(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】プロセスカートリッジ及び電子写真装置
(51)【国際特許分類】
G03G 9/097 20060101AFI20241007BHJP
G03G 9/087 20060101ALI20241007BHJP
G03G 9/093 20060101ALI20241007BHJP
G03G 5/147 20060101ALI20241007BHJP
【FI】
G03G9/097 372
G03G9/087
G03G9/093
G03G5/147 503
(21)【出願番号】P 2022147173
(22)【出願日】2022-09-15
【審査請求日】2023-08-31
(31)【優先権主張番号】P 2021166515
(32)【優先日】2021-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022129653
(32)【優先日】2022-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100136799
【氏名又は名称】本田 亜希
(72)【発明者】
【氏名】見目 敬
(72)【発明者】
【氏名】関戸 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】浦谷 梢
(72)【発明者】
【氏名】井上 洸紀
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 達也
【審査官】中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-021941(JP,A)
【文献】特開2020-109506(JP,A)
【文献】特開2009-229495(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/097
G03G 9/087
G03G 9/093
G03G 5/147
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子写真装置本体に着脱自在であるプロセスカートリッジであって、
該プロセスカートリッジは、
電子写真感光体と、
トナーを収容しているトナー収容部を有し、該電子写真感光体の表面に該トナーを供給する現像手段と、
を有し、
該電子写真感光体は、導電性支持体、及び、該導電性支持体の上に形成された、感光層と表面保護層とをこの順で有し、
該表面保護層は、導電性粒子を含有し、
該導電性粒子が、酸化チタン粒子であり、
該酸化チタン粒子が、ニオブ原子含有酸化チタン粒子であり、
該導電性粒子の含有量が、該表面保護層の全体積に対して、5.0体積%以上70.0体積%以下であり、
該表面保護層の体積抵抗率が、1.0×10
9Ω・cm以上1.0×10
14Ω・cm以下であり、
該トナー収容部に収容された該トナーが、以下の(i)または(ii):
(i)結着樹脂を含有するトナー粒子、及び、有機ケイ素重合体粒子を有するトナーである、
(ii)結着樹脂を含有し、表面に有機ケイ素重合体を有するトナー粒子を有するトナーである、
の規定を満たすものであり、
該(i)の規定を満たす場合における該有機ケイ素重合体粒子、または、該(ii)の規定を満たす場合における該有機ケイ素重合体が、
T3単位構造を有するケイ素原子と、
T2単位構造を有するケイ素原子及びT1単位構造を有するケイ素原子からなる群より選択される少なくとも一の単位構造と、
を有しており、
該(i)の規定を満たす場合における該有機ケイ素重合体粒子、または、該(ii)の規定を満たす場合における該有機ケイ素重合体は、
29Si-NMRの測定において、全ケイ素原子に由来するピークの合計面積に対する、T2単位構造を有するケイ素原子に由来するピークの面積とT1単位構造を有するケイ素原子に由来するピークの面積との合計面積の割合が、0.10以上0.40以下である、
ことを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項2】
前記有機ケイ素重合体粒子、または、前記有機ケイ素重合体の
29Si-NMRの測定において、前記有機ケイ素重合体粒子、または前記有機ケイ素重合体に含有される全ケイ素原子に由来するピークの合計面積に対する、T3単位構造を有するケイ素原子に由来するピークの面積の割合が、0.50以上0.90以下である請求項1に記載のプロセスカートリッジ。
【請求項3】
前記トナーが、結着樹脂を含有するトナー粒子、及び、有機ケイ素重合体粒子を有するトナーであり、前記有機ケイ素重合体粒子の長径が30nm以上300nm以下である請求項1に記載のプロセスカートリッジ。
【請求項4】
前記有機ケイ素重合体粒子の水洗法における、前記トナー粒子に対する固着率が25%以下である請求項3に記載のプロセスカートリッジ。
【請求項5】
前記トナーの平均円形度が、0.950以上0.990以下である、請求項1に記載のプロセスカートリッジ。
【請求項6】
前記有機ケイ素重合体粒子、または、前記有機ケイ素重合体中のT1単位構造及びT2単位構造に含まれる、アルコキシシラン構造及びシラノール構造の合計含有量に対する、シラノール構造の含有の割合が、98質量%以上である請求項1に記載のプロセスカートリッジ。
【請求項7】
前記ニオブ原子含有酸化チタン粒子は、粒子中心部における、ニオブ原子濃度/チタン原子濃度で算出される濃度比率に対して、粒子表面から測定粒子の最大径の5%内部における、ニオブ原子濃度/チタン原子濃度で算出される濃度比率が、2.0倍以上である請求項
1に記載のプロセスカートリッジ。
【請求項8】
前記ニオブ原子含有酸化チタン粒子のニオブ原子含有量が、前記ニオブ原子含有酸化チタン粒子の全質量に対して、2.6質量%以上10.0質量%以下である請求項
1に記載のプロセスカートリッジ。
【請求項9】
前記導電性粒子の含有量が、前記表面保護層の全体積に対して、5.0体積%以上40.0体積%以下であり、
前記表面保護層の体積抵抗率が、1.0×10
11Ω・cm以上1.0×10
14Ω・cm以下である請求項1に記載のプロセスカートリッジ。
【請求項10】
前記現像手段が、前記トナーを担持させたトナー担持体を前記電子写真感光体に接触さ せることにより現像を行う接触現像装置である請求項1に記載のプロセスカートリッジ。
【請求項11】
請求項1~1
0のいずれか1項に記載のプロセスカートリッジを有する電子写真装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体を有するプロセスカートリッジ及び電子写真装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真装置(以下、「画像形成装置」とも呼ぶ。)には、高速化、小型化、長寿命化が求められており、これらに対応する為に、トナーに関しては、高速化に耐えうる高耐久性と長寿命で画質を安定化させる性能がより一層要求されている。
【0003】
小型化の観点から様々なユニットの省スペース化が試みられてきた。特にトナーの転写性を向上させれば、感光体ドラム上の転写残トナーを回収する廃トナー容器を小型化できるため、様々な転写性向上の試みがなされてきている。
【0004】
転写工程では、感光体ドラム上のトナーが紙などのメディアに転写される。転写性向上のためには、感光体ドラムからトナーを離れ易くするため、感光体ドラムとトナー間の付着力を下げることが重要である。そのための技術として、粒径100nm~300nm程度の大粒径シリカ粒子を外添する技術が知られている。
【0005】
一方、大粒径シリカ粒子を外添するとトナーの流動性が低下する。その結果、帯電性、特に帯電の立ち上がりや高温高湿環境下における帯電性に課題が出る。
【0006】
その課題に対し、特許文献1には、小粒径シリカ粒子による高い帯電性及び流動性の向上効果と、大粒径シリカ粒子によるシリカ粒子の埋め込みの抑制効果の両立を狙ったトナーが開示されている。
特許文献2には、大粒径シリカ粒子に粒径を特定した有機ケイ素重合体微粒子を併用し、さらに大粒径シリカ粒子と有機ケイ素重合体微粒子をトナー粒子に対して特定の固着率に制御することにより、転写性の向上と、優れた流動性と、部材汚染抑制性とを両立できるトナーが開示されている。
特許文献3には、電子写真感光体の保護層にニオブ原子を含有したアナターゼ型酸化チタンを含有することで、感光体表面の保護層の機械的強度とともに、高温高湿環境下等の環境下でも安定した電気特性を維持できる電子写真感光体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2010-249995号公報
【文献】特開2020-106723号公報
【文献】特開2009-229495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載された構成では、大粒径シリカ粒子により耐久性能は向上するものの、トナーの帯電性や耐久後半での耐久性に課題がある。
【0009】
特許文献2に記載された構成では、確かに、耐久後半での耐久性は改善されている。しかしながら、本発明者らは、更に鋭意検討したところ、画像形成装置のプロセススピードが高速化した際に、電子写真感光体に現像されたトナーの一部が、帯電量が低く、その一部のトナーが飛散していることを確認した。これにより、特にハーフトーン画像を形成した際に、その帯電不良のトナーが飛散して、ハーフトーン画像にガサツキが生じていることがわかった。
【0010】
特許文献3に記載された構成では、確かに表面保護層の機械的強度は向上する。しかしながら、本発明者らは、更に鋭意検討したところ、画像形成装置のプロセスが高速化した際において、ハーフトーン画像のガサツキに改善の余地があることを確認した。これは、電子写真感光体からトナーへ電荷注入することにより、トナーの帯電量を高め、トナーの帯電量分布をシャープ化するような機構がないため生じたと考えている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的は、以下の本発明によって達成される。
本発明のプロセスカートリッジは、
電子写真装置本体に着脱自在であるプロセスカートリッジであって、
該プロセスカートリッジは、
電子写真感光体と、
トナーを収容しているトナー収容部を有し、該電子写真感光体の表面に該トナーを供給する現像手段と、
を有し、
該電子写真感光体は、導電性支持体、及び、該導電性支持体の上に形成された、感光層と表面保護層とをこの順で有し、
該表面保護層は、導電性粒子を含有し、
該導電性粒子の含有量が、該表面保護層の全体積に対して、5.0体積%以上70.0体積%以下であり、
該表面保護層の体積抵抗率が、1.0×109Ω・cm以上1.0×1014Ω・cm以下であり、
該トナー収容部に収容された該トナーが、以下の(i)または(ii):
(i)結着樹脂を含有するトナー粒子、及び、有機ケイ素重合体粒子を有するトナーである、
(ii)結着樹脂を含有し、表面に有機ケイ素重合体を有するトナー粒子を有するトナーである、
の規定を満たすものであり、
該(i)の規定を満たす場合における該有機ケイ素重合体粒子、または、該(ii)の規定を満たす場合における該有機ケイ素重合体が、
T3単位構造を有するケイ素原子と、
T2単位構造を有するケイ素原子及びT1単位構造を有するケイ素原子からなる群より選択される少なくとも一の単位構造と、
を有しており、
該(i)の規定を満たす場合における該有機ケイ素重合体粒子、または、該(ii)の規定を満たす場合における該有機ケイ素重合体は、29Si-NMRの測定において、全ケイ素原子に由来するピークの合計面積に対する、T2単位構造を有するケイ素原子に由来するピークの面積とT1単位構造を有するケイ素原子に由来するピークの面積との合計面積の割合が、0.10以上0.40以下である、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
以上、本発明によれば、転写性の向上とともに、電子写真装置のプロセススピードが更に高速化した際に生ずる、帯電不良に伴うトナー飛散による画像弊害(ハーフトーン画像でのガサツキ)を抑制し得るプロセスカートリッジ及び電子写真装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る電子写真感光体の構成の一例を示す概略図である。
【
図2】本発明に係る電子写真感光体を搭載したプロセスカートリッジ、及び前記プロセスカートリッジを備えた電子写真装置の概略構成の一例を示す図である。
【
図3】電子写真感光体の体積抵抗率を測定する櫛型電極の一例を示す図である。
【
図4】本件実施例に用いたニオブ含有酸化チタンの一例のTEM画像図である。
【
図5】本件実施例に用いたニオブ含有酸化チタンの一例の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のプロセスカートリッジは、電子写真装置本体に着脱自在であるプロセスカートリッジであって、
該プロセスカートリッジは、
電子写真感光体と、
トナーを収容しているトナー収容部を有し、該電子写真感光体の表面に該トナーを供給する現像手段と、
を有し、
該電子写真感光体は、導電性支持体、及び、該導電性支持体の上に形成された、感光層と表面保護層とをこの順で有し、
該表面保護層は、導電性粒子を含有し、
該導電性粒子の含有量が、該表面保護層の全体積に対して、5.0体積%以上70.0体積%以下であり、
該表面保護層の体積抵抗率が、1.0×109Ω・cm以上1.0×1014Ω・cm以下であり、
該トナー収容部に収容された該トナーが、以下の(i)または(ii):
(i)結着樹脂を含有するトナー粒子、及び、有機ケイ素重合体粒子を有するトナーである、
(ii)結着樹脂を含有し、表面に有機ケイ素重合体を有するトナー粒子を有するトナーである、
の規定を満たすものであり、
該(i)の規定を満たす場合における該有機ケイ素重合体粒子、または、該(ii)の規定を満たす場合における該有機ケイ素重合体が、
T3単位構造を有するケイ素原子と、
T2単位構造を有するケイ素原子及びT1単位構造を有するケイ素原子からなる群より選択される少なくとも一の単位構造と、
を有しており、
該(i)の規定を満たす場合における該有機ケイ素重合体粒子、または、該(ii)の規定を満たす場合における該有機ケイ素重合体は、29Si-NMRの測定において、全ケイ素原子に由来するピークの合計面積に対する、T2単位構造を有するケイ素原子に由来するピークの面積とT1単位構造を有するケイ素原子に由来するピークの面積との合計面積の割合が、0.10以上0.40以下である、
ことを特徴とする。
【0015】
本発明者らは、上記プロセスカートリッジにより転写性の向上とともに、画像形成装置のプロセススピードが更に高速化した際に生ずる帯電不良によるトナー飛散による画像弊害(ハーフトーン画像でのガサツキ)を抑制する手法について検討した。
【0016】
本発明者らは、この現象が、画像形成装置のプロセススピードが高速化した際に、電子写真感光体に現像されたトナーの一部が、帯電量が低く、その一部のトナーが飛散することにより発生していることを確認した。これにより、特にハーフトーン画像を形成した際に、その帯電不良のトナーが飛散して、ハーフトーン画像にてガサツキが生じていることがわかった。
【0017】
そこで、本発明者らは、現像剤担持体から電子写真感光体にトナーが現像される直前において、電子写真感光体表面の電荷のごく一部をトナーに電荷注入し、トナーの帯電量を高めとその帯電量分布をシャープにする観点から、画像形成装置のプロセススピードが更に高速化した際に生ずる帯電不良によるトナー飛散による画像弊害(ハーフトーン画像でのガサツキ)を抑制できるプロセスカートリッジについて鋭意検討した。
【0018】
本発明者らは、感光体の表面保護層の表面に適切な量の導電性粒子を含有させ、かつ、感光体の表面保護層の体積抵抗率を制御することで、現像時に感光体表面の電荷のごく一部がトナーへ注入することを可能とした。さらに、トナー粒子表面に、有機ケイ素重合体を存在させ、且つ有機ケイ素重合体の一部にシラノール基を存在させ、そのシラノール基量を制御することで、電子写真感光体表面の電荷が、有機ケイ素重合体を介してトナーに速やかに注入し、トナーの帯電量と帯電量分布をシャープ化することを可能とした。
上記プロセスカートリッジとすることで、転写性は維持しつつ、画像形成装置のプロセススピードが更に高速化した際に生ずる帯電不良を抑制し、トナー飛散による画像弊害(ハーフトーン画像でのガサツキ)を抑制できることがわかった。
【0019】
<本発明に係る感光体>
本発明に係る感光体は、導電性支持体と、感光層と、表面保護層とを有する。表面保護層は導電性粒子を含有しており、導電性粒子の含有量は、表面保護層の全体積に対して5.0体積%以上70.0体積%以下である。さらに、表面保護層の体積抵抗率が1.0×109Ω・cm以上1.0×1014Ω・cm以下であることが特徴である。表面保護層に多くの導電性粒子を含有しているにも関わらず、体積抵抗率を比較的高く維持させているため、帯電保持性は確保しつつも、導電性粒子を介して本発明に係るトナーに電荷が注入することが可能である。
【0020】
導電性粒子の含有量が5.0体積%未満だと、本発明に係るトナーへの電荷注入性が低下するため、高速化した際に生ずる現像時の帯電不良により、トナー飛散による画像弊害(ハーフトーン画像でのガサツキ)が発生しやすくなる。一方、70.0体積%を超えると表面保護層自体が脆くなるため、長期使用を通して感光体の表面が削られやすくなる。これにより、感光体の帯電均一性が低下し、高速化した際に生ずる現像時の帯電不良により、トナー飛散による画像弊害が発生しやすくなる。より好ましい導電性粒子の含有量は、5.0体積%以上40.0体積%以下である。この好ましい範囲とすることで、高温高湿環境でのカブリも良好となる。
【0021】
また、表面保護層の体積抵抗率が1.0×109Ω・cm以上1.0×1014Ω・cm以下であることが特徴である。1.0×109Ω・cm未満であると、表面保護層の抵抗が低すぎて、電位を維持することが困難となり、トナーの帯電量が低下する。結果として、本発明の効果が得られなくなるとともに、高温高湿環境下でのカブリが悪化する。1.0×1014Ω・cmを超えると、表面保護層の抵抗が高すぎて、トナーへの注入帯電性が著しく悪化する。結果として、本発明の効果が得られなくなるとともに、低温低湿環境下でトナー間での静電凝集による帯電不良により、カブリが悪化する。
【0022】
好ましい表面保護層の体積抵抗率は、1.0×1011Ω・cm以上1.0×1014Ω・cm以下である。表面保護層の体積抵抗率は、例えば、導電性粒子の粒子径によって制御することができる。導電性粒子の粒子径は、個数平均粒径で5nm以上300nm以下であることが好ましく、より好ましくは40nm以上250nm以下であることが好ましい。導電性粒子の個数平均粒径が5nm未満となると導電性粒子の比表面積が大きくなり、表面保護層の表面における導電性粒子の近傍に対して水分吸着が多くなり、表面保護層の体積抵抗率が低下しやすくなる。導電性粒子の個数平均粒径が300nmを超えると表面保護層内における粒子の分散が悪化するとともに結着樹脂との界面の面積が低下して、界面における抵抗が上昇して電荷注入性が悪化しやすくなる。
【0023】
表面保護層が含有する導電性粒子としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物の粒子が挙げられる。導電性粒子として金属酸化物を用いる場合、金属酸化物にニオブやリン、アルミニウムなど元素やその酸化物をドーピングしてもよい。本発明においては、帯電部材からの電荷注入性の観点から酸化チタンが好ましい。
【0024】
さらに、酸化チタンがニオブ原子を含有していると、より注入性が良好となり、少ない量で電荷注入性を向上させることができる。好ましいニオブ原子含有量は、ニオブ原子含有酸化チタン粒子の全質量に対して、0.5質量%以上15.0質量%以下であることが好ましく、より好ましくは2.6質量%以上10.0質量%以下である。
【0025】
導電性粒子として、特に好ましいのは、ニオブを含有し、且つニオブが粒子表面近傍に偏在した構成である酸化チタン粒子である。ニオブが表面近傍に偏在することで、電荷を効率的に授受できるためである。より具体的には、粒子の中心における、“ニオブ原子濃度/チタン原子濃度”で算出される濃度比率に対して、粒子の表面から粒子の最大径の5%内部における、“ニオブ原子濃度/チタン原子濃度”で算出される濃度比率が、2.0倍以上となる酸化チタン粒子である。このような状態とすることで、上述のように電荷を効率的に授受できるようになる。結果として、トナーへの電荷注入性を高めることができる。また、表面保護層の体積抵抗率の低下を抑制することができる。これにより、本発明の効果に加えて、初期から耐久末期まで、高温高湿環境でのカブリが良化する。尚、ニオブ原子濃度、チタン原子濃度は、EDS分析装置(エネルギー分散型X線分析装置)を接続した走査透過型電子顕微鏡(STEM)により得られる。
【0026】
本発明の実施例で用いた酸化チタン粒子の一例(X1)のSTEM像を
図4に示す。
また
図4のSTEM像を模式的に
図5に示す。
本発明で使用しているニオブを含有した酸化チタン粒子は、芯材となる酸化チタン粒子に、ニオブを含有した酸化チタンを被覆した後に焼成することで作製することができる。被覆されたニオブを含有した酸化チタンは、芯材の酸化チタンの結晶に沿って、所謂エピタキシャル成長によりニオブドープ酸化チタンとして結晶成長をすると考えられる。このようにして作製したニオブを含有した酸化チタンは、
図4に示すように粒子中心部の密度と比べ、表面近傍での密度が低く、コアシェル様の形態となっていることが伺える。また、STEMによるEDS分析では、X線は粒子全体を透過するため、
図5に示すように、粒子中心部31でのEDS分析に対して、粒子の表面から一次粒子径の5%内部におけるEDS分析は、表面近傍32の影響が大きくなる。また、
図5は、導電性粒子の中心部を分析するX線33及び粒子表面から測定粒子の最大径の5%内部を分析するX線34の照射イメージを示す模式図である。
【0027】
ニオブ原子含有酸化チタン粒子は、アナターゼ型又はルチル型の酸化チタン粒子であることが好ましく、アナターゼ型の酸化チタン粒子であることが更に好ましい。アナターゼ型の酸化チタンを用いることで、表面保護層内の電荷移動が円滑になるため、電荷注入が良好になる。
アナターゼ形酸化チタン粒子は公知の硫酸法で製造することができる。即ち、硫酸チタン、硫酸チタニルを含む溶液を加熱して加水分解させ含水二酸化チタンスラリーを作製し、該二酸化チタンスラリーを脱水焼成して得られる。
アナターゼ型酸化チタンは、アナターゼ化度は90~100%が好ましい。本願発明で規定する範囲のニオブ原子を含有するアナターゼ型酸化チタンを含む表面保護層は、整流性が良好且つ安定して達成され、本発明の前記した効果が良好に達成される。ここで、アナターゼ化度とは、酸化チタンの粉末X線回析において、アナターゼの最強干渉線(面指数101)の強度IAとルチルの最強干渉線(面指数110)の強度IRを測定し、以下の式で求められる値である。
アナターゼ化度(%)=100/(1+1.265×IR/IA)
アナターゼ化度を90~100%の範囲に作製するには、酸化チタンの作製において、チタン化合物として硫酸チタン、硫酸チタニルを含む溶液を加熱して加水分解させて、含水二酸化チタンスラリーを作製し、該二酸化チタンスラリーを脱水焼成して得られる。尚、この方では、アナターゼ化度がほぼ100%のアナターゼ型酸化チタンが得られる。又、四塩化チタン水溶液を、アルカリを用いて中和しても、アナターゼ化度が高いアナターゼ型酸化チタンが得られる。
【0028】
<本発明に係るトナー>
本発明に係るトナーは、以下の(i)または(ii):
(i)結着樹脂を含有するトナー粒子、及び、有機ケイ素重合体粒子を有するトナーである、
(ii)結着樹脂を含有し、表面に有機ケイ素重合体を有するトナー粒子を有するトナーである、
の規定を満たすものである。
そして、(i)の規定を満たす場合における該有機ケイ素重合体粒子、または、(ii)の規定を満たす場合における該有機ケイ素重合体が、
T3単位構造を有するケイ素原子と、
T2単位構造を有するケイ素原子及びT1単位構造を有するケイ素原子からなる群より選択される少なくとも一の単位構造と、
を有している。
さらに、(i)の規定を満たす場合における該有機ケイ素重合体粒子、または、該(ii)の規定を満たす場合における該有機ケイ素重合体は、29Si-NMRの測定において、全ケイ素原子に由来するピークの合計面積に対する、T2単位構造を有するケイ素原子に由来するピークの面積とT1単位構造を有するケイ素原子に由来するピークの面積との合計面積の割合が、0.10以上0.40以下である。
T1単位構造を有するケイ素原子とは、1つの酸素以外の原子、3つの酸素原子と結合しており、3つの酸素原子のうちの1つのみが更に他のケイ素原子と結合しているケイ素原子である。一般的には、RaSi(O1/2)(OR)2で表される構造をとるケイ素原子である。
T2単位構造を有するケイ素原子とは、1つの酸素以外の原子、3つの酸素原子と結合しており、3つの酸素原子のうちの2つのみが更に他のケイ素原子と結合しているケイ素原子である。一般的には、RaSi(O1/2)2(OR)で表される構造をとるケイ素原子である。
T3単位構造を有するケイ素原子とは、1つの酸素以外の原子、3つの酸素原子と結合しており、3つの酸素原子の全てが更に他のケイ素原子と結合しているケイ素原子である。一般的には、RaSi(O1/2)3で表される構造をとるケイ素原子である。
例えば、Raは、炭素数1~6のアルキル基またはフェニル基であり、Rは、水素原子または、炭素原子数1~6のアルキル基である。
【0029】
(i)結着樹脂を含有するトナー粒子、及び、有機ケイ素重合体粒子を有するトナーである場合について説明する。
【0030】
<有機ケイ素重合体粒子>
上記構成において、表面に有機ケイ素重合体粒子を有するトナーを用いる場合には、その有機ケイ素重合体粒子は、その形成方法には特段の制限はなく、従来公知の方法を用いることができる。以下に、上記方法について説明する。
【0031】
該有機ケイ素重合体粒子は、ケイ素原子と酸素原子が交互に結合した構造を有し、該有機ケイ素重合体が、T3単位構造を有するケイ素原子と、T2単位構造を有するケイ素原子、及び、T1単位構造を有するケイ素原子からなる群より選択される少なくとも一の単位構造と、を有していることが必須構成である。
【0032】
上記構成における、有機ケイ素重合体粒子の製法は特に限定されず、例えば、水に下記式(Z)で表されるシラン化合物を滴下し、触媒により加水分解、縮合反応させた後、得られた懸濁液を濾過、乾燥することで得られる。触媒として酸性触媒は塩酸、フッ化水素酸、硫酸、硝酸などが挙げられ、塩基性触媒はアンモニア水、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられるが、これらに限定はされない。
下記式(Z)
【化1】
(式(Z)中、R
aは、有機官能基を表す。R
1、R
2及びR
3は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アセトキシ基、又は(好ましくは炭素数1以上3以下の)アルコキシ基を表す。)
【0033】
Raは炭素数が1以上6以下(好ましくは1~3、より好ましくは1又は2)の炭化水素基(好ましくはアルキル基)やアリール基(好ましくはフェニル基)が挙げられる。
R1、R2及びR3は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アセトキシ基、又は、アルコキシ基である。これらは反応基であり、加水分解、付加重合及び縮合して架橋構造を形成する。また、R1、R2及びR3の加水分解、付加重合及び縮合は、反応温度、反応時間、反応溶媒及びpHによって制御することができる。式(Z)のようにRaを除く一分子中に3つの反応基(R1、R2及びR3)を有する有機ケイ素化合物を、三官能性シランともいう。
【0034】
式(Z)としては以下のものが挙げられる。
p-スチリルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルジエトキシメトキシシラン、メチルエトキシジメトキシシラン、メチルトリクロロシラン、メチルメトキシジクロロシラン、メチルエトキシジクロロシラン、メチルジメトキシクロロシラン、メチルメトキシエトキシクロロシラン、メチルジエトキシクロロシラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルジアセトキシメトキシシラン、メチルジアセトキシエトキシシラン、メチルアセトキシジメトキシシラン、メチルアセトキシメトキシエトキシシラン、メチルアセトキシジエトキシシラン、メチルトリヒドロキシシラン、メチルメトキシジヒドロキシシラン、メチルエトキシジヒドロキシシラン、メチルジメトキシヒドロキシシラン、メチルエトキシメトキシヒドロキシシラン、メチルジエトキシヒドロキシシラン、のような三官能性のメチルシラン;エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリクロロシラン、エチルトリアセトキシシラン、エチルトリヒドロキシシラン、のような三官能性のエチルシラン;プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリクロロシラン、プロピルトリアセトキシシラン、プロピルトリヒドロキシシラン、のような三官能性のプロピルシラン;ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ブチルトリクロロシラン、ブチルトリアセトキシシラン、ブチルトリヒドロキシシラン、のような三官能性のブチルシラン;ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、ヘキシルトリクロロシラン、ヘキシルトリアセトキシシラン、ヘキシルトリヒドロキシシラン、のような三官能性のヘキシルシラン;フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリクロロシラン、フェニルトリアセトキシシラン、フェニルトリヒドロキシシランのような三官能性のフェニルシラン。有機ケイ素化合物は単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0035】
また、式(Z)で表される構造を有する有機ケイ素化合物とともに、以下を併用してもよい。一分子中に4つの反応基を有する有機ケイ素化合物(四官能性シラン)、一分子中に2つの反応基を有する有機ケイ素化合物(二官能性シラン)又は1つの反応基を有する有機ケイ素化合物(一官能性シラン)。有機ケイ素重合体を形成するモノマー中の、式(Z)で表される構造の含有量は、50モル%以上が好ましく、より好ましくは60モル%以上である。
【0036】
触媒の種類、配合比、反応開始温度、滴下時間などにより、有機ケイ素重合体粒子の29Si-NMRの測定において、全ケイ素原子に由来するピークの合計面積に対する、T2単位構造を有するケイ素に由来するピークの面積とT1単位構造を有するケイ素に由来するピークの面積との合計面積の割合を、0.10以上0.40以下に制御することができる。
【0037】
上記pHや反応温度、反応時間を調整することで、29Si-NMRの測定において、全ケイ素原子に由来するピークの合計面積に対する、T2単位構造を有するケイ素原子に由来するピークの面積とT1単位構造を有するケイ素原子に由来するピークの面積との合計面積の割合を、0.10以上0.40以下に制御することができる。全ケイ素原子に由来するピークの合計面積に対する、T2単位構造を有するケイ素に由来するピークの面積とT1単位構造を有するケイ素に由来するピークの面積との合計面積の割合が、0.10未満だと、本発明に係る感光体からトナーへ電荷注入される際に、有機ケイ素重合体粒子のシラノール基(及びその一部のアルコキシシラン基)量が少なく、電荷注入性が低下する。結果として、高速化した際に生ずる現像時の帯電不良により、トナー飛散による画像弊害(ハーフトーン画像でのガサツキ)が発生しやすくなる。低温低湿環境での静電凝集によるカブリが悪化する。
【0038】
一方、0.40を超えると、本発明に係る感光体からトナーへ電荷注入される際に、有機ケイ素重合体粒子のシラノール基(及びその一部アルコキシシラン基)量が多く、有機ケイ素重合体粒子に起因して電荷のリークが生じやすくなる。結果として、感光体からトナーへの電荷注入性が低下する。結果として、高速化した際に生ずる現像時の帯電不良により、トナー飛散による画像弊害(ハーフトーン画像でのガサツキ)が発生しやすくなる。また、高温高湿環境でのカブリが悪化する。
【0039】
該有機ケイ素重合体粒子の29Si-NMRの測定において、該有機ケイ素重合体粒子に含有される全ケイ素原子に由来するピークの合計面積に対する、T3単位構造を有するケイ素原子に由来するピークの面積の割合が、0.50以上0.90以下であることが好ましい。上記範囲であることで、有機ケイ素重合体粒子自体の劣化が抑制される。結果として、高速化した際、耐久画像出力時においてもトナー粒子に埋没が起こりにくくなる。これにより、初期から長期に渡って、感光体からトナーへの電荷注入性が良好となる。
【0040】
前記トナーが、結着樹脂を含有するトナー粒子、及び、有機ケイ素重合体粒子を有するトナーであり、前記有機ケイ素重合体粒子の長径が30nm以上300nm以下であることが好ましい。
有機ケイ素重合体粒子を有するトナーであることで、トナー粒子表面において有機ケイ素重合体粒子が転がることができる状態で存在している。
【0041】
これにより、感光体から有機ケイ素重合体粒子を介してトナー粒子に電荷注入される際に、有機ケイ素重合体粒子がトナー粒子表面を転がることでトナー粒子と有機ケイ素重合体粒子の単位時間当たりの接触面積が多くなり、効率的に感光体からトナーへ電荷注入することができる。
【0042】
また、該長径が30nm以上の場合には、有機ケイ素重合体粒子の曲率が小さくなり、高速化した際、耐久画像出力時においてもトナー粒子に埋没が起こりにくくなる。これにより、初期から長期に渡って、感光体からトナーへの電荷注入性が良好となる。これにより、初期から長期に渡ってトナー飛散による画像弊害(ハーフトーン画像でのガサツキ)を抑制することができる。更には、カートリッジ寿命末期まで安定して、トナー劣化が抑制される。結果として、初期からカートリッジ寿命末期まで安定した流動性を維持できる。これにより、初期からカートリッジ寿命末期まで高温高湿環境でのかぶりが良好となる。
【0043】
また、該長径が300nm以下の場合には、高速化した際にも、トナー粒子表面に安定的に存在することができる。また、耐久画像出力時においても、トナー粒子への埋没が抑えられる。これにより、初期から長期に渡って、感光体からトナーへの電荷注入性が良好となる。更には、カートリッジ寿命末期まで安定して、トナー劣化が抑制される。結果として、初期からカートリッジ寿命末期まで安定した流動性を維持できる。これにより、初期からカートリッジ寿命末期まで高温高湿環境でのかぶりが良好となる。
【0044】
前記有機ケイ素重合体粒子の水洗法における、前記トナー粒子に対する固着率が25%以下であることが好ましい。
前記トナー粒子に対する固着率が25%以下である場合には、有機ケイ素重合体粒子の多くがトナー粒子表面において転がることができる状態で存在している。有機ケイ素重合体粒子がトナー粒子表面で転がることができることで、感光体からトナーに効率的に電荷注入し、トナーの帯電性が均一になる。また、高速化した際、耐久画像出力時においてもトナー粒子に埋没が起こりにくくなる。これにより、初期から長期に渡って、感光体からトナーへの電荷注入性が良好となる。結果として、初期から長期に渡ってトナー飛散による画像弊害(ハーフトーン画像でのガサツキ)を抑制することができる。更には、カートリッジ寿命末期まで安定して、トナー劣化が抑制される。結果として、初期からカートリッジ寿命末期まで安定した流動性を維持できる。これにより、初期からカートリッジ寿命末期まで高温高湿環境でのかぶりが良好となる。
更に、該有機ケイ素重合体粒子は、T1単位構造及びT2単位構造に含まれる、アルコキシシラン構造及びシラノール構造の合計含有量に対する、シラノール構造の含有の割合が、98質量%以上であることが好ましい。98質量%以上であることで、本発明の効果であるトナーへの電荷注入性が更に良好となる。
【0045】
(ii)結着樹脂を含有し、表面に有機ケイ素重合体を有するトナー粒子を有するトナーを用いる場合について説明する。
【0046】
上記構成において、表面に有機ケイ素重合体を有するトナー粒子を有するトナーを用いる場合には、その形成方法には特段の制限はなく、従来公知の方法を用いることができる。中でも、トナー母粒子表面に有機ケイ素重合体を容易に形成させることが可能であることから、トナー母粒子が分散した水系媒体中において上記式(Z)で表される有機ケイ素化合物の説明で示した化合物を縮合し、上記トナー母粒子上に有機ケイ素重合体を形成する方法を用いることができる。
以下に、この方法について説明する。
【0047】
表面に有機ケイ素重合体を有するトナー粒子を形成する場合、トナー母粒子を水系媒体に分散し、トナー母粒子分散液を得る工程(工程1)、及び有機ケイ素化合物(あるいはその加水分解物)を上記トナー母粒子分散液に混合し、有機ケイ素化合物を上記トナー母粒子分散液中で縮合反応させることで上記トナー母粒子上に有機ケイ素重合体を形成する工程(工程2)を含むことが好ましい。
【0048】
上記工程1において、トナー母粒子分散液を得る方法としては、水系媒体中で製造したトナー母粒子の分散液をそのまま用いる方法、及び、乾燥したトナー母粒子を水系媒体に投入し、機械的に分散させる方法等が挙げられる。乾燥したトナー母粒子を水系媒体に分散させる場合、分散助剤を用いることができる。
【0049】
上記分散助剤としては、公知の分散安定剤や界面活性剤などを用いることができる。具体的には、分散安定剤として以下の、リン酸三カルシウム、ヒドロキシアパタイト、リン酸マグネシウム、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタ珪酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、シリカ、アルミナ等の無機分散安定剤、ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、デンプン等の有機分散安定剤が挙げられる。また、界面活性剤として以下のアルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、脂肪酸塩等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル等のノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩等のカチオン性界面活性剤が挙げられる。中でも、無機分散安定剤を含むことが好ましく、リン酸三カルシウム、ヒドロキシアパタイト、リン酸マグネシウム、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム等のリン酸塩を含む分散安定剤を含むことがより好ましい。
【0050】
上記工程2において、有機ケイ素化合物はそのままトナー母粒子分散液に加えてもよく、加水分解後にトナー母粒子分散液に加えてもよい。中でも、上記縮合反応が制御しやすく、トナー母粒子分散液中に残留する有機ケイ素化合物量を減らせることから、加水分解後に加えることが好ましい。上記加水分解は公知の酸及び塩基を用いてpHを調整した水系媒体中で行うことが好ましい。有機ケイ素化合物の加水分解にはpH依存性があることが知られており、上記加水分解を行う場合のpHは、有機ケイ素化合物の種類によって適宜変更することが好ましい。例えば、有機ケイ素化合物としてメチルトリエトキシシランを用いる場合、上記水系媒体のpHが2.0以上6.0以下であることが好ましい。
【0051】
pHを調整するための酸としては、具体的には以下の、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、次亜塩素酸、亜塩素酸、塩素酸、過塩素酸、次亜臭素酸、亜臭素酸、臭素酸、過臭素酸、次亜ヨウ素酸、亜ヨウ素酸、ヨウ素酸、過ヨウ素酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホウ酸等の無機酸、酢酸、クエン酸、ギ酸、グルコン酸、乳酸、シュウ酸、酒石酸等の有機酸が挙げられる。
【0052】
pHを調整するための塩基としては、具体的には以下の、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ金属の水酸化物及びそれらの水溶液、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウムなどのアルカリ金属の炭酸塩及びそれらの水溶液、硫酸カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸リチウムなどのアルカリ金属の硫酸塩及びそれらの水溶液、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸リチウムなどのアルカリ金属のリン酸塩及びそれらの水溶液、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなどのアルカリ土類金属の水酸化物及びそれらの水溶液、アンモニア、トリエチルアミン等のアミン類等が挙げられる。
【0053】
上記工程2における上記縮合反応はトナー母粒子分散液のpHを調整することで制御することが好ましい。有機ケイ素化合物の縮合反応はpH依存性があることが知られており、上記縮合反応を行う場合のpHは、有機ケイ素化合物の種類によって適宜変更することが好ましい。例えば、有機ケイ素化合物としてメチルトリエトキシシランを用いる場合、上記水系媒体のpHが6.0以上12.0以下であることが好ましい。pHを調整するための酸及び塩基としては、上記加水分解の項で例示した酸及び塩基を用いることができる。
【0054】
上記pHや反応温度、反応時間を調整することで、29Si-NMRの測定において、有機ケイ素重合体は、全ケイ素原子に由来するピークの合計面積に対する、T2単位構造を有するケイ素原子に由来するピークの面積とT1単位構造を有するケイ素原子に由来するピークの面積との合計面積の割合を、0.10以上0.40以下に制御することができる。
【0055】
全ケイ素原子に由来するピークの合計面積に対する、T2単位構造を有するケイ素原子に由来するピークの面積とT1単位構造を有するケイ素原子に由来するピークの面積との合計面積の割合が、0.10未満だと、本発明に係る感光体からトナーへ電荷注入される際に、有機ケイ素重合体のシラノール基(及びその一部のアルコキシシラン基)量が少なく、電荷注入性が低下する。結果として、高速化した際に生ずる現像時の帯電不良により、トナー飛散による画像弊害(ハーフトーン画像でのガサツキ)が発生しやすくなる。低温低湿環境での静電凝集によるカブリが悪化する
【0056】
一方、0.40を超えると、本発明に係る感光体からトナーへ電荷注入される際に、有機ケイ素重合体のシラノール基(及びその一部アルコキシシラン基)量が多く、有機ケイ素重合体に起因して電荷のリークが生じやすくなる。結果として、感光体からトナーへの電荷注入性が低下し、高速化した際に生ずる現像時の帯電不良により、トナー飛散による画像弊害(ハーフトーン画像でのガサツキ)が発生しやすくなる。また、高温高湿環境でのカブリが悪化する。
【0057】
該有機ケイ素重合体の29Si-NMRの測定において、該有機ケイ素重合体に含有される全ケイ素原子に由来するピークの合計面積に対する、T3単位構造を有するケイ素に由来するピークの面積の割合が、0.50以上0.90以下であることが好ましい。上記範囲であることで、有機ケイ素重合体自体の劣化が抑制される。結果として、高速化した際、耐久画像出力時においてもトナー粒子に埋没が起こりにくくなる。これにより、初期から長期に渡って、感光体からトナーへの電荷注入性が良好となる。
【0058】
更に、該有機ケイ素重合体は、T1単位構造及びT2単位構造に含まれる、アルコキシシラン構造及びシラノール構造の合計含有量に対する、シラノール構造の含有の割合が、98質量%以上であることが好ましい。98質量%以上であることで、本発明の効果であるトナーへの電荷注入性が更に良好となる。
【0059】
上記トナーの平均円形度は0.950以上0.990以下であることが好ましく、0.970以上0.990以下であることがさらに好ましい。
トナーの平均円形度が上記範囲である場合、トナーの形状が均一であることを意味する。
これにより、高速化した際でも、本発明の効果であるトナー飛散による画像弊害(ハーフトーン画像でのガサツキ)を抑制するとともに、転写性が良好となる。
なお、トナーの平均円形度は、製造条件を調整することで制御することができる。なおトナーの平均円形度は、後述の測定方法により測定することができる。
【0060】
以下、本発明に係る電子写真感光体の構成について説明する。
図1に導電性支持体21、下引き層22、電荷発生層23、電荷輸送層24及び表面保護層25を有する電子写真感光体を示す。
【0061】
<支持体>
本発明に係る電子写真感光体において、支持体は導電性を有する導電性支持体であることが好ましい。また、支持体の形状としては、円筒状、ベルト状、シート状などが挙げられる。中でも、円筒状支持体であることが好ましい。また、支持体の表面に、陽極酸化などの電気化学的な処理、ブラスト処理、切削処理などを施してもよい。支持体の材質としては、金属、樹脂、ガラスなどが好ましい。金属としては、アルミニウム、鉄、ニッケル、銅、金、ステンレス、これらの合金などが挙げられる。中でも、アルミニウムを用いたアルミニウム製支持体であることが好ましい。また、樹脂やガラスには、導電性材料を混合または被覆するなどの処理によって、導電性を付与することが好ましい。
【0062】
<導電層>
本発明に係る電子写真感光体において、支持体の上に、導電層を設けてもよい。導電層を設けることで、支持体表面の傷や凹凸を隠蔽することや、支持体表面における光の反射を制御することができる。導電層は、導電性粒子と、樹脂と、を含有することが好ましい。導電性粒子の材質としては、金属酸化物、金属、カーボンブラックなどが挙げられる。
【0063】
金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化インジウム、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化ビスマスなどが挙げられる。金属としては、アルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀などが挙げられる。これらの中でも、導電性粒子として、金属酸化物を用いることが好ましく、特に、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛を用いることがより好ましい。
導電性粒子として金属酸化物を用いる場合、金属酸化物の表面をシランカップリング剤などで処理したり、金属酸化物にリンやアルミニウムなど元素やその酸化物をドーピングしたりしてもよい。
また、導電性粒子は、酸化チタン粒子、硫酸バリウム粒子、酸化亜鉛粒子の表面近傍にニオブ原子を偏在させたものが好ましい。
導電性粒子として金属酸化物を用いる場合、その体積平均粒子径が、1nm以上500nm以下であることが好ましく、3nm以上400nm以下であることがより好ましい。
【0064】
樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂などが挙げられる。また、導電層は、シリコーンオイル、樹脂粒子、酸化チタンなどの隠蔽剤などをさらに含有してもよい。
【0065】
導電層は、上記の各材料及び溶剤を含有する導電層用塗布液を調製し、この塗膜を支持体上に形成し、乾燥させることで形成することができる。塗布液に用いる溶剤としては、アルコール系溶剤、スルホキシド系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤などが挙げられる。導電層用塗布液中で導電性粒子を分散させるための分散方法としては、ペイントシェーカー、サンドミル、ボールミル、液衝突型高速分散機を用いた方法が挙げられる。
【0066】
導電層の平均膜厚は、1μm以上40μm以下であることが好ましく、3μm以上30μm以下であることが特に好ましい。
【0067】
<下引き層>
本発明に係る電子写真感光体において、支持体または導電層の上に、下引き層を設けてもよい。
下引き層を設けることで、層間の接着機能が高まり、電荷注入阻止機能を付与することができる。下引き層は、樹脂を含有することが好ましい。また、重合性官能基を有するモノマーを含有する組成物を重合することで硬化膜として下引き層を形成してもよい。
【0068】
樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリビニルフェノール樹脂、アルキッド樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリエチレンオキシド樹脂、ポリプロピレンオキシド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミド酸樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、セルロース樹脂などが挙げられる。
【0069】
重合性官能基を有するモノマーが有する重合性官能基としては、イソシアネート基、ブロックイソシアネート基、メチロール基、アルキル化メチロール基、エポキシ基、金属アルコキシド基、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、チオール基、カルボン酸無水物基、炭素-炭素二重結合基などが挙げられる。
【0070】
また、下引き層は、電気特性を高める目的で、電子輸送物質、金属酸化物、金属、導電性高分子などを更に含有してもよい。これらの中でも、電子輸送物質、金属酸化物を用いることが好ましい。
電子輸送物質としては、キノン化合物、イミド化合物、ベンズイミダゾール化合物、シクロペンタジエニリデン化合物、フルオレノン化合物、キサントン化合物、ベンゾフェノン化合物、シアノビニル化合物、ハロゲン化アリール化合物、シロール化合物、含ホウ素化合物などが挙げられる。電子輸送物質として、重合性官能基を有する電子輸送物質を用い、上述の重合性官能基を有するモノマーと共重合させることで、硬化膜として下引き層を形成してもよい。
金属酸化物としては、酸化インジウムスズ、酸化スズ、酸化インジウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素などが挙げられる。金属としては、金、銀、アルミなどが挙げられる。
【0071】
下引き層に含まれる金属酸化物粒子は、シランカップリング剤などの表面処理剤を用いて表面処理して用いてもよい。
金属酸化物粒子を表面処理する方法は、一般的な方法が用いられる。たとえば、乾式法や湿式法が挙げられる。
乾式法は、金属酸化物粒子をヘンシェルミキサーのような高速攪拌可能なミキサーの中で攪拌しながら、表面処理剤を含有するアルコール水溶液、有機溶媒溶液、または水溶液を添加し、均一に分散させた後に乾燥を行うものである。
また、湿式法は、金属酸化物粒子と表面処理剤とを溶剤中で攪拌、またはガラスビーズなどを用いてサンドミルなどで分散するものであり、分散後、ろ過、または減圧留去により溶剤除去が行われる。溶剤の除去後は、さらに100℃以上で焼き付けを行うことが好ましい。
【0072】
下引き層には、さらに添加剤を含有させてもよく、例えば、アルミニウムなどの金属粉体、カーボンブラックなどの導電性物質、電荷輸送物質、金属キレート化合物、有機金属化合物などの公知の材料を含有させることができる。
電荷輸送物質としては、キノン化合物、イミド化合物、ベンズイミダゾール化合物、シクロペンタジエニリデン化合物、フルオレノン化合物、キサントン化合物、ベンゾフェノン化合物、シアノビニル化合物、ハロゲン化アリール化合物、シロール化合物、含ホウ素化合物などが挙げられる。電荷輸送物質として、重合性官能基を有する電荷輸送物質を用い、上記の重合性官能基を有するモノマーと共重合させることで、硬化膜として下引き層を形成してもよい。
【0073】
下引き層は、上記の各材料及び溶剤を含有する下引き層用塗布液を調製し、この塗膜を支持体または導電層上に形成し、乾燥及び/または硬化させることで形成することができる。
下引き層用塗布液に用いられる溶剤としては、アルコール、スルホキシド、ケトン、エーテル、エステル、脂肪族ハロゲン化炭化水素、芳香族化合物などの有機溶剤が挙げられる。本発明においては、アルコール系、ケトン系溶剤を用いることが好ましい。
下引き層用塗布液を調製するための分散方法としては、ホモジナイザー、超音波分散機、ボールミル、サンドミル、ロールミル、振動ミル、アトライター、液衝突型高速分散機を用いた方法が挙げられる。
下引き層の平均膜厚は、0.1μm以上10μm以下であることが好ましく、0.1μm以上5μm以下であることがより好ましい。
【0074】
<感光層>
電子写真感光体の感光層は、主に、(1)積層型感光層と、(2)単層型感光層とに分類される。(1)積層型感光層は、電荷発生物質を含有する電荷発生層と、電荷輸送物質を含有する電荷輸送層と、を有する感光層である。(2)単層型感光層は、電荷発生物質と電荷輸送物質を共に含有する感光層である。
【0075】
(1)積層型感光層
積層型感光層は、電荷発生層と、電荷輸送層と、を有する。
【0076】
(1-1)電荷発生層
電荷発生層は、電荷発生物質と、樹脂と、を含有することが好ましい。
【0077】
電荷発生物質としては、アゾ顔料、ペリレン顔料、多環キノン顔料、インジゴ顔料、フタロシアニン顔料などが挙げられる。これらの中でも、アゾ顔料、フタロシアニン顔料が好ましい。フタロシアニン顔料の中でも、オキシチタニウムフタロシアニン顔料、クロロガリウムフタロシアニン顔料、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料が好ましい。
電荷発生層中の電荷発生物質の含有量は、電荷発生層の全質量に対して、40質量%以上85質量%以下であることが好ましく、60質量%以上80質量%以下であることがより好ましい。
【0078】
樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、セルロース樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂などが挙げられる。これらの中でも、ポリビニルブチラール樹脂がより好ましい。
【0079】
また、電荷発生層は、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの添加剤をさらに含有してもよい。具体的には、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物、硫黄化合物、リン化合物、ベンゾフェノン化合物、などが挙げられる。
【0080】
電荷発生層は、上記の各材料及び溶剤を含有する電荷発生層用塗布液を調製し、この塗膜を下引き層上に形成し、乾燥させることで形成することができる。塗布液に用いる溶剤としては、アルコール系溶剤、スルホキシド系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤などが挙げられる。
電荷発生層の平均膜厚は、0.1μm以上1μm以下であることが好ましく、0.15μm以上0.4μm以下であることがより好ましい。
【0081】
(1-2)電荷輸送層
電荷輸送層は、電荷輸送物質と、樹脂と、を含有することが好ましい。
【0082】
電荷輸送物質としては、例えば、多環芳香族化合物、複素環化合物、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、エナミン化合物、ベンジジン化合物、トリアリールアミン化合物、これらの物質から誘導される基を有する樹脂などが挙げられる。これらの中でも、トリアリールアミン化合物、ベンジジン化合物が好ましい。
電荷輸送層中の電荷輸送物質の含有量は、電荷輸送層の全質量に対して、25質量%以上70質量%以下であることが好ましく、30質量%以上55質量%以下であることがより好ましい。
【0083】
樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂などが挙げられる。これらの中でも、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂が好ましい。ポリエステル樹脂としては、特にポリアリレート樹脂が好ましい。
電荷輸送物質と樹脂との含有量比(質量比)は、4:10~20:10が好ましく、5:10~12:10がより好ましい。
【0084】
また、電荷輸送層は、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、レベリング剤、滑り性付与剤、耐摩耗性向上剤などの添加剤を含有してもよい。具体的には、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物、硫黄化合物、リン化合物、ベンゾフェノン化合物、シロキサン変性樹脂、シリコーンオイル、フッ素樹脂粒子、ポリスチレン樹脂粒子、ポリエチレン樹脂粒子、シリカ粒子、アルミナ粒子、窒化ホウ素粒子などが挙げられる。
【0085】
電荷輸送層は、上記の各材料及び溶剤を含有する電荷輸送層用塗布液を調製し、この塗膜を電荷発生層上に形成し、乾燥させることで形成することができる。塗布液に用いる溶剤としては、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤が挙げられる。これらの溶剤の中でも、エーテル系溶剤または芳香族炭化水素系溶剤が好ましい。
電荷輸送層の平均膜厚は、3μm以上50μm以下であることが好ましく、5μm以上40μm以下であることがより好ましく、10μm以上30μm以下であることが特に好ましい。
【0086】
(2)単層型感光層
単層型感光層は、電荷発生物質、電荷輸送物質、樹脂及び溶剤を含有する感光層用塗布液を調製し、この塗膜を下引き層上に形成し、乾燥させることで形成することができる。電荷発生物質、電荷輸送物質、樹脂としては、上記「(1)積層型感光層」における材料の例示と同様である。
【0087】
<表面保護層>
表面保護層は、重合性官能基を有する化合物の重合物及び樹脂を含有してもよい。
重合性官能基としては、イソシアネート基、ブロックイソシアネート基、メチロール基、アルキル化メチロール基、エポキシ基、金属アルコキシド基、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、チオール基、カルボン酸無水物基、炭素-炭素二重結合基、アルコキシシリル基、シラノール基などが挙げられる。重合性官能基を有する化合物として、電荷輸送能を有するモノマーを用いてもよい。
樹脂としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。中でも、アクリル樹脂が好ましい。
【0088】
表面保護層が含有する導電性粒子の材質と粒径については、上述した通りである。また、分散性、液安定性の観点から、金属酸化物の表面をシランカップリング剤などで処理するのが好ましい。
表面保護層は、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、レベリング剤、滑り性付与剤、耐摩耗性向上剤、などの添加剤を含有してもよい。具体的には、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物、硫黄化合物、リン化合物、ベンゾフェノン化合物、シロキサン変性樹脂、シリコーンオイル、フッ素樹脂粒子、ポリスチレン樹脂粒子、ポリエチレン樹脂粒子、シリカ粒子、アルミナ粒子、窒化ホウ素粒子などが挙げられる。
【0089】
表面保護層は、上記の各材料及び溶剤を含有する表面保護層用塗布液を調製し、この塗膜を感光層上に形成し、乾燥及び/または硬化させることで形成することができる。塗布液に用いる溶剤としては、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、スルホキシド系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤が挙げられる。
表面保護層の平均膜厚は、0.2μm以上5μm以下であることが好ましく、0.5μm以上3μm以下であることがより好ましい。
以下、本発明に係るトナーの構成について説明する。
【0090】
<結着樹脂>
本発明に係るトナーは、結着樹脂を含有する。該結着樹脂の含有量は、トナー粒子中の樹脂成分全量に対して、50質量%以上であることが好ましい。
該結着樹脂としては、特に制限はないが、例えば、スチレンアクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂、これらの混合樹脂や複合化樹脂などが挙げられる。安価、容易に入手可能で低温定着性に優れる点でスチレンアクリル樹脂やポリエステル樹脂が好ましい。さらに現像耐久性に優れる点でスチレンアクリル樹脂がより好ましい。
【0091】
該ポリエステル樹脂は、多価カルボン酸、ポリオール、ヒドロキシカルボン酸などの中から好適なものを選択して組み合わせ、例えば、エステル交換法又は重縮合法など、従来公知の方法を用いて合成することで得られる。
【0092】
多価カルボン酸は、1分子中にカルボキシ基を2個以上含有する化合物である。このうち、ジカルボン酸は1分子中にカルボキシ基を2個含有する化合物であって、好ましく使用される。
例えば、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、マレイン酸、アジピン酸、β-メチルアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、フマル酸、シトラコン酸、ジグリコール酸、シクロヘキサン-3,5-ジエン-1,2-カルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、マロン酸、ピメリン酸、スペリン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラクロロフタル酸、クロロフタル酸、ニトロフタル酸、p-カルボキシフェニル酢酸、p-フェニレン二酢酸、m-フェニレン二酢酸、o-フェニレン二酢酸、ジフェニル酢酸、ジフェニル-p,p’-ジカルボン酸、ナフタレン-1,4-ジカルボン酸、ナフタレン-1,5-ジカルボン酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などを挙げることができる。
【0093】
また、ジカルボン酸以外の多価カルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、ナフタレントリカルボン酸、ナフタレンテトラカルボン酸、ピレントリカルボン酸、ピレンテトラカルボン酸、イタコン酸、グルタコン酸、n-ドデシルコハク酸、n-ドデセニルコハク酸、イソドデシルコハク酸、イソドデセニルコハク酸、n-オクチルコハク酸、n-オクテニルコハク酸などが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0094】
ポリオールは、1分子中に水酸基を2個以上含有する化合物である。このうち、ジオールは1分子中に水酸基を2個含有する化合物であり、好ましく使用される。
具体的には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,18-オクタデカンジオール、1,14-エイコサンデカンジオール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,4-ブテンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリテトラメチレングリコール、水素添加ビスフェノールA、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、上記ビスフェノール類のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物などが挙げられる。これらのうち好ましいものは、炭素数2~12のアルキレングリコール及びビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物であり、特に好ましいものはビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物、及び、これと炭素数2~12のアルキレングリコールとの併用である。
【0095】
三価以上のアルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサエチロールメラミン、テトラメチロールベンゾグアナミン、テトラエチロールベンゾグアナミン、ソルビトール、トリスフェノールPA、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、上記三価以上のアルコール類のアルキレンオキサイド付加物などが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0096】
上記スチレンアクリル樹脂としては、下記重合性単量体からなる単独重合体、又はこれらを2種以上組み合わせて得られる共重合体、さらにはそれらの混合物が挙げられる。スチレン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、p-n-ブチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-n-ヘキシルスチレン、p-n-オクチルスチレン、p-n-ノニルスチレン、p-n-デシルスチレン、p-n-ドデシルスチレン、p-メトキシスチレン及びp-フェニルスチレンのようなスチレン誘導体類;
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、iso-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、iso-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、n-アミル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ジメチルフォスフェートエチル(メタ)アクリレート、ジエチルフォスフェートエチル(メタ)アクリレート、ジブチルフォスフェートエチル(メタ)アクリレート及び2-ベンゾイルオキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、マレイン酸のような(メタ)アクリル誘導体類;
ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルなどのビニルエーテル誘導体類;ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロペニルケトンなどのビニルケトン誘導体類;エチレン、プロピレン、ブタジエンなどのポリオレフィン類。
【0097】
該スチレンアクリル樹脂は、必要に応じて多官能性の重合性単量体を用いることができる。多官能性の重合性単量体としては、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2’-ビス(4-((メタ)アクリロキシジエトキシ)フェニル)プロパン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタリン及びジビニルエーテルなどが挙げられる。
また、重合度を制御するため、公知の連鎖移動剤及び重合禁止剤をさらに添加することも可能である。
【0098】
該スチレンアクリル樹脂を得るための重合開始剤としては、有機過酸化物系開始剤やアゾ系重合開始剤が挙げられる。
有機過酸化物系開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジ-α-クミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロドデカン、t-ブチルパーオキシマレイン酸、ビス(t-ブチルパーオキシ)イソフタレート、メチルエチルケトンパーオキサイド、tert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、クメンヒドロパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド及びtert-ブチル-パーオキシピバレートなどが挙げられる。
アゾ系重合開始剤としては、2,2’-アゾビス-(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル及びアゾビスメチルブチロニトリル、2,2’-アゾビス-(イソ酪酸メチル)などが挙げられる。
【0099】
また、重合開始剤として、酸化性物質と還元性物質とを組み合わせたレドックス系開始剤を用いることもできる。酸化性物質としては、過酸化水素、過硫酸塩(ナトリウム塩、カリウム塩及びアンモニウム塩)の無機過酸化物並びに4価のセリウム塩の酸化性金属塩が挙げられる。還元性物質としては還元性金属塩(2価の鉄塩、1価の銅塩及び3価のクロム塩)、アンモニア、低級アミン(メチルアミン及びエチルアミンのような炭素数1以上6以下程度のアミン)、ヒドロキシルアミンのようなアミノ化合物、チオ硫酸ナトリウム、ナトリウムハイドロサルファイト、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム及びナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートなどの還元性硫黄化合物、低級アルコール(炭素数1以上6以下)、アスコルビン酸又はその塩並びに低級アルデヒド(炭素数1以上6以下)が挙げられる。
【0100】
重合開始剤は、10時間半減期温度を参考に選択され、単独又は混合して利用される。前記重合開始剤の添加量は、目的とする重合度により変化するが、一般的には重合性単量体100.0質量部に対し0.5質量部以上20.0質量部以下が添加される。
【0101】
<着色剤>
本発明に係るトナーは着色剤を含有してもよい。上記着色剤としては、特段の制限なく従来公知のブラック、イエロー、マゼンタ、及びシアンの各色及び他の色の顔料及び染料、磁性体などを用いることができる。
ブラック着色剤としては、カーボンブラックなどのブラック顔料が挙げられる。
【0102】
イエロー着色剤としては、モノアゾ化合物;ジスアゾ化合物;縮合アゾ化合物;イソインドリノン化合物;ベンズイミダゾロン化合物;アントラキノン化合物;アゾ金属錯体;メチン化合物;アリルアミド化合物などのイエロー顔料及びイエロー染料が挙げられる。具体的には、C.I.ピグメントイエロー74、93、95、109、111、128、155、174、180、185、C.I.ソルベントイエロー162などが挙げられる。
【0103】
マゼンタ着色剤としては、モノアゾ化合物;縮合アゾ化合物;ジケトピロロピロール化合物;アントラキノン化合物;キナクリドン化合物;塩基染料レーキ化合物;ナフトール化合物:ベンズイミダゾロン化合物;チオインジゴ化合物;ペリレン化合物などのマゼンタ顔料及びマゼンタ染料などが挙げられる。
具体的には、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、150、166、169、177、184、185、202、206、220、221、238、254、269、C.I.ピグメントバイオレッド19などが挙げられる。
【0104】
シアン着色剤としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アントラキノン化合物;塩基染料レーキ化合物などのシアン顔料及びシアン染料などが挙げられる。
具体的には、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66などが挙げられる。
【0105】
着色剤の含有量は、結着樹脂又は重合性単量体100.0質量部に対して、1.0質量部以上20.0質量部以下であることが好ましい。
【0106】
また、トナーは、磁性体を含有させて磁性トナーとすることも可能である。この場合、磁性体は着色剤の役割をかねることもできる。
磁性体としては、マグネタイト、ヘマタイト、フェライトなどに代表される酸化鉄;鉄、コバルト、ニッケルなどに代表される金属又はこれらの金属とアルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、スズ、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウムなどの金属との合金及びその混合物などが挙げられる。
【0107】
<ワックス>
本発明に係るトナーには、公知のワックスを用いることができる。
具体的には、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラクタムに代表される石油系ワックス及びその誘導体、モンタンワックス及びその誘導体、フィッシャートロプシュ法による炭化水素ワックス及びその誘導体、ポリエチレンに代表されるポリオレフィンワックス及びその誘導体、カルナバワックス、キャンデリラワックスに代表される天然ワックス及びそれらの誘導体が挙げられ、誘導体には酸化物や、ビニルモノマーとのブロック共重合物、グラフト変性物も含まれる。また、高級脂肪族アルコールなどのアルコール;ステアリン酸、パルミチン酸などの脂肪酸又はその酸アミド、エステル、ケトン;硬化ヒマシ油及びその誘導体、植物ワックス、動物ワックスが挙げられる。これらは単独又は併用して用いることができる。
これらのワックスの含有量は、結着樹脂100.0質量部に対して、1.0質量部以上30.0質量部以下であることが好ましい。
【0108】
<荷電制御剤>
本発明に係るトナーは荷電制御剤を含有してもよい。上記荷電制御剤としては、特段の制限なく公知の荷電制御剤を用いることができる。
具体的には、負帯電制御剤として以下の、サリチル酸、アルキルサリチル酸、ジアルキルサリチル酸、ナフトエ酸、ダイカルボン酸などの芳香族カルボン酸の金属化合物又は該芳香族カルボン酸の金属化合物を有する重合体又は共重合体;スルホン酸基、スルホン酸塩基又はスルホン酸エステル基を有する重合体又は共重合体;アゾ染料若しくはアゾ顔料の金属塩又は金属錯体;ホウ素化合物、ケイ素化合物、カリックスアレーンなどが挙げられる。
【0109】
一方、正帯電制御剤として以下の、四級アンモニウム塩、四級アンモニウム塩を側鎖に有する高分子型化合物;グアニジン化合物;ニグロシン系化合物;イミダゾール化合物などが挙げられる。なお、スルホン酸塩基又はスルホン酸エステル基を有する重合体又は共重合体としては、スチレンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-メタクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸、メタクリルスルホン酸などのスルホン酸基含有ビニル系モノマーの単重合体又は結着樹脂の項に示したビニル系単量体と上記スルホン酸基含有ビニル系モノマーの共重合体などを用いることができる。
【0110】
荷電制御剤の含有量は、結着樹脂又は重合性単量体100.0質量部に対して、0.01質量部以上5.0質量部以下であることが好ましい。
【0111】
<外部添加剤>
本発明に係るトナーには、外部添加剤を含有してもよい。
上記外部添加剤としては特段の制限なく従来公知の外部添加剤を用いることができる。
具体的には以下の;湿式製法シリカ、乾式製法シリカなどの原体シリカ微粒子又はそれら原体シリカ微粒子にシランカップリング剤、チタンカップリング剤、シリコーンオイルなどの処理剤により表面処理を施した表面処理シリカ微粒子;フッ化ビニリデン微粒子、ポリテトラフルオロエチレン微粒子などの樹脂微粒子などが挙げられる。
外部添加剤の含有量は、トナー粒子100.0質量部に対して、0.1質量部以上5.0質量部以下であることが好ましい。
【0112】
<トナー母粒子の製造>
トナー母粒子の製造方法は、特に限定されることはなく、懸濁重合法、溶解懸濁法、乳化凝集法、粉砕法などを用いることができる。その中でも、懸濁重合法が好ましい。
【0113】
一例として、懸濁重合法でトナー母粒子を得る方法を以下に述べる。
まず、結着樹脂を生成しうる重合性単量体、及び必要に応じて各種添加物を混合し、分散機を用いて、該材料を溶解又は分散させた重合性単量体組成物を調製する。
各種添加物として、着色剤、ワックス、荷電制御剤、重合開始剤、連鎖移動剤などが挙げられる。
分散機としては、ホモジナイザー、ボールミル、コロイドミル、又は超音波分散機等が挙げられる。
次いで、重合性単量体組成物を、難水溶性の無機微粒子を含有する水系媒体中に投入し、高速撹拌機又は超音波分散機などの高速分散機を用いて、重合性単量体組成物の液滴を調製する(造粒工程)。
【0114】
その後、前記液滴中の重合性単量体を重合してトナー母粒子を得る(重合工程)。
重合開始剤は、重合性単量体組成物を調製する際に混合してもよく、水系媒体中に液滴を形成させる直前に重合性単量体組成物中に混合してもよい。また、液滴の造粒中や造粒完了後、すなわち重合反応を開始する直前に、必要に応じて重合性単量体や他の溶媒に溶解した状態で加えることもできる。
重合性単量体を重合して結着樹脂を得たあと、必要に応じて脱溶剤処理を行い、トナー母粒子の分散液を得るとよい。
【0115】
乳化凝集法や懸濁重合法などによって結着樹脂を得る場合、重合性単量体としては、特段の制限なく従来公知の単量体を用いることができる。具体的には、結着樹脂の項に挙げたビニル系単量体が挙げられる。
重合開始剤としては、特段の制限なく公知の重合開始剤を用いることができる。具体的には前述のものが挙げられる。
【0116】
[プロセスカートリッジ、電子写真装置]
本発明のプロセスカートリッジは、これまで述べてきた電子写真感光体及びトナーと、トナーを収容する現像手段を有し、電子写真装置本体に着脱自在であることを特徴とする。
【0117】
現像手段は、トナーを収容しているトナー収容部を有し、電子写真感光体の表面にトナーを供給するものである。本発明において、現像装置は、トナーを担持させたトナー担持体を感光体に接触させることにより現像を行う接触現像装置であることが好ましい。また、本発明の電子写真装置は、本発明のプロセスカートリッジを有することを特徴とする。
【0118】
図2に、電子写真感光体を備えたプロセスカートリッジを有する電子写真装置の概略構成の一例を示す。
円筒状(ドラム状)の電子写真感光体(
図2の1)は、軸2を中心に矢印方向に所定の周速度(プロセススピード)で回転駆動される。電子写真感光体の表面は、回転過程において、帯電手段3により、正または負の所定電位に帯電される。なお、
図2においては、ローラー型帯電部材によるローラー帯電方式を示しているが、コロナ帯電方式、近接帯電方式、注入帯電方式などの帯電方式を採用してもよい。帯電された電子写真感光体の表面には、露光手段(不図示)から露光光4が照射され、目的の画像情報に対応した静電潜像が形成される。露光光4は、目的の画像情報の時系列電気デジタル画像信号に対応して強度変調された光であり、例えば、スリット露光やレーザービーム走査露光などの像露光手段から出力される。電子写真感光体の表面に形成された静電潜像は、現像手段5内に収容されたトナーで現像(正規現像または反転現像)され、電子写真感光体1の表面にはトナー像が形成される。電子写真感光体の表面に形成されたトナー像は、転写手段6により、転写材7に転写される。このとき、転写手段6には、バイアス電源(不図示)からトナーの保有電荷とは逆極性のバイアス電圧が印加される。また、転写材7が紙である場合、転写材7は給紙部(不図示)から取り出されて、電子写真感光体と転写手段6との間に電子写真感光体1の回転と同期して給送される。電子写真感光体からトナー像が転写された転写材7は、電子写真感光体の表面から分離されて、定着手段8へ搬送され、トナー像の定着処理を受けることにより、画像形成物(プリント、コピー)として電子写真装置の外へプリントアウトされる。電子写真装置は、転写後の電子写真感光体の表面に残ったトナーなどの付着物を除去するための、クリーニング手段9を有していてもよい。また、クリーニング手段を別途設けず、上記付着物を現像手段などで除去する、いわゆる、クリーナーレスシステムを用いてもよい。本発明においては、上記の電子写真感光体、帯電手段3、現像手段5、及びクリーニング手段9などから選択される構成要素のうち、複数の構成要素を容器に納め、一体に支持してプロセスカートリッジを形成し、それを電子写真装置本体に対して着脱自在に構成できる。例えば以下のように構成する。帯電手段3、現像手段5及びクリーニング手段9から選択される少なくとも1つを、電子写真感光体とともに一体に支持してカートリッジ化する。これを、電子写真装置本体のレールなどの案内手段12を用いて、電子写真装置本体に着脱自在なプロセスカートリッジ11とすることができる。電子写真装置は、電子写真感光体の表面を、前露光手段(不図示)からの前露光光10により除電処理する除電機構を有していてもよい。また、本発明のプロセスカートリッジ11を電子写真装置本体に着脱するために、レールなどの案内手段12を設けてもよい。本発明の電子写真装置は、上記プロセスカートリッジを有することを特徴とする。
【0119】
本発明のプロセスカートリッジは、レーザービームプリンター、LEDプリンター、複写機、ファクシミリ、及び、これらの複合機などに用いることができる。
【実施例】
【0120】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を更に詳細に説明する。本発明は、その要旨を超えない限り、下記の実施例によって何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例の記載において、「部」とあるのは特に断りのない限り質量基準である。
以下、実施例により、本発明をより詳細に説明する。なお、実施例中の「部」は「質量部」を意味する。以下に、各物性値の測定方法を記載する。ただし、実施例15~17は参考例である。
【0121】
<導電性粒子の一次粒子径の算出>
まず、メスシリンダー中のメチルエチルケトン(MEK)に電子写真感光体全体を浸けて超音波を照射し、樹脂層を剥がし、その後、電子写真感光体の基体を取り出した。次に、MEKに溶解しない不溶分(感光層及び導電性粒子を含有する保護層)を濾過し、真空乾燥機で乾固した。さらに、得られた固体をテトラヒドロフラン(THF)/メチラールの体積比1:1の混合溶媒に懸濁し、不溶分を濾過後、濾物を回収して真空乾燥機で乾固した。この操作により、導電性粒子と保護層の樹脂とを得た。さらに濾物を電気炉で500℃に加熱して、固体が導電性粒子のみとなるようにして、導電性粒子を回収した。導電性粒子は測定に必要量確保するため、複数本の電子写真感光体に同様の処理を施した。
回収した導電性粒子の一部をイソプロパノール(IPA)に分散させ、その分散液を支持膜付グリッドメッシュ(日本電子株式会社製、Cu150J)に滴下し、走査透過型電子顕微鏡(JEOL社、JEM2800)のSTEMモードにて導電性粒子の観察を行った。観察は導電性粒子の粒子径を算出しやすいように、50万倍から120万倍の拡大倍率で行い、導電性粒子100個のSTEM画像を撮影した。この時、加速電圧200kV、プローブサイズは1nm、画像サイズは1024×1024pixelに設定した。得られたSTEM画像を用いて、画像処理ソフト「Image-Pro Plus (Media Cybernetics社製)」にて、一次粒子径の測定を行った。まず、ツールバーの直線ツール(Straight Line)を用い、STEM画像下部に表示されているスケールバーを選択しておく。その状態でAnalyzeメニューのSet Scaleを選択すると、新規ウインドウが開き、Distance in Pixels欄に選択されている直線のピクセル距離が入力される。ウインドウのKnown Distance欄にスケールバーの値(例えば100)を入力し、Unit of Mesurement欄にスケールバーの単位(例えばnm)を入力し、OKをクリックするとスケール設定が完了する。次に、直線ツールを用いて、導電性粒子の最大径となるように直線を描き、粒子径を算出した。同様の操作を、導電性粒子100個について行い、得られた値(最大径)の個数平均値を導電性粒子の一次粒子径(以下、「個数平均粒径」とも呼ぶ。)とした。
【0122】
<ニオブ原子/チタン原子濃度比率の算出>
感光体から5mm四方のサンプル片を1つ切り出し、超音波ウルトラミクロトーム(Leica社、UC7)により、切削速度0.6mm/sで200nm厚に切削し、薄片サンプルを作製した。この薄片サンプルを、EDS分析装置(エネルギー分散型X線分析装置)を接続した走査透過型電子顕微鏡(JEOL社、JEM2800)のSTEMモードにて、50万倍から120万倍の拡大倍率で観察を行った。
観察される導電性粒子の断面のうち、上記で算出した1次粒子径のおおよそ0.9倍以上1.1倍以下の最大径を有する導電性粒子の断面を目視で選択した。続いて、選択した導電性粒子の断面の構成元素を、EDS分析装置を用いてスペクトルを収集し、EDSマッピング像を作製した。スペクトルの収集及び解析は、NSS(Thermo Fischer Scientific社)を用いて行った。収集条件は、加速電圧200kV、デッドタイムが15以上30以下となるようにプローブサイズを1.0nmまたは1.5nmを適宜選択し、マッピングの分解能を256×256、Frame数を300とした。EDSマッピング像は、導電性粒子の断面100個について取得した。
【0123】
このようにして得られたEDSマッピング像を解析することで、粒子中心部、及び粒子表面から測定粒子の最大径の5%内部におけるニオブ原子濃度(原子%)とチタン原子濃度(原子%)の比率を算出する。具体的には、まずNSSの「ライン抽出」ボタンを押下し、粒子の最大径となるように直線を描き、一方の表面から粒子内部を通り、他方の表面に至るまでの直線上における原子濃度(原子%)の情報を得る。このとき得られた粒子の最大径が、上記で算出した1次粒子径の0.9倍未満または1.1倍を超える範囲であれば、これ以後の解析の対象外とした。(1次粒子径の0.9倍以上1.1倍未満の範囲に最大径をもつ粒子についてのみ、下記に示す解析を行った。)次に、両側の粒子表面において、粒子表面から測定粒子の最大径の5%内部におけるニオブ原子濃度(原子%)を読み取る。同様にして、“粒子表面から測定粒子の最大径の5%内部におけるチタン原子濃度(原子%)”を得る。次いで、これらの値を用いて、下式より、両側の粒子表面における“粒子表面から測定粒子の最大径の5%内部におけるニオブ原子とチタン原子との濃度比率”をそれぞれ得る。
粒子表面から測定粒子の最大径の5%内部におけるニオブ原子とチタン原子との濃度比率=
(粒子表面から測定粒子の最大径の5%内部におけるニオブ原子濃度(原子%))/(粒子表面から測定粒子の最大径の5%内部におけるチタン原子濃度(原子%))
得られた二つの濃度比率の内、値が小さい方を、本発明における“粒子表面から測定粒子の最大径の5%内部におけるニオブ原子とチタン原子との濃度比率”として採用する。
【0124】
また、上記直線上であり、最大径の中点となる位置におけるニオブ原子濃度(原子%)とチタン原子濃度(原子%)を読み取る。これらの値を用いて、下式より、“粒子中心部におけるニオブ原子とチタン原子との濃度比率”を得る。
粒子中心部におけるニオブ原子とチタン原子との濃度比率=
(粒子中心部におけるニオブ原子濃度(原子%))/(粒子中心部におけるチタン原子濃度(原子%))
尚、“粒子中心部における、ニオブ原子濃度/チタン原子濃度で算出される濃度比率に対する、粒子表面から測定粒子の最大径の5%内部における、ニオブ原子濃度/チタン原子濃度で算出される濃度比率”は、下式で算出される。
(粒子表面から測定粒子の最大径の5%内部におけるニオブ原子とチタン原子との濃度比率)/(粒子中心部におけるニオブ原子とチタン原子との濃度比率)
【0125】
<導電性粒子の含有量の算出>
次に、感光体から5mm四方のサンプル片を4つ切り出し、FIB-SEMのSlice&Viewで保護層の2μm×2μm×2μmの3次元化を行った。FIB-SEMのSlice&Viewのコントラストの違いから、保護層の全体積に占める、粒子の含有量を算出した。本実施例においては、Slice&Viewの条件は以下のようにした。
分析用試料加工:FIB法 加工及び観察装置:SII/Zeiss製NVision40 スライス間隔:10nm
観察条件: 加速電圧:1.0kV
試料傾斜:54°
WD:5mm
検出器:BSE検出器
アパーチャー:60μm、
high current ABC:ON
画像解像度:1.25nm/pixel
【0126】
解析領域は縦2μm×横2μmで行い、断面ごとの情報を積算し、縦2μm×横2μm×厚み2μm(8μm3)当たりの体積Vを求める。また、測定環境は、温度:23℃、圧力:1×10-4Paである。なお、加工及び観察装置としては、FEI製のStrata400S(試料傾斜:52°)を用いることもできる。また、断面ごとの情報は、特定した本発明の導電性粒子の面積を画像解析して得た。画像解析は、画像処理ソフト:Media Cybernetics製、Image-Pro Plusを用いて行った。得られた情報を基に、4つのサンプル片のそれぞれにおいて、2μm×2μm×2μmの体積(単位体積:8μm3)中の本発明の導電性粒子の体積Vを求めた。そして、(Vμm3/8μm3×100)を算出した。4つのサンプル片における(Vμm3/8μm3×100)の値の平均値を、保護層の全体積に対する保護層中の本発明の導電性粒子の含有量[体積%]とした。このとき、4つのサンプル片すべてについて、保護層と下層の境界まで加工を行うことで、保護層の膜厚t(cm)を測定し、下記の<保護層の体積抵抗率の測定方法>において体積抵抗率ρvの算出に値を用いた。
【0127】
<導電性粒子に含有されるニオブ原子の定量>
導電性粒子に含有されるニオブ原子の定量は、以下のように行う。
上記の<導電性粒子の一次粒子径の算出>で感光体から回収した導電性粒子を下記プレス成型によりペレット化してサンプルを作製する。作製されたサンプルを用い、蛍光X線分析装置(XRF)で測定を行い、FP法で、導電性粒子全体のニオブ原子含有量の定量を行う。
具体的には、5酸化ニオブとしての定量を行い含有するニオブ原子含有量に換算する。(i)使用装置の例 蛍光X線分析装置3080(理学電気(株))
(ii)サンプル調製 サンプルの調製は、試料プレス成型機MAEKAWA Testing Machine(MFG Co,LTD製)を使用する。アルミリング(型番:3481E1)に導電性粒子0.5gを入れて5.0トンの荷重に設定し1minプレスし、ペレット化させる。
(iii)測定条件
測定径:10φ
測定電位、電圧 50kV、50~70mA
2θ角度 25.12°
結晶板 LiF
測定時間 60秒
【0128】
<導電性粒子の粉末X線回折測定>
本発明の電子写真感光体に使用される導電性粒子にアナターゼ型酸化チタンもしくは、ルチル型酸化チタンが含有されるかを判断する方法を以下に示す。
CuKαのX線による粉末X線回折から得られるチャートから、国立研究開発法人物質・材料研究機構(NIMS)の無機材料データベース(AtomWork)で同定を行う。本発明の電子写真感光体の保護層に含まれる導電性粒子については、前述した(導電性粒子に含有されるNb原子の定量)の処理を一例に準ずる。
使用測定機:理学電気(株)製、X線回折装置RINT-TTRII
X線管球:Cu
管電圧:50KV
管電流:300mA
スキャン方法:2θ/θスキャン
スキャン速度:4.0°/min
サンプリング間隔:0.02°
スタート角度(2θ):5.0°
ストップ角度(2θ):40.0°
アタッチメント:標準試料ホルダー
フィルター:不使用
インシデントモノクロ:使用
カウンターモノクロメーター:不使用
発散スリット:開放
発散縦制限スリット:10.00mm
散乱スリット:開放
受光スリット:開放
平板モノクロメーター:使用
カウンター:シンチレーションカウンター
【0129】
<表面保護層の体積抵抗率の測定方法>
本発明の体積抵抗率の測定には、pA(ピコアンペアーメーター)を使用した。先ず、PETフィルム上に電極間距離(D)180μm、長さ(L)5.9cmの
図3のようなくし型金電極を蒸着により作製し、その上に、厚さ(T1)2μmの表面保護層を設ける。次に、温度23℃/湿度50%RHの環境下にて、くし型電極間に100Vの直流電圧(V)を印加したときの直流電流(I)を測定し、下記式(7)によって体積抵抗率(温度23℃/湿度50%RH)を得た。
体積抵抗率ρv(Ω・cm)=V(V)×T1(cm)×L(cm)/{I(A)×D(cm)}(7)
【0130】
表面保護層の導電性粒子や結着樹脂などの組成について同定が困難な場合は、電子写真感光体の表面の表面抵抗率を測定して体積抵抗率に換算を実施する。表面保護層の単体ではなく、感光体表面に塗工された状態での表面保護層の体積抵抗率を測定する場合は、表面保護層の表面抵抗率を測定し、そこから体積抵抗率に変換するのが望ましい。感光体に塗工された状態での表面保護層上に、くし型電極を金蒸着し、一定の直流電圧を印加したときの、直流電流を測定することで表面抵抗率ρsを下記式(8)から算出できる。
ρv=ρs×t (8) (tは電荷注入層の厚さ)
【0131】
この測定では、微小な電流量を測定するため、抵抗測定装置としては、微小電流の測定が可能な機器を用いて行うことが好ましい。例えば、ヒューレットパッカード製のピコアンメーター4140Bなどが挙げられる。使用するくし型電極や、印加する電圧は電荷注入層の材料や抵抗値によって、適切なSN比が得られるように選定するのが望ましい。
本発明では、電子写真感光体の表面に電極間距離(D)180μm、長さ(L)5.9cmのくし型金電極を蒸着により作製する。次に、温度23℃/湿度50%RH環境下にて、くし型電極間に1000Vの直流電圧(V)を印加したときの直流電流(I)を測定し、表面抵抗率ρs(温度23℃/湿度50%RH)を得た。
さらに前述した<導電性粒子の含有量の算出>によって、表面保護層の膜厚T1(cm)を測定する。前記表面抵抗率ρsに膜厚T1を乗ずる上記式で、体積抵抗率ρv(温度23℃/湿度50%RH)とした。
【0132】
<トナー粒子の重量平均粒径(D4)、個数平均粒径(D1)の測定方法>
トナー粒子の重量平均粒径(D4)、個数平均粒径(D1)は、以下のようにして算出する。
測定装置としては、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター(株)製)を用いる。測定条件の設定及び測定データの解析は、付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター(株)製)を用いる。なお、測定は実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで行う。
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が1.0%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター(株)製)が使用できる。
【0133】
なお、測定、解析を行う前に、以下のように専用ソフトの設定を行う。
専用ソフトの「標準測定方法(SOMME)を変更」画面において、コントロールモードの総カウント数を50,000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター(株)製)を用いて得られた値を設定する。
「閾値/ノイズレベルの測定ボタン」を押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1,600μAに、ゲインを2に、電解水溶液をISOTON IIに設定し、「測定後のアパーチャーチューブのフラッシュ」にチェックを入れる。
専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定」画面において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。
【0134】
具体的な測定法は以下のとおりである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250mL丸底ビーカーに前記電解水溶液200.0mLを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、専用ソフトの「アパーチャーチューブのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100mL平底ビーカーに前記電解水溶液30.0mLを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10%水溶液、和光純薬工業(株)製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を0.3mL加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispersion System Tetra150」(日科機バイオス(株)製)を準備する。超音波分散器の水槽内に3.3Lのイオン交換水を入れ、この水槽中にコンタミノンNを2.0mL添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー粒子10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。なお、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナー粒子を分散した前記(5)の電解水溶液を滴下し、測定濃度が5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50,000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行ない、重量平均粒径(D4)及び個数平均粒径(D1)を算出する。なお、前記専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、「分析/体積統計値(算術平均)」画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)であり、前記専用ソフトでグラフ/個数%と設定したときの、「分析/個数統計値(算術平均)」画面の「平均径」が個数平均粒径(D1)である。
【0135】
<有機ケイ素重合体粒子の長径の測定>
FE-SEMS-4800(日立製作所製)により、3万倍の倍率で、トナー粒子の表面の写真を撮影する。その拡大写真を用いて有機ケイ素重合体粒子の長径の測定を行い、30nm以上300nm以下のものを有機ケイ素重合体とした。トナー粒子100個以上の測定を行い、有機ケイ素重合体粒子の長径の平均値を有機ケイ素重合体の長径とした。
また、トナー粒子の表面に複数種の外添剤が含まれているトナーに対しても対応可能である。S-4800で反射電子像の観察を行った際に、EDAXなど元素分析を用いて、各微粒子の元素を特定することが可能である。また、形状の特徴等から同一種の微粒子を選び出すことが可能である。同一種の微粒子に対して上記測定を行うことで、微粒子の種類毎の長径を算出することができる。
【0136】
<有機ケイ素重合体粒子又は有機ケイ素重合体の分析方法>
固体29Si-NMRでは、有機ケイ素重合体微粒子又は、有機ケイ素重合体の構成化合物のSiに結合する官能基の構造によって、異なるシフト領域にピークが検出される。
各ピーク位置は標準サンプルを用いて特定することでSiに結合する構造を特定することができる。また得られたピーク面積から各構成化合物の存在量比を算出することができる。これにより、T3単位構造に由来するピーク、T2単位構造に由来するピーク及びT1単位構造に由来するピークの面積値を求めることができる。
固体29Si-NMRの測定条件は、具体的には下記の通りである。
装置:JNM-ECX5002 (JEOL RESONANCE)
温度:室温
測定法:DDMAS法 29Si 45°
試料管:ジルコニア3.2mmφ
試料:試験管に粉末状態で充填
試料回転数:10kHz
relaxation delay:180s
Scan:2000
【0137】
(13C-NMR(固体)の測定条件)
固体13C-NMR(固体)では、有機ケイ素重合体微粒子又は、有機ケイ素重合体の構成化合物における、ケイ素原子に結合しているアルキル基量と、ケイ素原子に結合しているアルコキシ基量とを定量することができる。
装置:JEOL RESONANCE製 JNM-ECX500II
試料管:3.2mmφ
試料:前記調製法で得たテトラヒドロフラン不溶分 150mg
測定温度:室温
パルスモード:CP/MAS
測定核周波数:123.25MHz(13C)
基準物質:アダマンタン(外部標準:29.5ppm)
試料回転数:20kHz
コンタクト時間:2ms
遅延時間:2s
積算回数:2000~8000回
そして、29Si-NMRの結果と13C-NMRの結果とを組み合わせることによって、それぞれの構造を有するケイ素原子における、アルキル基の結合量、アルコキシ基の結合量を特定でき、更にその結果から、OH基の結合量を算出できる。得られたアルコキシ基とOH基との結合量に基づいて、アルコキシシラン(-Si-OR)とシラノール基(-Si-OH)の質量の割合を算出する。
これより、有機ケイ素重合体粒子または有機ケイ素重合体中のT1単位構造或いはT2単位構造における、アルコキシシラン構造及びシラノール構造の合計に対する、シラノール構造の割合を特定できる。
具体的には、「T1単位構造或いはT2単位構造に含まれる、アルコキシシラン構造及びシラノール構造の合計含有量に対する、シラノール構造の含有量の割合」は、以下のA~D:
A=T1単位構造に含まれるアルコキシシラン構造の含有量
B=T1単位構造に含まれるシラノール構造の含有量
C=T2単位構造に含まれるアルコキシシラン構造の含有量
D=T2単位構造に含まれるシラノール構造の含有量
を用いて表すと、
(B+C)/(A+B+C+D)×100
となる。尚、完全な定量ができればよいが、定量が困難である場合であっても、それぞれの比率を求めることができれば算出可能である。その場合には、上記式における「含有量」を「含有割合」として算出すればよい。
【0138】
<有機ケイ素重合体微粒子又はシリカ微粒子の水洗法による、トナー粒子に対する固着率の測定方法>
(水洗工程)
50mL容量のバイアルに「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の30質量%水溶液)20gを秤量し、トナー1gと混合する。いわき産業(株)製「KM Shaker」(model:V.SX)にセットし、speedを50に設定して120秒間振とうする。これにより、有機ケイ素重合体微粒子又はシリカ微粒子の固着状態に依っては、有機ケイ素重合体微粒子がトナー粒子表面から、分散液側へ移行する。その後、遠心分離機(H-9R;株式会社コクサン社製)(16.67S-1にて5分間)にて、トナーと上澄み液に移行した有機ケイ素重合体微粒子又はシリカ微粒子を分離する。沈殿しているトナーは、真空乾燥(40℃/24時間)することで乾固させて、水洗後トナーとする。次に、日立超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡S-4800((株)日立ハイテクノロジーズ)を用いて、上記水洗工程を行わないトナー(水洗前トナー)、及び、上記水洗工程を経て得られたトナー(水洗後トナー)を撮影する。そして、撮影されたトナー表面画像を、画像解析ソフトImage-Pro Plusver.5.0((株)日本ローパー)を用いて解析し、被覆率を算出する。
【0139】
S-4800の画像撮影条件は以下のとおりである。
(1)試料作製
試料台(アルミニウム試料台15mm×6mm)に導電性ペーストを薄く塗り、その上にトナーを吹きつける。さらにエアブローして、余分なトナーを試料台から除去し十分乾燥させる。試料台を試料ホルダにセットし、試料高さゲージにより試料台高さを36mmに調節する。
【0140】
(2)S-4800観察条件設定
被覆率の測定に際して、予め、上述したエネルギー分散型X線分析(EDS)による元素分析を行い、トナー粒子表面の有機ケイ素重合体微粒子又はシリカ微粒子を区別した上で測定を行う。
S-4800の筺体に取り付けられているアンチコンタミネーショントラップに液体窒素を溢れるまで注入し、30分間置く。S-4800の「PC-SEM」を起動し、フラッシング(電子源であるFEチップの清浄化)を行う。画面上のコントロールパネルの加速電圧表示部分をクリックし、[フラッシング]ボタンを押し、フラッシング実行ダイアログを開く。フラッシング強度が2であることを確認し、実行する。フラッシングによるエミッション電流が20~40μAであることを確認する。試料ホルダをS-4800筺体の試料室に挿入する。コントロールパネル上の[原点]を押し試料ホルダを観察位置に移動させる。
加速電圧表示部をクリックしてHV設定ダイアログを開き、加速電圧を[1.1kV]、エミッション電流を[20μA]に設定する。オペレーションパネルの[基本]のタブ内にて、信号選択を[SE]に設置し、SE検出器を[上(U)]及び[+BSE]を選択し、[+BSE]の選択ボックスで[L.A.100]を選択し、反射電子像で観察するモードにする。同じくオペレーションパネルの[基本]のタブ内にて、電子光学系条件ブロックのプローブ電流を[Normal]に、焦点モードを[UHR]に、WD[4.5mm]に設定する。コントロールパネルの加速電圧表示部の[ON]ボタンを押し、加速電圧を印加する。
【0141】
(3)トナーの個数平均粒径(D1)算出
コントロールパネルの倍率表示部内をドラッグして、倍率を5000(5k)倍に設定する。操作パネルのフォーカスつまみ[COARSE]を回転させ、ある程度焦点が合ったところでアパーチャアライメントの調整を行う。コントロールパネルの[Align]をクリックし、アライメントダイアログを表示し、[ビーム]を選択する。操作パネルのSTIGMA/ALIGNMENTつまみ(X,Y)を回転し、表示されるビームを同心円の中心に移動させる。次に[アパーチャ]を選択し、STIGMA/ALIGNMENTつまみ(X,Y)を一つずつ回し、像の動きを止める又は最小の動きになるように合わせる。アパーチャダイアログを閉じ、オートフォーカスで、ピントを合わせる。この操作を更に2度繰り返し、ピントを合わせる。その後、トナー300個について粒径を測定して個数平均粒径(D1)を求める。尚、個々の粒子の粒径は、トナーの粒子を観察した際の最大径とする。
【0142】
(4)焦点調整
(3)で得た、個数平均粒径(D1)の±0.1μmの粒子について、最大径の中点を測定画面の中央に合わせた状態でコントロールパネルの倍率表示部内をドラッグして、倍率を10000(10k)倍に設定する。操作パネルのフォーカスつまみ[COARSE]を回転させ、ある程度焦点が合ったところでアパーチャアライメントの調整を行う。コントロールパネルの[Align]をクリックし、アライメントダイアログを表示し、[ビーム]を選択する。操作パネルのSTIGMA/ALIGNMENTつまみ(X,Y)を回転し、表示されるビームを同心円の中心に移動させる。次に[アパーチャ]を選択し、STIGMA/ALIGNMENTつまみ(X,Y)を一つずつ回し、像の動きを止める又は最小の動きになるように合わせる。アパーチャダイアログを閉じ、オートフォーカスで、ピントを合わせる。その後、倍率を50,000(50k)倍に設定し、上記と同様にフォーカスつまみ、STIGMA/ALIGNMENTつまみを使用して焦点調整を行い、再度オートフォーカスでピントを合わせる。この操作を再度繰り返し、ピントを合わせる。ここで、観察面の傾斜角度が大きいと被覆率の測定精度が低くなりやすいので、ピント調整の際に観察面全体のピントが同時に合うものを選ぶことで、表面の傾斜が極力無いものを選択して解析する。
【0143】
(5)画像保存
ABCモードで明るさ合わせを行い、サイズ640×480ピクセルで写真撮影して保存する。この画像ファイルを用いて下記の解析を行う。トナー一つに対して写真を1枚撮影し、トナー25粒子について画像を得る。
【0144】
(6)画像解析
下記解析ソフトを用いて、上述した手法で得た画像を2値化処理することで被覆率を算出する。このとき、上記一画面を正方形で12分割してそれぞれ解析する。画像解析ソフトImage-Pro Plus ver.5.0の解析条件は以下のとおりである。ただし、分割区画内に、粒径が30nm未満、及び、300nmを超える有機ケイ素重合体微粒子(有機ケイ素重合体微粒子の被覆率を測定する場合)、100nm未満、及び、300nmを超えるシリカ微粒子(シリカ微粒子の被覆率を測定する場合)が入る場合はその区画では被覆率の算出を行わないこととする。ソフトImage-ProPlus5.1Jツールバーの「測定」から「カウント/サイズ」、「オプション」の順に選択し、二値化条件を設定する。オブジェクト抽出オプションの中で8連結を選択し、平滑化を0とする。その他、予め選別、穴を埋める、包括線は選択せず、「境界線を除外」は「なし」とする。ツールバーの「測定」から「測定項目」を選択し、面積の選別レンジに2~107と入力する。
被覆率の計算は、正方形の領域を囲って行う。このとき、領域の面積(C)は24,000~26,000ピクセルになるようにする。「処理」-2値化で自動2値化し、有機ケイ素重合体微粒子又はシリカ微粒子の無い領域の面積の総和(D)を算出する。正方形の領域の面積C、有機ケイ素重合体微粒子又はシリカ微粒子の無い領域の面積の総和Dから下記式で被覆率が求められる。
被覆率(%)=100-(D/C×100)
得られた全データの算術平均値を被覆率とする。そして、水洗前トナーと水洗後トナーの、それぞれの被覆率を算出し、
〔水洗後トナーの被覆率〕/〔水洗前トナーの被覆率〕×100
を、本発明の「固着率」とする。
【0145】
<平均円形度の測定方法>
トナー粒子の平均円形度は、フロー式粒子像分析装置「FPIA-3000」(シスメックス社製)によって、校正作業時の測定及び解析条件で測定する。具体的な測定方法は、以下の通りである。まず、ガラス製の容器中に予め不純固形物などを除去したイオン交換水約20mlを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で約3質量倍に希釈した希釈液を約0.2ml加える。更に測定試料を約0.02g加え、超音波分散器を用いて2分間分散処理を行い、測定用の分散液とする。その際、分散液の温度が10℃以上40℃以下となる様に適宜冷却する。超音波分散器としては、発振周波数50kHz、電気的出力150Wの卓上型の超音波洗浄器分散器(例えば「VS-150」(ヴェルヴォクリーア社製))を用い、水槽内には所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2ml添加する。測定には、対物レンズとして「UPlanApro」(倍率10倍、開口数0.40)を搭載した前記フロー式粒子像分析装置を用い、シース液にはパーティクルシース「PSE-900A」(シスメックス社製)を使用した。前記手順に従い調整した分散液を前記フロー式粒子像分析装置に導入し、HPF測定モードで、トータルカウントモードにて3000個のトナー粒子を計測する。そして、粒子解析時の2値化閾値を85%とし、解析粒子径を円相当径1.985μm以上、39.69μm未満に限定し、トナー粒子の平均円形度を求める。
測定にあたっては、測定開始前に標準ラテックス粒子(例えば、Duke Scientific社製の「RESEARCH AND TEST PARTICLES Latex Microsphere Suspensions 5200A」をイオン交換水で希釈)を用いて自動焦点調整を行う。その後、測定開始から2時間毎に焦点調整を実施する。
【0146】
(アナターゼ型酸化チタン粒子1~7の製造例)
硫酸チタニルを含む溶液を加熱して加水分解させ含水二酸化チタンスラリーを作製した後、これを脱水焼成して、アナターゼ型酸化チタン粒子を得た。硫酸チタニル溶液濃度を制御することにより、アナターゼ型の酸化チタン粒子の個数平均粒径の制御を行い、表1に記載のアナターゼ型酸化チタン粒子1~7を得た。
【0147】
【0148】
<導電性粒子の製造>
(導電性粒子1の製造)
100gのアナターゼ型酸化チタン粒子1を水に分散させて、1Lの水懸濁液として60℃に加温した。五塩化ニオブ(NbCl
5)3gを11.4モル/L塩酸100mLに溶解させたニオブ溶液とチタンとして33.7gを含む硫酸チタン溶液600mLを混合したチタンニオブ酸液(液中のニオブ原子とチタン原子の重量比が1.0/33.7となる)と10.7モル/L水酸化ナトリウム水溶液とを懸濁液のpHが2~3となるように3時間かけて同時に滴下(並行添加)した。滴下終了後、懸濁液をろ過、洗浄し、110℃で8時間乾燥した。この乾燥物を大気雰囲気中、800℃にて1時間の加熱処理(焼成処理)を行い、ニオブ原子含有酸化チタン粒子1を得た。
次に、
・ニオブ原子含有酸化チタン粒子1 100.0部
・表面処理剤1(下記式(S-1))(商品名:KBM-3033、信越化学工業(株) 製) 3.0部
【化2】
・トルエン 200.0部
これらを混合し、攪拌装置で4時間攪拌した後、ろ過、洗浄後、更に130℃で3時間加熱処理を行って、導電性粒子1が得られた。導電性粒子の表面の物性や粒子径を表2に示す。
【0149】
(導電性粒子2~9、14の製造)
導電性粒子1の製造において、用いる芯材の種類、チタンニオブ酸液の濃度や量、被覆時の条件を適宜変更した。それ以外は導電性粒子1の製造と同様にして導電性粒子2~9、14の粉末を得た。なお、表2中の含有量は、ニオブ原子含有酸化チタン粒子におけるニオブ原子の含有量であり、蛍光X線による元素分析法(XRF)により測定して得た値である。なお、導電性粒子9は、アナターゼ型酸化チタン粒子7と同じものである。
【0150】
(導電性粒子10の製造)
以下の材料を用意した。
・酸化スズ粒子(商品名:S-2000、三菱マテリアル(株)製) 100.0部
・表面処理剤2(下記式(S-2))(商品名:デシルトリメトキシシラン、東京化成工 業(株)製) 20.0部
・トルエン 200.0部
これらを混合し、攪拌装置で4時間攪拌した後、ろ過、洗浄後、更に130℃で3時間加熱処理を行って、表面処理をした。導電性粒子の表面の物性や粒子径を表2に示す。
【化3】
【0151】
(導電性粒子11の製造)
個数平均粒径6nm、ニオブ原子含有量0.50質量%の、略球形状のアナターゼ型二酸化チタン粒子8を導電性粒子11として用いた。導電性粒子11の物性を表2に示す。
【0152】
(導電性粒子12の製造)
導電性粒子1の製造において、用いる芯材を個数平均粒径150nm、ニオブ原子含有量が0.20質量%の、略球形状のアナターゼ型酸化チタン9を用いること、導電性粒子1の製造における、被覆時の条件を変更した。それ以外は導電性粒子1の製造と同様に行った。導電性粒子12の物性を表2に示す。
【0153】
(導電性粒子13の製造)
硫酸チタニル水溶液を加水分解して得た含水二酸化チタンスラリーに、硫酸ニオブ(水溶性のニオブ化合物)を添加した。添加量は、スラリー中のチタン量(二酸化チタン換算)に対し、ニオブイオンとして0.2質量%の割合で硫酸ニオブを添加した。硫酸チタニル水溶液に硫酸ニオブをニオブイオンとして0.2質量%の割合で加えたものを加水分解し、含水二酸化チタンスラリーを得た。次に、ニオブイオン等を含む含水二酸化チタンスラリーを脱水して、焼成温度は1000℃で焼成した。これにより、個数平均粒径130nm、ニオブ原子を0.2質量%含有したアナターゼ型酸化チタン粒子10を得た。
100gの個数平均粒径130nm、0.2wt%の球形状のアナターゼ型酸化チタン粒子10を水に分散させて、1Lの水懸濁液として60℃に加温した。チタンとして33.7gを含む硫酸チタン溶液600mLを混合したチタン酸液と10.7モル/L水酸化ナトリウム溶液とを懸濁液のpHが2~3となるように3時間かけて同時に滴下(並行添加)した。滴下終了後、懸濁液をろ過、洗浄し、110℃で8時間乾燥した。この乾燥物を大気雰囲気中、800℃にて1時間の加熱処理を行った。これにより、導電性粒子13を得た。
導電性粒子13の物性を表2に示す。
【0154】
【表2】
表中、Aは、「粒子表面から測定粒子の最大径の5%内部におけるニオブ原子とチタン原子との濃度比率」であり、Bは、「粒子中心部におけるニオブ原子とチタン原子との濃度比率」である。
【0155】
[電子写真感光体の製造例1]
直径24mm、長さ257.5mmのアルミニウムシリンダー(JIS-A3003、 アルミニウム合金)を支持体(導電性支持体)とした。
【0156】
(導電層の製造例1)
次に、以下の材料を用意した。
・金属酸化物粒子としての酸素欠損型酸化スズ(SnO2)で被覆されている酸化チタン(TiO2)粒子(体積平均粒径230nm)214部
・結着材料としてのフェノール樹脂(フェノール樹脂のモノマー/オリゴマー)(商品名:プライオーフェンJ-325、大日本インキ化学工業(株)製、樹脂固形分:60質量%)132部
・溶剤としての1-メトキシ-2-プロパノール98部
これらを、直径0.8mmのガラスビーズ450部を用いたサンドミルに入れ、回転数:2000rpm、分散処理時間:4.5時間、冷却水の設定温度:18℃の条件で分散処理を行い、分散液を得た。この分散液からメッシュ(目開き:150μm)でガラスビーズを取り除いた。
得られた分散液に、表面粗し付与材としてのシリコーン樹脂粒子(商品名:トスパール120、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ(株)製、平均粒径2μm)を添加した。シリコーン樹脂粒子の添加量は、ガラスビーズを取り除いた後の分散液中の金属酸化物粒子と結着材料の合計質量に対して10質量%となるようにした。また、分散液中の金属酸化物粒子と結着材料の合計質量に対して0.01質量%になるように、レベリング剤としてのシリコーンオイル(商品名:SH28PA、東レ・ダウコーニング(株)製)を分散液に添加した。
次に、分散液中の金属酸化物粒子と結着材料と表面粗し付与材の合計質量(すなわち、固形分の質量)が分散液の質量に対して67質量%となるように、メタノールと1-メトキシ-2-プロパノールの混合溶媒(質量比1:1)を分散液に添加した。その後、攪拌することによって、導電層用塗布液を調製した。この導電層用塗布液を支持体上に浸漬塗布し、これを1時間140℃で加熱することによって、膜厚が30μmの導電層を形成した。
【0157】
(下引き層の製造例1)
次に、以下の材料を用意した。
・下記式(E-1)で示される電子輸送物質3.11部
・ブロックイソシアネート(商品名:デュラネートSBB-70P、旭化成ケミカルズ(株)製)6.49部
・スチレン-アクリル樹脂(商品名:UC-3920、東亞合成製)0.4部
・シリカスラリー(製品名:IPA-ST-UP、日産化学工業製、固形分濃度:15質量%、粘度:9mPa・s)1.8部
これらを、1-ブタノール48部とアセトン24部の混合溶媒に溶解して下引き層用塗布液を調製した。この下引き層用塗布液を導電層上に浸漬塗布し、これを30分間170℃で加熱することによって、膜厚が0.7μmの下引き層を形成した。
【化4】
次に、CuKα特性X線回折より得られるチャートにおいて、7.5°及び28.4°の位置にピークを有する結晶形のヒドロキシガリウムフタロシアニン10部とポリビニルブチラール樹脂(商品名:エスレックBX-1、積水化学工業社製)5部を用意した。これらをシクロヘキサノン200部に添加し、直径0.9mmのガラスビーズを用いたサンドミル装置で6時間分散した。これにシクロヘキサノン150部と酢酸エチル350部をさらに加えて希釈して電荷発生層用塗布液を得た。得られた塗布液を下引き層上に浸漬塗布し、95℃で10分間乾燥することにより、膜厚が0.20μmの電荷発生層を形成した。
【0158】
なお、X線回折の測定は、次の条件で行ったものである。
[粉末X線回折測定]
使用測定機:理学電気(株)製、X線回折装置RINT-TTRII
X線管球:Cu 管電圧:50KV 管電流:300mA
スキャン方法:2θ/θスキャン
スキャン速度:4.0°/min
サンプリング間隔:0.02°
スタート角度(2θ):5.0°
ストップ角度(2θ):40.0°
アタッチメント:標準試料ホルダー
フィルター:不使用
インシデントモノクロ:使用
カウンターモノクロメーター:不使用
発散スリット:開放
発散縦制限スリット:10.00mm
散乱スリット:開放
受光スリット:開放
平板モノクロメーター:使用
カウンター:シンチレーションカウンター
【0159】
(感光層の製造例1)
次に、以下の材料を用意した。
・下記式(C-1)で示される電荷輸送物質(正孔輸送性物質)6部
・下記式(C-2)で示される電荷輸送物質(正孔輸送性物質)3部
・下記式(C-3)で示される電荷輸送物質(正孔輸送性物質)1部
・ポリカーボネート(商品名:ユーピロンZ400、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製)10部
・下記式(C-4)と下記式(C-5)の共重合ユニットを有するポリカーボネート樹脂 (x/y=0.95/0.05:粘度平均分子量=20000)0.02部
これらを、オルトキシレン25部/安息香酸メチル25部/ジメトキシメタン25部の混合溶媒に溶解させることによって電荷輸送層用塗布液を調製した。この電荷輸送層用塗布液を電荷発生層上に浸漬塗布して塗膜を形成し、塗膜を30分間120℃で乾燥させることによって、膜厚が12μmの電荷輸送層を形成した。
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【0160】
(表面保護層の製造例1)
次に、以下の材料を用意した。
・結着樹脂として下記構造式(O-1)で示される化合物100.0部
・導電性粒子1として上記の表面処理したニオブ原子含有酸化チタン粒子100.0部
これらを、1-プロパノール100部/シクロヘキサン100部の混合溶媒に混合し、攪拌装置で6時間攪拌した。このようにして、表面保護層用塗布液を調製した。この表面保護層用塗布液を電荷輸送層上に浸漬塗布して塗膜を形成し、得られた塗膜を6分間50℃で乾燥させた。その後、窒素雰囲気下にて、加速電圧70kV、ビーム電流5.0mAの条件で支持体(被照射体)を300rpmの速度で回転させながら、1.6秒間電子線を塗膜に照射した。表面保護層位置の線量は15kGyであった。
その後、窒素雰囲気下にて、塗膜の温度を117℃に昇温させた。電子線照射から、その後の加熱処理までの酸素濃度は10ppmであった。
次に、大気中において塗膜の温度が25℃になるまで自然冷却した後、塗膜の温度が120℃になる条件で1時間加熱処理を行い、膜厚2μmの表面保護層を形成した。このようにして、電子写真感光体1を製造した。
【化10】
【0161】
(電子写真感光体の製造例2~20、24、25)
導電性粒子の種類、表面保護層における導電性粒子の添加部数を適宜変更した以外は、電子写真感光体製造例1と同様にして、表3に示す、表面保護層の体積抵抗率、及び保護層中の導電性粒子の含有量(体積%)となる電子写真感光体2~20、24、25を製造した。
【0162】
(電子写真感光体の製造例21)
表面保護層用塗布液を以下のように調製した。まず、以下の材料を用意した。
・結着樹脂として、ラジカル重合性モノマー(製品名:TMPTA、東京化成(株)製) 100.0部
・下記式(H-1)で示される化合物 50.0部
・下記式(H-2)で示される化合物 1.5部
・下記式(H-3)で示される化合物 1.5部
・フッ素樹脂粒子(製品名:MPE-056、三井・デュポンフロロケミカル(株)製) 15.0部
・光重合開始剤(製品名:イルガキュア184、BASFジャパン(株)製) 7.5部
【化11】
【化12】
【化13】
これらをテトラヒドロフラン1000部に混合し、攪拌装置で6時間攪拌し、これにより表面保護層用塗布液を調製した。この表面保護層用塗布液を窒素気流中でスプレー塗工法により電荷輸送層上に塗布して塗膜を形成し、10分間窒素気流中に放置して、指触乾燥した。その後、酸素濃度が2%以下となるようにブース内を窒素ガスで置換した紫外線光照射ブースにて、紫外線照射を以下の条件で行った。
メタルハライドランプ:160W/cm
照射距離:120mm照射強度:700mW/cm
2
照射時間:60秒
さらに、130℃で20分間乾燥することで、膜厚が5μmの表面保護層を形成した。
それ以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体21を得た。
【0163】
(電子写真感光体の製造例22)
電子写真感光体の製造例21において、表面保護層用塗布液の調製において、導電性粒子の含有量が、該表面保護層の全体積に対して、42.0%になるよう、添加部数を変更すること以外は、電子写真感光体製造例21と同様にして電子写真感光体22を得た。
【0164】
(電子写真感光体の製造例23)
・導電性粒子11 100.0部
・下記式(H-7)で示される化合物100.0部
・重合開始剤(1-ヒドロキシシクロヘキシル(フェニル)メタノン)10部
これらを、n-プロピルアルコール400.0部に混合してサンドミルで2時間分散して保護層用塗布液を作製した。この保護層用塗布液を用いた以外は、電子写真感光体の製造例21と同様に電子写真感光体を製造し、電子写真感光体23を得た。
【化14】
【0165】
【0166】
<トナーの製造例>
<トナー母粒子分散液の製造例>
<トナー母粒子分散液1>
イオン交換水390.0部を入れた反応容器に、リン酸ナトリウム(12水和物)11.2部を投入し、窒素パージしながら65℃で1.0時間保温した。T.K.ホモミクサー(特殊機化工業株式会社製)を用いて、12000rpmにて撹拌した。撹拌を維持しながら、イオン交換水10.0部に7.4部の塩化カルシウム(2水和物)を溶解した塩化カルシウム水溶液を反応容器に一括投入し、分散安定剤を含む水系媒体を調製した。さらに、反応容器内の水系媒体に1.0モル/Lの塩酸を投入し、pHを6.0に調整し、水系媒体1を調製した。
【0167】
(重合性単量体組成物の調製)
・スチレン 60.0部
・C.I.Pigment Blue15:3 6.5部
上記材料をアトライタ(日本コークス工業株式会社製)に投入し、さらに直径1.7mmのジルコニア粒子を用いて、220rpmで5.0時間分散させて、顔料が分散された着色剤分散液を調製した。
次いで、該着色剤分散液に下記材料を加えた。
・スチレン 10.0部
・アクリル酸n-ブチル 30.0部
・ポリエステル樹脂 5.0部 (テレフタル酸と、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド2モル付加物との縮重合物、重量平均分子量Mw=10000、酸価:8.2mgKOH/g)
・離型性ワックス:HNP9(融点:76℃、日本精蝋社製) 5.0部
・可塑性ワックス:エチレングリコールジステアレート 10.0部
上記材料を65℃に保温し、T.K.ホモミクサーを用いて、500rpmにて均一に溶解、分散し、重合性単量体組成物を調製した。
【0168】
(造粒工程)
水系媒体1の温度を70℃、撹拌装置の回転数を12500rpmに保ちながら、水系媒体1中に重合性単量体組成物を投入し、重合開始剤であるt-ブチルパーオキシピバレート8.0部を添加した。そのまま撹拌装置にて12500rpmを維持しつつ10分間造粒した。
【0169】
(重合工程)
高速撹拌装置からプロペラ撹拌羽根を備えた撹拌機に変更し、200rpmで撹拌しながら70℃を保持して5.0時間重合を行い、さらに85℃に昇温して2.0時間加熱することで重合反応を行った。さらに、98℃に昇温して3.0時間加熱することで残留モノマーを除去し、イオン交換水を加えて分散液中のトナー母粒子濃度が30.0%になるように調整し、トナー母粒子1が分散したトナー母粒子分散液1を得た。
【0170】
<有機ケイ素重合体粒子の作製>
下記の手順により有機ケイ素重合微粒子1を調製した。第一工程として、温度計、攪拌機を備えた反応容器に、水:360部を入れ、濃度5.0質量%の塩酸:17部を添加して均一溶液とした。これを温度25℃で撹拌しながらメチルトリメトキシシラン136部を添加し、5時間撹拌した後、濾過してシラノール化合物又はその部分縮合物を含む透明な反応液を得た。
第二工程として、温度計、攪拌機、滴下装置を備えた反応容器に、水:540部を入れ、濃度10.0質量%のアンモニア水:19部を添加して均一溶液とした。これを温度30℃で撹拌しながら、第一工程で得られた反応液100部を0.60時間かけて滴下し、6時間撹拌し懸濁液を得た。得られた懸濁液を遠心分離器にかけて微粒子を沈降させ取り出し、温度180℃の乾燥機で24時間乾燥させて有機ケイ素重合体粒子1を得た。
【0171】
<有機ケイ素重合体微粒子2~11の調製>
有機ケイ素重合体微粒子1の調製において、表4に記載の部数とし、また製造条件を表4に記載のように変更した以外は同様にして、有機ケイ素重合体微粒子2~11を得た。
【0172】
【0173】
<トナー粒子の製造例>
<トナー粒子1>
トナー母粒子分散液1のpHを1mol/Lの塩酸で1.5に調整して1.0時間撹拌後、イオン交換水で洗浄しながら、ろ過、乾燥した。得られた粉体を風力式分級機で分級して、トナー粒子1を得た。
トナー粒子1の個数平均粒径(D1)は6.2μm、重量平均粒径(D4)は6.7μm、平均円形度は0.985であった。
【0174】
<トナー粒子2>
下記材料を秤量し、混合及び溶解させた。
・スチレン 70.0部
・アクリル酸n-ブチル 25.1部
・アクリル酸 1.3部
・ヘキサンジオールジアクリレート 0.4部
・n-ラウリルメルカプタン 3.2部
この溶液にネオゲンRK(第一工業製薬株式会社製)の10%水溶液を添加して、分散させた。さらに10分間ゆっくりと撹拌しながら、過硫酸カリウム0.15部をイオン交換水10.0部に溶解させた水溶液を添加した。
窒素置換をした後、温度70℃で6.0時間乳化重合を行った。重合終了後、反応液を室温まで冷却し、イオン交換水を添加することで固形分濃度が12.5%、個数平均粒径が0.2μmの樹脂粒子分散液を得た。
【0175】
以下の材料を秤量し混合した。
・離型性ワックス:HNP9(融点:76℃、日本精蝋社製) 15.0部
・可塑性ワックス:エチレングリコールジステアレート 45.0部
・イオン性界面活性剤ネオゲンRK(第一工業製薬(株)製) 2.0部
・イオン交換水 240.0部
以上を100℃に加熱して、IKA製ウルトラタラックスT50にて十分に分散後、圧力吐出型ゴーリンホモジナイザーで115℃に加温して分散処理を1時間行い、体積平均粒径150nm、固形分量20%の離型剤粒子分散液を得た。
【0176】
以下の材料を秤量し混合した。
・C.I.Pigment Blue15:3 45.0部
・ネオゲンRK 5.0部
・イオン交換水 190.0部
上記成分を混合し、ホモジナイザー(IKA製ウルトラタラックス)により10分間分散した後に、アルティマイザー(対抗衝突型湿式粉砕機:(株)スギノマシン製)を用い圧力250MPaで20分間分散処理を行い、着色剤粒子の体積平均粒径が120nmで、固形分量が20%の着色剤粒子分散液を得た。
【0177】
・樹脂粒子分散液 160.0部
・ワックス粒子分散液 33.4部
・着色剤粒子分散液 14.4部
・硫酸マグネシウム 0.3部
上記材料を、ホモジナイザー(IKA社製)を用いて分散させた後、撹拌させながら、65℃まで加温した。65℃で1.0時間撹拌した後、光学顕微鏡にて観察すると、個数平均粒径が6.0μmである凝集体粒子が形成されていることが確認された。ネオゲンRK(第一工業製薬株式会社製)2.5部加えた後、80℃まで昇温して2.0時間撹拌して、融合した着色樹脂粒子を得た。
【0178】
冷却後、ろ過し、ろ別した固体を2500.0部のイオン交換水で、1.0時間撹拌洗浄した。前記着色樹脂を含む分散液をろ過してから乾燥させた。得られた粉体を風力式分級機で分級して、トナー粒子2を得た。トナー粒子2の個数平均粒径(D1)は6.2μm、重量平均粒径(D4)は6.7μmであった。
【0179】
<トナー粒子3>
・結着樹脂 スチレン-アクリル酸n-ブチル共重合体: 100.0部(スチレン-アクリル酸n-ブチル共重合比=70:30、Mp=22000、Mw=35000、Mw/Mn=2.4
・C.I.Pigment Blue15: 6.5部
・非晶性ポリエステル樹脂(テレフタル酸とプロピレンオキサイド変性ビスフェノールAの縮合体 Mw:7800、Tg:70℃、酸価8.0mgKOH/g): 5.0部
・離型性ワックス:HNP9(融点:76℃、日本精蝋社製) 5.0部
・可塑性ワックス:エチレングリコールジステアレート 10.0部
上記材料をFMミキサ(日本コークス工業株式会社製)で前混合した後、二軸混練機(池貝鉄工社製PCM-30型)によって、溶融混練して混練物を得た。得られた混練物を冷却し、ハンマーミル(ホソカワミクロン社製)で粗粉砕した後、機械式粉砕機(ターボ工業社製T-250)で粉砕して微粉砕粉末を得た。得られた微粉砕粉末を、コアンダ効果を利用した多分割分級機(日鉄鉱業社製:EJ-L-3型)を用いて分級し、トナー粒子3を得た。トナー粒子3の個数平均粒径(D1)は6.2μm、重量平均粒径(D4)は6.7μmであった。
【0180】
<トナーの製造例1>
100部のトナー粒子1と、2.0部の有機ケイ素重合体微粒子1をヘンシェルミキサー(三井三池化工機株式会社製)で5分間混合してトナー1を得た。ヘンシェルミキサーのジャケット温度は10℃に設定し、回転羽根の周速は38m/secとした。
【0181】
<トナーの製造例2~13、16、17>
トナーの製造例1において、表5に従ってトナー粒子の種類及び有機ケイ素重合体微粒子を変更する以外は、トナー1の製造と同様に行い、トナー2~13、トナー16、17を得た。
【0182】
<トナーの製造例14>
<有機ケイ素化合物液1の製造例>
・イオン交換水 70.0部
・メチルトリエトキシシラン 30.0部
上記材料を200mLのビーカーに秤量し、10%塩酸でpHを3.5に調整した。その後、ウォーターバスで30℃に温度を調節しながら、1.0時間撹拌し、有機ケイ素化合物液1を作製した。
反応容器内に下記サンプルを秤量し、プロペラ撹拌翼を用いて混合した。
・トナー母粒子分散液1 500.0部
・有機ケイ素化合物液1 35.0部
次に、1mol/LのNaOH水溶液を用いて、得られた混合液のpHを6.0に調整し、混合液の温度を50℃にした後に、プロペラ撹拌羽根を用いて混合しながら、1.0時間保持した。その後、1mol/LのNaOH水溶液を用いて、混合液のpHを9.5に調整し、4.0時間保持した。温度を25℃に下げたのち、1mol/Lの塩酸でpHを1.5に調整して1.0時間撹拌後、イオン交換水で洗浄しながら、ろ過してから乾燥させた。得られた粉体を風力式分級機で分級して、トナー14を得た。トナー14の個数平均粒径(D1)は6.2μm、重量平均粒径(D4)は6.7μmであった。得られたトナー14の物性値を表5に示す。
【0183】
<トナーの製造例15>
反応容器内に下記サンプルを秤量し、プロペラ撹拌翼を用いて混合した。
・トナー母粒子分散液1 500.0部
・有機ケイ素化合物液1 35.0部
次に、1mol/LのNaOH水溶液を用いて、得られた混合液のpHを6.0に調整し、混合液の温度を45℃にした後に、プロペラ撹拌羽根を用いて混合しながら、1.0時間保持した。その後、1mol/LのNaOH水溶液を用いて、混合液のpHを8.0に調整し、4.0時間保持した。
温度を25℃に下げたのち、1mol/Lの塩酸でpHを1.5に調整して1.0時間撹拌後、イオン交換水で洗浄しながら、ろ過してから乾燥させた。得られた粉体を風力式分級機で分級して、トナー15を得た。トナー15の個数平均粒径(D1)は6.2μm、重量平均粒径(D4)は6.7μmであった。得られたトナー15の物性値を表5に示す。
【0184】
<トナーの製造例18>
反応容器内に下記サンプルを秤量し、プロペラ撹拌翼を用いて混合した。
・トナー母粒子分散液1 500.0部
・有機ケイ素化合物液1 35.0部
次に、1mol/LのNaOH水溶液を用いて、得られた混合液のpHを6.0に調整し、混合液の温度を45℃にした後に、プロペラ撹拌羽根を用いて混合しながら、1.0時間保持した。その後、1mol/LのNaOH水溶液を用いて、混合液のpHを7.0に調整し、4.0時間保持した。
温度を25℃に下げたのち、1mol/Lの塩酸でpHを1.5に調整して1.0時間撹拌後、イオン交換水で洗浄しながら、ろ過してから乾燥させた。得られた粉体を風力式分級機で分級して、トナー18を得た。トナー18の個数平均粒径(D1)は6.2μm、重量平均粒径(D4)は6.7μmであった。得られたトナー18の物性値を表5に示す。
【0185】
<トナーの製造例19>
100部のトナー粒子1と、2.0部の有機ケイ素重合体微粒子1、1.0部の個数平均粒径100nmのシリカ粒子を、ヘンシェルミキサ(三井三池化工機株式会社製)で5分間混合してトナー19を得た。ヘンシェルミキサーのジャケット温度は10℃に設定し、回転羽根の周速は38m/secとした。
【0186】
【0187】
<評価>
画像形成装置としてLBP712Ci(キヤノン社製)の改造機を使用した。本体のプロセススピードを320mm/secに改造した。そして、この条件で画像形成が可能となるように必要な調整を行った。また、シアンカートリッジからトナーを除去し、代わりに評価するトナーを100gずつ充填した。さらに、電子写真感光体を本発明に係る電子写真感光体1に変更した。このようにしたトナーカートリッジをブラックステーションに装着し、他のステーションにはダミーカートリッジを装着して、下記の画像出力試験を実施した。評価結果を表6に示す。
【0188】
<ハーフトーンでのガサツキ評価>
高温高湿環境下(温度30.0℃/湿度80%RH)において、横線で1%の印字率の画像を1000枚プリントアウト後にハーフトーン画像を出力して、そのきめ細かさを目視評価した。その後、横線で1%の印字率の画像を10000枚プリントアウト後にハーフトーン画像を出力して、そのきめ細かさを目視評価した。評価紙として、キヤノンカラーレーザーコピア用紙(A4:81.4g/m2、以下、特に断らない限り本用紙を使用しているものとする)を用いた。
(評価基準)
A:均一にきめ細かい。
B:画像に僅かにモヤがかかっている。
C:画像にモヤがかかっている。
D:濃淡の目立ったガサツキ不良画像が発生。
【0189】
<かぶり評価1>
低温低湿環境下(温度15℃/湿度10%RH)、及び、高温高湿環境下(温度30℃ /湿度80%RH)において、横線で1%の印字率の画像を10000枚プリントアウト後、48時間放置してからさらにプリントアウトした横線で1%の印字率の画像の非画像部の反射率(%)を「REFLECTOMETER MODEL TC-6DS」(東京電色社製)で測定した。得られた反射率を、同様にして測定した未使用のプリントアウト用紙(標準紙)の反射率(%)から差し引いた数値(%)を用いて評価した。数値が小さい程、画像カブリが抑制されていることになる。評価は、グロス紙モードで、普通紙(HP Brochure Paper 200g,Glossy、HP社製、200g/m2)を用いて行った。
(評価基準)
A:0.5%以下
B:0.5%を超えて1.5%以下
C:1.5%を超えて3.0%以下
D:3.0%を超える
【0190】
<かぶり評価2>
高温高湿環境下(温度30℃/湿度80%RH)において、横線で1%の印字率の画像を12000枚プリントアウト後、48時間放置してからさらにプリントアウトした横線で1%の印字率の画像の非画像部の反射率(%)を「REFLECTOMETER MODEL TC-6DS」(東京電色社製)で測定した。評価はかぶり評価1と同様の方法及び評価基準で行った。
【0191】
<転写性の評価(転写効率)>
転写効率とは、感光ドラム上に現像されたトナーが何%中間転写ベルト上に転写されたかを示す転写性の指標である。転写効率の評価は、ベタ画像を連続して記録媒体上に形成して行った。
まず、測定環境としては、低温低湿環境下(温度15℃、湿度10%RH)で行い、横線で1%の印字率の画像を1000枚プリントアウト後にベタ画像を連続して10枚記録媒体上に形成して行った。
上記画像を10枚形成した後、中間転写ベルト上に転写されたトナーと転写後も感光ドラム上に残留したトナーを透明なポリエステル製の粘着テープによりはぎ取った。はぎ取った粘着テープを紙上に貼ったもののトナー濃度から、粘着テープのみを紙上に貼ったものの濃度を差し引いた濃度差をそれぞれ算出した。転写効率は、それぞれのトナー濃度差の和を100とした場合の中間転写ベルト上のトナー濃度差の割合であり、この割合が高いほど転写効率に優れる。転写効率の評価を下記の基準で判断した。なお、トナー濃度はX-Riteカラー反射濃度計(500シリーズ)で測定した。
A:転写効率が95%以上
B:転写効率が90%以上95%未満
C:転写効率が90%未満
【0192】
【0193】
本実施形態の開示は、以下の構成を含む。
(構成1)
電子写真装置本体に着脱自在であるプロセスカートリッジであって、
該プロセスカートリッジは、
電子写真感光体と、
トナーを収容しているトナー収容部を有し、該電子写真感光体の表面に該トナーを供給する現像手段と、
を有し、
該電子写真感光体は、導電性支持体、及び、該導電性支持体の上に形成された、感光層と表面保護層とをこの順で有し、
該表面保護層は、導電性粒子を含有し、
該導電性粒子の含有量が、該表面保護層の全体積に対して、5.0体積%以上70.0体積%以下であり、
該表面保護層の体積抵抗率が、1.0×109Ω・cm以上1.0×1014Ω・cm以下であり、
該トナー収容部に収容された該トナーが、以下の(i)または(ii):
(i)結着樹脂を含有するトナー粒子、及び、有機ケイ素重合体粒子を有するトナーである、
(ii)結着樹脂を含有し、表面に有機ケイ素重合体を有するトナー粒子を有するトナーである、
の規定を満たすものであり、
該(i)の規定を満たす場合における該有機ケイ素重合体粒子、または、該(ii)の規定を満たす場合における該有機ケイ素重合体が、
T3単位構造を有するケイ素原子と、
T2単位構造を有するケイ素原子及びT1単位構造を有するケイ素原子からなる群より選択される少なくとも一の単位構造と、
を有しており、
該(i)の規定を満たす場合における該有機ケイ素重合体粒子、または、該(ii)の規定を満たす場合における該有機ケイ素重合体は、29Si-NMRの測定において、全ケイ素原子に由来するピークの合計面積に対する、T2単位構造を有するケイ素原子に由来するピークの面積とT1単位構造を有するケイ素原子に由来するピークの面積との合計面積の割合が、0.10以上0.40以下である、
ことを特徴とするプロセスカートリッジ。
(構成2)
前記有機ケイ素重合体粒子、または、前記有機ケイ素重合体の29Si-NMRの測定において、前記有機ケイ素重合体粒子、または前記有機ケイ素重合体に含有される全ケイ素原子に由来するピークの合計面積に対する、T3単位構造を有するケイ素原子に由来するピークの面積の割合が、0.50以上0.90以下である構成1に記載のプロセスカートリッジ。
(構成3)
前記トナーが、結着樹脂を含有するトナー粒子、及び、有機ケイ素重合体粒子を有するトナーであり、前記有機ケイ素重合体粒子の長径が30nm以上300nm以下である構成1又は2に記載のプロセスカートリッジ。
(構成4)
前記有機ケイ素重合体粒子の水洗法における、前記トナー粒子に対する固着率が25%以下である構成3に記載のプロセスカートリッジ。
(構成5)
前記トナーの平均円形度が、0.950以上0.990以下である、構成1~4のいずれか1項に記載のプロセスカートリッジ。
(構成6)
前記有機ケイ素重合体粒子、または、前記有機ケイ素重合体中のT1単位構造及びT2単位構造に含まれる、アルコキシシラン構造及びシラノール構造の合計含有量に対する、シラノール構造の含有の割合が、98質量%以上である構成1~5のいずれか1項に記載のプロセスカートリッジ。
(構成7)
前記導電性粒子が、酸化チタン粒子である構成1~6のいずれか1項に記載のプロセスカートリッジ。
(構成8)
前記酸化チタン粒子が、ニオブ原子含有酸化チタン粒子である請求項7に記載のプロセスカートリッジ。
(構成9)
前記ニオブ原子含有酸化チタン粒子は、粒子中心部における、ニオブ原子濃度/チタン原子濃度で算出される濃度比率に対して、粒子表面から測定粒子の最大径の5%内部における、ニオブ原子濃度/チタン原子濃度で算出される濃度比率が、2.0倍以上である請求項8に記載のプロセスカートリッジ。
(構成10)
前記ニオブ原子含有酸化チタン粒子のニオブ原子含有量が、前記ニオブ原子含有酸化チタン粒子の全質量に対して、2.6質量%以上10.0質量%以下である構成8又は9に記載のプロセスカートリッジ。
(構成11)
前記導電性粒子の含有量が、前記表面保護層の全体積に対して、5.0体積%以上40.0体積%以下であり、
前記表面保護層の体積抵抗率が、1.0×1011Ω・cm以上1.0×1014Ω・cm以下である構成1~10のいずれか1項に記載のプロセスカートリッジ。
(構成12)
前記現像手段が、前記トナーを担持させたトナー担持体を前記電子写真感光体に接触させることにより現像を行う接触現像装置である構成1~11のいずれか1項に記載のプロセスカートリッジ。
(構成13)
構成1~12のいずれか1項に記載のプロセスカートリッジを有する電子写真装置。
【符号の説明】
【0194】
21 支持体
22 下引き層
23 電荷発生層
24 電荷輸送層
25 表面保護層
1 電子写真感光体
2 軸
3 帯電手段
4 露光光
5 現像手段
6 転写手段
7 転写材
8 定着手段
9 クリーニング手段
10 前露光光
11 プロセスカートリッジ
12 案内手段
31 導電性粒子の中心部
32 導電性粒子の表面近傍
33 導電性粒子の中心部を分析するX線
34 導電性粒子の表面から最大径の5%内部を分析するX線