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  • 特許-反跳ブレーキ及び銃砲身付き火器 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】反跳ブレーキ及び銃砲身付き火器
(51)【国際特許分類】
   F41A 25/02 20060101AFI20241007BHJP
   F16F 9/24 20060101ALI20241007BHJP
   F16F 9/56 20060101ALI20241007BHJP
   F16F 9/32 20060101ALI20241007BHJP
【FI】
F41A25/02
F16F9/24
F16F9/56 Z
F16F9/32 N
F16F9/32 L
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022506946
(86)(22)【出願日】2020-07-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-13
(86)【国際出願番号】 EP2020070554
(87)【国際公開番号】W WO2021028165
(87)【国際公開日】2021-02-18
【審査請求日】2023-06-23
(31)【優先権主張番号】102019121982.5
(32)【優先日】2019-08-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】509334642
【氏名又は名称】ラインメタル ヴァッフェ ムニシオーン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Rheinmetall Waffe Munition GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュヴァイガー、フロリアン
(72)【発明者】
【氏名】バウマン、ベルトホルト
(72)【発明者】
【氏名】ドラック、ラインハルト
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】独国特許発明第00737376(DE,C2)
【文献】欧州特許出願公開第00351501(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F41A 25/02
F16F 9/24
F16F 9/56
F16F 9/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
銃砲身付き火器の反跳塊を制動するための反跳ブレーキ(1)であって、
流体で満たされた内部(11)を有する中空シリンダ(10)と、
前記中空シリンダ(10)内に配置され、前記中空シリンダ(10)に接続された端部(42)を有する制御ロッド(40)と、
前記制御ロッド(40)を囲み、前記中空シリンダ(10)の軸方向(A)に移動するために前記中空シリンダ(10)内に配置されたピストンロッド(30)と、
を備え、
前記ピストンロッド(30)には、前記軸方向(A)に変位するために配置され、前記内部(11)の低圧側(12)から高圧側(14)を流体的に分離するピストン(20)が形成されており、
前記ピストンロッド(30)と前記制御ロッド(40)との間に制御ギャップ(34)が形成されており、前記制御ギャップ(34)によって高圧側(14)と低圧側(12)とが連結され、前記ピストンロッド(30)は、少なくとも1つの開口部(32)を有し、前記開口部(32)によって前記高圧側(14)と前記制御ギャップ(34)とが互いに連結され、
前記ピストン(20)は、アイドル位置(R)と終端位置(E)との間で移動可能であり、前記ピストン(20)は、少なくとも前記アイドル位置(R)では、前記制御ギャップ(34)を閉じない、ことを特徴とする、
反跳ブレーキ(1)。
【請求項2】
ピストン(20)は、ピストン(20)を介して高圧側(14)と低圧側(12)との流体連通が阻止されるように、ピストンロッド(30)の外側輪郭と中空シリンダ(10)の内側輪郭との間の領域(B)において、高圧側(14)と低圧側(12)とを流体的に分離することを特徴とする請求項1に記載の反跳ブレーキ(1)。
【請求項3】
前記ピストン(20)が前記軸方向に変位可能な距離(L)が、弾丸が前記銃砲身付き火器を通過中における前記反跳塊の反跳距離と少なくとも同程度大きいことを特徴とする請求項1又は2に記載の反跳ブレーキ(1)。
【請求項4】
前記ピストン(20)が、2つの本質的に半径方向に延びる端面(22,24)を有することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の反跳ブレーキ(1)。
【請求項5】
前記ピストン(20)の端面(24)は高圧側端面(24)であり、その全端面(24)が前記アイドル位置(R)における高圧側(14)に対応することを特徴とする請求項4に記載の反跳ブレーキ(1)。
【請求項6】
前記ピストン(20)の端面(22)は低圧側端面(22)であり、その全端面が常時低圧側(12)に対応することを特徴とする請求項4又は5に記載の反跳ブレーキ(1)。
【請求項7】
外側ピストンロッド(30)が、その全長にわたって本質的に円筒状の外輪郭を有することを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の反跳ブレーキ(1)。
【請求項8】
記開口部(32)は、前記ピストン(20)の前記アイドル位置(R)の前方に配置されていることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の反跳ブレーキ(1)。
【請求項9】
前記制御ギャップ(34)は、前記ピストン(20)のアイドル位置(R)において前記高圧側(14)及び前記低圧側(12)と連通することを特徴とする請求項8に記載の反跳ブレーキ(1)。
【請求項10】
前記ピストン(20)は高圧側端面(24)に面取り部(28)を有し、前記面取り部(28)は前記開口部(32)と同じ傾斜角度を有することを特徴とする請求項8又は9に記載の反跳ブレーキ(1)。
【請求項11】
前記反跳ブレーキ(1)は、上記ピストン(20)の前記終端位置(E)に停止端を設けるために上記ピストンロッド(30)上に配置されたストップ要素(50)を含んでなることを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載の反跳ブレーキ(1)。
【請求項12】
請求項1~11の何れか1項に記載の反跳ブレーキ(1)を少なくとも1つ備える、銃砲身付き火器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銃砲身付き火器(Barreled firearm)の反跳塊を制動する反跳ブレーキ(recoiling brake)であって、内部に流体が充填された中空シリンダと、中空シリンダに接続された端部を有する前記中空シリンダに配置された制御ロッドと、前記中空シリンダの軸方向に移動するために前記中空シリンダ内に配置された、前記制御ロッドを取り囲むピストンロッドと、を備える反跳ブレーキに関する。
【0002】
さらに、本出願は、このタイプの反跳ブレーキを少なくとも1つ備える銃砲身付き火器、特に大口径火器に関する。
【背景技術】
【0003】
銃砲身付き火器、特に大口径の銃砲身付き火器の精密さのためには、好ましくは、弾丸の通路中に火器の銃砲身が振動を起こさないことが重要である。今日の大口径火器の銃砲身には火器反跳があり、これは反跳ブレーキで制動される。制動力は、通常、油圧ブレーキによって発生する。これは、火器の反跳距離によって異なる。油圧作動油が制御ギャップを介して押される。制御ギャップは反跳に応じて変化し、このようにして制動力を制御する。
【0004】
反跳ブレーキは、流体が充填された中空シリンダを含むDE10 2017 103 052 A1から知られている。可動ピストンロッドおよび前記ピストンロッド内に配置された制御ロッドは、中空シリンダ内に配置されている。制御ロッドは可変制御プロファイルを有する。
【0005】
反跳のある銃砲用の流体空気式レキュペレータ及び反跳ブレーキがDE30 15 126 A1から知られており、ピストンロッドはピストンロッドに固定的に連結されたピストンを有する中空シリンダ内に形成されている。
【0006】
米国特許第4,502,366号明細書及びドイツ特許第4,502,366号明細書には、油圧シリンダと、その中に配置されたピストンロッドとを含む油圧反跳ブレーキが開示されている。
【0007】
EP 0 351 501 A1から反跳ブレーキが知られている。反跳ブレーキは、流体が充填された中空シリンダを備える。中空円筒に制御ロッドが配置され、制御ロッドの一端が中空円筒に接続されている。制御ロッドの周囲にピストンロッドが形成され、これはピストンと一体となって中空シリンダ内を移動可能である。弾丸が発射され、火器の銃砲身を通過すると、火器の銃砲身は後方に移動する。ピストンロッドと一体となったブレーキピストンは、その間に制動力を発生する。反跳ブレーキは、さらに、ピストンの後方にピストンリングを含む。ピストンとピストンリングにはボアが設けられているため、高圧側と低圧側はピストンとピストンリングで接続されている。ボアは復座を減速させるように設計されている。
【0008】
既知の火器ブレーキの設計により、弾丸が火器の銃砲身を通過する間に制動力が発生し、これが火器の銃砲身に作用し、これによって火器の銃砲身に振動が生じる。これは、火器の精度に悪影響を及ぼす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】DE10 2017 103 052 A1
【文献】DE30 15 126 A1
【文献】US4,502,366
【文献】DE4,502,366
【文献】EP 0 351 501 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このことに基づいて、本発明の基礎となる目的は、弾丸がまだ火器の銃砲身内にある間、火器の銃砲身の自由反跳を許容する反跳ブレーキを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、請求項1の反跳ブレーキによって達成される。有利な実施形態及び改良は、特定の従属項の主題である。
【0012】
本発明によれば、銃砲身付き火器の反跳塊を制動する反跳ブレーキであって、内部に流体が充填された中空シリンダと、中空シリンダに接続された端部を有する前記中空シリンダに配置された制御ロッドと、前記中空シリンダの軸方向に移動するために前記中空シリンダ内に配置された、前記制御ロッドを取り囲むピストンロッドと、を備える反跳ブレーキに関する。
【0013】
本発明によれば、さらに、請求項12に記載の銃砲身付き火器が提供され、これは、以下に記載されるように、少なくとも1つのこのタイプまたはさらに改良された反跳ブレーキを含む。
【0014】
銃砲身付き火器は、通常、1つまたは複数の反跳ブレーキを含む火器であることが好ましい。このタイプの火器は、好ましくは、中口径または大口径の火器である。
【0015】
反跳塊は、銃砲身付き火器の部品であって反跳のために射撃方向とは反対の方向に偏向する(deflected)部品である。このような部品には、例えば、火器の銃砲身および遊底が含まれる。
【0016】
制御ロッドの端部は、中空シリンダの周縁部に接続されることが好ましい。
【0017】
中空シリンダは、高圧側と低圧側とがある。銃砲身が反跳ブレーキで制動されている間であってピストンロッドがピストンとともに中空シリンダを移動している間、高圧側の方が低圧側よりも圧力が高くなる。
【0018】
反跳ブレーキの中空シリンダは、好ましくは、銃砲身付き火器の架台に接続され、ピストンロッドは、火器の反跳塊に接続される。しかし、反跳ブレーキが火器の反跳塊に接続され、ピストンロッドが架台に接続されてもよい。
【0019】
ピストンロッドは、中空シリンダ内で中空シリンダの軸方向に移動可能である。
【0020】
ピストンは、中空シリンダの軸方向の変位のためにピストンロッド上に配置される。
【0021】
このことにより、発射された弾丸が火器の銃砲身を通過する間に、火器の銃砲身が自由反跳を行うことができるという事実が達成される。このプロセスの間、反跳ブレーキは制動効果を持たない。反跳ブレーキの制動効果は、弾丸が銃砲身から離れた後にのみ生じる(sets)。また、反跳ブレーキにより、低い残留ブレーキ力も防止される。このことにより、弾丸の通過中に火器の銃砲身に生じる振動が最小限となるという事実が達成される。これは、銃砲身付き火器の精度にプラスの影響を与える。
【0022】
1つの有利な反跳ブレーキの改良において、ピストンを通る高圧側と低圧側との間の流体連通が妨げられるように、ピストンロッドの外側輪郭と中空シリンダの内側輪郭との間の領域において、ピストンが高圧側と低圧側とを流体的に分離するように設けられてもよい。これは、流体がピストンロッドの外側輪郭と中空シリンダの内側輪郭との間でピストンを通って流れることができなくても、ピストンがピストンロッド上で自由に動くことができるという事実を達成する。ピストンは、ピストンロッドの外側輪郭と中空シリンダの内側輪郭との間のこの領域をシールする。
【0023】
流体は、好ましくは、作動流体である。
【0024】
前記反跳ブレーキによれば、さらに、ピストンが軸方向に変位可能である距離を、弾丸が銃砲身付き火器を通過する間の反跳塊の反跳距離と少なくとも同程度に大きくすることができる。
【0025】
これによって、反跳ブレーキが係合する前に弾丸が火器の銃砲身から離れることが保証され、その結果、銃砲身付き火器の銃砲身に生じる振動が最小限となる。
【0026】
反跳ブレーキの1つの有利な実施形態では、さらにピストンが2つの本質的に半径方向に延びる端面を有することが提供されてもよい。これによって、ピストンのよりコンパクトな設計およびピストン上の均一な圧力分布が保証される。また、構造上の弱点を回避し、良好なシール効果が達成される。
【0027】
反跳ブレーキは、好ましくは、ピストンが高圧側端面を有し、その全端面がアイドル位置における高圧側に対応するように設計され得る。また、前記端面が、停止位置及び前記アイドル位置と前記停止位置との間の位置において前記高圧側にも対応するように設けられてもよい。
【0028】
1つの有利な改良において、反跳ブレーキがピストンが低圧側端面を有し、その全端面が常に低圧側に対応するように設けられてもよい。
【0029】
ピストンロッドは、その全長にわたって、本質的に円筒状の外側輪郭を有することがさらに提供されてもよい。これにより、ピストンの軸方向変位が長い距離にわたって可能であるという事実が達成される。従って、比較的遅い弾丸であっても、反跳ブレーキセットの制動効果が生じる前に、火器の銃砲身を離脱し得る。
【0030】
ピストンの一実施形態では、制御ギャップがピストンロッドの内部、特に高圧側と低圧側を接続するピストンロッドと制御ロッドの間に形成され、ピストンロッドは、高圧側と制御ギャップを相互に接続する少なくとも1つの開口部を有することが提供されてもよい。
【0031】
開口部は、ピストンのアイドル位置の前方に配置されることが好ましい。
【0032】
しかしながら、あるいは、開口は、ピストンが開口を通過したときにのみ開口が露出するように、ピストンのアイドル位置の後ろに配置することもできる。
【0033】
これにより、制動動作中に、流体が高圧側から低圧側へ制御ギャップを通してしか流れることができないという事実が達成され、したがって、制御ギャップの寸法を決定することにより、所定の制動効果が設定される。
【0034】
アイドル位置は、ピストンが発射前に位置する、変位可能に配置されたピストンの位置であると理解される。
【0035】
さらに、ピストンのアイドル位置において、制御ギャップが高圧側および低圧側と連通するように設けられてもよい。このために、制御ギャップは高圧側に接続される開口部と低圧側に接続される開口部を有している。
【0036】
制御ギャップとピストンとは、このように位置決めされており、ピストンの場合には、いつでもピストンによって制御ギャップが閉じられないように移動可能である。したがって、ピストンは、アイドル位置または終端位置、またはアイドル位置と終端位置の間の位置では、制御ギャップを閉じない。
【0037】
さらに、前記ピストンが、前記開口部と同じ傾斜角度を有する高圧側の端面に面取りを有するように設けられてもよい。
【0038】
その結果、開口部の輪郭は、アイドル位置にあるピストンの面取りによって延長されていることが好ましい。
【0039】
ピストンがそのアイドル位置において開口部の上方に少なくとも部分的に配置される場合、これによって、改良された流体力学が制御ギャップを通る貫通流の間に開口部の領域をもたらすという事実が達成される。
【0040】
反跳ブレーキの一改良において、反跳ブレーキは、ピストンの終端位置に終端停止を設けるためにピストンロッド上に配置されたストップ要素を有するように設けられてもよい。
【0041】
本発明は、図面を参照して、1つの例示的な実施形態に基づいて以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1図1は、本発明による反跳ブレーキの概略断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図1は、本発明による反跳ブレーキ1の概略断面図を示す。反跳ブレーキ1は、銃砲身付き火器の反跳塊を制動するために設けられている。反跳ブレーキ1は中空シリンダ10を含み、中空シリンダ10は内部11に流体が充填されている。内部11は、高圧側14と低圧側12とを有する。
【0044】
反跳ブレーキ1は、更に、中空シリンダ10内に配置された制御ロッド40を備える。制御ロッド40は、中空シリンダ10に接続された端部42を有する。制御ロッド40と中空シリンダ10とは、この目的のために互いにねじ止めされることが好ましい。このように制御ロッド40は、装着された状態においては、中空シリンダ10に対して移動可能ではない。
【0045】
反跳ブレーキ1は、更にピストンロッド30を備え、このピストンロッドは、制御ロッド40を取り囲み、中空シリンダ10の軸方向Aに中空シリンダ10及び制御ロッド40に対して移動するように中空シリンダ10内に配置される。図1から明らかなように、ピストンロッド30は、制御ロッド40が内部に配置された管状構成要素である。
【0046】
反跳ブレーキ1の中空シリンダ10は、銃砲身付き火器の架台に接続され、ピストンロッド30は、火器の反跳塊に接続される。しかし、代替的に、中空シリンダ10が火器の反跳塊に接続され、ピストンロッド30が架台に接続されてもよい。
【0047】
更に、軸方向Aに変位可能なピストン20が中空シリンダ10内に配置されている。外径寸法は、中空シリンダ10の内径よりもわずかに小さくなるようにして、すきまばめを形成しているので、ピストン20を中空シリンダ10内で軸方向Aに変位させることができる。ピストン20は、さらに、シールを含み、その結果、その外径で中空シリンダ10に対してシールされる。
【0048】
ピストンに対して変位可能なピストンロッド30は、ピストン20内に支持されており、これにより、軸方向Aに変位するように配置され、高圧側14と低圧側12とを流体的に分離するピストン20がピストンロッド30上に形成される。ピストン20は、アイドル位置Rと終端位置Eとの間でピストンロッド30に沿って軸方向に変位可能である。
【0049】
ストップ要素50もピストンロッド30上の端部に配置されており、ピストン20の終端位置Eに終端停止を与える。ストップ要素50はまた、ピストンロッド30上に弾性手段16を保持し、弾性手段16のための停止端を提供するために使用される。
【0050】
弾性手段16の他方の側は、ピストン20上に支持され、後者がストップ要素50に関して規定された予張力を有し得ることを保証する。一実施形態では、弾性手段16は、例えば、バネである。この目的のために、ストップ要素50は、例えば、ピストンロッド30にねじ止めされるか、またはねじによって固定される。
【0051】
ピストンロッド30上には、軸方向Aに変位するように配置され、高圧側14と低圧側12とを流体的に分離するピストン20が形成されている。ピストン20は、アイドル位置Rと終端位置Eとの間でピストンロッド30に沿って軸方向に変位可能である。アイドル位置Rは、弾丸が発射される前のピストン20の位置を規定し、ピストン20の終端位置Eは、ピストンロッド30上に配置されたストップ要素50によって規定される。ピストン20およびピストンロッド30は、中空シリンダ10に対して、一緒にさらに軸方向に変位可能である。
【0052】
ピストン20は、ピストン20を通る高圧側14と低圧側12との間の流体連通が、特にピストンロッド30の外側輪郭と中空シリンダ10の内側輪郭との間の領域Bに形成されないように、高圧側14と低圧側12とを流体的に分離する。代わりに、流体連絡用の流体は、高圧側14を低圧側12に接続する制御ギャップ34を通って流れなければならない。
【0053】
制御ギャップ34は、ピストンロッド30内部、特にピストンロッド30と制御ロッド40との間に形成される。ピストンロッド30は少なくとも1つの開口部32を有し、この開口部は高圧側14と制御間隙34とを互いに接続しており、開口部32はピストン20のアイドル位置Rの前方に配置されている。あるいは、少なくとも1つの開口部32は、ピストンロッド30上のピストン20の変位によってのみ露出されるように配置することもできる(図示せず)。
【0054】
制御ギャップ34の他方の側は、更なる開口部を介して低圧側12に接続され、制御ギャップ34は、高圧側14と低圧側12とを互いに接続するようになっている。
【0055】
ピストン20が軸方向Aに軸方向に変位可能である距離Lは、弾丸が銃砲身付き火器を通過する間の反跳塊の反跳距離と少なくとも同程度の距離、すなわち弾丸が火器の銃砲身から離脱するまでの反跳塊によってカバーされる距離となる。
【0056】
火器の銃砲身が反跳ブレーキ1によって制動され、ピストンロッド30がピストン20と共に中空シリンダ10を通って移動している間、圧力は、高圧側14の方が低圧側12よりも高い。
【0057】
ピストン20は、2つの本質的に半径方向に延びる端面22、24を有する。2つの端面22,24の一方は、高圧側端面24であり、その端面24の全体は、アイドル位置Rにおける高圧側14に対応している。他端面は低圧側端面22であり、常時低圧側12に対応している。
【0058】
ピストン20は、高圧側端面24に面取り部28を有しており、開口部32と同じ傾斜角度となっている。開口部32の輪郭33は、図1に示すアイドル位置Rのピストン20の面取り部28によって延長されている。
【0059】
低圧側端面22は溝部を有し、弾性手段16が支持されている。
【0060】
弾丸が発射されて銃砲身を通って移動すると、銃砲身付き火器の反跳塊が反跳する。また、銃砲身付き火器の反跳部分に連結されているピストンロッド30も反跳するので、ピストンロッド30は、反跳ブレーキ1の中空シリンダ10内のピストン20に対して軸方向Aに変位する。ピストン20は、その質量の慣性のため、その位置に留まる。弾丸が銃砲身を移動している間、この相対的な変位は継続する。ピストンロッド30上でピストン20が軸方向に変位可能である距離Lは、ピストンロッド30がピストン20に対して弾丸が火器の銃砲身を通過するのに必要な時間の全長にわたって移動するように寸法決めされ、反跳塊は制動されずに反跳することがある。換言すれば、ピストンロッド30上のピストン20のアイドル位置Rと終端位置Eとの間の距離Lの大きさは、ピストン20がストップ要素50に対して静止する前に弾丸が火器の銃砲身から離脱しているように選択される。
【0061】
弾性手段16は、バネとして、特に圧力バネとして設計されており、ピストン20がピストンロッド30上で反跳する間に圧縮される。弾丸が火器の銃砲身から離れたときのみ、ピストン20がストップ要素50に到達し、ピストンロッド30に沿って運ばれ、この時点からピストン20とピストンロッド30が反跳ブレーキ1の中空シリンダ10を通って一緒に移動し、反跳ブレーキ1の制動効果が生じる。この目的のために、流体は、高圧側14から低圧側12への制御ギャップ34によって、ピストンロッド30内の少なくとも1つの開口部32を通して押圧され、それによって、ブレーキ圧力が蓄積され、反跳ブレーキの制動力が生成される。
【0062】
上記開示が、例えば反跳ブレーキ1に関するものである限り、この種の反跳ブレーキ1を含む銃砲身付き火器についても同時に開示されるものと考えられる。
【符号の説明】
【0063】
1 反跳ブレーキ
10 中空シリンダ
11 内部
12 低圧側
14 高圧側
16 弾性手段
20 ピストン
22 低圧側端面
24 高圧側端面
28 面取り部
30 ピストンロッド
32 開口部
34 制御隙間
40 制御ロッド
42 制御ロッドの固定された端部
50 ストップ要素
A 軸方向
B 領域
E 終端位置
L 軸方向変位可能距離
R アイドル位置
図1