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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】二次電池システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/48 20060101AFI20241007BHJP
   H02J 7/10 20060101ALI20241007BHJP
【FI】
H01M10/48 P
H02J7/10 C
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022512014
(86)(22)【出願日】2021-03-24
(86)【国際出願番号】 JP2021012183
(87)【国際公開番号】W WO2021200444
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2024-01-26
(31)【優先権主張番号】P 2020059688
(32)【優先日】2020-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】322003798
【氏名又は名称】パナソニックエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】沼田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】小林 径
【審査官】田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-196805(JP,A)
【文献】特開2018-41529(JP,A)
【文献】国際公開第2013/157132(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/080285(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/48
H02J 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極板と負極板とがセパレータを介して積層された電極体と、非水電解質とを有する二次電池と、
前記二次電池に接続される電気負荷と、
前記二次電池の容量Qの変化量dQに対する前記二次電池の電圧Vの変化量dVの微分値であるdV/dQが、前記二次電池の満充電状態の容量に対する前記容量Qの百分率で表される充電状態(SOC)に対してプロットされたSOC-dV/dQ曲線において、ピークトップとなるSOCを含むピークトップSOC範囲が少なくとも一つ設定され、前記ピークトップSOC範囲にて充電又は放電が停止する場合には、前記電気負荷によって前記二次電池を放電することによって前記ピークトップSOC範囲を避けて前記二次電池の充電又は放電を終了する制御装置と、
を備える、
二次電池システム。
【請求項2】
正極板と負極板とがセパレータを介して積層された電極体と、非水電解質とを有する二次電池と、
前記二次電池に接続される補助電池と、
前記二次電池の容量Qの変化量dQに対する前記二次電池の電圧Vの変化量dVの微分値であるdV/dQが、前記二次電池の満充電状態の容量に対する前記容量Qの百分率で表される充電状態(SOC)に対してプロットされたSOC-dV/dQ曲線において、ピークトップとなるSOCを含むピークトップSOC範囲が少なくとも一つ設定され、前記ピークトップSOC範囲にて充電又は放電が停止する場合には、前記補助電池によって前記二次電池を充電することによって前記ピークトップSOC範囲を避けて前記二次電池の充電又は放電を終了する制御装置と、
を備える、
二次電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、二次電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池では、Q-dV/dQ曲線上におけるピークトップにおいて充放電を停止して放置されると劣化が促進することが知られている。Q-dV/dQ曲線とは、容量Qの変化量dQに対する二次電池の電圧Vの変化量dVの微分値であるdV/dQと、容量Qの値との関係を表す曲線である。特許文献1には、予めピークトップを避けて充放電サイクルの始端及び終端の充電状態(以下、SOC)を設定する二次電池システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-196805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の二次電池システムでは、単に充放電サイクルの始端及び終端のSOCを設定しているに過ぎない。例えば、使用者が始端及び終端の間に存在するピークトップにおいて充放電を終了した場合には、二次電池の劣化が促進することになる。また、始端及び終端のSOCの間においてピークトップが存在しないように充放電サイクルを設定した場合には、電池容量が大きく低下することになる。
【0005】
本開示の目的は、充放電の終了位置がピークトップとなるSOCを避けるように充放電を制御することができる二次電池システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様である二次電池システムは、正極板と負極板とがセパレータを介して積層された電極体と、非水電解質とを有する二次電池と、二次電池に接続される電気負荷と、二次電池の容量Qの変化量dQに対する二次電池の電圧Vの変化量dVの微分値であるdV/dQが、二次電池の満充電状態の容量に対する容量Qの百分率で表される充電状態(SOC)に対してプロットされたSOC-dV/dQ曲線において、ピークトップとなるSOCを含むピークトップSOC範囲が少なくとも一つ設定され、ピークトップSOC範囲にて充電又は放電が停止する場合には、電気負荷によって二次電池を放電することによってピークトップSOC範囲を避けて二次電池の充電又は放電を終了する制御装置と、を備える。
【0007】
本開示の一態様である二次電池システムは、正極板と負極板とがセパレータを介して積層された電極体と、非水電解質とを有する二次電池と、二次電池に接続される補助電池と、二次電池の容量Qの変化量dQに対する二次電池の電圧Vの変化量dVの微分値であるdV/dQが、二次電池の満充電状態の容量に対する容量Qの百分率で表される充電状態(SOC)に対してプロットされたSOC-dV/dQ曲線において、ピークトップとなるSOCを含むピークトップSOC範囲が少なくとも一つ設定され、ピークトップSOC範囲にて充電又は放電が停止する場合には、補助電池によって二次電池を充電することによってピークトップSOC範囲を避けて二次電池の充電又は放電を終了する制御装置と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一態様によれば、充放電の終了位置がピークトップとなるSOCを避けるように充放電を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態の一例である二次電池システムを示すブロック図である。
図2図2は、実施形態の一例である二次電池の断面図である。
図3図3は、SOC-dV/dQ曲線を示すグラフである。
図4図4は、充電制御の流れを示すフロー図である。
図5図5は、放電制御の流れを示すフロー図である。
図6図6は、実施形態の他の一例である二次電池システムを示すブロック図である。
図7図7は、実施例の充電サイクルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を用いて本開示の実施形態を説明する。以下で説明する形状、材料及び個数は例示であって、二次電池の仕様に応じて適宜変更することができる。以下ではすべての図面において同等の要素には同一の符号を付して説明する。
【0011】
図1を用いて、本実施形態の一例である二次電池システム10について説明する。図1は、二次電池システム10を示すブロック図である。
【0012】
図1に示すように、二次電池システム10は、二次電池20の充放電を制御するシステムである。二次電池システム10は、二次電池20と、二次電池20の充放電を制御する制御装置40と、二次電池20の電圧を測定する電圧測定器11と、二次電池20の充電電流又は放電電流を測定する電流測定器12と、二次電池20に接続される電気負荷13と、二次電池20と電気負荷13との接続をОN/ОFFする切替スイッチ14とを備える。
【0013】
電気負荷13は、二次電池20を放電するものであって、抵抗器が好適に用いられる。また、抵抗器は、二次電池20が通常使用される範囲の電流値で放電することができる抵抗値を有することが好ましい。
【0014】
本実施形態の二次電池システム10では、1つの二次電池20を備える構成であるがこれに限定されない。複数の二次電池20を組み合わせた組電池を備える構成であってもよい。組電池を備える二次電池システム10では、制御装置40が組電池の充放電を制御し、電気負荷13が組電池と接続される。
【0015】
図2を用いて、本実施形態の一例である二次電池20について説明する。図2は、二次電池20を示す断面図である。
【0016】
図2に示すように、二次電池20は、例えば円筒形電池であって、電極体24と、電解質と、電極体24及び電解質を収容する外装缶25と、外装缶25の開口部を塞ぐ封口体30とを有する。電極体24は、正極板21と、負極板22と、セパレータ23とを含み、正極板21と負極板22とがセパレータ23を介して渦巻き状に巻回された構造を有する。
【0017】
正極板21は、正極芯体と、当該芯体の少なくとも一方の面に形成された正極合剤層とを有する。正極芯体には、アルミニウム、アルミニウム合金等、正極板21の電位範囲で安定な金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等を用いることができる。正極合剤層は、正極活物質、アセチレンブラック等の導電剤、及びポリフッ化ビニリデン等の結着剤を含み、正極芯体の両面に形成されることが好ましい。正極活物質には、例えばリチウム遷移金属複合酸化物が用いられる。正極板21は、正極芯体上に正極活物質、導電剤、及び結着剤等を含む正極合剤スラリーを塗布し、塗膜を乾燥させた後、塗膜を圧縮して正極合剤層を芯体の両面に形成することにより製造できる。
【0018】
負極板22は、負極芯体と、当該芯体の少なくとも一方の面に形成された負極合剤層とを有する。負極芯体には、銅、銅合金等の負極板22の電位範囲で安定な金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等を用いることができる。負極合剤層は、負極活物質、及びスチレン-ブタジエンゴム(SBR)等の結着剤を含み、負極芯体の両面に形成されることが好ましい。負極活物質には、例えば黒鉛、シリコン含有化合物等が用いられる。負極板22は、負極芯体上に負極活物質、結着剤等を含む負極合剤スラリーを塗布し、塗膜を乾燥させた後、塗膜を圧縮して負極合剤層を芯体の両面に形成することにより製造できる。
【0019】
電解質には、例えば非水電解質が用いられる。非水電解質は、非水溶媒と、非水溶媒に溶解した電解質塩とを含む。非水溶媒には、エステル類、エーテル類、ニトリル類、アミド類、及びこれらの2種以上の混合溶媒等を用いることができる。非水溶媒は、これら溶媒の水素の少なくとも一部をフッ素等のハロゲン原子で置換したハロゲン置換体を含有していてもよい。なお、非水電解質は液体電解質に限定されず、固体電解質であってもよい。電解質塩には、例えばLiPF等のリチウム塩が使用される。電解質の種類は特に限定されず、水系電解質であってもよい。
【0020】
二次電池20は、電極体24の上下にそれぞれ配置された絶縁板26,27を有する。図1に示す例では、正極板21に接続された正極リード28が絶縁板26の貫通孔を通って封口体30側に延び、負極板22に接続された負極リード29が絶縁板27の外側を通って外装缶25の底面部25A側に延びている。正極リード28は封口体30の底板である金属板31の下面に溶接等で接続され、金属板31と電気的に接続された封口体30のラプチャ板32が正極外部端子となる。負極リード29は外装缶25の底面部25Aの内面に溶接等で接続され、外装缶25が負極外部端子となる。
【0021】
制御装置40は、詳細は後述する充電制御及び放電制御を実行する装置である。充電制御は、後述するピークトップ充電率範囲を避けるように二次電池20の充電を終了する制御である。また、放電制御は、ピークトップ充電率範囲を避けるように二次電池20の放電を終了する制御である。制御装置40には、上記制御を実行する演算処理装置としてのCPUと、CPUに接続される記憶装置としてのROM、RAM、ハードディスクドライブ(HDD)とが搭載される。
【0022】
図1に示すように、制御装置40は、二次電池20の充放電停止タイミングを検知する充放電停止検知部41と、充放電停止タイミングの充電状態(以下、SOC)がピークトップSOC範囲にあるかどうかを判定するピークトップ判定部42と、を有する。また、制御装置40は、電圧測定器11と、電流測定器12と、切替スイッチ14とに接続されている。
【0023】
充放電停止検知部41は、二次電池20の充電が停止するタイミングを検知する機能を有する。二次電池20の充電が停止するタイミングには、二次電池20満充電と判断して充電が停止するタイミング、及び所定時間経過して充電が停止するタイミングが含まれる。また、充放電停止検知部41は、二次電池20と充電器との接続が遮断されたタイミングを二次電池20の充電が停止するタイミングとして検知してもよい。
【0024】
また、充放電停止検知部41は、二次電池20の放電が停止するタイミングを検知する機能を有する。二次電池20の放電が停止するタイミングには、二次電池20の電圧が所定値まで下がった場合に放電が停止するタイミングが含まれる。また、充放電停止検知部41は、二次電池20と電池負荷との接続が遮断されたタイミングを二次電池20の放電が停止するタイミングとして検知してもよい。
【0025】
ピークトップ判定部42は、充放電停止検知部41によって検知された二次電池20の充放電停止タイミングのSOCが設定されたピークトップSOC範囲(以下、ピークトップ範囲)にあるかどうかを判定する機能を有する。ピークトップ範囲とは、詳細は後述するSOC-dV/dQ曲線のピークトップとなるSOCを含むSOCの所定範囲である。
【0026】
図3を用いて、ピークトップ及びSOC-dV/dQ曲線について説明する。図3は、SOC-dV/dQ曲線を示すグラフである。
【0027】
図3に示すSOC-dV/dQ曲線は、横軸がSOC(%)であって、縦軸がdV/dQである。SOCは、二次電池20の満充電状態の容量に対する二次電池20の容量Qの百分率で表したものである。dV/dQは、二次電池20の容量Qの変化量dQに対する電圧Vの微分値を表したものである。dV/dQは、例えば、充電時又は放電時の容量Qに対する電圧Vの変化を測定して得られるQ-V曲線から算出することができる。
【0028】
SOC-dV/dQ曲線には、複数のピークトップが含まれる。ピークトップとは、SOC-dV/dQ曲線における極大点である。SOC-dV/dQ曲線におけるピークトップの位置及び数は、二次電池20の活物質などの電極材料の種類に応じて決定される。ピークトップに対応するSOCにおいて二次電池20の充電又は放電を停止して放置すると、自己放電が容易に発生して電池の劣化が促進する。図3に示すように、二次電池20では、10%、25%、45%、60%、78%のSОCにおいてdV/dQのピークトップが確認される(図中のP)。本実施形態では、ピークトップに対応するSOCから±5%の範囲をピークトップ範囲とする。制御装置40のRAMには、ピークトップ範囲が予め設定されている。ピークトップ範囲は、二次電池20の活物質などの電極材料の種類に応じて任意に設定することができる。
【0029】
図4を用いて、充電制御について説明する。図4は、充電制御の流れを示すフロー図である。
【0030】
充電制御は、上述したようにピークトップ範囲を避けるように二次電池20の充電を終了する制御である。充電制御によれば、ピークトップ範囲にて二次電池20の充電が停止する場合には、電気負荷13によって二次電池20を放電することによってピークトップ範囲を避けて充電を終了することができる。
【0031】
ステップS11において、充放電停止検知部41は、充電停止タイミングを検知した場合には、ステップS12へ移行する。ステップS12において、ピークトップ判定部42は、二次電池20の充電停止タイミングのSOCが設定されたピークトップ範囲にあった場合にはステップS13に移行する。ステップS13において、制御装置40は、切替スイッチ14をОNとして二次電池20と電気負荷13とを接続し、二次電池20を放電する。ステップS12及びステップS13は、二次電池20の充電停止タイミングのSOCがピークトップ範囲から外れるまで繰り返される。
【0032】
図5を用いて、放電制御について説明する。図5は、放電制御の流れを示すフロー図である。
【0033】
放電制御は、上述したようにピークトップ範囲を避けるように二次電池20の放電を終了する制御である。放電制御によれば、ピークトップ範囲にて二次電池20の放電が停止する場合には、電気負荷13によって二次電池20を放電することによってピークトップ範囲を避けて放電を終了することができる。
【0034】
ステップS21において、充放電停止検知部41は、放電停止タイミングを検知した場合には、ステップS22へ移行する。ステップS22において、ピークトップ判定部42は、二次電池20の放電停止タイミングのSOCが設定されたピークトップ範囲にあった場合にはステップS23に移行する。ステップS23において、制御装置40は、切替スイッチ14をОNとして二次電池20と電気負荷13とを接続し、二次電池20を放電する。ステップS22及びステップS23は、二次電池20の放電停止タイミングのSOCがピークトップ範囲から外れるまで繰り返される。
【0035】
図6を用いて、本実施形態の他の一例である二次電池システム110について説明する。図6は、二次電池システム110を示すブロック図である。
【0036】
図6に示すように、二次電池システム110は、二次電池20の充放電を制御するシステムである。二次電池システム110は、二次電池20と、二次電池20の充放電を制御する制御装置40と、二次電池20の電圧を測定する電圧測定器11と、二次電池20の充電電流又は放電電流を測定する電流測定器12と、二次電池20に接続される補助電池15と、二次電池20と補助電池15との接続をОN/ОFFする切替スイッチ14と、を有する。
【0037】
補助電池15は、二次電池20を充電するものであって、例えば二次電池が好適に用いられる。補助電池15を構成する二次電池は、二次電池20よりも小容量のものであって、二次電池20の容量の20%程度の容量であることが好ましい。さらに、二次電池システム110では、補助電池15が二次電池20を放電する構成であってもよい。しかし、補助電池15の制御という点では、補助電池15が二次電池20を充電する構成が好ましい。
【0038】
制御装置40は、上述したピークトップ範囲にて充放電が停止する場合には、補助電池15によって二次電池20を充電することによってピークトップ範囲を避けて二次電池20の充放電を終了する装置である。
【0039】
二次電池システム110の充電制御によれば、ピークトップ範囲にて二次電池20の充電が停止する場合には、補助電池15により二次電池20を充電することによってピークトップ範囲を避けて充電を終了することができる。また、二次電池システム110の放電制御によれば、ピークトップ範囲にて二次電池20の放電が停止する場合には、補助電池15が二次電池20を充電することによってピークトップ範囲を避けて放電を終了することができる。
【0040】
なお、本発明は上述した実施形態及びその変形例に限定されるものではなく、本願の特許請求の範囲に記載された事項の範囲内において種々の変更や改良が可能であることは勿論である。
【実施例1】
【0041】
[実施例1]
[正極極板の作製]
正極活物質としてアルミニウム含有ニッケルコバルト酸リチウム(LiNi0.88Co0.09Al0.03)を用いた。100質量部のLiNi0.88Co0.09Al0.03(正極活物質)と1.0質量部のアセチレンブラックと、0.9質量部のポリフッ化ビニリデン(PVDF)(結着剤)をN-メチルピロリドン(NMP)の溶剤中で混合して、正極スラリーを得た。このペーストを厚み15μmのアルミニウム箔の両面に均一に塗布した。次に、加熱した乾燥機中で100~150℃の温度で熱処理してNMPを除去後、圧縮ローラで圧縮した。さらに圧縮後の正極極板を、200℃に熱したロールに5秒間接触させることで、熱処理をおこない、厚み0.144mm、幅62.6mm、長さ861mmに裁断して正極板を作製した。
【0042】
[負極極板の作製]
負極活物質として、黒鉛粉末を95質量部、Si酸化物を5質量部になるように混合した。その後、100質量部の負極活物質、増粘剤としての1質量部のCMC、結着剤としての1質量部のスチレンブタジエンゴムを水に分散させ、負極スラリーを調製した。この負極スラリーを、厚さ8μmの銅箔の負極集電体の両面に塗布して負極塗工部を形成した。次いで、乾燥した後、負極厚みが0.160mmになるように圧縮ローラで圧縮し負極合剤層の厚みを調整し、幅64.2mm、長さ959mmに裁断して負極板を作製した。
【0043】
[非水電解質の調製]
エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、及び酢酸メチル(MA)を20:75:5の体積比で混合した混合溶媒に、1.5MのLiPFを溶解して非水電解質を調製した。
【0044】
[円筒型電池の作製]
まず、正極集電体にアルミニウム製の正極リードを取り付け、負極集電体にニッケル-銅-ニッケル製の負極リードを取り付けた。その後、正極集電体と負極集電体との間にポリエチレン製のセパレータを介して巻回して電極体を作製した。次に、電極体の上と下とに絶縁板をそれぞれ配置し、負極リードを電池ケースに溶接すると共に、正極リードを内圧作動型の安全弁を有する封口板に溶接して、外装缶の内部に収納した。その後、外装缶の内部に非水電解質を加圧方式により注入した。最後に、電池ケースの開口端部を、ガスケットを介して封口板にかしめることにより二次電池を作製した。電池の容量は3400mAhであった。
【0045】
[ピークトップ範囲の定義]
電池のSOC-dV/dQ曲線において、ピークトップとなるSOCから±5%の範囲をピークトップ範囲とした。
【0046】
[劣化速度の評価]
図7に示すように、SOC15%からSOC90%の範囲で、充電、放電のいずれも20時間率のレートで充放電サイクル試験を行った。このときの総放電容量を横軸に、容量維持率を縦軸にプロットして得られた容量維持率の傾きから劣化速度を評価した。
【0047】
[実施例2]
図7に示すように、SOC15%からSOC65%の範囲で充放電試験を行った以外は、実施例1と同様に電池を作製し、充放サイクル電試験を行った。
【0048】
[比較例]
図7に示すように、SOC15%からSOC78%の範囲で充放電試験を行った以外は、実施例1と同様に電池を作製し、充放電サイクル試験を行った。
【0049】
表1に、実施例1、2及び比較例の劣化速度を、比較例1の劣化速度を1とした相対指数で示す。
【0050】
【表1】
【0051】
ピークトップ範囲において充電及び放電を停止しない実施例1、2では、ピークトップ範囲において充電停止する比較例よりも劣化速度が1/3程度であることが分かった。この原因として、ピークトップ範囲では、単位容量当たりの電圧変化が大きく、Liの挿入/脱離反応が主反応となる。そのため、ピークトップ範囲において充放電試験を停止する
と状態が不安定になり、自己放電が容易に発生して劣化が促進することが考えられる。
【符号の説明】
【0052】
10 二次電池システム、11 電圧測定器、12 電流測定器、13 電気負荷、14 切替スイッチ、15 補助電池、20 二次電池、21 正極板、22 負極板、23 セパレータ、24 電極体、25 外装缶、25A 底面部、26 絶縁板、27 絶縁板、28 正極リード、29 負極リード、30 封口体、31 金属板、32 ラプチャ板、40 制御装置、41 充放電停止検知部、42 ピークトップ判定部、110 二次電池システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7