固体撮像装置、撮像装置及び撮像システムを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本開示に係る一形態の固体撮像装置は、シリコンよりもバンドギャップエネルギーが小さい材料を用いて構成された光電変換部と、前記光電変換部に接合される回路基板とを備え、前記回路基板は、前記光電変換部で発生した電荷に応じた電圧値の画素信号を生成する画素信号生成回路と、前記回路基板の温度を検出する温度計回路とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施形態に係る固体撮像装置の概略構成例を示すブロック図である。
図2】第1の実施形態に係るセンサ画素の概略構成例を示す回路図である。
図3】第1の実施形態に係る固体撮像装置の概略構成例を示す斜視図である。
図4】第1の実施形態に係る固体撮像装置の断面構成例を示す断面図である。
図5】第1の実施形態に係る受光素子の概略構成を表す平面模式図である。
図6図5のA-A線に沿った断面構成を表す模式図である。
図7】第1の実施形態の画素構造を示す断面図である。
図8】第1の実施形態に係るセンサパッケージの構成例を示す平面図である。
図9】第1の実施形態に係るセンサパッケージの構成例を示す断面図である。
図10】第1の実施形態に係るセンサパッケージの構成例を示す分解断面図である。
図11】第1の実施形態に係るパッケージ基板の上面側の構成例を示す平面図である。
図12】第1の実施形態に係るパッケージ基板とセラミックインターポーザ基板との位置関係を例示する平面図である。
図13】第1の実施形態に係るペルチェ素子の構成例を示す断面図である。
図14】第1の実施形態の第1システム構成例に係る撮像システムの概略構成例を示すブロック図である。
図15】第1の実施形態の第2システム構成例に係る撮像システムの概略構成例を示すブロック図である。
図16】第1の実施形態の第1例に係る温度計回路の配置を説明するためのレイアウト図である。
図17】第1の実施形態の第2例に係る温度計回路の配置を説明するための図である。
図18】第1の実施形態の第3例に係る温度計回路の配置を説明するための図である。
図19】第1の実施形態に係る温度計回路の一例を示す回路図である。
図20】第1の実施形態の第1フロー例に係る温度制御フローの一例を示すフローチャートである。
図21】第1の実施形態の第2フロー例に係る温度制御フローの一例を示すフローチャートである。
図22】本開示に係る技術が適用され得る移動体制御システムの一例である車両制御システムの概略的な構成例を示すブロック図である。
図23図22に示す撮像部の設置位置の例を示す図である。
図24】本開示に係る技術が適用され得る内視鏡手術システムの概略的な構成の一例を示す図である。
図25図24に示すカメラヘッド及びCCUの機能構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本開示の一実施形態について図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態において、同一の部位には同一の符号を付することにより重複する説明を省略する。
【0010】
また、以下に示す項目順序に従って本開示を説明する。
1.はじめに
2.第1の実施形態
2.1 構成例
2.2 光電変換部周辺の断面構造例
2.3 固体撮像装置の構成例
2.4 接合構造例
2.5 固体撮像装置のパッケージングについて
2.6 温度制御機構について
2.7 温度センサ(温度計回路)の位置について
2.8 撮像システムの概略構成例
2.8.1 第1システム構成例
2.8.2 第2システム構成例
2.9 温度計回路の配置例
2.9.1 第1例
2.9.2 第2例
2.9.3 第3例
2.10 温度計回路の例
2.11 温度制御フロー
2.11.1 第1フロー例
2.11.2 第2フロー例
3.応用例
【0011】
1.はじめに
一般的な固体撮像装置(以下、イメージセンサともいう)は、シリコン基板内に形成されたフォトダイオードなどの光電変換部で入射光を光電変換し、これにより発生した電荷に基づいてイメージ画像を生成する。
【0012】
また、近年では、光電変換膜に化合物半導体等が使用されたイメージセンサも存在する。その例としては、InGaAsを積層した短波赤外(SWIR)センサなどが挙げられる。
【0013】
CMOSイメージセンサ(CIS)は、シリコン基板に設けられた光電変換部を受光素子としており、その感度波長は物理的に1100nm(ナノメートル)程度までであるが、InGaAsなどの化合物を光電変換膜に使用することにより、波長1200nm以上の赤外光に対して感度を持つイメージセンサを作成することができる。
【0014】
これは、InGaAsのバンドギャップエネルギーがシリコンのそれよりも小さく、1200nm以上の長波長の光に対しても光電変換が可能なためである。
【0015】
ただし、シリコンよりもバンドギャップエネルギーが小さい光電変換材料は、温度変動に対してもシリコン以上の感度を持つ。そのため、高温になるほど暗電流と言われるノイズを多く発生させる。
【0016】
ノイズである暗電流の発生を抑えるためには、光電変換膜を含むチップ(以下、センサチップともいう)を冷却又は一定の温度に保つ仕組み(以下、温度制御機構ともいう)を、イメージセンサを収容するパッケージ内に設けることが考えられる。
【0017】
温度制御機構には、例えば、ペルチェ素子などを用いることができる。その場合、チップの温度を測るためのディスクリートのサーミスタ素子をセンサチップに取り付け、センサチップ外に配置された温度制御回路が、サーミスタ素子から出力された電流又は電圧に基づいてペルチェ素子を制御する構成が考えられる。
【0018】
パッケージ内のペルチェ素子へは、例えば、パッケージ外の温度制御回路からパッケージに設けられた外部端子を通して電流又は電圧を与えることで、温度制御を実行することができる。
【0019】
また、パッケージ内にのサーミスタ素子から出力された温度と相関のある電圧又は電流は、パッケージの外部端子通して温度制御回路に入力される。
【0020】
しかしながら、以上のような構成では、以下のような課題が存在する。
【0021】
まず、温度制御の目的はセンサチップで生じる温度起因のノイズであるが、ディスクリートのサーミスタ素子が物理的にパッケージ内に実装される構成では、センサチップの温度が正確にモニタされているとは限られない。実装状況によりセンサチップからサーミスタ素子までの熱抵抗がばらつくため、サーミスタ素子から出力される信号の誤差も大きい。
【0022】
また、サーミスタ素子は一般的にアナログ出力であるため、外来ノイズに対するロバスト性が低い。サーミスタ素子の出力を外部の温度制御回路へ配線する必要があるが、この配線には制御信号線や電源配線が平行して配線されるため、容量を持ち易い。
【0023】
さらに、温度制御機構として例えばペルチェ素子を用いた場合、このペルチェ素子が発生した熱をパッケージ外部へ放熱する必要がある。そのため、パッケージの裏面には端子が設けられていない広い領域がひつようとなり、それにより、パッケージに設ける端子数を多くすることができない。加えて、イメージセンサ用の制御端子や電源端子以外に、サーミスタ素子の出力をパッケージ外部へ出力するための端子とペルチェ素子の制御信号をパッケージ内部に入力するための端子とが必要となり、その分、パッケージの端子数を圧迫する。
【0024】
さらにまた、パッケージ内にサーミスタ素子を追加になることにより、サーミスタ素子自体の不良やその実装不良により、イメージセンサとしての製品の歩留が悪化する一因となる。
【0025】
そこで以下の実施形態では、上記課題のうちの少なくとも1つを解決することで、画質の低下を抑制することが可能な固体撮像装置及び撮像システムを提案する。
【0026】
2.第1の実施形態
まず、本開示の第1の実施形態に係る固体撮像装置及び撮像システムについて、図面を参照して詳細に説明する。
【0027】
2.1 構成例
図1は、第1の実施形態に係る固体撮像装置の概略構成例を示すブロック図である。図2は、第1の実施形態に係るセンサ画素の概略構成例を示す回路図である。図3は、第1の実施形態に係る固体撮像装置の概略構成例を示す斜視図である。
【0028】
図1に示すように、固体撮像装置1は、例えば赤外線イメージセンサであり、例えば波長1200nm以上の光に対しても感度を有している。固体撮像装置1は、光電変換素子を含む複数のセンサ画素11が行列状(マトリックス状)に2次元配置されてなる画素アレイ部10を備えている。センサ画素11は、例えば、図2に示すように、光電変換を行う画素回路14と、画素回路14から出力された電荷に基づく画素信号を出力する読出し回路15とによって構成されている。
【0029】
画素回路14は、例えば、フォトダイオードPDと、転送トランジスタTRGと、フローティングディフュージョンFDと、排出トランジスタOFGとを有している。転送トランジスタTRGおよび排出トランジスタOFGは、例えば、NMOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタである。フォトダイオードPDは、本開示の「光電変換部」の一具体例に相当する。
【0030】
フォトダイオードPDは、所定の波長の光(例えば、波長1200nm以上の赤外領域の波長の光)を吸収して、信号電荷を発生する光電変換部である。フォトダイオードPDを構成する光電変換材料には、例えば、III-V族半導体などの化合物半導体を含む材料が用いられ得る。
【0031】
フォトダイオードPDに用いられるIII-V族半導体としては、例えば、InGaP、InAlP、InGaAs、InAlAs、カルコパイライト構造の化合物半導体などが挙げられる。カルコパイライト構造の化合物半導体は、高い光吸収係数と、広い波長域に渡って高い感度が得られる材料であり、光電変換用のn型半導体材料として好ましく用いられる。フォトダイオードPDは、上述した化合物半導体の他、アモルファスシリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、量子ドット光電変換膜、有機光電変換膜などを含んで構成されていてもよい。以下の説明では、InGaAsをフォトダイオードPDに用いた場合を例示する。
【0032】
フォトダイオードPDのカソードが、転送トランジスタTRGのソースに接続されており、フォトダイオードPDのアノードが、電圧Vtopが印加される電源線に接続されている。転送トランジスタTRGのドレインがフローティングディフュージョンFDに接続され、転送トランジスタTRGのゲートは画素駆動線12に接続されている。
【0033】
転送トランジスタTRGは、フォトダイオードPDのカソードとフローティングディフュージョンFDとの間に接続されており、ゲート電極に印加される制御信号に応じて、フォトダイオードPDに保持されている電荷をフローティングディフュージョンFDに転送する。転送トランジスタTRGのドレインがフローティングディフュージョンFDに電気的に接続されており、転送トランジスタTRGのゲートは画素駆動線12に接続されている。
【0034】
フローティングディフュージョンFDは、転送トランジスタTRGを介してフォトダイオードPDから転送された電荷を一時的に保持する浮遊拡散領域である。フローティングディフュージョンFDには、例えば、読出し回路15が接続されるとともに、読出し回路15を介して垂直信号線13が接続されている。フローティングディフュージョンFDは、読出し回路15の入力端に接続されている。
【0035】
排出トランジスタOFGでは、ドレインが、電圧Vdrが印加される電源線に接続され、ソースがフォトダイオードPDのカソードに接続されている。排出トランジスタOFGは、ゲート電極に印加される制御信号に応じて、フォトダイオードPDの電荷を初期化(リセット)する。
【0036】
読出し回路15は、例えば、リセットトランジスタRSTと、選択トランジスタSELと、増幅トランジスタAMPとを有している。リセットトランジスタRSTのソース(読出し回路15の入力端)がフローティングディフュージョンFDに接続されており、リセットトランジスタRSTのドレインが電源線VDDおよび増幅トランジスタAMPのドレインに接続されている。リセットトランジスタRSTのゲートは画素駆動線12に接続されている。増幅トランジスタAMPのソースが選択トランジスタSELのドレインに接続されており、増幅トランジスタAMPのゲートがリセットトランジスタRSTのソースに接続されている。選択トランジスタSELのソース(読出し回路15の出力端)が垂直信号線13に接続されており、選択トランジスタSELのゲートが画素駆動線12に接続されている。
【0037】
リセットトランジスタRSTは、フローティングディフュージョンFDの電位を所定の電位に初期化(リセット)する。リセットトランジスタRSTがオン状態となると、フローティングディフュージョンFDの電位を電源線VDDの電位にリセットする。選択トランジスタSELは、読出し回路15からの画素信号の出力タイミングを制御する。増幅トランジスタAMPは、画素信号として、フローティングディフュージョンFDに保持された電荷のレベルに応じた電圧の信号を生成する。つまり、増幅トランジスタAMPは、画素信号として、センサ画素11における受光量の応じた電圧の信号を生成する。増幅トランジスタAMPは、ソースフォロア型のアンプを構成しており、フォトダイオードPDで発生した電荷のレベルに応じた電圧の画素信号を出力する。増幅トランジスタAMPは、選択トランジスタSELがオン状態となると、フローティングディフュージョンFDの電位を増幅して、その電位に応じた電圧を、垂直信号線13を介して、後述の水平選択回路40に出力する。
【0038】
なお、選択トランジスタSELが、電源線VDDと増幅トランジスタAMPとの間に設けられていてもよい。この場合、リセットトランジスタRSTのドレインが電源線VDDおよび選択トランジスタSELのドレインに接続されている。選択トランジスタSELのソースが増幅トランジスタAMPのドレインに接続されており、選択トランジスタSELのゲートが画素駆動線12に接続されている。増幅トランジスタAMPのソース(読出し回路15の出力端)が垂直信号線13に接続されており、増幅トランジスタAMPのゲートがリセットトランジスタRSTのソースに接続されている。
【0039】
固体撮像装置1は、例えば、図3に示すように、2つの基板(受光基板100および回路基板200)を備えている。固体撮像装置1は、2つの基板(受光基板100および回路基板200)を貼り合わせて構成された3次元構造(積層構造ともいう)を備えている。
【0040】
受光基板100は、InGaAs基板に、複数のフォトダイオードPDが行列状に形成された構造を備える。受光基板100の上面(回路基板200とは反対側の表面)が受光面100Aとなっている。
【0041】
回路基板200は、例えば、シリコン(Si)基板の一方の面側に、画素信号生成回路領域200Aと、周辺回路領域200Bとが設けられた構造を備える。
【0042】
画素信号生成回路領域200Aには、複数の画素信号生成回路45が行列状に形成されている。各画素信号生成回路45は、センサ画素11のうちフォトダイオードPDを除いた回路である。
【0043】
受光基板100は、回路基板200における画素信号生成回路領域200Aに接合される。これは、受光基板100には基本的にトランジスタなどの回路素子が作り込まれず、主に光電変換膜として機能するためである。また、受光基板100に1200nmよりも長い波長の光に対しても感度を持つ化合物半導体を用いた場合、回路素子から発せられた光も光電変換してしまうため、受光基板100の下方に画素回路14(ただし、フォトダイオードPDは除く)以外の回路素子が存在すると、この回路素子から発せられた光により画素の均一性が損なわれる恐れがあるためである。
【0044】
周辺回路領域200Bには、画素信号を処理するロジック回路が形成されており、例えば、垂直駆動回路20、水平駆動回路30、水平選択回路40、システム制御回路16、膜電圧制御部17および電圧生成回路18が配置されている。これらで構成されたロジック回路は、センサ画素11ごとの画素信号(デジタル値)を外部に出力する。
【0045】
なお、受光基板100で覆われていない周辺回路領域200Bは、例えば、パッシベーションなどの絶縁膜により覆われていてもよい。
【0046】
このように、固体撮像装置1は、画素アレイ部10、垂直駆動回路20、水平駆動回路30、水平選択回路40、システム制御回路16、膜電圧制御部17および電圧生成回路18を備えている。
【0047】
システム制御回路16は、マスタークロックに基づいて、垂直駆動回路20、水平駆動回路30、水平選択回路40および膜電圧制御部17などの動作の基準となるクロック信号や制御信号などを生成し、垂直駆動回路20、水平選択回路40および膜電圧制御部17などに対して与える。
【0048】
垂直駆動回路20は、例えば、シフトレジスタなどを含み、複数の画素駆動線12を介して、複数のセンサ画素11の行走査の制御を行う。
【0049】
水平選択回路40は、例えば、画素アレイ部10の画素列(または垂直信号線13)ごとに、ADC(Analog-to-Digital Converter)40aおよびスイッチ素子40bが設けられた回路である。ADC40aは、画素信号をAD変換する。ADC40aは、アナログレンジRを可変させることが可能となっており、外部から入力されたレンジ設定値に基づくアナログレンジRに設定する。なお、本実施形態では、アナログレンジRはRaに設定されているものとする。
【0050】
ADC40aの入力端には垂直信号線13が接続されており、ADC40aの出力端にはスイッチ素子40bが接続されている。水平駆動回路30は、例えば、シフトレジスタなどによって構成され、水平選択回路40の各スイッチ素子40bを順番に駆動する。水平駆動回路30によって各スイッチ素子40bを順番に駆動することにより、垂直信号線13の各々を通して伝送される各画素信号が順番に水平信号線40cに出力され、DSP回路などに入力される。
【0051】
膜電圧制御部17は、センサ画素11から得られる画素信号に基づいて、各フォトダイオードPDに印加する膜電圧Vfを制御する。膜電圧制御部17は、膜電圧Vfを制御するための制御信号を電圧生成回路18に出力する。電圧生成回路18は、膜電圧制御部17から入力された制御信号に基づいて、アナログの電圧(電圧VtopおよびVdr)を生成し、電源線を介して各フォトダイオードPDに印加する。つまり、膜電圧制御部17および電圧生成回路18は、センサ画素11から得られる画素信号に基づく膜電圧Vfを各フォトダイオードPDに印加することにより、画素信号から得られる画像データの画質を制御する。
【0052】
2.2 光電変換部周辺の断面構造例
図4は、第1の実施形態に係る固体撮像装置における光電変換部(フォトダイオードPD)周辺の断面構成例を示す断面図である。図4に示すように、固体撮像装置1において、受光基板100は、光電変換部(フォトダイオードPD)であるn型半導体膜21を有している。n型半導体膜21は画素アレイ部10の全面に形成されており、例えば、フォトダイオードPDに用いられる材料として上述した材料によって構成されている。なお、以下では、n型半導体膜21がInGaAsによって構成されているものとして、他の構成についての説明を行う。
【0053】
受光基板100は、さらに、n型半導体膜21の、回路基板200側の面に接するp型半導体層22をセンサ画素11ごとに有している。各p型半導体層22は、高濃度のp型半導体によって形成されており、例えば、p型InGaAsによって形成されている。p型半導体層22は、フォトダイオードPDの電極(第2電極)としての機能を有している。p型半導体層22には、オン状態の排出トランジスタOFGを介して所定の電圧Vdrが印加されたり、オン状態の転送トランジスタTRGおよびリセットトランジスタRSTを介して電源線VDDの電圧Vddが印加されたりする。受光基板100は、さらに、各p型半導体層22を互いに分離するn型半導体層23を有している。n型半導体層23は、各p型半導体層22と同一の層内に形成されており、例えば、n型InPによって形成されている。
【0054】
受光基板100は、さらに、n型半導体膜21の、受光面100A側の面に接するn型半導体層24を有している。n型半導体層24は、n型半導体膜21よりも高濃度のn型半導体によって形成されており、例えば、n型InGaAs、n型InPまたはn型InAlAsによって形成されている。n型半導体層24は、n型半導体膜21で生成された電荷の逆流を防止するバリア層として機能する。受光基板100は、さらに、n型半導体層24の、受光面100A側の面に接する反射防止膜25を有している。反射防止膜25は、例えば、窒化シリコン(SiN)、酸化ハフニウム(HfO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化タンタル(TaTa)、酸化チタン(TiO)などによって形成されている。n型半導体層24は、n型半導体膜21を上下に挟む電極のうちの上側の電極(第1電極)としても機能する。上部電極には、所定の電圧Vtopが印加される。
【0055】
受光基板100は、さらに、反射防止膜25の上に、カラーフィルタ26およびオンチップレンズ27を有している。カラーフィルタ26は、赤色光を選択的に透過させる複数のフィルタ26Rと、緑色光を選択的に透過させる複数のフィルタ26Gと、青色光を選択的に透過させる複数のフィルタ26Gとによって構成されている。複数のフィルタ26R,26G,26Bは、センサ画素11ごとに1つずつ設けられており、例えば、受光面100Aと平行な面内にベイヤー配列で配置されている。なお、図4には、フィルタ26Rが設けられたセンサ画素11が11Rと表記されており、フィルタ26Gが設けられたセンサ画素11が11Gと表記されており、フィルタ26Bが設けられたセンサ画素11が11Bと表記されている。なお、カラーフィルタ26は、必要に応じて省略され得る。
【0056】
受光基板100は、さらに、p型半導体層22およびn型半導体層23の下側に、パッシベーション層28および絶縁層29を有している。受光基板100は、さらに、パッシベーション層28を貫通するとともにp型半導体層22に接する接続電極31と、絶縁層29を貫通するとともに接続電極31に接するバンプ電極32とを有している。一組の接続電極31およびバンプ電極32は、センサ画素11ごとに1つずつ設けられている。バンプ電極32は、回路基板200の接続層43(後述)に接合されており、接続層43と電気的に接続されている。バンプ電極32は、例えば、受光基板100と回路基板200とを互いに貼り合わせた際に、回路基板200の接続層43に接合される。
【0057】
なお、パッシベーション層28及び絶縁層29は、層間絶縁層として構成されていてもよい。その際、パッシベーション層28及び絶縁層29のうちの少なくとも一方は、多層構造を有していてもよい。パッシベーション層28及び絶縁層29を層間絶縁層とした場合、接続電極31及びバンプ電極32は、層観絶縁層中に設けられた配線の一部であってもよい。その場合、この層間絶縁層の配線(バンプ電極32)と回路基板200における層間絶縁層42の配線(接続層43)とが直接接合されることで、受光基板100(例えば、フォトダイオードPD)と回路基板200(例えば、フォトダイオードPD以外の画素回路14及び読出し回路15)とが電気的に接続される。
【0058】
回路基板200は、支持基板41と層間絶縁層42とを含む。支持基板41は、例えばシリコン(Si)基板により構成されている。層間絶縁層42は、支持基板41と絶縁層291(受光基板100)との間に設けられている。層間絶縁層42には、例えば、受光基板100に近い位置から順に、複数の接続層43、複数の読出し電極44、複数の画素信号生成回路45および複数の配線46が設けられている。複数組の接続層43、読出し電極44、画素信号生成回路45および配線46がセンサ画素11ごとに一組ずつ設けられている。層間絶縁層42内の複数の層間絶縁層42が、例えば、各フォトダイオードPDから電荷の読み出しを行うためのROIC(Read Out IC)内に設けられている。回路基板200の層間絶縁層42のうち、周辺回路領域200Bに対応する箇所には、上述のロジック回路が設けられている。
【0059】
2.3 固体撮像装置の構成例
図5及び図6は、第1の実施形態に係る固体撮像装置の構成例を示す図である。図5は、固体撮像装置1の平面構成を表し、図6は、図5のA-A線に沿った断面構成を表している。この固体撮像装置1には、例えば2次元配置された複数の受光単位領域P(センサ画素11)が設けられている(図6)。
【0060】
固体撮像装置1は、中央部の素子領域R1と、素子領域R1の外側に設けられ、素子領域R1を囲む周辺領域R2とを有している(図5)。固体撮像装置1は、素子領域R1から周辺領域R2にわたって設けられた導電膜33を有している。この導電膜33は、素子領域R1の中央部に対向する領域に開口を有している。
【0061】
固体撮像装置1は、受光基板100および回路基板200の積層構造を有している(図6)。受光基板100の一方の面は光入射面(光入射面S1)であり、光入射面S1と反対の面(他方の面)が、回路基板200との接合面(接合面S2)である。
【0062】
受光基板100は、回路基板200に近い位置にから、絶縁層29、接続電極31、半導体層21A、n型半導体層24および反射防止膜25をこの順に有している。半導体層21Aの絶縁層29との対向面および端面(側面)は、パッシベーション層28により覆われている。回路基板200は、いわゆるROIC(Readout integrated circuit)であり、受光基板100の接合面S2に接する配線層35および層間絶縁層42と、この配線層35および層間絶縁層42を間にして受光基板100に対向する支持基板41とを有している。
【0063】
受光基板100は素子領域R1に半導体層21Aを有している。換言すれば、半導体層21Aが設けられた領域が、固体撮像装置1の素子領域R1である。素子領域R1のうち、導電膜33から露出された領域(導電膜33の開口に対向する領域)が、受光領域である。素子領域R1のうち、導電膜33で覆われた領域は、OPB(Optical Black)領域R1Bである。OPB領域R1Bは、受光領域を囲むように設けられている。OPB領域R1Bは、黒レベルの画素信号を得るために用いられる。受光基板100は、周辺領域R2に、パッシベーション層28とともに埋込層36を有している。周辺領域R2には、受光基板100を貫通し、回路基板200に達する穴H1,H2が設けられている。固体撮像装置1では、受光基板100の光入射面S1から、反射防止膜25、n型半導体層24およびn型半導体層24を介して半導体層21Aに光が入射するようになっている。半導体層21Aで光電変換された信号電荷は、接続電極31および絶縁層29を介して移動し、回路基板200で読みだされる。以下、各部の構成について説明する。
【0064】
絶縁層29は、素子領域R1および周辺領域R2にわたって設けられ、回路基板200との接合面S2を有している。固体撮像装置1では、この受光基板100の接合面S2が素子領域R1および周辺領域R2に設けられ、例えば素子領域R1の接合面S2と周辺領域R2の接合面S2とは、同一平面を構成している。後述するように、固体撮像装置1では、埋込層36を設けることにより周辺領域R2の接合面S2が形成される。
【0065】
絶縁層29は、例えば絶縁層29を構成する層間絶縁膜29A,29B中に、バンプ電極32およびダミー電極32Dを有している。例えば、回路基板200側に層間絶縁膜29Bが、p型半導体層22側に層間絶縁膜29Aが配置され、これら層間絶縁膜29A,29Bが積層して設けられている。層間絶縁膜29A,29Bは、例えば、無機絶縁材料により構成されている。この無機絶縁材料としては、例えば、窒化シリコン(SiN),酸化アルミニウム(Al),酸化ケイ素(SiO)および酸化ハフニウム(HfO)等が挙げられる。層間絶縁膜29A,29Bを同一の無機絶縁材料により構成するようにしてもよい。
【0066】
バンプ電極32は、例えば、素子領域R1に設けられている。このバンプ電極32は、接続電極31と回路基板200とを電気的に接続するためのものであり、素子領域R1に画素P毎に設けられている。隣り合うバンプ電極32は、埋込層36および層間絶縁膜29A,29Bにより電気的に分離されている。バンプ電極32は、例えば銅(Cu)パッドにより構成されており、接合面S2に露出されている。ダミー電極32Dは、例えば、周辺領域R2に設けられている。このダミー電極32Dは、後述の配線層35のダミー接続層43Dに接続されている。このダミー電極32Dおよびダミー接続層43Dを設けることにより、周辺領域R2の強度を向上させることが可能となる。ダミー電極32Dは、例えば、バンプ電極32と同一工程で形成されている。ダミー電極32Dは、例えば銅(Cu)パッドにより構成されており、接合面S2に露出されている。
【0067】
バンプ電極32と半導体層21Aとの間に設けられた接続電極31は、n型半導体膜21で発生した信号電荷(正孔または電子、以下便宜上、信号電荷が正孔であるとして説明する。)を読みだすための電圧が供給される電極(アノード)であり、素子領域R1に画素P毎に設けられている。接続電極31は、パッシベーション層28の開口を埋め込むように設けられ、半導体層21A(より具体的には、拡散領域22A)に接している。接続電極31は、例えば、パッシベーション層28の開口よりも大きく、接続電極31の一部は、埋込層36に設けられている。即ち、接続電極31の上面(半導体層21A側の面)は、拡散領域22Aに接し、接続電極31の下面および側面の一部は埋込層36に接している。隣り合う接続電極31は、パッシベーション層28および埋込層36により電気的に分離されている。
【0068】
接続電極31は、例えば、チタン(Ti),タングステン(W),窒化チタン(TiN),白金(Pt),金(Au),ゲルマニウム(Ge),パラジウム(Pd),亜鉛(Zn),ニッケル(Ni)およびアルミニウム(Al)のうちのいずれかの単体、またはそれらのうちの少なくとも1種を含む合金により構成されている。接続電極31は、このような構成材料の単膜であってもよく、あるいは、2種以上を組み合わせた積層膜であってもよい。例えば、接続電極31は、チタンおよびタングステンの積層膜により構成されている。接続電極31の厚みは、例えば数十nm~数百nmである。
【0069】
半導体層21Aは、例えば、絶縁層29に近い位置から、p型半導体層22、n型半導体膜21およびn型半導体層24を含んでいる。p型半導体層22、n型半導体膜21およびn型半導体層24は、互いに同じ平面形状を有し、各々の端面は、平面視で同じ位置に配置されている。
【0070】
p型半導体層22は、例えば、全ての画素Pに共通して設けられ、パッシベーション層28とn型半導体膜21との間に配置されている。p型半導体層22は、隣り合う画素Pを電気的に分離するためのものであり、p型半導体層22には、例えば複数の拡散領域22Aが設けられている。p型半導体層22に、n型半導体膜21を構成する化合物半導体材料のバンドギャップよりも大きなバンドギャップの化合物半導体材料を用いることにより、暗電流を抑えることも可能となる。p型半導体層22には、例えばn型のInP(インジウムリン)を用いることができる。
【0071】
p型半導体層22に設けられた拡散領域22Aは、互いに離間して配置されている。拡散領域22Aは、画素P毎に配置され、それぞれの拡散領域22Aに接続電極31が接続されている。OPB領域R1Bにも拡散領域22Aが設けられている。拡散領域22Aは、n型半導体膜21で発生した信号電荷を画素P毎に読み出すためのものであり、例えば、p型不純物を含んでいる。p型不純物としては、例えばZn(亜鉛)等が挙げられる。このように、拡散領域22Aと、拡散領域22A以外のp型半導体層22との間にpn接合界面が形成され、隣り合う画素Pが電気的に分離されるようになっている。拡散領域22Aは、例えばp型半導体層22の厚み方向に設けられ、n型半導体膜21の厚み方向の一部にも設けられている。
【0072】
接続電極31とn型半導体層24との間、より具体的には、p型半導体層22とn型半導体層24との間のn型半導体膜21は、例えば、全ての画素Pに共通して設けられている。このn型半導体膜21は、所定の波長の光を吸収して、信号電荷を発生させるものであり、例えば、i型のIII-V族半導体などの化合物半導体材料により構成されている。n型半導体膜21を構成する化合物半導体材料としては、例えば、InGaAs(インジウムガリウム砒素),InAsSb(インジウム砒素アンチモン),InAs(インジウム砒素),InSb(インジムアンチモン)およびHgCdTe(水銀カドミウムテルル)等が挙げられる。Ge(ゲルマニウム)によりn型半導体膜21を構成するようにしてもよい。n型半導体膜21では、例えば、可視領域から短赤外領域の波長の光の光電変換がなされるようになっている。
【0073】
n型半導体層24は、例えば、全ての画素Pに共通して設けられている。このn型半導体層24は、n型半導体膜21とn型半導体層24との間に設けられ、これらに接している。n型半導体層24は、n型半導体層24から排出される電荷が移動する領域であり、例えば、n型の不純物を含む化合物半導体により構成されている。n型半導体層24には、例えば、n型のInP(インジウムリン)を用いることができる。
【0074】
n型半導体層24は、例えば各画素Pに共通の電極として、n型半導体層24上(光入射側)に、n型半導体層24に接するように設けられている。n型半導体層24は、n型半導体膜21で発生した電荷のうち、信号電荷として用いられない電荷を排出するためのものである(カソード)。例えば、正孔が、信号電荷として接続電極31から読み出される場合には、このn型半導体層24を通じて例えば電子を排出することができる。n型半導体層24は、例えば赤外線などの入射光を透過可能な導電膜により構成されている。n型半導体層24には、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)またはITiO(In-TiO)等を用いることができる。n型半導体層24は、例えば、隣り合う画素Pを仕切るように、格子状に設けられていてもよい。このn型半導体層24には、光透過性の低い導電材料を用いることが可能である。
【0075】
反射防止膜25は、n型半導体層24を光入射面S1側から覆っている。反射防止膜25は、反射防止機能を有していてもよい。反射防止膜25には、例えば窒化シリコン(SiN),酸化アルミニウム(Al),酸化ケイ素(SiO)および酸化タンタル(Ta)等を用いることができる。反射防止膜25は、OPB領域R1Bに開口37Hを有している。開口37Hは、例えば、受光領域を囲む額縁状に設けられている(図5)。開口37Hは、例えば平面視で四角形状または円状の孔であってもよい。この反射防止膜25の開口37Hにより、n型半導体層24に導電膜33が電気的に接続されている。
【0076】
パッシベーション層28は、p型半導体層22と埋込層36との間に設けられるとともに、p型半導体層22の端面、n型半導体膜21の端面、n型半導体層24の端面およびn型半導体層24の端面を覆い、周辺領域R2では反射防止膜25に接している。このパッシベーション層28は、例えば、酸化シリコン(SiO)または酸化アルミニウム(Al)等の酸化物を含んで構成されている。複数の膜からなる積層構造によりパッシベーション層28を構成するようにしてもよい。パッシベーション層28は、例えば酸窒化シリコン(SiON),炭素含有酸化シリコン(SiOC),窒化シリコン(SiN)およびシリコンカーバイド(SiC)などのシリコン(Si)系絶縁材料により構成するようにしてもよい。パッシベーション層28の厚みは、例えば数十nm~数百nmである。
【0077】
導電膜33は、OPB領域R1Bから周辺領域R2の穴H1にわたって設けられている。この導電膜33は、OPB領域R1Bに設けられた反射防止膜25の開口37Hでn型半導体層24に接するとともに、穴H1を介して回路基板200の配線46に接している。これにより、回路基板200から導電膜33を介してn型半導体層24に電圧が供給されるようになっている。導電膜33は、このようなn型半導体層24への電圧供給経路として機能するとともに、遮光膜としての機能を有し、OPB領域R1Bを形成する。導電膜33は、例えば、タングステン(W),アルミニウム(Al),チタン(Ti),モリブデン(Mo),タンタル(Ta)または銅(Cu)を含む金属材料により構成されている。導電膜33上にパッシベーション膜が設けられていてもよい。
【0078】
n型半導体層24の端部とn型半導体層24との間に、接着層Bが設けられていてもよい。この接着層Bは、後述するように、固体撮像装置1を形成する際に用いられるものであり、半導体層21Aを不図示の仮基板に接合する役割を担っている。接着層Bは、例えばテトラエトキシシラン(TEOS)または酸化シリコン(SiO)等により構成されている。接着層Bは、例えば、p型半導体層22の端面よりも拡幅して設けられ、半導体層21Aとともに、埋込層36に覆われている。接着層Bと埋込層36との間には、パッシベーション層28が設けられている。
【0079】
なお、接着層Bは、周辺領域R2の広い領域にわたって設けられていてもよく、例えば、半導体層21A(素子領域R1)の縁近傍から、穴H1と穴H2との間まで延在していてもよい。あるいは、接着層Bは、半導体層21A(素子領域R1)の縁近傍から、チップ端(チップ端E)まで延在していてもよい。
【0080】
埋込層36は、固体撮像装置1の製造工程で、仮基板と半導体層21Aとの段差を埋めるためのものである。詳細は後述するが、本実施形態では、この埋込層36を形成するので、半導体層21Aと仮基板との段差に起因した製造工程の不具合の発生が抑えられる。
【0081】
周辺領域R2の埋込層36は、絶縁層29とパッシベーション層28との間、および絶縁層29と反射防止膜25との間に設けられ、例えば、半導体層21Aの厚み以上の厚みを有している。ここでは、この埋込層36が半導体層21Aを囲んで設けられているので、半導体層21Aの周囲の領域(周辺領域R2)が形成される。これにより、この周辺領域R2に回路基板200との接合面S2を設けることができるようになっている。周辺領域R2に接合面S2が形成されていれば、埋込層36の厚みを小さくしてもよいが、埋込層36が半導体層21Aを厚み方向にわたって覆い、半導体層21Aの端面全面が埋込層36に覆われていることが好ましい。埋込層36が、パッシベーション層28を介して半導体層21Aの端面全面を覆うことにより、半導体層21Aへの水分の浸入を効果的に抑えることができる。素子領域R1の埋込層36は、接続電極31を覆うように、半導体層21Aと絶縁層29との間に設けられている。
【0082】
接合面S2側の埋込層36の面は平坦化されており、周辺領域R2では、この平坦化された埋込層36の面に絶縁層29が設けられている。埋込層36には、例えば、酸化シリコン(SiO X),窒化シリコン(SiN),酸窒化シリコン(SiON),炭素含有酸化シリコン(SiOC)およびシリコンカーバイド(SiC)等の無機絶縁材料を用いることができる。
【0083】
後述するように、固体撮像装置1を製造する工程では、埋込層36を形成した後、埋込層36の上方に、層間絶縁膜29A,29Bとバンプ電極32とを含む絶縁層29が形成される。この絶縁層29を含む受光基板100に、配線層35を含む回路基板200が貼り合わされて、固体撮像装置1が形成される。このとき、絶縁層29のバンプ電極32と、配線層35の接続層43とが接続される。バンプ電極32,接続層43は、例えばCuパッドを有しており、このCuパッドの直接接合により、バンプ電極32,接続層43接続されるようになっている。バンプ電極32をCMP(Chemical Mechanical Polishing)法を用いて形成するとき、研磨対象の銅膜の下方に配置された埋込層36には、研磨時の応力に耐え得る硬度が求められる。また、バンプ電極32,接続層43のCuパッド同士を直接接合させるためには、受光基板100および回路基板200を極めて平坦に形成することが必要である。このため、銅膜の下方に配置される埋込層36は、研磨時の応力に耐え得る硬度を有していることが好ましい。具体的には、埋込層36の構成材料は、一般的な半導体パッケージにおいてダイの周囲に配置される封止剤や有機材料よりも硬度が高い材料であることが好ましい。このような高い硬度を有する材料としては、例えば、無機絶縁材料が挙げられる。この無機絶縁材料を、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法、スパッタ法あるいはコーティング法で成膜することにより、埋込層36を形成することができる。
【0084】
埋込層36には、埋込層36を貫通する穴H1,H2が設けられている。この穴H1,H2は、埋込層36とともに、絶縁層29を貫通し、回路基板200に達している。穴H1,H2は、例えば、四角形状の平面形状を有し、素子領域R1を囲むように、各々複数の穴H1,H2が設けられている(図5)。穴H1は、穴H2よりも素子領域R1に近い位置に設けられており、穴H1の側壁および底面は、導電膜33に覆われている。この穴H1は、n型半導体層24(導電膜33)と回路基板200の配線(後述の配線46)とを接続するためのものであり、反射防止膜25、埋込層36および絶縁層29を貫通して設けられている。
【0085】
穴H2は、例えば、穴H1よりもチップ端Eに近い位置に設けられている。この穴H2は、反射防止膜25、埋込層36および絶縁層29を貫通し、回路基板200のパッド電極(後述のパッド電極38)に達している。この穴H2を介して、外部と固体撮像装置1との電気的な接続が行われるようになっている。穴H1,H2は、回路基板200に達していなくてもよい。例えば、穴H1,H2が、絶縁層29の配線に達し、この配線が回路基板200の配線46、パッド電極38に接続されていてもよい。穴H1,H2は、接着層Bを貫通していてもよい。
【0086】
n型半導体膜21で発生した正孔および電子は、接続電極31およびn型半導体層24から読み出される。この読出し動作を高速に行うためには、接続電極31とn型半導体層24との間の距離を、光電変換するに足る距離であってかつ離間し過ぎない距離にすることが好ましい。即ち、受光基板100の厚みを小さくすることが好ましい。例えば、接続電極31とn型半導体層24との間の距離または受光基板100の厚みは、10μm以下、さらには、7μm以下、さらには5μm以下である。
【0087】
回路基板200の支持基板41は、配線層35および層間絶縁層42を間にして、受光基板100に対向している。この支持基板41は、例えば、シリコン(Si)により構成されている。支持基板41の表面(配線層35側の面)近傍には、複数のトランジスタが設けられている。例えば、この複数のトランジスタを用いて、画素P毎に、読出回路(Read Out Circuit)が構成されている。配線層35は、例えば、受光基板100側から、層間絶縁膜35Aおよび層間絶縁膜35Bをこの順に有しており、これら層間絶縁膜35A,35Bは積層して設けられている。例えば、層間絶縁膜35A中に、接続層43およびダミー接続層43Dが設けられている。層間絶縁層42は、配線層35を間にして受光基板100に対向して設けられている。例えば、この層間絶縁層42中に、パッド電極38および複数の配線46が設けられている。層間絶縁膜35A,35Bは、例えば、無機絶縁材料により構成されている。この無機絶縁材料としては、例えば、窒化シリコン(SiN),酸化アルミニウム(Al),酸化ケイ素(SiO)および酸化ハフニウム(HfO)等が挙げられる。
【0088】
接続層43は、接続電極31と配線46とを電気的に接続するためのものであり、素子領域R1に、画素P毎に設けられている。この接続層43は、受光基板100の接合面S2でバンプ電極32に接している。隣り合う接続層43は、層間絶縁膜35Aにより電気的に分離されている。
【0089】
周辺領域R2に設けられたダミー接続層43Dは、受光基板100の接合面S2でダミー電極32Dに接している。このダミー接続層43Dは、例えば、接続層43と同一工程で形成されている。接続層43およびダミー接続層43Dは、例えば銅(Cu)パッドにより構成されており、回路基板200の受光基板100との対向面に露出されている。即ち、バンプ電極32と接続層43との間、および、ダミー電極32Dとダミー接続層43Dとの間で例えばCuCu接合がなされている。詳細は後述するが、これにより、画素Pを微細化することが可能となる。
【0090】
バンプ電極32に接続された配線46は、支持基板41の表面近傍に設けられたトランジスタに接続されており、画素P毎に、接続電極31と読出回路とが接続されるようになっている。穴H1を介して導電膜33に接続された配線46は、例えば所定の電位に接続されている。このように、n型半導体膜21で発生した電荷の一方(例えば、正孔)は、接続電極31から、バンプ電極32,接続層43を介して読出回路に読み出され、n型半導体膜21で発生した電荷の他方(例えば、電子)は、n型半導体層24から、導電膜33を介して、所定の電位に排出されるようになっている。
【0091】
周辺領域R2に設けられたパッド電極38は、外部と電気的な接続を行うためのものである。固体撮像装置1のチップ端E近傍には、受光基板100を貫通し、パッド電極38に達する穴H2が設けられ、この穴H2を介して外部と電気的な接続がなされるようになっている。接続は、例えば、ワイヤーボンドまたはバンプ等の方法によりなされる。例えば、穴H2内に配置された外部端子から、n型半導体層24に、穴H2の配線46および導電膜33を介して所定の電位が供給されるようになっていてもよい。n型半導体膜21での光電変換の結果、接続電極31から読み出された信号電圧が、バンプ電極32,接続層43を介して、支持基板41の読出回路に読み出され、この読出回路を経由して穴H2内に配置された外部端子に出力されるようになっていてもよい。信号電圧は、読出回路とともに、例えば、回路基板200に含まれる他の回路を経由して外部端子に出力されるようになっていてもよい。他の回路とは、例えば、信号処理回路および出力回路等である。
【0092】
回路基板200の厚みは、受光基板100の厚みよりも大きいことが好ましい。例えば、回路基板200の厚みは、受光基板100の厚みよりも、2倍以上、さらには、5倍以上、さらには、10倍以上大きいことが好ましい。あるいは、回路基板200の厚みは、例えば、100μm以上、あるいは、150μm以上、あるいは、200μm以上である。このような大きな厚みを有する回路基板200により、固体撮像装置1の機械強度が確保される。なお、この回路基板200は、回路を形成する支持基板41を1層のみ含むものであってもよいし、回路を形成する支持基板41の他に、支持基板などの基板をさらに備えていてもよい。
【0093】
2.4 接合構造例
次に、固体撮像装置1の接合構造例について説明する。図7は、第1の実施形態の接合構造例を示す断面図である。図7においては、画素アレイ部10内の各センサ画素11が、リセットトランジスタRSTの制御の違いによって、通常画素11aかまたは電荷放出画素11bに分けられるが、画素構造は通常画素11aと電荷放出画素11bのどちらも同一であるので、単にセンサ画素11として説明する。なお、電荷放出画素11bは、画素アレイ部10の最も外側に配置されている。
【0094】
各センサ画素11の転送トランジスタTRG、排出トランジスタOFG、フローティングディフュージョンFD、リセットトランジスタRST、増幅トランジスタAMP、及び、選択トランジスタSELの画素信号生成回路45が、例えば単結晶シリコン(Si)などの単結晶材料からなる回路基板200に画素ごとに形成されている。なお、図7では、回路基板200に形成されている、転送トランジスタTRG、排出トランジスタOFG、フローティングディフュージョンFD、リセットトランジスタRST、増幅トランジスタAMP、及び、選択トランジスタSELの符号の図示が省略されている。
【0095】
回路基板200の光入射側である上側には、フォトダイオードPDとなるn型半導体膜21が、画素アレイ部10の全面に形成されている。n型半導体膜21は、InGaP、InAlP、InGaAs、InAlAs、さらにはカルコパイライト構造の化合物半導体が用いられる。カルコパイライト構造の化合物半導体は、高い光吸収係数と、広い波長域に渡る高い感度が得られる材料であり、光電変換用のn型半導体膜21として好ましく用いられる。このようなカルコパイライト構造の化合物半導体は、Cu、Al、Ga、In、S、Seなど、IV族元素の周囲の元素を用いて構成され、CuGaInS系混晶、CuAlGaInS系混晶、およびCuAlGaInSSe系混晶等が例示される。
【0096】
また、n型半導体膜21の材料には、上述した化合物半導体の他、アモルファスシリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、量子ドット光電変換膜、有機光電変換膜などを用いることも可能である。
【0097】
本実施形態では、n型半導体膜21として、InGaAsの化合物半導体が用いられているものとする。
【0098】
n型半導体膜21の回路基板200側である下側には、画素電極を構成する高濃度のp型半導体層22が、画素ごとに形成されている。そして、画素ごとに形成された高濃度のp型半導体層22の間には、各センサ画素11を分離する画素分離領域としてのn型半導体層23が、例えば、InP等の化合物半導体で形成されている。このn型半導体層23は、画素分離領域としての機能の他、暗電流を防止する役割も有する。
【0099】
一方、n型半導体膜21の光入射側である上側にも、画素分離領域として用いたInP等の化合物半導体を用いて、n型半導体膜21よりも高濃度のn型半導体層24が形成されている。この高濃度のn型半導体層24は、n型半導体膜21で生成された電荷の逆流を防止するバリア層として機能する。高濃度のn型半導体層24の材料には、例えば、InGaAs、InP、InAlAsなどの化合物半導体を用いることができる。
【0100】
バリア層としての高濃度のn型半導体層24の上には、反射防止膜25が形成されている。反射防止膜25の材料には、例えば、窒化シリコン(SiN)、酸化ハフニウム(HfO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化タンタル(TaTa)、酸化チタン(TiO)などを用いることができる。
【0101】
高濃度のn型半導体層24または反射防止膜25のいずれか一方は、n型半導体膜21を上下に挟む電極のうちの上側の上部電極としても機能し、上部電極としての高濃度のn型半導体層24または反射防止膜25には、所定の電圧Vaが印加される。
【0102】
反射防止膜25の上には、カラーフィルタ26及びオンチップレンズ27がさらに形成されている。カラーフィルタ26は、R(赤)、G(緑)、またはB(青)のいずれかの光(波長光)を透過させるフィルタであり、例えば、画素アレイ部10において、いわゆるベイヤー配列で配置されている。
【0103】
画素電極を構成する高濃度のp型半導体層22と、画素分離領域としてのn型半導体層23の下側には、パッシベーション層28および絶縁層29が形成されている。そして、接続電極31及び接続層43とバンプ電極32が、パッシベーション層28および絶縁層29を貫通するように形成されている。接続電極31及び接続層43とバンプ電極32は、画素電極を構成する高濃度のp型半導体層22と、電荷を蓄積するフローティングディフュージョンFDとを電気的に接続する。
【0104】
通常画素11a及び電荷放出画素11bは、以上のように構成されており、同一の画素構造を有している。
【0105】
しかしながら、通常画素11a及び電荷放出画素11bとでは、リセットトランジスタRSTの制御方法が異なる。
【0106】
通常画素11aでは、フォトダイオードPDによる電荷の生成期間(受光期間)、受光開始前のフローティングディフュージョンFDの電位のリセット期間等に応じて、リセットトランジスタRSTが、リセット信号RSTに基づいてオンオフされるが、電荷放出画素11bでは、リセットトランジスタRSTが、常にオンに制御されている。これにより、フォトダイオードPDで生成された電荷はグランドへ排出され、電荷放出画素11bには常に一定の電圧Vaが印加される。
【0107】
2.5 固体撮像装置のパッケージングについて
つづいて、上述した固体撮像装置1のパッケージングについて説明する。図8は、第1の実施形態に係るセンサパッケージ(撮像装置ともいう)の構成例を示す平面図である。図9は、第1の実施形態に係るセンサパッケージの構成例を示す断面図である。なお、図9は、図8をB-B線を通るX-Z平面で切断した断面を示している。
【0108】
図8及び図9に示すように、センサパッケージ1100は、パッケージ50と、パッケージ50の上面50a側に取り付けられたシールガラス付きリッド60(リッドの一例)とを備える。パッケージ50は、パッケージ基板70と、ペルチェ素子80と、セラミックインターポーザ基板90(支持基板ともいう)と、固体撮像装置1と、を備える。まず、パッケージ50の構成を説明する。
【0109】
図10は、第1の実施形態に係るセンサパッケージの構成例を示す分解断面図である。パッケージ基板70は、アルミナ(酸化アルミニウム)等のセラミックで構成される多層基板であり、例えばPGA(Pin Grid Array)基板である。図10に示すように、パッケージ基板70は、第1面(例えば、上面70a)と、第1面の反対側に位置する第2面(例えば、下面70b)とを有する。パッケージ基板70において、上面70aと下面70bとの間に位置する内部には、複数の配線が多層に設けられている。これらの配線は、パッケージ基板70の下面70bに設けられた、複数の端子(例えば、ピン状端子73)に接続している。
【0110】
図11は、第1の実施形態に係るパッケージ基板の上面側の構成例を示す平面図である。図10及び図11に示すように、パッケージ基板70の上面70a側には、キャビティ71が設けられている。キャビティ71は、第1凹部111と、第1凹部111の底面111aに設けられた第2凹部112(凹部の一例)とを有する。第1凹部111及び第2凹部112の平面視による形状は、例えば矩形である。第1凹部111は、第2凹部112よりも開口面の径が大きい。
【0111】
第2凹部112には、温度制御素子としてのペルチェ素子80が配置されており、例えば、第2凹部112の底面112aに接着剤51(図9参照)を介してペルチェ素子80が取り付けられている。第2凹部112に配置されたペルチェ素子80の上面(例えば、後述する第2セラミック基板85の上面85a)は、第1凹部111の底面111aと同じ高さ、又は、ほぼ同じ高さである。
【0112】
第2凹部112の底面112aには、ペルチェ素子80のリード線に接続するためのピン状端子72が設けられている。ピン状端子72は2つ設けられている。2つのピン状端子72のうち、1つはペルチェ素子80の正極のリード線に接続され、もう1つはペルチェ素子80の負極のリード線に接続されている。
【0113】
なお、外部接続端子は、ピン状端子73に代えて、ボール端子やランド端子などとすることも可能である。
【0114】
図9から図11に示すように、パッケージ基板70の外周部の上面70a側には、シールリング75が設けられている。シールリング75は、平面視で、パッケージ基板70のキャビティ71を囲むように連続して設けられている。シールリング75は、シールガラス付きリッド60の後述する金属部63と接合される部位である。シールリング75は、例えば、鉄(Fe)-ニッケル(Ni)-コバルト(Co)の合金(いわゆるコバール)であって、Niおよび金(Au)等のめっきによる表面処理がなされたものである。
【0115】
図12は、第1の実施形態に係るパッケージ基板とセラミックインターポーザ基板との位置関係を例示する平面図である。図9に示したように、セラミックインターポーザ基板90は、その下面90b側が接着剤51を介して第1凹部111の底面111aとペルチェ素子80とに取り付けられている。図9及び図12に示すように、セラミックインターポーザ基板90は、第2凹部112の開口面を全て覆うように配置されている。
【0116】
第1凹部111の底面111aであって、セラミックインターポーザ基板90下から露出する領域に、複数のボンディングパッド74が設けられている。また、セラミックインターポーザ基板90の下面90b側には、複数のボンディングパッド91が設けられている。複数のボンディングパッド91の少なくとも一部は、ワイヤー54を介して、ボンディングパッド74に接続されている。また、複数のボンディングパッド91の少なくとも一部は、ワイヤー55を介して、固体撮像装置1のボンディングパッド92に接続されている。あるいは、1つのボンディングパッド91に、ワイヤー54、55の両方が接続されていてもよい。ワイヤー54、55は、例えば金線である。
【0117】
固体撮像装置1の上面93a側の外周領域にボンディングパッド92が設けられている。固体撮像装置1の下面93b側は、接着剤51を介してセラミックインターポーザ基板90の下面90b側に取り付けられている。
【0118】
図13は、第1の実施形態に係るペルチェ素子の構成例を示す断面図である。図13に示すように、ペルチェ素子80は、第1セラミック基板81と、第1セラミック基板81に設けられた第1銅電極82と、第1セラミック基板81と向かい合う第2セラミック基板85と、第2セラミック基板85に設けられた第2銅電極86と、P型熱電半導体87と、N型熱電半導体88と、を有する。P型熱電半導体87及びN型熱電半導体88は、第1セラミック基板81と第2セラミック基板85との間にそれぞれ配置されている。P型熱電半導体87及びN型熱電半導体88は、それぞれ、一端が第1銅電極82に接続し、他端が第2銅電極86に接続している。第1銅電極82及び第2銅電極86を介して、P型熱電半導体87及びN型熱電半導体88は、交互に直列に接続されている。
【0119】
図13に示すように、ペルチェ素子80では、N型熱電半導体88の方から直流電流が流されると、第2セラミック基板85は熱T1を吸収し(吸熱し)、第1セラミック基板81は熱T2を放出する(放熱する)。第2セラミック基板85は接着剤51を介してセラミックインターポーザ基板90に取り付けられ、第1セラミック基板81は接着剤51を介してパッケージ基板70に取り付けられているので、ペルチェ素子80は、固体撮像装置1等で生じた熱をセラミックインターポーザ基板90からパッケージ基板70へ逃がすことができる。
【0120】
次に、パッケージ50の構成を説明する。図8から図10に示すように、シールガラス付きリッド60は、シールガラス61と、シールガラス61の外周部の下面61b側に設けられたセラミック枠62と、セラミック枠62の下面62b側に設けられた金属部63と、を有する。シールガラス61とセラミック枠62は、例えば低融点ガラスで互いに接合されている。セラミック枠62と金属部63は、例えばAg-Cuろう材などで互いに接合されている。
【0121】
金属部63は、例えばシーム溶接などの手段により、パッケージ基板70のシールリング75と接合される部位である。金属部63はシールリング75と同じ材料で構成されており、一例を挙げると、鉄(Fe)-ニッケル(Ni)-コバルト(Co)の合金(いわゆるコバール)であって、Niおよび金(Au)等のめっきによる表面処理がなされたものである。シールガラス付きリッド60は、パッケージ50の上面50a側に接合されており、パッケージ50の上面50a側を気密に封止している。
【0122】
2.6 温度制御機構について
以上のような、シリコンよりもバンドギャップエネルギーが小さい、言い換えれば、約1200nm以上の波長の光に対して感度を持つ光電変換材料を用いた固体撮像装置1においては、上述したように、ノイズである暗電流の発生を抑えるために、センサチップを冷却又は一定の温度に保つ仕組み(温度制御機構)を設ける必要がある。
【0123】
ただし、ディスクリートのサーミスタ素子を固体撮像装置1に取り付け、パッケージ外に配置された温度制御回路がサーミスタ素子からの出力に基づいてパッケージ内のペルチェ素子を制御する構成では、上述したように、測定されたセンサチップ温度の正確性、測定温度のロバスト性、端子数の制約、歩留りなどの点において課題が存在する。
【0124】
そこで本実施形態では、固体撮像装置1内に温度計回路を配置し、この温度計回路からの出力に基づいて、パッケージ外に配置された温度制御回路からパッケージ内のペルチェ素子を制御できるように構成する。それにより、測定されたセンサチップ温度の正確性、測定温度のロバスト性、端子数の制約、歩留りなどの点においてメリットを得ることが可能となる。
【0125】
2.7 温度センサ(温度計回路)の位置について
図9に示すように、本実施形態に係る温度センサとしての温度計回路120は、例えば、固体撮像装置1の回路基板200に作り込まれる。温度計回路120から出力された測定結果である電流又は電圧は、例えば、ボンディングパッド91、ワイヤー54、ボンディングパッド74及びピン状端子73を介して、センサパッケージ1100外部へ出力される。
【0126】
なお、図9に示すように、温度計回路120から出力されたアナログの電流又は電圧値をデジタル値に変換するAD変換回路121を回路基板200内に設け、このAD変換回路121から出力されたデジタル値をピン状端子73等を介してセンサパッケージ1100外部へ出力するように構成してもよい。その場合、AD変換回路121には、水平選択回路40内のADC40aが用いられてもよいし、ADC40aとは別に回路基板200内に作り込まれた専用のADCが用いられてもよい。
【0127】
また、温度計回路120は、回路基板200に限定されず、例えば、受光基板100側に設けられてもよい。
【0128】
2.8 撮像システムの概略構成例
つづいて、本実施形態に係る温度制御機構を備えた撮像システムについて、幾つか例を挙げて説明する。なお、以下の説明では、固体撮像装置1内に温度計回路120からの出力をデジタル値に変換するAD変換回路121を設けた場合を例示する。
【0129】
2.8.1 第1システム構成例
図14は、第1の実施形態の第1システム構成例に係る撮像システムの概略構成例を示すブロック図である。図14に示すように、第1システム構成例に係る撮像システム1000は、上述したセンサパッケージ1100と、FPGA(Field-Programmable Gate Array)1200と、温度コントローラ1300とを備える。
【0130】
センサパッケージ1100は、上述したように、パッケージ50及びシールガラス付きリッド60が形成するキャビティ71内に固体撮像装置1を収容する構造を備える。
【0131】
FPGA1200は、例えば、固体撮像装置1を制御するための制御装置であり、固体撮像装置1を制御するための制御信号をピン状端子を介してパッケージ50内部の固体撮像装置1に入力する。FPGA1200と固体撮像装置1とを接続するインタフェースには、上述したように、I2C(Inter-Integrated Circuit)やSPI(Serial Peripheral Interface)などを用いることができる。なお、FPGA1200に代えて、ISP(Image Signal Processor)などの情報処理装置が用いられてもよい。
【0132】
固体撮像装置1の温度計回路120で検出されてAD変換回路121でデジタル値に変換された温度データ(検出結果)は、例えば、FPGA1200と固体撮像装置1とを接続するI2CやSPIなどのインタフェースと同じインタフェースを介して、パッケージ外部のFPGA1200に出力される。そのため、本実施形態では、温度データをパッケージ外部へ出力するための専用線や専用端子を省略することができる。
【0133】
温度コントローラ1300は、例えば、FPGA1200からの制御信号に従って、センサパッケージ1100内のペルチェ素子80を制御するための構成である。具体的には、温度コントローラ1300は、FPGA1200からの制御信号に従ってペルチェ素子80に与える電流波形を生成し、これをピン状端子73を介してセンサパッケージ1100内のペルチェ素子80に供給する。
【0134】
以上のような構成によれば、固体撮像装置1内に温度計回路120が配置されているため、固体撮像装置1自体の温度を直接測定することが可能となる。それにより、測定されたセンサチップ温度の正確性を高めることが可能となる。
【0135】
また、例えば、温度計回路120から出力されたアナログ値が固体撮像装置1内のAD変換回路121でデジタル値に変換されるため、温度計回路120で検出された測定結果のノイズによる影響を低減することが可能となる。それにより、測定温度のロバスト性を高めることが可能となる。
【0136】
さらに、測定結果をデジタル値に変換することで、I2CやSPIなどの制御信号を用いて測定結果をセンサパッケージ1100の外部へ出力することが可能となるため、測定結果をセンサパッケージ1100外へ出力するための専用端子を設ける必要がない。それにより、センサパッケージ1100に対する端子数の制約を受けずに、測定結果を外部へ出力することが可能となる。
【0137】
さらにまた、ディスクリートのサーミスタ素子のように、別個の部品を固体撮像装置1に取り付ける構成ではないため、サーミスタ素子の不良や取り付け不良などによる歩留りの低下も抑制することが可能となる。
【0138】
2.8.2 第2システム構成例
図15は、第1の実施形態の第2システム構成例に係る撮像システムの概略構成例を示すブロック図である。図15に示すように、第2システム構成例に係る撮像システム1000Aは、第1システム構成例に係る撮像システム1000と同様の構成において、温度制御装置1400が追加されている。また、第2システム構成例では、第1システム構成例においてセンサパッケージ1100内に実装されるペルチェ素子80が省略され得いる。
【0139】
温度制御装置1400は、センサパッケージ1100内のペルチェ素子80に代わり、センサパッケージ1100内の固体撮像装置1の温度を制御するための機構である。この温度制御装置1400には、例えば、センサパッケージ1100の外表面に接合されたペルチェ素子などの冷却素子、ヒートシンク、空冷装置、水冷装置等、種々の温度制御装置を用いることが可能である。したがって、第2システム構成例では、温度コントローラ1300は、温度制御装置1400を制御することで、センサパッケージ1100の外部からセンサパッケージ1100内部の固体撮像装置1の温度を制御する。
【0140】
このように、固体撮像装置1の温度を制御するための構成がセンサパッケージ1100の外部に設けられている場合でも、第1システム構成例と同様の効果を奏することが可能である。
【0141】
なお、上述した第1及び第2システム構成例では、温度コントローラ1300がセンサパッケージ1100外に配置された場合が例示されているが、これに限定されず、温度コントローラ1300の一部又は全部がセンサパッケージ1100内に配置されてもよい。その場合、温度コントローラ1300の一部又は全部が、固体撮像装置1の回路基板200に配置されてもよい。
【0142】
2.9 温度計回路の配置例
次に、固体撮像装置1における温度計回路120の配置について、幾つか例を挙げて説明する。なお、以下の説明では、明確化のため、水平選択回路40と水平駆動回路30とをまとめて水平回路40Aとして説明する。
【0143】
2.9.1 第1例
図16は、第1の実施形態の第1例に係る温度計回路の配置を説明するためのレイアウト図である。図16に例示するレイアウトにおいて、主な発熱部分は、回路基板200における水平回路40Aやシステム制御回路16などである。そこで第1例では、図16に示すように、主な発熱部分である水平回路40Aやシステム制御回路16等の近傍に、温度計回路120が配置される。
【0144】
また、配置する温度計回路120の数は1つに限定されず、図16に示すように、複数であってもよい。複数の温度計回路120を分散して配置することで、固体撮像装置1のより正確な温度を測定することが可能となる。ただし、回路基板200にシリコン基板などの熱伝導率の高い材料を用いた場合には、単一の温度計回路120でも十分な精度を得ることが可能である。
【0145】
なお、固体撮像装置1に対する制御信号を入力したり、固体撮像装置1で生成した画像データを出力したりするための端子133には、温度計回路120又はこれに接続されたAD変換回路121若しくはAD変換回路121で生成された温度データを保持するレジスタも接続されている。これは、後述する他の例でも同様であってよい。
【0146】
2.9.2 第2例
図17は、第1の実施形態の第2例に係る温度計回路の配置を説明するための図である。図17に示すように、温度計回路120は、温度制御の目的である受光基板100の近傍に配置されてもよい。ただし、上述したように、温度計回路120と受光基板100とを重畳させると、温度計回路120からの光により画素の均一性が損なわれる恐れがあるため、温度計回路120は、受光基板100の近傍であって、受光基板100と重畳しない領域に配置されてもよい。
【0147】
その際、受光基板100を取り囲むように、複数の温度計回路120を配置することで、受光基板100の温度分布なども測定することが可能となるため、固体撮像装置1のより的確な温度制御を実行することが可能となる。
【0148】
2.9.3 第3例
図18は、第1の実施形態の第3例に係る温度計回路の配置を説明するための図である。図18に示すように、温度計回路120は、主な発熱部分である水平回路40Aやシステム制御回路16などと、温度制御の目的である受光基板100との間に配置されてもよい。それにより、水平回路40Aやシステム制御回路16などで発生した熱が受光基板100に伝わる前にペルチェ素子80を駆動して冷却を開始することが可能となるため、より正確な温度制御を行うことが可能となる。
【0149】
なお、上述した第1例~第3例及びその他の説明を省略する例の何れにおいても、温度計回路120は、固体撮像装置1の基板厚方向において、ペルチェ素子80と重畳する位置に配置されるとよい。それにより、ペルチェ素子80により制御された温度を迅速に検出することが可能となるため、より精確な温度制御を行うことが可能となる。
【0150】
2.10 温度計回路の例
ここで、本実施形態に係る温度計回路120について、例を挙げて説明する。図19は、第1の実施形態に係る温度計回路の一例を示す回路図である。図19に示すように、温度計回路120には、例えば、シリコンダイオードを用いることが可能である。
【0151】
シリコンダイオードは、順方向電圧(膜電圧に相当)Vfに-2mV/℃の温度係数があり、温度が上昇するほどVfがリニアに下がるという特性があるため、Vfの電圧値から容易に温度を特定することができるというメリットがある。また、このような特性を持つことから、固体撮像装置1の製造時にキャリブレーションを行うことができるというメリットも得られる。さらに、シリコンダイオードは、画素回路14の各トランジスタと同じプロセスで形成することが可能であるため、新たに温度計回路120を形成する工程を追加する必要がなく、製造プロセスの煩雑化を抑制できるというメリットも得られる。
【0152】
ただし、本実施形態に係る温度計回路120は、シリコンダイオードに限定されず、例えば、PNPトランジスタなどの半導体温度センサなど、回路基板200に作り込むことが可能な種々の温度センサを用いることが可能である。
【0153】
2.11 温度制御フロー
次に、本実施形態に係る温度制御フローについて、幾つか例を挙げて説明する。
【0154】
固体撮像装置1の温度を制御するフローとしては、例えば、固体撮像装置1内で定期的に温度データを取得してその値をレジスタに記録しておき、外部(例えば、FPGA1200)から必要に応じてレジスタへアクセスして温度データを取得する方法や、外部(例えば、FPGA1200)からの要求に応じて固体撮像装置1内で温度データを取得してその値をレジスタに記録し、外部(例えば、FPGA1200)からレジスタへアクセスして温度データを取得する方法などが考えられる。
【0155】
そこで以下の説明では、前者を第1フロー例とし、後者を第2フロー例として説明する。ただし、本開示に係る温度制御フローは、これらに限定されるものではない。また、以下の説明では、固体撮像装置1の動作に着目する。
【0156】
2.11.1 第1フロー例
図20は、第1の実施形態の第1フロー例に係る温度制御フローの一例を示すフローチャートである。図20に示すように、第1フロー例では、固体撮像装置1は、まず、経過時間を計測するためのカウンタをリセットする(ステップS101)。このカウンタは、例えば、システム制御回路16から供給されたクロックをカウントすることで経過時間を計測するカウンタであってもよい。
【0157】
次に、固体撮像装置1は、カウンタの値に基づき、所定時間が経過するまで待機する(ステップS102のNO)。その後、所定時間が経過すると(ステップS102のYES)、固体撮像装置1は、カウンタをリセットする(ステップS103)。
【0158】
次に、固体撮像装置1は、温度計回路120から出力されたアナログの電流又は電圧をAD変換回路121にてデジタルの温度データに変換することで温度データを取得し(ステップS104)、取得した温度データを不図示のレジスタに登録する(ステップS105)。このレジスタは、センサパッケージ1100外部のFPGA1200からアクセス可能なレジスタであってよい。したがって、FPGA1200は、定期的(例えば、30回/秒)又は必要に応じてレジスタへアクセスし、レジスタに登録されている温度データを取得して、温度コントローラ1300に制御信号を入力する。
【0159】
その後、固体撮像装置1は、本動作を終了するか否かを判定し(ステップS106)、終了する場合(ステップS106のYES)、本動作を終了する。一方、終了しない場合(ステップS106のNO)、固体撮像装置1はステップS102へ戻り、以降の動作を実行する。
【0160】
2.11.2 第2フロー例
図21は、第1の実施形態の第2フロー例に係る温度制御フローの一例を示すフローチャートである。図21に示すように、第2フロー例では、固体撮像装置1は、まず、外部の例えばFPGA1200から温度データの要求を受け付けるまで待機する(ステップS201のNO)。
【0161】
その後、温度データの要求を受け付けると(ステップS201のYES)、固体撮像装置1は、図20のステップS104~S105と同様に、温度計回路120から出力されたアナログの電流又は電圧をAD変換回路121にてデジタルの温度データに変換することで温度データを取得し(ステップS202)、取得した温度データを不図示のレジスタに登録する(ステップS203)。このレジスタは、センサパッケージ1100外部のFPGA1200からアクセス可能なレジスタであってよい。したがって、温度データを要求したFPGA1200及び/又はその他の外部装置は、レジスタへアクセスしてこれに登録されている温度データを取得して、温度コントローラ1300に制御信号を入力する。
【0162】
その後、固体撮像装置1は、本動作を終了するか否かを判定し(ステップS204)、終了する場合(ステップS204のYES)、本動作を終了する。一方、終了しない場合(ステップS204のNO)、固体撮像装置1はステップS201へ戻り、以降の動作を実行する。
【0163】
3.応用例
[応用例1]
本開示に係る技術(本技術)は、様々な製品へ応用することができる。例えば、本開示に係る技術は、自動車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、自動二輪車、自転車、パーソナルモビリティ、飛行機、ドローン、船舶、ロボット等のいずれかの種類の移動体に搭載される装置として実現されてもよい。
【0164】
図22は、本開示に係る技術が適用され得る移動体制御システムの一例である車両制御システムの概略的な構成例を示すブロック図である。
【0165】
車両制御システム12000は、通信ネットワーク12001を介して接続された複数の電子制御ユニットを備える。図22に示した例では、車両制御システム12000は、駆動系制御ユニット12010、ボディ系制御ユニット12020、車外情報検出ユニット12030、車内情報検出ユニット12040、及び統合制御ユニット12050を備える。また、統合制御ユニット12050の機能構成として、マイクロコンピュータ12051、音声画像出力部12052、及び車載ネットワークI/F(interface)12053が図示されている。
【0166】
駆動系制御ユニット12010は、各種プログラムにしたがって車両の駆動系に関連する装置の動作を制御する。例えば、駆動系制御ユニット12010は、内燃機関又は駆動用モータ等の車両の駆動力を発生させるための駆動力発生装置、駆動力を車輪に伝達するための駆動力伝達機構、車両の舵角を調節するステアリング機構、及び、車両の制動力を発生させる制動装置等の制御装置として機能する。
【0167】
ボディ系制御ユニット12020は、各種プログラムにしたがって車体に装備された各種装置の動作を制御する。例えば、ボディ系制御ユニット12020は、キーレスエントリシステム、スマートキーシステム、パワーウィンドウ装置、あるいは、ヘッドランプ、バックランプ、ブレーキランプ、ウィンカー又はフォグランプ等の各種ランプの制御装置として機能する。この場合、ボディ系制御ユニット12020には、鍵を代替する携帯機から発信される電波又は各種スイッチの信号が入力され得る。ボディ系制御ユニット12020は、これらの電波又は信号の入力を受け付け、車両のドアロック装置、パワーウィンドウ装置、ランプ等を制御する。
【0168】
車外情報検出ユニット12030は、車両制御システム12000を搭載した車両の外部の情報を検出する。例えば、車外情報検出ユニット12030には、撮像部12031が接続される。車外情報検出ユニット12030は、撮像部12031に車外の画像を撮像させるとともに、撮像された画像を受信する。車外情報検出ユニット12030は、受信した画像に基づいて、人、車、障害物、標識又は路面上の文字等の物体検出処理又は距離検出処理を行ってもよい。
【0169】
撮像部12031は、光を受光し、その光の受光量に応じた電気信号を出力する光センサである。撮像部12031は、電気信号を画像として出力することもできるし、測距の情報として出力することもできる。また、撮像部12031が受光する光は、可視光であっても良いし、赤外線等の非可視光であっても良い。
【0170】
車内情報検出ユニット12040は、車内の情報を検出する。車内情報検出ユニット12040には、例えば、運転者の状態を検出する運転者状態検出部12041が接続される。運転者状態検出部12041は、例えば運転者を撮像するカメラを含み、車内情報検出ユニット12040は、運転者状態検出部12041から入力される検出情報に基づいて、運転者の疲労度合い又は集中度合いを算出してもよいし、運転者が居眠りをしていないかを判別してもよい。
【0171】
マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030又は車内情報検出ユニット12040で取得される車内外の情報に基づいて、駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置の制御目標値を演算し、駆動系制御ユニット12010に対して制御指令を出力することができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車両の衝突回避あるいは衝撃緩和、車間距離に基づく追従走行、車速維持走行、車両の衝突警告、又は車両のレーン逸脱警告等を含むADAS(Advanced Driver Assistance System)の機能実現を目的とした協調制御を行うことができる。
【0172】
また、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030又は車内情報検出ユニット12040で取得される車両の周囲の情報に基づいて駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置等を制御することにより、運転者の操作に拠らずに自律的に走行する自動運転等を目的とした協調制御を行うことができる。
【0173】
また、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030で取得される車外の情報に基づいて、ボディ系制御ユニット12020に対して制御指令を出力することができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030で検出した先行車又は対向車の位置に応じてヘッドランプを制御し、ハイビームをロービームに切り替える等の防眩を図ることを目的とした協調制御を行うことができる。
【0174】
音声画像出力部12052は、車両の搭乗者又は車外に対して、視覚的又は聴覚的に情報を通知することが可能な出力装置へ音声及び画像のうちの少なくとも一方の出力信号を送信する。図22の例では、出力装置として、オーディオスピーカ12061、表示部12062及びインストルメントパネル12063が例示されている。表示部12062は、例えば、オンボードディスプレイ及びヘッドアップディスプレイの少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0175】
図23は、撮像部12031の設置位置の例を示す図である。
【0176】
図23は、車両12100は、撮像部12031として、撮像部12101,12102,12103,12104,12105を有する。
【0177】
撮像部12101,12102,12103,12104,12105は、例えば、車両12100のフロントノーズ、サイドミラー、リアバンパ、バックドア及び車室内のフロントガラスの上部等の位置に設けられる。フロントノーズに備えられる撮像部12101及び車室内のフロントガラスの上部に備えられる撮像部12105は、主として車両12100の前方の画像を取得する。サイドミラーに備えられる撮像部12102,12103は、主として車両12100の側方の画像を取得する。リアバンパ又はバックドアに備えられる撮像部12104は、主として車両12100の後方の画像を取得する。撮像部12101及び12105で取得される前方の画像は、主として先行車両又は、歩行者、障害物、信号機、交通標識又は車線等の検出に用いられる。
【0178】
なお、図23には、撮像部12101ないし12104の撮影範囲の一例が示されている。撮像範囲12111は、フロントノーズに設けられた撮像部12101の撮像範囲を示し、撮像範囲12112,12113は、それぞれサイドミラーに設けられた撮像部12102,12103の撮像範囲を示し、撮像範囲12114は、リアバンパ又はバックドアに設けられた撮像部12104の撮像範囲を示す。例えば、撮像部12101ないし12104で撮像された画像データが重ね合わせられることにより、車両12100を上方から見た俯瞰画像が得られる。
【0179】
撮像部12101ないし12104の少なくとも1つは、距離情報を取得する機能を有していてもよい。例えば、撮像部12101ないし12104の少なくとも1つは、複数の撮像素子からなるステレオカメラであってもよいし、位相差検出用の画素を有する撮像素子であってもよい。
【0180】
例えば、マイクロコンピュータ12051は、撮像部12101ないし12104から得られた距離情報を基に、撮像範囲12111ないし12114内における各立体物までの距離と、この距離の時間的変化(車両12100に対する相対速度)を求めることにより、特に車両12100の進行路上にある最も近い立体物で、車両12100と略同じ方向に所定の速度(例えば、0km/h以上)で走行する立体物を先行車として抽出することができる。さらに、マイクロコンピュータ12051は、先行車の手前に予め確保すべき車間距離を設定し、自動ブレーキ制御(追従停止制御も含む)や自動加速制御(追従発進制御も含む)等を行うことができる。このように運転者の操作に拠らずに自律的に走行する自動運転等を目的とした協調制御を行うことができる。
【0181】
例えば、マイクロコンピュータ12051は、撮像部12101ないし12104から得られた距離情報を元に、立体物に関する立体物データを、2輪車、普通車両、大型車両、歩行者、電柱等その他の立体物に分類して抽出し、障害物の自動回避に用いることができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車両12100の周辺の障害物を、車両12100のドライバが視認可能な障害物と視認困難な障害物とに識別する。そして、マイクロコンピュータ12051は、各障害物との衝突の危険度を示す衝突リスクを判断し、衝突リスクが設定値以上で衝突可能性がある状況であるときには、オーディオスピーカ12061や表示部12062を介してドライバに警報を出力することや、駆動系制御ユニット12010を介して強制減速や回避操舵を行うことで、衝突回避のための運転支援を行うことができる。
【0182】
撮像部12101ないし12104の少なくとも1つは、赤外線を検出する赤外線カメラであってもよい。例えば、マイクロコンピュータ12051は、撮像部12101ないし12104の撮像画像中に歩行者が存在するか否かを判定することで歩行者を認識することができる。かかる歩行者の認識は、例えば赤外線カメラとしての撮像部12101ないし12104の撮像画像における特徴点を抽出する手順と、物体の輪郭を示す一連の特徴点にパターンマッチング処理を行って歩行者か否かを判別する手順によって行われる。マイクロコンピュータ12051が、撮像部12101ないし12104の撮像画像中に歩行者が存在すると判定し、歩行者を認識すると、音声画像出力部12052は、当該認識された歩行者に強調のための方形輪郭線を重畳表示するように、表示部12062を制御する。また、音声画像出力部12052は、歩行者を示すアイコン等を所望の位置に表示するように表示部12062を制御してもよい。
【0183】
以上、本開示に係る技術が適用され得る移動体制御システムの一例について説明した。本開示に係る技術は、以上説明した構成のうち、撮像部12031に適用され得る。具体的には、固体撮像装置1は、撮像部12031に適用することができる。撮像部12031に本開示に係る技術を適用することにより、高画質な撮影画像を得ることができるので、移動体制御システムにおいて撮影画像を利用した高精度な制御を行うことができる。
【0184】
[応用例2]
図24は、本開示に係る技術(本技術)が適用され得る内視鏡手術システムの概略的な構成の一例を示す図である。
【0185】
図24では、術者(医師)11131が、内視鏡手術システム11000を用いて、患者ベッド11133上の患者11132に手術を行っている様子が図示されている。図示するように、内視鏡手術システム11000は、内視鏡11100と、気腹チューブ11111やエネルギー処置具11112等の、その他の術具11110と、内視鏡11100を支持する支持アーム装置11120と、内視鏡下手術のための各種の装置が搭載されたカート11200と、から構成される。
【0186】
内視鏡11100は、先端から所定の長さの領域が患者11132の体腔内に挿入される鏡筒11101と、鏡筒11101の基端に接続されるカメラヘッド11102と、から構成される。図示する例では、硬性の鏡筒11101を有するいわゆる硬性鏡として構成される内視鏡11100を図示しているが、内視鏡11100は、軟性の鏡筒を有するいわゆる軟性鏡として構成されてもよい。
【0187】
鏡筒11101の先端には、対物レンズが嵌め込まれた開口部が設けられている。内視鏡11100には光源装置11203が接続されており、当該光源装置11203によって生成された光が、鏡筒11101の内部に延設されるライトガイドによって当該鏡筒の先端まで導光され、対物レンズを介して患者11132の体腔内の観察対象に向かって照射される。なお、内視鏡11100は、直視鏡であってもよいし、斜視鏡又は側視鏡であってもよい。
【0188】
カメラヘッド11102の内部には光学系及び撮像素子が設けられており、観察対象からの反射光(観察光)は当該光学系によって当該撮像素子に集光される。当該撮像素子によって観察光が光電変換され、観察光に対応する電気信号、すなわち観察像に対応する画像信号が生成される。当該画像信号は、RAWデータとしてカメラコントロールユニット(CCU: Camera Control Unit)11201に送信される。
【0189】
CCU11201は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等によって構成され、内視鏡11100及び表示装置11202の動作を統括的に制御する。さらに、CCU11201は、カメラヘッド11102から画像信号を受け取り、その画像信号に対して、例えば現像処理(デモザイク処理)等の、当該画像信号に基づく画像を表示するための各種の画像処理を施す。
【0190】
表示装置11202は、CCU11201からの制御により、当該CCU11201によって画像処理が施された画像信号に基づく画像を表示する。
【0191】
光源装置11203は、例えばLED(Light Emitting Diode)等の光源から構成され、術部等を撮影する際の照射光を内視鏡11100に供給する。
【0192】
入力装置11204は、内視鏡手術システム11000に対する入力インタフェースである。ユーザは、入力装置11204を介して、内視鏡手術システム11000に対して各種の情報の入力や指示入力を行うことができる。例えば、ユーザは、内視鏡11100による撮像条件(照射光の種類、倍率及び焦点距離等)を変更する旨の指示等を入力する。
【0193】
処置具制御装置11205は、組織の焼灼、切開又は血管の封止等のためのエネルギー処置具11112の駆動を制御する。気腹装置11206は、内視鏡11100による視野の確保及び術者の作業空間の確保の目的で、患者11132の体腔を膨らめるために、気腹チューブ11111を介して当該体腔内にガスを送り込む。レコーダ11207は、手術に関する各種の情報を記録可能な装置である。プリンタ11208は、手術に関する各種の情報を、テキスト、画像又はグラフ等各種の形式で印刷可能な装置である。
【0194】
なお、内視鏡11100に術部を撮影する際の照射光を供給する光源装置11203は、例えばLED、レーザ光源又はこれらの組み合わせによって構成される白色光源から構成することができる。RGBレーザ光源の組み合わせにより白色光源が構成される場合には、各色(各波長)の出力強度及び出力タイミングを高精度に制御することができるため、光源装置11203において撮像画像のホワイトバランスの調整を行うことができる。また、この場合には、RGBレーザ光源それぞれからのレーザ光を時分割で観察対象に照射し、その照射タイミングに同期してカメラヘッド11102の撮像素子の駆動を制御することにより、RGBそれぞれに対応した画像を時分割で撮像することも可能である。当該方法によれば、当該撮像素子にカラーフィルタを設けなくても、カラー画像を得ることができる。
【0195】
また、光源装置11203は、出力する光の強度を所定の時間ごとに変更するようにその駆動が制御されてもよい。その光の強度の変更のタイミングに同期してカメラヘッド11102の撮像素子の駆動を制御して時分割で画像を取得し、その画像を合成することにより、いわゆる黒つぶれ及び白とびのない高ダイナミックレンジの画像を生成することができる。
【0196】
また、光源装置11203は、特殊光観察に対応した所定の波長帯域の光を供給可能に構成されてもよい。特殊光観察では、例えば、体組織における光の吸収の波長依存性を利用して、通常の観察時における照射光(すなわち、白色光)に比べて狭帯域の光を照射することにより、粘膜表層の血管等の所定の組織を高コントラストで撮影する、いわゆる狭帯域光観察(Narrow Band Imaging)が行われる。あるいは、特殊光観察では、励起光を照射することにより発生する蛍光により画像を得る蛍光観察が行われてもよい。蛍光観察では、体組織に励起光を照射し当該体組織からの蛍光を観察すること(自家蛍光観察)、又はインドシアニングリーン(ICG)等の試薬を体組織に局注するとともに当該体組織にその試薬の蛍光波長に対応した励起光を照射し蛍光像を得ること等を行うことができる。光源装置11203は、このような特殊光観察に対応した狭帯域光及び/又は励起光を供給可能に構成され得る。
【0197】
図25は、図24に示すカメラヘッド11102及びCCU11201の機能構成の一例を示すブロック図である。
【0198】
カメラヘッド11102は、レンズユニット11401と、撮像部11402と、駆動部11403と、通信部11404と、カメラヘッド制御部11405と、を有する。CCU11201は、通信部11411と、画像処理部11412と、制御部11413と、を有する。カメラヘッド11102とCCU11201とは、伝送ケーブル11400によって互いに通信可能に接続されている。
【0199】
レンズユニット11401は、鏡筒11101との接続部に設けられる光学系である。鏡筒11101の先端から取り込まれた観察光は、カメラヘッド11102まで導光され、当該レンズユニット11401に入射する。レンズユニット11401は、ズームレンズ及びフォーカスレンズを含む複数のレンズが組み合わされて構成される。
【0200】
撮像部11402は、撮像素子で構成される。撮像部11402を構成する撮像素子は、1つ(いわゆる単板式)であってもよいし、複数(いわゆる多板式)であってもよい。撮像部11402が多板式で構成される場合には、例えば各撮像素子によってRGBそれぞれに対応する画像信号が生成され、それらが合成されることによりカラー画像が得られてもよい。あるいは、撮像部11402は、3D(Dimensional)表示に対応する右目用及び左目用の画像信号をそれぞれ取得するための1対の撮像素子を有するように構成されてもよい。3D表示が行われることにより、術者11131は術部における生体組織の奥行きをより正確に把握することが可能になる。なお、撮像部11402が多板式で構成される場合には、各撮像素子に対応して、レンズユニット11401も複数系統設けられ得る。
【0201】
また、撮像部11402は、必ずしもカメラヘッド11102に設けられなくてもよい。例えば、撮像部11402は、鏡筒11101の内部に、対物レンズの直後に設けられてもよい。
【0202】
駆動部11403は、アクチュエータによって構成され、カメラヘッド制御部11405からの制御により、レンズユニット11401のズームレンズ及びフォーカスレンズを光軸に沿って所定の距離だけ移動させる。これにより、撮像部11402による撮像画像の倍率及び焦点が適宜調整され得る。
【0203】
通信部11404は、CCU11201との間で各種の情報を送受信するための通信装置によって構成される。通信部11404は、撮像部11402から得た画像信号をRAWデータとして伝送ケーブル11400を介してCCU11201に送信する。
【0204】
また、通信部11404は、CCU11201から、カメラヘッド11102の駆動を制御するための制御信号を受信し、カメラヘッド制御部11405に供給する。当該制御信号には、例えば、撮像画像のフレームレートを指定する旨の情報、撮像時の露出値を指定する旨の情報、並びに/又は撮像画像の倍率及び焦点を指定する旨の情報等、撮像条件に関する情報が含まれる。
【0205】
なお、上記のフレームレートや露出値、倍率、焦点等の撮像条件は、ユーザによって適宜指定されてもよいし、取得された画像信号に基づいてCCU11201の制御部11413によって自動的に設定されてもよい。後者の場合には、いわゆるAE(Auto Exposure)機能、AF(Auto Focus)機能及びAWB(Auto White Balance)機能が内視鏡11100に搭載されていることになる。
【0206】
カメラヘッド制御部11405は、通信部11404を介して受信したCCU11201からの制御信号に基づいて、カメラヘッド11102の駆動を制御する。
【0207】
通信部11411は、カメラヘッド11102との間で各種の情報を送受信するための通信装置によって構成される。通信部11411は、カメラヘッド11102から、伝送ケーブル11400を介して送信される画像信号を受信する。
【0208】
また、通信部11411は、カメラヘッド11102に対して、カメラヘッド11102の駆動を制御するための制御信号を送信する。画像信号や制御信号は、電気通信や光通信等によって送信することができる。
【0209】
画像処理部11412は、カメラヘッド11102から送信されたRAWデータである画像信号に対して各種の画像処理を施す。
【0210】
制御部11413は、内視鏡11100による術部等の撮像、及び、術部等の撮像により得られる撮像画像の表示に関する各種の制御を行う。例えば、制御部11413は、カメラヘッド11102の駆動を制御するための制御信号を生成する。
【0211】
また、制御部11413は、画像処理部11412によって画像処理が施された画像信号に基づいて、術部等が映った撮像画像を表示装置11202に表示させる。この際、制御部11413は、各種の画像認識技術を用いて撮像画像内における各種の物体を認識してもよい。例えば、制御部11413は、撮像画像に含まれる物体のエッジの形状や色等を検出することにより、鉗子等の術具、特定の生体部位、出血、エネルギー処置具11112の使用時のミスト等を認識することができる。制御部11413は、表示装置11202に撮像画像を表示させる際に、その認識結果を用いて、各種の手術支援情報を当該術部の画像に重畳表示させてもよい。手術支援情報が重畳表示され、術者11131に提示されることにより、術者11131の負担を軽減することや、術者11131が確実に手術を進めることが可能になる。
【0212】
カメラヘッド11102及びCCU11201を接続する伝送ケーブル11400は、電気信号の通信に対応した電気信号ケーブル、光通信に対応した光ファイバ、又はこれらの複合ケーブルである。
【0213】
ここで、図示する例では、伝送ケーブル11400を用いて有線で通信が行われていたが、カメラヘッド11102とCCU11201との間の通信は無線で行われてもよい。
【0214】
以上、本開示に係る技術が適用され得る内視鏡手術システムの一例について説明した。本開示に係る技術は、以上説明した構成のうち、内視鏡11100のカメラヘッド11102に設けられた撮像部11402に好適に適用され得る。撮像部11402に本開示に係る技術を適用することにより、高画質な撮影画像を得ることができるので、高画質な内視鏡11100を提供することができる。
【0215】
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示の技術的範囲は、上述の実施形態そのままに限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。また、異なる実施形態及び変形例にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0216】
また、本明細書に記載された各実施形態における効果はあくまで例示であって限定されるものでは無く、他の効果があってもよい。
【0217】
なお、本技術は以下のような構成も取ることができる。
(1)
シリコンよりもバンドギャップエネルギーが小さい材料を用いて構成された光電変換部と、
前記光電変換部に接合される回路基板と、
を備え、
前記回路基板は、
前記光電変換部で発生した電荷に応じた電圧値の画素信号を生成する画素信号生成回路と、
前記回路基板の温度を検出する温度計回路と、
を備える固体撮像装置。
(2)
前記画素信号生成回路は、前記回路基板の第1面における第1領域に配置され、
前記光電変換部は、前記回路基板の前記第1領域に接合されている
前記(1)に記載の固体撮像装置。
(3)
前記温度計回路は、前記回路基板の前記第1面における前記第1領域以外の領域に形成されている
前記(2)に記載の固体撮像装置。
(4)
前記回路基板は、前記回路基板の前記第1面における前記第1領域の周囲に位置し、前記画素信号を処理するロジック回路が配置された第2領域を含み、
前記温度計回路は、前記第2領域の近傍に配置されている
前記(2)又は(3)に記載の固体撮像装置。
(5)
前記温度計回路は、前記第1領域と前記第2領域との間に配置されている
前記(4)に記載の固体撮像装置。
(6)
前記温度計回路から出力されたアナログ信号をデジタル信号に変換する変換回路をさらに備える
前記(1)~(5)の何れか1項に記載の固体撮像装置。
(7)
前記光電変換部は、化合物半導体にて構成されている
前記(1)~(6)の何れか1項に記載の固体撮像装置。
(8)
前記光電変換部は、InGaP、InAlP、InGaAs、InAlAs、カルコパイライト構造の化合物半導体、アモルファスシリコン、ゲルマニウム、量子ドット光電変換膜、及び、有機光電変換膜のうちの少なくとも1つを含む
前記(1)~(7)の何れか1項に記載の固体撮像装置。
(9)
前記温度計回路は、シリコンダイオード及びPNPトランジスタのうちの少なくとも1つを含む
前記(1)~(8)の何れか1項に記載の固体撮像装置。
(10)
複数の前記温度計回路を備える
前記(1)~(9)の何れか1項に記載の固体撮像装置。
(11)
1200nm(ナノメートル)以上の波長の光に対して感度を持つ材料を用いて構成された光電変換部と、
前記光電変換部に接合される回路基板と、
を備え、
前記回路基板は、
前記光電変換部で発生した電荷に応じた電圧値の画素信号を生成する画素信号生成回路と、
前記回路基板の温度を検出する温度計回路と、
を備える固体撮像装置。
(12)
前記(1)又は(11)に記載の固体撮像装置と、
前記固体撮像装置を収容するパッケージと、
を備える撮像装置。
(13)
前記パッケージ内に配置され、前記回路基板における前記画素信号生成回路及び前記温度計回路が配置された第1面と反対側の第2面側に配置された温度制御素子をさらに備える
前記(12)に記載の撮像装置。
(14)
前記温度計回路は、前記第1面と垂直な方向において前記温度制御素子と重畳する領域に配置されている
前記(13)に記載の撮像装置。
(15)
前記温度制御素子は、ペルチェ素子である
前記(13)又は(14)に記載の撮像装置。
(16)
前記(1)又は(11)に記載の固体撮像装置と、前記固体撮像装置の温度を制御するための温度制御素子とを備える撮像装置と、
前記温度制御素子を制御する温度制御装置と、
前記固体撮像装置及び温度制御装置を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記温度計回路で検出された温度に基づいて、前記温度制御装置を制御する
撮像システム。
(17)
前記固体撮像装置は、前記温度計回路から出力されたアナログ信号をデジタル信号に変換する変換回路をさらに備え、
前記撮像装置は、前記固体撮像装置及び前記温度制御素子を収容するパッケージをさらに備え、
前記パッケージは、前記固体撮像装置と前記制御装置との間でデジタル信号を送信又は受信するための端子を備え、
前記固体撮像装置は、前記端子を介して、前記デジタル信号を前記制御装置へ送信する
前記(16)に記載の撮像システム。
(18)
前記固体撮像装置と前記制御装置とは、I2C(Inter-Integrated Circuit)又はSPI(Serial Peripheral Interface)を介して接続されている
前記(17)に記載の撮像システム。
【符号の説明】
【0218】
1 固体撮像装置
10 画素アレイ部
11、11R、11G、11B センサ画素
12 画素駆動線
13 垂直信号線
14 画素回路
15 読出し回路
16 システム制御回路
17 膜電圧制御部
18 電圧生成回路
20 垂直駆動回路
21 n型半導体膜(InGaAs)
21A 半導体層
22 p型半導体層
22A 拡散領域
23 n型半導体層
24 n型半導体層
25 反射防止膜
26 カラーフィルタ
26R、26G、26B フィルタ
27 オンチップレンズ
28 パッシベーション層
29 絶縁層
29A、29B、35A、35B 層間絶縁膜
30 水平駆動回路
31 接続電極
32 バンプ電極
32D ダミー電極
33 導電膜
35 配線層
36 埋込層
37H 開口
38 パッド電極
40 水平選択回路
40A 水平回路
40a ADC
40b スイッチ素子
40c 水平信号線
41 支持基板
42 層間絶縁層
43 接続層
43D ダミー接続層
44 読出し電極
45 画素信号生成回路
46 配線
50 パッケージ
51 接着剤
54、55 ワイヤー
60 シールガラス付きリッド
61 シールガラス
62 セラミック枠
63 金属部
70 パッケージ基板
71 キャビティ
72、73 ピン状端子
74、91、92 ボンディングパッド
75 シールリング
80 ペルチェ素子
81 第1セラミック基板
82 第1銅電極
85 第2セラミック基板
86 第2銅電極
87 P型熱電半導体
88 N型熱電半導体
90 セラミックインターポーザ基板
100 受光基板(InGaAs基板)
100A 受光面
120 温度計回路
121 AD変換回路
133 端子
200 回路基板
200A 画素信号生成回路領域
200B 周辺回路領域
1000 撮像システム
1100 センサパッケージ
1200 FPGA
1300 温度コントローラ
1400 温度制御装置
AMP 増幅トランジスタ
FD フローティングディフュージョン
OFG 排出トランジスタ
PD フォトダイオード
RST リセットトランジスタ
SEL 選択トランジスタ
TRG 転送トランジスタ
図1
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