IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ フレセニウス・メディカル・ケア・ドイチュラント・ゲーエムベーハーの特許一覧

<>
  • 特許-計算装置および透析装置 図1
  • 特許-計算装置および透析装置 図2
  • 特許-計算装置および透析装置 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】計算装置および透析装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/16 20060101AFI20241007BHJP
【FI】
A61M1/16 163
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021572460
(86)(22)【出願日】2020-06-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-10
(86)【国際出願番号】 EP2020065282
(87)【国際公開番号】W WO2020245151
(87)【国際公開日】2020-12-10
【審査請求日】2023-05-31
(31)【優先権主張番号】102019115553.3
(32)【優先日】2019-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501276371
【氏名又は名称】フレセニウス・メディカル・ケア・ドイチュラント・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】マイアーホーファー、アンドレアス
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-521816(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0018379(US,A1)
【文献】特開2018-75307(JP,A)
【文献】特表2014-508557(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0331712(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0149096(US,A1)
【文献】G.Panzetta et al.,Validation of a Simple Method for Assessing Sodium Intake in Dialysis Patients,Blood Purification,2001年,19-1,15-20,https://doi.org/10.1159/000014472
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/14-32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の透析間ナトリウム摂取量(minter)を決定するため、および浸透圧的に誘発されていない透析間液体摂取量(Vexcess drink)を決定するための計算デバイスであって、
- 前記患者のパラメータ値を記憶または入力するように構成された記憶デバイスおよび/または入力デバイスと、
前記記憶または入力されたパラメータ値に基づいて、前記患者の前記透析間ナトリウム摂取量(minter)を計算し、および前記患者の浸透圧的に誘発されていない透析間液体摂取量(Vexcess drink)を計算するように構成されたコンピューティングデバイスと、
前記患者の前記計算された透析間ナトリウム摂取量(m inter )および/または前記患者の前記計算された透析間液体摂取量(V excess drink )に基づいて、医療用血液処置装置を制御または閉ループ制御するための信号を出力するための出力デバイスと
を備える、計算デバイス。
【請求項2】
記患者の前記透析間ナトリウム摂取量(minter)および/または前記患者の前記透析間液体摂取量(Vexcess drink)を計算するための前記コンピューティングデバイスは、
析セッションの開始時に広まっている血漿ナトリウム濃度(cpre(n))および/または尿中のナトリウム濃度(curine)に基づいて、前記透析間ナトリウム摂取量(minter)および/または前記透析間液体摂取量(Vexcess drink)を計算するように構成されている、請求項1に記載の計算デバイス。
【請求項3】
前記コンピューティングデバイスは、前記医療用血液処置装置によって測定された値に基づいて、前記透析間ナトリウム摂取量(minter)および/または前記透析間液体摂取量(Vexcess drink)の前記計算を繰り返すまたは指定するために、前記医療用血液処置装置によって実施される透析セッション(n)中に、前記医療用血液処置装置によって測定された前記値を前記医療用血液処置装置に繰り返しクエリするまたは前記医療用血液処置装置から受信するように、前記医療用血液処置装置と信号通信するように構成されている、請求項1または2に記載の計算デバイス。
【請求項4】
前記出力デバイスは、モニタ、ディスプレイ、プリンタ、記憶要素、またはデータベースであり得るかまたはそれらを含み得る通信デバイスの一例としてのディスプレイデバイスに、前記透析間ナトリウム摂取量(minter)および/または前記透析間液体摂取量(Vexcess drink)を表示、出力、および/または記憶するように構成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の計算デバイス。
【請求項5】
前記コンピューティングデバイスおよび/または前記出力デバイスは、通信デバイスの一例としての前記ディスプレイデバイスに、計算された値、特に前記透析間ナトリウム摂取量(minter)および/または前記透析間液体摂取量(Vexcess drink)を出力、記憶、および/または表示するとともに、前記表示、出力、および/または記憶された値の定性的および/または定量的精度も示すように構成されている、請求項に記載の計算デバイス。
【請求項6】
前記表示された値の前記定性的および/または定量的精度を示すことは、値の範囲、信頼区間、複数の所定の色のうちの1つでの表現、誤差の大きさ、不確実性、可能な値の範囲、特に信頼区間、標準偏差、分散、任意選択的に複数の色を用いた色分け、および/または交通信号表示を指定することであるか、または指定することを含む、請求項に記載の計算デバイス。
【請求項7】
通信デバイスを制御するための信号を出力するための前記出力デバイスは、前記透析間ナトリウム摂取量(minter)および/または前記透析間液体摂取量(Vexcess drink)に基づいて処方を示すように構成されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の計算デバイス。
【請求項8】
前記出力デバイスは、前記決定された透析間ナトリウム摂取量(minter)および/または液体摂取量(Vexcess drink)が処置血液から引き出されたときまたは引き出された後に透析セッション(n)が終了するように、前記出力デバイスによって前記医療用血液処置装置に出力された前記信号を介して前記医療用血液処置装置を制御するように構成されている、請求項1~7のいずれか一項に記載の計算デバイス。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の計算デバイスであって、以下のパラメータ、
V 前記患者の分布容量と、
ΔV 透析間体重増加に相当する透析間液体過剰量と、
pre(n) 析セッション(n)の開始時の血漿ナトリウム濃度と、
post(n-1) 前回の透析セッション(n-1)の終了時の血漿ナトリウム濃度と、
urine 前記透析セッション間の蓄積された残存尿排泄量と、
urine 尿中のナトリウム濃度と、
現在の日付および前記前回の透析セッションの記憶された日付によって決定される、前記前回の透析セッションの終了と前記現在の透析セッションとの間の日数と、
のうちの少なくとも1つまたはいくつかの値を読み取るように構成されている、計算デバイス。
【請求項10】
医療用血液処置装置であって、
- 少なくとも1つの透析液入口ラインおよび/または1つの透析物出口ラインを包含する流体ラインと、前記流体ラインは、任意選択的に、例えばコネクタによって互いに流体連通して接続されており、
- 前記透析液入口ライン内および/または前記透析物出口ライン内で透析液を運搬するための少なくとも1つの運搬デバイスと、
- 少なくとも1つの制御デバイスおよび/または閉ループ制御デバイスと、
を備え、
前記医療用血液処置装置は、血液フィルタの透析液チャンバに、前記透析液入口ラインおよび前記透析物出口ラインそれぞれによって接続されるように構成されており、前記血液フィルタは、透析液チャンバに加えて血液チャンバを備え、透析液チャンバおよび血液チャンバは、半透膜によって互いに分離されており、
前記制御デバイスおよび/または前記閉ループ制御デバイスは、血液濾過、血液透析、または血液透析濾過による前記医療用血液処置装置を使用した血液処置を促進または実行するように構成されており、前記制御デバイスおよび/または前記閉ループ制御デバイスは、請求項1~9のいずれか一項に記載の計算デバイスを備えるか、または信号伝送で前記計算デバイスに接続されている、医療用血液処置装置。
【請求項11】
血液処置、特に血液透析、血液濾過、血液透析濾過または分離法を実行するのに好適であり、および/またはそれを実行するように構成されている、請求項10に記載の医療用血液処置装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルに記載の計算デバイス、および請求項10のプリアンブルに記載の医療用血液処置装置、および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多数の研究によれば、一般的な集団において、食塩摂取量の増加が心血管疾患の発生の増加につながり、食塩(NaCl)の摂取量を減らすことによって心臓発作および脳卒中などの心血管事象を減少させることができることが証明されている。特に、食塩摂取量の増加は、集団の一部では、血圧の上昇を引き起こす。また最近の研究では、免疫系に対する悪影響も示唆されている(Afar et al., Salt Intake and Immunity, Hypertension 72 p. 19ff; Evans et al., Emerging evidence of an effect of salt on innate and adaptive immunity, NDT, published online 2018, December 5)。
【0003】
腎機能が低下した人は、透析による過剰なナトリウムの引き出しに頼っている。したがって、摂取した塩分量を知ることは特に関係のあることである。栄養カウンセリングおよびそれによって学んだ規則に従うことが助けになり得る。
【0004】
栄養カウンセリングは現在、主に栄養成分表に基づいて行われている。塩含有量に関しては、食品の典型的な塩含有量を含む表がある。インスタント食品においては、製品全体、典型的な分量、または重量単位に関するデータもある。その一方で、計算のために、実際に消費した製品および量を決定しなければならない。この決定することが実際には困難である場合が多いことが分かっている。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、透析患者のナトリウム摂取量についての計算デバイスおよびさらなる医療用血液処置装置を提案することである。
【0006】
本発明による目的は、請求項1の特徴を有する計算デバイスによって達成される。本発明による目的はさらに、請求項8の特徴を有する医療用血液処置装置によって達成される。
【0007】
したがって、計算デバイスが本発明によって提案される。計算デバイスは、患者(透析患者ともいうが、たいていは略して患者と呼ぶ)の透析間(すなわち、特に最後に行われたまたは前回の透析セッション(略して透析ともいう)以降の2回の連続する透析セッション間)および/または1日のナトリウム摂取量(本明細書ではminterとも呼ぶ)を決定するように構成されている。代替的にまたはそれに加えて、計算デバイスは、透析間飲水量、特に、浸透圧的に誘発または引き起こされていない透析間飲水量または液体摂取量(本明細書ではVexcess drinkとも呼ぶ)を決定するように構成されている。
【0008】
この目的のために、計算デバイスは、記憶デバイスおよび/または入力デバイス、さらにコンピューティングデバイスおよび出力デバイスを備える。
【0009】
記憶デバイスは、患者のパラメータ(またはパラメータ仕様もしくはパラメータ値)を記憶するように構成されている。入力デバイスは、患者のパラメータ値を入力するように構成されている。
【0010】
コンピューティングデバイスは、透析患者の透析間ナトリウム摂取量minterを計算するように、および/または透析間液体摂取量Vexcess drinkを計算するように構成および/またはプログラムされている。
【0011】
計算デバイスは、本明細書で開示されるものなどの、記憶された式またはアルゴリズムに基づき得る。計算は、代替的または追加的に、計算デバイスによって記憶デバイスまたは入力デバイスから検索可能なパラメータ値に基づいてもよい。
【0012】
出力デバイスは、通信デバイスを制御するため、および/または医療用血液処置装置を制御もしくは閉ループ制御するための信号を出力するように構成され得る。
【0013】
通信デバイスは、出力デバイス、モニタ、ディスプレイ、プリンタ、データベース等として設計され得るか、またはそれらを含み得る。
【0014】
通信デバイスは、任意選択的に、計算デバイスまたは医療用血液処置装置の一部であってもよいし、またはそれぞれそれに接続されてもよい。
【0015】
医療用血液処置装置(略称:処置装置)が本発明によってさらに提案される。
【0016】
血液処置装置であって、
- 少なくとも1つの透析液入口ラインおよび/または1つの透析物出口ライン(dialysate outlet line)を包含する流体ラインと、該流体ラインは、任意選択的に、例えばコネクタによって流体連通して互いに接続されており、
- 透析液入口ライン内および/または透析物出口ライン内で透析液を運搬するための少なくとも1つの運搬デバイスと、
- 少なくとも1つの制御および/または閉ループ制御デバイスと、
を備える。
【0017】
医療用血液処置装置は、透析液入口ラインおよび透析物出口ラインそれぞれによって血液フィルタの透析液チャンバに接続されるように構成されており、該血液フィルタは、透析液チャンバに加えて血液チャンバを備え、透析液チャンバと血液チャンバとは半透膜によって互いに分離されている。
【0018】
制御デバイスおよび/または閉ループ制御デバイスは、血液濾過、血液透析、または血液透析濾過による医療用血液処置装置を使用した血液処置を促進または実行するように構成されている。制御デバイスおよび/または閉ループ制御デバイスは、本発明に係る計算デバイスに信号伝送で接続されているか、またはそれを備える。
【0019】
下記のすべてにおいて、「~であり得る」または「~を有し得る」等の表現の使用は、それぞれ、「好ましくは~である」または「好ましくは~を有する」等と同義に理解すべきであり、本発明に係る実施形態を例示することを意図するものである。
【0020】
数値を表す語が本明細書に記載されている場合は常に、当業者はそれらを数値の下限値の指示として認識または理解するものとする。したがって、当業者にとって明らかな矛盾に導かない限り、当業者は、例えば「1つ」が「少なくとも1つ」を包含するものとして理解するものとする。この理解はまた、当業者がみて明白に技術的に可能である場合は常に、数値を表す語、例えば「1つ」が、代替的に「ちょうど1つ」を意味する場合もあるという解釈として、本発明によって等しく包含される。これら両方の理解が本発明によって包含され、本明細書では使用されるすべての数値を表す語に適用される。
【0021】
「プログラムされた」または「構成された」という用語が本明細書に記載されている場合は常に、これらの用語が交換可能であることが開示されている。
【0022】
好適性または方法ステップが本明細書に記載されている場合は常に、本発明は、好適な装置またはその一区間(例えば血液処置装置)およびそのようにプログラムされた装置の対応するプログラムまたは構成を行うことを包含する。
【0023】
本発明の有利な展開は、従属請求項および実施形態に記載の各主題である。
【0024】
本明細書に一実施形態が記載されている場合は常に、本発明に係る例示的な一実施形態である。
【0025】
本発明に係る実施形態は、技術的に可能な任意の組合せで、上記および/または以下に記載される特徴のうちの1つまたはいくつかを備え得る。
【0026】
パラメータ値(または他の値)に基づいて値を計算することが本明細書で説明されているとき、これには、計算が、パラメータ値の推定値またはパラメータ値の(もしくは他の値のまたは他の値に対する)近似値に基づくことが包含され得る。
【0027】
いくつかの実施形態では、コンピューティングデバイスは、透析セッションの開始時に広まっている(prevalent)血漿ナトリウム濃度cpre(n)および/または尿中のナトリウム濃度curineに基づいて、透析間ナトリウム摂取量minterおよび/または透析間液体摂取量Vexcess drinkを計算するように構成および/またはプログラムされている(両用語が本明細書では交換可能である)。
【0028】
いくつかの実施形態では、透析間ナトリウム摂取量minterおよび/または透析間液体摂取量Vexcess drinkは、本明細書に記載の式1、式3、式5、式8、式11、式12、式13、式14、式17のうちの1つを使用して計算される。
【0029】
透析間液体摂取量または液体摂取量Vexcess drinkが本明細書に記載されている場合は常に、本明細書では、計算される(そして好ましくは透析によって除去される)液体量であり得ると理解される。これは、患者が体液バランスを維持するために必要なわけではなく摂取した液体量であり得る。したがって、本明細書では任意選択的に液体摂取量Vexcess drinkと呼ぶ。
【0030】
いくつかの実施形態では、コンピューティングデバイスは、医療用血液処置装置の構成要素と直接的または間接的に信号通信する。それによって信号通信は、例えば血漿ナトリウムまたは透析間塩移動(salt transfer)などの、血液処置装置を使用する透析セッション中に医療用血液処置装置によって測定される値が、例えば、入力デバイスまたは通信デバイスによってコンピューティングデバイスに転送されるように提供または構成されている。これは、医療用血液処置装置にこれらの値を要求することによって行われ得る。しかしながら、医療用血液処置装置によって出力される送信機能によって行われてもよい。これらの値に基づいて、透析間ナトリウム摂取量および/または透析間液体摂取量の計算が、実行中の透析セッション中に数回実施または反復され得る。通常、後の測定値のほうが初期段階で収集されたものよりも正確であるので、この手順により、ナトリウム摂取量および/または液体摂取量についての計算結果がより正確になり得る。
【0031】
いくつかの実施形態では、通信デバイスを制御するための信号を出力するように構成された出力デバイスは、モニタ、ディスプレイ、プリンタ、記憶要素、またはデータベースなどであり得るまたはそれを備え得る通信デバイスの実施例としてのディスプレイデバイスに、透析間ナトリウム摂取量および/または透析間液体摂取量についての値を表示、出力、および/または記憶するようにさらに構成されている。
【0032】
いくつかの実施形態では、通信デバイスを制御するための信号を出力するように構成された出力デバイスは、透析間ナトリウム摂取量および/または非浸透圧的に誘発された透析間液体摂取量に基づいて処方を指定するようにさらに構成されている。処方は、現在または保留中の透析セッションに関連し得る。処方は、機械調整可能な処置パラメータに影響し得る。
【0033】
いくつかの実施形態では、出力デバイスは、決定された透析間ナトリウム摂取量および/または透析間液体摂取量が処置血液から引き出されたときまたは引き出された後、現在の透析セッションまたは血液処置が終了するように、該出力デバイスによって医療用血液処置装置に送信された信号によって医療用血液処置装置を制御するように構成されている。
【0034】
いくつかの実施形態では、計算デバイスまたはその構成要素、デバイス、もしくは装置の任意のものは、任意の組合せで以下のパラメータのうちの少なくとも1つまたは複数の値を読み取るように構成されており、ここにおいて、該読み取りは、例えば、入力デバイスおよび/または記憶デバイスから行われ得る。
V 患者の分布容量、すなわち、水分過剰がない状態または透析によって水分過剰を除去した後の患者の水分含量。このパラメータは、例えば、人体測定式(例えばワトソン式)から、または生体インピーダンス測定によって決定することができる。
ΔV 透析間液体過剰であり、通常、透析間体重増加に相当する。透析セッションのために、液体引き出し量VUF=ΔVが多くの場合処方される。
pre(n) 現在の透析セッション(透析セッションn)の開始時の血漿ナトリウム濃度であり、例えば検査室測定から、またはOCM(オンラインクリアランスモニタリング)による導電率ベースのオンライン決定(本明細書に記載のEP3183013A1またはWO2016/026569A1を参照されたい)から決定される。
post(n-1) 前回の透析セッション(透析セッションn-1と呼ぶ)の終了時の血漿ナトリウム濃度であり、例えば、検査室測定から、または例えばOCMによる導電率ベースのオンライン決定から決定され得る。この値は、好ましくは前回の透析セッションn-1の終了時に、患者関連値として、本明細書に記載の記憶デバイスなどの好適な記憶媒体に記憶され、現在の透析セッションにおいて再び利用可能となる。
urine 企図された透析セッションnとn-1との間の蓄積された残存尿排泄量(residual urine excretion)。この値は、患者が自宅で決定することができる(キーワード:蓄尿)。いつもの習慣で、患者についての代表値が、有利には1日の量として(代替的に容積として)記憶され得、それにより、異なる長さの透析間間隔にわたる総量を計算することができる。
urine 尿中のナトリウム濃度であり、例えば、検査室測定から、または妥当性考慮による仮定として決定される。特に、この値およびその生じ得る誤差は、Vurineに依存して推定され得る。透析患者には重篤な腎機能障害があるので、cpre(n)が、この値の上限として仮定され得る。下限として、例えば、この場合には可能な腎臓の希釈容量が、例えば、cpre,min=50mmol/lと仮定され得る。
前回の透析セッションn-1の終了と現在の透析セッションnとの間の日数であり、現在の日付および前回の透析セッションの記憶された日付によって決定される。
【0035】
本明細書に透析液(dialysis liquid)が記載されているとき、不確かな場合、機械側の透析液入口ラインを介して血液フィルタの透析液チャンバに導かれる新しい流体を指す。本明細書に透析物(dialysate)が記載されているとき、不確かな場合、機械側の透析物出口ラインを介して血液フィルタの透析液チャンバから除去される流体を指す。
【0036】
いくつかの実施形態では、通信デバイスに出力される信号は、信号または信号によって送信される値の定性的および/または定量的精度、信号または値、特に、透析間ナトリウム摂取量minterおよび/または透析間液体摂取量Vexcess drinkの、誤差の大きさ、不確実性、(例えば、信頼区間の)可能な値の範囲等、またはそれに関連するものも示しながら転送される。標準偏差、分散、任意選択的に複数の色を用いた色分け、交通信号表示等を示すことも可能である。これは、関連する表示された値をより理解するのに役立ち得る。
【0037】
したがって、いくつかの実施形態では、値の定性的および/または定量的精度は、誤差(例えば、標準偏差)もしくは可能な値の範囲(例えば、信頼区間)を数値的に示すことによって、または値の信頼性に対する別の基準によって、例えば、交通信号モデルまたはサンプルにしたがう色によって、通信されてもよいし、または通信されることになる。
【0038】
いくつかの実施形態では、定性的および/または定量的精度は、誤差の大きさ、不確実性、および/または不正確性であってもよいし、またはそれらを包含してもよい。
【0039】
いくつかの実施形態では、いくつかまたはすべてのパラメータ値が医療用血液処置装置に直接入力されるか、または透析デバイスによって外部ソース(記憶媒体、ネットワーク等)から読み取られるかのいずれかであるように構成され得る。例えば、透析間、1日、および1日平均の塩分摂取量および/または液体量の計算が、外部デバイスで実施され、計算に必要な血液処置装置の測定値が、外部デバイスに連続的に送信されることも可能である。
【0040】
「透析セッション」は、例えば、血液透析、血液濾過、血液透析濾過、および/または細胞分離法による処置単位であり得、血液の処置および/または浄化のために提供され得る。かかる血液処置を実施するために、好適な血液処置装置が使用される。
【0041】
血液透析では、血液処置装置の血液側と水圧側とを互いに分離する半透膜を介して、血液と透析液との間の小分子物質の濃度バランスが存在する。このようにして、とりわけ毒素および他の腎関連物質が、浄化される血液から引き出され、透析液に受け入れられる。
【0042】
いくつかの実施形態では、血液処置装置は、制御デバイスおよび/または閉ループ制御デバイスによって制御される透析液のナトリウム含有量を変化させるように準備される。
【0043】
温度補償導電率と血液フィルタの上流および下流の液流とを決定するためのセンサが設けられ得る。これらは、温度補償導電率の決定、イオン選択測定、または他の方法による測定のために設計され得る。
【0044】
得られたセンサ値に基づいて、いくつかの実施形態では、制御デバイスまたは閉ループ制御デバイスは、電解質および液体バランスを決定するための数学的計算を実施する。同様に、ユーザの指定および記憶されたアルゴリズムに基づいて、現在の処置において達成すべき電解質および液体バランスのデフォルト値を決定することができる。ユーザの指定および計算された量または処置の進行の表示が、例えばユーザインターフェースを介して可能である。
【0045】
interまたはVexcess drinkの可能な計算のために、以下に記載されるまたは本明細書の他の箇所で与えられる考慮事項および式を例示的に使用することができる。
【0046】
いわゆるシングルプールモデルにおける患者を、ナトリウム濃度cを伴う分布容量V(好ましくは水分正常状態、すなわち水分過剰状態でない)によって述べる場合、以下が2回の透析セッション間のナトリウムバランスに適用される。
【数1】
【0047】
ここで、(n)は現在の透析セッションにおける状態を意味し、(n-1)は直前の透析セッションの状態を意味し、指数「pre」および「post」は時間、すなわち透析セッションの開始時または終了時を示す。指数「urine」は、尿中の値を示し、ここにおいて、指数「j」は、本明細書では透析間間隔におけるすべての蓄尿を示す。残存利尿(residual diuresis)が残っていない場合、Vurine,j=0である。
【0048】
分布容量VpreおよびVpostは、例えば生体インピーダンス測定から決定され得る。しかしながら、これらの値のうちの1つのみを直接決定し、さらに、例えば、Vに対する容量差ΔVが透析セッションの前後に患者の体重を測定することによって決定され得る透析間体重増加に相当すると仮定することがより実用的であり、任意選択的により正確であり得る。
【数2】
【0049】
したがって、以下が適用される。
【数3】
interは、透析間ナトリウム摂取量に相当する。透析セッション前後の血液-ナトリウム濃度の検査室測定によって、および考慮される透析セッションnとn-1との間の蓄尿によって、透析間間隔からの蓄尿中のナトリウム濃度の検査室測定によって、患者の透析間塩分摂取量は、栄養または食事を分析する必要なく決定することができる。
【0050】
しかしながら、頻繁な血液分析は毎日の臨床ルーチンにおいて実用的ではないので、塩分バランスの自動化および/または計算された決定が極めて有利である。
【0051】
この目的のために、透析間容量増加ΔVは、後続の処置において限外濾過を使用した透析間液体引き出し量VUFによって完全に補償されると仮定される。
【0052】
液体の引き出しとともに、ナトリウム引き出しmUFが同時に行われる。
【数4】
【0053】
ここで、cdoは透析器の下流のナトリウム濃度を表す。これは、例えばカリウム(c)および重炭酸塩(cBic)などの、ナトリウム以外の電解質の濃度の影響について速度論的モデルによって排液透析物中で測定される温度補償導電率によって決定され得る(EP2413991B1を参照されたい)。
【数5】
【0054】
UFは、腎臓の残存排泄がない場合、血漿ナトリウム濃度が透析によって(すなわち、等張性ナトリウム血症用透析(isonatremic dialysis)によって)変化しないとき、すなわち、透析セッション中に血液と透析物との間で塩移動が起こらないときの透析間ナトリウム摂取量に相当する。これは、血液ナトリウム濃度と透析物ナトリウム濃度とがわずかに異なるだけの場合である。この場合、以下が適用される。
【数6】
【0055】
そうでない場合、透析セッション中の透析物と血液との間の拡散移動mdiffによる血漿ナトリウム濃度の変化が考慮され得る。
【数7】
【0056】
したがって、これは一般に以下のように適用される。
【数8】
【0057】
速度論的モデルによって補正されたときの透析器または血液フィルタの上流および下流の温度補償導電率の連続測定による透析物側のmdiffの計算も、EP2413991B1に開示されている。
【0058】
透析前血漿ナトリウム濃度が正常な生理状態に対応する場合、mdiff=0となるように透析液ナトリウム濃度を調整することが有利である。この状態には、透析間間隔中に、塩分摂取量が対応する飲水量によって補償されて血漿ナトリウム濃度が変化しないときに達する。これが当てはまらない場合、例えば、患者が、口渇感に関係しない理由で、塩分摂取量を補償するのに必要な量以上に飲水し、したがって、本明細書では浸透圧的に誘発されていないと示す液体量を摂取するので、結果として得られる血漿ナトリウム濃度は病的状態を表す。透析セッション中の拡散塩移動、すなわちmdiff≠0によって、この状態は再び補償され得る。これは、「自由水除去(free water removal)」という生理学的概念で説明することができる。これは、機能している腎臓において、正の「自由水クリアランス」が、尿中のナトリウム濃度が血漿中のナトリウム濃度よりも低いことを意味し、これは、腎臓がナトリウムを保持しているので血漿ナトリウム濃度が増加することを意味する。一方、負の「自由水クリアランス」では、尿中のナトリウム濃度が血漿中のナトリウム濃度よりも高く、腎臓がナトリウムを排泄するので血漿ナトリウム濃度が減少することを意味する。これは、以下のように透析セッション中に関連するパラメータに適用することができる。
【0059】
それによって「自由水除去量」VFWRは、患者の血漿ナトリウム濃度をcpreからcpostに変化させるために、分布容量Vを有する患者から引き出される(VFWR>0)または患者に送出される(VFWR<0)、塩分を含まない水の(事実上の)量を示す。この変化は、透析セッション中の拡散塩移動による血漿ナトリウム濃度の変化に相当する。
【数9】
【0060】
FWRにしたがう代数変換は以下のようになる。
【数10】
【0061】
同様に、透析間間隔(すなわち、2回の連続する透析セッションn-1とnとの間の時間)における飲水量Vexcess drinkを決定することができ、これは、血漿ナトリウム濃度を変化させており、患者は、透析間間隔において、いわば「飲み過ぎ」の状態で飲水している。
【数11】
【0062】
次いで、この余分な液体摂取量により、患者の「生理的」血漿ナトリウム値が病的状態にシフトしている。
【0063】
透析によって、例えば血漿ナトリウム濃度の増加分だけ除去することVFWR=Vexcess drinkによって、この飲水量は再び補償される。
【0064】
残存利尿がある場合、食事を通して吸収される塩分量は、透析セッション中に決定される量よりも多い。尿により排泄される塩分量を決定するためには、例えば、ナトリウム濃度curineが必要である。これは、例えば、典型的な条件下での蓄尿の検査室測定によって行われ得る。
【0065】
残存排泄が減少するにつれて、ナトリウム濃度を濃縮する腎臓の能力はますますなくなっていき、その結果、尿中のナトリウム濃度curineはますます血漿ナトリウム濃度に近づいていく。したがって、これらの条件下で推定を行うことができる。
【数12】
【0066】
毎日の飲食習慣をより理解するために、VFWRおよびminterの値を透析間間隔における日数Nで割ることによって、これらの値を1日の量に関係付けることが有益である。
【数13】
【0067】
週3回の透析セッションの一般的な透析体系では、週末にわたる透析間間隔は、他の2つの間隔よりも1日長く、したがって、この間隔では、患者への液体および塩分の蓄積は、他の2つの間隔と比較して増加している。しかしながら、透析セッションは3日間の処置日すべてで同じ時間を要するので、臨床診療では通常、透析の忍容性を改善するために、より長い間隔の後の処置ですべての水分過剰を引き出すわけではなく、むしろ1週間の残りの2回の透析セッションにおいて徐々にしか引き出さない。これらの場合、minterおよび
【数14】
を記憶し、これら値を例えば1週間のすべての値で平均することによって、それぞれの値を計算することが有利であり、ここにおいて、Nは透析治療の回数を表し、Nは平均期間中の日数を表す。
【数15】
【0068】
特に、本発明にしたがって計算したものの表示に関して、以下の考えを本発明の意味で使用することができる。
【0069】
したがって、透析間、1日、および1週間の塩分摂取量または流体量を計算および/または表示するために、以下のうちの複数またはいくつか、および上述のパラメータの一部が考慮される。
・V:分布容量、すなわち水分過剰を除去した後の患者の水分含量。これは、人体測定式(例えばワトソン式)から、または生体インピーダンス測定によって決定することができる。
・ΔV:透析間体重増加に相当する透析間液体過剰量。多くの場合、透析のために、液体引き出し量VUF=ΔVが処方される。
・N:前回の透析の終了と現在の透析との間の日数であり、現在の日付および前回の透析の記憶された日付によって決定される。
・cpre(n):透析の開始時の血漿ナトリウム濃度であり、検査室測定から、またはOCMによる導電率ベースのオンライン決定(本明細書に記載のEP3183013A1またはWO2016/026569A1を参照されたい)から決定される。
・cpost(n-1):前回の透析の終了時の血漿ナトリウム濃度であり、検査室測定から、またはOCMによる導電率ベースのオンライン決定から決定される。この値は、前回の透析の終了時に、患者関連値として、好適な記憶媒体に記憶され、現在の透析で利用可能となる。
・Vurine:透析セッション間の蓄積された尿残存排泄量。自宅で患者が決定する。いつもの習慣で、患者についての代表値が、有利には1日の量として記憶され得、それにより、異なる長さの透析間間隔にわたる総量を計算することができる。
・curine:尿中のナトリウム濃度であり、検査室測定から、または妥当性考慮からの仮定として決定される。特に、この値およびその生じ得る誤差は、Vurineに依存して推定され得る。透析患者には重篤な腎機能障害があるので、cpre(n)が上限として仮定され得る。下限として、この状態で可能な腎臓の希釈容量が、例えば、cpre,min=50mmol/lと仮定され得る。
【0070】
本明細書に記載のパラメータまたはそれらの値のすべては、透析機械または医療用血液処置装置に直接入力されるか、または外部ソース(記憶媒体、ネットワーク等)から透析機械によって読み取られるかのいずれかであり得る。同様に、透析間、1日、および1日平均の塩分摂取量の計算が外部デバイスで行われ、計算に必要な医療用血液処置装置の測定値が、外部デバイスに連続的に送信されることも可能である。
【0071】
医療用血液処置装置のディスプレイデバイス上または外部媒体上の表現の1つの態様は、関心パラメータの推定値ができる限り早く表示されることである。透析セッション中に、例えば血漿ナトリウム濃度または透析間塩移動の決定から、より多くのデータが利用可能である場合、この推定値は、透析の終了までに可能な限り最も高い精度の値が利用可能となるように精緻化される。現在の値の精度は、誤差(例えば、標準偏差)または可能な値の範囲(例えば、信頼区間)を数値的に示すことによって、または値の信頼性の異なるインジケーションによって、例えば、交通信号モデルにしたがう色で示され得る。
【0072】
いくつかの実施形態では、最初に、透析間および/または1日の塩分摂取量の計算が、残存利尿murineの部分について別個に行われる。Vurineとcurineの両方がわかっている場合、murine=Vurineurineが直接計算される。
【0073】
urineのみがわかっている場合、尿による最大塩分排泄は、例えば、血漿ナトリウムに基づいて計算される。
【数16】
【0074】
この場合、murine,maxについての推定値が、cpre(n)に対して、透析患者に典型的である値、例えば138mmol/lまたは検査室測定もしくは前回の処置からの計算による値を使用することによって最初に計算され得る。
【0075】
同様に、下限murine,minが計算される。これは、cpre(n)の固定された割合、または残存排泄量Vurineおよびcpre(n)の関数、特に、最大値Vurine,maxを超える残存利尿における最大希釈curine,minを仮定し、減少する残存利尿curineがcpre(n)に近づくと仮定して線形関数であり得る。
【数17】
【0076】
urine>Vurine,maxの場合、例えば以下が仮定される。
urine,min=Vurineurine,min
【0077】
透析によって除去される必要があるまたは既に除去されている透析間塩分摂取量minter(Vurine=0)の部分もまた、最初に異なる方法で推定され、次いで、処置の過程において増加する精度で与えられ得る。
・minter(Vurine=0)=VUFpre,est、ここにおいて、cpre,estは、透析前血漿ナトリウムの典型的な推定値、例えば138mmol/l、または過去の処置から導出された値である。
・これもまたわかっているcpost(n-1)であり、例えばcpreの推定値を用いた式1による推定である。
・導電率に基づく測定値から処置の過程でcpreが決定された場合、この値は、前回使用した推定値に取って代わり得る。
・さらなる過程において、式4および式5または式8による実際の塩分除去量を計算に使用することができる。この計算は、好ましくは、処方された限外濾過量に到達した後に使用される。なお、初期に推定された値を現在の測定値によって連続的に補正してもよく、ここにおいて、測定値は、現在到達している限外濾過量と処方された限外濾過量との比で重み付けされ得る。
【数18】
【0078】
いくつかの実施形態では、透析間、1日、または1日平均の塩分摂取量に関するminterの総量の計算および表示は、残存利尿および透析によって除去された量についてこのように例示的に計算されている部分から行われてもよい。
【0079】
透析間「自由水除去量」および過剰な透析間飲水量を表示するために、現在の「自由水除去量」VFWRは、例えば、mdiffの複数または連続的な決定とともに、式10にしたがって、透析セッション中に繰り返しまたは連続的に計算および表示されてもよい(例えば、EP2413991B1に記載されており、その内容もまた、本開示の主題としてその全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0080】
preについては、本明細書では、既知の方法(かかる方法は、EP3183013A1(WO2016026569A1として公開)に記載されており、その内容もまた、本開示の主題として参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)にしたがって処置中に決定される値が提供される前は、当分の間、集団関連推定値(例えば、138mmol/l)、患者関連履歴値、または検査室の値が使用され得る。
【0081】
代替的に、前回の透析の終了時に自動的に決定された血漿ナトリウムcpost(n-1)の値が内部または外部記憶媒体から読み取られるという点で、Vexcess drink=VFWRは、式11にしたがって計算されてもよい。
【0082】
推定値に基づくVFWRの表示は、次に光学的にマークされ得る。cpreについての透析間測定値を提供した後、後者は、少なくとも現在の透析セッションにおけるさらなる計算に使用される。
【0083】
栄養カウンセリングを支援して、透析機械において塩移動mdiffの処方があった場合に、Vexcess drink=VFWRもまた、処置中に既に示されているが、いずれの場合も処置の終了時に示され得る。この処方はまた、mdiff=VΔcにしたがって血漿ナトリウムΔcの相対的変化量を処方することによって行われ得る。
【0084】
FWRに加えて、VFWR,dおよび
【数19】
も表示され得る。
【0085】
ここで、計算デバイスを使用した表示および計算は、直接的および医療用血液処置装置の一部としての両方で実施されてもよい。
【0086】
本発明に係るいくつかの実施形態では、透析間塩分摂取量minterおよび/または「自由水除去量」VFWRの知識は透析処方として使用され得る。それに好適であって任意選択的に提供される方法を以下に記載する。
【0087】
関係者に知らせるために、例えばディスプレイデバイスによって表示される値minterおよびVexcess drinkは、血漿ナトリウムの(病的な)変化を引き起こした塩分摂取量および水分摂取量を表す。
【0088】
より実行しやすい透析処方を達成するために、現在では、これらの値を治療処方に直接使用することが可能である。そのような処方は、任意選択的に、限外濾過量および/または透析液のナトリウム濃度のこれまでの従来の処方に取って代わる。
【0089】
特に、限外濾過量VUFは、cpreが決定または推定されるとすぐに、式6にしたがってminter(Vurine=0)から計算され得る。
【0090】
同様に、対応する拡散塩移動mdiffは、式10にしたがって「自由水除去量」VFWRの処方から計算され得る。例えば、上述のEP2413991B1に記載されているような制御アルゴリズムが、次いで、処置の過程で、好ましくは終了時に、mdiffが達成されるように、処置中に透析液ナトリウムを適応させ得る。
【0091】
単に例示的な適用例については、添付の図面および/またはそれらの説明も参照されたい。
【0092】
本発明はさらに、患者の透析間ナトリウム摂取量を決定するため、および/または特に浸透圧的に誘発または引き起こされていない透析間液体摂取量を決定するための方法に関し、本方法は、該患者の透析間ナトリウム摂取量を計算すること、および/または該患者の、特に浸透圧的に誘発されていない透析間液体摂取量を計算することと、任意選択的に、通信デバイスおよび/または医療用血液処置装置を制御または閉ループ制御するための信号を送信することとを包含する。
【0093】
いくつかの実施形態では、本方法は、透析セッション(n)の開始時に広まっている血漿ナトリウム濃度および/または尿中のナトリウム濃度に基づいて、透析患者の透析間ナトリウム摂取量および/または患者の透析間液体摂取量を計算することを包含する。
【0094】
いくつかの実施形態では、本方法は、例えば医療用血液処置装置を使用して、(血液処置装置によって実施される透析セッション(n)中に医療用血液処置装置によって測定された値を)複数回クエリまたは要求することを包含し、それに基づいて、透析間ナトリウム摂取量および/または透析間液体摂取量を繰り返しまたはより正確に計算する。
【0095】
いくつかの実施形態では、本方法は、透析間ナトリウム摂取量および/または透析間液体摂取量に基づいて処方を示すことを包含する。
【0096】
いくつかの実施形態では、本方法は、特に意図されたようにまたはそれらの好適性もしくは構成にしたがって使用されるときに、本明細書に記載の方法ステップまたは本明細書に記載の装置のうちの1つによって任意の組合せで実行されるステップのうちの1つまたはいくつかを包含する。
【0097】
本明細書に記載の利点のうちの1つまたはいくつかは、以下を含む本発明のいくつかの実施形態によって達成可能であり得る。
【0098】
最初に述べたように、食塩摂取量が増加すると心血管疾患の発生が増加し、心臓発作および脳卒中などの心血管事象を引き起こす恐れがあることが、多数の研究によって証明されている。
【0099】
栄養と共に摂取される食塩は、一般集団においては大部分が尿により排泄され、ここにおいて、腎臓は、血中のナトリウムの過剰および相対的不足の両方を補償できるように、尿中の塩含有量を調節することが可能である。
【0100】
塩分摂取に関連するこれらの有害な機構は、腎機能がないまたは腎機能が重度に低下した患者にも関連している。該患者の場合、尿による塩分排泄はごく限られているか、またはもはや不可能であるので、塩分摂取量が増加すると、それにより生じる口渇感に起因してさらに飲水量も増加し、患者の水分過剰を引き起こす。これは、循環系に負担または無理をかけ、例えば、浮腫や肺への水分貯留に現れる。この水分過剰は、腎機能障害の患者において、典型的には、週に数回、限外濾過による液体の除去により実施される血液透析の過程で再び減少する。通常は透析期間が固定されているので、引き出す液体の量を多くするほど、引き出し速度を上げなければならない。しかしながら、引き出し速度を上げると、透析間(すなわち、透析または透析セッション中)の血圧低下のリスクも増加し、長期的な損傷にもつながる。
【0101】
食塩は、多くの食品に含まれており、特に、安価な調味料として役立つインスタント製品にも隠されている。したがって、既製ピザの塩含有量は、約5gのNaClというWHO推奨の1日の塩分摂取量に既に相当している。多くの食品には塩含有量に関する情報があるにもかかわらず、これらは無視されることが多く、自分が加える塩のみが塩分摂取量として認識される。したがって、多くの透析患者は、高い限外濾過レベルが定期的に処方されているにもかかわらず、この原因が最終的には透析間間隔中の(隠れた)塩分の摂取量であることに気付かない。
【0102】
したがって、これらの場合において、処置する透析医師およびその看護職員の務めは、栄養カウンセリングによって塩分摂取量を減らすことに取り組むことである。上述したように、塩分摂取量は完全に意識的に認識されないことが多く、患者と話し合うことが困難になる。
【0103】
栄養カウンセリングの成功のためには、透析間および1日の塩分摂取量の可能な限り最良の推定を与えることが必須である。本発明は、ここで有益な助けとなり得る。加えて、専門的なアドバイスを利用できない場合に、患者自身が食物摂取量、特に塩分または水分摂取量についての情報を得るために使用するのに特に好適である。本発明はまた、生理学的に不必要で有害な可能性のある飲水量の可能な限り最良の推定を患者に与えることができる。
【0104】
本明細書では浸透圧的に制御された飲水と呼ばれる、塩分摂取によって生じる口渇感によって誘発される飲水に加えて、一部の患者は、他の理由(習慣、「付き合いの飲み会」等)でも飲水する。これにより、水分過剰が増加するのに加えて、血漿ナトリウム濃度が減少し、病的状態を表す。本発明はまた、有利なことに、塩分摂取に起因して浸透圧的に誘発される量を超える液体量の消費を認識するのに寄与し得る。
【0105】
この点において、本発明は、有利なことに、例えば、処方された液体引き出し量が透析間体重増加に相当し、透析間塩分がいずれの他の方法でも排泄されていないという仮定に基づく手動計算の考え方とは相違している。このような手順において、除去されたナトリウム量を推定するために、例えば、限外濾過処置中に実施される液体引き出しが、血中の典型的なナトリウム濃度、例えば138mmol/lで乗算される場合、これは、患者個々の血漿ナトリウム濃度の偏差も、残腎機能による可能な排泄も考慮していない。この点に関して、本発明は、上述のような利点を提供することができる。
【0106】
したがって、本発明によって、残存利尿を有する患者の場合であっても、透析間および1日の(食事の)ナトリウム摂取量ならびに非浸透圧的に誘発された飲水量を有利なことに計算および表示することができる。特に、本発明によって以下のことが可能であり得る。
・透析間塩分および/または液体摂取量を計算および表現することであって、後者は「理想の」飲水量、すなわち血漿ナトリウム濃度を変化させない飲水量からの偏差に関連する計算および表現すること、
・計算において外部データから決定される残存利尿を考慮すること、
・これらの量を1日または1日平均の量と関係または関連付け、したがって、前回の処置の値を記憶およびアクセスすること、
・最初に推定値を使用し、この推定値が次いで測定値に基づく計算によって入力される増加していく情報と徐々に置き換わることによって、透析中にこれらの値を可能な限り早く表示すること、
・医療用血液処置装置と、移動式に使用することもできる外部コンピューティングおよび表示ユニットの両方で計算し、表示することが可能であること。
【0107】
以下、本発明について、添付図面を参照してその好ましい実施形態に基づいて説明する。以下のことが図に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0108】
図1】本発明に係る計算デバイスに信号通信で接続された制御デバイスによって制御および/または閉ループ制御される、患者の処置を実行するための血液カセットに例示的に接続された、例示的な実施形態における本発明に係る医療用血液処置装置の一部分を概略的に簡略化して示す図である。
図2】本発明に係る計算デバイスの一部としてのユーザインターフェースを示す図である。
図3】本発明に係る例示的な計算デバイスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0109】
図1は、処置のために、ダブルニードルアクセスを介して、または例えば追加のYコネクタを使用したシングルニードルアクセスを介して患者(図示せず)の血管系に接続される体外血液回路1を示す。血液回路1は、任意選択的に、その区間内に、または血液カセット2上に設けられる。この血液カセット2は、他の処置タイプ、例えばシングルニードル処置において使用されるようにも設計されている。
【0110】
血液回路1の領域内のポンプ、アクチュエータ、および/または弁は、本発明に係る血液処置装置4またはそれに含まれる制御デバイス29に接続される。
【0111】
血液回路1は、動脈区間または患者動脈ラインもしくは採血ライン9の患者動脈ホースクランプ6および動脈接続針5(アクセスデバイスの一例として)を備える。血液回路1はさらに、静脈区間または患者静脈ラインもしくは返血ライン23の患者静脈ホースクランプ7および静脈接続針27(さらなるまたは第2のアクセスデバイスの一例として)を備える。
【0112】
血液ポンプ11が動脈区間9に設けられており、置換液ポンプ17が置換液ライン17aに接続されている。置換液ライン17aは、好ましくは自動置換液ポート18を介して置換液供給源に接続され得る。置換液ポンプ17によって、置換液が、関連付けられたライン13または14を通した前希釈または後希釈を介してライン区間に、例えば血液回路1の動脈区間9に、または(血液フィルタ19の血液チャンバ19aと静脈空気分離チャンバ21との間の)静脈区間23aに添加され得る。
【0113】
血液フィルタ19は、動脈区間9および静脈区間23に接続されている血液チャンバ19aを備える。血液フィルタ19の透析液チャンバ19bは、透析液チャンバ19bに通じる透析液入口ライン31a、および透析液チャンバ19bから遠ざかる透析物出口ライン31bに接続されている。
【0114】
透析液入口ライン31aは、任意選択的に弁V24を備え、弁V24によって透析液入口ライン31a内の流れが停止され得る。透析物出口ライン31bは、任意選択的に弁V25を備え、弁V25によって透析物出口ライン31b内の流れが停止され得る。
【0115】
透析液入口ライン31aはさらに、任意選択的に装置の別の内部弁によって圧縮空気源26に接続されている。圧縮空気源26は、血液処置装置4の構成要素としてまたはその分離した一部として設けられ得る。圧縮空気源26の下流に圧力センサ37が設けられ得る。
【0116】
例えば静脈区間23または23aとの静脈接続は、工場で提供される任意選択の接続区間24によって達成され得る。
【0117】
制御デバイス29は、血液処置装置4の制御デバイスの一部であってもよいし、またはそれを具現化し得る。
【0118】
図1の配置構成は、空気および/または血液を検出するための任意選択の検出器15を備える。図1の配置構成は、図1の例示された箇所に1つまたは2つの圧力センサ33a、33bをさらに備える。さらなる圧力センサ、例えば圧力センサ37が設けられてもよい。
【0119】
図1では、患者が2つの血液ライン9、23のうちの一方のみを介して体外血液回路1に接続されるシングルニードル法の間またはその後に、シングルニードルチャンバ36がバッファおよび/または補償タンクとして使用される。
【0120】
図1の配置構成は、追加的に、置換液および/または血液を検出するための任意選択の検出器25を備える。
【0121】
図1において、本発明に係る計算デバイス100は、制御デバイスおよび/または閉ループ制御デバイス29と信号通信状態で例示的に示されている。
【0122】
本発明は、本明細書に記載の実施形態に限定されず、これは例示のためだけに考慮される。
【0123】
図2は、塩と液体のバランスを表示および処方するための、本発明に係る計算デバイス100の入力デバイス103および/またはディスプレイデバイス109の一例として例示的なユーザインターフェースを示す。
【0124】
このようなユーザインターフェースが、血液透析装置上に、および/または透析装置に接続された外部ディスプレイおよびコンピューティングユニット(コンピュータ、ラップトップ、タブレットデバイス、...)上に直接配置され得る。この実施例では、表示要素および入力要素は、機能によって直列に配置されているが、他の配置、ラベリング等も可能である。また、すべての要素が存在する必要があるわけではないし、またさらなるデータをそれぞれ表してもよい。これらは、追加の透析パラメータまたは他の単位で表されたパラメータの値の変換のいずれかであり得る。
【0125】
1行目は、血液透析治療(HDおよびすべてのタイプのHDFおよびHFを含む)を処方するための入力要素を包含する。
図2のフィールドF1におけるV(UF):限外濾過による液体除去量の処方。医師によって設定された量が、処置の終了まで患者から引き出される。
・目標血漿ナトリウム変化量(フィールドF2)、目標拡散Na除去量(フィールドF3)、目標自由水除去量(フィールドF4):これら3つの入力要素は、ここに含まれる量が互いに固定関係にあるので、代替的に使用されてもよい。式に記載されているように、それらは、V(尿素)および血漿ナトリウム(pre)の追加の知識を用いて互いに変換することができる。内部に記憶された変換係数(例えば、「mmol NaCl」から「g NaCl」への変換)を使用して、要素内に表示される物理的単位を選択することも可能である。拡散Na除去量における負の値は、患者へのナトリウム移動を意味し、「自由水除去量」に相当する。
【0126】
2行目は、1行目からの処方を透析パラメータ、特に透析液ナトリウム濃度の特定の設定に変換するために、または透析装置の測定量から4~6行目の生理学的に関連する量を決定できるようになるために必要とされる補助量を入力するための入力要素を包含する。
・V(尿素)(フィールドF5):患者の分布容量。患者の濃度変化を物質量に変換するのに必要である。
・1日の残存利尿(フィールドF6)、尿中のNa(フィールドF7):総塩分摂取量を計算するために必要である。
【0127】
3行目は、入力要素を包含し、その値は異なるソースからのものであり得る。
・血漿ナトリウム(pre)(フィールドF8):透析開始時の患者の血漿ナトリウム。この値は、電子記録から、例えば、現在または過去の検査室データから予め割り当てられ得る。また、処置の開始時での手動入力も可能である。処置の過程で、この値は装置によって自動的に決定され、初期値は決定された値に置き換えられる。
【0128】
4行目は、処置の進行を特徴付ける表示要素を包含する。
・V(UF)動作(フィールドF9):現時点までに限外濾過によって引き出された液体の量。
・総Na除去量(フィールドF10):現時点までの限外濾過および拡散によって引き出された総塩分量(異なる単位での可能な表示)。
・Na拡散除去量(フィールドF11):現時点までに拡散によって引き出された塩分量。これは正であっても負であってもよい。負の値は、患者への塩移動に相当する。
・自由水除去量(フィールドF12):現時点までに「自由水除去」の到達した量。自由水除去量は、ここで表示される値であり、最初は推定値としてのみ存在する血漿ナトリウム(pre)に含まれるので、値の数値表示に加えて、これが推定値に基づく予備的計算であるのか、または透析中の測定値に基づく更新されたもしくはさらには最終的な計算であるのかのマーキングが実施され得る。
【0129】
5行目は、患者の塩分摂取量についての表示要素を包含する。
・「透析間塩分摂取量」(フィールドF13):残存利尿および尿中のナトリウム、ならびに透析中の総ナトリウム除去量(限外濾過および拡散)から計算される。処置の開始時に、処方値がここで使用され、表示された結果は、「自由水除去量」のインジケーションと同様に、推定値としてマークされる。処置が終了するまで、処置中に得られるナトリウムバランスの測定値を用いて、精度が徐々に改善され、これも視覚的に識別することができる。加えて、尿中のナトリウム含有量が不確実であることから、透析間塩分摂取量の単一の値の代わりに、信頼区間に対応する値の範囲が表示され得る。
・「最後の透析以降の1日の塩分摂取量」(フィールドF14):記載されるように、表示様式は上記の通りである。計算に必要な前回の透析からの日数は、患者の前回の透析の日付を受信する内部または外部記憶媒体にアクセスすることによって決定されてもよいし、または入力デバイス103を使用して入力されてもよい。
・「1日平均塩分摂取量」(フィールドF15):記載されているように、表示様式は上記の通りである。この目的のために、前回の透析において決定された値が、例えば、外部もしくは内部記憶媒体にアクセスすることによって、または入力後に使用される。
【0130】
6行目は、患者の飲水量の表示要素を包含する。
・「透析間過剰飲水量」(フィールドF16):血漿ナトリウム濃度の変化を引き起こしている飲水量であり、血漿ナトリウム濃度が減少したとき正である。計算は、現在の処方に基づいて式10にしたがって、または内部もしくは外部記憶媒体から読み取られた前回の処置の終了時の血漿ナトリウム値に基づいて式11にしたがって実施され得る。5行目の値と同様に、推定値の一時的な使用は、光学的に表され得る。
・「最後の透析以降の1日の過剰飲水量」(フィールドF17):「最後の透析以降の1日の塩分摂取量」と同様の計算である。
・「1日平均過剰飲水量」(フィールドF18):フィールドF15からの「1日平均塩分摂取量」と同様の計算である。
【0131】
図3は、患者の透析間ナトリウム摂取量minterを決定するため、および/またはほとんどが非浸透圧的に誘発された透析間液体摂取量Vexcess drinkを決定するための、本発明に係る計算デバイス100を示す。
【0132】
計算デバイス100は、記憶デバイス101および/または入力デバイス103を備える。それらは、患者のパラメータ値を記憶または入力する働きをする。
【0133】
計算デバイス100は、コンピューティングデバイス105をさらに備える。これは、患者の透析間ナトリウム摂取量minterを計算する、および/または患者の非浸透圧的に誘発された透析間液体摂取量Vexcess drinkを計算するように構成されている。本明細書に開示するものなど、対応するアルゴリズムおよび式は、この目的のために、コンピューティングデバイス105内に記憶されていてもよいし、または記憶デバイス101などの好適なソースからコンピューティングデバイス105によって読み取られてもよい。
【0134】
最後に、計算デバイス100は、出力デバイス107を備える。これは、任意選択の通信デバイス109および/または医療用血液処置装置4を制御または閉ループ制御するための信号を出力する働きをする。
【0135】
通信デバイス109は、医療用血液処置装置4の構成要素、例えばその制御または閉ループ制御デバイス29とのワイヤードまたはワイヤレス信号接続のために構成され得る。
【0136】
通信デバイス109は、追加的または代替的に、任意選択的に提供されるディスプレイデバイスに接続されてもよいし、またはそのように設計されてもよい。ディスプレイデバイス109は、図2に示すユーザインターフェースであってもよいし、またはそれを備えてもよい。
【0137】
通信デバイス109は、特にディスプレイデバイスとして設計され得、計算デバイス100または医療用血液処置装置4の一部であり得る。
【0138】
技術的に不可能でない場合、上述の装置のうちのいくつかは、単一のユニットへと組み合わせてもよい。
以下に、本願出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] 患者の透析間ナトリウム摂取量(m inter )を決定するため、および/または特に浸透圧的に誘発されていない透析間液体摂取量(V excess drink )を決定するための計算デバイスであって、
- 前記患者のパラメータ値を記憶または入力するように構成された記憶デバイスおよび/または入力デバイスと、
-前記患者の前記透析間ナトリウム摂取量(m inter )を計算し、および/または前記患者の特に浸透圧的に誘発されていない透析間液体摂取量(V excess drink )を計算するように構成されたコンピューティングデバイスと、
- 通信デバイスおよび/または医療用血液処置装置を制御または閉ループ制御するための信号を出力するための出力デバイスと
を備える、計算デバイス。
[2] 前記透析患者の前記透析間ナトリウム摂取量(m inter )および/または前記患者の前記透析間液体摂取量(V excess drink )を計算するための前記コンピューティングデバイスは、
前記透析セッションの開始時に広まっている血漿ナトリウム濃度(c pre (n))および/または尿中のナトリウム濃度(c urine )に基づいて、前記透析間ナトリウム摂取量(m inter )および/または前記透析間液体摂取量(V excess drink )を計算するように構成されている、[1]に記載の計算デバイス。
[3] 前記コンピューティングデバイスは、前記医療用血液処置装置によって測定された値に基づいて、前記透析間ナトリウム摂取量(m inter )および/または前記透析間液体摂取量(V excess drink )の前記計算を繰り返すまたは指定するために、前記医療用血液処置装置によって実施される透析セッション(n)中に、前記医療用血液処置装置によって測定された前記値を前記医療用血液処置装置に繰り返しクエリするまたは前記医療用血液処置装置から受信するように、前記医療用血液処置装置と信号通信するように構成されている、[1]または[2]に記載の計算デバイス。
[4] 前記出力デバイスは、モニタ、ディスプレイ、プリンタ、記憶要素、またはデータベースであり得るかまたはそれらを含み得る通信デバイスの一例としてのディスプレイデバイスに、前記透析間ナトリウム摂取量(m inter )および/または前記透析間液体摂取量(V excess drink )を表示、出力、および/または記憶するように構成されている、[1]~[3]のいずれか一項に記載の計算デバイス。
[5] 前記コンピューティングデバイスおよび/または前記出力デバイスは、通信デバイスの一例としての前記ディスプレイデバイスに、計算された値、特に前記透析間ナトリウム摂取量(m inter )および/または前記透析間液体摂取量(V excess drink )を出力、記憶、および/または表示するとともに、前記表示、出力、および/または記憶された値の定性的および/または定量的精度も示すように構成されている、[1]~[4]のいずれか一項に記載の計算デバイス。
[6] 前記表示された値の前記定性的および/または定量的精度を示すことは、値の範囲、信頼区間、複数の所定の色のうちの1つでの表現、誤差の大きさ、不確実性、可能な値の範囲、特に信頼区間、標準偏差、分散、任意選択的に複数の色を用いた色分け、および/または交通信号表示を指定することであるか、または指定することを含む、[1]~[5]のいずれか一項に記載の計算デバイス。
[7] 通信デバイスを制御するための信号を出力するための前記出力デバイスは、前記透析間ナトリウム摂取量(m inter )および/または前記透析間液体摂取量(V excess drink )に基づいて処方を示すように構成されている、[1]~[6]のいずれか一項に記載の計算デバイス。
[8] 前記出力デバイスは、前記決定された透析間ナトリウム摂取量(m inter )および/または液体摂取量(V excess drink )が処置血液から引き出されたときまたは引き出された後に前記透析セッション(n)が終了するように、前記出力デバイスによって前記医療用血液処置装置に出力された前記信号を介して前記医療用血液処置装置を制御するように構成されている、[1]~[7]のいずれか一項に記載の計算デバイス。
[9] [1]~[8]のいずれか一項に記載の計算デバイスであって、以下のパラメータ、
V 前記患者の分布容量と、
ΔV 透析間体重増加に相当する透析間液体過剰量と、
pre (n) 前記透析セッション(n)の開始時の血漿ナトリウム濃度と、
post (n-1) 前回の透析セッション(n-1)の終了時の血漿ナトリウム濃度と、
urine 前記透析セッション間の蓄積された残存尿排泄量と、
urine 尿中のナトリウム濃度と、
現在の日付および前記前回の透析セッションの記憶された日付によって決定される、前記前回の透析セッションの終了と前記現在の透析セッションとの間の日数と、
のうちの少なくとも1つまたはいくつかの値を読み取るように構成されている、計算デバイス。
[10] 医療用血液処置装置であって、
- 少なくとも1つの透析液入口ラインおよび/または1つの透析物出口ラインを包含する流体ラインと、前記流体ラインは、任意選択的に、例えばコネクタによって互いに流体連通して接続されており、
- 前記透析液入口ライン内および/または前記透析物出口ライン内で透析液を運搬するための少なくとも1つの運搬デバイスと、
- 少なくとも1つの制御デバイスおよび/または閉ループ制御デバイスと、
を備え、
前記医療用血液処置装置は、血液フィルタの透析液チャンバに、前記透析液入口ラインおよび前記透析物出口ラインそれぞれによって接続されるように構成されており、前記血液フィルタは、透析液チャンバに加えて血液チャンバを備え、透析液チャンバおよび血液チャンバは、半透膜によって互いに分離されており、
前記制御デバイスおよび/または前記閉ループ制御デバイスは、血液濾過、血液透析、または血液透析濾過による前記医療用血液処置装置を使用した血液処置を促進または実行するように構成されており、その目的のために、前記制御デバイスおよび/または前記閉ループ制御デバイスは、[1]~[9]のいずれか一項に記載の計算デバイスを備えるか、または信号伝送で前記計算デバイスに接続されている、医療用血液処置装置。
[11] 血液処置、特に血液透析、血液濾過、血液透析濾過または分離法を実行するのに好適であり、および/またはそれを実行するように構成されている、[10]に記載の医療用血液処置装置。
【符号の説明】
【0139】
1…体外血液回路
2…血液カセット
4…血液処置装置
5…アクセスデバイス、例えば動脈接続針
6…患者動脈ホースクランプ
7…患者静脈ホースクランプ
8…入口ライン
9…動脈区間または動脈採血ラインまたは患者動脈ライン
11…血液ポンプ
13…置換液用の添加箇所(前希釈)
14…置換液用の添加箇所(後希釈)
15…動脈空気-血液検出器
17…運搬デバイス、例えば置換液ポンプ
17a…置換液ライン
18…自動置換液ポート
19…血液フィルタ
19a…血液チャンバ
19b…透析液チャンバ
21…静脈空気分離チャンバ
23…静脈区間または静脈返血ラインまたは患者静脈ライン
23a…静脈区間
24…接続箇所、接続区間
25…静脈置換液-血液検出器
26…圧縮空気源
27…アクセスデバイス、例えば静脈接続針
29…制御デバイスおよび/または閉ループ制御デバイス
31a…透析液入口ライン
31b…透析物出口ライン
33a…圧力センサ
33b…圧力センサ
35…シングルニードルバルブ
36…シングルニードルチャンバ
37…圧力センサ
41…コネクタ
100…計算デバイス
101…記憶デバイス
103…入力デバイス
105…コンピューティングデバイス
107…出力デバイス
109…通信デバイスおよび/またはディスプレイデバイス
F1~F16…インターフェースの表示フィールド
V24…弁
V25…弁
図1
図2
図3