(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】食品生地片の成形装置
(51)【国際特許分類】
A21C 11/10 20060101AFI20241007BHJP
A21C 11/16 20060101ALI20241007BHJP
【FI】
A21C11/10 B
A21C11/16 A
(21)【出願番号】P 2022160045
(22)【出願日】2022-10-04
【審査請求日】2023-11-15
(31)【優先権主張番号】P 2021176004
(32)【優先日】2021-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000115924
【氏名又は名称】レオン自動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121762
【氏名又は名称】杉山 直人
(74)【代理人】
【識別番号】100126767
【氏名又は名称】白銀 博
(72)【発明者】
【氏名】関 実
(72)【発明者】
【氏名】白井 宙絵
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 育利
【審査官】西村 賢
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第03314381(US,A)
【文献】欧州特許出願公開第03395174(EP,A1)
【文献】特開昭62-134066(JP,A)
【文献】国際公開第2016/199642(WO,A1)
【文献】実開昭62-024679(JP,U)
【文献】実公昭29-000997(JP,Y1)
【文献】特開平06-054641(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21C 1/00-15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製菓製品用の食品生地片の成形装置であって、
前記成形装置は食品生地の押出装置と前記食品生地から前記食品生地片を切断する切断装置を含み、
前記押出装置は、食品生地通路を含み、
前記食品生地通路は、食品生地流れ方向に対し直交する横断面が下流側に向かって縮小する上流部通路と、前記上流部通路の下流端の上流部出口に連通し、
前記押出装置の押出口まで横断面形状を同一にする下流部通路
と、
前記上流部通路の上流に前記食品生地の流れを整える整流部材を含み、
前記整流部材は、前記食品生地通路を横断するように配置される薄板状のフィルタであり、前記フィルタは複数の孔が穿設され、
前記下流部通路の食品生地流れ方向の長さは、前記押出口の最大直線距離より長いことを特徴とする。
【請求項2】
前記押出装置は、押出ノズルを含み、前記下流部通路は前記押出ノズルに形成されることを特徴とする、請求項1に記載の成形装置。
【請求項3】
さらに、前記上流部通路は前記押出ノズルに形成されることを特徴とする、請求項2に記載の成形装置。
【請求項4】
前記下流部通路の食品生地流れ方向の長さは、前記上流部通路の食品生地流れ方向の長さより長いことを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の成形装置。
【請求項5】
前記食品生地通路の内側に、第二食品生地を押出す第二食品生地の押出ノズルを備えることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の成形装置。
【請求項6】
前記第二食品生地の押出ノズルの押出口は、前記下流部通路の内側に配置されることを特徴とする、
請求項5に記載の成形装置。
【請求項7】
前記切断装置は、前記食品生地から前記食品生地片を切断する切断刃と、前記切断刃を初期位置から前進させ、その後、下方に移動させて、さらに、初期位置に復帰させる切断刃移動機構を含むことを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の成形装置。
【請求項8】
前記切断刃は、超音波カッタであることを特徴とする、
請求項7に記載の成形装置。
【請求項9】
前記押出装置と前記切断装置とを組み合わせるための固定機構と、前記押出装置と前記切断装置とが組み合わされたことを検出する検出装置を備え、前記検出装置が検出信号を発信するときに前記押出装置と前記切断装置を駆動可能に制御する制御装置を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルから押出される食品生地を切断し食品生地片を成形する装置に係り、さらに詳細には、機構がシンプルであって、かつ十分な厚さの均一度を有する食品生地片を成形することのできる食品生地片の成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、クッキーなどの食品において、幾何学形状や動物の顔などを模したデザイン菓子が製造され、そのような食品生地をノズルから押出して切断し食品生地片を成形する装置は、これまでに様々な提案がされている。
特許文献1に開示された装置は、押出装置と切断装置を備え、押出装置は食品生地を下方に向かって連続的に押出すノズルを備え、切断装置は、食品生地から食品生地片に切断する切断刃と、切断刃を初期位置から前進させてから下降させて初期位置に復帰させる切断刃移動機構と、切断刃の前進方向に進行する搬出コンベアを備えた装置である。
【0003】
特許文献2に開示された装置は、一対の絞り出しロールと生地抜型を備える生地ホッパと、無端ベルトと、切断カッタを備え、抜型と無端ベルトとの間隙を製菓製品の厚みに設定できるように生地ホッパと無端ベルトとをそれぞれ昇降する昇降機構を備え、所定厚みに絞り出された製菓生地を切断するカッタを抜型に近接して往復動するように設け、生地ホッパと無端ベルトが製菓材料絞り出し時に製品厚みだけ間隙をあけ、カッタによる切断行程までその間隙を維持する制御機構を備えた装置である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2016/199642号
【文献】特開昭59-151829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の装置は、機構はシンプルであるものの、押出ノズルから押出した食品生地を切断して食品生地片に成形する際に、十分な厚さの均一度を有する食品生地片を成形することが出来ないという問題があった。
特許文献2の装置は、ある程度の厚さの均一度を有する製菓製品を成形することができるものの、製菓材料を絞り出すときに、生地ホッパと無端ベルトの間の距離を製品厚みと同じになるように生地ホッパと無端ベルトの上下方向位置を制御する機構を備える必要があり、構造が極めて複雑で装置自体が大きくなり、装置の取扱いが困難であるといった問題があった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためのものであり、押出装置から押出される食品生地を切断装置で切断して食品生地片に成形する際に、機構がシンプルであって、かつ十分な厚さの均一度を有する食品生地片を成形することのできる成形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、製菓製品用の食品生地片の成形装置であって、
前記成形装置は食品生地の押出装置と前記食品生地から前記食品生地片を切断する切断装置を含み、
前記押出装置は、食品生地通路を含み、
前記食品生地通路は、食品生地流れ方向に対し直交する横断面が下流側に向かって縮小する上流部通路と、前記上流部通路の下流端の上流部出口に連通し、
前記押出装置の押出口まで横断面形状を同一にする下流部通路と、
前記上流部通路の上流に前記食品生地の流れを整える整流部材を含み、
前記整流部材は、前記食品生地通路を横断するように配置される薄板状のフィルタであり、前記フィルタは複数の孔が穿設され、
前記下流部通路の食品生地流れ方向の長さは、前記押出口の最大直線距離より長いことを特徴とする。
【0008】
また、前記押出装置は、押出ノズルを含み、前記下流部通路は前記押出ノズルに形成されることを特徴とする。
【0009】
また、さらに前記上流部通路は前記押出ノズルに形成されることを特徴とする。
【0010】
また、前記下流部通路の食品生地流れ方向の長さは、前記上流部通路の食品生地流れ方向の長さより長いことを特徴とする。
【0011】
また、前記食品生地通路の内側に、第二食品生地を押出す第二食品生地の押出ノズルを備えることを特徴とする。
【0012】
また、前記第二食品生地の押出ノズルの押出口は、前記下流部通路の内側に配置されることを特徴とする。
【0013】
また、前記切断装置は、前記食品生地から前記食品生地片を切断する切断刃と、前記切断刃を初期位置から前進させ、その後、下方に移動させて、さらに、初期位置に復帰させる切断刃移動機構を含むことを特徴とする。
【0014】
また、前記切断刃は、超音波カッタであることを特徴とする。
【0015】
また、前記押出装置と前記切断装置とを組み合わせるための固定機構と、前記押出装置と前記切断装置とが組み合わされたことを検出する検出装置を備え、前記検出装置が検出信号を発信するときに前記押出装置と前記切断装置を駆動可能に制御する制御装置を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、成形装置の機構をシンプルなものにした上で、押出装置から押出される食品生地を切断装置で切断して食品生地片に成形する際に、十分な厚さの均一度を有する食品生地片を成形することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る成形装置の概略的な正面図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係るノズルユニットの概略的な部分断面図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係る押出ノズルの押出口形状を例示した概略的な平面図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態に係る成形装置による成形工程を示した概略的な断面図である。
【
図5】従来の成形装置による成形工程を示した概略的な断面図である。
【
図6】本発明の第2の実施形態に係る成形装置の概略的な正面図である。
【
図7】本発明の第2の実施形態に係るノズルユニット(重合ノズル)の概略的な部分断面図である。
【
図8】本発明の第2の実施形態に係る成形装置による成形工程を示した概略的な断面図である。
【
図9】本発明の第3の実刑形態に係る成形装置の概略的な正面図である。
【
図10】本発明における食品生地片の厚さの均一度の定義を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の第1の実施形態に係る成形装置1について、
図1乃至
図3にて説明する。以下の説明において、既に公知の構成についての詳細な説明は省略する。
【0019】
成形装置1は、食品生地Dを切断して薄い食品生地片Pを成形する装置である。第1の実施形態では、食品生地Dをクッキー生地、食品生地片Pを薄い円板形状のクッキー生地片として説明する。成形装置1は、箱型のフレーム1Aと、押出装置2と、切断装置3と、搬送コンベヤ4と、制御装置9を備える。
【0020】
押出装置2は、食品生地Dを連続的に下方に押し出す装置であり、フレーム1Aの上部に配置される食品生地Dの供給装置2Aと、フレーム1Aの前面に配置されるノズルユニット2Bを備える。供給装置2Aは、内側底部に回転自在に配置されたスクリュー(図示せず)を含むホッパ2Cと、ホッパ2Cの下流に連通するポンプ2Dを備える。ホッパ2Cとポンプ2Dは、フレーム1Aに着脱自在に取り付けられる。ポンプ2Dの出口はノズルユニット2Bの入口と連通している。ノズルユニット2Bは外筒2Fと押出ノズル2Eを備え、フレーム1Aに着脱自在に取り付けられる。ノズルユニット2Bには、ノズルユニット2Bの入口から押出口2Mまで食品生地Dの通路Tが形成される。押出ノズル2Eは外筒2Fの下に着脱自在に取り付けられる。
【0021】
押出ノズル2Eは中空の円筒形状であり、円筒形状の先端側に平面状の下面2Pが形成される。押出ノズル2Eは、食品生地Dの流れ方向Rの上流側から上流部通路2Gと、上流部通路2Gに連通する下流部通路2Hが形成され、食品生地Dの通路Tの一部である下流側部分を構成する。下面2Pと食品生地Dの通路T(食品生地Dの流れ方向R)は直交して配置される。下面2Pには、下流部通路2Hの先端である押出口2Mが形成される。
上流部通路2Gは、上流部入口2Kから下流部入口(上流部出口)2Lまで形成される。上流部入口2Kの食品生地Dの流れ方向Rに対し直交する横断面形状は直径S1の円形であり、下流部入口2Lの横断面形状は直径S2の円形である。直径S2は直径S1より小さく、上流部通路2Gは、食品生地Dの流れ方向Rに対する横断面形状が下流に向かって縮小する円錐台形状(テーパ形状)に形成される。この上流部通路2Gの食品生地Dの流れ方向Rの長さをL1とする。
押出口2Mは、食品生地片Pの平面視における形状に対応した形状であり、第1の実施形態では押出口2Mの形状は直径S2の円形である。
下流部通路2Hは、食品生地Dの流れ方向Rに対し直交する横断面が押出口2Mの形状を維持して押出口2Mから下流部入口2Lまで円筒形状を形成する。この下流部通路2Hの流れ方向Rの長さをL2とする。
【0022】
ここで、押出口2Mの周縁の一点とそれ以外の周縁の一点とを結ぶ直線距離が一番長い二点の間の直線距離を、押出口の最大直線距離と称するものとする。
第1の実施形態では、
図3(a)に示すように、押出口2Mの形状は円形であるので、押出口2Mの最大直線距離は直径S2である。
それに限らず、押出口2Mの形状は食品生地片Pの形状に応じて、円形以外であってもよい。例えば、
図3(b)に示すように、押出口2Mの形状が長方形の場合、押出口2Mの最大直線距離は対角線S2の長さである。また、
図3(c)に示すように、押出口2Mの形状が星形の場合、押出口2Mの最大直線距離は
図3(c)に示す2点を結ぶ距離2Sである。
【0023】
第1の実施形態では、上流部通路2Gの流れ方向の長さL1は下流部通路2Hの長さL2より短く形成されている。また、下流部通路2Hの長さL2は押出口2Mの最大直線距離である直径S2より長く形成されている。
【0024】
外筒2F内部において食品生地Dの通路Tの押出ノズル2Eの上流には、食品生地Dの通路Tを横断するように整流部材であるフィルタ11が配置される。フィルタ11は、食品生地Dの速度や密度を均一に整流して下流に送るものである。フィルタ11は、円形で薄板状の部材であり、食品生地Dが通過する孔11Aが複数穿設されている。複数の孔11Aは同じ直径の孔であり、フィルタ11の中心から同心円状に配置されている。
第1の実施形態では、フィルタ11の上流側の通路Tの横断面面積と複数の孔11Aの合計した開口面積の比率は、おおよそ、2対1である。フィルタ11の形状はこれに限られるものではなく、食品生地の性状に応じて、孔11Aの形状や個数や大きさ、及び配置を選択することができる。また、孔11Aに替えて網状のフィルタでもよい。
【0025】
切断装置3は、押出ノズル2Eの押出口2Mから押出される食品生地Dから食品生地片Pを切断する装置である。
切断装置3は、超音波カッタ3Aと、移動機構3Bと、基台3Cを含む。超音波カッタ3Aは、超音波振動するホーンである切断刃3Dと振動子3Eを一体的に備えている。切断刃3Dは刃先3Hを備える。移動機構3Bは、超音波カッタ3Aを前後に往復させる前後動機構3Fと、超音波カッタ3Aを昇降させる昇降機構3Gを備える。前後動機構3Fはクランク機構を備え、昇降機構3Gはカム機構を備える。前後動機構3Fと昇降機構3Gは、駆動モータMにより同期して作動する。切断刃3Dは、前後動機構3Fと昇降機構3Gによって、初期位置から押出ノズル2Eの下面2Pに沿って前進し、その後、下方に移動して、さらに、初期位置に復帰する動作をする。従って、切断刃3Dは、食品生地Dをその流れ方向Rに対して直交する方向に切断する。基台3Cには、押出装置2と切断装置3を結合して組み立てるための固定機構3Kが備えられる。固定機構3Kは、ノズルユニット2Bの押出ノズル2Eの外周を挟むように固定するものである。切断装置3の構成は既知であるので、その詳細な説明を省略する。
【0026】
押出装置2と切断装置3には、それらが組み合わされたことを検出する検出装置3Lが備えられている。検出装置3Lは、センサー式やスイッチ式などの公知の装置でよい。切断装置3が押出装置2に組み合わされた場合には、検出装置3Lが制御装置9に検出信号を発信して検知状態となり、制御装置9が成形装置1(押出装置2と切断装置3)を駆動可能に制御する。反対に、切断装置3と押出装置2が分離した場合には、検出装置3Lが非検知状態となり、制御装置9が各部の起動を停止する。検出装置3Lを備えることは、安全性の見地から有用である。
【0027】
搬送コンベヤ4は、押出ノズル2Eの下方に配置され、コンベヤベルト4Aを無端回動して食品生地片Pを搬送方向Yに搬送するベルトコンベヤである。第1の実施形態では、押出ノズル2Eの下面2Pと搬出コンベヤ4の搬送面4Bは平行に配置されている。また、切断刃3Dの前進方向と搬送コンベヤ4の搬送方向Yは同じ方向である。搬送コンベヤ4の構成は既知であるので、その詳細な説明を省略する。
【0028】
次に、第1の実施形態に係る成形装置1による食品生地片Pの成形工程について、
図1、
図2及び
図4にて説明する。
【0029】
押出装置2のホッパ2Cに食品生地Dを投入し押出装置2を駆動して、食品生地Dをホッパ2Cからポンプ2Dを経由してノズルユニット2B内の通路Tに送る。食品生地Dはノズルユニット2Bの上部にある屈曲した通路Tを通過する際に場所によって移動速度が異なり、密度に疎密が生じるようになる。ポンプ2Dから送られた食品生地Dは、フィルタ11の上流側の面11Bに当接し、流れが阻害される。流れが阻害された食品生地Dは、後続の食品生地Dに押圧されて圧力が上昇し、孔11Aを通過してフィルタ11の下流へ押出される。このとき、食品生地Dは全面にわたって均等に圧力を受けている。そのため、食品生地Dは、ほぼ全ての孔11Aからほぼ均一に細紐状で押出される。従って、食
品生地Dは速度や密度が均一な状態に整流されて押出ノズル2Eに向けて送られる。
【0030】
食品生地Dは、押出ノズル2Eの上流部入口2Kから上流部通路2Gを通過して下流部入口(上流部出口)2Lに向かって送られる。その後、食品生地Dは、下流部入口2Lから下流部通路2Hを通過して、押出口2Mから押出される(
図4(a)参照)。
上述したように、上流部通路2Gは下流部入口2Lに向かって横断面が縮小するテーパ形状になっている。そのため、複数の細紐状で上流部入口2Kから侵入する食品生地Dは、上流部通路2Gを通過する際に圧縮されて圧力が上昇し再度結着する。
食品生地Dは、上流部通路2Gを通過する際に圧縮されるため、下流部通路2Hに入る際には弾性変形している。食品生地Dは、下流部通路2Hを通過する間に、この弾性変形が減少し、その後、押出口2Mより押出される。そのため、押出口2Mから押出される食品生地Dは、半径方向に膨らむことがなく、押出口2Mとほぼ同じ形状で押出される(
図4(b)参照)。
食品生地Dの弾性変形が減少するには、下流部通路2Hの流れ方向の長さL2が押出口2Mの最大直線距離である直径S2より長いことが望ましい。
そして、下流部通路2Hの流れ方向の長さL2が押出口2Mの最大直線距離である直径S2の2倍より長いと、さらにその効果が高まる。
【0031】
また、押出ノズル2Eは、食品生地Dに対する摩擦係数の小さい材料を使用することが望ましい。これにより、特に下流部通路2Hでの食品生地Dへの壁面抵抗が低減され、壁面抵抗による食品生地Dの流れ方向Rの横方向での速度差が生じにくくなり、食品生地Dは押出口2Mで全面がほぼ同じ速度で押出される。その結果、食品生地Dは押出口2Mから先端が平面のまま押出される(
図4(b)参照)。
【0032】
その後、押出口2Mから押出される食品生地Dを切断装置3の切断刃3Dで所望の厚さに切断して、食品生地片Pが成形される。
切断工程の初期状態において、切断刃3Dは初期位置で待機している。初期位置では、切断刃3Dの刃先3Hは押出ノズル2Eの下面2Pの下方にわずかな間隔を空けて配置される。このとき、刃先3Hと下面2Pとの間隙は1mm以下、好ましくは0.3~0.5mm に設定される。
切断刃3Dは、初期位置から下面2Pに沿って前進端まで水平に移動し、押出された食品生地Dから食品生地片Pに切断する。切断が終了して、前進端まで移動した切断刃3Dは、押出される食品生地Dの下降速度より速い速度で最下降位置まで下降し初期位置に復帰する。そのため、切断刃3Dは連続的に押出される食品生地Dに接触せずに初期位置に復帰することができるので、食品生地片Pの形状を変形させることがない。
食品生地片Pは、前進する切断刃3Dの推進力により搬送方向Yに沿って移動しながら落下し、搬送装置4の搬送面4B上に載置される。このとき、食品生地片Pは、水平方向に移動しながら落下するため同方向に進行する搬送面4Bに載置される際に変形が防止される。搬送ベルト4Aに載置された食品生地片Pは、搬送方向Yに搬送される。
【0033】
食品生地Dは、上述のように押出口2Mの形状を維持し、先端が平面のまま押出された状態で切断装置3にて切断されるため、切断された食品生地片Pは厚さをほぼ均一に成形することができる(
図4(c)参照)。
【0034】
図5の(a)~(c)は、従来の装置(例えば特許文献1の装置)で押出口から食品生地を押出し食品生地片に切断する工程の概略図である。
従来の装置のように下流部通路2Hの長さが充分に長くない場合、上流部通路2Gを通過する際に圧縮され下流部通路2Hに入る際に弾性変形している食品生地Dは、下流部通路2Hを通過する間に弾性変形が減少しないまま、押出口2Mより押出される。そのため、食品生地Dは押出口2Mから押出される際に半径方向に膨らむ(
図5(b)参照)。
このとき食品生地Dは、その中心部が周辺部より速く下方に押出されるため、中央部が下方に膨らんだ状態で押出されて切断される。そのため、切断された食品生地片Pは、中央部が厚く周辺部が薄い形状になる(
図5(c)参照)。
切断された食品生地片Pは、下面の中央部が膨らんだ形状で搬送コンベヤ4の搬送面4Bに着地する。食品生地片Pは搬送中に搬送面4Bから浮いていた周辺部が下がり、下面が搬送面4Bに沿って平面になり、上面の中央部が膨らんだ形状になってしまい、食品生地片Pの外観の美観を損ねていた。
【0035】
次に、本発明の第2の実施形態に係る成形装置21について、
図6及び
図7にて説明する。上記にて説明した構成については同じ符号を付し、重複する説明は省略する。
成形装置21は、第一の食品生地D1と第二の食品生地D2を含む食品生地Dを切断し薄い食品生地片P2を成形する装置である。第2の実施形態における食品生地片P2は、平面視において第二食品生地D2の周囲を第一食品生地D1で囲った薄い円板形状のクッキー生地片として説明する。
【0036】
成形装置21は、箱型のフレーム1Aと、食品生地Dの押出装置22と、切断装置3と、搬送コンベヤ4と、制御装置9を備える。
押出装置22は、第一の食品生地D1を送給する第一供給装置2Aと、第二の食品生地D2を送給する第二供給装置22Aと、それらに連通するノズルユニットである重合ノズル22Bを備える。
第二供給装置22Aは、内側底部に回転自在に配置されたスクリュー(図示せず)を含むホッパ22Cと、ホッパ22Cの下流に連通するポンプ22Dを備える。ホッパ22Cとポンプ22Dは、フレーム1Aに着脱自在に取り付けられる。
重合ノズル22Bは、外筒22Fとその同心円状の内側に内筒22Gを備える。
ポンプ22Dの出口は重合ノズル22Bの入口と連通していて、重合ノズル22Bの入口から外筒22Fと内筒22Gの間の空間を経由して押出口2Mまで、第一食品生地D1の通路T1を形成している。また、ポンプ22Dの出口は内筒22Gの入口と連通していて、重合ノズル22Bの入口から内筒22Gの内部を経由して内筒22Gの出口部分に配置された押出ノズル22Eの押出口22Mまで、第二食品生地D2の通路T2を形成している。
【0037】
押出ノズル22Eは、上流部通路22Kと、上流部通路22Kに連通する下流部通路22Hが形成され、食品生地Dの通路T2の一部である下流側部分を構成する。下面22Pには、下流部通路22Hの先端である押出口22Mが形成される。
上流部通路22Kは、上流部入口22Lから下流部入口(上流部出口)まで形成される。上流部入口22Lの食品生地D2の流れ方向R2の横断面形状は直径S3の円形であり、下流部入口22Nの横断面形状は直径S4の円形である。直径S4は直径S3より小さいので、上流部通路22Kは、食品生地D2の流れ方向R2に対する横断面が下流に向かって縮小する円錐台形状(テーパ形状)に形成される。この上流部通路22Kの食品生地D2の流れ方向R2の長さをL3とする。
押出口22Mは、平面視における食品生地片P2の形状に対応した形状をしている。第2の実施形態では押出口22Mの形状は直径S4の円形である。
下流部通路22Hは、食品生地D2の流れ方向R2の横断面が押出口22Mの形状を維持して押出口22Mから下流部入口22Nまで円筒形状を形成する。この下流部通路22Hの流れ方向R2の長さをL4とする。また、押出ノズル22Eの下面22Pと押出ノズル2Eの下面2Pの距離をL5とする。
【0038】
通路T1の押出ノズル2Eの上流側には整流部材であるアジテータ31が配置される。アジテータ31は、通路T1を通過する第一の食品生地D1の速度や密度を均一な状態に整流して、押出ノズル2Eに送る。
【0039】
ここで使用するアジテータ31は、通路T1の横断面内において回転可能に配置された円環状部材であり、アジテータ31の内径側であって食品生地が通過する領域には撹拌部材となる複数の板状又は棒状のフィンが設けられ、アジテータ31の外径側にはギアが一体的に設けられている。 このギアは、押出ノズル2Eの外部に設けられた駆動ギアに噛み合い、駆動ギアの回転によりアジテータ31のフィンが通路T1の横断面内において回転するようになっている。
【0040】
第2の実施形態では、整流部材としてアジテータを配置するよう説明したが、第1の実施形態のフィルタを配置してもよい。また、第二の食品生地D2の通路T2には整流部材を配置していないが、生地の性状によっては、第1の実施形態のフィルタ11を内筒22Gの通路T2の途中に配置してもよい。
【0041】
次に、第2の実施形態に係る成形装置21による食品生地片Pの成形工程について、
図7及び
図8(a)~(c)にて説明する。
【0042】
第一供給装置2Aから第一の食品生地D1と、第二供給装置22Aから第二の食品生地D2が重合ノズル22Bに送られる。第一の食品生地D1は、通路T1を通ってアジテータ31で速度や密度を均一な状態に整流されて押出ノズル2Eに送られる。第二の食品生地D2は、通路T2を通って押出ノズル22Eに送られる。第二の食品生地D2は、押出口22Mから第一の食品生地D1の内側に押出され、重合して食品生地Dとして押出口2Mに向かって下流部通路2H内を送られる。
押出口22Mは下流部通路2Hの内側に配置されているため、押出口22Mの周囲の第一の食品生地D1は圧力が上昇している状態である。その第一の食品生地D1の内部に第二の食品生地D2を押出すため、押出ノズル22Eの下面22Pと押出ノズル2Eの下面2Pの距離L5を通過する間に第一の食品生地D1と第二の食品生地D2は密着し、層状の食品生地Dとして押出口2Mに向かって送られる(
図8(a)参照)。
【0043】
第1の実施形態と同様に、層状の食品生地Dは、上流部通路2Gを通過する際に圧縮されるため、下流部通路2Hに入る際には弾性変形している。食品生地Dは、下流部通路2Hを通過する間に、この弾性変形が減少し、その後、押出口2Mより押出される。そのため、押出口2Mから押出される食品生地Dは、半径方向に膨らむことがなく、押出口2Mとほぼ同じ形状で押出される。また、第1の実施形態と同様に、食品生地Dは押出口2Mの全体でほぼ同じ速度で押出されるので、中央部が膨らむこともない(
図8(b)参照)。
押出口2Mから押出される食品生地Dを切断装置3で所望の厚さに切断して、食品生地片P2が成形される。食品生地Dは、上記の状態で切断装置3にて切断されるため、切断された食品生地片P2は厚さをほぼ均一に成形することができる(
図8(c)参照)。
切断された食品生地片P2は、搬送コンベヤ4で搬送方向Yに搬送される。
【0044】
次に、本発明の第3の実施形態に係る成形装置41について
図9にて説明する。上記にて説明した構成については同じ符号を付し、重複する説明は省略する。
成形装置41は、食品生地Dから薄い食品生地片Pを切断する装置である。
成形装置41は、箱型のフレーム1Aと、食品生地Dの押出装置42と、切断装置43と、搬送コンベヤ4と、制御装置9を備える。
【0045】
押出装置42は、食品生地Dを連続的に斜め下方に押し出す装置であり、フレーム1Aの上部に配置される食品生地Dの供給装置22Aと、フレーム1Aの前面にノズルユニットであるパイプ42Bを備える。パイプ42Bは、ポンプ22Dの出口から搬送コンベヤ4の搬送面4Bの上方付近まで配置され、食品生地Dの通路Tを形成している。通路Tの出口部分であり、パイプ42Bの出口部分には押出ノズル2Eが配置される。また、食品生地Dの通路Tの押出ノズル2Eの上流には、整流部材であるフィルタ11が配置されている。第3の実施形態では、押出ノズル2Eの下面2P(押出口2M)は搬送面4Bに対して傾斜して配置される。そのため、押出される食品生地Dは搬送面4Bに対して斜め下方に向かって押出される。
【0046】
切断装置33は、押出ノズル2Eの押出口2Mから搬送面4Bに対して斜め下方に向かって押出される食品生地Dから食品生地片Pを切断する装置である。
切断装置33は、第1の実施形態の切断装置3と同様の構成であるが、切断刃3Dが食品生地Dを切断するときの前進方向は、傾斜して配置される押出ノズル2Eの下面2Pに沿った方向である。切断刃3Dの動作も第1の実施形態の切断装置3と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0047】
第3の実施形態のような構成の成形装置でも、第1の実施形態や第2の実施形態と同様の効果が得られ、押出ノズル2Eの押出口2Mから押出される食品生地Dは、押出口2Mの形状を維持し、先端が平面のまま押出された状態で切断装置3にて切断されるため、切断された食品生地片Pは厚さをほぼ均一に成形することができる
【0048】
本発明の実施形態に係る成形装置の説明は概ね上記のとおりであるが、これに限らず特許請求の範囲において種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0049】
食品生地Dの通路Tを形成するものとして、第1の実施形態のノズルユニットや、第2の実施形態の重合ノズル2Bや、第3の実施形態のパイプ42Bを例示したが、食品生地Dの通路Tを形成することができれば、これら以外の構成とすることも可能である。
また、第2の実施形態では二種類の食品生地を使用して食品生地片を成形するものとして説明したが、押出装置の供給装置を増設して、三種類以上の食品生地を使用することも可能である。
【0050】
また、上記の実施形態では切断装置の切断刃を超音波カッタとして説明したが、これに限らず、切断刃を平刃や切断用ワイヤーとすることも可能である。
さらに、切断装置は食品生地をその流れ方向に直交する方向に切断する装置として説明したが、これに限らず、食品生地の流れ方向に対して直角以外の角度の方向に切断することも可能である。この場合、押出ノズルの下面は流れ方向に対して直角以外の角度に傾斜し、切断刃はその下面に沿って前進して食品生地を切断することが望ましい。その場合でも、食品生地は押出口で全面がほぼ同じ速度で押出されるので、十分な厚さの均一度を有する食品生地片を成形することができる。
【0051】
次に、本発明に係る食品生地片の成形装置の開発において、切断された食品生地片の厚さの均一性を評価するために行なった食品生地の切断評価試験結果について説明する。
【0052】
食品生地の切断評価試験において使用した食品生地片の成形装置は、以下に説明する事項を除き、第1の実施形態に係る成形装置1において説明した装置を使用し、食品生地Dとしてクッキー生地を使用した。 また、切断された食品生地片Pの形状が薄い円板形状となるようにするために、押出ノズル2Eの押出口2Mの形状は円形とした。
【0053】
食品生地の切断評価試験においては、押出ノズル2Eの上流部通路長さL1、下流部通路長さL2、上流部入口直径S1、押出口最大直線距離S2の寸法を種々変えた押出ノズルを7種類(No.1~No7)製作し、試験に供した。
食品生地の切断評価試験に供したNo.1~No7の押出ノズルの諸元は表1に示す通りである。
【0054】
【0055】
食品生地の切断評価試験では、7種類の押出ノズル毎に20個の食品生地片を成形すると共に、成形後に焼成を行ない、成形後の食品生地片の各々の厚さの均一性、および焼成後の食品生地片の各々の厚さの均一性の評価を行なった。
【0056】
ここでは、食品生地片の厚さの均一性を×、△、〇、◎で評価することとし、[食品生地片の厚さの均一な領域の最大寸法]/[食品生地片の最大寸法]X100(%)の値を厚さの均一度と定義し、厚さの均一度が80%以上であれば均一性が◎、厚さの均一度が60~79%であれば均一性が〇、厚さの均一度が30~49%であれば均一性が△、そして厚さの均一度が29%以下であれば均一性が×と定義する。
【0057】
ここで、食品生地片の形状が円形、長方形、星形の場合の[食品生地片の厚さの均一な領域の最大寸法]をα、[食品生地片の最大寸法]をβとし、
図10に示す寸法として定義する。
【0058】
食品生地の切断評価試験の結果を表2に示す。なお、表2に示す食品生地の切断評価試験においては、整流部材としてのフィルタやアジテータは使用していない。
【表2】
【0059】
表2に示す食品生地の切断評価試験結果から[下流部通路長さL2]/[押出口最大直線距離S2]>1、あるいは[下流部通路長さL2]/[上流部通路長さL1]>1となれば、成形後の食品生地片のみならず、焼成後の食品生地片においても60%以上の厚さの均一度が得られるという効果を奏することが明らかになった。
言い換えれば、[下流部通路長さL2]を[押出口最大直線距離S2]よりも大きくし、あるいは[下流部通路長さL2]を[上流部通路長さL1]よりも大きくすることにより、成形後の食品生地片のみならず、焼成後の食品生地片においても60%以上の厚さの均一度が得られるという効果を奏することが明らかになった。
【0060】
なお、食品生地片の成形装置において整流部材としてのフィルタやアジテータを併用することにより、食品生地片の厚さの均一度は更に向上することが確認された。 また、食品生地片の形状が長方形や星形の場合でも、食品生地片の形状が円形の場合と同様な効果が得られることが確認された。
【符号の説明】
【0061】
1、21、41 成形装置
2、22、42 押出装置
3、43 切断装置
4 搬送コンベヤ
9 制御装置
2B、22B ノズルユニット(重合ノズル)
2E、22E 押出ノズル
2G、22K 上流部通路
2H、22H 下流部通路
2K、22L 上流部入口
2L、22N 上流部出口(下流部入口)
2M、22M 押出口
3A 超音波カッタ
3B 移動機構
3D 切断刃
11 フィルタ
11A 孔
31 アジテータ
L1 上流部通路長さ
L2 下流部通路長さ
S1 上流部入口直径
S2 押出口最大直線距離
T 食品生地の通路
D 食品生地
P 食品生地片