(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】プニカ・グラナツム抽出物及びその美容的使用
(51)【国際特許分類】
A61K 8/60 20060101AFI20241007BHJP
A61K 8/9789 20170101ALI20241007BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20241007BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20241007BHJP
【FI】
A61K8/60
A61K8/9789
A61K8/49
A61Q19/00
(21)【出願番号】P 2022519745
(86)(22)【出願日】2020-09-30
(86)【国際出願番号】 EP2020077391
(87)【国際公開番号】W WO2021064034
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-03-29
(31)【優先権主張番号】201921039821
(32)【優先日】2019-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(73)【特許権者】
【識別番号】391023932
【氏名又は名称】ロレアル
【氏名又は名称原語表記】L’OREAL
【住所又は居所原語表記】14 Rue Royale,75008 PARIS,France
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】スティーヴ・パンナカル
(72)【発明者】
【氏名】アルン・ドゥライサミー
【審査官】▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106666739(CN,A)
【文献】仏国特許出願公開第03031901(FR,A1)
【文献】特表2014-501764(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03031901(EP,A1)
【文献】欧州特許出願公開第01967078(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
A61K 36/00
A23L 33/00
CAplus/BIOSIS/MEDLINE/KOSMET(STN)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プニカ・グラナツム(Punica granatum)の抽出物であって、
i.
前記抽出物の全
乾燥質量の少なくとも10質量%のプニカラギン、及び
ii.
前記抽出物の全
乾燥質量の少なくとも10質量%のエラグ酸
を含み、
[エラグ酸/プニカラギン]の質量比が、0.5~2の範囲にあ
り、
前記プニカ・グラナツムの抽出物が、少なくとも以下のステップ:
i. プニカ・グラナツムの乾燥果皮を提供するステップ、
ii. 前記乾燥果皮から、少なくともプニカラギン及びエラグ酸を、度数が少なくとも99.5%であるアルコールを用いて、37℃~45℃の範囲の温度で抽出するステップ、
iii. 濾過を行い、前記ステップii.を少なくとも更に2回繰り返すステップ、並びに
iv. 任意選択的に、前記ステップii.の終了時に得られた抽出物を35℃~40℃の範囲の温度で真空下に乾燥させるステップ
を含む方法によって調製される、
抽出物。
【請求項2】
前記
プニカ・グラナツムの抽出物が、
i.
前記抽出物の全
乾燥質量の10質量%~15質量%のプニカラギン、及び
ii.
前記抽出物の全
乾燥質量の10質量%~15質量%のエラグ酸
を含む、請求項1に記載の抽出物。
【請求項3】
前記
プニカ・グラナツムの抽出物が、
前記抽出物の全
乾燥質量の1質量%~5質量%のプニカリンを更に含む、請求項1又は2に記載の抽出物。
【請求項4】
[エラグ酸/プニカラギン]の質量比が、0.6~1.6の範囲にある、請求項1~3のいずれか一項に記載の抽出物。
【請求項5】
前記
プニカ・グラナツムの抽出物が、エタノール性抽出物又は乾燥抽出物である、請求項1~4のいずれか一項に記載の抽出物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の抽出物及び少なくとも1種の水混和性有機溶媒を含む調製物。
【請求項7】
前記少なくとも1種の水混和性有機溶媒が、グリセリン、エタノール、ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、エトキシジグリコール、及びこれらの混合物から選択される、請求項6に記載の調製物。
【請求項8】
[溶媒/乾燥抽出物]の質量比が、95:5~99.9999:0.0001の範囲にある、請求項6又は7に記載の調製物。
【請求項9】
前記
プニカ・グラナツムの抽出物が
、前記調製物の全質量の
乾燥質量による0.000
1%~
5%を占め、前記少なくとも1種の溶媒が、前記調製物の全質量の95質量%~99.9999質量%を占める、請求項6~8のいずれか一項に記載の調製物。
【請求項10】
生理学的に許容される媒体中に、請求項1~5のいずれか一項に記載の抽出物又は請求項6~9のいずれか一項に記載の調製物を含む、組成物。
【請求項11】
前記組成物が、シリコーン脂、非シリコーン脂肪物質、8~32個の炭素原子を有する脂肪酸、エステル及び合成エーテル、鉱物又は合成由来の線状又は分枝状炭化水素、8~26個の炭素原子を有する脂肪アルコール、若干の水、C2~C6アルコール、グリコール、ケトン、増粘剤、乳化剤、界面活性剤、ゲル化剤、化粧活性成分、香料、充填剤、染料、保湿剤、ビタミン類、ポリマーから選択される少なくとも1種の成分を更に含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記
プニカ・グラナツムの抽出物が
、前記組成物の全質量の
乾燥質量による0.000
1%~
5%を占める、請求項10又は11に記載の組成物。
【請求項13】
前記調製物が、前記組成物の全質量の0.1質量%~60質量%を占める、請求項10又は11に記載の組成物。
【請求項14】
請求項1~5のいずれか一項に記載の抽出物の、抗酸化又は抗ラジカル剤としての美容的使用。
【請求項15】
請求項1~5のいずれか一項に記載の抽出物の、抗老化剤としての美容的使用。
【請求項16】
請求項1~5のいずれか一項に記載の抽出物の、顔色のくすみ及び/又は外観のムラを予防及び/又は軽減するための美容的使用。
【請求項17】
ケラチン物質を化粧的処置するための方法であって、請求項10~13のいずれか一項に記載の組成物を、前記ケラチン物質に適用するステップを含む、方法。
【請求項18】
請求項1~5のいずれか一項に記載のプニカ・グラナツム(Punica granatum)抽出物の調製方法であって、少なくとも次に示すステップ:
i. プニカ・グラナツムの果皮を提供するステップ、
ii. 前記果皮から、少なくともプニカラギン及びエラグ酸を、度数が少なくとも99.5%であるエタノールを用いて、37℃~45℃の範囲の温度で2~5時間抽出するステップ、
iii. 濾過を行い、
前記ステップii.を少なくとも更に2回繰り返すステップ、並びに
iv. 任意選択的に、ステップiii.の終了時に得られた濾液を35℃~40℃の範囲の温度で真空下に乾燥させるステップ
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、美容分野、特に、ザクロ(プニカ・グラナツム、Punica granatum)抽出物及びその調製方法、前記抽出物を含む組成物、並びにその抗酸化又は抗ラジカル剤としての美容的使用に関する。
【背景技術】
【0002】
抗酸化物質は、一般には細胞の老化を誘導する可能性、特にケラチン物質を損傷させる可能性のある連鎖反応を引き起こすフリーラジカル(O-
2、HO°など)に対抗することを目的として、化粧品中に使用されている。
【0003】
つまり抗酸化物質の役目は、フリーラジカルを捕獲し、それらをヒトのケラチン物質にとって無害な物質に変換することにある。実際、抗酸化物質は、代謝に伴って絶えず発生する活性酸素を中和している。こうした活性酸素種(ROS)は、生物学的機構を(特に、タンパク質又は脂質レベルで)破壊し、酸化ストレスを誘発する。このことが今度は、特にシワの出現によって現れる組織の老化の進行及び加速に寄与する。
【0004】
活性酸素種の形成を促進し得る外的要因としては、太陽光線を挙げることができる。
【0005】
つまり抗酸化物質は、抗老化、酸化ストレス、特に日光曝露に起因する外的ストレスからの保護、又は色素沈着防止(メラニンは酸化過程によって合成される)など、様々な美容領域において使用することができる。
【0006】
このように、活性酸素種の生成は、タンパク質又は脂質の損傷を引き起こし、ケラチン物質、その中でも特に皮膚及び/又は付属器の細胞老化の加速に特に寄与する。
【0007】
特に酸化ストレスの作用によって、細胞呼吸に悪影響が及ぼされ、その結果としてとりわけ皮膚の老化が加速し、それに伴い、特に、顔色がくすみ及び/又は曇り、顔色にムラが生じ、皮膚の輝き及び/又は透明感が失われ、シワ及び小ジワが早期に形成され、皮膚の軟かさ、しなやかさ、及び弾力性が失われ、色素斑、特に日光黒子が出現する。
【0008】
また、酸化ストレスの影響は、毛髪の活力の低下及び/又はその外観の悪化、特に、艶のない外観にも現れる。
【0009】
抗酸化物質は、トコフェロール(ビタミンE)又はその誘導体、ビタミンC又はその誘導体、カロテノイド、ユビキノン、緑茶など、既に多くのものが存在する。
【0010】
抗酸化活性剤としてのプニカ・グラナツム(Punica granatum)抽出物も先行技術から知られており、特に、(特許文献1)には、エタノール70%w/w/水30%w/wの混合物を用いて得られる、1.93%以下のエラグ酸を含むプニカ・グラナツム(Punica granatum)抽出物が記載されており、そのような抽出物の[エラグ酸/プニカラギンA及びB]の質量比は0.2である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、先行技術のものよりも効果が高く、特にヒトのケラチン物質(皮膚及び/又はその付属器)を酸化ストレスの有害な又は魅力のない影響から保護することができる代替的な抗酸化物質が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
驚くべきことに、本出願人は、プニカラギンを乾燥抽出物の全質量の少なくとも10質量%と、エラグ酸を乾燥抽出物の全質量の少なくとも10質量%と、を含み、[エラグ酸/プニカラギン]の質量比が0.5~2の範囲にあるプニカ・グラナツム(Punica granatum)抽出物が、皮膚の脂質をUVAによる脂質過酸化から保護することによる、良好な抗酸化性、特にフリーラジカル捕捉性を示すことを実証した。
【0014】
更に、本発明による抽出物は、皮膚老化の徴候の予防及び/又は処置に有用である。
【0015】
更に、本発明による抽出物は、顔色のくすみ及び/又は外観のムラを予防及び/又は軽減するのに有用である。
【0016】
本発明による抽出物又は後述する調製物の他の利点は、特に40℃で2カ月間に亘る良好な安定性及び/又はこの抽出物の、特に25℃における化粧用組成物への易溶解性にある。
【0017】
したがって、本発明の一主題は、プニカ・グラナツム(Punica granatum)抽出物であって:
i.プニカラギンを、乾燥抽出物の全質量の少なくとも10質量%と、
ii.エラグ酸を、乾燥抽出物の全質量の少なくとも10質量%と、
を含み、[エラグ酸/プニカラギン]の質量比は、0.5~2の範囲にある、抽出物にある。
【0018】
本発明の他の主題は、本発明によるプニカ・グラナツム(Punica granatum)抽出物の調製方法であって、少なくとも以下に示すステップ:
i.プニカ・グラナツム(Punica granatum)の果皮を提供するステップ、
ii.前記果皮から、少なくともプニカラギン及びエラグ酸を、度数(degree)が少なくとも99.5%であるエタノールを用いて、37℃~45℃の範囲の温度で2~5時間抽出するステップ、
iii.濾過を行い、ステップii.を少なくとも更に2回繰り返すステップ、及び
iv.任意選択的に、ステップiii.の終了時に得られた濾液を35℃~40℃の範囲の温度で真空下に乾燥させるステップ、を含む、方法にある。
【0019】
本発明の他の主題は、本発明による抽出物と、好ましくは、2~8個の炭素原子、特に2~6個の炭素原子を含む低級アルコールから選択される少なくとも1種の水混和性有機溶媒と、を含む調製物にある。
【0020】
本発明はまた、本発明による抽出物又は調製物を生理学的に許容可能な媒体中に含む組成物、特に、化粧用組成物にも関する。
【0021】
本発明の他の主題は、ケラチン物質、特に皮膚の美容的処置のための方法であって、本発明によるプニカ・グラナツム(Punica granatum)の抽出物又は本発明による調製物を含む組成物を、ケラチン物質、特に皮膚に適用するステップを含む、方法にある。
【0022】
本発明はまた、本発明による抽出物の、生理学的に許容可能な媒体を含む組成物中における美容的使用であって:
- 抗酸化又は抗ラジカル剤として、
- 皮膚老化の徴候を予防及び/又は処置するための剤として、
- 顔色のくすみ及び/又は外観のムラを予防及び/又は軽減するため、の美容的使用にも関する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
定義
「ケラチン物質」という用語は、皮膚、毛髪、睫毛、及び爪を意味する。
【0024】
「皮膚」という用語は、頭皮、粘膜及び半粘膜(semi-mucous membrane)並びにその付属器を含む全身の皮膚を指す。具体的には、本発明においては、胸、首及び顔、手、脇の下の皮膚、特に顔の皮膚が考慮されている。
【0025】
「付属器」という用語は、頭髪、体毛、睫毛、爪、好ましくは頭髪を意味すると理解される。
【0026】
本明細書において使用される「処置すること(treating)」又は「処置(treatment)」という用語は、個人の快適さ又は満足な状態(well-being)を向上させることを目的とする任意の行為を意味する。したがって、この用語は、皮膚の老化の徴候の減弱化、緩和、又は抑制を包含するが、美容的処置に限定される。
【0027】
本発明の目的のための「予防(preventing)」という用語は、ある現象が顕在化するリスクを低下させることを意味する。
【0028】
「抗酸化物質」という用語は、他の化合物の酸化を低減又は防止する化合物を意味する。酸化は、物質から電子を酸化剤に移動させる酸化還元反応の一部である。この反応によりフリーラジカルが生成する可能性がある。抗酸化剤は、特に、抗ラジカル剤であり得る。
【0029】
「フリーラジカル」は、例えば、酸素フリーラジカルのように、その外殻上に1個又は複数個の不対電子を有する化学種である。酸素フリーラジカルは、特に、以下に示すものである:
a.一重項酸素・O-O・、
b.スーパーオキシドラジカルアニオンO2・-、
c.ヒドロキシルラジカルHO・、
d.ヒドロペルオキシルラジカルHO2・、
e.過酸化ラジカル(ROO・)及びアルコキシラジカル(RO・)(Rは炭素系鎖である)。
【0030】
「抗ラジカル物質」とは、生成したフリーラジカルを中和する化合物を意味する。
【0031】
本出願において使用される「酸化ストレス」という用語は、対象における酸素フリーラジカルの増加により引き起こされるあらゆる損傷を包含する。
【0032】
本発明の目的のための「プニカラギン」という用語は、2種のジアステレオ異性体であるプニカラギンA及びBの混合物を意味する。これらはポリフェノール類に属し、特にこれらは、化学構造(I)を有する2,3-(S)-ヘキサヒドロキシジフェノイル-4,6-(S,S)-ガラジル-D-グルコースの異性体から構成される、グルコースがエラグ酸及びガラギン酸に結合することにより形成されている複雑なエラジタンニンであり、モル質量は約1084gmol-1である。
【化1】
【0033】
本発明の目的のための「エラグ酸」という用語は、式(II)のポリフェノールを意味する。
【化2】
【0034】
「プニカリン」という用語は、2種のジアステレオ異性体であるプニカリンA及びBの混合物を意味する。これらはポリフェノール類に属し、特に、化学式(III)を有する、4,6-(S,S)-ガラジル-D-グルコースの名称を有するエラジタンニンである。
【化3】
【0035】
プニカ・グラナツム(Punica granatum)は、ミソハギ科(family Lythraceae)に属する、果実をつける落葉性の潅木又は小高木であり、その高さは5~10m(16~30フィート)になる。棘のある多数の枝に、落葉性の葉が対生又は5若しくは6輪生し、葉は短柄を持ち(short-stemmed)、長楕円状披針形、革質であり、長さは1~10cm(0.4~4インチ)である。枝の先端に目を惹く赤色、白色、又は斑入りの花をつけ、1輪咲き又は5輪以下で房咲きする。ザクロの果実は球形に近いが、基部に王冠状の目立つ萼を有し、外皮(skin、rind)は丈夫で革質であり、黄色地の上に淡い又は濃いピンク色又は深紅色が重なっている。内部は膜状の壁及び白色のスポンジ状組織によって複数の室に分かれており、室の中には、酸味がある風味豊かな多肉質且つ多汁性の果肉で満たされた透明の袋(仮種皮)が詰まっている。この袋1粒ごとに、白色又は赤色の角張った軟らかい又は硬い種子が1個存在する。仮種皮は果実全体の質量の約52%を占める。
【0036】
本発明の目的のためには、プニカ・グラナツム(Punica granatum)の果実、特に果皮がより好ましい。
【0037】
本発明の好ましい実施形態におけるプニカ・グラナツム(Punica granatum)の果実は、インド国ジャンムー・カシミール(Jammu and Kashmir)州ランバン地区(Ramban district)(カンガ村(kanga village))周辺で、9月から12月の期間に、より詳細には北緯32度、東経74度付近で採取されたものである。
【0038】
プニカ・グラナツム(Punica granatum)抽出物
好ましくは、本発明による抽出物は:
i.プニカラギンを、乾燥抽出物の全質量の10質量%~15質量%、好ましくは10.5質量%~15質量%、より好ましくは10.8質量%~14.8質量%、一層好ましくは11.7質量%~14.6質量%と、
ii.エラグ酸を、乾燥抽出物の全質量の10質量%~15質量%、好ましくは10.5質量%~14.5質量%、より好ましくは10.8質量%~14.8質量%、一層好ましくは11.2質量%~14.5質量%と、を含む。
【0039】
本発明による抽出物は、プニカリンを、乾燥抽出物の全質量の1質量%~5質量%、好ましくは2%~4.5%、一層好ましくは3%~4%を更に含むことができる。
【0040】
有利には、[エラグ酸/プニカラギン]の質量比は、0.6~1.6の範囲、より好ましくは0.7~1.3の範囲、一層好ましくは0.7~1.0の範囲にある。
【0041】
第1の好ましい実施形態において、本発明による抽出物は:
i.プニカラギンを、乾燥抽出物の全質量の11.7質量%~14.6質量%と、
ii.エラグ酸を、乾燥抽出物の全質量の11.2質量%~14.5質量%と、を含み、
[エラグ酸/プニカラギン]の質量比は、0.6~1.6の範囲、より好ましくは0.7~1.3の範囲、一層好ましくは0.7~1の範囲にある。
【0042】
第2の実施形態において、本発明による抽出物は:
i.プニカラギンを、乾燥抽出物の全質量の11.7質量%~14.6質量%と、
ii.エラグ酸を、乾燥抽出物の全質量の11.2質量%~14.5質量%と、
iii.プニカリンを、乾燥抽出物の全質量の3%~4質量%と、を含み、
[エラグ酸/プニカラギン]の質量比は、0.6~1.6の範囲、より好ましくは0.7~1.3の範囲、一層好ましくは0.7~1の範囲にある。
【0043】
本発明によるプニカ・グラナツム(Punica granatum)抽出物は、エタノール性抽出物の形態又は乾燥抽出物の形態のいずれかにある。
【0044】
「乾燥抽出物」という用語は、乾燥抽出物の全質量に対し溶媒を7質量%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは乾燥抽出物の全質量に対し溶媒を3質量%以下含むことを意味する。好ましい実施形態において、乾燥抽出物は、溶媒を、乾燥抽出物の全質量に対し1質量%以下含む。他の好ましい実施形態において、乾燥抽出物は溶媒を一切含まない(即ち、0%)。
【0045】
「溶媒」という用語は、水性溶媒、有機溶媒、及びこれらの混合物を意味する。
【0046】
水性溶媒としては、水を挙げることができる。
【0047】
有機溶媒としては、アルコール性溶媒、特に、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、及びこれらの混合物から選択されるC2~C5の1価アルコールを挙げることができる。
【0048】
プニカ・グラナツム(Punica granatum)抽出物の調製方法
本発明の他の主題は、本発明によるプニカ・グラナツム(Punica granatum)抽出物の抽出物の調製方法であって、少なくとも以下に示すステップ:
i.プニカ・グラナツム(Punica granatum)の果皮を提供するステップ、
ii.前記果皮から、少なくともプニカラギン及びエラグ酸を、度数が少なくとも99.5%であるエタノールを用いて、37℃~45℃の範囲の温度で2~5時間抽出するステップ、
iii.濾過を行い、ステップii.を少なくとも更に2回繰り返すステップ、
iv.任意選択的に、ステップiii.の終了時に得られた濾液を35℃~40℃の範囲の温度で真空下に乾燥させるステップ、を含む、方法にある。
【0049】
有利には、ステップiiのエタノールは、水分量が0.5%未満、より好ましくは0.2%未満である。
【0050】
好ましくは、ステップi.において提供されるプニカ・グラナツム(Punica granatum)果皮は、粉末形態にある乾燥果皮であり、特に、プニカラギンを、乾燥果皮粉末の全質量の1質量%~5質量%と、エラグ酸を、乾燥果皮粉末の全質量の1質量%~5質量%とを含み、より好ましくは、プニカラギンを、乾燥果皮粉末の全質量の2質量%~3質量%と、エラグ酸を、乾燥果皮粉末の全質量の1質量%~4質量%と、を含む。
【0051】
好ましい実施形態において、[果皮/無水エタノール]の質量比は1:5である。
【0052】
有利には、抽出ステップii.の温度は40℃~43℃の範囲にあり、より好ましくは42℃である。
【0053】
濾過を行うステップiii.は、当業者によく知られている濾過の従来法に従い、例えば、ブフナー漏斗を用いて行われる。
【0054】
好ましくは、乾燥ステップiv.の温度は37℃~39℃の範囲にあり、より好ましくは38℃である。
【0055】
特定の実施形態において、本発明によるプニカ・グラナツム(Punica granatum)抽出物の抽出物の調製方法は、以下に示すステップ:
v.プニカ・グラナツム(Punica granatum)の果皮を提供するステップ、
vi.前記果皮から少なくともプニカラギン及びエラグ酸を、度数が少なくとも99.5%であるエタノールを用いて37℃~45℃の範囲の温度で2~5時間抽出するステップ、
vii.濾過を行い、ステップii.を少なくとも更に2回繰り返すステップ、
viii.任意選択的に、ステップiiiの終了時に得られた濾液を35℃~40℃の範囲の温度で真空下に乾燥させるステップ、からなる。
【0056】
調製
本発明はまた、本発明による抽出物と、好ましくは、2~8個の炭素原子、特に2~6個の炭素原子を含む低級アルコールから選択される少なくとも1種の水混和性有機溶媒と、を含む調製物にも関する。
【0057】
より好ましくは、前記溶媒は、グリセリン、エタノール、ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、エトキシジグリコール、及びこれらの混合物から選択され、一層好ましくは、ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、エトキシジグリコール、及びこれらの混合物から選択される。
【0058】
より好ましい実施形態において、前記溶媒は、ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、及びこれらの混合物から選択される。
【0059】
有利には、[溶媒/乾燥抽出物]の質量比は、95:5~99.9999:0.0001、好ましくは96:4~99.999:0.001、より好ましくは97:3~99.99:0.01の範囲にある。
【0060】
前記抽出物は、乾燥抽出物が、調製物の全質量の0.0001質量%~5質量%を占めることができ、前記少なくとも1種の溶媒は、調製物の全質量の95質量%~99.9999質量%を占めることができ、好ましくは、前記抽出物は、乾燥抽出物が、調製物の全質量の0.001質量%~4質量%を占めることができ、前記少なくとも1種の溶媒は、調製物の全質量の96質量%~99.999質量%を占めることができ、より好ましくは、前記抽出物は、乾燥抽出物が、調製物の全質量の0.01質量%~3質量%を占めることができ、前記少なくとも1種の溶媒は、調製物の全質量の97質量%~99.99質量%を占めることができる。
【0061】
組成物
本発明はまた、本発明による抽出物又は調製物を生理学的に許容可能な媒体中に含む組成物、特に化粧用組成物にも関する。
【0062】
本発明による抽出物は、前記組成物中に、乾燥抽出物が、組成物の全質量の0.0001質量%~5質量%、好ましくは、乾燥抽出物が、0.001質量%~4質量%、より好ましくは、乾燥抽出物が、0.01質量%~3質量%、一層好ましくは、乾燥抽出物が、組成物の全質量の中に0.5質量%~2.5質量%存在することができる。
【0063】
本発明による調製物は、前記組成物中に、組成物の全質量の0.1質量%~60質量%、好ましくは0.5質量%~50質量%、より好ましくは、組成物の全質量の1質量%~40質量%存在することができる。
【0064】
前記組成物は、生理学的に許容される媒体、特に、皮膚及び頭皮と適合性を有する媒体を含む化粧用組成物とすることができる。
【0065】
特定の一実施形態によれば、化粧用組成物のpHは、4~7.5の間、特に4.5~7の間、その中でも特に4.7~6.5の間にある。
【0066】
組成物の生理学的に許容される媒体は、より具体的には、水と、任意選択的に、例えば、2~8個の炭素原子、特に2~6個の原子炭素を含む低級アルコール、例えば、エタノール、イソプロパノール、プロパノール、ブタノール、6~80個のエチレンオキシド単位を有するポリエチレングリコール、並びにポリオール、例えば、プロピレングリコール、イソプレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン、及びソルビトールから選択される生理学的に許容される水溶性有機溶媒と、を含む。
【0067】
前記水溶性有機溶媒は、組成物の全質量の0.5質量%~25質量%、好ましくは組成物の全質量の1質量%~20質量%、より好ましくは組成物の全質量の1.5質量%~15質量%を占めることができる。
【0068】
好ましい実施形態において、組成物は、上に定義した調製物と、生理学的に許容される媒体、より具体的には、水及び任意選択的な追加の生理学的に許容される水溶性有機溶媒を含み得る生理学的に許容される媒体と、を含む。この種の実施形態において、前記追加の水溶性有機溶媒は、組成物の全質量の0.5質量%~25質量%、好ましくは組成物の全質量の1質量%~20質量%、より好ましくは組成物の全質量の1.5質量%~15質量%を占めることができる。
【0069】
剤形
好ましい実施形態において、本発明による組成物は、局所投与される。
【0070】
担体は、対象とする組成物の種類に応じて多様な性質を有することができる。
【0071】
外用局所投与のために意図されたより具体的な組成物に関しては、これらは、水性、水性-アルコール性、若しくは油性溶液、ローション若しくは美容液タイプの溶液若しくは分散体、脂肪性相を水性相中に分散させるか(O/W)又はその逆(W/O)により得られる乳液タイプの液体若しくは半液体稠度を有するエマルジョン、又はクリームタイプの、軟質、半固体、若しくは固体稠度を有する懸濁物若しくはエマルジョン、水性若しくは無水ゲル、マイクロエマルジョン、マイクロカプセル、微粒子、又はイオン性及び/若しくは非イオン性タイプのベシクル分散体であり得る。
【0072】
これらの組成物は通常の方法に従い調製される。
【0073】
本発明の組成物がエマルジョンである場合、脂肪性相の割合は、組成物の全質量に対し5質量%~80質量%、好ましくは10質量%~50質量%の範囲であり得る。エマルジョンの形態にある組成物中に使用される油、乳化剤、及び共乳化剤は、化粧品及び/又は皮膚科学において慣例通りに使用されるものから選択される。乳化剤及び共乳化剤は、組成物の全質量に対し0.3質量%~30質量%、好ましくは0.5質量%~20質量%の範囲の割合で組成物中に存在し得る。
【0074】
本発明の組成物が油性溶液又はゲルである場合、脂肪性相は、組成物の全質量の90%以上を占め得る。
【0075】
本発明に従い使用される組成物は、スキンケア組成物、特に、顔、手、足、主要な解剖学的ひだ、又は身体を清浄化、保護、処置、又はケアするクリーム(例えば、デイクリーム、ナイトクリーム、メイク落としクリーム、ファンデーションクリーム、又は日焼け止めクリーム)、液状ファンデーション、メイク落とし乳液、保護又はケア用身体用乳液、又は日焼け止め乳液、スキンケアローション、ジェル、又はムース、例えば、クレンジングローションを構成することができる。
【0076】
補助剤
公知の方法において、局所投与を意図した剤形はまた、化粧、医薬、及び/又は皮膚科学分野において一般的な補助剤、例えば、親水性又は親油性ゲル化剤、親水性又は親油性活性剤、乳化剤、防腐剤、本発明の化合物とは異なる追加の抗酸化物質、溶媒、芳香物質、充填剤、UV遮蔽剤、臭気吸収剤、及び着色剤も含み得る。これらの種々の補助剤の量は、対象の分野で慣例通りに使用される、例えば、組成物の全質量の0.01%~20%の量である。これらの補助剤は、その性質に応じて、脂肪性相及び/又は水性相に導入され得る。
【0077】
本組成物はまた、油、例えば、鉱物油、例えば、水添ポリイソブテン及び流動ワセリン、植物油、例えば、シヤ脂の液体画分、ヒマワリ油、及びアンズ核油、動物油、例えば、パーヒドロスクアレン、合成油、特に、ピュアセリンオイル(purcellin oil)、ミリスチン酸イソプロピル、及びパルミチン酸エチルヘキシル、フッ素系油、例えば、パーフルオロポリエーテル、も含み得る。本組成物はまた、不飽和脂肪酸又は脂肪アルコール、ワックス、シリコーン化合物、例えばシリコーン油、樹脂、ガム類を含み得る。
【0078】
先に示したように、本発明による組成物はまた、UVA及び/又はUVB光に対し活性を示すUV遮蔽剤又は光保護剤を、有機又は無機化合物の形態で含むこともでき、後者は、任意選択的に、それらが疎水性になるように被覆されている。
【0079】
好ましい一実施形態において、本発明による組成物は、シリコーン脂、例えば、油、ガム、及びシリコーンワックス、非シリコーン脂肪物質、例えば、植物、鉱物、動物、及び/又は合成由来の油、ペースト、及びワックス、8~32個の炭素原子を有する脂肪酸、エステル及び合成エーテル、特に、式R1COOR2及びR1OR2(式中、R1は、8~29個の炭素原子を含む脂肪酸の残基を表し、R2は、3~30個の炭素原子炭素原子を含む分枝状又は非分枝状炭化水素鎖を表す)で表されるもの、鉱物又は合成由来の線状又は分枝状炭化水素、8~26個の炭素原子を有する脂肪アルコール、若干の水、C2~C6アルコール、プロピレングリコールなどのグリコール、ケトン、増粘剤、乳化剤、界面活性剤、ゲル化剤、化粧活性成分、香料、充填剤、染料、保湿剤、ビタミン類、ポリマーから選択される少なくとも1種の成分を更に含む。
【0080】
美容的方法
本発明の他の主題は、ケラチン物質、特に皮膚の化粧的処置のための方法であって、先に定義したプニカ・グラナツム(Punica granatum)の抽出物又は調製物を、ケラチン物質、特に皮膚に適用するステップを含む、方法にある。
【0081】
特に、この処置方法は、ケラチン物質、特に皮膚に及ぼされる酸化ストレス又はフリーラジカルの影響、特に紫外線の影響を予防及び/又は軽減することを目的とする。
【0082】
本発明はまた、特に酸化ストレスによって惹起される皮膚老化の徴候を予防及び/又は処置することを意図した、皮膚を美容的に処置するための方法に関する。
【0083】
皮膚老化の徴候、特に、酸化ストレスにより惹起されるものの中でも、とりわけ、皮膚の締まり及び/若しくは弾力性及び/若しくは緊張状態及び/若しくはしなやかさの喪失、シワ及び/若しくは小ジワ、特に額及び眉間の表情ジワ、口の周りのシワ及び小ジワの形成、並びに/又は唇の周りの領域、特に唇の上の領域(上唇と鼻との間の領域)の緩み、顔色のくすんだ外観、並びに皮膚の薄っぺらい外観が挙げられる。
【0084】
本発明はまた、特に、酸化ストレス、特に紫外線により惹起される皮膚の色素沈着の予防であって、皮膚老化の徴候が表れている皮膚に、先に定義したプニカ・グラナツム(Punica granatum)の抽出物を含む組成物を適用することから構成される少なくとも1つのステップを含む、予防も目的とする。
【0085】
特に、本発明による方法は、皮膚の色素斑、特に日光黒子の予防及び/若しくは軽減、皮膚の明色化、顔色のくすみ及び/若しくは顔色の曇りの予防、並びに/又は顔色の明るさ及び/若しくは顔色の均一性の向上、皮膚の輝き及び/若しくは透明感の向上、皮膚の軟らかさ、しなやかさ、及び/若しくは弾力性の向上、並びに/又はシワ及び/若しくは小ジワの予防及び/若しくは軽減を目的とする。
【0086】
美容的使用
本発明はまた、本発明によるプニカ・グラナツム(Punica granatum)抽出物の、特に、生理学的に許容される媒体を含む組成物中における抗酸化又は抗ラジカル剤としての美容的使用にも関し、特に前記抽出物は、ケラチン物質、特に皮膚に及ぼされる酸化ストレス又はフリーラジカルの影響を予防及び/又は軽減することを意図している。
【0087】
本発明はまた、本発明によるプニカ・グラナツム(Punica granatum)抽出物の、特に生理学的に許容される媒体を含む組成物中における抗老化剤としての、特に皮膚老化の徴候を予防及び/又は処置するための剤としての、美容的使用にも関する。
【0088】
本発明はまた、本発明によるプニカ・グラナツム(Punica granatum)抽出物の、特に生理学的に許容される媒体を含む組成物中における、顔色のくすみ及び/又は外観のムラを予防及び/又は軽減するための美容的使用にも関する。
【0089】
本明細書全体を通して、別段の定めがない限り、「(1つの)~を含む(comprising a)(containing a)」という表現は、「少なくとも1の~を含む」ことを意味する。
【0090】
本明細書における「少なくとも1つの」という表現は「1つ又は複数の」を意味する。
【0091】
本明細書及び以下の実施例において、別段の定めがない限り、百分率は質量百分率であり、「~の間(between...and...)」及び「~(from...to...)」と書かれた数値の範囲には、指定された上限値及び下限値が包含される。成分は、成形を行う前に、当業者によって容易に決定される順序及び条件で混合される。
【0092】
ここで本発明者らは、本発明を例示する具体的な例を示すが、これらはいかなる点でも限定するものではない。
【0093】
実施例に示す百分率は全て、別段の定めがない限り質量により、温度は周囲温度(20℃)であり、別段の定めがない限り摂氏度で表し、圧力は、別段の定めがない限り大気圧である。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【
図1】本発明によるプニカ・グラナツム(Punica granatum)抽出物の調製方法の概要を示す図である。
【
図2】本発明によるプニカ・グラナツム(Punica granatum)抽出物を用いることによる脂質過酸化の低下を、エラグ酸単独の場合と比較したものである。注釈:各バー(グラフ中)に示した値(単位:%)は、試験に供した原料により達成された長波長UVA曝露に対する保護率(%)である。
【実施例】
【0095】
実施例1:本発明によるプニカ・グラナツム(Punica granatum)抽出物の調製
プニカ・グラナツム(Punica granatum)の乾燥果皮(1kg)を、42℃で5リットルのエタノール(プルーフ:99.5%)と一緒に800rpmで短時間である4時間撹拌することにより抽出した。得られたエタノール性抽出物を、綿布(メッシュサイズ:20ミクロン)を敷いたブフナー漏斗で濾過した。濾過した抽出物を38℃の真空下で蒸発させることにより、褐色の非晶性粉末を得た。上に説明した条件下で抽出を引き続き2回繰り返す。合一した乾燥抽出物は、主としてフェノール性化合物、即ち:エラグ酸及びプニカラギンから構成される。本発明によるプニカ・グラナツム(Punica granatum)抽出物の調製方法の概要を
図1に示す。
【0096】
本発明による抽出物の成分組成を次に示す:
【0097】
【0098】
これらの2種の化合物、即ちエラグ酸及びプニカラギンの比は、使用した異なる有機抽出溶媒、即ち:無水アルコール:99.5%及び精留エタノール:95.0~96.0%、メタノール、酢酸エチル、及び水性アセトンに応じて変化する。これに従い、抽出を異なる有機溶媒で実施した。その結果から、無水アルコール(プルーフ:99.5%)を用いることによって、適切な量及び比率のエラグ酸/プニカラギンを含む抽出物が得られることが示される。
【0099】
【0100】
更に、これらの2種の化合物、即ち、エラグ酸及びプニカラギンの比は、抽出ステップの温度及び乾燥ステップの温度に応じて変化する。したがって、抽出ステップ及び乾燥ステップを異なる温度(℃)で実施した。
【0101】
【0102】
【0103】
実施例2:実施例1で得られた本発明による抽出物の抗酸化活性
a.脂質過酸化試験
実施例1に従い得られた本発明によるプニカ・グラナツム(Punica granatum)抽出物の、UVAにより誘発される脂質過酸化に対する保護能力の評価を行い、純粋なエラグ酸による保護と比較した。
【0104】
正常なヒト繊維芽細胞を本発明によるプニカ・グラナツム(Punica granatum)抽出物0.001%又は純粋なエラグ酸3μMのいずれかで24時間処理した後、20%以下の細胞死を誘発する線量のUVAに曝露した。
【0105】
対照として、正常なヒト繊維芽細胞を、20%以下の細胞死を誘発する線量のUVAに曝露した。
【0106】
曝露から2時間30分後に放出された8-イソプロスタンを評価する。結果を
図2に示す。
【0107】
対照(UV曝露後)の8-イソプロスタン放出量を100%とし、脂質の過酸化に対する保護を0%とすると、本発明によるプニカ・グラナツム(Punica granatum)抽出物で処理することにより、8-イソプロスタンの遊離はより低く58%となり、脂質過酸化に対する保護はより高く42%となる。
【0108】
エラグ酸を用いた場合の8-イソプロスタンの放出は65%であり、脂質の過酸化に対する保護は35%である。
【0109】
したがって、本発明によるプニカ・グラナツム(Punica granatum)抽出物は、エラグ酸単独の場合よりも脂質過酸化に対する保護が優れている。
【0110】
実施例3:本発明による抽出物(99.5%エタノールで抽出)の、発明外抽出物(95%エタノールで抽出)との比較による抗酸化活性評価
本発明による化合物を用いて抗酸化活性を評価するための手法は、公知の方法に従う(J.of Photochemistry and Photobiology B:Biology 57(2000)102-112 TOBI et al.:Glutathione modulates the level of free radicals produced in UVA-irradiated cells)。この手法には、蛍光プローブ、即ち細胞内の総合的酸化ストレスのマーカーである2’-7’-ジクロロフルオレシンジアセテート(DCFH-DA)を使用した。
【0111】
原理
酸化ストレスマーカーとしてのDCFH-DAの使用は、その物理化学的性質に基づいている。これは、細胞膜内で拡散することができる無極性且つ非イオン性の分子である。DCFH-DAが細胞内に入ると、細胞内のエステラーゼによって加水分解され、非蛍光化合物であるDCFH、即ち2,7-ジクロロフルオレシンとなる。活性酸素の存在下においてDCFHは速やかに酸化され、高蛍光性化合物であるDCF、即ち2,7-ジクロロフルオレセインとなる。
【0112】
手順:
実施例1で得られた本発明による抽出物(エタノール99.5%で抽出)及び実施例1で得られた発明外抽出物(エタノール95%で抽出)によるケラチノサイトの処理
コンフルエントになったケラチノサイトを、試験抽出物の存在下に、培地中、37℃、5%CO2で24時間インキュベートする。
【0113】
DCFH-DAの添加
各抽出物で前処理したケラチノサイトを洗浄した後、DCFH-DAの存在下に暗所でインキュベートする。
【0114】
UVA曝露
インキュベート後、DCFH-DA溶液を除去し、次いで細胞を2J/cm2のUVAに曝露する。観察:曝露を行わない対照プレートを室温の暗所に保管する。
【0115】
蛍光の測定
UVAに曝露した直後にDCFの蛍光を蛍光分光分析により評価する(励起:480nm、発光:530nm)。
【0116】
結果
次の表4に、光保護効果に関する結果を、UVAに曝露した対照細胞の蛍光に対する低下率(%)として示す。測定は2個のサンプルについて行い、平均値を求める。
【0117】
【0118】
上に示した結果から、実施例1で99.5%エタノールを用いて得られた抽出物は、実施例1で95%エタノールを用いて得られた抽出物よりもDCFの蛍光阻害が高いことから、UVAにより誘発される酸化ストレスに対する抗酸化活性が優れていることが明らかである。
【0119】
したがって、本発明によるプニカ・グラナツム(Punica granatum)抽出物により惹起される皮膚の光保護活性は、未処理の対照及び発明外の比較抽出物よりも優れている。
【0120】
実施例4:実施例1で得られた本発明による抽出物を含む化粧用組成物
以下を含む(質量%)皮膚用抗老化ジェルを調製する:
カーボポール 4%
実施例1で得られたプニカ・グラナツム(Punica granatum)抽出物 0.5%
水 100%になる量
【0121】
この組成物を顔に適用すると、UVAによって誘発されるストレスから皮膚を保護することができる。