(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】紫外線促進酸化プロセス制御のための過酸化水素のオンサイト電気化学的生成の制御
(51)【国際特許分類】
C02F 1/72 20230101AFI20241007BHJP
C02F 1/70 20230101ALI20241007BHJP
C02F 1/32 20230101ALI20241007BHJP
C25B 1/30 20060101ALI20241007BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20241007BHJP
C25B 15/02 20210101ALI20241007BHJP
C25B 15/08 20060101ALI20241007BHJP
C02F 1/58 20230101ALN20241007BHJP
【FI】
C02F1/72 101
C02F1/70 Z
C02F1/32
C25B1/30
C25B9/00 A
C25B15/02
C25B15/08
C02F1/58 H
(21)【出願番号】P 2022502916
(86)(22)【出願日】2020-07-31
(86)【国際出願番号】 US2020044476
(87)【国際公開番号】W WO2021025991
(87)【国際公開日】2021-02-11
【審査請求日】2023-06-14
(32)【優先日】2019-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513180152
【氏名又は名称】エヴォクア ウォーター テクノロジーズ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Evoqua Water Technologies LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【氏名又は名称】冨田 和幸
(72)【発明者】
【氏名】ジョシュア グリフィス
(72)【発明者】
【氏名】ベンジャミン サッターフィールド
(72)【発明者】
【氏名】ヤン チェン
(72)【発明者】
【氏名】ジョージ グ
(72)【発明者】
【氏名】サイモン デュークス
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05770033(US,A)
【文献】特開2001-079544(JP,A)
【文献】特開2001-300537(JP,A)
【文献】特開2000-079395(JP,A)
【文献】特開2004-130185(JP,A)
【文献】特開2001-212597(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/70- 1/72
C02F 1/20- 1/26
C25B 1/30- 1/38
C02F 1/58- 1/64
C25B 9/00
C25B 15/02
C25B 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学線放射反応器、
過酸化水素を生成するように構成され、電解液源と化学線放射反応器との間に流体連通する出口を有する電気化学セル
、
電気化学セルの入口と連通する酸素
源、
前記化学線放射反応器の出口に流体的に結合された導管、および、
前記化学線放射反応器の出口の下流で前記導管と流体連通している該出口を有する第2の電気化学セルであって、前記導管内の処理水溶液中に存在する過酸化水素をクエンチする化学薬剤を生成するように構成された前記第2の電気化学セルを含む、水処理システム。
【請求項2】
電解液源を電気化学セルの入口に流体的に結合する第1の導管、および、
電気化学セルの出口と化学線放射反応器の入口とを流体的に結合する第2の導管をさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
電気化学セルの出口が、電解液源を電気化学セルの入口に流体的に結合する導管の導入点に流体的に結合される、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記化学線放射反応器が、紫外線促進酸化プロセス反応器である、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
電解液が水を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
電気化学セルの出口に結合された貯蔵タンクをさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記第2の電気化学セルの出口に結合された貯蔵タンクをさらに含む、請求項
1に記載のシステム。
【請求項8】
前記化学薬剤が、次亜塩素酸ナトリウムを含む、請求項
1に記載のシステム。
【請求項9】
前記導管が、前記化学線放射反応器の前記出口を前記第2の電気化学セルの入口に流体的に連結している、請求項
1に記載のシステム。
【請求項10】
前記第2の電気化学セルの前記出口が、前記化学線放射反応器の前記出口の下流にある前記導管の導入点に流体的に結合されている、請求項
1に記載のシステム。
【請求項11】
水溶液中の1つ以上の汚染物質の濃度を測定するように構成されたセンサをさらに含み、前記センサは、前記化学線放射反応器の上流または前記化学線放射反応器の下流のいずれかに配置される、請求項1から
10のいずれかに記載のシステム。
【請求項12】
前記センサと通信し、前記1つ以上の汚染物質の測定された濃度に応答して、前記システムの1つ以上の動作パラメータを調整するように構成されたコントローラをさらに含む、請求項
11に記載のシステム。
【請求項13】
前記1つ以上の動作パラメータは、前記電気化学セルに加えられる電力、前記第2の電気化学セルに加えられる電力、前記化学線放射反応器に加えられる電力、および前記電気化学セル、前記第2の電気化学セル、もしくは前記化学線放射反応器のうちの1つを通る電解液または水溶液の流量のうちの1つを含む、請求項
12に記載のシステム。
【請求項14】
前記酸素源は、前記電気化学セルの上流で前記電解液に前記酸素を導入するように構成される、請求項
12に記載のシステム。
【請求項15】
前記コントローラは、前記1つ以上の汚染物質の前記測定された濃度に応答して、前記電解液への前記酸素の導入速度を調節するようにさらに構成される、請求項
14に記載のシステム。
【請求項16】
前記電解液源からの電解液の1つ以上の測定された特徴または前記化学線放射反応器で生成される処理水溶液の1つ以上の測定された特徴に基づいて、前記貯蔵タンクから前記化学線放射反応器への過酸化水素の流量を調整するように構成されたコントローラをさらに含む、請求項6に記載のシステム。
【請求項17】
前記電解液源からの電解液の1つ以上の測定された特徴または前記化学線放射反応器で生成された処理水溶液の1つ以上の測定された特徴に基づいて、前記貯蔵タンクから前記化学線放射反応器の前記出口の下流の前記導管への次亜塩素酸ナトリウムの流量を調整するように構成されたコントローラをさらに含む、請求項
7に記載のシステム。
【請求項18】
前記化学線放射反応器の下流に、処理水溶液中の過酸化水素の濃度を測定するように構成されたセンサをさらに含む、請求項1から
10のいずれかに記載のシステム。
【請求項19】
前記センサと通信し、前記過酸化水素の測定濃度に基づいて前記第2の電気化学セルの1つ以上の動作パラメータを調整するように構成されたコントローラをさらに含む、請求項
18に記載のシステム。
【請求項20】
前記第2の電気化学セルの前記1つ以上の動作パラメータは、前記第2の電気化学セルに加えられる電力、前記第2の電気化学セルへの電解液の流量、前記第2の電気化学セルからの次亜塩素酸ナトリウムの流量、または前記第2の電気化学セルで生成される次亜塩素酸ナトリウムの濃度のうちの1つ以上を含む、請求項
19に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(1.発明の技術分野)
本明細書で開示される態様および実施形態は、一般に、in-situ電気化学的過酸化水素発生器を含む促進酸化システム、およびこれを操作または構築する方法に向けたものである。
【背景技術】
【0002】
(2.関連技術に関する考察)
近年、多くの研究により、促進酸化プロセス(AOPs)が多くの用途、特に水処理に適していることが示された(Legrini, O., Oliveros, E., Braun, A. M. (1993). 「Photochemical Processes for Water Treatment.」 Chm. Rev. 1093,93,671-698; Boltonら (1996). 「Figures of Merit for the technical development and application of Advanced Oxidation Processes.」 J. of Advanced Oxidation Technologies, 1,113-17)。
【0003】
水処理における促進酸化プロセス(AOPs)は、例えばヒドロキシラジカル(・OH)などの反応性の高いラジカル種を利用して、毒性の、あるいは、生分解性が低いまたは無い有害な水汚染物質(例えば産業汚染物質)を酸化するものである。
【0004】
ヒドロキシラジカルの高い酸化力および低い選択性により、ほとんど全ての有機化合物と反応するため、AOPは、汚染物質、すなわち、農薬、工業溶剤、PFAS、医薬品、ホルモン、薬剤、パーソナルケア製品またはX線造影剤の残留物などを(汚染)水から除去するために使用することが出来る。
【0005】
また、ヒドロキシラジカルの生成方法が様々であるため、AOPは、汎用性が高く、特定の処理要件に適合させることができる。
【0006】
Malatoら. (2002). 「Photocatalysis with solar energy at a pilot-plant scale: an overview.」 Applied Catalysis B: Environmental 37 1-15では、ヒドロキシラジカルを生成するための太陽光の利用をレビューしている。
【0007】
紫外線駆動型AOP(UVAOP)では、紫外線を利用して光分解によりヒドロキシラジカルを生成する。従来の水処理用の紫外線駆動型AOPは、H2O2を紫外線で光分解してヒドロキシラジカルを生成しているので、UV/H2O2と呼ぶことができる。
【0008】
既存のAOPは、高価な反応物/酸化物、例えばH2O2を使用しており、また、ラジカル生成には高いエネルギー需要が必要であり、例えばUV AOPによるラジカル生成には高いUV照射エネルギーが必要である。かなりの数のラジカルが、汚染物質の酸化によってではなく、水マトリックスの有機バックグラウンド、例えばフミン、フミン酸、またはクエン酸との副反応によって消費される。
【発明の概要】
【0009】
本発明の一態様によれば、水処理システムが提供される。このシステムは、化学線放射反応器と、過酸化水素を生成するように構成され、電解液源および化学線放射反応器の間で流体連通している出口を有する電気化学セルと、電気化学セルの入口と連通している酸素源と、を含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、システムは、電解液源を電気化学セルの入口に流体的に結合する第1の導管と、電気化学セルの出口を化学線放射反応器の入口に流体的に結合する第2の導管と、をさらに含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、電気化学セルの出口は、電解液源を電気化学セルの入口に流体的に結合する導管の導入点に、流体的に結合される。
【0012】
いくつかの実施形態では、化学線放射反応器は、紫外線促進酸化プロセス反応器である。
【0013】
いくつかの実施形態では、電解液は、水を含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、システムは、電気化学セルの出口に結合された貯蔵タンクをさらに含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、システムは、化学線放射反応器の出口に流体的に結合された導管と、化学線放射反応器の出口の下流で導管と流体連通している出口を有する第2の電気化学セルと、をさらに含む。第2の電気化学セルは、導管内の処理水溶液中に存在する過酸化水素をクエンチする化学薬剤を生成するように構成され得る。
【0016】
いくつかの実施形態では、システムは、第2の電気化学セルの出口に結合された貯蔵タンク、をさらに含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、化学薬剤は、次亜塩素酸ナトリウムを含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、導管は、化学線放射反応器の出口を、第2の電気化学セルの入口に流体的に連結する。
【0019】
いくつかの実施形態では、第2の電気化学セルの出口は、化学線放射反応器の出口の下流にある導管内の導入点に流体的に結合される。
【0020】
いくつかの実施形態では、システムは、水溶液中の1つ以上の汚染物質の濃度を測定するように構成されたセンサをさらに含み、センサは、化学線放射反応器の上流または化学線放射反応器の下流のいずれかに配置される。
【0021】
いくつかの実施形態では、システムは、センサと通信し、1つ以上の汚染物質の測定された濃度に応答してシステムの1つ以上の動作パラメータを調整するように構成されるコントローラをさらに含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、1つ以上の動作パラメータは、電気化学セルに加えられる電力、第2の電気化学セルに加えられる電力、化学線放射反応器に加えられる電力、および、電気化学セル、第2の電気化学セル、または化学線放射反応器のうちの1つを通る、電解液あるいは水溶液の流速、のうちの1つ、を含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、酸素源は、電気化学セルの上流で電解液に酸素を導入するように構成される。
【0024】
いくつかの実施形態では、コントローラは、1つ以上の汚染物質の測定された濃度に応答して、電解液への酸素の導入速度を調節するようにさらに構成される。
【0025】
いくつかの実施形態では、システムは、電解液源からの電解液の1つ以上の測定された特徴、または、化学線放射反応器において生成された処理水溶液の1つ以上の測定された特徴に基づいて、貯蔵タンクから化学線放射反応器への過酸化水素の流量を調節するように構成されるコントローラをさらに含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、システムは、電解液源からの電解液の1つ以上の測定された特徴、または、化学線放射反応器において生成された処理水溶液の1つ以上の測定された特徴に基づいて、貯蔵タンクから化学線放射反応器の出口の下流の導管への次亜塩素酸ナトリウムの流量を調整するように構成されたコントローラをさらに含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、システムは、化学線放射反応器の下流で処理水溶液中の過酸化水素の濃度を測定するように構成されたセンサをさらに含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、システムは、センサと通信し、測定された過酸化水素の濃度に基づいて、第2の電気化学セルの1つ以上の動作パラメータを調整するように構成されたコントローラをさらに含む。
【0029】
いくつかの実施形態では、第2の電気化学セルの1つ以上の動作パラメータは、第2の電気化学セルに加えられる電力、第2の電気化学セルへの電解液の流量、第2の電気化学セルからの次亜塩素酸ナトリウムの流量、または第2の電気化学セルで生成される次亜塩素酸ナトリウムの濃度の1つ以上、を含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、電解液源は酸素源を含み、システムは、過酸化水素を含む溶液を電気化学セルの出口から電気化学セルの入口に戻し、再循環溶液を形成するように構成された再循環導管と、化学線放射反応器の入口と第1の導管を介して流体連通している被処理水源と、再循環導管から化学線放射反応器の入口の上流の第1の導管内の導入点まで選択的に流体連通している第2の導管と、をさらに含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、システムは、閉状態から少なくとも部分的に開状態に移行し、再循環溶液中の過酸化水素の濃度が所定のレベルに達することに応答して、再循環溶液を、導入点を介して被処理水中に導くように構成されたバルブをさらに含む。
【0032】
いくつかの実施形態では、システムは、1つ以上のセンサに動作可能に接続されたコントローラをさらに含み、1つ以上のセンサは、被処理水の流量、被処理水中の汚染物質の濃度、被処理水中の過酸化水素の濃度、化学線放射反応器を出る生成水の純度、化学線放射反応器を出る生成水の流量、または再循環溶液中の過酸化水素の濃度、の1つ以上を測定するように構成される。
【0033】
いくつかの実施形態では、コントローラは、1つ以上のセンサから受信した1つ以上の信号に基づいてシステムの1つ以上の動作パラメータを調整するように構成され、1つ以上の動作パラメータは、バルブの状態、電気化学セルに加えられる電力、化学線放射反応器に加えられる電力、電気化学セルを通る電解液の流量、化学線放射反応器を通る被処理水の流量、または化学線放射反応器で被処理水に照射される放射線の照射量、のうちの1つ以上を含む。
【0034】
いくつかの実施形態では、1つ以上のセンサは、再循環溶液中の過酸化水素の濃度を測定するように構成され、コントローラは、センサから再循環溶液中の過酸化水素の濃度の指示を受け取り、過酸化水素の濃度が所定のレベル以上であることに応答してバルブに少なくとも部分的に開くように信号を送るように構成される。
【0035】
いくつかの実施形態では、コントローラは、被処理水中の汚染物質の濃度または生成水の所望の純度の、一方あるいは両方に基づいて所定レベルを設定するようにさらに構成される。
【0036】
いくつかの実施形態では、コントローラは、化学線放射反応器において被処理水に照射される紫外線の所望の照射量に基づいて、所定のレベルを設定するようにさらに構成される。
【0037】
いくつかの実施形態では、コントローラは、所定のレベル、被処理水中の汚染物質の濃度、被処理水の流量、または生成水の所望の純度のうちの1つ以上に基づいて、化学線放射反応器において被処理水に適用する紫外線の照射量を設定するようにさらに構成される。
【0038】
いくつかの実施形態では、コントローラは、被処理水中の汚染物質の濃度または生成水の所望の純度の、一方あるいは両方に基づいて、電気化学セルに加えられる電力を設定するようにさらに構成される。
【0039】
いくつかの実施形態では、コントローラは、被処理水中の汚染物質の濃度および生成水の所望の純度に基づいて、化学線放射反応器において被処理水に照射される紫外線の照射量を設定するようにさらに構成される。
【0040】
いくつかの実施形態では、コントローラは、所定のレベルに基づいて電解液に導入される酸素の量を設定するようにさらに構成される。
【0041】
いくつかの実施形態では、コントローラは、再循環導管内の溶液中の過酸化水素の所定の濃度レベルを達成するための所望の時間量に基づいて、電気化学セルに加えられる電力量を設定するようにさらに構成される。
【0042】
いくつかの実施形態では、コントローラは、電気化学セルに加えられる電力に基づいて、化学線放射反応器において被処理水に照射される紫外線の照射量を設定するようにさらに構成される。
【0043】
別の態様によれば、水処理システムにおいて水を処理する方法が提供される。この方法は、水源から電気化学セルの出口に流体的に結合された導管に被処理水を導くことと、電気化学セルで生成された過酸化水素を被処理水に添加して過酸化水素を含む水溶液を形成することと、水溶液を化学線放射反応器の入口に導くことと、水溶液中の汚染物質と反応する水溶液中のフリーラジカルを生成して処理水溶液を形成するために、水溶液を化学線放射反応器で十分に化学線に曝露することと、化学線放射反応器の出口から第2の導管を介して処理水溶液を使用点に導くことと、を含む。
【0044】
いくつかの実施形態では、水源から電気化学セルの出口に流体的に結合された導管に被処理水を導くことは、電気化学セルの入口に被処理水を導くこと、を含む。
【0045】
いくつかの実施形態では、方法は、電気化学セルの電極間に電力を加えて、電気化学セル内で被処理水中の酸素を過酸化水素に変換し、過酸化水素を含む水溶液を形成することと、電気化学セルの出口から化学線放射反応器の入口に水溶液を導くことと、をさらに含む。
【0046】
いくつかの実施形態では、化学線放射反応器において水溶液を化学線に曝露することは、化学線放射反応器において水溶液を紫外線に曝露すること、を含む。
【0047】
いくつかの実施形態では、処理水溶液を使用点に導くことは、処理水溶液を水源に導くこと、を含む。
【0048】
いくつかの実施形態では、方法は、電気化学セルの入口の上流で、被処理水に酸素を添加することをさらに含む。
【0049】
いくつかの実施形態では、方法は、電気化学セルにおける追加処理のために、電気化学セルの出口から電気化学セルの入口まで再循環導管を通して水溶液を再循環させること、をさらに含む。この追加処理により、水溶液中の過酸化水素の濃度が増加する。方法は、被処理水を第2の被処理水源から第1の導管を通して化学線放射反応器の入口に導くことと、再循環導管から化学線放射反応器の入口の上流の第1の導管内の導入点に選択的な流体連通を提供することと、をさらに含む。
【0050】
いくつかの実施形態では、方法は、再循環導管内の過酸化水素の濃度をセンサで測定すること、をさらに含む。
【0051】
いくつかの実施形態では、方法は、コントローラにおいて、センサから再循環導管内の過酸化水素の濃度の指示を受け取ることと、再循環導管内の過酸化水素の濃度の指示が所定のレベル以上であることの指示であることに応答して少なくとも部分的に開くように、再循環導管および第1の導管の間に選択的な流体連通を提供するバルブに信号を送ることと、をさらに含む。
【0052】
いくつかの実施形態では、方法は、システムのコントローラに動作可能に接続された1つ以上のセンサで、被処理水の流量、被処理水中の汚染物質の濃度、被処理水中の過酸化水素の濃度、化学線放射反応器を出る生成水の純度、化学線放射反応器を出る生成水の流量、または再循環溶液中の過酸化水素の濃度、のうちの1つ以上を測定すること、をさらに含む。
【0053】
いくつかの実施形態では、方法は、コントローラで、1つ以上のセンサから受信した1つ以上の信号に基づいてシステムの1つ以上の動作パラメータを調整することをさらに含み、1つ以上の動作パラメータは、バルブの状態、電気化学セルに加えられる電力、化学線放射反応器に加えられる電力、電気化学セルを通る電解液の流量、化学線放射反応器を通る被処理水の流量、または化学線放射反応器で被処理水に照射される放射線の照射量、のうちの1つ以上を含む。
【0054】
いくつかの実施形態では、方法は、1つ以上のセンサで再循環導管内の水溶液中の過酸化水素の濃度を測定することと、コントローラによって、1つ以上のセンサから再循環導管内の水溶液中の過酸化水素の濃度の指示を受け取ることと、再循環導管および導管の間の選択的な流体連通を提供するバルブに信号を送り、過酸化水素の濃度が所定のレベル以上であることに応答して少なくとも部分的に開放することと、をさらに含む。
【0055】
いくつかの実施形態では、方法は、被処理水中の汚染物質の濃度または生成水の所望の純度の、一方あるいは両方に基づいて、所定のレベルを設定すること、をさらに含む。
【0056】
いくつかの実施形態では、方法は、化学線放射反応器において被処理水に照射される紫外線の所望の照射量に基づいて、所定のレベルを設定すること、をさらに含む。
【0057】
いくつかの実施形態では、方法は、所定のレベル、被処理水中の汚染物質の濃度、被処理水の流量、または生成水の所望の純度、のうちの1つ以上に基づいて、化学線放射反応器において被処理水に照射される紫外線の照射量を設定すること、をさらに含む。
【0058】
いくつかの実施形態では、方法は、被処理水中の汚染物質の濃度または生成水の所望の純度の、一方あるいは両方に基づいて、電気化学セルに加えられる電力を設定すること、をさらに含む。
【0059】
いくつかの実施形態では、方法は、被処理水中の汚染物質の濃度および生成水の所望の純度に基づいて、化学線放射反応器において被処理水に照射される紫外線の照射量を設定すること、をさらに含む。
【0060】
いくつかの実施形態では、方法は、所定のレベルに基づいて電解液に導入される酸素の量を設定すること、をさらに含む。
【0061】
いくつかの実施形態では、方法は、再循環導管内の水溶液中の過酸化水素の所定の濃度レベルを達成するための所望の時間量に基づいて、電気化学セルに加えられる電力量を設定すること、をさらに含む。
【0062】
いくつかの実施形態では、方法は、電気化学セルに加えられる電力に基づいて、化学線放射反応器において被処理水に照射される紫外線の照射量を設定すること、をさらに含む。
【0063】
いくつかの実施形態では、方法は、第2の導管に流体的に結合された出口を有する第2の電気化学セルにおいて、過酸化水素をクエンチする化学薬剤を電気化学的に生成すること、をさらに含む。
【0064】
いくつかの実施形態では、方法は、処理水溶液中の過酸化水素の濃度に基づいて、第2の導管に導入される化学薬剤の量を制御すること、をさらに含む。
【0065】
いくつかの実施形態では、第2の導管に導入される化学薬剤の量を制御することは、第2の電気化学セルから第2の導管への化学薬剤の流量を制御すること、第2の電気化学セルに加えられる電力を制御すること、または第2の電気化学セルの出口と流体連通している貯蔵タンクからの化学薬剤の流量を制御すること、のうちの1つ以上を含む。
【0066】
いくつかの実施形態では、方法は、処理水溶液を第2の電気化学セルを通じて流し、処理水溶液中の溶存種から化学薬剤を生成すること、をさらに含む。
【0067】
別の態様によれば、被処理水源と流体連通している促進酸化プロセス反応器を含む水処理システムを改修する方法が提供される。方法は、被処理水源および促進酸化プロセス反応器の間の流体連通に出口を有する電気化学セルを設置することと、被処理水中の酸素を過酸化水素に変換するために電気化学セルを動作させる指示を提供することと、を含む。
【0068】
いくつかの実施形態では、方法は、水中の1つ以上の汚染物質の濃度を測定するように構成されたセンサを、化学線放射反応器の上流または化学線放射反応器の下流のいずれかに提供すること、をさらに含む。
【0069】
いくつかの実施形態では、方法は、センサと通信し、1つ以上の汚染物質の測定された濃度に応答してシステムの1つ以上の動作パラメータを調整するように構成されたコントローラを提供すること、をさらに含む。
【0070】
いくつかの実施形態では、1つ以上の動作パラメータは、電気化学セルに加えられる電力、化学線放射反応器に加えられる電力、および電気化学セルまたは化学線放射反応器のうちの1つを通る電解液または水溶液の流量、のうちの1つを含む。
【0071】
いくつかの実施形態では、方法は、電気化学セルの出口から電気化学セルの入口に水溶液を戻し、再循環溶液を形成するように構成された再循環導管を提供すること、をさらに含む。
【0072】
いくつかの実施形態では、方法は、1つ以上のセンサに動作可能に接続されたコントローラを提供することをさらに含み、1つ以上のセンサは、被処理水の流量、被処理水中の汚染物質の濃度、被処理水中の過酸化水素の濃度、促進酸化プロセス反応器を出る生成水の純度、促進酸化プロセス反応器を出る生成水の流量、または再循環ブライン溶液中の過酸化水素の濃度、の1つ以上を測定するように構成されたものである。
【0073】
いくつかの実施形態では、方法は、1つ以上のセンサから受信した1つ以上の信号に基づいてシステムの1つ以上の動作パラメータを調整するようにコントローラを構成すること、をさらに含み、1つ以上の動作パラメータは、電気化学セルに加えられる電力、促進酸化プロセス反応器に加えられる電力、電気化学セルを通る電解液の流量、促進酸化プロセス反応器を通る被処理水の流量、または促進酸化プロセス反応器で被処理水に照射される放射線の照射量、の1つ以上、を含む。
【0074】
いくつかの実施形態では、方法は、促進酸化プロセス反応器の出口と流体連通する出口を有する、過酸化水素をクエンチする化学薬剤を電気化学的に生成するように構成された第2の電気化学セルを設置すること、をさらに含む。
【0075】
いくつかの実施形態では、方法は、促進酸化プロセス反応器の出口を出る処理水溶液中の過酸化水素の濃度に基づいて、促進酸化プロセス反応器の出口に流体的に結合された導管への化学薬剤の導入速度を制御すること、をさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0076】
添付の図面では、縮尺通りに描くことを意図していない。図面において、様々な図で図示している各同一またはほぼ同一の構成要素は、同様の数字で表している。分かりやすくするために、すべての図面にすべての構成要素を表示していない場合がある。図面は、以下のようなものである。
【
図1A】
図1Aは、水と酸素と関連する反応とから過酸化水素を生成するように構成された電解セルの概略図である。
【
図1B】
図1Bは、海水と酸素と関連する反応とから塩素を生成するように構成された電解セルの模式図である。
【
図2A】
図2Aは、速度および6.9barの溶存空気での水の生成、のカソードボルタンメトリープロットである。
【
図2B】
図2Bは、速度および6.9barの溶存O
2での水の生成、のカソードボルタンメトリープロットである。
【
図3】
図3は、過酸化水素を生成するための同心円管電極電気化学セルの一例の断面図である。
【
図4】
図4は、電気化学セルの一例において、過酸化水素を生成するためのエネルギー量を決定するための計算を示す。
【
図5A】
図5Aは、同心円管電気化学セルの一実施形態の等角図である。
【
図6A】
図6Aは、同心円管電気化学セルの一実施形態を通る電流の流れを示す。
【
図6B】
図6Bは、同心円管電気化学セルの別の実施形態を通る電流の流れを示す図である。
【
図6C】
図6Cは、同心円管電気化学セルの別の実施形態を通る電流の流れを示す図である。
【
図7】
図7は、シングルパス螺旋巻型電気化学セルの一実施形態の等角図である。
【
図8】
図8は、シングルパス螺旋巻型電気化学セルの別の実施形態の等角図である。
【
図9】
図9は、3管同心円管電気化学セルの一実施形態の部分断面図である。
【
図10】
図10は、4管同心円管電気化学セルの一実施形態の部分断面図である。
【
図11】
図11は、5管同心円管電気化学セルの一実施形態の部分断面図である。
【
図12A】
図12Aは、典型的な低圧ガス放電紫外線ランプの放射のスペクトルを示す。
【
図12B】
図12Bは、典型的な中圧ガス放電紫外線ランプの放射のスペクトルを示す。
【
図12C】
図12Cは、異なる適用紫外線エネルギー照射量で低圧または中圧紫外線ランプを使用する促進酸化プロセス反応器における過酸化水素の活性化パーセントを示す。
【
図13】
図13は、1つ以上の実施形態に従った化学線放射反応容器を例示する概略図である。
【
図14】
図14Aは、1つ以上の実施形態に従った
図13の容器の内部の一部を例示する概略図である。
図14Bは、1つ以上の実施形態に従った
図13の容器の内部の別の部分を例示する概略図である。
【
図15】
図15は、化学線放射反応容器と、化学線放射反応容器の上流にある電解セルと、を含むシステムの一実施形態を示す図である。
【
図16】
図16は、化学線放射反応容器と、化学線放射反応容器の上流にある電解セルと、を含むシステムの別の実施形態を示す図である。
【
図17】
図17は、化学線放射反応容器と、化学線放射反応容器の上流にある電解セルと、を含むシステムの別の実施形態を示す図である。
【
図18】
図18は、化学線放射反応容器、化学線放射反応容器の上流にある電解セル、および化学線放射反応容器の下流に流体連通しているクエンチ剤供給源、を含むシステムの別の実施形態を示す。
【
図19】
図19は、潜在的なフィードおよびブリードシステムの配管図および計装図である。
【
図20】
図20は、本明細書に開示される水処理システムの実施形態に利用され得る制御システムを示す。
【
図22】
図22は、過酸化水素の製造のための電気化学セルの1つの試験の結果を示す。
【
図23】
図23は、異なる濃度の酸素を有する溶液を、異なる流量でセルに通して流した状態で配置された電解セルに渡る電流対電圧の試験の結果を示す。
【
図24】
図24は、溶液中にH
2O
2を有するUVAOP反応器における汚染物質破壊に対するpHの効果の試験結果を示す。
【
図25】
図25は、UVAOP反応器におけるH
2O
2の活性化に対するpHの効果の試験結果を示す。
【
図26】
図26は、UVAOP反応器における1、4-ジオキサン破壊に対するUV照射量およびH
2O
2濃度の影響の試験結果を示し、そして、
【
図27】
図27は、UVAOP反応器におけるフミン酸破壊に対するUV照射量とH
2O
2濃度との影響の試験結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0077】
本明細書に開示される態様および実施形態は、以下の説明で定めた、または図面に示した構造の詳細および構成要素の配置に限定されない。本明細書に開示される態様および実施形態は、様々な方法で実施(practiced)することが可能であり、または実施(carried out)することができる。また、本明細書で使用される言い回し及び用語は、説明のためのものであり、限定的なものと見なすべきではない。本明細書における「含む(including)」、「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(containing)」、「含む(involving)」、およびそれらの変形例の使用は、その後に記載された項目およびその同等物、並びに追加の項目を包含することを意図している。
【0078】
本明細書に開示される1つ以上の態様は、汚染廃水を処理する方法に関する。いくつかの実施形態によれば、方法は、被処理難分解性有機汚染物質の初期濃度を有する汚染廃水を提供することと、汚染廃水に過酸化水素を導入して過酸化水素を含む水溶液を生成することと、水溶液を紫外線に曝露して処理水溶液を生成することと、を含み、処理水溶液は難分解性有機汚染物質の初期濃度より少なくとも50%少ない難分解性有機汚染物質の濃度を有している。本明細書では、処理水溶液を生成水または単に生成物と呼ぶこともある。
【0079】
いくつかの実施形態では、処理水溶液は、例えば、過酸化水素を分解させる化学物質の添加によって、残留する過酸化水素を除去するために、さらに処理される。過酸化水素をクエンチするための1つの好適な化学物質は、次亜塩素酸ナトリウムである。次亜塩素酸ナトリウムおよび過酸化水素の反応により、以下の式に従って塩、水および酸素が生成される。
NaOCl+H2O2 → NaCl+H2O+O2
【0080】
気体塩素、クロラミン、またはチオ硫酸塩などの他の化学物質を追加的または代替的に使用して、残留する過酸化水素をクエンチし得る。さらなる実施形態において、処理水溶液は、残留過酸化水素をクエンチまたは分解するために活性炭床に通し得る。
【0081】
特定の態様によれば、方法は、被処理汚染廃水の全有機炭素(TOC)値を測定することを、さらに含むことができる。方法は、測定されたTOC値に基づいて、過酸化水素が汚染廃水に導入される速度および紫外線の照射量の少なくとも一方を調整することをさらに含み得る。さらなる態様によれば、紫外線の照射量を調整することは、紫外線の強度を調整すること、および第1の処理水溶液に対する紫外線の暴露時間を調整することの少なくとも1つ、を含む。別の態様によれば、紫外線の暴露時間を調整することは、水溶液の流量を調整すること、を含む。さらに別の態様によれば、紫外線の暴露時間を調整することは、反応器における水溶液の滞留時間を調整することを含む。
【0082】
少なくとも1つの態様によれば、方法は、処理水溶液のTOC値を測定すること、をさらに含むことができる。少なくとも1つの態様によれば、方法は、処理水溶液の少なくとも一部を、処理水溶液の測定されたTOC値に基づいて、過酸化水素の導入より上流の地点に再循環させること、をさらに含むことができる。いくつかの態様によれば、方法は、処理水溶液の測定されたTOC値に基づいて、過酸化水素を汚染廃水に導入する速度および紫外線の照射量の少なくとも一方を調整すること、をさらに含む。
【0083】
本明細書に開示される方法およびシステムは、例えば、UV反応器の下流で紫外線に曝露した後の処理水溶液中の残留過酸化水素の濃度の測定も含むことができる。過酸化水素の濃度は、例えば、処理水溶液の酸化還元電位(ORP)の測定値から決定することができる。異なる濃度の過酸化水素を有する水のサンプルにおけるORPの測定値は、他の方法、例えば滴定によって行われた水のサンプル中の過酸化水素濃度の決定値と比較され、ORP対過酸化水素濃度の検量線を生成し得る。他の実施形態では、処理水溶液のサンプルを定期的に採取し、サンプル中の過酸化水素の濃度を、例えば滴定を介して直接決定し得る。汚染廃水に導入する過酸化水素の割合または濃度、水溶液に照射する紫外線の照射量、あるいは、処理水溶液に導入して残留過酸化水素をクエンチする薬剤の添加速度または濃度、のうちの1つ以上を、処理水溶液中の残留過酸化水素の量または濃度の少なくとも一部に基づいて調整し得る。
【0084】
様々な態様によれば、水溶液は第1の処理流であり、処理水溶液は第2の処理流であり、過酸化水素は、第1の処理流の紫外線への曝露よりも上流で汚染廃水に導入される。一態様によれば、第2の処理水溶液中の難分解性有機汚染物質の濃度は、汚染物質の初期濃度に対して少なくとも99%未満である。少なくとも1つの態様によれば、方法は、汚染廃水を前処理することをさらに含むことができる。さらなる態様によれば、汚染廃水を前処理することは、過酸化水素を導入する前に、汚染廃水を媒体フィルタに導入すること、を含む。
【0085】
特定の態様によれば、過酸化水素は、汚染廃水または廃水に導入され、過酸化水素を含む廃水(水溶液)は、シングルパスで紫外線に曝露される。
【0086】
少なくとも1つの態様によれば、処理水溶液は飲料水である。別の態様によれば、方法は、汚染廃水または地下水を浄化現場から抽出することをさらに含んでもよい。
【0087】
本明細書に開示される1つ以上の態様は、汚染廃水を処理するためのシステムに関する。「汚染水」および「被処理水」という用語は、本明細書において同義であるとみなされるべきである。いくつかの実施形態では、システムは、難分解性有機汚染物質の初期濃度を有する汚染廃水源と、汚染廃水と流体連通しているTOC濃度センサと、汚染廃水源に流体連通し、過酸化水素を含む水溶液を生成するために過酸化水素を汚染廃水へ導入するよう構成された過酸化水素供給源と、汚染廃水源に流体的に接続され、水溶液を照射するように構成された化学線放射源と、TOC濃度センサと通信し、TOC濃度センサからの出力信号に少なくとも部分的に基づいて、汚染廃水に過酸化水素を導入する速度および化学線放射源によって照射される照射量の少なくとも一方を制御するように構成されたコントローラと、を含む。
【0088】
特定の態様によれば、システムは、汚染廃水源および過酸化水素供給源に流体的に接続され、かつ、化学線放射源を収容するように構成された反応器、をさらに含む。別の態様によれば、コントローラは、反応器内の水溶液の滞留時間を制御することによって照射量を制御するように構成される。さらに別の態様によれば、コントローラは、汚染廃水または水溶液の流量を制御することによって、照射量を制御するように構成される。さらなる態様によれば、化学線放射源は、過酸化水素供給源から下流に配置される。少なくとも1つの態様によれば、TOC濃度センサは、過酸化水素供給源から上流側に配置される。別の態様によれば、TOC濃度センサは第1のTOC濃度センサであり、システムは、コントローラと通信し、かつ、化学線放射源から下流に配置された第2のTOC濃度センサ、をさらに含む。特定の態様によれば、コントローラは、過酸化水素が汚染廃水に導入される速度、および、第2のTOC濃度センサからの出力信号に少なくとも部分的に基づいて、化学線放射源によって加えられる照射量の少なくとも一方を制御するように構成される。
【0089】
特定の態様によれば、システムは、化学線放射源または反応器の下流に、処理水中の残留過酸化水素を測定するためのセンサを含む。システムは、残留過酸化水素をクエンチする薬剤を、化学線放射源または反応器の下流の処理水中に導入する薬剤の供給源をさらに含み得る。コントローラは、処理水中の残留過酸化水素測定用センサからの出力信号に少なくとも部分的に基づいて、汚染廃水に導入する過酸化水素の速度または濃度、水溶液に照射する紫外線の照射量、あるいは、処理水中の残留過酸化水素をクエンチする薬剤の添加速度または濃度、のうちの1つ以上をさらに制御するように構成され得る。
【0090】
1つ以上の態様は、廃水処理システムおよび技術に向けることができる。システムおよび技術は、過酸化水素投与システムを紫外線(UV)光源と組み合わせて利用し、難分解性有機汚染物質で汚染された廃水を処理し得る。いくつかの実施形態によれば、廃水は、廃水をポンプで地中に戻すことができるようなレベルまで難分解性有機汚染物質の濃度が低下するように、処理される、すなわち難分解性有機汚染物質のレベルが統治当局によって設定された1つ以上の基準未満に低下するように、処理される。さらなる態様によれば、処理廃水が飲料水として特徴付けられ得るように、難分解性有機汚染物質の濃度が低減される。例えば、いくつかの実施形態によれば、本明細書に開示される方法およびシステムは、汚染廃水を処理して飲料水を生成することができる。飲料水は、自治体によって設定された基準に適合し得る。本明細書で使用される「難分解性有機」という用語は、汚染物質に関して使用される場合、微生物分解に抵抗する、または容易に生分解されない有機化合物を指す。特定の事例では、難分解性有機汚染物質は、生物学的に分解されない場合があり、浄化方法は環境規制を満たすのに十分な量の物質を除去できない場合がある。難分解性有機汚染物質の非限定的な例としては、1,4-ジオキサン、トリクロロエチレン(TCE)、パークロロエチレン(PCE)、尿素、イソプロパノール、クロロホルム、アトラジン、トリプトファン、およびギ酸が挙げられる。以下の表1Aから1Dは、本明細書に開示されるシステムおよび技術によって処理される廃水中に存在し得る、および廃水から除去され得る、あるいは本明細書に開示されるシステムおよび技術によって分解または酸化され得る難分解性有機汚染物質の非限定的な例を列挙する。
【0091】
以下の表1Aおよび1Bは、本明細書に開示されるシステムおよび方法によって処理または分解または酸化され得る様々な種類の有機汚染物質およびその例を列挙する。
【0092】
【0093】
【表1B-1】
【表1B-2】
【表1B-3】
【表1B-4】
【0094】
表1Cは、本明細書に開示される方法およびシステムによって処理または分解または酸化され得る、様々な難分解性有機汚染物質およびそれらの各部類の追加の例を列挙する。これらの化合物の1つ以上は、内分泌撹乱物質であり得る。内分泌撹乱物質とは、生体の恒常性、および生殖、発達および行動に関与する様々な体内ホルモンの合成、貯蔵、分泌、内部輸送、受容体結合、ホルモン活性および排泄等の様々なプロセスを阻害または促進する外来性化学物質を指す場合があり、外来性内分泌撹乱物質、内分泌撹乱物質、内分泌撹乱化学物質、内分泌障害物質、または環境ホルモンとも呼ばれることがある言葉でもある。
【0095】
【0096】
表1Dは、本明細書に開示されるシステムおよび方法によって処理または分解または酸化され得る医薬およびパーソナルケア製品化合物の非限定的な例、を含む。これらの物質の1つ以上は、内分泌撹乱物質であり得る。
【0097】
【0098】
少なくとも1つの態様によれば、いくつかの実施形態は、汚染廃水を処理するための方法を含む。さらに、このプロセスは、汚染された地下水を修復するために使用され得る。本明細書で使用する場合、「地下水」という用語は、地中源から回収可能な水、ならびに小川、池、沼地、および他の同様の水域などの地表水域から回収された水を指す場合がある。廃水または地下水は、上述したように、難分解性有機汚染物質で汚染されている場合がある。廃水は、工業プロセス、農薬および除草剤の散布などの農業プロセス、またはトリハロメタンなどの望ましくない副産物を生成する消毒プロセスなどのその他のプロセスといった、多数の異なる源のいずれか1つから汚染されている可能性がある。
【0099】
少なくとも1つの実施形態に従って、本明細書に開示される方法およびシステムは、難分解性有機汚染物質の初期濃度を有する汚染廃水を提供することを含み得る。いくつかの実施形態によれば、本明細書に開示される方法およびシステムは、汚染廃水を抽出すること、または、そうでなければ、除去することを含んでもよい。例えば、汚染廃水は、浄化作業の一環として、1つ以上のポンプまたは他の抽出装置を使用して、地面または他のソースから汲み上げられ得る。一旦処理されると、廃水は、その後、排出されるか、またはさらなる処理のために送られるかもしれない。いくつかの実施形態によれば、汚染廃水は、ポンプで送られるか、または、そうでなければ、地上等級レベル(the surface grade level)まで除去され、そこで、本明細書で検討されるプロセスおよび方法に従って処理され得る。例えば、いくつかの実施形態によれば、本明細書に開示される方法およびシステムは、汚染廃水を浄化現場から抽出することを含んでもよい。少なくとも1つの実施形態において、1つ以上の抽出井戸およびポンプなどの抽出装置が、汚染廃水を地表に汲み上げて処理するために使用され得る。一旦処理されると、ポンプまたは他の分配システムが、処理廃水または地下水を地中に再注入するため、または、そうでなければ、処理廃水を環境中に再導入するために使用され得る。特定の実施形態では、汚染廃水は、処理前に保持タンクまたは容器に貯蔵されてもよく、場合によっては、本明細書に開示されるプロセスによって生成された処理水が、汚染廃水に添加され、またはそうでなければ、混合され得る。
【0100】
1つ以上の態様によれば、汚染廃水は、約100mg/Lから約5000mg/Lの範囲である全溶解固形物(TDS)のレベルを有してよく、いくつかの実施形態では約200mg/Lから約2000mg/Lの範囲であってよいが、これらの値は、地理的位置および他の要因によって変化し得る。比較の材料として、TDSレベルが1000から1500mg/Lの水は飲用可能とみなされ、いくつかの規格では生活用水用のTDS制限値は、500mg/Lである。
【0101】
別の態様によれば、本明細書に開示される方法およびシステムは、汚染廃水源と接続されるか、または、そうでなければ、流体連通することができる。例えば、汚染廃水は、処理のために開示されたシステムにポンプで送られるか、または、そうでなければ供給され得る。
【0102】
様々な態様によれば、廃水中の難分解性有機汚染物質の濃度は、政府機関によって設定された制限値を超えるほど高い。いくつかの実施形態によれば、本明細書に開示されるシステムおよび方法は、難分解性有機汚染物質の濃度レベルを低下させるように廃水を処理する。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるシステムおよび方法は、政府の基準またはガイドラインに準拠するレベルまで難分解性有機汚染物質の濃度を低減させる。一実施形態によれば、難分解性有機汚染物質の濃度は、処理廃水が環境に再導入され得るようなレベルまで低減される。例えば、飲料水中の1,4-ジキソアンの濃度に関するEPAの基準は、1μg/L(1ppb)である。本明細書に開示される方法およびシステムは、廃水中に存在し得る実質的に全ての濃度の難分解性有機汚染物質を処理するために規模を拡大することができる。例えば、いくつかの実施形態によれば、廃水中のジオキサンなどの難分解性有機汚染物質の初期濃度は、約5ppbから約800ppbの範囲内であってよい。
【0103】
本明細書に開示される態様および実施形態は、促進酸化プロセスで使用され得る過酸化水素のオンサイト生成のための独自の設計およびプロセスストリームを含み得る。
【0104】
促進酸化プロセス(AOP)は、廃水から有機物を除去するために使用される一連の処理手順である。多くの用途において、これらのプロセスには、紫外線および過酸化水素の使用が含まれ、具体的には次式のようである。
H2O2+UV → 2・OH
(H2O2のO-O結合の均一結合開裂により、2・OHラジカルが生成される)
【0105】
AOPのための過酸化水素の生成には、ガス拡散電極(GDE)を用いた最新の電気化学デバイスが存在する。しかし、このようなGDEベースのデバイスは、特に高圧での構造材料の堅牢性、水の硬度に起因する性能制限、および加圧ガスの分配/供給が原因で、この目的には多くの欠陥があることが実証されている。
【0106】
本明細書に開示される態様および実施形態は、AOPと結合することができるオンサイト電気化学的過酸化水素生成のためのデバイスを含み、このデバイスは、化学物質の供給/貯蔵の必要性と、過酸化水素を供給するためのコストの低減と、を排除する。本明細書に開示される態様および実施形態は、過酸化水素を含む水溶液をUVAOPシステムで処理することから生じる処理溶液中の残留過酸化水素をクエンチするために使用され得る次亜塩素酸ナトリウムのオンサイト電気化学生成用デバイス、をさらに含んでもよい。いくつかの実施形態では、同じ電気化学セルまたはデバイスを、過酸化水素と次亜塩素酸ナトリウムとの両方の製造に利用することができる。
【0107】
図1Aおよび
図1Bに列挙した電気化学反応について考える。水性プロセスストリームを有する電気化学セルで、アノードに適切な触媒(Ir、Pt、Ru、混合金属酸化物(MMO)およびそれらの組み合わせ)を使用した場合、O
2生成反応のオーバーポテンシャルを促進することができる(所望により、次亜塩素酸ナトリウムの共同生成とともにまたはそれなしで)。同様に、カソードに適切な触媒(Ir、Pt、Ru、混合金属酸化物(MMO)およびそれらの組み合わせ)を使用し、高濃度の溶存酸素を加圧供給することで、H
2O
2反応のオーバーポテンシャルを向上させることが可能である。これらの反応は、
図1Aに記載されている。いくつかの実施形態では、H
2O
2は、触媒を使用せずに、例えばチタンなどの耐腐食性材料で形成されたカソードを有する電気化学デバイスにおいて、生成され得る。カソードは、H
2O
2の生成のための電気化学セルにおけるアノードの活性表面積よりも小さい活性表面積を有し得る。
【0108】
電気化学反応生成物のオンサイト生成のための電気化学セルは、当該技術分野において公知である。いくつかの実施形態では、これらのデバイスは、ブラインベースのプロセスストリームを受け取る入口、次亜塩素酸ナトリウムを生成するための触媒活性アノード、およびO
2を還元して水を形成するための触媒活性カソードを含む(
図1B)。これらのデバイスは、高圧(1ATM超)と乱流速度(2m/s超)とを利用して反応速度を高め、加圧空気(6.9bar)と酸素(6.9bar)との両方を使用して、水のカソード生成に高い電流密度(それぞれ約600A/m
2と約2200A/m
2と)を実現した(
図2A、
図2B)。
【0109】
図2Aおよび
図2Bは、電解セルのアノードとカソードとに異なる速度で水を流し、アノードとカソードとの間の電圧と電流とをプロットしたカソードボルタンメトリープロットである。これらのプロットにおいて、「1ATM」曲線は、3.1m/sのピーク速度における標準的な1気圧の状態を表している。これらのプロットにおける曲線の変曲点は、起こっている反応の種類の変化を示す。
図2Aにおいて、約0.125ボルトの一番上の曲線の変曲点の右側の点は、
図1Aに示した反応に従って過酸化水素の発生が起こる電圧/電流領域である。一番上の曲線の約0.125ボルトと約0.8ボルトとの変曲点の間では、水中の酸素が水素と結合して、さらに水が生成されている。一番上の曲線の約0.8ボルトの変曲点の左側では、水が分解して酸素と水素とが生成されている。
【0110】
図2Bは、
図2Aとは異なり、曲線を生成するために使用した水に、より多くの酸素を溶解させたものである。酸素を追加することで、電気化学反応の速度論が高まり、
図2Aの曲線で表される反応よりも高い電流が得られるようになった。
【0111】
H
2O
2生成反応は、H
2O生成反応よりもエネルギー的に有利であるため(+0.682V vs +0.4V)、印加電位をシフトすることで反応化学をシフトすることもでき、既存の電気化学セルの設計を利用することができるはずである。
図3に示す非限定的な実施形態について考える。このバイポーラ電気化学セルでは、水と溶存酸素とが環状ギャップを高速(2m/s超)で流れている。電流は、最初のアノードから最初のカソードへ、そして中心管を通り、最後のアノードから最後のカソードへ流れる。各電極面での反応化学は前述の通りである。
【0112】
単位質量発生速度あたりの必要電流の計算は
図4に記載されており、具体的には1kgあたり1.57kA/h(ファラデー効率100%と仮定)である。電極面積は印加電流密度に依存するので、
図2Bに示すようなパラメータに基づいて、1kg/hの生成速度に対して、
図3に記載したような実施形態では、0.71m
2の面積が予想される場合がある(1.57kA/(2.2kA/m
2))。
【0113】
少なくとも1つの態様によれば、そのいくつかの実施形態は、水の流れ中の望ましくない成分(汚染物質)の濃度を浄化または減少させるためのシステムを含むことができる。このシステムは、少なくとも1つの化学線放射反応器に流体的に接続された1つ以上の水源を含むことができる。少なくとも1つの反応器は、水源から水を照射するように構成され得る。システムは、酸化剤、例えば、過酸化水素の1つ以上の供給源をさらに含むことができる。酸化剤の1つ以上の供給源は、1つ以上の水源から水中に1つ以上の酸化剤を導入するように配置され得る。
【0114】
化学線放射反応器は、1つ以上の酸化剤によって吸収されると、1つ以上の酸化剤からフリーラジカル、例えば、・OHを生成させる紫外線を生成する1つ以上の紫外線(UV)ランプを含む反応器であってよい。フリーラジカルは、水中の溶存有機炭素種、例えば、トリクロロメタンまたは尿素を、望ましくなさがより低い化学種、例えば、二酸化炭素および水へと酸化させることができる。望ましくない種、例えば有機炭素種を流体、例えば水から除去するための処理プロセスの実施形態は、本明細書において、促進酸化プロセス(AOP)またはフリーラジカル消去プロセスと呼ぶことがある。これらの用語は、本明細書において同義的に使用される。
【0115】
本明細書に開示される態様および実施形態は、一般に、UV反応器、および、UV反応器における汚染物質の酸化を促進するためにUV反応器に導入する過酸化水素などの酸化剤を生成する電気化学デバイス、を含むAOPシステム、並びに、かかるシステムの使用方法に向けられている。
【0116】
用語「電気化学デバイス」、「電気化学セル」、「電解槽」およびその文法的変形は、「電気塩素化デバイス」および「電気塩素化セル」およびその文法的変形を包含するものと理解すべきである。本明細書に開示される態様および実施形態は、1つ以上の電極を含むものとして説明される。本明細書で使用される「金属電極」またはその文法的変形は、「金属電極」という用語が、他の金属または合金からなる電極を含むことを排除しないが、例えばチタン、アルミニウム、またはニッケルなどの1つ以上の金属から形成された、それを含む、またはそれからなる電極を包含するものと理解するべきである。いくつかの実施形態では、「金属電極」は、異なる金属の複数の層を含んでもよい。本明細書に開示される実施形態のいずれか1つ以上に利用される金属電極は、電解質溶液による化学的攻撃に対して高い耐性を有する金属または金属酸化物、例えば、チタン、白金、混合金属酸化物(MMO)、マグネタイト、フェライト、コバルトスピネル、タンタル、パラジウム、イリジウム、銀、金、またはその他のコーティング材料、の層で被覆された高伝導金属、例えば銅またはアルミニウムのコアを含んでもよい。「金属電極」は、例えば、白金、混合金属酸化物(MMO)、マグネタイト、フェライト、コバルトスピネル、タンタル、パラジウム、イリジウム、銀、金、またはその他のコーティング材料などの耐酸化コーティングで被覆し得るが、これらに限定されるものではない。本明細書に開示される実施形態で利用される混合金属酸化物は、ルテニウム、ロジウム、タンタル(任意にアンチモンおよび/またはマンガンと合金化される)、チタン、イリジウム、亜鉛、スズ、アンチモン、チタン-ニッケル合金、チタン-銅合金、チタン-鉄合金、チタン-コバルト合金、またはその他の適切な金属または合金、のうちの1つ以上の酸化物(単数)あるいは酸化物(複数)を含むことができる。本明細書に開示される実施形態で利用されるアノードは、白金、および/または、イリジウム、ルテニウム、スズ、ロジウム、またはタンタルのうちの1つ以上の酸化物(単数)あるいは酸化物(複数)(任意にアンチモンおよび/またはマンガンと合金化される)で被覆され得る。本明細書に開示される実施形態において利用されるカソードは、白金、および/または、イリジウム、ルテニウム、およびチタンのうちの1つ以上の酸化物(単数)あるいは酸化物(複数)で被覆され得る。本明細書に開示される実施形態において利用される電極は、チタン、タンタル、ジルコニウム、ニオブ、タングステン、および/またはシリコンのうちの1つ以上の基体を含んでもよい。本明細書に開示される電気化学セルのいずれかのための電極は、プレート、シート、スクリーン、フォイル、押出物、および/またはシンターとして、またはこれらから形成され得る。
【0117】
本明細書で使用する「管」という用語は、円筒形の導管を含むが、他の断面形状を有する導管、例えば、正方形、長方形、楕円形、またはオブラウンド(obround)の形状を有する導管、あるいは、任意の正多角形または不定形の多角形として形作られた断面形状を有する導管、を除外しない。
【0118】
本明細書で使用される用語「同心円管」または「同心螺旋」は、共通の中心軸を共有する管またはインターリーブ螺旋を含むが、同心円管またはインターリーブ螺旋の集合における各同心円管またはインターリーブ螺旋の、必ずしも中心ではない共通の軸を囲む管またはインターリーブ螺旋、あるいは、互いにオフセットした軸を有する管またはインターリーブ螺旋、を除外するものではない。
【0119】
本明細書に開示される態様および実施形態は、電極の数、電極間の空間、電極材料、電極間の任意のスペーサの材料、電気塩素化セル内のパス数、または電極のコーティング材料に限定されない。
【0120】
本開示は、促進されたAOPプロセスを実行するためにUV反応器と組み合わせて使用され得る電気塩素化セルおよび電気塩素化デバイスの様々な実施形態について説明する。
【0121】
図5Aおよび
図5Bは、Electrocatalytic社製の同心円管102、104を有する電気塩素化セル100の一例である。外管102の内面および内管104の外面が活性電極部である。電極間のギャップは約3.5mmである。軸方向の隙間での液体速度は、2.1m/sのオーダーとなり、高い乱流が発生し、電極表面のファウリングおよびスケーリングの可能性を低減することができる。本明細書に開示されるような同心円管を有する電気塩素化セルを通る電解液の高流速および乱流は、他の電気化学セル構成、例えば平行プレート電極を有する電気化学セル、と比較して、硬度によるスケール形成を防止する上で大きな利点となる。
【0122】
図6Aから6Cは、同心円管電極(CTE)電気化学セルにおける電極のいくつかの可能な配置を示す図である。
図6Aは、電流がアノードからカソードへ1パスで流れる配置を示す。両電極は、通常チタンから作られ、アノードは、白金または混合金属酸化物(MMO)でコーティングされている。これらの電極は「モノポーラ」と呼ばれる。
【0123】
図6Bは、2つの外側電極と1つの内側電極とを有するデバイスを2パスで電流が流れる配置を示す。外側電極の1つは、アノードとして機能するように内側表面がコーティングされており、他の1つはコーティングされていない。内側電極の外面の一部は、アノードともなるようにコーティングされており、残りの部分は、コーティングされていない。電流は、電解液中を、コーティングされた外側電極から内側電極の非コーティング部分へ、内側電極に沿ってコーティング部分へ、そして最後に電解液を横切って非コーティング外側電極へ流れる。内側電極は「バイポーラ電極」とも呼ばれる。
【0124】
図6Cは、複数の外側電極と1つの内側電極とを持つデバイスを複数パスで電流が流れる配置を示すものである。外側電極のコーティングと非コーティングとを交互に行い、内側電極を一定の間隔でコーティングすることで、電流が電解液中を複数回往復することができる。
【0125】
複数パスの根拠は、表面で電気化学反応に利用できる電極の面積全体、つまり酸化剤(過酸化水素など)の全体生産率を、印加電流を比例して増加させずに増やすことができることである。電流を増加させるには、直流電源から電気塩素化セルまでのより大きなワイヤまたはバスバー、セル上のより大きな電気コネクタ(
図1Aの例では外側電極の外面上のラグ101Aおよび101B)および電極のためのより厚いチタンが必要である。
【0126】
同じ電流であれば、マルチパスデバイスは、シングルパスセルよりも生産率が高くなるが、全体の電圧降下は、高くなる(パス数にほぼ比例する)。同じ生産率であれば、マルチパスセルは、より低い電流を必要とする(パス回数にほぼ反比例する)。同じ出力(kW)であれば、電源コストは、出力電圧よりも出力電流に敏感であるため、マルチパスセルが有利になり得る。
【0127】
実際には、マルチパスセルには非効率なところがある。例えば、「バイパス電流」と呼ばれる電流の一部は、外側電極と内側電極との間のギャップで電解液を横断せずに、アノードからカソードに直接流れることができる(
図6Bおよび6Cを参照)。バイパス電流は、電力を消費するが、非バイパス電流に比べて酸化剤の生成効率は低くなる。また、マルチパスセルは、製造および組み立てがより複雑である。例えば、内側電極の外側表面の一部は、残りの部分がコーティングされる前にマスキングされる必要がある。
【0128】
本明細書に開示される態様および実施形態は、
図7および
図8に示される非限定的な例である、螺旋巻電極を有する電気化学セルを含み得る。螺旋巻の構成では、アノード-カソード対を形成するアノード205およびカソード210の2つの螺旋巻電極は、アノード205とカソード210との間にギャップ215を形成するように配置されている。
図7においてθとラベル付けされた、螺旋の開始端および/または螺旋の終端の間の角度差は、0゜から180゜の範囲であってよい。供給電解質溶液は、螺旋の軸に実質的に平行な方向でギャップ215を通って流れる。直流電圧、一定または可変、あるいはいくつかの実施形態では交流電流が、電極を横切って、電解質溶液を通して加えられる。アノードタブ220およびカソードタブ225は、それぞれアノード205およびカソード210に接続されるか、または一体的に形成され、アノード205およびカソード210への電気的接続を提供する。電流は、アノード205からカソード210まで1パスで流れる。電気化学セル内の電極の表面およびバルク電解質溶液中で電気化学反応および化学反応が起こり、生成溶液が発生する。
【0129】
螺旋巻電極205、210は、電極を外部環境から電気的に絶縁し、電気化学セルを通過する電解液の液圧に耐えられるように設計されたハウジング235(
図8参照)内に収容され得る。ハウジング235は、非導電性であってもよく、電解質溶液に対して化学的に非反応性であってもよく、システム圧力に耐えるのに十分な強度を有し得る。いくつかの実施形態では、流体が中心を流れてギャップを迂回することを防止する固体コア、中心コア要素、または流体フローディレクターが提供され得る。
【0130】
本明細書に開示される態様および実施形態は、同心円状に配置された管状電極を含む電気化学セルに適用されてもよく、その非限定的な例は、
図9から
図11に示されている。同心円管電極の少なくともいくつかは、モノポーラまたはバイポーラであり得る。3つの同心円管を含む第1の実施形態が、一般に300で示される
図9に図示されている。中間管電極305は、中間管電極305の表面積を十分に利用するために、内面および外面の両方に耐酸化コーティング、例えば、白金またはMMOを有するアノードである。内側管電極310と外側管電極315は、コーティングがなく、それぞれ内側カソードおよび外側カソードとして機能する。電極は、1つの電極につき1回電解液を電流が通過するようなモノポーラである。電極305、310、315の各々は、チタン管を含んでもよい。アノード電気接続部330は、中間管電極305と電気的に連通している。カソード電気接続部335は、内側管電極310および外側管電極315と電気的に連通している。他の実施形態では、中間管電極305がカソードであり、内側管電極310および外側管電極315がアノードであり得る。電気塩素化セル300および本明細書に開示される同心円管電極を含むその他の電気化学セルは、例えば、
図8に図示されるハウジング235のような非導電性ハウジングに含まれ得る。
【0131】
複数のアノード管電極またはカソード管電極を含む本明細書に開示される実施形態において、複数のアノード管電極をアノードまたはアノード管と総称し、複数のカソード管電極をカソードまたはカソード管と総称することがある。複数のアノード管電極および/または複数のカソード管電極を含む実施形態では、本明細書において、複数のアノード管電極および/または複数のカソード管電極を総称してアノードカソードペアと呼ぶことがある。
【0132】
内側管電極310と外側管電極315との間は、1つ以上の導電性ブリッジ340によって電気的に接続されてもよく、この導電性ブリッジは、内側管電極310および外側管電極315と同じ材料、例えば、チタンで形成され得る。電気化学反応および化学反応は、電極の表面およびバルク溶液中で起こり、例えば、UVAOP反応器中の酸化フリーラジカル源としての過酸化水素、またはUVAOP反応器を出る処理水溶液中の残留過酸化水素をクエンチするための次亜塩素酸ナトリウムなどの生成溶液を発生させる。
【0133】
別の実施形態によれば、同心円管電気化学セルまたは同心円管電気塩素化セルは、4つの同心円管電極、を含む。四管電気塩素化セルの一例が、
図10に、一般に400で示されている。四管電気塩素化セル400は、アノードとして作用し、アノード電気コネクタ425と電気的に連通し得る内側管電極405および中間管電極410、を含む。内側管電極405および中間管電極410はまた、1つ以上の導電性ブリッジ450を介して互いに電気的に連通し得る。外側管電極420および中間管電極415は、カソード電気コネクタ430と電気的に連通し得るカソードとして機能する。外側管電極420および中間管電極415も、1つ以上の導電性ブリッジ455を介して互いに電気的に連通し得る。外側管電極420および中間管電極415は、中間アノード管電極410の反対側に配置される。四管電気塩素化セル400は、四管電気塩素化セル400に形成された3つの環状ギャップ435、440、445に供給電解質溶液が流れること以外は、三管電気塩素化セル300と同様に動作する。別の実施形態では、外側管電極420および中間管電極415はアノードであってもよく、内側管電極405および中間管電極410はカソードであり得る。
【0134】
別の実施形態によれば、同心円管電気塩素化セルは、5つの同心円管電極、を含む。5管電気塩素化セルの一例が、
図11に、一般に500で示されている。五管電気塩素化セル500は、アノードとして働き、アノード電気コネクタ535と電気的に連通し得る中間管電極520および525、を含む。中間管電極520、525はまた、1つ以上の導電性ブリッジ565を介して互いに電気的に連通し得る。内側管電極505、中央管電極510、および外側管電極515は、カソード電気コネクタ530と電気的に連通し得るカソードとして機能する。内側管電極505、中心管電極510、および外側管電極515はまた、1つ以上の導電性ブリッジ560を介して互いに電気的に連通し得る。中間管電極520、525は、中心アノード管電極510の反対側に配置される。5管電気塩素化セルは、供給電解質溶液が5管電気塩素化セルに形成された4つの環状ギャップ540、545、550、555を流れることを除いて、4管電気塩素化セル400と同様に動作する。他の実施形態では、内側管電極505、中央管電極510、および外側管電極515は、アノードであってもよく、中間管電極520、525は、カソードであり得る。
【0135】
螺旋巻状、同心円状、放射状、およびインターリーブ電極を含む電気化学セル、およびその中で次亜塩素酸ナトリウムなどの化合物を電気化学的に生成する方法は、その全体が参照することにより本明細書に組み込まれる共同出願であるPCT出願PCT/US2016/018213、公開番号WO2016133983においてさらに詳細に説明されている。
【0136】
本明細書に開示されるシステムは、本明細書に開示される電気化学セルで生成された1つ以上の酸化剤を受け取って、化学線放射反応器で処理中の水中の1つ以上の汚染物質の破壊、例えば酸化を促進する、例えばUV反応器を含むことができる。化学線放射反応器は、容器と、容器内の管の第1の配列とを含むことができる。管の第1の配列は、平行管の第1のセットと、平行管の第2のセットとから構成され得る。各管は、少なくとも1つの紫外線ランプを含むことができ、第1のセットの平行管の各々は、第2のセットの管の長手方向軸に対してその長手方向軸が直交するように配置される。
【0137】
本明細書に開示されるシステムで利用される化学線放射反応器の例では、処理中の水中の有機化合物は、1つ以上のフリーラジカル種によって二酸化炭素に酸化され、1つ以上の下流の単位操作で除去され得る。化学線放射反応器は、1つ以上の前駆体化合物、例えば、電気塩素化デバイスによって提供される1つ以上の酸化剤を、1つ以上のフリーラジカル捕捉種、例えば、ヒドロキシラジカル・OHに変換する少なくとも1つのフリーラジカル活性化デバイス、を含み得る。化学線放射反応器は、1つ以上の反応チャンバ内にある1つ以上のランプを含み、水に放射線を照射する、または、そうでなければ、水に化学線を提供し、前駆体化合物を1つ以上のフリーラジカル種に分割することが出来る。
【0138】
反応器は、チャンバ間の1つ以上のバッフルによって2つのチャンバに分割することができる。バッフルは、反応器に混合もしくは乱流を提供するか、または混合を防止するか、またはチャンバ内など反応器の内部を通る層流、平行流の路を促進するために使用することができる。特定の実施形態では、反応器入口が第1のチャンバと流体連通しており、反応器出口が第2のチャンバと流体連通している。
【0139】
いくつかの実施形態では、それぞれのチャンバ内の水を様々なパワーレベルで約185nm、220nm、および/または254nm、あるいは、約185nmから約254nmの範囲の光で照射するように配置された少なくとも1つの紫外線ガス放電(UV)ランプを有する少なくとも三つの反応チャンバが、反応器120に連続的に配置されている。これらの波長の紫外線は、溶存有機汚染物質を酸化するためのプロセスで利用されるフリーラジカル前駆体(例えば、H2O2)からフリーラジカルを生成するのに十分な光子エネルギーを有するので、AOPプロセスにおいて185nmから254nmまたは190nmから200nmの短い波長が好ましい場合があることを理解すべきである。一方、微生物を殺傷または死滅させるために紫外線を利用する消毒工程では、低圧ランプによる波長254nmの紫外線で効率的に動作することがある。消毒システムでは、通常、より短い185nmまたは220nmの波長で有意な紫外線強度を提供することができるより高価な中圧または高圧紫外線ランプを利用しないであろう。
【0140】
低圧および中圧の紫外線ガス放電ランプは、通常、異なるスペクトルの紫外線を放射する。
図12Aは、典型的な低圧紫外線ランプによって放射される放射のスペクトルを示し、
図12Bは、典型的な中圧紫外線ランプによって放射される放射のスペクトルを示している。低圧紫外線ランプは、その光の大部分を約185nmおよび約254nmの波長で放射する一方、中圧ランプは、低圧ランプよりも長い波長を含むより広い範囲の波長で光を放射するので、AOPプロセスにおける使用により適切であると考えられる。
図12Cは、例えば、中圧ランプとは対照的に低圧ランプが利用される場合、より低い照射量のUV放射(およびより低い電力)で過酸化水素を活性化してヒドロキシラジカルを形成することができることを示す。
図12Cにおいて、「UVT」は、反応器内の水溶液の紫外線透過率を意味し、「TOC」は、反応器内の水溶液の全有機物含有量を意味する。示されるように、UVAOP反応器中の水溶液は、紫外線に対して完全に透明ではない場合があり、95%以下の紫外線透過率を有する場合がある。したがって、紫外線ランプと反応器内の水溶液との間の流体経路長が短いこと、または反応器内の水溶液の乱流によって、水溶液中の酸化剤がより良く活性化される可能性がある。
【0141】
他の紫外線源、例えば紫外線発光ダイオード(LED)も、AOPプロセスまたはAOP反応器において利用され得ること、または代替的に利用され得ることを理解すべきである。紫外線LEDは、単色であると考えられる。AOPプロセスまたはAOP反応器において、特定の酸化剤(単数)または酸化剤(複数)に対して最も効果的に活性化しフリーラジカルを形成する波長で放射線を放出するUVLEDの種類、を選択することができる。したがって、以下の説明で参照される紫外線ランプは、ガス放電ランプまたはLEDの一方あるいは両方を含むことができる。
【0142】
放射線のスペクトルを放射するUV放射源、例えば中圧ガス放電ランプを用いる実施形態では、AOPプロセスまたはAOP反応器内の特定の酸化剤(単数)または酸化剤(複数)に対して最も効果的に活性化しフリーラジカルを形成する波長(単数)または波長(複数)のみが反応器に放射されるように、放射線をフィルタリングし得る。
【0143】
1つ以上のランプは、反応器内の1つ以上のスリーブまたは管内に配置されることによって、1つ以上の化学線放射反応器内に配置されることができる。管は、ランプを所定位置に保持すること、およびランプを反応器内の水から保護することができる。管は、放射線を通過させる材料であって、反応器内で化学線および水または水の成分によって実質的に劣化しない任意の材料で作ることができる。管は、円形の断面積を有することができる。特定の実施形態では、管は円筒形とすることができ、その構造材料は石英とすることができる。各管は、1つ以上の他の管と同じまたは異なる形状あるいはサイズとすることができる。管は、様々な構成で反応器内に配置することができ、例えば、スリーブは、反応器の長さまたは幅の一部あるいは全体を横切って延びることができる。管はまた、反応器の内部容積を横切って延びることができる。
【0144】
市販の紫外線ランプおよび/または石英スリーブは、ニュージャージー州フェアフィールドのHanovia Specialty Lighting、ウィスコンシン州ビーバーダムのEngineered Treatment Systems、LLC(ETS)、およびドイツ・ハナウのHeraeus Noblelight GmbHから入手することができる。選択された石英材料は、少なくとも部分的には、プロセスで使用される特定の波長(単数)または波長(複数)に基づくことができる。石英材料は、1つ以上の波長で紫外線ランプのエネルギー要件を最小化するように選択することができる。石英の組成は、反応器内の水に対する紫外光の所望のまたは適切な透過率を提供するように、および/あるいは、水に対する紫外光の所望のまたは適切なレベルの透過率を維持するように選択することができる。特定の実施形態では、透過率は、所定期間、少なくとも約50%とすることができる。例えば、透過率は、所定期間、約80%以上とすることができる。特定の実施形態では、透過率は、約6ヶ月から約1年の間、約80%から90%の範囲とすることができる。特定の実施形態では、透過率は、最大約2年、約80%から90%の範囲とすることができる。
【0145】
管は、反応器の内容物がスリーブまたは管に入らないように両端を密閉することができる。管は、反応器の使用中、管が所定の位置に留まるように反応器内に固定することができる。特定の実施形態では、管は反応器の壁に固定される。管は、適切な機械的技術、または物体を互いに固定するための他の従来の技術の使用により、壁に固定することができる。管の固定に使用される材料は、好ましくは、不活性であり、反応器の動作を妨げず、または、水の純度に悪影響を与えず、または、汚染物質を水中に放出することがない。
【0146】
ランプは、互いに平行になるように反応器内に配置することができる。また、ランプは、反応器内で互いに様々な角度で配置することができる。例えば、特定の実施形態では、ランプは、互いにほぼ直交または垂直であるような約90度の角度を形成するパスまたはカバー領域を照らすように配置することができる。ランプは、このように、垂直軸または水平軸、またはその間の任意の軸上で約90度の角度を形成するように配置することができる。
【0147】
特定の実施形態では、反応器は、反応器または容器内の、平行な管の第1のセットと平行な管の第2のセットとからなる管の配列を含むことができる。各管は、少なくとも1つの紫外線ランプを含んでよく、第1のセットの平行管の各々は、第2のセットの平行管に対して所望の角度になるように配置することができる。角度は、特定の実施形態において、約90度であり得る。第1の配列および第2の配列のいずれか1つまたは両方の管は、反応器の内部容積を横切って延び得る。第1のセットおよび第2のセットの管は、反応器内でほぼ同じ高さに配置することができる。
【0148】
さらなる構成は、反応器内のそれぞれの占有領域またはカバー領域において均一なレベルの強度を提供するように配置された管および/あるいはランプを含むことができる。さらなる構成は、その中に1つ以上のランプを有する等間隔に配置された管を含むことができる。
【0149】
反応器は、反応器または容器内に配置された1つ以上の管の配列を含み得る。管の第2の配列は、平行管の第3のセットと、平行管の第3のセットに直交する平行管の第4のセットとを含むことができ、各管は、少なくとも1つの紫外線ランプを含む。平行管の第4のセットは、平行管の第2のセットおよび平行管の第1のセットの少なくとも1つに直交することも可能である。
【0150】
特定の実施形態では、反応器または容器内の各配列は、反応器内の別の配列から所定の距離または高さに配置され得る。2つの配列のセット間の所定の距離は、同じ、または異なっていてもよい。
【0151】
反応器は、不純物の少なくとも1つ、典型的には有機炭素系不純物を、不活性な、イオン化された、または、そうでなければ、除去可能な化合物、水から除去され得る1つ以上の化合物、あるいは、少なくとも不純物の少なくとも1つと比較してより容易に除去可能なものに、捕捉、分解、または、そうでなければ、変換するのに必要な紫外線ランプの数に基づいて、反応器のサイズを決定することができる。必要なランプの数は、ランプ強度およびランプによって放射される紫外線のスペクトル波長を含むランプ性能特性に少なくとも部分的に基づくことができる。必要なランプの数は、入口水流中の予想されるTOC濃度または量、および供給流または反応器に加えられる酸化剤の量、のうちの少なくとも1つに、少なくとも部分的に基づくことが可能である。
【0152】
直列に配置された反応器のセットは、並列に配置することができる。例えば、直列に配置された反応器の第1のセットは、直列に配置された反応器の第2のセットと並列に配置され、各セットは3つの反応器を有し、合計6つの反応器を有することができる。各セットの反応器のいずれか1つ以上がいつでも稼働し得る。特定の実施形態では、すべての反応器が稼働中であってもよく、他の実施形態では、1セットの反応器のみが稼働中である。
【0153】
フリーラジカル捕捉システムの構成要素として商業的に入手可能な化学線放射システムの供給源としては、例えば、AQUAFINE(登録商標)UVシステムとして、イリノイ州ネイパービルのQuantrolからのもの、およびケンタッキー州アーランジャーのAquionics Incorporatedからのものが挙げられる。
【0154】
本明細書に開示される態様および実施形態において利用され得る化学線放射反応容器の1つの非限定的な例が、
図13に、一般に600で図示されている。反応容器600は、典型的には、入口610、出口620、および反応容器600を上部チャンバ625と下部チャンバ630とに分割するバッフル615からなる。反応容器600は、また、入口610を通して導入された水を容器全体に分配するように構成され得るマニホールド605を含むことができる。特定の実施形態では、マニホールド605は、容器全体に水を均等に分配するように構成され得る。例えば、マニホールド605は、反応器がプラグフロー反応器として動作するように、容器全体に水を均等に分配するように構成され得る。
【0155】
いくつかの実施形態では、反応容器は、反応容器を3つ以上のチャンバに分割するために、2つ以上のバッフル615を含み得る。バッフル615は、反応器に混合または乱流を提供するために使用することができる。特定の実施形態では、
図13に示すように、反応器入口610は、下部チャンバ630と流体連通し、反応器出口620は、上部チャンバ625と流体連通している。
【0156】
いくつかの実施形態では、それぞれのチャンバ内の水を所望のまたは様々な電力レベルで、約、または、以下の範囲、約185nmから約254nm、約185nmから約254nm、約220nm、および/または約254nmの範囲の光で照射するように配置された少なくとも1つの紫外線(UV)ランプをそれぞれ有する少なくとも三つの反応器チャンバが、反応器120内に直列に配置される。
【0157】
反応容器は、また、管、例えば管635aからcおよび640aからc内に配置された複数の紫外線ランプを含むことができる。一実施形態では、
図13に示すように、反応容器600は、平行管の第1のセット、管635a-cおよび平行管の第2のセット(図示せず)からなる。第1のセットの平行管の各セットは、第2のセットとほぼ直交して、第1の配列645を形成する。管635aからcおよび平行管の第2のセットは、互いに相対的に、反応容器600内でほぼ同じ高さにある。
【0158】
さらに、反応容器は、平行管の第3のセットと平行管の第4のセットとで構成され得る。第1のセットの平行管の各セットは、第2のセットとほぼ直交して、例えば、第2の配列650を形成する。例示的に示されるように、管640aからcおよび平行管の第2のセットは、互いに相対的に、反応容器600内でほぼ同じ高さにある。
図13に示されるように、第1の配列645は、第2の配列650から所定の距離に配置され得る。容器600は、さらに、第3の配列655および第4の配列660を含むことができ、各々は任意に、第1の配列640および第2の配列645と同様の構成を有する。
【0159】
別の実施形態では、第1の管635bを第2の管640bと直交するように配置して、第1の配列を形成することができる。さらに、一セットの管、管665aおよび管665bは、別の一セットの管、管670aおよび管670bと直交するように配置されて、第2の配列を形成することができる。第2の配列のランプの位置は、ランプ714、720、722、および724を含む
図14Aに示されている。第1の配列および第2の配列におけるランプの位置は、第1の配列のランプ726および728ならびに第2の配列のランプ714、720、722、および724を含む
図14Bに示されている。
【0160】
ランプは、寸法、強度、およびランプに供給される電力を含む、ランプの様々な特性によって、パターンを生成することができる。ランプによって生成される光パターンは、そのランプが光を放出する空間の一般的な体積である。特定の実施形態では、光パターンまたは、照明体積は、ランプが照射するか、または、そうでなければ、化学線を提供し、前駆体化合物が1つ以上のフリーラジカル種へ分割または変換することを可能にできる、空間の面積または体積として定義される。
【0161】
図14Aおよび
図14Bに示すように、管710aからcの第1のセットが互いに平行に配置され、管712aからcの第2のセットが互いに平行に配置されている反応器600の断面図を例示的に示している。示されるように、管710aからcの第1のセットは、管712aからcの第2のセットに対して直交するように配置される。ランプ714などのランプは、管710aからc、および712aからc内に分散され、照明されると、光パターン716を生成することができる。
【0162】
1つ以上の紫外線ランプ、またはランプのセットは、照明ベクトルに平行な化学線を投射することを特徴とし得る。照明ベクトルは、1つ以上のランプが化学線を放出する方向として定義することができる。例示的な実施形態では、
図14Aに示すように、ランプ720および722を含むランプの第1のセットは、照明ベクトル718に平行な化学線を投射するように配置される。
【0163】
第1の照明ベクトルに平行な化学線を投射するように配置された各紫外線ランプの第1のセットは、通電され得る。第2の照明ベクトルに平行な化学線を投射するように配置された各紫外線ランプの第2のセットも通電することができる。照明の方向および紫外線ランプの第1のセットと紫外線ランプの第2のセットとの少なくとも1つの強度の少なくとも1つは、調整することができる。各紫外線ランプのセットは、1つ以上の紫外線ランプで構成することができる。
【0164】
利用または通電されるランプの数、1つ以上のランプに供給される電力、および使用中のランプの構成は、システムの特定の動作条件または要件に基づいて選択することができる。例えば、特定のプロセスに利用されるランプの数は、システムの特徴あるいは測定または計算されたパラメータに基づいて選択および制御されることができる。例えば、入口水または処理水の測定パラメータは、TOC濃度、pH、酸化剤(例えば、H2O2)濃度、導電率、酸化還元電位、温度、または流量のいずれか1つ以上を含むことができる。通電されたランプの数はまた、システムまたは反応容器から出る処理水溶液中に加えられた酸化剤、例えば過酸化水素の濃度または量、に基づいて選択および制御することができる。例えば、被処理水溶液の流量が特定の閾値、例えば1300gpmのような公称または設計流量以下であれば、特定の構成の12個のランプを使用することができ、被処理水溶液の流量が閾値より上昇した場合にはより多くのランプを使用することができる。例えば、流量が1300gpmから選択されたより高い閾値まで増加した場合、追加のランプを通電させることができる。例えば、被処理水溶液の流量が1900gpmに達した場合、24個のランプを使用することができる。このように、水溶液の流量は、各反応器においてどのランプが通電されるランプであるか、および/または、通電されるランプの数を部分的に決定することができる。
【0165】
特定の実施形態では、紫外線ランプは、1つ以上の照明強度レベルで動作させることができる。例えば、薄暗い、定格、およびブーストモードのいずれか、例えば、低、中、または高モードなどの複数の照明モードで動作するように調整可能な1つ以上のランプを使用することができる。1つ以上のランプの照明強度は、システムの特徴あるいは測定または計算されたパラメータ、例えば、TOC濃度、酸化還元電位、pH、酸化剤(例えば、H2O2)濃度、温度、および/または流量を含む、入口水溶液あるいは処理水溶液の測定パラメータに基づいて調整および制御することが可能である。また、1つ以上のランプの照明強度は、システムまたは化学線放射反応器を出る処理水溶液中に存在する残留過酸化水素に添加された過酸化水素の濃度または量、に基づいて調整および制御することができる。例えば、1つ以上のランプは、システムの測定パラメータの所定の閾値、例えば第1のTOC濃度まで、薄暗いモードで使用することができる。測定または計算されたTOC濃度が、閾値以上であり得る第2のTOC濃度に達するかまたはそれを超える場合、1つ以上のランプは定格モードに調整することができる。1つ以上のランプは、測定されたまたは計算されたTOC濃度が、第2の閾値に達するかまたはそれを超える場合、ブーストモードにさらに調整することができる。
【0166】
本明細書に開示されるシステムで利用され得る化学線放射反応器は、その全体が参照することにより本明細書に組み込まれる共同出願であるPCT出願PCT/US2016/030708、公開番号WO2016/179241においてさらに詳細に記載されている。
【0167】
本明細書に開示される態様および実施形態は、以下のステップを含む水処理のための方法を提供する:(a)被処理水に過酸化物種、例えば過酸化水素を添加して被処理水に溶解させるステップと、(b)被処理水に溶解した過酸化物種が、被処理水中の有機水成分と一部反応する間に、被処理水に溶解した過酸化物種のデマンド(過酸化物種デマンド)を測定するステップと、(c)被処理水に溶解した過酸化物種の測定したデマンドを用いて、AOPを制御しながら被処理水にAOPを適用するステップと、である。
【0168】
さらなる実施形態において、処理水溶液は、AOPが実施される反応器から除去され得る。処理水溶液中の残留酸化剤(例えば、過酸化水素)は、処理水溶液にクエンチング種(例えば、NaOCl)を添加することによって、または処理水溶液を活性炭と接触させることによって、例えば、粒状活性炭(GAC)のカラムに処理水溶液を通過させることによってクエンチされ得る。処理水溶液に添加するクエンチ種の量、濃度、または流量は、処理水溶液中の残留酸化剤の測定濃度または予想濃度に基づいて制御することができる。
【0169】
さらなる実施形態では、ヒドロキシラジカルのAOPの形成を制御する一方で、例えば、過酸化物種の添加を調整することによって、および/または代替酸化剤の添加を調整することによって、ヒドロキシラジカルのAOPの形成を調整する。
【0170】
さらなる実施形態では、AOPは、従来の、化学的AOP、紫外線駆動AOP、過酸化物種AOP、または紫外線駆動過酸化物種AOP(UV/過酸化物種AOP)である。
【0171】
さらなる実施形態では、AOPは、UV/過酸化物種AOPである。ヒドロキシラジカルのUV/過酸化物種AOP形成の制御は、被処理水を照射するUVエネルギーを調節すること、および/または、過酸化物種の添加を調節することによって調節される。
【0172】
さらなる実施形態では、AOPは、UVAOPである。ヒドロキシラジカルのUVAOP形成の制御は、被処理水に照射する紫外線エネルギーの強度を調節することにより、ならびに/あるいは、被処理水の本流において代替酸化剤の添加を調節する一方で、過酸化物種を添加することにより、および/または被処理水のバイパス流において過酸化物種のデマンドを測定することにより、調節することができる。
【0173】
オンサイトで反応生成物を生成することは、UVAOP用途において、コストと全体的なプロセスの複雑さとの両方の点で、大量の化学物質を投与するよりも大きな利点をもたらす。UVAOPに一般的に使用される2つの主要な促進剤には、過酸化水素とバルクの次亜塩素酸塩が含まれる。
【0174】
UVAOPプロセスのためにCTEセルを介して過酸化水素を生成するインラインシステムの一実施形態が
図15に示されている。図示されるように電解液、例えば被処理水805が供給源810から得られ、例えば、CTE電気化学セルに限定されない電気化学セル815で処理され、該電気化学セルは、電解液中に存在する酸素を過酸化水素に変換して過酸化水素含有水溶液820を産出する。水溶液820は、電気化学セル815の出口から導管を通してUVAOP反応器825の入口に導かれる。水溶液820中の汚染物質は、UVAOP反応器825中のUV放射への曝露によって酸化および破壊される。UVAOP反応器825は、処理水溶液または生成水830を産出し、該処理水溶液または該生成水は、使用点835に向けられる。処理水溶液830は、所望の純度を満たすかまたは超え得る。本明細書で使用される用語として、化学線放射反応器を出る処理水溶液または生成水の純度は、処理水溶液または生成水中の1つ以上の汚染物質の濃度を意味する。いくつかの実施形態では、例えば、システムが、スイミングプール、ボイラー、または他の水源からの水を処理するために使用され、処理水を同じ水源に戻す場合、使用点835は、供給源810であってよい。使用点835は、船上システム、掘削プラットフォームシステム、アクアティクスシステム(例えば、スイミングプールまたは噴水)、飲料水システム、または石油掘削システムのダウンホールを含んでもよい。使用点835は、船舶または海底設置プラットフォームの冷却水システム、または船舶のバラストタンクを含んでもよい。
【0175】
図16は、
図15と同様のシステムで、酸素添加のための追加段階を含むものを描いている。酸素源905、例えば、気体酸素、空気、または酸素水は、電気化学セル815に導入する前に、被処理電解液/被処理水805に酸素を供給することができる。酸素源905は、代替的に、酸素を供給源810に直接供給し得る。溶液中の酸素の濃度を増加させることによって、電気化学セル815によって必要とされるエネルギーを低減すること、および下流のUVAOP反応器825に供給するための過酸化水素の産出を増加させること、の両方が可能である。
【0176】
1つ以上のセンサ910は、例えば、被処理電解液/被処理水805、水溶液820、および/または処理水溶液830のいずれかの温度、流量、汚染物質濃度、pH、酸化還元電位(ORP)、全有機炭素(TOC)、溶存酸素および/または水素濃度、過酸化水素濃度、純度等の1つ以上のパラメータを測定し得る。以下でさらに説明するシステムのコントローラは、1つ以上のセンサ910から読み取り値を受け取り、1つ以上のセンサ910によって読み取られたパラメータ(単数)またはパラメータ(複数)の所望のレベルを得るために、システムの1つ以上の動作パラメータを調整し得る。システムの動作パラメータは、例えば、電気化学セル815に加えられる電力(電流または電圧またはその両方)、UVAOP反応器で生成される紫外線の強度、UVAOP反応器で水溶液に照射されるUV放射の照射量、バルブ915を用いた被処理電解液/被処理水805の流量、別のバルブ920を用いた被処理電解液/被処理水805への酸素の添加速度または量、またはシステムの他の動作パラメータを含んでいても良い。このようなセンサおよびコントローラ(複数可)は、
図15のシステムおよび以下に説明する
図17から19のシステムにも存在し得る。
【0177】
図17は、過酸化水素を生成するためのフィードアンドブリードシステムを示す図である。このシステムの電気化学セル815は、CTEまたは平行平板電極(PPE)タイプであり得る。酸素水1005、または酸素を含む他の溶液は、水および酸素の供給源905から電気化学セル815に供給される。いくつかの実施形態では、追加の酸素は、例えば、水を通して酸素または空気をバブリングすることによって、酸素水1005に加えられ、酸素水の供給源905の酸素濃度を所望のレベルまで増加させる。処理溶液1010は、バルブ1025を開き、バルブ1030を閉じた状態で、ポンプ1020によって、電気化学セル815の出口から電気化学セル815の入口に戻る再循環ループ1015を通って再循環される。処理溶液1010を再循環させることによって、過酸化水素の全体的な濃度を溶液中の酸素の濃度に対して高めることができ、電気化学セル815を通る酸素水1005のシングルパスから生成され得る処理溶液1010中の過酸化水素のより高い濃度を達成することができる。例えば、センサ910の1つによって測定されるように、処理再循環溶液1010中の過酸化水素の濃度が所望のレベルに達したとき、または再循環溶液が、予想される所望の濃度の過酸化水素を生成するのに十分な時間再循環されたとき、バルブ1025を閉じ、かつ、バルブ1030を開いて、被処理電解液/被処理水805と混合して水溶液820を形成するための高濃度過酸化水素溶液1035を放出し得る。
【0178】
UVAOPベースの処理システムの別の実施形態の配管図および計装図が、
図18に示されている。供給源810からの被処理電解液/被処理水は、バルブを通してシステム1800に入り、導管を通って、任意のプレスクリーンまたはフィルタ1805、例えば、膜フィルタ(例えば、所望の粒子低減に応じて、ナノフィルタ、ウルトラフィルタ、または逆浸透フィルタ)を通過して被処理濾過水を形成し得る。フィルタ1805に入る前に、または代替的にフィルタを通過した後に、被処理水または被処理濾過水は、1つ以上のセンサQIT1、FIT、PIによってその導電率、流量、または圧力のうちの1つ以上が測定され得る。被処理水または被処理濾過水の任意の他の所望のパラメータ、例えば、TOC、1つ以上の化合物の溶存濃度、pH、または上述した任意の他のパラメータも、または代替的に、測定され得る。
【0179】
H
2O
2生成システム815から、酸化剤、例えば、過酸化水素の計量された流量を被処理濾過水に添加し得る。H
2O
2生成システム815は、上記の様々な実施形態で説明したように、H
2O
2を生成するためのオンサイト電解槽または電気化学セルを含んでもよい。酸素水供給源1835、例えば、酸素水を生成するために酸素が水を通してバブリングされるサブシステムは、H
2O
2生成システム815の電気化学セルの入口に酸素水を供給して、所望の濃度または体積のH
2O
2を生成するのに十分な酸素を提供し得る。電解槽または電気化学セルは、例えば、
図17に示されるように、側流ループに配置されてもよく、または、例えば、
図15または
図16に示されるように、被処理濾過水を運ぶ導管と直列に配置されてもよい。H
2O
2の導入または生成の速度は(例えば、H
2O
2生成システム815内の電気化学セルにわたる電流を制御することによって)、H
2O
2の導入点または生成点の上流のセンサQIT1、FIT、PIまたは他のセンサの1つからの読み取りに基づいて、または以下でさらに説明するように、システム内の下流のセンサからの読み取りに基づいて制御され得る。H
2O
2の添加後に被処理濾過水の1つ以上のパラメータ、例えば、圧力、流量、温度、H
2O
2濃度などは、H
2O
2の導入点または生成点の下流にある1つ以上のセンサによって測定され、該パラメータは、被処理流入水の流量またはH
2O
2の導入速度または生成速度などの動作パラメータを設定するための制御システムへの入力パラメータとして使用され得る。
【0180】
H2O2の導入点または生成点の下流で、被処理水は導管を通ってスタティックミキサー1810に入り、そこで被処理水と添加されたH2O2とが混合されて実質的に均質な水溶液が形成される。スタティックミキサー1810の下流では、水溶液の追加のパラメータ、例えば、導電率またはTOCレベルが、追加のセンサQIT1、QIT2によって測定され得る。これらのセンサからの測定値は、被処理流入水の流量あるいは、H2O2の導入速度または生成速度などの動作パラメータを設定するための制御システムへの入力パラメータとして使用することができる。
【0181】
スタティックミキサー1810のさらに下流で、水溶液は、UV反応器825に入る。UV反応器825において、水溶液は、紫外線で照射されて、H2O2を活性化し、水溶液中の汚染物質を酸化し、または、そうでなければ、分解してUV処理水溶液を形成するヒドロキシラジカルのために、紫外線で照射される。紫外線の照射量、用いられた紫外線の強度、および/またはUV反応器825で処理中の水溶液の滞留時間は、UV反応器825の上流または下流のセンサのいずれか1つ以上からの測定値に基づいて制御され得る。
【0182】
UV処理水溶液は、UV反応器825を出て、UV反応器の下流で、UV処理水溶液に化学薬剤を添加して、UV処理水溶液中の残留H
2O
2をクエンチまたは分解して、クエンチ溶液を形成し得る。薬剤は、例えば、次亜塩素酸ナトリウムであり得る。次亜塩素酸ナトリウムは、オンサイトNaOCl生成システム1815を用いて、オンサイトで電気化学的に生成され得る。オンサイトNaOCl生成システム1815は、上記に開示されるような1つ以上の電気化学セルを含んでもよい。1つ以上の電気化学セルは、平板のアノードおよび/またはカソードを含んでもよく、あるいは上記に開示されるような同心円管電極を含んでもよい。NaOClの電気化学的生成のためのNaおよびClを提供するために、NaClを含む電解質溶液が、塩水源1840からNaOCl生成システム1815に提供され得る。NaOCl生成システム1815および関連する電解槽(複数可)または電気化学セル(複数可)は、
図18に例示されるように側流ループに配置されてもよく、またはUV処理水溶液を運ぶ導管と直列に配置され得る。NaOClの導入速度または生成速度は、NaOClの導入点または生成点の上流または下流のセンサのうちの1つからの読み取りに基づいて(例えば、供給源1815内の電気化学セルにわたる電流を制御することによって)制御され得る。いくつかの実施形態では、UV処理水溶液中のH
2O
2の濃度は、NaOClの導入点または生成点の上流または下流の1つ以上のセンサ910、例えば、ORPセンサによって測定されてよく、NaOClの導入速度または生成速度は、これらの1つ以上のセンサからの読み取りに基づいてコントローラによって設定され得る。
【0183】
NaOClの導入点または生成点の下流で、クエンチ処理水溶液は、静置混合1820を通り抜けてよく、これによって、クエンチ剤とクエンチ処理水溶液中のH2O2との接触を促進し、クエンチ処理水溶液中の残留H2O2のすべてまたは実質的にすべての分解を促進して生成水830を形成し、該精製水が、システム1800を出て使用点に提供され得る。
【0184】
H2O2生成システム815またはNaOCl生成システム1815のいずれか一方は、生成されたH2O2またはNaOClの貯蔵のために貯蔵タンク1825、1830にそれぞれ流体的に結合された出口を有し得る。貯蔵タンクは、H2O2またはNaOClのデマンドが低い期間中に少なくとも部分的に充填されてもよく、H2O2またはNaOClのデマンドが、H2O2生成システム815またはNaOCl生成システム1815の生成能力を超えるべき場合、あるいはこれらのシステムの1つが例えばメンテナンスのためにオフラインである場合に、システム内の処理中水に追加のH2O2またはNaOClを提供し得る。
【0185】
図18に例示されるオンサイトNaOCl生成システム1815および貯蔵タンク1825、1830は、本明細書に開示される他のシステムのいずれか、例えば
図15から17または19のいずれかのシステムに存在することもできることを理解すべきである。
【0186】
図19に、潜在的なフィードアンドブリードシステムの配管図および計装図を示す。このようなシステムは、製品生成のために使用され得、具体的には、所望のプロセスストリームに低圧の生成流を供給しながら、再循環ループにおいて必要とされる高い操作圧力を維持する。H
2O
2電気化学セルの設計のために、質量生成率は、検討されたように特定され、システムの最終出力濃度は、AOPアプリケーションの要件によって調整されることが可能である。
【0187】
様々な水溶液の流れを制御するために、上記のシステムのいずれかに様々な追加のポンプまたはバルブが含まれ得るが、分かりやすくするために図には示していない。
【0188】
1つ以上の実施形態において、そのいずれもが1つ以上の態様に関連し得るが、本明細書に開示されるシステムおよび技術は、システムの少なくとも1つの単位動作もしくは構成要素の少なくとも1つの動作パラメータ、状態、もしくは条件、またはプロセスストリームの1つ以上の特徴もしくは物理的特性を調整もしくは調節することを、調整または調節または少なくとも促進する1つ以上のサブシステムを利用し得る。そのような調整および調節機能を促進するために、1つ以上の実施形態は、1つ以上の構成要素またはプロセスの状態(status)、状態(state)、または条件を提供するコントローラおよび指示システムを利用し得る。例えば、少なくとも1つのセンサは、例えば、供給源810からの水、または酸化剤もしくはクエンチ剤の生成のための1つ以上の電気化学セルもしくはUVAOP反応容器もしくは1つ以上の他の下流プロセスに出入りする水の集中的特性または広範囲特性の表示を提供するために利用され得る。したがって、特に有利な実施形態に従って、システムおよび技術は、例えば、システムの単位操作のいずれかに出入りする水の状態、条件、特徴または品質の表現を提供する、組成分析器、または導電率セルなどの1つ以上のセンサまたは他の指示装置を含むことができる。
【0189】
本明細書に開示される電気塩素化システムの様々な動作パラメータは、システムの異なる部分に配置された様々なセンサによって測定された様々なパラメータに基づいて、関連する制御システムまたはコントローラによって制御または調整され得る。コントローラは、被処理水の流量、被処理水中の酸素濃度、または被処理水中の1つ以上の汚染物質のレベルの少なくとも1つに基づいて、AOP反応器の上流の電気化学セルに導入される被処理水への酸素または酸素含有化合物、例えば酸素水の導入を調節するように、プログラムまたは構成されることができる。コントローラは、UVAOP反応器での処理後の水へのクエンチング剤、例えばNaOClの生成または導入を、被処理水の流量、被処理水中の酸素濃度、または被処理水中の1つ以上の汚染物質のレベル、またはUVAOP反応器での処理後の水中のH2O2濃度のうちの少なくとも1つ以上に基づくように、プログラムまたは構成され得る。コントローラは、少なくとも電気化学セルで生成された過酸化物含有水溶液中の酸素または酸素系化合物の濃度に基づいて、被処理水への酸素含有化合物の導入を調節するように、プログラムまたは構成され得る。コントローラは、少なくとも被処理水中の1つ以上の汚染物質の濃度に基づいて、電気化学セルで生成される過酸化水素の濃度を調節するようにさらに構成され得る。コントローラは、電気化学セル内の温度または電気化学セル内で生成された過酸化水素含有水溶液のpHの少なくとも1つ以上に基づいて、被処理水への酸素または酸素含有化合物の導入を調節するように、プログラムまたは構成され得る。
【0190】
コントローラは、被処理水の流量および/または被処理水への酸素もしくは酸素含有化合物の導入速度に基づいて、H2O2の生成のための電気化学セルのアノード-カソード対に流れる電流またはアノード-カソード対にかかる電圧の1つ以上を調節するように、プログラムまたは構成され得る。コントローラは、AOP反応器に入る過酸化水素含有水溶液の流量または汚染物質濃度、AOP反応器に入る過酸化水素含有水溶液の温度またはpH、あるいはAOP反応器に入る過酸化水素含有水溶液の過酸化水素濃度のいずれか1つ以上に基づいてAOP反応器の1つ以上の動作パラメータを調節するように、プログラムまたは構成され得る。
【0191】
本明細書に開示されるシステムの様々な要素の動作を監視および制御するために使用されるコントローラは、コンピュータ化された制御システムを含んでもよい。コントローラの様々な態様は、
図20に示されるような汎用コンピュータシステム1500において実行される専用ソフトウェアとして実装され得る。コンピュータシステム1500は、データを格納するためのディスクドライブ、ソリッドステートメモリ、または他のデバイスなどの1つ以上のメモリデバイス1504に接続されたプロセッサ1502を含んでもよい。メモリ1504は、典型的には、コンピュータシステム1500の動作中にプログラムおよびデータを格納するために使用される。コンピュータシステム1500の構成要素は、相互接続機構1506によって結合されてもよく、この相互接続機構は、1つ以上のバス(例えば、同じマシン内に統合されている構成要素間)および/またはネットワーク(例えば、別々の離散したマシン上に存在する構成要素間)を含んでもよい。相互接続機構1506は、システム1500のシステム構成要素間で通信(例えば、データ、指示)が交換されることを可能にする。また、コンピュータシステム1500は、1つ以上の入力デバイス1508、例えば、キーボード、マウス、トラックボール、マイク、タッチスクリーン、および1つ以上の出力デバイス1510、例えば、印刷デバイス、ディスプレイスクリーン、および/またはスピーカ、を含む。
【0192】
また、出力デバイス1510は、供給源905から被処理水に酸素または酸素含有化合物(例えば、酸素水)を導入するために、および/あるいはポンプの速度または本明細書に開示されるようなシステムのバルブの状態(開もしくは閉)を制御するために利用され得るバルブ、ポンプまたはスイッチを含み得る。また、1つ以上のセンサ1514は、コンピュータシステム1500に入力を提供し得る。これらのセンサは、例えば、圧力センサ、化学物質濃度センサ、温度センサ、または本明細書に開示されるシステムにとって関心のある他の任意のパラメータに対するセンサであり得るセンサ910、QIT1、QIT2、FIT、またはPIを含んでもよい。これらのセンサは、例えば、使用点835の上流、電気塩素化セル815、AOP反応器825の上流もしくは下流、本明細書に開示されるシステムを通過する水への酸化剤もしくはクエンチ剤の生成点もしくは導入点、または供給源810と流体連通して、有用となるシステムの任意の部分に配置することができる。さらに、コンピュータシステム1500は、相互接続機構1506に加えてまたはその代替として、コンピュータシステム1500を通信ネットワークに接続する1つ以上のインターフェース(図示せず)を含んでもよい。
【0193】
図21にさらに詳細に示すストレージシステム1512は、典型的には、プロセッサ1502によって実行されるプログラムまたはプログラムによって処理される情報を定義する信号が格納されるコンピュータ可読および書込み可能な不揮発性記録媒体1602、を含む。媒体は、例えば、ディスクまたはフラッシュメモリを含んでもよい。典型的には、動作において、プロセッサは、不揮発性記録媒体1602から、媒体1602よりもプロセッサによる情報へのより高速なアクセスを可能にする別のメモリ1604にデータを読み出させる。このメモリ1604は、典型的には、ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリ(DRAM)またはスタティック・メモリ(SRAM)などの揮発性のランダム・アクセス・メモリである。それは、図示するようにストレージシステム1512に配置されてもよく、または、メモリシステム1504に配置されてもよい。プロセッサ1502は、一般に、集積回路メモリ1604内のデータを操作し、処理が完了した後、データを媒体1602にコピーする。媒体1602と集積回路メモリ素子1604との間のデータ移動を管理するための様々なメカニズムが公知であり、本明細書に開示される態様および実施形態はそれに限定されない。本明細書で開示される態様および実施形態は、特定のメモリシステム1504またはストレージシステム1512に限定されない。
【0194】
コンピュータシステムは、特別にプログラムされた特殊用途のハードウェア、例えば特定用途向け集積回路(ASIC)を含んでもよい。本明細書に開示される態様および実施形態は、ソフトウェア、ハードウェアもしくはファームウェア、またはそれらの任意の組合せで実装され得る。さらに、そのような方法、行為、システム、システム要素、および構成要素は、上述のコンピュータシステムの一部として、または独立した構成要素として実装され得る。
【0195】
コンピュータシステム1500は、本明細書に開示される様々な態様および実施形態が実践され得るコンピュータシステムの1つのタイプとして、例として示されているが、本明細書に開示される態様および実施形態は、
図20に示すようなコンピュータシステム上で実装されることに限定されないことを理解するべきである。本明細書に開示される様々な態様および実施形態は、
図20に示されるものとは異なるアーキテクチャまたは構成要素を有する1つ以上のコンピュータ上で実施され得る。
【0196】
コンピュータシステム1500は、高レベルのコンピュータプログラミング言語を用いてプログラム可能な汎用コンピュータシステムであり得る。また、コンピュータシステム1500は、特別にプログラムされた特殊用途のハードウェアを用いて実装され得る。コンピュータシステム1500において、プロセッサ1502は、典型的には、Intel Corporationから入手可能な周知のPentiumTMまたはCoreTMクラスのプロセッサなどの商業的に入手可能なプロセッサである。プログラム可能なロジックコントローラを含む多くの他のプロセッサが利用可能である。このようなプロセッサは、通常、例えば、Microsoft Corporationから入手可能なWindows7、Windows8、またはWindows10オペレーティングシステム、Apple Computerから入手可能なMAC OS System X、Sun Microsystemsから入手可能なSolaris Operating System、または様々なソースから入手可能なUNIXであり得るオペレーティングシステムを実行する。その他の多くのオペレーティングシステムを使用することもできる。
【0197】
プロセッサおよびオペレーティングシステムは、ともに、高レベルのプログラミング言語によりアプリケーションプログラムを記述するためのコンピュータプラットフォームを定義する。本発明は、特定のコンピュータシステムプラットフォーム、プロセッサ、オペレーティングシステム、またはネットワークに限定されないことを理解すべきである。また、本明細書に開示される態様および実施形態は、特定のプログラミング言語またはコンピュータシステムに限定されないことは、当業者にとって明らかであるはずである。さらに、他の適切なプログラミング言語および他の適切なコンピュータシステムもまた使用され得ることを理解するべきである。
【0198】
コンピュータシステムの1つ以上の部分は、通信ネットワークに結合された1つ以上のコンピュータシステム(図示せず)にわたって分散され得る。また、これらのコンピュータシステムは、汎用コンピュータシステムであり得る。例えば、本発明の様々な態様は、1つ以上のクライアントコンピュータにサービス(例えば、サーバ)を提供するように構成された1つ以上のコンピュータシステムの間で分散されてもよく、または分散システムの一部として全体的なタスクを実行するように構成された1つ以上のコンピュータシステムの間で分散されてもよい。例えば、本明細書に開示される様々な態様および実施形態は、本明細書に開示される様々な態様および実施形態に従って様々な機能を実行する1つ以上のサーバシステムの間で分散された構成要素を含むクライアント-サーバシステム上で実行され得る。これらの構成要素は、通信プロトコル(例えば、TCP/IP)を使用して通信ネットワーク(例えば、インターネット)上で通信する実行可能な、中間(例えば、IL)または解釈(例えば、Java)コードであってよい。いくつかの実施形態では、コンピュータシステム1500の1つ以上の構成要素は、例えば、携帯電話ネットワークを含む無線ネットワークを介して1つ以上の他の構成要素と通信することができる。
【0199】
本明細書に開示される態様および実施形態は、任意の特定のシステムまたはシステム群上での実行に限定されないことを理解するべきである。また、本明細書で開示される態様および実施形態は、任意の特定の分散アーキテクチャ、ネットワーク、または通信プロトコルに限定されないことを理解するべきである。本明細書に開示される様々な態様および実施形態は、SmallTalk、Java、C++、Ada、またはC#(C-Sharp)などのオブジェクト指向プログラミング言語を使用してプログラムされ得る。他のオブジェクト指向プログラミング言語も使用することができる。あるいは、関数型、スクリプト型、および/または論理型プログラミング言語、例えば、ラダーロジックが使用され得る。本明細書に開示される様々な態様および実施形態は、非プログラム環境(例えば、ブラウザプログラムのウィンドウで見たときに、グラフィカルユーザインターフェース(GUI)の態様をレンダリングするかまたは他の機能を実行する、HTML、XMLまたは他のフォーマットで作成された文書)において実装され得る。本明細書に開示される様々な態様および実施形態は、プログラムされた要素もしくは非プログラムされた要素、またはそれらの任意の組み合わせとして実装され得る。
【0200】
いくつかの実施形態では、既存のUVAOPシステムは、本明細書に開示される電気塩素化システムの要素を含むように、または本明細書に開示されるシステムに従って動作するように、修正またはアップグレードされ得る。UVAOPシステムにおける汚染物質の破壊速度を増加させるためにUVAOPシステムセルを改修する方法は、UVAOP反応器の入口の上流の電解液に酸化剤を導入するように構成された電気塩素化セルおよび/またはUVAOP反応器の下流のUV処理水にクエンチング剤を導入するように構成された電気塩素化セルを設置することを含むことができる。
【実施例】
【0201】
(実施例1)
アノード、カソード、およびアノードとカソードとの間に配置された陽イオン交換膜を含む電気化学セルにおける過酸化水素の生成を評価するための試験を実施した。この試験の結果は、
図20に示されている。この図において、青色の曲線は、酸素を含まない水を用いた電気化学セルの性能試験から得られたものであり、オレンジ色の曲線は、水が酸素で飽和されるまで大気圧で酸素をバブリングした水を用いた電気化学セルの試験から得られたものである。図に示すように、過酸化水素の生成速度は、まず電圧の上昇とともに増加し、その後さらに電圧の上昇とともに減少した。より低い電圧では、過酸化水素の生成速度は、水中の酸素濃度によって制限されていると考えられる。より高い電圧(ゼロに近い)では、過酸化水素の生成速度は低い電流によって制限されたと考えられる。
【0202】
(実施例2)
チタンメッシュで形成された各面積10cm
2の平板電極を有する電解セルの電圧対電流の特徴を調べる試験を行った。試験では、酸素を添加していない水、または60barの圧力で酸素にさらされた後の水のいずれかを、異なる流量でセルに流した。その結果を
図23のチャートに示す。見てわかるように、試験した各条件において、印加電圧の絶対値が増加する(より負になる)と電流が増加する(より負になる)。電流対電圧の増加量が最も低いのは、酸素無添加および流量ゼロの条件であった(0_O2_0_フロー曲線)。酸素無添加の水の流量が毎分18リットルまで増加すると(0_O2_18LPM曲線)、特定の電圧で観測される電流は、酸素無添加、流量ゼロの条件と比較して増加した。酸素水を毎分16リットル電解セルに流した場合(O2_60bar_16LPM曲線)には、特定の電圧で観測される電流がさらに増加した。これらの結果から、電解セルに流す水が追加の酸素を含有するにつれて、酸素と水との反応を起こすのに使用される電流を供給する電解セルの能力が高まることがわかった。これらの結果から、電解セルに流す水に酸素を添加することで、H
2O
2などの反応物を生成し得ることがわかる。
【0203】
(実施例3)
電解セル内で溶液中の過酸化水素濃度が時間経過とともにどのように増加するかを評価する試験を行った。カーボンクロスで形成されたカソードと、混合金属酸化物で形成されたアノードとで電解セルを形成した。アノードとカソードは、5mMのNa2SO4溶液80mlの中に配置した。酸素を30分間バブリングした。電極に5mAの電流を流した。30分の通電後、溶液中の過酸化水素濃度は12.75ppmであった。2時間の通電後、過酸化水素濃度は、29.75ppmに上昇した。これらの結果から、過酸化水素の電解生成は、通電時間が長くなるほど、より高濃度の過酸化水素を溶液中に生成し得ることがわかった。
【0204】
(実施例4)
UVAOP反応器での汚染物質(1,4-ジオキサンおよびフミン酸、各濃度0.65mg/L)破壊に対するpHの影響を評価するための試験を実施した。UV照射量は650mJ/cm
2、過酸化水素濃度は2mg/L、温度は89°Fであった。この試験の結果は、
図24に示されている。
図24のチャートから分かるように、汚染物質の破壊率は、pHの低下とともに増加したが、pHが中性以下になると破壊率の増加は、有意には増加しなかった。これらの結果は、汚染物質の破壊を最適化するために、H
2O
2酸化剤を用いたUVAOP反応器を中性または酸性のpHで運転することが望ましい可能性があることを示している。
【0205】
(実施例5)
UVAOP反応器でのH
2O
2の活性化に対するpHの影響を評価するための試験を実施した。UV照射量は、650mJ/cm
2、反応器内の溶液のTOCは、0.65mg/L、過酸化水素濃度は、2mg/L、温度は、89°Fであった。この試験の結果は、
図25に示されている。
図25のチャートから観察できるように、H
2O
2の活性化率(活性化パーセント)は、試験条件下で約10%であり、pHは、検出可能な影響を有しない。これらの結果は、H
2O
2の活性化率の変化が、上記実施例4で観察された、より低いpHレベルにおける汚染物質破壊率の増加の原因である可能性が低かったことを示している。
【0206】
(実施例6)
UVAOP反応器におけるH
2O
2の活性化率に及ぼすH
2O
2濃度とUV照射量との影響を評価するための試験を実施した。UV照射量は、1300mJ/cm
2または650mJ/cm
2のいずれかであり、反応器内の溶液のTOCは、0.65mg/L、温度は、89°Fであった。この試験の結果は、
図2に示されている。
図26のチャートから観察できるように、H
2O
2濃度が酸化剤の活性化に観察可能な影響を及ぼさなかった一方で、UV照射量を650mJ/cm
2から1300mJ/cm
2に増加させると、H
2O
2の活性化率が約10%から約30%に増加した。これらの結果は、H
2O
2の活性化率は、UV照射量の増加に伴って非線形に増加し、UV照射量をあるパーセント増加させると、UVAOP反応器に供給する溶液中のH
2O
2の濃度が同じパーセント増加した場合よりも、利用できるヒドロキシラジカルの量により大きな影響を与えることを示している。
【0207】
(実施例7)
UVAOP反応器において、異なるUV照射量と異なるH
2O
2濃度とで、1,4-ジオキサンおよびフミン酸の破壊量を評価する試験を実施した。1,4-ジオキサンを用いた試験の結果を
図26に示し、フミン酸を用いた試験の結果を
図27に示す。これらのデータは、UV照射量を増加させることが、両方の汚染物質の破壊を増加させるのに有意な効果を有することを示す。1,4-ジオキサンの破壊は、H
2O
2濃度とともに増加したが、予想外に、フミン酸の破壊は、H
2O
2濃度の増加とともに減少した。これらの結果は、異なる汚染物質の破壊は、異なる過酸化水素濃度で最適化され得ることを示す。また、溶液中にH
2O
2を含まないで動作するUVAOP反応器と対照的に、H
2O
2の存在により汚染物質の濃縮速度が増加することも確認された。
【0208】
本明細書で使用される表現および用語は、説明のためのものであり、限定的なものと見なすべきではない。本明細書で使用される場合、用語「複数」は、2つ以上の項目または構成要素を指す。用語「含む(comprising)」、「含む(including)」、「持っている(carrying)」、「有する(having)」、「含む(containing)」および「含む(involving)」は、書面の説明または請求項などにかかわらず、非限定的な用語であり、すなわち「を含むが、これらに限定されるものではない(including but not limited to)」を意味するものである。したがって、このような用語の使用は、その後に列挙された項目、およびその等価物、ならびに追加的な項目を包含することを意図する。「からなる(consisting of)」および「から本質的になる(consisting essentially of)」という移行句のみが、特許請求の範囲に関して、それぞれ、制限的または準制限的移行句である。請求項要素を修飾するために請求項において「第1」、「第2」、「第3」などの序数を使用することは、それ自体、ある請求項要素の他の要素に対する優先、優先順位、もしくは順序、または方法の行為が行われる時間的順序を意味せず、単にある名前を有するある請求項要素を、同じ名前を有する他の要素(ただし序数を使用)から区別して請求項要素を区別するためにラベルとして使用されるだけである。
【0209】
このように、少なくとも1つの実施形態のいくつかの態様を説明してきたが、当業者は、様々な変更、修正、および改良に容易に気付くであろうことを理解するべきである。任意の実施形態に記載された任意の特徴は、他の任意の実施形態の任意の特徴に含まれ、または代替され得る。そのような変更、修正、および改良は、本開示の一部であり、本発明の範囲内にあることを意図している。したがって、前述の説明および図面は、例示に過ぎない。