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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/336 20060101AFI20241007BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20241007BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20241007BHJP
   H01L 21/318 20060101ALI20241007BHJP
   H10B 12/00 20230101ALI20241007BHJP
   H10B 41/70 20230101ALI20241007BHJP
【FI】
H01L29/78 619A
H01L21/31 B
H01L21/318 C
H01L29/78 618B
H10B12/00 801
H10B41/70
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022159476
(22)【出願日】2022-10-03
(62)【分割の表示】P 2021072410の分割
【原出願日】2014-08-01
(65)【公開番号】P2022180607
(43)【公開日】2022-12-06
【審査請求日】2022-10-31
(31)【優先権主張番号】P 2013163811
(32)【優先日】2013-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 佑太
(72)【発明者】
【氏名】野田 耕生
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 優一
【審査官】田付 徳雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-119667(JP,A)
【文献】特開2012-253331(JP,A)
【文献】特開2013-128106(JP,A)
【文献】特開2012-151461(JP,A)
【文献】特開2013-149968(JP,A)
【文献】特開2012-033901(JP,A)
【文献】特開2012-049513(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/336
H01L 21/31
H01L 21/318
H01L 29/786
H10B 12/00
H10B 41/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の絶縁層と、
前記第1の絶縁層上の酸化物半導体層と、
前記酸化物半導体層上に設けられ、前記第1の絶縁層の上面と接するゲート絶縁層と、
前記ゲート絶縁層上のゲート電極層と、
前記ゲート電極層上の第2の絶縁層と、
前記第2の絶縁層の開口を介して前記酸化物半導体層と電気的に接続された導電層と、を有し、
前記第1の絶縁層の一部は、リンまたはホウ素を5×10 19 atoms/cm 以上含み、
前記第2の絶縁層は、窒素と酸素とシリコンとを含み、酸素を0.1atomic%以上25atomic%未満含む半導体装置。
【請求項2】
第1の絶縁層と、
前記第1の絶縁層上の酸化物半導体層と、
前記酸化物半導体層上に設けられ、前記第1の絶縁層の上面と接するゲート絶縁層と、
前記ゲート絶縁層上のゲート電極層と、
前記ゲート電極層上の第2の絶縁層と、
前記第2の絶縁層の開口を介して前記酸化物半導体層と電気的に接続された導電層と、を有し、
前記第1の絶縁層の一部は、リンまたはホウ素を5×10 19 atoms/cm 以上含み、
前記第2の絶縁層は、窒素と酸素とシリコンとを含み、酸素を0.1atomic%以上25atomic%未満含み、
前記第2の絶縁層の厚さは、20nm以上1000nm以下である半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物、方法、または、製造方法に関する。または、本発明は、プロセス、マシン
、マニュファクチャ、または、組成物(コンポジション・オブ・マター)に関する。特に
、本発明は、例えば、半導体装置、表示装置、液晶表示装置、発光装置、それらの駆動方
法、またはそれらを生産する方法に関する。特に、本発明は、例えば、トランジスタを有
する半導体装置、表示装置、発光装置、またはそれらの駆動方法などに関する。または、
本発明は、例えば、当該半導体装置、当該表示装置、または当該発光装置を有する電子機
器などに関する。
【0002】
なお、本明細書中において半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能し得る装置
全般をいう。表示装置、発光装置、電気光学装置、半導体回路および電子機器などは、半
導体装置を有している場合がある。
【背景技術】
【0003】
絶縁表面を有する基板上に形成された半導体膜を用いて、トランジスタを構成する技術が
注目されている。当該トランジスタは集積回路や表示装置のような半導体装置に広く応用
されている。トランジスタに適用可能な半導体膜としてシリコン膜が知られている。
【0004】
トランジスタの半導体膜に用いられるシリコン膜は、用途によって非晶質シリコン膜と多
結晶シリコン膜とが使い分けられている。例えば、大型の表示装置を構成するトランジス
タに適用する場合、大面積基板への成膜技術が確立されている非晶質シリコン膜を用いる
と好適である。一方、駆動回路を一体形成した高機能の表示装置を構成するトランジスタ
に適用する場合、高い電界効果移動度を有するトランジスタを作製可能な多結晶シリコン
膜を用いると好適である。多結晶シリコン膜は、非晶質シリコン膜に対し高温での熱処理
、またはレーザ光処理を行うことで形成する方法が知られる。
【0005】
近年は、インジウム、ガリウムおよび亜鉛を有する酸化物半導体膜を用いたトランジスタ
が注目されている。
【0006】
酸化物半導体膜は、スパッタリング法などを用いて成膜できるため、大型の表示装置を構
成するトランジスタに用いることができる。また、酸化物半導体膜を用いたトランジスタ
は、高い電界効果移動度を有するため、駆動回路を一体形成した高機能の表示装置を実現
できる。また、非晶質シリコン膜を用いたトランジスタの生産設備の一部を改良して利用
することが可能であるため、設備投資を抑えられるメリットもある。
【0007】
酸化物半導体膜を用いたトランジスタに安定した電気特性を与える方法として、酸化物半
導体膜と接する絶縁膜への酸素ドーピング技術が開示されている(特許文献1参照。)。
特許文献1に開示された技術を用いることで、酸化物半導体膜中の酸素欠損を低減するこ
とができる。その結果、酸化物半導体膜を用いたトランジスタの電気特性のばらつきを低
減し、信頼性を向上させることができる。
【0008】
ところで、酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、オフ状態において極めてリーク電流
が小さいことが知られている。例えば、酸化物半導体膜を用いたトランジスタの低いリー
ク特性を応用した低消費電力のCPUなどが開示されている(特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2011-243974号公報
【文献】特開2012-257187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
酸化物半導体膜を用いたトランジスタを提供することを課題の一とする。または、酸素欠
損の低減された酸化物半導体膜を用いたトランジスタを提供することを課題の一とする。
【0011】
または、電気特性の優れたトランジスタを提供することを課題の一とする。または、微細
な構造を有するトランジスタを提供することを課題の一とする。または、オン電流の高い
トランジスタを提供することを課題の一とする。または、電気特性の安定したトランジス
タを提供することを課題の一とする。または、スイッチング特性の向上したトランジスタ
を提供することを課題の一とする。
【0012】
または、オフ電流の小さい、トランジスタを提供することを課題の一とする。または、当
該トランジスタを有する半導体装置などを提供することを課題の一とする。または、新規
な半導体装置などを提供することを課題の一とする。
【0013】
または、酸素の拡散係数の異なる領域を有する絶縁膜を提供することを課題の一とする。
または、高抵抗である領域と低抵抗である領域を有する酸化物半導体膜を提供することを
課題の一とする。
【0014】
または、絶縁膜中に酸素の拡散係数の異なる領域を形成することを課題の一とする。
【0015】
なお、これらの課題の記載は、他の課題の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一
態様は、これらの課題の全てを解決する必要はないものとする。なお、これら以外の課題
は、明細書、図面、請求項などの記載から、自ずと明らかとなるものであり、明細書、図
面、請求項などの記載から、これら以外の課題を抽出することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0016】
酸素の拡散係数が大きい絶縁膜であっても、当該絶縁膜中に不純物を添加することにより
、酸素の拡散係数の小さい領域、即ち酸素をブロックする領域(酸素ブロック領域ともい
う。)を形成することができる場合がある。例えば、酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン
膜などに代表される酸化物の絶縁膜に対し、リンまたはホウ素を添加すると、絶縁膜中に
酸素ブロック領域を形成することができる。
【0017】
酸素ブロック領域は、例えば、そのほかの領域に比べて酸素(酸素原子および酸素原子を
有する分子などを含む)の拡散係数が小さい領域である。したがって、絶縁膜中で酸素を
熱拡散させるとき、酸素ブロック領域は、そのほかの領域よりも酸素が透過(通過)する
量の少ない領域である。例えば、酸素ブロック領域を有することで、酸素ブロック領域を
有さない場合と比べ、酸素の透過する割合を20%未満、15%未満、10%未満、5%
未満、2%未満または1%未満とすることができる。
【0018】
酸素ブロック領域を半導体装置の一部に有することにより、酸化物半導体膜の酸素欠損を
低減できる場合がある。
【0019】
酸素ブロック領域を有することにより、例えば、酸化物半導体膜から酸素が脱離し、半導
体装置の外部まで拡散(外方拡散ともいう。)することを抑制できる場合がある。または
、酸素ブロック領域を有することにより、酸化物半導体膜と接する膜などに過剰酸素が含
まれる場合、過剰酸素の外方拡散を低減し、酸化物半導体膜への過剰酸素の供給を効率よ
く行うことができる場合がある。
【0020】
過剰酸素とは、例えば、熱が加わることにより放出可能な(放出する)酸素をいう。また
、熱は、半導体装置の作製工程中に加わる熱をいう。つまり、本明細書において過剰酸素
は、半導体装置の作製工程中に加わる温度以下の熱によって放出される酸素である。なお
、過剰酸素は、例えば、膜や層の内部を移動することができる。過剰酸素の移動は、膜や
層の原子間を移動する場合と、膜や層を構成する酸素と置き換わりながら玉突き的に移動
する場合とがある。
【0021】
過剰酸素を含む膜は、昇温脱離ガス分光法(TDS:Thermal Desorpti
on Spectroscopy)によって1×1018atoms/cm以上、1×
1019atoms/cm以上または1×1020atoms/cm以上の酸素(酸
素原子数に換算)が検出されることもある。
【0022】
または、過剰酸素を含む膜は、過酸化ラジカルを含むこともある。具体的には、過酸化ラ
ジカルに起因するスピン密度が、5×1017個/cm以上である膜をいう。なお、過
酸化ラジカルを含む膜は、電子スピン共鳴(ESR:Electron Spin Re
sonance)にて、g値が2.01近傍に非対称の信号を有することもある。
【0023】
本発明の一態様は、基板上の島状の第1の絶縁膜と、第1の絶縁膜上に設けられた第1の
酸化物半導体膜と、第1の酸化物半導体膜上に設けられたゲート絶縁膜と、ゲート絶縁膜
上に設けられたゲート電極と、を有し、第1の絶縁膜は第1の領域と、第2の領域と、を
有し、第1の領域は、第2の領域よりも酸素を透過させにくい領域であり、第1の酸化物
半導体膜は少なくとも第2の領域上に配置される半導体装置である。
【0024】
また、本発明の一態様は、基板上の第1の絶縁膜と、第1の絶縁膜上に設けられた第1の
酸化物半導体膜と、第1の酸化物半導体膜上に設けられたゲート絶縁膜と、ゲート絶縁膜
上に設けられたゲート電極と、を有し、第1の絶縁膜は第1の領域と、第2の領域と、を
有し、第1の領域は、第2の領域よりも酸素を透過させにくい領域であり、第1の絶縁膜
は凸部を有し、前記凸部は少なくとも第2の領域の一部を含み、第1の酸化物半導体膜は
第2の領域上に配置される半導体装置である。
【0025】
また、上記構成において、第2の領域は、ゲート電極と重なると好ましい。また、第1の
酸化物半導体膜の一部に高抵抗である領域と、低抵抗である領域と、を有すると好ましい
。また、第1の領域は、リンまたはホウ素を含む領域であると好ましい。また、低抵抗で
ある領域はリンまたはホウ素を含むと好ましい。
【0026】
また、本発明の一態様は、基板上の島状の第1の絶縁膜と、第1の絶縁膜上に設けられた
第1の酸化物半導体膜と、第1の酸化物半導体膜上に設けられたゲート絶縁膜と、ゲート
絶縁膜上に設けられたゲート電極と、保護絶縁膜と、を有し、保護絶縁膜は第1の酸化物
半導体膜上およびゲート電極上に配置し、保護絶縁膜は第1の絶縁膜およびゲート絶縁膜
と接し、保護絶縁膜は酸素を透過させにくい半導体装置である。
【0027】
また、本発明の一態様は、基板上の第1の絶縁膜と、第1の絶縁膜上に設けられた第1の
酸化物半導体膜と、第1の酸化物半導体膜上に設けられた第2の絶縁膜と、第2の絶縁膜
上に設けられたゲート電極と、保護絶縁膜と、を有し、第1の絶縁膜は凸部を有し、保護
絶縁膜は第1の絶縁膜上、第1の酸化物半導体膜上およびゲート電極上に配置し、保護絶
縁膜は第1の絶縁膜およびゲート絶縁膜と接し、保護絶縁膜は酸素を透過させにくい半導
体装置である。
【0028】
また、上記の構成において、第1の絶縁膜は過剰酸素を有すると好ましい。また、第1の
絶縁膜は、ゲート絶縁膜より厚いと好ましい。また、第1の酸化物半導体膜の下に第2の
酸化物半導体膜を有し、第2の酸化物半導体膜の厚さと第1の絶縁膜の厚さの和は、ゲー
ト絶縁膜の厚さよりも厚いと好ましい。
【0029】
また、本発明の一態様は、基板上に第1の絶縁膜を形成し、第1の絶縁膜上に第1の酸化
物半導体膜を形成し、第1の酸化物半導体膜上に第2の絶縁膜を形成し、第2の絶縁膜上
にゲート電極を形成し、ゲート電極の形成後に、ゲート電極をマスクとして第1の酸化物
半導体膜および第1の絶縁膜にリンまたはホウ素を添加する半導体装置の作製方法である
【発明の効果】
【0030】
本発明の一態様により、酸化物半導体膜を用いたトランジスタを提供することができる。
または、酸素欠損の低減された酸化物半導体膜を用いたトランジスタを提供することがで
きる。
【0031】
または、電気特性の優れたトランジスタを提供することができる。または、微細な構造を
有するトランジスタを提供することができる。または、オン電流の高いトランジスタを提
供することができる。または、電気特性の安定したトランジスタを提供することができる
【0032】
または、オフ電流の小さいトランジスタを提供することができる。または、高い電界効果
移動度を有するトランジスタを提供することができる。または、歩留まり高いトランジス
タを提供することができる。または、当該トランジスタを有する半導体装置などを提供す
ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】半導体装置内部における過剰酸素の拡散について説明する断面模式図。
図2】イオンの入射を説明する図。
図3】本発明の一態様に係る半導体装置の一例を示す上面図および断面図。
図4】本発明の一態様に係る半導体装置の一例を示す上面図および断面図。
図5】トランジスタの断面図。
図6】バンド構造を説明する図。
図7】トランジスタの電気特性を説明する図。
図8】本発明の一態様に係る半導体装置の作製方法の一例を示す断面図。
図9】本発明の一態様に係る半導体装置の作製方法の一例を示す断面図。
図10】本発明の一態様に係る半導体装置の作製方法の一例を示す断面図。
図11】本発明の一態様に係る半導体装置の一例を示す上面図および断面図。
図12】本発明の一態様に係る半導体装置の作製方法の一例を示す断面図。
図13】本発明の一態様に係る半導体装置の作製方法の一例を示す断面図。
図14】本発明の一態様に係る半導体装置の作製方法の一例を示す断面図。
図15】半導体装置内部における過剰酸素の拡散について説明する断面模式図。
図16】半導体装置内部における不純物の添加について説明する断面模式図。
図17】半導体装置内部における不純物の添加について説明する断面模式図。
図18】半導体装置内部における不純物の添加について説明する断面模式図。
図19】本発明の一態様に係る半導体装置の一例を示す断面図。
図20】本発明の一態様に係るCPUの一例を示すブロック図。
図21】本発明の一態様に係る電子機器の一例を示す図。
図22】TDSによる基板温度とイオン強度との関係を示す図。
図23】リンイオン注入濃度と酸素放出量との関係を示す図。
図24】エッチング深さと酸素放出量との関係を示す図。
図25】TDSによる基板温度とイオン強度との関係を示す図。
図26】本発明の一態様に係る半導体装置の一例を示す上面図および断面図。
図27】本発明の一態様に係る半導体装置の作製方法の一例を示す断面図。
図28】本発明の一態様に係る半導体装置の作製方法の一例を示す断面図。
図29】本発明の一態様に係る半導体装置の作製方法の一例を示す断面図。
図30】半導体の抵抗を測定する素子を示す図。
図31】本発明の一態様に係る半導体装置の一例を示す上面図および断面図。
図32】本発明の一態様に係る半導体装置の作製方法の一例を示す断面図。
図33】本発明の一態様に係る半導体装置の作製方法の一例を示す断面図。
図34】本発明の一態様に係る半導体装置の作製方法の一例を示す断面図。
図35】本発明の一態様に係る半導体装置の一例を示す上面図および断面図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説
明に限定されず、その形態および詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に
理解される。また、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるもの
ではない。なお、図面を用いて発明の構成を説明するにあたり、同じものを指す符号は異
なる図面間でも共通して用いる。なお、同様のものを指す際にはハッチパターンを同じく
し、特に符号を付さない場合がある。
【0035】
なお、図において、大きさ、層の厚さ、または領域は、明瞭化のために誇張されている場
合がある。よって、必ずしもそのスケールに限定されない。
【0036】
また、電圧は、ある電位と、基準の電位(例えば接地電位(GND)またはソース電位)
との電位差のことを示す場合が多い。よって、電圧を電位と言い換えることが可能である
【0037】
本明細書においては、「電気的に接続する」と表現される場合であっても、現実の回路に
おいては、物理的な接続部分がなく、配線が延在しているだけの場合もある。
【0038】
なお、第1、第2として付される序数詞は便宜上用いるものであり、工程順または積層順
を示すものではない。そのため、例えば、「第1の」を「第2の」または「第3の」など
と適宜置き換えて説明することができる。また、本明細書に記載されている序数詞と、本
発明の一態様を特定するために用いられる序数詞は一致しない場合がある。
【0039】
本明細書において、例えば、物体の形状を「径」、「粒径」、「大きさ」、「サイズ」、
「幅」などで規定する場合、物体が収まる最小の立方体における一辺の長さ、または物体
の一断面における円相当径と読み替えてもよい。物体の一断面における円相当径とは、物
体の一断面と等しい面積となる正円の直径をいう。
【0040】
なお、「半導体」と表記した場合でも、例えば、導電性が十分低い場合は「絶縁体」とし
ての特性を有する場合がある。また、「半導体」と「絶縁体」は境界が曖昧であり、厳密
に区別できない場合がある。したがって、本明細書に記載の「半導体」は、「絶縁体」と
言い換えることができる場合がある。同様に、本明細書に記載の「絶縁体」は、「半導体
」と言い換えることができる場合がある。
【0041】
また、「半導体」と表記した場合でも、例えば、導電性が十分高い場合は「導電体」とし
ての特性を有する場合がある。また、「半導体」と「導電体」は境界が曖昧であり、厳密
に区別できない場合がある。したがって、本明細書に記載の「半導体」は、「導電体」と
言い換えることができる場合がある。同様に、本明細書に記載の「導電体」は、「半導体
」と言い換えることができる場合がある。
【0042】
また、本明細書において、「平行」とは、二つの直線が-10°以上10°以下の角度で
配置されている状態をいう。したがって、-5°以上5°以下の場合も含まれる。また、
「垂直」とは、二つの直線が80°以上100°以下の角度で配置されている状態をいう
。したがって、85°以上95°以下の場合も含まれる。
【0043】
<過剰酸素の挙動について>
以下では、半導体装置内部における過剰酸素の挙動について図1を用いて説明する。
【0044】
図1(A)は、基板50と、基板50上の絶縁膜52と、絶縁膜52上の島状の酸化物半
導体膜56と、絶縁膜52および酸化物半導体膜56上の絶縁膜68と、を有する試料の
断面模式図である。図1(A)に示す試料において、絶縁膜52は過剰酸素(図中ではe
x-Oと表記する。)を含む絶縁膜とする。
【0045】
絶縁膜52としては、酸化物膜、酸化窒化物膜などを用いることができる。例えば、絶縁
膜52としては、酸化シリコン膜または酸化窒化シリコン膜などを用いればよい。ただし
、本明細書において、酸化窒化物膜とは、窒素を0.1atomic%以上25atom
ic%未満含む酸化物膜をいう。なお、窒化酸化物膜とは、酸素を0.1atomic%
以上25atomic%未満含む窒化物膜をいう。
【0046】
酸化物半導体膜56および絶縁膜68については、冗長になるため、それぞれ後述する酸
化物半導体膜103および絶縁膜106についての記載を参照することとし、ここでの説
明を省略する。
【0047】
熱が加わると、絶縁膜52中を過剰酸素が拡散する。例えば、絶縁膜52中を拡散した過
剰酸素は、絶縁膜52と酸化物半導体膜56との界面に達すると、酸化物半導体膜56中
の酸素欠損を埋めることができる。酸化物半導体膜56中の酸素欠損が低減されることで
、酸化物半導体膜56中の酸素欠損に起因する欠陥準位の密度を小さくすることができる
【0048】
ところが、絶縁膜52中を拡散する過剰酸素の全てが、絶縁膜52と酸化物半導体膜56
との界面に達するわけではない。例えば、絶縁膜52中を拡散した過剰酸素は、絶縁膜6
8を介して外方拡散してしまう場合がある。または、例えば、絶縁膜52中を拡散した過
剰酸素は、半導体装置を構成する配線などと反応し、配線抵抗を高めてしまう場合がある
【0049】
したがって、図1(A)に示す試料構造は、過剰酸素の活用が効率的ではない可能性があ
る。
【0050】
図1(B)に、効率的に過剰酸素を活用することができる試料構造の一例を示す。
【0051】
図1(B)は、図1(A)に示した試料と類似の構造を有する試料である。ただし、図1
(B)に示す試料は、絶縁膜52が、絶縁膜68の近傍に領域53を有する点が異なる。
図1(B)に示す試料において、絶縁膜52は過剰酸素を含む絶縁膜とする。領域53は
、絶縁膜52の上面から深さ1nm以上200nm以下、好ましくは5nm以上150n
m以下、さらに好ましくは10nm以上100nm以下に設けられる領域である。なお、
領域53が、深さ方向において絶縁膜52の全体に設けられていても構わない。
【0052】
領域53は、酸素ブロック領域である。例えば、絶縁膜52に、ホウ素、炭素、マグネシ
ウム、アルミニウム、シリコン、リン、カルシウム、スカンジウム、チタン、バナジウム
、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、ガリウム、ゲルマニウム、ヒ素、イット
リウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、インジウム、スズ、ランタン、セリウム、
ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステンから選択された一種以上を添加すると、
酸素ブロック領域である領域53を形成することができる場合がある。上述の不純物の添
加は、金属を高抵抗化させる要因となりにくい。なお、絶縁膜52に、リンまたはホウ素
を添加すると、酸素ブロック性の高い(酸素の拡散係数が小さい)、特に良質な領域53
を形成することができる。領域53は、例えば、絶縁膜52中に、上述の不純物元素を5
×1019atoms/cm以上、好ましくは1×1020atoms/cm以上、
さらに好ましくは2×1020atoms/cm以上、より好ましくは5×1020
toms/cm以上含む領域である。
【0053】
図1(B)に示す試料における過剰酸素の挙動を以下に示す。
【0054】
熱が加わると、絶縁膜52中を過剰酸素が拡散する。絶縁膜52中を拡散した過剰酸素は
、絶縁膜52と酸化物半導体膜56との界面に達すると、酸化物半導体膜56中の酸素欠
損を埋めることができる。
【0055】
絶縁膜52中を拡散する過剰酸素は、領域53を透過しにくいため、絶縁膜52と酸化物
半導体膜56との界面に達する過剰酸素の割合は高くなる。したがって、効率的に酸化物
半導体膜56中の酸素欠損を埋めることができる。また、例えば、絶縁膜52中を拡散し
た過剰酸素が、絶縁膜68を介して外方拡散することを抑制することができる。または、
例えば、絶縁膜52中を拡散した過剰酸素が、半導体装置を構成する配線などと反応し、
配線抵抗を高めることを抑制することができる。
【0056】
したがって、図1(B)に示す試料は、過剰酸素の効率的な活用が可能な構造であること
がわかる。
【0057】
次に、図1(B)とは異なる試料構造について、効率的に過剰酸素を活用することができ
る一例を図15(A)に示す。図1(B)と異なる点は、図15(A)は絶縁膜72に凸
部を有する点である。
【0058】
図15(A)は、基板70と、基板70上の絶縁膜72と、絶縁膜72上の島状の酸化物
半導体膜76と、絶縁膜72および酸化物半導体膜76上の絶縁膜88と、を有する試料
の断面模式図である。図15(A)に示す試料において、絶縁膜72は過剰酸素を含む絶
縁膜とする。図15(A)において、絶縁膜72は凸部を有し、その凸部の上に酸化物半
導体膜76が位置する。絶縁膜72については、絶縁膜52の記載を参照する。酸化物半
導体膜76と絶縁膜88については冗長になるため、それぞれ後述する酸化物半導体膜1
03および絶縁膜106についての記載を参照することとし、ここでの説明を省略する。
【0059】
領域73は酸素ブロック領域である。酸素ブロック領域については、領域53の記載を参
照する。
【0060】
熱が加わると、絶縁膜72中を過剰酸素が拡散する。絶縁膜72中を拡散した過剰酸素は
、絶縁膜72と酸化物半導体膜76との界面に達すると、酸化物半導体膜76中の酸素欠
損を埋めることができる。
【0061】
絶縁膜72中を拡散する過剰酸素は、領域73を透過しにくいため、絶縁膜72と酸化物
半導体膜76との界面に達する過剰酸素の割合は高くなる。したがって、効率的に酸化物
半導体膜76中の酸素欠損を埋めることができる。また、例えば、絶縁膜72中を拡散し
た過剰酸素が、外方拡散することを抑制することができる。または、例えば、絶縁膜72
中を拡散した過剰酸素が、半導体装置を構成する配線などと反応し、配線抵抗を高めるこ
とを抑制することができる。
【0062】
したがって、図15(A)に示す試料は、過剰酸素の効率的な活用が可能な構造であるこ
とがわかる。
【0063】
また図15(C)に示すように、絶縁膜72を島状に形成してもよい。この場合は、過剰
酸素を含む領域が島状になることにより、横方向の酸素拡散が制限され、効率よく酸素を
酸化物半導体膜76に供給できるようになる。
【0064】
<酸化物半導体膜への不純物添加について>
図16(B)に、酸化物半導体膜へ不純物を添加して抵抗を下げることができる一例を示
す。図16(B)は、基板70と、基板70上の絶縁膜72と、絶縁膜72上の酸化物半
導体膜76とを有する試料の断面構造である。
【0065】
領域77は酸化物半導体膜76の一部の領域であり、不純物を有する領域である。例えば
、酸化物半導体膜76に、ホウ素、炭素、マグネシウム、アルミニウム、シリコン、リン
、カルシウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、
ニッケル、ガリウム、ゲルマニウム、ヒ素、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリ
ブデン、インジウム、スズ、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タ
ングステンから選択された一種以上を添加すると、不純物を有する領域である領域77を
形成することができる場合がある。領域77は、例えば、酸化物半導体膜76中に、上述
の不純物元素を5×1019atoms/cm以上、好ましくは1×1020atom
s/cm以上、さらに好ましくは2×1020atoms/cm以上、より好ましく
は5×1020atoms/cm以上含む領域である。領域77には、領域73に添加
する不純物と同じ不純物を添加することができる。
【0066】
前述した不純物の添加などを行うことで、酸化物半導体膜のキャリア密度を高くすること
ができる。したがって、酸化物半導体膜76に不純物を添加することにより、酸化物半導
体膜の抵抗を低くすることができる。
【0067】
前述した不純物の添加により、酸化物半導体膜76に酸素欠損が形成される場合がある。
酸素欠損が形成された酸化物半導体膜76に水素を添加すると、酸素欠損サイトに水素が
入り伝導帯近傍にドナー準位が形成される。この結果、酸化物半導体膜76の抵抗をさら
に低くすることができる場合がある。
【0068】
水素の添加は、例えばイオンドーピング法、イオン注入法、プラズマ処理等を用いて行え
ばよい。または、水素を含む雰囲気中で熱処理を行えばよい。または、水素を含む膜を酸
化物半導体膜76の上層または下層に形成し、水素を添加してもよい。水素を含む膜とし
て、例えば窒化シリコン膜などが挙げられる。
【0069】
ここで、水素は酸素欠損サイトに入ると安定化する。そのため、酸化物半導体膜76に入
った水素は酸素欠損サイトにとどまり、チャネル領域へ水素が拡散することを防ぐことが
できる。
【0070】
また、図16(C)に示すように、例えば、部分的に不純物を添加することで、酸化物半
導体膜76は、不純物の添加された領域77と、不純物の添加されていない領域79を酸
化物半導体膜76に作り分けることもできる。
【0071】
次に、図15に示した構造に、更に酸化物半導体膜の低抵抗領域を組み合わせた例を示す
図18(A)は、酸素ブロック領域を有し、かつ不純物添加により低抵抗化された酸化
物半導体膜を有する例である。ここで酸素ブロック領域は不純物添加された絶縁膜である
【0072】
図18(A)は、基板70と、基板70上の絶縁膜72と、絶縁膜72上の島状の酸化物
半導体膜76と、絶縁膜72および酸化物半導体膜76上の絶縁膜88と、を有する試料
の断面模式図である。図18(A)に示す試料において、絶縁膜72は過剰酸素を含む絶
縁膜とする。図18(A)において、絶縁膜72は凸部を有し、酸化物半導体膜76は絶
縁膜72の凸部の上に位置する。絶縁膜72については、絶縁膜52の記載を参照する。
酸化物半導体膜76と絶縁膜88については冗長になるため、それぞれ後述する酸化物半
導体膜103および絶縁膜106についての記載を参照することとし、ここでの説明を省
略する。
【0073】
領域73は酸素ブロック領域である。領域73については領域53の記載を参照する。熱
が加わると、絶縁膜72中を過剰酸素が拡散する。絶縁膜72中を拡散した過剰酸素は、
絶縁膜72と酸化物半導体膜76との界面に達すると、酸化物半導体膜76中の酸素欠損
を埋めることができる。
【0074】
絶縁膜72中を拡散する過剰酸素は、領域73を透過しにくいため、絶縁膜72と酸化物
半導体膜76との界面に達する過剰酸素の割合は高くなる。したがって、効率的に酸化物
半導体膜76中の酸素欠損を埋めることができる。また、例えば、絶縁膜72中を拡散し
た過剰酸素が、外方拡散することを抑制することができる。または、例えば、絶縁膜72
中を拡散した過剰酸素が、半導体装置を構成する配線などと反応し、配線抵抗を高めるこ
とを抑制することができる。
【0075】
領域77は酸化物半導体膜76の一部の領域であり、不純物が添加された領域である。酸
化物半導体膜に不純物を添加することにより、酸化物半導体膜の抵抗を下げることができ
る。例えば図18(A)に示す通り、不純物を添加することにより、酸化物半導体膜76
の一部の領域に、低抵抗である領域78を作ることができる。言い換えると、酸化物半導
体膜76に、低抵抗である領域と、高抵抗である領域を作り分けることができる。
【0076】
また、領域77に添加する不純物は、領域73に添加する不純物と同じ不純物を用いるこ
とができる。よって、領域77と領域73は同時に形成することができる。
【0077】
酸化物半導体膜76に低抵抗である領域と高抵抗である領域を作り分けることにより、例
えばトランジスタのソース領域やドレイン領域の抵抗を低減し、トランジスタのオン特性
を高めることができる。
【0078】
また図18(B)に示すように、絶縁膜72を島状に形成してもよい。この場合は、過剰
酸素を含む領域が島状になることにより、横方向の酸素拡散が制限され、効率よく酸素を
酸化物半導体膜76に供給できるようになる。
【0079】
<不純物の添加方法>
以下では、図1(B)に領域53で示した酸素ブロック領域を形成することが可能な方法
について説明する。
【0080】
まず、絶縁膜52を成膜する。
【0081】
次に、酸化物半導体膜56となる酸化物半導体膜を成膜する。
【0082】
次に、酸化物半導体膜上にレジストを成膜する。レジストを、フォトマスクを介して露光
した後、現像することでレジストマスクを形成する。
【0083】
次に、レジストマスクを用いて酸化物半導体膜をエッチングし、酸化物半導体膜56を形
成する。
【0084】
次に、レジストマスクを残したまま、不純物を絶縁膜52に添加することで領域53を形
成する。このように、レジストマスクを残しておくことで、酸化物半導体膜56の上面に
不純物が添加されることを抑制することができる。ただし、酸化物半導体膜56の上面を
後の工程で除去する場合などは、レジストマスクを除去した後で絶縁膜52および酸化物
半導体膜56に不純物を添加しても構わない。
【0085】
絶縁膜52に添加する不純物としては、例えば、ホウ素、炭素、マグネシウム、アルミニ
ウム、シリコン、リン、カルシウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マン
ガン、鉄、コバルト、ニッケル、ガリウム、ゲルマニウム、ヒ素、イットリウム、ジルコ
ニウム、ニオブ、モリブデン、インジウム、スズ、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフ
ニウム、タンタル、タングステンから選択された一種以上を用いればよい。なお、絶縁膜
52に、リンまたはホウ素を添加すると、酸素ブロック性の高い、特に良質な領域53を
形成することができる。
【0086】
絶縁膜52への不純物の添加は、イオンドーピング法(質量分離を行わない方法)、イオ
ン注入法(質量分離を行う方法)、プラズマ処理などを用いればよい。また、原子または
分子のクラスターを生成してイオン化するイオンドーピング法またはイオン注入法を用い
てもよい。ただし、不純物元素を含む雰囲気におけるプラズマ処理などによって、絶縁膜
52に不純物を添加しても構わない。
【0087】
イオンドーピング法またはイオン注入法を用いて、絶縁膜52に領域53を形成する場合
、例えば、イオンドーピング法またはイオン注入法における加速電圧は、0.5kV以上
100kV以下、好ましくは1kV以上50kV以下、さらに好ましくは1kV以上30
kV以下、より好ましくは1kV以上10kV以下とする。また、イオンの注入濃度は、
5×1014atoms/cm以上、好ましくは1×1015atoms/cm以上
とする。
【0088】
イオンドーピング法またはイオン注入法によるイオンの添加は、試料面に対して特定の角
度(例えば、垂直な角度)から行ってもよいが、図2に示す方法で行うと好ましい。図2
は、一つのイオンが、試料面に対し、角度(θ)および角度(φ)で入射する様子を簡略
的に示した図である。
【0089】
図中のx軸、y軸およびz軸は、あるイオンの入射点で交差する直線である。x軸は、試
料面上に任意に定めた直線である。y軸は、試料面上にあり、x軸と直交する直線である
。z軸は、入射点における試料面の法線である。角度(θ)は、断面図において、イオン
の入射方向とz軸との為す角度である。また、角度(φ)は、上面図において、イオンの
入射方向とx軸との為す角度である。
【0090】
試料面に対して特定の角度(θ,φ)のみからイオンを入射させた場合、イオンの添加さ
れない領域が生じる場合がある。例えば、絶縁膜52上には、酸化物半導体膜56および
レジストマスクが設けられている。そのため、これらによって絶縁膜52の一部にイオン
の添加されない陰が生じる場合がある。したがって、イオンを複数の角度から入射させる
ことにより、絶縁膜52に生じる陰の影響を低減することが好ましい。
【0091】
図2(A1)および図2(A2)に示すように、イオンを試料面に対し、第1の角度(θ
,φ)で入射させた後、第2の角度(θ,φ)で入射させればよい。ただし、第1の角度
(θ,φ)および第2の角度(θ,φ)はθ、φの少なくとも一方が異なる角度である。
【0092】
第1の角度(θ,φ)において、角度(θ)は、例えば、0°以上90°未満、好ましく
は30°以上88°以下、さらに好ましくは60°以上85°以下とする。第2の角度(
θ,φ)において、角度(θ)は、例えば、0°以上90°未満、好ましくは30°以上
88°以下、さらに好ましくは60°以上85°以下とする。第2の角度(θ,φ)にお
ける角度(φ)は、例えば、第1の角度(θ,φ)における角度(φ)よりも90°以上
270°以下、好ましくは135°以上225°以下大きい角度とする。ただし、ここで
示した第1の角度(θ,φ)および第2の角度(θ,φ)は一例であり、これに限定され
るものではない。
【0093】
なお、イオンを入射させる角度は、第1の角度(θ,φ)、第2の角度(θ,φ)の2種
類に限定されない。例えば、第1乃至第n(nは2以上の自然数)の角度(θ,φ)で入
射させてもよい。第1乃至第nの角度(θ,φ)は、それぞれθ、φの少なくとも一方が
異なる角度を含む。
【0094】
または、図2(B)に示すように、イオンを試料面に対し、第1の角度(θ,φ)で入射
させた後、角度(θ)が90°を経由して第2の角度(θ,φ)までθ方向にスキャン(
θスキャンともいう。)させればよい。ただし、イオンを入射させる角度(φ)は、1種
類に限定されず、第1乃至第n(nは2以上の自然数)の角度(φ)で入射させてもよい
。イオンの入射角度をθスキャンさせることで、アスペクト比の高い(例えば、1以上、
2以上、5以上または10以上)開口部などであっても、深い領域まで確実にイオンを添
加することができる。そのため、隙間なく酸素ブロック領域を形成することができる。
【0095】
第1の角度(θ,φ)において、角度(θ)は、例えば、0°以上90°未満、好ましく
は30°以上88°以下、さらに好ましくは60°以上85°以下とする。第2の角度(
θ,φ)において、角度(θ)は、例えば、0°以上90°未満、好ましくは30°以上
88°以下、さらに好ましくは60°以上85°以下とする。第1の角度(θ,φ)と第
2の角度(θ,φ)とは同じ角度(θ)であってもよい。
【0096】
なお、θスキャンは、連続的にスキャンしてもよいが、例えば、0.5°、1°、2°、
3°、4°、5°、6°、10°、12°、18°、20°、24°または30°ステッ
プで段階的にスキャンしてもよい。
【0097】
または、イオンは、図2(C)に示すように、試料面に対し、第1の角度(θ,φ)で入
射させた後、第2の角度(θ,φ)までφ方向にスキャン(φスキャンともいう。)させ
ればよい。ただし、イオンを入射させる角度(θ)は、1種類に限定されず、第1乃至第
n(nは2以上の自然数)の角度(θ)で入射させてもよい。
【0098】
第1の角度(θ,φ)および第2の角度(θ,φ)において、角度(θ)は、例えば、0
°以上90°未満、好ましくは30°以上88°以下、さらに好ましくは60°以上85
°以下とする。第1の角度(θ,φ)と第2の角度(θ,φ)とは同じ角度(φ)であっ
てもよい。
【0099】
なお、φスキャンは、連続的にスキャンしてもよいが、例えば、0.5°、1°、2°、
3°、4°、5°、6°、10°、12°、18°、20°、24°または30°ステッ
プで段階的にスキャンしてもよい。
【0100】
なお、図示しないが、θスキャンおよびφスキャンを組み合わせて行っても構わない。
【0101】
図2に示した方法を用いることで、領域53は、酸化物半導体膜56と重ならない領域に
加え、一部が酸化物半導体膜56と重なる領域にも形成することができる。つまり、領域
53以外の領域(酸素ブロックしない領域)が、酸化物半導体膜56の設けられた領域か
らはみ出さないように領域53を形成することができる。したがって、絶縁膜52に含ま
れる過剰酸素を、酸化物半導体膜56の酸素欠損を低減するために有効活用することがで
きる。
【0102】
以上のようにして、絶縁膜52に領域53を形成した後、絶縁膜52の領域53上および
酸化物半導体膜56上に絶縁膜68を成膜することで、図1(B)に示した試料構造を作
製することができる。
【0103】
次に、図15(A)に示す試料構造の作製方法について説明する。図15(B)は、図1
5(A)に示す試料構造の作製方法を説明するための図である。以下に作製方法について
説明する。
【0104】
まず、基板70上に絶縁膜72を成膜する。
【0105】
次に、酸化物半導体膜76となる酸化物半導体膜を成膜する。
【0106】
次に、酸化物半導体膜上にレジストを成膜する。レジストを、フォトマスクを介して露光
した後、現像することでレジストマスク81を形成する。
【0107】
次に、レジストマスク81を用いて酸化物半導体膜および絶縁膜72をエッチングし、島
状の酸化物半導体膜76および、凸部を有する絶縁膜72を形成する。
【0108】
次に、レジストマスク81を残したまま、不純物を絶縁膜72に添加することで領域73
を形成する。絶縁膜72に添加する不純物は、絶縁膜52に添加する不純物の記載を参照
する。
【0109】
領域73はイオンドーピング法またはイオン注入法を用いて形成することができる。
【0110】
イオンドーピング法およびイオン注入法については領域53の記載を参照する。図2に示
した方法を用いることで、領域73として、酸化物半導体膜76と重ならない領域に加え
、酸化物半導体膜76と一部重なる領域である領域73aも形成することができる。領域
73aを形成することにより、膜の側面からの酸素の外方拡散が抑えられ、効率よく酸素
を酸化物半導体膜76に供給できるようになる。
【0111】
次に図16(B)に示す試料構造の作製方法について説明する。
【0112】
まず、基板70上に絶縁膜72を成膜する。
【0113】
次に、酸化物半導体膜76となる酸化物半導体膜を成膜する(図16(A))。
【0114】
次に不純物を酸化物半導体膜76に添加することで領域77を形成する(図16(B))
。酸化物半導体膜76に添加する不純物は、絶縁膜52に添加する不純物の記載を参照す
る。
【0115】
領域77はイオンドーピング法またはイオン注入法を用いて形成することができる。
【0116】
イオンドーピング法およびイオン注入法については領域53の記載を参照する。酸化物半
導体膜76に不純物を添加することにより、抵抗を下げることができる。つまり酸化物半
導体膜76に低抵抗である領域77を形成することができる。
【0117】
次に、図16(C)に示す試料構造の作製方法を説明する。酸化物半導体膜76の中の、
領域79になる部分の上に、(図示しないが)レジストマスクを形成した後、不純物を添
加することにより、イオンドーピング法またはイオン注入法を用いて領域77にのみ不純
物を添加することができる。つまり酸化物半導体膜76に低抵抗である領域77と、高抵
抗である領域79を作り分けることができる。
【0118】
次に、図18(A)に示す試料構造の作製方法を説明する。図17(A)乃至図17(C
)は、図18(A)に示す試料構造の作製方法を説明するための図である。以下に作製方
法について説明する。
【0119】
まず、絶縁膜72を成膜する。
【0120】
次に、酸化物半導体膜76となる酸化物半導体膜を成膜する(図17(A)参照)。
【0121】
次に、酸化物半導体膜上にレジストを成膜する。レジストを、フォトマスクを介して露光
した後、現像することでレジストマスク81を形成する。
【0122】
次に、レジストマスク81を用いて酸化物半導体膜および絶縁膜72をエッチングし、島
状の酸化物半導体膜76および、凸部を有する絶縁膜72を形成する(図17(B)参照
)。
【0123】
次に、レジストマスク81より領域の小さいレジストマスク82を、レジストマスク81
と同様の方法で形成する。レジストマスク82を用いて不純物を絶縁膜72に添加するこ
とで領域73を形成する(図17(C)参照)。絶縁膜72に添加する不純物は、絶縁膜
52に添加する不純物の記載を参照する。
【0124】
領域73はイオンドーピング法またはイオン注入法を用いて形成することができる。
【0125】
イオンドーピング法およびイオン注入法については領域53の記載を参照する。図2に示
した方法を用いることで、領域73は、酸化物半導体膜76と重ならない領域に加え、一
部が酸化物半導体膜76と重なる領域にも形成することができる。つまり、図15の領域
73に示すように、絶縁膜72上面のみでなく、絶縁膜72の凸部の側面にも領域73を
形成することができる。
【0126】
また、領域77に添加する不純物は、領域73に添加する不純物と同じ不純物を用いるこ
とができる。よって、不純物を添加して酸素ブロック領域である領域73を形成する場合
に、同じ不純物添加工程を用いて酸化物半導体膜76の一部にも不純物を添加した領域7
7を形成することができる(図17(C)参照)。酸化物半導体膜76に不純物を添加す
ることにより、酸化物半導体膜の抵抗を下げることができる。その結果、例えば図18
A)に示す通り、酸化物半導体膜76の一部の領域に、低抵抗である領域78を作ること
ができる。言い換えると、酸化物半導体膜76に、低抵抗である領域と、高抵抗である領
域を作り分けることができる。
【0127】
絶縁膜72に酸素ブロック領域を形成する工程を用いて、酸化物半導体膜76に、高抵抗
である領域と、低抵抗である領域を作製することができる。
【0128】
<トランジスタの構造および作製方法についての説明>
以下では、本発明の一態様に係るトランジスタの構造および作製方法について説明する。
【0129】
<トランジスタ構造(1)>
まず、トップゲートセルフアライン型のトランジスタの一例について説明する。
【0130】
セルフアライン型のトップゲート構造においては、ゲート電極をマスクとしてソース領域
およびドレイン領域が自己整合的に形成されるため、ソース領域およびドレイン領域とゲ
ート電極との重なりの面積を大幅に低減することができ、寄生容量の低減に有効である。
このような現象はチャネル長が小さいほど顕著であるため、特に微細化したトランジスタ
においては、より有効である。ゲート電極とソース電極またはドレイン電極の間や、ゲー
ト電極と半導体膜の低抵抗である領域との間において、生じうる寄生容量を低減させるこ
とによりトランジスタのスイッチング特性を向上させることができる。
【0131】
図3は、トランジスタの上面図および断面図である。図3(A)は、トランジスタの上面
図を示す。図3(A)において、一点鎖線A-Bに対応する断面図を図3(B)に示す。
また、図3(A)において、一点鎖線C-Dに対応する断面図を図3(C)に示す。
【0132】
なお、チャネル長とは、上面図において、半導体膜とゲート電極とが重なる領域における
、ソース領域とドレイン領域との距離をいう。すなわち、図3(A)では、チャネル長は
、図中に矢印で示したチャネル長181である。チャネル幅とは、半導体膜とゲート電極
とが重なる領域における、ソース領域とドレイン領域とが平行に向かい合っている長さを
いう。すなわち、図3(A)では、チャネル幅は、図中に矢印で示したチャネル幅182
である。なお、チャネル形成領域とは、上面図において、酸化物半導体膜103において
、ゲート電極105と重なり、かつソース領域とドレイン領域とに挟まれる領域をいう。
【0133】
図3(B)において、トランジスタは、基板101上の下地絶縁膜102と、下地絶縁膜
102上の絶縁膜121と、絶縁膜121上の酸化物半導体膜103と、酸化物半導体膜
103上のゲート絶縁膜104と、ゲート絶縁膜104上のゲート電極105と、ゲート
電極105および酸化物半導体膜103および下地絶縁膜102の上の絶縁膜106と、
酸化物半導体膜103および絶縁膜106上のソース電極107aおよびドレイン電極1
07bと、を有する。絶縁膜121は過剰酸素を含む絶縁膜である。なお、トランジスタ
は、下地絶縁膜102を有さなくても構わない。
【0134】
図3(B)において、領域151aは酸化物半導体膜の一部の領域である。領域151b
、領域151c、領域151dは絶縁膜の一部の領域であり、酸素ブロック領域である。
酸素ブロック領域については、前述の領域53についての記載を参照する。図3(B)に
示すトランジスタは、酸素ブロック領域である領域151b、領域151c、領域151
dのいずれか一以上を有する。
【0135】
まず、酸素ブロック領域である領域151b、領域151c、領域151dについて述べ
る。
【0136】
領域151bは、絶縁膜121の、絶縁膜106と接する領域である。領域151bは、
絶縁膜121の絶縁膜106と接する面から深さ1nm以上200nm以下、好ましくは
5nm以上150nm以下、さらに好ましくは10nm以上100nm以下に設けられる
領域である。なお、図4(B)に示すように領域151bが、絶縁膜121の側面のみで
はなく、例えば領域151aと重なる領域に設けられていても構わない。
【0137】
領域151cは、図3(B)および図3(C)に示すように、ゲート絶縁膜104の、絶
縁膜106と接する領域である。領域151cは、ゲート絶縁膜104の絶縁膜106と
接する面から深さ1nm以上200nm以下、好ましくは5nm以上150nm以下、さ
らに好ましくは10nm以上100nm以下に設けられる領域である。
【0138】
領域151dは、図3(B)に示すように、下地絶縁膜102の絶縁膜106と接する領
域である。領域151dは、下地絶縁膜102の上面から深さ1nm以上200nm以下
、好ましくは5nm以上150nm以下、さらに好ましくは10nm以上100nm以下
に設けられる領域である。なお、図4(B)および図4(C)に示すように領域151d
は上面のみではなく深さ方向において下地絶縁膜102の全体に設けられていても構わな
い。また、基板101にも領域151dが設けられていても構わない。
【0139】
トランジスタが領域151bを有する場合、絶縁膜121に含まれる過剰酸素を酸化物半
導体膜103の酸素欠損を低減するために有効活用することができる。例えば、領域15
1bを有さない場合、絶縁膜121に含まれる過剰酸素が、絶縁膜106を介して外方拡
散することで失われてしまう場合がある。また、絶縁膜121に含まれる過剰酸素が、ソ
ース電極107aおよびドレイン電極107bを酸化させる場合がある。
【0140】
トランジスタが領域151dを有する場合でも、絶縁膜121や下地絶縁膜102に含ま
れる過剰酸素を酸化物半導体膜103の酸素欠損を低減するために有効活用することがで
きる。例えば、領域151dを有さない場合、絶縁膜121や下地絶縁膜102に含まれ
る過剰酸素が外方拡散することで失われてしまう場合がある。また、領域151dを有さ
ない場合、絶縁膜121や下地絶縁膜102に含まれる過剰酸素が、ソース電極107a
およびドレイン電極107bを酸化させる場合がある。
【0141】
トランジスタが領域151cを有する場合でも、ゲート絶縁膜104に含まれる過剰酸素
を酸化物半導体膜103の酸素欠損を低減するために有効活用することができる。例えば
、領域151cを有さない場合、ゲート絶縁膜104に含まれる過剰酸素が外方拡散する
ことで失われてしまう場合がある。また、領域151cを有さない場合、ゲート絶縁膜1
04に含まれる過剰酸素が、ソース電極107aおよびドレイン電極107bを酸化させ
る場合がある。
【0142】
次に、酸化物半導体膜103の一部の領域である領域151aについて述べる。
【0143】
領域151aは、酸化物半導体膜103の、ソース電極107aおよびドレイン電極10
7b、絶縁膜106に接する領域である。領域151aは、酸化物半導体膜103の上面
または側面から深さ1nm以上200nm以下、好ましくは5nm以上150nm以下、
さらに好ましくは10nm以上100nm以下に設けられる領域である。なお、図4に示
すように領域151aが、酸化物半導体膜103のチャネル形成領域を除いて、深さ方向
において酸化物半導体膜103の全体に設けられていても構わない。
【0144】
酸素ブロック領域である領域151b、領域151c、領域151dを形成するために不
純物を添加する工程において、領域151aにも不純物が添加される。このとき、不純物
を添加することにより領域151aを低抵抗化することもできる。
【0145】
図3(B)示す領域122は、ソース電極107aまたはドレイン電極107bと接さな
い領域で、かつゲート電極105と重ならない領域である。領域122の抵抗が高いとト
ランジスタのオン電流を下げる要因となってしまう。
【0146】
酸化物半導体膜103の一部の領域である領域151aに不純物を添加することにより、
領域122の抵抗を下げることができる。これにより、オン電流が高くなり、トランジス
タの性能を向上することができる。
【0147】
なお、低抵抗である領域を形成するための不純物を添加する工程は、酸素ブロック領域で
ある領域151b、領域151c、領域151dを形成するための不純物を添加する工程
と兼ねることができる。これにより、工程の短縮が可能となり、コスト低減につながる。
また工程が簡略化されることにより、歩留まりの向上も期待できる。
【0148】
以下では、酸化物半導体膜103について説明する。
【0149】
酸化物半導体膜103は、インジウムを含む酸化物である。酸化物は、例えば、インジウ
ムを含むと、キャリア移動度(電子移動度)が高くなる。また、酸化物半導体膜103は
、元素Mを含むと好ましい。元素Mとして、例えば、アルミニウム、ガリウム、イットリ
ウムまたはスズなどがある。元素Mは、例えば、酸素との結合エネルギーが高い元素であ
る。元素Mは、例えば、酸化物のエネルギーギャップを大きくする機能を有する元素であ
る。また、酸化物半導体膜103は、亜鉛を含むと好ましい。酸化物が亜鉛を含むと、酸
化物が結晶化しやすくなる。酸化物の価電子帯上端のエネルギーは、例えば、亜鉛の原子
数比によって制御できる。
【0150】
ただし、酸化物半導体膜103は、インジウムを含む酸化物に限定されない。酸化物半導
体膜103は、例えば、Zn-Sn酸化物、Ga-Sn酸化物であっても構わない。
【0151】
酸化物半導体膜103のチャネル形成領域において、その上下に、第1の酸化物半導体膜
および第2の酸化物半導体膜を有してもよい。なお、第2の酸化物半導体膜は、酸化物半
導体膜103とゲート絶縁膜104との間に設けられる。
【0152】
第1の酸化物半導体膜は、酸化物半導体膜103を構成する酸素以外の元素一種以上、ま
たは二種以上から構成される酸化物半導体膜である。酸化物半導体膜103を構成する酸
素以外の元素一種以上、または二種以上から第1の酸化物半導体膜が構成されるため、酸
化物半導体膜103と第1の酸化物半導体膜との界面において、界面準位が形成されにく
い。
【0153】
第2の酸化物半導体膜は、酸化物半導体膜103を構成する酸素以外の元素一種以上、ま
たは二種以上から構成される酸化物半導体膜である。酸化物半導体膜103を構成する酸
素以外の元素一種以上、または二種以上から第2の酸化物半導体膜が構成されるため、酸
化物半導体膜103と第2の酸化物半導体膜との界面において、界面準位が形成されにく
い。
【0154】
なお、第1の酸化物半導体膜がIn-M-Zn酸化物のとき、InおよびMの和を100
atomic%としたとき、InとMの原子数比率は好ましくはInが50atomic
%未満、Mが50atomic%以上、さらに好ましくはInが25atomic%未満
、Mが75atomic%以上とする。また、酸化物半導体膜103がIn-M-Zn酸
化物のとき、InおよびMの和を100atomic%としたとき、InとMの原子数比
率は好ましくはInが25atomic%以上、Mが75atomic%未満、さらに好
ましくはInが34atomic%以上、Mが66atomic%未満とする。また、第
2の酸化物半導体膜がIn-M-Zn酸化物のとき、InおよびMの和を100atom
ic%としたとき、InとMの原子数比率は好ましくはInが50atomic%未満、
Mが50atomic%以上、さらに好ましくはInが25atomic%未満、Mが7
5atomic%以上とする。なお、第2の酸化物半導体膜は、第1の酸化物半導体膜と
同種の酸化物を用いても構わない。
【0155】
ここで、第1の酸化物半導体膜と酸化物半導体膜103との間には、第1の酸化物半導体
膜と酸化物半導体膜103との混合領域を有する場合がある。また、酸化物半導体膜10
3と第2の酸化物半導体膜との間には、酸化物半導体膜103と第2の酸化物半導体膜と
の混合領域を有する場合がある。混合領域は、界面準位密度が低くなる。そのため、第1
の酸化物半導体膜、酸化物半導体膜103および第2の酸化物半導体膜の積層体は、それ
ぞれの界面近傍において、エネルギーが連続的に変化する(連続接合ともいう。)バンド
構造となる。
【0156】
また酸化物半導体膜103は、エネルギーギャップが大きい酸化物を用いる。酸化物半導
体膜103のエネルギーギャップは、例えば、2.5eV以上4.2eV以下、好ましく
は2.8eV以上3.8eV以下、さらに好ましくは3eV以上3.5eV以下とする。
また、第2の酸化物半導体膜のエネルギーギャップは、2.7eV以上4.9eV以下、
好ましくは3eV以上4.7eV以下、さらに好ましくは3.2eV以上4.4eV以下
とする。
【0157】
また、第1の酸化物半導体膜は、エネルギーギャップが大きい酸化物を用いる。例えば、
第1の酸化物半導体膜のエネルギーギャップは、2.7eV以上4.9eV以下、好まし
くは3eV以上4.7eV以下、さらに好ましくは3.2eV以上4.4eV以下とする
【0158】
また、第2の酸化物半導体膜は、エネルギーギャップが大きい酸化物を用いる。第2の酸
化物半導体膜のエネルギーギャップは、2.7eV以上4.9eV以下、好ましくは3e
V以上4.7eV以下、さらに好ましくは3.2eV以上4.4eV以下とする。ただし
、第1の酸化物半導体膜および第2の酸化物半導体膜は、酸化物半導体膜103よりもエ
ネルギーギャップが大きい酸化物とする。
【0159】
酸化物半導体膜103は、第1の酸化物半導体膜よりも電子親和力の大きい酸化物を用い
る。例えば、酸化物半導体膜103として、第1の酸化物半導体膜よりも電子親和力の0
.07eV以上1.3eV以下、好ましくは0.1eV以上0.7eV以下、さらに好ま
しくは0.15eV以上0.4eV以下大きい酸化物を用いる。なお、電子親和力は、真
空準位と伝導帯下端のエネルギーとの差である。
【0160】
また、酸化物半導体膜103として、第2の酸化物半導体膜よりも電子親和力の大きい酸
化物を用いる。例えば、酸化物半導体膜103として、第2の酸化物半導体膜よりも電子
親和力の0.07eV以上1.3eV以下、好ましくは0.1eV以上0.7eV以下、
さらに好ましくは0.15eV以上0.5eV以下大きい酸化物を用いる。
【0161】
このとき、ゲート電極105に電界を印加すると、第1の酸化物半導体膜、酸化物半導体
膜103、第2の酸化物半導体膜のうち、電子親和力の大きい酸化物半導体膜103に主
として電流が流れる。
【0162】
また、トランジスタのオン電流のためには、第2の酸化物半導体膜の厚さは小さいほど好
ましい。例えば、第2の酸化物半導体膜は、10nm未満、好ましくは5nm以下、さら
に好ましくは3nm以下とする。一方、第2の酸化物半導体膜は、主として電流が流れる
酸化物半導体膜103へ、ゲート絶縁膜104を構成する酸素以外の元素(シリコンなど
)が入り込まないようブロックする機能を有する。そのため、第2の酸化物半導体膜は、
ある程度の厚さを有することが好ましい。例えば、第2の酸化物半導体膜の厚さは、0.
3nm以上、好ましくは1nm以上、さらに好ましくは2nm以上とする。
【0163】
また、信頼性を高めるためには、第1の酸化物半導体膜は厚く、酸化物半導体膜103は
薄く、第2の酸化物半導体膜は薄く設けられることが好ましい。具体的には、第1の酸化
物半導体膜の厚さは、20nm以上、好ましくは30nm以上、さらに好ましくは40n
m以上、より好ましくは60nm以上とする。第1の酸化物半導体膜の厚さを、20nm
以上、好ましくは30nm以上、さらに好ましくは40nm以上、より好ましくは60n
m以上とすることで、下地絶縁膜102と第1の酸化物半導体膜との界面から主として電
流が流れる酸化物半導体膜103までを20nm以上、好ましくは30nm以上、さらに
好ましくは40nm以上、より好ましくは60nm以上離すことができる。ただし、半導
体装置の生産性が低下する場合があるため、第1の酸化物半導体膜の厚さは、200nm
以下、好ましくは120nm以下、さらに好ましくは80nm以下とする。また、酸化物
半導体膜103の厚さは、3nm以上100nm以下、好ましくは3nm以上80nm以
下、さらに好ましくは3nm以上50nm以下とする。
【0164】
例えば、第1の酸化物半導体膜の厚さは酸化物半導体膜103の厚さより厚く、酸化物半
導体膜103の厚さは第2の酸化物半導体膜の厚さより厚くすればよい。
【0165】
また、絶縁膜121を島状に形成する場合には、第1の酸化物半導体膜の厚さと絶縁膜1
21の厚さの和を、20nm以上、好ましくは30nm以上、さらに好ましくは40nm
以上、より好ましくは60nm以上とすることにより、下地絶縁膜102と絶縁膜121
との界面から、主として電流が流れる酸化物半導体膜103までを20nm以上、好まし
くは30nm以上、さらに好ましくは40nm以上、より好ましくは60nm以上離すこ
とができる。つまり絶縁膜121を厚く設けることにより、第1の酸化物半導体膜を薄く
することができる。第1の酸化物半導体膜を薄くすることにより、第1の酸化物半導体膜
への過剰酸素の供給量を少なくすることができ、また主として電流が流れる酸化物半導体
膜103へ供給できる酸素量が相対的に増えるため、更なる特性の向上が期待される。
【0166】
以下では、酸化物半導体膜103中における不純物の影響について説明する。なお、トラ
ンジスタの電気特性を安定にするためには、酸化物半導体膜103中の不純物濃度を低減
し、低キャリア密度化および高純度化することが有効である。なお、酸化物半導体膜10
3のキャリア密度は、1×1017個/cm未満、1×1015個/cm未満、また
は1×1013個/cm未満とする。酸化物半導体膜103中の不純物濃度を低減する
ためには、近接する膜中の不純物濃度も低減することが好ましい。
【0167】
例えば、酸化物半導体膜103中にシリコンが含まれることでキャリアトラップやキャリ
ア発生源となる場合がある。そのため、酸化物半導体膜103と第1の酸化物半導体膜と
の間におけるシリコン濃度を、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary
Ion Mass Spectrometry)において、1×1019atoms/c
未満、好ましくは5×1018atoms/cm未満、さらに好ましくは2×10
18atoms/cm未満とする。また、酸化物半導体膜103と第2の酸化物半導体
膜との間におけるシリコン濃度を、SIMSにおいて、1×1019atoms/cm
未満、好ましくは5×1018atoms/cm未満、さらに好ましくは2×1018
atoms/cm未満とする。
【0168】
また、酸化物半導体膜103中に水素が含まれると、キャリア密度を増大させてしまう場
合がある。酸化物半導体膜103の水素濃度はSIMSにおいて、2×1020atom
s/cm以下、好ましくは5×1019atoms/cm以下、より好ましくは1×
1019atoms/cm以下、さらに好ましくは5×1018atoms/cm
下とする。また、酸化物半導体膜103中で窒素が含まれると、キャリア密度を増大させ
てしまう場合がある。酸化物半導体膜103の窒素濃度は、SIMSにおいて、5×10
19atoms/cm未満、好ましくは5×1018atoms/cm以下、より好
ましくは1×1018atoms/cm以下、さらに好ましくは5×1017atom
s/cm以下とする。
【0169】
また、酸化物半導体膜103の水素濃度を低減するために、第1の酸化物半導体膜の水素
濃度を低減すると好ましい。第1の酸化物半導体膜の水素濃度はSIMSにおいて、2×
1020atoms/cm以下、好ましくは5×1019atoms/cm以下、よ
り好ましくは1×1019atoms/cm以下、さらに好ましくは5×1018at
oms/cm以下とする。また、酸化物半導体膜103の窒素濃度を低減するために、
第1の酸化物半導体膜の窒素濃度を低減すると好ましい。第1の酸化物半導体膜の窒素濃
度は、SIMSにおいて、5×1019atoms/cm未満、好ましくは5×10
atoms/cm以下、より好ましくは1×1018atoms/cm以下、さら
に好ましくは5×1017atoms/cm以下とする。
【0170】
また、酸化物半導体膜103の水素濃度を低減するために、第2の酸化物半導体膜の水素
濃度を低減すると好ましい。第2の酸化物半導体膜の水素濃度はSIMSにおいて、2×
1020atoms/cm以下、好ましくは5×1019atoms/cm以下、よ
り好ましくは1×1019atoms/cm以下、さらに好ましくは5×1018at
oms/cm以下とする。また、酸化物半導体膜103の窒素濃度を低減するために、
第2の酸化物半導体膜の窒素濃度を低減すると好ましい。第2の酸化物半導体膜の窒素濃
度は、SIMSにおいて、5×1019atoms/cm未満、好ましくは5×10
atoms/cm以下、より好ましくは1×1018atoms/cm以下、さら
に好ましくは5×1017atoms/cm以下とする。
【0171】
以下では、酸化物半導体膜の構造について説明する。
【0172】
酸化物半導体膜は、非単結晶酸化物半導体膜と単結晶酸化物半導体膜とに大別される。非
単結晶酸化物半導体膜とは、CAAC-OS(C Axis Aligned Crys
talline Oxide Semiconductor)膜、多結晶酸化物半導体膜
、微結晶酸化物半導体膜、非晶質酸化物半導体膜などをいう。
【0173】
まずは、CAAC-OS膜について説明する。
【0174】
CAAC-OS膜は、c軸配向した複数の結晶部を有する酸化物半導体膜の一つである。
【0175】
CAAC-OS膜を透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Elect
ron Microscope)によって観察すると、明確な結晶部同士の境界、即ち結
晶粒界(グレインバウンダリーともいう。)を確認することができない。そのため、CA
AC-OS膜は、結晶粒界に起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。
【0176】
CAAC-OS膜を、試料面と概略平行な方向からTEMによって観察(断面TEM観察
)すると、結晶部において、金属原子が層状に配列していることを確認できる。金属原子
の各層は、CAAC-OS膜の膜を形成する面(被形成面ともいう。)または上面の凹凸
を反映した形状であり、CAAC-OS膜の被形成面または上面と平行に配列する。
【0177】
一方、CAAC-OS膜を、試料面と概略垂直な方向からTEMによって観察(平面TE
M観察)すると、結晶部において、金属原子が三角形状または六角形状に配列しているこ
とを確認できる。しかしながら、異なる結晶部間で、金属原子の配列に規則性は見られな
い。
【0178】
断面TEM観察および平面TEM観察より、CAAC-OS膜の結晶部は配向性を有して
いることがわかる。
【0179】
なお、CAAC-OS膜に含まれるほとんどの結晶部は、一辺が100nm未満の立方体
内に収まる大きさである。従って、CAAC-OS膜に含まれる結晶部は、一辺が10n
m未満、5nm未満または3nm未満の立方体内に収まる大きさの場合も含まれる。ただ
し、CAAC-OS膜に含まれる複数の結晶部が連結することで、一つの大きな結晶領域
を形成する場合がある。例えば、平面TEM像において、2500nm以上、5μm
以上または1000μm以上となる結晶領域が観察される場合がある。
【0180】
CAAC-OS膜に対し、X線回折(XRD:X-Ray Diffraction)装
置を用いて構造解析を行うと、例えばInGaZnOの結晶を有するCAAC-OS膜
のout-of-plane法による解析では、回折角(2θ)が31°近傍にピークが
現れる場合がある。このピークは、InGaZnOの結晶の(009)面に帰属される
ことから、CAAC-OS膜の結晶がc軸配向性を有し、c軸が被形成面または上面に概
略垂直な方向を向いていることが確認できる。
【0181】
なお、本明細書において、結晶が三方晶または菱面体晶である場合、六方晶系として表す
【0182】
一方、CAAC-OS膜に対し、c軸に概略垂直な方向からX線を入射させるin-pl
ane法による解析では、2θが56°近傍にピークが現れる場合がある。このピークは
、InGaZnOの結晶の(110)面に帰属される。InGaZnOの単結晶酸化
物半導体膜であれば、2θを56°近傍に固定し、試料面の法線ベクトルを軸(φ軸)と
して試料を回転させながら分析(φスキャン)を行うと、(110)面と等価な結晶面に
帰属されるピークが6本観察される。これに対し、CAAC-OS膜の場合は、2θを5
6°近傍に固定してφスキャンした場合でも、明瞭なピークが現れない。
【0183】
以上のことから、CAAC-OS膜では、異なる結晶部間ではa軸およびb軸の配向は不
規則であるが、c軸配向性を有し、かつc軸が被形成面または上面の法線ベクトルに平行
な方向を向いていることがわかる。従って、前述の断面TEM観察で確認された層状に配
列した金属原子の各層は、結晶のab面に平行な面である。
【0184】
なお、結晶部は、CAAC-OS膜を成膜した際、または加熱処理などの結晶化処理を行
った際に形成される。上述したように、結晶のc軸は、CAAC-OS膜の被形成面また
は上面の法線ベクトルに平行な方向に配向する。従って、例えば、CAAC-OS膜の形
状をエッチングなどによって変化させた場合、結晶のc軸がCAAC-OS膜の被形成面
または上面の法線ベクトルと平行にならないこともある。
【0185】
また、CAAC-OS膜中において、c軸配向した結晶部の分布が均一でなくてもよい。
例えば、CAAC-OS膜の結晶部が、CAAC-OS膜の上面近傍からの結晶成長によ
って形成される場合、上面近傍の領域は、被形成面近傍の領域よりもc軸配向した結晶部
の割合が高くなることがある。また、CAAC-OS膜に不純物を添加する場合、不純物
が添加された領域が変質し、部分的にc軸配向した結晶部の割合の異なる領域が形成され
ることもある。
【0186】
なお、InGaZnOの結晶を有するCAAC-OS膜のout-of-plane法
による解析では、2θが31°近傍のピークの他に、2θが36°近傍にもピークが現れ
る場合がある。2θが36°近傍のピークは、CAAC-OS膜中の一部に、c軸配向性
を有さない結晶が含まれることを示している。CAAC-OS膜は、2θが31°近傍に
ピークを示し、2θが36°近傍にピークを示さないことが好ましい。
【0187】
CAAC-OS膜は、不純物濃度の低い酸化物半導体膜である。不純物は、水素、炭素、
シリコン、遷移金属元素などの酸化物半導体膜の主成分以外の元素である。特に、シリコ
ンなどの、酸化物半導体膜を構成する金属元素よりも酸素との結合力の強い元素は、酸化
物半導体膜から酸素を奪うことで酸化物半導体膜の原子配列を乱し、結晶性を低下させる
要因となる。また、鉄やニッケルなどの重金属、アルゴン、二酸化炭素などは、原子半径
(または分子半径)が大きいため、酸化物半導体膜内部に含まれると、酸化物半導体膜の
原子配列を乱し、結晶性を低下させる要因となる。なお、酸化物半導体膜に含まれる不純
物は、キャリアトラップやキャリア発生源となる場合がある。
【0188】
また、CAAC-OS膜は、欠陥準位密度の低い酸化物半導体膜である。例えば、酸化物
半導体膜中の酸素欠損は、キャリアトラップとなることや、水素を捕獲することによって
キャリア発生源となることがある。
【0189】
不純物濃度が低く、欠陥準位密度が低い(酸素欠損の少ない)ことを、高純度真性または
実質的に高純度真性と呼ぶ。高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体膜
は、キャリア発生源が少ないため、キャリア密度を低くすることができる。従って、当該
酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、しきい値電圧がマイナスとなる電気特性(ノー
マリーオンともいう。)になることが少ない。また、高純度真性または実質的に高純度真
性である酸化物半導体膜は、キャリアトラップが少ない。そのため、当該酸化物半導体膜
を用いたトランジスタは、電気特性の変動が小さく、信頼性の高いトランジスタとなる。
なお、酸化物半導体膜のキャリアトラップに捕獲された電荷は、放出するまでに要する時
間が長く、あたかも固定電荷のように振る舞うことがある。そのため、不純物濃度が高く
、欠陥準位密度が高い酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、電気特性が不安定となる
場合がある。
【0190】
また、CAAC-OS膜を用いたトランジスタは、可視光や紫外光の照射による電気特性
の変動が小さい。
【0191】
次に、微結晶酸化物半導体膜について説明する。
【0192】
微結晶酸化物半導体膜は、TEMによる観察像では、明確に結晶部を確認することができ
ない場合がある。微結晶酸化物半導体膜に含まれる結晶部は、1nm以上100nm以下
、または1nm以上10nm以下の大きさであることが多い。特に、1nm以上10nm
以下、または1nm以上3nm以下の微結晶であるナノ結晶(nc:nanocryst
al)を有する酸化物半導体膜を、nc-OS(nanocrystalline Ox
ide Semiconductor)膜と呼ぶ。また、nc-OS膜は、例えば、TE
Mによる観察像では、結晶粒界を明確に確認できない場合がある。
【0193】
nc-OS膜は、微小な領域(例えば、1nm以上10nm以下の領域、特に1nm以上
3nm以下の領域)において原子配列に周期性を有する。また、nc-OS膜は、異なる
結晶部間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、膜全体で配向性が見られない。従
って、nc-OS膜は、分析方法によっては、非晶質酸化物半導体膜と区別が付かない場
合がある。例えば、nc-OS膜に対し、結晶部よりも大きい径のX線を用いるXRD装
置を用いて構造解析を行うと、out-of-plane法による解析では、結晶面を示
すピークが検出されない。また、nc-OS膜に対し、結晶部よりも大きいプローブ径(
例えば50nm以上)の電子線を用いる電子線回折(制限視野電子線回折ともいう。)を
行うと、ハローパターンのような回折像が観測される。一方、nc-OS膜に対し、結晶
部の大きさと近いか結晶部より小さいプローブ径(例えば1nm以上30nm以下)の電
子線を用いる電子線回折(ナノビーム電子線回折ともいう。)を行うと、スポットが観測
される。また、nc-OS膜に対しナノビーム電子線回折を行うと、円を描くように(リ
ング状に)輝度の高い領域が観測される場合がある。また、nc-OS膜に対しナノビー
ム電子線回折を行うと、リング状の領域内に複数のスポットが観測される場合がある。
【0194】
nc-OS膜は、非晶質酸化物半導体膜よりも規則性の高い酸化物半導体膜である。その
ため、nc-OS膜は、非晶質酸化物半導体膜よりも欠陥準位密度が低くなる。ただし、
nc-OS膜は、異なる結晶部間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、nc-O
S膜は、CAAC-OS膜と比べて欠陥準位密度が高くなる。
【0195】
なお、酸化物半導体膜は、例えば、非晶質酸化物半導体膜、微結晶酸化物半導体膜、CA
AC-OS膜のうち、二種以上を有する積層膜であってもよい。
【0196】
図3に示す下地絶縁膜102は、例えば、酸化シリコンまたは酸化窒化シリコンを含む絶
縁膜を用いればよい。下地絶縁膜102は、例えば、厚さを20nm以上1000nm以
下、好ましくは50nm以上1000nm以下、さらに好ましくは100nm以上100
0nm以下、より好ましくは200nm以上1000nm以下とする。
【0197】
または下地絶縁膜102に窒化シリコン膜を用いてもよい。または酸化アルミニウム膜を
用いてもよい。酸素透過性の低い窒化シリコン膜や酸化アルミニウム膜を用いることによ
り、絶縁膜121から下地絶縁膜102へ酸素が拡散するのを防ぐことができる。
【0198】
絶縁膜121は、過剰酸素を含む絶縁膜である。絶縁膜121は、例えば、酸化シリコン
または酸化窒化シリコンを含む絶縁膜を単層で、または積層で用いればよい。また、下地
絶縁膜102は、例えば、厚さを20nm以上1000nm以下、好ましくは50nm以
上1000nm以下、さらに好ましくは100nm以上1000nm以下、より好ましく
は200nm以上1000nm以下とする。
【0199】
または、例えば絶縁膜121の1層目を窒化シリコン膜とし、2層目を酸化シリコン膜と
すればよい。この場合、酸化シリコン膜は酸化窒化シリコン膜でもよい。また、窒化シリ
コン膜は窒化酸化シリコン膜でも構わない。酸化シリコン膜は、過剰酸素を含む酸化シリ
コン膜を用いる。窒化シリコン膜は水素およびアンモニアの放出量が少ない窒化シリコン
膜を用いる。また、窒化シリコン膜は、水素、水および酸素を透過しない、またはほとん
ど透過しない窒化シリコン膜を用いる。酸素透過性の低い窒化シリコン膜を用いることに
より、絶縁膜121から下地絶縁膜102へ酸素が拡散するのを防ぐことができる。
【0200】
または、例えば絶縁膜121の1層目を酸化アルミニウムとし、2層目を酸化シリコン膜
とすればよい。酸素透過性の低い酸化アルミニウム膜を用いることにより、絶縁膜121
から下地絶縁膜102へ酸素が拡散するのを防ぐことができる。
【0201】
また、例えば、下地絶縁膜102を窒化シリコン膜とし、絶縁膜121を酸化シリコン膜
としてもよい。なお、酸化シリコン膜は酸化窒化シリコン膜でも構わない。また、窒化シ
リコン膜は窒化酸化シリコン膜でも構わない。酸化シリコン膜は、欠陥密度の小さい酸化
シリコン膜を用いると好ましい。具体的には、ESRにてg値が2.001の信号に由来
するスピンの密度が3×1017個/cm以下、好ましくは5×1016個/cm
下である酸化シリコン膜を用いる。窒化シリコン膜は水素およびアンモニアの放出量が少
ない窒化シリコン膜を用いる。水素、アンモニアの放出量は、TDSにて測定することが
できる。また、窒化シリコン膜は、水素、水および酸素を透過しない、またはほとんど透
過しない窒化シリコン膜を用いる。
【0202】
または、例えば、下地絶縁膜102を窒化シリコン膜とし、絶縁膜121を第1の酸化シ
リコン膜と第2の酸化シリコン膜の積層膜とすればよい。この場合、第1の酸化シリコン
膜または/および第2の酸化シリコン膜は酸化窒化シリコン膜でも構わない。また、窒化
シリコン膜は窒化酸化シリコン膜でも構わない。第1の酸化シリコン膜は、欠陥密度の小
さい酸化シリコン膜を用いると好ましい。具体的には、ESRにてg値が2.001の信
号に由来するスピンの密度が3×1017個/cm以下、好ましくは5×1016個/
cm以下である酸化シリコン膜を用いる。第2の酸化シリコン膜は、過剰酸素を含む酸
化シリコン膜を用いる。窒化シリコン膜は水素およびアンモニアの放出量が少ない窒化シ
リコン膜を用いる。また、窒化シリコン膜は、水素、水および酸素を透過しない、または
ほとんど透過しない窒化シリコン膜を用いる。
【0203】
ゲート絶縁膜104は、例えば、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化シリコン、
酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム
、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウム
または酸化タンタルを含む絶縁膜を、単層で、または積層で用いればよい。また、ゲート
絶縁膜104は、過剰酸素を含む絶縁膜を用いると好ましい。ゲート絶縁膜104は、例
えば、厚さ(または等価酸化膜厚)を1nm以上500nm以下、好ましくは3nm以上
300nm以下、さらに好ましくは5nm以上100nm以下、より好ましくは5nm以
上50nm以下とする。
【0204】
ゲート絶縁膜104は、例えば、1層目を窒化シリコン膜とし、2層目を酸化シリコン膜
とした積層膜とすればよい。なお、酸化シリコン膜は酸化窒化シリコン膜でも構わない。
また、窒化シリコン膜は窒化酸化シリコン膜でも構わない。酸化シリコン膜は、欠陥密度
の小さい酸化シリコン膜を用いると好ましい。具体的にはESRにてg値が2.001の
信号に由来するスピンの密度が3×1017個/cm以下、好ましくは5×1016
/cm以下である酸化シリコン膜を用いる。酸化シリコン膜は、過剰酸素を含む酸化シ
リコン膜を用いると好ましい。窒化シリコン膜は水素ガスおよびアンモニアガスの放出量
が少ない窒化シリコン膜を用いる。水素ガス、アンモニアガスの放出量は、TDSにて測
定することができる。
【0205】
なお、例えば、酸化シリコンと酸化ハフニウムの積層のように、ゲート絶縁膜104の一
部に酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、酸化タンタルのような電子捕獲準位の多い材料
を用い、より高い温度(半導体装置の使用温度あるいは保管温度よりも高い温度、あるい
は、125℃以上450℃以下、代表的には150℃以上300℃以下)の下で、ゲート
電極105の電位をソース電極107aやドレイン電極107bの電位より高い状態を、
1秒以上、代表的には1分以上維持することで、酸化物半導体膜103からゲート電極1
05に向かって電子が移動し、そのうちのいくらかは電子捕獲準位に捕獲される。
【0206】
このように電子捕獲準位に必要な量の電子を捕獲させた半導体装置は、しきい値電圧がプ
ラス側にシフトする。ゲート電極105の電圧の制御によって電子の捕獲する量を制御す
ることができ、それに伴ってしきい値電圧を制御することができる。また、電子を捕獲せ
しめる処理は、半導体装置の作製過程におこなえばよい。
【0207】
例えば、半導体装置のソース電極107aあるいはドレイン電極107bに接続する配線
メタルの形成後、あるいは、前工程(ウェハー処理)の終了後、あるいは、ウェハーダイ
シング工程後、パッケージ後等、工場出荷前のいずれかの段階でおこなうとよい。いずれ
の場合にも、その後に125℃以上の温度に1時間以上さらされないことが好ましい。
【0208】
簡略化した断面図を用いて、ゲート絶縁膜104を電子捕獲層としても利用した場合の例
を示す。
【0209】
図5(A)は、半導体膜901と電子捕獲層902とゲート電極903とを有する半導体
装置である。電子捕獲層902は、図3などのゲート絶縁膜104に対応している。ゲー
ト電極903は、図3などのゲート電極105に対応している。
【0210】
ここで、電子捕獲層902は、内部に電子を捕獲する準位(電子捕獲準位)を有する。あ
るいは、電子捕獲層902は、なんらかの手段や処理によって、既に内部に電子が捕獲さ
れている層である。あるいは、電子捕獲層902は、なんらかの手段や処理によって、い
ずれ、内部に電子が捕獲される可能性がある層である。なお、同じ構成元素で構成されて
いても、形成方法・形成条件の違いにより、そのような準位が形成されないこともある。
【0211】
例えば、図5(B)に示されるような、第1の絶縁膜902aと第2の絶縁膜902bの
積層体でもよいし、図5(C)に示されるような、第1の絶縁膜902a、第2の絶縁膜
902bと第3の絶縁膜902cの積層体、あるいは、さらに多層の絶縁膜の積層体でも
よい。
【0212】
ここで、第1乃至第3の絶縁膜の構成元素はすべてあるいは一部同じであってもよい。ま
た、第1乃至第3の絶縁膜の形成方法(あるいは形成条件)はすべてあるいは一部が異な
っていてもよい。
【0213】
例えば、スパッタリング法で形成された絶縁膜を第2の絶縁膜902bとし、化学気相成
長(CVD:Chemical Vapor Deposition)法や原子層堆積(
ALD:Atomic Layer Deposition)法で形成された絶縁膜を第
1の絶縁膜902aとしてもよく、図5(C)の場合には、第3の絶縁膜902cも第1
の絶縁膜902aと同様としてもよい。ただし、本発明の実施形態の一態様はこれに限定
されず、CVD法やALD法で形成された絶縁膜を第2の絶縁膜902bとし、スパッタ
リング法で形成された絶縁膜を第1の絶縁膜902aとしてもよい。
【0214】
ここで、CVD法で形成された絶縁膜は、通常のゲート絶縁膜としての機能を有すること
ができる。したがって、ゲートとドレイン間、または、ゲートとソース間の漏れ電流を低
減することができる。一方、スパッタリング法で形成された絶縁膜は、電子捕獲準位が多
いため、トランジスタのしきい値電圧をより大きく変化させることが出来る。そのため、
このような構成とすることにより、リーク電流が小さく、かつ、しきい値電圧も十分に制
御された構成とすることが出来る。
【0215】
また、半導体膜901の形成方法と、半導体膜901と接する第1の絶縁膜902aとは
、連続的に製造しやすくなるため、同じ製造方法を用いてもよい。たとえば、半導体膜9
01をスパッタリング法で形成した場合、第1の絶縁膜902aもスパッタリング法で形
成し、第2の絶縁膜902bは、CVD法やALD法で形成してもよい。図5(C)の場
合には、第3の絶縁膜902cもスパッタリング法で形成してもよい。同様に、半導体膜
901をCVD法で形成した場合、第1の絶縁膜902aもCVD法で形成し、第2の絶
縁膜902bは、スパッタリング法で形成してもよい。図5(C)の場合には、第3の絶
縁膜902cもCVD法で形成してもよい。このような構成とすることにより、リーク電
流が小さく、かつ、しきい値電圧も十分に制御された構成とし、さらに、製造しやすくす
ることが出来る。ただし、本発明の実施形態の一態様は、これらに限定されない。
【0216】
なお、CVD法としても、様々な方法を用いることが出来る。熱CVD法、光CVD法、
プラズマCVD法、MOCVD法、LPCVD法などの方法を用いることが出来る。よっ
て、ある絶縁膜と別の絶縁膜とにおいて、異なるCVD法を用いて、絶縁膜を形成しても
よい。
【0217】
図5(B)に示す半導体装置の点Aから点Bにかけてのバンド図の例を図6(A)に示す
。図中、Ecは伝導帯下端、Evは価電子帯上端を示す。図6(A)では、ゲート電極9
03の電位はソース電極あるいはドレイン電極(いずれも図示せず)と同じである。
【0218】
なお、図5(C)のように、電子捕獲層902に、第2の絶縁膜902bより電子親和力
の小さな第3の絶縁膜902cを設けることは第2の絶縁膜902bの内部、あるいは、
他の絶縁膜との界面にある電子捕獲準位に捕獲された電子を保持する上で効果的である。
【0219】
この場合には、第2の絶縁膜902bが薄くても、第3の絶縁膜902cが物理的に十分
に厚ければ、電子捕獲準位904に捕獲された電子を保持できる。
【0220】
第2の絶縁膜902bは電子捕獲準位904がより多くなるような形成方法(あるいは形
成条件)で形成されるが、そのため、第1の絶縁膜902aと第2の絶縁膜902bの界
面、第2の絶縁膜902bと第3の絶縁膜902cの界面にも多くの電子捕獲準位が形成
される。
【0221】
そして、ゲート電極903の電位および温度を上記に示したものとすると、半導体膜90
1から電子905が、ゲート電極903に向かって移動し、Fowler-Nordhe
imトンネル効果、Poole-Frenkel伝導、熱的な励起、あるいはそれらの組
み合わせによって、電子捕獲層902に進入し、その一部が電子捕獲準位904に捕獲さ
れ、電子捕獲層902は負に帯電する(図6(B)参照)。
【0222】
このように電子捕獲層902が電子を捕獲すると、図7に示すように半導体装置のしきい
値が増加する。特に、半導体膜901が、バンドギャップが大きな材料(ワイドバンドギ
ャップ半導体)であると、ゲート電極903の電位をソース電極の電位と同じとしたとき
のソースドレイン間の電流(Icut電流)を大幅に低下させることができる。
【0223】
例えば、バンドギャップ3.2電子ボルトのIn-Ga-Zn系酸化物であれば、Icu
t電流密度(チャネル幅1μmあたりの電流値)は1zA/μm(1×10-21A/μ
m)以下、代表的には、1yA/μm(1×10-24A/μm)以下とできる。
【0224】
図7(A)は電子捕獲層902での電子の捕獲をおこなう前と、電子の捕獲をおこなった
後での、室温でのソース電極ドレイン電極間のチャネル幅1μmあたりの電流(Id)の
ゲート電極903の電位(Vg)依存性を模式的に示したものである。なお、ソース電極
とゲート電極903の電位を0V、ドレイン電極の電位を+1Vとする。1fAより小さ
な電流は、直接は測定できないが、その他の方法で測定した値、サブスレショールド値等
をもとに推定できる。
【0225】
最初、曲線906で示すように、半導体装置のしきい値はVth1であったが、電子の捕
獲をおこなった後では、曲線907で示すようにしきい値が増加し(プラス方向に移動し
)、Vth2となる。また、この結果、Vg=0での電流密度は、1aA/μm(1×1
-18A/μm)以下、例えば、1zA/μm以上1yA/μm以下となる。
【0226】
例えば、図7(B)のように、容量素子909に蓄積される電荷をトランジスタ908で
制御する回路を考える。ここで、容量素子909の電極間のリーク電流は無視する。容量
素子909の容量が1fFであり、容量素子909のトランジスタ908側の電位が+1
V、Vdの電位が0Vであるとする。
【0227】
トランジスタ908のId-Vg特性が図7(A)中の曲線906で示されるもので、チ
ャネル幅が0.1μmであると、Icut電流密度は約1fAであり、トランジスタ90
8のこのときの抵抗は約1×1015Ωである。したがって、トランジスタ908と容量
素子909よりなる回路の時定数は約1秒である。すなわち、約1秒で、容量素子909
に蓄積されていた電荷の多くが失われてしまうことを意味する。
【0228】
トランジスタ908のId-Vg特性が図7(A)中の曲線907で示されるもので、チ
ャネル幅が0.1μmであると、Icut電流密度は約1yAであり、トランジスタ90
8のこのときの抵抗は約1×1024Ωである。したがって、トランジスタ908と容量
素子909よりなる回路の時定数は約1×10秒(=約31年)である。すなわち、1
0年経過後でも、容量素子909に蓄積されていた電荷の1/3は残っていることを意味
する。
【0229】
このように、トランジスタと容量素子という単純な回路で、かつ、それほど過大な電圧を
印加しなくても、10年間の電荷の保持が可能である。
【0230】
電子捕獲層902は各種の材料を用いることができる。例えば、酸化ハフニウム(酸素、
ハフニウム)、酸化アルミニウム(酸素、アルミニウム)、酸化タンタル(酸素、タンタ
ル)、アルミニウムシリケート(酸素、シリコン、アルミニウム)などを一種以上含む絶
縁膜を用いることができる。さらに、窒素、シリコン、水素、ハロゲンなどの元素を含ん
でいる場合もある。また、多層体とする場合には、これらの元素を有する層の上側、下側
、両側、または、挟まれた層の真ん中に、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シ
リコン、窒化シリコン、などを有する層を配置して、多層体の電子捕獲層902を構成す
ればよい。
【0231】
なお、半導体膜901は、真性または実質的に真性な酸化物半導体のように、ホールの有
効質量が極めて大きい、あるいは、ホールが実質的に局在化している材料を用いることが
有効である。この場合には、半導体膜901から電子捕獲層902へのホールの注入がな
く、したがって、電子捕獲準位904に捕獲された電子がホールと結合して消滅すること
もない。そのため、電荷の保持特性を向上させることが出来る。
【0232】
ゲート電極105は、例えば、アルミニウム、チタン、クロム、コバルト、ニッケル、銅
、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、ルテニウム、銀、タンタルまたはタングス
テンを含む導電膜を、単層で、または積層で用いればよい。
【0233】
絶縁膜106は、例えば、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化ゲルマニウム、酸化イ
ットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウムまたは酸
化タンタル、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化アルミニウムを含む絶縁膜を、単層
で、または積層で用いればよい。絶縁膜106は、例えば、厚さを20nm以上1000
nm以下、好ましくは50nm以上1000nm以下、さらに好ましくは100nm以上
1000nm以下、より好ましくは200nm以上1000nm以下とする。
【0234】
例えば、絶縁膜106は、第1層を酸化アルミニウムとし、第2層を酸化シリコンとした
積層膜を用いてもよい。または、絶縁膜106は、第1層を窒化シリコンとし、第2層を
酸化シリコンとした積層膜を用いてもよい。または、第1層に窒化酸化シリコンを用いた
積層膜としてもよい。酸素透過性の低い酸化アルミニウムや窒化シリコンおよび窒化酸化
シリコンを第1層に用いることにより、絶縁膜121から酸素が拡散するのを防ぐことが
できる。
【0235】
ソース電極107aおよびドレイン電極107bは、例えば、アルミニウム、チタン、ク
ロム、コバルト、ニッケル、銅、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、ルテニウム
、銀、タンタルまたはタングステンを含む導電膜を、単層で、または積層で用いればよい
【0236】
基板101に大きな制限はない。例えば、ガラス基板、セラミック基板、石英基板、サフ
ァイア基板などを、基板101として用いてもよい。また、シリコンや炭化シリコンから
なる単結晶半導体基板、多結晶半導体基板、シリコンゲルマニウムからなる化合物半導体
基板、SOI(Silicon On Insulator)基板などを適用することも
可能であり、これらの基板上に半導体素子が設けられたものを、基板101として用いて
もよい。
【0237】
また、基板101として、可とう性基板を用いてもよい。なお、可とう性基板上にトラン
ジスタを設ける方法としては、非可とう性の基板上にトランジスタを作製した後、トラン
ジスタを剥離し、可とう性基板である基板101に転置する方法もある。その場合には、
非可とう性基板とトランジスタとの間に剥離層を設けるとよい。
【0238】
<トランジスタ構造(1)の作製方法>
以下では、トランジスタ構造(1)の作製方法の一例について説明する。
【0239】
図8乃至図10には、図3(B)および図3(C)のトランジスタの作製方法を示す断面
図を示す。
【0240】
まず、基板101を準備する。
【0241】
次に、下地絶縁膜102を成膜する。下地絶縁膜102は、下地絶縁膜102として示し
た絶縁膜から選択して成膜すればよい。下地絶縁膜102は、スパッタリング法、CVD
法、分子線エピタキシー(MBE:Molecular Beam Epitaxy)法
、ALD法またはパルスレーザ堆積(PLD:Pulsed Laser Deposi
tion)法を用いて成膜すればよい。
【0242】
基板101としてシリコンウェハを用いた場合、下地絶縁膜102は、熱酸化法によって
形成してもよい。
【0243】
次に、絶縁膜135を成膜する。絶縁膜135は、過剰酸素を含む絶縁膜である。絶縁膜
135は、絶縁膜121として示した絶縁膜から選択して成膜すればよい。絶縁膜135
は、スパッタリング法、CVD法、分子線エピタキシー(MBE:Molecular
Beam Epitaxy)法、ALD法またはPLD法を用いて成膜すればよい。
【0244】
次に、絶縁膜135の表面を平坦化するために、化学的機械研磨(CMP:Chemic
al Mechanical Polishing)処理を行ってもよい。CMP処理を
行うことで、下地絶縁膜102の平均面粗さ(Ra)を1nm以下、好ましくは0.3n
m以下、さらに好ましくは0.1nm以下とする。上述の数値以下のRaとすることで、
酸化物半導体膜103の結晶性が高くなる場合がある。Raは原子間力顕微鏡(AFM:
Atomic Force Microscope)にて測定可能である。
【0245】
次に、絶縁膜135に酸素を添加することにより、過剰酸素を含む絶縁膜を形成する。酸
素の添加は、例えば、イオン注入法により、加速電圧を2kV以上100kV以下とし、
5×1014ions/cm以上5×1016ions/cm以下の濃度で行えばよ
い。
【0246】
次に、酸化物半導体膜136を成膜する(図8(A)参照。)。酸化物半導体膜136は
、それぞれ酸化物半導体膜103として示した酸化物半導体膜から選択して成膜すればよ
い。酸化物半導体膜136は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、ALD法または
PLD法を用いて成膜すればよい。
【0247】
次に、第1の加熱処理を行うと好ましい。第1の加熱処理は、250℃以上650℃以下
、好ましくは300℃以上500℃以下で行えばよい。第1の加熱処理の雰囲気は、不活
性ガス雰囲気、または酸化性ガスを10ppm以上、1%以上もしくは10%以上含む雰
囲気で行う。第1の加熱処理は減圧状態で行ってもよい。または、第1の加熱処理の雰囲
気は、不活性ガス雰囲気で加熱処理した後に、脱離した酸素を補うために酸化性ガスを1
0ppm以上、1%以上または10%以上含む雰囲気で加熱処理を行ってもよい。
【0248】
次に、酸化物半導体膜136上にレジストマスク131となる層を成膜する。なお、酸化
物半導体膜136を一辺が100nm以下に微細加工する場合、酸化物半導体膜136と
レジストマスク131となる層の間にハードマスクを設けてもよい。
【0249】
なお、ハードマスクは、酸化物半導体膜136と選択的エッチングが可能な層である。ハ
ードマスクとして、例えば、タングステン、モリブデン、チタンまたはタンタルを含む、
単体、窒化物または合金を単層で、または積層で用いればよい。または、ハードマスクと
して、酸化シリコン、酸化窒化シリコンまたは窒化シリコンを含む絶縁膜を、単層で、ま
たは積層で用いればよい。
【0250】
なお、ハードマスク上にレジストマスク131となる層を形成した場合に限定されない。
例えば、ハードマスクとレジストマスク131となる層との密着性を向上させるために、
ハードマスク上に有機物からなるコート層などを形成してもよい。
【0251】
レジストマスク131となる層は、感光性を有する有機物層または無機物層を用いればよ
い。レジストマスク131となる層は、スピンコート法などを用いて成膜すればよい。
【0252】
次に、フォトマスクを用いて、レジストマスク131となる層に光を照射する。当該光と
しては、KrFエキシマレーザ光、ArFエキシマレーザ光、EUV(Extreme
Ultraviolet)光などを用いればよい。また、基板と投影レンズとの間に液体
(例えば水)を満たして露光する、液浸技術を用いてもよい。また、レジストマスク13
1となる層に照射する光に代えて、電子ビームやイオンビームを用いてもよい。なお、電
子ビームやイオンビームを用いる場合には、フォトマスクは不要となる。また、特に微細
な加工が要求されない場合、レジストマスク131となる層に照射する光として、高圧水
銀灯のg線またはi線などを用いてもよい。
【0253】
次に、基板101を現像液に浸して、レジストマスク131となる層の露光された領域を
、除去または残存させてレジストマスク131を形成する(図8(B)参照)。
【0254】
次に、レジストマスク131を用いて酸化物半導体膜136の一部をエッチングし、島状
の酸化物半導体膜103を形成する。更にレジストマスク131を用いて絶縁膜135の
一部をエッチングし、島状の絶縁膜121を形成する(図8(C)参照)。
【0255】
なお、図8では絶縁膜121は島状に形成しているが、必ずしも島状に形成される必要は
なく、凸部を有する形状であってもよい。
【0256】
酸化物半導体膜136の一部をエッチングする方法としては、ドライエッチング処理を用
いると好ましい。当該ドライエッチング処理は、例えば、メタンおよび希ガスを含む雰囲
気で行えばよい。また、絶縁膜121の一部をエッチングする方法としては、例えば三フ
ッ化メタンおよび希ガスを含む雰囲気で行えばよい。
【0257】
また、ここではレジストマスク131を用いて酸化物半導体膜136および絶縁膜135
をエッチングしたが、酸化物半導体膜136と絶縁膜135を異なるレジストマスクでエ
ッチングしても構わない。また、図3(B)に示す断面図では、絶縁膜121と酸化物半
導体膜103は、ほぼ同じ幅で記載してあるが、例えば図19(A)に示すように、絶縁
膜121の幅が酸化物半導体膜103の幅より大きくても構わない。または図19(B)
に示すように小さくても構わない。なお、図19(B)に示す断面では絶縁膜121を酸
化物半導体膜103で覆うことができるため、絶縁膜106を介して酸素が絶縁膜121
から拡散することを防ぐことができる。
【0258】
次に、レジストマスク131を除去する。レジストマスク131の除去は、プラズマ処理
、薬液処理などで行えばよい。好ましくはプラズマアッシングによって除去する。
【0259】
次に、ゲート絶縁膜104を成膜する。またゲート絶縁膜104に続いてゲート電極10
5となる導電膜を成膜する(図8(D)参照)。
【0260】
ゲート絶縁膜104は、ゲート絶縁膜104として示した絶縁膜から選択して成膜すれば
よい。ゲート絶縁膜104は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、ALD法または
PLD法を用いて成膜すればよい。ゲート電極105となる導電膜は、ゲート電極105
として示した導電膜から選択して成膜すればよい。導電膜は、スパッタリング法、CVD
法、MBE法、ALD法またはPLD法を用いて成膜すればよい。
【0261】
次に、フォトリソグラフィ法などにより、導電膜を加工し、ゲート電極105を形成する
。次にゲート電極をマスクとして、ゲート絶縁膜104の一部をエッチングする(図9
A)参照。)。
【0262】
次に、ゲート電極105をマスクとして、ゲート絶縁膜104、酸化物半導体膜103、
絶縁膜121、および下地絶縁膜102に不純物を添加し、領域151a、領域151b
、領域151c、領域151dを形成する(図9(B)参照)。不純物を添加して領域1
51a、領域151b、領域151c、領域151dを形成する方法は、絶縁膜52に不
純物を添加して領域53を形成する方法についての記載を参照する。ここで、領域53を
形成する方法で記載した不純物は、金属を高抵抗化させる要因となりにくい。つまり、前
述の不純物は、ゲート電極105をマスクとして不純物を添加し、領域151a乃至領域
151dを形成した場合に、例えばゲート電極105を高抵抗化させる要因となりにくい
。領域151b、領域151c、領域151dは酸素ブロック領域である。また、領域1
51aは、酸化物半導体膜103の一部に不純物が添加された領域である。
【0263】
酸素ブロック領域である領域151b、領域151c、領域151dを形成することによ
り、絶縁膜121の過剰酸素の外方拡散を抑え、酸化物半導体膜103に効率よく酸素を
供給することが可能となる。
【0264】
また、酸化物半導体膜103の一部の領域である領域151aに不純物を添加することに
より、ソース電極107aまたはドレイン電極107bと酸化物半導体膜103の接する
領域から、チャネル形成領域までの領域の抵抗を下げることができる。これにより、オン
電流が高くなり、トランジスタの性能を向上することができる。
【0265】
次に、第2の加熱処理を行うと好ましい。第2の加熱処理は、250℃以上650℃以下
、好ましくは300℃以上500℃以下で行えばよい。第2の加熱処理の雰囲気は、不活
性ガス雰囲気、または酸化性ガスを10ppm以上、1%以上もしくは10%以上含む雰
囲気で行う。第2の加熱処理は減圧状態で行ってもよい。または、第2の加熱処理の雰囲
気は、不活性ガス雰囲気で加熱処理した後に、脱離した酸素を補うために酸化性ガスを1
0ppm以上、1%以上または10%以上含む雰囲気で加熱処理を行ってもよい。第2の
加熱処理によって、酸化物半導体膜103に不純物が添加された領域である領域151a
の抵抗を下げることができる場合もある。また、酸化物半導体膜103に絶縁膜121か
ら過剰酸素を移動させることができる。したがって、酸化物半導体膜103の酸素欠損を
低減することができる。また、酸化物半導体膜103の結晶性を高めることや、水素や水
などの不純物を除去することなどができる。なお、第2の加熱処理を行うことで、第1の
加熱処理を行わなくてもよい場合がある。
【0266】
次に、絶縁膜106を成膜する(図9(C)参照)。絶縁膜106は、絶縁膜106とし
て示した絶縁膜から選択して成膜すればよい。絶縁膜106は、スパッタリング法、CV
D法、MBE法、ALD法またはPLD法を用いて成膜すればよい。
【0267】
次に、絶縁膜106に開口部を設ける(図10(A)参照)。絶縁膜106の一部をエッ
チングする方法としては、例えばドライエッチングなどを用いることができる。
【0268】
次に、絶縁膜106の表面および開口部にソース電極107aおよびドレイン電極107
bとなる導電膜107を成膜する(図10(B)参照)。導電膜107は、ソース電極1
07aおよびドレイン電極107bとして示した導電膜から選択して成膜すればよい。導
電膜は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、ALD法またはPLD法を用いて成膜
すればよい。
【0269】
次に、フォトリソグラフィ法などにより、導電膜を加工し、ソース電極107aおよびド
レイン電極107bを形成する(図10(C)参照)。
【0270】
次に、第3の加熱処理を行うと好ましい。第3の加熱処理は、第1の加熱処理および第2
の加熱処理で示した条件から選択して行うか、第1の加熱処理および第2の加熱処理より
も低温で行えばよい。第3の加熱処理を行うことで、第1の加熱処理および第2の加熱処
理を行わなくてもよい場合がある。
【0271】
以上のようにして、図3に示したトランジスタを作製することができる。
【0272】
<トランジスタ構造(2)>
次に、トランジスタ構造(1)とはゲート絶縁膜の形状が異なるトップゲートセルフアラ
イン型のトランジスタの一例について説明する。
【0273】
図11は、トランジスタの上面図および断面図である。図11(A)は、トランジスタの
上面図を示す。図11(A)において、一点鎖線A-Bに対応する断面図を図11(B)
に示す。また、図11(A)において、一点鎖線C-Dに対応する断面図を図11(C)
に示す。
【0274】
図11(B)において、トランジスタは、基板201上の下地絶縁膜202と、下地絶縁
膜202上の絶縁膜221と、絶縁膜221上の酸化物半導体膜203と、酸化物半導体
膜203上のゲート絶縁膜204と、ゲート絶縁膜204上のゲート電極205と、ゲー
ト電極205およびゲート絶縁膜204の上の絶縁膜206と、酸化物半導体膜203お
よび絶縁膜206上のソース電極207aおよびドレイン電極207bと、を有する。絶
縁膜221は過剰酸素を含む絶縁膜である。なお、トランジスタは、下地絶縁膜202を
有さなくても構わない。
【0275】
図3に示したトランジスタと図11に示すトランジスタは、ゲート絶縁膜の形状が異なる
のみであるため、特に断りのない場合、図3についての記載を参照する。
【0276】
例えば、基板201は基板101についての記載を参照する。下地絶縁膜202は下地絶
縁膜102についての記載を参照する。絶縁膜221は絶縁膜121についての記載を参
照する。酸化物半導体膜203は酸化物半導体膜103についての記載を参照する。ゲー
ト絶縁膜204はゲート絶縁膜104についての記載を参照する。ゲート電極205はゲ
ート電極105についての記載を参照する。絶縁膜206は絶縁膜106についての記載
を参照する。ソース電極207aおよびドレイン電極207bは、ソース電極107aお
よびドレイン電極107bについての記載を参照する。
【0277】
図11(B)において、領域251aは、酸化物半導体膜の一部の領域である。領域25
1b、領域251c、領域251d、領域251eは絶縁膜の一部の領域であり、酸素ブ
ロック領域である。酸素ブロック領域については、前述の領域53についての記載を参照
する。図11(B)に示すトランジスタは、酸素ブロック領域である領域251b、領域
251c、領域251d、領域251eのいずれか一以上を有する。
【0278】
まず、酸素ブロック領域である領域251b、領域251c、領域251d、領域251
eについて述べる。
【0279】
領域251bは、絶縁膜221の、ゲート絶縁膜204と接する領域である。領域251
bは、絶縁膜221の、ゲート絶縁膜204と接する面から深さ1nm以上200nm以
下、好ましくは5nm以上150nm以下、さらに好ましくは10nm以上100nm以
下に設けられる領域である。
【0280】
領域251cは、図11(B)および図11(C)に示すように、ゲート絶縁膜204に
設けられた領域である。領域251cは、ゲート絶縁膜204の、ゲート電極の下部に位
置する。図11(A)に、ゲート電極205のソース電極207aに面した端部217a
、およびドレイン電極207bに面した端部217bを示す。領域251cは、端部21
7aまたは端部217bからの距離が1nm以上2μm以下、好ましくは5nm以上1μ
m以下、さらに好ましくは10nm以上500nm以下の領域に設けられる。
【0281】
領域251dは、図11(B)に示すように、下地絶縁膜202の、ゲート絶縁膜204
と接する領域である。領域251dは、下地絶縁膜202のゲート絶縁膜204と接する
面から深さ1nm以上200nm以下、好ましくは5nm以上150nm以下、さらに好
ましくは10nm以上100nm以下に設けられる領域である。
【0282】
領域251eは、ゲート絶縁膜204の絶縁膜206と接する領域である。領域251e
は、図11(B)に示すように、ゲート絶縁膜の深さ方向の全体に形成される領域である
【0283】
トランジスタが領域251bを有する場合、絶縁膜221に含まれる過剰酸素を酸化物半
導体膜203の酸素欠損を低減するために有効活用することができる。例えば、領域25
1bを有さない場合、絶縁膜221に含まれる過剰酸素が外方拡散することで失われてし
まう場合がある。また、絶縁膜221に含まれる過剰酸素が、ソース電極207aおよび
ドレイン電極207bを酸化させる場合がある。
【0284】
トランジスタが領域251dを有する場合でも、絶縁膜221や下地絶縁膜202に含ま
れる過剰酸素を酸化物半導体膜203の酸素欠損を低減するために有効活用することがで
きる。例えば、領域251dを有さない場合、絶縁膜221や下地絶縁膜202に含まれ
る過剰酸素が外方拡散することで失われてしまう場合がある。また、領域251dを有さ
ない場合、絶縁膜221や下地絶縁膜202に含まれる過剰酸素が、ソース電極207a
およびドレイン電極207bを酸化させる場合がある。
【0285】
トランジスタが領域251cを有する場合でも、ゲート絶縁膜204に含まれる過剰酸素
を酸化物半導体膜203の酸素欠損を低減するために有効活用することができる。例えば
、領域251cを有さない場合、ゲート絶縁膜204に含まれる過剰酸素が、外方拡散す
ることで失われてしまう場合がある。また、ゲート絶縁膜204に含まれる過剰酸素が、
ソース電極207aおよびドレイン電極207bを酸化させる場合がある。
【0286】
トランジスタが領域251eを有する場合でも、絶縁膜221、下地絶縁膜202または
ゲート絶縁膜204に含まれる過剰酸素を酸化物半導体膜203の酸素欠損を低減するた
めに有効活用することができる。例えば、領域251eを有さない場合、絶縁膜221、
下地絶縁膜202またはゲート絶縁膜204に含まれる過剰酸素が、外方拡散することで
失われてしまう場合がある。また、絶縁膜221、下地絶縁膜202またはゲート絶縁膜
204に含まれる過剰酸素が、ソース電極207aおよびドレイン電極207bを酸化さ
せる場合がある。
【0287】
次に、酸化物半導体膜203の一部の領域である領域251aについて述べる。
【0288】
領域251aは、酸化物半導体膜203の、ソース電極207aおよびドレイン電極20
7b、ゲート絶縁膜204に接する領域である。領域251aは、酸化物半導体膜203
の上面または側面から深さ1nm以上200nm以下、好ましくは5nm以上150nm
以下、さらに好ましくは10nm以上100nm以下に設けられる領域である。
【0289】
酸素ブロック領域である領域251b、領域251c、領域251d、領域251eを形
成するために不純物を添加する工程において、領域251aにも不純物が添加される。こ
のとき、不純物を添加することにより領域251aを低抵抗化することもできる。
【0290】
図11(B)示す領域222は、ソース電極207aまたはドレイン電極207bと接さ
ない領域で、かつゲート電極205と重ならない領域である。領域222の抵抗が高いと
トランジスタのオン電流を下げる要因となってしまう。
【0291】
酸化物半導体膜203の一部の領域である領域251aに不純物を添加することにより、
領域222の抵抗を下げることができる。これにより、オン電流が高くなり、トランジス
タの性能を向上することができる。
【0292】
なお、低抵抗である領域を形成するための不純物を添加する工程は、酸素ブロック領域で
ある領域251b、領域251c、領域251d、領域251eを形成するための不純物
を添加する工程と兼ねることができる。これにより、工程の短縮が可能となり、コスト低
減につながる。また工程が簡略化されることにより、歩留まりの向上も期待できる。
【0293】
<トランジスタ構造(2)の作製方法>
以下では、トランジスタ構造(2)の作製方法の一例について説明する。
【0294】
図12乃至図14には、図11(B)および図11(C)のトランジスタの作製方法を示
す断面図を示す。
【0295】
まず、基板201を準備する。
【0296】
次に、下地絶縁膜202を成膜する。下地絶縁膜202は、下地絶縁膜102の成膜方法
についての記載を参照する。
【0297】
次に、絶縁膜235を成膜する。絶縁膜235は、過剰酸素を含む絶縁膜である。絶縁膜
235は、絶縁膜135の成膜方法についての記載を参照する。
【0298】
次に、絶縁膜235に酸素を添加することにより、過剰酸素を含む絶縁膜を形成する。酸
素の添加は、例えば、イオン注入法により、加速電圧を2kV以上100kV以下とし、
5×1014ions/cm以上5×1016ions/cm以下の濃度で行えばよ
い。
【0299】
次に、酸化物半導体膜236を成膜する(図12(A)参照。)。酸化物半導体膜236
は、それぞれ酸化物半導体膜103として示した酸化物半導体膜から選択して成膜すれば
よい。酸化物半導体膜236は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、ALD法また
はPLD法を用いて成膜すればよい。
【0300】
次に、第1の加熱処理を行うと好ましい。第1の加熱処理は、250℃以上650℃以下
、好ましくは300℃以上500℃以下で行えばよい。第1の加熱処理の雰囲気は、不活
性ガス雰囲気、または酸化性ガスを10ppm以上、1%以上もしくは10%以上含む雰
囲気で行う。第1の加熱処理は減圧状態で行ってもよい。または、第1の加熱処理の雰囲
気は、不活性ガス雰囲気で加熱処理した後に、脱離した酸素を補うために酸化性ガスを1
0ppm以上、1%以上または10%以上含む雰囲気で加熱処理を行ってもよい。
【0301】
次に、酸化物半導体膜236および絶縁膜235の一部をエッチングし、酸化物半導体膜
203および絶縁膜221を形成する。(図12(B)参照)。酸化物半導体膜203お
よび絶縁膜221を形成する方法については、図8の酸化物半導体膜103および絶縁膜
121を形成する方法を参照すればよい。
【0302】
なお、図12では絶縁膜221は島状に形成しているが、島状に形成される必要はなく、
凸部を有する形状であってもよい。
【0303】
次に、ゲート絶縁膜204を成膜する。またゲート絶縁膜204に続いてゲート電極20
5となる導電膜を成膜する(図12(C)参照)。
【0304】
ゲート絶縁膜204はゲート絶縁膜104の成膜方法についての記載を参照する。ゲート
電極205はゲート電極105の成膜方法についての記載を参照する。
【0305】
次に、フォトリソグラフィ法などにより、導電膜を加工し、ゲート電極205を形成する
図13(A)参照)。なお、トランジスタ構造(1)とは異なり、ゲート絶縁膜204
は残存させる。
【0306】
次に、ゲート電極205をマスクとして、ゲート絶縁膜204、酸化物半導体膜203、
絶縁膜221、および下地絶縁膜202に不純物を添加し、領域251a、領域251b
、領域251c、領域251d、領域251eを形成する(図13(B)参照)。不純物
を添加して領域251a、領域251b、領域251c、領域251d、領域251eを
形成する方法は、絶縁膜52に不純物を添加して領域53を形成する方法についての記載
を参照する。領域251b、領域251c、領域251d、領域251eは酸素ブロック
領域である。また、251aは、酸化物半導体膜203の一部に不純物が添加された領域
である。なお、イオンドーピング法やイオン注入法を用いて不純物を添加する場合、領域
251a、領域251b、領域251dについてはゲート絶縁膜204を介して不純物が
添加される。よって、ゲート絶縁膜204の厚さに応じて、加速電圧を高くすると好まし
い。例えば、ゲート絶縁膜204の厚さが20nmの場合、イオンドーピング法またはイ
オン注入法における加速電圧は、0.5kV以上100kV以下、好ましくは1kV以上
50kV以下、さらに好ましくは5kV以上50kV以下とする。
【0307】
酸素ブロック領域である領域251b、領域251c、領域251d、領域251eを形
成することにより、絶縁膜121の過剰酸素の外方拡散を抑え、酸化物半導体膜103に
効率よく酸素を供給することが可能となる。
【0308】
また、酸化物半導体膜103の一部の領域である領域251aに不純物を添加することに
より、ソース電極107aまたはドレイン電極107bと酸化物半導体膜103の接する
領域から、チャネル形成領域までの領域の抵抗を下げることができる。これにより、オン
電流が高くなり、トランジスタの性能を向上することができる。
【0309】
次に、第2の加熱処理を行うと好ましい。第2の加熱処理は、250℃以上650℃以下
、好ましくは300℃以上500℃以下で行えばよい。第2の加熱処理の雰囲気は、不活
性ガス雰囲気、または酸化性ガスを10ppm以上、1%以上もしくは10%以上含む雰
囲気で行う。第2の加熱処理は減圧状態で行ってもよい。または、第2の加熱処理の雰囲
気は、不活性ガス雰囲気で加熱処理した後に、脱離した酸素を補うために酸化性ガスを1
0ppm以上、1%以上または10%以上含む雰囲気で加熱処理を行ってもよい。第2の
加熱処理によって、酸化物半導体膜203に不純物が添加された領域である領域251a
の抵抗を下げることができる場合もある。また、酸化物半導体膜203に絶縁膜221か
ら過剰酸素が移動させることができる。したがって、酸化物半導体膜203の酸素欠損を
低減することができる。また、酸化物半導体膜203の結晶性を高めることや、水素や水
などの不純物を除去することなどができる。なお、第2の加熱処理を行うことで、第1の
加熱処理を行わなくてもよい場合がある。
【0310】
次に、絶縁膜206を成膜する(図13(C)参照)。絶縁膜206については、絶縁膜
106の記載を参照する。
【0311】
次に、絶縁膜206の一部をエッチングし、開口部を設ける(図14(A)参照)。絶縁
膜206の一部をエッチングする方法としては、例えばドライエッチングなどを用いるこ
とができる。
【0312】
次に、絶縁膜206の表面および開口部にソース電極207aおよびドレイン電極207
bとなる導電膜207を成膜する(図14(B)参照)。導電膜207は、ソース電極1
07aおよびドレイン電極107bの成膜方法についての記載を参照する。
【0313】
次に、フォトリソグラフィ法などにより、導電膜を加工し、ソース電極207aおよびド
レイン電極207bを形成する(図14(C)参照)。
【0314】
次に、第3の加熱処理を行うと好ましい。第3の加熱処理は、第1の加熱処理および第2
の加熱処理で示した条件から選択して行うか、第1の加熱処理および第2の加熱処理より
も低温で行えばよい。第3の加熱処理を行うことで、第1の加熱処理および第2の加熱処
理を行わなくてもよい場合がある。
【0315】
以上のようにして、図11に示したトランジスタを作製することができる。
【0316】
<トランジスタ構造(3)>
次に、ゲート電極の側壁にサイドウォール絶縁膜を形成したトップゲートセルフアライン
型のトランジスタの一例について説明する。
【0317】
図26は、トランジスタの上面図および断面図である。図26(A)は、トランジスタの
上面図を示す。図26(A)において、一点鎖線A-Bに対応する断面図を図26(B)
に示す。また、図26(A)において、一点鎖線C-Dに対応する断面図を図26(C)
に示す。
【0318】
図26(B)において、トランジスタは、基板301上の下地絶縁膜302と、下地絶縁
膜302上の絶縁膜321と、絶縁膜321上の酸化物半導体膜303と、酸化物半導体
膜303上のゲート絶縁膜304と、ゲート絶縁膜304上のゲート電極305と、ゲー
ト電極305の側壁のサイドウォール絶縁膜308と、酸化物半導体膜303および下地
絶縁膜302およびサイドウォール絶縁膜308に接する絶縁膜306と、酸化物半導体
膜303上のソース電極307aおよびドレイン電極307bと、を有する。絶縁膜32
1は過剰酸素を含む絶縁膜である。なお、トランジスタは、下地絶縁膜302を有さなく
ても構わない。
【0319】
図3に示したトランジスタと図26に示すトランジスタは、図26がサイドウォール絶縁
膜を有する点が主な違いであり、他の共通する部分については特に断りのない場合、図3
についての記載を参照する。
【0320】
例えば、基板301は基板101についての記載を参照する。下地絶縁膜302は下地絶
縁膜102についての記載を参照する。絶縁膜321は絶縁膜121についての記載を参
照する。酸化物半導体膜303は酸化物半導体膜103についての記載を参照する。ゲー
ト絶縁膜304はゲート絶縁膜104についての記載を参照する。ゲート電極305はゲ
ート電極105についての記載を参照する。絶縁膜306は絶縁膜106についての記載
を参照する。ソース電極307aおよびドレイン電極307bは、ソース電極107aお
よびドレイン電極107bについての記載を参照する。
【0321】
図26(B)において、領域351aは、酸化物半導体膜の一部の領域である。領域35
1b、領域351c、領域351dは絶縁膜の一部の領域であり、酸素ブロック領域であ
る。酸素ブロック領域については、前述の領域53についての記載を参照する。図26
B)に示すトランジスタは、酸素ブロック領域である領域351b、領域351c、領域
351dのいずれか一以上を有する。
【0322】
まず、酸素ブロック領域である領域351b、領域351c、領域351dについて述べ
る。領域351bは、絶縁膜321の、絶縁膜306と接する領域である。領域351b
は、絶縁膜321の絶縁膜306と接する面から深さ1nm以上200nm以下、好まし
くは5nm以上150nm以下、さらに好ましくは10nm以上100nm以下に設けら
れる領域である。
【0323】
領域351cは、図26(B)および図26(C)に示すように、サイドウォール絶縁膜
308の、ソース電極307aまたはドレイン電極307bまたは絶縁膜306と接する
領域である。領域351cは、ソース電極307aまたはドレイン電極307bまたは絶
縁膜306と接する面から深さ1nm以上200nm以下、好ましくは5nm以上150
nm以下、さらに好ましくは10nm以上100nm以下に設けられる領域である。
【0324】
領域351dは、図26(B)に示すように、下地絶縁膜302の絶縁膜306と接する
領域である。領域351dは、下地絶縁膜302の上面から深さ1nm以上200nm以
下、好ましくは5nm以上150nm以下、さらに好ましくは10nm以上100nm以
下に設けられる領域である。また、基板301にも領域351dが設けられていても構わ
ない。
【0325】
トランジスタが領域351bを有する場合、絶縁膜321に含まれる過剰酸素を酸化物半
導体膜303の酸素欠損を低減するために有効活用することができる。例えば、領域35
1bを有さない場合、絶縁膜321に含まれる過剰酸素が外方拡散することで失われてし
まう場合がある。また、絶縁膜321に含まれる過剰酸素が、ソース電極307aおよび
ドレイン電極307bを酸化させる場合がある。
【0326】
トランジスタが領域351dを有する場合でも、絶縁膜321や下地絶縁膜302に含ま
れる過剰酸素を酸化物半導体膜303の酸素欠損を低減するために有効活用することがで
きる。例えば、領域351dを有さない場合、絶縁膜321や下地絶縁膜302に含まれ
る過剰酸素が外方拡散することで失われてしまう場合がある。また、領域351dを有さ
ない場合、絶縁膜321や下地絶縁膜302に含まれる過剰酸素が、ソース電極307a
およびドレイン電極307bを酸化させる場合がある。
【0327】
トランジスタが領域351cを有する場合でも、ゲート絶縁膜304に含まれる過剰酸素
を酸化物半導体膜303の酸素欠損を低減するために有効活用することができる。例えば
、領域351cを有さない場合、ゲート絶縁膜304に含まれる過剰酸素が、外方拡散す
ることで失われてしまう場合がある。また、ゲート絶縁膜304に含まれる過剰酸素が、
ソース電極307aおよびドレイン電極307bを酸化させる場合がある。
【0328】
次に、酸化物半導体膜303の一部の領域である領域351aについて述べる。
【0329】
領域351aは、酸化物半導体膜303の、ソース電極307aおよびドレイン電極30
7b、絶縁膜306に接する領域である。領域351aは、酸化物半導体膜303の上面
または側面から深さ1nm以上200nm以下、好ましくは5nm以上150nm以下、
さらに好ましくは10nm以上100nm以下に設けられる領域である。
【0330】
酸素ブロック領域である領域351b、領域351c、領域351dを形成するために不
純物を添加する工程において、領域351aにも不純物が添加される。このとき、不純物
を添加することにより領域351aを低抵抗化することもできる。
【0331】
図26(B)示す領域322は、ソース電極307aまたはドレイン電極307bと接さ
ない領域で、かつゲート電極305と重ならない領域である。領域322の抵抗が高いと
トランジスタのオン電流を下げる要因となってしまう。
【0332】
酸化物半導体膜303の一部の領域である領域351aに不純物を添加することにより、
領域322の抵抗を下げることができる。これにより、オン電流が高くなり、トランジス
タの性能を向上することができる。
【0333】
なお、低抵抗である領域を形成するための不純物を添加する工程は、酸素ブロック領域で
ある領域351b、領域351c、領域351dを形成するための不純物を添加する工程
と兼ねることができる。これにより、工程の短縮が可能となり、コスト低減につながる。
また工程が簡略化されることにより、歩留まりの向上も期待できる。
【0334】
<トランジスタ構造(3)の作製方法>
以下では、トランジスタ構造(3)の作製方法の一例について説明する。
【0335】
図27乃至図29には、図26(B)および図26(C)のトランジスタの作製方法を示
す断面図を示す。
【0336】
まず、基板301を準備する。
【0337】
次に、下地絶縁膜302を成膜する。下地絶縁膜302は、下地絶縁膜102の成膜方法
についての記載を参照する。
【0338】
次に、絶縁膜321を成膜する。絶縁膜321は、過剰酸素を含む絶縁膜である。絶縁膜
321は、絶縁膜135の成膜方法についての記載を参照する。
【0339】
次に、絶縁膜321に酸素を添加することにより、過剰酸素を含む絶縁膜を形成する。酸
素の添加は、例えば、イオン注入法により、加速電圧を2kV以上100kV以下とし、
5×1014ions/cm以上5×1016ions/cm以下の濃度で行えばよ
い。
【0340】
次に、酸化物半導体膜303を成膜する。酸化物半導体膜303は、それぞれ酸化物半導
体膜103として示した酸化物半導体膜から選択して成膜すればよい。酸化物半導体膜3
03は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、ALD法またはPLD法を用いて成膜
すればよい。
【0341】
次に、第1の加熱処理を行うと好ましい。第1の加熱処理は、250℃以上650℃以下
、好ましくは300℃以上500℃以下で行えばよい。第1の加熱処理の雰囲気は、不活
性ガス雰囲気、または酸化性ガスを10ppm以上、1%以上もしくは10%以上含む雰
囲気で行う。第1の加熱処理は減圧状態で行ってもよい。または、第1の加熱処理の雰囲
気は、不活性ガス雰囲気で加熱処理した後に、脱離した酸素を補うために酸化性ガスを1
0ppm以上、1%以上または10%以上含む雰囲気で加熱処理を行ってもよい。
【0342】
次に、酸化物半導体膜303上にレジストマスクを形成する。なお、酸化物半導体膜30
3を一辺が100nm以下に微細加工する場合、酸化物半導体膜303とレジストマスク
の間にハードマスクを設けてもよい。レジストマスクの形成方法についてはレジストマス
ク131を参照する。
【0343】
次に、レジストマスクを用いて島状の酸化物半導体膜303を形成する。更に続けて島状
の絶縁膜321を形成する(図27(A)参照)。
【0344】
なお、図27(A)では絶縁膜321は島状に形成しているが、必ずしも島状に形成され
る必要はなく、凸部を有する形状であってもよい。
【0345】
酸化物半導体膜303の形成にはドライエッチング処理を用いると好ましい。当該ドライ
エッチング処理は、例えば、メタンおよび希ガスを含む雰囲気で行えばよい。また、絶縁
膜321の形成にもドライエッチング処理を用いると好ましい。絶縁膜321をエッチン
グする方法としては、例えば三フッ化メタンおよび希ガスを含む雰囲気で行えばよい。
【0346】
また、ここではレジストマスクを用いて酸化物半導体膜303および絶縁膜321を形成
したが、酸化物半導体膜303と絶縁膜321を異なるレジストマスクで形成しても構わ
ない。また、図26(B)に示す断面図では、絶縁膜321と酸化物半導体膜303は、
ほぼ同じ幅で記載してあるが、例えば絶縁膜321の幅が酸化物半導体膜303の幅より
大きくても構わない。または小さくても構わない。
【0347】
次に、レジストマスクを除去する。レジストマスクの除去は、プラズマ処理、薬液処理な
どで行えばよい。好ましくはプラズマアッシングによって除去する。
【0348】
次に、ゲート絶縁膜304を成膜する。またゲート絶縁膜304に続いてゲート電極30
5となる導電膜を成膜する。ゲート絶縁膜304はゲート絶縁膜104の成膜方法につい
ての記載を参照する。ゲート電極305はゲート電極105の成膜方法についての記載を
参照する。次に、フォトリソグラフィ法などにより、導電膜を加工し、ゲート電極305
を形成する(図27(B)参照)。
【0349】
次に、絶縁膜309を成膜する(図27(C)参照)。次に、絶縁膜309に異方性の高
いエッチングを行い、サイドウォール絶縁膜308を形成する(図28(A)参照)。
【0350】
次に、ゲート電極305およびサイドウォール絶縁膜308をマスクとして、酸化物半導
体膜303、絶縁膜321、および下地絶縁膜302に不純物を添加し、領域351a、
領域351b、領域351dを形成する。また、サイドウォール絶縁膜308の一部に領
域351cを形成する(図28(B)参照)。不純物を添加して領域351a、領域35
1b、領域351c、領域351dを形成する方法は、絶縁膜52に不純物を添加して領
域53を形成する方法についての記載を参照する。領域351b、領域351c、領域3
51d、は酸素ブロック領域である。また、領域351aは、酸化物半導体膜303の一
部に不純物が添加された領域である。
【0351】
酸素ブロック領域である領域351b、領域351c、領域351dを形成することによ
り、絶縁膜321に含まれる過剰酸素の外方拡散を抑え、酸化物半導体膜303に効率よ
く酸素を供給することが可能となる。
【0352】
また、酸化物半導体膜303の一部の領域である領域351aに不純物を添加することに
より、ソース電極307aまたはドレイン電極307bと酸化物半導体膜303の接する
領域から、チャネル形成領域までの領域の抵抗を下げることができる。これにより、オン
電流が高くなり、トランジスタの性能を向上することができる。
【0353】
次に、第2の加熱処理を行うと好ましい。第2の加熱処理は、250℃以上650℃以下
、好ましくは300℃以上500℃以下で行えばよい。第2の加熱処理の雰囲気は、不活
性ガス雰囲気、または酸化性ガスを10ppm以上、1%以上もしくは10%以上含む雰
囲気で行う。第2の加熱処理は減圧状態で行ってもよい。または、第2の加熱処理の雰囲
気は、不活性ガス雰囲気で加熱処理した後に、脱離した酸素を補うために酸化性ガスを1
0ppm以上、1%以上または10%以上含む雰囲気で加熱処理を行ってもよい。第2の
加熱処理によって、酸化物半導体膜303に不純物が添加された領域である領域351a
の抵抗を下げることができる場合もある。また、酸化物半導体膜303に絶縁膜321か
ら過剰酸素が移動させることができる。したがって、酸化物半導体膜303の酸素欠損を
低減することができる。また、酸化物半導体膜303の結晶性を高めることや、水素や水
などの不純物を除去することなどができる。なお、第2の加熱処理を行うことで、第1の
加熱処理を行わなくてもよい場合がある。
【0354】
次に、絶縁膜306を成膜する(図28(C)参照)。絶縁膜306については、絶縁膜
106の記載を参照する。
【0355】
次に、絶縁膜306の一部をエッチングし、開口部を設ける(図29(A)参照)。絶縁
膜306の一部をエッチングする方法としては、例えばドライエッチングなどを用いるこ
とができる。
【0356】
次に、絶縁膜306の表面および開口部にソース電極307aおよびドレイン電極307
bとなる導電膜307を成膜する(図29(B)参照)。導電膜307は、ソース電極1
07aおよびドレイン電極107bの成膜方法についての記載を参照する。
【0357】
また、酸素を含む絶縁膜上に導電膜として金属を成膜した場合、絶縁膜と接する導電膜の
界面に、絶縁膜中に含まれる酸素との反応による金属酸化層を形成することがある。この
ような金属酸化層が形成されてしまうと、絶縁膜と金属の密着性が弱くなる問題がある。
ここで、サイドウォール絶縁膜308に酸素を含む絶縁膜を、ソース電極307aおよび
ドレイン電極307bに金属を用いる例を説明する。サイドウォール絶縁膜308に不純
物を添加し領域351cを形成することにより、酸素の拡散を抑えることができるため、
サイドウォール絶縁膜308とソース電極307aおよびドレイン電極307bとの界面
での金属酸化層の形成を抑えることができる。それにより、絶縁膜と金属の密着性が低下
するのを抑制することができ、サイドウォール絶縁膜308からのソース電極307aお
よびドレイン電極307bの膜剥がれ等を防止することができる。
【0358】
次に、CMP(Chemical Mechanical Polishing)法等を
用いて平坦化処理を行うことにより、ソース電極307aおよびドレイン電極307bを
形成する(図29(C)参照)。
【0359】
次に、第3の加熱処理を行うと好ましい。第3の加熱処理は、第1の加熱処理および第2
の加熱処理で示した条件から選択して行うか、第1の加熱処理および第2の加熱処理より
も低温で行えばよい。第3の加熱処理を行うことで、第1の加熱処理および第2の加熱処
理を行わなくてもよい場合がある。
【0360】
以上のようにして、図26に示したトランジスタを作製することができる。
【0361】
<トランジスタ構造(4)>
次に、酸化物半導体膜として3層の積層構造を有し、保護膜として酸素透過性の低い膜を
用いた場合のトップゲートセルフアライン型のトランジスタの一例について説明する。
【0362】
図31は、トランジスタの上面図および断面図である。図31(A)は、トランジスタの
上面図を示す。図31(A)において、一点鎖線A-Bに対応する断面図を図31(B)
に示す。また、図31(A)において、一点鎖線C-Dに対応する断面図を図31(C)
に示す。
【0363】
図31(B)において、トランジスタは、基板401上の下地絶縁膜402と、下地絶縁
膜402上の絶縁膜421と、絶縁膜421上の酸化物半導体膜403bと、酸化物半導
体膜403b上の酸化物半導体膜403aと、酸化物半導体膜403a上の酸化物半導体
膜403cと、酸化物半導体膜403c上のゲート絶縁膜404と、ゲート絶縁膜404
上のゲート電極405と、ゲート電極405と酸化物半導体膜403aおよび下地絶縁膜
402上にあり、かつゲート絶縁膜404と酸化物半導体膜403cと酸化物半導体膜4
03bおよび絶縁膜421と接する絶縁膜408と、絶縁膜408上の絶縁膜406と、
酸化物半導体膜403bおよび絶縁膜406上のソース電極407aおよびドレイン電極
407bと、を有する。絶縁膜421は過剰酸素を含む絶縁膜である。また、絶縁膜40
8は酸素透過性の低い絶縁膜である。なお、トランジスタは、下地絶縁膜402を有さな
くても構わない。また、酸化物半導体膜403cは、図31(C)に示す断面において、
下地絶縁膜402上にあり、かつ絶縁膜421と酸化物半導体膜403bと酸化物半導体
膜403aと接する。
【0364】
絶縁膜408は、酸素透過性の低い膜である。例えば、絶縁膜408は酸化アルミニウム
膜を用いればよい。
【0365】
または、絶縁膜408は窒化シリコン膜を用いればよい。窒化シリコン膜は水素およびア
ンモニアの放出量が少ない窒化シリコン膜を用いる。水素、アンモニアの放出量は、TD
Sにて測定することができる。また、窒化シリコン膜は、水素、水および酸素を透過しな
い、またはほとんど透過しない窒化シリコン膜を用いる。または、窒化酸化シリコン膜を
用いればよい。
【0366】
酸化物半導体膜403a、酸化物半導体膜403b、酸化物半導体膜403cについては
詳細は後述する。
【0367】
図3に示したトランジスタと図31に示すトランジスタにおいて、共通する部分について
は特に断りのない場合、図3についての記載を参照する。例えば、基板401は基板10
1についての記載を参照する。下地絶縁膜402は下地絶縁膜102についての記載を参
照する。絶縁膜421は絶縁膜121についての記載を参照する。ゲート絶縁膜404は
ゲート絶縁膜104についての記載を参照する。ゲート電極405はゲート電極105に
ついての記載を参照する。絶縁膜406は絶縁膜106についての記載を参照する。ソー
ス電極407aおよびドレイン電極407bは、ソース電極107aおよびドレイン電極
107bについての記載を参照する。
【0368】
図31(B)に示す断面において、絶縁膜421の端面は絶縁膜408で覆われている。
絶縁膜408は酸素透過性の低い絶縁膜である。そのため、絶縁膜121の過剰酸素の外
方拡散を抑え、酸化物半導体膜403a、酸化物半導体膜403bおよび酸化物半導体膜
403cに酸素を効率よく供給することができる。また、絶縁膜421の端面が絶縁膜4
08で覆われていない場合、絶縁膜421に含まれる過剰酸素が、ソース電極407aお
よびドレイン電極407bを酸化させる場合がある。
【0369】
また、下地絶縁膜402上に絶縁膜408を有するため、絶縁膜421から下地絶縁膜4
02を介して絶縁膜406に酸素が拡散するのを抑えることができる。また、下地絶縁膜
402に含まれる酸素が絶縁膜406に拡散することもおさえることができる。そのため
、酸化物半導体膜403a、酸化物半導体膜403bおよび酸化物半導体膜403cに酸
素を効率よく供給することができる。また、下地絶縁膜402上に絶縁膜408が形成さ
れていない場合、絶縁膜421に含まれる過剰酸素が、ソース電極407aおよびドレイ
ン電極407bを酸化させる場合がある。
【0370】
なお、図35に示すように不純物を添加した領域451a、領域451b、領域451c
、領域451dを設けてもよい。領域451b、領域451c、領域451dは酸素ブロ
ック領域として機能する。領域451aは、酸化物半導体膜の低抵抗である領域として機
能する。
【0371】
次に、酸化物半導体膜403a、酸化物半導体膜403bおよび酸化物半導体膜403c
について説明する。酸化物半導体膜403bは、酸化物半導体膜403aを構成する酸素
以外の元素一種以上、または二種以上から構成される酸化物半導体膜である。酸化物半導
体膜403aを構成する酸素以外の元素一種以上、または二種以上から酸化物半導体膜4
03bが構成されるため、酸化物半導体膜403aと酸化物半導体膜403bとの界面に
おいて、界面準位が形成されにくい。
【0372】
酸化物半導体膜403cは、酸化物半導体膜403aを構成する酸素以外の元素一種以上
、または二種以上から構成される酸化物半導体膜である。酸化物半導体膜403aを構成
する酸素以外の元素一種以上、または二種以上から酸化物半導体膜403cが構成される
ため、酸化物半導体膜403aと酸化物半導体膜403cとの界面において、界面準位が
形成されにくい。
【0373】
なお、酸化物半導体膜403bがIn-M-Zn酸化物のとき、InおよびMの和を10
0atomic%としたとき、InとMの原子数比率は好ましくはInが50atomi
c%未満、Mが50atomic%以上、さらに好ましくはInが25atomic%未
満、Mが75atomic%以上とする。また、酸化物半導体膜403aがIn-M-Z
n酸化物のとき、InおよびMの和を100atomic%としたとき、InとMの原子
数比率は好ましくはInが25atomic%以上、Mが75atomic%未満、さら
に好ましくはInが34atomic%以上、Mが66atomic%未満とする。また
、酸化物半導体膜403cがIn-M-Zn酸化物のとき、InおよびMの和を100a
tomic%としたとき、InとMの原子数比率は好ましくはInが50atomic%
未満、Mが50atomic%以上、さらに好ましくはInが25atomic%未満、
Mが75atomic%以上とする。なお、酸化物半導体膜403cは、酸化物半導体膜
403bと同種の酸化物を用いても構わない。
【0374】
ここで、酸化物半導体膜403bと酸化物半導体膜403aとの間には、酸化物半導体膜
403bと酸化物半導体膜403aとの混合領域を有する場合がある。また、酸化物半導
体膜403aと酸化物半導体膜403cとの間には、酸化物半導体膜403aと酸化物半
導体膜403cとの混合領域を有する場合がある。混合領域は、界面準位密度が低くなる
。そのため、酸化物半導体膜403b、酸化物半導体膜403aおよび酸化物半導体膜4
03cの積層体は、それぞれの界面近傍において、エネルギーが連続的に変化する(連続
接合ともいう。)バンド構造となる。
【0375】
また酸化物半導体膜403aは、エネルギーギャップが大きい酸化物を用いる。酸化物半
導体膜403aのエネルギーギャップは、例えば、2.5eV以上4.2eV以下、好ま
しくは2.8eV以上3.8eV以下、さらに好ましくは3eV以上3.5eV以下とす
る。
【0376】
また、酸化物半導体膜403bは、エネルギーギャップが大きい酸化物を用いる。例えば
、酸化物半導体膜403bのエネルギーギャップは、2.7eV以上4.9eV以下、好
ましくは3eV以上4.7eV以下、さらに好ましくは3.2eV以上4.4eV以下と
する。
【0377】
また、酸化物半導体膜403cは、エネルギーギャップが大きい酸化物を用いる。酸化物
半導体膜403cのエネルギーギャップは、2.7eV以上4.9eV以下、好ましくは
3eV以上4.7eV以下、さらに好ましくは3.2eV以上4.4eV以下とする。た
だし、酸化物半導体膜403bおよび酸化物半導体膜403cは、酸化物半導体膜403
aよりもエネルギーギャップが大きい酸化物とする。
【0378】
酸化物半導体膜403aは、酸化物半導体膜403bよりも電子親和力の大きい酸化物を
用いる。例えば、酸化物半導体膜403aとして、酸化物半導体膜403bよりも電子親
和力の0.07eV以上1.3eV以下、好ましくは0.1eV以上0.7eV以下、さ
らに好ましくは0.15eV以上0.4eV以下大きい酸化物を用いる。なお、電子親和
力は、真空準位と伝導帯下端のエネルギーとの差である。
【0379】
また、酸化物半導体膜403aとして、酸化物半導体膜403cよりも電子親和力の大き
い酸化物を用いる。例えば、酸化物半導体膜403aとして、酸化物半導体膜403cよ
りも電子親和力の0.07eV以上1.3eV以下、好ましくは0.1eV以上0.7e
V以下、さらに好ましくは0.15eV以上0.5eV以下大きい酸化物を用いる。
【0380】
このとき、ゲート電極405に電界を印加すると、酸化物半導体膜403b、酸化物半導
体膜403a、酸化物半導体膜403cのうち、電子親和力の大きい酸化物半導体膜40
3aに主として電流が流れる。
【0381】
また、トランジスタのオン電流のためには、酸化物半導体膜403cの厚さは小さいほど
好ましい。例えば、酸化物半導体膜403cは、10nm未満、好ましくは5nm以下、
さらに好ましくは3nm以下とする。一方、酸化物半導体膜403cは、主として電流が
流れる酸化物半導体膜403aへ、ゲート絶縁膜404を構成する酸素以外の元素(シリ
コンなど)が入り込まないようブロックする機能を有する。そのため、酸化物半導体膜4
03cは、ある程度の厚さを有することが好ましい。例えば、酸化物半導体膜403cの
厚さは、0.3nm以上、好ましくは1nm以上、さらに好ましくは2nm以上とする。
【0382】
また、信頼性を高めるためには、酸化物半導体膜403bは厚く、酸化物半導体膜403
aは薄く、酸化物半導体膜403cは薄く設けられることが好ましい。具体的には、酸化
物半導体膜403bの厚さは、20nm以上、好ましくは30nm以上、さらに好ましく
は40nm以上、より好ましくは60nm以上とする。酸化物半導体膜403bの厚さを
、20nm以上、好ましくは30nm以上、さらに好ましくは40nm以上、より好まし
くは60nm以上とすることで、下地絶縁膜102と酸化物半導体膜403bとの界面か
ら主として電流が流れる酸化物半導体膜403aまでを20nm以上、好ましくは30n
m以上、さらに好ましくは40nm以上、より好ましくは60nm以上離すことができる
。ただし、半導体装置の生産性が低下する場合があるため、酸化物半導体膜403bの厚
さは、200nm以下、好ましくは120nm以下、さらに好ましくは80nm以下とす
る。また、酸化物半導体膜403aの厚さは、3nm以上100nm以下、好ましくは3
nm以上80nm以下、さらに好ましくは3nm以上50nm以下とする。
【0383】
例えば、酸化物半導体膜403bの厚さは酸化物半導体膜403aの厚さより厚く、酸化
物半導体膜403aの厚さは酸化物半導体膜403cの厚さより厚くすればよい。
【0384】
また、酸化物半導体膜403bの厚さと絶縁膜421の厚さの和を、20nm以上、好ま
しくは30nm以上、さらに好ましくは40nm以上、より好ましくは60nm以上とす
ることにより、下地絶縁膜402と絶縁膜421との界面から酸化物半導体膜403aま
でを20nm以上、好ましくは30nm以上、さらに好ましくは40nm以上、より好ま
しくは60nm以上離すことができる。つまり絶縁膜421を厚く設けることにより、酸
化物半導体膜403bを薄くすることができる。酸化物半導体膜403bを薄くすること
により、酸化物半導体膜への過剰酸素の供給量を少なくすることができ、また主として電
流が流れる、酸化物半導体膜403aへ供給できる酸素量が相対的に増えるため、更なる
特性の向上が期待される。
【0385】
<トランジスタ構造(4)の作製方法>
以下では、トランジスタ構造(4)の作製方法の一例について説明する。
【0386】
図32乃至図34には、図31(B)および図31(C)のトランジスタの作製方法を示
す断面図を示す。
【0387】
まず、基板401を準備する。
【0388】
次に、下地絶縁膜402を成膜する。下地絶縁膜402は、下地絶縁膜102の成膜方法
についての記載を参照する。
【0389】
次に、絶縁膜421を成膜する。絶縁膜421は、過剰酸素を含む絶縁膜である。絶縁膜
421は、絶縁膜135の成膜方法についての記載を参照する。
【0390】
次に、絶縁膜421に酸素を添加することにより、過剰酸素を含む絶縁膜を形成する。酸
素の添加は、例えば、イオン注入法により、加速電圧を2kV以上100kV以下とし、
5×1014ions/cm以上5×1016ions/cm以下の濃度で行えばよ
い。
【0391】
次に、酸化物半導体膜403bおよび酸化物半導体膜403aを成膜する(図32(A)
参照)。酸化物半導体膜403bおよび酸化物半導体膜403aは、それぞれ酸化物半導
体膜403bおよび酸化物半導体膜403aとして示した酸化物半導体膜から選択して成
膜すればよい。酸化物半導体膜403bおよび酸化物半導体膜403aは、スパッタリン
グ法、CVD法、MBE法、ALD法またはPLD法を用いて成膜すればよい。
【0392】
次に、第1の加熱処理を行うと好ましい。第1の加熱処理は、250℃以上650℃以下
、好ましくは300℃以上500℃以下で行えばよい。第1の加熱処理の雰囲気は、不活
性ガス雰囲気、または酸化性ガスを10ppm以上、1%以上もしくは10%以上含む雰
囲気で行う。第1の加熱処理は減圧状態で行ってもよい。または、第1の加熱処理の雰囲
気は、不活性ガス雰囲気で加熱処理した後に、脱離した酸素を補うために酸化性ガスを1
0ppm以上、1%以上または10%以上含む雰囲気で加熱処理を行ってもよい。
【0393】
次に、酸化物半導体膜403b上にレジストマスクを形成する。なお、酸化物半導体膜4
03bを一辺が100nm以下に微細加工する場合、酸化物半導体膜403bとレジスト
マスクの間にハードマスクを設けてもよい。レジストマスクの形成方法についてはレジス
トマスク131を参照する。
【0394】
次に、レジストマスクを用いて島状の酸化物半導体膜403bおよび酸化物半導体膜40
3aを形成する。更に続けて島状の絶縁膜421を形成する(図32(B)参照)。
【0395】
なお、図32(B)では絶縁膜421は島状に形成しているが、必ずしも島状に形成され
る必要はなく、凸部を有する形状であってもよい。
【0396】
酸化物半導体膜403bおよび酸化物半導体膜403aの形成にはドライエッチング処理
を用いると好ましい。当該ドライエッチング処理は、例えば、メタンおよび希ガスを含む
雰囲気で行えばよい。また、絶縁膜421の形成にもドライエッチング処理を用いると好
ましい。絶縁膜421をエッチングする方法としては、例えば三フッ化メタンおよび希ガ
スを含む雰囲気で行えばよい。
【0397】
また、ここではレジストマスクを用いて酸化物半導体膜403b、酸化物半導体膜403
aおよび絶縁膜421を形成したが、酸化物半導体膜403b、酸化物半導体膜403a
および絶縁膜421を異なるレジストマスクで形成しても構わない。また、図32(B)
に示す断面図では、絶縁膜421と酸化物半導体膜403bおよび酸化物半導体膜403
aは、ほぼ同じ幅で記載してあるが、例えば絶縁膜421の幅が酸化物半導体膜403b
、酸化物半導体膜403aの幅より大きくても構わない。または小さくても構わない。
【0398】
次に、レジストマスクを除去する。レジストマスクの除去は、プラズマ処理、薬液処理な
どで行えばよい。好ましくはプラズマアッシングによって除去する。
【0399】
次に、酸化物半導体膜403cを成膜する。酸化物半導体膜403cは、それぞれ酸化物
半導体膜403cとして示した酸化物半導体膜から選択して成膜すればよい。酸化物半導
体膜403cは、スパッタリング法、CVD法、MBE法、ALD法またはPLD法を用
いて成膜すればよい。
【0400】
次に、ゲート絶縁膜404およびゲート電極405を成膜する。ゲート絶縁膜404はゲ
ート絶縁膜104の成膜方法についての記載を参照する。ゲート電極405はゲート電極
105の成膜方法についての記載を参照する。
【0401】
次に、レジストマスク431を形成する(図32(C)参照)。レジストマスク431を
用いて、ゲート電極405をエッチングする。次に、ゲート絶縁膜404をエッチングす
る。次に、酸化物半導体膜403cをエッチングする。(図33(A)参照)。ゲート電
極405のエッチングには、例えばドライエッチング処理を用いればよい。また、ゲート
絶縁膜404のエッチングには、例えばドライエッチング処理を用いればよい。また、酸
化物半導体膜403cのエッチングには、例えばドライエッチング処理を用いればよい。
【0402】
次に、絶縁膜408を成膜する(図33(B)参照)。絶縁膜408には、絶縁膜408
として示した膜を用いればよい。絶縁膜408は、酸素透過性の低い膜を用いる。
【0403】
次に、第2の加熱処理を行うと好ましい。第2の加熱処理は、250℃以上650℃以下
、好ましくは300℃以上500℃以下で行えばよい。第2の加熱処理の雰囲気は、不活
性ガス雰囲気、または酸化性ガスを10ppm以上、1%以上もしくは10%以上含む雰
囲気で行う。第2の加熱処理は減圧状態で行ってもよい。または、第2の加熱処理の雰囲
気は、不活性ガス雰囲気で加熱処理した後に、脱離した酸素を補うために酸化性ガスを1
0ppm以上、1%以上または10%以上含む雰囲気で加熱処理を行ってもよい。第2の
加熱処理によって、酸化物半導体膜403a、酸化物半導体膜403bおよび酸化物半導
体膜403cに絶縁膜421から過剰酸素が移動させることができる。したがって、酸化
物半導体膜403a、酸化物半導体膜403bおよび酸化物半導体膜403cの酸素欠損
を低減することができる。また、酸化物半導体膜403a、酸化物半導体膜403bおよ
び酸化物半導体膜403cの結晶性を高めることや、水素や水などの不純物を除去するこ
となどができる。なお、第2の加熱処理を行うことで、第1の加熱処理を行わなくてもよ
い場合がある。
【0404】
次に、絶縁膜406を成膜する(図33(C)参照)。絶縁膜406については、絶縁膜
106の記載を参照する。
【0405】
次に、絶縁膜406の一部をエッチングし、開口部を設ける(図34(A)参照)。絶縁
膜406の一部をエッチングする方法としては、例えばドライエッチングなどを用いるこ
とができる。
【0406】
次に、絶縁膜406の表面および開口部にソース電極407aおよびドレイン電極407
bとなる導電膜を成膜し、フォトリソグラフィ法などにより加工しソース電極407aお
よびドレイン電極407bを形成する(図34(B)参照)。ソース電極407aおよび
ドレイン電極407bは、ソース電極107aおよびドレイン電極107bの成膜方法に
ついての記載を参照する。
【0407】
次に、第3の加熱処理を行うと好ましい。第3の加熱処理は、第1の加熱処理および第2
の加熱処理で示した条件から選択して行うか、第1の加熱処理および第2の加熱処理より
も低温で行えばよい。第3の加熱処理を行うことで、第1の加熱処理および第2の加熱処
理を行わなくてもよい場合がある。
【0408】
以上のようにして、図31に示したトランジスタを作製することができる。
【0409】
ここまでが、本発明の一態様に係るトランジスタの構造の一例、およびその作製方法につ
いて説明である。ただし、本発明の一態様に係るトランジスタの構造は、上記の例に限定
されるものではない。例えば、本発明の一態様に係るトランジスタの構造として、ボトム
コンタクト構造としても構わないし、ソース電極およびドレイン電極を設けない構造とし
てもよい。
【0410】
本発明の一態様に係るトランジスタは、絶縁膜中の過剰酸素を、酸化物半導体膜中の酸素
欠損を低減するために有効活用できる。したがって、当該トランジスタは、酸素欠損の少
ない酸化物半導体膜を用いたトランジスタである。
【0411】
したがって、本発明の一態様に係るトランジスタは、酸素欠損に起因した劣化を引き起こ
しにくい。例えば、酸化物半導体膜中で酸素欠損は、トラップセンターとなることで劣化
を引き起こす場合がある。また、酸素欠損が水素を捕獲することでドナー準位を形成し、
トランジスタのしきい値電圧をマイナス方向に変動させる場合がある。
【0412】
本発明の一態様に係るトランジスタは、過剰酸素を有効活用できる。そのため、微細な構
造に適用することができる。また、劣化が小さく、電気特性が安定である。また、配線の
酸化による抵抗増大が小さいため、オン電流を高くすることができる。また、しきい値電
圧のマイナス方向への変動がないため、オフ電流を小さくすることができる。
【0413】
<応用製品について>
以下では、上述したトランジスタを用いた応用製品について説明する。
【0414】
上述したトランジスタは、例えば、メモリ、CPU、表示装置など様々な用途に用いるこ
とができる。
【0415】
<CPU>
図20は、上述したトランジスタを少なくとも一部に用いたCPUの具体的な構成を示す
ブロック図である。
【0416】
図20(A)に示すCPUは、基板1190上に、ALU1191(ALU:Arith
metic logic unit、論理演算回路)、ALUコントローラ1192、イ
ンストラクションデコーダ1193、インタラプトコントローラ1194、タイミングコ
ントローラ1195、レジスタ1196、レジスタコントローラ1197、バスインター
フェース1198(Bus I/F)、書き換え可能なROM1199、およびROMイ
ンターフェース1189(ROM I/F)を有している。基板1190は、半導体基板
、SOI基板、ガラス基板などを用いる。ROM1199およびROMインターフェース
1189は、別チップに設けてもよい。もちろん、図20(A)に示すCPUは、その構
成を簡略化して示した一例にすぎず、実際のCPUはその用途によって多種多様な構成を
有している。
【0417】
バスインターフェース1198を介してCPUに入力された命令は、インストラクション
デコーダ1193に入力され、デコードされた後、ALUコントローラ1192、インタ
ラプトコントローラ1194、レジスタコントローラ1197、タイミングコントローラ
1195に入力される。
【0418】
ALUコントローラ1192、インタラプトコントローラ1194、レジスタコントロー
ラ1197、タイミングコントローラ1195は、デコードされた命令に基づき、各種制
御を行なう。具体的にALUコントローラ1192は、ALU1191の動作を制御する
ための信号を生成する。また、インタラプトコントローラ1194は、CPUのプログラ
ム実行中に、外部の入出力装置や、周辺回路からの割り込み要求を、その優先度やマスク
状態から判断し、処理する。レジスタコントローラ1197は、レジスタ1196のアド
レスを生成し、CPUの状態に応じてレジスタ1196の読み出しや書き込みを行なう。
【0419】
また、タイミングコントローラ1195は、ALU1191、ALUコントローラ119
2、インストラクションデコーダ1193、インタラプトコントローラ1194、および
レジスタコントローラ1197の動作のタイミングを制御する信号を生成する。例えばタ
イミングコントローラ1195は、基準クロック信号CLK1を元に、内部クロック信号
CLK2を生成する内部クロック生成部を備えており、内部クロック信号CLK2を上記
各種回路に供給する。
【0420】
図20(A)に示すCPUでは、レジスタ1196に、メモリセルが設けられている。レ
ジスタ1196のメモリセルとして、上述したトランジスタを用いることができる。
【0421】
図20(A)に示すCPUにおいて、レジスタコントローラ1197は、ALU1191
からの指示に従い、レジスタ1196における保持動作の選択を行う。即ち、レジスタ1
196が有するメモリセルにおいて、フリップフロップによるデータの保持を行うか、容
量素子によるデータの保持を行うかを、選択する。フリップフロップによるデータの保持
が選択されている場合、レジスタ1196内のメモリセルへの、電源電圧の供給が行われ
る。容量素子におけるデータの保持が選択されている場合、容量素子へのデータの書き換
えが行われ、レジスタ1196内のメモリセルへの電源電圧の供給を停止することができ
る。
【0422】
電源停止に関しては、図20(B)または図20(C)に示すように、メモリセル群と、
電源電位VDDまたは電源電位VSSの与えられているノード間に、スイッチング素子を
設けることにより行うことができる。以下に図20(B)および図20(C)の回路の説
明を行う。
【0423】
図20(B)および図20(C)は、メモリセルへの電源電位の供給を制御するスイッチ
ング素子に、上述したトランジスタを用いた記憶装置である。
【0424】
図20(B)に示す記憶装置は、スイッチング素子1141と、メモリセル1142を複
数有するメモリセル群1143とを有している。具体的に、各メモリセル1142には、
上述したトランジスタを用いることができる。メモリセル群1143が有する各メモリセ
ル1142には、スイッチング素子1141を介して、ハイレベルの電源電位VDDが供
給されている。さらに、メモリセル群1143が有する各メモリセル1142には、信号
INの電位と、ローレベルの電源電位VSSの電位が与えられている。
【0425】
図20(B)では、スイッチング素子1141として、上述したトランジスタを用いてお
り、該トランジスタは、そのゲート電極層に与えられる信号SigAによりスイッチング
が制御される。
【0426】
なお、図20(B)では、スイッチング素子1141がトランジスタを一つだけ有する構
成を示しているが、特に限定されず、トランジスタを複数有していてもよい。スイッチン
グ素子1141が、スイッチング素子として機能するトランジスタを複数有している場合
、上記複数のトランジスタは並列に接続されていてもよいし、直列に接続されていてもよ
いし、直列と並列が組み合わされて接続されていてもよい。
【0427】
また、図20(B)では、スイッチング素子1141により、メモリセル群1143が有
する各メモリセル1142への、ハイレベルの電源電位VDDの供給が制御されているが
、スイッチング素子1141により、ローレベルの電源電位VSSの供給が制御されてい
てもよい。
【0428】
また、図20(C)には、メモリセル群1143が有する各メモリセル1142に、スイ
ッチング素子1141を介して、ローレベルの電源電位VSSが供給されている、記憶装
置の一例を示す。スイッチング素子1141により、メモリセル群1143が有する各メ
モリセル1142への、ローレベルの電源電位VSSの供給を制御することができる。
【0429】
メモリセル群と、電源電位VDDまたは電源電位VSSの与えられているノード間に、ス
イッチング素子を設け、一時的にCPUの動作を停止し、電源電圧の供給を停止した場合
においてもデータを保持することが可能であり、消費電力の低減を行うことができる。具
体的には、例えば、パーソナルコンピュータのユーザーが、キーボードなどの入力装置へ
の情報の入力を停止している間でも、CPUの動作を停止することができ、それにより消
費電力を低減することができる。
【0430】
ここでは、CPUを例に挙げて説明したが、DSP(Digital Signal P
rocessor)、カスタムLSI、FPGA(Field Programmabl
e Gate Array)等のLSIにも応用可能である。
【0431】
<設置例>
図21(A)において、テレビジョン装置8000は、筐体8001に表示部8002が
組み込まれており、表示部8002により映像を表示し、スピーカー部8003から音声
を出力することが可能である。
【0432】
テレビジョン装置8000は、受信機やモデムなどを備えていてもよい。テレビジョン装
置8000は、受信機により一般のテレビ放送の受信を行うことができ、さらにモデムを
介して有線または無線による通信ネットワークに接続することにより、一方向(送信者か
ら受信者)または双方向(送信者と受信者間、あるいは受信者間同士など)の情報通信を
行うことも可能である。
【0433】
また、テレビジョン装置8000は、情報通信を行うためのCPUや、メモリを備えてい
てもよい。テレビジョン装置8000は、上述したメモリやCPUを用いることが可能で
ある。
【0434】
図21(A)において、警報装置8100は、住宅用火災警報器であり、検出部と、マイ
クロコンピュータ8101を有している。マイクロコンピュータ8101には、上述した
トランジスタを用いたCPUが含まれる。
【0435】
図21(A)において、室内機8200および室外機8204を有するエアコンディショ
ナーには、上述したトランジスタを用いたCPUが含まれる。具体的に、室内機8200
は、筐体8201、送風口8202、CPU8203等を有する。図21(A)において
、CPU8203が、室内機8200に設けられている場合を例示しているが、CPU8
203は室外機8204に設けられていてもよい。または、室内機8200と室外機82
04の両方に、CPU8203が設けられていてもよい。上述したトランジスタを用いた
CPUが含まれることで、エアコンディショナーを省電力化できる。
【0436】
図21(A)において、電気冷凍冷蔵庫8300には、上述したトランジスタを用いたC
PUが含まれる。具体的に、電気冷凍冷蔵庫8300は、筐体8301、冷蔵室用扉83
02、冷凍室用扉8303、CPU8304等を有する。図21(A)では、CPU83
04が、筐体8301の内部に設けられている。上述したトランジスタを用いたCPUが
含まれることで、電気冷凍冷蔵庫8300を省電力化できる。
【0437】
図21(B)および図21(C)において、電気自動車の例を示す。電気自動車9700
には、二次電池9701が搭載されている。二次電池9701の電力は、制御回路970
2により出力が調整されて、駆動装置9703に供給される。制御回路9702は、図示
しないROM、RAM、CPU等を有する処理装置9704によって制御される。上述し
たトランジスタを用いたCPUが含まれることで、電気自動車9700を省電力化できる
【0438】
駆動装置9703は、直流電動機もしくは交流電動機単体、または電動機と内燃機関と、
を組み合わせて構成される。処理装置9704は、電気自動車9700の運転者の操作情
報(加速、減速、停止など)や走行時の情報(上り坂や下り坂等の情報、駆動輪にかかる
負荷情報など)の入力情報に基づき、制御回路9702に制御信号を出力する。制御回路
9702は、処理装置9704の制御信号により、二次電池9701から供給される電気
エネルギーを調整して駆動装置9703の出力を制御する。交流電動機を搭載している場
合は、図示していないが、直流を交流に変換するインバータも内蔵される。
【0439】
なお、本実施の形態は、基本原理の一例について述べたものである。したがって、本実施
の形態の一部または全部について、実施の形態の一部また全部と、自由に組み合わせるこ
とや、適用することや、置き換えて実施することができる。
【実施例1】
【0440】
本実施例では、過剰酸素を含む絶縁膜である、酸化シリコン膜または酸化窒化シリコン膜
に不純物としてリンを添加し、TDSによる酸素放出を評価した。
【0441】
試料の作製方法を以下に示す。
【0442】
まず、基板としてシリコンウェハを準備した。次に、シリコンウェハを熱酸化法により酸
化させ、表面に厚さ100nmの第1の酸化シリコン膜を形成した。次に、スパッタリン
グ法により、厚さが300nmの第2の酸化シリコン膜を成膜した。
【0443】
第2の酸化シリコン膜は、合成石英ターゲットを用い、成膜ガスを酸素50sccmとし
、圧力を0.4Paとし、成膜電力を1.5kW(13.56MHz)とし、ターゲット
-基板間距離を60mmとし、基板温度を100℃として成膜した。
【0444】
次に、試料に不純物としてリンイオン(P)を注入することで実施例試料1、実施例試
料2および実施例試料3を作製した。
【0445】
リンイオンの添加は、イオン注入法を用い、加速電圧を30kVとして行った。実施例試
料1は、リンイオンの注入濃度を1×1015ions/cmとした。実施例試料2は
、リンイオンの注入濃度を2×1015ions/cmとした。実施例試料3は、リン
イオンの注入濃度を1×1016ions/cmとした。なお、比較例試料として、リ
ンイオンを注入していない試料を準備した。
【0446】
図22に、実施例試料1、実施例試料2、実施例試料3および比較例試料の、TDSによ
る基板温度と質量電荷比(M/z)が32のイオン強度との関係を示す。TDSの測定は
、各試料を10mm×10mmに分断した試料に対して行った。なお、M/zが32で検
出されるガスには酸素ガス(O)がある。本実施例では、M/zが32で検出されるガ
スは、全て酸素ガスとみなす。
【0447】
図22より、リンイオンを注入していない、比較例試料は、基板温度250℃以上450
℃以下程度の範囲で酸素ガスを放出した。一方、リンイオンを注入した、実施例試料1、
実施例試料2および実施例試料3は、比較例試料に対して酸素ガスの放出量が少ないこと
がわかった。
【0448】
図22より、実施例試料1の酸素放出量は、8.1×1015atoms/cm(2.
7×1020atoms/cm)であった。また、実施例試料2の酸素放出量は、5.
5×1015atoms/cm(1.8×1020atoms/cm)であった。ま
た、実施例試料3の酸素放出量は、1.1×1014atoms/cm(3.7×10
18atoms/cm)であった。また、比較例試料の酸素放出量は、1.1×10
atoms/cm(3.7×1020atoms/cm)であった。なお、単位体
積当たりの酸素放出量は、第2の酸化シリコン膜の厚さ300nmから換算した。
【0449】
図23に、図22から算出した酸素放出量を示す。なお、酸素放出量は、酸素原子に換算
した値を示す。図23は、リンイオン注入濃度と酸素放出量との関係である。なお、リン
イオンを注入していない、比較例試料の酸素放出量を破線で示す。
【0450】
したがって、加熱によって放出する酸素の量を低減させるためには、30kVの加速電圧
では、酸化シリコン膜中にリンイオンを1×1015ions/cm以上、好ましくは
2×1015ions/cm以上、さらに好ましくは1×1016ions/cm
上の濃度で注入すればよいことがわかった。
【0451】
図22より、加熱により酸素を放出することが可能な絶縁膜にリンイオンを注入すること
で、加熱によって放出する酸素の量を低減できることがわかる。
【0452】
次に、実施例試料4の作製方法を示す。
【0453】
まず、基板としてシリコンウェハを準備した。次に、シリコンウェハを熱酸化法により酸
化させ、表面に厚さ100nmの酸化シリコン膜を形成した。次に、CVD法により、厚
さが300nmの酸化窒化シリコン膜を成膜した。
【0454】
酸化窒化シリコン膜は、成膜ガスをシラン2sccmおよび亜酸化窒素4000sccm
とし、圧力を700Paとし、成膜電力を250W(60MHz)とし、電極間距離を9
mmとし、基板温度を400℃として成膜した。
【0455】
次に、試料に不純物としてリンイオン(P)を注入することで実施例試料4を作製した
。リンイオンの添加は、イオン注入法を用い、加速電圧を30kVとして行った。実施例
試料4は、リンイオンの注入濃度を1×1016ions/cmとした。
【0456】
したがって、実施例試料3と実施例試料4との違いは、第2の酸化シリコン膜を用いるか
、酸化窒化シリコン膜を用いるかのみである。
【0457】
次に、実施例試料3および実施例試料4をエッチングし、エッチング深さと酸素放出量と
の関係を評価した。実施例試料3および実施例試料4は、10mm×10mmに分断した
。なお、TDSの測定は、測定1回に対して分断した試料を1枚用いた。
【0458】
図24は、エッチングなしの第2の酸化シリコン膜または酸化窒化シリコン膜の厚さを基
準(深さ0nm)とし、各エッチング深さにおける酸素放出量をプロットした。エッチン
グは、エッチャントには、フッ化水素アンモニウムを6.7%とフッ化アンモニウムを1
2.7%含む混合溶液(ステラケミファ社製 LAL500)を用い、20℃で行った。
図24(A)に実施例試料3の酸素放出量を、図24(B)に実施例試料4の酸素放出量
を、それぞれ示す。
【0459】
なお、図24には、計算によって算出した、第2の酸化シリコン膜または酸化窒化シリコ
ン膜中のリン濃度を示す。計算は、TRIM(Transport of Ion in
Matter)を用い、膜密度を2.2g/cmとして行った。計算により、各試料
は、深さ50nmから60nmの範囲にリン濃度の最大値を有することがわかった。
【0460】
図24(A)より、実施例試料3は、第2の酸化シリコン膜を50nmの深さまでエッチ
ングすることで、酸素放出量が増大することがわかった。また、第2の酸化シリコン膜を
90nmの深さまでエッチングすることで、酸素放出量が飽和することがわかった。また
図24(B)より、実施例試料4は、酸化窒化シリコン膜を78nmの深さまでエッチ
ングすることで、酸素放出量が増大することがわかった。また、酸化窒化シリコン膜を8
3nmの深さまでエッチングすることで、酸素放出量が飽和することがわかった。
【0461】
図24より、絶縁膜中のリン濃度が最大値を示す領域をエッチングすると、酸素放出量は
大きく変化することがわかった。このことから、リン濃度を2×1020atoms/c
以上とすることで高い酸素ブロック性を示す領域が形成できていることがわかった。
また、リン濃度の低い領域では、加熱によって放出される酸素が保持されていることがわ
かった。
【0462】
本実施例より、過剰酸素を含む絶縁膜である、酸化シリコン膜および酸化窒化シリコン膜
中に不純物としてリンを添加することで、酸素ブロック領域を形成できることがわかる。
【実施例2】
【0463】
本実施例では、過剰酸素を含む絶縁膜である酸化シリコン膜中に、不純物としてホウ素を
添加し、TDSによる酸素放出を評価した。
【0464】
試料の作製方法を以下に示す。
【0465】
まず、基板としてシリコンウェハを準備した。次に、シリコンウェハを熱酸化法により酸
化させ、表面に厚さ100nmの第1の酸化シリコン膜を形成した。次に、スパッタリン
グ法により、厚さが300nmの第2の酸化シリコン膜を成膜した。
【0466】
第2の酸化シリコン膜は、合成石英ターゲットを用い、成膜ガスを酸素50sccmとし
、圧力を0.4Paとし、成膜電力を1.5kW(13.56MHz)とし、ターゲット
-基板間距離を60mmとし、基板温度を100℃として成膜した。
【0467】
次に、試料に不純物としてホウ素イオン(B)を注入することで、実施例試料5を作製
した。
【0468】
ホウ素イオンの添加は、イオン注入法を用い、加速電圧を10kVとして行った。実施例
試料5は、ホウ素イオンの注入濃度を1×1016ions/cmとした。なお、比較
例試料として、イオンを注入していない試料を準備した。当該試料は、比較例試料として
先の実施例に示した試料と同一である。
【0469】
図25に、実施例試料5および比較例試料の、TDSによる基板温度とM/zが32のイ
オン強度との関係を示す。TDSの測定は、各試料を10mm×10mmに分断した試料
に対して行った。
【0470】
図25より、ホウ素イオンを注入していない、比較例試料は、基板温度250℃以上45
0℃以下程度の範囲で酸素ガスを放出した。一方、ホウ素イオンを注入した実施例試料5
は、比較例試料に対して酸素ガスの放出量が少ないことがわかった。
【0471】
図25より、実施例試料5の酸素放出量は、3.1×1015atoms/cm(1.
0×1020atoms/cm)であった。また、比較例試料の酸素放出量は、1.1
×1016atoms/cm(3.7×1020atoms/cm)であった。なお
、単位体積当たりの酸素放出量は、第2の酸化シリコン膜の厚さ300nmから換算した
【0472】
したがって、加熱によって放出する酸素の量を低減させるためには、10kVの加速電圧
では、酸化シリコン膜中にホウ素イオンを1×1016ions/cm以上の濃度で注
入すればよいことがわかった。
【0473】
図25より、加熱により酸素を放出することが可能な絶縁膜に、ホウ素イオンを注入する
ことでも、加熱によって放出する酸素の量を低減できることがわかる。
【0474】
本実施例より、過剰酸素を含む絶縁膜である、酸化シリコン膜中に不純物としてホウ素を
添加することでも、酸素ブロック領域を形成できることがわかる。
【実施例3】
【0475】
本実施例では、酸化物半導体に不純物としてリンまたはホウ素を添加し、熱処理を施した
後の抵抗値を測定した。
【0476】
試料の作製方法を以下に示す。
【0477】
まず、基板1001としてガラス基板を準備した。次に、絶縁膜1002を成膜した。絶
縁膜1002はスパッタリング法により酸化シリコン膜を300nm成膜した。石英をス
パッタリングターゲットに用い、成膜ガスとしてアルゴンと酸素(ともに25sccm)
の混合ガスを用い、基板温度100℃、基板とスパッタリングターゲットとの距離を60
mmとし、圧力0.4Pa、RF電力1.5kWとして成膜した。
【0478】
次に、酸化物半導体膜1003を成膜した。酸化物半導体膜1003はIn:Ga:Zn
=1:1:1(原子数比)の多結晶酸化物ターゲットを用いたスパッタリング法によりア
ルゴンおよび酸素(アルゴン:酸素=30sccm:15sccm)混合雰囲気下におい
て、圧力0.4Pa、電源電力0.5kWを印加し、ターゲットと基板の間の距離を60
mm、基板温度400℃として成膜した。その後、450℃の窒素雰囲気下にて1時間の
熱処理を行った。
【0479】
次に、レジストマスクを形成し、ウェットエッチング法により酸化物半導体膜1003の
不要部分を除去した。ウェットエッチングにはITO-07N(関東化学社製)を用いた
【0480】
次に、絶縁膜1004を成膜した。絶縁膜1004はCVD法により、厚さが20nmの
酸化窒化シリコン膜を成膜した。酸化窒化シリコン膜は、成膜ガスをシラン1sccmお
よび亜酸化窒素800sccmとし、圧力を40Paとし、成膜電力を150W(60M
Hz)とし、電極間距離を28mmとし、基板温度を400℃として成膜した。
【0481】
次に、試料に不純物としてリンイオン(P)またはホウ素イオン(B)を注入した。
試料Aにはリンイオンを注入し、注入条件は加速電圧を40kV、注入濃度を1.0×1
15cm-2とした。また試料Bにはホウ素イオンを注入し、注入条件は加速電圧を1
5kV、注入濃度を3.0×1015cm-2とした。また、比較例としてイオン注入を
行わない、試料Cを作製した。
【0482】
なお、本実施例では酸化物半導体膜上に20nmの絶縁膜を形成した後にリンイオンを注
入したが、絶縁膜を形成せず、もしくは形成後除去して酸化物半導体膜を露出させてリン
イオンを注入してもよい。また、絶縁膜1004は20nmより厚くてもよい。
【0483】
次に、絶縁膜1005を成膜した。絶縁膜1005はCVD法により、厚さが300nm
の酸化窒化シリコン膜を成膜した。酸化窒化シリコン膜は、成膜ガスをシラン5sccm
および亜酸化窒素1000sccmとし、圧力を133.30Paとし、成膜電力を35
W(13.56MHz)とし、電極間距離を20mmとし、基板温度を325℃として成
膜した。
【0484】
次に、加熱処理を行い、絶縁膜1004、絶縁膜1005から水、窒素、水素等を脱離さ
せると共に、絶縁膜1004に含まれる酸素の一部を酸化物半導体膜へ供給した。ここで
は、酸素雰囲気で、450℃、1時間の加熱処理を行った。
【0485】
次に、レジストマスクを形成し、ドライエッチング法により絶縁膜1004および絶縁膜
1005に開口部1010をもうけた。ドライエッチング工程はICP装置を用いて行っ
た。ICP装置の処理室に導入するエッチングガスは三フッ化メタンを流量22.5sc
cm、ヘリウムを127.5sccmおよびメタンを5sccmとする条件を用いた。ま
た、処理室内の圧力は3.5Pa、ICP電力は475W、バイアス電力は300Wとし
た。
【0486】
次に、スパッタリング法を用いて絶縁膜の表面および開口部1010に厚さ150nmの
導電膜1007を成膜した。導電膜1007はチタンを用いた。チタンの成膜条件は、ア
ルゴンを流量20sccmとし、圧力を0.1Paとし、電源電力(DC)を12kWと
し、基板とターゲット間の距離を400mmとし、基板温度を室温とした。
【0487】
次に、レジストマスクを形成し、ドライエッチング法により導電膜1007を加工し、電
極1007aと電極1007bを形成した。電極1007aと電極1007bについては
後述する。ドライエッチング工程はICP装置を用いて行った。ICP装置の処理室に導
入するエッチングガスは三塩化ホウ素を60sccm、塩素を20sccmとする条件を
用いた。また、処理室内の圧力は2.0Pa、ICP電力は350W、バイアス電力は2
0Wとした。その後、窒素雰囲気で、150℃、12分の熱処理を行った。
【0488】
以上のようにして、試料A、試料Bおよび比較例である試料Cを作製した。
【0489】
次に、作製した試料A、試料Bの抵抗値を測定した。図30(A)に、測定に用いた素子
の上面図を示す。酸化物半導体膜1003は島状に形成されている。電極1007aと電
極1007bは732μmの間隔をあけて配置されている。図30(B)には電極100
7a、電極1007bと、絶縁膜1004及び絶縁膜1005の開口部1010との関係
を示す。
【0490】
電極1007aと電極1007bに端子を当て、抵抗値を測定した。試料A、試料Bおよ
び試料Cの抵抗値はそれぞれ、5.4×10[Ω]、1.5×10[Ω]、2.1×
10[Ω]であった。
【0491】
酸化物半導体膜1003にリンおよびホウ素を添加することにより、酸化物半導体膜10
03の抵抗を下げることができた。
【符号の説明】
【0492】
50 基板
52 絶縁膜
53 領域
56 酸化物半導体膜
68 絶縁膜
70 基板
72 絶縁膜
73 領域
73a 領域
76 酸化物半導体膜
77 領域
78 領域
79 領域
81 レジストマスク
82 レジストマスク
88 絶縁膜
101 基板
102 下地絶縁膜
103 酸化物半導体膜
104 ゲート絶縁膜
105 ゲート電極
106 絶縁膜
107 導電膜
107a ソース電極
107b ドレイン電極
121 絶縁膜
122 領域
131 レジストマスク
135 絶縁膜
136 酸化物半導体膜
151a 領域
151b 領域
151c 領域
151d 領域
181 チャネル長
182 チャネル幅
201 基板
202 下地絶縁膜
203 酸化物半導体膜
204 ゲート絶縁膜
205 ゲート電極
206 絶縁膜
207 導電膜
207a ソース電極
207b ドレイン電極
217a 端部
217b 端部
221 絶縁膜
222 領域
235 絶縁膜
236 酸化物半導体膜
251a 領域
251b 領域
251c 領域
251d 領域
251e 領域
301 基板
302 下地絶縁膜
303 酸化物半導体膜
304 ゲート絶縁膜
305 ゲート電極
306 絶縁膜
307 導電膜
307a ソース電極
307b ドレイン電極
308 サイドウォール絶縁膜
309 絶縁膜
321 絶縁膜
322 領域
351a 領域
351b 領域
351c 領域
351d 領域
401 基板
402 下地絶縁膜
403a 酸化物半導体膜
403b 酸化物半導体膜
403c 酸化物半導体膜
404 ゲート絶縁膜
405 ゲート電極
406 絶縁膜
407a ソース電極
407b ドレイン電極
408 絶縁膜
421 絶縁膜
431 レジストマスク
451a 領域
451b 領域
451c 領域
451d 領域
901 半導体膜
902 電子捕獲層
902a 第1の絶縁膜
902b 第2の絶縁膜
902c 第3の絶縁膜
903 ゲート電極
904 電子捕獲準位
905 電子
906 曲線
907 曲線
908 トランジスタ
909 容量素子
1001 基板
1002 絶縁膜
1003 酸化物半導体膜
1004 絶縁膜
1005 絶縁膜
1007 導電膜
1007a 電極
1007b 電極
1010 開口部
1141 スイッチング素子
1142 メモリセル
1143 メモリセル群
1189 ROMインターフェース
1190 基板
1191 ALU
1192 ALUコントローラ
1193 インストラクションデコーダ
1194 インタラプトコントローラ
1195 タイミングコントローラ
1196 レジスタ
1197 レジスタコントローラ
1198 バスインターフェース
1199 ROM
8000 テレビジョン装置
8001 筐体
8002 表示部
8003 スピーカー部
8100 警報装置
8101 マイクロコンピュータ
8200 室内機
8201 筐体
8202 送風口
8203 CPU
8204 室外機
8300 電気冷凍冷蔵庫
8301 筐体
8302 冷蔵室用扉
8303 冷凍室用扉
8304 CPU
9700 電気自動車
9701 二次電池
9702 制御回路
9703 駆動装置
9704 処理装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35