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特許7566898金属アルコキシド触媒を含むシランベースのコーティング組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】金属アルコキシド触媒を含むシランベースのコーティング組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 183/08 20060101AFI20241007BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20241007BHJP
   C09D 7/20 20180101ALI20241007BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20241007BHJP
【FI】
C09D183/08
C09D7/63
C09D7/20
B05D7/24 302Y
B05D7/24 302Z
B05D7/24 303E
B05D7/24 302T
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022528242
(86)(22)【出願日】2020-11-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-26
(86)【国際出願番号】 EP2020080764
(87)【国際公開番号】W WO2021094130
(87)【国際公開日】2021-05-20
【審査請求日】2023-10-31
(31)【優先権主張番号】19209382.1
(32)【優先日】2019-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008981
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーティングス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings GmbH
【住所又は居所原語表記】Glasuritstrasse 1, D-48165 Muenster,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンスベルク,ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ホーマン,カリン
(72)【発明者】
【氏名】ヴェスリンク,エリザベート
【審査官】井上 莉子
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-527867(JP,A)
【文献】特開2017-066181(JP,A)
【文献】特表2016-511774(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0338150(US,A1)
【文献】特表2008-516759(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D
B05D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)1%未満のイソシアネート含有量を有し、
一般式(I)の少なくとも1つのシラン基と、
-NRX-SiR (OR3-a (I)
任意に一般式(II)の少なくとも1つのシラン基と、
-N[X-SiR (OR3-a[X’-SiR (OR3-b (II)
を含む、少なくとも1つのシランベースの化合物R1と、
式中、
X、X’は、互いに独立して、1~20個の炭素原子を有する直鎖状及び/又は分岐状のアルキレン又はシクロアルキレンラジカルであり;
は、1~10個の炭素原子を含有するアルキル基であり、
、Rは、互いに独立して、アルキル、シクロアルキル、アリール、又はアラルキル基であり、アルキル、シクロアルキル、アリール、又はアラルキル基の炭素鎖が、隣接しない酸素、硫黄又はNR基によって中断されることが可能であり、Rはアルキル、シクロアルキル、アリール、又はアラルキルであり、
m,nは、互いに独立して、0~1であり、ただし、m+n=2であり、
a,bは、互いに独立して、0~2である;
b)一般式(III)の少なくとも1つの触媒C1と、
z[C(R)(R)(R)-(CH-C(=O)-O]Mz+ (III)
式中、R~Rは、互いに独立して、水素又は1~6個の炭素原子を含有するアルキル基であり、ただし、残基R~Rの炭素原子数の合計は3~8個の範囲内であり;
zは1~4であり;及び
nは0又は1~8であり、
ただし、
z=1の場合、MはLi、K及びNaからなる群から選択される;
z=2の場合、MはZn及びZrからなる群から選択される;
z=3の場合、MはBi及びAlからなる群より選択される;
z=4の場合、MはZr及びTiからなる群から選択される;
c)少なくとも1つの金属アルコキシドC2と;
d)1つ以上の非プロトン性有機溶媒と、
を含む、コーティング組成物。
【請求項2】
a)1%未満のイソシアネート含有量を有し、
一般式(I)の少なくとも1つのシラン基と、
-NRX-SiR (OR3-a (I)
一般式(II)の少なくとも1つのシラン基と、
-N[X-SiR (OR3-a[X’-SiR (OR3-b (II)
を含む、少なくとも1つのシランベースの化合物R2と、
式中、
X、X’は、互いに独立して、1~20個の炭素原子を有する直鎖状及び/又は分岐状のアルキレン又はシクロアルキレンラジカルであり;
は、1~10個の炭素原子を含有するアルキル基であり、
、Rは、互いに独立して、アルキル、シクロアルキル、アリール、又はアラルキル基であり、アルキル、シクロアルキル、アリール、又はアラルキル基の炭素鎖が、隣接しない酸素、硫黄又はNR基によって中断されることが可能であり、Rはアルキル、 シクロアルキル、アリール、又はアラルキルであり、
m,nは、互いに独立して、0~1であり、ただし、m+n=2であり、
a,bは、互いに独立して、0~2である;
b)一般式(III)の少なくとも1つの触媒C1と、
z[C(R)(R)(R)-(CH-C(=O)-O]Mz+ (III)
式中、R~Rは、互いに独立して、水素又は1~6個の炭素原子を含有するアルキル基であり、ただし、残基R~Rの炭素原子数の合計は3~8個の範囲内であり、;
zは1~4であり;及び
nは0又は1~8であり、
ただし、
z=1の場合、MはLi、K及びNaからなる群から選択される;
z=2の場合、MはZn及びZrからなる群から選択される;
z=3の場合、MはBi及びAlからなる群より選択される;
z=4の場合、MはZr及びTiからなる群から選択される;
c)1つ以上の非プロトン性有機溶媒、
を含む、コーティング組成物。
【請求項3】
一般式(I)及び(II)におけるX及びX’は、互いに独立して、1~10個、好ましくは1~6個、より好ましくは2~5個、非常に好ましくは3個の炭素原子を有する直鎖状アルキレンラジカルを表し、及び/又は、
一般式(I)におけるRは、2~8個の炭素原子、好ましくは4~6個の炭素原子、非常に好ましくは4個の炭素原子を含むアルキル基であり、及び/又は、
式(I)及び(II)におけるRは、互いに独立して、C~C10アルキル基、好ましくはC~Cアルキル基、非常に好ましくはCアルキル基を表し、及び/又は、
一般式(I)及び(II)におけるaは0であり、及び/又は、
一般式(II)におけるbは0であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のコーティング組成物。
【請求項4】
前記シランベースの化合物R1及びR2は、前記コーティング組成物の総質量に基づいて、それぞれの場合に、25~95質量%、より好ましくは35~90質量%、最も好ましくは40~80質量%の総量でそれぞれ存在することを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
【請求項5】
前記一般式(III)の少なくとも1つの触媒C1は、カリウム、リチウム又はチタンのネオデカノエート及び/又はエチルヘキサノエートであり、好ましくはカリウム(I)ネオデカノエート、カリウム(I)2-エチルヘキサノエート、チタン(IV)ネオデカノエート、又はチタン(IV)2-エチルヘキサノエートであることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1つの触媒C1は、100gのシランベースの化合物R1又はR2固体あたり、1mmol~50mmol、好ましくは5mmol~40mmol、非常に好ましくは15~25mmol金属の総量で存在することを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
【請求項7】
前記少なくとも1つの金属アルコキシドC2は、一般式(IV)
[(OR(Rn-m (IV)
式中、
は、直鎖状又は分岐状のC1~C10のアルキル基であり、
は、ハロゲン基、アセチルアセトネート基、アルキルアセトアセテート基、又はエタノールアミナト基であり、
は、ケイ素、チタン、タンタル、ジルコニウム、ホウ素、アルミニウム、マグネシウム又は亜鉛から選ばれる少なくとも1つの金属を表し、
mは0~4の整数であり、
nはMの2~5の原子価を表す、
の金属アルコキシドから選択されることを特徴とする、請求項1,3~6のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
【請求項8】
前記金属アルコキシドC2は、チタン(IV)イソプロポキシド及び/又はチタン(IV)n-ブトキシド及び/又はチタン(IV)ビス(エチルアセトアセテート)ジイソプロポキシドから選択されることを特徴とする、請求項1,3~7のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
【請求項9】
前記少なくとも1つの金属アルコキシドC2、好ましくは一般式(IV)の金属アルコキシドは、100gのシランベースの化合物R1固体に基づいて、それぞれの場合に、2.5~40mmol金属の総量で存在することを特徴とする、請求項1,3~8のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
【請求項10】
クリアコート組成物又は着色クリアコート組成物であることを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
【請求項11】
前記コーティング組成物は、前記コーティング組成物の総質量に基づいて、総量で2質量%未満、好ましくは0質量%の少なくとも1つの架橋剤及び/又はスズ含有化合物を含むことを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
【請求項12】
基板(S)上にコーティングを形成する方法であって、以下のステップ:
(1)基板(S)上に、請求項1~11のいずれか1つのコーティング組成物を塗布するステップと;
(2)ステップ(1)で塗布された前記コーティング組成物からコーティング膜を形成するステップと;
(3)ステップ(2)で形成された前記コーティング膜を硬化させるステップと、
を含む、方法。
【請求項13】
請求項12の方法によって得られたコーティングされた基板。
【請求項14】
少なくとも2つのコーティング層を有する多層コーティングであって、前記コーティング層の少なくとも1つは請求項1~11のいずれか1項によるコーティング組成物から形成されている、多層コーティング。
【請求項15】
請求項14で定義された多層コーティングによってコーティングされた基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属アルコキシド触媒を含むシランベースのコーティング組成物、特にクリアコート組成物に関する。さらに、本発明は、2つの異なるアルコキシシラン部分を有するシランベースの化合物を含む、シランベースのコーティング組成物、特にクリアコート組成物に関する。さらに、本発明は、このようなコーティング組成物で基板をコーティングする方法、及び前記方法によって得られたコーティングされた基板に関する。最後に、本発明は、多層コーティング及び前記多層コーティングでコーティングされた基板に関する。
【背景技術】
【0002】
今日のクリアコート業界では、架橋剤及びスズ触媒としてイソシアネートの適用は、法的分類及び最大許容値が厳しくなっているため、ますます望ましくなっている。
【0003】
しかし、ポリイソシアネートは多くのコーティングシステム、特にクリアコートで広く使用されている架橋剤材料である。将来の環境、健康及び安全の要件、並びに技術的な最小要件を満たす合理的な代替はまだ利用することができない。コーティング工程の経済効率を高めるためには、迅速に低温硬化するコーティングシステムが望まれる。
【0004】
しかし、アルコキシシランの縮合のみに基づくコーティングは、自動車用途においてクリアコートとしてそれらを不適にする厳しい後硬化及び脆性フィルムなどの好ましくない性質を示すことが多い。特に、自動車補修用途では、非架橋のベースコートを使用するため、オーダーメイドのクリアコートが必要である。
【0005】
一般的な自動車用途、特に補修用途に適したアルコキシシラン架橋型クリアコートは、速硬化性、迅速な可研磨性及び仕上げ研磨性、耐スクラッチ性、良好な外観、層間接着性、湿気及びUV照射に対する耐性などの重要なパラメータが今のところ、前記クリアコートでは十分に達成され得ないため、まだ利用することができない。
【0006】
特許文献1(EP2641925A1)は、イソシアナトアルキルトリアルコキシシランとジオールの付加物を含むコーティング組成物を開示している。しかしながら、これらの付加物は、EP2641925A1の実施例で、多量のポリアクリレートポリオールと一緒に使用されていた。適切な架橋触媒、例えばネオデカン酸カリウム(potassium neodecanoate)及びDBUと共に単独樹脂として使用される場合、これらの付加物は、一定の気候試験を実施する前でさえ、比較的に長いタックフリー時間及び悪いクロスカット接着性を示す。
【0007】
特許文献2(WO03/054049)は、ポリウレタンンベースの接着剤又はコーティング材における接着促進剤として、イソシアネート官能性シランを開示している。しかし、これらのシランはイソシアネート含有であり、これは本発明では回避されるべきである。
【0008】
特許文献3(特開2005-015644)は、NCOとOHの比率が1:0.05~1:0.9、すなわち過剰のイソシアネート基を有するポリイソシアネートとアミノシランの付加物を記載している。これらの付加物は、さらなる樹脂と共に硬化性樹脂組成物に使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】EP2641925A1
【文献】WO03/054049
【文献】特開2005-015644
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、有利なのは、好ましくはイソシアネートを含まないコーティング組成物、好ましくは、湿度曝露に対する耐性が改善され、低温で硬化させることができるクリアコート組成物である。得られるコーティングは、良好な機械的及び光学的特性を示すべきである。さらに、スズを含む触媒は必要ないことを要する。
【0011】
したがって、本発明の目的は、イソシアネート又はアミノプラスト架橋剤及びスズ含有触媒を使用せずに低温で硬化させることができる速硬化性コーティング組成物、好ましくはクリアコーティング組成物を提供することであった。コーティング組成物は、自動車OEM及び自動車補修コーティングなどの自動車用コーティングに特に適している必要がある。コーティングは、長いポットライフを有し、湿度曝露に対する改善された耐性を示す必要がある。前記コーティング組成物から得られるコーティングは、耐溶剤性であり、良好な接着性、耐スクラッチ性、並びに耐UV性及び耐候性、高い光沢及び良好な外観を示すことを要する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の目的は、特許請求の範囲に記載された主題によって、また、以下の説明に記載されるその主題の好ましい実施形態によって達成される。
【0013】
したがって、本発明の第1の主題は、コーティング組成物であって、以下の:
a)イソシアネート含有量が1%未満を有し、
一般式(I)の少なくとも1つのシラン基と、
-NRX-SiR (OR3-a (I)
任意に一般式(II)の少なくとも1つのシラン基と、
-N[X-SiR (OR3-a[X’-SiR (OR3-b (II)
を含む、少なくとも1つのシランベースの化合物R1と、
式中、
X、X’は、互いに独立して、1~20個の炭素原子を有する直鎖状及び/又は分岐状のアルキレン又はシクロアルキレンラジカルであり;
は、1~10個の炭素原子を含有するアルキル基であり、
、Rは、互いに独立して、アルキル、シクロアルキル、アリール、又はアラルキル基であり、アルキル、シクロアルキル、アリール、又はアラルキル基の炭素鎖が、隣接しない酸素、硫黄又はNR基によって中断されることが可能であり、Rはアルキル、シクロアルキル、アリール、又はアラルキルである、
n,mは、互いに独立して、0~2であり、ただし、m+n=2であり、
a,bは、互いに独立して、0~2である;
b)一般式(III)の少なくとも1つの触媒C1と、
z[C(R)(R)(R)-(CH-C(=O)-O]Mz+ (III)
式中、
~Rは、互いに独立して、水素又は1~6個の炭素原子を含有するアルキル基であり、ただし、残基R~Rの炭素原子数の合計は3~8個の範囲内であり;
zは1~4であり;及び
nは0又は1~8であり、
ただし、
z=1の場合、MはLi、K及びNaからなる群から選択される;
z=2の場合、MはZn及びZrからなる群から選択される;
z=3の場合、MはBi及びAlからなる群より選択される;
z=4の場合、MはZr及びTiからなる群から選択される;
c)少なくとも1つの金属アルコキシドC2と;
d)1つ以上の非プロトン性有機溶媒と、
を含む、コーティング組成物である。
【0014】
本発明の第2の主題は、したがって、コーティング組成物であって、以下の:
a)イソシアネート含有量が1%未満を有し、
一般式(I)の少なくとも1つのシラン基と、
-NRX-SiR (OR3-a (I)
一般式(II)の少なくとも1つのシラン基と、
-N[X-SiR (OR3-a[X’-SiR (OR3-b (II)
を含む、少なくとも1つのシランベースの化合物R2と、
式中、
X、X’は、互いに独立して、1~20個の炭素原子を有する直鎖状及び/又は分岐状のアルキレン又はシクロアルキレンラジカルであり;
は、1~10個の炭素原子を含有するアルキル基であり、
、Rは、互いに独立して、アルキル、シクロアルキル、アリール、又はアラルキル基であり、アルキル、シクロアルキル、アリール、又はアラルキル基の炭素鎖が、隣接しない酸素、硫黄又はNR基によって中断されることが可能であり、Rはアルキル、シクロアルキル、アリール、又はアラルキルであり、
n,mは、互いに独立して、0~2であり、ただし、m+n=2であり、
a,bは、互いに独立して、0~2である;
b)一般式(III)の少なくとも1つの触媒C1と、
z[C(R)(R)(R)-(CH-C(=O)-O]Mz+ (III)
式中、
~Rは、互いに独立して、水素又は1~6個の炭素原子を含有するアルキル基であり、ただし、残基R~Rの炭素原子数の合計は3~8個の範囲内であり;
zは1~4であり;及び
nは0又は1~8である、
ただし、
z=1の場合、MはLi、K及びNaからなる群から選択される;
z=2の場合、MはZn及びZrからなる群から選択される;
z=3の場合、MはBi及びAlからなる群より選択される;
z=4の場合、MはZr及びTiからなる群から選択される;
c)1つ以上の非プロトン性有機溶媒、
を含む、コーティング組成物である。
【0015】
上記のコーティング組成物は、以下で、本発明のコーティング組成物とも呼ばれ、したがって本発明の主題である。本発明のコーティング組成物の好ましい実施形態は、以下の説明及び従属請求項からも明らかである。
【0016】
従来技術に照らして、当業者にとって、本発明が基礎とする目的が、特定のシランベースの化合物R1を特定の触媒混合物C1及びC2と組み合わせて、又は特定のシランベースの化合物R2を触媒C1と組み合わせてコーティング組成物に使用することにより、達成できることは、驚きであり、予測不可能であった。特定の触媒と組み合わせた前記シランベース化合物R1又はR2の使用は、イソシアネート及びアミノプラスト架橋剤及びスズ含有触媒を使用せずに、優れた機械特性及び光学特性を有するコーティング層を提供する低硬化コーティング組成物を結果として生じる。したがって、本発明のコーティング組成物は、低硬化温度が使用されるOEM修理及び補修用途に特に適している。一般式(III)の触媒C1と組み合わせて金属アルコキシドC2とシランベースの化合物R1を用いることにより、得られるクリアコート層の湿度曝露に対する耐性を改善させることができる。
【0017】
本発明のさらなる主題は、基板(S)上にコーティングを形成するための方法であって、以下のステップ:
(1)基板(S)上に本発明のコーティング組成物を塗布するステップと;
(2)ステップ(1)で塗布されたコーティング組成物からコーティング膜を形成するステップと;
(3)ステップ(2)で形成されたコーティング膜を硬化させるステップと;
を含む。
【0018】
本発明の別の主題は、本発明の方法に従って得られるコーティングされた基板である。
【0019】
本発明のさらに別の主題は、少なくとも2つのコーティング層、好ましくは少なくとも1つのベースコート層及び少なくとも1つのクリアコート層を含む多層コーティングであり、そこでは、該コーティング層の少なくとも1つ、好ましくはクリアコート層は、本発明のコーティング組成物から形成される。
【0020】
本発明の最終的な主題は、本発明の多層コーティングコーティングでコーティングされた基板である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
詳細な説明
特定の特性変数を決定するために本発明の文脈で採用される測定方法は、実施例のセクションに見出すことができる。別段明示的に示されない限り、これらの測定方法は、それぞれの特性変数を決定するために採用される。本発明の文脈において、公式な有効期間の表示を伴わずに公式な規格を参照及する場合、参照は、暗示的に出願日において有効な規格のバージョン、又はその時点で有効なバージョンが存在しない場合は最新の有効バージョンに対するものである。
【0022】
「シランベースの化合物」という用語は、上記の式(I)又は(II)の少なくとも1つのシラン基を含む化合物を指す。前記シラン基は、記号を介して、好ましくは、尿素結合を介して化合物の骨格に結合する。本明細書で使用される場合、化合物の「骨格」は、構造(I)及び任意に(II)以外の化合物の部分である。化合物の適切な骨格がポリマーである場合、シラン基(I)及び任意に(II)は、ポリマー鎖から垂下していてもよく、ポリマー鎖に組み込まれていてもよく、又はそれらの組み合わせであってよい。
【0023】
「ポリ(メタ)アクリレート」という用語は、ポリアクリレート及びポリメタクリレートの両方を指す。ポリ(メタ)アクリレートは、したがって、アクリレート及び/又はメタクリレートで構成され得、及び、エチレン性不飽和モノマー、例えばスチレン又はアクリル酸をさらに含み得る。
【0024】
本明細書で使用される「脂肪族」という用語は、「脂環式」という用語を含み、それぞれ非芳香族基、部分及び化合物を指す。
【0025】
本発明の文脈で報告される全ての膜厚は、乾燥膜厚として理解されるべきである。したがって、それぞれの場合において、硬化した膜の厚さである。したがって、コーティング材料が特定の膜厚で塗布されると報告されている場合、これはコーティング材料が硬化後に記載された膜厚になるような態様で塗布されることを意味する。
【0026】
本発明の文脈で解明された全ての温度は、基板又はコーティングされた基板が配置された部屋の温度として理解されるべきである。したがって、基板自体が当該温度を有する必要があることを意味するものではない。
【0027】
本発明のコーティング組成物:
本発明のコーティング組成物は、それぞれ少なくとも1つの非プロトン性溶媒を含み、したがって、好ましくは溶媒ベースのコーティング組成物である。本発明の文脈において、溶媒ベースのコーティング組成物は、好ましくは、それぞれの場合にコーティング組成物の総質量に基づいて、10質量%未満、好ましくは5質量%未満、より好ましくは1質量%未満、非常に好ましくは0質量%の水及び/又はプロトン性溶媒の総量を含む。
【0028】
シランベースの化合物R1及び触媒混合物C1とC2を含む本発明のコーティング組成物:
【0029】
シランベースの化合物R1(a)
本発明のコーティング組成物は、第1必須成分(a)として、1%未満のイソシアネート含有量(以下、NCO含有量とも呼ぶ)を有し、一般式(I)の少なくとも1つのシラン基と、
-NRX-SiR (OR3-a (I)
任意に一般式(II)の少なくとも1つのシラン基と、
-N[X-SiR (OR3-a[X’-SiR (OR3-b (II)
を含む、シランベースの化合物R1を有し、
式中、
~R、X、X’、a、b、m及びnは、先に定義した通りである。式(I)及び(II)のシラン基は、前述のように、記号を介してシランベースの化合物R1の骨格に結合している。
【0030】
シランベースの化合物R1は、0.5%未満、より好ましくは0.05~0%のイソシアネート含有量を含むことが好ましい。これは、シランベース化合物R1が、かなり少量の遊離NCO基のみを含むか、又は本質的にNCO基を含まないことを確かにし、これにより、この化合物を、イソシアネートを含まないコーティング組成物に使用することを可能にする。
【0031】
有機官能性シランの反応性は、シラン官能基とシランベースの化合物R1の骨格との反応に役立つ有機官能基との間のスペーサーX,X’の長さによってかなり影響を受ける可能性がある。一般式(I)及び(II)におけるX及びX’は、好ましくは、互いに独立して、1~10個、より好ましくは1~6個、さらにより好ましくは2~5個、非常に好ましくは3個の炭素原子を有する直鎖状アルキレンラジカルを表す。
【0032】
一般式(I)におけるRは、好ましくは2~8個の炭素原子、より好ましくは4~6個の炭素原子、非常に好ましくは4個の炭素原子を含むアルキル基である。
【0033】
それぞれの好ましいアルコキシラジカル(OR)は、加水分解性シラン基の反応性に影響を与える。特に好ましいのは、シラン基の反応性を高める、すなわち良好な脱離基を構成するラジカルRである。したがって、メトキシラジカルは、エトキシラジカルよりも好ましく、これは順にプロポキシラジカルよりも好ましい。特に優先して、したがって、式(I)及び(II)におけるRは、互いに独立して、C~C10アルキル基、より好ましくはC~Cアルキル基、非常に好ましくはCアルキル基を表す。
【0034】
一般式(II)のシラン基は、2つのアルコキシシラン部分を含み、したがって、nとmの和は2である。それぞれのアルコキシシラン部分は、同じでもよく、又は互いに異なっていてもよい。異なるアルコキシシラン部分の場合、m=n=1であれば、RとRは異なる。同じアルコキシシラン部分の場合、RとRは同じで、m=n=1であり、又は、m=0及びn=2又はその逆である。
【0035】
一般式(I)の好ましいシラン基、及び、存在する場合の一般式(II)のシラン基は、それぞれ3つのアルコキシ部分を含む。したがって、式(I)及び(II)におけるa及び式(II)におけるbは、互いに独立して、0であることが好ましい。
【0036】
シランベースの化合物R1(a)は、少なくとも1つのポリイソシアネートを、
一般式(Ia)
HNR-X-SiR (OR3-a (Ia)
の少なくとも1つの化合物と、
任意で一般式(IIa)
HN[X-SiR (OR3-a[X’-SiR (OR3-b (IIa)
の少なくとも1つの化合物と
反応させることによって調製され得る。
【0037】
一般式(Ia)及び(IIa)のR~R、X、X’、a、b、m及びnは、先に定義した通りである。
【0038】
原則として、全ての脂肪族、脂環式、芳香脂肪族(araliphatic)、芳香族ポリイソシアネートはポリイソシアネートとして使用されることができる。好ましく用いられるポリイソシアネートの例としては、以下の:2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタン4,4′-ジイソシアネート、ジフェニルメタン2,4′-ジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、ビフェニルジイソシアネート、3,3′-ジメチル-4,4′-ジフェニルジイソシアネート、テトラメチレン1,4-ジイソシアネート、ヘキサメチレン1,6-ジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサン1,6-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、1,12-ドデカンジイソシアネート、シクロブタン1,3-ジイソシアネート、シクロヘキサン1,3-ジイソシアネート、シクロヘキサン1,4-ジイソシアネート、メチルシクロヘキシルジイソシアネート、ヘキサヒドロトルエン2,4-ジイソシアネート、ヘキサヒドロトルエン2,6-ジイソシアネート、ヘキサヒドロフェニレン1,3-ジイソシアネート、ヘキサヒドロフェニレン1,4-ジイソシアネート、ペルヒドロジフェニルメタン2,4′-ジイソシアネート、4,4′-メチレンジシクロヘキシルジイソシアネート(例えば、Covestro AG社のDesmodur(登録商標)W)、テトラメチルキシリルジイソシアネート(例えば、American Cyanamid社のTMXDI(登録商標))、及び前述のポリイソシアネートの混合物などである。さらに好ましいポリイソシアネートは、ポリイソシアネートから、三量体化、二量体化、ウレタン化、ビウレット化又はアロファネート化によって誘導されるポリイソシアネートである。特に好ましく用いられるポリイソシアネートは、ヘキサメチレンジイソシアネートウレチオン、ヘキサメチレンジイソシアネート、1-イソシアナト-4-[(4-イソシアナトシクロヘキシル)-メチル]-シクロヘキサン及びヘキサメチレンジイソシアネート三量体である。
【0039】
発明的に好ましい化合物(Ia)は、アミノアルキルトリアルコキシシランであり、例えば、好ましくは2-アミノエチルトリメトキシシラン、2-アミノエチルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、4-アミノブチルトリメトキシシラン、4-アミノブチルトリエトキシシランである。特に好ましい化合物(Ia)は、N-(2-(トリメトキシシリル)エチル)アルキルアミン、N-(3-(トリメトキシシリル)プロピル)アルキルアミン、N-(4-(トリメトキシシリル)ブチル)アルキルアミン、N-(2-(トリエトキシシリル)エチル)アルキルアミン、N-(3-(トリエトキシシリル)-プロピル)アルキルアミン及び/又はN-(4-(トリエトキシシリル)ブチル)アルキルアミンである。式(Ia)の特に好ましいアミノシランは、α-アミノシラン(X=CH)及びγ-アミノシラン(X=n-プロピル)であり、γ-アミノシランが本発明において最も好ましい。特に好ましいのはN-アルキルアミノ-アルキル-トリアルコキシシランであり、その中でもn-ブチルアミノ-プロピル-トリメトキシシランなどのnアルキルアミノ-プロピルトリメトキシシランが最も好ましい。この種のアミノシランは、例えばDEGUSSA社からDYNASYLAN(登録商標)又はMomentive社からSilquest(登録商標)という商品名で利用可能になっている。
【0040】
好ましい化合物(IIa)は、ビス(2-エチルトリメトキシシリル)アミン、ビス(3プロピルトリメトキシシリル)アミン、ビス(4-ブチルトリメトキシシリル)アミン、ビス(2エチルトリエトキシシリル)アミン、ビス(3-プロピルトリエトキシシリル)アミン及び/又はビス(4ブチルトリメトキシシリル)アミンである。非常に好ましいのは、ビス(3プロピルトリメトキシシリル)アミンである。
【0041】
好ましい化合物(IIa)は、例えばDEGUSSA社のDYNASILAN(登録商標)又はMomentive社のSilquest(登録商標)という商品名で利用可能になっている。
【0042】
少なくとも1つのポリイソシアネートと一般式(Ia)の化合物及び任意の一般式(IIa)の化合物との反応は、溶媒なしで、又は非プロトン性溶媒の存在下で、少なくとも1つのポリイソシアネートの本質的に全て、好ましくは全ての遊離イソシアネート基が消費されるまで、行われることができる。この反応は、好ましくは不活性ガス中で、100℃以下、好ましくは60℃以下の温度で行われる。
【0043】
本発明によれば、シランベースの化合物R1が、一般式(I)及び(II)のシラン基全体に基づいて、それぞれの場合に、一般式(I)の少なくとも1つのシラン基を、50~100mol%、好ましくは80~100mol%、より好ましくは95~100mol%、及び、一般式(II)の少なくとも1つのシラン基を、0~50mol%、好ましくは0~20mol%、より好ましくは0~5mol%を含有することが好ましい。特に一般式(II)のシラン基に対する一般式(I)のシラン基の比率は、得られるコーティングにおけるクラックの発生に非常に重大な影響を及ぼすことが見出された。この関係において、一般に言えば、得られるコーティングにおけるクラックの発生は、一般式(I)のモノシラン基の割合が減少するにつれて、及び一般式(II)のビスシラン基の割合が増加するにつれて、増加する。したがって、特に好ましいシランベースの化合物R1は、一般式(I)のシラン基を100mol%含有し、一般式(II)のシラン基を0mol%含有する。
【0044】
非常に驚くべきことであり、また非常に有利であるのは、一般式(I)のモノシラン基の割合の増加及び一般式(II)のビスシラン基の割合の減少によってクラックの発生が減少すると同時に、得られるコーティングの耐スクラッチ性が非常にわずかしか低下しないという事実である。
【0045】
シランベースの化合物R1は、コーティング組成物の総質量に基づいて、それぞれの場合に、25~95質量%、より好ましくは35~90質量%、最も好ましくは40~80質量%の総量で存在することが好ましい。コーティング組成物に採用されるこのシランベースの化合物R1の量は、シランベースの化合物R1の製造に採用される反応物の質量の合計がシランベースの化合物R1の最終質量に等しいという条件に基づいた、シランベースの化合物R1の計算理論量である。
一般式(III)(b)の触媒C1:
本発明のコーティング組成物は、第2必須成分(b)として、一般式(III)の少なくとも1つの触媒C1を含み、
z[C(R)(R)(R)-(CH-C(=O)-O]Mz+ (III)
式中、
~Rは、互いに独立して、水素又は1~6個の炭素原子を含有するアルキル基であり(ただし、残基R~Rの炭素原子数の合計は3~8個の範囲内である);
zは1~4であり;及び
nは0又は1~8である
(ただし、
z=1の場合、MはLi、K及びNaからなる群から選択される;
z=2の場合、MはZn及びZrからなる群から選択される;
z=3の場合、MはBi及びAlからなる群より選択される;
z=4の場合、MはZr及びTiからなる群から選択される)。
【0046】
一般式(III)における残基R~Rの炭素原子数の和は、3~5又は5~8であることが好ましい。
【0047】
一般式(III)におけるzは、好ましくは1、3又は4であり、より好ましくは1又は4である。
【0048】
一般式(III)におけるnは、好ましくは0又は2~6であり、好ましくは0又は4である。nが0の場合、一般式(III)における残基R及びRは、互いに独立して、直鎖状又は分岐状のC~Cアルキル基であり、残基Rはメチル基である(ただし、残基R~Rの全炭素原子の和は8である)。一般式(III)におけるnが1~8、好ましくは4である場合、残基R~Rは互いに独立して、メチル基である。
【0049】
一般式(III)におけるMは、好ましくはカリウム、リチウム又はチタンであり、好ましくはカリウム又はチタンである。
【0050】
一般式(III)の特に好ましい触媒C1は、カリウム、リチウム又はチタンのネオデカノエート及び/又はエチルヘキサノエートであり、好ましくはカリウム(I)ネオデカノエート、カリウム(I)2-エチルヘキサノエート、チタン(IV)ネオデカノエート又はチタン(IV)2-エチルヘキサノエートである。非常に好ましくは、正確に1つの触媒C1、特に好ましくはカリウム(I)ネオデカノエート、チタン(IV)ネオデカノエート又はチタン(IV)2-エチルヘキサノエートが、本発明のコーティング組成物中に含有される。チタン(IV)2-エチルヘキサノエートの使用は、得られるコーティング層が著しく改善された外観を示すため、特に好ましい。
【0051】
多くの場合、式(III)の触媒C1は、酸安定化された形態で製造業者から供給される。式(III)のそのような酸安定化触媒C1は、その貯蔵安定性がより高いからだけでなく、本発明によるコーティング組成物中に遊離酸を導入するから、それらを使用することが好ましい。そのような遊離酸は、触媒C2との組み合わせにおいて有益であることが知られており、さらに、シラン加水分解を改善し、その結果ネットワーク形成を改善することができる。安定化酸は一般に、一般式(II)に含まれるプロトン化残基C(R)(R)(R)-(CH-C(=O)-OHである。触媒C1の供給形態が安定化酸C(R)(R)(R)-(CH-C(=O)-OHを含む場合、この酸の含有量は後述するように式(IV)のカルボン酸に 包摂される。
【0052】
少なくとも1つの触媒C1、特にネオデカン酸カリウム又はネオデカン酸チタンの量は、100gのシランベースの化合物R1固体に基づいて、それぞれの場合に、好ましくは1mmol~50mmol、より好ましくは5mmol~40mmol、最も好ましくは15~25mmol金属の範囲にある。
金属アルコキシドC2(c):
本発明のコーティング組成物は、第3の必須成分(c)として、少なくとも1つの金属アルコキシドを含む。前記金属アルコキシドは、共触媒として使用され、結果として、(触媒C1、好ましくはネオデカン酸カリウム又はネオデカン酸チタンと組み合わせて)共触媒としてDBUなどの窒素化合物を含む組成物と比較して、湿度条件に対する改善された耐性を生じる。特定の理論に拘束されることを望むものではないが、チタンアルコキシドは、硬化中にシランベースの化合物Rの縮合反応に関与することができると考えられる。
【0053】
少なくとも1つの金属アルコキシドC2は、好ましくは、一般式(IV)の金属アルコキシドから選択され、
[(OR(Rn-m (IV)
式中、
は、直鎖状又は分岐状のC~C10のアルキル基であり、
は、ハロゲン基、アセチルアセトネート基、アルキルアセトアセテート基、又はエタノールアミナト基であり、
は、ケイ素、チタン、タンタル、ジルコニウム、ホウ素、アルミニウム、マグネシウム又は亜鉛から選ばれる少なくとも1つの金属を表し、
mは0~4の整数であり、
nはMの2~5の原子価を表す。
【0054】
一般式(IV)におけるRは、好ましくはC~Cアルキル基から、より好ましくはC又はCアルキル基から選択される。
【0055】
一般式(IV)におけるRは、好ましくはアルキルアセトアセテート基であり、より好ましくはエチルアセトアセテート基である。
【0056】
一般式(IV)におけるmは、好ましくは0又は1~4、より好ましくは0又は2~4、非常に好ましくは0、2又は4である。
【0057】
一般式(IV)におけるMは、好ましくはチタンから選択される金属であり、nは4の原子価を表す。
【0058】
特に好ましい触媒C2は、チタン(IV)イソプロポキシド及び/又はチタン(IV)n-ブトキシド及び/又はチタン(IV)ビス(エチルアセトアセテート)ジイソプロポキシドから選択される。
【0059】
少なくとも1つの金属アルコキシドC2、好ましくは一般式(III)の金属アルコキシドは、好ましくは、100gのシランベースの化合物R1固体に基づいて、それぞれの場合に、2.5~40mmol金属の総量で存在する。
【0060】
少なくとも1つの金属アルコキシドC2、好ましくは一般式(III)の金属アルコキシドに対する一般式(II)の触媒C1の金属対金属比は、好ましくは1:2~2:1である。上記の比率の前記触媒混合物の使用は、改善された耐湿性を生じ、したがって、金属アルコキシドC2の代わりに窒素含有共触媒、例えばDBUを使用して調製される硬化コーティング層と比較して、湿度条件への曝露後に、本発明のコーティング組成物から得られる硬化コーティング層の膨れ及び白化を著しく低減させる。
【0061】
非プロトン性溶媒(d):
本発明のコーティング組成物は溶媒ベースのコーティング組成物であるため、したがって、第4必須成分(d)として少なくとも1つの非プロトン性溶媒を含む。コーティング組成物中の非プロトン性溶媒は、シランベースの化合物R1に対して化学的に不活性であり、すなわち、本発明のコーティング組成物の保存中及び硬化中にシランベースの化合物R1と反応しないものである。
【0062】
適切な非プロトン性溶媒は、脂肪族及び/又は芳香族炭化水素、例えばトルエン、キシレン、溶媒ナフサ、Solvesso 100又はHydrosol(登録商標)(APAL社製)、ケトン、例えばアセトン、メチルエチルケトン又はメチルアミルケトン、エステル、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸ペンチル又はエチルエトキシプロピオネート、エーテル、又は前記の溶媒の混合物から選択される。非プロトン性溶媒又は溶媒混合物は、溶媒に基づいて、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下の水分含有量を有する。しかしながら、本明細書で使用される添加剤又は触媒の中には、プロトン性有機溶媒で販売されているものがあり、したがって、場合によっては、使用前に溶媒交換を行わない限り、いくつかの望ましくないプロトン性溶媒が導入することを避けることができない。このようなプロトン性溶媒の量が上記の限度内に保たれている場合、そのような量は通常無視することができる。望ましくない早期架橋が、例えば添加剤によって導入されるプロトン性溶媒の存在によって生じる場合、そのような添加剤は、コーティング組成物の塗布の直前にコーティング組成物中に導入されることが好ましい。別の可能性は、溶媒交換を行うことである。
【0063】
前述のように、本発明のコーティング組成物は、好ましくは、コーティング組成物の総質量に基づいて、それぞれの場合に、10質量%未満、好ましくは5質量%未満、より好ましくは1質量%未満、非常に好ましくは0質量%の量で、水及び/又はプロトン性溶媒を含む。シランベースの化合物R1は、水及びプロトン性溶媒と反応するため、前記溶媒は、本発明のコーティング組成物のポットライフ及び保存安定性を最大化するために、存在しないのが好ましい。
【0064】
非プロトン性溶媒は、典型的には、非プロトン性溶媒又は非プロトン性溶媒の混合物中のシランベースの化合物R1の溶液又は分散液を用いることにより導入される。コーティング組成物の粘度を適切な塗布粘度に調整するために、さらなる量が導入される。少なくとも1つの非プロトン性溶媒は、コーティング組成物の総質量に基づいて、それぞれの場合に、好ましくは1~70質量%、より好ましくは20~60質量%、最も好ましくは30~50質量%の総量で存在する。
【0065】
シランベースの化合物R2と触媒C1とを含む本発明のコーティング組成物:
シランベースの化合物R2(a):
本発明のコーティング組成物は、第1必須成分(a)として、1%未満のイソシアネート含有量(以下、NCO含有量とも呼ぶ)を有し、
一般式(I)の少なくとも1つのシラン基を含むシランベースの化合物R2と、
-NRX-SiR (OR3-a (I)
一般式(II)の少なくとも1つのシラン基と、を含み、
-N[X-SiR (OR3-a[X’-SiR (OR3-b (II)
式中、
~R、X、X’、a、b、m及びnは、先に定義した通りである。式(I)及び(II)のシラン基は、前述のように、記号を介してシランベースの化合物R2の骨格に結合している。
【0066】
本発明によれば、シランベースの化合物R2が、一般式(I)及び(II)のシラン基の全体に基づいて、それぞれの場合に、一般式(I)の少なくとも1つのシラン基を50~99.9mol%、好ましくは80~99.9mol%、より好ましくは95~99.9mol%、及び、一般式(II)の少なくとも1つのシラン基を0.01~50mol%、好ましくは0.01~20mol%、より好ましくは0.01~5mol%を含有する場合に好ましい。特に一般式(II)のビスシラン基の割合の増加は、それぞれのコーティング層のクラックの形成に至ることが分かった。したがって、特に好ましいシランベースの化合物R2は、一般式(II)のシラン基をかなり少量だけ含む。
【0067】
シランベースの化合物R2のさらに好ましい実施形態、及びコーティング組成物中のシランベースの化合物R2の量に関しては、前述のシランベースの化合物R1を参照されたい。
【0068】
一般式(III)(b)の触媒C1:
本発明のコーティング組成物は、第2必須成分(b)として、一般式(III)の少なくとも1つの触媒C1を含み、
z[C(R)(R)(R)-(CH-C(=O)-O]Mz+ (III)
式中、R~R、z及びnは先に定義した通りである。
【0069】
一般式(III)の触媒C1のさらに好ましい実施形態に関しては、前述の一般式(III)の触媒C1を参照されたい。
【0070】
非プロトン性溶媒(c):
本発明のコーティング組成物は溶媒ベースのコーティング組成物であり、したがって、第4必須成分(c)として少なくとも1種の非プロトン性溶媒を含む。非プロトン性溶媒のさらに好ましい実施形態に関しては、前述の非プロトン性溶媒を参照されたい。
【0071】
本発明のコーティング組成物のさらなる任意成分:
一般式(V)のカルボン酸:
本発明のコーティング組成物は、一般式(V)の少なくとも1つのカルボン酸をさらに含むことができ、
C(R)(R)(R)-(CH-C(=O)-OH (V)
式中、
~Rは、互いに独立して、水素又は1~6個の炭素原子を含有するアルキル基であり(ただし、残基R~Rの炭素原子数の合計は3~8個、好ましくは5~8個の範囲内である);
nは0又は1~8であり、好ましくは0又は4である。
【0072】
一般式(V)の特に好ましいカルボン酸は、一般式(III)の触媒のカルボン酸アニオンに相当する遊離カルボン酸である。一般式(V)のカルボン酸は、前記カルボン酸によって安定化された前述の触媒C1を用いて、本発明のコーティング組成物に導入される。
【0073】
一般式(V)の特に好ましいカルボン酸は、ネオデカン酸である。
【0074】
一般式(V)の少なくとも1つのカルボン酸、好ましくは、ネオデカン酸は、一般式(III)の触媒C1の総量に基づいて、それぞれの場合に、好ましくは0~80質量%、より好ましくは30~70質量%、非常に好ましくは50~60質量%の総量で存在する。
【0075】
一般式(VI)のエポキシ官能性化合物:
本発明のコーティング組成物は、一般式(VI)の少なくとも1つのエポキシ官能性化合物をさらに含むことができ、
(X)-R-Ox (VI)
式中、
Oxはオキシラン基であり;
は、2~15個の炭素原子を含有し、任意にエーテル基及び/又はエステル基を含む脂肪族ヒドロカルビル基であり;
nは1~5であり;及び
Xは、互いに独立して、Ox又は-Si(R3-v(R基(vは0又は1であり、Rは1~4の炭素原子を含むアルコキシ基であり、Rは1~4の炭素原子を含むアルキル基であり、又は1~4の炭素原子を含むアルコキシ基)である。
【0076】
一般式(VI)におけるRは、脂肪族ヒドロカルビル基-(CH-O-CH又はシクロヘキシルエチル基であることが好ましい。記号は脂肪族ヒドロカルビル基-(CH-O-CHのX残基への結合を示し、記号はヒドロカルビル基-(CH-O-CHのオキシラン基への結合を示す。したがって、脂肪族ヒドロカルビル基-(CH-O-CHであるRから得られる一般式(VI)のエポキシ官能基化合物の構造は、(X)-(CH-O-CH-Oxである。
【0077】
一般式(VI)におけるnは、好ましくは1である。
【0078】
X基がオキシラン基の場合、一般式(VI)の化合物は、脂肪族ジグリシジルエーテル、脂肪族ポリグリシジルエーテル、脂肪族ジグリシジルエステル及び/又は脂肪族ポリグリシジルエステルである。
【0079】
脂肪族ジグリシジルエーテル又はポリグリシジルエーテルの例は、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(Heloxy 67)、1,6-ヘキサンジオール-ジグリシジルエーテル(Heloxymodifier HD)、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(Heloxy 48)、及びネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(Heloxy 68)、水素化ビスフェノール A ジグリシジルエーテル(例えば、CVC Specialty Chemicals社製の商品名Epalloy5000及びEpalloy5001;又はJapanese Epoxy Resins社製の商品名YX8000で販売されている)、シクロヘキサンジメチロールジグリシジルエーテル(例えば、Hexion社製の商品名Heloxy 107で販売されている)、トリシクロデカンジメタノールジグリシジルエーテル(例えば、Adeka社製の商品名EP4088Sで販売されている)、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオールと2-(クロロメチル)オキシラン(Basocoll OV)又はグリセロールジグリシジルエーテルから合成した化合物である。
【0080】
脂肪族ジグリシジルエステル又はポリグリシジルエステルの例は、リノール酸二量体のグリシジルエステル(例えば、CVC Specialty Chemicals社製の商品名Erisys GS-120で販売されている)、二量体酸ジグリシジルエステル(例えば、Hexion社製の商品名Heloxy Modifier 71の商品名で販売されている)、及びジグリシジル1,2-シクロヘキサンジカルボキシレート(例えば、CVC Specialty Chemicals社製の商品名Epaloy 5200で販売されている)である。
【0081】
X基の少なくとも1つが-Si(R3-v(R基である場合、一般式(VI)の化合物はエポキシシランである。本発明のコーティング組成物の好ましい実施形態によれば、一般式(VI)のエポキシ官能性化合物は、エポキシシランである。一般式(VI)におけるXは、したがって、好ましくは、-Si(R3-v(R基であり、ここで、vは0又は1であり、Rは1~4つの炭素原子を含有するアルコキシ基であり、Rは1つの炭素原子を含有するアルコキシ基又は1つの炭素原子を含有するアルキル基である。
【0082】
一般式(VI)の特に好ましいエポキシ化合物は、(3-グリシドオキシプロピル)トリメトキシシラン((3-glycidoxypropyl) trimethoxysilane)、ジメトキシ(3-グリシドキシプロピル)メチルシラン(dimethoxy(3-glycidyloxypropyl)methylsilane)、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(2-(3,4-epoxycyclohexyl)ethyltrimethoxysilane)、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(trimethylolpropane triglycidylether)、及び2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール(2,2-bis(hydroxymethyl)-1,3-propanediol)と2-(クロロメチル)オキシラン(2-(chloromethyl)oxirane)の反応生成物、非常に好ましくは(3-グリシドオキシプロピル)トリメトキシシラン、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、及び2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオールと2-(クロロメチル)オキシランの反応生成物から選択される。
【0083】
一般式(VI)の少なくとも1つのエポキシ官能性化合物は、コーティング組成物の固形分に基づいて、それぞれの場合に、好ましくは0~20質量%、より好ましくは2.5~15質量%、最も好ましくは5~10質量%の総量で存在する。
【0084】
さらなる添加剤:
本発明のコーティング組成物は、典型的な量、すなわち、コーティング組成物の総質量に基づいて、それぞれの場合に、好ましくは0~20質量%、より好ましくは0.005~15質量%、特に0.01~10質量%の量で、少なくとも1つの慣用及び周知のコーティング添加剤をさらに含んでよい。前述の質量パーセントの範囲は、同様に全ての添加剤の合計に適用される。
【0085】
適切なコーティング添加剤の例は、(i)UV吸収剤;(ii)光安定剤、例えばHALS化合物、ベンゾトリアゾール又はオキサラニリドなど;(iii)レオロジー調整剤、例えばたるみ制御剤(尿素結晶変性樹脂)、有機増粘剤及び無機増粘剤など;(iv)フリーラジカル捕捉剤;(v)スリップ添加剤;(vi)重合阻害剤;(vii)消泡剤;(viii)湿潤剤;(ix)フッ素化合物;(x)接着促進剤;(xi)レベリング剤;(xii)フィルム形成助剤、例えばセルロース誘導体など;(xiii)フィラー、例えばシリカ、アルミナ又は酸化ジルコニウムに基づくナノ粒子など;(xiv)難燃剤;及び(xv)これらの混合物である。
【0086】
上記の添加剤の中で、最も好ましい添加剤は、好ましくは0.25~2.5質量%の量で存在するUV吸収剤、好ましくは0.25~2.5質量%の量で存在する光安定剤及び好ましくは0.005~2.5質量%の量で存在するレベリング剤であって、該範囲はコーティング組成物の総質量に基づく。
【0087】
コーティング組成物が、シランベースの化合物R1及びR2並びに式(VI)のエポキシ官能性化合物とは異なる少なくとも1つのさらなるバインダーをさらに含むことは可能であるが、望ましくない。本発明の文脈において、かつDIN EN ISO 4618:2007-03による「バインダー」は、顔料及びフィラーを含まない、コーティング組成物の不揮発性成分である。しかし、以下では、この表現は、主として、任意に熱硬化性でもあり得る特定の物理的に硬化性のポリマー、例として、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリ尿素、ポリアクリレート、ポリシロキサン及び/又は記載のポリマーのコポリマーとの関連で、使用される。本発明の文脈におけるコポリマーは、異なるポリマーから形成されたポリマー粒子を指す。これは、互いに共有結合しているポリマーと、異なるポリマーが接着によって互いに結合しているものとの両方を明示的に含む。2つのタイプの結合の組み合わせもこの定義でカバーされる。
【0088】
しかしながら、そのようなバインダーは、存在する場合、本発明のコーティング組成物中に存在するシランベースの化合物R1又はR2の総質量に基づいて、好ましくは10質量%未満、より好ましくは5質量%未満の量で、本発明によるコーティング組成物中に含有される。最も好ましいのは、本発明のコーティング組成物は、少なくとも1つのさらなるバインダー、特にヒドロキシ官能性ポリシロキサン及び/又はアルコキシ官能性ポリシロキサンを含まない、すなわち前記さらなるバインダーが、シランベースの化合物R1又はR2の総質量に基づいて、0質量%の量で存在することである。
【0089】
添加剤は、前述の触媒C1及びC2とは異なるさらなる触媒C3を含むことができる。さらなる触媒C3は、シランベースの化合物R2及び触媒C1を含むコーティング組成物中に含まれることが好ましい。適切なさらなる触媒C3は、例えば、二環式第三級アミンである。最も好ましい二環式第三級アミンは、1,5-ジアザ-ビシクロ[4.3.0]ノン-5-エン(以下DBNと呼ぶ)、1,5-ジアザ-ビシクロ(4,4,0)デセン-5(以下DBDと呼ぶ)又は1,8-ジアザ-ビシクロ[5,4,0]ウンデック-7-エン(以下DBUと呼ぶ)及び1,4-ジアザビシクロ[2,2.2]オクタン(以下DABCOと呼ぶ)である。その中で、DBUとDBNが好ましい。特に好ましいのはDBUである。そのような二環式第三級アミンは、単独で用いてもよいし、又はそれらの2つ以上を組み合わせて用いてもよい。シランベースの化合物R2を含むコーティング組成物におけるそのようなさらなる触媒C3の使用は、触媒C1を単独で使用した場合と比較して、改善された接着性をもたらす。したがって、触媒C1とさらなる共触媒C3、好ましくはDBUとの組み合わせは、シランベースの化合物R2を含むコーティング組成物において通常好ましい。
【0090】
前記さらなる触媒、好ましくはDBUが存在する場合、さらなる触媒C3に対する触媒C1の質量比は、好ましくは1:1~8:1、より好ましくは2:1~6:1、最も好ましくは3:1~5:1、例えば4:1である。
【0091】
本発明のコーティング組成物は、基板に塗布された場合、クリアコーティングのように完全に透明及び無色でもなく、典型的な顔料コーティングのように完全に不透明でもない着色クリアコート組成物として配合されることができる。したがって、着色クリアコーティングは、透明で着色され、又は半透明で着色されている。着色は、コーティング組成物に一般的に使用される少なくとも1つの顔料を添加することによって達成されることができる。適切な顔料は、例えば、有機及び無機着色顔料、効果顔料及びそれらの混合物である。このような着色顔料及び効果顔料は当業者に知られており、例えば、Roempp-Lexikon Lacke und Druckfarben,GeorgThieme Verlag,Stuttgart,New York,1998年,176頁及び451頁に記載されている。「着色顔料(coloring pigment)」及び「色顔料(color pigment)」という用語は、「視覚効果顔料」及び「効果顔料」という用語と同様に、交換可能である。適切な無機着色顔料は、(i)白色顔料、例えば二酸化チタン、白亜鉛、着色酸化亜鉛、硫化亜鉛、リトポン;(ii)黒色顔料、例えば酸化鉄ブラック、鉄マンガンブラック、スピネルブラック、カーボンブラック;(iii)色顔料、例えばウルトラマリングリーン、ウルトラマリンブルー、マンガンブルー、ウルトラマリンバイオレット、マンガンバイオレット、酸化鉄赤、モリブデンレット、ウルトラマリンレット、酸化鉄茶、ミックスブラウン、スピネル相及びコランダム相、酸化鉄黄、バナジン酸ビスマス;(iv)フィラー顔料、例えば二酸化ケイ素、石英粉、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、天然雲母、天然及び沈殿チョーク、硫酸バリウム、及び(vi)これらの混合物から選択される。
【0092】
適切な有機着色顔料は、(i)モノアゾ顔料、例えばC.I.ピグメントブラウン25、C.I.ピグメントオレンジ5、36及び67、C.I.ピグメントオレンジ5、36及び67、C.I.ピグメントレッド3、48:2、48:3、48:4、52:2、63、112及び170並びにC.I.ピグメントイエロー3、74、151及び183;(ii)ジアゾ顔料、例えばC.I.ピグメントレッド144、166、214及び242、C.I.ピグメントレッド144、166、214及び242並びにC.I.ピグメントイエロー83;(iii)アントラキノン顔料、例えばC.I.ピグメントイエロー147及び177、C.I.ピグメントバイオレット31;(iv)ベンズイミダゾール顔料、例えばC.I.ピグメントオレンジ64;(v)キナクリドン顔料、例えばC.I.ピグメントオレンジ48及び49、C.I.ピグメントレッド122、202及び206並びにC.I.ピグメントバイオレット19;(vi)キノフタロン顔料、例えばC.I.ピグメントイエロー138;(vii)ジケトピロロピロール顔料、例えばC.I.ピグメントオレンジ71及び73並びにC.I.ピグメントレッド254、255、264及び270;(viii)ジオキサジン顔料、例えばC.I.ピグメントバイオレット23及び37;(ix)インダントロン顔料、例えばC.I.ピグメントブルー60;(x)イソインドリン顔料、例えばC.I.ピグメントイエロー139及び185;(xi)イソインドリノン顔料、例えばC.I.ピグメントオレンジ61及びC.I.ピグメントイエロー109及び110;(xii)金属錯体顔料、例えばC.I.ピグメントイエロー153;(xiii)ペリノン顔料、例えばC.I.ピグメントオレンジ43;(xiv)ペリレン顔料、例えばC.I.ピグメントブラック32、C.I.ピグメントレッド149、178及び179、C.I.ピグメントバイオレット29;(xv)フタロシアニン顔料、例えばC.I.ピグメントバイオレット29、ピグメントブルー15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6及び16並びにC.I.ピグメントグリーン7及び36;(xvi)アニリンブラック、例えばC.I.ピグメントブラック1;(xvii)アゾメチン顔料;及び(xviii)これらの混合物から選択される。
【0093】
適切な効果顔料は、(i)プレート状金属効果顔料、例えばプレート状アルミニウム顔料、金青銅、火炎色青銅、酸化鉄-アルミニウム顔料;(ii)真珠光沢顔料、例えば金属酸化物マイカ顔料;(iii)プレート状グラファイト顔料;(iv)プレート状酸化鉄顔料;(v)PVDフィルムからの多層効果顔料;(vi)液晶ポリマー顔料;及び(vii)これらの混合物からなる群から選択されることができる。
【0094】
コーティング組成物は、好ましくは、コーティング組成物の総質量に基づいて、0.1~10質量%、好ましくは1~4質量%の総量で少なくとも1つの色及び/又は効果顔料を含む。
【0095】
本発明のコーティング組成物がクリアコート組成物として配合される場合、それらは好ましくは着色及び/又は効果顔料を含まない、すなわち着色及び/又は効果顔料の量は、コーティング組成物の総質量に基づいて、好ましくは0質量%である。しかしながら、クリアコート材料の光沢を調整するために、フィラー材料及び艶消し剤を添加することも同様に可能である。
【0096】
本発明のコーティング組成物は、好ましくは、かなり少量の架橋剤のみを含み、非常に好ましくは、コーティング組成物に慣用的に使用されるいかなる架橋剤も含まない。したがって、コーティング組成物は、好ましくは、コーティング組成物の総質量に基づいて、総量で、2質量%未満、より好ましくは0質量%の少なくとも1つの架橋剤及び/又はスズ含有化合物を含む。
【0097】
好ましくはコーティング組成物中に少量しか含まれないか、又は全く存在しない前記架橋剤は、アミノ樹脂、ポリイソシアネート、ブロック化ポリイソシアネート、ポリカルボジイミド、光開始剤、及びこれらの混合物である。好ましくは含まれないスズ含有化合物は、スズ触媒である。シランベースの化合物R1と触媒C1及びC2の混合物との組み合わせ、又はシランベースの化合物R2と触媒C1との組み合わせは、ポリイソシアネート又はメラミン樹脂、及び生態学的観点から好ましくないスズ含有化合物を使用することなく、低い硬化温度で十分な架橋をもたらす。
【0098】
本発明のコーティング組成物は、1成分又は2成分コーティング組成物であってよい。本発明のコーティング組成物が1成分組成物として配合される場合、前記コーティング組成物の保存中に架橋反応を回避するために、微量の水を排除する必要がある。好ましくは、本発明のコーティング組成物は、2成分コーティング組成物として配合される。前記2成分コーティング組成物は、好ましくは、シランベースの化合物R1又はR2(任意に非プロトン性溶媒で希釈される)及び、存在する場合には一般式(VI)の任意にエポキシ官能化合物を第1容器中に含み、触媒C1及びC2又はC1及び任意にC3、任意に少なくとも1つのコーティング添加剤及び少なくとも非プロトン性溶媒を第2容器中に含む。次いで、容器1及び2の成分は、使用前に混合される。本発明のコーティング組成物を2成分組成物として配合することにより、微量の水を除く必要がないため、より高い保存安定性がもたらされる。
【0099】
本発明の方法:
本発明はまた、本発明のコーティング組成物が基板上に塗布され、コーティング膜が形成され、その後、前記コーティング膜を硬化させられる、本発明のコーティング組成物による基板をコーティングする方法に関する。
【0100】
第1の代替例によれば、基板(S)は、好ましくは、金属基板、硬化エレクトロコート及び/又は硬化フィラーでコーティングされた金属基板、プラスチック基板、並びに金属及びプラスチック成分を含む基板から、特に好ましくは、金属基板から選択される。金属及びプラスチック基板又は金属及びプラスチック成分を含む基板の場合、前記基板は、本発明の方法のステップ(1)の前に、任意の従来の方法、すなわち、例えば、洗浄(例えば、機械的に及び/又は化学的に)及び/又は公知の化成皮膜(例えば、リン酸化及び/又はクロム化によって)又は表面活性化前処理(例えば、火炎処理、プラズマ処理及びコロナ放電によって)などの任意の従来の方法で前処理されてよい。
【0101】
この点で、好ましい金属基板(S)は、鉄、アルミニウム、銅、亜鉛、マグネシウム及びそれらの合金、並びに鋼から選択される。好ましい基板は、鉄及び鋼の基板であり、例としては、自動車産業分野で使用されるような典型的な鉄及び鋼の基板である。基板自体はどのような形状であってもよく、すなわち、例えば、単純な金属パネル又は複雑な部品、例えば特に自動車の車体及びその部品であってよい。
【0102】
好ましいプラスチック基板(S)は、基本的には、(i)極性プラスチック、例えばポリカーボネート、ポリアミド、ポリスチレン、スチレンコポリマー、ポリエステル、ポリフェニレンオキシド及びこれらのプラスチックのブレンド、(ii)合成樹脂、例えばポリウレタンRIM、SMC、BMC、(iii)ゴム含有率の高いポリエチレン及びポリプロピレンタイプのポリオレフィン基板、例えばPP-EPDM、及び表面活性化ポリオレフィン基板を含む基板又はこれらからなる基板である。プラスチックは、さらに、繊維強化され、特に炭素繊維及び/又は金属繊維を使用して繊維強化されてよい。
【0103】
基板(S)としては、さらに、金属とプラスチックの両方の画分を含むものを使用することも可能である。この種の基板は、例えば、例えば、プラスチック部品を含む車体である。
【0104】
硬化したエレクトロコーティングを有する金属基板は、金属基板(S)上にエレクトロコーティング材料を電気泳動で塗布し、塗布した前記材料を100~250℃、好ましくは140~220℃の温度で、5~60分、好ましくは10~45分硬化させることにより得ることができる。硬化前に、前記材料は、例えば、15~35°Cで、例えば、0.5~30分間フラッシュオフされることができ、及び/又は、好ましくは40~90°Cの温度で、例えば、1~60分間中間乾燥させることができる。適切なエレクトロコート材料及びまたその硬化は、WO2017/088988A1に記載されており、バインダーとしてのヒドロキシ官能性ポリエーテルアミン及び架橋剤としてブロック化ポリイソシアネートを含む。エレクトロコーティング材料の塗布前に、化成被膜、例えばリン酸亜鉛コートを金属基板に塗布することができる。硬化したエレクトロコーティングの膜厚は、例えば、10~40マイクロメートル、好ましくは15~25マイクロメートルである。
【0105】
硬化エレクトロコーティング及び/又は硬化フィラーを有する金属基板は、フィラー組成物を、硬化エレクトロコーティングを任意に有する金属基板に、又は金属基板及び/又はプラスチック基板に塗布することによって、及び、前記フィラー組成物を、40~100℃、好ましくは60~80℃の温度で、5~60分間、好ましくは3~8分間硬化させることによって得ることができる。適切なフィラー組成物は、当業者によく知られており、例えば、BASF Coatings GmbH社製のGlasuritという商品名で市販されている。硬化したフィラーの膜厚は、例えば、30~100マイクロメートル、好ましくは50~70マイクロメートルである。
【0106】
第2の代替例によれば、ステップ(1)の基板は、欠陥部位を有する多層コーティングである。この欠陥部位を有する基板は、したがって、修復又は完全に再コーティングされるべきオリジナル仕上げ(すなわち多層コーティング)である。多層コーティングの上記欠陥部位は、本発明の上記方法によって補修されることができる。この目的のために、多層コーティングにおける修復されるべき表面は、最初に研磨され得る。研磨は、好ましくは、ベースコート及びクリアコート層のいずれか又は全てのコーティング層を部分的に研磨すること、又は研磨除去することによって行われる。ベースコート及びクリアコート層のみを研磨することは、特にOEM自動車補修セグメントにおいて確立されており、そこでは、工場における補修とは対照的に、一般的に、欠陥はベースコート及び/又はクリアコート領域のみに生じ、特に、下層のフィラー層の領域には生じていない。フィラー層にも欠陥が生じている場合、例えば機械的な影響によって生じ、しばしば基板表面(金属又はプラスチック基板)にまで及んでいるスクラッチの場合、基板上に存在する全てのコーティング層の研磨が必要となる。
【0107】
ステップ(1):
本発明の方法のステップ(1)では、本発明のコーティング組成物は、基板(S)上に塗布される。前記コーティング組成物の基板(S)への塗布は、以下のように理解される。当該コーティング組成物は、ステップ(2)で生成されるコーティング膜が基板上に配置されるように塗布されるが、必ずしも基板と直接接触している必要はない。例えば、コーティング膜と基板との間に、他のコーティングが配置されていてもよい。好ましくは、コーティング組成物は、ステップ(1)において基板(S)に直接塗布され、すなわち、ステップ(2)で生成されるコーティング膜が基板(S)に直接接触する。
【0108】
本発明のコーティング組成物は、液体コーティング材料を塗布することについて当業者に公知の方法、例えば、浸漬、ナイフコーティング、スプレー、ローラーなどによって塗布されることができる。好ましいのは、スプレー塗布方法、例えば、例えば圧縮空気スプレー(空気圧塗布)、エアレススプレー、高速回転、静電スプレー塗布(ESTA)、任意でホットスプレー塗布、例えば熱風(ホットスプレー)と組み合わせたスプレー塗布方法を採用することである。非常に特に好ましくは、コーティング組成物は、空気圧スプレー塗布又は静電スプレー塗布によって塗布される。
【0109】
ステップ(2):
本発明の方法のステップ(2)では、コーティング膜はステップ(1)で塗布されたコーティング組成物から形成される。塗布されたコーティング組成物からの膜の形成は、例えば、塗布されたコーティング組成物をフラッシングオフすることによって達成される。「フラッシングオフ」という用語は、原則的に、通常は周囲温度(すなわち、室温)で、コーティング組成物から溶媒を受動的又は能動的に蒸発させるための呼称として理解される。コーティング材料は、塗布直後及びフラッシングの開始時にはまだ液体であるため、均一で滑らかな塗膜を形成するように流動することができる。このように、フラッシング段階の後、塗布されたコーティング組成物と比較してより少ない溶媒を含む比較的滑らかなコーティング膜が得られる。膜はもはや流動性ではないものの、それは依然として例えば軟質である。特に、以下で後述するように、コーティング膜はまだ硬化していない。
【0110】
ステップ(2)におけるコーティング膜の形成は、20~60℃の温度で5分~80分間、好ましくは20~35℃の温度で5分~70分間行われる。
【0111】
ステップ(3):
本発明の方法のステップ(3)では、コーティング膜が硬化される。コーティング膜又は組成物の硬化は、したがって、そのような膜又は組成物の使用可能状態への変換、すなわち、当該コーティング膜を備えた基板がその意図する方法で輸送、保管、及び使用され得る状態への変換であると理解される。硬化されたコーティング膜は、したがって、特に、もはや軟質ではなく、代わりに、下記後述する硬化条件にさらに曝されても、硬度又は基板への接着性などの特性に実質的な変化をもはや示さない固体コーティング膜として調整される。
【0112】
原則として、硬化は、10~180℃、例えば、特に40~90℃の温度で、5~80分間、好ましくは10~50分間行われる。本発明の方法は、低硬化条件が必要な補修用途に特に適しているため、ステップ(3)の硬化は、好ましくは20~30℃の温度で、10~70分間、好ましくは20~60分間行われる。
【0113】
通常、ステップ(3)の後に得られる層の厚さは、15μm~80μm、好ましくは20μm~70μm又は30μm~65μm、例えば40μm~60μmの範囲にある。
【0114】
本発明のコーティング組成物から製造されるコーティング層は、共触媒として金属アルコキシドの代わりにDBU含むコーティング組成物と比較して、湿度条件に対して改善された耐性を有する。さらに、前記コーティング組成物の硬化は低温で行うことができるため、本発明の方法は特に補修用途に適している。硬化されたコーティングは、良好な接着性、迅速な研磨性及び仕上げ研磨性、良好な外観、並びに高い耐スクラッチ性及び耐溶剤性を示す。さらに、不具合又は応力の発生なしに、厚いコーティング層を製造することができる。一般的に使用されるイソシアネート及びメラミン架橋剤並びにスズ触媒が存在しないため、本発明の方法は良好な生態学的プロファイルを有し、厳しい環境規制を満たすことができる。
【0115】
本発明のコーティング組成物について述べたことは、本発明の方法のさらなる好ましい実施形態に関して必要な変更を加えて、コーティングされた基板を調製することに適用される。
【0116】
本発明のコーティングされた基板:
本発明の方法のステップ(3)の終了後の成果物は、本発明のコーティングされた基板である。
【0117】
選択された基板に応じて、コーティング組成物は広範囲の異なる適用領域に適用され得る。多くの種類の基板をコーティングすることができる。したがって、本発明のコーティング組成物は、装飾及び保護コーティングシステムとして、特に輸送手段(特に自動車両、例えばオートバイ、バス、トラック又は自動車)の本体又はそれらの部品への使用に非常に適している。基板は、好ましくは、自動車コーティングに使用される多層コーティングを含む。
【0118】
本発明のコーティング組成物は、建設、内外装;家具、窓及びドア;プラスチック成形品、特にCD及び窓;小型工業部品、コイル、容器及び包装;白物家電;シート;光学部品、電気部品及び機械部品、並びに中空ガラス製品及び日常使用品への使用にも適している。
【0119】
本発明のコーティング組成物及び本発明の方法について述べたことは、本発明によるコーティングされた基板のさらなる好ましい実施形態に関して必要な変更を加えて、適用される。
【0120】
本発明の多層コーティング:
本発明のさらに別の目的は、少なくとも1つが本発明によるコーティング組成物から形成された少なくとも2つのコーティング層からなる多層コーティングである。
【0121】
典型的には、多層コーティングは少なくとも2つのコーティング層を含む。
【0122】
好ましい多層コーティングは、少なくともベースコート層及びクリアコート層を含む。本発明のコーティング組成物は、好ましくは、クリアコート層を形成する。
【0123】
さらに好ましいのは、少なくとも1つのベースコート層(この層は再び少なくとも1つのクリアコート層でコーティングされている)でコーティングされた少なくとも1つのフィラーコート層を含む多層コーティングであり、該クリアコート層は好ましくは本発明のコーティング組成物から形成されている。
【0124】
特に、自動車用コーティングに限定されないが、多層コーティングは、好ましくはエレクトロコート層、該エレクトロコート層の上の少なくとも1つのフィラーコート層、該エレクトロコート層の上の少なくとも1つのベースコート層、及び、該ベースコート層の上の少なくとも1つのクリアコート層を含み、該クリアコート層は好ましくは本発明のコーティング組成物から形成されている。
【0125】
前記多層コーティングは、本発明の方法に関連して前述したように調製され得る。塗布されたコーティング層は、別々に硬化させるか、又は少なくとも2つのコーティング層を同時に硬化させることができる。特に好ましくは、少なくとも1つのベースコート層及びクリアコート層を同時に硬化させる。多層コーティングのコーティング層の塗布、乾燥又はフラッシュオフ及び硬化は、最新の従来技術で周知の方法に従って行われ得る。適切なエレクトロコーティング、フィラー及びベースコート組成物は、例えば、市販されている。適切な基板は、本発明の方法との関連で既に言及されている。
【0126】
本発明のコーティング組成物、本発明の方法及び本発明よるコーティング基板について述べられてきたことは、本発明の多層コーティングのさらなる好ましい実施形態に関して必要な変更を加えて適用される。
【0127】
多層コーティングでコーティングされた基板:
本発明の最後の主題は、前述の多層膜でコーティングされた基板である。
【0128】
本発明のコーティング組成物、本発明の方法、本発明によるコーティングされた基板、及び本発明の多層コーティングについて述べたことは、多層コーティングでコーティングされた本発明の基板のさらなる好ましい実施形態に関して必要な変更を加えて適用される。
【0129】
本発明は、特に以下の実施形態により説明される:
実施形態1:
a)1%未満のイソシアネート含有量を有し、
一般式(I)の少なくとも1つのシラン基と、
-NRX-SiR (OR3-a (I)
任意に一般式(II)の少なくとも1つのシラン基と、
-N[X-SiR (OR3-a[X’-SiR (OR3-b (II)
を含む、少なくとも1つのシランベースの化合物R1と、
式中、
X、X’は、互いに独立して、1~20個の炭素原子を有する直鎖状及び/又は分岐状のアルキレン又はシクロアルキレンラジカルであり;
は、1~10個の炭素原子を含有するアルキル基であり、
、Rは、互いに独立して、アルキル、シクロアルキル、アリール、又はアラルキル基であり、アルキル、シクロアルキル、アリール、又はアラルキル基の炭素鎖が、隣接しない酸素、硫黄又はNR基によって中断されることが可能であり、Rはアルキル、シクロアルキル、アリール、又はアラルキルであり、
n,mは、互いに独立して、0~2であり、ただし、m+n=2であり、
a,bは、互いに独立して、0~2である;
b)一般式(III)の少なくとも1つの触媒C1と、
z[C(R)(R)(R)-(CH-C(=O)-O]Mz+ (III)
式中、
~Rは、互いに独立して、水素又は1~6個の炭素原子を含有するアルキル基であり、ただし、残基R~Rの炭素原子数の合計は3~8個の範囲内であり;
zは1~4であり;及び
nは0又は1~8であり、
ただし、
z=1の場合、MはLi、K及びNaからなる群から選択される;
z=2の場合、MはZn及びZrからなる群から選択される;
z=3の場合、MはBi及びAlからなる群より選択される;
z=4の場合、MはZr及びTiからなる群から選択される;
c)少なくとも1つの金属アルコキシドC2と;
d)1つ以上の非プロトン性有機溶媒と、
を含む、コーティング組成物。
【0130】
実施形態2:
a)1%未満のイソシアネート含有量を有し、
一般式(I)の少なくとも1つのシラン基と、
-NRX-SiR (OR3-a (I)
一般式(II)の少なくとも1つのシラン基と、
-N[X-SiR (OR3-a[X’-SiR (OR3-b (II)
を含む、少なくとも1つのシランベースの化合物R2と、
式中、
X、X’は、互いに独立して、1~20個の炭素原子を有する直鎖状及び/又は分岐状のアルキレン又はシクロアルキレンラジカルであり;
は、1~10個の炭素原子を含有するアルキル基であり、
、Rは、互いに独立して、アルキル、シクロアルキル、アリール、又はアラルキル基であり、アルキル、シクロアルキル、アリール、又はアラルキル基の炭素鎖が、隣接しない酸素、硫黄又はNR基によって中断されることが可能であり、Rはアルキル、シクロアルキル、アリール、又はアラルキルであり、
n,mは、互いに独立して、0~2であり、ただし、m+n=2である、
a,bは、互いに独立して、0~2である;
b)一般式(III)の少なくとも1つの触媒C1と、
z[C(R)(R)(R)-(CH-C(=O)-O]Mz+ (III)
式中、
~Rは、互いに独立して、水素又は1~6個の炭素原子を含有するアルキル基であり、ただし、残基R~Rの炭素原子数の合計は3~8個の範囲内であり、;
zは1~4であり;及び
nは0又は1~8であり、
ただし、
z=1の場合、MはLi、K及びNaからなる群から選択される;
z=2の場合、MはZn及びZrからなる群から選択される;
z=3の場合、MはBi及びAlからなる群より選択される;
z=4の場合、MはZr及びTiからなる群から選択される;
c)1つ以上の非プロトン性有機溶媒、
を含む、コーティング組成物。
【0131】
実施形態3:前記シランベースの化合物R1及びR2は、それぞれ、0.5%未満、より好ましくは0.05~0%のイソシアネート含有量を有することを特徴とする、実施形態1又は2によるコーティング組成物。
【0132】
実施形態3:一般式(I)及び(II)におけるX及びX’は、互いに独立して、1~10個、好ましくは1~6個、より好ましくは2~5個、非常に好ましくは3個の炭素原子を有する直鎖状アルキレンラジカルを表すことを特徴とする、先行する実施形態のいずれか1つによるコーティング組成物。
【0133】
実施形態4:一般式(I)におけるRは、2~8個の炭素原子、好ましくは4~6個の炭素原子、非常に好ましくは4個の炭素原子を含むアルキル基であることを特徴とする、先行する実施形態のいずれか1つによるコーティング組成物。
【0134】
実施形態5:式(I)及び(II)におけるRは、互いに独立して、C~C10アルキル基、好ましくはC~Cアルキル基、非常に好ましくはCアルキル基を表すことを特徴とする、先行する実施形態のいずれか1つによるコーティング組成物。
【0135】
実施形態6:式(I)及び(II)におけるa及び式(II)におけるbは、互いに独立して、0であることを特徴とする、先行する実施形態のいずれか1つによるコーティング組成物。
【0136】
実施形態7:前記シランベースの化合物R1が、一般式(I)及び(II)の前記シラン基全体に基づいて、それぞれの場合に、一般式(I)の少なくとも1つのシラン基を、50~100mol%、好ましくは80~100mol%、より好ましくは95~100mol%、及び、一般式(II)の少なくとも1つのシラン基を、0~50mol%、好ましくは0~20mol%、より好ましくは0~5mol%を含有することを特徴とする、実施形態1及び3~6のいずれか1つによるコーティング組成物。
【0137】
実施形態8:前記シランベースの化合物R2が、一般式(I)及び(II)の前記シラン基の全体に基づいて、それぞれの場合に、一般式(I)の少なくとも1つのシラン基を50~99.9mol%、好ましくは80~99.9mol%、より好ましくは95~99.9mol%、及び、一般式(II)の少なくとも1つのシラン基を0.01~50mol%、好ましくは0.01~20mol%、より好ましくは0.01~5mol%含有することを特徴とする、実施形態2~6のいずれか1つによるコーティング組成物。
【0138】
実施形態9:前記シランベースの化合物R1は、少なくとも1つのポリイソシアネートを、一般式(Ia)
HNR-X-SiR (OR3-a (Ia)
の少なくとも1つの化合物と反応させ、
及び、任意に、一般式(IIa)
HN[X-SiR (OR3-a[X’-SiR (OR3-b (IIa)
の少なくとも1つの化合物と反応させることによって調製され、
式中、
X、X’は、互いに独立して、1~20個の炭素原子を有する直鎖状及び/又は分岐状のアルキレン又はシクロアルキレンラジカル、好ましくは3個の炭素原子を有する直鎖状アルキレンであり、
は、1~10個の炭素原子を含有するアルキル基、好ましくは4個の炭素原子を含む直鎖状アルキル基であり、
、Rは、互いに独立して、アルキル、シクロアルキル、アリール、又はアラルキル基であり、アルキル、シクロアルキル、アリール、又はアラルキル基の炭素鎖が、隣接しない酸素、硫黄又はNR基によって中断されることが可能であり、Rはアルキル、シクロアルキル、アリール、又はアラルキル、好ましくはC1アルキル基であり、
n,mは、互いに独立して、0~2であり、ただし、m+n=2であり、
a,bは、互いに独立して、0~2、好ましくは0である、
ことを特徴とする、実施形態1及び3~7のいずれか1つによるコーティング組成物。
【0139】
実施形態10:前記シランベースの化合物R2は、少なくとも1つのポリイソシアネートを、一般式(Ia)
HNR-X-SiR (OR3-a (Ia)
少なくとも1つの化合物と反応させ、
及び、任意に、一般式(IIa)
HN[X-SiR (OR3-a[X’-SiR (OR3-b (IIa)
の少なくとも1つの化合物と反応させることによって調製され、
式中、
X、X’は、互いに独立して、1~20個の炭素原子を有する直鎖状及び/又は分岐状のアルキレン又はシクロアルキレンラジカル、好ましくは3個の炭素原子を有する直鎖状アルキレンであり;
は、1~10個の炭素原子を含有するアルキル基、好ましくは4個の炭素原子を含む直鎖状アルキル基であり、
、Rは、互いに独立して、アルキル、シクロアルキル、アリール、又はアラルキル基であり、アルキル、シクロアルキル、アリール、又はアラルキル基の炭素鎖が、隣接しない酸素、硫黄又はNR基によって中断されることが可能であり、Rはアルキル、シクロアルキル、アリール、又はアラルキル、好ましくはC1アルキル基であり、
n,mは、互いに独立して、0~2であり、ただし、m+n=2であり、
a,bは、互いに独立して、0~2、好ましくは0である、
ことを特徴とする、実施形態2~6及び8のいずれか1つによるコーティング組成物。
【0140】
実施形態11:前記少なくとも1つのポリイソシアネートは、2~6、好ましくは2~5、非常に好ましくは2~3.5の平均イソシアネート官能基を有することを特徴とする、実施形態9又は10によるコーティング組成物。
【0141】
実施形態12:前記ポリイソシアネートは、ヘキサメチレンジイソシアネートウレチオン、ヘキサメチレンジイソシアネート、1-イソシアナト-4-[(4-イソシアナトシクロヘキシル)メチル]-シクロヘキサン及びヘキサメチレンジイソシアネート三量体から選択されることを特徴とする、実施形態9~11のいずれか1つによるコーティング組成物。
【0142】
実施形態13:前記シランベースの化合物R1及びR2は、コーティング組成物の総質量に基づいて、それぞれの場合に、25~95質量%、より好ましくは35~90質量%、最も好ましくは40~80質量%の総量でそれぞれ存在することを特徴とする、先行する実施形態のいずれか1つによるコーティング組成物。
【0143】
実施形態14:一般式(III)における残基R~Rの前記炭素原子数の和は、3~5又は5~8であることを特徴とする、先行する実施形態のいずれか1つによるコーティング組成物。
【0144】
実施形態15:一般式(III)におけるzは、1、3又は4であり、好ましくは1又は4であることを特徴とする、先行する実施形態のいずれか1つによるコーティング組成物。
【0145】
実施形態16:一般式(III)におけるnは、0又は2~6であり、好ましくは0又は4であることを特徴とする、先行する実施形態のいずれか1つによるコーティング組成物。
【0146】
実施形態17:一般式(III)におけるnは0であり、残基R及びRは、互いに独立して、直鎖状又は分岐状のC~Cアルキル基であり、残基Rはメチル基であり、ただし、残基R~Rの前記全炭素原子の和は8であることを特徴とする、先行する実施形態のいずれか1つによるコーティング組成物。
【0147】
実施形態18:一般式(III)におけるnが1~8、好ましくは4であり、残基R~Rは互いに独立して、メチル基であることを特徴とする、実施形態1~16のいずれか1つによるコーティング組成物。
【0148】
実施形態19:一般式(III)におけるMは、カリウム、リチウム又はチタン、好ましくはカリウム又はチタンであることを特徴とする、先行する実施形態のいずれか1つによるコーティング組成物。
【0149】
実施形態20:一般式(III)の前記少なくとも1つの触媒C1は、カリウム、リチウム又はチタンのネオデカノエート及び/又はエチルヘキサノエートであり、好ましくはカリウム(I)ネオデカノエート、チタン(IV)ネオデカノエート、カリウム(I)2-エチルヘキサノエート、又はチタン(IV)2-エチルヘキサノエートであることを特徴とする、先行する実施形態のいずれか1つによるコーティング組成物。
【0150】
実施形態21:前記少なくとも1つの触媒C1は、100gのシランベースの化合物R1又はR2固体あたり、1mmol~50mmol、好ましくは5mmol~40mmol、非常に好ましくは15~25mmol金属の総量で存在することを特徴とする、先行する実施形態のいずれか1つによるコーティング組成物。
【0151】
実施形態22:前記少なくとも1つの金属アルコキシドC2は、一般式(IV)
[(OR(Rn-m (IV)
式中、
は、直鎖状又は分岐状のC1~C10のアルキル基であり、
は、ハロゲン基、アセチルアセトネート基、アルキルアセトアセテート基、又はエタノールアミナト基であり、
は、ケイ素、チタン、タンタル、ジルコニウム、ホウ素、アルミニウム、マグネシウム又は亜鉛から選ばれる少なくとも1つの金属を表し、
mは0~4の整数であり、
nはMの2~5の原子価を表す、
の金属アルコキシドから選択されることを特徴とする、実施形態1、3~7、9及び11~21のいずれか1つによるコーティング組成物。
【0152】
実施形態23:一般式(IV)における前記Rは、C~Cアルキル基から、好ましくはC又はCアルキル基から選択され、及び/又は一般式(IV)におけるRは、アルキルアセトアセテート基から、好ましくはエチルアセトアセテート基からから選択されることを特徴とする、実施形態22によるコーティング組成物。
【0153】
実施形態24:一般式(IV)におけるmは、0又は1~4、より好ましくは0又は2~4、非常に好ましくは0、2又は4であることを特徴とする、実施形態22又は23によるコーティング組成物。
【0154】
実施形態25:一般式(IV)におけるMは、チタンから選択される金属であり、nは4の原子価を表すことを特徴とする、実施形態22~24のいずれか1つによるコーティング組成物。
【0155】
実施形態26:前記金属アルコキシドC2は、チタン(IV)イソプロポキシド及び/又はチタン(IV)n-ブトキシド及び/又はチタン(IV)ビス(エチルアセトアセテート)ジイソプロポキシドから選択されることを特徴とする、実施形態1、3~7、9及び11~25のいずれか1つによるコーティング組成物。
【0156】
実施形態27:前記少なくとも1つの金属アルコキシドC2、好ましくは一般式(IV)の金属アルコキシドは、100gのシランベースの化合物R1固体に基づいて、それぞれの場合に、2.5~40mmol金属の総量で存在することを特徴とする、実施形態1、3~7、9及び11~26のいずれか1つによるコーティング組成物。
【0157】
実施形態28:前記少なくとも1つの金属アルコキシドC2、好ましくは前記一般式(IV)の金属アルコキシドに対する一般式(III)の触媒C1の、金属対金属比は、1:2~2:1であることを特徴とする、実施形態1、3~7、9及び11~27のいずれか1つによるコーティング組成物。
【0158】
実施形態29:前記少なくとも1つの非プロトン性溶媒は、脂肪族及び/又は芳香族炭化水素、ケトン、エステル、エーテル、又はそれらの混合物からなる群から選択され、好ましくはエステル、非常に好ましくは酢酸ブチルであることを特徴とする、先行する実施形態のいずれか1つによるコーティング組成物。
【0159】
実施形態30:前記コーティング組成物が、前記コーティング組成物の総質量に基づいて、それぞれの場合に、10質量%未満、好ましくは5質量%未満、より好ましくは1質量%未満、非常に好ましくは0質量%の水及び/又はプロトン性溶媒の総量を含むことを特徴とする、先行する実施形態のいずれか1つによるコーティング組成物。
【0160】
実施形態31:前記少なくとも1つの非プロトン性溶媒は、前記コーティング組成物の総質量に基づいて、それぞれの場合に、1~70質量%、より好ましくは20~60質量%、最も好ましくは30~50質量%の総量で存在することを特徴とする、先行する実施形態のいずれか1つによるコーティング組成物。
【0161】
実施形態32:一般式(V)
C(R)(R)(R)-(CH-C(=O)-OH (V)
式中、
~Rは、互いに独立して、水素又は1~6個の炭素原子を含有するアルキル基であり、ただし、残基RからRの炭素原子数の合計は3~8個、好ましくは5~8個であり;
nは0又は1~8、好ましくは0又は4である
の少なくとも1つのカルボン酸をさらに含むことを特徴とする、先行する実施形態のいずれか1つによるコーティング組成物。
【0162】
実施形態33:前記一般式(V)の少なくとも1つのカルボン酸は、ネオデカン酸であることを特徴とする、実施形態32によるコーティング組成物。
【0163】
実施形態34:前記一般式(V)の少なくとも1つのカルボン酸、好ましくは、ネオデカン酸は、一般式(III)の触媒C1の総量に基づいて、それぞれの場合に、0~80質量%、好ましくは30~70質量%、非常に好ましくは50~60質量%の総量で存在することを特徴とする、実施形態32又は33によるコーティング組成物。
【0164】
実施形態35:一般式(VI)
(X)-R-Ox (VI)
式中、
Oxはオキシラン基であり;
は、2~15個の炭素原子を含有し、任意にエーテル基及び/又はエステル基を含む脂肪族ヒドロカルビル基であり;
nは1~5であり;及び
Xは、互いに独立して、Ox又は-Si(R3-v(R基であり、vは0又は1であり、Rは1~4の炭素原子を含むアルコキシ基であり、Rは1~4の炭素原子を含むアルキル基又は1~4の炭素原子を含むアルコキシ基である、
の少なくとも1つのエポキシ官能性化合物をさらに含むことを特徴とする、先行する実施形態のいずれか1つによるコーティング組成物。
【0165】
実施形態36:一般式(VI)におけるRは、脂肪族ヒドロカルビル基-(CH-O-CH又はシクロヘキシルエチル基であることを特徴とする、実施形態35によるコーティング組成物。
【0166】
実施形態37:一般式(VI)におけるnは、1であることを特徴とする、実施形態35又は36によるコーティング組成物。
【0167】
実施形態38:一般式(VI)におけるXは、-Si(R3-v(R基であり、ここで、vは0又は1であり、Rは1~4つの炭素原子を含有するアルコキシ基であり、Rは1つの炭素原子を含有するアルコキシ基又は1つの炭素原子を含有するアルキル基であることを特徴とする、実施形態35~37のいずれか1つによるコーティング組成物。
【0168】
実施形態39:前記一般式(VI)の少なくとも1つのエポキシ化合物は、(3-グリシドオキシプロピル)トリメトキシシラン((3-glycidoxypropyl) trimethoxysilane)、ジメトキシ(3-グリシドキシプロピル)メチルシラン(dimethoxy(3-glycidyloxypropyl)methylsilane)、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(2-(3,4-epoxycyclohexyl)ethyltrimethoxysilane)、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(trimethylolpropane triglycidylether)、及び2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール(2,2-bis(hydroxymethyl)-1,3-propanediol)と2-(クロロメチル)オキシラン(2-(chloromethyl)oxirane)の反応生成物、好ましくは(3-グリシドオキシプロピル)トリメトキシシラン、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、及び、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオールと2-(クロロメチル)オキシランの反応生成物から選択されることを特徴とする、実施形態35~38のいずれか1つによるコーティング組成物。
【0169】
実施形態40:前記一般式(VI)の少なくとも1つのエポキシ官能性化合物は、前記コーティング組成物の固形分に基づいて、それぞれの場合に、0~20質量%、より好ましくは2.5~15質量%、最も好ましくは5~10質量%の総量で存在することを特徴とする、実施形態35~39のいずれか1つによるコーティング組成物。
【0170】
実施形態41:前記コーティング組成物は、触媒C1及びC2とは異なる少なくとも1つの触媒C3をさらに含み、前記触媒C3が、二環式第三級アミン、非常に好ましくはDBUから選択されることを特徴とする、先行する実施形態のいずれか1つによるコーティング組成物。
【0171】
実施形態42:前記コーティング組成物は、前記さらなる触媒C3に対する触媒C1の質量比が、好ましくは1:1~8:1、より好ましくは2:1~6:1、最も好ましくは3:1~5:1、例えば4:1であることを特徴とする、実施形態41によるコーティング組成物。
【0172】
実施形態43:前記コーティング組成物は、(i)UV吸収剤;(ii)HALS化合物、ベンゾトリアゾール又はオキサラニリドなどの光安定剤;(iii)たるみ制御剤(尿素結晶変性樹脂)、有機増粘剤及び無機増粘剤などのレオロジー調整剤;(iv)フリーラジカル捕捉剤;(v)スリップ添加剤;(vi)重合阻害剤;(vii)消泡剤;(viii)湿潤剤;(ix)フッ素化合物;(x)接着促進剤;(xi)レベリング剤;(xii)セルロース誘導体などのフィルム形成助剤;(xiii)シリカ、アルミナ又は酸化ジルコニウムに基づくナノ粒子などのフィラー;(xiv)難燃剤;及び(xv)これらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つのコーティング添加剤をさらに含むことを特徴とする、先行する実施形態のいずれか1つによるコーティング組成物。
【0173】
実施形態44:クリアコート組成物又は着色クリアコート組成物であることを特徴とする、先行する実施形態のいずれか1つによるコーティング組成物。
【0174】
実施形態45:前記コーティング組成物は、前記コーティング組成物の総質量に基づいて、総量で2質量%未満、好ましくは0質量%の少なくとも1つの架橋剤及び/又はスズ含有化合物を含むことを特徴とする、先行する実施形態のいずれか1つによるコーティング組成物。
【0175】
実施形態46:前記架橋剤は、アミノ樹脂、ポリイソシアネート、ブロック化ポリイソシアネート、ポリカルボジイミド、光開始剤、及びこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、実施形態45によるコーティング組成物。
【0176】
実施形態47:好ましくは前記シランベースの化合物R1又はR2及び、存在する場合には、前記一般式(VI)のエポキシ官能化合物を第1容器中に含み、前記触媒C1及びC2、又は、C1及び任意にC3、前記任意の少なくとも1つのコーティング添加剤及び前記少なくとも非プロトン性溶媒を第2容器中に含む、2成分コーティング組成物であることを特徴とする、先行する実施形態のいずれか1つによるコーティング組成物。
【0177】
実施形態48:基板(S)上にコーティングを形成する方法であって、以下のステップ:
(1)基板(S)上に、実施形態1~47のいずれか1つのコーティング組成物を塗布するステップと;
(2)ステップ(1)で塗布された前記コーティング組成物からコーティング膜を形成するステップと;
(3)ステップ(2)で形成された前記コーティング膜を硬化させるステップと、
を含む、方法。
【0178】
実施形態49:前記基板(S)は、金属基板、硬化エレクトロコート及び/又は硬化フィラーでコーティングされた金属基板、プラスチック基板、及び、金属及びプラスチック成分を含む基板から、特に好ましくは、金属基板から選択されることを特徴とする、実施形態48による方法。
【0179】
実施形態50:前記金属基板(S)は、鉄、アルミニウム、銅、亜鉛、マグネシウム及びそれらの合金、並びに鋼を含むか、又はそれらからなる群から選択されることを特徴とする、実施形態49による方法。
【0180】
実施形態51:前記ステップ(1)の基板は、欠陥部位を有する多層コーティングであることを特徴とする、実施形態48による方法。
【0181】
実施形態52:前記ステップ(2)におけるコーティング膜の形成は、20~60℃の温度で5分~80分間行われ、好ましくは20~35℃の温度で5分~70分間行われることを特徴とする、実施形態48~51のいずれか1つによる方法。
【0182】
実施形態53:前記ステップ(3)の硬化は、20~30℃の温度で10~70分間、好ましくは20~60分間行われることを特徴とする、実施形態48~52のいずれか1つによる方法。
【0183】
実施形態54:実施形態48~53のいずれか1つの方法によって得られるコーティングされた基板。
【0184】
実施形態55:コーティング層の少なくとも1つが実施形態1~47のいずれか1つによるコーティング組成物から形成される、少なくとも2つのコーティング層を含む多層コーティング。
【0185】
実施形態56:実施形態55で定義される多層コーティングでコーティングされた基板。
【0186】
実施例
次に、本発明は実施例を用いてさらに詳細に説明されるが、本発明はこれらの実施例に決して限定されない。さらに、実施例中の「部」、「%」及び「比」は、特に断らない限り、それぞれ「質量部」、「質量%」及び「質量比」を表す。
【0187】
1.決定の方法
1.1 固体含有量(固形分、不揮発性分)
不揮発性画分は、DIN EN ISO 3251(日付:2008年6月)に従って決定される。それは、あらかじめ乾燥させたアルミ皿に試料1gを秤量し、130℃の乾燥炉で60分間乾燥後、デシケーターで冷却し、再度秤量することを含む。使用した試料の総量に対する残留分が不揮発性分に相当する。
【0188】
1.2 イソシアネート含有量(NCO含有量)
イソシアネート含有量は、DIN EN ISO 3251:2008-06、DIN EN ISO 11909:2007-05及びDIN EN ISO 14896:2009-07に基づく方法で、キシレン中の2%N,N-ジブチルアミン溶液の過剰分をアセトン/N-エチルピロリドン(1:1体積%)中の試料の均一溶液に添加することにより、アミン過剰分を0.1N塩酸で電位差逆滴定することにより決定された。固形分に基づくシランベースの化合物RのNCO含有量は、溶液中のポリマーの割合(固体含有量) によって計算されることができる。
【0189】
1.3 多層コーティング(MC)の調製
鋼パネルは、まずGardobond R 亜鉛リン酸化物(Chemetall GmbHから市販されている)で前処理され、その後17~25μmの乾燥膜厚でEDコート(Cathogard 800,BASF Coatings GmbHから市販されている)でコーティングされた。
【0190】
その後、電着パネルは、温度25℃、相対湿度65%で、空気圧式スプレーガンを用いて以下のようにコーティングされた。プライマー(Glasurit 285-270,BASF Coatings GmbH)を、60℃での硬化後の膜厚が50~70μmとなるように電着パネルに塗布した。続いて、プライマーを研磨し、市販の水性ベースコート(Glasurit Line 90-1250 Deep Black,BASF Coatings GmbH)を、約30分間接触乾燥するまでフラッシュオフ後の膜厚が10~20μmとなるように塗布した。最後の工程では、下記の表1に記載のそれぞれのクリアコートC-C1及びC-I1~C-I7をそれぞれのベースコート層の上に塗布し、約15~30分間、接触乾燥するまで周囲条件で硬化させた。クリアコート層の乾燥膜厚は35~80μmであった。各クリアコートC-C1及びC-I1~C-I7について、2つのパネルを前述のように調製した。
【0191】
1.4 テスト測定
1.4.1 不粘着時間
不粘着時間は、DIN EN ISO 9117-5:2012-11に従ったギロチンテストで決定される。この試験では、1.5gの海砂がクリアコートの上に注がれる。余分な砂はパネルから流れ出る。その後、パネルを表面30cmから自己落下ガイド方式で落下させることができる装置(ギロチン)に移す。パネルは、表面のエッジで落下し、その後、残りの砂粒がないかチェックをされる。 コーティング表面に砂粒が残っていなければ、ギロチンテストはOKで、コーティングは「不粘着」であるとみなされる。
【0192】
1.4.2 キシレンテスト
前述の多層コーティングの調製から7日後、キシレンの大滴(約2mL)をコーティングに塗布し、4分後に再度除去する。1時間後、表面をPK700洗浄剤(R-M Automotive Refinish Paintsから入手可能)で洗浄し、コーティングを検査する。液滴のエッジの視認性は、0から5の範囲で測定する(0はリングが見えないこと、5はクリアコートが完全に除去されていることを意味する)。
【0193】
1.4.3 クロスカット接着
クロスカット接着は、前述の多層コーティングの調製から7日後にDIN EN ISO 2409:2013-06に従って実施された。
【0194】
1.4.4 湿度曝露後の膨れ(blistering)、白色化、クラック、膨潤及び剥離の視覚的評価
多層コーティングの調製から7日後、それぞれのパネルを40℃、湿度100%の気候チャンバーに240時間移した。その後、DIN EN ISO 4628-2:2016-07に従って、膨れ及び白色化について目視で検査した。また、クラック、膨潤及び剥離の評価も視覚的に行った。クラック、膨潤及び剥離が検出されなかった場合、各基準の評価は「ノー」である。それ以外の場合、評価は「イエス」である。
【0195】
2.異なるシランベースの化合物R-I1~R-I4の調製
2.1 シランベースの化合物R-I1
シランベースの化合物R-I1が、26.30gのヘキサメチレンジイソシアネート(HDI、モノマー)と2当量のN-(n-ブチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(73.70g)を60℃で、残存NCO量が0%に達するまで無溶媒で反応させて作調製された。
【0196】
2.2 シランベースの化合物R-I2
シランベースの化合物R-I2は、HDIベースのウレトジオン(35.59g、DESMODUR XP2840)と3当量のN-(n-ブチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(44.41g)を20gの酢酸ブチル中、60℃で残存NCO量が0%に達するまで反応させることにより調製された。
【0197】
2.3 シランベースの化合物R-I3
シランベースの化合物R-I3は、HDI-三量体(35.84g、Desmodur N3300)と3当量のN-(n-ブチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(44.16g)を酢酸ブチル20g中、60℃で残存NCO量が0%に達するまで反応させることにより調製された。
【0198】
2.4 シランベースの化合物R-I4
シランベースの化合物R-I4は、4,4′-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(28.60g、Desmodur W)と2当量のN-(n-ブチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(51.40g)を酢酸ブチル20g中、60℃で残存NCO量が0%に達するまで反応させることにより調製された。
【0199】
3.クリアコート組成物C-C1及びC-I1~C-I7の調製
比較コーティング組成物C-C1の成分、及び本発明のコーティング組成物C-I1~C-I7の成分を、表1に示される量で混合した。最初に成分Iを混合し、その後、事前に混合した成分IIを添加した。全ての量は質量部(すなわちグラム)である。全てのクリアコート組成物は、55.0%の不揮発分を有していた。
【0200】
【表1】
【0201】
4.成果
クリアコート組成物C-C1及びC-I1~C-I7を用いてポイント1.3に従って調製した多層コーティングについて得られた結果を表2及び3に挙げる。
【0202】
【表2】
【0203】
【表3】
【0204】


シランベースの化合物R1及び触媒C1と金属アルコキシドC2の混合物を含有する本発明のコーティング組成物から調製されたクリアコート層を含む本発明の多層コーティングMC2~MC8は、シランベースの化合物R1と触媒C1及びDBUを含むクリアコート組成物から調製された非発明の多層コーティングMC1と同等の接着特性を有する(表2参照)。しかしながら、本発明の多層コーティングは、湿度条件に対して著しく改善された耐性を示す(表3参照)。非発明の多層コーティングMC1が湿度条件に曝された場合に観察される白色化及び膨れは、本発明の多層コーティングMC2~MC7を湿度条件に曝した場合に観察される白色化及び膨れよりも著しく高い。共触媒DBUをシランベースの化合物R1、触媒C1及び金属アルコキシドC2と組み合わせた場合(多層コーティングMC8)、触媒C1及びDBUを含む多層コーティングMC1と比較して改善された耐湿性が得られ、金属アルコキシドC2がクリアコートシステムに導入する有益な効果を示す。
【0205】
要約すると、シランベースの化合物R1を特定の触媒混合物と組み合わせて使用すると、ポリイソシアネート及びメラミン樹脂のような望ましくない架橋剤及びスズ含有触媒を使用せずにコーティング組成物の十分な硬化と接着を得ることができる。さらに、本発明の組成物は常温で硬化させることができるため、補修用途に特に適している。