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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】燃料電池車両および予測方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04537 20160101AFI20241007BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20241007BHJP
   B60L 50/75 20190101ALI20241007BHJP
   H01M 8/00 20160101ALI20241007BHJP
   H01M 8/04313 20160101ALI20241007BHJP
   H01M 8/0438 20160101ALI20241007BHJP
【FI】
H01M8/04537
B60L3/00 S
B60L50/75
H01M8/00 A
H01M8/00 Z
H01M8/04313
H01M8/0438
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022052680
(22)【出願日】2022-03-29
(65)【公開番号】P2023145822
(43)【公開日】2023-10-12
【審査請求日】2022-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 貴春
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健太
(72)【発明者】
【氏名】望月 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】山中 優
(72)【発明者】
【氏名】福西 佑紀
【審査官】藤森 一真
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-100346(JP,A)
【文献】特開2015-122901(JP,A)
【文献】特開2020-065365(JP,A)
【文献】特開2022-048745(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109753697(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第110861507(CN,A)
【文献】特開2001-069614(JP,A)
【文献】国際公開第2019/030911(WO,A1)
【文献】特開2020-092520(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00 - 3/12
B60L 7/00 - 13/00
B60L 15/00 - 58/40
H01M 8/04 - 8/0668
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素を貯蔵する水素タンクと、前記水素を用いて発電する燃料電池と、バッテリと、前記燃料電池により発電または前記バッテリから供給された電力を用いて駆動する駆動源とを備える燃料電池車両であって、
所定のタイミングから現在までの間に前記燃料電池が出力した出力電流の第1総量を算出する第1電流量算出部と、
前記所定のタイミングから現在までの間に前記水素タンクが前記燃料電池に出力した前記水素の総量を算出する水素量算出部と、
前記水素タンクに現在残っている水素残量を取得する残量取得部と、
前記第1総量と、前記水素の総量と、前記水素残量とに基づいて、前記燃料電池が供給できる電流量である予測電流量を予測する電流量予測部と、
前記所定のタイミングから現在までの間に前記燃料電池車両が走行した走行総距離を算出する走行距離算出部と、
前記第1総量と、前記走行総距離とに基づいて、前記駆動源に供給された電流の総量あたりの前記燃料電池車両の走行距離を示す電費を算出する電費算出部と、
前記バッテリの残容量を取得する残容量取得部と、
前記予測電流量と、前記電費と、前記残容量とに基づいて、前記燃料電池車両が走行可能な航続可能距離を算出する可能距離算出部と、
を備え
前記可能距離算出部は、前記電費と、前記予測電流量とに基づいて、前記燃料電池のみから前記駆動源に供給される電流によって前記燃料電池車両を走行させる場合における前記航続可能距離である第1航続可能距離を算出可能である、燃料電池車両。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池車両であって、
前記所定のタイミングから現在までの間に前記バッテリが出力した出力電流の第2総量を算出する第2電流量算出部を備え、
前記電費算出部は、前記第1総量と、前記走行総距離と、前記第2総量とに基づいて、前記電費を算出する、燃料電池車両。
【請求項3】
請求項1または2に記載の燃料電池車両であって、
前記可能距離算出部は、前記電費と、前記残容量とに基づいて、前記バッテリのみから前記駆動源に供給される電流によって前記燃料電池車両を走行させる場合における前記航続可能距離である第2航続可能距離を算出可能である、燃料電池車両。
【請求項4】
請求項1~のいずれか1項に記載の燃料電池車両であって、
前記可能距離算出部は、前記電費と、前記予測電流量と、前記残容量とに基づいて、前記バッテリおよび前記燃料電池の両方から前記駆動源に供給される電流によって前記燃料電池車両を走行させる場合における前記航続可能距離である第3航続可能距離を算出可能である、燃料電池車両。
【請求項5】
請求項1~のいずれか1項に記載の燃料電池車両であって、
前記航続可能距離を表示する表示部を備える、燃料電池車両。
【請求項6】
水素を貯蔵する水素タンクと、前記水素を用いて発電する燃料電池と、バッテリと、前記燃料電池により発電または前記バッテリから供給された電力を用いて駆動する駆動源とを備える燃料電池車両の前記燃料電池が供給できる電流量を予測する予測方法であって、
所定のタイミングから現在までの間に前記燃料電池が出力した出力電流の第1総量を算出する第1電流量算出ステップと、
前記所定のタイミングから現在までの間に前記水素タンクが前記燃料電池に出力した前記水素の総量を算出する水素量算出ステップと、
前記水素タンクに現在残っている水素残量を取得する残量取得ステップと、
前記第1総量と、前記水素の総量と、前記水素残量とに基づいて、前記燃料電池が供給できる電流量である予測電流量を予測する電流量予測ステップと、
前記所定のタイミングから現在までの間に前記燃料電池車両が走行した走行総距離を算出する走行距離算出ステップと、
前記第1総量と、前記走行総距離とに基づいて、前記駆動源に供給された電流の総量あたりの前記燃料電池車両の走行距離を示す電費を算出する電費算出ステップと、
前記バッテリの残容量を取得する残容量取得ステップと、
前記予測電流量と、前記電費と、前記残容量とに基づいて、前記燃料電池車両が走行可能な航続可能距離を算出する可能距離算出ステップと、
を含み、
前記可能距離算出ステップでは、前記電費と、前記予測電流量とに基づいて、前記燃料電池のみから前記駆動源に供給される電流によって前記燃料電池車両を走行させる場合における前記航続可能距離である第1航続可能距離を算出可能である、予測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池が供給可能な電流量を予測する燃料電池車両と、予測方法と、に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、より多くの人々が手ごろで信頼でき、持続可能かつ先進的なエネルギーへのアクセスを確保するため、エネルギーの効率化に貢献する燃料電池に関する研究開発が行われている。
【0003】
特許文献1には、燃料電池を備える燃料電池車両の航続可能距離を算出する方法が開示されている。その方法によると、燃料電池車両の燃費に基づいて、燃料電池車両の航続可能距離が算出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2021-118658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、燃料電池に関する技術においては、燃費に基づいて航続可能距離を正確に算出することが難しい場合がある。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、水素を貯蔵する水素タンクと、前記水素を用いて発電する燃料電池と、前記燃料電池が発電した電力を用いて駆動する駆動源とを備える燃料電池車両であって、所定のタイミングから現在までの間に前記燃料電池が出力した出力電流の第1総量を算出する第1電流量算出部と、前記所定のタイミングから現在までの間に前記水素タンクが前記燃料電池に出力した水素の総量を算出する水素量算出部と、前記水素タンクに現在残っている水素残量を取得する残量取得部と、前記出力電流の第1総量と、前記水素の総量と、前記水素残量とに基づいて、前記燃料電池が供給できる電流量を予測する電流量予測部と、を備える、燃料電池車両である。
【0008】
本発明の第2の態様は、水素を貯蔵する水素タンクと、前記水素を用いて発電する燃料電池と、前記燃料電池が発電した電力を用いて駆動する駆動源とを含む燃料電池車両の前記燃料電池が供給できる電流量を予測する予測方法であって、所定のタイミングから現在までの間に前記燃料電池が出力した出力電流の第1総量を算出する第1電流量算出ステップと、前記所定のタイミングから現在までの間に前記水素タンクが前記燃料電池に出力した水素の総量を算出する水素量算出ステップと、前記水素タンクに現在残っている水素残量を取得する残量取得ステップと、前記出力電流の第1総量と、前記水素の総量と、前記水素残量とに基づいて、前記燃料電池が供給できる電流量を予測する電流量予測ステップと、を含む、予測方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、燃料電池車両の燃料電池が駆動源に供給できる電流量を正確に予測することができるので、その電流量に基づいて航続可能距離を正確に算出することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施形態に係る車両の構成図である。
図2図2は、予測装置の構成図である。
図3図3は、実施形態に係る予測方法の流れを例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[実施形態]
図1は、実施形態に係る車両10の構成図である。
【0012】
車両10は、水素タンク12と、燃料電池14と、バッテリ16と、駆動源18と、表示部20と、予測装置22とを備える燃料電池車両である。
【0013】
水素タンク12は、水素(水素ガス)を貯蔵するタンクである。水素タンク12に貯蔵された水素は、燃料電池14に供給される。
【0014】
燃料電池14は、水素タンク12から供給される水素を用いて発電する発電装置である。燃料電池14は、供給される水素と、酸素との化学反応を利用して発電する。燃料電池14には、例えば、酸素を含む空気が供給される。燃料電池14は、発電することで、電流を出力する。燃料電池14の出力電流は、駆動源18またはバッテリ16に入力される。
【0015】
バッテリ16は、電力を蓄える二次電池である。バッテリ16は、電流が供給されることで、充電される。充電したバッテリ16は、必要に応じて、駆動源18に電流を供給することができる。
【0016】
駆動源18は、例えば回転電機である。駆動源18は、供給される電流を用いて駆動する。駆動源18は、駆動することで、例えば所定の伝達機構を介して車両10の車輪を回転させる。これにより、車両10は走行する。すなわち、車両10は、駆動源18の駆動に応じて走行する。所定の伝達機構は、例えばトランスミッションを含む。車輪と所定の伝達機構との図示は省略する。
【0017】
また、駆動源18に含まれる回転電機は、車両10を減速させる場合に、車輪の回転力(回生力)を用いて発電してもよい。回転電機の発電によって発生した電流は、バッテリ16に供給されてもよい。
【0018】
表示部20は、例えばMID(Multi Information Display)である。表示部20は、各種情報を適宜表示する表示画面201を有する。なお、表示部20は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等でもよい。
【0019】
なお、車両10は、表示画面201に表示させる情報の種類を切り替えるために乗員が操作する操作部をさらに備えてもよい。
【0020】
図2は、予測装置22の構成図である。
【0021】
予測装置22は、燃料電池14が発電できる積算電流量を予測するコンピュータである。予測装置22は、例えば車載ECU(Electronic Control Device)に含まれる。予測装置22は、記憶部24と、演算部26とを備える。
【0022】
記憶部24は、記憶回路を備える。この記憶回路は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等のメモリを1以上含む。
【0023】
記憶部24は、予測プログラム28を記憶する。予測プログラム28は、本実施形態に係る予測方法を予測装置22に実行させるためのプログラムである。
【0024】
なお、記憶部24が記憶するデータは、予測プログラム28に限定されない。記憶部24は、必要に応じて各種データを記憶してもよい。記憶部24が記憶する各種データのうち、いくつかは、追って説明する。
【0025】
演算部26は、処理回路を備える。この処理回路は、例えば1以上のプロセッサを含む。ただし、演算部26の処理回路は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の集積回路を含んでもよい。また、演算部26の処理回路は、ディスクリートデバイスを含んでもよい。
【0026】
演算部26は、第1電流量算出部30と、水素量算出部32と、残量取得部34と、電流量予測部36と、走行距離算出部38と、第2電流量算出部40と、電費算出部42と、残容量取得部44と、可能距離算出部46と、表示制御部48とを備える。
【0027】
第1電流量算出部30と、水素量算出部32と、残量取得部34と、電流量予測部36と、走行距離算出部38とは、演算部26のプロセッサが予測プログラム28を実行することで実現される。同様に、第2電流量算出部40と、電費算出部42と、残容量取得部44と、可能距離算出部46と、表示制御部48とは、演算部26のプロセッサが予測プログラム28を実行することで実現される。ただし、前述の集積回路、ディスクリートデバイス等は、第1電流量算出部30と、水素量算出部32と、残量取得部34と、電流量予測部36と、走行距離算出部38との少なくとも一部を実現してもよい。また、前述の集積回路、ディスクリートデバイス等は、第2電流量算出部40と、電費算出部42と、残容量取得部44と、可能距離算出部46と、表示制御部48との少なくとも一部を実現してもよい。
【0028】
第1電流量算出部30は、燃料電池14が所定期間のうちに出力した出力電流の総量を算出する。所定期間の間に燃料電池14が出力した出力電流の総量は、以下の説明において、第1総量CA1とも記載される。算出された第1総量CA1は、記憶部24に記憶されてもよい。
【0029】
所定期間は、例えば、所定のタイミングから現在までの期間である。この所定のタイミングは、例えば、車両10の始動時である。ただし、所定のタイミングは、車両10の走行中でもよい。
【0030】
第1総量CA1は、例えば、電流センサ50(図1参照)が燃料電池14の出力電流に応じて出力する検出信号に基づいて算出される。第1電流量算出部30は、電流センサ50が検出した電流を積算することで、第1総量CA1を算出する。
【0031】
水素量算出部32は、水素タンク12が所定期間のうちに燃料電池14に出力した水素の総量CHGを算出する。算出された水素の総量CHGは、記憶部24に記憶されてもよい。
【0032】
水素の総量CHGは、例えば、流量センサ52(図1参照)が水素タンク12から出力される水素の流量に応じて出力する検出信号に基づいて算出される。水素量算出部32は、流量センサ52が検出した流量を積算することで、水素の総量CHGを算出する。
【0033】
なお、水素の総量CHGは、水素タンク12内のガス圧を検出する圧力センサを用いて取得されてもよい。つまり、水素タンク12から水素が出力されることで、水素タンク12内のガス圧が変化する。そのガス圧の変化量に基づくことで、水素の流量を算出することができる。
【0034】
残量取得部34は、水素タンク12に現在残っている水素残量RHGを取得する。取得された水素残量RHGは、記憶部24に記憶されてもよい。
【0035】
水素残量RHGは、水素の総量CHGと同様に、流量センサ52、または圧力センサの検出信号に基づいて取得することができる。
【0036】
電流量予測部36は、第1総量CA1と、水素の総量CHGと、水素残量RHGとに基づいて、燃料電池14が供給できる電流量を予測する。電流量予測部36が予測する電流量は、以下の説明において、予測電流量CAPとも記載される。
【0037】
予測電流量CAPは、第1総量CA1を水素の総量CHGで割った商と、水素残量RHGとの積である。電流量予測部36は、例えば次の数式(1)に基づいて予測電流量CAPを予測する。ただし、数式(1)のうち、CAPは、予測電流量CAP(単位:アンペア時)を示す。CA1は、所定期間の第1総量CA1(単位:アンペア時)を示す。CHGは、所定期間の水素の総量CHG(単位:グラム)を示す。RHGは、現在の水素残量RHG(単位:グラム)を示す。
【0038】
【数1】
【0039】
算出された予測電流量CAPは、記憶部24に記憶されてもよい。
【0040】
電流量予測部36によれば、予測電流量CAPが正確に予測される。予測電流量CAPは、以下にさらに説明されるように、車両10の航続可能距離CDを算出することに用いることができる。
【0041】
走行距離算出部38は、走行距離TDを算出する。走行距離TDは、所定期間のうちに車両10が走行した距離である。算出された走行距離TDは、記憶部24に記憶されてもよい。
【0042】
走行距離算出部38は、例えば、車速(速度)と所定期間(時間)との積を、走行距離TDとして算出する。車速は、例えば、車速センサ54(図1参照)が駆動源18の出力に応じて出力する検出信号に基づいて取得される。
【0043】
第2電流量算出部40は、バッテリ16が所定期間のうちに出力した出力電流の総量を算出する。バッテリ16が所定期間のうちに出力した出力電流の総量は、以下の説明において第2総量CA2とも記載される。算出された第2総量CA2は、記憶部24に記憶されてもよい。
【0044】
バッテリ16の出力電流は、例えば、電流センサ56(図1参照)がバッテリ16の出力電流に応じて出力する検出信号に基づいて取得される。第2電流量算出部40は、電流センサ56が検出した電流を積算することで、第2総量CA2を算出する。
【0045】
電費算出部42は、第1総量CA1と、第2総量CA2と、走行距離TDとに基づいて、車両10の電費EPCを算出する。
【0046】
電費EPCは、第1総量CA1と第2総量CA2との和で走行距離TDを割った商である。電費算出部42は、例えば次の数式(2)に基づいて電費EPCを算出する。ただし、数式(2)のうち、EPCは、電費EPC(単位:メートル/アンペア時)を示す。CA2は、第2総量CA2(単位:アンペア時)を示す。TDは、所定期間の車両10の走行距離TD(単位:メートル)を示す。
【0047】
【数2】
【0048】
数式(2)によれば、電費EPCは、単位電流量当たりの車両10の走行距離を示す。算出された電費EPCは、記憶部24に記憶されてもよい。
【0049】
残容量取得部44は、バッテリ16の現在の残容量CA3を取得する。残容量CA3は、例えば、残量センサ58(図1参照)がバッテリ16の電圧と電流とに応じて出力する検出信号に基づいて取得される。取得された残容量CA3は、記憶部24に記憶されてもよい。
【0050】
可能距離算出部46は、予測電流量CAPと、電費EPCと、残容量CA3とに基づいて、車両10の航続可能距離CDを算出する。航続可能距離CDは、燃料電池14とバッテリ16との両方を用いる場合に車両10が航続可能な距離を示す。算出された航続可能距離CDは、記憶部24に記憶されてもよい。
【0051】
航続可能距離CDは、電費EPCと残容量CA3との積と、電費EPCと予測電流量CAPとの積と、の和である。したがって、可能距離算出部46は、例えば次の数式(3)に基づいて、航続可能距離CDを算出する。ただし、数式(3)において、CDは、航続可能距離CD(単位:メートル)を示す。CA3は、バッテリ16の現在の残容量CA3(単位:アンペア時)を示す。
【0052】
【数3】
【0053】
数式(3)によれば、航続可能距離CDは、電流量(第1総量CA1、第2総量CA2)と、電費EPCとに基づいて求まる。したがって、本実施形態によれば、車両10の燃費を算出することなしに、車両10の航続可能距離CDを算出することができる。
【0054】
なお、燃費に基づいて車両10の航続可能距離CDを算出する方法がある。つまり、燃費は、水素の単位重量当たりの、車両10の走行距離である。従来は、この燃費と、水素タンク12の水素残量RHGとの積に基づいて、航続可能距離CDが算出された(特許文献1も参照)。
【0055】
ただし、燃費は、車両10の走行中に変化する。例えば、前述の回転電機が回生力を用いて発電する。これにより、(1)バッテリ16が充電される。充電されたバッテリ16を用いて車両10が走行する場合、燃料電池14の発電量が減少する。その結果、前記(1)の後において、(2)燃費が向上する。
【0056】
ここで、上記(1)と(2)との間の時間差が問題になる。つまり、バッテリ16が充電されてから、燃料電池14の発電量が減少するまでの間に、時間差がある。したがって、上記(1)の段階において、上記(2)の後の燃費を用いて航続可能距離CDを算出することは不可能である。その結果、上記(1)と(2)との間において、燃費に基づいて算出される航続可能距離CDの正確さは失われる。
【0057】
その点、本実施形態によれば、燃料電池14の第1総量CA1と、残容量CA3との各々の変化を、航続可能距離CDに速やかに反映させることができる。これにより、算出される航続可能距離CDの正確さを維持することができる。
【0058】
表示制御部48は、表示部20を制御して、航続可能距離CDを表示画面201に表示させる。これにより、車両10の乗員は、航続可能距離CDを知ることができる。ただし、表示制御部48は、表示部20を制御して、予測電流量CAP、電費EPC等を表示画面201にさらに表示させてもよい。
【0059】
また、表示制御部48は、乗員の指示に応じて、予測電流量CAP、電費EPC等の表示を切り替えてもよい。
【0060】
図3は、実施形態に係る予測方法の流れを例示するフローチャートである。
【0061】
予測装置22は、図3の予測方法を実行可能である。図3の予測方法は、第1電流量算出ステップS1と、水素量算出ステップS2と、残量取得ステップS3と、走行距離算出ステップS4とを含む。また、図3の予測方法は、第2電流量算出ステップS5と、残容量取得ステップS6と、電流量予測ステップS7と、電費算出ステップS8と、可能距離算出ステップS9と、表示制御ステップS10とをさらに含む。
【0062】
ただし、第1電流量算出ステップS1と、水素量算出ステップS2と、残量取得ステップS3と、走行距離算出ステップS4と、第2電流量算出ステップS5と、残容量取得ステップS6とは、順不同である。
【0063】
第1電流量算出ステップS1では、第1電流量算出部30が、第1総量CA1を算出する。第1電流量算出部30は、電流センサ50の検出信号に基づいて、第1総量CA1を算出することができる。
【0064】
水素量算出ステップS2では、水素量算出部32が、水素の総量CHGを算出する。水素量算出部32は、流量センサ52の検出信号に基づいて、水素の総量CHGを算出することができる。ただし、流量センサ52の代わりに、圧力センサが用いられてもよい。
【0065】
残量取得ステップS3では、残量取得部34が、水素残量RHGを取得する。残量取得部34は、流量センサ52、または圧力センサの検出信号に基づいて、水素残量RHGを取得することができる。
【0066】
走行距離算出ステップS4では、走行距離算出部38が、走行距離TDを算出する。走行距離算出部38は、車速センサ54の検出信号に基づいて、走行距離TDを取得することができる。
【0067】
第2電流量算出ステップS5では、第2電流量算出部40が、第2総量CA2を算出する。第2電流量算出部40は、電流センサ56の検出信号に基づいて、第2総量CA2を算出することができる。
【0068】
残容量取得ステップS6では、残容量取得部44が、残容量CA3を取得する。残容量取得部44は、残量センサ58の検出信号に基づいて、残容量CA3を取得することができる。
【0069】
電流量予測ステップS7では、電流量予測部36が、第1電流量算出ステップS1と、水素量算出ステップS2と、残量取得ステップS3との実行結果に基づいて予測電流量CAPを予測する。電流量予測部36は、例えば前述の数式(1)を用いて、予測電流量CAPを予測することができる。
【0070】
電流量予測ステップS7が実行されることで、燃料電池14が供給できる電流量が予測される。
【0071】
電流量予測ステップS7は、第1電流量算出ステップS1と、水素量算出ステップS2と、残量取得ステップS3との全てが完了した後に、実行される。言い換えると、電流量予測ステップS7は、走行距離算出ステップS4と、第2電流量算出ステップS5と、残容量取得ステップS6とよりも先に開始されてもよい。
【0072】
電費算出ステップS8では、電費算出部42が、第1電流量算出ステップS1と、走行距離算出ステップS4と、第2電流量算出ステップS5との実行結果に基づいて電費EPCを算出する。電費算出部42は、例えば前述の数式(2)を用いて、電費EPCを算出することができる。
【0073】
可能距離算出ステップS9では、可能距離算出部46が、残容量取得ステップS6と、電流量予測ステップS7と、電費算出ステップS8との実行結果に基づいて、航続可能距離CDを算出する。可能距離算出部46は、例えば前述の数式(3)を用いて、航続可能距離CDを算出することができる。
【0074】
表示制御ステップS10は、表示制御部48が、表示部20を制御して、可能距離算出ステップS9で算出された航続可能距離CDを表示画面201に表示させる。
【0075】
表示制御ステップS10が実行されることで、車両10の乗員は、航続可能距離CDを知る。
【0076】
[変形例]
以下には、上記実施形態に係る変形例が記載される。ただし、上記実施形態と重複する説明は、以下の説明では可能な限り省略される。上記実施形態で説明済みの構成要素には、特に断らない限り、上記実施形態と同一の参照符号が付される。
【0077】
(変形例1)
車両10は、FCVCU(FC Voltage Control Unit)をさらに備えてもよい。FCVCUは、例えば昇圧コンバータを含む。FCVCUは、燃料電池14と、回転電機(インバータ)と、の間に配される。FCVCUは、第1電流(電圧)を調整して、駆動源18に出力する。ただし、FCVCUが調整した第1電流は、バッテリ16に出力されてもよい。
【0078】
FCVCUを備える車両10において、第1電流量算出部30は、FCVCUに調整された後の第1電流の総量を、第1総量CA1として算出してもよい。したがって、電流センサ50は、FCVCUから出力された電流を検出してもよい。
【0079】
(変形例2)
可能距離算出部46は、電費EPCと、予測電流量CAPとに基づいて、車両10がバッテリ16の残容量CA3を回転電機に供給することなく走行可能な航続可能距離CD(CD2)を算出してもよい。
【0080】
なお、数式(3)中のCA3にゼロを代入することで、航続可能距離CD2を算出するための次の数式(4)が得られる。数式(4)のうち、CD2は、航続可能距離CD2を示す。その他の文字は数式(3)に準ずる。
【0081】
【数4】
【0082】
表示制御部48は、表示部20を制御して、航続可能距離CD2を表示画面201に表示させてもよい。
【0083】
(変形例3)
変形例2に関連して、車両10は、バッテリ16を備えなくてもよい。その場合、第2電流量算出部40と、電流センサ56と、残容量取得部44と、残量センサ58とは、車両10の構成から省略される。
【0084】
また、本変形例の場合、電費EPCの算出方法が実施形態と異なる。具体的に、本変形例に係る電費EPCは、第1総量CA1で走行距離TDを割った商である。したがって、本変形例に係る電費算出部42は、次の数式(5)に基づいて電費EPCを算出する。なお、数式(5)のうち、EPC2は、本変形例に係る電費EPCを示す。
【0085】
【数5】
【0086】
(変形例4)
可能距離算出部46は、電費EPCと、バッテリ16の残容量CA3に基づいて、車両10が燃料電池14の発電なしで走行可能な航続可能距離CD(CD3)を算出してもよい。車両10は、例えばEVモードで走行する場合に、残容量CA3に基づいて、燃料電池14の発電なしで走行する。
【0087】
なお、数式(3)中のCAPにゼロを代入することで、航続可能距離CD3を算出するための次の数式(6)が得られる。数式(6)のうち、CD3は、航続可能距離CD3を示す。
【0088】
【数6】
【0089】
表示制御部48は、表示部20を制御して、航続可能距離CD3を表示画面201に表示させてもよい。
【0090】
(複数の変形例の組み合わせ)
前述された複数の変形例は、矛盾しない範囲内において適宜組み合わされてもよい。
【0091】
[実施形態から得られる発明]
以下には、上記実施形態および変形例から把握しうる発明が記載される。
【0092】
<第1の発明>
水素を貯蔵する水素タンク(12)と、前記水素を用いて発電する燃料電池(14)と、前記燃料電池が発電した電力を用いて駆動する駆動源(18)とを備える燃料電池車両(10)であって、所定のタイミングから現在までの間に前記燃料電池が出力した出力電流の第1総量(CA1)を算出する第1電流量算出部(30)と、前記所定のタイミングから現在までの間に前記水素タンクが前記燃料電池に出力した水素の総量(CHG)を算出する水素量算出部(32)と、前記水素タンクに現在残っている水素残量(RHG)を取得する残量取得部(34)と、前記出力電流の第1総量と、前記水素の総量と、前記水素残量とに基づいて、前記燃料電池が供給できる電流量(CAP)を予測する電流量予測部(36)と、を備える、燃料電池車両である。
【0093】
これにより、燃料電池車両の燃料電池が駆動源に供給できる電流量を正確に予測することができる。
【0094】
第1の発明は、前記所定のタイミングから現在までの間に前記燃料電池車両が走行した走行距離(TD)を算出する走行距離算出部(38)と、前記出力電流の第1総量と、前記走行距離とに基づいて、前記燃料電池車両の電費(EPC)を算出する電費算出部(42)と、を備えてもよい。これにより、燃料電池の出力電流量を反映した電費が算出される。
【0095】
第1の発明は、前記駆動源に電力を供給するバッテリ(16)と、前記所定のタイミングから現在までの間に前記バッテリが出力した出力電流の第2総量(CA2)を算出する第2電流量算出部(40)と、を備え、前記電費算出部は、前記出力電流の第1総量と、前記走行距離と、前記第2総量とに基づいて、前記燃料電池車両の電費を算出してもよい。これにより、燃料電池の出力電流量と、バッテリの出力電流量との両方を反映した電費が算出される。
【0096】
第1の発明は、前記燃料電池車両の電費と、前記電流量予測部が予測した電流量とに基づいて、前記燃料電池のみで走行可能な航続可能距離(CD2)を算出する可能距離算出部(46)を備えてもよい。これにより、航続可能距離を正確に予測することができる。
【0097】
第1の発明は、前記バッテリの残容量(CA3)を取得する残容量取得部(44)を備え、前記燃料電池車両の電費と、前記バッテリの残容量とに基づいて、前記バッテリのみで走行可能な航続可能距離(CD3)を算出する可能距離算出部(46)を備えてもよい。これにより、航続可能距離を正確に予測することができる。
【0098】
前記可能距離算出部は、前記燃料電池車両の電費と、前記電流量予測部が予測した電流量と、前記バッテリの残容量とに基づいて、前記バッテリおよび前記燃料電池の両方で走行可能な航続可能距離(CD)を算出してもよい。これにより、例えば燃料電池車両をEVモードで走行させる場合の航続可能距離を、正確に予測することができる。
【0099】
第1の発明は、前記航続可能距離を表示する表示部(20)を備えてもよい。これにより、燃料電池車両の乗員は、航続可能距離を知る。
【0100】
<第2の発明>
水素を貯蔵する水素タンク(12)と、前記水素を用いて発電する燃料電池(14)と、前記燃料電池が発電した電力を用いて駆動する駆動源(18)とを含む燃料電池車両(10)の前記燃料電池が供給できる電流量をコンピュータが予測する予測方法であって、所定のタイミングから現在までの間に前記燃料電池が出力した出力電流の第1総量(CA1)を算出する第1電流量算出ステップ(S1)と、前記所定のタイミングから現在までの間に前記水素タンクが前記燃料電池に出力した水素の総量(CHG)を算出する水素量算出ステップ(S2)と、前記水素タンクに現在残っている水素残量(RHG)を取得する残量取得ステップ(S3)と、前記出力電流の第1総量と、前記水素の総量と、前記水素残量とに基づいて、前記燃料電池が供給できる電流量を予測する電流量予測ステップ(S7)と、を含んでもよい。
【0101】
これにより、燃料電池車両の燃料電池が駆動源に供給できる電流量を正確に予測することができる。
【符号の説明】
【0102】
30…第1電流量算出部 32…水素量算出部
34…残量取得部 36…電流量予測部
38…走行距離算出部 40…第2電流量算出部
42…電費算出部 44…残容量取得部
46…可能距離算出部 CA1…第1総量
CA2…第2総量 CAP…予測電流量(電流量)
CD、CD2、CD3…航続可能距離 CHG…水素の総量
EPC…電費 RHG…水素残量
TD…走行距離
図1
図2
図3