(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】流体モジュレータ、流体変調システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
G01N 30/26 20060101AFI20241007BHJP
G01N 30/46 20060101ALI20241007BHJP
G01N 30/32 20060101ALI20241007BHJP
【FI】
G01N30/26 N
G01N30/46 A
G01N30/26 M
G01N30/32 A
(21)【出願番号】P 2022552122
(86)(22)【出願日】2020-10-27
(86)【国際出願番号】 US2020057477
(87)【国際公開番号】W WO2021086827
(87)【国際公開日】2021-05-06
【審査請求日】2023-07-05
(32)【優先日】2019-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522170238
【氏名又は名称】オークランド ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ヴィ シーリー
【審査官】北条 弥作子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-179016(JP,A)
【文献】国際公開第2015/083793(WO,A1)
【文献】特開2014-119403(JP,A)
【文献】特開2009-257960(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0232366(US,A1)
【文献】Chiara Cordero,Potential of the reversed-inject differential flow modulator for comprehensive two-dimensional gas chromatography in the quantitative profiling and fingerprinting of essential oils of different complexity,Journal of Chromatography A,2015年,1417,pp.79-95
【文献】Andre Morgado Lopes,OPTIMIZATION OF THE ANALYSIS OF GASOLINES WITH GC×GC,Master's Degree Thesis (University of Porto),2015年07月,pp.17-19
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/281~20/292
G01N 30/00~30/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次T継手と、排出T継手と、二次T継手と、ループ導管と、結合管と、流量調節器とを備える流体マニホールドと、
共通ポートと、前記二次T継手に接続された通常時開の出力ポートと、前記一次T継手に接続された通常時閉の出力ポートとを備える流体弁と、
該流体弁の前記共通ポートに補助流体を供給するように構成された圧力/流量コントローラとを備え、
前記一次T継手、前記排出T継手および前記二次T継手は、前記一次T継手と前記二次T継手とが前記流体マニホールドの反対側の端に位置し、それらの間に前記排出T継手が配置され、前記一次T継手が、前記ループ導管によって前記排出T継手に接続され、該排出T継手が前記結合管によって前記二次T継手に接続され、前記ループ導管が前記結合管よりも長く、前記一次T継手が一次カラムに接続するように構成され、前記二次T継手が二次カラムに接続するように構成されている流体モジュレータ。
【請求項2】
収集された一次排出流体を希釈しないように、かつ、充填状態および注入状態において動作するように構成され、
前記充填状態において動作するときに、流体弁が前記二次カラムにキャリアガスを供給するように切替流を前記二次T継手に導き、一次カラム排出流体が、前記ループ導管を満たし、前記一次排出流体と余剰の前記切替流とが前記排出T継手において排出され、
前記注入状態において動作するときに、前記流体弁が切り替えられ、前記一次排出流体を前記ループ導管から前記二次カラムに流すように前記切替流が前記一次T継手に導かれ、余剰の流れが、出口用の前記排出T継手に導かれる請求項1に記載の流体モジュレータ。
【請求項3】
前記ループ導管に流入する前記一次排出流体の総体積が、前記ループ導管の容積よりも小さく(充填不足)なるように、または
、前記ループ導管に流入する前記一次排出流体の総体積が、前記ループ導管の容積を超える(充填過剰)ように、前記充填状態の持続時間の調整が可能である請求項2に記載の流体モジュレータ。
【請求項4】
前記ループ導管に流入する前記切替流の体積が、前記ループ導管の総容積より小さ
く(排出不足)なるように、または
、前記ループ導管に流入する前記切替流の総体積が、前記ループ導管の容積を超える(排出過剰)ように、前記注入状態の持続時間の調整が可能である請求項2に記載の流体モジュレータ。
【請求項5】
前記充填状態(充填)および前記注入状態(排出)を含む変調周期を提供するように構成され、前記充填状態/前記注入状態の繰り返しが、(i)充填過剰/排出不足、(ii)充填不足/排出過
剰のいずれかからなる請求項2
に記載の流体モジュレータ。
【請求項6】
前記一次T継手、前記排出T継手および前記二次T継手が、直線または同軸の形態に構成されている請求項1に記載の流体モジュレータ。
【請求項7】
前記流量調節器が、前記排出T継手に接続されている請求項1に記載の流体モジュレータ。
【請求項8】
前記流量調節器が、静止したデバイスと、調整可能なデバイスと、静止したデバイスと調整可能なデバイスとの組み合わせとを含む群から選択される請求項1に記載の流体モジュレータ。
【請求項9】
前記流量調節器が、背圧レギュレータを備える請求項1に記載の流体モジュレータ。
【請求項10】
単一の一体型5ポート流体マニホールド本体を備える請求項
1に記載の流体モジュレータ。
【請求項11】
前記流量調節器が、前記排出T継手に含まれる請求項
1に記載の流体モジュレータ。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2019年10月28日に出願された米国仮特許出願シリアル番号62/926,742の利益を主張し、その開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【技術分野】
【0002】
本開示は、一般に、クロマトグラフィに関連して使用され得る流体モジュレータを含む、流体モジュレータに関するものである。
【背景技術】
【0003】
この背景説明は、背景を説明することのみを目的として、以下に記載される。したがって、この背景の説明のいかなる態様も、それが他に先行技術として適格でない限り、本開示に対して先行技術として明確にまたは示唆的に認められるものではない。
【0004】
流体調整器の設計によっては、十分な性能を提供できないもの、効率の悪いもの、および/または、特に複雑なものもある。
【0005】
流体調整器の1つ以上の課題または欠点を最小化または排除する解決策/選択肢が望まれている。前述の説明は、あくまでも本分野の例を説明するためのものであり、その範囲を否定するものではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
実施形態において、流体モジュレータは、一次T継手、排出T継手、二次T継手、ループ導管、および/または結合管とを備える流体マニホールドと、共通ポートと、二次T継手に接続された通常時開の出力ポートと、および/または一次T継手に接続された通常時閉の出力ポートとを備える流体弁と、および/または流体弁の共通ポートに補助流体を供給するように構成された流量コントローラを備えることができる。一次T継手、排出T継手、および二次T継手は、例えば、一次T継手と二次T継手とが流体マニホールドの反対側の端に位置し、それらの間に排出T継手が配置されるように直線状に配されてもよい。一次T継手は、ループ導管によって排出T継手に接続されてもよい。また、排出T継手は、結合管によって二次T継手に接続されてもよい。ループ導管は、結合管よりも長くてもよく、また、かなり長くてもよい。一次T継手は、一次カラムと接続するように構成されていてもよい。二次T継手は、二次カラムに接続するように構成されてもよい。
【0007】
本開示の実施例/実施形態の前述のおよび他の潜在的な態様、特徴、詳細、効用、および/または利点は、以下の説明を読み、添付の図面を検討することから明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
特許請求の範囲は特定の図に限定されるものではないが、様々な実施例の説明を通じて、様々な態様の理解を得ることができる。図面は必ずしも縮尺通りではなく、実施例の革新的な態様をより分かりやすく図示し説明するために、特定の特徴を誇張したり隠したりすることがある。さらに、本明細書に記載された例示的な図示は、包括的なまたはその他の限定的なものではなく、図面に示された、または以下の詳細な説明において開示された正確な形態および構成に限定されるものではない。以下、図面を参照しながら例示的な図示を詳細に説明する。
【0009】
【
図1】一次カラムから溶出する成分ピークを、キャリアガスのセグメントによって区切られた一連のパルスに変換するために使用することができる3つの例示的な機構を示す説明図である。
【
図2】本開示の態様および教示に係るRFF(リバースフィル/フラッシュ)モジュレータの一実施形態の概略図である。
【
図3】本開示の態様および教示によるRFFモジュレータの一実施形態に係る、充填状態に関連する流動パターンの概略図である。
【
図4】本開示の態様および教示によるRFFモジュレータの一実施形態に係る注入状態に関連する流動パターンの概略図である。
【
図5】本開示の態様および教示によるRFFモジュレータの一実施形態の充填状態における、補助流が二方向に分割された流動パターンの概略図である。
【
図6】本開示の態様および教示によるRFFモジュレータの一実施形態に係る流動パターンの概略図であり、注入状態に移行した直後の流動状況を概して示している。
【
図7】本開示の態様および教示によるRFFモジュレータの一実施形態に係る流動パターンの概略図であり、収集された一次排出流体のすべてが二次カラムにちょうど移された時点のモジュレータを概して示している。
【
図8】本開示の態様および教示に係るモジュレータの一実施形態の概略図であり、5ポートマニホールドを含む。
【
図9】本開示の態様および教示によるモジュレータの一実施形態の充填状態における流動パターンの概略図である。
【
図10】本開示の態様および教示によるモジュレータの一実施形態の注入状態における流動パターンの概略図である。
【
図11】本開示の態様および教示による動的変調のために構成されたモジュレータの概略的な実施形態を示す図であり、開始点を示している。
【
図12】本開示の態様および教示による動的変調のために構成されたモジュレータの概略的な実施形態を示す図であり、注入状態に入った直後の状態を概して示している。
【
図13】本開示の態様および教示による動的変調のために構成されたモジュレータの概略的な実施形態を示す図であり、注入状態の最後の瞬間の例を概して示している。
【
図14】本開示の態様および教示による動的変調のために構成されたモジュレータの概略的な実施形態を示す図であり、充填状態に戻った直後の状態の例を概して示している。
【
図15】本開示の態様および教示に係るモジュレータの一実施形態の概略図である。
【
図16A】二次カラムの先端付近の排出T継手の領域において発生し得る例示的な流動パターンの拡大図であり、充填状態中の例示的な流動パターンを概して示している。
【
図16B】二次カラムの先端付近の排出T継手の領域において発生し得る例示的な流動パターンの拡大図であり、注入状態中の例示的な流動パターンを概して示している。
【
図17】本開示の態様および教示に関連して使用され得る試験装置の一実施形態の概略図である。
【
図18】得られた信号配列の一部の例を概して示す図である。
【
図19】パルスの重ね書きの例を概して示す図である。
【
図20】注入時間の関数としてのパルスの高さ、幅、および面積のプロットの例を含む図である。
【
図21】時間の関数としてのパルス信号のプロットの一例である。
【
図22】注入時間の関数としてのパルス統計値(高さ、幅、および面積)のプロットの一例である。
【
図23】時間の関数としてのパルス信号プロットの他の例である。
【
図24】時間の関数としてのパルス信号プロットの他の例である。
【
図25】時間の関数としてのパルス信号プロットの他の例である。
【
図26】RFFモジュレータの一実施形態に係る時間の関数としてのパルス信号プロットの一例である。
【
図27】ガソリンのGC×GCクロマトグラムの一例である。
【
図28】時間の関数としての信号配列の一例である。
【
図29】本開示の態様および教示に係る充填不足/排出過剰なモジュレータの一実施形態の概略図であり、充填状態における開始点を概して示している。
【
図30】本開示の態様および教示に係る充填不足/排出過剰なモジュレータの一実施形態の概略図であり、注入状態に入った直後の流動状況を概して示している。
【
図31】本開示の態様および教示に係る充填不足/排出過剰なモジュレータの一実施形態の概略図であり、注入状態の最後の瞬間における流動状況を概して示している。
【
図32】本開示の態様および教示に係る充填不足/排出過剰なモジュレータの一実施形態の概略図であり、充填状態に戻った直後の流動状況を概して示している。
【
図33】本開示の態様および教示に係る充填不足/排出過剰なモジュレータの一実施形態の概略図であり、充填時間の約半分にわたって充填状態に保持された後の流動状況を概して示している。
【
図34】本開示の態様および教示に係るモジュレータの一実施形態の概略図であり、スタガードクロスユニオン継手を概して示している。
【
図35】本開示の態様および教示に係るモジュレータの一実施形態の概略図であり、標準的なクロスユニオン継手への二次カラムの過剰挿入を概して示している。
【
図36】クロスユニオン継手に係る充填状態および注入状態の流動パターンの概略図である。
【
図37】本開示の態様および教示に係る単一5ポートマニホールドの一実施形態の概略図である。
【
図38】逆充填排出モードにより動作可能なモジュレータの一実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本開示の実施形態について詳細に参照し、その例を本明細書に記載し、添付図面に図示する。本開示は、実施形態および/または例と併せて説明するが、これらは本開示をこれらの実施形態および/または例に限定されるものではないことが理解されよう。むしろ、本開示は、その代替、変形、および均等物をも対象とする。
【0011】
実施形態においては、流体システムは、2つの流体の流れ(ストリーム)を結合して、流入する流れの交互のセグメント(塊)を含む新しい流れを生成するように構成された装置を備えていてもよい。セグメント間の混合は、低減および/または最小限に抑えることができる。流体セグメントのサイズは、流入する流れの大きさおよび/または切替処理のタイミングによって制御することができる。この装置は、包括的二次元ガスクロマトグラフィ(GC×GC)による分離に関連して利用することができる流量モジュレータとして最適化されてもよい。この装置としては、ガスクロマトグラフのカラム(一次カラム)から出るガスをキャリアガスの補助流と組み合わせて、キャリアガスの大きなセグメントによって分離された一次排出流体のセグメントを有する流れを生成するようにしてもよい。この新たな流れは、さらなる分離のために二次カラムに導入されてもよい。この装置はGC×GCモジュレータに関連して説明されているが、この装置はこの用途に限定されるものではなく、従来のガスクロマトグラフィインジェクタ、液体クロマトグラフィ用モジュレータ、および/またはフローインジェクション分析用サンプルインレットなど、限定されない幅広い用途で利用することが可能である。
【0012】
GC×GC分析は、従来のガスクロマトグラフィ(GC)による分離の終わりに、高速の二次分離を追加することで、従来のGCを拡張させることができる。GC×GCによる分離は、GC×GCに特有の1つの装置であるモジュレータを追加する以外は、ほとんど純正部品を備えた標準的なガスクロマトグラフを使用して生成することができる。モジュレータは、一次カラムから流出する排出流体をサンプリングし、サンプリングした排出流体を狭いパルス(通常100ミリ秒未満)の態様により二次カラムの先頭に移動させることができる
【0013】
対象の流体混合物は、まず、一次カラムとして機能する標準的なGCカラムに注入することができる。キャリアガスの流れは、混合物の各成分を、各成分に特徴的な速度で一次カラムに輸送することができる。モジュレータは、一次カラムの終端と二次カラムの先端との間の流体経路に配置されることがある。一次カラムから溶出する成分は、一定の間隔(例えば、「変調周期」)により、モジュレータによってサンプリングされてもよい。変調周期は、一次カラムから現れる成分ピークの幅よりもわずかに小さく保たれていてもよい。場合によっては、変調周期は、例えば、約1秒から約3秒の範囲であってもよい。各変調周期の終了時に、その特定の間隔中にサンプリングされた成分は、二次カラムに移すことができる。二次カラムの固定相は一次カラムとは異なる選択性を有することができるので、一次カラムによって共溶出した成分が二次カラムにより分離される可能性もある。二次カラムにおいては、モジュレータにより搬送された各フラクションを高速GC分離することもできる。このように、1つの混合物のサンプル分析においては、一次カラムによって1回の分離を行い、二次カラムによって数百回のサブ分離を行うことができる。実験条件は、二次カラムの保持時間の範囲を変調周期より小さい値に制限するように調整することができる。サンプル成分は二次カラムを出たところにおいて検出することができる。検出器の信号配列は、変調周期にほぼ等しい幅を持つ個々のセグメントに分割されていてもよい。これらの信号セグメントは各サブ分離を表し、並べてプロットすることにより2次元クロマトグラムを得ることができる。
【0014】
GC×GCモジュレータは、一次カラムから溶出する成分ピークを、キャリアガスのセグメントにより区切られた一連のパルスに変換するように構成することができる。この効果を生み出すために使用され得る機構の3つの例が、
図1に概して示されている。第1の機構は、分析物分子を濃縮するように構成されてもよい。これには、溶出する分析物分子を一時的に固定化し、キャリアガス分子がモジュレータを通過できるようにすることが含まれる。各変調周期の終了時に、収集された分析物分子を、濃縮パルスとしてキャリア流の中に急速に再移動させることができる。このプロセスを繰り返すことにより、純粋なキャリアガスにより区切られた高濃度ゾーンのガス流を生成することができる。この方法による分析物分子の固定化および再移動化は、大きな温度変化を導入することによって行うことができる。この種の変調プロセスは、温度変調と呼ばれることがある。
【0015】
第2の変調機構の例としては、一次排出流体のセグメントを同じ大きさのキャリアガス(例えば、純粋なキャリアガス)のセグメントと置き換えることが挙げられる。これは、二次カラムに純粋なキャリアガスの補助流を供給し、各変調周期の最初に一次排出流体の一部を短時間導入することを含む場合がある。その結果、キャリアセグメントにより区切られた小さな一次排出流体セグメントの流れができることがある。温度変調とは異なり、一次排出流体セグメント内の分析物は濃縮されないため、この方法においては分析物分子の大部分が失われ、感度が低下する可能性がある。しかしながら、この方法は、比較的簡単に実施することができる。例えば、また、これに限定されるものではないが、このような方法は、弁およびいくつかの継手のみを含んでいる。この機構は、デューティサイクルが低い変調機構であってもよく、本明細書においては、分流変調という場合がある。
【0016】
第3の例の変調機構は、一次排出流体のセグメントの間に補助キャリアガスの大きなセグメントを挿入することを含むことができる。分流変調とは異なり、一次排出流体からの分析物分子は廃棄されないかもしれないが、濃縮もされないかもしれない。一次排出流体を廃棄することなく補助キャリアガスを追加すると、一次カラムにおける元の流れよりも著しく高流量の変調された流れがもたらされ、その結果、二次カラムにおいて著しく高流量が生じる可能性がある。この結果、純粋なキャリアガスの大きなセグメントによって分離された非濃縮の一次排出流体のセグメントの高速流が生じる可能性がある。この機構は、デューティサイクルが高い変調機構として構成されてもよく、本明細書においては、差動流量変調という場合がある。
【0017】
例を挙げると、差動流量変調は、弁といくつかの継手を用いてかなり簡単に実施できるかもしれないが、最適なパルス形状を生成する条件を見つけるのは困難かもしれない。また、質量分析計による検出は、差動流量変調においては制限されることがある。ベンチトップ型質量分析計は、従来の単一カラムGC分離と同様の最大入流量を持つように設計されている場合がある。差動流量変調に伴う上昇した流量は、ベンチトップ型質量分析計に入る前に二次排出流体の大部分が分流されることにつながる可能性がある。このため、流量制限のある検出器あるいは分析物の濃度のみに反応する検出器においては、分流変調に対して差動流量変調が持つ流束の利点が大きく損なわれる可能性がある。GC×GC分離のいくつかは、炎イオン化検出器(FID)を用いて実施されることがある。これに限定されるものではないが、FIDは単一チャンネル検出器の一例である。FIDは、キャリア流量レベルの上昇を容易に取り扱うことができるように構成され、差動流量変調により増大した信号強度を示すことができる。
【0018】
温度変調器の中には、液体窒素で冷却したガスジェットを使用して分析物を固定化し、再固定化のために加熱したガスジェットを使用するものがある。温度変調器の動作には、大量の極低温流体の消費を伴う場合があり、従来のガスクロマトグラフィと比較した場合に、動作費用の大幅な増加を伴う場合がある。
【0019】
一部の流量モジュレータは、一次成分パルスを生成するために高速のマルチポート弁を採用してもよい。内部ダイヤフラムを有するマルチポート弁(回転要素とは対照的)は、狭いパルスを生成するのに十分な速度を有するかもしれないが、これらの弁は、GC×GC分離の上限温度を制限し得る温度制約を有す可能性がある。マルチポート弁の第2の欠点は、変調中に弁を作動させると、二次カラム内において短時間だが大きな流量変化が生じる可能性があることである。これは、結果として得られるクロマトグラムにピークの歪みをもたらす可能性がある。
【0020】
流体モジュレータの例は、三方弁と、ユニオン継手およびチューブのアセンブリ(または同等の一体型のチューブおよびユニオン継手)を採用してもよい。キャリアガスの補助流は、三方弁の共通ポート(例えば、流体/圧力コントローラからの流れのための入力ポート)に導入されてもよい。弁の2つの出力ポートは、ユニオン継手アセンブリに接続されてもよい。一次カラムの出口と二次カラムの入口も、ユニオン継手アセンブリに接続されてもよい。チューブとユニオン継手との正確な配置は、モジュレータ固有のものであってもよい。
【0021】
流体モジュレータは、弁を用いて、ユニオン継手アセンブリ内の補助ガスの入口位置を切替えることができる。これは、ユニオン継手アセンブリ内の流れの方向/大きさの変化をもたらし、一次排出流体および補助キャリアガスの所望の混合を生成することができる。流体モジュレータは、(1)装置の唯一の可動部分が三方弁であってもよく、および/または(2)試料成分が三方弁を通過することがなくてもよく、その結果、いくつかの利点を有することができる。よって、弁はクロマトグラフィオーブンの外部に配置されてもよく、不活性化された材料から構成されなくてもよく、過度に小型化されなくてもよい。試料経路内にあるユニオン継手およびチューブは、不活性材料からより容易に製造され、かつ小型化された静止したデバイスであってもよい。流体モジュレータは、クロマトグラフィ分離に追加の温度制限をもたらさないかも知れない。
【0022】
流体装置の例として、アジレント・テクノロジー社が提供する独自のキャピラリ・フロー・テクノロジー(CFT)モジュレータがある。CFTモジュレータは、一次排出流体の二次カラムへの100%移送を提供するように構成されてもよいが、隣接する低強度のピークを不明瞭にし得る「テール」を有するパルスを生成する場合がある。流体装置の別の例としては、リバースフィル/フラッシュ(RFF)モジュレータがある。
【0023】
アジレント・テクノロジーズ社およびセプソルブ社が提供するような一部のモジュレータは、二次カラムに高流量を必要とする場合があり、このようなモジュレータは、何らかの形式の流量分岐なしに質量分析検出器に結合することが困難となる場合がある。ディファレンシャルフローモジュレーション(差動流量変調)GC×GC-MS装置は複雑であり、適切に実装するのが困難な場合がある。
【0024】
二次カラムの流量が一次カラムの流量と同等である場合(GC×GC-MS分離の場合)、差動流量モジュレータは大きな利点を提供しないかもしれない。分流モジュレータの簡潔性および柔軟性により、分流モジュレータがより効果的な選択肢となる可能性がある。しかし、検出器がより多い流量により動作し、分析物の流束に比例した(FIDのような)反応をする場合、差動流量モジュレータはより高い感度を提供することができる。
【0025】
所定長さのGCカラムのクロマトグラフィ効率は、例えば、流量が約2mL/分以上になると、流量の増加とともに低下する傾向があり、これは、差動流量変調に伴う高流量においては、高分解能二次分離が可能でないことを示唆している可能性がある。しかし、高流量により得られるクロマトグラフィの分離能は、これまで考えられていたよりもはるかに大きい可能性がある。流量を増加させながらカラムの長さを増加させたり、薄い固定膜を使用したり、および/または小さい保持係数を使用して動作させたりすることにより、分離能を向上させることができる。例えば、長さ5mのキャピラリカラムを10mL/分の流速で使用すると、狭いピーク(ピーク幅<約50ミリ秒)を有する分離を生成することができる。
【0026】
約50ミリ秒より幅の広いパルスを二次カラムに注入することは逆効果になる場合がある。これまでは、変調伝達率を上げると感度が上がるとされていた。しかし、伝達率を上げても、得られるピークの幅は広くなるが、高さが高くならないのであれば、これは正しくない。例えば、RFFモジュレータにより一次排出流体の100%を二次カラムに移動させる分離においては、200ミリ秒付近の幅のピークが発生することがある。二次カラムに幅の狭いパルスを注入すると、高さは同じでも幅が1/4のピークが発生する可能性がある。したがって、狭いパルスを注入することにより、感度を犠牲にすることなく、より高い分解能を得ることができる可能性がある。
【0027】
完全移送差動流量モジュレータによって生成されるパルス幅は、一次カラム流と二次カラム流との比に比例する場合がある。そのため、一次流を減少させ、および/または二次流を増加させることによって、100%の移送を維持しながらパルス幅を減少させることを可能にしてもよい。しかし、この方法は、単にパルス幅を減少させる以上の変化(例えば、一次分離が遅くなる、二次分離が速くなる、一次カラムおよび二次カラムの両方のクロマトグラフィ効率が低下する等)が生じる可能性がある。
【0028】
図2には、RFFモジュレータ10の一実施形態の概略図を概して示している。いくつかのRFFモジュレータは、ユニオン継手および導管のうちのいくつかを単一のハードウェアに統合してもよい。
図2に示された設計は、個別のユニオン継手およびチューブを含むが、統合された設計と同じ原理および流動パターンを採用してもよい。
【0029】
アセンブリの中心は、3つのTユニオン継手と2つのチューブから構成される5ポートマニホールド10を含んでいてもよい。Tユニオン継手は、排出T継手20、一次T継手30、および二次T継手40として指定することができる。ユニオン継手は、例えば、直線的に配置(例えば、同軸配置)されてもよく、排出T継手20および二次T継手40は、マニホールドの両端に位置し、一次T継手30はその間に配置される。排出T継手20は、ループ(またはループ導管)50とも呼ばれる所定長さのチューブを用いて一次T継手に接続されてもよい。一次T継手30は、結合管60とも呼ばれる所定長さのチューブを用いて、二次T継手40に接続されてもよい。ループ導管50は、結合管60よりも長くてもよく、さらには、かなり長くてもよい。一次カラム70の出口は、一次T継手30に接続されてもよく、二次カラム80の入口は、二次T継手40に接続されてもよい。
【0030】
また、
図2に示す実施形態においては、一次カラム70、二次カラム80、流量調節器90、弁(例えば、電磁弁)100、および(流量コントローラからの)補助キャリア110が示されている。キャリアガスの補助流は、1つ以上の追加の構成要素によってマニホールド10に導入することができる。流量コントローラ(圧力/流量コントローラとして構成されてもよい)は、補助ガスを、3ポート2方向電磁弁などの流体弁100の共通ポートに供給してもよい。弁100の通常時開の出力ポートは、短い長さのチューブ(例えば、120)によって二次T継手40に接続されてもよい。弁100の通常時閉の出力ポートは、同様の短いチューブ(例えば、130)によって、排出T継手20に接続されてもよい。モジュレータには、2つの流れが流入することがある。(i)一次カラム排出流体、および(ii)補助キャリア流体である。流体は、二次カラム80に流入すること、および/または流量調節器90に流入することによって、装置から排出される。実施形態においては、流量調節器90は、排出T継手20に接続されてもよく、慎重に選択された長さのキャピラリチューブなどの静止したデバイス、または背圧レギュレータなどの調整可能なデバイス、または静的流量調節器と調整可能な調節器とを組み合わせたデバイスであってもよい。
【0031】
RFFモジュレータは、装置内の流動パターンを正確に制御することによって、意図した結果をもたらすように構成されてもよい。モジュレータに入る流量とモジュレータから出る流量は、本質的に一定かつ均衡していてもよい。この条件により、流量バランス方程式F1+Fs=F2+Fxを導くことができる。ここで、F1は一次カラム流、Fsは補助キャリアガス流、F2は二次カラム流、Fxは排出流である。RFFモジュレータは、2状態装置として構成されてもよい。装置の状態は、補助キャリアガスの注入位置によって決定されてもよく、それは、順次、電磁弁の状態によって決定されてもよい。装置の2つの主要な状態は、充填状態および注入状態として指定されてもよい。
【0032】
図3は、充填状態における流動パターンの例示的な実施形態を概して示している。充填状態は、補助ガス流を二次T継手40に向けることによって生成されてもよい。補助流の大きさは、二次キャリア流よりもわずかに大きくなるように慎重に調整されてもよい。これにより、補助流は、二次カラム80に必要なガスのすべてを供給することができ、余分なキャリアガスが、二次T継手40から接合管60を通り一次T継手30に向かって、Fs-F2によって与えられる流量だけ流出してもよい。このキャリアガスの流れは、変調プロセスを促進することができ、カーテン流Fc=Fs-F2と呼ばれることがある。一次流は、同時に一次T継手30においてRFFモジュレータに入り、そこでカーテン流と混合し、次にループ50に入ることがある。混合された一次排出流体およびカーテン流は、排出流Fxと呼ばれ得る流量で、充填状態中にループ50を通過することができる。流量バランス方程式Fx=F1+Fs-F2は、排出流を他の3つの外部流の観点から表すために使用することができる。この流れは、最終的に、排出T継手20を通ってモジュレータを出て、その後、流量調節器90に入ることができる。
【0033】
図4は、注入状態における例示的な流動パターンの実施形態を概して示している。注入状態は、補助流を排出T継手に送るために電磁弁を通電することによって作り出すことができる。RFFモジュレータによって利用され得る差動流量条件下においては、二次カラム流は一次カラム流よりも大きい場合がある。したがって、補助流は、排出T継手20に入るときに分かれ、二次流と一次流との差によって与えられる部分F2-F1がループ50を通過して一次T継手30に向かい、残りのFs+F1-F2(これはFxに等しい)が流量調節器90を通ってモジュレータを出る。F2-F1のループ流は、一次T継手において入ってくる一次流と合流して、結合管60、次いで二次T継手40を通過し、最後に二次カラム80に入るF2の流れを生成してもよい。
【0034】
RFFモジュレータは、より大きなセグメントのキャリアガスにより分離された一次排出流体のセグメントを含む流体ストリームを生成するように構成されてもよい。
図5から
図7は、例示的な変調プロセスの実施形態を概して示している。希釈されていない一次排出流体は、図においてハッチングにより充填物として識別され、キャリアガスは、白色の充填物として示される。RFFモジュレータは、流量、ループサイズ、および充填状態と注入状態との間の切り替えのタイミングの調整および制御を通じてパルスを生成することができる。例えば、またこれに限定されるものではないが、以下の外部流量値、すなわち、F1=1mL/分、Fs=10.3mL/分、F2=10mL/分、およびFx=1.3mL/分が関与していてもよい。
【0035】
変調サイクルの開始点(例えば、
図5参照)は、モジュレータが、一次排出流体がループ50をほぼ満たす(しかし過剰に満たさない)ために十分な時間だけ、充填状態にあったときと考えることができる。モジュレータが充填状態にあるので、補助流(例えば、10.3mL/分)が2方向に分かれ、第1の部分(例えば、10.0mL/分)が二次カラム80に流れ、第2の部分(例えば、0.3mL/分)がカーテン流として作用してもよい。このような第2の部分(例えば、0.3mL/分)の流れは、ループ50に入る前に一次カラム流(例えば、1.0mL/分)と合流してもよく、これにより排出流体中の分析物の濃度が最大30%、約30%、または30%を超えて低下し得る。
【0036】
電磁弁は、一次排出流体が排出T継手20に到達する前に、RFFモジュレータを注入状態にするように切り替えてもよい。
図6は、注入状態に移行した直後の状況の一例を概して示している。補助キャリアは、流れの一部(例えば、1.3mL/分)が流量調節器90を通って直ちに出て行く一方、流れの残りの部分(9.0mL/分)は、収集された一次排出流体を一次T継手30に向かって押し出すことができる。一次T継手30内においては、収集された一次排出流体は新しい一次排出流体と合わさり、その後、結合キャピラリ(例えば、結合管60)、二次T継手40へと進み、最終的に二次カラム80に入ることができる。
【0037】
図7は、収集された一次排出流体のすべてが二次カラム80にちょうど移された時点のRFFモジュレータを概して示している。この時点において、弁100は非通電にされ、RFFモジュレータは、注入されたパルスが二次カラム80を移動し続け、一次排出流体が再びループ50を満たし始める充填状態に戻るようにされてもよい。
【0038】
しかしながら、いくつかの用途においては、RFFモジュレータは1つ以上の潜在的な課題を含む場合がある。第1に、充填状態の間、RFFモジュレータは、カーテンガスを流入する一次排出流体に混合することがある。これにより、一次排出流体が希釈/膨張され、パルス強度が低下し、パルス幅が増加する可能性がある。したがって、カーテン流を最小または最小限に保つことが望ましいこともある。しかし、カーテン流は、充填状態中に一次排出流体が二次カラム80に「にじみ」出ることを防ぐようにするために使用されてもよい。そこで、ベースラインのにじみがなく最適なピーク形状を得るために、バランスが関与する場合がある。カーテン流の大きさおよび方向が2つの大きな数値(FsおよびF2)の差によって決定され得るため、このバランスを維持することは難しいかもしれない。第2の潜在的な課題は、第1の課題と関連している。小さいカーテン流は、100%未満のデューティサイクル(例えば、完全な移送変調よりも低い)によりモジュレータを動作させることを困難にする可能性がある。収集された一次排出流体のすべてをループ50から流す前にRFFモジュレータを充填状態に戻すことによって、より狭いパルスを二次カラム80に注入することは可能かもしれない(例えば、発信パルスの後縁をクリッピングする)。しかし、ピーク高の最適化に関わる小さなカーテン流は、結合管60内にまだある一次排出流体の動きを迅速に反転させることを困難にする場合がある。したがって、RFFモジュレータを完全でない転送モードで使用すると、著しいテーリングがあるパルスが生じる可能性がある。RFFモジュレータは、二次分離の分解能を十分に利用することができる狭いパルスの生成に関与し得る低いデューティサイクルで動作しようとすると、それほど効果的ではない可能性がある。
【0039】
流量モジュレータの実施形態は、収集された一次排出流体を希釈しないように構成されてもよく(RFFモジュレータに関連し得る課題)、および/またはユーザが注入パルスの幅を直接制御することを可能にすることができる。流量モジュレータの実施形態は、最適なピーク幅(例えば、約30ミリ秒から60ミリ秒の範囲の幅を有するピーク)で動作しながら、ユーザがピーク高を最大化することを可能にし得る差動流量モジュレータとして構成されてもよい。
【0040】
図8は、モジュレータの一実施形態の概略図を概して示している。モジュレータは、例えば、3つのユニオンT継手と2つのチューブとから構成される5ポートマニホールド10´を含んでもよい。ユニオンT継手は、一次T継手30´、排出T継手20´、および二次T継手40´を含んでもよい。ユニオンT継手は、例えば、直線状に配置(または同軸配置)されてもよく、一次T継手30´と二次T継手40´とは、マニホールドの両端に位置し、その間に排出T継手20´が配置される。一次T継手30´は、ループ50´と呼ばれる所定長さの流体導管(例えば、チューブ)を用いて排出T継手20´に接続されてもよい。排出T継手20´は、結合管60´と呼ばれる所定長さの流体導管により、二次T継手40´に接続されてもよい。ループ導管50´は、結合管60´より長くてもよく、また、かなり長くてもよい(特に、図示されたモジュレータのいくつかの概略図は、アプリケーションとして実際に使用され得るよりも大きなスケールで結合管を示している)。一次カラム70´の出口は、一次T継手30´に接続されてもよく、二次カラム80´の入口は、二次T継手40´に接続されてもよい。本発明の概念は、必ずしも直線的に構成されることに限定されるものではないが、モジュレータ/システムを直線的に構成すること(例えば、3つのT継手の間の同軸配置)は、とりわけ、一次および/または二次カラムの挿入深さを変更または調整することなどにより、ループおよび結合キャピラリの有効長を調整することができることに留意されたい。このような利点または効果は、例えば、ループを一次カラム70´と同軸にし、一次カラム70´を一次T継手30´を通して挿入し、二次カラム80´を結合キャピラリ(例えば、結合管60´)と同軸にして、二次カラム80´を二次T継手40´を通して挿入することによって生じることがある。
【0041】
モジュレータの例においては、キャリアガスの補助流は、1つ以上の追加構成要素を介在させてマニホールドに導入されてもよい。流量コントローラ(または圧力/流量コントローラ)は、補助ガスを弁100´(例えば、3ポート2方向電磁弁)の共通ポートに送り込んでもよい。弁100´の通常時開の出力ポートは、短いチューブ120´を介在させて二次T継手40´に接続されていてもよい。弁100´の通常時閉の出力ポートは、同様の短いチューブ130´を介在させて一次T継手30´に接続されてもよい。
【0042】
ガスは、2つの位置からモジュレータに入ることができる。すなわち(i)一次排出流体は、一次カラム70´から入ることができ、(ii)キャリアガスは、弁100´から入ることができる。ガスは、2つの位置においてモジュレータから出ることができる。すなわち、(i)ガスは、二次カラム80´に流入してもよく、(ii)ガスは、流量調節器90´に流入してもよい。流量調節器90´は、例えば、所定長さのキャピラリチューブなどの静止したデバイス、または背圧レギュレータなどの調整可能なデバイス、または静的流量調節器と調整可能な調節器とを組み合わせたデバイスとして構成されてもよい。
【0043】
モジュレータの例は、装置内の流動パターンの正確な制御などによって、一次排出流体のパルスを生成することができる。モジュレータに入る流量は、本質的に一定であってよく、および/またはモジュレータから出る流量と均衡していてもよい。この条件により、流量バランス方程式F1+Fs=F2+Fxが導かれる場合がある。ここで、F1は一次カラム流に対応し、Fsは補助キャリアガス流に対応し、F2は二次カラム流に対応し、Fxは排出流に対応する(例えば、
図9を参照。)。モジュレータは、2状態装置として構成されてもよい。装置の状態は、補助キャリアガスの注入位置によって決定されてもよく、それは、順に、弁の状態によって決定されてもよい。装置の2状態は、充填状態および注入状態として指定されてもよい。
【0044】
図9は、充填状態における例示的な流動パターンを概して示している。充填状態は、補助ガス流を二次T継手40´に向けることによって生成されてもよい。補助流の大きさは、二次キャリア流よりも大きくなるように設定されてもよい。これにより、補助流が二次カラム80´のキャリアガスのすべてを供給し、余分なキャリアガスが二次T継手40´から流出し、結合管60´を通り、排出T継手20´に流れ込んでもよい。この流れは、カーテン流と呼ばれることがあり、Fc=Fs-F2により表される大きさを有していてもよい。カーテン流は、充填状態の間、一次排出流体が二次カラム80´に入ることを制限および/または防止するように構成されてもよい。補助流が二次カラム80´にキャリアガスを供給している間、一次カラム排出流体は一次T継手30´を通ってモジュレータに入り、F1の流量だけループ50´を通って排出T継手20´に向かって流れてもよい。RFFモジュレータとは異なり、一次排出流体は、充填状態の間、カーテンガスにより希釈されない場合がある。これは、分析物濃度が変調プロセスによって低下することがないようにすることができる。一次排出流体は、最終的に排出T継手20´に到達するまでループ50´を流れ続けてもよく、そこでカーテン流と合流してもよい。合流した流れは、流量調節器90´を通過して、Fx=F1+Fs-F2によって他の外部流に関連付けられるFxの流量だけモジュレータを出ることができる。
【0045】
図10は、注入状態における例示的な流動パターンを概して示している。注入状態は、弁100´に通電することによって生成されてもよく、弁100´は補助流を一次T継手30´に向けることができる。補助流と一次流とは、一次T継手30´内において結合してもよく、F1+Fsの速度などにより、ループ50´内を(例えば、急速に)移動してもよい。この流れが排出T継手20´に到達すると、2つの流れの部分に分かれることがある。F2の流量を有する第1の部分は、結合管60´を通過して二次T継手40´に到達し、最終的に二次カラム80´に流入することができる。第2の部分は、Fx=F1+Fs-F2の流量だけ排出T継手20´を出て、流量調節器90´を通過してもよい。
【0046】
モジュレータの実施形態は、キャリアガスのより大きなセグメントによって分離された一次排出流体の短く未希釈セグメントを含む流体ストリームを作成するように構成されてもよい。モジュレータは、少なくとも部分的に、流入および流出の大きさを制御することによって、および/または充填状態と注入状態との間の切り替えのタイミングを制御することによって、これを達成することができる。
図11から
図14には、動的変調の一例が概して示されている。希釈されていない一次排出流体は、図中においては、ハッチングによって充填物として識別され、キャリアガスは白色の充填物として示される。例として、またこれに限定されるものではないが、外部流は、F1=1.0mL/分、F2=10.0mL/分、Fs=15.0mL/分、およびFx=6.0mL/分(約)により与えられる。内部流は、外部流の大きさと装置の状態から推測することができる。
図11から
図14には、外部流と内部流の両方が概して含まれている。
【0047】
変調サイクルの開始点は、一次排出流体がループ50´全体を満たし、排出流体の小部分がループ50´を過剰充填して流量調節器90´を通ってモジュレータから流出し始めるような十分長い時間、モジュレータが充填状態に保持された時点であると考えることができる。そのような開始点は、
図11に概して示されている。
【0048】
ループ50´が充填された後、弁100´は、装置を注入状態にするために切り換えられてもよい。
図12は、注入状態に入った直後の例示的な状況を概して示している。補助キャリアは、一次T継手30´に入り、流入してくる一次排出流体と結合し、例えば、16mL/分の高流量を作り、希釈されていない一次排出流体のプラグを排出T継手20´を通して急速に押し出し、結合管60´と流量調節器90´との間で分岐することができる。
【0049】
図13は、注入状態の最後の瞬間の一例を概して示している。補助流は、希釈されていない一次排出流体のすべてではないが、ほとんどをループから押し出した可能性がある。結合管60´に入った一次排出流体のほとんどは、二次カラム80´に移動している可能性がある。モジュレータが一次排出流体の所望のセグメントを二次へ移動させたら、モジュレータは充填状態へ戻されてもよい。
【0050】
図14には、充填状態に戻った直後の例示的な状況が概して示されている。例において、補助流(例えば、15.0mL/分)は、二次T継手に流入し、一部(例えば、10.0mL/分)が希釈されていない排出流体セグメントを二次カラム80´の下流に押し続けことができるかもしれない。補助流の残りの部分(例えば、5.0mL/分)は、追加の一次排出流体の進入を防止する、および/または、流量調節器90´を通じてモジュレータの外に結合管60´の充填物をパージするカーテン流として作用してもよい。一方、希釈されていない一次排出流体は、ループ50´への再充填を開始してもよい。装置は、ループ50´が完全に満たされるまで充填状態に保持されてもよく(
図11を参照)、サイクルが繰り返されてもよい。
【0051】
例えば、RFFモジュレータとは対照的に、モジュレータの実施形態におけるカーテンガスは、収集された一次排出流体を希釈しない場合がある。したがって、モジュレータの実施形態は、より大きいカーテンガス流により不利益がないように動作してもよい。より大きいカーテン流は、装置が充填状態と注入状態との間でより迅速に、より完全に切り替わることを可能にし得る。これは、モジュレータが、急峻な前縁および後縁を有する狭いパルス(例えば、極めて狭いパルス)を生成することを可能することができる。
【0052】
図15は、モジュレータ10´´の一実施形態の概略図を概して示している。モジュレータは、3つのユニオンT継手を含んでもよい。いくつかの実施形態においては、周辺ユニオンT継手(例えば、一次T継手30´´および二次T継手40´´)は、内部ボア(例えば、0.5mmの内部ボア)を有してよく、内部ユニオンT継手(例えば、排出T継手20´´)は、異なるサイズの内部ボア(例えば、0.25mmの内部ボア)を有してもよい。ループ50´´および結合管60´´は、例えば、これに限定されるものではないが、不活性化された内面および0.53mmの内径を有する所定長さの金属キャピラリチューブを含んでいてもよい。ループ50´´は、一次T継手30´´と排出T継手20´´との間に配置されてもよい。ループ50´´は、例えば、これに限定されるものではないが、約5.0cmまたは約12.5cmの長さを有していてもよい。結合管60´´は、例えば、約2.5cmの長さを有してよく、および/または、排出T継手20´´と二次T継手40´´との間に位置するようにしてもよい。弁100´´は、例えば、高速小型3ポート電磁弁からなり、および/または、移送ライン(例えば、MXT移送ライン)の長さ(例えば、12cm)により一次および二次T継手30´´,40´´に接続されてもよい。排出T継手20´´の残りのポートは、例えば、背圧レギュレータに接続されてもよい。
【0053】
実施例においては、キャリアガスとして水素が使用されてもよい。補助キャリアガス流Fsは、マスフローメータを用いて制御されてもよい。マスフローメータの出力は、弁(例えば、電磁弁)の共通ポートに提供されてもよい。弁の状態は、モジュレータの状態を決定してもよい。モジュレータの充填状態は、弁が補助ガス流を(例えば、
図15に概して示すように)二次T継手に導くときに生成されてもよい。注入状態は、補助流が代わりに一次T継手に向けられるように電磁弁を作動させることによって生成されてもよい。
【0054】
実施形態においては、一次カラムは、一次T継手を通してループの上流端に挿入されてもよい。一次カラムとループとの同軸配置は、一次カラムの挿入の深さを調整することによって、有効ループ長を変更することを可能にし得る。有効ループ長は、一次カラムの先端からループの下流端(例えば、排出T継手の入口)までの距離に対応していてもよい。
【0055】
実施形態において、二次カラムは、二次T継手を通して結合管に挿入されてもよい。二次カラムは、排出T継手に接触するまで、結合キャピラリの全長を通して押されてもよい。次いで、二次カラムは、わずかに(例えば、約1mm)引き出されてもよい。この配置により、有効な接合管の長さを約1mmと極めて短くすることができる。
【0056】
一次カラムをループと、二次カラムを結合管と同軸に配置することにより、ループおよび結合管の有効長を調整することができる。これは、特に、モジュレータを適切にチューニングすることを可能にし、新たなまたは所定の用途のためのモジュレータ開発の初期段階において特に有用であり得る。ループの有効長を短くすることにより、充填段階においてループが過剰充填されるようにし、または(必要に応じて)長くすることにより、注入段階においてループが完全に洗い流されることがないようにすることができる。ループの充填過剰および排出不足は、モジュレータの切り替え動作が発信パルスに鋭いエッジを生じさせることができるので、好ましいと考えられる。
【0057】
二次カラムと結合管との同軸配置は、結合管の有効長を調整することも可能にし得る。結合管の有効長を調整することは、充填状態中に一次排出流体が二次カラムに拡散的ににじみ出ることを防ぐために、結合管の長さをできるだけ短くすることが望ましい場合がある。
図16Aおよび
図16Bは、二次カラムの先端付近の排出T継手領域において発生し得る例示的な流動パターンの拡大図を概して示している。
図16Aは、充填状態中の例示的な流動パターンを概して示している。補助キャリア流Fsは、二次T継手において流入し、その後、結合管の内壁と二次カラムの外面との間の空間に生じ得る環状領域において結合管を通って流れてもよい。補助流は、一部(例えば、F2)が二次カラムに入り、二次カラムの先端を通過し、残りがさらに排出T継手に流れ込み、最終的に流量調節器を通って流出してもよい。この残りの流れがカーテン流Fc=Fs-F2であってもよく、カーテン流によって、充填状態において一次流F1が二次カラムに流入することができないようにしてもよい。ただし、二次カラムが排出T継手の方向に挿入されすぎていると、カーテン流が十分な距離を確保できず、一次排出流体がカーテン流に逆らって拡散し、二次カラムに到達するのを防止できない場合がある。理想的な有効結合管長は、まず二次カラムを排出T継手に完全に挿入し(例えば、有効結合管長0)、次ににじみが観察されなくなるまで二次カラムを引き抜くことによって確立することができる。最小有効結合管長(最大挿入深さ)により動作することの利点は、注入状態(例えば、
図16B参照)の間に存在する流動パターンを調べることによって確認することができる。モジュレータが注入状態になると、補助キャリアが一次T継手に導入され、ループ内に溜まった一次排出流体がFs+F1の流量だけ排出T継手に流入することがある。最短有効結合管長で動作することにより、充填状態への切り替え後、一次排出流体がほぼ直ちに二次カラムの入口に到達することができるようになり得る。このように、実施形態においては、モジュレータによって生じる時間遅れがほとんどなく、極めて狭いパルスの幅を正確に制御するために使用することができる。
【0058】
図17は、試験装置の一実施形態の概略を概して示している。システムの左半分は、例えば、水素中の希薄なペンタンの流れを生成するために使用することができる。マスフローコントローラは、例えば、またこれに限定されるものではないが、3ポート2方向電磁弁に3mL/分の水素キャリアガスの流れを導入するために使用されてもよい。電磁弁の出力ポートは、クロス/T継手構造を有するスイッチ(例えば、ディーンズスイッチ)に接続されてもよい。ディーンズスイッチのクロスポート(排出ポート)は、背圧レギュレータに接続されてもよい。下流のT継手ポートは、例えば、これに限定されるものではないが、不活性化溶融シリカキャピラリの1m×0.1mm片に接続されてもよい。例として、これに限定されるものではないが、いくつかの実施形態においては、背圧レギュレータは、例えば、2mL/分のH2が排出ポートから流出し、1mL/分のH2が溶融シリカカラムを通過するように調整されてもよい。いくつかの実施形態においては、液体ペンタンは、例えば、0.4μL/hrの流量だけスイッチ(例えば、ディーンズスイッチ)に(例えば、シリンジポンプにより)注入されてもよい。スイッチの状態は、電磁弁の状態によって決定されてもよい。キャリアガスをT継手接続部に導くと、注入されたペンタンのすべてが排出ポートから押し出され、溶融シリカカラムに入ることができない場合がある。また、キャリアガスをクロス継手接続部に導くと、注入されたペンタンの1/3が溶融シリカカラムに入るようになる。このように、システムの左半分はGC×GC分離からの一次排出流体を正確にシミュレーションすることができる。例えば、これに限定されるものではないが、H2の1.0mL/分の定常流を作り、キャピラリカラムに通し、添加したペンタンをオン/オフさせることができる。
【0059】
図17の右側は、装置の一例のモジュレータ部分を表している。一次カラムは、モジュレータの一次T継手の中に挿入されてもよい。補助流の値は、マスフローコントローラによって制御されてもよく、例えば、限定するものではないが、10mL/分から20mL/分の範囲であってもよい。不活性化溶融シリカの長さ(例えば、1m×0.25mm)は、二次カラムとして機能してもよい。背圧レギュレータは、排出T継手の排出ポートに接続され、例えば、10mL/分の流れを二次カラムに発生させるように調整されてもよい。変調されたペンタンパルスは、ガスクロマトグラフ(例えば、パーキンエルマー社(Perkin-Elmer)のAutosystemXL)内に収容され得る高速炎イオン化検出器(FID)により検出することができる。スイッチおよびモジュレータの作動のタイミングは、2つの独立したマイクロプロセッサ回路などの1つまたは複数のコントローラによって制御されてもよい。例えば、またこれに限定するものではないが、システムまたは装置は、Fs=14.4mL/分の補助流により動作させることができる。この値は、F1=1mL/分とF2=10mL/分とを組み合わせた場合に、Fc=4.4mL/分のカーテン流およびFx=5.4mL/分の排出流につながる可能性がある。
【0060】
実施例においては、試験は、例えば、これに限定するものではないが、(例えば、通常の5.0cmのループの代わりに)12.5cmのループを用いて実施されてもよい。モジュレータは、ある期間(例えば、約4秒)充填状態に保持されてもよく、注入状態に費やされる時間(例えば、注入時間)は、例えば、10ミリ秒刻みで10ミリ秒から140ミリ秒に変動されてもよい。これにより、一定期間(例えば、約4秒)で区切られた幅が増加する一連のパルスが生成されてもよい。
図18は、得られた信号配列の一部を概して示している。
図19は、パルスの重ね書きを概して示している。図に概して示すように、パルスは、注入時間が増加すると(例えば、10ミリ秒から40ミリ秒まで)、最初は高さと幅の両方が増加することがある。注入時間がより大きな値(例えば、40ミリ秒より大きい値)に増加すると、幅は増加し続けるかもしれないが、パルスの高さは増加しないかもしれない。この効果は、パルスの高さ、幅、および面積を注入時間の関数としてプロットした
図20において概して観察することができる。
図20は、パルスの目視検査から分かること、すなわち、パルスの高さが(例えば、40ミリ秒を超える注入時間において)平坦になるが、幅は注入時間に正比例して増え続けることを確認することができる。ピークの幅は、5%以内で注入時間に対応することができる。したがって、パルスは、短い二次カラム上において著しい拡がりを示さず、一次排出流体は、充填状態中にほぼ瞬時にギャップを通過することができる。
図20はまた、パルス面積が注入時間に正比例する可能性があることを実証している。これは、注入時間が一次排出流体をループから完全に流し出すのに十分ではない場合に予想されることである。例えば、40ミリ秒以上の注入時間は、より広いピークをもたらすかもしれないが、より高いピークをもたらすことはない(少なくとも、1m×0.25mmのコーティングされていない二次カラムを使用する場合)。狭いパルスを注入できるモジュレータは、多くのアプリケーションに望ましいものである。
【0061】
注入時間40ミリ秒付近において変調する場合には、ループ(例えば、12.5cmのループ)が大きすぎる場合がある。より小さいループ(例えば、5.0cmのループ)を代わりに使用することもできる。ループを充填するためにかかる時間が少なくてもよいので、モジュレータは、一定時間(例えば、1.5秒)充填状態に保持されてもよく、注入時間は、一定時間単位で(例えば、10ミリ秒から140ミリ秒まで10ミリ秒単位で)変化させることができる。
図21は、パルスの重ね書きを概して示している。上述の構成においては、パルスの高さは、注入時間が増加するにつれて(例えば、40ミリ秒を越えると)本質的に平坦になる可能性がある。この構成においては、パルス幅は、注入時間が増加すると(例えば、60ミリ秒を超えると)平坦になる可能性がある。より長い注入時間は、パルスの幅を増加させないかもしれないが、パルスの後続の肩の部分を増加させるかもしれない。これは、ループ(例えば、5cmループ)を洗い流すのに時間(例えば、約60ミリ秒)を要する結果であるかもしれない。注入状態における一定時間(例えば、60ミリ秒)の後、ペンタンの供給源は、もはや、先行する充填状態中に集められた一次排出流体ではなく、代わりに、現在の注入状態中に入る一次排出流体であってもよい。注入状態中にループに入るペンタンは、補助キャリアガスによって希釈されるかもしれないので、後続の肩の信号強度はより低い可能性がある(例えば、
図21を参照のこと)。パルス統計値は、
図22において、注入時間の関数としてプロットされる。ピークの高さは、一定時間後(例えば、40ミリ秒後)に平坦となることがある。幅は、例えば60ミリ秒より大きい注入時間についてある値(例えば約58ミリ秒)で平坦となることがある。パルス面積は、ループが完全に洗い流されるまで(例えば、60ミリ秒)、注入時間に正比例して増加することがある。その時点以降、面積は、パルスの低強度後続肩の伸長などに起因して、よりゆっくりと増加する可能性がある。例えば、限定するものではないが、(現在の流動条件下において)約5cmの長さのループを使用する場合には、注入時間が約60ミリ秒以下であれば、シャープで対称的なパルスを得ることができる。
【0062】
例として、モジュレータは、充填状態中にループが過剰充填された場合に、最良の(または最適な)パルス形状を生成するように設計することができる。充填状態中にループが充填される範囲の影響を調べるために、試験装置が使用されてもよい。例えば、これに限定されるものではないが、試験装置は、長さ5.0cmのループを含み、注入時間は150ミリ秒に保持し、充填時間は500ミリ秒から2500ミリ秒まで250ミリ秒刻みで変化させることができる。
図23は、パルスの重ね書きの一例を示す。充填時間が増加すると、パルスの前縁は、ループの充填が増加することなどにより、左方向に移動する(例えば、より短い到着時間となる)ことがある。パルスの前縁は、ある充填時間(例えば、1.25秒以上)において一貫した形状をとることがあり、これは、現在の条件下においてループの過剰充填を開始するには一定時間(例えば、約1.25秒)かかることを示している。充填時間が増加するにつれて、後端が右方向に移動することがある。これは、少なくとも部分的には、充填状態中に一次排出流体が一次T継手の掃流されていない領域に拡散することに起因し得る。充填時間が増加すると、一次排出流体がループ入口からさらに拡散する可能性がある。これは、パルスの幅よりも短い注入時間を使用して、後端が切り取られるようにすることにより回避することができ、これは、ループの排出不足の利点となる場合がある。
【0063】
実施形態において、モジュレータは(例えば5cmループを用いた現在の流動条件下において)、ループの排出が十分でない注入時間(例えば60ミリ秒以下)、およびループが過剰に充填する充填時間(例えば1.25秒以上)に対して理想的および/または一貫したパルス形状を生成することができる。例として、これに限定されるものではないが、40ミリ秒の注入時間により生成されたパルスは、0.5秒刻みで1.5秒から3.0秒の範囲の充填時間と比較することができる。結果として得られるパルスの重ね書きの一例を
図24に示す。7つのパルスはすべてほぼ完全に重なっており、これは、充填過剰/排出不足の条件により動作するときに生成される再現性を実証している。充填過剰/排出不足は、パルス端の鋭さを二次カラムの入口のすぐ近くの環境によって決定することができるという付加的な利点を提供することができる。したがって、一次T継手または排出T継手の掃流されていない体積は、パルス形状にほとんど影響を与えない可能性がある。
【0064】
実施例においては、補助キャリアガスは、流体モジュレータにおいて少なくとも2つの機能を果たすことができる。すなわち、(i)二次カラムにキャリアガスを供給すること、および(ii)充填状態中に一次排出流体が二次カラムに流入することを防止し得るカーテン流を生成することである。
【0065】
モジュレータの実施形態の潜在的な利点は、カーテンガスがループに集められた一次排出流体を希釈しないことを含むことができる。パルスは、例えば10.5mL/分から17.0mL/分の範囲の補助キャリアガス流により生成されてもよい。二次カラム流が、例えば10.0mL/分の場合、これは0.5mL/分から7.0mL/分の範囲のカーテン流に対応することができる。入力流量の大きさは正確に測定できるが、カーテン流を正確に測定することはより困難な場合がある。カーテン流は、補助キャリア流の増加とともに増加する可能性があり、および/またはカーテン流の実際の値は、推定のみである可能性がある。例えば、これに限定するものではないが、注入時間は40ミリ秒に設定されてもよく、充填時間は1460ミリ秒であってもよい。パルスの重ね書きの一例が
図25に示されている。カーテン流が最も少ないパルスは、テーリング量が最も多くなる場合がある。これは、モジュレータが注入から充填に切り替わった直後に、一次排出流体を二次カラムの入口から押し戻すカーテン流が少ないためと考えられる。テーリング量は、カーテン流が増加するにつれて減少する可能性がある。カーテン流がある流量、例えば3.1mL/分に達すると、カーテン流のさらなる増加(例えば、4.4mL/分のカーテン流の場合)は、パルス形状に顕著な変化を与えない場合がある。カーテン流量を増加させてもピーク強度は変わらないので、ユーザはキャリアガスの補助流量を二次カラム流量よりかなり高く(例えば4mL/分から8mL/分高く)調整しても、十分なピーク形状と最大信号強度を得られる可能性がある。
【0066】
カーテンガス流からのピーク強度の独立は、逆充填/逆排出モジュレータと比較したような、モジュレータの実施形態の利点となり得る。例えば、これに限定するものではないが、
図15に示されるようなモジュレータの実施形態は、一次カラム70´´および流量調節器90´´の位置を変更(例えば、交換)することによってRFFモジュレータの実施形態に変換することができる。
図26には、そのようなRFFモジュレータの実施形態に対するパルスの重ね書きが示されている。RFFモジュレータの場合、カーテン流を増加させるとパルスのテーリングが減少する可能性があるが、RFFモジュレータの場合に、カーテン流が最も少ないときでもパルス強度は小さく、カーテン流を増加させるとパルス強度が大きく減少する可能性がある。ある状況においては、カーテン流が、例えば7.0mL/分であるときのパルス強度は、モジュレータの実施形態によって生成され得るものよりもほぼ10倍低い場合がある。RFFモジュレータにより確認されたカーテン流の増加に伴うパルス強度の減少は、RFFの流動パターンが、ループに収集される一次排出流体を希釈するカーテン流を引き起こすためであると考えられる。注目すべきは、データ(
図26など)は、一次カラムおよび流量調節器の位置を入れ替えることによって、
図15に例示されるような異なる実施形態により、RFFモードの変調を容易に達成できることを示す。RFFモジュレータのそのような新たな実施形態は、特に、結合管を有する二次カラムの同軸性/構成、および流量調節器とループとの同軸性/構成によって、他のRFFタイプのモジュレータと比べ優れた点を提供することができる。特に、このような管路の同軸性/構成により、二次カラムおよび/または流量調節器との挿入の深さを変えるだけで、結合管および/またはループの有効長を調整することが可能である。
【0067】
モジュレータの実施形態は、ガソリンなどのGC×GC分離を行うために使用されてもよい。モジュレータは、ガスクロマトグラフ(例えば、Agilent 7890)に搭載されてもよい。例えば、これに限定するものではないが、15.0m×0.25mm×0.50μmのDB-1カラムが一次カラムとして機能し、5.0m×0.25mm×0.25μmのStabilwaxカラムが二次カラムとして機能してもよい。キャリアガスとして水素が使用されてもよい。例として、また限定するものではないが、0.5μLの量のガソリンが、250℃に保持されたスプリット注入口(スプリット比100:1)を通して注入されてもよい。スプリット注入口は、1.0mL/分の一次カラム流を提供してもよい。15mL/分の補助キャリアガス流は、空気圧制御モジュール(PCM)によりモジュレータに供給することができる。PCMに付随する背圧レギュレータは、モジュレータの排出ポートに接続され、10mL/分の二次カラム流、したがって5.0mL/分のカーテン流を確立するために使用することができる。モジュレータは、注入時間30ミリ秒、充填時間1470ミリ秒において動作させ、1.5秒の変調周期を得ることができる。混合物の成分は、炎イオン化検出器で検出することができる。クロマトグラフのオーブンは、40℃で1分間保持した後、17℃/分で200℃まで上昇させることができる。
【0068】
図27は、ガソリンのGC×GCクロマトグラムの一例を示す。このクロマトグラムは、非極性×極性カラムセットによる石油化学混合物のGC×GC分離を表示している。飽和炭化水素は、クロマトグラムの底部付近に水平な帯を生成する場合がある。芳香族炭化水素は、中程度の二次保持時間から高い二次保持時間まで斜めに伸びる一連の「屋根瓦」型の帯を生成する場合がある。この例のカラムセットは、ガソリンの高速分離を行うことができる。例えば、ガソリンは、約12分で分離されてもよい。
【0069】
モジュレータの実施形態の性能は、二次元方向に沿ったピークの幅を調べることによって評価することができる。このため、2次元クロマトグラムを構築するために使用される信号配列のセグメントを調べてもよい。
図27は、このセグメントの位置を、垂直点線で概して強調している。
図28は、信号配列の一例を示している。変調されたピークは、例えば、飽和炭化水素ピークの幅が35ミリ秒、適度に保持されたベンゼンピークの幅が45ミリ秒と、極めて狭い場合がある。これらの幅のいずれもが、30ミリ秒の注入幅に近くてもよい。すべてのピークが対称的なガウス分布を有していてもよい。
【0070】
モジュレータの実施形態を使用して生成される、ガソリンのGC×GCクロマトグラムなどのクロマトグラムによる二次分解能は、完全移送流量モジュレータを使用して得られる分解能よりもはるかに高く、信号強度が低下しない可能性がある。
【0071】
モジュレータの実施形態は、ピーク強度を損なうことなく、極めて狭いパルスを生成することができる場合がある。モジュレータの実施形態は、他の差動流量モジュレータよりも最適化/調整するのが容易であり得る。モジュレータの実施形態は、RFFモジュレータと比較した場合に、機械的な複雑さを増すことなく、優れた性能を生み出すことができる。
【0072】
いくつかの上述の実施態様においては、「充填過剰/排出不足」モードと呼ばれるモードのモジュレータが開示されている。充填過剰/排出不足モードにおいては、モジュレータは、ループを一次排出流体で過剰充填するのに十分な時間だけ充填状態に保持され、その後、一次排出流体がループを完全に排出しない時間だけ注入状態にされ得る。このようなモードにおいては、一次排出流体の希釈されていないパルスが、注入時間よりわずかに短い幅で発生することがある。充填過剰/排出不足モードにおいては、前縁と後縁とが非常に鋭いパルスが発生することがある。
【0073】
しかしながら、本開示の他の実施形態においては、モジュレータを本質的に逆の方法で動作させることに利点があり得ることがわかった。「充填不足/排出過剰」モードと呼ばれるそのような逆のモードにおいて、一次排出流体が充填状態中にループを過剰に充填しないようにループ容積が増加されてもよく(例えば、ループ内において一次カラムを数センチメートル引き出すだけ)、集められた一次排出流体のすべてが注入状態中にループから排出されるように切替流Fsが増加されてもよい。
【0074】
図29から
図33には、充填不足/排出過剰のモジュレータの実施形態が概して示されている。これらの図において、希釈されていない一次排出流体は、ハッチングによって識別される。システム内の残りの充填物は、一般的にキャリアガスにより構成される。説明のために、図は全般的にモジュレータ内に存在し得る流れのためのいくつかの例示的な値を含んでいる。例示的な流量は、外部流量が、F1(例えば、1.0mL/分)、F2(例えば、10.0mL/分)、Fs(例えば、30.0mL/分)、およびFx(例えば、21.0mL/分)によって与えられると仮定している。外部流量と内部流量との両方を、
図29から
図33に関連して示している。
【0075】
変調サイクルの開始点は、一次排出流体がループ50´´´をほぼ満たしたような十分な時間の間だけモジュレータ10´´´が充填状態に保持された点であると考えられる。
図29は、そのような開始点を示す実施形態を概して示している。
【0076】
そのような実施形態においては、希釈されていない一次排出流体によりループを過剰充填する前に、弁100´´´は注入状態に切り替えられてもよい。
図30は、注入状態の開始の一例を概して示している。補助キャリアは、次に、一次T継手30´´´に入り、そこで、流入してくる一次排出流体と合流して高流量(例えば、31mL/分)となり、希釈されていない一次排出流体のプラグを、排出T継手20´´´を通して急速に押し、そこで二次カラム80´´´と流量調節器90´´´との間において分岐される。二次カラム80´´´に流入する集められた一次排出流体の割合(すなわち、F2/Fs)は、例えば、10/31であってもよい。
【0077】
図31には、注入状態の最後の瞬間における実施形態を概して示している。そのような状態において、補助流は、希釈されていない一次排出流体のすべてをループ50´´´から押し出した可能性がある。
図32は、充填状態に戻った直後のこのような実施形態を概して示している。例として、これに限定するものではないが、補助流(例えば、30.0mL/分)は、一部(例えば、10.0mL/分)が二次カラム80´´´の下流に希釈されていない一次排出流体のセグメントを押し続け、二次T継手40´´´に入ることができる。このような補助流の残りの部分(例えば、20.0mL/分)は、追加の一次排出流体の進入を防ぐカーテン流として機能することができる。同時に、希釈されていない一次排出流体は、一次T継手30´´´付近においてループ50´´´に再充填を開始してもよい。
図33は、充填時間の約半分の間、充填状態に保持された後の実施形態を概して示している。システムは、ループ50´´´がほぼ充填されるまで(例えば、
図29参照)、そのような充填状態に保持され、サイクルが繰り返される。
【0078】
上述の実施形態においては、例えば、前後のパルス端をトリミングまたはクリッピングすることによって、充填過剰/排出不足モードのパルス形状の利点が存在し得ることが言及された。充填不足/排出過剰モードの実施形態においては、そのようなパルス端は、トリミングまたはクリッピングされない場合もある。しかしながら、充填不足/排出過剰モードでループを洗い流すために、より多い流量が提供されてもよく、その流量は、例えば、充填過剰/排出不足モードでループを洗い流すために用いられる流量より最大2倍(またはそれ以上)高くてもよい。充填不足/排出過剰モードに伴うそのような多い流量は、特に、パルスの「クリッピングされていない」前縁および後縁によって引き起こされるパルス拡がりを低減または最小化するのに役立つ場合がある。本開示の実施形態においては、充填不足/排出過剰モードは、その理論的最小値よりも10%だけ広いパルスを生成し得ることが見出された。
【0079】
さらに、実施形態においては、単一のモジュレータが、充填過剰/排出不足モードまたは充填不足/排出過剰モードのいずれかと関連して使用される場合がある。例えば、充填過剰/排出不足モードにおいては、補助キャリア流は、充填状態と注入状態との間を迅速に切り替えるために利用される最小値近傍(例えば、F2より大きい3mL/分)で、かつ、有効ループ長を短縮するためにループ内に押し出された一次カラムによって動作させてもよい。充填不足/排出過剰モードは、一次カラムをループの後方に引き出し、より高い補助流(例えば、30mL/分付近)で作動することにより確立することができる。実施形態においては、充填過剰/排出不足モードは、例えば、比較的わずかに鋭いパルスを生じさせることができ、一方、充填不足/排出過剰モードは、例えば、特に狭い一次カラムピークを変調する場合に比較的優れた定量精度をもたらすことができる。
【0080】
これまでに説明したいくつかの実施形態は、3つのユニオンT継手と2つの長さのチューブ(例えば、
図15のループと結合管を参照)を有するシステムを含んでいた。しかしながら、本発明の概念は、そのような構成に限定されるものではなく、以下において言及される他の構成に限定されることなく、潜在的に有利な他の実施形態を構成することができる。
【0081】
例えば、限定するものではないが、3T継手モジュレータに関連し得る漏れの可能性を低減する1つの方法は、一次T継手200を設け、排出T継手、結合管、および二次T継手を単一のクロスユニオン継手に置き換えることである(例えば、
図34に概して示す単一のクロスユニオン継手210を参照)。このような実施形態において、クロスユニオン継手210は、ループポート220と二次カラムポート230とを接続する直線状の貫通孔を含み、排出ポート240と切替流ポート250とが貫通孔に接続するように直交位置に「スタガード」を含むことができる。このような実施形態においては、排出ポート240は、ループポート220に近い方の貫通孔に接続し、切替流ポート250は、二次カラムポート230に近い方に接続してもよい。次いで、二次カラムの入口は、排出ポート240および切替流の接続点の間に配置されてもよい。このような実施形態の利点は、継手の数を3つから2つに減らすことができ、モジュレータの機械的強度を(例えば、結合管を除去することによって)高めることができ、および/または結合管に関連する2つの圧縮シールを排除することができるので漏れのリスクを減らすことができることである。
【0082】
図35は、一次T継手300と、二次カラムに関連する過剰挿入を有するクロスユニオン継手310とを含むモジュレータの実施形態を概して示している。モジュレータは、ループポート320および二次カラムポート330を含んでもよく、排出ポート340および切替流ポート350を含んでもよい。標準的なクロス継手に二次カラムを過剰挿入するこのような構成は、スタガードクロス継手を効果的に模倣することができる。このような構成は、このようなモジュレータ/システムが、2つのT継手および結合キャピラリを有するモジュレータ/システムの利点を模倣するが、1つの継手を使用する(例えば、排出T継手、結合キャピラリ、および二次T継手を単一のクロス継手に置き換える)ことを可能にすることができる。このような(二次カラムに過剰挿入された)クロス継手において、充填状態および注入状態において生成される流動パターンの例が、概して
図36に示されている。一般に図示しているように、このような二次カラムの過剰挿入は、充填状態中に補助キャリアで満たされ、一次排出流体で満たされないようにすることができる。注入状態においては、一次排出流体は二次カラムに入ることができる。実施形態においては、二次カラム(例えば、約1mm)を反対側のポートに挿入することにより、3T継手モジュレータ(例えば、
図15に示す実施形態など)と同等に機能するモジュレータを提供することができる。しかしながら、先に述べたように、このような方法のいくつかの潜在的な利点は、継手の数を減らすことができ、機械的強度を増加させることができることである。実施形態により、二次カラムの先端の外側に吸着される分析対象化合物のリスクを、例えば、不活性化材料の層の形態を含む不活性化材料で二次カラム先端の外側表面をコーティングすることによって最小限にすることができる。
【0083】
図37は、別の実施形態を概して示している。このような実施態様においては、離散的なユニオンT継手のすべてを単一の5ポートモジュレータマニホールドに置き換えることができる。
図37には、5ポートマニホールド400の実施形態を概して示している。5ポートマニホールドの実施形態は、例えば、単一のユニット構成要素(例えば、単一のユニット形成された本体/ハウジング構造410)からなるように構成されてもよく、ライナ420、例えば、マニホールドの長さの下に挿入することができるポート付き不活性化ライナ(例えば、シラン処理されたガラスで構成される可能性がある)をさらに含んでもよい。実施形態において、そのようなライナは、ライナの壁を通して、例えば、外向きの排出管の位置の近くに開けられた1つまたは複数の小さな排出ポートを含んでもよい。
図37に示される装置/システムは、一次カラム430、二次カラム440、排出流量調節器450に通じるラインまたはチューブ、切替弁460からの通常時開ライン、および切替弁470からの通常時閉ラインを含んでもよい。
【0084】
ライナ420は、1つ以上のシール480を含んでもよく、排出ポートとの流体連通のために位置する排出孔490を含んでもよい。実施形態において、ライナ420は、例えば、(i)上流切替流ポート500と排出ポート510との間、および(ii)排出ポート510と下流切替流ポート520との間の少なくとも2箇所においてマニホールドの内側本体に接続および/または密封されてもよい。二次カラムの入口は、ライナ排出ポート(複数可)のわずかに下流に配置されてもよい。実施形態においては、排出ポートは、穿孔されたライナを互いに突き合わせた2つのチューブ片と置き換えることによって提供されてもよい。例えば、一方のチューブの端部は、2つのチューブ片が端面を重ね合わせる構成で配置(例えば、プレス)されるときに排出ポートとして機能することができる小さな半径方向の溝を含んでもよい。さらに、モジュレータの「内側ライナ」の実施形態は、例えば、モジュレータが高い機械的強度を備えることができること、最終的に二次カラムに入る一次排出流体はライナの内面にのみ接触するので、ライナのみを不活性化すればよいこと、モジュレータが低揮発性サンプル成分によって汚れた場合、モジュレータの性能はライナを単に交換することによって回復することができること、および/または線形部の内部寸法は現在の分離の特定の必要に合わせて調整できるが、残りのハードウェアはあまり変更しなくてもよいことなどの特定の利点を提供することができる。
【0085】
図15に概して示すようなモジュレータの実施形態において、いくつかの実施形態は、逆充填/排出モードで、例えば、一次カラムと排出流体調節器(例えば、要素70´´と90´´)の位置を交換することにより、動作させることができることに留意されたい。
図38は、逆充填排出モードにより動作可能なモジュレータ500の一実施形態を概して示している。二次カラム510と結合管520との同軸性/構成は、そのような実施形態における結合管520の有効長を、単に二次カラム510の結合管520への挿入の深さを変えることによって調整することを可能にする。この調整可能性は、典型的にRFFモードに関連する小さなカーテン流の観点から、RFFモードにより動作する場合に有利である。例えば、二次カラム510の先端は、一次T継手530から二次T継手540に向かって引き離すことができ、それによって、結合管520の有効長を増加させ、二次カラム510の入口への一次排出流体の拡散移送を減少させることができる。
図38に概して示すような実施形態はまた、排出流体調節器につながる排出T継手560に関連する導管550を採用してもよい。実施形態においては、導管550は、ループ導管570に同軸に挿入できるように十分に狭いものであってもよい。流量調節器導管550の挿入の深さは、調整可能な有効ループ長を提供するために変更することができる。これは、例えば、充填過剰条件下においてモジュレータを動作させるときに有利な特徴である。
【0086】
本明細書では、各種装置、システム、および/または方法に関する様々な実施例/実施形態が記載されている。多数の特定の詳細が、本明細書に記載され、添付の図面に例示されるような実施例/実施形態の全体的な構造、機能、製造、および使用の完全な理解を提供するために記載されている。しかしながら、当業者には、実施例/実施形態は、そのような具体的な詳細なしに実施され得ることが理解されよう。他の実施例では、周知の操作、構成要素、および要素は、本明細書に記載された実施例/実施形態を不明瞭にしないように、詳細には記載されていない。当業者であれば、本明細書に記載され図示された例/実施形態は非限定的な例であり、従って、本明細書に開示された特定の構造的および機能的詳細は典型であってよく、必ずしも実施形態の範囲を限定しないことを理解されるであろう。
【0087】
本明細書全体を通して、「例」、「例において」、「例とともに」、「様々な実施形態」、「実施形態において」、または「実施形態」等への言及は、例/実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造、又は特性が、少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書中の所々で「実施例」、「実施例において」、「実施例とともに」、「様々な実施形態において」、「実施形態において」、または「実施形態」等の表現が現れることは、必ずしも全てが同じ実施形態を指しているわけではない。さらに、特定の特徴、構造、または特性は、1つ以上の例/実施形態において、任意の適切な方法で組み合わされ得る。したがって、1つの実施形態/実施例に関連して図示または説明された特定の特徴、構造、または特性は、そのような組み合わせが非論理的または非機能的でないことを考えると、全体または一部を、1つまたは複数の他の実施形態/実施例の特徴、構造、機能、または特性と限定されずに組み合わせても良い。さらに、特定の状況または材料を本開示の教示に適合させるために、その範囲から逸脱することなく、多くの変形を行うことができる。
【0088】
単一の要素への言及は、必ずしもそのように限定されず、そのような要素の1つ以上を含むことができることを理解されたい。任意の方向参照(例えば、プラス、マイナス、上、下、上方、下方、左、右、左方、右方、上、下、上、下、垂直、水平、時計回り、および反時計回り)は、読み手の本開示の理解を助けるために識別目的にのみ使用し、特に例/実施形態の位置、方向、または使用に関する限定を生じないものとする。
【0089】
接合に関する言及(例えば、付属、結合、接続など)は広義に解釈され、要素の接続と要素間の相対的な移動の間に中間部材を含むことができる。このように、接合に関する言及は、必ずしも2つの要素が直接接続/結合され、互いに固定された関係にあることを意味するものではない。本明細書における「例えば」の使用は、広く解釈されるべきであり、本開示の実施形態の非限定的な例を提供するために使用され、本開示は、そのような例には限定されない。「および」および「または」の使用は、広義に解釈される(例えば、「および/または」として扱われる)。例えば、限定されないが、「および」の使用は、必ずしも記載された全ての要素または特徴を必要とせず、「または」の使用は、そのような構成が非論理的である場合を除き、包括的である。
【0090】
プロセス、システム、および方法は、特定の順序の1つ以上のステップに関連して本明細書に記載されることがあるが、そのような方法は、ステップを異なる順序で、特定のステップを同時に、追加のステップで、および/または特定の記載ステップを省略して実施され得ることを理解されたい。
【0091】
上記の説明に含まれるまたは添付の図面に示される全ての内容は、例示的なものとしてのみ解釈され、限定的なものではない。詳細または構造における変更は、本開示から逸脱することなく行うことができる。