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特許7566792機械学習モデルを訓練するため、および患者の推定体内画像を提供するためのシステムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】機械学習モデルを訓練するため、および患者の推定体内画像を提供するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   G16H 30/40 20180101AFI20241007BHJP
   A61N 5/10 20060101ALI20241007BHJP
【FI】
G16H30/40
A61N5/10 P
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021571708
(86)(22)【出願日】2020-06-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-15
(86)【国際出願番号】 EP2020065117
(87)【国際公開番号】W WO2020249414
(87)【国際公開日】2020-12-17
【審査請求日】2023-04-17
(31)【優先権主張番号】19180030.9
(32)【優先日】2019-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】522454806
【氏名又は名称】レイサーチ ラボラトリーズ エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】アンダーソン,セバスチアン
(72)【発明者】
【氏名】エリクソン,キール
(72)【発明者】
【氏名】スベンソン,スティナ
(72)【発明者】
【氏名】ウエイストランド,オラ
【審査官】森田 充功
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0228460(US,A1)
【文献】国際公開第2017/191847(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
A61N 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人間の複数の画像セットに基づいて、患者の体内の推定画像を提供するための深層学習モデルを訓練するコンピュータベースの方法であって、
前記複数の画像セットは、
時間T に第1の点で撮影された第1の輪郭画像及び第1の体内画像を有する第1の画像のペアと、
時間T に第2の点で撮影された第2の輪郭画像及び第2の体内画像を有する第2の画像のペアと
を含み、以下のステップ:
a.前記複数の画像セットを前記深層学習モデルに提示するステップであって、前記深層学習モデルはリカレント型畳み込みニューラルネットワーク(RCNN)である、ステップa;
b.前記人間の前記体内と前記人間の外輪郭との相関性を明示する最適化パラメータ化変換関数Gを確立するために前記モデルを訓練するステップであって、以下の
b1.輪郭画像を体内の推定画像に変換する初期パラメータ化変換関数G に基づき、前記モデルを前記第1の輪郭画像に適用して第1の体内の推定画像を取得し、
b2.前記第1の体内の推定画像を前記第1の体内画像と比較して、前記初期パラメータ化変換関数G を調整して第1のパラメータ化変換関数G を形成し、
b3.前記第1のパラメータ化変換関数G に基づき、前記第2の輪郭画像に適用して第2の体内の推定画像を取得し、且つ
b4.前記第2の体内の推定画像を前記第2の体内画像と比較して、前記第1のパラメータ化変換関数G を調整して第2のパラメータ化変換関数G を形成する
操作により訓練するステップb
を包含する方法。
【請求項2】
記第1の体内画像及び前記第2の体内画像はセグメンテーションマップであり、前記モデルはセグメンテーションマップを出力するように訓練される、請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記画像セットの前記第1の体内画像及び前記第2の体内画像は、CT画像であり、前記モデルは合成CT画像を出力するように訓練される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記画像セットは、前記患者の体内に関する追加情報を提供するために少なくとも1スライスのMR画像を更に備える、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記画像セットの前記第1の体内画像及び前記輪郭画像は4D画像であり、前記モデルは合成4D画像を出力するように訓練される、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の深層学習モデルを用いて、患者の体内の推定画像を提供するコンピュータベースの方法
【請求項7】
前記輪郭画像は、表面走査デバイスから取得されたデータに基づく、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記推定画像は、前記患者のセグメント化画像である、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記推定画像は、前記患者のCT画像である、請求項6または7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
コンピュータ内のプロセッサにおいて実行されると、前記コンピュータに、請求項1~のいずれか1項に記載の方法を行わせるように構成されたコンピュータプログラム製品。
【請求項11】
プロセッサと、請求項10に記載のコンピュータプログラム製品を備えるプログラムメモリとを備えるコンピュータシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用途で用いるための患者の推定画像を提供するためのコンピュータプログラム製品およびコンピュータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
放射線療法において、治療を受ける患者は通常、長椅子の上に横たわるが、立っている、または椅子に座っていることもある。患者の体内は、たとえば呼吸、咳、または不快感から生じる動きなどの要因によって動き得る。そのような動きは、放射線が標的から逸れ、別の臓器、場合によっては危険な臓器に当たる原因になり得る。これにより、標的への放射線量不足および/または他の組織または臓器への過剰放射線量が生じることがあり、これらはいずれも望ましくなく、場合によっては有害である。この問題は、多数の様々な方法で対処されてきた。
【0003】
そのような動きを防止するための様々な試みが行われてきた。たとえば、患者が治療中に動く可能性が制限され得る。具体的には、患者は息を止めるように指示され、または特定の範囲内でしか動かないように物理的に強制され得る。これは不快感を招き、ある程度および/または限られた時間しか可能ではない。
【0004】
この問題に対処する他の試みは、様々な重要臓器の位置における不確定性が考慮されているロバストな計画を伴うものである。これは、考えられる多数の様々なシナリオに適合する必要があるために最適ではない計画をもたらし得る。
【0005】
標的追跡のための様々な方法も提案されてきた。欧州特許出願第18180987号において、呼吸サイクルの様々な段階における患者の撮像、および様々な段階における標的および他の臓器の様々な位置を考慮した段階放射線量の合計として全体放射線量を計画することを伴う方法が提案される。これは、一般に治療を通して撮影される患者のCT画像である多数の3D画像を必要とし、患者への多量の追加放射をもたらすので、望ましくない。1つの代替案は、MR撮像の使用である。これは放射を伴わないが、CT撮像よりも大幅に緩慢であり、同じ画像品質をもたらすものではない。標的追跡放射性マーカも提案されている。これは、標的の追跡のみが可能であり、他の臓器の位置の変化は検出されない。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、放射線治療計画において、治療フラクションの間、患者の定期的な動きまたは不慮の動きを考慮に入れることである。
【0007】
この本発明の目的は、各々が特定の時点における人間の体内の第1の体内画像および人間の外輪郭の輪郭画像と人間の体内の第2の体内画像とを備える複数の画像セットに基づいて、患者の体内の推定画像を提供するための深層学習モデルを訓練するコンピュータベースの方法によって実現され、方法は、
a.輪郭画像および第2の体内画像に基づいて推定画像を出力するように構成された深層学習モデルに画像セットを提示するステップと、
b.少なくとも1つの画像セットについて、画像セットの輪郭画像および第2の体内画像にモデルを適用し、出力を第1の体内画像と比較し、モデルを訓練するために比較の結果を用いることによって、画像セットに基づいて人間の体内と人間の外輪郭との相関性を明示する最適化パラメータ化変換関数Gを確立するためにモデルを訓練するステップと
を備える。
【0008】
本発明は、第1の時点における患者の体内の推定画像を提供する方法にも関し、方法は、
・第1の時点より前の第2の時点における患者の体内の体内画像を、人間の輪郭と体内との相関性に基づく最適化パラメータ化変換関数を備える深層学習モデルに提供するステップと、
・第1の時点における患者の輪郭の輪郭画像を深層学習モデルに提供するステップと、
・体内画像、輪郭画像、および最適化パラメータ化変換関数Gに基づいて、深層学習モデルから患者の推定画像を出力するステップと
を備える。
【0009】
本発明に係る方法は、多くの場合、患者の外輪郭と、たとえば臓器または組織などの1または複数の体内構造の位置を含む体内構造との間に相関性があるという事実に基づく。体内データを提供するために用いられる画像または複数の画像は一般に、たとえば1または複数のフラクション画像および/または計画画像など、治療計画および治療の過程で撮影された患者の1または複数の画像である。深層学習モデルを訓練する方法において、好適には、画像セットの全てについてステップが繰り返される。各輪郭画像は、たとえば患者のCTスキャンなど、対応する体内画像と同じ画像に基づいてよい。あるいは輪郭画像は、たとえば表面走査デバイスから取得されたデータに基づくなど、個別の画像データに基づいてよい。一般に、推定画像は、たとえば放射線治療計画など、患者の体内に関する情報を必要とする医療手順を計画するため、または既存の計画を修正するために用いられる。表面走査が繰返し行われる場合、後続の表面走査による輪郭データは、様々な時点に対応する一連の3D画像で構成される4D画像を生成するために用いられ得る。いくつかの実施形態において、各画像セットの第1の体内画像および輪郭画像は4D画像であり、モデルは、合成4D画像を出力するように訓練される。
【0010】
輪郭画像とほぼ同時に撮影された第1の体内画像は、輪郭画像および第2の体内画像に基づく場合にモデルからの出力がなされるべき標的として役立ち得る。したがって、訓練は、モデルからの出力、すなわち第1の推定画像と、第1の体内画像との比較に基づく。第2の体内画像は、たとえば患者の計画画像またはフラクション画像など、前の時点に撮影された画像であってよく、または訓練モデルにおける前のステップからの推定画像であってよい。第2の体内画像は、たとえば輪郭画像と同じフラクションの前に撮影されたフラクション画像、または訓練モデルにおける直前のステップの結果生じる推定画像など、輪郭画像と近い時間に撮影されることが有利である。
【0011】
推定画像を提供する方法において、輪郭画像は好適には、表面走査デバイスから取得されたデータに基づく。そのような表面走査デバイスは多くの場合、たとえば各治療フラクションに関して患者の正確な位置決めを確実にするといった他の目的のために、たとえば放射線送出システムにおいて病院内で利用可能である。したがって、表面走査データは多くの場合、追加の機器を必要とせず取得され得る。また表面走査データは、患者を追加の放射線量に晒すことなく取得され得る。
【0012】
本発明は、患者の1または複数の推定体内画像の提供を可能にするものであり、これにより、たとえば特定回数の治療フラクションの後に治療計画を更新するために、患者の実際の画像を取得する必要性が低減される。本発明は、患者の新たな画像を取得することなく、各フラクションにおいて患者に送出される放射線量を推定することを可能にする。これにより、様々な時点で画像を取得するために患者を放射線に晒す必要性が低減される。またこれは、追加の撮像が患者に不快感をもたらす状況においても有用である。
【0013】
大量のデータセットに基づいて、異なる種類のデータ間の相関性を決定し、これらの相関性を用いて入力データを処理することができる機械学習システムが利用可能である。本発明によると、人間の外輪郭と体内、特に患者の体内の臓器または他の標的の位置との相関性は、輪郭および体内の両方が既知である以前のデータセットに基づいて決定され得る。相関性は、輪郭画像を患者の体内の推定画像に変換するように構成されたパラメータ化変換関数Gの形式で表される。
【0014】
訓練方法の好適な実施形態において、訓練ステップは、
・複数の画像セットの第1の画像セットに基づいて、輪郭画像を患者の体内の推定画像に変換するように構成された初期パラメータ化変換関数Gを取得することと、
・パラメータ化変換関数Gを第1の画像セットの輪郭画像および第2の体内画像に適用することによって、第1の推定体内画像を取得することと、
・第1の比較ステップにおいて、第1の推定体内画像と、第1の画像ペアの体内画像とを比較することと、
・第1のパラメータ化変換関数G1を生成するために、比較に基づいて、初期パラメータ化変換関数Gを調整することと
を備える。
【0015】
この例において、訓練ステップは更に、
・第2の推定画像を取得するために、第2の画像セットの輪郭画像に第1のパラメータ化変換関数G1を適用することと、
・第2の推定画像と第2の画像ペアの体内画像とを比較し、第2のパラメータ化変換関数G2を生成するために初期パラメータ化変換関数Gを調整することと
を備えてよい。
一般に、一連のそのような訓練ステップが行われる。初期パラメータ化変換関数Gは、各訓練ステップについて調整されてよく、または複数の訓練ステップの後に調整され得る。
【0016】
後者の場合、訓練ステップは更に、
・パラメータ化変換関数Gを第2の画像セットの輪郭画像に適用することによって、第2の推定体内画像を取得することと、
・第2の比較ステップにおいて、第2の推定体内画像と、第2の画像ペアの体内画像とを比較することと、
・第1のパラメータ化変換関数G1を生成するために、第1および第2の比較ステップに基づいて、初期パラメータ化変換関数Gを調整することと
を備えてよい。
【0017】
各画像セットの第1および第2の体内画像はセグメンテーションマップであってよく、この場合、モデルはセグメンテーションマップを出力するように訓練される。よって、推定画像もまたセグメンテーションマップである。あるいは、各画像セットの体内画像は、たとえばCTまたはMR画像などの画像であってよく、モデルは、それぞれ合成CT画像または合成MR画像を推定画像として出力するように訓練される。すなわち、モデルは通常、体内画像と同じモダリティ、フォーマット、および詳細レベルの合成画像を出力するように訓練される。当然、他のモダリティまたはフォーマットの画像を取得するために追加の変換ステップが追加されてよい。
【0018】
体内画像および輪郭画像に加えて、各画像セットは、患者の体内に関する追加の情報を提供するために少なくとも1スライスのMR画像も備えてよい。
【0019】
本発明は、コンピュータ内のプロセッサによって実行されると、コンピュータに、上記請求項のいずれか1項に記載の方法を行わせるように構成されたコンピュータプログラム製品にも関する。コンピュータプログラム製品は、たとえば非一時的記憶手段などの記憶手段に格納され得る。
【0020】
本発明は、プロセッサおよびプログラムメモリを備えるコンピュータシステムにも関し、上記プログラムメモリは、上記に記載のコンピュータプログラム製品を備える。
【0021】
本発明は、一例として添付図面を参照し、以下で詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明に用いられ得る撮像システムを示す。
図2】患者の輪郭の動きおよび対応する患者の内臓の動きを示す。
図3】本発明に従って用いられる深層学習モデルを訓練するための方法のフローチャートである。
図4】患者の推定画像を生成するために図3の方法に従って取得された深層学習モデルを用いるための方法のフローチャートである。
図5】本発明に従って用いられ得る機械学習のためのモデルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、放射線治療および/または治療計画のためのシステム10の概観である。理解されるように、そのようなシステムは任意の適当な方法で設計されてよく、図7に示す設計は単なる一例である。患者1は、治療用長椅子3上に位置する。システムは、長椅子3上に位置する患者に向かって放射能を放出するためにガントリ7に取り付けられた放射線源5を有する撮像/治療ユニットを備える。一般に、長椅子3およびガントリ7は、可能な限り柔軟かつ正確に患者に放射を提供するために、互いに対しいくつかの次元において可動である。これらの部品およびそれらの機能は、当業者に周知である。通常、ビームを水平および深さ方向に成形するために提供された複数のデバイスが存在するが、ここでは詳しく説明されない。システムは、放射線治療計画および/または放射線治療の制御のために用いられ得るコンピュータ21も備える。理解されるように、コンピュータ21は、撮像/治療ユニットに接続されていない独立ユニットであってよい。
【0024】
コンピュータ21は、プロセッサ23、データメモリ24、およびプログラムメモリ25を備える。好適には、キーボード、マウス、ジョイスティック、音声認識手段、または他の任意の利用可能なユーザ入力手段の形式で1または複数のユーザ入力手段28、29も存在する。ユーザ入力手段は、外部メモリユニットからデータを受信するように構成されてもよい。
【0025】
システムが計画のために用いられる場合、データメモリ24は、治療計画を取得するために用いられる医療データおよび/または他の情報を備える。一般に、データメモリ24は、治療計画に用いられる1または複数の患者画像を備える。訓練のために、データメモリは、後に詳述するように入力データの訓練セットを保持する。入力データの各セットは、ほぼ同時に撮影された患者の少なくとも一部の輪郭の画像および輪郭の内部の体内画像、および場合によっては訓練を支援し得る他のデータを備える。推定内部画像を生成するために、データメモリは、患者の初期体内画像および患者の初期体内画像とは異なる時に撮影された患者の輪郭画像を少なくとも備える。プログラムメモリ25は、プロセッサに図3または図4に従って方法を行わせるように構成された少なくとも1つのコンピュータプログラムを保持する。プログラムメモリ25は、コンピュータに患者の放射線治療を制御させるために図3または図4と関連して説明される方法ステップをコンピュータに行わせるように構成されたコンピュータプログラムも保持する。
【0026】
推定画像は、訓練セットにおいて用いられた体内画像の細部に依存して様々な詳細レベルを備えてよい。これは、患者の体内の1または複数の臓器または構造の位置および形状を単純に示すセグメント化画像であってよく、またはCT画像に匹敵する詳細レベルを有してよい。
【0027】
理解されるように、データメモリ24およびプログラムメモリ25は、概略的に示され説明されたにすぎない。各々が1または複数の異なる種類のデータを保持するいくつかのデータメモリユニットが存在してよく、または1つのデータメモリが適当に構成された方法で全てのデータを保持し、プログラムメモリも同様である。1または複数のメモリが他のコンピュータに格納されてもよい。たとえばコンピュータは、方法の1つのみを行うように構成され、最適化を行うための別のコンピュータが存在してよい。
【0028】
図2は、呼吸サイクルにわたる患者の動きと、患者の体内のたとえば腫瘍などの構造42または危険な臓器の位置との可能な相関関係を示すために、患者の胴体40の一部を示す。構造42の第1の位置は、実線で示される。患者が息を吸い、吐くと、第1の矢印46で示すように、患者の前部の外輪郭44が外側および内側に動く。同時に、構造42は、第2の矢印48で示すように、輪郭とは異なる方向に、一般に下方向および外方向に動く。輪郭、および構造の変化する位置の例は、破線で示される。
【0029】
本発明によると、機械学習は、4D画像および対応する表面輪郭を用いて深層学習モデルを訓練するために用いられる。好適な実施形態において、4D画像はCT画像であるが、MRIを含む任意の適当な技術を用いて取得され得る。入力データは好適には、時間T0に第1の点で撮影された第1の表面画像および第1のCT画像、および時間T1に第2の点で撮影された第2の表面画像および第2のCT画像などの画像のペアである。そのような訓練方法の例が図3に示される。
【0030】
第1のステップS31において、複数の画像ペアが提供され、各ペアは、基本的に同時に撮影された、人物の1つの表面輪郭およびその人物の体内の3D体内画像で構成される。上述したように、体内画像は、セグメント化画像から完全なCT画像まで、結果として生じる推定画像の所望の詳細レベルに依存して詳細レベルを備えてよい。表面輪郭は、撮像装置の付近で利用可能な表面スキャナから提供されてよく、または訓練に用いられる輪郭データが3D画像から取得され得る。第2のステップS32において、画像ペアは、表面輪郭と、人物の体内の少なくとも1つの関心領域の位置との関係性を確立するための機械学習に用いられる。当技術分野で周知のように、これは、表面輪郭の画像を輪郭の内側の推定画像に変換するための最適化パラメータ化関数を生成することを伴う。これは一般に、通常、患者の以前の体内画像、場合によっては他の画像データおよびアクティブ化データのセットと共に、第1の表面画像を関数に提示することによって実現される。関数からの出力は、第1の表面画像と同時に撮影された第1のCT画像と比較される。比較の結果は、関数を改良するために用いられる。各訓練ステップ後に関数を改良するのではなく、関数は、特定数のステップの後、または手順の最後にのみ改良され得る。次に、第2の表面画像が提示され、場合によっては改良された関数は、上記で用いた以前の体内画像または別の以前の体内画像、およびアクティブ化データのセットと共に、第2の出力データを提供するために用いられる。第2の出力データは、第2のCT画像と比較され、この比較による結果は、関数およびアクティブ化データのセットを再び改良するために用いられる。これが、表面画像およびCT画像の複数のセットについて繰り返される。この手順の結果が、患者の輪郭データを輪郭内部の患者の体内の推定画像に変換するために用いられ得る関数O31である。
【0031】
好適には、リカレント型畳み込みニューラルネットワーク(RCNN)が用いられる。RCNNは、先行ステップからの情報を考慮することにより、前の時点における表面または画像に関する情報を提供する。同時に取得されたペア内の画像を相関付ける関数が確立され、他の患者の推定または合成画像を生成するために後続手順において用いられ得る。
【0032】
深層学習モデルが訓練されている場合、すなわち最適化パラメータ化関数が生成されている場合、患者の輪郭の変化に関する知識が、患者の体内の臓器の位置を決定するために用いられ得る。この手順への入力データは、患者の表面輪郭および一般にフラクション画像である体内画像に関連する情報である。具体的には、様々な時点における患者の推定または合成画像をもたらすために、様々な時点からの表面データが入力データとして用いられ得る。推定画像は、深層学習モデルにおいて定義されたように輪郭を体内CT画像と相関付ける、図3において確立された関数に基づいて生成される。したがって図4は、患者から得た輪郭データが、たとえば図3において生成されたモデルなどのモデルに提供される第1のステップS41と、輪郭に基づく患者の体内の推定または合成画像が、ステップS32において確立された関数を用いて生成される第2のステップS42とを有する。
【0033】
任意の種類のリカレント型ニューラルネットワークアーキテクチャが用いられ得る。全てのリカレント型ニューラルネットワークに共通する点は、前の時点からの情報がモデルに組み込まれることである。図5において、リカレント型ニューラルネットワークの基本例が示される。当技術分野において周知であるように、モデルは、各々が長方形で表されたパラメータ化関数への一連の入力データx<t>を用いるように構成される。各関数の実行がステップとして知られる。長方形内の各円は、重みおよび演算を含む、最適化パラメータ化関数の層としても知られる部分を表す。モデルは、入力データに基づく出力データ
【数1】
およびアクティブ化データベクトルa<t>のセットを生成するために用いられ得る。各例において、符号<t>は、データが関連する時点を意味する。よって、たとえばx<1>は、最初に、すなわちt=0の時点で撮影された患者画像およびt=1の時点で撮影された輪郭画像を備える。同様に、
【数2】
は、入力データx<1>と、当技術分野において知られるようにゼロベクトルであってよいが入力アクティブ化データの適当なセットであってもよいアクティブ化データa<0>とに基づく、t=1における患者の体内の推定画像である。当技術分野において知られるように、基本リカレント型畳み込みニューラルネットワークに関連する式は以下の通りであり、*は畳み込みを意味する。
【数3】
式中、gは、異なるまたは同じであり得る関数を意味し、a <t>は、時間t+1においてレベルnに用いられるアクティブ化データを意味し、Wanは、前の時点からのアクティブ化に作用する重みを意味し、Wxnは、前の層からのアクティブ化に作用する重みを意味し、Wynは、最後の層からのアクティブ化に作用する重みを意味する。
【数4】
は、時間tにおける出力であり、banおよびbはバイアス値である。Wおよびbの値は、最適化されたものである。
【0034】
モデルを訓練する場合、重みWおよびバイアスbは一般に各ステップの後、すなわち図5の各長方形の後に更新されるが、代替として複数のステップの後、または最後のステップの後に更新される。推定画像と入力体内画像との比較は一般に、パラメータを最適化する時に用いられたコスト関数におけるペナルティ項として表される。これは、ステップS32に関して上述したような各比較において識別された差の合計に基づき、
【数5】
である。式中、演算子-は、必ずしも減算ではなく比較の何らかの種類を示す。パラメータは、この差を最小化するために最適化される。
【0035】
考えられる他のペナルティ項は、実際の画像と生成画像とを区別しようと試みる分類関数Dの使用に基づく。このネットワークは、Gと共に最適化され得る。Dは、実際の画像および生成画像の分類エラーを最小化するために最適化される。Gは、この分類エラーを最大化するために最適化される。
【0036】
図5に示すモデル例は一例に過ぎないことに留意すべきである。当業者は、いくつかの種類のニューラルネットワークが存在し、本発明に従って任意の適当な1つが使用され得ることを認識する。好適にはリカレント型畳み込みニューラルネットワーク(RCNN)が用いられ、長短期記憶(LSTM)として知られる種類のRCNNは、本発明に係る方法に特に適していることが分かっている。
図1
図2
図3
図4
図5