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  • 特許-加圧流体複合容器の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】加圧流体複合容器の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 65/02 20060101AFI20241007BHJP
【FI】
B29C65/02
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022528669
(86)(22)【出願日】2020-11-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-26
(86)【国際出願番号】 EP2020080624
(87)【国際公開番号】W WO2021099094
(87)【国際公開日】2021-05-27
【審査請求日】2023-09-11
(31)【優先権主張番号】1912927
(32)【優先日】2019-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】591036572
【氏名又は名称】レール・リキード-ソシエテ・アノニム・プール・レテュード・エ・レクスプロワタシオン・デ・プロセデ・ジョルジュ・クロード
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】パパン、フィリップ
【審査官】久慈 純平
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第3747626(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0105501(US,A1)
【文献】特開2000-263671(JP,A)
【文献】特開2019-51475(JP,A)
【文献】仏国特許出願公開第3037633(FR,A1)
【文献】仏国特許出願公開第3076594(FR,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 65/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一のポリオレフィン樹脂系テープを巻いて加圧流体複合容器の第一の層(2)を形成するステップと、前記第一の層(2)の上に、温度に依存する可変浸透特性、特に所定の温度閾値を下回る場合は浸透性を、及び前記温度閾値を超えた場合は不浸透性を有する材料からなる中間の第二の層(3)を堆積させるステップと、を含む、加圧流体複合容器の製造方法であって、前記方法が、第二の樹脂系テープを前記中間の第二の層(3)の上に巻き付けて、第三の層(4)を形成するステップを含み、前記第三の層(4)を形成する前記テープが前記第一の層(2)とは異なる樹脂をベースとすることと、前記中間の第二の層(3)を堆積させる前記ステップ中及び前記第二のテープを巻き付ける前記ステップ中に、前記中間の第二の層(3)が前記閾値温度より高い温度に保たれることを特徴とし、前記方法が、次に、前記中間の第二の層(3)を前記閾値温度より低い温度まで冷却するステップを含み、その間に前記第一の層(2)及び第三の層(4)が各々、それらの樹脂の融点より高い温度に保持される、方法。
【請求項2】
前記第一のポリオレフィン樹脂系テープは、ガラス及び/又はカーボンファイバ等の補強繊維を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記中間の第二の層(3)の厚さは前記第一の層(2)の厚さより薄いことを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第三の層(4)を形成する前記テープは熱可塑性樹脂をベースとすることを特徴とする、請求項1~3の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記第三の層(4)を形成する前記テープは、以下の材料:PET、PBT、PAのうちの少なくとも1つを含む樹脂をベースとすることを特徴とする、請求項1~4の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記第一の層(2)及び前記第三の層(4)の前記樹脂の融点は40℃の温度範囲内であることを特徴とする、請求項1~5の何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記第三の層(4)の前記樹脂の融点は前記第一の層(2)の融点より高いことを特徴とする、請求項1~6の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記中間の第二の層(3)はフリースを含むか、それからなることを特徴とする、請求項1~7の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記中間の第二の層(3)は以下の材料:ポリエステル、ポリアミド、又はそれらの組合せ、のうちの少なくとも1つからなることを特徴とする、請求項1~8の何れか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記中間の第二の層(3)の単位面積当たり重量は50~800グラム/mであることを特徴とする、請求項1~9の何れか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記容器の前記第一の層(2)は前記容器に貯蔵される予定の流体と接触することになるシールライナを形成するか、又は前記容器内に貯蔵される予定の前記流体と接触することになるシールライナの外面上に位置付けられることを特徴とする、請求項1~10の何れか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加圧流体複合容器の製造方法に関する。
【0002】
本発明は、より詳しくは、加圧流体複合容器の製造方法であって、第一のポリオレフィン樹脂系テープを巻いて容器の第一の層を形成するステップと、第一の層の上に、温度に依存する可変浸透特性、特に所定の温度閾値を下回る場合は浸透性を、及び温度閾値を超えた場合は不浸透性を有する材料からなる中間の第二の層を堆積させるステップと、を含む方法に関し、方法は、第二の樹脂系テープを中間の第二の層の上に巻き付けて、第三の層を形成するステップを含む。
【0003】
本発明は、ポリオレフィン樹脂で補強されたテープを使って製造された熱可塑性複合容器に関する。用途によっては、例えば支持材又は付属品等の様々な要素を容器の外面に取り付けなければならない。
【背景技術】
【0004】
ポリオレフィン樹脂、例えばポリブテン-1、ポリエチレン、及びポリプロピレン等は、容器の製造中に追加の層との結合を形成することには適していない。
【0005】
ポリオレフィン樹脂は、かなり安定な化学構造(非常に安定な外郭電子構造)を有する。その結果、この樹脂を他の層又は材料に結合するための化学結合(構造的結合)を形成することは、かなり困難である。
【0006】
この問題を克服するための手法がある。このような樹脂の他の層又は材料との結合を形成する能力を改善するためには、例えば材料の表面への薬品浸食、プラズマ処理(例えば、「マティス(Matis)」処理)、火炎処理、又は表面研磨を提供することが既知の慣行である。これらの解決策の目的は、表面層の化学的性質を変化させて、接着剤を用いた化学的結合を可能にすることである。
【0007】
接着剤の中には、ポリオレフィン上できわめて良好な接着結果をもたらすものがあるものの、そのオープンタイムは非常に短い(特に例えば3M DP 8005等のシアノアクリレート接着剤)。これらの接着剤は、健康上の問題の原因にもなり得る。
【0008】
また別の接着剤は、結合の最大強度を生成するために、ごく特定的で複雑なプロトコルにしたがって塗布しなければならない。それによって結合の質はオペレータにより左右されることになる(接着剤を塗布するための温度、接着剤の成分の正確な比率、水分レベル、接着剤の厚さ等)。
【0009】
しかしながら、これらの既知の解決策は、時間の経過と共に、必要な結果が得られなくなる。時間が経つと、結合の質の劣化が見られる。
【0010】
これらの問題にかかわらず、前記ポリオレフィン樹脂は多くの場合、特にその有利なコストから、複合容器を製造するために最も広く用いられている樹脂である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の1つの目的は、上述の先行技術の欠点の全部又は一部を克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そのために、本発明による方法は、上の序文に記された総称定義にも適合するが、基本的に、第三の層を形成するテープが第一の層とは異なる樹脂をベースとすることと、中間の第二の層を堆積させるステップ中及び第二のテープを巻き付けるステップ中に、中間の第二の層が閾値温度より高い温度に保たれることを特徴とし、方法はその後、中間の第二の層を閾値温度より低い温度まで冷却するステップを含み、その間に第一及び第三の層は各々、それらの樹脂の融点より高い温度に保持される。
【0013】
さらに、本発明の実施形態は以下の特徴の1つ又は複数を含むことができる:
- 第一のポリオレフィン樹脂系テープは、ガラス及び/又はカーボンファイバ等の補強繊維を含む。
- 第二の層の厚さは第一の層の厚さより薄い。
- 第三の層を形成するテープは熱可塑性樹脂をベースとする。
- 第三の層を形成するテープは、以下の材料のうちの少なくとも1つを含む樹脂をベースとする:PET、PBT、PA、ポリマ、及びコポリマ。
- 第一及び第三の層の樹脂の融点は40℃の温度範囲内である。
- 第三の層の樹脂の融点は第一の層の融点より高い。
- 中間の第二の層はフリースを含むか、それからなる。
- 中間の第二の層は以下の材料のうちの少なくとも1つからなる:ポリエステル、ポリアミド、又はそれらの組合せ。
- 中間の第二の層は単位面積当たり重量が50~800グラム/mである材料からなる。
- 容器の第一の層は、容器に貯蔵される予定の流体と接触することになるシールライナを形成するか、又は容器内に貯蔵される予定の流体と接触することになるシールライナの外面上に位置付けられる。
【0014】
本発明はまた、特許請求の範囲内の前述又は後述の特徴のあらゆる組合せを含むあらゆる他の装置(容器)又は方法にも関することができる。
【0015】
その他の具体的な特徴と利点は、下記のような図面に関して行われる以下の説明を読めば明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明による容器の構造の例を図解する概略的な部分断面図を示す。
図2】本発明による製造方法のステップの例を図解する概略部分図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
加圧流体複合容器の製造方法は、第一のポリオレフィン樹脂系テープを巻いて、容器の第一の層2を形成するステップを含む。
【0018】
図1]に示されるように、この第一の層2は、貯蔵器内に貯蔵される予定の流体と接触することになるシールライナを形成することができる。もちろん、この第一の層2はシールライナの外面を包み、容器(貯蔵空間5)内に貯蔵される予定の流体と接触することになり得る。この事前形成されたシールライナは、例えばプラスチック又は金属から形成できる。すなわち、最終的な容器は例えばタイプIII、IV、又はV容器とすることができる。図のように、容器には基底部を設けることができ、そこに弁6が取り付けられる。
【0019】
第一のテープは、内圧を受ける容器の機械的強度を確保する層を形成するように構成できる。
【0020】
方法は次に、第一の層2の上に、温度に依存する可変的な浸透特性、特に所定の温度閾値を下回る場合に浸透性、及び温度閾値より高い場合に不浸透性を有する材料からなる中間の第二の層3を堆積させるステップを含む。これらの浸透/不浸透状態は、好ましくは可逆的である。
【0021】
例えば、この中間の第二の層3はブリーザ又はフリースを含むか、それからなる。中間の第二の層3は特に、以下の材料の少なくとも1つからなり得る:ポリエステル、ポリアミド、又はそれらの組合せ。中間の第二の層3は、単位面積当たりの重量を50~800グラム/mとすることができる。
【0022】
この第二の層は、例えば手作業での塗布によって第一の層の上に堆積され、好ましい点として、しわが防止される。
【0023】
方法はまた、中間の第二の層3上に第二の樹脂系テープを巻き付けて、第三の層4を形成するステップも含む。第三の層4を形成するテープは、第一の層2とは異なる樹脂をベースとする。第三の層4を形成するテープは例えば、熱可塑性樹脂をベースとし、特に以下の材料の少なくとも1つを含む:PET、PBT、PA、ポリマ、及びコポリマ。
【0024】
中間の第二の層3を堆積させるステップ中及び第二のテープを巻き付けるステップ中、中間の第二の層3は温度閾値より高い温度に保持される(すなわち、不浸透状態、特に樹脂に対して不浸透状態)。2つの樹脂系層2、4は、それらの融点より高い温度に加熱されるか、又は保持される(例えば、加熱部材7を通じて行われる)。
【0025】
方法はその後、中間の第二の層3を温度閾値より低い(すなわち、樹脂に対して浸透状態)が第一の層2及び第三の層4の樹脂の融点より高い温度まで冷却するステップを含む。
【0026】
これによって、第二の層3において第一の層2及び第三の層4との間の機械的結合を実現することが可能となる。これらの2つの樹脂は中間の第二の層3の浸透性又は多孔質構造内に移行する。アセンブリを引き続き冷却すると、固化によって中間の第二の層3により層の全ての間の結合とシールが確実となる。
【0027】
包んでいる2つのテープは、最終的に構造的に1つの実体又は壁として挙動する。
【0028】
第三の層4の樹脂は好ましくは、第一の層2に使用されているポリオレフィン樹脂のそれに近い融点を有する。これによって、複合容器の気密で構造的に結合された構造を実現することが可能となる。
【0029】
例えば、第三の層4を形成するテープの樹脂の融点は好ましくは、第一の層2を形成する層の樹脂(ポリオレフィン樹脂)の融点から0~40度異なる。第三の層4を形成するテープの樹脂の融点は好ましくは、第一の層2を形成する層の樹脂(ポリオレフィン樹脂)の融点より高い。
【0030】
中間の第二の層3はそれゆえ、異なる樹脂から形成された(また、補強繊維、好ましくは同じ補強繊維を有することができる)2種類のテープ間の結合を可能にする。
【0031】
第二のテープの樹脂(必要に応じて、容器の外面上にある)は、PET、PBT、PA、コポリマ、及びポリマ等の熱可塑性樹脂とすることができる。それゆえ、この外側の層は、ポリオレフィン樹脂穂をベースとする層より、他の層又は付属品と結合(接着)するのに適した状態にしやすくなる。
【0032】
第二の層4の厚さは第一の層2の厚さより薄い。
【0033】
例えば、第二の層4の厚さは0.3~1.5mmとすることができる。この厚さは容器の表面全体にわたり均一であっても、容器の表面全体で変化してもよい。
【0034】
それゆえ、考え得る例において、方法は以下のように進めることができる:
- 第一のテープを巻いて、第一の層2を形成する。
- 中間の第二の層3を温度閾値より高い温度で形成する。
- 第二のテープを巻き付けて第三の層4を形成する。
- 温度閾値より低温まで冷却する。
【0035】
第二のテープを巻き付けるステップが完了したところで、アセンブリを冷却し、中間の第二の層3の材料がその浸透特性を回復するようにすることができる。他の2つの層2、4の樹脂は依然としてその融点より高く、それゆえ、浸透性を有する中間の第二の層の中に浸入できる。その結果、非常に高い結合強度を有する実体が得られ、それによって、容器の壁が完全に損傷を受けないかぎり、分離が防止される。
【0036】
第三の層4はこのように、その外面で接着剤とより有効に結合できる樹脂からなり得る。
【0037】
この製造方法は、必要に応じて、容器の一部に局所化することができる。
【0038】
したがって、最終的な容器は、温度に依存して変化する浸透特性を有する材料からなる中間の第二の層3を2つの層2、4、すなわちそれぞれ第一のポリオレフィン樹脂系の層2と第一の層2とは異なる樹脂をベースとする第三の層4との間に挟まれるように組み込む構造を含み、第二の層3には他の2層からの樹脂が浸み込む。
図1
図2