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特許7566862シナリオ類似度検索ベースのシナリオ自動生成システム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】シナリオ類似度検索ベースのシナリオ自動生成システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   B60W 50/00 20060101AFI20241007BHJP
   B60W 30/08 20120101ALI20241007BHJP
   B60W 30/14 20060101ALI20241007BHJP
   B60W 30/18 20120101ALI20241007BHJP
   B60W 40/04 20060101ALI20241007BHJP
   B60W 60/00 20200101ALI20241007BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20241007BHJP
【FI】
B60W50/00
B60W30/08
B60W30/14
B60W30/18
B60W40/04
B60W60/00
G08G1/00 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022210027
(22)【出願日】2022-12-27
(65)【公開番号】P2024080559
(43)【公開日】2024-06-13
【審査請求日】2022-12-27
(31)【優先権主張番号】10-2022-0166795
(32)【優先日】2022-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】503257778
【氏名又は名称】コリア エレクトロニクス テクノロジ インスティチュート
【住所又は居所原語表記】25,Saenari-ro,Bundang-gu,Seongnam-si,Gyeonggi-do 13509 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100083138
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100189625
【弁理士】
【氏名又は名称】鄭 元基
(74)【代理人】
【識別番号】100196139
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100199004
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 洋
(72)【発明者】
【氏名】パク チャンゲ
(72)【発明者】
【氏名】ミン キョンウオン
(72)【発明者】
【氏名】ソン ヘンソン
(72)【発明者】
【氏名】イ ソンヨン
(72)【発明者】
【氏名】シム ヨンボ
(72)【発明者】
【氏名】ソン ギホ
(72)【発明者】
【氏名】パク ジンマン
(72)【発明者】
【氏名】チョ ヨンコン
【審査官】藤村 泰智
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2022/0172606(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2022/0121550(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2022/0136930(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0179738(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0082034(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/00 ~ 60/00
G08G 1/00 ~ 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自律走行テストのためのシナリオDBから、クエリシナリオと類似するシナリオを検索するステップと、
検索されたシナリオの中から、選別条件に合致するシナリオのみをフィルタリングするステップと、
フィルタリングされたシナリオの構成要素をターゲット条件に合うように変換するステップと
を含むことを特徴とするシナリオ検索ベースのシナリオ自動生成方法。
【請求項2】
検索するステップは、
クエリシナリオとシナリオDBに保存されたシナリオとを比較し、類似度を算出するステップと、
算出された類似度を基準にシナリオを整列するステップと、
一定の基準以上の類似度を有するシナリオを選別するステップと
を含むことを特徴とする請求項1に記載のシナリオ検索ベースのシナリオ自動生成方法。
【請求項3】
類似度を算出するステップは、
シナリオから特徴値を抽出するステップと、
抽出された特徴値の間の類似度を算出するステップと
を含むことを特徴とする請求項2に記載のシナリオ検索ベースのシナリオ自動生成方法。
【請求項4】
抽出するステップは、
シナリオからシーンを選別するステップと、
選別されたシーンから特徴値を抽出するステップと
を含むことを特徴とする請求項3に記載のシナリオ検索ベースのシナリオ自動生成方法。
【請求項5】
抽出するステップは、
シナリオの構成要素を複数の群に区分するステップと、
区分された群から特徴値を抽出するステップと
を含むことを特徴とする請求項3に記載のシナリオ検索ベースのシナリオ自動生成方法。
【請求項6】
選別条件は、
運行設計範囲(ODD)、危険現象(CP)、フィルタリング条件を含むことを特徴とする請求項1に記載のシナリオ検索ベースのシナリオ自動生成方法。
【請求項7】
フィルタリング条件は、
シナリオの抽象度、シナリオレベル、有効性の検証方法、及びシナリオの収集された位置を含むことを特徴とする請求項6に記載のシナリオ検索ベースのシナリオ自動生成方法。
【請求項8】
変換されたシナリオの有効性を検証するステップと、
有効性の検証されたシナリオを具体化するステップと
を更に含むことを特徴とする請求項1に記載のシナリオ検索ベースのシナリオ自動生成方法。
【請求項9】
具体化するステップは、
抽象的なシナリオ(abstract scenario)は、論理的なシナリオ(logical scenario)に媒介変数化し、論理的なシナリオは、確率分布ベースに特定値をサンプリングし、具体的なシナリオ(concrete scenario)に具体化することを特徴とする請求項8に記載のシナリオ検索ベースのシナリオ自動生成方法。
【請求項10】
自律走行テストのためのシナリオDBと、
シナリオDBからクエリシナリオと類似するシナリオを検索し、検索されたシナリオの中から、選別条件に合致するシナリオのみをフィルタリングし、フィルタリングされたシナリオの構成要素をターゲット条件に合うように変換するシナリオ生成システムと
を含むことを特徴とするシナリオ検索ベースのシナリオ自動生成システム。
【請求項11】
自律走行テストのためのシナリオDBから、クエリシナリオと類似するシナリオを検索するステップと、
検索されたシナリオの構成要素をターゲット条件に合うように変換するステップと、
変換されたシナリオを具体化するステップと
を更に含むことを特徴とするシナリオ検索ベースのシナリオ自動生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自律走行車の評価及び検証に関し、より詳細には、自律走行車の機能を様々な交通状況において評価及び検証するための交通シナリオを生成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
SAE(Society of Automotive Engineers)レベル4以上の自律走行システムの登載された車を市場に取り入れるための公式機関における承認過程には、システムの合理的な検証及び評価が必要である。検証及び評価方法に対する工夫は、自律走行システムを様々な状況でテストし、テストの結果を統計分析する方向で進められている。
システムのテストには、シナリオベースのテスト(Scenario-based testing)方法が使われる。シナリオベースのテストでは、システムの動作が可能な範囲である運行設計範囲(Operational Design Domain:ODD)内における動作に問題がなく、危険現象(Criticality Phenomena:CP)を通じて走行状況で、安全面、法律面、規制面における危険要因(risk)に備えられているかを確認すべく、様々な状況での走行シナリオを生成してテストを行う。
ODDは、実際の環境を対象とするため、リアルな走行状況をシナリオにする技術が必要となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、実際のような様々な走行状況をシナリオに自動生成するための方法として、次のような機能を提供することにある。
1)実際の道路で走行のテストを行う状況で、既に保有するシナリオから、この状況と類似するシナリオを検索し、検索されたシナリオをこの状況或いはマップに融合することができるように変形したシナリオを生成して提供
2)大規模なシミュレーション領域で継続的な走行をテストする状況で、既に保有するシナリオから、この状況と類似するシナリオを検索し、検索されたシナリオをこの状況或いはマップに融合することができるように変形したシナリオを生成して提供
3)対象のシナリオがある際、既に保有するシナリオから、このシナリオと類似するシナリオを検索し、検索されたシナリオを対象シナリオ或いはマップに融合することができるように変形してシナリオを生成して提供するか、変形せずに検索されたシナリオを提供
4)提示されたODD、CPを参照し、ODD条件に該当するシナリオを検索して提供
5)提供するシナリオを提示された目標の形態に合うように変形して提供
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するための本発明の一実施例に係るシナリオ検索ベースのシナリオ自動生成方法は、自律走行テストのためのシナリオDBから、クエリシナリオと類似するシナリオを検索するステップと、検索されたシナリオの中から、選別条件に合致するシナリオのみをフィルタリングするステップと、フィルタリングされたシナリオの構成要素をターゲット条件に合うように変換するステップとを含む。
検索するステップは、クエリシナリオとDBに保存されたシナリオとを比較し、類似度を算出するステップと、算出された類似度を基準にシナリオを整列するステップと、一定の基準以上の類似度を有するシナリオを選別するステップとを含んでよい。
類似度を算出するステップは、シナリオから特徴値を抽出するステップと、抽出された特徴値の間の類似度を算出するステップとを含んでよい。
抽出するステップは、シナリオからシーンを選別するステップと、選別されたシーンから特徴値を抽出するステップとを含んでよい。
抽出するステップは、シナリオの構成要素を複数の群に区分するステップと、区分された群から特徴値を抽出するステップとを含んでよい。
選別条件は、ODD、CP、フィルタリング条件を含んでよい。
フィルタリング条件は、シナリオの抽象度、シナリオレベル、有効性の検証方法、及びシナリオの収集された位置を含んでよい。
【0005】
本発明の実施例に係るシナリオ自動生成方法は、変換されたシナリオの有効性を検証するステップと、有効性の検証されたシナリオを具体化するステップとを更に含んでよい。
具体化するステップは、抽象的なシナリオ(abstract scenario)は、論理的なシナリオ(logical scenario)に媒介変数化し、論理的なシナリオは、確率分布ベースに特定値をサンプリングし、具体的なシナリオ(concrete scenario)に具体化してよい。
本発明の別の実施例に係るシナリオ検索ベースのシナリオ自動生成システムは、自律走行テストのためのシナリオDBと、シナリオDBからクエリシナリオと類似するシナリオを検索し、検索されたシナリオの中から、選別条件に合致するシナリオのみをフィルタリングし、フィルタリングされたシナリオの構成要素をターゲット条件に合うように変換するシナリオ生成システムとを含む。
本発明の別の実施例に係るシナリオ検索ベースのシナリオ自動生成方法は、自律走行テストのためのシナリオDBから、クエリシナリオと類似するシナリオを検索するステップと、検索されたシナリオの構成要素をターゲット条件に合うように変換するステップと、変換されたシナリオを具体化するステップとを更に含む。
本発明の別の実施例に係るシナリオ検索ベースのシナリオ自動生成システムは、自律走行テストのためのシナリオDBと、シナリオDBからクエリシナリオと類似するシナリオを検索し、検索されたシナリオの構成要素をターゲット条件に合うように変換し、変換されたシナリオを具体化するシナリオ生成システムとを含む。
【発明の効果】
【0006】
以上説明したように、本発明の実施例によれば、対象となるシナリオと類似するシナリオを検索し、検索されたシナリオを変換して具体化し、所望のシナリオを自動的に生成することができるようになり、詳しくは、次のような効果を提供することができるようになる。
1)提示されたODD、CPを基準にシナリオの選別が可能
2)提示された目標の形態に合うようにシナリオの構成要素及びフォーマットを変形して提供が可能
3)既に保有するシナリオを活用し、様々な走行システムの生成が可能
4)実際の自律走行車の走行状況をシナリオに変換し、当該走行状況と類似するシナリオの照会が可能
5)実際の自律走行車の走行状況をシナリオに変換し、当該走行状況に適用可能なシナリオの照会が可能
6)ある交通状況に対し、特定のシナリオを当該交通状況に組み入れが可能
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施例に係るシナリオ検索ベースのシナリオ自動生成方法を示すための図である。
図2】本発明の実施例に係るアダプタ生成過程を示すための図である。
図3】本発明の実施例に係るシーン(Scene)を通じたシナリオ類似度の算出を示すための図である。
図4】本発明の実施例に係る類似する特性を有する群の間の比較を通じたシナリオ類似度の算出を示す図である。
図5】本発明の実施例に係るシナリオ検索ベースのシナリオ自動生成方法を示すためのフローチャートである。
図6】本発明の実施例に係るシナリオ検索ベースのシナリオ自動生成システムを示すための図である。
図7】本発明の実施例に係る用語を定義するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下では、図面を参照し、本発明をより詳細に説明する。
本発明の実施例では、シナリオ類似度検索ベースのシナリオ自動生成方法及びシステムを提示する。具体的に、入力した交通シナリオと走行環境、運行範囲、危険要因が類似する交通シナリオをデータベースから照会し、テストに使用することができるように変形及び融合し、新規の交通シナリオを自動的に生成する技術である。
【0009】
1.シナリオベースのテスト
1.1 ODDを活用する方法
自律走行車が走る際、遭遇する可能性のある環境は、無限に近いくらい複雑であり不確かである。従来の検証方法論では、無制限に近い状況を取り扱うために、実際の道路でどれだけ多くの時間をかけて長い距離を走ったかを確認してきたが、それでは、車が走行中に遭遇するかもしれない危険要因を全部扱ったのか確認することは困難である。
よって、シナリオベースの検証方法論では、車の概念を設計する際に、運行可能な環境を運行範囲(ODD)に制限し、制限されたODD内で発生しかねないシナリオをテストし、システムの様々な側面における安全性を検証する。
このように、ODDは、道路の上における作動及び道路そのものなどのような走行に関連する全ての要素に対し、システムが作動できる範囲を制限する。
一方、本発明の実施例では、既に保有するシナリオとODDとを比較して提示されたODD内に含まれたシナリオを選別する。
【0010】
1.2 CPを活用する方法
システムは、ODD内で作動する間、様々な場面においてリスクを経験する。自律走行車を例えると、周囲の他の車や歩行者と衝突したり、交通法を違反するおそれがある。システムを検証するためには、ODD内で作動中に遭遇する可能性がある全ての危険な状況でシステムを作動させ、危険への備えができているかを確認する必要がある。
危険な状況をもたらしかねない要因を危険要因(CP)といい、CPは、実例及びシミュレーションをベースとする危険度分析(Criticality analysis)によって予めまとめられる。
危険な状況は、CPに定義してよく、特定のシナリオがどのような危険な状況を含むかは、CPを通じて確認することができる。
本発明の実施例では、既に保有するシナリオとCPとを比較し、危険な状況を実現するために提示されたCPを、シナリオが含むかを確認し、当該CPを含むシナリオを選別する。
【0011】
1.3 Ontologyを活用する方法
Ontologyとは、知識工学において、抽象的な情報を演算処理装置にて活用するために使用される知識整理フォーマット及びデータ構造である。
自律走行車を開発する会社、交通状況を分析する機関及び自律走行関連の新技術を研究する研究機関などのように、自律走行システムに関連する多様な集団は、交通状況及び自律走行システムに関する知識を自主的に定義するOntologyに応じて、多様な管理を行っている。
ODD、CP、シナリオ、交通状況、自律走行システム及びプラットフォームなどのように、開発及び検証に参加する複数の集団は、それぞれのontologyをベースにデータを扱っており、相互間での提携のためには、ontologyを統一するか、各ontologyの間の関係を整える必要がある。
本発明の実施例では、複数の集団から生成した情報をシステムに活用するために、各集団のontologyをベースに、各データを読み込むためのアダプタを生成する。
2.シナリオ
【0012】
2.1 シナリオの形態
シナリオベースのシステム検証方法論においては、システムの概念設計、開発、テストの過程において、各段階に適用されるシナリオを体系的に扱い、各段階に合ったシナリオの生成の根拠に対する追跡性を確保する必要がある。特に、自律走行システムの進行過程は、段階が進むにつれて、システムの構成要素が抽象的な概念から始まり、次第に具体化する傾向がある。よって、シナリオも、システムの構成要素の抽象化段階に合わせて異なる形態を有する。
抽象化段階に応じたシナリオの形態は、大きく4つに分けられる。概念設計の段階に対応し、システムのODD内で発生しかねない交通状況を自然語と知識基盤でまとめた機能的なシナリオ(functional scenario)、機能的なシナリオを演算装置に保存し、処理することができるように変形した抽象的なシナリオ(abstract scenario)、抽象的なシナリオの構成要素の状態をパラメータ、パラメータの範囲と確率分布とでまとめた論理的なシナリオ(logical scenario)、最後に、論理的なシナリオの範囲において確率分布をベースに特定の値を選定した具体的なシナリオ(concrete scenario)がある。
【0013】
2.2 シナリオの構成要素及び構造
シナリオベースのテストにおいては、テストに必要な様々な交通状況をシナリオを通じてシミュレーションに実現する。よって、シナリオに色んな交通状況を反映するためのシナリオの構成要素と、それに対する構造的な整理方法が研究されている。構成要素は、道路の位置、形態、交通客体の配置などのような交通状況に関連する様々な要因を整えるために細かく分けられ、各構成要素の状態は、パラメータベースに定義される。なお、シミュレーションに実現したり、複数のシナリオを管理する際に、処理、保存及び管理を効率的にするために、類似する特性を有する群に分類して整える。
代表的な方法としては、PEGASUSプロジェクトでまとめた6レイヤモデルがある。このモデルは、特性に応じて、交通状況の構成要素を6階層に分類する。レイヤ1は、道路及び信号体系のように、交通体系に関連する要素で構成される。レイヤ2は、建物及び植生のように、道路の周辺に配置されている構造物で構成される。レイヤ3は、レイヤ1とレイヤ2の対象の一時的な変化を定義した要素で構成される。レイヤ4は、車、歩行者及び動物などのような様子が変化し得る交通客体で構成される。レイヤ5は、日付及び照度などのような環境要素であり、レイヤ6は、自律走行において使用される通信要素である。
更に、6レイヤモデルに、テスト対象車の状態要素をレイヤ0として追加する方法もある。
このようなシナリオの構成要素の分類方法により、値を変更したり情報を処理する際、予め分離された分類別に特性に合った別個のアルゴリズムを使用することができる。
【0014】
2.3 シナリオの生成
シナリオは、正規化されたフォーマットと構造で交通状況をまとめたデータを意味する。現在研究されているシナリオ生成方法とは、次の通りである。
まず、交通状況を認識するためのセンサと、認識ロジックを登載したシステムで収集された交通状況から生成する方法がある。自律走行車とインフラに取り付けられた交通状況収集機、取り外しが可能な交通状況収集機などのようなシステムを用いて、交通状況を収集する。
次に、収集された交通状況事例文書を通じて生成する方法がある。従来収集された対物及び対人傷害を引き起こす事故例、交通法及びルール違反例、渋滞をもたらす走行例などのように、物質的及び社会的被害をもたらす事例をまとめた文書を認識し、それを基にシナリオを生成する。
次に、専門家の知識で生成する方法がある。専門家は、色んな交通状況に対する経験をベースに生成ツールを用いてシナリオを生成する。
次に、ODD及びCPのような環境に対する制約や特徴的な条件をベースに、任意のシナリオを生成する方法がある。ODDで制限された道路環境や範囲内から選択されたCP条件を含み、予め定められていない別のシナリオの構成要素を任意で割り当て、シナリオを生成する。
次に、既に保有するシナリオをベースに生成する方法がある。既に保有するシナリオの構成要素を変形して拡張し、新たなシナリオとして生成する。
最後に、シミュレーションを通じて任意の交通状況を実現して生成する方法がある。シミュレーションで交通状況を構成する要素を任意で割り当て実現したランダムな状況に対して、特定の条件に合致する交通状況を収集し、シナリオを生成する。
【0015】
3.シナリオ検索ベースのシナリオ自動生成方法
3.1 概要
自律走行システムの検証/評価は、様々な交通状況に対するシナリオでテストを行う必要がある。特に、テスト中に危険性が発現しているシナリオに対しては、同じ危険性が発現しかねない様々な状況を再現する必要がある。よって、テスト中に危険性を内包するシナリオを対象に、それと類似するシナリオを生成し、テストを行う必要がある。類似するシナリオを生成する方法は、直接当該シナリオを変形したり、当該シナリオの構成要素を材料として全く新しいシナリオを生成する方法があるが、生成する結果も無制限に近いため、実例或いは既に保有するデータをベースに範囲を制限する必要がある。
なお、自律走行システムが動作可能な環境及び状況を制限したODD条件及び危険性が発現し得るCP条件に合ったシナリオを選別する必要がある。
本発明の実施例によって生成されたシナリオは、シナリオを再現できる実車検証環境(Proving ground)やシミュレーション環境において、自律走行システムを検証/評価するのに使用される。
【0016】
3.2 方法
本発明の実施例に係るシナリオ検索ベースのシナリオ自動生成方法は、図1と同様である。大きく5ステップに分ける。Adapter generationステップ(S110)、Scenario retrievalステップ(S120)、Filteringステップ(S130)、Domain adaptationステップ(S140)、Scenario validationステップ(S150)、Parametrization/Samplingステップ(S160)である。
【0017】
3.3 入力/出力データ
使用するデータは、Ontology、Format、Scenario、Operational design domain(ODD)、Criticality phenomena(CP)、Filtering condition、Target conditionである。
Ontologyは、入力として使用されるデータの用語及び概念をまとめたもので、既に保有するデータに対するontologyと、新規で入力されたデータに対するontologyとを対応させて使用する。それにより、異なるように定義された用語と概念に制約されずにデータを使用することができる。
Formatは、データ内において、用語及び概念との間の関係と、並べ方、データの保存形式を意味する。
Scenarioは、Ontology及びFormatによって異なるようにまとめられる。Scenarioの形態は、Abstract、Logical、Concreteがあり、Functionalは、演算処理装置で扱えないために除外する。
Operational design domainとCriticality phenomenaも、Scenarioと同様に定められず、Ontology及びFormatによって異なるようにまとめられる。
Filtering conditionは、ODDとCP条件の他に、生成時刻、扱う客体の種類、客体数などようなシナリオの構成要素と、シナリオを選別する際に使用することができる様々な要素を含む。
Target conditionは、Result scenarioで使用するOntology、Formatと保存形式などのような出力値に対する条件を含む。追加として、特定の構成要素を含み、当該構成要素は、シナリオを変形するための条件として使用される。
【0018】
3.4 Adapter generation
ontologyとQuery ontologyとをマッピングし、それをベースにScenario、Map、Criticality phenomenaとODDデータを様々なフォーマットで読み込むためのadapterを生成するためのステップである。
Scenario、Map、Criticality phenomenaとODDとは、OWL、RDFなどのようなmachine readable言語(Ontology)をベースに記述される。それぞれのデータを読み込むためのアダプタを生成する過程は、図2に示すように、Ontology mappingステップとAdapter generationステップとで構成される。
Ontology mapping:ontology DBに既に保存されているontologyと、入力データのベースとなるquery ontologyとを接続するステップである。このステップを経ると、入力データで使用した用語及び概念がDBで既に保管する用語及び概念に対応する。
Adapter generation:入力データの拡張子及び資料構造をまとめたFormatを入力として受け、既にまとめられた用語及び概念をベースにアダプタを生成するステップである。生成したアダプタを通じて、query ontology及びformatをベースに作成されたデータを読み込むことができる。
【0019】
3.5 Scenario retrieval
この段階では、Query scenarioに入力されたシナリオと、Scenario DBに従来保存していたシナリオとを比較して類似度を算出し、類似度を基準にシナリオを整列し、一定の基準以上の類似度を有するシナリオを選別する方式で類似するシナリオを検索する。シナリオの類似度の算出は、様々な方式で行われてよい。
類似度の算出は、大きく、Representation functionとSimilarity functionの2つの部分で構成される。Representation functionは、入力として受けたデータを特徴値(Feature)に変換する部分として、自然語、グラフ、イメージ、ベクトル形態の入力データを古典的なアルゴリズム或いはディープラーニングアルゴリズムを通じて特徴的な値を抽出し、ベクトル、semantic feature、グラフの形の特徴値に変換する。
Similarity functionは、Representation functionによって変換された特徴値を入力として、2特徴値との間の類似度を算出する部分である。類似度を算出する方法には、距離関数のような方式を使用し、類似度そのものを計算したり、類似の有無に対する確率を推定したり、クラスタリングを通じて群を分類する方法がある。
Representation functionの入力に対する例示は、大きく2つある。
【0020】
まず、sceneを基準に類似度を算出する方式がある。図3のように、それぞれのシナリオで特定の条件でsceneを生成し、各sceneの構成要素をRepresentation functionを通じて特徴値(Feature)に変換する。最後に、各sceneに対し、変換された特徴値の間の類似度をSimilarity functionを通じて比較して算出する。
この過程では、データベースから抽出したscenarioを構成する複数の時点のsceneのうち、選別ロジックによって自動的に選別したsceneを対象に類似度を比較する。一方、Queryとして使用されるscenarioは、ユーザが直接選別したり選別ロジックによって自動的に選別されたシーンを使用して類似度を比較する。選別ロジックは、sceneの時間や位置などを基にsceneを自動抽出する。
次に、シナリオの構成要素のうち、類似する特性を有する群間の比較により、類似度を算出する方式がある。図4のように、Queryとscenario DBにあるシナリオの構成要素のうち、類似する特性を有する群を他の構成要素と分離し、Representation functionを通じて特徴値(Feature)に変換する。そして、同じ対象から変換された特徴値との類似度をSimilarity functionを通じて比較して算出する。常に、全ての構成要素を使用せずに、定められた条件に従って選別的に使用する。
複数の特性に分けられた属性群を各群別に、段階的に、直列或いは並列に組み合わせて類似度を算出することができる。一つのsceneにおける動的な客体の配置を比較し、空間的な要素(Map、静的な客体、構造物)の配置を比較する。
【0021】
3.6 Filtering
この段階では、検索されたシナリオの構成要素と選別条件(ODD、CP、Filtering condition)を比較し、シナリオを選別する。Filtering conditionには、Scenarioの抽象化段階(abstract、logical、concrete)、Scenario Layer(L0~L6)、Verification & Validatio方法及びScenarioの収集された位置などが含まれる。
【0022】
3.7 Domain adaptation
この段階では、選別されたシナリオを対象となる構成要素に合わせて変形し、変形されたデータを対象となるOntologyとFormatに合わせてまとめる。具体的に、選別されたシナリオをtarget conditionに提示されたシナリオの構成要素と類似するように変形したり融合する過程として、マップと構成要素などが対象になる。
対象になる構成要素は、シナリオの構成要素を部分的に含む。変形の第1の例示として、対象になる構成要素として特定の道路が提供されると、選別されたシナリオは、道路を提供された道路に入れ替え、道路に従属する構成要素を位置調整、削除、状態値の変更などの方法で当該道路に合うように変形する。第2の例示として、特定の範囲、確率分布或いは確率分布の特徴値が提供されると、従来の構成要素を提供された構成要素に変更する。
【0023】
3.8 Scenario validation
この段階では、最終的に変形されたシナリオに含まれた値の有効性を確認したり、Target conditionとして提示されたOntology及びFormatに合うように作成されたかを確認する。
【0024】
3.9 Parametrization/Sampling
この段階では、ParametrizationとSamplingを通じ、それぞれに対応する形態のシナリオを具体化する。Parametrizationでは、媒介変数が割り当てられていないabstract形態のシナリオを媒介変数と範囲、確率分布の割り当てられたlogical形態のシナリオに具体化する。Samplingでは、logical形態のシナリオから範囲内の値を確率分布をベースに抽出し、concrete形態に具体化する。
【0025】
3.10 フロー
シナリオ検索ベースのシナリオ自動生成方法のフローは、図5に示す通りである。入力データとしてQuery scenario(abstract、logical、concrete形態)、ODD、CP、Filtering condition、Target conditionが使用される。
まず、Scenario retrieval段階では、Scenario DBからQuery scenarioと類似するシナリオを検索する(S120)。
そして、Filtering段階では、検索されたシナリオをODD、CP、Filtering conditionを条件に選別する(S130)。この段階を経ると、Query scenarioと類似しており、選別条件に合致するscenario(abstract、logical、concrete形態)が残るようになる。
Domain adaptation段階では、Target conditionとして提示された条件に合うように、残ったscenarioを変換する(S140)。次に、Scenario validation段階において、シナリオの有効性を検証する(S150)。
有効性を検証したscenario(abstract、logical、concrete)は、Parametrizationを通じて、abstract形態はlogical形態に媒介変数化され、Samplingを通じ、logical形態はconcrete形態に具体化される(S160)。
生成されたシナリオは、自律走行システムの評価及び検証過程において、シミュレーションやProving ground instance上に交通状況を再現するために使用される。
【0026】
4.シナリオ検索ベースのシナリオ自動生成システム
システムの実行環境は、図6に示す通りである。システムは、クラウド上で運用され、シナリオ生成サービスシステム210で管理し、Ontology DB220とScenario DB230を含む。
サービスシステム210は、クラウド上でシステムを複数のシステムインスタンス211、212、213で複製及び管理することができ、ネットワーク環境を通じてユーザパソコン310,320、330と通信する機能を含み、各システムインスタンス211、212、213への接続を管理する。
複製されたシステムインスタンス211、212、213も、同じOntology DB220とScenario DB230を使用する。
【0027】
5.変形例
これまで、シナリオ類似度検索ベースのシナリオ自動生成システム及び方法について、好適な実施例を挙げて詳細に説明してきた。
本発明の実施例で使用する用語に対するより具体的な定義を、図7に示している。
一方、本実施例に係る装置及び方法の機能を行わせるコンピュータプログラムを組み込んだコンピュータで読み取り可能な記録媒体にも、本発明の技術的思想が適用され得る。なお、本発明の多様な実施例に係る技術的思想は、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されたコンピュータで読み取り可能なコード形式で実現されてよい。コンピュータで読み取り可能な記録媒体とは、コンピュータによって読み取ることができ、データを保存することができる如何なるデータ保存装置でも可能である。例えば、コンピュータで読み取り可能な記録媒体とは、ROM、RAM、CD-ROM、磁気テープ、フロッピーディスク、光ディスク、ハードディスクドライブなどであってよい。なお、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に保存されたコンピュータで読み取り可能なコード又はプログラムは、コンピュータ間で接続されたネットワークを介して伝送されてよい。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は以上の実施形態に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的趣旨の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7