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特許7566791MIMOシステムにおけるチャネルサウンディングフィードバックを最適化する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】MIMOシステムにおけるチャネルサウンディングフィードバックを最適化する方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/0417 20170101AFI20241007BHJP
【FI】
H04B7/0417 100
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021570842
(86)(22)【出願日】2020-05-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-08
(86)【国際出願番号】 US2020033046
(87)【国際公開番号】W WO2020242784
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2023-05-15
(31)【優先権主張番号】62/854,441
(32)【優先日】2019-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/707,969
(32)【優先日】2019-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507364997
【氏名又は名称】サイプレス セミコンダクター コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】Cypress Semiconductor Corporation
【住所又は居所原語表記】198 Champion Court, San Jose, CA 95134, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】プラザンナ セチュラマン
【審査官】竹内 亨
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/186531(WO,A1)
【文献】特表2019-518348(JP,A)
【文献】Nokia, Nokia Shanghai Bell,CSI Enhancements for MU-MIMO Support,3GPP TSG RAN WG1 Meeting #94-bis R1-1811406,2018年09月29日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/02-7/12
H04L 1/02-1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビームフォーミーデバイスであって、
前記ビームフォーミーデバイスは、複数のアンテナと、無線回路と、プロセッサと、を含んでおり、
前記複数のアンテナのそれぞれは、無線周波数信号(RF)信号を受信し、
前記無線回路は、前記複数のアンテナに接続されており、前記無線回路は、受信した前記RF信号の強度インジケータを生成し、
前記プロセッサは、前記無線回路に接続されており、前記プロセッサは、
前記強度インジケータに基づいて、複数のアンテナのそれぞれによって受信された信号送信を特徴付けるフィードバックパラメータの第1のセットを決定し、
フィードバックパラメータの前記第1のセットからフィードバックパラメータのスパースセットを生成し、
閾値を超える前記スパースセットの要素によってフィードバックパラメータの第2のセットを生成し、
前記無線回路に、フィードバックパラメータの前記第2のセットを送信させる、
ように構成されており、
フィードバックパラメータの前記第1のセットは、複数のフィードバック行列を含んでおり、前記複数のフィードバック行列のそれぞれは、複数の周波数サブキャリアの1つに対応しており、
前記複数のフィードバック行列の各フィードバック行列の要素は、前記複数のアンテナのうちの1つのアンテナによって受信された前記信号送信を特徴付け、
フィードバックパラメータの前記第1のセットは、第1のインデックスおよび第2のインデックスによってインデックス付けされ、
前記第1のインデックスは、前記複数の周波数サブキャリアのうちの対応する1つの周波数サブキャリアによって、フィードバック行列を識別し、
前記第2のインデックスは、前記フィードバック行列の要素を識別し、
フィードバックパラメータの前記スパースセットを取得するために、前記プロセッサは、前記第1のインデックスに関して、第1の離散フーリエ変換を実行し、
前記プロセッサは、さらに、前記第2のインデックスに関して、第2の離散フーリエ変換を実行する、
ビームフォーミーデバイス。
【請求項2】
フィードバックパラメータの前記スパースセットは、要素の50%以下が前記閾値を超えるセットである、
請求項1記載のビームフォーミーデバイス。
【請求項3】
フィードバックパラメータの前記スパースセットは、前記複数のフィードバック行列のそれぞれに対して、各フィードバック行列の固有値のセットを含んでおり、
フィードバックパラメータの前記スパースセットを生成するために、前記プロセッサは、前記複数のフィードバック行列のそれぞれに対して、特異値分解操作を適用する、
請求項1記載のビームフォーミーデバイス。
【請求項4】
前記プロセッサは、さらに、前記無線回路に、前記第2のセットの固有値のそれぞれに対して、対応する固有ベクトルを送信させる、
請求項3記載のビームフォーミーデバイス。
【請求項5】
ビームフォーマーデバイスであって、
前記ビームフォーマーデバイスは、無線回路と複数のアンテナとを含んでおり、
前記無線回路は、複数のチャネルサウンディング信号を生成し、
前記複数のアンテナは、前記無線回路に接続されており、前記無線回路は、
前記複数のチャネルサウンディング信号を送信し、
フィードバックパラメータの第1のセットを受信し、フィードバックパラメータの前記第1のセットのそれぞれは、閾値を超えており、前記フィードバックパラメータの前記第1のセットは、フィードバックパラメータの第2のセットを表しており、フィードバックパラメータの前記第2のセットは、前記複数のアンテナのそれぞれに対する信号送信を特徴付け、
フィードバックパラメータの前記第1のセットは、フィードバックパラメータの複数のサブセットを含んでおり、フィードバックパラメータの前記サブセットのそれぞれは、複数の周波数サブキャリアの1つに対応し、
フィードバックパラメータの前記第2のセットは、複数のフィードバック行列を含んでおり、前記複数のフィードバック行列のそれぞれは、前記第1のセットのフィードバックパラメータの前記複数のサブセットのそれぞれ1つに対応しており、
前記フィードバック行列の各フィードバック行列の要素は、前記複数のアンテナの1つのアンテナへの前記信号送信を特徴付ける、
ビームフォーマーデバイス。
【請求項6】
前記ビームフォーマーデバイスは、前記無線回路に接続されているプロセッサをさらに含んでおり、前記プロセッサは、
フィードバックパラメータの前記第1のセットに基づいて、前記複数のアンテナのそれぞれに対してビームフォーミング設定を決定し、
前記無線回路に、前記複数のアンテナのそれぞれへ信号を出力させ、前記信号は、前記複数のアンテナの各前記アンテナに対する前記ビームフォーミング設定に基づいて送信される、
請求項5記載のビームフォーマーデバイス。
【請求項7】
前記複数のアンテナのそれぞれに対する前記ビームフォーミング設定は、各前記アンテナによって送信される前記信号の振幅の表現および位相の表現を含んでいる、
請求項6記載のビームフォーマーデバイス。
【請求項8】
フィードバックパラメータの前記第1のセットは、フィードバックパラメータのスパースセットから、前記閾値より小さい前記スパースセットのパラメータを除去することによって導出され、
前記スパースセットは、前記複数のフィードバック行列から、第1のインデックスに関して第1の変換を使用し、第2のインデックスに関して第2の変換を使用することによって導出され、
前記第1のインデックスはフィードバック行列の要素を識別し、前記第2のインデックスは、前記複数の周波数サブキャリアの対応する1つの周波数サブキャリアによって、前記フィードバック行列を識別する、
請求項5記載のビームフォーマーデバイス。
【請求項9】
フィードバックパラメータの前記第1のセットは、フィードバックパラメータのスパースセットから導出され、前記スパースセットは、前記複数のフィードバック行列のそれぞれに対して、各フィードバック行列の固有値を含んでおり、
前記固有値は、前記各フィードバック行列の特異値分解によって得られる、
請求項5記載のビームフォーマーデバイス。
【請求項10】
方法であって、前記方法は、
ビームフォーマーデバイスの無線回路によって複数のチャネルサウンディング信号を生成するステップと、
前記無線回路に接続されている複数のアンテナによって、前記複数のチャネルサウンディング信号を送信するステップと、
フィードバックパラメータの第1のセットを受信するステップと、
を含んでおり、
フィードバックパラメータの前記第1のセットのそれぞれは、閾値を超えており、フィードバックパラメータの前記第1のセットは、フィードバックパラメータの第2のセットを表しており、フィードバックパラメータの前記第2のセットは、前記複数のアンテナのそれぞれに対する信号送信を特徴付け、
フィードバックパラメータの前記第1のセットは、フィードバックパラメータの複数のサブセットを含んでおり、フィードバックパラメータの前記サブセットのそれぞれは、複数の周波数サブキャリアの1つに対応し、
フィードバックパラメータの前記第2のセットは、複数のフィードバック行列を含んでおり、前記複数のフィードバック行列のそれぞれは、前記第1のセットのフィードバックパラメータの前記複数のサブセットのそれぞれ1つに対応しており、
前記フィードバック行列の各フィードバック行列の要素は、前記複数のアンテナの1つのアンテナへの前記信号送信を特徴付ける、
方法。
【請求項11】
前記方法は、
プロセッサによって、フィードバックパラメータの前記第1のセットに基づいて、前記複数のアンテナのそれぞれに対するビームフォーミング設定を決定するステップと、
前記無線回路に、前記複数のアンテナのそれぞれへ、前記複数のアンテナの各アンテナに対する前記ビームフォーミング設定に基づいて送信される信号を出力させるステップと、
をさらに含んでいる、
請求項10記載の方法。
【請求項12】
フィードバックパラメータのスパースセットから、前記閾値より小さい前記スパースセットのパラメータを除去することによって、フィードバックパラメータの前記第1のセットを導出し、
パラメータの前記スパースセットを、第1のインデックスに関して第1の変換を使用し、第2のインデックスに関して第2の変換を使用することによって、前記複数のフィードバック行列から導出し、
前記第1のインデックスは、フィードバック行列の要素を識別し、前記第2のインデックスは、前記複数の周波数サブキャリアの対応する1つのサブキャリアによって、前記フィードバック行列を識別する、
請求項10記載の方法。
【請求項13】
フィードバックパラメータの前記第1のセットを、フィードバックパラメータのスパースセットから導出し、フィードバックパラメータの前記スパースセットは、前記複数のフィードバック行列のそれぞれに対して、各フィードバック行列の固有値を含んでおり、
前記固有値は、前記各フィードバック行列の特異値分解によって得られ、
前記方法は、ビームフォーミーデバイスから、前記固有値のそれぞれに対して、対応する固有ベクトルを受信するステップをさらに含んでいる、
請求項10記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2019年5月30日に出願された米国仮出願第62/854,441号の優先権および利益を主張し、かつ参照によってその全体が本明細書に組み込まれる、2019年12月9日に出願された米国非仮出願第16/707,969号の国際出願である。
【0002】
技術分野
本開示は、無線ネットワークに関する。より具体的には、複数の入出力アンテナを備えたシステムのスループット率を向上させることに関する。
【背景技術】
【0003】
無線ネットワークが、アクセスポイントとクライアントデバイスとの間で多入力多出力(MIMO:multiple-input multiple-output)無線チャネルを使用することが増えている。複数の送信アンテナと受信アンテナとによって、ビームフォーミングに基づくマルチパス伝搬が可能になり、ここでは、電波の建設的な干渉および破壊的な干渉を使用して、アクセスポイントとさまざまなクライアントデバイスとの間の同時信号送信が強化される。無線ネットワークの環境は動的であることが多いため、アクセスポイントは、チャネルサウンディングプロシージャを開始することによって、環境を定期的に調査する必要があり得る。このプロシージャの間、サウンディング信号のセットがアクセスポイントデバイスの複数のアンテナによって出力され、さまざまなクライアントデバイスの複数のアンテナによって受信される。次に、クライアントデバイスは、受信された信号から抽出されたチャネル状態情報をアクセスポイントに戻すことができる。このフィードバックを備えたアクセスポイントは、無線ネットワーク環境の、同時に存在している条件を考慮して、クライアントデバイスごとに調整される最適化されたビームフォーミングを実行することができる。それぞれが複数のアンテナを備えた多数のクライアントデバイスでは、アクセスポイントに提供される必要のあるチャネルサウンディングフィードバックの量が極めて多くなり、かなりの時間がかかってしまう場合がある。これによって、残された時間が、実際のデータ送信に最適であるだろう時間よりも格段に短くなってしまうことがある。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1】MIMOチャネルを使用して、ベースステーションと複数のクライアントデバイスとの間の無線接続をサポートする無線ネットワークの1つの例示的な実装を示す図である。
図2】1つの可能な実装における、最適化されたチャネルサウンディングフィードバックの生成、引き渡しおよび使用の1つの可能な例を示す図である。
図3A】1つの例示的な実装における、N=64個の異なるトーンの所与の空間ストリームを特徴付けるフィードバック行列Hjk(f)の要素の周波数依存性を示す図である。
図3B図3Aの例示的な実装について、N=64個の異なるトーンの離散フーリエ変換で得られたフィードバック行列Hjk(f)の要素のスパース表現を示す図である。
図3C】N=200個のトーンおよび16個の空間ストリームの状況について、トーンインデックスfおよび空間ストリームインデックスlに関する2D離散フーリエ変換の例示的な実装を示す図である。
図3D】1次元(1D)フーリエ変換と比較して、フィードバックパラメータ表現に2D離散フーリエ変換を使用することで生じ得る利点を示す図である。
図4】本開示のいくつかの実装に従って、ベースステーション(ビームフォーマー)デバイスによって、ベースステーションとクライアントデバイス(ビームフォーミー)との間の無線接続をサポートするMIMOチャネルの効率的なチャネル状態情報を取得する例示的な方法のフローチャートである。
図5】本開示のいくつかの実装に従って、ベースクライアントデバイスによって、ベースステーションとクライアントデバイスとの間の無線接続をサポートするMIMOチャネルの効率的なチャネル状態情報を生成する例示的な方法のフローチャートである。
図6】本明細書に記載の技術に従って構成されている例示的な無線デバイスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本開示の態様は、サウンディングフィードバックが多数の非ゼロ値によって特徴付けられる表現から、別の表現、すなわち非ゼロ値の数が格段に低減されるスパース表現にサウンディングフィードバックを変換することによって、サウンディングフィードバックの処理およびアクセスポイントへのその引き渡しを最適化することを対象とする。したがって、非ゼロ値のみがアクセスポイントに伝達され得る。スパース表現に基づいてサウンディングフィードバックの抽出を可能にする追加機能を備えたアクセスポイントは、全体的なスループットのごく一部のみをチャネルサウンディング処理に割り当てることで、1つまたは複数のクライアントデバイスに対して効率的なビームフォーミングを実現できる場合がある。
【0006】
現代の無線ネットワーク環境は、多くの場合、1つの実装において、Wi-Fi(登録商標)ネットワークなどの無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)を使用して、多数のクライアントデバイス(ユーザ、ステーション)への無線接続を提供する。無線ネットワークは、公共の空間(店舗、空港、旅客機またはバス)または私的な空間(自宅、乗用車、スポーツユーティリティビークルなどの自動車環境)に配置されていてよい。クライアントデバイスには、ラップトップ、タブレット、スマートフォン、ヘッドレストスクリーンなどが含まれる場合がある。無線ネットワークには、複数のアンテナを備え、データ送信にMIMOチャネルを使用できるデバイスが含まれる場合がある。
【0007】
典型的な無線ネットワークの混雑した環境では、見通し内無線送信が利用できることはめったにない。なぜなら、電波がさまざまな障害物(ユーザ、壁、家具、車の座席など)からの反射の影響を受け、その結果、電波のかなり複雑な干渉/回折パターンが生じてしまうからである。この複雑さは有利になり得る。アクセスポイント、すなわちビームフォーマー(BFR)は、他のクライアントデバイス向けの他のデータパケットの無線送信を同様に強化しながら、特定のターゲットクライアントデバイスへの目的のデータパケットの送信の選択的な方向性強化を実現するために、自身のさまざまなアンテナによる信号出力を調整できる。これによって、複数のクライアントデバイスへ、情報を効率的に同時送信することが可能になり得る。
【0008】
無線環境は絶えず変化し得るので、BFRは、サウンディング信号をクライアントデバイスに送信することによって、環境の定期的な調査、すなわちチャネルサウンディングを実行する必要があり得る。各クライアントデバイス、すなわちビームフォーミー(BFE)は、受信された信号の強度の指標(サウンディングフィードバック)をBFRに戻すことができる。サウンディングフィードバックは、BFRのさまざまなアンテナとBFEのさまざまなアンテナとの間の信号送信を特徴付けるフィードバックパラメータを含んでいてよい。Wi-Fi(登録商標)およびLTEなどの最新の無線システムで使用されている直交周波数分割多重(OFDM)の場合、無線通信に使用される無線帯域の複数の周波数サブキャリア(本明細書では「トーン」とも称される)に対してフィードバックパラメータを送る必要がある場合がある。このようなトーンの数は、使用される特定のプロトコルによって異なっていてよい。例えば、IEEE802.11ac VHT(Very High Throughput)規格では、20MHzチャネルは52個のトーンを有していてよく、40MHzチャネルは108個のトーンを有していてよく、80MHzチャネルは234個のトーンを有していてよく、160MHzチャネルは468個のトーンを有していてよい、などである。IEEE802.11ax HEW(High-Efficiency Wireless)規格では、トーンの数(および結果として、BFRに送られるフィードバックの量)はさらに多くなる。20MHzチャネルの場合には208個、40MHzチャネルの場合には432個、80MHzチャネルの場合には936個、160MHzチャネルの場合には1872個などである。8個のBFRアンテナおよび2つのBFEアンテナ(16個の空間ストリーム)のケースにおいて、80MHzの802.11axチャネルで動作し、トーンごとおよび空間ストリームごとにフィードバックデータを送信するために4ビットが必要な場合には、16×936×4=59904のフィードバックビットが、1つのチャネルサウンディングセッション中にBFRに送信される。24Mbpsの送信速度では、この量のフィードバックを送るのに2.5ミリ秒かかる場合がある。チャネルサウンディングが25ミリ秒ごとに繰り返される場合、合計通信時間の約20%がフィードバック送信に費やされる可能性がある。
【0009】
本明細書に記載された実装は、上述の課題および問題を克服する。より具体的には、開示された実装は、フィードバックパラメータを、非ゼロ要素の割り当てが大幅に低減されているスパース表現に再形成すること、および非ゼロ要素のみ(または特定の閾値を超える要素のみ)をBFRに送信することによってチャネルサウンディングフィードバック送信を最適化する。これによって、ネットワークの全体的なスループットが向上し、ネットワークの各クライアントデバイスの無線接続が向上する。さらに、BFRに送信されるフィードバックの量を減らすことで、BFEによる電力消費が改善された。
【0010】
図1は、MIMOチャネルを使用してベースステーションと複数のクライアントデバイスとの間の無線接続をサポートする無線ネットワーク100の1つの例示的な実装を示している。無線ネットワーク100は、1つの実装では、無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)であってよく、本明細書ではアクセスポイント、ベースステーションおよび/またはビームフォーマーとも称されるベースステーションBFR102を含んでいてよい。ベースステーションBFR102には、動作周波数範囲(帯域)内で無線信号を送受信できる複数のアンテナ104(1)…104(m)が装備されていてよい。周波数範囲は、2.4GHz範囲、5GHzまたは60GHz範囲または無線MIMOネットワーキングに使用できるその他の範囲であってよい。
【0011】
BFR102は、1つの例示的な例では、経路108(1)、108(2)および108(3)などの複数の経路をたどることができる出力無線信号を送信することができる。経路108は、1つまたは複数のBFEアンテナ112(1)…112(n)を介して、本明細書ではビームフォーミーBFE110とも称されるクライアントデバイスによって受信され得る。経路108のいくつかは、例えば、BFRアンテナ104(m)とBFEアンテナ112(1)とを接続する経路108(1)が行うように、2つのアンテナ間を直接(見通し内経路に沿って)進むことができる。他の経路は、他のクライアントデバイス120、障害物122などのようなさまざまな物体からの反射を含んでいてよい。簡潔さおよび簡明さのために、BFRアンテナの1つとBFEアンテナの1つとを接続するいくつかの経路のみが図1に示されているが、無線信号伝搬は、他のアンテナを接続する経路の無限の連続体を含む、他の多くの経路を含んでいてよい。BFRアンテナ104は送信アンテナとして描かれ、一方、BFEアンテナ112は受信アンテナとして描かれている。そのような構成は、例えば、BFRアンテナ104がデータまたはサウンディング信号をBFE110に送信しているときに使用され得る。場合によっては、BFEアンテナ112は送信アンテナとして動作してよく、一方、BFRアンテナ104は受信アンテナとして動作してよい。この構成は、例えば、BFE110がサウンディングフィードバックまたは他のデータをBFR102に伝達しているときに使用され得る。
【0012】
クライアントデバイスBFE110は、本開示の実装に従って動作するスパースフィードバックモジュール(SFM)114を有することができる。SFM114は、BFEアンテナ112によって受信されたサウンディング信号の強度のインジケータを取得し、ネットワーク100のMIMOチャネルを特徴付けるフィードバックパラメータを決定することができる。SFM114は、決定されたフィードバックパラメータをスパース表現に変換してよく、図2を参照して以降でより詳細に説明されるように、スパース表現のゼロ(または十分に小さい)要素を破棄し、残っている要素を、BFEアンテナ112を介してBFR102へ出力する。BFR102はスパースフィードバックアナライザ(SFA)106を有していてよく、これは(1つまたは複数のアンテナ104)を介して受信されたスパース表現を取得し、これを、ビームフォーミングモジュール107にとってアクセス可能な形式に変換する。いくつかの実装において、このような変換には、チャネルサウンディングフィードバックパラメータを抽出するためのスパース表現への適切な逆変換の適用が含まれ得る。
【0013】
ビームフォーミングモジュール107は、抽出されたフィードバックパラメータに基づいて、BFRアンテナ104のそれぞれまたはいくつかのビームフォーミング設定を決定することができる。ビームフォーミングモジュール107は、ビームフォーミング設定を使用して、BFE110に送信されるデータ信号を準備し、BFRアンテナ104のそれぞれまたはいくつかへ出力することができる。いくつかの実装では、ビームフォーミングモジュール107は、適切な無線送信規格(例えば、IEEE802.11acまたはIEEE802.11ax)に従って動作する従来のソフトウェアモジュールおよび/またはハードウェアモジュールであってよい。そのような実装では、付加的なスパースフィードバック機能が、ソフトウェア、ハードウェアおよび/またはファームウェアに実装された別個のSFA106を介して追加され得る。他の実装では、SFA106およびビームフォーミングモジュール107は、同じダイ上に実装され得る単一のスパースフィードバックコンポーネントに統合され得る。このダイはまた、BFR102の中央処理装置(CPU)および/または他のコンポーネントおよびモジュールをホストすることができる。
【0014】
いくつかの実装では、時には、BFRの役割とBFEの役割とが逆になる場合がある。例えば、クライアントデバイス110からのデータをアップロードする前に、クライアントデバイス110は、アンテナ112(現在、送信方式で動作している)とアンテナ104(現在、受信アンテナとして動作している)との間の無線接続をテストするためにサウンディング信号を送信することができる。それに応答して、ベースステーション102は、受信したサウンディング信号の強度を決定し、フィードバックパラメータを計算し、計算されたフィードバックパラメータをクライアントデバイス110に送信することができる。そのような逆チャネルサウンディングを容易にするために、ベースステーション102は、付加的なスパースフィードバックモジュール(図示されていない)を有していてよく、クライアントデバイス110は、付加的なスパースフィードバックアナライザ(これも図示されていない)を有していてよい。いくつかの実装では、BFR102(および対応してBFE110)のスパースフィードバックモジュールおよびスパースフィードバックアナライザは、直接チャネルサウンディング機能と逆チャネルサウンディング機能とを組み合わせた単一のスパースフィードバックコンポーネントとして実装されていてよい。
【0015】
クライアントデバイス120などの無線ネットワーク100の他のクライアントデバイスは、ビームフォーミングおよびBFR102および/または他のそのようなクライアントデバイス、例えばクライアントデバイス110との間のデータ送信を容易にするために、同様の(または同一の)スパースフィードバックモジュール/アナライザを有していてよい。いくつかの実装では、BFR102は、複数のクライアントデバイスによって受信されることを意図したサウンディング信号の単一のセットを出力することができる。続いて、さまざまなクライアントデバイスが、時分割多重方式で互い違いにされた(スパース)フィードバックパラメータの自身のそれぞれのセットをBFR102に送り返してよい。例えば、クライアントデバイス110は、最初に自身のフィードバックパラメータを送信してよく、これに、クライアントデバイス120からの送信などが続く。いくつかの実装では、BFR102は、第1の帯域を使用するいくつかのクライアントデバイスおよび第2の(または他の)帯域を使用するいくつかのクライアントデバイスを伴う、5GHzおよび2.4GHz(または任意の他の可能な周波数範囲)などの2つ(またはそれ以上)の周波数帯域にわたる無線接続をサポートするデュアルバンドアクセスポイントであってよい。そのような実装では、異なる帯域で動作する2つ(またはそれ以上)のクライアントデバイスが、サウンディングフィードバック情報をBFR102に同時に送信することができる場合がある。
【0016】
無線ネットワーク100は、チャネルサウンディング機能から利益を得ることができる任意の公的環境または私的環境で実装されてよい。そのような環境には、旅客機、列車、船または任意のその他の輸送環境および/または自動車環境における無線ネットワークが含まれ得る。無線ネットワーク100は、輸送環境外、例えばホテル、会議などにおいても実装され得る。
【0017】
図2は、1つの可能な実装における、最適化されたチャネルサウンディングフィードバックの生成、引き渡しおよび使用の1つの可能な例200を示している。ビームフォーミーデバイス110のスパースフィードバックモジュール114および/またはBFR102のスパースフィードバックアナライザ106は、図2に示されたさまざまな動作を実行することができる。チャネルサウンディングセッションの開始時に、BFR102は、BFRアンテナ104(l)…104(m)の一部またはすべてに対してサウンディング信号xのセット(ベクトル)を準備してよい(ボックス202)。ベクトルx=(x,x,…x)のm成分xは、各BFRアンテナ104(j)によって出力されるサウンディング信号を特徴付けることができる。いくつかの実装では、成分xは、出力される信号の振幅を表す実数であってよい。他の実装では、成分xは、出力される信号の振幅および位相の両方を表す複素数であってよい。
【0018】
準備された信号xは、BFRアンテナ104によってBFE110に送信され得る(ボックス204)。BFRアンテナ104は、送信された信号を受信することができ(ボックス206)、BFE110の無線回路(例えば、無線周波数(RF)トランシーバ)は、受信した信号の強度(および、いくつかの実装では位相)を決定し、強度のインジケータをBFE110のCPUへ出力することができる。このインジケータは、ベクトルy=(y,y,…y)の形式をとることができ、そのn個のコンポーネントy(実数または複素数)は、サウンディング信号を、各BFEアンテナ112(k)によって受信されるものとして特徴付けることができる。BFE110のCPUはさらに、例えば、時間/位相遅延から、受信した信号のどの部分yが、BFRアンテナ104(j)から発生しているかを確認することができてよい。結果として、BFE110のCPUは、n×mフィードバック行列Hを決定することができてよく(ボックス208)、この行列の成分HjkがMIMOチャネルにおける信号伝搬を特徴付ける:
【数1】
時間依存の確率的量Wは、MIMOチャネルに存在するノイズを表していてよく、いくつかの実装では、ホワイトノイズ、ガウスノイズ、ポアソニアンノイズ、電信ノイズ、相関ノイズなどとして近似され得る。BFE110のCPUは、ノイズ成分Wを因数分解できてよく、フィードバック行列Hの要素(成分)を決定してよい。フィードバック行列の決定は、いくつかの実装において、現在使用されている特定の無線規格(例えば、IEEE802.ac)に従った任意のアプローチを使用して実行されてよい。いくつかの実装では、フィードバック行列Hの決定は、従来のMIMO特徴付け技術を使用して実行され得る。この時点で、チャネルサウンディング信号xの値が取得されてよい(ボックス210)。値xは、BFE110のメモリに格納されている標準値であってよい、または特定のサウンディングセッションのために準備され、サウンディング信号と共にまたは別個の(無線または有線)通信を介して、BFR102によってBFE110に伝達される値であってよい。いくつかの実装では、BFE110のCPUによって実行される本明細書に記載の動作は、BFE110のマイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(BFE101のDSP)、BFE110の特定用途向け集積回路、またはBFE110の他の論理回路によって実行されてよい。
【0019】
フィードバック行列は、無線通信に使用される無線帯域の複数の(またはすべての)トーンf(周波数サブキャリア)に対して決定される周波数依存行列H(f)であってよい。例えば、サウンディング信号xは、無線帯域の複数(またはすべて)のトーンに対してBFR102によって準備および出力されてよく、トーンの数に等しい数のフィードバック行列の数は、上述のように決定されてよい。図3Aは、1つの例示的な実装において、N=64個の異なるトーン(dBFS単位が垂直軸に使用され、ここでゼロ値はいくつかの参照値に対応する)についての、(例えば、BFRアンテナ104(k)からBFEアンテナ112(j)への)所与の空間ストリームを特徴付けるフィードバック行列Hjk(f)のいくつかの要素の周波数依存性を示している。図3Aに示されているように、大きな値(使用される単位で、基準値0dBFSに近い)を有する要素の数は、トーンの数Nに匹敵し、わずかなトーンのみが著しく小さい値を有している。よりコンパクトな表現を得るために、BFE110のCPUは、Hjkのスパース表現を得るために、いくつかの変換のうちの1つを実行することができる。スパース表現は、事前に決定された閾値よりも小さい値の割合が50%(40%、20%、10%、またはその他の事前に決定された値)未満である表現として定義されてよい。1つの実装では、この変換は、
【数2】
のような、離散フーリエ変換H(f)→H(τ)であってよく、これは、行ベクトルH(f)と指数因子の行列Fとの行列乗算に相当する:
【数3】
【0020】
図3Bは、図3Aの例示的な実装について、N=64個の異なるトーンの離散フーリエ変換で得られたフィードバック行列Hjk(f)の要素のスパース表現を示している。図3Bに示されているように、-25dBFS以上である新たな表現の要素(パラメータ)の数は12である。したがって、新たな表現は、事前に決定された閾値が20%に設定されている限り、行列要素Hjkのスパース表現である。いくつかの実装では、閾値は、スパース表現のすべての値のパーセンテージとしてではなく、絶対単位(例えば、-25dBFS、-30dBFS)に関して設定され得る。
【0021】
図3A図3Bは、MIMOサウンディングフィードバックの処理の他の態様に拡張され得る一般的な概念を示している。いくつかの実装では、空間ストリームを識別する空間変数に関して、付加的なフーリエ変換が実行されてよい。例えば、BFE110のCPUは、
【数4】
のように、フィードバック行列Hjkのすべての行を連結することによって、n×mフィードバック行列H(またはトーンインデックスに関するそのフーリエ表現)をn*m長の行ベクトルh(l)にマッピングすることができる。
他の実装では、これは、フィードバック行列Hjkの列であり、これは、n*m長の列ベクトルh(l)を取得するために、代わりに連結されてよい。次に、BFE110のCPUは、
【数5】
のように、連結されたベクトルの離散フーリエ変換h(l)→h(q)を実行してよく、これは、行列の乗算に相当する:
【数6】
【0022】
いくつかの実装では、
【数7】
のように、上述した両方のフーリエ変換を一緒に実装でき、2次元(2D)離散フーリエ変換は、トーンインデックスfと空間ストリームインデックスlとの両方に関して実行される。いくつかの実装では、これらのフーリエ変換のうちの1つのみが実装されてよく、例えば、空間ストリームインデックスlに関するフーリエ変換のみが、またはトーンインデックスfに関するフーリエ変換のみが実装されてよい。
【0023】
図3Cおよび図3Dは、いくつかの例示的な実装について、フィードバックパラメータのより効率的な表現のために2Dフーリエ変換を使用することの利点を示している。より具体的には、図3Cは、N=200個のトーンおよび16個の空間ストリーム(例えば、8個の送信アンテナおよび2個の受信アンテナ)の状況に対するトーンインデックスfおよび空間ストリームインデックスlに関する2D離散フーリエ変換の例示的な実装を示している。図3Cに示されているように、フィードバック行列Hjk(f)の得られた表現h(π,q)は、ゼロから著しく逸脱するh(π,q)の要素の数が、可能なパラメータの総数、200×16=32,000のごく一部であるため、スパース表現である。
【0024】
図3Dは、1次元(1D)フーリエ変換と比較して、フィードバックパラメータ表現に2D離散フーリエ変換を使用することの可能な利点を示している。図3Dのメインプロットは、2つの曲線にスポットを当てており、上の曲線はトーンインデックスfのみに関する1D離散フーリエ変換(DFT)に対応し、下の曲線はトーンインデックスと空間ストリームインデックスとの両方に関する2D DFTに対応する(挿入図は同じデータを示しているが、dBFS対数目盛を使用してプロットされている)。縦軸は、h(π,q)の順序値の降順でh(π,q)の正規化された値(タップ)を示している。示されている実装では、8個のBFRアンテナと4個のBFEアンテナ(32個の空間ストリーム)があり、80MHzの802.11axチャネルでの動作の場合に、合計32×936=29952個のさまざまな周波数サブキャリアと空間ストリームの値とが生じる。図3Dに示されているように、1D DFTが使用されている場合、-35dBFS以上のh(π,q)の値の数は約1500である。代わりに2D DFTが使用されている場合、1つの例示的な非限定的な例において、対応する値の数は約1000に減少する。
【0025】
引き続き図2を参照すると、上述の1D DFT方法、2D DFT方法または他の同様の方法の適用の結果として、BFE110のCPUは、無線チャネルのさまざまなトーンfのフィードバック行列Hのスパース表現
【数8】
を取得することができる(ボックス212)。フィードバック行列のスパース表現
【数9】
は、その後、閾値条件を満たさない(例えば、閾値を下回っている)
【数10】
の値を識別して破棄することによって、かつトリミングされた表現
【数11】
を取得することによって、
【数12】
のように、トリミングされてよい(ブロック214)。したがって、
【数13】
は、初期の表現Hまたはスパース表現
【数14】
と比較してよりコンパクトな表現である。構造上および意図的に、サブ閾値要素が単純にゼロに置き換えられないので(これによって、表現の長さがそのまま残るだろう)、適切に処理するために、トリミングされた表現
【数15】
が、スパース表現
【数16】
内の
【数17】
のさまざまな要素の場所を示すメタデータを伴う必要がある場合がある。いくつかの実装では、
【数18】
の各要素は、自身の場所によってインデックス付けされてよい(例えば、2D DFTが使用されている場合には、πおよびq)。いくつかの実装では、場所は、他の要素からの相対距離を指定することによってインデックス付けされてよい(例えば、
【数19】
の先行する要素から数えられたΔπおよびΔq)。
【0026】
いくつかの実装では、ラプラス変換、メリン変換、ハートレ変換などの他の(フーリエ以外の)変換が使用され得る。いくつかの実装では、BFE110は、フィードバック行列Hの特異値分解(SVD)を展開することができる。SVD法では、BFE110のCPUは、線形代数の標準的な方法を使用して、n×m行列Hを(別個に、各トーンfに対して)、3つの行列の積として表すことができる:
【数20】
ここで、
【数21】
は対角n×m行列、Uはn×n正方行列、
【数22】
は、m×m正方行列である。BFE110は、1≦j≦min(n,m)に対する行列
【数23】
の対角値λ(固有値、特異値)および(各jに対する)対応するn成分固有ベクトルベクトルuおよびm成分ベクトル
【数24】
を、フィードバック行列を外積
【数25】
として表すために決定してよい。
【0027】
固有値λの中に、事前に決定された閾値を下回る複数の固有値が存在する場合がある。したがって、得られた表現はスパース表現
【数26】
であり得る。この表現は、サブ閾値固有値(さらにそれらに固有ベクトルuおよび
【数27】
が関連付けられている)を破棄することによって
【数28】
のように、トリミングされてよい(ブロック214)。
【0028】
MIMOフィードバックパラメータ(例えば、1D DFT、2D DFT、SVDなど)のトリミングされた表現
【数29】
は、BFE110によってBFR102に伝達されてよい(ボックス216~218)。この伝達は、任意の数のBFEアンテナ112およびBFRアンテナ104を使用することができる。いくつかの実装では、1個のBFEアンテナおよび1個のBFRアンテナのみが使用されてよい。いくつかの実装では、トリミングされた表現の伝達は、有線BFE-BFR接続または有線接続と無線接続との組み合わせを介して実行されてよい。
【0029】
SVD分解を含む実装では、保持された固有値λおよびそれらに関連付けられた固有ベクトルの、BFE110からBFR102への伝達は、対応する無線標準の規格MIMOプロトコルに従って発生し得る。例えば、いくつかの実装では、固有値λが最初に送信され、その後に対応する固有ベクトルが送信されてよい。いくつかの実装では、BFR102がフィードバック行列Hの完全な再構成を実行する必要がなく、固有ベクトルuの明示的な知識がなくてもビームフォーミングを実行できるため、固有ベクトル
【数30】
だけが送信されればよい(固有ベクトルuは、その後、BFR102によって出力されたビーム形成された信号を効果的に処理するためにBFE110によって使用され得る)。BFR102に送信される固有ベクトル
【数31】
は、任意の既知のパラメータ化スキーム、例えば、ギブンス角度を使用してパラメータ化されてよい。
【0030】
BFE110からスパース表現
【数32】
を受信すると、BFR102は、オリジナルのフィードバック行列Hの推定を実行することができる(ボックス220)。SVDアプローチなどのいくつかの実装では、BFR102は、この操作をスキップし、受信されていない固有値を無視することによって、受信された固有値および固有ベクトルのビームフォーミングのための使用を続行し得る(ボックス220)。例えば、BFR102は、そのような固有値がゼロであると仮定し得る。
【0031】
フーリエ変換が使用されている実装(トーンに関する1D DFT、空間ストリームに関する1D DFTまたは両方に関する2D DFTなど)では、BFR102のCPUはフィードバック行列Hjk(f)を決定するために逆フーリエ変換を実行してよい。いくつかの実装では、逆フーリエ変換は、BFR102のマイクロプロセッサ、BFR102のデジタル信号プロセッサ、BFR102の特定用途向け集積回路またはBFR102の他の論理回路によって実行されてよい。1つの実装では、BFR102のCPUは、BFE110のCPUによって以前に実行されたさまざまな操作を逆の順序で実行し得る。例えば、チャネルサウンディングフィードバックパラメータの受信セットが、2D DFT法を使用してBFE110によって取得されたトリミングされた表現
【数33】
である場合、BFR102は、最初に、トリミングされた表現
【数34】
を、BFE110によって伝達されたメタデータ情報(非ゼロ要素の場所)に基づいてゼロで埋め込むことによって、スパース表現
【数35】
を再構築してよい。このようにして得られたスパース表現
【数36】
、例えば、hBFR(π,q)は、サブ閾値h(π,q)がhBFR(π,q)においてゼロに置き換えられるため、(その表記中の添え字「BFR」によって強調されるように)BFE側の対応する2Dフーリエ変換、h(π,q)から異なっていてよい。それにもかかわらず、hBFR(π,q)は、h(π,q)の適切な近似を提供してよく、BFR側での効率的なビームフォーミングに非常に適している。次に、BFR102は、逆2D DFT(または、BFE側で単一のフーリエ変換のみが実行された場合は、逆1D DFT)を実行することができる。結果として、(各周波数トーンfに対して)連結された行ベクトルh(f,l)のセットが決定されてよい:
【数37】
ここで記号F-1は、離散逆フーリエ変換行列を示す。例えば、時間領域から周波数領域へ戻す変換の場合、この行列は、
【数38】
によって決定されてよい。
最後に、BFR102は、連結解除操作を実行して、各トーンfに対して、行列要素のセット
【数39】
を取得してよい。フィードバック行列
【数40】
は、フィードバック行列Hjk(f)が従来のサウンディングフィードバック方法の標準的な実装で使用されるのと同じ方法で、ビームフォーミング(ボックス222)のため、およびデータパケットのBFE110への効率的な送信のために、BFR102によって使用されてよい。
【0032】
図2に関連して説明されたスパースサウンディングフィードバックの生成、伝達および開梱のプロセスは、所定の時間が経過した後、定期的に繰り返されてよい。いくつかの実装では、データ通信の質が低下し、最新のフィードバックパラメータに基づいて、ビームフォーミングが、変更されたネットワーク環境にもはや適切でなくなったことが検出されるたびに、このプロセスが実行されてもよい。図2に関連して説明された実装は、ビームフォーマーとしてベースステーションを有しており、ビームフォーミーとしてクライアントデバイスを有している。しかし、チャネルサウンディング(およびその後のデータパケット送信)が、クライアントデバイスがサウンディング信号を出力し、ベースステーションがチャネルフィードバックパラメータを決定してクライアントデバイスに伝達する逆方向において実行されてもよい。同様に、説明されているプロセスは、任意の2つのクライアントデバイス(または複数のベースステーションでの実装では任意の2つのベースステーション)間で発生し得る。
【0033】
本開示のさまざまな実装においてフィードバックパラメータが有し得るさまざまなスパース表現を考慮すると、BFR102およびBFEは、特定のチャネルサウンディングセッション、例えば、スパースSVD表現、スパース2D DFT、スパース1D DFTなどにおいてどのフォーマットが使用されているかに関して合意しなければならない可能性がある。したがって、いくつかの実装では、フォーマットは静的であってよく、(例えば、既存の規格への変更または新しい規格の開発を介して)使用される無線規格において指定されてよい。いくつかの実装では、フォーマットは動的であってよく、使用される表現は、サウンディングプロセスの当事者の1人によって指定されてよい。例えば、BFR102は、サウンディング信号xの最初の送信中に、専用フレームを使用して、使用されるフォーマット(例えば、2D DFT)を示してよい。別の実装では、BFE110は、フィードバックパラメータの送信中に(ブロック216~218)、例えば、専用フレームを使用してフォーマットを指定してよい。
【0034】
図4は、本開示のいくつかの実装に従った、ベースステーション(ビームフォーマー)デバイスによって、ベースステーションとクライアントデバイス(ビームフォーミー)との間の無線接続をサポートするMIMOチャネルの効率的なチャネル状態情報を取得する例示的な方法400のフローチャートである。ベースステーションは、付加的なクライアントデバイスをさらに含み得る無線ネットワーク100のアクセスポイントであってよい。方法400を実施するために、ビームフォーマーデバイス(BFR)は、図6に示されるようなハードウェアを使用してよい。方法400は、BFR102の処理ロジック(例えば、CPU、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサまたは専用の特定用途向け集積回路または任意の他のプロセッサデバイス)によって実施されてよく、これはハードウェア(例えば、回路、専用ロジック、プログラマブルロジック、マイクロコードなど)、ソフトウェア(スパースフィードバックアナライザ106およびビームフォーミングモジュール107によって実行される操作など)、ファームウェアまたはそれらの組み合わせを含んでいてよい。
【0035】
方法400は、BFRが自身の無線回路(例えば、無線周波数(RF)トランシーバ)によって、複数のチャネルサウンディング信号を生成することを含んでいてよい(ブロック410)。BFRは、BFRに関連付けられた第1の複数のアンテナを有していてよい。いくつかの実装では、第1の複数のアンテナは、BFRの無線回路と統合されていてよい。他の実装では、第1の複数のアンテナは、BFRの無線回路と通信する別個のコンポーネントであってよい。無線回路は、無線フロントエンド、高周波増幅器、中間周波数増幅器、デジタル-アナログ変換器およびアナログ-デジタル変換器などを含んでいてよい。
【0036】
方法400は、第1の複数のアンテナによる、生成された複数のチャネルサウンディング信号の第2の複数のアンテナへの送信を続けて行ってよい(ブロック420)。第2の複数のアンテナは、BFE110などのクライアントビームフォーミーデバイスに関連付けられていてよい。送信は、図2に関連して説明されるように、複数の周波数サブキャリア(トーン)を有する無線周波数帯域にわたって行われ得る。複数のチャネルサウンディング信号は、上述の図2および後述の図5の説明に従ってBFEによって処理され得る。
【0037】
BFEは、フィードバックパラメータの第1のセットをBFRに送り返してよく、方法400は、第1のセットの受信を続けて行ってよい(ブロック430)。第1のセットは、第1のセットのすべてのフィードバックパラメータが閾値を超えるようにBFEによって準備されてよい。フィードバックパラメータの第1のセットは、フィードバックパラメータの第2のセットを表すことができ、例えば、第2のセットをトリミングする(閾値を下回る第2のセットのすべてのパラメータを破棄する)ことによって、第2のセットから導出されてよい。フィードバックパラメータの第2のセットは、第1の複数のアンテナのそれぞれと第2の複数のアンテナのそれぞれとの間の信号送信を特徴付けることができる。第2のセットは、(第1のセットより)詳細かつ/または正確に信号送信を記述し得るので、第1のセットより多くのパラメータを含み得るが、第1のセットとは異なり、第2のセットはBFEと共に残ってよく、一方、第1のセットはBFRに伝達され得る。
【0038】
第1のセット(および第2のセット)におけるフィードバックパラメータのタイプは、無線ネットワークによるチャネルサウンディングに使用される特定の方法に関連する場合がある。この特定の方法は、標準的な方法またはセッション固有の方法であってよい。離散2Dフーリエ変換が使用される1つの実装では、第2のセットのフィードバックパラメータは、図2に関連して説明されるように、フィードバック行列のすべてのフーリエ成分(周波数サブキャリアインデックスおよび空間ストリームインデックスの両方に関して)を含んでいてよい。これに対応して、第1のセットは、閾値を超えるすべてのフーリエ成分を含んでいてよい。特異値分解法が使用されている別の実装では、第2のセットのフィードバックパラメータは、図2に関連して説明されるように、フィードバック行列のすべての固有値を含んでいてよい。これに対応して、第1のセットは、閾値を超えるすべての固有値を含んでいてよい。固有値を含む第1のセットに加えて、BFEはまた、第1のセットの固有値に対応する固有ベクトルを送信してよい(そしてBFRがこの固有ベクトルを受信してよい)。
【0039】
フィードバックパラメータの第1のセット(および第2のセット)は、サブセットのそれぞれが複数の周波数サブキャリアのうちの1つに対応するように、複数のサブセットを含んでいてよい。サブセットは、周波数サブキャリアを示す第1のインデックスによってインデックス付けされてよい。例えば、特異値分解法では、第1のセットは、固有値の複数のサブセットを含んでいてよく、各サブセットは特定の周波数サブキャリア(トーン)に対応している。離散フーリエ変換法では、各サブセットは、フィードバック行列の要素の表現を含んでいてよい。表現は、1つの実装において、離散フーリエ変換などのフィードバック行列の要素のスパース性を高める変換の結果であってよい。1つの例示的な実装では、変換は、空間共分散行列の固有ベクトル表現への変換であってよい。フィードバック行列の選択された表現は、送信アンテナと受信アンテナとの間の送信経路を示す、第2の(空間)インデックスによってインデックス付けされてよい。
【0040】
方法400は、任意選択的に、フィードバックパラメータの第1のセットに基づいた、複数のBFRアンテナのそれぞれに対するビームフォーミング設定のBFRによる決定を続けて行ってよい(ブロック440)。例えば、離散2Dフーリエ変換が使用される1つの実装では、BFRは、第1のセットのフィードバックパラメータを適切な位置において、付加的なゼロで埋め込んでよく、この結果、埋め込みが行われた第1のセットが第2のセットのサイズに拡張される。ゼロの適切な場所(ならびに非ゼロフィードバックパラメータの正しい場所)は、第1のセットのメタデータに含まれていてよい。メタデータは、第1のセットと一緒に、または別の通信で、BFRに伝達されてよい。フィードバックパラメータの第1のセットの埋め込みの後、BFRは逆2Dフーリエ変換を実行して、トーンおよび空間ストリームの一部またはすべてに対してフィードバック行列Hを取得してよい。
【0041】
方法400は、BFEクライアントデバイスに送信されるデータ通信ストリーム(例えば、1つまたは複数のデータパケット)のBFRによる準備を続けて行ってよい(ブロック450)。特に、BFEの論理回路(例えば、CPU、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ、特定用途向け集積回路など)は、データ送信の最大の無線効率(例えば、BFEクライアントデバイスの方向での最大ビーム強度)を達成するために、BFRアンテナのそれぞれについて、ビームフォーミング設定を計算することができる。各アンテナのビームフォーミング設定は、各アンテナによって送信される信号の振幅の表現と位相の表現とを含んでいてよい。いくつかの実装では、振幅および位相の表現は、これらのデジタル値がデジタル-アナログ変換器および無線回路によって処理された後、それらが各アンテナに所望の信号を送信させるように、いくつかのデジタル値であってよい。
【0042】
特異値分解法が使用されている1つの実装では、BFRは、第1のセットの固有値λにアクセスし、さらに、第1のセットと一緒に、または別の通信において、BFRに伝達され得る、対応している固有ベクトル
【数41】
にアクセスしてよい。BFRは、欠落している固有値をゼロとして扱い、各BFRアンテナに対するビームフォーミング設定を決定してよい。いくつかの実装では、ビームフォーミング設定は、使用されている無線規格に従って従来の方法で決定されてよい。
【0043】
図5は、現在の開示のいくつかの実装に従った、ベースステーションとクライアントデバイスとの間の無線接続をサポートするために使用されるMIMOチャネルの効率的なチャネル状態情報を、ベースクライアントデバイスによって生成する例示的な方法500のフローチャートである。無線ネットワークは、無線ネットワーク100であってよい。方法500を実施するために、ビームフォーミーデバイス(BFE)は、図6に示されるようなハードウェアを使用することができる。方法500は、ハードウェア(例えば、回路、専用ロジック、プログラマブルロジック、マイクロコードなど)、ソフトウェア(スパースフィードバックアナライザ106およびビームフォーミングモジュール107によって実行される操作など)、ファームウェアまたはそれらの組み合わせを含み得るBFE110の処理ロジックによって実施され得る。
【0044】
方法500は、複数のBFRアンテナによって出力された信号を複数のBFEアンテナによって受信することを含んでいてよい(ブロック510)。複数のBFEアンテナに接続されたBFEの無線回路(例えば、RFトランシーバ)は、受信された信号を処理することができる。BFEの無線回路は、無線フロントエンド、高周波増幅器、中間周波数増幅器、デジタル-アナログ変換器およびアナログ-デジタル変換器などを含んでいてよい。無線回路は、受信された信号の強度を決定し、対応する強度インジケータを生成してよい(ブロック520)。強度インジケータは、最初はアナログ形式であってよいが、無線回路に接続されている、BFEの論理回路(例えば、CPU、マイクロコントローラ、DSPまたは任意の他のプロセッサデバイス)にとってアクセス可能なデジタル形式に変換されてよい。
【0045】
方法500は、強度インジケータに基づいた、BFEのCPUによる、複数のBFRアンテナのそれぞれと複数のBFEアンテナのそれぞれとの間の信号送信を特徴付けるフィードバックパラメータの第1のセットの決定を続けて行ってよい(ブロック530)。いくつかの実装では、BFEのCPUは、スパースフィードバックモジュール114の命令を実行していてよい。1つの実装では、方法500のフィードバックパラメータの第1のセットは、方法400のフィードバックパラメータの第2のセットと同じであってよい。方法500のフィードバックパラメータの第1のセットは、無線帯域の複数の周波数サブキャリアに対して決定された行列Hを含んでいてよい。
【0046】
方法500は、BFEのCPUによる、フィードバックパラメータの第1のセットからのフィードバックパラメータのスパースセットの生成を続けて行ってよい(ブロック540)。いくつかの実装では、スパースセットは1D離散フーリエ変換または2D離散フーリエ変換を使用して生成され得る。他の実装では、スパースセットは特異値分解法によって生成されてよい。スパースセットは、要素の50%(または30%、25%、10%など)以下が閾値を超えるセットであってよい。スパースセットから、BFEのCPUは、閾値を超えるスパースセットの要素を有するフィードバックパラメータの第2のセットを生成してよい(ブロック550)。例えば、BFEのCPUは、スパースセットのすべてのサブ閾値フーリエ成分を破棄してよい。別の例では、特異値分解法が使用されている場合、BFEのCPUは、スパースセットのすべてのサブ閾値固有値を破棄してよい。
【0047】
方法500は、BFEのCPUによって、無線回路に、フィードバックパラメータの第2のセットをBFRへ出力させることを続けて行ってよい(ブロック560)。方法500のフィードバックパラメータの第2のセットは、方法400のフィードバックパラメータの第1のセットと同じであってよい。特異値分解法が使用される実装では、無線回路は、第2のセットの固有値λに関連付けされた固有ベクトル
【数42】
をさらに出力することができる。
【0048】
本明細書に記載の最適化されたチャネルサウンディングフィードバックの生成、引き渡しおよび使用のための技術は、Wi-Fi(登録商標)チップセットを含んでいるさまざまなタイプのポータブル無線デバイス上で実装され得る。図6は、本明細書に記載の技術に従って構成されている例示的な無線デバイスを示している。図6に示されている実施形態では、無線デバイス600は、半導体ダイ上に製造されたシングルチップ集積回路(IC)デバイス、またはシステムオンチップ(SoC)として製造されたシングルチップICであり得る。他の実施形態では、無線デバイス600は、単一の半導体パッケージにカプセル化されたマルチチップモジュールであり得る。したがって、図6の無線デバイス600は、限定的な意味ではなく、例示的な意味で捉えられるべきである。
【0049】
無線デバイス600は、CPU652、読み取り専用メモリ(ROM)654、ランダムアクセスメモリ(RAM)656、ホストインターフェース658、デジタルベースバンドPHY620およびRFトランシーバ(例えば、無線回路)610を含んでいる。CPU652、ROM654、RAM656、ホストインターフェース658およびデジタルベースバンドPHY620は、1つまたは複数のバス650に接続されている。デジタルベースバンドPHY620は、複数のアンテナ601に接続されているRFトランシーバ610にも接続されている。いくつかの実施形態では、アンテナは、無線デバイス600の残りのコンポーネントと同じICチップ上に一体的に形成されていてよい、または組み込まれていてよく、または別個のチップまたは基板上に配置されていてよい。択一的に、アンテナは、無線デバイス600が固定されているまたは取り付けられているプリント回路基板(PCB)に別個に接続されていてよい。
【0050】
CPU652は、ROM654、RAM656またはフラッシュメモリ(図示されていない)に格納され得る命令を実行するように構成されている1つまたは複数の処理コアを含んでいる。ROM654は、起動ルーチン、構成パラメータおよびその他のファームウェアパラメータおよび設定を格納するために構成されている読み取り専用メモリ(またはその他の適切な記憶媒体)である。RAM656は、CPU652によってアクセスされるデータおよびファームウェア命令を格納するように構成されている揮発性メモリである。存在する場合には、フラッシュメモリは、データ、プログラムおよび/またはその他のファームウェア命令を格納するように構成されている、組み込まれたまたは外部の不揮発性メモリ(例えば、NANDフラッシュ、NORフラッシュなど)であってよい。
【0051】
ホストインターフェース658は、デジタルベースバンドPHY620とホスト(図示されていない)との間でデータを転送するように構成されている制御レジスタ、データレジスタおよび他の回路を含んでいてよい。ホストは、オンチップに配置されたマイクロコントローラサブシステムであっても、オフチップICデバイスであってもよい。ホストは、(他の機能の中で)本明細書に記載の技術に従って質インジケータを受信および処理するように構成されているホストアプリケーションまたは他のファームウェア/ソフトウェアを実行するように動作可能なそれ自体のCPUを含んでいてよい
【0052】
バス650は、システムインターコネクトおよびペリフェラルインターコネクトなどの1つまたは複数のバスを含んでいてよい。システムインターコネクトは、シングルレベルまたはマルチレベルのアドバンストハイパフォーマンスバス(AHB)であってよく、これは、CPU652を無線デバイス600の他のコンポーネントに接続するインターフェースとして構成されている、ならびにさまざまなコンポーネントとペリフェラルインターコネクトとの間のデータインターフェースおよび制御インターフェースとして構成されている。ペリフェラルインターコネクトは、Advanced eXtensible Interface(AXI)バスであってよく、これはCPU652と、CPUに負担をかけずに周辺ブロック間でデータを転送するようにプログラムされ得る、その周辺機器および他のリソース(例えば、システムリソース、入力/出力(I/O)ブロック、ダイレクトメモリアクセス(DMA)コントローラなど)と、の間の主要データインターフェースおよび制御インターフェースを提供する。
【0053】
デジタルベースバンドPHY(例えば、デジタル信号プロセッサ、DSPなど)620は、RFトランシーバ610と、1つまたは複数のバス650に接続されているさまざまなコンポーネントと、の間で転送される信号およびデータを処理するように構成されているさまざまな論理ブロックおよび論理回路を含んでいる。デジタルベースバンドPHY620は、送信を行うTX BBP622と受信を行うRX BBP624とを含んでいる。TX BBP622は回路を含んでおり、この回路は、無線デバイス600の他のコンポーネントからデジタルデータ(例えば、一連のバイト)を受信し、受信したデータを、RFトランシーバ610に送られる、変調されたデジタル信号に変換するように構成されている。RX BBP624は回路を含んでおり、この回路は、RFトランシーバ610から、変調されたデジタル信号を受信し、受信した信号をデジタルデータに変換するように構成されている。
【0054】
RFトランシーバ610は、デジタルベースバンドPHY620とアンテナ601との間で転送される信号を処理するように構成されているさまざまな論理ブロックおよび論理回路を含んでいる。RFトランシーバ610は、送信機回路612と受信機回路614とを含んでいる。送信機回路612は、デジタル-アナログ変換器(DAC)と、TX BBP622から、変調されたデジタル信号を受信し、それを、アンテナ601を介して送信するためにアナログRF信号に変換するように構成されている他の回路とを含んでいる。受信機回路614は、アナログ-デジタル変換器(ADC)と、アンテナ601からアナログRF信号を受信し、それをRX BBP624に送信される変調されたデジタル信号に変換するように構成されている他の回路と、を含んでいる。
【0055】
送信機経路上での動作において、TX BBP622は、コンポーネント(例えば、CPU652、ホストインターフェース658など)から1つ以上のバス650を介して一連のデータバイトを受信する。TX BBP622は、受信したデータバイトを、プリアンブルおよびテールエンドCRCを伴うパケットに変換し、このパケットにスクランブルをかけ、スクランブルがかけられたパケットをデータビットのストリームにシリアライズする。次に、TX BBP622は、データビットのストリームを、変調された信号のコサイン(I)部分およびサイン(Q)部分に位相変調し、変調された信号は送信機回路612に送られる。送信機回路612は、DACを使用して、変調された信号のI部分およびQ部分をアナログ信号に変換し、これらのアナログ信号を結合してRF信号にし、アンテナ601を介してRF信号を送信する。
【0056】
受信機経路上での動作において、受信機回路614は、アンテナ601からRF信号を受信し、ADCを使用して、受信したRF信号を、変調されたデジタル信号のI部分およびQ部分に変換し、変調された信号をRX BBP624に送る。RX BBP624は、変調された信号のタイミング間隔と相対的な位相とをリカバー/追跡し、このタイミング情報を使用して、受信された信号をビットのストリームに復調する。次に、RX BBP624はビットのストリームをデシリアライズし、ビットをパケットに再構成し、パケットのスクランブルを解除する。次に、パケット内のあらゆるペイロードデータが一連のバイトに変換され、これは1つまたは複数のバス650を介してコンポーネント(CPU652、ホストインターフェース658など)に送られる。
【0057】
本明細書に記載の技術によれば、無線デバイスは、ソフトウェア、ハードウェアまたはファームウェア、あるいはそれらの任意の組み合わせで実装され得るスパースフィードバックコンポーネント630を含んでいてよい。スパースフィードバックコンポーネント630は、ROM654および/またはRAM656に格納されていてよい。いくつかの実装では、スパースフィードバックコンポーネント630のいくつかのモジュールは、ROM654に格納されてよいが、他のモジュールは、例えば、起動動作中に、RAM656に格納されてよい。スパースフィードバックコンポーネント630は、図1に示されたスパースフィードバックアナライザ106の機能とスパースフィードバックモジュール114の機能とを結合することができる。例えば、無線デバイス600がビームフォーマーとして動作しているとき、スパースフィードバックコンポーネント630は、チャネルフィードバック情報を受信し、受信した情報をビームフォーミングモジュール107に使用可能なフォーマットに変換するなど、スパースフィードバックアナライザ106の機能を提供し得る。無線デバイス600がビームフォーミーとして動作しているとき、スパースフィードバックコンポーネント630は、フィードバック行列の要素を決定する、フィードバック行列のスパース表現を取得する(例えば、離散フーリエ変換および/または特異値分解操作を実行する)、取得されたスパースセットのトリミングなど、スパースフィードバックモジュール114の機能を提供し得る。
【0058】
動作中、スパースフィードバックコンポーネント630は、CPU652に命令を出力する。無線デバイス600がビームフォーマーとして動作しているとき、スパースフィードバックコンポーネント630は、RX BBP624と通信して、アンテナ601を介して、ビームフォーミーデバイスから、方法400のフィードバックパラメータの第1のセットを受信し得る。無線デバイス600がビームフォーミーとして動作しているとき、スパースフィードバックコンポーネント630は、TX BBP622と通信して、ビームフォーマーデバイスに、方法500のフィードバックパラメータの第2のセットを出力し得る。
【0059】
本明細書全体を通して「1つの実装」または「実装」との言及は、実装に関連して説明される特定の特徴、構造または特性が、本開示の少なくとも1つの実装に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体のさまざまな場所における「1つの実装において」または「実装において」という句の出現は、必ずしもすべてが同じ実装を指すとは限らない。さらに、特定の特徴、構造または特性を、1つまたは複数の実装において任意の適切な方法で組み合わせることができる。
【0060】
上述の明細書では、特定の例示的な実装を参照して詳細な説明が与えられている。しかし、添付の特許請求の範囲に記載されているように、本開示のより広い精神および範囲から逸脱することなく、さまざまな修正および変更を行うことができることは明らかであろう。したがって、明細書および図面は、限定的な意味ではなく例示的な意味で捉えられるべきである。さらに、実装の上述の使用、実装および/または他の例示的な言語は、必ずしも同じ実装または同じ例を指すとは限らないが、異なる実装および異質の実装ならびに潜在的に同じ実装を指す場合がある。
【0061】
「例」または「例示的」という用語は、本明細書では、例、実例または例示として機能することを意味するために使用される。本明細書で「例」または「例示的」として説明されたいかなる態様または設計も、必ずしも他の態様または設計より好ましいまたは有利であると解釈されるべきではない。むしろ、「例」または「例示的」という単語の使用は、概念を具体的に提示することを意図している。本出願において使用される場合、用語「または」は、排他的な「または」ではなく、包括的な「または」を意味することを意図している。すなわち、特にそうでないことが明記されていない限り、または文脈から明らかでない限り、「XはAまたはBを含んでいる」は、任意の自然な包括的置換を意味することを意図している。すなわち、XがAを含んでいる場合、XがBを含んでいる場合またはXがAとBとの両方を含んでいる場合、上述のいずれかの場合に「XがAまたはBを含んでいる」が満たされる。さらに、本出願および添付の特許請求の範囲で使用される冠詞「a」および「an」は、特にそうでないことが明記されていない限り、または単数形に向けられていることが文脈から明らかでない限り、一般に「1つまたは複数」を意味すると解釈されるべきである。さらに、全体を通して、用語「実装」または「1つの実装」の使用は、そのように説明されていない限り、同じ実装または実装を意味することを意図していない。また、本明細書において使用される「第1」、「第2」、「第3」、「第4」などの用語は、異なる要素を区別するためのラベルとして意図され、必ずしもそれらの数値指定に従った順序を意味するとは限らない。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5
図6