(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】カテーテル
(51)【国際特許分類】
A61M 25/10 20130101AFI20241007BHJP
【FI】
A61M25/10 540
(21)【出願番号】P 2022153620
(22)【出願日】2022-09-27
【審査請求日】2022-12-19
(31)【優先権主張番号】P 2021209536
(32)【優先日】2021-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】594170727
【氏名又は名称】日本ライフライン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】関 涼
(72)【発明者】
【氏名】吉川 大輔
(72)【発明者】
【氏名】大川 靖洋
(72)【発明者】
【氏名】竹田 怜央
(72)【発明者】
【氏名】桝田 拓也
【審査官】星名 真幸
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-347128(JP,A)
【文献】特開2009-291345(JP,A)
【文献】特開2001-276228(JP,A)
【文献】特開2001-238956(JP,A)
【文献】特開平02-295566(JP,A)
【文献】特開平02-174849(JP,A)
【文献】特公昭57-023506(JP,B1)
【文献】特表平09-507141(JP,A)
【文献】特開昭60-063067(JP,A)
【文献】特開平02-168967(JP,A)
【文献】特開2014-124264(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
体内に挿入されるシャフトと、
前記シャフトの先端側に取り付けられ、当該シャフトの基端側から供給される流体によって拡張可能なバルーンと、
前記バルーンの先端部と基端部の間の中間部の外周に巻かれ、当該中間部における前記バルーンの拡張を制限する拘束部材と、
前記拘束部材の外周を被覆する、前記シャフトの先端と基端を結ぶ方向において当該拘束部材より長い被覆部材と、
を備え、
前記被覆部材の両端部は、前記拘束部材より先端側および基端側で固定され、
前記拘束部材の外周は前記被覆部材の内周と接着されておらず、
前記拘束部材の外周と前記被覆部材の内周の間に潤滑剤が添加される、
カテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はカテーテル、具体的には体内で拡張可能なバルーンを備えるバルーンカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
カテーテルは、検査や治療のために体内に挿入される医療用の管である。特に、体内で拡張可能なバルーンを備えるカテーテルはバルーンカテーテルと呼ばれ、血管、気管、消化管、総胆管、膵管等の体内の管状器官やそれらの接続部(出入口)、検査や治療のために体内に形成される孔(例えば胃や十二指腸球部から総胆管に穿刺される孔)等における被拡張部や狭窄部を拡張するために使用される。
【0003】
特許文献1では、狭窄部を確実に拡張するために、弾性を有するバンド部がバルーンの中間部の外周に設けられる。バルーンはバンド部の両側のショルダー部から拡張を開始し、両ショルダー部の間のバンド部がくびれたウエスト部を形成する。拡張対象の狭窄部は、先に拡張したショルダー部によって両側から支持されるため、ウエスト部に面した位置に留まることができる。この状態でバルーンが更に拡張すると、弾性変形して拡張するバンド部によって狭窄部が確実に拡張される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
狭窄部を拡張した後に不要になったバルーンは収縮され、シャフトと共に体外に取り出される。この際、弾性変形して拡張したバンド部も収縮するが、バンド部の弾性が弱い場合は十分に収縮できず、収縮し切ったバルーンとの間に弛みが生じうる。最悪の場合、弛んだバンド部がバルーンおよびシャフトから脱落して体内に残される可能性もある。一方、脱落を確実に防止するために弾性を強くしたバンド部は弾性変形しにくくなるため、狭窄部を拡張するというバンド部(およびバルーン)の本来の機能を実現しにくくなる。
【0006】
本開示はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、被拡張部を確実に拡張できるカテーテルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示のある態様のカテーテルは、体内に挿入されるシャフトと、シャフトの先端側に取り付けられ、当該シャフトの基端側から供給される流体によって拡張可能なバルーンと、バルーンの先端部と基端部の間の中間部の外周に巻かれ、当該中間部におけるバルーンの拡張を制限する拘束部材と、拘束部材の外周を被覆する被覆部材と、を備える。
【0008】
この態様では、拘束部材の両側から先に拡張するバルーンによって、拡張対象の被拡張部や狭窄部を拘束部材に面した位置に確実に保持できる。また、拘束部材は被覆部材によって被覆されているため、カテーテルの取り出し時にバルーンが収縮された場合に、バルーンおよびシャフトから脱落することを防止できる。
【0009】
本開示の別の態様は、バルーンの拡張方法である。この方法は、体内に挿入されるシャフトと、シャフトの先端側に取り付けられ、当該シャフトの基端側から供給される流体によって拡張可能なバルーンと、バルーンの先端部と基端部の間の中間部の外周に巻かれ、当該中間部におけるバルーンの拡張を制限する拘束部材と、拘束部材の外周を被覆する被覆部材と、を備えるカテーテルにおいて、バルーン内に流体を供給することで当該バルーンを拘束部材および被覆部材と共に拡張させる際に、拘束部材が巻かれる中間部の拡張速度を抑制することを備える。
【0010】
本開示の更に別の態様は、カテーテルである。このカテーテルは、体内に挿入されるシャフトと、シャフトの先端側に取り付けられ、当該シャフトの基端側から供給される流体によって拡張可能なバルーンと、バルーンの外周を被覆する被覆部材であって、バルーンの先端部と基端部の間の中間部における厚さが他の部分より大きい被覆部材と、を備える。
【0011】
本開示の更に別の態様は、カテーテルである。このカテーテルは、体内に挿入されるシャフトと、シャフトの先端側に取り付けられ、当該シャフトの基端側から供給される流体によって拡張可能なバルーンと、バルーンの先端部と基端部の間の中間部に設けられ、当該バルーンの他の部分と視覚的に識別可能な視認部と、を備える。
【0012】
この態様によれば、カテーテルの操作者が視認部を視認しながら、当該視認部が設けられるバルーンの中間部を被拡張部に確実に近接させられる。
【0013】
本開示の更に別の態様は、カテーテルである。このカテーテルは、体内に挿入されるシャフトと、シャフトの先端側に取り付けられ、当該シャフトの基端側から供給される流体によって拡張可能な第1バルーンと第2バルーンを備えるバルーンであって、第1バルーンが第2バルーンより拡張方向の外側に設けられ当該第2バルーンより柔らかいバルーンと、を備える。
【0014】
この態様によれば、少なくとも二重構造のバルーンにおいて、外側の柔らかい第1バルーンが狭窄部等の被拡張部の形状に追従して拡張することでバルーンを被拡張部に対して位置決めでき、内側の硬い第2バルーンが被拡張部を確実に拡張できる。
【0015】
本開示の更に別の態様は、カテーテルである。このカテーテルは、体内に挿入されるシャフトと、シャフトの先端側に取り付けられ、当該シャフトの基端側から供給される流体によって拡張可能なバルーンであって、先端部と基端部の間の中間部においてくびれ部を有するくびれ形状に拡張した後の当該先端部および当該基端部における拡張を制限する端部拘束構造を備えるバルーンと、を備える。
【0016】
この態様によれば、バルーンの拡張時に中間部に形成されるくびれ部によってバルーンを被拡張部に対して確実に位置決めできる。また、流体によってくびれ部を更に拡張して被拡張部を拡張する際に、その前後の先端部および基端部が過剰に拡張されることが端部拘束構造によって効果的に防止される。
【0017】
本開示の更に別の態様は、カテーテルである。このカテーテルは、体内に挿入されるシャフトと、シャフトの先端側に取り付けられ、当該シャフトの基端側から供給される流体によって拡張可能なバルーンであって、当該流体が排出される収縮時に先端部と基端部の間の中間部を当該先端部および当該基端部より先に収縮させる収縮構造を備えるバルーンと、を備えるカテーテル。
【0018】
この態様によれば、バルーンの中間部に設けられる収縮構造によって、当該バルーンを確実に収縮できる。
【0019】
本開示の更に別の態様は、カテーテルのバルーンの収縮方法である。この方法は、体内に挿入されるシャフトと、シャフトの先端側に取り付けられ、当該シャフトの基端側から供給される流体によって拡張可能なバルーンであって、当該流体が排出される収縮時に先端部と基端部の間の中間部を当該先端部および当該基端部より先に収縮させる収縮構造を備えるバルーンと、を備えるカテーテルにおいて、バルーン内から流体を排出することで当該バルーンを収縮させる際に、収縮構造が設けられる中間部の収縮速度を増加させることを備える。
【0020】
本開示の更に別の態様は、カテーテルである。このカテーテルは、体内に挿入されるシャフトと、シャフトの先端側に取り付けられ、当該シャフトの基端側から供給される流体によって拡張可能なバルーンと、バルーンの先端部と基端部の間の中間部の外周に巻かれ、当該中間部におけるバルーンの拡張を制限する拘束部材であって、その先端部および基端部の少なくともいずれかにおいて拘束を緩和させる拘束緩和構造を備える拘束部材と、を備える。
【0021】
この態様によれば、拘束部材の端部における拘束が緩和されることで、バルーンだけでなく拘束部材にもくびれ部が形成されるため、当該拘束部材(およびバルーン)を被拡張部に対して確実に位置決めできる。
【発明の効果】
【0022】
本開示のカテーテル等によれば、被拡張部を確実に拡張できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】乳頭を拡張対象とするEPBDの概要を模式的に示す。
【
図2】本実施形態に係るバルーンカテーテルの外観を示す側面図である。
【
図3】本実施形態に係るバルーンカテーテルの外観を示す側面図である。
【
図4】本実施形態に係るバルーンカテーテルの断面図である。
【
図5】バルーンおよび弾性バンドの拡張態様を模式的に示す。
【
図6】バルーンカテーテルの製造方法を模式的に示す。
【
図7】被覆部材の複数の変形例を模式的に示す断面図である。
【
図8】
図7のE-E断面の複数の例を模式的に示す。
【
図10】第1バルーンおよび第2バルーンに同時または時間差で拡張流体を供給可能なシャフトの変形例を模式的に示す斜視図である。
【
図11】バルーンカテーテルの変形例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら、本開示を実施するための形態について詳細に説明する。説明または図面において同一または同等の構成要素、部材、処理には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。図示される各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限りは限定的に解釈されるものではない。実施形態は例示であり、本開示の範囲を何ら限定するものではない。実施形態に記載される全ての特徴やそれらの組合せは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0025】
本開示のカテーテルは、体内の任意の箇所の被拡張部や狭窄部(例えば、血管、気管、消化管、総胆管、膵管等の体内の管状器官やそれらの接続部、検査や治療のために体内に形成される孔)の拡張に使用できるが、本実施形態では、被拡張部としての乳頭(ファーター乳頭または十二指腸乳頭部)を拡張する内視鏡的乳頭バルーン拡張術(EPBD:endoscopic papillary balloon dilatation)を例に説明する。
【0026】
図1は、乳頭91を拡張対象とするEPBDの概要を模式的に示す。鉗子チャンネル11およびカメラ12を備える内視鏡10が、口から十二指腸90内に挿入されている。鉗子チャンネル11を通じて体内に挿入されるバルーンカテーテル1の管状のシャフト2の先端側(十二指腸90側または体内側)には、その基端側(口側または体外側)から供給される滅菌蒸留水や生理食塩水に適宜造影剤を混合した拡張流体によって拡張可能なバルーン3が取り付けられている。なお、検査や治療の目的に照らして適切な場合は、拡張流体としてその他の液体や空気等の気体を使用してもよい。
【0027】
検査や治療の目的部位またはそこに通じる経路としての総胆管92や膵管93の内部には、鉗子チャンネル11を通じて小径のガイドワイヤ6が予め挿入されている。十二指腸90と総胆管92および膵管93の間には被拡張部または開口部としての乳頭91が存在するが、その開口径に比べて十分に小径なガイドワイヤ6は乳頭91内を通過して総胆管92または膵管93の内部に進入できる。この際、内視鏡10およびバルーンカテーテル1の操作者は、内視鏡10の側面において乳頭91に対向するように配置されるカメラ12から得られる映像を確認しながら、ガイドワイヤ6を安全に乳頭91内に挿入できる。
【0028】
バルーンカテーテル1の管状のシャフト2の内部には、基端部から先端部まで貫通してガイドワイヤ6が挿通可能な長尺のワイヤルーメン(孔)が形成されている。ガイドワイヤ6が乳頭91を経由して総胆管92または膵管93の内部に挿入されている状態で、シャフト2内のワイヤルーメンの先端部をガイドワイヤ6の体外側の基端部から挿入することによって、ガイドワイヤ6によって案内されるシャフト2の先端部のバルーン3が乳頭91に向かう。図示の状態から更にシャフト2をガイドワイヤ6に沿って進行させ、乳頭91の位置に到達したバルーン3を拡張流体によって拡張させて乳頭91を内側から押し広げる。このように、通常はオッディ括約筋(または胆膵管膨大部括約筋)によって狭窄されている乳頭91が広がるため、例えば総胆管92内にできた総胆管結石を乳頭91から効果的に取り出せる。
【0029】
乳頭91を拡張した後に不要になったバルーン3は、拡張流体を体外側に排出することで収縮され、鉗子チャンネル11を通じてシャフト2と共に体外に取り出される。このようにバルーンカテーテル1が体外に取り出された後、必要に応じて総胆管結石を乳頭91から十二指腸90内または体外に取り出す等の別の医療処置のための別の鉗子または胆道鏡等の医療器具がガイドワイヤ6を通じて、拡張された乳頭91内に挿入される。
【0030】
図2および
図3は、本実施形態に係るバルーンカテーテル1の外観を示す側面図である。これらの図において右側(体外側)から左側(体内側)に向かって体内に挿入される長尺の管状のシャフト2の体内側の先端部(左端部)にはバルーン3が取り付けられている。
図2は完全収縮状態にあるバルーン3を示し、
図3は完全収縮状態と完全拡張状態の間の一部拡張状態にあるバルーン3を示す。
【0031】
シャフト2の基端側、具体的にはシャフト2のうちバルーン3が取り付けられない部分の断面は、
図2のA-A断面を示す
図4Aのように二つのルーメン、すなわちバルーン拡張ルーメン21Aおよびワイヤルーメン22Aに区画されている。図示の例では、大径の拡張流体管21と、その内側に収納される小径のガイドワイヤ管22が、一体的に形成されている。バルーン拡張ルーメン21Aは、拡張流体管21の内周とガイドワイヤ管22の外周によって区画される空間であり、ワイヤルーメン22Aは、ガイドワイヤ管22の内周によって区画される空間である。
【0032】
バルーン拡張ルーメン21Aは、シャフト2の体外側の基端部(
図2および
図3の右端部)に設けられるマニホールド7のバルーン拡張ポート71と連通している。バルーン拡張ポート71によって給排される拡張流体は、バルーン拡張ルーメン21Aを介してバルーン3内との間で流通する。具体的には、バルーン拡張ポート71から拡張流体を供給すると、バルーン拡張ルーメン21Aを介してバルーン3内に拡張流体が流入するためバルーン3が拡張する。また、バルーン拡張ポート71から拡張流体を排出すると、バルーン拡張ルーメン21Aを介してバルーン3内から拡張流体が流出するためバルーン3が収縮する。
【0033】
図示は省略するが、バルーン拡張ルーメン21Aを形成する拡張流体管21は先細形状となっており、その小径の開口端がバルーン3の内部空間21Bに挿入されている。この開口端を通じて拡張流体管21(バルーン拡張ルーメン21A)はバルーン3の内部空間21Bとの間で拡張流体を流通させる。バルーン3の内部空間21Bは、
図2または
図3のB-B断面、C-C断面、D-D断面をそれぞれ示す
図4B、
図4C、
図4Dにおいて、バルーン3の内周とガイドワイヤ管22の外周によって区画される空間として示されている。
【0034】
ワイヤルーメン22Aは、シャフト2の体外側の基端部(
図2および
図3の右端部)に設けられるマニホールド7のガイドワイヤポート72と連通している。また、ワイヤルーメン22Aを形成するガイドワイヤ管22は、バルーン3の内部空間21Bで終端する拡張流体管21と異なり、バルーン3の内部空間21Bを先端側(
図2および
図3の左端側)に貫通する。このように、バルーンカテーテル1の管状のシャフト2の内部には、基端部のガイドワイヤポート72から先端部の開口端221まで貫通して、ガイドワイヤ6が挿通可能な長尺のワイヤルーメン22Aが形成されている。
図1に関して前述したように、ガイドワイヤ6が乳頭91を経由して総胆管92または膵管93の内部に挿入されている状態で、ワイヤルーメン22Aの先端部であるガイドワイヤ管22の開口端221をガイドワイヤ6の体外側の基端部から挿入することによって、ガイドワイヤ6によって案内されるシャフト2の先端部のバルーン3が乳頭91に向かう。
【0035】
バルーン3が設けられるバルーンカテーテル1の先端側の構成について更に詳述する。
図4Bや
図4Cに示されるように、バルーン3はシャフト2の先端部を構成するガイドワイヤ管22の外周に、折り畳まれた完全収縮状態で取り付けられる。なお、
図4Bおよび
図4Cでは、完全収縮状態にあるバルーン3の内周とガイドワイヤ管22の外周の間の内部空間21Bが誇張されているが、実際は無視できるほど小さい。従って、完全収縮状態にあるバルーン3の内周とガイドワイヤ管22の外周はほとんど隙間無く接触している。
【0036】
図3に示されるように、バルーン3は拡張態様または拡張形態の異なる三つの部分、すなわち先端から基端に向かう順に、先端側テーパ部31、中間部32、基端側テーパ部33を備える。先端側テーパ部31は、ガイドワイヤ管22の外周と略同径のバルーン3の先端部311から中間部32に向かって最大拡張径が大きくなるテーパ状に形成され、基端側テーパ部33は、ガイドワイヤ管22(および小径の拡張流体管21を合わせたシャフト2)の外周と略同径のバルーン3の基端部331から中間部32に向かって最大拡張径が大きくなるテーパ状に形成される。
【0037】
図示の例では、シャフト2の先端(開口端221)と基端(ガイドワイヤポート72)を結ぶ方向(以下では軸方向、長さ方向、左右方向ともいい、当該方向の寸法を長さという)において、先端側テーパ部31の長さと基端側テーパ部33の長さが略等しいが、これらは有意に異なっていてもよい。また、図示の例では、軸方向に直交する任意の方向(以下では径方向、拡張方向、直交方向ともいい、当該方向の寸法を径や拡張径ともいう)において、先端部311と基端部331からそれぞれ等しい距離だけ離れた点における先端側テーパ部31の拡張径と基端側テーパ部33の拡張径が略等しいが、これらは有意に異なっていてもよい。先端側テーパ部31の基端部312の最大拡張径と基端側テーパ部33の先端部332の最大拡張径が略等しい図示の例では、両部を軸方向に連結する中間部32が略一定の最大拡張径を有する直管部となる。
【0038】
図3や
図4Bに示されるように、中間部32の少なくとも一部の外周には拘束部材としての環状の弾性バンド4が巻かれており、中間部32におけるバルーン3の拡張を制限する。図示の例では、軸方向に一定の幅または長さを有する帯状の弾性バンド4が、中間部32の中央部322の外周に巻かれている。中間部32において中央部322より先端側の先端側直管部321は、弾性バンド4によって拡張が制限されないため、略一定の最大拡張径まで容易に拡張できる。同様に、中間部32において中央部322より基端側の基端側直管部323は、弾性バンド4によって拡張が制限されないため、略一定の最大拡張径まで容易に拡張できる。一方、中間部32の中央部322は、弾性バンド4によって拡張が制限されるため、バルーン3内(内部空間21B)の拡張流体の圧力が所定値未満(例えば2atm未満)の場合の拡張径は、容易に拡張できる先端側直管部321および基端側直管部323の拡張径より有意に(例えば20%以上)小さくなる。
【0039】
以下では、拡張流体が未導入時の弾性バンド4の内周の初期径を拘束径ともいう。拡張流体が未導入時に完全収縮状態にあるバルーン3の中央部322の外周は弾性バンド4の内周と接触しているため、以下ではバルーン3(中央部322)の初期径を拘束径ともいう。バルーン3内(内部空間21B)に拡張流体を導入すると、弾性バンド4は弾性変形を開始して拘束径または初期径から拡張するが、少なくとも拡張流体の圧力が前記の所定値未満の領域では、両側の先端側直管部321および基端側直管部323の拡張速度の方が大きいため、弾性バンド4が設けられる中央部322が先端側直管部321および基端側直管部323に対してくびれたダンベル状にバルーン3が拡張する。なお、弾性バンド4の拡張径は長さ方向の位置によって異なり、容易に拡張する先端側直管部321および基端側直管部323に付随して拡張する両端部の拡張径が中央部に比べて大きくなる。
【0040】
ゴム等のエラストマその他の任意の弾性材料によって形成される弾性バンド4は、バルーン3内(内部空間21B)に拡張流体が導入されると、バルーン3の拡張に伴って弾性変形して拘束径より大きく拡張する。
図3および
図5Aは、バルーン3内に拡張流体が導入されて、弾性バンド4が弾性変形を開始した直後の状態を示す。この時、弾性バンド4によって拡張が制限されない先端側直管部321および基端側直管部323が弾性バンド4より大きく拡張する一方で、弾性バンド4によって拡張が制限される中央部322の径は弾性バンド4の拘束径Dmin(
図2における弾性バンド4の内径)より僅かに大きい拡張径D1に制限される。また、この時点におけるバルーン3内(内部空間21B)の拡張流体の圧力P1は前記の所定値未満であるため、拡張径D1は先端側直管部321および基端側直管部323の最大拡張径Dmaxより20%以上小さい(D1<0.8×Dmax)。
【0041】
なお、寸法の例として、最大拡張径Dmaxは7mmと9mmの間(好ましくは約8mm)であり、拘束径Dminは1.5mmと2.5mmの間(好ましくは約2mmの間)である。また、
図2の完全収縮状態にある折り畳まれたバルーン3の径は1.5mmと2.5mmの間(好ましくは約1.8mm)であり、バルーン3より基端側におけるシャフト2の径は1.5mmと3mmの間(好ましくは2mmと2.5mmの間)である。
【0042】
図3および
図5Aに示されるようにバルーン3が拡張する結果、弾性バンド4より大きく拡張した先端側直管部321および基端側直管部323の間の中央部322に小径(D1)のくびれ部が形成される。拡張対象の乳頭91(
図1)に中央部322を近接させた状態でバルーン3を
図3および
図5Aのように拡張させると、弾性バンド4より大きく拡張した先端側直管部321および基端側直管部323によって両側から支持される乳頭91が、くびれ部(中央部322)に面した位置に留まることができる。このくびれ部は、拡張流体の圧力が0.5atmと1.5atmの間(好適には約1.0atm)の時に、乳頭91を両側から有効に支持できる。
【0043】
この状態からバルーン3内(内部空間21B)の拡張流体の圧力を前記の所定値P2まで高めると、
図5Bのように弾性バンド4が拡張径D2まで拡張する。また、先端側直管部321の先端側および基端側直管部323の基端側は最大拡張径Dmaxまで拡張する。この時の中央部322の拡張径D2は先端側直管部321および基端側直管部323の最大拡張径Dmaxより20%小さい(D2=0.8×Dmax)。なお、バルーン3自体の弾性によって、最大拡張径Dmaxは拡張流体の圧力に応じて僅かに増加するが、実用上は無視してもよい。
図5Bの状態から更に拡張流体の圧力を高めれば(例えば4atmと5atmの間)、
図5Cのように中央部322(弾性バンド4)は、先端側直管部321および基端側直管部323と共に、バルーン3(中間部32)の最大拡張径Dmaxまで拡張しうる。少なくとも、弾性バンド4または中央部322の拡張径と、先端側直管部321および基端側直管部323の拡張径(最大拡張径)Dmaxの差が20%未満になる。
【0044】
この時、中間部32は弾性バンド4が巻かれた中央部322も含めて、略一定の最大拡張径Dmaxまで拡張した直管状となる。このように、バルーン3の拡張に伴って弾性変形して拘束径Dminより大きく拡張する弾性バンド4(中央部322)によって乳頭91が確実に拡張される。なお、
図5Bのように拘束径Dminより大きく最大拡張径Dmaxより小さい任意の径D2まで拡張した弾性バンド4によって乳頭91を十分に拡張できる場合には、
図5Bの状態をバルーン3の最終拡張状態として
図5Cのように弾性バンド4を最大拡張径Dmaxまで拡張しなくてもよい。なお、最終拡張状態を定めるバルーン3内(内部空間21B)の拡張流体の圧力は推奨拡張圧として定められており、例えば3atmと5atmの間(好ましくは約4atm)である。
【0045】
以上のようなバルーン3の乳頭91に対する位置決めを確実に行うために、バルーン3内に供給される拡張流体に混合される造影剤や、ガイドワイヤ管22の外周におけるバルーン3の中間部32の両端部(312、332)に対応する位置に設けられる二つの造影マーカ222、223が利用される。EPBDの手技中に撮影されるX線等による造影画像によって、バルーン3の乳頭91に対する位置や、バルーン3の拡張の様子をリアルタイムで確認できる。
【0046】
このようなEPBDにおいて一般的な大きさの乳頭91をくびれ部に面した位置に効果的に保持するために、くびれ部を構成する弾性バンド4の軸方向の幅または長さを1mmと10mmの間とするのが好ましい。また、乳頭91を介して総胆管92内に挿入されて拡張するバルーン3が膵管93を圧迫して炎症を引き起こすリスクを低減するために、バルーン3の長さは可能な限り小さくするのが好ましい。従来は、拡張したバルーン3が滑っても乳頭91から外れないようにバルーン3の長さを大きくする必要があったが、本実施形態のバルーンカテーテル1では、弾性バンド4が形成するくびれ部によって乳頭91を確実に保持できるため、バルーン3の長さを小さくできる。具体的には、バルーン3の実効的な長さである中間部32(直管部)の長さを10mmと40mmの間に収めることができる。また、バルーン3の中間部32の長さを弾性バンド4の長さの2倍と8倍の間とするのが好ましい。例えば、弾性バンド4の長さが5mmの場合、バルーン3の中間部32の長さを10mm(2倍)と40mm(8倍)の間とするのが好ましい。
【0047】
なお、以上では拘束部材として中間部32の外周の少なくとも一部(中央部322)を囲む環状および帯状の一つの弾性部材としての弾性バンド4を例示したが、拘束部材はこれに限定されない。例えば、拘束部材は、中間部32の外周の少なくとも一部に巻かれる複数の弾性リングでもよいし、中間部32の外周の少なくとも一部に螺旋状に巻かれるニッケルチタン合金(NiTi)製等のコイルスプリングでもよい。なお、これらの弾性部材は、拡張流体の圧力によって拡張する際に収縮方向への有意な弾性力を発生させる部材であれば十分であり、拡張流体が排出された後に完全に元の状態(拘束径または初期径)に戻ることまでは要求されない。従って、拡張流体が排出された後に多少の変形(すなわち塑性変形)が弾性部材に残存してもよい。また、拘束部材は弾性を備えないまたは限られた弾性を備える部材でもよい。例えば、拡張するバルーン3によって塑性変形して拘束径より大きく拡張可能だが、一旦拡張した後は収縮できない金属製等の塑性部材を拘束部材として使用してもよい。また、実質的に変形不能であり、バルーン3内の拡張流体の圧力が所定値未満の場合は拘束径を維持し、バルーン3内の拡張流体の圧力が所定値以上になると破断する剛性部材を拘束部材として使用してもよい。
【0048】
また、弾性部材または塑性部材としての拘束部材が所定の径(例えば
図5Bの径D2)まで弾性変形または塑性変形した後に、更にバルーン3内の拡張流体の圧力を高めると拘束部材が破断するようにしてもよい。このように拘束部材を失った中央部322は、
図5Cのように最大拡張径Dmaxまで自動的に拡張するため(但し弾性バンド4が破断している)、中間部32は全体として略一定の最大拡張径Dmaxまで拡張した直管状となる。なお、次に説明する被覆部材5が塑性変形した塑性部材や破断した剛性部材を含む拘束部材を外周から被覆するため、拘束部材がバルーン3およびシャフト2から脱落することを防止できる。このように拘束部材の体内への脱落が防止されるため、医療用では一般的ではない材料によって拘束部材を形成することも可能になる。なお、X線を透過しない材料によって拘束部材(弾性バンド4等)を形成することによって、ガイドワイヤ管22の外周に設けられる造影マーカ222、223と同様の造影機能を拘束部材に持たせてもよい。
【0049】
また、被覆部材5内に留まる拘束部材は、内視鏡10のカメラ12を介して視認可能な位置合わせマーカ(視認部)としても機能しうる。このような視認部は、バルーン3の中間部32(特に、中央部322)に設けられ、バルーン3の他の部分(例えば、先端側直管部321、基端側直管部323、先端側テーパ部31、基端側テーパ部33)と視覚的に識別可能な特徴を備える。例えば、視認部としての弾性バンド4(拘束部材)は、バルーン3の他の部分と色および/または模様が異なる。例えば、典型的なバルーン3は無色または白色かつ無模様であるため、弾性バンド4に白色以外の無彩色(灰色や黒色)や任意の有彩色および/または任意の模様を付けることで、バルーン3と視覚的に識別可能な視認部として機能させられる。バルーンカテーテル1の操作者は、バルーン3や乳頭91等の目的部位から識別可能な視認部としての弾性バンド4を視認しながら、バルーンカテーテル1を安全かつ確実に操作できる。
【0050】
なお、視認部は、拘束部材としての弾性バンド4に限らず、バルーン3や被覆部材5に形成されてもよい。バルーン3の一部として視認部を形成する場合、視認部を形成すべき中間部32(特に、中央部322)に、他の部分と異なる色や模様を付ければよい。具体的には、バルーン3において視認部とすべき箇所の材料や特性を他の箇所と変えることで、当該他の箇所と視覚的に識別可能な色や模様等の差異を形成してもよい。被覆部材5に視認部を形成する場合、視認部を形成すべきバルーン3の中間部32(特に、中央部322)に対応する位置に、他の部分と異なる色や模様を付ければよい。なお、視認部は、弾性バンド4および/または被覆部材5を持たないバルーンカテーテル1にも適用できる。この場合、上記のようにバルーン3に視認部を形成するのが好ましいが、視認部として機能する環状の目印バンド(但し、拘束部材としては機能しない)を、弾性バンド4に代えてまたは加えてバルーン3の中間部32(特に、中央部322)の最外周に巻いてもよい。
【0051】
被覆部材5は、
図4Bに示されるように弾性バンド4の外周を被覆し、
図4Cや
図4Dに示されるようにバルーン3の外周を被覆する。被覆部材5(非拡張時)の径方向の厚さは例えば約50μmであり、弾性バンド4(非拡張時)の径方向の厚さは例えば約100μmである。被覆部材5は、ポリウレタン等の任意の弾性材料によって形成される長尺管状の弾性チューブである。
図3において、被覆部材5(不図示)の先端部は、バルーン3の先端部311から先端側に延在するガイドワイヤ管22の外周を被覆した状態で、熱可塑性エラストマ製等の短尺の固着チューブ51によって固着される。また、被覆部材5の基端部は、バルーン3の基端部331から基端側に延在するシャフト2の外周を被覆した状態で、熱可塑性エラストマ製等の短尺の固着チューブ52によって固着される。先端側の小径のガイドワイヤ管22と基端側の大径のシャフト2の径の違いのため、固着チューブ51の径は固着チューブ52の径より小さい。
【0052】
このように、弾性バンド4およびバルーン3より長い被覆部材5の両端部は弾性バンド4より先端側および基端側でシャフト2(ガイドワイヤ管22を含む)の外周に固定される。なお、被覆部材5はバルーン3より短くてもよく、その両端部が弾性バンド4より先端側および基端側でバルーン3の外周に固定されてもよい。例えば、被覆部材5の両端部は、先端側テーパ部31および基端側テーパ部33の外周に固定されてもよいし、先端側直管部321および基端側直管部323の外周に固定されてもよい。また、バルーンカテーテル1においてバルーン3より先端側に、医療処置や測定等のための電極や、バルーンカテーテル1またはシャフト2の先端部を構成する先端チップ(開口端221が形成される部材)が設けられる場合があり、被覆部材5はこのような電極(の一部)や先端チップの外周に固定されてもよい。
【0053】
これらの場合、被覆部材5は、弾性バンド4の外周と共に、当該弾性バンド4が巻かれていないバルーン3の外周も被覆するため、弾性バンド4その他の拘束部材のバルーン3からの脱落を防止できる。また、図示の例では、被覆部材5が、弾性バンド4およびバルーン3の外周と共に、当該バルーン3が取り付けられていないシャフト2(ガイドワイヤ管22を含む)の外周も被覆するため、弾性バンド4その他の拘束部材のバルーン3およびシャフト2からの脱落を防止できるだけでなく、バルーンカテーテル1の取り出し時に被覆部材5の弾性によってバルーン3を効果的に収縮させることができる。
【0054】
以上のように、被覆部材5は両端部においてシャフト2および/またはバルーン3の外周に固着されるが、両端部以外ではバルーン3および/または弾性バンド4の外周に固着されない。従って、
図4Bに示されるように被覆部材5によって外側から被覆される弾性バンド4は、被覆部材5の内周と接着されていない。同様に、弾性バンド4は、内側のバルーン3(中央部322)の外周と接着されていない。しかし、弾性バンド4は、被覆部材5の弾性によって外側からバルーン3に対して押圧されているため、所期の位置(中央部322)に留まることができ、バルーン3からの脱落も防止される。特許文献1ではバンド部がバルーンに溶着されていたが、本実施形態では弾性バンド4をバルーン3(および被覆部材5)に接着する必要がないため、バルーンカテーテル1を経済的に製造できる。また、特許文献1のようにバンド部がバルーンに溶着されていると、その溶着箇所においてバルーンおよびバンド部の所期の拡張が阻害される恐れがある。本実施形態では、弾性バンド4およびバルーン3が溶着または接着されていないため、それぞれが互いを阻害することなく所期の拡張を行うことができる。
【0055】
弾性を備える被覆部材5は、バルーン3が拡張していない
図2の状態では、バルーン3および/または弾性バンド4を外側から押圧することで、バルーン3を完全収縮状態に保持する。バルーン3内(内部空間21B)に拡張流体が供給されて、バルーン3および/または弾性バンド4が拡張すると、被覆部材5は弾性変形して拡張する。被覆部材5が弾性変形を開始する際の初期径または被覆径(
図4Cに示されるような弾性バンド4が設けられない位置における被覆部材5の内径)は、
図4Bに示される弾性バンド4の拘束径Dminより小さい。
【0056】
図5に示されるようなバルーン3および弾性バンド4の拡張態様を実現するために、バルーン3は弾性バンド4より弾性率が大きく、弾性バンド4は被覆部材5より弾性率が大きく構成される。弾性率(ヤング率とも呼ばれる)は変形のしにくさを表すため、バルーン3は弾性バンド4より変形しにくく、弾性バンド4は被覆部材5より変形しにくい。すなわち、被覆部材5、弾性バンド4、バルーン3の順で変形しやすい。最も変形しやすい被覆部材5は、内側のバルーン3および/または弾性バンド4が拡張すると、それらに略完全に追従して拡張する。
【0057】
図2の完全収縮状態にあるバルーン3内(内部空間21B)に拡張流体が供給されると、バルーン3が折り畳まれた状態から拡張を開始し、バルーン3の中央部322に巻かれた弾性バンド4や、これらを被覆する被覆部材5が追従して拡張する。
図5Aは、バルーン3内(内部空間21B)の拡張流体の圧力がP1に達した状態を示す。前述のように、中央部322より大きく拡張した先端側直管部321および基端側直管部323と、最大拡張径Dmaxより20%以上小さい拡張径D1に制限される中央部322によって、バルーン3がダンベル状に拡張している。
【0058】
図5Aの状態から更にバルーン3内(内部空間21B)の拡張流体の圧力をP2(>P1)に高めると、
図5Bのように弾性バンド4が更に弾性変形して
図5Aの拡張径D1より大きく拡張し、弾性バンド4を被覆する被覆部材5も追従して拡張する。バルーン3の先端側テーパ部31および基端側テーパ部33は、
図5Aの時点で最大拡張径まで拡張していたため、
図5Bで拡張流体の圧力が高められてもバルーン3の高弾性のためにほとんど追加的に拡張しない。また、先端側直管部321の先端側および基端側直管部323の基端側は最大拡張径Dmaxまで拡張する。
図5Bの状態から更にバルーン3内(内部空間21B)の拡張流体の圧力をP3(>P2)に高めると、
図5Cのように弾性バンド4が最大拡張径Dmaxまで拡張し、弾性バンド4を被覆する被覆部材5も追従して拡張する。
図5Cの状態から更にバルーン3内(内部空間21B)の拡張流体の圧力を高めても、高弾性のためにバルーン3はほとんど追加的に拡張しない。
【0059】
バルーンカテーテル1の取り出し時にバルーン3内(内部空間21B)の拡張流体の圧力を下げる、および/または、バルーン拡張ポート71から拡張流体を排出すると、弾性バンド4および/または被覆部材5の弾性によってバルーン3を効果的に収縮させて、拡張前の
図2の完全収縮状態に近い状態に戻すことができる。この場合の弾性バンド4は、バルーン3から拡張流体が排出される収縮時に、バルーン3の中間部32(特に、中央部322)を先端部(先端側直管部321を含む)および基端部(基端側直管部323を含む)より先に収縮させる収縮構造として機能する。換言すれば、収縮構造としての弾性バンド4は、当該収縮構造が設けられるバルーン3の中間部32の収縮速度を先端部および基端部に対して増加させる。
図5Cのように最大拡張径Dmaxまで拡張した弾性バンド4の弾性は当初(例えば、
図5Aの時点)より低下することも考えられるが、
図5Cの時点でも残存している弾性によってバルーン3の収縮時には弾性バンド4が中間部32を先に収縮させ、
図5Bおよび
図5Aと同様の状態を順に経てバルーン3全体を効果的に収縮させられる。
【0060】
以上のように、弾性バンド4および/または被覆部材5の弾性によってバルーン3が効果的に収縮するため、バルーン3が内視鏡10の鉗子チャンネル11(
図1)内に詰まることを防止でき、バルーンカテーテル1を容易に取り出すことができる。また、バルーン3の拡張または収縮の状態によらず、弾性バンド4が被覆部材5の弾性によって外側からバルーン3に対して押圧されて保持されるため、弾性バンド4その他の拘束部材のバルーン3からの脱落が効果的に防止される。
【0061】
バンド部の脱落の可能性がある特許文献1では、脱落防止のためにバンド部の弾性を必要以上に強くする必要があったが、本実施形態では脱落防止の機能が被覆部材5によって実現されるため、弾性バンド4の弾性、寸法、形状等の設計において脱落リスクを意識する必要がなくなり、専ら
図5に示したような所望の拡張態様を実現するために最適化できる。
【0062】
図6は、バルーンカテーテル1の製造方法を模式的に示す。
図6Aでは、バルーン3がシャフト2の先端側の外周に取り付けられる。バルーン3の先端部311は、シャフト2のガイドワイヤ管22の外周に接着され、バルーン3内(内部空間21B)の拡張流体が漏出しないように密閉される。バルーン3の基端部331は、
図4Aのように拡張流体管21およびガイドワイヤ管22を備えるシャフト2の外周に接着され、バルーン3内(内部空間21B)の拡張流体が漏出しないように密閉される。シャフト2のガイドワイヤ管22がバルーン3の全長に亘って貫通する一方で、拡張流体管21はバルーン3の内部空間21Bで終端するため、その開口端を通じてバルーン3の内部空間21Bとの間で拡張流体を流通させることができる。以上のように両端部311、331がシャフト2の外周に接着されたバルーン3は、シャフト2の外周で巻回されて複数枚(例えば三枚)の羽状に折り畳まれる。
【0063】
図6Bでは、折り畳まれたバルーン3の中央部322に弾性バンド4が取り付けられる。例えば、ガイドワイヤ管22の先端を弾性バンド4内に挿入し、当該弾性バンド4をバルーン3の中央部322まで摺動させる。この時、バルーン3(中央部322)の外周に弾性バンド4を接着する必要はない。なお、バルーン3の外周と弾性バンド4の内周の間には、組立性の向上等のためにシリコンオイルやシリコンパウダー等の潤滑剤が添加または塗布されてもよい。
図6Cでは、折り畳まれたバルーン3および弾性バンド4を被覆するように長尺管状の被覆部材5が取り付けられ、その先端部および基端部が固着チューブ51および固着チューブ52によって固着される。この時、バルーン3の先端部311および基端部331以外の部分や弾性バンド4の外周に被覆部材5を接着する必要はない。なお、弾性バンド4の外周と被覆部材5の内周の間には、組立性の向上等のためにシリコンオイルやシリコンパウダー等の潤滑剤が添加または塗布されてもよい。
【0064】
図4Bに示されるように、実施形態では共に弾性を備える弾性バンド4および被覆部材5が別体であったが、これらを同じ弾性材料で一体的に形成してもよい。この弾性部材では、バルーン3の中央部322に対応する位置の厚さを他の部分より大きくすることによって、弾性バンド4としての機能が実現される。
【0065】
図7は、被覆部材5の複数の変形例を模式的に示す断面図である。これらの被覆部材5は、弾性バンド4(拘束部材)およびバルーン3の外周の境界の少なくとも一部を被覆するコーティング材53である。コーティング材53の材料は任意であるが、例えば、前述の実施形態と同様にポリウレタン等の任意の弾性材料によって形成される。流体状または液状のコーティング材を弾性バンド4およびバルーン3の外周の所望箇所に塗布して乾燥させることで、図示のような被覆部材5としてのコーティング層(コーティング材53)が、弾性バンド4およびバルーン3を軸方向に跨がるように形成される。あるいは、弾性バンド4が取り付けられたバルーン3を流体状または液状のコーティング材にディップする(潜らせる)ことで、乾燥を経て被覆部材5としてのコーティング層(コーティング材53)を形成してもよい。
【0066】
コーティング材53は、弾性バンド4の先端側(
図7における左端側)におけるバルーン3との境界の少なくとも一部、および、弾性バンド4の基端側(
図7における右端側)におけるバルーン3との境界の少なくとも一部、の少なくともいずれかを被覆する。具体的にはコーティング材53は、
図7Aに示されるように弾性バンド4の先端側および基端側のバルーン3との境界を被覆するように形成されてもよいし、
図7Bに示されるように弾性バンド4の先端側のバルーン3との境界のみを被覆するように形成されてもよいし、
図7Cに示されるように弾性バンド4の基端側のバルーン3との境界のみを被覆するように形成されてもよい。いずれの場合でも、弾性バンド4およびバルーン3がコーティング材53を介して固定されるので、弾性バンド4がバルーン3の所定位置(中央部322)からずれることを効果的に防止できる。このような位置ずれ防止機能を確実に実現するために、
図7A~
図7Cのように、コーティング材53は軸方向(
図7における左右方向)において、弾性バンド4の半分以上の長さを被覆するのが好ましい。
【0067】
図8は、
図7のE-E断面の複数の例を模式的に示す。本図では、バルーン3、弾性バンド4、コーティング材53(被覆部材5)のみを示し、バルーン3内等の他の構成の図示は省略する。
図8Aに示されるように、コーティング材53は、弾性バンド4および/またはバルーン3の外周の全体を被覆してもよい。また、
図8Bに示されるように、コーティング材53は、弾性バンド4および/またはバルーン3の外周の一部のみを被覆してもよい。
図8Bの例では、コーティング材53が弾性バンド4および/またはバルーン3の外周の半分(北半球)を被覆し、残りの半分(南半球)はコーティング材53が設けられずに露出している。なお、コーティング材53が弾性バンド4および/またはバルーン3の外周を被覆する周方向の長さは、
図8Bのような半周に限らず、半周より大きくてもよいし、半周より小さくてもよい。
【0068】
図8Bのように、コーティング材53が弾性バンド4および/またはバルーン3の外周の全体を被覆しない構成とすることで、バルーン3および弾性バンド4の拡張がコーティング材53によって阻害されにくいという利点がある。バルーン3および弾性バンド4が内側から拡張することで、それらの外周の一部のみを被覆するコーティング材53が剥離、断裂、破断する可能性もあるが、むしろバルーン3および弾性バンド4の拡張を促進する(あるいは、阻害しない)ように働く。このようにバルーン3および弾性バンド4の拡張時に意図的に機能を喪失させるコーティング材53は、完全収縮状態で折り畳まれた拡張前のバルーン3と弾性バンド4の位置ずれを防止する機能に特化したものとなる。
図8Cに示されるように、コーティング材53を弾性バンド4および/またはバルーン3の周方向の異なる複数の位置に互いに分離して設けることで、バルーン3および弾性バンド4の拡張時にコーティング材53の機能が更に容易に失われるようにしてもよい。
【0069】
図9は、バルーン3の変形例を模式的に示す。本図では、シャフト2、バルーン3、バルーン3の実質的な先端である固着チューブ51のみを示し、バルーン3内外の他の構成の図示は省略する。本変形例に係るバルーン3は、シャフト2の先端側(
図9における左側)に取り付けられ、当該シャフト2の基端側(
図9における右側)から供給される拡張流体によって拡張可能な第1バルーン3Aと第2バルーン3Bを備える。第1バルーン3Aは、第2バルーン3Bより拡張方向の外側に設けられ、第2バルーン3Bは、第1バルーン3Aより拡張方向の内側に設けられる。このように、バルーン3は外側の第1バルーン3Aと内側の第2バルーン3Bによる二重構造を有する。
【0070】
図9Aに示されるように、外側の第1バルーン3Aは内側の第2バルーン3Bより先に拡張する。具体的には、第1バルーン3Aを第2バルーン3Bより柔らかい材料で形成することで、実質的に同一のバルーン拡張ルーメン21Aから第1バルーン3Aおよび第2バルーン3Bに同時に拡張流体を供給した場合であっても、第1バルーン3Aが第2バルーン3Bより先に拡張する。例えば、外側の柔らかい第1バルーン3Aはウレタン等によって形成され、内側の硬い第2バルーン3Bはナイロン等によって形成される。なお、第1バルーン3Aの厚さを第2バルーン3Bより小さくすることで、第1バルーン3Aを第2バルーン3Bより柔らかくしてもよい。ここで、「第1バルーン3Aが第2バルーン3Bより柔らかい」とは、同じ圧力の拡張流体が供給された時の第1バルーン3Aの拡張量が第2バルーン3Bより大きい、および/または、第1バルーン3Aの拡張開始タイミングが第2バルーン3Bより早いことを意味する。また、第1バルーン3Aおよび第2バルーン3Bの硬さに関わらず、第1バルーン拡張ルーメンから第1バルーン3Aに拡張流体を先に供給し、第2バルーン拡張ルーメンから第2バルーン3Bに拡張流体を後に供給することで、第1バルーン3Aを第2バルーン3Bより先に拡張させてもよい。
【0071】
図10は、第1バルーン3Aおよび第2バルーン3Bに同時または時間差で拡張流体を供給可能なシャフト2の変形例を模式的に示す斜視図である。本図では、シャフト2以外の他の構成(バルーン3を含む)の図示は省略する。このシャフト2は、
図4等に関して説明したように、拡張流体管21およびガイドワイヤ管22を備える。但し、
図4のシャフト2と異なり、拡張流体管21が第1拡張流体管211と第2拡張流体管212に分割されている。同様に、
図4等におけるバルーン拡張ルーメン21Aは、第1拡張流体管211の内部に形成される第1バルーン拡張ルーメン211Aと、第2拡張流体管212の内部に形成される第2バルーン拡張ルーメン212Aに分割されている。
【0072】
第1バルーン拡張ルーメン211Aを形成する第1拡張流体管211の先端側の開口端は第1バルーン3Aの内部空間211B(
図9)に挿入されている。ここで、第1バルーン3Aの内部空間211Bは、二重構造のバルーン3における外側の第1バルーン3Aの内周面と内側の第2バルーン3Bの外周面によって区画される空間である。第2バルーン拡張ルーメン212Aを形成する第2拡張流体管212の先端側の開口端は第2バルーン3Bの内部空間212B(
図9)に挿入されている。ここで、第2バルーン3Bの内部空間212Bは、第2バルーン3Bの内周面によって区画される空間である。なお、以上とは逆に、第1拡張流体管211の開口端が内側の第2バルーン3Bの内部空間212Bに挿入され、第2拡張流体管212の開口端が外側の第1バルーン3Aの内部空間211Bに挿入されてもよい。
【0073】
図10における例のシャフト2では、第1拡張流体管211の開口端の位置と第2拡張流体管212の開口端の位置が軸方向にずれている。具体的には、第1拡張流体管211の開口端はバルーン3の基端側の軸方向位置(例えば、基端側テーパ部33の位置)に設けられ、第2拡張流体管212の開口端はバルーン3の先端側の軸方向位置(例えば、先端側テーパ部31の位置)に設けられる。なお、
図10ではガイドワイヤ管22の先端が第2拡張流体管212の開口端と同じ位置に示されているが、実際には
図3等に関して前述したようにバルーンカテーテル1の先端(開口端221)に位置する。また、第1拡張流体管211の開口端と第2拡張流体管212の開口端の軸方向位置は同じでもよい。
【0074】
図9Aに示されるように、内側の第2バルーン3Bより先に拡張する外側の第1バルーン3Aの中間部32は、
図6Aに示されるような直管状ではなく、中央部322においてくびれ部を有するくびれ形状に拡張してもよい。例えば、第1バルーン3Aの中間部32を元からくびれ形状に形成(製造)することで、第1バルーン拡張ルーメン211Aから内部空間211Bに供給される拡張流体によって、第1バルーン3Aが自然にくびれ形状に拡張する。拡張対象の乳頭91(
図1)に中央部322を近接させた状態で第1バルーン3Aを
図9Aのように拡張させると、そのくびれ部(中央部322)より大径の先端部および基端部によって乳頭91が両側から支持される。このため、第1バルーン3Aのくびれ部(中央部322)を被拡張部としての乳頭91に対して確実に位置決めできる。
【0075】
なお、第1バルーン3Aの中間部32は
図6Aに示されるような直管状に拡張してもよい。前述のように、第1バルーン3Aは第2バルーン3Bより柔らかい材料で形成されるため、直管状に拡張した場合であっても乳頭91等の被拡張部の形状に追従して変形しながら拡張できる。このため、結果的に乳頭91等を両側から支持する
図9Aと同様のくびれ形状が第1バルーン3Aによって自然に形成される。このように、直管状に拡張する第1バルーン3Aであっても、乳頭91等の位置に自然に形成されるくびれ部によって位置決めされる。
【0076】
図9Aに続く
図9Bでは、第1バルーン拡張ルーメン211Aを通じた外側の第1バルーン3Aの拡張が継続し、第2バルーン拡張ルーメン212Aを通じた内側の第2バルーン3Bの実質的な拡張が開始する。前述のように、第1バルーン3Aと第2バルーン3Bの拡張開始タイミングにずれが生じるのは、第2バルーン3Bが第1バルーン3Aより硬いため、および/または、第2バルーン3Bへの拡張流体の供給開始タイミングが第1バルーン3Aへの拡張流体の供給開始タイミングより遅いためである。内側の第2バルーン3Bの中間部32は、
図6Aと同様に直管状に拡張する。外側の第1バルーン3Aの中間部32(中央部322)に形成されていたくびれ部は、第1バルーン3Aに供給され続ける拡張流体の高まった圧力と、第1バルーン3Aの内側から直管状に拡張する第2バルーン3Bからの拡張方向の圧力によって小さくなる(低減される)。
【0077】
図9Bに続く
図9Cでは、第2バルーン拡張ルーメン212Aを通じた内側の第2バルーン3Bの拡張が実質的に完了する。この第2バルーン3Bの最終拡張状態では、その中間部32が
図5Cと同様の最大拡張径Dmaxまで直管状に拡張している。そして、その外側の柔らかい第1バルーン3Aの中間部32も、硬い第2バルーン3Bに追従して最大拡張径Dmaxと略等しい径の直管状に変形している。このように、外側の第1バルーン3Aの中間部32(中央部322)に形成されていたくびれ部は、内側の第2バルーン3Bの最終拡張状態において実質的に消失する。この際、外側の柔らかい第1バルーン3Aのくびれ部(中央部322)に保持されていた乳頭91等の被拡張部が、内側の硬い第2バルーン3Bによって効果的に拡張される(押し広げられる)。
【0078】
図11は、バルーンカテーテル1の変形例を模式的に示す断面図である。本図では、バルーン3の中間部32と、後述する拘束バンド41、42のみを示し、他の構成の図示は省略する。本変形例に係るバルーン3は、先端部(先端側直管部321を含む)と基端部(基端側直管部323を含む)の間の中間部32(特に、中央部322)においてくびれ部を有するくびれ形状に拡張した後の当該先端部および当該基端部における拡張を制限する端部拘束構造および端部拘束部材としての先端側拘束バンド41および基端側拘束バンド42を備える。
【0079】
図11Aに示されるように、バルーン3の中央部322は、
図6Aに示されるような直管状ではなく、くびれ部を有するくびれ形状に拡張する。具体的には、バルーン3の中央部322を元からくびれ形状に形成(製造)することで、バルーン拡張ルーメン21Aから内部空間21Bに供給される拡張流体によって、バルーン3の中央部322が自然にくびれ形状に拡張する。拡張対象の乳頭91(
図1)に中央部322を近接させた状態でバルーン3を
図11Aのように拡張させると、そのくびれ部(中央部322)より大径の先端部(特に、先端側直管部321)および基端部(特に、基端側直管部323)によって乳頭91が両側から支持される。このため、バルーン3のくびれ部(中央部322)を被拡張部としての乳頭91に対して確実に位置決めできる。
【0080】
くびれた中央部322より先端側(
図11における左側)の先端側直管部321の外周に巻かれる先端側拘束バンド41は、先端側直管部321におけるバルーン3の拡張を制限する。同様に、くびれた中央部322より基端側(
図11における右側)の基端側直管部323の外周に巻かれる基端側拘束バンド42は、基端側直管部323におけるバルーン3の拡張を制限する。
図11Aから
図11Bにかけてバルーン3内の拡張流体の圧力が上昇しても、先端側直管部321は先端側拘束バンド41によって拡張が制限されて
図11Aから径がほとんど増えず、基端側直管部323は基端側拘束バンド42によって拡張が制限されて
図11Aから径がほとんど増えない。
【0081】
一方、拘束バンド41、42が設けられない中央部322は、
図11Aから
図11Bにかけて拡張して先端側直管部321および基端側直管部323と同等の径になる。この結果、
図11Bに示されるように、中間部32は先端側直管部321、中央部322、基端側直管部323に亘って略直管状になる。このように、
図11Aで中央部322に形成されていたくびれ部は、
図11Bのバルーン3の最終拡張状態において実質的に消失する。この際、
図11Aにおいて中央部322のくびれ部に保持されていた乳頭91等の被拡張部が、
図11Bにおいて略直管状になる中央部322によって効果的に拡張される(押し広げられる)。
【0082】
本変形例によれば、バルーン3の拡張時に中間部32(中央部322)に形成されるくびれ部によってバルーン3を被拡張部に対して確実に位置決めできる。また、拡張流体によってくびれ部を更に拡張して被拡張部を拡張する際に、その前後の先端部(先端側直管部321)および基端部(基端側直管部323)が過剰に拡張されることが端部拘束構造としての先端側拘束バンド41および基端側拘束バンド42によって効果的に防止される。
【0083】
なお、端部拘束構造は、直管部321、323の外周に巻かれる拘束バンド41、42に限らず、中間部32(特に、中央部322)より硬い先端部(先端側直管部321を含む)および基端部(基端側直管部323を含む)によって構成されてもよい。ここでの「硬い」の意義は、
図9に関して前述した「柔らかい」の意義と同様に、同じ圧力の拡張流体が供給された時の先端部および基端部の拡張量が中間部32(くびれ部としての中央部322)より小さいことを意味する。つまり、「柔らかい」くびれ部(中央部322)は、
図11Aから
図11Bへの変化と同様に、拡張流体の圧力の上昇によって容易に拡張できる。一方、「硬い」先端部(先端側直管部321)および基端部(基端側直管部323)は、
図11Aから
図11Bへの変化と同様に、拡張流体の圧力が上昇してもほとんど拡張しない。中央部322より「硬い」先端側直管部321および基端側直管部323は、中央部322(例えば、ウレタン)より硬い材料(例えば、ナイロン)で実現してもよいし、中央部322より大きい厚さで実現してもよいし、中央部322より多い層数の多層バルーンで実現してもよい。
【0084】
図12は、弾性バンド4の変形例を模式的に示す。本図では、弾性バンド4のみを示し、他の構成の図示は省略する。本変形例に係る弾性バンド4は、バルーン3の先端部と基端部の間の中間部32(特に、中央部322)の外周に巻かれ、当該中間部32におけるバルーン3の拡張を制限する拘束部材であって、その先端部および基端部の少なくともいずれかにおいて拘束を緩和させる拘束緩和構造を備える。
図12の例では、弾性バンド4の環状および帯状のバンド本体43の先端側および基端側の両方に、軸方向を向く凹凸状の先端側拘束緩和構造44および基端側拘束緩和構造45がバンド本体43の周方向に沿って形成されている。各拘束緩和構造44、45における凹凸形状は、
図3等に示される環状および帯状の弾性バンド4の先端部および基端部の周方向に沿って複数形成される軸方向の切欠(凹凸形状における凹部)によって構成される。各拘束緩和構造44、45を形成する軸方向の切欠は、軸方向のスリットまたは切れ込みでもよい。
【0085】
このような各拘束緩和構造44、45によって、弾性バンド4の各端部における拘束が、中央部(バンド本体43)における拘束に比べて緩和される。この結果、各拘束緩和構造44、45が形成される弾性バンド4の各端部は、中央部のバンド本体43より大きく拡張する。このように、バルーン3だけでなく弾性バンド4においても微小なくびれ部が形成されるため、狭窄部等の被拡張部に対してくびれた弾性バンド4(およびバルーン3)を確実に位置決めできる。なお、弾性バンド4の端部の拘束緩和構造は、中央部に対する拘束力の傾斜(減少)をもたらす任意の構造でよい。例えば、弾性バンド4を、先端部および/または基端部に設けられる端部バンド(第1拘束部材)と、それ以外の中央部に設けられる中央部バンド(第2拘束部材)によって構成する。端部バンドの軸方向の幅や径方向の厚さを、中央部バンド(バンド本体43に相当)より小さくすることで、端部バンドの拘束力を中央部バンドより弱くできるため、弾性バンド4の端部に拘束緩和構造(端部バンド)が構成される。
【0086】
以上、本開示を実施形態に基づいて説明した。実施形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本開示の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0087】
本開示は以下の項目のように表現されてもよい。なお、以下で例示的に記載される項目間の従属関係に関わらず、記述された各実施形態や各変型例の各要素の任意の組合せに応じて、各項目の各要素は互いに矛盾しない限り自由に組み合わせられる。
【0088】
項目1:
体内に挿入されるシャフトと、
前記シャフトの先端側に取り付けられ、当該シャフトの基端側から供給される流体によって拡張可能なバルーンと、
前記バルーンの先端部と基端部の間の中間部の外周に巻かれ、当該中間部における前記バルーンの拡張を制限する拘束部材と、
前記拘束部材の外周を被覆する被覆部材と、
を備えるカテーテル。
項目2:
前記拘束部材は、前記バルーンの拡張に伴って弾性変形可能である、項目1に記載のカテーテル。
項目3:
前記拘束部材の拘束径は、前記バルーンの中間部の最大拡張径より小さい、項目1または2に記載のカテーテル。
項目4:
前記流体の圧力が所定値未満の場合の前記拘束部材の拡張径は、前記バルーンの中間部の最大拡張径より20%以上小さい、項目1から3のいずれかに記載のカテーテル。
項目5:
前記バルーンは、前記流体の圧力に応じて、折り畳まれた状態から最大拡張径まで拡張可能であり、
前記拘束部材は、拡張する前記バルーンによって弾性変形して前記拘束径より大きく拡張可能であり、
前記被覆部材は、拡張する前記バルーンまたは前記拘束部材によって弾性変形して拡張可能である、
項目4に記載のカテーテル。
項目6:
前記拘束部材は前記被覆部材より弾性率が大きい、項目1から5のいずれかに記載のカテーテル。
項目7:
前記バルーンは前記拘束部材より弾性率が大きい、項目6に記載のカテーテル。
項目8:
前記拘束部材は、前記中間部の外周に巻かれる環状の部材である、項目1から7のいずれかに記載のカテーテル。
項目9:
前記拘束部材は、前記中間部の外周に巻かれる螺旋状の部材である、項目1から8のいずれかに記載のカテーテル。
項目10:
前記被覆部材は、前記拘束部材の外周と共に、当該拘束部材が巻かれていない前記バルーンの外周も被覆する、項目1から9のいずれかに記載のカテーテル。
項目11:
前記被覆部材は、前記拘束部材および前記バルーンの外周と共に、当該バルーンが取り付けられていない前記シャフトの外周も被覆する、項目10に記載のカテーテル。
項目12:
前記シャフトの先端と基端を結ぶ方向において、前記被覆部材が前記拘束部材より長い、項目1から11のいずれかに記載のカテーテル。
項目13:
前記シャフトの先端と基端を結ぶ方向において、前記被覆部材が前記バルーンより長い、項目12に記載のカテーテル。
項目14:
前記シャフトの先端と基端を結ぶ方向において、前記拘束部材の長さが1mmと10mmの間である、項目1から13のいずれかに記載のカテーテル。
項目15:
前記バルーンの中間部は、最大拡張径が略一定の直管部であり、
前記シャフトの先端と基端を結ぶ方向において、前記直管部の長さが10mmと40mmの間である、
項目14に記載のカテーテル。
項目16:
前記シャフトの先端と基端を結ぶ方向において、前記バルーンの中間部の長さが前記拘束部材の長さの2倍と8倍の間である、項目1から15のいずれかに記載のカテーテル。
項目17:
前記被覆部材は、前記拘束部材より先端側および基端側で前記カテーテルの外周に固定される、項目1から16のいずれかに記載のカテーテル。
項目18:
前記拘束部材は、前記バルーンおよび前記被覆部材のいずれとも接着されていない、項目1から17のいずれかに記載のカテーテル。
項目19:
前記被覆部材は、前記拘束部材および前記バルーンの外周の境界の少なくとも一部を被覆するコーティング材である、項目1から18のいずれかに記載のカテーテル。
項目20:
前記コーティング材は、前記拘束部材の先端側における前記バルーンとの前記境界の少なくとも一部、および、前記拘束部材の基端側における前記バルーンとの前記境界の少なくとも一部、の少なくともいずれかを被覆する、項目19に記載のカテーテル。
項目21:
前記コーティング材は、前記シャフトの先端と基端を結ぶ方向において、前記拘束部材の半分以上の長さを被覆する、項目19または20に記載のカテーテル。
項目22:
前記コーティング材は、前記拘束部材および前記バルーンの周方向の異なる複数の位置に互いに分離して設けられる、項目19から21のいずれかに記載のカテーテル。
項目23:
体内に挿入されるシャフトと、
前記シャフトの先端側に取り付けられ、当該シャフトの基端側から供給される流体によって拡張可能なバルーンと、
前記バルーンの先端部と基端部の間の中間部の外周に巻かれ、当該中間部における前記バルーンの拡張を制限する拘束部材と、
前記拘束部材の外周を被覆する被覆部材と、
を備えるカテーテルにおいて、
前記バルーン内に流体を供給することで当該バルーンを前記拘束部材および前記被覆部材と共に拡張させる際に、前記拘束部材が巻かれる前記中間部の拡張速度を抑制することを備える、
バルーンの拡張方法。
項目24:
体内に挿入されるシャフトと、
前記シャフトの先端側に取り付けられ、当該シャフトの基端側から供給される流体によって拡張可能なバルーンと、
前記バルーンの外周を被覆する被覆部材であって、前記バルーンの先端部と基端部の間の中間部における厚さが他の部分より大きい被覆部材と、
を備えるカテーテル。
項目25:
体内に挿入されるシャフトと、
前記シャフトの先端側に取り付けられ、当該シャフトの基端側から供給される流体によって拡張可能なバルーンと、
前記バルーンの先端部と基端部の間の中間部に設けられ、当該バルーンの他の部分と視覚的に識別可能な視認部と、
を備えるカテーテル。
項目26:
前記中間部の外周に巻かれ、当該中間部における前記バルーンの拡張を制限する拘束部材を更に備え、
前記視認部は、前記バルーンと視覚的に識別可能な前記拘束部材によって構成される、
項目25に記載のカテーテル。
項目27:
前記視認部は、前記バルーンの他の部分と色および/または模様が異なる、項目25または26に記載のカテーテル。
項目28:
体内に挿入されるシャフトと、
前記シャフトの先端側に取り付けられ、当該シャフトの基端側から供給される流体によって拡張可能な第1バルーンと第2バルーンを備えるバルーンであって、前記第1バルーンが前記第2バルーンより拡張方向の外側に設けられ当該第2バルーンより先に拡張するバルーンと、
を備えるカテーテル。
項目29:
前記第1バルーンは、前記第2バルーンより柔らかい、項目28に記載のカテーテル。
項目30:
前記第1バルーンは、前記流体によって前記バルーンの先端部と基端部の間の中間部においてくびれ部を有するくびれ形状に拡張し、
前記第2バルーンは、前記流体によって前記中間部において直管状に拡張する、
項目28または29に記載のカテーテル。
項目31:
前記第1バルーンは、前記流体によって前記くびれ形状に拡張した後、前記拡張方向の内側で前記流体によって前記直管状に拡張する前記第2バルーンによって前記くびれ部が低減される、項目30に記載のカテーテル。
項目32:
体内に挿入されるシャフトと、
前記シャフトの先端側に取り付けられ、当該シャフトの基端側から供給される流体によって拡張可能なバルーンであって、先端部と基端部の間の中間部においてくびれ部を有するくびれ形状に拡張した後の当該先端部および当該基端部における拡張を制限する端部拘束構造を備えるバルーンと、
を備えるカテーテル。
項目33:
前記端部拘束構造は、前記先端部および前記基端部の外周に巻かれ、当該先端部および当該基端部における前記バルーンの拡張を制限する端部拘束部材によって構成される、項目32に記載のカテーテル。
項目34:
前記端部拘束構造は、前記中間部より硬い前記先端部および前記基端部によって構成される、項目32または33に記載のカテーテル。
項目35:
体内に挿入されるシャフトと、
前記シャフトの先端側に取り付けられ、当該シャフトの基端側から供給される流体によって拡張可能なバルーンであって、当該流体が排出される収縮時に先端部と基端部の間の中間部を当該先端部および当該基端部より先に収縮させる収縮構造を備えるバルーンと、
を備えるカテーテル。
項目36:
前記収縮構造は、前記中間部の外周に巻かれ、当該中間部における前記バルーンの拡張を制限する弾性を有する拘束部材によって構成される、項目35に記載のカテーテル。
項目37:
体内に挿入されるシャフトと、
前記シャフトの先端側に取り付けられ、当該シャフトの基端側から供給される流体によって拡張可能なバルーンであって、当該流体が排出される収縮時に先端部と基端部の間の中間部を当該先端部および当該基端部より先に収縮させる収縮構造を備えるバルーンと、
を備えるカテーテルにおいて、
前記バルーン内から流体を排出することで当該バルーンを収縮させる際に、前記収縮構造が設けられる前記中間部の収縮速度を増加させることを備える、
カテーテルのバルーンの収縮方法。
項目38:
体内に挿入されるシャフトと、
前記シャフトの先端側に取り付けられ、当該シャフトの基端側から供給される流体によって拡張可能なバルーンと、
前記バルーンの先端部と基端部の間の中間部の外周に巻かれ、当該中間部における前記バルーンの拡張を制限する拘束部材であって、その先端部および基端部の少なくともいずれかにおいて拘束を緩和させる拘束緩和構造を備える拘束部材と、
を備えるカテーテル。
項目39:
前記拘束緩和構造は、前記拘束部材の先端部および基端部の少なくともいずれかに形成される切欠によって構成される、項目38に記載のカテーテル。
項目40:
前記拘束部材は、その先端部および基端部の少なくともいずれかに設けられる第1拘束部材と、それ以外の部分に設けられる第2拘束部材と、を備え、
前記拘束緩和構造は、前記第2拘束部材より拘束力が弱い前記第1拘束部材によって構成される、
項目38または39に記載のカテーテル。
【符号の説明】
【0089】
1 バルーンカテーテル、2 シャフト、3 バルーン、3A 第1バルーン、3B 第2バルーン、4 弾性バンド、5 被覆部材、6 ガイドワイヤ、7 マニホールド、10 内視鏡、11 鉗子チャンネル、12 カメラ、21 拡張流体管、21A バルーン拡張ルーメン、21B 内部空間、22 ガイドワイヤ管、22A ワイヤルーメン、31 先端側テーパ部、32 中間部、33 基端側テーパ部、41 先端側拘束バンド、42 基端側拘束バンド、43 バンド本体、44 先端側拘束緩和構造、45 基端側拘束緩和構造、51 固着チューブ、52 固着チューブ、53 コーティング材、71 バルーン拡張ポート、72 ガイドワイヤポート、90 十二指腸、91 乳頭、92 総胆管、93 膵管、211 第1拡張流体管、211A 第1バルーン拡張ルーメン、211B 内部空間、212 第2拡張流体管、212A 第2バルーン拡張ルーメン、212B 内部空間、221 開口端、222 造影マーカ、223 造影マーカ、311 先端部、321 先端側直管部、322 中央部、323 基端側直管部、331 基端部。