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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/16 20060101AFI20241007BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20241007BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20241007BHJP
【FI】
G03G15/16
G03G21/00 398
G03G15/00 303
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022177089
(22)【出願日】2022-11-04
(65)【公開番号】P2024067203
(43)【公開日】2024-05-17
【審査請求日】2023-09-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123559
【弁理士】
【氏名又は名称】梶 俊和
(74)【代理人】
【識別番号】100177437
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 英子
(72)【発明者】
【氏名】榛葉 武士
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 慎理
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-078252(JP,A)
【文献】特開2015-184340(JP,A)
【文献】特開2016-100919(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/16
G03G 21/00
G03G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1極性の電圧を生成する第1電圧生成手段と、
前記第1極性とは逆の第2極性の電圧を生成する第2電圧生成手段と、
前記第1電圧生成手段により生成された電圧、及び、前記第2電圧生成手段により生成された電圧が供給される第1部材と、
前記第2電圧生成手段により生成された電圧が供給される第2部材と、
前記第1電圧生成手段により生成された出力を検知する第1検知手段と、
前記第2電圧生成手段により生成された出力を検知する第2検知手段と、
前記第1検知手段の検知結果に基づいて前記第1電圧生成手段の定電圧制御を行う第1制御手段と、
前記第2検知手段の検知結果に基づいて前記第2電圧生成手段の定電圧制御を行う第2制御手段と、
前記第1制御手段及び前記第2制御手段を制御する第3制御手段と、
を備え、
前記第1制御手段は、前記第1電圧生成手段及び前記第2電圧生成手段から前記第1部材に電圧が供給される第1状態では前記第1電圧生成手段を第1駆動周波数で駆動し、前記第2電圧生成手段から前記第1部材への電圧の供給が停止される第2状態では前記第1電圧生成手段を前記第1駆動周波数とは異なる第2駆動周波数で駆動し、
前記第3制御手段は、前記第1状態から前記第2状態に移行する際に、前記第2制御手段による前記第2電圧生成手段の駆動を停止させるとともに、前記第1制御手段による前記第1電圧生成手段の駆動を停止させ、前記第3制御手段が前記第1電圧生成手段を前記第2駆動周波数で駆動することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記第3制御手段は、前記第2電圧生成手段の出力が0Vになると、前記第1制御手段による前記第1電圧生成手段の駆動を再開させることを特徴とする請求項に記載の画像形成装置。
【請求項3】
トナー像が形成される感光体と、
前記感光体上の前記トナー像が転写される中間転写体と、
前記中間転写体上の前記トナー像を記録材に転写する転写手段と、
前記転写手段により前記記録材へ前記トナー像が転写された後に前記中間転写体上に残ったトナーを回収する清掃部材と、
を備え、
前記清掃部材は、前記第1部材であることを特徴とする請求項1又は請求項に記載の画像形成装置。
【請求項4】
トナー像が形成される感光体と、
前記感光体上の前記トナー像が転写される中間転写体と、
前記中間転写体上の前記トナー像を記録材に転写する転写手段と、
前記記録材の搬送方向において前記転写手段よりも下流に配置され、前記記録材を前記転写手段から分離させる除電針と、
を備え、
前記除電針は、前記第2部材であることを特徴とする請求項1又は請求項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関し、例えば、電子写真方式を用いた画像形成装置等に用いられる高電圧電源装置及びそれを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を用いた画像形成装置の高電圧電源装置において、装置の小型化及びコストダウンを目的として、1つの高電圧電源の出力を複数の負荷に対して印加する構成がある。例えば、特許文献1では、負極性を出力する1つの高電圧電源から、2つの負荷に対して電圧を供給する構成が提案されている。ここで、2つの負荷は、中間転写ベルトクリーニング部材(以下、「ICLブラシ」という。)と、2次転写ローラである。また、1つの負荷に対して負極性の高電圧電源、及び、正極性の高電圧電源を接続する構成も提案されている。この構成においては、画像形成中は、ICLブラシに対して正極性を印加することで、中間転写ベルトから記録材へ転写されずに残ったトナーをICLブラシに回収する。画像形成終了後は、ICLブラシに対し負極性を印加することで、ICLブラシに回収したトナーを中間転写ベルトに吐き出し、廃トナー容器へトナーの回収を行う。
【0003】
また、例えば特許文献2では、負極性を出力する1つの高電圧電源から、3つの負荷に対して電圧を供給する構成が提案されている。3つの負荷は、ICLブラシ、2次転写ローラ、記録材を中間転写ベルトから分離するための除電針である。ここで、除電針に関しては、記録材の搬送方向の下流側にコロナ放電器を用いた除電手段を配置し、転写部から排出された直後の記録材に、コロナ放電で発生させた荷電粒子を照射することが開示されている。これにより、記録材を中間転写ベルトから分離している。このような構成の画像形成装置では、画像形成中にICLブラシに正極性の電圧を印加しトナーを回収しつつ、除電針に対しては負極性の電圧を印加し、記録材を中間転写ベルトから分離する制御を行う。ここで、負極性の電源は、除電針とICLブラシに接続されているため、ICLブラシには正極性の電圧と負極性の電圧とが印加されることとなる。以下、「正負重畳出力」という。このとき、ICLブラシに正極性の電圧を印加するために、負極性の電源から印加される電圧の分だけ、正極性の電圧の出力を大きくすることで、ICLブラシに所望の正極性の電圧を印加する制御が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-078252号公報
【文献】特開2015-184340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、画像形成中のICLブラシに対する正負重畳出力の制御において、正負重畳出力した状態から、負極性の電圧の印加を停止し、正負重畳出力を停止する際に、正極性の電源の制御が追従せずに、出力電圧にリップルが発生するといった課題がある。
【0006】
本発明は、このような状況のもとでなされたもので、正極性の電圧と負極性の電圧とを重畳して出力した状態から負極性の電圧の出力を停止する際に発生する出力電圧のリップルを低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明は、以下の構成を備える。
(1)第1極性の電圧を生成する第1電圧生成手段と、前記第1極性とは逆の第2極性の電圧を生成する第2電圧生成手段と、前記第1電圧生成手段により生成された電圧、及び、前記第2電圧生成手段により生成された電圧が供給される第1部材と、前記第2電圧生成手段により生成された電圧が供給される第2部材と、前記第1電圧生成手段により生成された出力を検知する第1検知手段と、前記第2電圧生成手段により生成された出力を検知する第2検知手段と、前記第1検知手段の検知結果に基づいて前記第1電圧生成手段の定電圧制御を行う第1制御手段と、前記第2検知手段の検知結果に基づいて前記第2電圧生成手段の定電圧制御を行う第2制御手段と、前記第1制御手段及び前記第2制御手段を制御する第3制御手段と、を備え、前記第1制御手段は、前記第1電圧生成手段及び前記第2電圧生成手段から前記第1部材に電圧が供給される第1状態では前記第1電圧生成手段を第1駆動周波数で駆動し、前記第2電圧生成手段から前記第1部材への電圧の供給が停止される第2状態では前記第1電圧生成手段を前記第1駆動周波数とは異なる第2駆動周波数で駆動し、前記第3制御手段は、前記第1状態から前記第2状態に移行する際に、前記第2制御手段による前記第2電圧生成手段の駆動を停止させるとともに、前記第1制御手段による前記第1電圧生成手段の駆動を停止させ、前記第3制御手段が前記第1電圧生成手段を前記第2駆動周波数で駆動することを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、正極性の電圧と負極性の電圧とを重畳して出力した状態から負極性の電圧の出力を停止する際に発生する出力電圧のリップルを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1~3のカラー画像形成装置の断面の概略を示す構成図
図2】実施例1~3の2次転写電源、ブラシ電源、除電針電源を示す図
図3】実施例1~3の画像形成装置のエンジン制御部の機能ブロック図
図4】実施例1の正負重畳出力を停止する場合のタイミングチャート
図5】実施例1の圧電トランスの周波数と電圧との関係を示す図
図6】実施例1の正負重畳出力を停止する場合のフローチャート
図7】実施例2の圧電トランスの周波数と電圧との関係を示す図
図8】実施例2の正負重畳出力を停止する場合のフローチャート
図9】実施例3の正負重畳出力を停止する場合のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態を、実施例により図面を参照しながら詳しく説明する。
【実施例1】
【0011】
[画像形成装置]
図1は画像形成装置の断面の要部の概略を示す図である。図1を用いて実施例1の画像形成装置の構成及び動作を説明する。画像形成装置は、第1~第4の画像形成ステーション60a、60b、60c、60dより構成される。なお、符号末尾のa、b、c、dは各色に対応している。また、第1はイエロー(以下、Yと称する)、第2はマゼンタ(以下、Mと称する)、第3はシアン(以下、Cと称する)、第4はブラック(以下、Bkと称する)のそれぞれの色に対応する。各ステーションは画像形成装置本体に対して交換可能になっている。なお、各ステーションには少なくとも感光ドラムが含まれていればよく、どの部材までを画像形成ステーションに含め交換可能とするかについては特に限定されるものでない。
【0012】
以下においては各ステーションの代表として第1の画像形成ステーション60a(Y)の動作を例に説明を行う。第1の画像形成ステーション60aは、感光体である感光ドラム1aを備え、感光ドラム1aの寿命に係る情報として、例えば使用開始からの感光ドラム1aの積算の回転数(以下、積算回転数という。)を記憶する記憶部材(例えばメモリタグ)を備えている。感光ドラム1aは、図1中の矢印の方向(反時計回り方向)に所定の周速度(プロセススピードともいう。)で回転駆動される。
【0013】
感光ドラム1aは、この回転過程で、帯電ローラ2aにより所定の極性の電位(以下、帯電電位という。)に一様に帯電される。次いで外部から供給される画像データ(画像信号)に基づく露光手段である露光装置3aのレーザー光6aの走査によって、画像部に相当する感光ドラム1aの表面を露光して電荷を除電し、感光ドラム1aの表面に電位(以下、露光電位という。)Vlを形成する。次いで、画像部である露光電位Vl部には、現像手段であるイエロー現像器4aに印加される電圧(以下、現像電圧という。)Vdcと露光電位Vlとの電位差によりトナーが現像され、可視化される。なお、実施例1の画像形成装置は、露光装置3aにより露光を行い、露光部に現像する反転現像方式の画像形成装置である。
【0014】
中間転写ベルト10は、張架部材11、12、13により張架され、感光ドラム1aと当接している。この中間転写ベルト10は、当接位置において、感光ドラム1aと同方向かつ略同一の周速度で回転駆動する。感光ドラム1a上(感光体上)に形成されたイエロー色のトナー像は、感光ドラム1aと中間転写ベルト10との当接部(以下、1次転写ニップ部という。)を通過する。その過程で、1次転写電源15aより1次転写ローラ14aに印加した電圧(以下、1次転写電圧という。)によって、中間転写ベルト10の上に転写される(1次転写)。感光ドラム1a表面に残留したトナーは、クリーニング手段であるクリーニング装置5aにより清掃、除去された後、上述した帯電以降の画像形成プロセスが繰り返し行われる。以下、同様にして第2色のマゼンタ色のトナー像(M)、第3色のシアン色のトナー像(C)、第4色のブラック色のトナー像(Bk)が形成され、中間転写ベルト10上(中間転写体上)に順次重ねて転写されて、4色の合成カラー画像が得られる。
【0015】
中間転写ベルト10上の4色のトナー像は、中間転写ベルト10と転写手段である2次転写ローラ20との当接部(以下、2次転写ニップ部という。)を通過する。この過程で、中間転写ベルト10上のトナー像は、2次転写電源21が2次転写ローラ20に印加した電圧(以下、2次転写電圧という。)によって、給紙手段である給紙ローラ50により給紙された記録材Pの表面に一括転写される(2次転写)。
【0016】
第2部材である除電針18は、2次転写ニップ部の記録材Pの排出側、すなわち、記録材Pの搬送方向において2次転写ローラ20の下流側に配設されている。除電針18は、除電針電源19によって印加される除電のための電圧(以下、除電電圧という。)により、2次転写ニップ部を通過した記録材Pの電荷を除電する。以下、単に、記録材Pを除電する、という。除電針18に印加される除電電圧は、2次転写ローラ20に印加する転写電圧と逆極性の電位とする。この除電針18によって、中間転写ベルト10に静電吸着している記録材Pの分離を促進させている。
【0017】
その後、未定着の4色のトナー像を担持した記録材Pは定着器30に導入され、そこで加熱及び加圧されることで4色のトナーが溶融混色して記録材Pに固定される。以上の動作により、フルカラーのトナー画像が記録材P上(記録媒体上)に形成される。また、中間転写ベルト10の表面に残留したトナーは、ブラシ電源17が第1部材であるブラシ16に印加した電圧(以下、ブラシ電圧という。)によって、ブラシ16に一時的に回収される。ブラシ16は中間転写ベルト10の清掃部材として機能する。
【0018】
その後、画像形成が終了すると、中間転写ベルト10上に残留したトナーを一時回収したときの電圧とは逆極性の電圧を、ブラシ16に印加することで、ブラシ16に一時回収したトナーを中間転写ベルト10上に移動させる(以下、吐き出す、ともいう。)。その後、中間転写ベルト10上に吐き出されたトナーは、中間転写ベルト10上から感光ドラム1aに転写され(すなわち、逆転写され)、クリーニング装置5aにより清掃、除去される。以降、特定の色の部材についての説明を行う場合を除き、色を表すa、b、c、dを省略する。
【0019】
[電源]
図2は、実施例1の画像形成装置の2次転写電源21、ブラシ電源17及び除電針電源19の構成を示す概略図である。図2は、高電圧制御部201、正電圧電源部200e、正電圧電源部200f、負電圧電源部200g、負電圧電源部200hで構成される。図1に記載した各電源との関係を以下に示す。
2次転写電源21 → 正電圧電源部200e+負電圧電源部200h
ブラシ電源17 → 正電圧電源部200f+負電圧電源部200g
除電針電源19 → 負電圧電源部200g
すなわち、負電圧電源部200gは、負電圧を除電針電源19及びブラシ電源17に出力している。
【0020】
高電圧制御部201は、図示しないROM、RAM内蔵のマイクロコンピュータによって制御され、2次転写ローラ20、ブラシ16及び除電針18に流れる電流及び電圧を検知し、2次転写ローラ20、ブラシ16及び除電針18に印加する電圧を制御する。
【0021】
(正電圧電源部200e)
正電圧電源部200eは、トランス駆動部251、フライバックトランスを有するトランス部202を有している。トランス部202は、コンデンサ254、フリーダ抵抗206を有している。2次転写電源21の正電圧電源部200eは、トランス部202で電圧を印加する構成である。トランス駆動部251は、トランス部202を駆動する駆動部であり、高電圧制御部201のD/Aポートから入力されるアナログ信号280(例えば、PWM信号)(「D/A入力」と図示)に従って、所定の周波数で駆動される。このトランス駆動部251には、トランスに入力する電圧を制御するための制御信号(PWM信号)と、周波数を指示するクロック信号281が入力される(「CLK入力」と図示)。トランス部202は、内部にコンデンサ254とブリーダ抵抗206とを有し、トランス駆動部251の制御によりオン状態となり、2次転写ローラ20に正電圧を印加する。ここでは、正電圧電源部200eとして、フライバックトランスを用いた回路構成について説明しているが、他の高電圧を生成する回路構成であってもよい。
【0022】
(正電圧電源部200f)
第1極性の電圧である正電圧を生成する第1電圧生成手段である正電圧電源部200fは、トランス駆動部242、圧電トランス210、ダイオード261、262、コンデンサ263、抵抗205を有している。ブラシ電源17の正電圧電源部200fは、正電源の圧電トランス210で電圧を印加する構成である。トランス駆動部252は、圧電トランス210を駆動する駆動部であり、高電圧制御部201のD/Aポートから入力される制御信号282(周波数設定信号)に基づく周波数で、圧電トランス210を駆動して所定の電圧を出力させる。圧電トランス210は、トランス駆動部252の制御によりオン状態となり、ブラシ16へ正電圧を印加する。ダイオード261、262、コンデンサ263は、圧電トランス210の出力を整流平滑する整流平滑回路を構成する。抵抗205は、ブリーダ抵抗である。
【0023】
(負電圧電源部200g、負電圧電源部200h)
ブラシ16及び除電針18の負電圧電源部200g及び2次転写ローラ20の負電圧電源部200hは、1つの負電源の圧電トランス204で電圧を印加する構成である。すなわち、負電圧電源部200g及び負電圧電源部200hは、トランス駆動部253、圧電トランス204を共有している。第1極性とは逆の第2極性の電圧である負電圧を生成する第2電圧生成手段である負電圧電源部200gは、さらに、整流平滑回路271を有し、整流平滑回路271はダイオード273、274、コンデンサ275を有している。負電圧電源部200hは、さらに、整流平滑回路272を有し、整流平滑回路272はダイオード276、277、コンデンサ278を有している。
【0024】
トランス駆動部253は、負電源用の圧電トランス204を駆動する駆動部であり、高電圧制御部201のD/Aポートから入力される制御信号283(周波数設定信号)に基づく周波数で、圧電トランス204を駆動して所定の電圧を出力させる。圧電トランス204の出力は、並列に接続された2つの整流平滑回路271、272を介することにより、2次転写ローラ20への電流経路とブラシ16及び除電針18への電流経路とを分離している。この構成により、電流検知回路237、207の接地されていない側の基準電圧Vref1と基準電圧Vref2の分離も行っている。
【0025】
圧電トランス204は、トランス駆動部253の制御によりオン状態となり、整流平滑回路271を介してブラシ16と除電針18へ負電圧を印加し、整流平滑回路272を介して2次転写ローラ20へ負電圧を印加する。整流平滑回路271は、ダイオード273、274、コンデンサ275から構成され、整流平滑回路272は、ダイオード276、277、コンデンサ278から構成され、それぞれ圧電トランス204からの出力を整流平滑する。抵抗234、235はブリーダ抵抗である。
【0026】
[2次転写電源、ブラシ電源、除電針電源の電流経路、電圧検知・電流検知]
2次転写電源21からの正電流(以下、2次転写正電流という。)は、次のように流れる。すなわち、トランス部202内のコンデンサ254のチャージポンプにより2次転写ローラ20、中間転写ベルト10、感光ドラム1aを経由して、感光ドラム1aのグランド(以下、GNDとする。)に流れ込む。そして、感光ドラム1aのGNDに流れ込んだ2次転写正電流は、電流検知回路207(「i2」と図示)のGNDから電流検知回路207、ブリーダ抵抗235を通り、トランス部202内のコンデンサ254に戻る。
【0027】
ブラシ電源17からの正電流(以下、ブラシ正電流という。)は、コンデンサ263のチャージポンプにより、ブラシ16、中間転写ベルト10、感光ドラム1aを経由して、感光ドラム1aのGNDに流れ込む。そして、感光ドラム1aのGNDに流れ込んだブラシ正電流は、電流検知回路237(「i1」と図示)のGNDから、電流検知回路237、ブリーダ抵抗234を通り、コンデンサ263に戻る。
【0028】
2次転写電源21からの負電流(以下、2次転写負電流という。)は、コンデンサ278のチャージポンプにより電流検知回路207、電流検知回路207のGNDに流れ込む。そして、電流検知回路207のGNDに流れ込んだ2次転写負電流は、感光ドラム1aのGNDから、感光ドラム1a、中間転写ベルト10、2次転写ローラ20、トランス部202内のブリーダ抵抗206を経由して、コンデンサ278に戻る。
【0029】
ブラシ電源17からの負電流(以下、ブラシ負電流という。)は、コンデンサ275のチャージポンプにより、電流検知回路237、電流検知回路237のGNDに流れ込む。そして、電流検知回路237のGNDに流れ込んだブラシ負電流は、感光ドラム1aのGNDから、感光ドラム1a、中間転写ベルト10、ブラシ16、ブリーダ抵抗205を経由して、コンデンサ275に戻る。
【0030】
同様に、除電針電源19からの負電流(以下、除電針負電流という。)は、コンデンサ275のチャージポンプにより、電流検知回路237、電流検知回路237のGNDに流れ込む。そして、電流検知回路237のGNDに流れ込んだ除電針負電流は、感光ドラム1aのGNDから、感光ドラム1a、中間転写ベルト10、記録材P、除電針18を経由して、コンデンサ275に戻る。
【0031】
電圧検知回路208(「V2」と図示)は、2次転写ローラ20への正電圧を抵抗分圧して、高電圧制御部201にフィードバックする(不図示)。第1検知手段である電圧検知回路238(「V1」と図示)は、ブラシ16への正電圧を抵抗分圧して、高電圧制御部201にフィードバックする(不図示)。高電圧制御部201は、電圧検知回路208、238の検知結果に基づいて正電源の定電圧制御を行う。第2検知手段である電圧検知回路258(「V3」と図示)は、負電圧を抵抗分圧し、高電圧制御部201にフィードバックする(不図示)。高電圧制御部201は、電圧検知回路258の検知結果に基づいて負電源の定電圧制御を行う。電流検知回路207、237は、それぞれ2次転写ローラ20、ブラシ16及び除電針18に流れる負荷電流を検知し、検知された負荷電流の電流値は、高電圧制御部201にフィードバックされる(不図示)。
【0032】
実施例1の構成では、ブラシ16の正電圧電源部200fと負電圧電源部200gは、互いに接続されている。そのため、正電圧電源部200fとともに負電圧電源部200gをオン状態にして出力電圧を重畳させる場合、正電圧電源部200fの基準電位は、負電圧電源部200gによって出力される負電圧の絶対値分だけ電位が下がる。
【0033】
すなわち、2次転写後に中間転写ベルト10上に残ったトナーを回収するために、ブラシ16に正極性の電圧を出力する場合、正電圧電源部200fは、負電圧電源部200gが出力する負電圧の絶対値分だけ大きな正電圧を出力する。具体的な例を挙げると、ブラシ電圧+1000Vと除電電圧-1000Vとを重畳して出力させたい場合には、正電圧電源部200fが+2000V(=1000V+|-1000V|)を出力するように制御する必要がある。
【0034】
[エンジン制御部]
図3は、画像形成装置としてのレーザプリンタのエンジン制御部に係る機能ブロック図である。コントローラ部302は、ホストコンピュータ301、エンジン制御部303と相互に通信が可能となっている。コントローラ部302は、ホストコンピュータ301から印刷データを受け取る(入力される)と、印刷データを展開し、画像を形成するための画像データへ変換する。そして、その画像データに基づいて露光するための4色分の露光用のビデオ信号を生成する。コントローラ部302は、ビデオ信号の生成が完了すると、エンジン制御部303のビデオインターフェイス部304に対し、印刷開始を指示する。
【0035】
エンジン制御部303は、図示しないROM、RAM内蔵のマイクロコンピュータを有し、コントローラ部302とシリアル通信によって情報を授受し、コントローラ部302から授受した情報に基づいて、以下に説明する制御を行う。ビデオインターフェイス部304は、コントローラ部302から印刷開始指示を受信すると、制御部305に印刷開始指示を送信する。制御部305は、受信した印刷開始指示に基づいて、アクチュエータ駆動部306により、各種アクチュエータを起動し、画像形成の準備を開始する。制御部305は、画像形成の準備が整うと、ビデオインターフェイス部304を介して画像形成準備完了をコントローラ部302に通知する。コントローラ部302は、画像形成準備完了を受信すると、エンジン制御部303から出力される垂直同期信号(以下、/TOP信号と称する)を基準に、ビデオインターフェイス部304にビデオ信号の送信を開始する。制御部305は、画像形成制御部307によりビデオインターフェイス部304で受信したビデオ信号に基づいて画像形成を行う。
【0036】
エンジン制御部303は、画像形成制御部307と、高電圧制御部201により、感光ドラム1上に現像したトナー像を、中間転写ベルト10を経由して、記録材Pへ転写する。このとき、高電圧制御部201は、記録材Pの位置に合わせて、正電圧電源部200e、正電圧電源部200f、負電圧電源部200g、負電圧電源部200hを含む高電圧ユニット308を制御するタイミングを決定する。これにより、高電圧制御部201は、2次転写ローラ20、ブラシ16、除電針18に印加する、正電圧と負電圧とを重畳した電圧(以下、正負重畳電圧という。)を制御する。
【0037】
具体的には、高電圧制御部201は、トナー像を記録材Pへ転写するために、記録材Pの到達タイミングに合わせて2次転写ローラ20に正電圧を印加する。高電圧制御部201は、正電圧電源部200eに対し、CLK制御部323で周波数を指示するクロック信号281と、PWM制御部321でトランス部202に供給する電源電圧を制御するための制御信号280(PWM信号)を出力する。高電圧制御部201は、正電圧電源部200eの電圧検知結果をA/Dコンバータ322で変換し、PID制御部320で、ターゲット電圧と検知結果の電圧との差分をフィードバックすることで、定電圧制御を行う。ここで、PID制御部320は、フィードバック制御の1つであるPID制御(Proportional(比例)-Integral(積分)-Differential(微分)制御)を行う。PID制御は公知の制御であり詳細な説明を省略する。なお、フィードバック制御は、PID制御に限定されず、P制御、PI制御、PD制御や、他のフィードバック制御であってもよい。PID制御部330、PID制御部340についても同様である。
【0038】
また、高電圧制御部201は、中間転写ベルト10から記録材Pへ転写しきれなかったトナーをブラシ16に回収するために、トナーの到達タイミングに合わせてブラシ16に正電圧を印加する。高電圧制御部201は、正電圧電源部200fに対し、PWM制御部331で電圧を制御するための制御信号282(周波数設定信号)を出力する。制御信号282により、圧電トランス210の駆動周波数が制御される。高電圧制御部201は、正電圧電源部200fの電圧検知結果をA/Dコンバータ332で変換し、PID制御部330で、ターゲット電圧と検知結果の電圧との差分をフィードバックすることで、定電圧制御を行う。PID制御部330は、第1制御手段として機能する。
【0039】
さらに、高電圧制御部201は、中間転写ベルト10に静電吸着している記録材Pの分離を促進するために、記録材Pの到達タイミングに合わせて、除電針18に負電圧を印加する。高電圧制御部201は、負電圧電源部200gに対し、PWM制御部341で電圧を制御するための制御信号283(周波数設定信号)を出力する。制御信号283により、圧電トランス204の駆動周波数が制御される。高電圧制御部201は、負電圧電源部200gの電圧検知結果をA/Dコンバータ342で変換し、PID制御部340で、ターゲット電圧と検知結果の電圧との差分をフィードバックすることで、定電圧制御を行う。PID制御部340は、第2制御手段として機能する。
【0040】
この際、負電圧電源部200gは、ブラシ16にも接続されており(343)、負電圧を印加するため、ブラシ16に印加される正電圧は、負電圧分下がることとなる。正電圧電源部200fは、負電圧分下がった電圧を電圧検知結果として検知し、高電圧制御部201は、正電圧電源部200fの電圧検知結果をA/Dコンバータ332で変換し、PID制御部330にフィードバックする。これにより、電圧が低下した分、正電圧電源部200fからの出力を大きくする。これにより、正電圧電源部200fは、第1状態である正負重畳出力中にもブラシ16に所望の正電圧を印加する。
【0041】
その後、高電圧制御部201は、記録材Pが除電針18を通過すると、除電針18に印加する負電圧電源部200gを停止し、負電圧印加を停止する。この際、負電圧電源部200gは、ブラシ16にも接続されており(343)、負電圧を印加しているため、高電圧制御部201は、ブラシ16の電圧制御を正負重畳出力から、正電圧出力に切り替えることとなる。この際、PID制御部330によるPID制御が収束するまでの間、出力電圧がリップルした状態となる。
【0042】
[正負重畳出力の停止]
図4は、高電圧制御部201で、ブラシ16に対し、正負重畳出力状態から正負重畳出力を停止した状態(第2状態)(以下、正負重畳出力停止状態ともいう。)に移行する場合のタイミングチャートである。図4では、ブラシ16に対し、印加する正電圧ターゲットが複数ある場合について、出力電圧のリップルを軽減する制御方法について説明する。なお、複数の正電圧ターゲットは、V1、V2とする。図4(a)は、横軸に時間(t)、縦軸にブラシ16に印加される正電圧(電圧V)(以下、ブラシ正電圧という。)を示す。図4(b)は、横軸に時間(t)、縦軸にブラシ16に印加される負電圧(電圧V)(以下、ブラシ負電圧という。)を示す。
【0043】
PID制御部330は、第1電圧である正電圧ターゲットV1を生成するように正電圧電源部200fを駆動することが可能である。このときPID制御部330は、正負重畳出力状態で駆動周波数を第1値である周波数f1’とし、正負重畳出力停止状態で駆動周波数を第1値とは異なる第2値である周波数f1とする。また、PID制御部330は、第1電圧とは異なる第2電圧である正電圧ターゲットV2を生成するように正電圧電源部200fを駆動することが可能である。このときPID制御部330は、正負重畳出力状態で駆動周波数を第3値である周波数f2’とし、正負重畳出力停止状態で駆動周波数を第3値とは異なる第4値である周波数f2とする。
【0044】
(正電圧ターゲットV1のとき)
まず、正電圧ターゲットV1の場合について説明する。高電圧制御部201は、時刻t0で正電圧の立ち上げを開始し、PID制御部330は、ターゲット電圧V1となるように、PWM制御部331の制御信号282(周波数設定信号)を周波数f1となるように制御する。次に、高電圧制御部201は、記録材Pが除電針18に到達する時刻t2のタイミングに合わせて、時刻t1で、負電圧の立ち上げを開始する。PID制御部340は、ターゲット電圧V3となるように、PWM制御部341の制御信号(周波数設定信号)を周波数f3となるように制御する。この際、ブラシ16にも負電圧が印加されるため、PID制御部330は、PWM制御部331の制御信号282(周波数設定信号)を周波数f1から周波数f1’となるように制御することで、ブラシ16に印加される正電圧をV1に保つ。
【0045】
その後、高電圧制御部201は、記録材Pが除電針18を通過したタイミング時刻t3で負電圧印加を停止する。このときPID制御部330は、負電圧の立ち下げカーブ433に連動して、PWM制御部331の制御信号282(周波数設定信号)を第1駆動周波数である周波数f1’から、第1駆動周波数とは異なる第2駆動周波数である周波数f1に戻すように制御する。しかし、負電圧の応答速度を示す立ち下げカーブ433よりも、PID制御部330の応答速度が遅いため、正電圧にはリップル413が発生してしまう。そこで、実施例1では、負電圧のターゲット電圧V3の印加を停止する際に、周波数f1’におけるPID制御部330の応答速度を考慮して、次のように制御する。すなわち、時刻t4で負電圧が0Vになるように、立ち下げカーブ433よりも緩やかな立ち下げカーブ434(破線)となるように制御する。これにより、正電圧のリップル発生を、破線で示す414のように軽減する。
【0046】
(正電圧ターゲットV2のとき)
次に、正電圧ターゲットV2の場合について説明する。ターゲット電圧V2は、ターゲット電圧V1よりも低い電圧である(V2<V1)。ここで、ターゲット電圧V2となる周波数について、正負重畳出力開始前は、周波数f2(第2駆動周波数、第4値)であり、正負重畳出力時は、周波数f2’ (第1駆動周波数、第3値)である。一方、処理の流れ(立ち上げ開始から正負重畳出力を開始し、その後正負重畳出力を停止するまで)は同じであるため説明を省略する。
【0047】
ターゲット電圧がV2の場合、周波数f2’におけるPID制御部330の応答速度は、周波数f1’のときよりも遅い場合を示している。この場合、高電圧制御部201は、時刻t5で負電圧ターゲットV3が0Vになるように、立ち下げカーブ434よりも緩やかな立ち下げカーブ(点線435)で制御する。これにより、正電圧のリップル発生(423)を軽減する(425)。
【0048】
[圧電トランスの周波数と電圧の関係]
図5(a)、(b)は、圧電トランスの周波数と電圧との関係を示した図であり、横軸に周波数f、縦軸に電圧Vを示している。なお、圧電トランスの周波数とは、圧電トランスを駆動する際の周波数であり、駆動周波数、制御周波数ともいう。図5(a)は、ブラシ16の正電圧電源部200fの制御周波数と電圧との関係を示し、図5(b)は、ブラシ16の負電圧電源部200gの制御周波数と電圧の関係を示す。以下では、圧電トランスの周波数と電圧との関係から、周波数f1’、周波数f2’におけるPID制御部330の応答速度の算出方法について説明する。
【0049】
まず、図5(a)、(b)は、制御に使用する圧電トランスの電圧出力領域550、551を示している。電圧出力領域550、551においては、周波数fの値が大きくなるに従って出力電圧の絶対値は小さくなり、周波数fの値が小さくなるに従って出力電圧の絶対値は大きくなる。具体的には、制御に使用する圧電トランスの電圧出力領域550では、以下の式(1)、式(2)の関係が成り立つ。
電圧V1>電圧V2 式(1)
周波数f1<周波数f2 式(2)
【0050】
ここで、ブラシ16に印加される正電圧ターゲットV1と、正負重畳出力停止時のブラシ16の正電圧電源部200fの周波数と電圧は、以下の式(3)の関係が成り立つ。ここで、関数F正2_f_v(周波数f)は、正電圧電源部200fの周波数と電圧の特性を示す関数である。
正負重畳出力停止時の正電圧ターゲットV1
=正電圧電源部200fの正負重畳出力停止時の正電圧ターゲットV1
=F正2_f_v(周波数f1) 式(3)
【0051】
また、ブラシ16に印加される正電圧ターゲットV1と、正負重畳出力時のブラシ16の正電圧電源部200fの周波数と電圧、及び、負電圧電源部200gの周波数と電圧は、次のような関係が成り立つ。すなわち、正電圧電源部200fの周波数と電圧の特性を示す関数F正2_f_v(周波数f)と、負電圧電源部200gの周波数と電圧の特性を示す関数F負1_f_v(周波数f)を使用すると、以下の式(4)の関係が成り立つ。
正負重畳出力時の正電圧ターゲットV1
=正電圧電源部200fの正負重畳出力時の正電圧ターゲットV1
+V3+負電圧電源部200gの正負重畳出力時の負電圧ターゲットV3
=F正2_f_v(周波数f1’)+F負1_f_v(周波数f3) 式(4)
【0052】
上記式(4)から、正負重畳出力状態から正負重畳出力停止状態に切り替える場合、高電圧制御部201は、次のように制御する。すなわち、高電圧制御部201は、周波数f1と周波数f1’との差分Δf1を正電圧電源部200f用のPID制御部330の応答速度のパラメータとし、負電圧の立ち下げ時の負電圧電源部200gの周波数を制御する。
【0053】
具体的には、高電圧制御部201は、負電圧電源部200g用のPID制御部340のパラメータを差分Δf1に基づいて変更し、負電圧のターゲット電圧を0Vにする。これにより、高電圧制御部201は、PWM制御部341の制御信号283(周波数設定信号)を緩やかな立ち下げカーブ434となるように周波数f3から周波数を制御する。
【0054】
ここで、ブラシ16に印加される正電圧ターゲットV2の場合も同様に、正負重畳出力状態から正負重畳出力停止状態に切り替える場合、次のように制御される。すなわち、高電圧制御部201は、周波数f2と周波数f2’との差分Δf2に基づいて、負電圧電源部200g用のPID制御部340のパラメータを変更し、緩やかな立ち下げカーブ435となるように周波数を制御する。
【0055】
上記により、ブラシ16に印加される正電圧ターゲットが異なり、正負重畳出力時と正負重畳出力停止時の制御周波数の差分Δf1と差分Δf2が異なる場合においても、出力電圧のリップルを軽減することができる。
【0056】
[電圧制御]
図6は、正負重畳出力状態から正負重畳出力を停止する場合の電圧制御を示すフローチャートである。具体的に、ステップ(以下、Sとする。)601~S611は、印刷シーケンス(正負重畳出力開始と停止のタイミング)を示し、S621、S622は、正負重畳出力開始時の詳細制御を示し、S631~S636は、正負重畳出力停止時の詳細制御を示す。なお、エンジン制御部303は、タイマー(不図示)を有しており、タイマーを参照することにより各タイミングを制御しているものとする。
【0057】
(印刷シーケンス)
S601でエンジン制御部303は、制御部305に印刷開始を指示するか否かを判断する。なお、エンジン制御部303は、コントローラ部302から印刷開始指示を受信すると印刷開始を指示する。S601でエンジン制御部303は、印刷開始を指示しないと判断した場合、処理をS601に戻し、印刷開始を指示すると判断した場合、処理をS602に進める。
【0058】
S602でエンジン制御部303は、受信した印刷開始指示に基づいて、制御部305によりアクチュエータを起動し、画像形成の準備を開始する。S603でエンジン制御部303は、制御部305による画像形成の準備が完了したか否かを判断する。S603でエンジン制御部303は、画像形成の準備が完了していないと判断した場合、処理をS603に戻し、完了したと判断した場合、処理をS604に進める。
【0059】
S604でエンジン制御部303は、画像形成準備完了をコントローラ部302に通知し、画像形成を開始する。S605でエンジン制御部303は、画像形成開始に合わせて、高電圧制御部201に高電圧制御開始を指示する。高電圧制御部201は、高電圧制御開始指示に基づいて、ブラシ16と2次転写ローラ20に正電圧の印加を開始する。
【0060】
S606でエンジン制御部303は、記録材Pの先端が2次転写ローラ20に到達したか否かを判断する。S606でエンジン制御部303は、記録材Pの先端が2次転写ローラ20に到達していないと判断した場合、処理をS606に戻し、到達したと判断した場合、処理をS607に進める。
【0061】
S607でエンジン制御部303は、記録材Pの先端が2次転写ローラ20に到達したタイミング(S606 Y)を基準に、高電圧制御部201によって除電針18に負電圧の印加を開始する。このとき、除電針18に負電圧を印加する負電圧電源部200gは、ブラシ16にも接続されているため、高電圧制御部201は、正電圧電源部200fと負電圧電源部200gの両方を出力した正負重畳出力状態で印加電圧を制御することとなる。
【0062】
S608でエンジン制御部303は、記録材Pの後端が2次転写ローラ20を通過した(到達した)か否かを判断する。S608でエンジン制御部303は、記録材Pの後端が2次転写ローラ20を通過していないと判断した場合、処理をS608に戻し、通過したと判断した場合、処理をS609に進める。
【0063】
S609でエンジン制御部303は、記録材Pの後端が2次転写ローラ20を通過したタイミング(S608 Y)を基準に、高電圧制御部201によって除電針18に印加している負電圧を停止する。このとき、ブラシ16に対する電圧の制御は、正負重畳出力状態から正負重畳出力を停止する状態に移行することとなる。S610でエンジン制御部303は、1枚の印刷制御を終了し、次のページの印刷があるか否かを判断し、次のページの印刷があると判断した場合、処理をS611に進める。S610でエンジン制御部303は、次のページの印刷がないと判断した場合、処理を終了する。
【0064】
S611でエンジン制御部303は、次のページの印刷を開始し、処理をS604に戻す。以降、エンジン制御部303は、次のページの印刷がなくなるまで、上述したフローチャートの処理S604~S609を繰り返し、次のページの印刷指示がなくなると、印刷動作を終了する。
【0065】
(正負重畳出力開始時の詳細制御)
次に、S607の負電圧印加開始(正負重畳出力開始)の詳細制御をS621、S622に示す。S621で高電圧制御部201は、正負重畳出力開始前に、ブラシ16に対する正電圧電源部200fの制御周波数f1の値をRAM等の記憶部(不図示)に記憶する。S622で高電圧制御部201は、負電圧の立ち上げを開始し、負電圧電源部200gの制御周波数をf3に近づけて、負電圧の出力をターゲット電圧V3に近づける。また、高電圧制御部201は、負電圧の出力に連動して、正電圧電源部200fの制御周波数をf1からf1’に近づけることで、正電圧の出力をターゲット電圧V1に保つ。
【0066】
(正負重畳出力停止時の詳細制御)
次に、S609の負電圧印加停止(正負重畳出力停止)の詳細制御をS631~S636に示す。S631で高電圧制御部201は、正負重畳出力停止前に、ブラシ16に対する正電圧電源部200fの制御周波数f1’の値をRAM等の記憶部(不図示)に記憶する。S632で高電圧制御部201は、正負重畳出力開始時のS621の処理で記憶した周波数f1とS631の処理で記憶した周波数f1’との差分Δf1を計算する。S633で高電圧制御部201は、負電圧電源部200g用のPID制御部340のパラメータを、S632で計算した差分Δf1に基づいて変更する(負電圧用PIDパラメータ変更)。S634で高電圧制御部201は、負電圧のターゲット電圧を0Vにする。これにより高電圧制御部201は、緩やかな立ち下げカーブ434となるように周波数f3から周波数を制御する。
【0067】
S635で高電圧制御部201は、負電圧の絶対値が、周波数出力を停止する電圧の値よりも小さくなったか否かを判断する。高電圧制御部201は、負電圧の絶対値が周波数出力を停止する電圧の値よりも小さくなっていないと判断した場合、処理をS653に戻し、小さくなったと判断した場合、処理をS636に進める。S636で高電圧制御部201は、負電圧用の周波数出力を停止し、負電圧印加(正負重畳出力)を終了する。これにより、ブラシ16に印加される正電圧のリップルを軽減した状態で、正負重畳出力を停止する。なお、上述したフローチャートでは、正電圧のターゲット電圧をV1として説明したが、正電圧のターゲット電圧がV2の場合には、上述の周波数f1、f1’、差分Δf1を、周波数f2、f2’、差分Δf2と読み替えればよい。
【0068】
以上のように、PID制御部340は、正電圧電源部200f及び負電圧電源部200gからブラシ16に電圧が供給される第1状態から、負電圧電源部200gからブラシ16への電圧の供給が停止される第2状態に移行する際に、次の制御を行う。すなわち、PID制御部340は、第1状態から第2状態に移行する際のPID制御部330による定電圧制御の応答速度に基づいて、負電圧電源部200gを制御する。
【0069】
以上述べたことにより、従来制御では、正負重畳出力状態から正負重畳出力を停止する際に、リップルが発生していた場合においても、これを解決することが可能となる。実施例1では、正電圧電源部200fのPID制御部330の応答速度を負電圧制御のPID制御部340のパラメータにフィードバックすることで、リップルを軽減する方法について説明した。なお、上述の実施例1は、PID制御を使用した場合について説明したが、他のフィードバック制御やフィードフォワード制御においても、これらの発明の範囲から排除するものではない。なお、実施例1は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでなく、また実施例1で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須のものとは限らない。
【0070】
以上、実施例1によれば、正極性の電圧と負極性の電圧とを重畳して出力した状態から負極性の電圧の出力を停止する際に発生する出力電圧のリップルを低減することができる。
【実施例2】
【0071】
実施例1では、正負重畳出力状態から正負重畳出力を停止する際に、正電圧電源部200fのPID制御部330の応答速度を負電圧制御のPID制御部340のパラメータにフィードバックすることで、出力電圧のリップルを軽減する方法について説明した。ここで、正電圧のリップルは、ターゲット電圧によらず軽減されるが、負電圧の立ち下げカーブは、正電圧のターゲット電圧毎にばらつく(図5(b)434、435)。そのため、記録材Pの狙った位置で負電圧印加の停止ができない可能性がある。そこで、この状況を鑑みて、実施例2では、リップルを軽減しつつ、負電圧の立ち下げカーブのばらつきを抑える方法について説明する。
【0072】
[圧電トランスの周波数と電圧の関係]
図7は、図5(a)の圧電トランスの周波数と電圧との関係について、電力出力領域550(図5参照)における、正電圧の電圧V1から電圧V1+V3、電圧V2から電圧V2+V3の部分を拡大したものである。まずは、負電圧の立ち下げカーブのばらつきについて説明する。
【0073】
高電圧制御部201は、負電圧電源部200g用のPID制御部340のパラメータを、差分Δf1に基づき決定する。ここで、図7に示すように、Δf1とΔf2は、圧電トランスの周波数fと電圧Vの特性に依存しており、以下の式(5)の関係が成り立つ。
Δf1<Δf2 式(5)
上記、式(5)に示すように、Δf1とΔf2とは異なる値であるため(Δf1≠Δf2)、負電圧の立ち下げカーブは、図4に示す立ち下げカーブ434と立ち下げカーブ435のようにばらつく。
【0074】
次に、実施例1の負電圧電源部200g用のPID制御部340のパラメータへのフィードバックに加え、上述したばらつき要因を考慮し、正電圧電源部200f用のPID制御部330のパラメータへのフィードバックも行う。これにより、負電圧の立ち下げカーブのばらつきを抑える方法を説明する。
【0075】
まず、図7において、正負重畳出力停止時のターゲット電圧V1と正負重畳出力時の電圧V1+V3との電圧差V3と、制御周波数の差Δf1について、比率(=応答ゲインa1)を用いると、以下の式(6)の関係が成り立つ。
応答ゲインa1=電圧差V3/Δf1 式(6)
【0076】
また、正負重畳出力停止時のターゲット電圧V2と正負重畳出力時の電圧V2+V3の電圧差V3と、制御周波数の差Δf2について、比率(=応答ゲインa2)を用いると以下の式(7)の関係が成り立つ。
応答ゲインa2=電圧差V3/Δf2(521) 式(7)
【0077】
上記、式(6)、式(7)において、電圧差V3は、同じ値であるため、以下の式(8)の関係が成り立つ。
応答ゲインa1×Δf1=応答ゲインa2×Δf2 式(8)
上記、式(8)から、Δf2を求めると以下の式(9)になる。
Δf2=(応答ゲインa1/応答ゲインa2)×Δf1
=応答ゲイン比率a1_2×Δf1 式(9)
上記、式(9)から、差分Δf2は、差分Δf1に応答ゲイン比率a1_2(=a1/a2)を掛けたものとなる。そこで、ターゲット電圧V2の場合は、負電圧電源部200g用のPID制御部340のパラメータへのフィードバックを、次のようにする。すなわち、差分Δf2からΔf1に置き換えて、応答ゲイン比率a1_2を、正電圧電源部200f用のPID制御部330のパラメータへフィードバックする。これにより、負電圧の立ち下げカーブのばらつきを抑えることが可能となる。
【0078】
[電圧制御]
図8は、実施例2における、正電圧のターゲット電圧がV2の場合の、正負重畳出力状態から正負重畳出力を停止する場合のフローチャートである。ここで、印刷シーケンス(正負重畳出力開始と停止のタイミング)は、実施例1の図6のS601~S611と同じであるため省略する。S821、S822は、正負重畳出力開始時の詳細制御を示し、S831~S839は、正負重畳出力停止時の詳細制御を示す。
【0079】
(正負重畳出力開始時の詳細制御)
以下では、まず、図6のS607の負電圧印加開始(正負重畳出力開始)の詳細制御を説明する。S821で高電圧制御部201は、正負重畳出力開始前に、ブラシ16に対する正電圧電源部200fの制御周波数f2の値を記憶する。S822で高電圧制御部201は、負電圧の立ち上げ(印加)を開始する。高電圧制御部201は、負電圧電源部200gの制御周波数をf3に近づけて、負電圧の出力をターゲット電圧V3に近づける。また、高電圧制御部201は、負電圧の出力に連動して、正電圧電源部200fの制御周波数をf2からf2’に近づけることで、正電圧の出力をターゲット電圧V2に保つ。
【0080】
(正負重畳出力停止時の詳細制御)
次に、図6のS609の負電圧印加停止(正負重畳出力停止)の詳細制御を説明する。S831で高電圧制御部201は、正負重畳出力停止前に、ブラシ16に対する正電圧電源部200fの制御周波数f2’の値を記憶する。S832で高電圧制御部201は、正負重畳出力開始時のS821の処理で記憶した周波数f2とS831の処理で記憶した周波数f2’との差分Δf2を計算する。S833で高電圧制御部201は、応答ゲイン比率a1_2(=応答ゲインa1/応答ゲインa2)を計算する。なお、応答ゲインa1を求める際には、ターゲット電圧V1の制御の際に予め記憶しておいた周波数f1、f1’を用いるものとする。
【0081】
S834で高電圧制御部201は、負電圧電源部200g用のPID制御部340のパラメータを、S832で計算した差分Δf2の代わりに、予め求めた差分Δf1に基づいて変更する。S835で高電圧制御部201は、正電圧電源部200f用のPID制御部330のパラメータを、S833で計算した応答ゲイン比率a1_2の分、変更する。S836で高電圧制御部201は、負電圧のターゲット電圧を0Vにする。これにより高電圧制御部201は、ターゲット電圧がV2であっても、図4に示した緩やかな立ち下げカーブ434となるように周波数f3から周波数を制御する。
【0082】
S837で高電圧制御部201は、負電圧の絶対値が、周波数出力を停止する電圧の値よりも小さくなったか否かを判断する。S837で高電圧制御部201は、負電圧の絶対値が、周波数出力を停止する電圧の値よりも小さくなっていないと判断した場合、処理をS837に戻し、小さくなったと判断した場合、処理をS838に進める。S838で高電圧制御部201は、負電圧用の周波数出力を停止する。S839で高電圧制御部201は、正電圧電源部200f用のPID制御部330のパラメータを、S835で変更した応答ゲイン比率a1_2の分、もとに戻し、負電圧印加(正負重畳出力)を終了する。これにより、ブラシ16に印加される正電圧のリップルを軽減しつつ、負電圧の立ち下げカーブを、正電圧の出力ターゲット電圧V2に依存させずに、正負重畳出力を停止する。
【0083】
以上、PID制御部340は、正電圧電源部200fがターゲット電圧V2を生成している状態で、正負重畳出力状態から正負重畳出力停止状態に移行する際に、f1’(第1値)とf1(第2値)との差分(Δf1)に基づき負電圧電源部200gを制御する。PID制御部330は、正電圧電源部200fがターゲット電圧V2を生成している状態で、正負重畳出力状態から正負重畳出力停止状態に移行する際に、次のように制御する。すなわち、差分(Δf1)及び差分(Δf2)、具体的には応答ゲイン比率a1_2に基づき負電圧電源部200gを制御する。ここで、差分(Δf1)はf1’(第1値)とf1(第2値)と差分であり、差分(Δf2)はf2’(第3値)とf2(第4値)との差分である。
【0084】
以上述べたことにより、実施例1では、正負重畳出力停止時に、負電圧の立ち下げカーブが正電圧のターゲット電圧毎にばらついていたことに対し(図4、434、435)、実施例2では、次のような制御を行うことでばらつきを抑えることができる。すなわち、実施例2では、正電圧電源部200fのPID制御部330に、負電圧の立ち下げカーブのばらつきをフィードバックすることで、ばらつきを抑える方法について説明した。なお、実施例2は、PID制御を使用した場合について説明したが、他のフィードバック制御やフィードフォワード制御においても、これらの発明の範囲から排除するものではない。また、応答ゲインを一次式で近似した場合について説明したが、2次式で近似する等、他の近似をした場合においても、これらの発明の範囲から排除するものではない。なお、実施例2は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでなく、また実施例2で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須のものとは限らない。
【0085】
以上、実施例2によれば、正極性の電圧と負極性の電圧とを重畳して出力した状態から負極性の電圧の出力を停止する際に発生する出力電圧のリップルを低減することができる。
【実施例3】
【0086】
実施例1、2では、正負重畳出力状態から正負重畳出力を停止する際に、正電圧電源部200fのPID制御部330の応答速度を負電圧電源部200g用のPID制御部340のパラメータにフィードバックした。これにより、リップルを軽減する方法について説明した。実施例1、2では、正電圧のリップルを小さくするため、負電圧の立ち下げカーブを緩やかにする必要があり、負電圧が停止するまでに要する時間(以下、負電圧停止時間という。)が掛かってしまう。そこで、実施例3では、リップルを軽減しつつ、負電圧停止時間を短くする方法について説明する。
【0087】
実施例1、2で負電圧の立ち下げカーブが緩やかになるように制御したのは、次のような理由による。すなわち、正負重畳出力停止時に、PID制御部330が、正電圧電源部200f用の制御周波数を、正負重畳出力時の周波数f1’から正負重畳出力停止時の周波数f1に切り替える際の応答速度が律速となっているからである。そこで、実施例3では、正負重畳出力停止時に、高電圧制御部201は、PID制御部330を介さずに、予め記憶しておいた、正負重畳出力停止時の周波数f1を出力し、正電圧を制御することで、PID制御部330の応答速度分、負電圧停止時間を短くする。
【0088】
[電圧制御]
図9は、実施例3における、正負重畳出力状態から正負重畳出力を停止する場合のフローチャートである。ここで、図6で説明した印刷シーケンス(正負重畳出力開始と停止のタイミング)(S601~S611)と正負重畳出力開始時の詳細制御(S621、S622)は、実施例1と同じであるため省略する。以下では、実施例1と異なる部分(負電圧印加停止(正負重畳出力停止)(図6のS609)の詳細制御について説明する。
【0089】
(正負重畳出力停止時の詳細制御)
S931で第3制御手段である高電圧制御部201は、負電圧電源部200g用の周波数の出力を停止する。S932で高電圧制御部201は、正電圧電源部200f用のPID制御部330を停止する。S933で高電圧制御部201は、正負重畳出力開始前の図6のS621で記憶した正電圧電源部200f用の周波数f1を、PID制御部330を介さず、PWM制御部331の制御信号282(周波数設定信号)として出力する。
【0090】
S934で高電圧制御部201は、周波数制御の切り替えのための所定時間が経過したか否かを判断する。S934で高電圧制御部201は、所定時間が経過していないと判断した場合、処理をS934に戻し、所定時間が経過したと判断した場合、処理をS935に進める。ここで、所定時間は、例えば、S931のタイミングを基準として負電圧電源部200gから出力される電圧が0Vとなるまでの時間にすればよい。
【0091】
S935で、高電圧制御部201は、負電圧が0Vになった以降で、正電圧電源部200f用の制御をPID制御部330のPID制御に戻し、すなわち、PID制御部330による駆動を再開させて、処理を終了する。このように、高電圧制御部201は、正負重畳出力状態から正負重畳出力停止状態に移行する際に、PID制御部330による正電圧電源部200fの駆動を停止させ、高電圧制御部201が正電圧電源部200fを第2駆動周波数で駆動する。そして、高電圧制御部201は、負電圧電源部200gの出力が停止されると、PID制御部330による正電圧電源部200fの駆動を再開させる。なお、ターゲット電圧V2の場合も同様である。
【0092】
以上述べたことにより、実施例1、2では、正負重畳出力停止時に、負電圧の立ち下げカーブを緩やかにする必要があり、負電圧停止までに時間が掛かっていた。実施例3では、PID制御部330を介さずに正電圧を制御することで、負電圧停止時間を短くする方法について説明した。なお、実施例3は、制御周波数の出力停止時の負電圧の立ち下げカーブと、制御周波数の切替時の正電圧の切替カーブとが、近いことを前提としている。ここで、負電圧の立ち下げカーブと制御周波数の切替時の正電圧の切替カーブは、圧電トランスの個体ばらつきや、回路部品(抵抗、コンデンサなど)のばらつきの影響を受ける。このため、負電圧用の周波数の出力を停止するタイミング(S931)と、正電圧電源部200f用の周波数f1の出力を切り替えるタイミング(S933)を調整する場合も、これらの発明の範囲から排除するものではない。なお、実施例3は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでなく、また実施例3で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須のものとは限らない。
【0093】
以上、実施例3によれば、正極性の電圧と負極性の電圧とを重畳して出力した状態から負極性の電圧の出力を停止する際に発生する出力電圧のリップルを低減することができる。
【符号の説明】
【0094】
16 ブラシ
18 除電針
200f 正電圧電源部
200g 負電圧電源部
328、258 電圧検知回路
330、340 PID制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9