(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】タービン
(51)【国際特許分類】
F02B 37/18 20060101AFI20241007BHJP
F02B 39/00 20060101ALI20241007BHJP
【FI】
F02B37/18 E
F02B39/00 E
(21)【出願番号】P 2022511530
(86)(22)【出願日】2020-12-21
(86)【国際出願番号】 JP2020047721
(87)【国際公開番号】W WO2021199527
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-06-06
【審判番号】
【審判請求日】2023-09-27
(31)【優先権主張番号】P 2020065877
(32)【優先日】2020-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡本 峻
(72)【発明者】
【氏名】井上 智裕
(72)【発明者】
【氏名】照井 敏文
(72)【発明者】
【氏名】森田 功
【合議体】
【審判長】河端 賢
【審判官】倉橋 紀夫
【審判官】青木 良憲
(56)【参考文献】
【文献】実開平1-174530(JP,U)
【文献】特開2018-150842(JP,A)
【文献】特開昭62-29723(JP,A)
【文献】特開2009-281197(JP,A)
【文献】実公平2-41310(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 37/00 - 39/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンインペラを収容する収容部を有するハウジングと、
前記収容部と連通する第1タービンスクロール流路と、
前記収容部と連通し、前記第1タービンスクロール流路よりも体積が大きい第2タービンスクロール流路と、
前記第1タービンスクロール流路と連通する第1ポート、および、前記第2タービンスクロール流路と連通し、前記第1ポートより開口面積が小さい第2ポートを有する弁座と、
前記弁座と当接可能なバルブと、
前記バルブを保持
するシャフトであって、当該シャフトは、前記第1ポートよりも前記第2ポートの近くに位置する、シャフトと、
を備えるタービン。
【請求項2】
前記シャフトは、前記第1ポートの中心、および、前記第2ポートの中心を結ぶ結線方向と交差する方向に回転中心軸を有する、請求項1に記載のタービン。
【請求項3】
前記第1タービンスクロール流路および前記第2タービンスクロール流路の各々は、エンジンと流体連通し、
前記エンジンから前記第1タービンスクロール流路を介して前記タービンインペラに到達するまでの排気流路の体積は、前記エンジンから前記第2タービンスクロール流路を介して前記タービンインペラに到達するまでの排気流路の体積より小さい、請求項1または2に記載のタービン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タービンに関する。本出願は2020年4月1日に提出された日本特許出願第2020-65877号に基づく優先権の利益を主張するものであり、その内容は本出願に援用される。
【背景技術】
【0002】
過給機は、タービンを備える。タービンには、2つのタービンスクロール流路を備えるものがある。特許文献1には、2つのタービンスクロール流路に連通する2つのウェイストゲートポートについて開示がある。特許文献1には、2つのウェイストゲートポートを開閉するウェイストゲートバルブについて開示がある。特許文献1には、ウェイストゲートバルブを開いたとき、2つのウェイストゲートポートの実質的な通路面積を同一にすることについて開示がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
2つのタービンスクロール流路の体積(容積)は、互いに異なる場合がある。その場合、2つのタービンスクロール流路のうち体積の小さいタービンスクロール流路内の排気ガスの圧力は、体積の大きいタービンスクロール流路の排気ガスの圧力より高くなる。ウェイストゲートバルブが開かれ、2つのウェイストゲートポートの実質的な通路面積が同一である場合、2つのタービンスクロール流路内を流通する排気ガスの圧力差が低減されずに、タービン性能が低下するおそれがある。
【0005】
本開示の目的は、タービン性能の低下を抑制可能なタービンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係るタービンは、タービンインペラを収容する収容部を有するハウジングと、収容部と連通する第1タービンスクロール流路と、収容部と連通し、第1タービンスクロール流路よりも体積が大きい第2タービンスクロール流路と、第1タービンスクロール流路と連通する第1ポート、および、第2タービンスクロール流路と連通し、第1ポートより開口面積が小さい第2ポートを有する弁座と、弁座と当接可能なバルブと、バルブを保持するシャフトであって、当該シャフトは、第1ポートよりも第2ポートの近くに位置する、シャフトと、を備える。
【0007】
シャフトは、第1ポートの中心、および、第2ポートの中心を結ぶ結線方向と交差する方向に回転中心軸を有してもよい。
【0008】
第1タービンスクロール流路および第2タービンスクロール流路の各々は、エンジンと流体連通し、エンジンから第1タービンスクロール流路を介してタービンインペラに到達するまでの排気流路の体積は、エンジンから第2タービンスクロール流路を介してタービンインペラに到達するまでの排気流路の体積より小さくてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、タービン性能の低下を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、エンジンシステム1の概略構成図である。
【
図4】
図4は、本実施形態の弁座とバルブ機構との配置関係を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の一実施形態について詳細に説明する。実施形態に示す寸法、材料、具体的な数値等は、理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本開示を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。また本開示に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0012】
図1は、エンジンシステム1の概略構成図である。
図1に示すように、エンジンシステム1は、エンジン10と、過給機TCとを含む。エンジン10の詳細については後述する。
【0013】
過給機TCは、過給機本体20を備える。
図1に示す矢印L方向を過給機TCの左側として説明する。
図1に示す矢印R方向を過給機TCの右側として説明する。過給機本体20は、ベアリングハウジング22と、タービンハウジング(ハウジング)24と、コンプレッサハウジング26とを含む。
【0014】
ベアリングハウジング22の左側には、締結機構28によってタービンハウジング24が連結される。締結機構28は、例えば、Gカップリングで構成される。ベアリングハウジング22とタービンハウジング24は、締結機構28によってバンド締結される。ベアリングハウジング22の右側には、締結ボルト30によってコンプレッサハウジング26が連結される。過給機TCのうち、タービンハウジング24側は、タービンTとして機能する。過給機TCのうち、コンプレッサハウジング26側は、コンプレッサCとして機能する。
【0015】
ベアリングハウジング22には、収容孔22aが形成される。収容孔22aは、ベアリングハウジング22を過給機TCの左右方向に貫通する。収容孔22aには、軸受32が配される。
図1では、軸受32の一例としてフルフローティング軸受を示す。ただし、軸受32は、セミフローティング軸受や転がり軸受など、他のラジアル軸受であってもよい。収容孔22aには、シャフト34の一部が配される。シャフト34は、軸受32によって回転可能に支持される。シャフト34の左端部には、タービンインペラ36が設けられる。タービンインペラ36は、タービンハウジング24内に回転可能に収容される。シャフト34の右端部には、コンプレッサインペラ38が設けられる。コンプレッサインペラ38は、コンプレッサハウジング26内に回転可能に収容される。
【0016】
コンプレッサハウジング26には、吸気口40が形成される。吸気口40は、過給機TCの右側に開口する。吸気口40は、不図示のエアクリーナに接続される。ベアリングハウジング22とコンプレッサハウジング26との間には、ディフューザ流路42が形成される。ディフューザ流路42は、空気を加圧する。ディフューザ流路42は、シャフト34の径方向(以下、単に径方向という)の内側から外側に向けて環状に形成される。ディフューザ流路42は、径方向の内側において、コンプレッサインペラ38を介して吸気口40に連通している。
【0017】
また、コンプレッサハウジング26には、コンプレッサスクロール流路44が形成される。コンプレッサスクロール流路44は、環状に形成される。コンプレッサスクロール流路44は、例えば、コンプレッサインペラ38よりも径方向の外側に位置する。コンプレッサスクロール流路44は、エンジン10の不図示の吸気口、および、ディフューザ流路42と連通している。コンプレッサインペラ38が回転すると、吸気口40からコンプレッサハウジング26内に空気が吸気される。吸気された空気は、コンプレッサインペラ38の翼間を流通する過程において、加圧加速される。加圧加速された空気は、ディフューザ流路42およびコンプレッサスクロール流路44で加圧される。加圧された空気は、不図示の吐出口から流出し、エンジン10の吸気口に導かれる。
【0018】
タービンハウジング24には、吐出流路46が形成される。吐出流路46は、過給機TCの左側に開口する。吐出流路46は、不図示の排気ガス浄化装置に接続される。タービンハウジング24には、タービンインペラ36を収容する収容部Sが形成される。収容部Sは、吐出流路46の上流側(
図1中、右側)に位置する。収容部Sは、吐出流路46と連通する。吐出流路46は、タービンインペラ36の回転軸方向(以下、単に回転軸方向という)に延在する。
【0019】
タービンハウジング24には、第1タービンスクロール流路48と、第2タービンスクロール流路50とが形成される。第1タービンスクロール流路48および第2タービンスクロール流路50は、収容部Sよりも径方向外側に位置する。第1タービンスクロール流路48および第2タービンスクロール流路50は、収容部Sと連通する。
【0020】
図1に示すように、第2タービンスクロール流路50の流路断面積は、第1タービンスクロール流路48の流路断面積よりも大きい。そのため、第2タービンスクロール流路50の体積(容積)は、第1タービンスクロール流路48の体積(容積)よりも大きい。ただし、第1タービンスクロール流路48および第2タービンスクロール流路50は、これに限定されず、第1タービンスクロール流路48の流路断面積が、第2タービンスクロール流路50の流路断面積よりも大きくてもよい。つまり、第1タービンスクロール流路48の体積(容積)は、第2タービンスクロール流路50の体積(容積)よりも大きくてもよい。
【0021】
第1タービンスクロール流路48および第2タービンスクロール流路50は、軸方向に並んで形成される。第2タービンスクロール流路50は、第1タービンスクロール流路48よりもベアリングハウジング22側に位置する。第1タービンスクロール流路48と第2タービンスクロール流路50との間には、隔壁52が形成される。隔壁52は、第1タービンスクロール流路48と第2タービンスクロール流路50とを軸方向に区画する。
【0022】
タービンハウジング24には、第1バイパス流路54と、第2バイパス流路56と、バルブ機構58とが設けられる。第1バイパス流路54は、その一端において第1タービンスクロール流路48と連通し、他端に第1ウェイストゲートポート(第1ポート)54aを有する。第2バイパス流路56は、その一端において第2タービンスクロール流路50と連通し、他端に第2ウェイストゲートポート(第2ポート)56aを有する。また、タービンハウジング24は、第1ウェイストゲートポート54aおよび第2ウェイストゲートポート56aが開口する弁座VSを備える。
【0023】
バルブ機構58は、ウェイストゲートバルブ(バルブ)58aと、シャフト58bと、アクチュエータ58cとを含む。ウェイストゲートバルブ58aは、弁座VSと当接可能に構成され、弁座VSと接触または弁座VSから離隔することができる。ウェイストゲートバルブ58aが弁座VSと接触したとき、第1ウェイストゲートポート54aおよび第2ウェイストゲートポート56aが閉塞される。ウェイストゲートバルブ58aが弁座VSから離隔したとき、第1ウェイストゲートポート54aおよび第2ウェイストゲートポート56aが開放される。
【0024】
シャフト58bは、ウェイストゲートバルブ58aに接続され、ウェイストゲートバルブ58aを保持する。シャフト58bは、不図示のブッシュにより回転中心軸O回りに回転可能に支持される。
【0025】
アクチュエータ58cは、リンク機構58d(
図1中、破線)を介してシャフト58bを回転させる。アクチュエータ58cによりシャフト58bが回転されることで、ウェイストゲートバルブ58aが弁座VSと近接または離隔する方向に移動される。
【0026】
エンジン10は、第1気筒Eaと、第2気筒Ebと、第3気筒Ecと、第4気筒Edとを備える。各気筒Ea、Eb、Ec、Edでは、コンプレッサCを介して供給される空気と燃料との混合気が燃焼される。各気筒Ea、Eb、Ec、Edの燃焼タイミングは、互いに異なる。例えば、燃焼タイミングは、第1気筒Ea→第3気筒Ec→第4気筒Ed→第2気筒Ebの順である。混合気の燃焼により生じた排気ガスは、各気筒Ea、Eb、Ec、Edの各排気ポート12a、12b、12c、12dから排出される。本実施形態では、エンジン10が4つの気筒を備える例について説明するが、これに限定されず、例えば、エンジン10は、6つの気筒を備えてもよい。
【0027】
タービンハウジング24とエンジン10との間には、エキゾーストマニホールド60が設けられる。エキゾーストマニホールド60は、エンジン10とタービンハウジング24とを接続する。
【0028】
エキゾーストマニホールド60には、第1合流路62(
図1中、二点鎖線)と、第2合流路64(
図1中、二点鎖線)とが形成される。第1合流路62は、第2気筒Ebの排気ポート(第1排気ポート)12b、および、第3気筒Ecの排気ポート(第1排気ポート)12cと連通する。また、第1合流路62は、タービンハウジング24の第1タービンスクロール流路48と連通する。第1合流路62は、第2気筒Ebおよび第3気筒Ecから排気ポート12b、12cを介して排出された排気ガスを合流させ、排気ガスを第1タービンスクロール流路48に導く。
【0029】
第2合流路64は、第1気筒Eaの排気ポート(第2排気ポート)12a、および、第4気筒Edの排気ポート(第2排気ポート)12dと連通する。また、第2合流路64は、タービンハウジング24の第2タービンスクロール流路50と連通する。第2合流路64は、第1気筒Eaおよび第4気筒Edから排気ポート12a、12dを介して排出された排気ガスを合流させ、排気ガスを第2タービンスクロール流路50に導く。
【0030】
なお、第1合流路62は、エンジン10の各気筒Ea、Eb、Ec、Edのうち内側に配された2つの気筒Eb、Ecに接続される。また、第2合流路64は、エンジン10の各気筒Ea、Eb、Ec、Edのうち外側に配された2つの気筒Ea、Edに接続される。そのため、第2合流路64は、第1合流路62よりも流路長が長くなる。したがって、第2合流路64の体積は、第1合流路62の体積より大きくなる。ただし、第1合流路62及び第2合流路64は、これに限定されず、例えば、第1合流路62が外側に配された2つの気筒Ea、Edに接続され、第2合流路64が内側に配された2つの気筒Eb、Ecに接続されてもよい。つまり、第1合流路62の体積が、第2合流路64の体積より大きくてもよい。
【0031】
第1タービンスクロール流路48および第2タービンスクロール流路50に導かれた排気ガスは、タービンインペラ36の翼間を介して吐出流路46に導かれる。排気ガスの流通過程において、タービンインペラ36が回転する。
【0032】
タービンインペラ36の回転力は、シャフト34を介してコンプレッサインペラ38に伝達される。上記のとおりに、空気は、コンプレッサインペラ38の回転力によって加圧されて、エンジン10の吸気口に導かれる。
【0033】
図2は、
図1のII-II線断面図である。
図2では、シャフト34の軸方向に垂直かつ第2タービンスクロール流路50を通る平面で、タービンハウジング24を切断した図を示す。なお、
図2では、後述する第1ガス流入口70および第2ガス流入口72を重複して表示している。また、
図2では、タービンインペラ36を円で示す。
図3は、
図2のIII矢視図である。
【0034】
図2および
図3に示すように、タービンハウジング24には、第1ガス流入口70と、第2ガス流入口72が形成される。第1ガス流入口70および第2ガス流入口72は、タービンハウジング24の外部に開口する。第1ガス流入口70には、第1合流路62が接続される。第1ガス流入口70は、第1合流路62と第1タービンスクロール流路48とを連通させる。第2ガス流入口72には、第2合流路64が接続される。第2ガス流入口72は、第2合流路64と第2タービンスクロール流路50とを連通させる。
【0035】
図3に示すように、第1ガス流入口70の開口面積は、第2ガス流入口72の開口面積よりも小さい。
図2に示すように、タービンハウジング24には、2つの舌部74、76が形成される。
図2では、2つの舌部74、76を重複して表示している。舌部76は、第2タービンスクロール流路50の下流部50aに設けられる。舌部76は、第2タービンスクロール流路50の下流部50aと上流部50bとを仕切る。舌部74は、舌部76と同様、第1タービンスクロール流路48の下流部に設けられ、下流部と上流部とを仕切る。
【0036】
2つの舌部74、76は、タービンインペラ36の回転方向の位置が互いに同じである。このように、タービンTは、所謂ツインスクロールタービンである。
【0037】
上述したように、本実施形態のタービンTは、体積の異なる2つのタービンスクロール流路を備える。2つのタービンスクロール流路の体積が異なる場合、2つのタービンスクロール流路のうち体積の小さいタービンスクロール流路内の排気ガスの圧力は、体積の大きいタービンスクロール流路の排気ガスの圧力より高くなる。
【0038】
本実施形態では、第1タービンスクロール流路48の体積が第2タービンスクロール流路50の体積よりも小さいため、第2タービンスクロール流路50の排気ガスの圧力よりも、第1タービンスクロール流路48の排気ガスの圧力の方が高くなる。
【0039】
ウェイストゲートバルブ58aが弁座VSから離隔し、2つのウェイストゲートポート54a、56aが開放されると、2つのウェイストゲートポート54a、56aから排気ガスが流出する。2つのウェイストゲートポート54a、56aから流出した排気ガスは、タービンインペラ36を迂回して吐出流路46に排出される。このとき、2つのウェイストゲートポート54a、56aの実質的な通路面積を同一にすると、2つのタービンスクロール流路48、50内を流通する排気ガスの圧力差が低減されずに、タービン性能が低下するおそれがある。一般的に、タービンインペラ36に加わる圧力(排気ガスの圧力)が均等になるほど、タービン性能が向上する。
【0040】
図4は、本実施形態の弁座VSとバルブ機構58との配置関係を説明するための図である。
図4に示すように、第1バイパス流路54の流路断面積は、第2バイパス流路56の流路断面積よりも大きい。換言すれば、第2バイパス流路56の流路断面積は、第1バイパス流路54の流路断面積より小さい。
【0041】
また、第1ウェイストゲートポート54aの開口面積は、第2ウェイストゲートポート56aの開口面積よりも大きい。換言すれば、第2ウェイストゲートポート56aの開口面積は、第1ウェイストゲートポート54aの開口面積より小さい。
【0042】
シャフト58bは、弁座VSの中心C1に対し第2ウェイストゲートポート56a側に配される。シャフト58bは、第2ウェイストゲートポート56aよりも第1ウェイストゲートポート54aと反対側に配される。シャフト58bは、第1ウェイストゲートポート54aと第2ウェイストゲートポート56aとが並ぶ配列方向と交差する方向に延在する回転中心軸Oを有する。具体的に、シャフト58bは、第1ウェイストゲートポート54aの中心C2、および、第2ウェイストゲートポート56aの中心C3を結ぶ結線方向Dと交差する方向に延在する回転中心軸Oを有する。本実施形態では、シャフト58bは、弁座の中心C1、第1ウェイストゲートポート54aの中心C2、第2ウェイストゲートポート56aの中心C3を結ぶ結線方向Dと交差する方向に延在する回転中心軸Oを有する。本実施形態では、回転中心軸Oが延在する方向は、結線方向D(配列方向)と直交している。
【0043】
これにより、第1ウェイストゲートポート54aおよび第2ウェイストゲートポート56aの開放タイミングを異ならせることができる。つまり、ウェイストゲートバルブ58aは、第1ウェイストゲートポート54aおよび第2ウェイストゲートポート56aを同時に開放しなくなる。さらに、回転中心軸Oから第2ウェイストゲートポート56aまでの距離と、回転中心軸Oから第1ウェイストゲートポート54aまでの距離とを異ならせることができる。本実施形態では、回転中心軸Oから第1ウェイストゲートポート54aまでの距離は、回転中心軸Oから第2ウェイストゲートポート56aまでの距離よりも大きい。
【0044】
そのため、シャフト58bがウェイストゲートバルブ58aを弁座VSから離隔する方向に回転すると、ウェイストゲートバルブ58aは、第2ウェイストゲートポート56aよりも第1ウェイストゲートポート54aを先に開放する。これにより、ウェイストゲートバルブ58aは、第1ウェイストゲートポート54aから流出する流量を、第2ウェイストゲートポート56aから流出する流量よりも大きくすることができる。
【0045】
また、上述したように、第1ウェイストゲートポート54aの開口面積は、第2ウェイストゲートポート56aの開口面積より大きい。そのため、第1ウェイストゲートポート54aおよび第2ウェイストゲートポート56aが開放されたとき、第1ウェイストゲートポート54aから流出する排気ガスの流量は、第2ウェイストゲートポート56aから流出する排気ガスの流量よりも大きくなる。
【0046】
また、上述したように、第1ウェイストゲートポート54aは、第1タービンスクロール流路48と連通し、第2ウェイストゲートポート56aは、第2タービンスクロール流路50と連通する。第1タービンスクロール流路48の体積は、第2タービンスクロール流路50の体積より小さく、したがって、第1タービンスクロール流路48中の排気ガスの圧力は、第2タービンスクロール流路50中の排気ガスの圧力よりも高くなる。
【0047】
第1ウェイストゲートポート54aは、第2ウェイストゲートポート56aが第2タービンスクロール流路50から排出する排気ガスよりも多くの排気ガスを、第1タービンスクロール流路48から排出させることができる。そのため、2つのタービンスクロール流路48、50内を流通する排気ガスの圧力差を低減することができ、タービン性能の低下を抑制することができる。
【0048】
また、上述したように、エキゾーストマニホールド60内の第2合流路64の体積は、第1合流路62の体積より大きくなる。第1合流路62は、第1タービンスクロール流路48と連通し、第2合流路64は、第2タービンスクロール流路50と連通する。そのため、第1合流路62と第1タービンスクロール流路48とを合わせた排気流路の体積は、第2合流路64と第2タービンスクロール流路50とを合わせた排気流路の体積より小さくなる。つまり、エンジン10から第1タービンスクロール流路48を介してタービンインペラ36に到達するまでの排気流路の体積は、エンジン10から第2タービンスクロール流路50を介してタービンインペラ36に到達するまでの排気流路の体積より小さい。
【0049】
このため、第1合流路62と第1タービンスクロール流路48とを合わせた排気流路内の圧力は、第2合流路64と第2タービンスクロール流路50とを合わせた排気流路内の圧力より大きくなる。
【0050】
本実施形態では、第1ウェイストゲートポート54aは、体積差を有する2つの排気流路のうち体積が小さい方の排気流路と連通し、第2ウェイストゲートポート56aは、2つの排気流路のうち体積が大きい方の排気流路と連通している。つまり、第1合流路62および第1タービンスクロール流路48と、第2合流路64および第2タービンスクロール流路50とのうち体積の小さい方が、開口面積の大きい第1ウェイストゲートポート54aと連通している。第1ウェイストゲートポート54aは、第2ウェイストゲートポート56aよりも多くの排気ガスを、体積が小さい方の排気流路から排出させることができる。そのため、2つの排気流路内を流通する排気ガスの圧力差を低減することができ、タービン性能の低下を抑制することができる。
【0051】
以上、添付図面を参照しながら本開示の一実施形態について説明したが、本開示はかかる実施形態に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0052】
上述した実施形態では、過給機TCのタービンTを例に挙げて説明した。しかし、過給機TC以外の装置に組み込まれたタービンTや、単体のタービンTが用いられてもよい。
【0053】
上述した実施形態では、第1タービンスクロール流路48および第2タービンスクロール流路50が軸方向に区画されたツインスクロールタービンについて説明した。しかし、本開示は、これに限定されず、タービンTは、第1タービンスクロール流路48および第2タービンスクロール流路50が径方向に区画され、2つの舌部74、76の位相が大凡180°異なる位置に配されるダブルスクロールタービンであってもよい。
【0054】
上述した実施形態では、第1合流路62が第1タービンスクロール流路48に連通され、第2合流路64が第2タービンスクロール流路50に合流する例について説明した。しかし、本開示は、これに限定されず、第1合流路62は、第2タービンスクロール流路50に連通され、第2合流路64は、第1タービンスクロール流路48に連通されてもよい。
【符号の説明】
【0055】
10:エンジン 24:タービンハウジング(ハウジング) 36:タービンインペラ 48:第1タービンスクロール流路(排気流路) 50:第2タービンスクロール流路(排気流路) 54a:第1ウェイストゲートポート(第1ポート) 56a:第2ウェイストゲートポート(第2ポート) 58a:ウェイストゲートバルブ(バルブ) 58b:シャフト 62:第1合流路(排気流路) 64:第2合流路(排気流路) S:収容部 T:タービン VS:弁座