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特許7566935マグネシウム電池のためのアノードおよびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】マグネシウム電池のためのアノードおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/134 20100101AFI20241007BHJP
   H01M 4/46 20060101ALI20241007BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20241007BHJP
   H01M 4/1395 20100101ALI20241007BHJP
   H01M 10/054 20100101ALI20241007BHJP
【FI】
H01M4/134
H01M4/46
H01M4/66 A
H01M4/1395
H01M10/054
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022577292
(86)(22)【出願日】2021-07-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-20
(86)【国際出願番号】 DE2021100582
(87)【国際公開番号】W WO2022012715
(87)【国際公開日】2022-01-20
【審査請求日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】102020118666.5
(32)【優先日】2020-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515009952
【氏名又は名称】シェフラー テクノロジーズ アー・ゲー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler Technologies AG & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Industriestr. 1-3, 91074 Herzogenaurach, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】フェリックス カンプマン
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲン レムリンガー
(72)【発明者】
【氏名】ラディスラウス ドブレニツキ
【審査官】山下 裕久
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-531725(JP,A)
【文献】特開2013-168351(JP,A)
【文献】特開平11-345610(JP,A)
【文献】特開2000-012016(JP,A)
【文献】特開2019-186026(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/13-66
H01M 10/054
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マグネシウム電池(2)のためのアノード(1)であって、コア材料から作製されたコア要素(3)を備え、マグネシウムコーティング(4)が、前記コア要素(3)の表面上に少なくとも部分的に配置され、保護層(5)が、前記マグネシウムコーティング(4)の表面上に配置され、
前記保護層(5)が、
・金属として設計され、次の元素のうちの1つ:
アルミニウム、シリコン、チタン、タンタル、ニオブ、モリブデン、銀、若しくは
ルミニウム、銅、スズ、シリコン、チタン、タンタル、ニオブ、ニッケル、モリブデン、銀のうちの少なくとも2つの合金からなること、又は
・セラミックとして設計され、アルミニウム、銅、スズ、シリコン、チタン、タンタル、ニオブ、ニッケル、モリブデン、銀、炭素、窒素、酸素を含む群からの元素からなること、又は
・前記保護層(5)が、金属硫化物からなり、アルミニウム、銅、スズ、シリコン、チタン、タンタル、ニオブ、ニッケル、モリブデン、銀を含む群からの元素のうちの少なくとも1つが、前記金属硫化物を形成すること、又は
・前記保護層(5)が、アルミニウム、銅、スズ、シリコン、チタン、タンタル、ニオブ、ニッケル、モリブデン、銀、水素を含む群からの1つ以上の元素がドープされた炭素からなること、
のいずれかである、ことを特徴する、アノード(1)。
【請求項2】
前記セラミック保護層(5)が、金属酸化物層であることを特徴とする、請求項1に記載のアノード(1)。
【請求項3】
前記セラミック保護層(5)が、炭化物および/又は窒化物化合物から形成されることを特徴とする、請求項1に記載のアノード(1)。
【請求項4】
前記保護層(5)が、少なくとも0.5nmであり、最大5μmの層厚を有することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のアノード(1)。
【請求項5】
前記マグネシウムコーティング(4)が、50nm~200μmの範囲の層厚を有することを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のアノード(1)。
【請求項6】
前記コア材料が、アルミニウム、銅、鋼、およびポリマー材料を含む群のうちの少なくとも1つの材料から形成されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のアノード(1)。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のアノード(1)を製造する方法であって、
・前記コア要素(3)の提供の方法ステップと、
・前記コア要素(3)の表面の少なくとも一部への前記マグネシウムコーティング(4)の適用の方法ステップと、
・前記マグネシウムコーティング(4)の前記表面への前記保護層(5)の適用の方法ステップと、を少なくとも含む、方法。
【請求項8】
前記マグネシウムコーティング(4)が、ガルバニックプロセス、ラミネーションプロセス、PVDプロセス、CVDプロセス、ALDプロセス、めっきプロセス、溶射プロセス、又は溶融プロセスによって、前記コア要素(3)の前記表面の少なくとも一部に適用されることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記保護層(5)が、ガルバニックプロセス、PVDプロセス、CVDプロセス、めっきプロセス、又はALDプロセスによって、前記マグネシウムコーティング(4)の前記表面に適用されることを特徴とする、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
請求項1~6のいずれか一項に記載の少なくとも1つのアノード(1)と、硫黄成分を含有するカソード材料で作製された少なくとも1つのカソード(7)と、を備える、マグネシウム電池(2)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マグネシウム電池用アノードおよびマグネシウム電池用アノードの製造方法に関する。マグネシウム電池は、電気化学的蓄電デバイスであり、そのアノードは、基本的にマグネシウムで作製される。
【背景技術】
【0002】
米国特許出願公開第2020/0112028号明細書は、マグネシウム電池用のアノードを開示している。アノードは、マグネシウム発泡体から形成され、全ての表面でマグネシウム発泡体を覆うポリマー層を有する。
【0003】
米国特許出願公開第2016/0254541号明細書は、λ-MnO相を含むマグネシウム電池用の電極活物質を説明している。
【0004】
米国特許出願公開第2018/0190981号明細書は、金属マグネシウムで作製される第1の電極と、第1のポリマーを含むコーティングと、を有するデバイスを開示している。
【0005】
特開2014-143191号公報は、マグネシウムを含む負極と、銅又は銅合金を含む正極と、クエン酸、塩化ナトリウム、および水を含む電解質と、を有するマグネシウム電池を説明している。正電極とは反対側の負電極の面は、スズを含むコーティングでコーティングされる。
【0006】
一般に、マグネシウム電池は、複数の電池セルを含み、それぞれの電池セルは、電解質内に配置された複数のアノードおよびカソードを有することが知られている。マグネシウム電池の動作中、電解質とマグネシウムアノードとの間のマグネシウムアノード上に境界層が形成され、これは、マグネシウム電池の耐用年数および性能、特にインピーダンスおよびサイクル安定性を低減させる。この境界層は、マグネシウムアノードが周囲の空気に曝されるとすぐに形成され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、マグネシウム電池用の長寿命アノードを提供することである。更に、アノードは、マグネシウム電池を製造するために安価であり、かつその性能を増加させる必要がある。この目的は、請求項1および請求項7の主題によって達成される。好ましい実施形態は、従属請求項、説明、および図面に見出すことができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によるマグネシウム電池用アノードは、コア材料から作製されたコア要素を含み、マグネシウムコーティングが、コア要素の表面上に少なくとも部分的に配置され、保護層が、マグネシウムコーティングの表面上に配置され、保護層が、
・金属として設計され、次の元素のうちの1つ:アルミニウム、銅、シリコン、チタン、タンタル、ニオブ、ニッケル、モリブデン、銀、若しくは
次の元素のうち少なくとも2つの合金:
アルミニウム、銅、スズ、シリコン、チタン、タンタル、ニオブ、ニッケル、モリブデン、銀からなること、又は
・セラミックとして設計され、アルミニウム、銅、スズ、シリコン、チタン、タンタル、ニオブ、ニッケル、モリブデン、銀、炭素、窒素、酸素を含む群からの元素からなること、又は
・保護層が、金属硫化物からなり、アルミニウム、銅、スズ、シリコン、チタン、タンタル、ニオブ、ニッケル、モリブデン、銀を含む群からの元素のうちの少なくとも1つが、金属硫化物を形成すること、又は
・保護層が、炭素又はドープされた炭素からなること、
のいずれかである。
【0009】
言い換えれば、コア要素の表面の少なくとも一部又はコア要素の全表面がマグネシウムコーティングでコーティングされ、マグネシウムコーティングのマグネシウムは、好ましくは少なくとも99.9%の純度を有する。マグネシウムコーティングは、アノードの活物質である。活物質は、カソードと相互作用することが意図されている。保護層は、マグネシウムコーティングの表面全体に配置されている。特に、保護層は、マグネシウム電池の電解質が、アノードのマグネシウムコーティングと直接、すなわち直接的に接触せず、マグネシウムコーティングの表面上に配置された保護層と単に接触するように、又は、マグネシウムコーティングとの相互作用により、アノードの動作に良い影響を与えるように、マグネシウムコーティングの表面上に形成される。これは、耐用年数および性能、特にマグネシウム電池のインピーダンスおよびサイクル安定性を低減させる、電解質への自発的な境界層が、マグネシウムコーティング上に形成されないという利点を有する。特に、保護層は、製造中の酸化からマグネシウムコーティングを保護する。更に、保護層は、界面抵抗の低減、並びに溶解および堆積プロセスの動力学の改善を可能にする。更に、保護層は、アノードのサイクル性を最適化する。
【0010】
これらの利点を達成するために、保護層は、金属として設計され、好ましくは次の元素:アルミニウム、銅、シリコン、チタン、タンタル、ニオブ、ニッケル、モリブデン、銀のうちのいずれか1つから形成される。代替的に、保護層は、次の元素:アルミニウム、銅、スズ、シリコン、チタン、タンタル、ニオブ、ニッケル、モリブデン、銀のうちの少なくとも2つの合金から形成される。
【0011】
例えば、保護層は、アルミニウム又はアルミニウム合金から形成される。例えば、保護層は、銅又は銅合金から形成される。例えば、保護層は、スズ合金から形成される。例えば、保護層は、シリコン又はシリコン合金から形成される。例えば、保護層は、チタン又はチタン合金から形成される。例えば、保護層は、タンタル又はタンタル合金から形成される。例えば、保護層は、ニオブ又はニオブ合金から形成される。例えば、保護層は、ニッケル又はニッケル合金から形成される。例えば、保護層は、モリブデン又はモリブデン合金から形成される。例えば、保護層は、銀又は銀合金から形成される。
【0012】
代替的な実施形態では、保護層は、セラミックとして設計され、アルミニウム、銅、スズ、シリコン、チタン、タンタル、ニオブ、ニッケル、モリブデン、銀、炭素、窒素、酸素を含む群からの元素からなる。
【0013】
特に、セラミック保護層は、金属酸化物層である。例えば、保護層は、少なくとも部分的に又は全体的に酸化アルミニウムから形成される。例えば、保護層は、少なくとも部分的に又は全体的に酸化銅から形成される。例えば、保護層は、少なくとも部分的に又は全体的に酸化スズから形成される。例えば、保護層は、少なくとも部分的に又は全体的に酸化シリコンから形成される。例えば、保護層は、少なくとも部分的に又は全体的に酸化チタンから形成される。例えば、保護層は、少なくとも部分的に又は全体的に酸化タンタルから形成される。例えば、保護層は、少なくとも部分的に又は全体的に酸化ニオブから形成される。例えば、保護層は、少なくとも部分的に又は全体的に酸化ニッケルから形成される。例えば、保護層は、少なくとも部分的に又は全体的に酸化モリブデンから形成される。例えば、保護層は、少なくとも部分的に又は全体的に酸化銀から形成される。
【0014】
更なる好ましい実施形態では、セラミック保護層は、炭化物および/又は窒化物化合物から形成される。例えば、保護層は、少なくとも部分的に又は全体的に窒化シリコンから形成される。例えば、保護層は、少なくとも部分的に又は全体的に窒化チタンから形成される。例えば、保護層は、少なくとも部分的に又は全体的に窒化ニオブから形成される。例えば、保護層は、少なくとも部分的に又は全体的に窒化タンタルから形成される。
【0015】
更なる代替的な実施形態では、保護層は、金属硫化物からなり、アルミニウム、銅、スズ、シリコン、チタン、タンタル、ニオブ、ニッケル、モリブデン、および銀を含む群から選択される元素のうちの少なくとも1つが、金属硫化物を形成する。例えば、保護層は、少なくとも部分的に又は全体的に硫化モリブデンから形成される。
【0016】
更なる好ましい実施形態によれば、保護層は、硫化物化合物および/又は窒化物化合物を含むことができる。
【0017】
更なる代替的な実施形態では、保護層は、炭素又はドープされた炭素からなる。ドープされた炭素層、すなわち大部分が炭素から形成された保護層のドーピングは、最大で45原子%に達する。好ましくは、アルミニウム、銅、スズ、シリコン、チタン、タンタル、ニオブ、ニッケル、モリブデン、銀、水素を含む群からの1つ以上の元素が、ドーピング元素としてここで使用される。
【0018】
本発明の好ましい実施形態によれば、保護層は、少なくとも0.5nm、最大で5μmの層厚を有する。特に、少なくとも5nm、最大で250nmの保護層の層厚は、アノードのエネルギー密度の維持に特に良好に寄与することが見出された。
【0019】
好ましくは、導体としても知られるコア要素は、少なくとも部分的に、アルミニウム、銅、鋼、又はポリマー材料から形成される。例えば、コア要素は、アルミニウム又はアルミニウム合金から形成される。例えば、コア要素は、銅又は銅合金から形成される。例えば、コア要素は、鋼又は鋼合金から形成される。特に、鋼合金は、ステンレス鋼、すなわち、硫黄およびリンの含有量が最大で0.025wt%であるような純度の鋼である。特に、鋼合金は、耐腐食性であり、合金元素として少なくともクロムおよび/又はニッケルを有する。鋼合金の合金組成は、例えば、スペクトル分析(OES)又はX線蛍光分析(XRF)によって決定することができる。wt%は、重量パーセントの略である。
【0020】
本発明によるアノードを製造するために、以下の方法ステップが実施される:まず、コア要素が提供される。コア要素は、好ましくは、アルミニウム、銅、鋼、又はポリマー材料のコア材料から形成される。これに続いて、コア要素の表面の少なくとも一部にマグネシウムコーティングが適用される。これに続いて、マグネシウムコーティングの表面に保護層が適用される。
【0021】
本発明の好ましい実施形態によれば、マグネシウムコーティングは、ガルバニックプロセス、ラミネーションプロセス、PVDプロセス、CVDプロセス、ALDプロセス、めっきプロセス、溶射プロセス、又は溶融プロセスによって、少なくともコア要素の表面の一部又は全部に適用される。
【0022】
マグネシウムコーティングは、好ましくは、50nm~200μm、特に1μm~50μmの範囲の層厚を有する。
【0023】
ガルバニックプロセスでは、コア要素上のマグネシウムの電気化学(electrochemistry)電解は、例えば、析出(deposition)浴内で行われる。ラミネーションプロセスでは、コーティングされた材料、例えば、マグネシウムコーティングおよび保護層が、構造化されたコア要素に転写又はラミネートされる。クラッディングとしても知られるめっきプロセスでは、圧力および温度によって、特にその後の熱処理によって、基材又はコア要素上に金属層が形成される。溶射プロセスでは、液化マグネシウムが基材、すなわち、コア要素に吹き付けられる。
【0024】
PVDは、「Physical Vapor Deposition」という用語の略である。PVDプロセスは、真空下で150℃~500℃の範囲の温度で実行されるプロセスである。物理的プロセスを使用して、マグネシウムコーティングの出発材料を気相に変換する。次に、ガス状材料が、コア要素の表面に方向付けられ、そこで凝縮して、マグネシウムコーティングを形成する。例えば、PVDプロセスでは、粒子がスパッタリングによってマグネシウムターゲットから抽出され、プラズマ内でコア要素の表面に運ばれる。PVDプロセスは、特に純粋で均一なコーティングを生成するために使用することができる。
【0025】
CVDは、「Chemical Vapor Deposition」という用語の略である。CVDプロセスでは、気相からの化学反応により、コア要素の加熱された表面に層堆積が生じる。CVDプロセスは、コア要素の表面での少なくとも1つの反応によって特徴付けられる。この反応は、少なくとも1つのガス状出発化合物および少なくとも2つの反応生成物を含み、それらのうちの少なくとも1つは、固相である。CVDプロセスは、特に均一なコーティングを生成するために使用することができる。
【0026】
ALDは、「Atomic Layer Deposition」という用語の略である。ALDプロセスは、高度に変更されたCVDプロセスであり、少なくとも2つの周期的に実行される自己制限的な表面反応を伴う。堆積される材料は、化学形態で1つ以上のキャリアガスに結合される。キャリアガスは、交互に反応チャンバに送給され、そこでコア要素の表面と反応させられ、ガス中に結合したマグネシウムがコア要素の表面に堆積する。ALDプロセスは、特に薄いコーティングを生成するために使用することができる。
【0027】
溶融プロセスでは、マグネシウムは、溶融され、例えば、浸漬又は噴霧によってコア要素に塗布される。溶融プロセスは、コスト上の利点だけでなく、高速、かつ大面積のコーティングを形成するという利点も提供する。
【0028】
本発明の好ましい実施形態によれば、保護層は、PVDプロセス、CVDプロセス、又はALDプロセスによってマグネシウムコーティングの表面全体に適用される。
【0029】
マグネシウム箔上に保護層をコーティングすることも可能であり、これをコア要素に適用する。マグネシウム箔は、好ましくは、圧延プロセスを使用して製造される。
【0030】
本発明の好ましい実施形態によれば、保護層は、アノードの動作中にマグネシウムコーティングの表面に適用される。言い換えれば、電池セルは、マグネシウム電池の動作中にアノードのマグネシウムコーティング上に保護層が生成されるように設計されており、これは、マグネシウムコーティングを酸化から保護し、アノードのサイクル性を最適化し、界面抵抗の低減と、溶解および堆積プロセスの動力学の改善と、を可能にする。例えば、電解質は、アルミニウム、銅、シリコン、チタン、タンタル、ニオブ、ニッケル、モリブデン、銀の元素のうちの1つが保護層としてアノードのマグネシウムコーティング上に堆積されるように形成される。代替的に、アルミニウム、銅、スズ、シリコン、チタン、タンタル、ニオブ、ニッケル、モリブデン、銀を含む群からの少なくとも2つの元素の合金が堆積される。
【0031】
更に、本発明は、本発明によるアノードを含むマグネシウム電池に関する。特に、マグネシウム電池は、複数の電池セルを有し、各電池セルは、液体電解質又は固体電解質内に配置された複数のアノードおよびカソードを有する。
【0032】
硫黄成分を含有するカソード材料で作製されたカソードは、本発明によるアノードとともに好適であることが証明された。V又はMgMnは、カソードを形成するためのインターカレーション反応のためのベース材料として特に好適であることが証明された。カソードを形成する変換反応のベース材料として、硫黄浸透炭素、硫黄-炭素化合物、又はSPAN(硫化ポリ(アクリロニトリル))が特に好適であることが証明された。
【0033】
マグネシウム電池の電解質の形成には、次のような電解質塩が好適であることが証明された。
【0034】
MgTFSI マグネシウムビス(トリフルオロメタンスルホンイミド)
Mg(B(hfip) テトラキス(ヘキサフルオロイソプロピルオキシ)ホウ酸マグネシウム
Mg(BH 水素化ホウ素マグネシウム
また、Mg(BHとLi(BH)(=水素化ホウ素リチウム)との混合物、又はMg(B(hfip)とLi(B(hfip))(=テトラキス(ヘキサフルオロイソプロピルオキシ)ホウ酸リチウム)との混合物
は、性能を向上させることが示された。
【0035】
更に、Mg(HMDS)(=マグネシウムビス(ヘキサメチルジシラジド))をベースとした電解質塩の使用が好適であることが証明された。
【0036】
グライム、特にTEG(=テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラグライム)、DEG(=ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジグライム)、DME(=1,2-ジメトキシエタン、エチレングリコールジメチルエーテル、モノグライム)、又はTEGとDMEとの混合物が、電解質塩を溶解するための好適な溶媒であることが証明された。
【0037】
他の証明された溶媒は、THF(テトラヒドロフラン)又はPyr14TFSI(=1-ブチル-1-メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド)などのイオン液体である。
【0038】
本発明を改善する更なる手段は、2つの図に基づく本発明の好ましい例示的な実施形態の説明とともに以下により詳細に示され、同じ要素には同じ参照番号が与えられる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】部分的にのみ示されている、本発明によるマグネシウム電池の非常に簡略化された概略断面図を示す。
図2】部分的にのみ示されている、本発明によるアノードの非常に簡略化された概略断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1は、本発明によるマグネシウム電池2を非常に簡略化して示している。マグネシウム電池2は、複数の電池セル8を有するが、簡潔化のために、ここでは、単一の電池セル8の一部のみが示されている。電池セル8は、複数のアノード1およびカソード7を有し、これらは電解質6内に配置される。それぞれのアノード1の表面は、保護層5で完全に覆われている。
【0041】
図2は、図1によるアノード1の断面を示している。アノード1は、コア要素3を有し、これは、ここでは、コア材料アルミニウムから形成される。マグネシウムコーティング4は、アノード1の活物質としてコア要素3の表面上に配置され、マグネシウムコーティング4は、例えば、溶融プロセスによって形成された。保護層5は、マグネシウムコーティング4の表面に配置される。例えば、保護層5は、金属製であり、アルミニウムから形成されるか、又はセラミックスであり、酸化銅から形成される。特に、PVDプロセスは、保護層5を形成するのに好適である。保護層5は、好ましくは、少なくとも0.5nm、および最大5μmの層厚を有する。電解質6は、マグネシウムコーティング4に隣接せず、保護層5にのみ隣接する。これは、アノード1の寿命を増加させ、マグネシウム電池2の性能を向上させる。
【符号の説明】
【0042】
1 アノード
2 マグネシウム電池
3 コア要素
4 マグネシウムコーティング
5 保護層
6 電解質
7 カソード
8 電池セル
図1
図2