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特許7566793中空コアファイバの製造方法および中空コアファイバ用プリフォームの製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】中空コアファイバの製造方法および中空コアファイバ用プリフォームの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 37/012 20060101AFI20241007BHJP
   G02B 6/02 20060101ALI20241007BHJP
   G02B 6/032 20060101ALI20241007BHJP
【FI】
C03B37/012 Z
G02B6/02 356A
G02B6/032 Z
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021571732
(86)(22)【出願日】2020-07-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-20
(86)【国際出願番号】 EP2020069980
(87)【国際公開番号】W WO2021009213
(87)【国際公開日】2021-01-21
【審査請求日】2023-03-27
(31)【優先権主張番号】62/875,303
(32)【優先日】2019-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】19189575.4
(32)【優先日】2019-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507332918
【氏名又は名称】ヘレーウス クヴァルツグラース ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Quarzglas GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Heraeusstr.12-14, 63450 Hanau, Germany
(73)【特許権者】
【識別番号】515174489
【氏名又は名称】ヘレーウス クオーツ ノース アメリカ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Quartz North America LLC
【住所又は居所原語表記】100 Heraeus Boulevard, Buford, GA 30518, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マニュエル ローゼンベルガー
(72)【発明者】
【氏名】ヤン フィドラ
(72)【発明者】
【氏名】カイ フエイ チャン
(72)【発明者】
【氏名】チウリン マ
【審査官】三村 潤一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-150184(JP,A)
【文献】特公昭54-030689(JP,B1)
【文献】特開2002-321935(JP,A)
【文献】特開2018-043924(JP,A)
【文献】特表2018-533042(JP,A)
【文献】国際公開第2002/072489(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 37/00 - 37/16
G02B 6/00 - 6/54
C03B 23/00 - 23/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファイバの長手方向軸に沿って延びる中空コアと、複数の反共振要素を含む、中空コアを取り囲むクラッド領域とを有する反共振中空コアファイバ(29;129)の製造方法であって、
(a)少なくとも1つの被覆管と、被覆管内部ボアと、被覆管長手方向軸とを有し、内側と外側により画定されている被覆管壁(24;124)が前記被覆管長手方向軸に沿って延びている中空コアファイバのための一次プリフォーム(26;126)を提供する工程と、
(b)反共振要素(28a;28b;128)のための複数の前段階(25a;25b;125;213)を前記被覆管壁(24;124)の目標位置に形成する工程と、
(c)一次プリフォーム(26;126)を中空コアファイバ(29;129)に延伸する工程、または一次プリフォーム(26;126)を、中空コアファイバが線引きされる二次プリフォームにさらに加工する工程と、
を備え、
前記さらに加工する工程では、
(i)延伸、
(ii)コラップス、
(iii)コラップスおよび同時延伸、
(iv)追加のクラッド材料のコラップス、
(v)追加のクラッド材料のコラップスとそれに続く延伸、
(vi)追加のクラッド材料のコラップスおよび同時延伸、
のうち1つ以上の熱成形プロセスが一回または反復して実行される、製造方法において、
前記反共振要素の前段階(25a;25b;125;213)の形成は、細長い圧力室(25a;25b;125;213)の形成を含み、前記圧力室は、それぞれ前記反共振要素(28a;28b;128)の前記目標位置の領域において圧力と熱によって変形可能な壁(21;22)に隣接しており、工程(c)によるプロセス実行されると、圧力と熱の結果として、前記変形可能な壁(21;22)の部分に、前記被覆管内部ボア(16)の方向に膨らみを生じさせ、これによって反共振要素(28a;28b;128)またはその前段階を形成し、前記変形可能な壁部分は、ガラス管(21;221)の壁部分によって形成され、前記圧力室のそれぞれは、前記ガラス管(21;221)の壁部分が隣接する中空チャネルとして設計されていることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ガラス管(221)の管壁の内部に、ガラス管長手方向軸に対して平行に延在する前記中空チャネル(213)が形成されることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項3】
内部ガラス管の前記管壁の中にある内周の中空チャネル列と、外部ガラス管の前記管壁の中にある外周の中空チャネル列とを含む同軸のガラス管配置体が形成され、前記内周と前記外周の前記中空チャネル列は、半径方向に見て共通の接続線上にあり、周囲を周回する、内側に向かって変形可能な少なくとも1つのガラス壁によって空間的に互いに分離されていることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記中空チャネル(13;25a;25b;125)の形成は、前記ガラス管(21)と外管(22;23)の間に中間管長手方向軸を有する中間管(10;20)を配置し、前記中間管長手方向軸に沿って、内側と外側により画定されている中間管壁を延伸させるという措置を含み、前記中間管壁の中には長手方向スロット(13)が取り付けられ、工程(c)によるプロセスの実行時に前記長手方向スロット(13)から前記中空チャネル(25a;25b;125)が形成され、前記被覆管内部ボアの方向にそれぞれの前記壁部分を膨らませるために、後の製造ステップにおいて前記ガラス管(21)の外側に圧力を加えるために使用することができることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項5】
内部断面が円形の中間管(10;20)が提供され、切削加工されることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記中間管(10;20)は端面側の端部を有しており、前記長手方向スロット(13)は前記端面側の端部の前で終端していることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項7】
内部ガラス管(21)、内部中間管(10)、同時に外部ガラス管(22)を形成する内部外管(22)、外部中間管(20)、および外部外管(23)を含む同軸の管配置体(19)が形成され、前記内部中間管と前記外部中間管(10;20)の前記長手方向スロット(13)は、半径方向に共通の接続線上にあり、周囲を周回する、内側に向かって変形可能な少なくとも1つのガラス壁(22)によって空間的に互いに分離されていることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記中空チャネルの形成は、ガラス管と、該ガラス管を同軸に取り囲む中間管とを使用する措置を含み、前記ガラス管はガラス管外側クラッド面を有し、該外側クラッド面に前記ガラス管の長手方向軸に対して平行に延在する長手方向溝が取り付けられており、および/または前記中間管は中間管内側クラッド面を有し、該内側クラッド面に前記中間管の長手方向軸に対して平行に延在する長手方向溝が取り付けられており、工程(c)によるプロセスを実行する際に前記長手方向溝から前記中空チャネルが形成され、前記中空チャネルは、圧力と熱によって細長い膨らみに変形されることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記長手方向スロット(13)は、切断加工、穴あけ加工、鋸加工、フライス加工または研磨加工によって作製されることを特徴とする、請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記長手方向溝は、切断加工、穴あけ加工、鋸加工、フライス加工または研磨加工によって作製されることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記長手方向スロット(13)は長手方向縁部を有し、前記長手方向縁部は軟化によって、同時延伸の際に、周りを取り囲むガラス材料と溶融することを特徴とする、請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記長手方向溝は長手方向縁部を有し、前記長手方向縁部は軟化によって、同時延伸の際に、周りを取り囲むガラス材料と溶融することを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記ガラス管(21;22)は、粘性を下げるドーパントを含むガラスからなることを特徴とする、請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
ファイバの長手方向軸に沿って延びる中空コアと、複数の反共振要素を含み、かつ中空コアを取り囲むクラッド領域とを有する反共振中空コアファイバのプリフォームの製造方法であって、
(a)少なくとも1つの被覆管と、被覆管内部ボアと、被覆管長手方向軸とを有し、内側と外側により画定されている被覆管壁(24;124)が前記被覆管長手方向軸に沿って延びている中空コアファイバのための一次プリフォーム(26;126)を提供する工程と、
(b)反共振要素(28a;28b;128)のための複数の前段階(25a;25b;125;213)を被覆管壁(24;124)の目標位置に形成する工程と、
(c)一次プリフォーム(26;126)を、中空コアファイバのための二次プリフォームにさらに加工する工程と、
を備え、
前記さらに加工する工程では、
(i)延伸、
(ii)コラップス、
(iii)コラップスおよび同時延伸、
(iv)追加のクラッド材料のコラップス、
(v)追加のクラッド材料のコラップスとそれに続く延伸、
(vi)追加のクラッド材料のコラップスおよび同時延伸、
のうち1つ以上の熱成形プロセスが一回または反復して実行される、製造方法において、
前記反共振要素の前段階(25a;25b;125;213)の形成は、細長い圧力室(25a;25b;125;213)の形成を含み、前記圧力室は、それぞれ前記反共振要素(28a;28b;128)の前記目標位置の領域において圧力と熱によって変形可能な壁(21;22)に隣接しており、工程(c)によるプロセス実行されると、圧力と熱の結果として、前記変形可能な壁(21;22)の部分に、前記被覆管内部ボア(16)の方向に膨らみを生じさせ、これによって反共振要素(28a;28b;128)またはその前段階を形成し、前記変形可能な壁部分は、ガラス管(21;221)の壁部分によって形成され、前記圧力室のそれぞれは、前記ガラス管(21;221)の壁部分が隣接する中空チャネルとして設計されていることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファイバの長手方向軸に沿って延びる中空コアと、複数の反共振要素を含む、中空コアを取り囲むクラッド領域とを有する反共振中空コアファイバの製造方法であって、
(a)少なくとも1つの被覆管と、被覆管内部ボアと、被覆管長手方向軸とを有し、内側と外側により画定されている被覆管壁が被覆管長手方向軸に沿って延びている中空コアファイバのための一次プリフォームを提供する工程と、
(b)反共振要素のための複数の前段階を被覆管壁の目標位置に形成する工程と、
(c)一次プリフォーム中空コアファイバに延伸する工程、または一次プリフォームを、中空コアファイバが線引きされる二次プリフォームにさらに加工する工程と、
を備え、
さらに加工する工程では、
(i)延伸、
(ii)コラップス、
(iii)コラップスおよび同時延伸、
(iv)追加のクラッド材料のコラップス、
(v)追加のクラッド材料のコラップスとそれに続く延伸、
(vi)追加のクラッド材料のコラップスおよび同時延伸、
のうち1つ以上の熱成形プロセスが一回または反復して実行される。
【0002】
さらに本発明は、ファイバの長手方向軸に沿って延びる中空コアと、複数の反共振要素を含む、中空コアを取り囲むクラッド領域とを有する反共振中空コアファイバのプリフォームの製造方法に関し、この製造方法は、
(a)少なくとも1つの被覆管と、被覆管内部ボアと、被覆管長手方向軸とを有し、内側と外側により画定されている被覆管壁が被覆管長手方向軸に沿って延びている中空コアファイバのための一次プリフォームを提供する工程と、
(b)反共振要素のための複数の前段階を被覆管壁の目標位置に形成する工程と、
(c)一次プリフォームを、中空コアファイバのための二次プリフォームに任意でさらに加工する工程と、
を備え、
さらに加工する工程では、
(i)延伸、
(ii)コラップス、
(iii)コラップスおよび同時延伸、
(iv)追加のクラッド材料のコラップス、
(v)追加のクラッド材料のコラップスとそれに続く延伸、
(vi)追加のクラッド材料のコラップスおよび同時延伸、
のうち1つ以上の熱成形プロセスが一回または反復して実行される。
【背景技術】
【0003】
中実材料から作製される従来のシングルモード光ファイバは、低屈折率のガラスからなるクラッド領域により取り囲まれたガラス製のコア領域を有している。このとき、光の伝搬は、コア領域とクラッド領域間の全反射に基づいている。しかし、導波光と中実材料の相互作用は、データ伝送時の遅延時間の増大や、エネルギー放射線に対する損傷のしきい値の相対的低下に結びついている。
【0004】
これらの欠点は、コアがガスまたは液体を充填した真空の空洞部からなる「中空コアファイバ」によって回避されるか、または軽減される。中空コアファイバでは、光とガラスの相互作用が中実コアファイバの場合よりも減少する。コアの屈折率はクラッドの屈折率よりも小さいため、全反射による光の伝搬は不可能であり、通常光はコアからクラッドに漏れ出ると考えられる。光の伝搬の物理的メカニズムに応じて、中空コアファイバは、「フォトニックバンドギャップファイバ」と「反共振反射ファイバ」に区別される。
【0005】
「フォトニックバンドギャップファイバ」では、中空コア領域が、小さな中空チャネルを周期的に配置したクラッドによって取り囲まれている。クラッド内の中空チャネルの周期的構造には、半導体技術に依る「フォトニックバンドギャップ」と呼ばれる効果があり、これにより、クラッド構造に散乱する特定の波長領域の光はブラッグ反射に基づいて中心の空洞部で構造的に干渉するため、クラッド内で横方向に広がることはできない。
【0006】
「反共振中空コアファイバ」(「antiresonant hollow-core fibers」;ARHCF)と呼ばれる中空コアファイバの実施形態では、中空のコア領域が内部のクラッド領域によって取り囲まれており、いわゆる「反共振性要素」(または「反共振要素」;略号:「AREs」)の中に配置されている。中空コア周辺に均等に分散された反共振要素の壁は、反共振に作動されるファブリ・ペロー空洞として機能し、この空洞は入射光を反射し、ファイバコアに通すことができる。
【0007】
このファイバ技術により、光減衰を軽減することができ、透過スペクトルが非常に広くなり(紫外線または赤外線の波長帯域でも)、データ伝送時の遅延時間も少なくなる。
【0008】
中空コアファイバの潜在的用途は、データ伝送、材料加工などに用いる高性能ビーム制御、モーダルフィルタリング、特に超紫外線波長帯域から赤外線波長帯域までのスーパーコンティニウムを発生させる非線形光学の分野にある。
【0009】
従来技術
反共振中空コアファイバの欠点は、高次モードが自動的に抑制されないため、長い伝達距離にわたって純粋なシングルモードにならないことが多く、出力光線の品質が悪化することにある。
【0010】
Francesco Poletti「Nested antiresonant nodeless hollow core fiber」;Optics Express,Vol.22, No.20 (2014);DOI:10.1364/OE 22.023807の文献では、反共振要素が単純な単一構造要素として形成されているのではなく、互いに入れ子になった(英語:nested)複数の構造要素から構成されたファイバ設計が提案されている。入れ子になった反共振要素は、高次コアモードがクラッドモードに位相整合されて抑制されるが、基本コアモードは抑制されないように設計されている。これにより、基本コアモードの伝搬が常に保証され、限定された波長帯域にわたって中空コアファイバを効率的にシングルモードにすることができる。
【0011】
効率的なモード抑制は、伝搬光の中心波長の他に、中空コアの半径および反共振要素内で入れ子になっているリング構造の直径差といったファイバ設計の構造パラメータにも左右される。
【0012】
EP3136143A1から、コアが基本モード以外に別のモードも伝搬することができる反共振中空コアファイバ(「バンドギャップのない中空コアファイバ」と呼ばれる)が公知である。この目的のため、コアは、反共振モードと高次モードの位相整合を提供する「非共振要素」を有する内部クラッドによって取り囲まれている。中空コアファイバの製造は、いわゆる「スタック&ドロー法」によって行われ、そこでは出発要素を軸平行の集合体になるように並べ、固定することによってプリフォームを形成し、続いてそのプリフォームを延伸する。ここでは、内側断面が六角形の被覆管が使用され、被覆管の内縁部には、いわゆる「AREプリフォーム」(反共振要素プリフォーム)が6個固定される。このプリフォームを2段階に分けて線引きすることによって中空コアファイバを形成する。
【0013】
国際特許出願2018/169487A1から、反共振中空コアファイバのプリフォーム製造方法が公知であり、ここでは第1のクラッド領域が多数のロッドから構成され、第2のクラッド領域は、外側の被覆管によって取り囲まれている多数の管から構成されている。ロッド、管、被覆管は「スタック&ドロー」法によって接合され、プリフォームが形成される。プリフォームを延伸する前に、プリフォーム端部に封止材を塗布して封止が行われる。封止材としては、例えばUV接着剤が使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
反共振中空コアファイバや、特に入れ子になっている構造要素を持つそのようなファイバは複雑な内部形状を有するため、これを正確かつ再現可能に製造することは困難である。さらに、共振条件または反共振条件を満たすには伝搬させる光の動作波長の大きさに僅かな寸法許容差があっても許されないため、このことは一層困難なものとなる。目標形状からの逸脱は、ファイバプリフォームの構成時にその原因が作られるおそれがあるが、ファイバ線引きプロセス時にも縮尺に沿わない不適切な変形によって生じる可能性がある。
【0015】
公知の「スタック&ドロー」法では、多数の要素が正確な位置に接合されなければならない。例えば、冒頭に述べた文献から公知の「NANF」設計の中空コアファイバを製造するには、それぞれが反共振プリフォーム外管(略号:ARE外管)からなる6つの反共振要素プリフォームと、ARE外管の内側クラッド面に片側で溶接されている反共振プリフォーム内管(略号:ARE内管)とを被覆管の内側に取り付けなければならない。
【0016】
小さい減衰値と広範な伝播範囲を実現するためには、反共振要素の壁の均等な壁厚の他に、被覆管内部における反共振要素の方位角位置も重要である。このことは、「スタック&ドロー」法では簡単に実現できない。本発明の目的は、従来の製造方法の制限を回避して、反共振中空コアファイバを低コストで実現する製造方法を提供することである。
【0017】
特に本発明の目的は、反共振中空コアファイバと反共振中空コアファイバのプリフォームの製造方法を提供することであり、本方法によって、構造要素の高い精密性とファイバ内での反共振要素の正確な位置決めを、十分に安定的で再現可能な仕方で達成することが可能となる。
【0018】
さらに、必要な構造精度、特に反共振要素の均等な壁厚および規定の方位角位置への正確な位置決めが容易に達成できない従来の「スタック&ドロー」法の欠点をできる限り回避しなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0019】
反共振中空コアファイバの製造方法に関して、この課題は、冒頭に述べた種類の方法から出発して、本発明に基づき、反共振要素前段階の形成が細長い圧力室の形成を含み、圧力室は、それぞれ反共振要素の目標位置領域において圧力と熱によって変形可能な壁に隣接しており、工程(c)によるプロセスを実行する際に、圧力と熱の結果として、変形可能な壁の部分に、反共振要素または前駆体を形成しながら、被覆管内部ボアの方向に膨らみを生じさせることによって解決される。
【0020】
反共振中空コアファイバ製造の出発点は、この場合も、「一次プリフォーム」と呼ばれるプリフォームである。このプリフォームは被覆管を含み、そこには中空コアファイバ内に反共振要素を形成するための前段階またはプリフォーム(ここでは短く「反共振要素」と呼ぶ)が含まれている。一次プリフォームを延伸することによって中空コアファイバを形成することができるが、通常は、この一次プリフォームに追加のクラッド材料を付加して、そこから、ここでは「二次プリフォーム」と呼ばれるプリフォームを作製する。必要に応じて、この二次プリフォームを延伸することにより中空コアファイバが作られる。代替的に、一次プリフォームまたは二次プリフォームを、構成部品の同軸集合体を形成しながら、1つまたは複数の外層シリンダにより取り囲み、この同軸集合体を直接延伸して中空コアファイバを形成する。この場合、一般的な「プリフォーム」という用語は、中空コアファイバが最終的に線引きされる構成部品または構成部品の同軸集合体の名称と理解される。
【0021】
反共振要素の位置決め精度は、反共振要素のための前段階が、反共振要素の目標位置領域に形成される細長い圧力室の形で構成されることによって改善される。圧力室は、これに隣接する内部被覆管の壁部分が軟化し、圧力室内にガス圧力が加わると、この壁部分が被覆管長手方向軸の方向に膨らむように設計されている。
【0022】
細長い圧力室は、工程(c)によるプロセスを実行する際に、圧力と熱の結果として、変形可能な壁の細長い部分に、細長い反共振要素または前駆体を形成しながら、被覆管内部ボアの方向に細長い膨らみを生じさせる。
【0023】
変形可能な壁の該当する膨らむ壁部分は細長く、圧力室と反共振要素前段階の目標位置とに沿ってプリフォーム内に延在している。以下に詳しく説明するもっとも簡単なケースでは、変形可能な壁の膨らむ壁部分がガラス管に属している。
【0024】
・第1の好適な変形例では、圧力室がガラス管の壁の内部に形成されている。この場合、圧力室は中空チャネルを形成しており、中空チャネルは、ガラス管壁の一方の端部から他方の端部までガラス管長手方向軸と平行に延在し、ガラス管のガラスによって完全に画定されている。
・別の好適な変形例では、圧力室は、変形可能なガラス管壁の外側クラッド面に隣接する別個の構成部品によって提供される。この場合、圧力室は中空チャネルを形成しており、この中空チャネルは、ガラス管壁に沿って一方の端部から他方の端部までガラス管長手方向軸と平行に延在し、片側がガラス管のガラスによって画定されている。
・さらなる好適な変形例では、圧力室がガラス管壁の外側クラッド面の凹部内に形成されている。この場合、圧力室は同様に中空チャネルを形成しており、中空チャネルは、ガラス管壁に沿って一方の端部から他方の端部までガラス管長手方向軸と平行に延在し、凹部の領域でガラス管のガラスによって画定されている。
【0025】
これらの変形例は、互いに組み合わせることもできる。圧力ガスを中空チャネル内に導入することができるようにするため、中空チャネルの一方の端部は開放されており、製造面からも有利には、両方の端部が開放されている。
【0026】
反共振要素前段階は、製造工程においてこの位置に、該当する壁部分がガラス管外側から作用する圧力の印加によってガラス管内部ボアの方向に膨らむことによって形成される。このことは、例えば、プリフォームを延伸して中空コアファイバまたは半製品にする際に行うことができる。
【0027】
これにより、スタック&ドロー法で知られているような、あらかじめ製造された反共振要素プリフォームの被覆管内壁の該当する位置への位置決めおよび固定が完全に不要になるか、またはそのように位置決めすべき反共振要素プリフォームの数を少なくとも減少させることができる。
【0028】
本発明により、反共振中空コアファイバならびにそのためのプリフォームを精密かつ再現可能に製造することができる。
【0029】
圧力室は、有利には、ガラス管の変形する壁部分が隣接する中空チャネルとして設計されている。
【0030】
中空チャネルは圧力室を形成しており、圧力室には製造工程で圧力ガスを導入することができるため、圧力ガスに接触するガラス管の壁部分がガス圧力によって変形する。
【0031】
変形可能なガラス管の管壁内部に穴あけ加工によって形成される中空チャネル
すでに上述したいくつかの好適な方法では、ガラス管壁の内部に、ガラス管長手方向軸に対して平行に延在する中空チャネルが形成される。
【0032】
中空チャネルの断面は、円形または多角形であってよく、特に三角形または矩形であってよい。矩形の中空チャネルの場合、矩形の長辺が、変形する(膨らむ)壁部分に対して接線方向に延在する。三角形の中空チャネルの場合、三角形の一辺が、変形する(膨らむ)壁部分に対して接線方向に延在する。これにより、ガス圧力は他の方向よりもこの壁部分に強く作用する。
【0033】
この場合、特に、入れ子になっている構造要素を備える複雑に形成された反共振要素プリフォームを製造するためには、内部ガラス管の管壁の中にある内周の中空チャネル列と、外部ガラス管の管壁の中にある外周の中空チャネル列とを含む同軸のガラス管配置体を形成する変形例が有利であることが実証されており、内周と外周の中空チャネル列は、半径方向に共通の接続線上にあり、周囲を周回する、内側に向かって変形可能な少なくとも1つのガラス壁によって空間的に互いに分離されている。
【0034】
周囲を周回するガラス壁は、内周の中空チャネル列と外周の中空チャネル列の圧力空間を互いに分離しており、熱成形プロセスの際に外周の中空チャネル列によって内側へ膨らむようになっている。周囲を周回するガラス壁は内部ガラス管に属しているため、外部ガラス管の変形は内部ガラス管の膨らみに入り込むことができ、これによって入れ子になっている反共振要素の反共振要素プリフォームが作製される。
【0035】
変形可能なガラス管に隣接する中間管壁の長手方向スロットによって形成さる中空チャネル
中空チャネルを形成するための特に洗練された方法は、ガラス管と外管の間に、中間管長手方向軸を有する中間管を配置し、この中間管長手方向軸に沿って、内側と外側により画定されている中間管壁を延伸させるという措置を含み、中間管壁の中には長手方向スロットが取り付けられ、工程(c)によるプロセスの実行時に長手方向スロットから中空チャネルが形成される。
【0036】
長手方向スロットは中間管の壁を貫通している(好ましくは両方の端面側端部領域を除く)。これらのスロットは、平行な長手方向縁部を有している。
【0037】
中間管はガラス管の外壁に接して、このガラス管と溶融していてもよく、また外管の内壁に接して、この外管と溶融していてもよい。長手方向スロットはガラス管と外管の間にあって、ガラス管壁部分が膨らむ位置にある。長手方向スロットは、そこで中空チャネルまたは中空チャネルの前段階を形成し、それらを介して後の製造工程においてガラス管の外側に圧力を加えることができ、それによって、軟化したガラス管の材料が内部ボアの方向に膨らむ。このとき、中空チャネルは圧力と熱によって変形し、細長い膨らみになる。
【0038】
この実施形態の利点は、内部ボアまでの中空チャネルの距離が、中空チャネルの長さにわたって、互いに特に均等なことである。
【0039】
有利には、工程(c)による熱成形プロセスの実行時に圧力ガスの導入によって中空チャネルに内圧が生成され、それによって長手方向スロットを通して圧力ガスに接するガラス管壁部分が変形する。このとき、ガラス管内部ボアの方向および中空コアの方向に内側を向く長い膨らみがガラス管に生じ、この膨らみが反共振要素プリフォームまたは反共振要素として用いられる。
【0040】
長手方向スロットは、好ましくは中間管の端面側の端部の前で終端し、残りの長手方向ウェブの保持を保証する。
【0041】
この場合、特に、入れ子になっている構造要素を備える複雑に形成された反共振要素プリフォームを製造するために、内部ガラス管、内部中間管、同時に外部ガラス管を形成する内部外管、外部中間管、外部外管を含む同軸のガラス管配置体が形成される変形例が有利であることが実証されており、内部と外部の中間管の長手方向スロットは、半径方向に共通の接続線上にあり、周囲を周回する、内側に向かって変形可能な少なくとも1つのガラス壁によって空間的に互いに分離されている。
【0042】
このような形式の同軸の管配置体は、半径方向に見てペアで前後に配置されている少なくとも2つの中空チャネルまたは圧力室を形成することに用いられる。周囲を周回するガラス壁は、内周の中空チャネル列と外周の中空チャネル列の圧力空間を互いに分離しており、熱成形プロセスの際に外周の中空チャネル列によって内側へ膨らむようになっている。周囲を周回するガラス壁は内部ガラス管に属しているため、外部ガラス管の変形は内部ガラス管の膨らみに入り込むことができ、これによって入れ子になっている反共振要素の反共振要素プリフォームが作製される。
【0043】
好ましくは、内部断面が円形の中間管が提供され、切削加工される。長手方向スロットは半径方向に連続して構成されており、例えばフライス加工、穴あけ加工または切り込み加工などによって簡単かつ正確に作製することができる。長手方向スロットまたは溝の内部形状は、例えば矩形またはv字形である。
【0044】
長手方向スロットは、好適には中間管壁の切削加工によって、特に切断加工、穴あけ加工、鋸加工、フライス加工または研磨加工によって作製される。
【0045】
切削加工とは、旋盤加工、切断加工、穴あけ加工、鋸加工、フライス加工または研磨加工などの切削機械加工技術を意味する。これらの加工技術は、熱や圧力を使用するその他の周知の変形技術と比べ、より正確で極めて微細な構造を提供し、ノズル、プレスまたは鋳造型などの成形工具による表面の汚れを回避することができる。
【0046】
長手方向スロットが長手方向縁部を有し、ガラス管および外管が軟化によって長手方向縁部に接続されると有利であることが実証されている。
【0047】
そのために、外管と、長手方向スロットのある中間管と、ガラス管とからなる同軸の管集合体が加熱され、このとき長手方向スロットの切断縁部が全長にわたってガラス管の外壁および外管の内壁に接続される。同時延伸により、望ましくない半径方向の変形が抑制される。代替として、これらの管は2つのプロセス工程において順々にペアで互いに接続される。
【0048】
このようにしてプリフォームが得られ、元の長手方向スロットはこのプリフォームに中空チャネルとして封入される。中空チャネルは、プリフォームの閉じられた端面側の端部領域を取り除くことによって、片側または両側を露出させることができる。
【0049】
変形可能なガラス管および/またはそのガラス管に隣接する中間管の長手方向溝によって形成される中空チャネル
上述した中空チャネル形成方法の代替または補足として、中空チャネルの形成が、ガラス管と、このガラス管を同軸に取り囲む中間管とを使用する措置を含むと有利であることも実証されており、ガラス管はガラス管外側クラッド面を有し、この外側クラッド面にガラス管長手方向軸に対して平行に延在する長手方向溝が取り付けられており、および/または中間管は中間管内側クラッド面を有し、この内側クラッド面に中間管長手方向軸に対して平行に延在する長手方向溝が取り付けられており、工程(c)によるプロセスを実行する際に長手方向溝から中空チャネルが形成され、中空チャネルは、圧力と熱によって細長い膨らみに変形される。
【0050】
ガラス管の外側クラッド面の長手方向溝は、ガラス管を取り囲む管壁との相互作用によって同様にチャネルを形成し、ひいては長手方向溝が延在する壁部分を変形するための圧力室を形成する。中間管の内側クラッド面の長手方向溝は、上で詳しく述べたように、中間管の長手方向溝と同様の仕方で中空チャネルを形成するために用いられる。
【0051】
圧力を加えるためには、長手方向溝が連続していることが有利である。すなわち、長手方向溝は、好ましくはそれぞれの管の一方の端部から反対側の端部まで延びている。
【0052】
中空コアファイバのためのプリフォーム製造に関して、上に示された技術的課題は、冒頭に述べた形式の方法から出発して、本発明に基づき、反共振要素前段階の形成が細長い圧力室の形成を含み、圧力室はそれぞれ、反共振要素の目標位置領域において圧力と熱によって変形可能な壁に隣接しており、工程(c)によるプロセスを実行する際に、圧力と熱の結果として、変形可能な壁の部分に、反共振要素または前駆体を形成しながら、被覆管内部ボアの方向に膨らみを生じさせることによって解決される。
【0053】
プリフォームは反共振中空コアファイバ製造に対する出発点である。プリフォームの延伸によって反共振中空コアファイバを直接線引きするか、あるいはまず半製品を作製し、続いてその半製品から反共振中空コアファイバを線引きすることもできる。プリフォームの製造には、圧力室に圧力を加えることにより、反共振要素の目標位置領域でガラス管の壁部分を膨らませることが含まれている。
【0054】
膨らませるガラス管壁部分は細長く、反共振要素前段階の目標位置に沿ってプリフォーム内に延在する。反共振要素前段階は、製造工程においてこの位置で、該当する壁部分が対向する壁側から作用する圧力の印加によって被覆管内部ボアの方向に膨らむことによって形成される。これにより、スタック&ドロー法で知られているような、あらかじめ製造された反共振要素プリフォームの被覆管内壁の該当する位置への位置決めおよび固定が完全に不要になるか、またはそのように位置決めすべき反共振要素プリフォームの数を少なくとも減少させることができる。プリフォームを製造するための措置は、中空コアファイバの製造に関連して上記に詳しく説明されており、それらの説明がここに引用される。
【0055】
定義
これまでに述べた明細書の個々の工程と用語について、以下に補足的に定義する。これらの定義は本発明の明細書の構成要素である。以下の定義のいずれかと残りの明細書との間で実質的な矛盾がある場合、残りの明細書の中で言及していることが優先される。
【0056】
反共振要素
反共振要素は、中空コアファイバの単純な構造要素または入れ子構造要素であってよい。これは、中空コアの方向から見て負の曲率(凸部)を持つか、曲率を持たない(平面、直線)少なくとも2つの壁を有している。通常、反共振要素は動作光に対して透明な材料、例えばガラス(特にドープしたSiOまたはドープしないSiO)、プラスチック(特にポリマー)、複合材料または結晶材料からなる。
【0057】
反共振要素プリフォーム/反共振要素前段階
反共振要素プリフォームとは、主にファイバ線引きプロセスにおける単純な線引きによって中空コアファイバ内で反共振要素になる構成部品またはプリフォームの構成部品である。反共振要素前段階とは、変形によって初めて反共振要素プリフォームまたは直接的に反共振要素になる構成部品またはプリフォームの構成部品である。反共振要素プリフォームは、単純な構成部品または入れ子になっている構成部品であってよく、これに追加的に位置決め補助を固定することができる。反共振要素プリフォームは、もともと一次プリフォームの中に存在する。
【0058】
入れ子の反共振要素プリフォームは、中空コアファイバの中で入れ子になっている反共振要素を形成する。これは、1本の外管と、外管の内部ボア内に配置されている少なくとも1つのさらなる構造要素とから構成されている。さらなる構造要素は、外管の内側クラッド面に接しているさらなる管であってよい。外管は「反共振要素外管」または略して「ARE外管」と呼ばれ、さらなる管は「反共振要素内管」または略して「ARE内管」または「入れ子になっているARE内管」とも呼ばれる。
【0059】
入れ子になっているARE内管の内部ボアの中には、反共振要素プリフォームが何重にも入れ子になっている場合、少なくとも1つのさらなる構造要素、例えば入れ子になっているARE内管の内部クラッド面に接する第3の管を配置してもよい。
【0060】
反共振要素プリフォームが何重にも入れ子になっている場合は、ARE外管の中に配置されている複数の管を区別するため、必要に応じて「入れ子になっている外側のARE内管」と「入れ子になっている内側のARE内管」とが区別される。
【0061】
シリンダ形の反共振要素プリフォームおよびそれらのシリンダ形構造要素に関連する「断面」という用語は、常に、それぞれのシリンダ長手方向軸に対して垂直の断面を示し、特に指定がない限り、管状構成部品における外部輪郭の断面を示すものである(内部輪郭の断面ではない)。
【0062】
一次プリフォームのさらなる加工により、とりわけ熱成形処理により、元の反共振要素プリフォームが初期形状に対して変化した形状で存在する中間製品を作ることができる。ここでは、変化した形状も同様に反共振要素プリフォームまたは反共振要素前段階と呼ぶ。
【0063】
プリフォーム/一次プリフォーム/二次プリフォーム/コアプリフォーム(ケーン)
プリフォームは、反共振中空コアファイバが線引きされる構成部品である。これには、一次プリフォームまたは一次プリフォームのさらなる加工によって作製される二次プリフォームがある。一次プリフォームは、少なくとも1本の被覆管と、その中に緩くまたは堅固に固定された状態で収納されている、反共振要素のためのプリフォームまたは前段階とからなる集合体であってよい。一次プリフォームを、中空コアファイバが線引きされる二次プリフォームにさらに加工することは、
(i)延伸、
(ii)コラップス、
(iii)コラップスおよび同時延伸、
(iv)追加のクラッド材料のコラップス、
(v)追加のクラッド材料のコラップスとそれに続く延伸、
(vi)追加のクラッド材料のコラップスおよび同時延伸、
のうち1つ以上の熱成形プロセスが一回または反復して実行されることを含む。
【0064】
文献においてコアプリフォーム(英語:ケーン、Cane)とは、一次プリフォームのコラップスおよび/または延伸によって得られるプリフォームである。通常、コアプリフォームは、中空コアファイバの線引き前または線引き時に追加のクラッド材料により覆われる。
【0065】
延伸/コラップス
延伸では、一次プリフォームが長く伸ばされる。この延伸は、同時コラップスなしで行ってよい。延伸は一定の縮尺に従って行うことができるため、例えば一次プリフォームの構成部品の形状および配置は延伸した最終製品に反映されている。しかし、延伸では、一次プリフォームが寸法どおりに線引きされず、幾何形状が変化する可能性もある。
【0066】
コラップスでは内部ボアを狭くしたり、管状構成部品間の環状の隙間を塞いだり、狭くしたりする。このコラップスは、通常、延伸と平行して行われる。
【0067】
中空コア/内部クラッド領域/外部クラッド領域
少なくとも1つの被覆管と、その中に緩くまたは堅固に固定された状態で収納されている反共振要素のプリフォームまたは前段階とからなる集合体を、ここでは「一次プリフォーム」とも呼ぶ。この一次プリフォームは、中空コアとクラッド領域から構成される。このクラッド領域は、例えば集合体へのコラップスによって形成された「外部クラッド領域」が存在しており、これらのクラッド領域を区別する必要がある場合は、「内部クラッド領域」とも呼ばれる。「内部クラッド領域」と「外部クラッド領域」という名称は、中空コアファイバや一次プリフォームのさらなる加工によって得られる中間製品の該当する領域に対しても使用される。
【0068】
「管内側」という名称は「管の内部クラッド面」の同義語としても用いられ、「管外側」という名称は「管の外部クラッド面」の同義語としても用いられる。管に関連した用語「内部ボア」は、内部ボアが穴あけ作業によって形成されたことを意味するものではない。
【0069】
切削加工
加工物を分離加工するための機械的製造方式であり、特に旋盤加工、切断加工、穴あけ加工、鋸加工、フライス加工または研磨加工を意味する。この加工により、被覆管長手方向軸の方向に延びる長手方向構造が得られ、これは反共振要素プリフォームの位置決め補助として用いられる。長手方向構造は被覆管内側からアクセスできるようになっており、被覆管壁全体を通って外側まで延びていてもよい。
【0070】
粒度および粒度分布
SiO粒子の粒度および粒度分布は、D50値に基づき特徴付けられる。この値は、SiO粒子の累積量を粒度に応じて示す粒度分布曲線から読み取られる。粒度分布は、それぞれのD10値、D50値、D90値に基づき特徴付けられることが多い。このとき、D10値はSiO粒子の累積量の10%に達しない粒度を示し、対応して、D50値およびD90はSiO粒子の累積量の50%または90%に達しない粒度を示す。粒度分布は、ISO13320に準拠した散乱光およびレーザー回折分光法によって検出される。
【0071】
実施例
以下に、実施例に基づき、図を用いて本発明を詳しく説明する。詳細は図に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0072】
図1】本発明に基づく方法で使用される、長手方向溝を備える中間管の第1の実施形態の側面図(a)および断面を上から見た平面図(b)である。
図2】第1の実施例に基づいて、スロットの付された複数の中間管を備える管集合体(a)を使用して、中空コアファイバのためのプリフォーム(b)を製造する工程を示す図である。
図3図2(b)のプリフォームの一部の拡大図であり、図3のプリフォームをファイバ線引きし、反共振要素を形成しながら中空コアファイバが形成される。
図4】長手方向溝を備える中間管の第2の実施形態の側面図(a)および断面を上から見た平面図(b)である。
図5】第2の実施例に基づいて、スロットの付された1本の中間管を備える管集合体(a)を使用して、中空コアファイバのプリフォーム(b)を製造する工程を示す図である。
図6図5(b)のプリフォームの一部の拡大図であり、図5のプリフォームをファイバ線引きし、反共振要素を形成しながら中空コアファイバが形成される。
図7】熱によって変形可能な、中空チャネルを含む壁と、外層シリンダとを備えるガラス管の同軸配置体の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0073】
図1(a)は中間管10を示しており、その壁には、あらかじめ規定された方位角位置で均等な間隔で細長い長手方向スロット13が、例えば機械的鋸、水ジェット切断、レーザーなどによって切り込まれている。これらの長手方向スロット13は、完成した中空コアファイバ内に反共振要素を形成するために、またはファイバプリフォーム内に反共振要素プリフォームを形成するために用いられ、長手方向スロット13の数は、該当する中間管10によって形成可能な反共振要素プリフォームまたは反共振要素の数に対応する。この実施例では、6つの反共振要素プリフォームまたは反共振要素がある。長手方向スロット13は、管端部の手前で終端しているため、端面側の端部領域12は引き続き周回して閉じられており、残りのウェブ14を互いに接続している。続いて、切断縁部がガラス化される。長手方向スロット13の切断幅は統一されており、2mmである。
【0074】
図1(b)の切断線AーAに沿って切断した中間管10の断面を上から見た平面図から、6つの長手方向スロット13が、管壁の周りに均等に分散されており、中間管外壁から中間管内壁へ一貫して内部ボア16まで延びていることが分かる。
【0075】
図2(a)は、全部で5本のシリカガラス管の同軸配置体19を上から見た平面図であり、そのうち2本の中間管10;20にそれぞれ長手方向スロット13が設けられている。同軸の管配置体19は2つの同軸積層体から構成され、それぞれの積層体は、変形可能なガラス管(21;22)、中間管(10;20)、およびクラッド管(22;23)から構成されている。符号22の管は二重の機能を有している。すなわち、内側の積層体では「クラッド管」を形成し、その壁は中空チャネルの壁の構成部分になり、外側の積層体では変形する壁を持つ「ガラス管」を形成している。
【0076】
管の寸法および材料の詳細は以下の表1にまとめられている。
【表1】
BZ:図2aの符号
Fドープ;F320:フッ素をドープしたシリカガラス/低粘性
アンドープ:アンドープシリカガラス/高粘性
【0077】
この場合、使用した材料は粘性に関して異なっている。未加工の管21および22は、市販のフッ素ドープシリカガラス(商品名:F320)からなり、スロットの付された中間管10、20および最外側のクラッド管23(外層管)よりも低い粘性を有している。
【0078】
図2(b)は、同軸の管集合体19が続いて一次プリフォーム26にコラップスされ、同時に延伸されることを示している。このとき、管の間にある環状の隙間がなくなり、管同士が互いに堅固に接合され、共通の被覆管壁24を持つ被覆管を形成する。このとき、スロット付きの中間管10;20の長手方向スロット13から、次のファイバ線引きプロセスの際に前方と後方の圧力室25a;25bとして使用できる中空チャネルが発生する。このとき、それぞれ2つの圧力室25a、25bは、半径方向で見てペアで前後して配置されている。ファイバ線引きプロセスの前に、一次プリフォーム26の、長手方向スロットのない閉じられた端部領域の少なくとも一方が取り除かれ、これにより、端面側が開放された圧力室25a、25bが得られ、その中に圧力ガスを導入することができる。一次プリフォーム26は、クラッド(被覆管壁24)によって取り囲まれている中空のコア領域27を有している。圧力室25a;25bは、線引きする中空コアファイバの反共振要素のための前段階を被覆管壁24の中に形成している。
【0079】
図3(a)の部分は、元の長手方向スロットから被覆管壁24内に作られた圧力室25a;25bの拡大図である。そのようにして得られたプリフォームをファイバ線引きする際に、圧力室25a、25bと中空コア領域27との間に差圧がかけられるため、圧力室25a;25bに隣接している、元のガラス管21;22の変形可能な壁部分が圧力室25a;25bに沿って内側に向かって膨らむ。
【0080】
図3(b)には、このとき中空コアファイバ29において、かつての最内側のガラス管の内側27に第一の膨らみ28aが発生していることが示され、この膨らみは第2の膨らみ28bを取り囲んでいる。第1と第2の膨らみ28a;28bは、負に湾曲された表面を持つ2つのガラス膜により、入れ子になっている反共振要素を形成している。
【0081】
図4~7の以下の説明において図1~3と同一の符号が使用されている場合、これらの図に基づいて上記で詳しく説明されているように、それらは同一または同等の構成部分を示している。
【0082】
図4(a)は別の中間管110を示しており、その壁には、あらかじめ規定された方位角位置で均等な間隔で細長い長手方向スロット13が、例えば機械的鋸、水ジェット切断、レーザーなどによって切り込まれている。これらの長手方向スロット13は、完成した中空コアファイバ内に反共振要素を形成するために、またはファイバプリフォーム内に反共振要素プリフォームを形成するために用いられ、長手方向スロット13の数は、該当する中間管10によって形成可能な反共振要素プリフォームまたは反共振要素の数に対応する。この実施例では、5つの反共振要素プリフォームまたは反共振要素がある。長手方向スロット13は、管端部の手前で終端しているため、端面側の端部領域12は引き続き周回して閉じられており、残りのウェブ14を互いに接続している。続いて、切断縁部がガラス化される。長手方向スロット13の切断幅は統一されており、2mmである。
【0083】
図4(b)の切断線AーAに沿って切断した中間管110の断面を上から見た平面図から、5つの長手方向スロット13が管壁の周りに72度の円周角で均等に分散されており、中間管外壁から中間管内壁へ一貫して内部ボア16まで延びていることが分かる。
【0084】
図5(a)は、全部で3本のシリカガラス管の同軸集合体を上から見た平面図であり、その中にスロット付きの中間管110が含まれている。同軸の管集合体は、変形するガラス管21、長手方向スロット13付きの中間管110、およびクラッド管22から構成されている。
【0085】
管の寸法および材料の詳細は以下の表2にまとめられている。
【表2】
BZ:図5aの符号
Fドープ;F320:フッ素をドープしたシリカガラス/低粘性
アンドープ:アンドープシリカガラス/高粘性
【0086】
この場合、使用した材料は粘性に関して異なっている。機械的に加工されていない管21は、市販のフッ素ドープシリカガラス(商品名:F320)からなり、スロットの付された中間管110およびクラッド管22(外層管)よりも低い粘性を有している。
【0087】
図5(b)は、同軸の管集合体が続いて一次プリフォーム126にコラップスされることを示している。このとき、この管集合体は同時に延伸され、管21、22、110の間にある環状の隙間がなくなるため、これらの管は互いに堅固に接合され、共通の被覆管壁124を形成する。このとき、スロット付きの中間管110の長手方向スロット13から、被覆管壁124の中に中空チャネルが形成され、これらは次のファイバ線引きプロセス時に圧力室125として使用することができる。一次プリフォーム126は、クラッド(被覆管壁124)によって取り囲まれている中空のコア領域127を有している。圧力室125は、線引きする中空コアファイバのクラッド領域において反共振要素のための前段階を形成する。
【0088】
ファイバ線引きプロセスの前に、プリフォーム126の、長手方向スロットのない閉じられた端部領域の少なくとも一方が取り除かれ、それにより、圧力室125の端面側が開放され、圧力ガスが導入可能になる。
【0089】
図6(a)の部分は、元の長手方向スロット13から形成された圧力室125の拡大図である。得られたプリフォーム126をファイバ線引きする際に、圧力室125と内部ボア16との間に差圧がかけられるため、圧力室125に隣接する壁領域が圧力室125に沿って内側に向かって膨らむ。
【0090】
図6(b)には、このとき中空コアファイバ129において、かつてのガラス管の内側17に膨らみ128aが発生していることが示され、この膨らみは負の曲率表面を持つガラス膜によって反共振要素を形成している。
【0091】
長手方向溝13の代わりに、中間管10、20、110には、それらの内側クラッド面に長手方向溝を設けてもよい。長手方向溝は、必要に応じて機械的フライス加工によって中間管の内側クラッド面に形成される。
【0092】
長手方向スロットまたは長手方向溝が設けられている中間管の代替または補足として、熱変形可能な壁を備えるガラス管21;22には、それらの外側クラッド面に長手方向溝を設けてもよい。長手方向溝は、必要に応じて機械的フライス加工によってガラス管の外側クラッド面に形成される。
【0093】
上述した長手方向スロットまたは長手方向溝を備えるガラス管および/または中間管の代替または補足として、熱変形可能な壁を備えるガラス管21;22には、中空チャネルを設けてもよい。図7には、そのための実施例が概略的に示されている。同軸配置体は、熱変形可能な壁および外層シリンダ22(クラッド管)を備えるガラス管221を含んでいる。ガラス管221の壁の内部かつ内側クラッド面221aの近傍には、周囲に均等に分散された4つの中空チャネル213がガラス管長手方向軸と平行に延在している(紙面に対して垂直に延びている)。中空チャネル213はレーザー切断によって作製され、貫通している(壁の一方の端部から他方の端部まで延びている)。図示の断面図では、これらの中空チャネルが矩形を有しており、長辺は、内側クラッド面221aの隣接する壁部分に対して接線方向に延在している。
【0094】
この実施形態では、中間管を省略することができる。管の寸法および材料の詳細は以下の表3にまとめられている。
【表3】
BZ:図7の符号
Fドープ;F320:フッ素をドープしたシリカガラス/低粘性
アンドープ:アンドープシリカガラス/高粘性
【0095】
加熱成形プロセスを実行する際に、中空チャネル213の中に圧力ガスを導入することによって内圧を発生させ、それにより、中空チャネル213を内側に向かって画定するガラス管221の壁部分を変形させることができる。このとき、ガラス管内部ボア16の方向に内側を向く長い膨らみがガラス管221に生じ、この膨らみは反共振要素プリフォームとして用いられる。
図1(a)】
図1(b)】
図2-3】
図4(a)】
図4(b)】
図5-6】
図7