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特許7566892動力付き外科用ステープラの作動部材の動作を較正するための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】動力付き外科用ステープラの作動部材の動作を較正するための方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/115 20060101AFI20241007BHJP
【FI】
A61B17/115
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022517421
(86)(22)【出願日】2020-08-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-05
(86)【国際出願番号】 IB2020057964
(87)【国際公開番号】W WO2021053438
(87)【国際公開日】2021-03-25
【審査請求日】2023-06-21
(31)【優先権主張番号】16/574,773
(32)【優先日】2019-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506157570
【氏名又は名称】シラグ・ゲーエムベーハー・インターナショナル
【氏名又は名称原語表記】Cilag GMBH International
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アダムス・シェーン・アール
(72)【発明者】
【氏名】アダムス・トーマス・イー
(72)【発明者】
【氏名】ロス・ニコラス・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】シェルトン・ザ・フォース・フレデリック・イー
【審査官】槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/234884(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/043507(WO,A1)
【文献】特表2016-512058(JP,A)
【文献】特開2018-187390(JP,A)
【文献】特表2016-518919(JP,A)
【文献】特開2016-198491(JP,A)
【文献】国際公開第2019/133140(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/115
A61B 17/072
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータユニットと、前記モータユニットと通信するコントローラと、前記モータユニットと動作可能に結合され、かつ複数の可動部材を有するステープル留めアセンブリと、を有する動力付き外科用ステープラであって、前記可動部材は、組織をクランプ、ステープル留め、及び切断するために、前記モータユニットによって長手方向に作動可能であり、前記コントローラは、
(a)前記ステープル留めアセンブリの前記可動部材が第1の所定の位置にあると判定し、
(b)作動アルゴリズムを実行して、前記モータユニットを起動して前記可動部材を前記第1の所定の位置から第2の所定の位置に向かって長手方向に作動させ、
(c)前記可動部材が前記第2の所定の位置に到達したと判定し、
(d)前記第1の所定の位置と前記第2の所定の位置との間における前記可動部材の実際の長手方向変位を観察し、
(e)前記実際の長手方向変位と、前記コントローラによって記憶された予想長手方向変位と、を比較し、前記実際の長手方向変位が、前記予想長手方向変位からある差異値だけ異なっていると判定し、
(f)前記差異値に基づいて、前記作動アルゴリズムを調整する、ように構成され
前記ステープル留めアセンブリは、前記組織を受け入れるための開放状態と、前記組織をクランプするための閉鎖状態との間で作動可能であり、前記閉鎖状態において、前記ステープル留めアセンブリは、前記組織が中に位置付けられる間隙を画定し、前記コントローラは、
(a)前記間隙の標的サイズに対応するユーザ入力を受信し、
(b)前記ユーザ入力に基づいて、前記可動部材の作動速度を制御する、ように構成されている、動力付き外科用ステープラ。
【請求項2】
前記コントローラは、調整された前記作動アルゴリズムを実行して、前記モータユニットを起動して前記可動部材を長手方向に更に作動させるように構成されている、請求項1に記載の動力付き外科用ステープラ。
【請求項3】
前記モータユニット及び前記コントローラに動作可能に結合されたエンコーダを更に備え、前記エンコーダは、前記可動部材の作動中に前記モータユニットの回転出力を前記コントローラに通信するように動作可能であり、前記作動アルゴリズムは、前記予想長手方向変位と前記モータユニットの第1の回転量との間の第1の相関関係を含み、前記差異値に基づいて前記作動アルゴリズムを調整することは、前記実際の長手方向変位と前記モータユニットの第2の回転量との間の第2の相関関係を定義することを含む、請求項1に記載の動力付き外科用ステープラ。
【請求項4】
前記コントローラと通信するセンサを更に含む、請求項1に記載の動力付き外科用ステープラ。
【請求項5】
前記センサは、前記可動部材に動作可能に結合された位置センサを含み、前記コントローラは、前記位置センサによって提供された信号に基づいて前記実際の長手方向変位を決定するように構成されている、請求項4に記載の動力付き外科用ステープラ。
【請求項6】
前記センサは、前記モータユニットに動作可能に結合された電流センサを含み、前記コントローラは、前記モータユニットによって引き出された電流の増加を示す、前記電流センサによって提供される信号に基づいて、前記可動部材が前記第2の所定の位置に到達したと判定するように構成されている、請求項4に記載の動力付き外科用ステープラ。
【請求項7】
前記センサは、前記可動部材に動作可能に結合された力センサを含み、前記コントローラは、前記可動部材に及ぼされる長手方向力の増加を示す、前記力センサによって提供される信号に基づいて、前記可動部材が前記第2の所定の位置に到達したと判定するように構成されている、請求項4に記載の動力付き外科用ステープラ。
【請求項8】
前記センサは、電流センサ又は力センサの少なくとも一方を含み、前記コントローラは、前記センサによって提供される信号に基づいて前記可動部材の前記作動速度を調整するように構成され、前記信号は、前記モータユニットによって引き出された電流又は前記可動部材に及ぼされた長手方向力の少なくとも一方を示す、請求項4に記載の動力付き外科用ステープラ。
【請求項9】
モータユニットと、前記モータユニットと通信するコントローラと、前記モータユニットと動作可能に結合され、かつ複数の可動部材を有するステープル留めアセンブリと、を有する動力付き外科用ステープラであって、前記可動部材は、組織をクランプ、ステープル留め、及び切断するために、前記モータユニットによって長手方向に作動可能であり、前記コントローラは、
(a)前記ステープル留めアセンブリの前記可動部材が第1の所定の位置にあると判定し、
(b)作動アルゴリズムを実行して、前記モータユニットを起動して前記可動部材を前記第1の所定の位置から第2の所定の位置に向かって長手方向に作動させ、
(c)前記可動部材が前記第2の所定の位置に到達したと判定し、
(d)前記第1の所定の位置と前記第2の所定の位置との間における前記可動部材の実際の長手方向変位を観察し、
(e)前記実際の長手方向変位と、前記コントローラによって記憶された予想長手方向変位と、を比較し、前記実際の長手方向変位が、前記予想長手方向変位からある差異値だけ異なっていると判定し、
(f)前記差異値に基づいて、前記作動アルゴリズムを調整する、ように構成され、
前記ステープル留めアセンブリは、
(a)前記ステープル留めアセンブリによって前記組織をクランプするように作動可能な閉鎖部材と、
(b)クランプされた前記組織の中へとステープルを打ち込むように作動可能なステープルドライバ部材と、
(c)クランプされた前記組織を切断するように作動可能なナイフ部材と、を含み、
前記閉鎖部材と、前記ステープルドライバ部材と、前記ナイフ部材は、前記モータユニットに動作可能に結合され、前記モータユニットによって互いに独立して作動可能であり、
前記可動部材は、前記閉鎖部材、前記ステープルドライバ部材、又は前記ナイフ部材のうちの少なくとも1つを含む動力付き外科用ステープラ。
【請求項10】
前記可動部材は前記閉鎖部材を含み、前記閉鎖部材の前記第1の所定の位置は、前記ステープル留めアセンブリの開放状態に対応し、前記閉鎖部材の前記第2の所定の位置は、前記ステープル留めアセンブリの少なくとも部分閉鎖状態に対応する、請求項に記載の動力付き外科用ステープラ。
【請求項11】
前記閉鎖部材は、アンビルに解放可能に結合するように構成されたトロカールを含み、前記ナイフ部材は円筒状ナイフを含む、請求項1に記載の動力付き外科用ステープラ。
【請求項12】
前記コントローラは、
(a)第1のユーザ入力に応答して、調整された前記作動アルゴリズムを実行して、前記閉鎖部材を作動させて前記組織をクランプするための閉鎖状態へと前記ステープル留めアセンブリを移行させ、
(b)前記第1のユーザ入力の後に第2のユーザ入力に応答して、
(i)前記モータユニットによって前記ステープルドライバ部材を作動させて、クランプされた前記組織の中へとステープルを打ち込み、
(ii)前記モータユニットによって前記ナイフ部材を作動させて、クランプされた前記組織を切断する、ように更に構成されている、請求項1に記載の動力付き外科用ステープラ。
【請求項13】
前記コントローラは、
(a)前記ステープルドライバ部材の作動を開始した後に、前記ステープルドライバ部材が所定の長手方向位置に到達したと判定し、
(b)前記判定に応答して、前記モータユニットによって前記ナイフ部材の作動を開始して、クランプされた前記組織を切断する、ように更に構成されている、請求項1に記載の動力付き外科用ステープラ。
【請求項14】
前記コントローラは、前記モータユニットを起動して前記ナイフ部材を作動させるためのナイフ部材作動アルゴリズムを記憶及び実行するように構成されており、前記コントローラは、
(a)前記ナイフ部材を作動させる前に、前記差異値に基づいて、前記ナイフ部材作動アルゴリズムを調整し、
(b)調整された前記ナイフ部材作動アルゴリズムを実行して、前記モータユニットによって前記ナイフ部材を作動させる、ように更に構成されている、請求項1に記載の動力付き外科用ステープラ。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
一部の外科手術(例えば、大腸外科手術、肥満外科手術、胸部外科手術など)において、患者の消化管の一部分(例えば、胃腸管及び/又は食道など)は、望ましくない組織を除去するために又は他の理由によって、切除される場合がある。組織を取り除いた後、端々吻合、端側吻合又は側々吻合により、消化管の残りの部分を相互に結合することができる。吻合により、吻合部位から、いかなる種類の漏れを生じることもなく、消化管の1つの部分から消化管の他の部分へと実質的に遮るもののない流路をもたらすことができる。
【0002】
吻合を提供するために用いられ得る器具の1つの例として、円形ステープラがある。いくつかのそのようなステープラは、組織の層をクランプし、クランプした組織の層を切断し、かつクランプした組織の層を貫通してステープルを打ち込み、組織の層を切断した端部の近傍で組織を実質的に相互に封止して、解剖学的管腔の切断された2つの端部を接合するように動作可能である。円形ステープラは、組織を切断し、かつ実質的に同時にその組織を封止するように構成することができる。例えば、円形ステープラは、吻合においてステープルの環状アレイに対して内側である余分な組織を切断して、吻合で接合される解剖学的管腔どうしの実質的に滑らかな移行を提供し得る。円形ステープラは、観血手術において、又は内視鏡手術において用いられ得る。場合によっては、円形ステープラの一部分を、患者の身体に元々ある開口部を貫通して挿入する。
【0003】
円形ステープラの例は、1993年4月27日に発行された米国特許第5,205,459号、発明の名称「Surgical Anastomosis Stapling Instrument」;1993年12月21日に発行された米国特許第5,271,544号、発明の名称「Surgical Anastomosis Stapling Instrument」;1994年1月4日に発行された米国特許第5,275,322号、発明の名称「Surgical Anastomosis Stapling Instrument」;1994年2月15日に発行された米国特許第5,285,945号、発明の名称「Surgical Anastomosis Stapling Instrument」;1994年3月8日に発行された米国特許第5,292,053号、発明の名称「Surgical Anastomosis Stapling Instrument」;1994年8月2日に発行された米国特許第5,333,773号、発明の名称「Surgical Anastomosis Stapling Instrument」;1994年9月27日に発行された米国特許第5,350,104号、発明の名称「Surgical Anastomosis Stapling Instrument」;1996年7月9日に発行された米国特許第5,533,661号、発明の名称「Surgical Anastomosis Stapling Instrument」;及び2014年12月16日に発行された米国特許第8,910,847号、発明の名称「Low Cost Anvil Assembly for a Circular Stapler」に記載されている。上に引用した米国特許の各々の開示内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0004】
一部の円形ステープラは、電動作動機構を含み得る。電動作動機構を備えた円形ステープラの例は、2015年3月26日に公開された米国特許出願公開第2015/0083772号、発明の名称「Surgical Stapler with Rotary Cam Drive and Return」;その開示が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開2015年3月26日に公開された米国特許出願公開第2015/0083773号、発明の名称「Surgical Stapling Instrument with Drive Assembly Having Toggle Features」;その開示が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開2015年3月26日に公開された米国特許出願公開第2015/0083774号、発明の名称「Control Features for Motorized Surgical Stapling Instrument」;及び、2015年3月26日に公開された米国特許出願公開第2015/0083775号、発明の名称「Surgical Stapler with Rotary Cam Drive」に記載されている。上に引用した米国特許出願公開の各々の開示内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0005】
様々な種類の外科用ステープル留め器具及び関連構成要素が製造及び使用されてきたが、本発明者ら以前の誰も、添付の特許請求の範囲に記載されている発明を製造又は使用したことがないと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
本明細書は、本技術を具体的に指摘し、かつ明確にこの技術を特許請求する、特許請求の範囲により完結するが、本技術は、以下のある特定の実施例の説明を添付図面と併せ読むことでよりよく理解されるものと考えられ、図面において同様の参照符号は同じ要素を特定する。
図1】例示的な円形外科用ステープラの斜視図である。
図2】電池パックがハンドルアセンブリから取り外され、アンビルがステープル留めヘッドアセンブリから取り外された状態での、図1の円形ステープラの斜視図である。
図3図1の円形ステープラのアンビルの斜視図である。
図4図1の円形ステープラのステープル留めヘッドアセンブリの斜視図である。
図5図4のステープル留めヘッドアセンブリの分解斜視図である。
図6】シャフトアセンブリの各部分が互いに分離して示されている、図1の円形ステープラの分解斜視図である。
図7A】消化管の第1の区域内に位置する図3のアンビルと、消化管の第2の区域に位置する図4のステープル留めヘッドアセンブリとを、アンビルがステープル留めヘッドアセンブリから分離された状態で描いた断面側面図である。
図7B】消化管の第1の区域内に位置する図3のアンビルと、消化管の第2の区域に位置する図4のステープル留めヘッドアセンブリとを、アンビルがステープル留めヘッドアセンブリに固定された状態で描いた断面側面図である。
図7C】消化管の第1の区域内に位置付けられた図3のアンビルと、消化管の第2の区域に位置付けられた図4のステープル留めヘッドアセンブリとを、アンビルがステープル留めヘッドアセンブリに向かって後退し、それにより、アンビルとステープル留めヘッドアセンブリとの間に組織をクランプした状態で描いた断面側面図である。
図7D】消化管の第1の区域内に位置付けられた図3のアンビルと、消化管の第2の区域に位置付けられた図4のステープル留めヘッドアセンブリとを、ステープル留めヘッドアセンブリがクランプされた組織を切断してステープル留めするように作動された状態で描いた断面側面図である。
図7E】端々吻合で接合された、図7Aの消化管の第1の区域と第2の区域とを示す断面側面図である。
図8図1の円形ステープラのハンドルアセンブリのユーザインターフェース機構部の斜視図である。
図9】別の例示的な円形外科用ステープラの斜視図である。
図10】円形外科用ステープラの制御システムを含む、図9の円形ステープラの概略図である。
図11図10の制御システムを介して図9の円形外科用ステープラを制御するための例示的な方法の概略図である。
図12図10の制御システムによって実行される作動アルゴリズムを調整することにより、図9の円形ステープラの可動部材の作動ストロークを較正するための例示的な方法の概略図である。
図13A】ステープル留めヘッドアセンブリに対して完全開放位置にあるアンビルを示す、図9の円形外科用ステープラのステープル留めヘッドアセンブリ及びアンビルの概略横断面図である。
図13B】ステープル留めヘッドアセンブリに対して部分閉鎖位置にあるアンビルを示す、図9の円形外科用ステープラのステープル留めヘッドアセンブリ及びアンビルの概略横断面図である。
図13C】ステープル留めヘッドアセンブリに対して完全閉鎖位置にあるアンビルを示す、図9の円形外科用ステープラのステープル留めヘッドアセンブリ及びアンビルの概略横断面図である。
図14】ステープル留めヘッドアセンブリのステープルリテーナに対して完全閉鎖位置にあるアンビルを示す、図9の円形外科用ステープラのステープル留めヘッドアセンブリ及びアンビルの概略横断面図である。
図15】完全開放位置から完全閉鎖位置へ、また再び完全開放位置へと向かう、図9の円形外科用ステープラのアンビルの長手方向変位を示す線グラフを示し、閉鎖後及び再開放前のアンビルストロークの較正を示す図である。
図16】アンビルに対する例示的な第1及び第2の組織間隙設定を示す、図9の円形外科用ステープラのユーザインターフェース機構部のグラフィカルインジケータの概略図である。
図17A図9の円形外科用ステープラのステープル留めヘッドアセンブリ及びアンビルの、図16の第1の組織間隙設定に対応する、より大きな第1の組織間隙を画定するように位置付けられたアンビルを示す概略側面図である。
図17B図9の円形外科用ステープラのステープル留めヘッドアセンブリ及びアンビルの、図16の第2の組織間隙設定に対応する、より小さな第2の組織間隙を画定するように位置付けられたアンビルを示す概略側面図である。
図18】ステープルドライバ及びステープル留めヘッドアセンブリがそれぞれのステープル開口部内に収容された対応するステープルを明らかにするよう側方部分が切り取られた、完全陥凹位置にあるステープルドライバ及びステープルを示す、図9の円形外科用ステープラのステープル留めヘッドアセンブリ及びアンビルの概略側面図である。
図19A】完全陥凹近位位置にあるステープルドライバ及びステープルを示す、図18のステープルドライバ及びステープルの側面図である。
図19B】部分延出中間位置にあるステープルドライバ及びステープルを示し、この部分延出中間位置において、ステープルドライバの上端及びステープルのクラウンは、ステープル留めヘッドアセンブリ及びステープルのデッキ表面に位置付けられている、図18のステープルドライバ及びステープルの側面図である。
図19C】完全延出遠位位置にあるステープルドライバ及びステープルを示し、この完全延出遠位位置において、ステープルの脚部はアンビルによって完全に成形されている、図18のステープルドライバ及びステープルの側面図である。
図20】アンビル変位、ナイフ変位、及びモータユニットへの発射負荷を含む、経時的な図9の円形ステープラの動作要素間の例示的な関係を示す線グラフである。
図21】2つの異なる発射アルゴリズムによる、図9の円形外科用ステープラの経時的な発射負荷を示す線グラフである。
【0007】
図面は、いかなる方式でも限定することを意図しておらず、本技術の様々な実施形態は、図面に必ずしも描写されていないものを含め、他の様々な方式で実施し得ることが企図される。本明細書に組み込まれ、本明細書の一部をなす添付の図面は、本技術のいくつかの態様を示しており、その説明と共に本技術の原理を説明するのに役立つものであるが、本技術は、示される厳密な配置に限定されないことが理解される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本技術の特定の実施例の以下の説明は、その範囲を限定する目的で用いられるべきではない。本技術の他の実施例、特徴、態様、実施形態、及び利点が、実例として、本技術を実施する上で想到される最良の態様の1つである以下の説明により、当業者には明らかとなるであろう。理解されるように、本明細書に記載される技術は、いずれもその技術から逸脱することなく、他の異なる、かつ明らかな態様が可能である。したがって、図面及び説明は、限定的なものではなく、本質的に例示的なものと見なされるべきである。
【0009】
本開示を明確にするために、本明細書において、「近位」及び「遠位」という用語は、遠位外科用エンドエフェクタを有する外科用器具を握持する外科医又は他の操作者に対して定義される。「近位」という用語は、外科医のより近くに配置された要素の位置を指し、「遠位」という用語は、外科用器具の外科用エンドエフェクタのより近くにかつ外科医からより遠くに配置された要素の位置を指す。また、図面を参照して「上」、「下」、「上側」、「下側」、「垂直」、「水平」などの空間的用語が本明細書で使用される限り、このような用語は例示的な記述目的にのみ使用されて、限定することも絶対であることも意図していないことが理解されるであろう。その点において、本明細書に開示されるものなどの外科用器具を、本明細書で図示及び記載するものに限定されない様々な向き及び位置で使用してもよいことが理解されよう。
【0010】
I.例示的な円形外科用ステープル留め器具の概要
図1図2は、患者の消化管の一部位のような解剖学的管腔の2つの断面どうしの間で、端々吻合、側々吻合又は端側吻合を提供するために用いられ得る、例示的な円形外科用ステープル留め器具(10)を示す。この例の器具(10)は、本体アセンブリ(例えば、ハンドルアセンブリ(100))と、ハンドルアセンブリ(100)から遠位に延びるシャフトアセンブリ(200)と、シャフトアセンブリ(200)の遠位端にあるステープル留めヘッドアセンブリ(300)と、ステープル留めヘッドアセンブリ(300)と解放可能に結合及び協働して組織をクランプ、ステープル留め、及び切断するように構成されたアンビル(400)と、を含む。器具(10)は、以下でより詳細に説明するように、ハンドルアセンブリ(100)内に収容されたモータ(160)に電力供給するように動作可能な取り外し式バッテリパック(120)を更に含む。
【0011】
シャフトアセンブリ(200)は、ハンドルアセンブリ(100)から遠位に延び、予め成形された屈曲部を含む。いくつかの変形形態では、予め成形された屈曲部は、患者の結腸内にステープル留めヘッドアセンブリ(300)を位置付けることを容易にするように構成されている。使用できる様々な好適な曲げ角度又は曲率半径が、本明細書の教示を考慮することで当業者には明らかとなるであろう。いくつかの他の変形形態では、シャフトアセンブリ(200)は真っ直ぐであり、シャフトアセンブリ(200)には、予め形成された屈曲部が存在しない。様々な例示的な構成要素が、シャフトアセンブリ(200)に組み込まれ得るが、それについては後でより詳しく説明する。
【0012】
ステープル留めヘッドアセンブリ(300)は、シャフトアセンブリ(200)の遠位端に配置される。図1図2に示すように、また、後でより詳しく説明するように、アンビル(400)は、ステープル留めヘッドアセンブリ(300)に隣接して、シャフトアセンブリ(200)に取り外し可能に結合するように構成される。また、後でより詳しく説明するように、アンビル(400)及びステープル留めヘッドアセンブリ(300)は、3とおりに協働して組織を操作するように構成されているが、それには、組織をクランプすること、組織を切断すること、及び組織をステープル留めすることが含まれる。ハンドルアセンブリ(100)の近位端に設けられたノブ(130)は、ケーシング(110)に対して回転可能であり、アンビル(400)とステープル留めヘッドアセンブリ(300)との間で、組織を正確にクランプすることができるようになっている。ハンドルアセンブリ(100)の安全トリガ(140)が、ハンドルアセンブリ(100)の発射トリガ(150)から遠ざかるように枢動した場合、発射トリガ(150)は、組織が切断されステープル留めされるように作動され得る。
【0013】
A.例示的なアンビル
図3で最も良く分かるように、本実施例のアンビル(400)は、ヘッド(410)とシャンク(420)とを備えている。ヘッド(410)は、複数のステープル成形ポケット(414)を画定する近位表面(412)を含む。ステープル成形ポケット(414)は、本実施例では2列の同心環状アレイに配置される。いくつかの他の変形形態では、ステープル成形ポケット(414)は、3列以上の同心環状アレイで配置される。ステープル成形ポケット(414)は、ステープルがステープル成形ポケット(414)内に打ち込まれると、ステープルを変形させるように構成されている。例えば、各ステープル成形ポケット(414)は、当該技術分野では既知のように、概ねU字形状のステープルを、B字形状に変形し得る。近位表面(412)は内縁部(416)で終焉し、それによってシャンク(420)の周りを囲む環状凹部(418)の外側の境界線が画定される。
【0014】
シャンク(420)は孔(422)を画定し、一対の枢動ラッチ部材(430)を含む。ラッチ部材(430)は、遠位端(434)が、シャンク(420)の側壁を貫通して成形される横方向開口部(424)の近位端に位置付けられるように孔(422)内に位置付けられている。このようにして横方向開口部(424)は、遠位端(434)とラッチシェルフ(436)に対して、シャンク(420)によって画定される長手方向軸線から、径方向外側に反ることができるようにするクリアランスを提供する。しかしながら、ラッチ部材(430)は、遠位端(434)及びラッチシェルフ(436)を、シャンク(420)によって画定される長手方向軸線に向かって径方向内側に枢動するように、弾性的に付勢するように構成されている。このようにしてラッチ部材(430)は、保持クリップとしての役割を果たす。これによって、アンビル(400)は、後でより詳しく説明されるように、ステープル留めヘッドアセンブリ(300)のトロカール(330)の形態で、作動可能な閉鎖部材に取り外し可能に固定されることが可能となる。しかしながら、ラッチ部材(436)は、任意選択で設けられるものにすぎないということが理解されるはずである。アンビル(400)は、他の任意の好適な構成要素、機構又は技術を用いて、トロカール(330)に取り外し可能に固定され得る。
【0015】
B.例示的なステープル留めヘッドアセンブリ
図4及び図5に最もよく示されるように、本実施例のステープル留めヘッドアセンブリ(300)は、シャフトアセンブリ(200)の遠位端に結合されるものであり、本体部材(310)と、その中に摺動可能に収容されたステープルドライバ部材(350)と、を備える。本体部材(310)は、遠位に延びる円筒状内側芯部材(312)を含む。本体部材(310)は、シャフトアセンブリ(200)の外側シース(210)に不動に固定されており、したがって、本体部材(310)と外側シース(210)は、ステープル留めヘッドアセンブリ(300)のためのメカニカルグラウンドとして一緒に機能する。いくつかの変形例では、ステープル留めヘッドアセンブリ(300)は、例えば、参照によってその開示内容が本明細書に組み込まれる、2017年3月21日発行の米国特許第9,597,081号、発明の名称「Motor Driven Rotary Input Circular Stapler with Modular End Effector」に開示されているように、シャフトアセンブリ(200)の遠位端に解放可能に結合されるように構成されてもよい。
【0016】
トロカール(330)は、本体部材(310)の内側芯部材(312)内に同軸的に位置付けられている。後でより詳しく説明するように、トロカール(330)は、ノブ(130)がハンドルアセンブリ(100)のケーシング(110)に対して回転するのに応答して本体部材(310)に対して遠位に及び近位に並進するよう動作可能である。トロカール(330)は、シャフト(332)と、ヘッド(334)とを備える。ヘッド(334)は、尖形状の先端部(336)と、内向きに延びる近位表面(338)とを含む。したがって、シャフト(332)は、ヘッド(334)のちょうど近位で外径が小さくなっていて、表面(338)が、シャフト(332)のその小さくなった外径とヘッド(334)の外径との間の移行を提供する。本実施例では、先端部(336)が尖形状であるが、先端部(336)は鋭利ではない。したがって、先端部(336)は、組織との偶発的な接触による組織への外傷を容易には引き起こさない。ヘッド(334)、及びシャフト(332)の遠位部分は、アンビル(400)の孔(422)に挿入されるように構成されている。近位表面(338)とラッチシェルフ(436)とは、アンビル(400)のシャンク(420)がトロカール(330)上に完全に着座した場合に、ラッチシェルフ(436)が近位表面(338)に係合するような、相補的な位置及び構成を有する。したがって、アンビル(400)は、ラッチ部材(430)によってもたらされるスナップ嵌めを介してトロカール(330)に固定される。
【0017】
ステープルドライバ部材(350)は、後でより詳しく説明するように、モータ(160)の起動に応答して、本体部材(310)内で長手方向に作動するよう動作可能である。本実施例のステープルドライバ部材(350)は、ステープルドライバ(352)の遠位に提示される2列の同心環状アレイを含む。ステープルドライバ(352)は、アンビル(400)のステープル成形ポケット(414)の配置に対応するように配置されている。したがって、各ステープルドライバ(352)は、ステープル留めヘッドアセンブリ(300)が作動されると、対応するステープルを対応するステープル成形ポケット(414)の中に打ち込むように構成されている。本明細書に示されるステープルドライバ(352)及びステープル成形ポケット(414)の配置は、ステープルドライバ(352)とステープル成形ポケット(414)が互いに整列してステープルの適切な成形をもたらすように構成されるという条件で、任意の好適な様式で修正され得ることを理解されたい。ステープルドライバ部材(350)はまた、本体部材(310)の芯部材(312)を同軸的に受け入れるように構成されている孔(354)を画定する。スタッド(356)の環状アレイが、孔(354)を取り囲む遠位に提示された表面から遠位に突出している。
【0018】
円筒状ナイフ部材(340)が、ステープルドライバ部材(350)内に、同軸的に位置付けられている。ナイフ部材(340)は、遠位に提示された、鋭利な円形の刃先(342)を含む。ナイフ部材(340)は、ステープルドライバ(352)の内側環状アレイにより画定される直径よりも小さい外径を、ナイフ部材(340)が画定するようにサイズ決めされている。ナイフ部材(340)はまた、本体部材(310)の芯部材(312)を同軸的に受け入れるように構成されている開口部を画定する。ナイフ部材(340)に形成された開口部(346)の環状アレイは、ステープルドライバ部材(350)のスタッド(356)の環状アレイを補完するように構成され、ナイフ部材(340)が、スタッド(356)と開口部(346)とを介してステープルドライバ部材(350)に不動に固定される。あくまで一例として、スタッド(356)は、当該技術分野において既知の技術を用いてナイフ部材(340)に熱かしめされ得る。ナイフ部材(340)とステープラドライバ部材(350)との間の他の好適な構造的関係については、本明細書の教示を考慮することで当業者には明らかとなるであろう。
【0019】
デッキ部材(320)が、本体部材(310)の遠位端に不動に固定されている。デッキ部材(320)は、ステープル開口部(324)の2列の同心環状アレイを画定する、遠位に向けられたデッキ表面(322)を含む。ステープル開口部(324)は、上述のステープルドライバ(352)及びステープル成形ポケット(414)の配置に対応するように配置されている。したがって、各ステープル開口部(324)は、ステープル留めヘッドアセンブリ(300)が作動された場合に、対応するステープルドライバ(352)が対応するステープルを、デッキ部材(320)を貫通させて、対応するステープル成形ポケット(414)の中に打ち込む経路を提供するように構成されている。ステープル開口部(324)の配置は、上述のドライバ(352)及びステープル成形ポケット(414)の配置と対応するように修正され得ることを理解されたい。また、ステープル留めヘッドアセンブリ(300)が作動される前に、ステープルをステープル留めヘッドアセンブリ(300)内に収容するために、様々な構造及び技術が用いられ得るということも理解されたい。ステープルをステープル留めヘッドアセンブリ(300)内に収容するために用いられるそのような構造及び技術は、ステープル留めヘッドアセンブリ(300)が作動される前に、ステープルが、ステープル開口部(324)から誤って脱落するのを防ぎ得る。このような構造及び技術が取り得る様々な好適な形態については、本明細書の教示を考慮することで当業者には明らかとなるであろう。
【0020】
図9に最もよく示されるように、デッキ部材(320)は、ナイフ部材(340)が画定する外径よりも、ほんのわずかに大きい内径を画定する。したがって、デッキ部材(320)は、ナイフ部材(340)が、刃先(342)がデッキ表面(322)の遠位となる点まで遠位に並進するのを可能にするように構成されている。
【0021】
器具(10)のいくつかの変形形態では、ステープル留めヘッドアセンブリ(300)のトロカール(330)へのアンビル(400)の連結が、適切であるか及び/又は不適切であるかを示すように構成されている特徴部を伴う器具(10)を提供することが望ましい場合がある。例えば、アンビル(400)がトロカール(330)に適切に連結されていない場合、操作者は、不適切な連結を示す、可聴及び/又は触覚的フィードバックを受け取ってもよい。更に、アンビル(400)がトロカール(330)に適切に連結されている場合、操作者は、適切な連結を示す、可聴、触覚的、及び/又は視覚的フィードバックを受け取り得る。追加的にあるいは代替的に、アンビル(400)がトロカール(330)に適切に連結されない限り、構造はステープル留めヘッドアセンブリ(300)の発射を防ぐように構成されてよい。例えば、アンビル(400)がトロカール(330)に適切に連結されていない場合、ステープル留めヘッドアセンブリ(300)は発射を防ぎ得る。アンビル(400)がトロカール(330)に適切に連結されている場合、ステープル留めヘッドアセンブリ(300)の発射が可能であり得る。そのような機構には、様々なタイプの視覚的印、センサ、スイッチなどが含まれ得る。単なる例として、そのような機構には、その開示内容が参照により本明細書に組み込まれる、2019年6月4日発行の米国特許第10,307,157号、発明の名称「Surgical Stapler with Analis Seation Detection」、及びその開示内容が参照により本明細書に組み込まれる、2017年9月14日公開の米国特許出願公開第2017/0258471号、発明の名称「Methods and Systems for Performing Circular Stapling」において開示されたタイプのものが含まれ得る。
【0022】
C.代表的なシャフトアセンブリ
図6は、シャフトアセンブリ(200)の様々な構成要素を示し、このシャフトアセンブリ(200)は、ステープル留めヘッドアセンブリ(300)の構成要素を、ハンドルアセンブリ(100)の構成要素に結合するものである。特に、かつ上に記したように、シャフトアセンブリ(200)は、ハンドルアセンブリ(100)と本体部材(310)との間に延びる外部シース(210)を含む。本実施例では、外部シース(210)は剛性があり、かつ上に記したように、予め形成された、湾曲区域を含む。
【0023】
シャフトアセンブリ(200)は、トロカール作動ロッド(220)とトロカール作動バンドアセンブリ(230)とを更に含む。トロカール作動バンドアセンブリ(230)の遠位端は、トロカールシャフト(332)の近位端に不動に固定されている。トロカール作動バンドアセンブリ(230)の近位端は、トロカール作動ロッド(220)の遠位端に不動に固定されている。したがって、トロカール作動バンドアセンブリ(230)とトロカール作動ロッド(220)とが外部シース(210)に対して並進するのに応答して、トロカール(330)が長手方向に外部シース(210)に対して並進するということを理解されたい。トロカール作動バンドアセンブリ(230)は、トロカール作動バンドアセンブリ(230)が、長手方向に、外部シース(210)に対して並進させられるにつれて、トロカール作動バンドアセンブリ(230)が、シャフトアセンブリ(200)内の予め形成された湾曲部に沿って動き得るように曲がって構成されている。しかしながら、トロカール作動バンドアセンブリ(230)は、遠位方向及び近位方向の力を、トロカール作動ロッド(220)からトロカールシャフト(332)に伝えるのに十分な柱強度と引っ張り強さとを有する。トロカール作動ロッド(220)は剛性を有するものである。クリップ(222)は、トロカール作動ロッド(220)に不動に固定されており、かつ、クリップ(222)は、トロカール作動ロッド(220)がハンドルアセンブリ(100)内で長手方向に並進できるようにしている一方で、ハンドルアセンブリ(100)内の補完的特徴部と協働して、トロカール作動ロッド(220)がハンドルアセンブリ(100)内で回転するのを防止するように構成されている。トロカール作動ロッド(220)は、並目螺旋状螺合部(224)と細目螺旋状螺合部(226)とを更に含む。
【0024】
シャフトアセンブリ(200)は、外部シース(210)内に、摺動可能に受け入れられるステープル留めヘッドアセンブリドライバ(240)を更に含む。ステープル留めヘッドアセンブリドライバ(240)の遠位端は、ステープルドライバ部材(350)の近位端に不動に固定されている。ステープル留めヘッドアセンブリドライバ(240)の近位端は、ピン(242)を介して駆動ブラケット(250)に固定されている。したがって、ステープル留めヘッドアセンブリドライバ(240)と駆動ブラケット(250)とが外部シース(210)に対して並進するのに応答して、ステープルドライバ部材(350)が長手方向に、外部シース(210)に対して並進するということを理解されたい。ステープル留めヘッドアセンブリドライバ(240)は、ステープル留めヘッドアセンブリドライバ(240)が長手方向に、外部シース(210)に対して並進するにつれて、ステープル留めヘッドアセンブリドライバ(240)が、シャフトアセンブリ(200)内の予め形成された湾曲部に沿って動き得るように曲がって構成されている。しかしながら、ステープル留めヘッドアセンブリドライバ(240)は、遠位方向の力を、駆動ブラケット(250)からステープルドライバ部材(350)に伝えるのに十分な柱強度を有する。
【0025】
D.例示的なハンドルアセンブリ及びユーザ入力機構
図1に示されるように、ハンドルアセンブリ(100)はケーシング(110)を含み、ケーシングは、以下で更に詳細に示されるように、斜めに向けられたピストルグリップ(112)を画定する下部分と、ユーザインターフェース機構部(114)を支持し、バッテリパック(120)を受信する上部分と、を有する。ハンドルアセンブリ(100)は、アンビル(400)及びステープル留めヘッドアセンブリ(300)を作動させるように動作可能ないくつかの機構を更に含む。具体的には、ハンドルアセンブリ(100)は、回転可能なノブ(130)と、安全トリガ(140)と、発射トリガ(150)と、モータ(160)と、モータ起動モジュール(180)とを含む。ノブ(130)はナット(図示せず)を介してトロカール作動ロッド(220)に結合されており、並目螺旋状螺合部(224)はナットの内側のねじ係合機構部と選択的に係合し、細目螺旋状螺合部(226)はノブ(130)の内側のねじ係合機構部と選択的に係合する。これらの相補的構造は、トロカール作動ロッド(220)が最初に比較的遅い速度で近位方向に並進した後、ノブ(130)の回転に応じて比較的速い速度で近位方向に並進するように構成されている。
【0026】
アンビル(400)が、トロカール(330)に結合されている場合に、ノブ(130)が回転すると、それに対応して、アンビル(400)がステープル留めヘッドアセンブリ(300)に対して並進することを理解されたい。ノブ(130)を第1の角度方向(例えば、時計回り)に回転させてアンビル(400)をステープル留めヘッドアセンブリ(300)に向けて後退させ、第2の角度方向(例えば、反時計回り)に回転させてアンビル(400)をステープル留めヘッドアセンブリ(300)から離れる方向に前進させることができることも理解されたい。したがって、ノブ(130)は、例えば、以下に記載される図7Cに示されるように、アンビル(400)とステープル留めヘッドアセンブリ(300)との対向する表面(412、322)間の間隙距離(d)を、好適な間隙距離(d)が達成されるまで調整するために用いられ得る。
【0027】
発射トリガ(150)は、モータ(160)を起動することによってステープル留めヘッドアセンブリ(300)を作動させるように動作可能である。安全トリガ(140)は、ステープル留めヘッドアセンブリ(300)に対するアンビル(400)の長手方向位置に基づいて発射トリガ(150)の作動を選択的にブロックするように動作可能である。ハンドルアセンブリ(100)はまた、ステープル留めヘッドアセンブリ(300)に対するアンビル(400)の位置に基づいて、トリガ(140、150)の両方を選択的にロックアウトするように動作可能な構成要素を含む。例えば、安全トリガ(140)は、ステープル留めヘッドアセンブリ(300)に対するアンビル(400)の位置が事前定義された範囲に含まれるまで、係合位置から係合解除位置へと回転することを阻止され得る。したがって、アンビル位置が事前定義された範囲内に含まれるまで、発射トリガ(150)の作動が安全トリガ(140)によって阻止され、それによってステープル留めヘッドアセンブリ(300)の発射が抑止される。
【0028】
本実施例の発射トリガ(150)は、参照によって本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2017/0258471号に開示されているパドルに類似し得る一体的な作動パドル(図示せず)を含む。パドルは、発射トリガ(150)が発射後位置まで枢動したときにモータ起動モジュール(180)(図1)のスイッチを作動させるように構成されている。モータ起動モジュール(180)は、バッテリパック(120)及びモータ(160)と連通しているので、モータ起動モジュール(180)は、パドルによるモータ起動モジュール(180)のスイッチの作動に応じて、バッテリパック(120)からの電力でモータ(160)を起動させるように構成されている。このように、モータ(160)は、発射トリガ(150)が枢動したときに起動される。後でより詳しく説明するように、このモータ(160)の起動により、駆動ブラケット(250)を介してステープル留めヘッドアセンブリ(300)が作動される。図示されていないが、単なる例として、モータ(160)は、例えば、上記の参照によって組み込まれる米国特許出願公開第2017/0258471号に開示されているように、モータ(160)の出力シャフトに結合されたギヤボックス、ギヤボックスの出力シャフトに結合されたロータリカム部材、及びロータリカム部材に結合されたカムフォロアを介して駆動ブラケット(250)に動作可能に連結されてもよい。
【0029】
図1図2に最もよく示されるように、ハンドルアセンブリ(100)は、上記のように、モータ(160)に電力供給するように動作可能なバッテリパック(120)を解放可能に受け入れるように更に構成されている。バッテリパック(120)及びハンドルアセンブリ(100)は、相補的な電気接点、ピン、及びソケット、並びに/又は、バッテリパック(120)がハンドルアセンブリ(100)と結合されたときに、バッテリパック(120)からハンドルアセンブリ(100)内の電動部品への電気的通信経路を提供する他の機構部を有し得ることを理解されたい。また、いくつかの変形形態では、バッテリバック(battery back)(120)をハンドルアセンブリ(100)から取り外すことができないように、バッテリパック(120)がハンドルアセンブリ(100)内に一体的に統合され得るということも理解されたい。
【0030】
E.円形ステープル留め器具を用いた例示的な吻合手順
図7A図7Eは、2つの筒状解剖学的構造(20、40)どうしの間の吻合(70)を形成するために用いられている器具(10)を図示している。あくまで一例として、管状解剖学的構造(20、40)は、患者の食道の区域、患者の結腸の区域、患者の消化管の他の区域、又は他の任意の管状解剖学的構造を含み得る。いくつかの変形形態では、患者の結腸の1つ以上の病変部分が除去され、図7A図7Eの管状解剖学的構造(20、40)は結腸の残りの切断部分を示す。
【0031】
図7Aに示すように、アンビル(400)は、一方の筒状解剖学的構造(20)内に位置付けられ、かつステープル留めヘッドアセンブリ(300)は、もう一方の筒状解剖学的構造(40)内に位置付けられる。管状解剖学的構造(20、40)が、患者の結腸の区域を含む変形形態では、ステープル留めヘッドアセンブリ(300)は、患者の直腸を介して挿入され得る。また、図7A図7Eに示されている処置は開腹手術であるが、その処置は腹腔鏡手術としても実施され得るということも理解されるはずである。吻合(70)を腹腔鏡手術で形成するために器具(10)が用いられ得る様々な好適な方法が、本明細書の教示を考慮することで当業者には明らかとなるであろう。
【0032】
図7Aに示すように、アンビル(400)は、シャンク(420)が筒状解剖学的構造(20)の開放切断端(22)から突き出すように筒状解剖学的構造(20)内に位置付けられる。本実施例では、巾着縫合糸(30)が、シャンク(420)の中央領域の周りに提供され、アンビル(400)の管状解剖学的構造(20)内での位置を大まかに確保する。いくつかの他の変形例では、巾着縫合糸(30)は、シャンク(420)の近位端の周りに締め付けられる。いくつかのそのような変形例では、シャンク(420)の近位端は、巾着縫合糸(30)をしっかりと捕捉するためのノッチ又は他の特徴部を含んでもよい。本実施例を続けると、ステープル留めヘッドアセンブリ(300)は、トロカール(330)が管状解剖学的構造(20)の開放切断端(42)から突出するように、管状解剖学的構造(40)内に位置付けられる。巾着縫合糸(50)が、シャフト(332)の中央領域周りに提供され、ステープル留めヘッドアセンブリ(300)の管状解剖学的構造(40)内での位置を大まかに確保する。ステープル留めヘッドアセンブリ(300)は、次いで、ステープル留めヘッドアセンブリ(300)が管状解剖学的構造(40)の遠位端に完全に着座することを確実にするために遠位に促される。
【0033】
次に、図7Bに示すように、トロカール(330)を穴(422)に挿入することによって、アンビル(400)が、トロカール(330)に固定される。ラッチ部材(430)が、トロカール(330)のヘッド(334)に係合し、それによって、アンビル(400)とトロカール(330)との間のしっかりとした嵌合を提供する。次いで、操作者は、ピストルグリップ(112)を介して、ケーシング(110)を静止状態に保ちつつ、ノブ(130)を回転させる。このノブ(130)の回転により、トロカール(330)とアンビル(400)とが近位に後退する。図7Cに示すように、トロカール(330)及びアンビル(400)のこの近位後退によって、管状解剖学的構造(20、40)の組織は、アンビル(400)とステープル留めヘッドアセンブリ(300)との表面(412、322)間で圧縮される。これが発生すると、操作者は、ノブ(130)を旋回させながらノブ(130)を介して触覚的抵抗又はフィードバックを観察することができ、そのような触覚的抵抗又はフィードバックは、組織が圧縮されていることを示す。組織が圧縮されているとき、操作者は、ハンドルアセンブリ(100)のユーザインターフェース機構部(114)内でインジケータ針(522)の位置を視覚的に観察して、アンビル(400)及びステープル留めヘッドアセンブリ(300)の互いに対向する表面(412、322)間の間隙距離(d)が適切であるかどうかを判断し、調整が必要な場合にはノブ(130)を介して必要な調整を行うことができる。
【0034】
操作者がノブ(130)を介して間隙距離(d)を適切に設定した後、操作者は、安全トリガ(140)をピストルグリップ(112)に向かって枢動させて、発射トリガ(150)の作動を可能にする。次いで、操作者は、発射トリガ(150)をピストルグリップ(112)に向かって枢動させ、したがってパドル(158)がモータ起動モジュール(180)のスイッチを作動させ、それによってモータを(160)を起動して回転させる。モータ(160)のこのような回転は、図7Dに示されるように、駆動ブラケット(250)を遠位に作動させ、それによってナイフ部材(340)及びステープルドライバ部材(350)を遠位に駆動することによって、ステープル留めヘッドアセンブリ(300)の作動(又は「発射」)を引き起こす。ナイフ部材(340)が遠位に並進するにつれて、ナイフ部材(340)の刃先(342)が、アンビル(400)の環状凹部(418)内、かつナイフ部材(340)の内部に位置付けられた余分な組織を切断する。
【0035】
図3に示すように、本実施例のアンビル(400)は、環状凹部(418)内に位置付けられた脱離ワッシャ(417)を含む。ナイフ部材(340)が、図7Cに図示されている位置から図7Dに図示されている位置まで、完全に遠位方向の動作範囲いっぱいに動いた場合には、このワッシャ(417)は、ナイフ部材(340)によって破壊される。ステープラ(10)の機構は、ナイフ部材(340)がその遠位方向の動きの終端に到達するにつれて、増加する機械的利益を提供し、それによって、ワッシャ(417)を破壊するために必要な、より大きな力を提供するように構成され得る。もちろん、いくつかの変形形態では、脱離ワッシャ(417)は完全に省略され得る。ワッシャ(417)が含まれる変形形態では、ワッシャ(417)は、組織の切断を補助するためのナイフ部材(340)用のカッティングボードとしても役立ち得るということを理解されたい。
【0036】
ステープルドライバ部材(350)が、図7Cに示されている位置から図7Dに示されている位置へと遠位に並進するにつれて、ステープルドライバ部材(350)は、ステープル(90)を、管状解剖学的構造(20、40)の組織を貫通して、アンビル(400)のステープル成形ポケット(414)の中に打ち込む。ステープル成形ポケット(414)は、例えば、打ち込まれたステープル(90)を「B字」形状又は三次元形状へと変形させ、その結果、成形されたステープル(90)は組織の端部を互いに固定し、それによって、管状解剖学的構造(20)を管状解剖学的構造(40)と結合する。
【0037】
図7Dに示すように、操作者がステープル留めヘッドアセンブリ(300)を作動させた後、操作者はノブ(130)を回転させて、アンビル(400)をステープル留めヘッドアセンブリ(300)から離れる方へ遠位に駆動して間隙距離(d)を増加させ、表面(412、322)間の組織の解放を容易にする。次いで、操作者は、アンビル(400)がまだトロカール(330)に固定されている状態で、器具(10)を患者から取り外す。管状解剖学的構造(20、40)が患者の結腸の区域を含む例を再び参照すると、器具(10)は、患者の直腸を介して取り外され得る。器具(10)が取り外されると、筒状解剖学的構造(20、40)は、図7Eに示すように、吻合(70)部にあるステープル(90)の2列の環状配列によって、一緒に固定された状態で残される。吻合(70)の内径は、ナイフ部材(340)によって残された切断された縁部(60)によって画定される。
【0038】
F.ハンドルアセンブリの例示的なユーザインターフェース機構部
図8に最もよく示されるように、外科用ステープル留め器具(10)のハンドルアセンブリ(100)は、外科的処置の間にステープル留めヘッドアセンブリ(300)に関するアンビル(400)の位置付けを示す視覚的フィードバックを操作者に提供するように構成されたユーザインターフェース機構部(114)を更に含んでいる。したがって、操作者は、ノブ(130)を回転させながらユーザインターフェース機構部(114)を見ることでアンビル(400)とステープル留めアセンブリ(300)との間の適当な間隙距離(d)が得られたことを確認することができる。
【0039】
本実施例のユーザインターフェース機構部(114)は、定線の印(502、504、506)、ステープルのグラフィカル表現(510、512)、及びチェックマークグラフィック(514)を含む、グラフィカルインジケータ(500)を含む。ユーザインターフェース機構部(114)は更に、窓(520)を画定しており、これを通じてインジケータ針(522)が視認され得る。いくつかの変形例では、ユーザインターフェース機構部(114)は、ステープル留めヘッドアセンブリ(300)のサイズに関連する直径、ステープル留めヘッドアセンブリ(300)内のステープルのサイズ、アンビル(400)とステープル留めヘッドアセンブリ(300)との間に画定された間隙のサイズ、及び/又は他の情報を示すことができるフィールド(530)を更に含む。あくまで一例として、フィールド(530)は、23mm、25mm、29mm、又は31mmのステープル留めヘッドアセンブリ(300)サイズを示してもよい。
【0040】
操作者がノブ(130)を回転させてステープル留めヘッドアセンブリ(300)に対するアンビル(400)の長手方向位置を調節する際、操作者は、窓(520)を通してインジケータ針(522)の位置を観察することができる。最初に、インジケータ針(522)は、窓(520)の遠位端に、又はその近くに位置付けられてもよい。アンビル(400)が近位に移動し続けると、インジケータ針(522)は最終的に窓(520)に対して近位に移動する。操作者は、定線の印(502、504、506)との関係においてインジケータ針(522)の位置を見ることができる。最遠位及び最近位の印(502、506)は、ステープル留めヘッドアセンブリ(300)の作動を成功させるためのアンビル(400)とステープル留めヘッドアセンブリ(300)との間の許容可能な距離範囲である、「グリーンゾーン」の境界を表し得る。したがって、インジケータ針(522)が最遠位の印(502)に対して遠位にある場合、アンビル(400)とステープル留めヘッドアセンブリ(300)との間の距離は大きすぎ、インジケータ針(522)が最近位の印(506)に対して近位にある場合、アンビル(400)とステープル留めヘッドアセンブリ(300)との間の距離は小さすぎる。印(504)は、印(502)と印(506)との間に長手方向に位置付けられる。グラフィカル表現(510)は、(例えば、比較的厚い組織での使用に適した)比較的高く形成されたステープルを表す。一方、グラフィカル表現(512)は、(例えば、比較的薄い組織での使用に適した)比較的短く形成されたステープルを表す。よって、グラフィカル表現(510、512)は、組織の観察ないしは別の方法に基づいて、インジケータ針(522)と印(502、504、506)との間の適切な対応する空間的関係を選択することにより、所望の成形されたステープル高さを得るかどうか、またその方法に関する操作者の意思決定を容易にし得る。
【0041】
本実施例では、窓(520)は、発光ダイオード(LED)(図示せず)により照明され、窓(520)内のインジケータ針(522)の視認を更に容易にする。加えて、ステープル留めヘッドアセンブリ(300)がステープル留め及び切断サイクルを完了すると、チェックマークグラフィック(514)が別のLED(図示せず)により照明される。したがって、操作者は、更にチェックマークグラフィック(514)の照明を頼りにして、ステープル留めと切断サイクルが完了したことを確認し、それによって、アンビル(400)を吻合(70)から離れる方へ遠位に前進させて組織を解放し、その後に器具(10)を患者から取り外すことが安全であることを確認することができる。
【0042】
円形外科用ステープル留め器具(10)は、上記の参照によって組み込まれる米国特許出願公開第2017/0258471号の教示の少なくともいくつかに従って、更に構成され、また動作可能となり得る。
【0043】
II.閉鎖、ステープル留め、及び切断を独立に制御される例示的な円形外科用ステープル留め器具
場合によっては、ステープル留めヘッドアセンブリ(300)の内部発射構成要素の動力作動に加えて、アンビル(400)の動力作動を呈する円形外科用ステープル留め器具(10)の変形形態を提供することが望ましいことがある。更に、そのような器具によって実施される結果的な閉鎖、ステープル留め、及び切断ストロークがユーザ入力に応答して互いに独立に制御され得るように、アンビル(400)、ステープルドライバ部材(350)、及びナイフ部材(340)の独立した動力作動を可能にする複数のアクチュエータを備えた、そのような器具(10)の変形例を提供することが望ましいことがある。
【0044】
以下の教示は円形外科用ステープラの文脈で開示されているが、そのような教示は他のタイプの外科用ステープラにも適用され得ることが理解されよう。単に例として、そのような他のステープラには、その開示内容が参照により本明細書に組み込まれる、2018年8月14日発行の米国特許第10,045,780号、発明の名称「Application of Staples in Lower Anternal Bowel Rescence」に開示されているタイプの直角形外科用ステープラが含まれ得る。
【0045】
A.独立して制御されるアクチュエータを有する円形外科用ステープル留め器具の概要
図9は、上記の種類の構成及び機能を示す例示的な円形外科用ステープル留め器具(600)を示す。器具(600)は、以下に別途記載される点を除いて、上述の器具(10)と同様である点は理解されよう。器具(10)と同様に、器具(600)は一般に、ハンドルアセンブリ(610)の形態をなす本体アセンブリと、ハンドルアセンブリ(610)から遠位に延びるシャフトアセンブリ(630)と、シャフトアセンブリ(630)の遠位端に配設されたステープル留めヘッドアセンブリ(640)と、ステープル留めヘッドアセンブリ(640)のトロカール(642)の形態をなす作動可能な閉鎖部材と解放可能に結合するように構成されたアンビル(650)と、を含む。アンビル(650)は、ステープル留めヘッドアセンブリ(640)の遠位に面するデッキ表面(644)に対して組織をクランプするために、ステープル留めヘッドアセンブリに対してトロカール(642)によって選択的に後退及び延出可能である。ステープル留めヘッドアセンブリ(640)は、クランプされた組織の中へと、アンビル(650)に対してステープルを遠位に排出するように、また、上述のナイフ部材(340)と類似した円筒状ナイフ部材(図示せず)によってクランプされた組織を切断するように、選択的に動作可能である。したがって、ステープル留めヘッドアセンブリ(640)とアンビル(650)は、ユーザ入力に応答して組織をクランプ、ステープル留め、及び切断するように動作可能なエンドエフェクタステープル留めアセンブリを画定するように協働する。
【0046】
ハンドルアセンブリ(610)は、ピストルグリップ(614)を画定するケーシング(612)と、ケーシング(612)の遠位端に隣接してケーシング(612)の上側に配設されたユーザインターフェース(616)と、ケーシング(612)の近位端に回転可能に配設されたノブ(618)と、を含む。ユーザインターフェース(616)及びノブ(618)は、以下に別途記載されていることを除いて、上記のユーザインターフェース(114)及びノブ(130)と同様である。本実施例のケーシング(612)は、バッテリパック(120)と同様であり、かつケーシング(612)内に収容されたモータユニット(660)(図10を参照)に給電するように動作可能なバッテリパック(620)を解放可能に受け入れて保持するように構成された開放端近位空洞(図示せず)を含む。
【0047】
本実施例のハンドルアセンブリ(610)は、安全部材(622)と、閉鎖トリガ(624)と、発射トリガ(626)と、を更に含み、これらはそれぞれピストルグリップ(614)に対して独立して移動可能である。閉鎖トリガ(624)の作動は、モータユニット(660)を起動してトロカールアクチュエータ(662)(図10を参照)の作動を開始し、それによって間に組織をクランプするためのアンビル(650)のステープル留めヘッドアセンブリ(640)に対する閉鎖を実現するように構成されている。発射トリガ(626)の作動は、モータユニット(660)を起動してステープルアクチュエータ(664)及びナイフアクチュエータ(666)(図10を参照)の作動を始動し、それによってクランプされた組織をステープル留め及び切断するように構成されている。図11に関連して以下でより詳細に説明するように、器具(600)は、発射トリガ(626)の1回の作動に応答してステープルアクチュエータ(664)とナイフアクチュエータ(666)の作動を独立して制御するように構成されている。このようにして、ステープル留めストロークの開始に対する切断ストロークの開始の正確なタイミングが達成され得る。
【0048】
本実施例の安全部材(622)は、安全トリガ(140)と類似した枢動可能なトリガなどの突出部の形態をなしており、閉鎖トリガ(624)及び/又は発射トリガ(626)と直接的又は間接的に係合してそれらの作動を選択的に阻止するように構成されている。例えば、安全部材(622)は、アンビル(650)がトロカール(642)に完全に取り付けられたことを器具(600)が検知するまで、閉鎖トリガ(624)の作動を阻止するように構成されてもよい。追加的に、あるいは代替的に、安全部材(622)は、間に特定の間隙距離(d)(図7Cを参照)を規定する、ステープル留めヘッドアセンブリ(640)に対する所定の長手方向位置にアンビル(650)が配されるまで、発射トリガ(626)の作動を阻止するように構成されてもよい。
【0049】
図10に概略的に示される器具(600)のアクチュエータ(662、664、666)は、器具(600)の対応する作動可能な構成要素をモータユニット(660)に動作可能に結合するように構成されている。特に、トロカールアクチュエータ(662)は、ステープル留めヘッドアセンブリ(640)のトロカール(642)をモータユニット(660)に動作可能に結合する。したがって、トロカールアクチュエータ(662)は、モータユニット(660)がトロカールアクチュエータ(662)に動作可能に係合されているとき、モータユニット(660)の起動に応答して、トロカール(642)を、またそれによってアンビル(650)を近位及び遠位に作動するように構成されている。トロカールアクチュエータ(662)は、器具(10)のトロカール作動バンドアセンブリ(230)と組み合わされたトロカール作動ロッド(220)に類似した細長い部材を含んでもよく、これはシャフトアセンブリ(630)内に並進可能に配設される。
【0050】
ステープルアクチュエータ(664)は、トロカールアクチュエータ(662)とは独立してステープル留めヘッドアセンブリ(640)のステープルドライバ部材(図示せず)をモータユニット(660)に動作可能に結合する。したがって、ステープルアクチュエータ(664)は、モータユニット(660)がステープルアクチュエータ(664)と動作可能に係合されているとき、モータユニット(660)の起動に応答してステープルドライバ部材を、またそれによってステープル留めヘッドアセンブリ(640)内に収容されたステープル(図示せず)を遠位に作動するように構成されている。ステープルアクチュエータ(664)は、器具(10)のステープル留めヘッドアセンブリドライバ(240)に類似した細長い部材を含んでもよく、部材は、トロカールアクチュエータ(662)とは独立してシャフトアセンブリ(630)内に並進可能に配設される。
【0051】
ナイフアクチュエータ(666)は、トロカールアクチュエータ(662)及びステープルアクチュエータ(664)とは独立してステープル留めヘッドアセンブリ(640)の円筒状ナイフ部材(図示せず)をモータユニット(660)に動作可能に結合する。したがって、ナイフアクチュエータ(666)は、モータユニット(660)がナイフアクチュエータ(666)に動作可能に係合されているとき、モータユニット(660)の起動に応答して、ナイフ部材を長手方向に作動するように構成されている。ナイフアクチュエータ(666)は、器具(10)のステープル留めヘッドアセンブリドライバ(240)に類似した細長い部材を含んでもよく、部材は、トロカールアクチュエータ(662)及びステープルアクチュエータ(664)とは独立してシャフトアセンブリ(630)内に並進可能に配設される。このようにして、アクチュエーター(662、664、666)は、モータユニット(660)と協働して、組織のクランプと、組織のステープル留めと、組織の切断とを独立して作動するように構成されている。
【0052】
本実施例のハンドルアセンブリ(610)のノブ(618)は、トロカールアクチュエータ(662)と動作可能に結合されており、そのため、ノブ(618)はアンビル閉鎖緊急離脱機構として動作可能である。その点において、トロカールアクチュエータ(662)は、主にモータユニット(660)によって駆動されるが、例えば、モータユニット(660)が停止されるか、あるいは別様にトロカールアクチュエータ(662)から係合解除されると、ノブ(618)の回転に応答して長手方向に並進可能である。したがって、ノブ(618)は、アンビル(650)がステープル留めヘッドアセンブリ(640)に向かって部分的にあるいは完全に近位に後退したことに続いて回転され、それによって、アンビル(650)がステープル留めヘッドアセンブリ(640)から離れて遠位に延出し、例えば、間に捕捉された組織を解放することが可能となる。そのような変形形態では、ノブ(618)は、例えば、トロカール作動ロッド(220)のねじ付き部分(224、226)を含めて、器具(10)のノブ(130)との関連で上述されたものと類似した機構を介して、トロカールアクチュエータ(662)に結合されてもよい。しかしながら、トロカールアクチュエータ(662)がモータユニット(660)のみによって駆動されるようないくつかの変形形態において、ノブ(618)は器具(600)から省略されてもよいことが理解されよう。
【0053】
器具(600)は、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、2016年9月20日発行の米国特許第9,445,816号、発明の名称「Circular Stapler with Selectable Motorized and Manual Control」、2017年1月3日発行の米国特許第9,532,783号、発明の名称「Circular Stapler with Select Motorized and Manual Control, Including a Control Ring」、2017年3月21日発行の米国特許第9,597,081号、発明の名称「Motor Driven Rotary Input Circular Stapler with Modular End Effector」、2016年10月11日発行の米国特許第9,463,022号、発明の名称「Motor Driven Rotary Input Circular Stapler with Lockable Flexible Shaft」、2018年12月27日公開の米国特許出願公開第2018/0368836号、発明の名称「Surgical Stapler with Independently Actuated Drivers to Provide Varying Staple Heights」、及び/又は本明細書で確認される他の特許文献のうちのいずれか、の教示のうちの少なくともいくつかに従って更に構成され、動作可能となり得る。
【0054】
B.円形外科用ステープル留め器具の例示的な制御システム
図10に概略的に示されるように、器具(600)は、器具(600)のトロカールアクチュエータ(662)、ステープルアクチュエータ(664)、及びナイフアクチュエータ(666)の作動を制御するように動作可能である制御システム(670)を更に含む。制御システム(670)は、制御モジュール(672)と、モータユニット(660)と、ユーザインターフェース(616)と、センサ(674)と、を含んでおり、これらは、制御モジュール(672)がモータユニット(660)、ユーザインターフェース(616)、及びセンサ(674)の各々と通信するように適切に構成配置されている。制御モジュール(672)はプロセッサを含んでおり、また、事前プログラムされた器具制御アルゴリズムを記憶し、ユーザインターフェース(616)及びセンサ(674)からの入力を受信するように動作可能である。これらの記憶された制御アルゴリズム及び受信された入力に基づいて、制御モジュール(672)は、組織をクランプ、ステープル留め、及び切断するために、トロカールアクチュエータ(662)、ステープルアクチュエータ(664)、及びナイフアクチュエータ(666)の作動を互いに独立して駆動するよう、パルス幅変調(PWM)を用いてモータユニット(660)を制御するように構成されている。
【0055】
モータユニット(660)は、1つ以上のモータを含んでおり、トロカールアクチュエータ(662)、ステープルアクチュエータ(664)、及びナイフアクチュエータ(666)と動作可能に結合されている。いくつかの変形形態では、モータユニット(660)は、全ての3つのアクチュエータ(662、664、666)に動作可能に結合され、かつそれらを駆動するように構成された単一のモータを備えてもよい。そのような変形形態では、モータユニット(660)は、ギアアセンブリなどの1つ以上の動力伝達アセンブリ(図示せず)を介してアクチュエータ(662、664、666)と結合されてもよく、それらの様々な好適なタイプが、本明細書及び組み込まれた参考文献の教示を考慮すれば当業者には明らかとなろう。他の変形形態では、モータユニット(660)は、それぞれがアクチュエータ(662、664、666)のうちの対応する1つを駆動するための専用のものである3つのモータを備えてもよい。更なる変形形態では、モータユニット(660)は2つのモータを備えてもよく、第1のモータは、トロカールアクチュエータ(662)を駆動するように構成され、第2のモータは、動力伝達アセンブリの援助を受けてステープルアクチュエータ(664)及びナイフアクチュエータ(666)を駆動するように構成される。モータユニット(660)は、他の変形形態において様々な他の数量及び構成配置のモータを備え得ることが理解されよう。
【0056】
センサ(674)は、ステープル留めヘッドアセンブリ(640)、シャフトアセンブリ(630)、又はハンドルアセンブリ(610)内に配置されるか、あるいはそうでなければそれらに結合され、使用中に器具(600)の1つ以上の状態を監視するように動作可能である。例えば、センサ(674)は、アクチュエータ(662、664、666)及び/又はトロカール(642)などのそれらの隣接する構成要素のうちのいずれか1つ以上の並進を監視するように構成され得る。いくつかのそのような変形形態では、センサ(674)は、アクチュエータ(662、664、666)又はその隣接する構成要素のいずれか1つに直接装着されてもよい。他のそのような変形形態では、センサ(674)は、アクチュエータ(662、664、666)及びそれらの隣接する構成要素がセンサ(674)に対して移動するように、ステープル留めヘッドアセンブリ(640)、シャフトアセンブリ(630)、又はハンドルアセンブリ(610)内に不動に装着されてもよい。
【0057】
いくつかの変形形態では、センサ(674)は、例えば、上記の参照によって組み込まれる米国特許第10,307,157号に、又は、その開示内容が参照によって本明細書に組み込まれる、本願と同日に出願された米国特許出願第[代理人整理番号END9142USNP1]、発明の名称「Anvil Retention and Release Features for Powered Circular Surgical Stapler」に開示されているように、トロカール(642)へのアンビル(650)の確実な取り付けを検知するように構成されてもよい。他の変形形態では、センサ(674)は、ステープル留めヘッドアセンブリ(640)の直径又はその中に収容されるステープル(図示せず)のサイズなど、シャフトアセンブリ(630)に結合された特定のステープル留めヘッドアセンブリ(640)のいくつかの特徴部を検知するように構成されてもよい。いくつかのそのような変形形態では、センサ(674)は、例えば、その開示内容が参照によって本明細書に組み込まれる、2019年6月28日出願の米国仮特許出願第62/868,457号、発明の名称「Surgical Systems with Multiple RFID Tags」に開示されているように、ステープル留めヘッドアセンブリ(640)の上又はその中に配設されたタグ要素に記憶された電子情報の無線周波数認識(RFID)を介して、ステープル留めヘッドアセンブリ(640)のそのような特徴部を検知するように構成されてもよい。
【0058】
更に他の変形形態では、センサ(674)はモータユニット(660)と直接通信してもよい。例えば、センサ(674)は、モータユニット(660)によって引き出される電流を監視するように動作可能な電流センサ、又はモータユニット(660)の回転出力を監視するように動作可能なエンコーダを含んでもよい。更に、図10の線図には1つのセンサ(674)のみが示されているが、センサ(674)は複数のセンサを含んでもよく、各個々のセンサ(674)は、器具(600)の1つ以上の状態それぞれに関して監視し制御モジュール(672)と通信するように構成されることが理解されよう。更に、センサ(674)は、本明細書の教示及び本明細書には記載されていない教示を考慮することによって当業者に容易に明らかとなる様々な好適なタイプのセンサを含むセンサアセンブリの形態をなし得ることが理解されよう。
【0059】
ユーザ入力を受信し、ユーザ入力を制御モジュール(672)に通信するようにユーザインターフェース(616)が更に構成されていることを除いて、ユーザインターフェース(616)は上記のユーザインターフェース(114)と類似している。その点において、ユーザインターフェース(616)は、1つ以上のボタン、ダイヤル、他の作動可能要素、又は、実施される外科的処置若しくはステープル留めヘッドアセンブリ(640)に関する特定の情報を示すようにユーザによって選択可能である表示グラフィクスを含んでもよい。単なる例として、そのような情報は、以下のいずれか、すなわち、所望のステープル成形高さ、閉鎖中にアンビル(650)が作動されるべき、アンビル(650)とステープル留め7ヘッドアセンブリ(640)との間の対応する間隙、器具(600)によって発射される組織のタイプ若しくは公称厚さ、及び/又はステープル留めヘッドアセンブリ(640)の直径のうちのいずれかを含み得る。以下で更に詳細に説明されるように、例えば、そのような情報は、センサ(674)によって提供される情報と組み合わせて、アクチュエータ(662、664、666)のストローク及び/若しくは作動速度を調整するために、かつ/又は処置中の組織の最適なクランプ、ステープル留め、及び切断を確実にするようアクチュエータ(662、664、666)の動力作動の間のタイミング休止を調整するために、制御モジュール(672)によって使用され得る。
【0060】
C.円形外科用ステープラを制御するための例示的な方法
図11は、図10に示される制御システム(670)を介して円形外科用ステープル留め器具(600)を制御するための例示的な方法(700)を示す。ステップ(702)において、器具(600)は、バッテリパック(620)によってエネルギー印加されることに応答して、例えば、器具(600)が製品包装から取り出された後にバッテリパック(620)がハンドルアセンブリ(610)の近位端に完全に挿入されたときに、電源投入される。包装からの取り出しの際、アンビル(650)は、トロカール(642)にすでに固定されており、完全に開放した状態にあり、ステープルリテーナ(646)(図14を参照)がデッキ表面(644)に固定されている。
【0061】
本実施例において器具(600)が電源投入された後、制御モジュール(672)はステップ(704)においてアンビルストローク較正モードに入るが、これは、自動的に発生するか、あるいは、例えば、ユーザインターフェース(616)を介して提供されるユーザ入力に応答して発生し得る。この較正モードでは、トロカール(642)を近位に後退させ、それによってアンビル(650)をステープルリテーナ(646)に対して、あるいは代替的に、ステープルリテーナ(646)が取り外されている場合にデッキ表面(644)に対して閉鎖するために、制御モジュール(672)がモータユニット(660)を起動してトロカールアクチュエータ(662)を駆動する。制御モジュール(672)は、アンビル(650)がステープルリテーナ(646)又はデッキ表面(644)と接触した際のモータユニット(660)の電流負荷の増加を、センサ(674)を介して検知することによって、アンビル(650)が閉鎖位置に到達したことを検知し得る。制御モジュール(672)は、この後退プロセスの間、アンビル(650)のストローク(すなわち、長手方向変位)を観察し、それをアンビル(650)の予想ストロークと比較する。この比較及び2つのストローク値の間に認められた差異に基づいて、制御モジュール(672)は次いで、外科処置の間に、モータユニット(660)を起動してトロカールアクチュエータ(662)を作動させ、それによって後のアンビル(650)の正確な作動を確実にするために実行される作動アルゴリズムを較正する。追加的にあるいは代替的に、アンビルストロークの較正は、アンビル(650)が組織をクランプするために後退されているときに、外科処置の間にリアルタイムで制御モジュール(672)によって実施され得る。アンビルストロークのそのような較正について、以下で更に詳細に記載されている。器具(600)の1つ以上の他の作動可能な部材のストロークが、外科処置の前又は外科処置の間に同様の様式で較正されてもよく、また、器具(600)のステープル留めストローク及び/又は切断ストロークを同様に較正するために、アンビル閉鎖ストロークの較正が制御モジュール(672)によって適用されてもよいことが理解されよう。
【0062】
ステップ(706)において、制御モジュール(672)はステープル留めヘッドアセンブリ(640)の直径を決定する。上記のように、ステープル留めヘッドアセンブリ(640)は、シャフトアセンブリ(630)に解放可能に取り付けられてもよく、そのため、器具(600)によって処置される組織構造の管腔サイズに応じて、様々な直径のステープル留めヘッドアセンブリ(640)がシャフトアセンブリ(630)の遠位端に交換可能に結合されることができる。制御モジュール(672)は、例えば、センサ(674)が上述の様式でステープル留めヘッドアセンブリ(640)のサイズを検知するように構成されているとき、ユーザインターフェース(616)を介して提供されたユーザ入力及び/又はセンサ(674)によって提供された情報に基づいて、このサイズ決定を行うように構成されている。
【0063】
ステップ(708)において、制御モジュール(672)は、ユーザインターフェース(616)を介して操作者によって選択される、組織内に成形されるステープルの所望の高さを示す入力をユーザインターフェース(616)から受信する。制御モジュール(672)は、選択されたステープル高さを達成するために、アンビル(650)の閉鎖位置においてアンビル(650)とステープル留めヘッドアセンブリ(640)のデッキ表面(644)との間に確立される対応する間隙距離(d)(図7Cを参照)に等しいものとしてこのステープル高さを扱う。
【0064】
ステップ(704、706、708)は、図11において、特定の順序で実施されるものとして示されているが、これらのステップ(704、706、708)は、ステップ(702)における器具(600)の電源投入の後の、後述のステープルアクチュエータ(664)の作動前に、互いに対して様々な順序で実施され得ることが理解されよう。
【0065】
ステップ(704、706、708)の完了後、操作者はアンビル(650)をトロカール(642)から取り外し、それに続いて、患者の第1の管状組織構造内にアンビル(650)を位置付け、またそれとは別に、患者の第2の管状構造内にステープル留めヘッドアセンブリ(640)を位置付ける。操作者は次いで、例えば、上記の図7A図7Bに示されるように、患者体内のトロカール(642)にアンビル(650)を取り付けるが、この時点で制御モジュール(672)は、取り付けが行われたことをステップ(710)において検知する。そのような検知は、対応する信号を制御モジュール(672)に通信するセンサ(674)によって行われ得る。
【0066】
ステップ(712)において、制御モジュール(672)は、閉鎖トリガ(624)が操作者によって作動されていることを検知する。制御モジュール(672)は次いでステップ(714)に進み、トロカールアクチュエータ(662)を駆動するようにモータユニット(660)に指示して、トロカール(642)を近位に作動させ、それによって、選択されたステープル高さ及び対応する間隙距離(d)が達成される閉鎖位置へとアンビル(650)を後退させる。いくつかの変形形態では、制御モジュール(672)は、トロカール(642)へのアンビル(650)の取り付けがステップ(710)において検知された後に発生する閉鎖トリガ(624)の作動に応答してのみ、トロカール(642)及びアンビル(650)の後退を開始するように構成され得る。操作者は、視覚的な印及び/又はユーザインターフェース(616)の表示グラフィクスを介して、アンビル(650)のその閉鎖位置に向かう後退を監視し得る。
【0067】
追加的に、いくつかの変形形態では、制御モジュール(672)は、2つの連続する段階でアンビル閉鎖ストロークを通じてアンビル(650)を近位に後退させるようにモータユニット(660)を制御し得る。例えば、制御モジュール(672)は、アンビル閉鎖ストロークの第1の部分を通じてアンビル(650)を後退させるようにモータユニット(660)に指示してもよく、この時点で制御モジュール(672)は、所定の期間(例えば、数秒間)にわたってモータユニット(660)の起動を一時停止させる。この待機期間の終了時に、制御モジュール(672)はモータユニット(660)を再起動して、その閉鎖位置へのアンビル閉鎖ストロークの残りの部分にわたって引き続きアンビル(650)を後退させる。アンビル(650)の後退にそのような一時停止を含めることにより、アンビル(650)とデッキ表面(644)との間で圧縮されている組織は、少なくとも部分的に落ち着く(又は「広がる(creep)」)ことが可能となり得る。有利にも、この組織の落ち着きは、ステップ(708)においてユーザにより提供された目標ステープル高さ入力によって規定される完全閉鎖位置へと近位にアンビル(650)が前進するとき、トロカール(642)上にかかる軸方向伸張荷重及びモータユニット(660)の結果的な電流負荷の低減をもたらす。
【0068】
ステップ(716)において、制御モジュール(672)は、アンビル閉鎖ストロークの完了後に発射トリガ(626)が操作者によって作動されたことを検知する。本実施例では、この作動の検知に応答して、制御モジュール(672)は、アンビル閉鎖ストロークの完了から測定された所定の期間の完了を観察し、その間、ステープルアクチュエータ(664)及びナイフアクチュエータ(666)は静止したままである。アンビル閉鎖後のこの待機期間により、クランプされた組織は、ステープル留めヘッドアセンブリ(640)が発射される前に完全に圧縮された状態へと落ち着く(又は「広がる」)ことが可能となり、それによって、それぞれのステープル留め及び切断シーケンスの間、ステープルアクチュエータ(664)及びナイフアクチュエータ(666)にかかる軸方向荷重並びに結果として生じるモータユニット(660)の電流負荷が低減される。この待機期間はいくつかの変形形態においては省略されてもよいことが理解されよう。
【0069】
ステップ(718)で示される待機期間が完了すると、制御モジュール(672)は、ステップ(720)におけるステープルドライバ部材(図示せず)の遠位作動を開始して、クランプされた組織のステープル留めを始める。特に、制御モジュール(672)は、例えば、図7Dに示されているものと同様の方式で、ステープル留めヘッドアセンブリ(640)を通じて遠位にステープルドライバ部材を作動させ、それによって組織の中へとアンビル(650)に対してステープルを打ち込むために、モータユニット(660)を起動してステープルアクチュエータ(664)を稼働及び駆動させる。ステープルアクチュエータ(664)の作動を開始すると、制御モジュール(672)は、ステップ(722)において、モータユニット(660)がステープル留めストロークにわたってステープルアクチュエータ(664)を引き続き駆動する別の所定の期間を観察する。同時に、ステップ(724)において制御モジュール(672)は、ステープルドライバ部材がステープル留めヘッドアセンブリ(640)内の所定の長手方向位置に到達したことを検知するために、センサ(674)と通信する。そのような位置は、上述のステープルドライバ(352)と類似した個々のステープルドライバ(図示せず)がデッキ表面(644)に到達する点に対応してもよく、そのため、ステープルは、クランプされた組織内で少なくとも部分的に成形される。このプロセスについては、図17図19に関連して以下で更に詳細に説明されており、また、その開示内容が参照によって本明細書に組み込まれる、本願と同日に出願された米国特許出願第[代理人整理番号END9129USNP1]号、発明の名称「Method for Controlling Cutting Member Actuation for Powered Surgical Stapler」に更に詳細に記載されている。
【0070】
ステップ(722)の所定の期間の完了を検知したこと及び/又はステープルドライバ部材が所定の長手方向位置に到達したことをステップ(724)において検知したことに応答して、制御モジュール(672)は次いで、ステップ(726)においてナイフ部材(図示せず)の遠位作動を開始して組織を切断し始める。特に、制御モジュール(672)は、例えば、図7Dに示されているものと同様の方式で、ステープル留めヘッドアセンブリ(640)を通じて遠位にナイフ部材を作動させ、それによって組織を切断するために、モータユニット(660)を起動してナイフアクチュエータ(666)を稼働及び駆動させる。
【0071】
上記のように、ステープル留めストロークの開始に対する切断ストロークの開始を遅延させることは、ステープルとナイフアクチュエータ(662、664、666)との独立した作動によって可能になるため、組織切断が開始する前の組織内におけるステープルの少なくとも部分的な成形を確実にする。有利にも、このアプローチは、切断前に、クランプされた組織内にステープルが固定され、それによって、ナイフ部材が遠位に駆動されるときに、組織の横方向移動及び結果として生じるステープルの誤成形を防止することを可能にする。
【0072】
ナイフ部材の遠位切断ストロークの終点は、上述のワッシャ(417)に類似したアンビル(650)内のワッシャ(図示せず)をナイフ部材が破断する点に対応し得る。遠位切断ストロークの完了時に、制御モジュール(672)は、ステップ(728)において、ステープル留めヘッドアセンブリ(640)の中へ戻るよう近位にナイフ部材を後退させるようにモータユニット(660)に指示する。いくつかの変形形態では、ナイフ部材の遠位伸張及び近位後退は、例えば、上記の参照によって組み込まれる米国特許出願公開第2017/0258471号に開示されているように、連続的でかつ一様な運動範囲にわたってモータユニット(660)に給電することによって達成され得る。他の変形形態では、制御モジュール(672)は、センサ(674)と通信して遠位切断ストロークの完了を検知し、その後に、モータユニット(660)に特定的に指示してナイフアクチュエータ(666)を代替的な方式で駆動させ、ナイフ部材を近位に後退させるようにプログラムされ得る。そのような変形形態のいずれにおいても、センサ(674)は、モータユニット(660)の回転出力を監視するように構成されたエンコーダを備え得る。
【0073】
ナイフ後退ステップ(728)と同時にあるいはその後に、制御モジュール(672)は、ステップ(730)において、モータユニット(660)に指示してトロカールアクチュエータ(662)を遠位に駆動させ、それによってステープル留めヘッドアセンブリ(640)のデッキ表面(644)に対する所定の位置へと遠位にアンビル(650)を延出させる。この遠位延出は、ステープル留めされた組織をアンビル(650)とステープル留めヘッドアセンブリ(640)との間から解放することを可能にし、器具(600)は、アンビル(650)が依然としてトロカール(642)に取り付けられている状態で、患者から引き抜かれ得る。
【0074】
III.円形外科用ステープラの作動ストロークを較正するための例示的な方法
上述のように、外科処置の前又は外科処置の間に、トロカールアクチュエータ(662)、ステープルアクチュエータ(664)、及びナイフアクチュエータ(666)の長手方向作動(又は「ストローク」)を較正することが望ましい場合がある。これにより、アンビル(650)、ステープルドライバ部材(図示せず)、及びナイフ部材(図示せず)の実際の長手方向変位は、モータユニット(660)の所与の回転出力に基づいて制御モジュール(672)によって予測される、対応する予想長手方向変位と一致することが確実となる。以下に記載されるように、これらのストロークの適切な較正により、円形ステープラ(600)は、患者組織を正確にクランプし、ステープル留めし、切断することが可能となる。
【0075】
本実施例の制御モジュール(672)は、トロカールアクチュエータ(662)を(それによって、トロカール(642)及びアンビル(650)を)長手方向に作動させて組織をクランプするための閉鎖部材作動アルゴリズムと、ステープルアクチュエータ(664)を(それによって、ステープルドライバ部材を)長手方向に作動させて組織をステープル留めするためのステープルドライバ部材作動アルゴリズムと、ナイフアクチュエータ(666)を(それによって、ナイフ部材を)長手方向に作動させて組織を切断するためのナイフ部材作動アルゴリズムと、を記憶及び実行するように構成されている。制御モジュール(672)によって記憶されたこれらの作動アルゴリズムの各々は、モータユニット(660)の所与の回転出力と、その特定の回転出力によって実現されるステープラ(600)の対応する被作動部材の予想される長手方向変位との間の相関関係を含む。上述のように、モータユニット(660)の回転出力は、モータユニット(660)と動作可能に結合され、かつ制御モジュール(672)と通信するエンコーダによって監視され得る。以下に記載されるように、アクチュエータ(662、664、666)の長手方向ストロークは、制御モジュール(672)によって記憶された対応する作動アルゴリズムを調整することによって較正され得る。
【0076】
A.例示的な作動ストローク較正方法
図12は、閉鎖部材作動アルゴリズムを調整してモータユニット(660)の回転出力とトロカールアクチュエータ(662)の長手方向変位との相関関係を再定義することによって、少なくともトロカールアクチュエータ(662)(及び接続されたトロカール(642)及びアンビル(650))のストロークを較正するための例示的な方法を示す。図11に示される動作方法(700)のステップ(704)に関連して上述されたように、この較正プロセスは、外科処置の前に円形ステープラ(600)が最初に開梱される際に実施され得る。追加的あるいは代替的に、この較正プロセスは、以下でより詳細に説明されるように、外科処置の間にリアルタイムで実施されてもよい。更に、以下に記載されるように、閉鎖部材作動アルゴリズムの調整は、ステープルドライバ部材作動アルゴリズム及びナイフ部材作動アルゴリズムを同様に調整し、それによってステープルドライバ部材ストローク及びナイフ部材ストロークを較正するために、制御モジュール(672)によって使用され得る。しかしながら、いくつかの変形形態では、図12に示されるステップと同様のステップが、閉鎖部材作動アルゴリズムとは独立してステープルドライバ部材作動アルゴリズム及びナイフ部材作動アルゴリズムを調整するために、制御モジュール(672)によって実施されてもよい。
【0077】
図12に示されるように、較正方法(800)は、ステップ(802)において開始イベントで始まるが、開始イベントは、デバイスの開梱後にバッテリパック(620)をハンドルアセンブリ(610)と最初に嵌合させることであってもよく、あるいは、外科処置の間にアンビル(650)をトロカール(642)に取り付けることに続く、閉鎖トリガ(624)の作動であってもよい。開始イベント(802)に応答して、制御モジュール(672)は、ステップ(804)において、トロカールアクチュエータ(662)を近位に作動させてアンビル(650)を閉鎖状態に移行させるために、記憶された閉鎖部材作動アルゴリズムを実行してモータユニット(660)を起動する。閉鎖部材作動アルゴリズムの実行前又は実行中に、制御モジュール(672)は、ステップ(806)において、例えば位置センサの形態をなすセンサ(674)による検知によって、トロカールアクチュエータ(662)、トロカール(642)、又はアンビル(650)(本明細書において、各「閉鎖部材」)のうちの監視対象の1つが第1の所定の位置にあると判定する。単なる例として、第1の所定の位置は、アンビル(650)が図13Aに示されるような完全開放状態(X)にあることに対応してもよく、完全開放状態において、アンビル(650)はデッキ表面(644)に対して最遠位の位置にある。他の例では、第1の所定の位置は、アンビル(650)が部分閉鎖状態にあることに対応し得る。モータユニット(660)は、例えば、センサの形態をなすセンサ(674)によって、制御モジュール(672)がステップ(808)において監視対象の閉鎖部材(642、650、662)のうちの1つの実際の長手方向変位を観察する間、トロカールアクチュエータ(662)を近位に後退させ続ける。本実施例のトロカールアクチュエータ(662)と、トロカール(642)と、アンビル(650)は、それらの長手方向の変位がモータユニット(660)の所与の出力に対して同じとなるように、一緒に並進することが理解されよう。
【0078】
ステップ(810)において、制御モジュール(672)は、監視対象の閉鎖部材(642、650、662)が第1の所定の位置に対して近位にある第2の所定の位置に到達したと判定する。単なる例として、第2の所定の位置は、アンビル(650)が初期閉鎖状態にあることに対応し得るが、この初期閉鎖状態においてアンビル(650)は、例えば、図13Bに位置(X)によって示されるように、デッキ表面(644)に対面するが、デッキ表面(644)に対して引き寄せられない。他の変形形態では、第2の所定の位置は、アンビル(650)が完全閉鎖かつ過負荷の状態にあることに対応し得るが、この状態においてアンビル(650)は、デッキ表面(644)又は別の構造体に対して圧縮される。例えば、図13Cは、アンビル(650)が例示的な完全閉鎖かつ過負荷の状態(XOL)にあることを示し、この状態においてアンビル(650)はデッキ表面(644)に対して引き寄せられる。図14は、アンビル(650)の別の例示的な完全閉鎖かつ過負荷の状態(XOL)を示し、この状態においてアンビル(650)は、円形ステープラ(600)の開梱後にリテーナ(646)がステープル留めヘッドアセンブリ(640)から取り外される前に、ステープルリテーナ(646)に対して引き寄せられる。その点から、図13A図14は、例えば、患者に対する外科処置の実施の前の、組織の非存在下におけるアンビル(650)の例示的な位置を示すことが理解されよう。しかしながら、上記のように、較正方法(800)はまた、アンビル(650)が患者の組織上で閉鎖されている間に、外科処置中にリアルタイムで実施されてもよい。
【0079】
監視対象の閉鎖部材(642、650、662)の第2の所定の位置が、アンビル(650)が別の構造(例えば、デッキ表面(644)、ステープルリテーナ(646)、又は患者の組織)に対して引き寄せられる状態に対応する、任意のそのような変形形態では、第2の所定の位置の到達は、閉鎖システム構成要素にかかる負荷の増加が観察されることに基づいて、制御モジュール(672)によって識別され得る。この負荷は、トロカールアクチュエータ(662)に(それによって、アンビル(650)及びトロカール(642)にも)及ぼされる長手方向力、又はトロカールアクチュエータ(662)を作動させている間にモータユニット(660)によって引き出される電流の形態で検知され得る。その点から、構造に対するアンビル(650)の閉鎖は、アンビル(650)、トロカール(642)、及びトロカールアクチュエータ(662)内に長手方向の伸展力を誘発し、このことが、モータユニット(660)によるこれらの閉鎖構成要素の更なる近位後退をより困難にし、したがって、モータユニット(660)の電流負荷を増加させることが理解されよう。閉鎖負荷のこの増加は、制御モジュール(672)と通信する電流センサ又は力センサの形態をなす1つ以上のセンサによって検知され得る。
【0080】
監視対象の閉鎖部材(642、650、662)が第2の所定の位置に到達したと判定すると、制御モジュール(672)は、ステップ(812)に進み、1つ以上のセンサ(674)を介して、制御モジュール(672)によって観察された監視対象の閉鎖部材(642、650、662)の実際の長手方向変位を、制御モジュール(672)によって記憶された予想長手方向変位と比較する。制御モジュール(672)は、ステップ(814)において、観察された実際の長手方向変位と記憶された予想長手方向変位との間に差があるか否かを評価する。それら2つの長手方向変位値が互いに等しいか、あるいは互いの所定の許容範囲内にあり、したがって有意差がない場合、制御モジュール(672)は、例えば、方法(700)のステップにおいて上記に概説されたように、閉鎖トリガ(624)及び発射トリガ(626)のユーザ作動に応答して、ステップ(816)に進んで元の記憶された実際のアルゴリズムを実行する。
【0081】
代替的に、実際の長手方向変位と予想長手方向変位との間に有意差が存在すると制御モジュール(672)が判定した場合、制御モジュール(672)は、ステップ(818)に進んで、判定された差異に基づいて少なくとも閉鎖部材作動アルゴリズムを調整する。より具体的に言えば、本実施例では、制御モジュール(672)は、モータユニット(660)の所与の回転出力と、監視対象の閉鎖部材(642、650、662)の対応する予想長手方向変位との間の記憶される相関関係を再定義する。新たに定義された相関関係は、閉鎖部材(642、650、662)の観察される長手方向変位の間に、閉鎖部材(642、650、662)の観察された実際の長手方向変位をモータユニット(660)の回転出力と関係付ける。この新しい相関関係の回転出力は、元の相関関係の回転出力と同じであっても、異なっていてもよい。
【0082】
いくつかの変形形態では、ステープル部材作動アルゴリズムとナイフ部材作動アルゴリズムは、監視対象の閉鎖部材(642、650、662)の作動と関連して制御モジュール(672)によって決定された同じ差異値に基づいて、同様の様式で調整され得る。3つの全ての作動アルゴリズムの較正は、ステープラ(600)のアンビル(650)、ステープルドライバ部材、及びナイフ部材の正確な長手方向作動を確実にすることが理解されよう。閉鎖部材作動アルゴリズムを調整し、また任意選択によりステープルドライバ部材作動アルゴリズム及びナイフ部材作動アルゴリズムを更に調整した後、制御モジュール(672)は、例えば、方法(700)のステップにおいて上記に概説されたように、閉鎖トリガ(624)及び発射トリガ(626)のユーザ作動に応答して、ステップ(820)に進んで、調整された実際のアルゴリズムを実行する。
【0083】
上記のように、図12の閉鎖部材較正プロセス(800)は、組織をクランプする前にトロカールアクチュエータ(662)(並びにトロカール(642)及びアンビル(650))の長手方向のストロークが適切に較正されるように、外科処置の前に実施されてもよいことが理解されよう。追加的に、あるいは代替的に、較正プロセス(800)は、トロカールアクチュエータ(662)の長手方向ストロークが、また任意選択によってステープルアクチュエータ(664)及びナイフアクチュエータ(666)の長手方向ストロークが更に、使用を通じて適切に構成された状態であることを確実にするために、組織に対する外科処置中に1回以上、実施されてもよい。
【0084】
図15は、上述の方法(800)によるトロカールアクチュエータ(662)の(それによって、トロカール(642)及びアンビル(650))の長手方向ストロークの例示的な較正を示す線グラフ(830)を示す。グラフ(830)のX軸は時間を表し、グラフ(830)のY軸は、制御モジュール(672)によって解釈される、最近位位置に対するトロカールアクチュエータ(662)の遠位変位(δ)(すなわち、デッキ表面(644)に対するアンビル(650)の遠位変位)を表す。図示された曲線(832)の第1の水平部分(834)は、長手方向ストロークの較正前に、トロカールアクチュエータ(662)が変位(δ)において鈍延出位置(dully extended position)にあることを示している。本実施例では、トロカールアクチュエータ(662)は、垂直破線(836)によって示される包装からのステープラ(600)の取り出し、垂直破線(838)によって示されるハンドルアセンブリ(610)へのバッテリパック(620)の取り付け、及び垂直破線(840)によって示されるトロカール(642)へのアンビル(650)の取り付けを含めて、初期イベントの全体を通して完全延出位置に留まる。
【0085】
曲線(832)の第1の下降部分(842)は、第1の急速作動速度でアンビル(650)を完全開放位置から部分閉鎖位置へと移行させるためのトロカールアクチュエータ(662)の初期近位後退を表す。曲線(832)の第2の下降部分(844)は、より遅い第2の作動速度でアンビル(650)を部分閉鎖状態から完全閉鎖状態へと移行させるためのトロカールアクチュエータ(662)の最終近位後退を表す。アンビル(650)が完全閉鎖かつ過負荷の状態(XOL)に到達すると、モータユニット(660)は、垂直線(846)によって表されるように、電流負荷の突然の増加を経験する。制御モジュール(672)は、センサ(674)を介して電流負荷のこの増加を検出し、それにより、アンビル(650)が完全閉鎖状態に到達したと判定する。制御モジュール(672)は次いで、近位後退中に観察されたトロカールアクチュエータ(662)の実際の観察された長手方向変位と予想長手方向変位との比較へと進み、また制御モジュール(672)は、それら2つの値間の差異を決定する。
【0086】
本実施例では、制御モジュール(672)は、判定された差異に基づいて、閉鎖部材作動アルゴリズムを調整し、それによってトロカールアクチュエータ(662)の長手方向ストロークの近位終点を、例えば方法(800)に関連して上述されたステップを介して再び「ゼロ化」する。続いて、制御モジュール(672)は、調整された閉鎖部材作動アルゴリズムを実行して、トロカールアクチュエータ(662)を完全延出状態へと遠位に延出させ、それによって、上昇曲線部分(848)で表されるようにアンビル(650)を完全開放状態(X)へと復帰させる。長手方向ストロークは、ここで、適切な「ゼロ」点で較正されているため、トロカールアクチュエータ(662)の完全延出状態及びアンビル(650)の対応する完全開放状態(X)が、制御モジュール(672)によって適用される変位スケール上に、新しいより大きな変位(δ)として登録される。グラフ(830)に示されるように、元の変位値(δ)と、制御モジュール(672)によってトロカールアクチュエータ(662)の完全延出状態(すなわち、アンビル(650)の完全開放状態(X))に相関付けられた調整変位値(δ)との間の差異は、トロカールアクチュエータ(662)の「ゼロ」点が制御モジュール(672)によって調整される変位量に等しい。
【0087】
トロカールアクチュエータ(662)の後続の作動のために、調整された閉鎖部材作動アルゴリズムを実行することは、デッキ表面(644)に対してアンビル(650)を正確に位置付けすることになり、したがって、ユーザ入力ごとの組織のクランプを正確にすることになる。上述のように、制御モジュール(672)は、閉鎖部材作動アルゴリズムのこの較正を適用して、同様にステープル部材作動アルゴリズム及びナイフ部材作動アルゴリズムを較正することができ、したがって、組織の正確なステープル留め及び切断が更に提供される。
【0088】
B.ユーザ指定組織間隙ごとのステープル留めヘッドアセンブリの例示的な作動
上述のように、円形外科用ステープラ(600)のユーザインターフェース(616)は、ユーザ入力を受信し、制御モジュール(672)に通信するように構成されている。図16に示されるように、ユーザインターフェース(616)の視覚的ディスプレイ(680)(他の変形形態ではウィンドウ(520)と同様のウィンドウの形態をなし得る)が、遠位の線の印(682)と近位の線の印(684)とを含む。線の印(682、684)は、組織の中へと発射されたステープルの適切な成形が可能となるように、アンビル(650)とステープル留めヘッドアセンブリ(640)のデッキ表面(644)との間に長手方向に画定される組織間隙の許容範囲(「グリーンゾーン」と称される)の境界を規定する。遠位の線の印(682)は、図17Aに示されるように、アンビル(650)とデッキ表面(644)との間に大きな組織間隙(δAT)を画定するように、アンビル(650)を遠位の「高」閉鎖位置(A)に設ける広い組織間隙設定を示す。近位の線の印(684)は、図17Bに示されるように、アンビル(650)とデッキ表面(644)との間に小さな組織間隙(δAT)を画定するように、アンビル(650)を近位の「低」閉鎖位置(A)に設ける狭い組織間隙設定を示す。ユーザインターフェース(616)の記号(686、688)によって示されるように、広い組織間隙設定は、(例えば、より厚い組織のために)より高い成形高さを有するステープル(692)の成形をもたらし、狭い組織間隙設定は、(例えば、より薄い組織のために)より低い成形高さを有するステープル(692)の成形をもたらす。
【0089】
ユーザインターフェース(616)は、閉鎖位置にあるアンビル(650)に対して所望の組織タップ(tap)設定をユーザが指定することを可能にする1つ以上の選択可能な入力機構を含み、組織タップ設定は次いで、ユーザインターフェース(616)によって制御モジュール(672)に通信される。方法(700)のステップ(714)に関連して上述されたように、制御モジュール(672)は、ユーザ入力を介して指定された標的組織間隙設定をアンビル(650)が達成するまで、モータユニット(660)を制御してトロカールアクチュエータ(662)を近位に後退させるように構成されている。これは、例えば、ステープル留めヘッドアセンブリ内に配置され得る位置センサの形態をなすセンサ(674)との通信を介して、制御モジュール(672)によって確認され得る。図12図15に関連して上述されたように、トロカールアクチュエータ(662)の長手方向ストロークは、アンビル(650)とデッキ表面(644)との間に画定される実際の組織間隙(δ)がユーザインターフェース(616)を介してユーザによって指定された標的組織間隙(δ)に等しくなるように、患者の組織上でのアンビル(650)の閉鎖前及び/又は閉鎖中に較正されてもよい。
【0090】
ユーザインターフェース(616)を介してユーザによって入力された標的組織間隙(δ)は、ステープラ(600)の他の動作態様を制御する際にも同様に制御モジュール(672)によって参照され得る。例えば、アンビル閉鎖ストローク中のトロカールアクチュエータ(662)の長手方向変位を制御することに加えて、制御モジュール(672)はまた、組織間隙のユーザ入力に基づいて、ステープル留めストローク中のステープルアクチュエータ(664)の長手方向変位及び切断ストローク中のナイフアクチュエータ(666)の長手方向変位を制御してもよい。具体的に言えば、アクチュエータ(662、664、666)が、目標の組織間隙に対する作動不足又は過剰作動を伴うことなく、完全なステープル留めストローク及び完全な切断ストロークがもたらされるように、適切な量だけ長手方向に作動されることを確実にするために、制御モジュール(672)は、各アクチュエータ(662、664、666)の長手方向変位を調整し得る。その点で、ステープルアクチュエータ(664)及びナイフアクチュエータ(666)の長手方向ストロークを較正することは、外科処置の間にステープルアクチュエータ(664)及びナイフアクチュエータ(666)が適切な量だけ作動されることを確実にするために望ましいこととなり得ることが理解されよう。上述のように、対応するステープル部材作動アルゴリズム及びナイフ部材作動アルゴリズムは、較正方法(800)を介して閉鎖部材作動アルゴリズムに対して行われた調整に基づいて適切に調整され得る。代替的に、ステープル部材作動アルゴリズム及びナイフ部材作動アルゴリズムは、例えば、方法(800)のステップに類似したステップを介して、閉鎖部材作動アルゴリズムとは独立して調整されてもよい。
【0091】
標的組織間隙のユーザ入力はまた、アクチュエータ(662、664、666)のうちの1つ以上の作動速度を制御するために、制御モジュール(672)によって参照され得る。例えば、制御モジュール(672)は、より大きな組織間隙に対しては1つ以上のアクチュエータ(662、664、666)の作動速度を低下させ、より小さな組織間隙に対しては1つ以上のアクチュエータ(662、664、666)の作動速度を増加させてもよい。その点から、より厚い組織に適応するために、より大きな組織間隙がしばしば選択されるが、それによって、ステープル留め及び切断中にモータユニット(660)のより高い電流負荷が誘発され得ることが理解されよう。より厚い組織に対してステープルアクチュエータ(664)及びナイフアクチュエータ(666)の作動速度を低減することは、したがって、モータユニット(660)の電流負荷を所望の閾値を下回るように維持するのに役立ち得る。
【0092】
IV.ステープルドライバ部材の作動に対するナイフ部材の作動を制御する例示的な方法
方法(700)のステップ(720~726)に関連して上述されたように、制御モジュール(672)は、モータユニット(660)を制御してステープルアクチュエータ(664)とナイフアクチュエータ(666)とを独立して作動させるように構成されており、そのため、ステープルドライバ部材によって打ち込まれたステープル(692)がアンビル(650)によって組織内で少なくとも部分的に成形されたときにのみ、ナイフ部材が遠位に作動されるようになっている。より具体的に言えば、制御モジュール(672)は、例えば、図19Bに関連して下に示され、説明されるように、ステープル脚部(696)がアンビル(650)によって部分的に変形されるように、ステープルドライバ(690)の上端及びステープル(692)のクラウン(694)がデッキ表面(644)に位置付けられる所定の長手方向位置に、ステープルアクチュエータ(664)、ステープルドライバ部材(図示せず)、又はステープルドライバ部材の個々のステープルドライバ(690)(図18を参照)が到達したことを検知するためにセンサ(674)と通信する。
【0093】
図18及び図19Aは、ステープル留めヘッドアセンブリ(640)のそれぞれのステープル開口部(699)内の完全陥凹位置(D)にある、円形ステープラ(600)のステープルドライバ部材の例示的なステープルドライバ(690)を示す。図示されていないが、ステープル留めヘッドアセンブリ(640)のステープルドライバ部材(図示せず)は、上述のステープルドライバ部材(350)のステープルドライバ(352)と同様に環状に配列された複数のステープルドライバ(690)を含むことが理解されよう。各ステープルドライバ(690)は、デッキ部材(698)のそれぞれのステープル開口部(699)内に摺動可能に配列され、それぞれのステープル(692)のクラウン(694)を支持する上端を有する。ステープルアクチュエータ(664)が、制御モジュール(672)による起動に応答してモータユニット(660)によって遠位に駆動されるとき、ステープルドライバ(690)は、図19B及び図19Cに示されるように、それぞれのステープル(692)をステープル開口部(699)から遠位に打ち込む。図19Bは、ステープルドライバ(690)が部分延出位置(D)にあるところを示し、この部分延出位置において、ステープルドライバ(690)の上端及びステープルクラウン(694)は、デッキ表面(644)と一致するステープル開口部(699)の上端部に位置付けられる。この位置では、ステープル脚部(696)は、アンビル(650)のステープル成形ポケット(652)によって受け入れられており、そのため、ステープル脚部(696)は、アンビル(650)とデッキ表面(644)との間にクランプされた組織(図示せず)内で部分的に変形される。図19Cは、ステープルドライバ(690)が完全延出位置(D)にあるところを示し、この完全延出位置において、ステープル(692)のステープル脚部(696)は、クランプされた組織内でアンビル(650)に対して完全に成形される。図19B及び図19Cに示されるように、成形状態にあるステープル脚部(696)の自由端部は、ステープルクラウン(694)に向かって近位に屈曲される。
【0094】
本変形形態の制御モジュール(672)は、ステープルドライバ(690)が図19Bに示される部分延出位置(D)に到達したと判定されると、ナイフアクチュエータ(666)の遠位作動を(それによって、ナイフ部材の遠位作動を)開始するように構成されている。制御モジュール(672)によるこの判定は、ステープルアクチュエータ(664)、ステープルドライバ部材、又はステープルドライバ(690)のうちの1つ以上の長手方向位置を監視するように構成された1つ以上のセンサとの通信を介して行われ得る。更に、上記のように、ステープルアクチュエータ(664)を作動させる前にトロカールアクチュエータ(662)の長手方向ストロークを較正することにより、閉鎖位置にあるアンビル(650)は、ユーザインターフェース(616)を介して指定された標的組織間隙と一致する、デッキ表面(644)に対する適切な組織間隙(δ)を画定することが確実となる。次にこれにより、ユーザ指定の標的組織間隙に基づいて予想される量だけステープル脚部(696)が実際に少なくとも部分的に変形されるまで、ナイフアクチュエータ(666)の遠位作動が始まらないことが確実となる。このアプローチにより、ステープル成形の初期段階の間、クランプされた組織は、ナイフ部材による係合によって破壊されないことが確実となる。有利にも、これにより、ステープル(692)は、クランプされた組織内で適切な形をなし、それによって、形成されたステープルラインに沿った止血を最大化することが可能となる。
【0095】
図20は、薄い組織、中厚の組織、及び厚い組織に対する例示的な外科処置の間における、トロカールアクチュエータ(662)、ステープルアクチュエータ(664)、及びナイフアクチュエータ(666)のモータユニット(660)による経時的な作動を表す例示的な曲線を示す線グラフ(900)を示す。アンビル変位曲線(902)は、トロカールアクチュエータ(662)の、またそれによるトロカール(642)及びアンビル(650)の経時的な長手方向変位を表す。アンビル変位曲線(902)の破線下方部分(904)は、上述の様式で閉鎖部材作動アルゴリズムが較正される前の、アンビル(650)の元の意図された閉鎖ストロークを表す。
【0096】
第1のモータ負荷曲線(910)は、薄い組織を通してアンビル(650)に対してステープル(692)を遠位に打ち込むために、ステープルアクチュエータ(664)を、またそれによってステープルドライバ部材とそのステープルドライバ(690)を作動させる間の、モータユニット(660)の電流負荷を表す。第2のモータ負荷曲線(912)は、中厚の組織を通してアンビル(650)に対してステープル(692)を遠位に打ち込むために、ステープルアクチュエータ(664)を、またそれによってステープルドライバ部材とそのステープルドライバ(690)を作動させる間の、モータユニット(660)の電流負荷を表す。第3のモータ負荷曲線(914)は、厚い組織を通してアンビル(650)に対してステープル(692)を遠位に打ち込むために、ステープルアクチュエータ(664)を、またそれによってステープルドライバ部材とそのステープルドライバ(690)を作動させる間の、モータユニット(660)の電流負荷を表す。第1のナイフ変位曲線(920)は、ナイフアクチュエータ(666)の、またそれによるナイフ部材の薄い組織を通る経時的な長手方向変位を表す。第2のナイフ変位曲線(922)は、ナイフアクチュエータ(666)の、またそれによるナイフ部材の中厚の組織を通る経時的な長手方向変位を表す。第3のナイフ変位曲線(924)は、ナイフアクチュエータ(666)の、またそれによるナイフ部材の厚い組織を通る経時的な長手方向変位を表す。
【0097】
モータ負荷曲線(910、912、914)及びナイフ変位曲線(920、922、924)によって示されるように、本実施例の制御モジュール(672)は、モータユニット(660)を制御して、組織の厚さが増加するにつれて、よりゆっくりとステープルアクチュエータ(664)及びナイフアクチュエータ(666)を遠位に作動させるように構成されている。このことは、グラフ(900)において、薄い組織の曲線(910、920)に対する中厚の組織の曲線(912、922)及び厚い組織の曲線(914、924)の水平方向に伸びた形状から明らかである。このアプローチにより、モータユニット(660)の電流負荷はステープル留め及び切断ストロークの間に所定の閾値を超えないことが確実となる。その点から、上述のように、厚さが増加する組織を通るステープル(692)及びナイフ部材の遠位作動により、モータユニット(660)はより高い電流負荷を引き出すことになる。
【0098】
各モータ負荷曲線(910、912、914)は、ステープル留めストロークの第1の部分を通じたステープルアクチュエータ(664)の遠位作動を反映する第1の上昇(A)を含み、この遠位作動は、図18図19Bに示される完全陥凹位置(D)から出現位置(D)へとステープルドライバ(690)を作動させ、したがって、アンビル(650)に対して成形の初期段階を通じてステープル(692)を打ち込むものである。各モータ負荷曲線(910、912、914)は、ステープル留めストロークの第2の部分を通じたステープルアクチュエータ(664)の遠位作動を反映する第2の上昇(B)を更に含み、この遠位作動は、図19B図19Cに示される出現位置(D)から完全延出位置(D)へとステープルドライバ(690)を作動させ、したがって、アンビル(650)に対して成形の最終段階を通じてステープル(692)を打ち込むものである。3つの組織厚さのシナリオの各々についてグラフ(900)によって示されるように、制御モジュール(672)は、第1の曲線部分(A)と第2の曲線部分(B)との間の遷移としてモータ負荷曲線によって表される出現位置(D)にステープルドライバ(690)が到達したときに、ナイフアクチュエータ(666)の遠位作動を開始して切断ストロークを実施する。図18図19Cに関連して上述されたように、ステープル留めストロークと切断ストロークの開始をずらすこのアプローチは、ステープルの誤成形のリスクを軽減するのに役立ち、したがって、患者の組織内におけるステープルの適切な成形を確実にする。本実施例では、グラフ(900)は、薄い組織上での処置におけるナイフアクチュエータ(666)の開始と、厚い組織上での処置におけるナイフアクチュエータ(666)の開始との間の例示的な時間差(Δt)を示す。
【0099】
センサ(674)が上述の様式でモータユニット(660)に動作可能に結合された電流センサを含む円形ステープラ(600)の変形例では、制御モジュール(672)は、電流センサによって検知される、モータユニット(660)によって引き出された電流に基づいて、1つ以上のアクチュエータ(662、664、666)とそれらの対応する構成要素の作動速度(又は「速度」)を制御し得る。例えば、所定の閾値を超える検知された電流負荷の増加に応答して、制御モジュール(672)は、作動されているアクチュエータ(662、664、666)の作動速度を低下させ得る。同様に、センサ(674)が、トロカールアクチュエータ(662)、ステープルアクチュエータ(664)、ナイフアクチュエータ(666)、又はそれらの関連する構成要素(例えば、トロカール(642))のうちの1つ以上に動作可能に結合された力センサを含むステープラ(600)の変形形態では、制御モジュール(672)は、特定のアクチュエータ(662、664、666)にその作動中に及ぼされる長手方向力の増加が検知されたことに応答して、その特定のアクチュエータ(662、664、666)の作動速度を減少させるように構成されてもよい。
【0100】
1つ以上のアクチュエータ(662、664、666)の作動速度が、ステープル留めヘッドアセンブリ(640)のサイズ又はユーザインターフェース(616)を介してユーザによって指定された目標組織間隙などの付加的な要因に基づいて制御され得ることが理解されよう。単なる例として、制御モジュール(672)は、比較的大きな直径のステープル留めヘッドアセンブリ(640)の存在下で、1つ以上のアクチュエータ(662、664、666)の作動速度を低下させてもよく、また、比較的小さな直径のステープル留めヘッドアセンブリ(640)の存在下で、1つ以上のアクチュエータ(662、664、666)の作動速度を増加させてもよい。加えて、制御モジュール(672)は、より大きな組織間隙に対しては1つ以上のアクチュエータ(662、664、666)の作動速度を低下させ、より小さな組織間隙に対しては1つ以上のアクチュエータ(662、664、666)の作動速度を増加させてもよい。
【0101】
V.無線周波数識別を介したステープル留めヘッドアセンブリの例示的な識別
上記のように、いくつかの例において、様々な異なるタイプのステープル留めヘッドアセンブリ(640)がシャフトアセンブリ(630)と交換可能である例においては特に、センサ(674)を介してステープル留めヘッドアセンブリ(640)の特定の特徴(例えば、直径)を検知し、そのような情報を制御モジュール(672)に通信することが望ましい場合がある。図9に示されるように、外科用器具(600)のエンドエフェクタ(640、650)は、エンドエフェクタ(640、650)の選択された特徴に関連する情報を記憶するように構成された無線周波数識別(RFID)タグ(1000)を含んでもよい。加えて、シャフトアセンブリ(630)又はハンドルアセンブリ(610)のうちの一方は、RFIDタグ(1000)によって記憶された情報を読み取り、そのような情報を制御モジュール(672)に通信するように構成されたRFIDスキャナの形態をなすセンサ(674)を含んでもよい。そのような情報に基づいて、制御モジュール(672)は、例えば、以下に、また上記の参照によって組み込まれる米国仮特許出願第62/868,457号に、より詳細に記載されているように、アクチュエータ(662、664、666)の1つ以上の作動アルゴリズムを適切に調整して、適切な長手方向変位、作動速度、及び/又はアクチュエータ(662、664、666)のストローク間の時間休止を確実にし得る。
【0102】
図21に示されるように、グラフ(2260)は、Y軸上の発射負荷(ポンド)とX軸上の発射時間(秒)との間の関係を表す。グラフ21は、デフォルトの未調整の発射アルゴリズム(2263)と、調整済みの発射アルゴリズム(2263)を示す。グラフ2260は、ステープルアクチュエータ(664)及びナイフアクチュエータ(666)を介してステープル留めヘッドアセンブリ(640)にモータユニット(660)によって加えられた発射負荷に対するデフォルトの最大発射負荷閾値(2261)(例えば、400ポンド)及び最終の最大発射負荷閾値(2262)(例えば、485ポンド)を更に示す。デフォルトの最大発射負荷閾値(2261)は、ステープル留めヘッドアセンブリ(640)のRFIDタグ(1000)に記憶され、RFIDスキャナ(674)によって読み取られるエンドエフェクタ(640、650)のエンドエフェクタ情報に基づいて、最終の最大発射負荷閾値(2262)に調整される。図21の例では、エンドエフェクタ情報は、デフォルトのステープルカートリッジ(例えば25mm)よりも大きなサイズ(例えば31mm)を備えるステープル留めヘッドアセンブリ(640)(又は「ステープルカートリッジ」)を表す。デフォルトのステープルカートリッジのサイズ(例えば、25mm)は、デフォルトの発射アルゴリズム(2263)及びデフォルトの最大発射負荷閾値(2261)と関連付けられる。一方で、より大きなステープルカートリッジのサイズ(例えば、31mm)は、最終の発射アルゴリズム(2264)及び最終の最大発射負荷閾値(2262)と関連付けられる。
【0103】
RFIDタグ(1000)に記憶されたエンドエフェクタ情報は、ステープルカートリッジのサイズ及び/又はカートリッジサイズに基づいた発射負荷調整値(例えば、85ポンド)を含み得る。ステープルカートリッジサイズの場合、制御モジュール(672)は、ステープルカートリッジサイズ及び対応する発射負荷調整値のデータベース又はルックアップテーブルを使用して、適切な発射負荷調整値を探索し得る。
【0104】
更に、図21に示されるように、エンドエフェクタ情報を示すRFIDスキャナ(674)からの入力は、制御モジュール(672)に、デフォルトの最大発射負荷閾値(2261)(例えば、400)を最終の最大発射負荷閾値(2262)(例えば、485ポンド)に調整させ、最終の最大発射負荷閾値(2262)を下回っているように発射アルゴリズム(2264)を維持させる。
【0105】
図21の例では、制御モジュール(672)は、モータユニット(660)によって、発射アルゴリズム(2263)をエンドエフェクタ(640、650)に適用させるまでの最小待機時間「t」を調整又は導入している。様々な例において、最小待機時間「t」は、組織が閉鎖構成でエンドエフェクタ(640、650)によって把持される、外科用器具(600)のエンドエフェクタの閉鎖シーケンスの完了から、把持された組織がステープル留め及び切断される、エンドエフェクタ(640、650)の発射シーケンスの開始までの期間である。最小待機時間「t」は、把持された組織がより低い平均圧力に調整される組織クリープを可能にし、それによって、エンドエフェクタ(640、650)の発射シーケンスを完了するために必要な最大発射負荷が、最終の最大発射負荷閾値(2262)以下の値に低減される。最小待機時間「t」のないデフォルトの発射アルゴリズム(2263)では、発射アルゴリズム(2263)は、発射負荷が最終の最大発射負荷閾値(2262)を超えることを防止するために、時間t3から時間t4までの期間にわたって中断され(2267)なければならない。比較すると、図21に示すように、発射アルゴリズム(2264)は、t3とt4との間の期間を通して継続される。
【0106】
更に図21を参照すると、最小待機時間「t」に影響を与え得る別の要因は、ステープル留めヘッドアセンブリ(640)から配備されるステープル(692)のユーザ選択された成形高さであり、この成形高さは、上述のように、閉鎖位置にあるアンビル(650)によって画定される組織の間隙距離に正比例する。また上記のように、制御モジュール(672)は、所望のステープル成形高さ(すなわち、組織間隙)を選択するよう、ユーザインターフェース(616)を介してユーザに促すように構成されてもよい。少なくとも1つの例において、制御モジュール(672)は、ユーザに、選択する複数のステープル成形高さのオプションをユーザに提示することができる。追加的にあるいは代替的に、制御モジュール(672)は、外科用器具(600)によって治療される組織に基づいて最適な成形高さを推奨することができる。いずれにせよ、ユーザ選択された成形高さにより、制御モジュール(672)に、最小待機時間「t」を更に調整させることになり得る。少なくとも1つの例では、制御モジュール(672)は、データベース又はルックアップテーブル内に、成形高さ及び対応する待機時間の調整値を記憶する。制御モジュール(672)は、ユーザ選択された成形高さに関連付けられた待機時間調整値を識別し、次いで、識別された待機時間調整値に従って最小待機時間「t」を調整することによって、最小待機時間「t」を調整することができる。
【0107】
一般に、より大きく成形されるステープルは、より大きな発射負荷と関連付けられ、より小さく成形されるステープルよりも長い最小待機時間「t」を必要とする。図21の例では、ユーザ選択された成形高さ(2265)は、発射負荷「F2」と関連付けられ、最小発射負荷「F1」に関連付けられる最小成形高さ(2266)よりも大きい。最小発射負荷「F1」及び「F2」は、ステープル脚部が座屈し始める発射負荷を表す。したがって、図21に示される例では、選択された待機時間「t」は、選択されたより大きなサイズのステープルカートリッジ及び選択された成形高さ(2265)の結果である。
【0108】
VI.例示的な組み合わせ
以下の実施例は、本明細書の教示を組み合わせるか又は適用することができる様々な非網羅的な方法に関する。以下の実施例は、本出願における又は本出願の後の書類提出におけるどの時点でも提示され得る、いずれの特許請求の範囲の適用範囲をも限定することを目的としたものではない。権利放棄は一切意図されていない。以下の実施例は、単に例示的な目的で提供されているにすぎない。本明細書の様々な教示は、他の多くの方法で配置及び適用され得ることが企図される。また、一部の変形例では、以下の実施例において言及される特定の特徴部を省略してもよいことも企図される。したがって、以下に言及される態様又は特徴部のいずれも、本発明者ら又は本発明者らの権利承継人によって後日そうである旨が明示的に示されない限り、重要なものとして見なされるべきではない。本出願において又は本出願に関連するその後の書類提出において提示されるいずれの特許請求の範囲が、以下に言及されるもの以外の追加の特徴部を含む場合、それらの追加の特徴部は、特許性に関する何らかの理由で追加されたものと見なされるべきではない。
【実施例1】
【0109】
モータユニットと、モータユニットと通信するコントローラと、モータユニットと動作可能に結合され、かつ複数の可動部材を有するステープル留めアセンブリと、を有する動力付き外科用ステープラを動作させる方法であって、可動部材は、組織をクランプ、ステープル留め、及び切断するために、モータユニットによって長手方向に作動可能であり、方法は、(a)コントローラによって、ステープル留めアセンブリの可動部材が第1の所定の位置にあると判定することと、(b)コントローラによって作動アルゴリズムを実行して、モータユニットを起動して可動部材を第1の所定の位置から第2の所定の位置に向かって長手方向に作動させることと、(c)コントローラによって、可動部材が第2の所定の位置に到達したと判定することと、(d)コントローラによって、第1の所定の位置と第2の所定の位置との間における可動部材の実際の長手方向変位を観察することと、(e)コントローラによって、実際の長手方向変位と、コントローラによって記憶された予想長手方向変位と、を比較し、実際の長手方向変位が、予想長手方向変位からある差異値だけ異なっていると判定することと、(f)差異値に基づいて、コントローラによって作動アルゴリズムを調整することと、を含む、方法。
【実施例2】
【0110】
コントローラによって調整された作動アルゴリズムを実行して、モータユニットを起動して可動部材を長手方向に更に作動させることを更に含む、実施例1に記載の方法。
【実施例3】
【0111】
動力付き外科用ステープラは、モータユニット及びコントローラに動作可能に結合されたエンコーダを更に備え、エンコーダは、可動部材の作動中にモータユニットの回転出力をコントローラに通信するように動作可能であり、作動アルゴリズムは、予想長手方向変位とモータユニットの第1の回転量との間の第1の相関関係を含み、差異値に基づいて作動アルゴリズムを調整することは、実際の長手方向変位とモータユニットの第2の回転量との間の第2の相関関係を定義することを含む、実施例1又は2に記載の方法。
【実施例4】
【0112】
動力付き外科用ステープラは、コントローラと通信するセンサを更に含む、実施例1~3のいずれかに記載の方法。
【実施例5】
【0113】
センサは、可動部材に動作可能に結合された位置センサを含み、方法は、コントローラによって、位置センサによって提供された信号に基づいて実際の長手方向変位を決定することを更に含む、実施例4に記載の方法。
【実施例6】
【0114】
センサは、モータユニットに動作可能に結合された電流センサを含み、方法は、コントローラによって、モータユニットによって引き出された電流の増加を示す、電流センサによって提供される信号に基づいて、可動部材が第2の所定の位置に到達したと判定することを更に含む、実施例4又は5に記載の方法。
【実施例7】
【0115】
センサは、可動部材に動作可能に結合された力センサを含み、方法は、コントローラによって、可動部材に及ぼされる長手方向力の増加を示す、力センサによって提供される信号に基づいて、可動部材が第2の所定の位置に到達したと判定することを更に含む、実施例4~6のいずれかに記載の方法。
【実施例8】
【0116】
センサは、電流センサ又は力センサの少なくとも一方を含み、方法は、コントローラによって、センサによって提供される信号に基づいて可動部材の作動速度を調整することを更に含み、信号は、モータユニットによって引き出された電流又は可動部材に及ぼされた長手方向力の少なくとも一方を示す、実施例4~7のいずれかに記載の方法。
【実施例9】
【0117】
ステープル留めアセンブリは、組織を受け入れるための開放状態と、組織をクランプするための閉鎖状態との間で作動可能であり、閉鎖状態において、ステープル留めアセンブリは、組織が中に位置付けられる間隙を画定し、方法は、(a)コントローラによって、間隙の標的サイズに対応するユーザ入力を受信することと、(b)ユーザ入力に基づいて、コントローラによって可動部材の作動速度を制御することと、を更に含む、実施例1~8のいずれかに記載の方法。
【実施例10】
【0118】
ステープル留めアセンブリは、(a)ステープル留めアセンブリによって組織をクランプするように作動可能な閉鎖部材と、(b)クランプされた組織の中へとステープルを打ち込むように作動可能なステープルドライバ部材と、(c)クランプされた組織を切断するように作動可能なナイフ部材と、を含み、閉鎖部材と、ステープルドライバ部材と、ナイフ部材は、モータユニットに動作可能に結合され、モータユニットによって互いに独立して作動可能であり、可動部材は、閉鎖部材、ステープルドライバ部材、又はナイフ部材のうちの少なくとも1つを含む、実施例1~9のいずれかに記載の方法。
【実施例11】
【0119】
可動部材は閉鎖部材を含み、閉鎖部材の第1の所定の位置は、ステープル留めアセンブリの開放状態に対応し、閉鎖部材の第2の所定の位置は、ステープル留めアセンブリの少なくとも部分閉鎖状態に対応する、実施例10に記載の方法。
【実施例12】
【0120】
閉鎖部材は、アンビルに解放可能に結合するように構成されたトロカールを含み、ナイフ部材は円筒状ナイフを含む、実施例11に記載の方法。
【実施例13】
【0121】
(a)第1のユーザ入力に応答して、コントローラによって、調整された作動アルゴリズムを実行して、閉鎖部材を作動させて組織をクランプするための閉鎖状態へとステープル留めアセンブリを移行させることと、(b)第1のユーザ入力の後に第2のユーザ入力に応答して、(i)モータユニットによってステープルドライバ部材を作動させて、クランプされた組織の中へとステープルを打ち込むことと、(ii)モータユニットによってナイフ部材を作動させて、クランプされた組織を切断することと、を更に含む、実施例11又は12に記載の方法。
【実施例14】
【0122】
(a)ステープルドライバ部材の作動を開始した後に、ステープルドライバ部材が所定の長手方向位置に到達したと判定することと、(b)判定に応答して、モータユニットによってナイフ部材の作動を開始して、クランプされた組織を切断することと、を含む、実施例13に記載の方法。
【実施例15】
【0123】
コントローラは、モータユニットを起動してナイフ部材を作動させるためのナイフ部材作動アルゴリズムを記憶及び実行するように構成されており、方法は、(a)ナイフ部材を作動させる前に、差異値に基づいて、コントローラによってナイフ部材作動アルゴリズムを調整することと、(b)調整されたナイフ部材作動アルゴリズムをコントローラによって実行して、モータユニットによってナイフ部材を作動させることと、を更に含む、実施例13又は14に記載の方法。
【実施例16】
【0124】
モータユニットと、モータユニットと通信するコントローラと、モータユニットに動作可能に結合され、かつ組織をクランプ、ステープル留め、及び切断するように動作可能なステープル留めアセンブリと、を有する動力付き外科用ステープラを動作させる方法であって、ステープル留めアセンブリは、開放状態と、組織をクランプするための閉鎖状態との間でステープル留めアセンブリを移行させるように作動可能な閉鎖部材を含み、方法は、(a)コントローラによって、閉鎖部材が第1の所定の位置にあると判定することと、(b)コントローラによって閉鎖部材作動アルゴリズムを実行して、モータユニットを起動して閉鎖部材を第1の所定の位置から第2の所定の位置に向かって長手方向に作動させることと、(c)コントローラによって、閉鎖部材が第2の所定の位置に到達したと判定することと、(d)コントローラによって、第1の所定の位置と第2の所定の位置との間における閉鎖部材の実際の長手方向変位を観察することと、(e)コントローラによって、実際の長手方向変位と、コントローラによって記憶された予想長手方向変位と、を比較し、実際の長手方向変位が、予想長手方向変位からある差異値だけ異なっていると判定することと、(f)差異値に基づいて、コントローラによって閉鎖部材作動アルゴリズムを調整することと、を含む、方法。
【実施例17】
【0125】
閉鎖部材は、アンビルに解放可能に結合するように構成されたトロカールを含む、実施例16に記載の方法。
【実施例18】
【0126】
モータユニット及びコントローラに動作可能に結合された電流センサを更に含み、電流センサは、モータユニットによって引き出された電流を示す信号をコントローラに送信するように構成されており、方法は、(a)コントローラによって、電流センサによって提供された信号に基づいて閉鎖部材が第2の所定の位置に到達したと判定すること、又は(b)コントローラによって、電流センサによって提供された信号に基づいて閉鎖部材の作動速度を調整すること、の少なくとも1つを更に含む、実施例16又は17に記載の方法。
【実施例19】
【0127】
モータユニットと、モータユニットと通信するコントローラと、モータユニットと動作可能に結合され、かつ第1の可動部材と第2の可動部材とを有するステープル留めアセンブリと、を有する動力付き外科用ステープラを動作させる方法であって、コントローラは、モータユニットを起動して、第1の可動部材を作動させて組織をクランプすること又はステープル留めすることの少なくとも一方を行うための第1の作動アルゴリズムを記憶及び実行するように構成されており、コントローラは更に、モータユニットを起動して、第2の可動部材を作動させて組織を切断するための第2の作動アルゴリズムを記憶及び実行するように構成されており、方法は、(a)コントローラによって、第1の可動部材が第1の所定の位置にあると判定することと、(b)コントローラによって第1の作動アルゴリズムを実行して、モータユニットを起動して第1の可動部材を第1の所定の位置から第2の所定の位置に向かって作動させることと、(c)コントローラによって、第1の可動部材が第2の所定の位置に到達したと判定することと、(d)コントローラによって、第1の所定の位置と第2の所定の位置との間における第1の可動部材の実際の変位を観察することと、(e)コントローラによって、実際の変位と、コントローラによって記憶された予想変位と、を比較し、実際の変位が、予想変位からある差異値だけ異なっていると判定することと、(f)差異値に基づいて、コントローラによって第2の作動アルゴリズムを調整することと、(g)コントローラによって、調整された第2の作動アルゴリズムを実行して、モータユニットを起動して第2の可動部材を作動させて組織を切断することと、を含む、方法。
【実施例20】
【0128】
第1の可動部材は閉鎖部材を含み、第1の可動部材を第1の所定の位置から第2の所定の位置へと作動させることは、閉鎖部材を作動させて、ステープル留めアセンブリを閉鎖状態に向かって移行させることを含む、実施例19に記載の方法。
【0129】
VII.その他
本明細書で述べる教示、表現、実施形態、実施例などのうちいずれか1つ以上は、本明細書で述べる他の教示、表現、実施形態、実施例などのうちいずれか1つ以上と組み合わせることができることもまた理解されたい。したがって、上記の教示、表現、実施形態、実施例などは、互いに対して単独で考慮されるべきではない。本明細書の教示を組み合わせることができる種々の好適な方法が、本明細書の教示を考慮することにより当業者には容易に明らかとなるであろう。このような修正例及び変形例は、特許請求の範囲に含まれることが意図される。
【0130】
更に、本明細書の教示のうちの任意の1つ以上は、本願と同日に出願された米国特許出願第[代理人整理番号END9129USNP1]号、発明の名称「Method for Controlling Cutting Member Actuation for Powered Surgical Stapler」、本願と同日に出願された米国特許出願第[代理人整理番号END9130USNP1]号、発明の名称「Method for Controlling End Effector Closure for Powered Surgical Stapler」、及び、本願と同日に出願された米国特許出願第[代理人整理番号END9142USNP1]号、発明の名称「Anvil Retention and Release Features for Powered Circular Surgical Stapler」に開示された教示のうちの任意の1つ以上と組み合わされ得る。これらの米国特許出願のそれぞれの開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0131】
本明細書に参照により組み込まれると言及されるあらゆる特許、刊行物、又は他の開示内容の全部又は一部は、組み込まれた内容が本開示に記載されている既存の定義、見解、又は他の開示内容と矛盾しない範囲でのみ、本明細書に組み込まれることを理解されたい。したがって、必要な範囲で、本明細書に明示的に記載されている開示内容は、参照により本明細書に組み込まれたあらゆる矛盾する内容に優先するものとする。参照により本明細書に組み込まれると言及されているが、本明細書に記載されている既存の定義、見解、又は他の開示内容と矛盾する任意の内容又はその一部は、その組み込まれた内容と既存の開示内容との間に矛盾が生じない範囲においてのみ組み込まれる。
【0132】
上記の装置の変形形態は、医療専門家によって行われる従来の医療処置及び手術に適用するだけでなく、ロボット支援医療処置及び手術にも適用することができる。ほんの一例として、本明細書の様々な教示は、Intuitive Surgical,Inc.(Sunnyvale,California)によるDAVINCI(商標)システムなどのロボット外科用システムに容易に組み込むことができる。
【0133】
上述の変形形態は、1回の使用後に廃棄するように設計することができ、又はそれらは、複数回使用するように設計することができる。変形形態は、いずれか又は両方の場合においても、少なくとも1回の使用後に再利用のために再調整することができる。再調整は、装置の分解工程、それに続く特定の部品の洗浄又は交換工程、及びその後の再組立工程の任意の組み合わせを含み得る。特に、装置のいくつかの変形形態は分解することができ、また、装置の任意の数の特定の部分又は部品を、任意の組み合わせで選択的に交換又は除去することができる。特定の部品の洗浄及び/又は交換の際、装置のいくつかの変形形態を、再調整施設において、又は処置の直前にユーザによって、その後の使用のために再組み立てすることができる。当業者であれば、装置の再調整において、分解、洗浄/交換、及び再組立のための様々な技術を利用することができることを理解するであろう。かかる技術の使用、及び結果として得られる再調整された装置は、全て本出願の範囲内にある。
【0134】
単に例として、本明細書に記載される変形形態は、処置の前及び/又は後に滅菌されてもよい。ある滅菌技術では、デバイスを、プラスチック製又はTYVEK製バックのような密閉された容器に入れる。次に、容器及びデバイスを、ガンマ線、X線、又は高エネルギー電子線など、容器を透過することができる放射線場に配置してもよい。放射線は、デバイス上及び容器内の細菌を死滅させることができる。次に、滅菌されたデバイスを、後の使用のために、滅菌容器内に保管してもよい。装置はまた、ベータ線若しくはガンマ線、エチレンオキシド、又は蒸気を含むがこれらに限定されない、当該技術分野で周知の任意の他の技術を用いて滅菌することができる。
【0135】
本発明の様々な実施形態を示し記載したが、当業者による適切な修正により、本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書に記載の方法及びシステムの更なる適合化を実現することができる。そのような可能な修正のいくつかが言及されており、他のものは当業者には明らかであろう。例えば、上記の実施例、実施形態、幾何学的形状、材料、寸法、比率、工程などは例示的なものであり、必須のものではない。したがって、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲の観点から考慮されるべきであり、本明細書及び図面に示され記載された構造及び動作の詳細に限定されないことが理解される。
【0136】
〔実施の態様〕
(1) モータユニットと、前記モータユニットと通信するコントローラと、前記モータユニットと動作可能に結合され、かつ複数の可動部材を有するステープル留めアセンブリと、を有する動力付き外科用ステープラを動作させる方法であって、前記可動部材は、組織をクランプ、ステープル留め、及び切断するために、前記モータユニットによって長手方向に作動可能であり、前記方法は、
(a)前記コントローラによって、前記ステープル留めアセンブリの可動部材が第1の所定の位置にあると判定することと、
(b)前記コントローラによって作動アルゴリズムを実行して、前記モータユニットを起動して前記可動部材を前記第1の所定の位置から第2の所定の位置に向かって長手方向に作動させることと、
(c)前記コントローラによって、前記可動部材が前記第2の所定の位置に到達したと判定することと、
(d)前記コントローラによって、前記第1の所定の位置と前記第2の所定の位置との間における前記可動部材の実際の長手方向変位を観察することと、
(e)前記コントローラによって、前記実際の長手方向変位と、前記コントローラによって記憶された予想長手方向変位と、を比較し、前記実際の長手方向変位が、前記予想長手方向変位からある差異値だけ異なっていると判定することと、
(f)前記差異値に基づいて、前記コントローラによって前記作動アルゴリズムを調整することと、を含む、方法。
(2) 前記コントローラによって前記調整された作動アルゴリズムを実行して、前記モータユニットを起動して前記可動部材を長手方向に更に作動させることを更に含む、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記動力付き外科用ステープラは、前記モータユニット及び前記コントローラに動作可能に結合されたエンコーダを更に備え、前記エンコーダは、前記可動部材の作動中に前記モータユニットの回転出力を前記コントローラに通信するように動作可能であり、前記作動アルゴリズムは、前記予想長手方向変位と前記モータユニットの第1の回転量との間の第1の相関関係を含み、前記差異値に基づいて前記作動アルゴリズムを調整することは、前記実際の長手方向変位と前記モータユニットの第2の回転量との間の第2の相関関係を定義することを含む、実施態様1に記載の方法。
(4) 前記動力付き外科用ステープラは、前記コントローラと通信するセンサを更に含む、実施態様1に記載の方法。
(5) 前記センサは、前記可動部材に動作可能に結合された位置センサを含み、前記方法は、前記コントローラによって、前記位置センサによって提供された信号に基づいて前記実際の長手方向変位を決定することを更に含む、実施態様4に記載の方法。
【0137】
(6) 前記センサは、前記モータユニットに動作可能に結合された電流センサを含み、前記方法は、前記コントローラによって、前記モータユニットによって引き出された電流の増加を示す、前記電流センサによって提供される信号に基づいて、前記可動部材が前記第2の所定の位置に到達したと判定することを更に含む、実施態様4に記載の方法。
(7) 前記センサは、前記可動部材に動作可能に結合された力センサを含み、前記方法は、前記コントローラによって、前記可動部材に及ぼされる長手方向力の増加を示す、前記力センサによって提供される信号に基づいて、前記可動部材が前記第2の所定の位置に到達したと判定することを更に含む、実施態様4に記載の方法。
(8) 前記センサは、電流センサ又は力センサの少なくとも一方を含み、前記方法は、前記コントローラによって、前記センサによって提供される信号に基づいて前記可動部材の作動速度を調整することを更に含み、前記信号は、前記モータユニットによって引き出された電流又は前記可動部材に及ぼされた長手方向力の少なくとも一方を示す、実施態様4に記載の方法。
(9) 前記ステープル留めアセンブリは、組織を受け入れるための開放状態と、前記組織をクランプするための閉鎖状態との間で作動可能であり、前記閉鎖状態において、前記ステープル留めアセンブリは、前記組織が中に位置付けられる間隙を画定し、前記方法は、
(a)前記コントローラによって、前記間隙の標的サイズに対応するユーザ入力を受信することと、
(b)前記ユーザ入力に基づいて、前記コントローラによって前記可動部材の作動速度を制御することと、を更に含む、実施態様1に記載の方法。
(10) 前記ステープル留めアセンブリは、
(a)前記ステープル留めアセンブリによって組織をクランプするように作動可能な閉鎖部材と、
(b)前記クランプされた組織の中へとステープルを打ち込むように作動可能なステープルドライバ部材と、
(c)前記クランプされた組織を切断するように作動可能なナイフ部材と、を含み、
前記閉鎖部材と、前記ステープルドライバ部材と、前記ナイフ部材は、前記モータユニットに動作可能に結合され、前記モータユニットによって互いに独立して作動可能であり、
前記可動部材は、前記閉鎖部材、前記ステープルドライバ部材、又は前記ナイフ部材のうちの少なくとも1つを含む、実施態様1に記載の方法。
【0138】
(11) 前記可動部材は前記閉鎖部材を含み、前記閉鎖部材の前記第1の所定の位置は、前記ステープル留めアセンブリの開放状態に対応し、前記閉鎖部材の前記第2の所定の位置は、前記ステープル留めアセンブリの少なくとも部分閉鎖状態に対応する、実施態様10に記載の方法。
(12) 前記閉鎖部材は、アンビルに解放可能に結合するように構成されたトロカールを含み、前記ナイフ部材は円筒状ナイフを含む、実施態様11に記載の方法。
(13) (a)第1のユーザ入力に応答して、前記コントローラによって、前記調整された作動アルゴリズムを実行して、前記閉鎖部材を作動させて組織をクランプするための閉鎖状態へと前記ステープル留めアセンブリを移行させることと、
(b)前記第1のユーザ入力の後に第2のユーザ入力に応答して、
(i)前記モータユニットによって前記ステープルドライバ部材を作動させて、前記クランプされた組織の中へとステープルを打ち込むことと、
(ii)前記モータユニットによって前記ナイフ部材を作動させて、前記クランプされた組織を切断することと、を更に含む、実施態様11に記載の方法。
(14) (a)前記ステープルドライバ部材の作動を開始した後に、前記ステープルドライバ部材が所定の長手方向位置に到達したと判定することと、
(b)前記判定に応答して、前記モータユニットによって前記ナイフ部材の作動を開始して、前記クランプされた組織を切断することと、を更に含む、実施態様13に記載の方法。
(15) 前記コントローラは、前記モータユニットを起動して前記ナイフ部材を作動させるためのナイフ部材作動アルゴリズムを記憶及び実行するように構成されており、前記方法は、
(a)前記ナイフ部材を作動させる前に、前記差異値に基づいて、前記コントローラによって前記ナイフ部材作動アルゴリズムを調整することと、
(b)前記調整されたナイフ部材作動アルゴリズムを前記コントローラによって実行して、前記モータユニットによって前記ナイフ部材を作動させることと、を更に含む、実施態様13に記載の方法。
【0139】
(16) モータユニットと、前記モータユニットと通信するコントローラと、前記モータユニットに動作可能に結合され、かつ組織をクランプ、ステープル留め、及び切断するように動作可能なステープル留めアセンブリと、を有する動力付き外科用ステープラを動作させる方法であって、前記ステープル留めアセンブリは、開放状態と、組織をクランプするための閉鎖状態との間で前記ステープル留めアセンブリを移行させるように作動可能な閉鎖部材を含み、前記方法は、
(a)前記コントローラによって、前記閉鎖部材が第1の所定の位置にあると判定することと、
(b)前記コントローラによって閉鎖部材作動アルゴリズムを実行して、前記モータユニットを起動して前記閉鎖部材を前記第1の所定の位置から第2の所定の位置に向かって長手方向に作動させることと、
(c)前記コントローラによって、前記閉鎖部材が前記第2の所定の位置に到達したと判定することと、
(d)前記コントローラによって、前記第1の所定の位置と前記第2の所定の位置との間における前記閉鎖部材の実際の長手方向変位を観察することと、
(e)前記コントローラによって、前記実際の長手方向変位と、前記コントローラによって記憶された予想長手方向変位と、を比較し、前記実際の長手方向変位が、前記予想長手方向変位からある差異値だけ異なっていると判定することと、
(f)前記差異値に基づいて、前記コントローラによって前記閉鎖部材作動アルゴリズムを調整することと、を含む、方法。
(17) 前記閉鎖部材は、アンビルに解放可能に結合するように構成されたトロカールを含む、実施態様16に記載の方法。
(18) 前記モータユニット及び前記コントローラに動作可能に結合された電流センサを更に含み、前記電流センサは、前記モータユニットによって引き出された電流を示す信号を前記コントローラに送信するように構成されており、前記方法は、
(a)前記コントローラによって、前記電流センサによって提供された前記信号に基づいて前記閉鎖部材が前記第2の所定の位置に到達したと判定すること、又は
(b)前記コントローラによって、前記電流センサによって提供された前記信号に基づいて前記閉鎖部材の作動速度を調整すること、のうちの少なくとも1つを更に含む、実施態様16に記載の方法。
(19) モータユニットと、前記モータユニットと通信するコントローラと、前記モータユニットと動作可能に結合され、かつ第1の可動部材と第2の可動部材とを有するステープル留めアセンブリと、を有する動力付き外科用ステープラを動作させる方法であって、前記コントローラは、前記モータユニットを起動して、前記第1の可動部材を作動させて組織をクランプすること又はステープル留めすることの少なくとも一方を行うための第1の作動アルゴリズムを記憶及び実行するように構成されており、前記コントローラは更に、前記モータユニットを起動して、前記第2の可動部材を作動させて前記組織を切断するための第2の作動アルゴリズムを記憶及び実行するように構成されており、前記方法は、
(a)前記コントローラによって、前記第1の可動部材が第1の所定の位置にあると判定することと、
(b)前記コントローラによって前記第1の作動アルゴリズムを実行して、前記モータユニットを起動して前記第1の可動部材を前記第1の所定の位置から第2の所定の位置に向かって作動させることと、
(c)前記コントローラによって、前記第1の可動部材が前記第2の所定の位置に到達したと判定することと、
(d)前記コントローラによって、前記第1の所定の位置と前記第2の所定の位置との間における前記第1の可動部材の実際の変位を観察することと、
(e)前記コントローラによって、前記実際の変位と、前記コントローラによって記憶された予想変位と、を比較し、前記実際の変位が、前記予想変位からある差異値だけ異なっていると判定することと、
(f)前記差異値に基づいて、前記コントローラによって前記第2の作動アルゴリズムを調整することと、
(g)前記コントローラによって、前記調整された第2の作動アルゴリズムを実行して、前記モータユニットを起動して前記第2の可動部材を作動させて組織を切断することと、を含む、方法。
(20) 前記第1の可動部材は閉鎖部材を含み、前記第1の可動部材を前記第1の所定の位置から前記第2の所定の位置へと作動させることは、前記閉鎖部材を作動させて、前記ステープル留めアセンブリを閉鎖状態に向かって移行させることを含む、実施態様19に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図8
図9
図10
図11
図12
図13A-13C】
図14
図15
図16-17B】
図18-19C】
図20
図21