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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】バッテリパック
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/588 20210101AFI20241007BHJP
   H01M 50/593 20210101ALI20241007BHJP
   H01M 50/213 20210101ALI20241007BHJP
   H01M 50/509 20210101ALI20241007BHJP
   H01M 50/249 20210101ALI20241007BHJP
【FI】
H01M50/588
H01M50/593
H01M50/213
H01M50/509
H01M50/249
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023018124
(22)【出願日】2023-02-09
(62)【分割の表示】P 2019104144の分割
【原出願日】2019-06-04
(65)【公開番号】P2023053090
(43)【公開日】2023-04-12
【審査請求日】2023-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003683
【氏名又は名称】弁理士法人桐朋
(72)【発明者】
【氏名】小林 啓人
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 慶一
(72)【発明者】
【氏名】下舞 明誉
(72)【発明者】
【氏名】西沼 卓也
【審査官】塩谷 領大
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-159474(JP,A)
【文献】特開2003-045504(JP,A)
【文献】特開2009-266614(JP,A)
【文献】国際公開第2017/150012(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20- 50/298
H01M 50/50- 50/598
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極及び負極を有する単セルを複数個保持したケースと、前記正極及び前記負極が電気的に接続されるコネクタとを備えるバッテリパックにおいて、
前記単セルを複数個保持するとともに、互いに対向するように前記ケース内に収容された第1コアパック及び第2コアパックを備え、
前記第1コアパック内及び前記第2コアパック内で、前記単セルによってセル群が形成され、
前記コネクタの正極端子部と、前記第1コアパック内又は前記第2コアパック内の、前記セル群の前記単セルの正極とを電気的に接続する正極側連絡バスバーと、
前記コネクタの負極端子部と、前記第2コアパック内又は前記第1コアパック内の、前記セル群の前記単セルの負極とを電気的に接続する負極側連絡バスバーと、
前記第1コアパック内又は前記第2コアパック内で、前記セル群の前記単セルと、隣接する前記セル群の前記単セルとを電気的に接続する複数のセル群間連絡バスバーと、
前記第1コアパック内の、電流の流れ方向最下流に位置する前記セル群の前記単セルと、前記第2コアパック内の、電流の流れ方向最上流に位置する前記セル群の前記単セルとを電気的に直列接続するコアパック間連絡バスバーと、
をさらに備え、
複数の前記セル群間連絡バスバーのうち、前記負極が前記負極側連絡バスバーを介して前記負極端子部に電気的に接続された前記単セルの前記正極を、隣接する前記セル群の前記単セルの前記負極に電気的に接続する、前記セル群間連絡バスバーである第1の対向配置バスバーと、複数の前記セル群間連絡バスバーのうち、前記正極が前記正極側連絡バスバーを介して前記正極端子部に電気的に接続された前記単セルの前記負極を、隣接する前記セル群の前記単セルの前記正極に電気的に接続する、前記セル群間連絡バスバーである第2の対向配置バスバーとが前記ケース内で対向し、
前記第1の対向配置バスバーと前記第2の対向配置バスバーとの間に、絶縁体からなる遮蔽壁が介在するバッテリパック。
【請求項2】
請求項1記載のバッテリパックにおいて、前記セル群は、複数個の前記単セルによって形成されるバッテリパック。
【請求項3】
請求項2記載のバッテリパックにおいて、前記セル群は、複数個の前記単セルのうち前記正極又は前記負極が同一方向を指向する姿勢とされたもので形成されるバッテリパック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数個のコアパックがケースに収容されて構成されるバッテリパックに関する。
【背景技術】
【0002】
様々な機器において、バッテリパックが電源として着脱可能に設けられる。この種のバッテリパックは、特許文献1に記載されるように、複数個の単セルを有するコアパックがケースの中空内部に収容されることで構成されている。単セルは、例えば、複数列に整列されるとともに、任意のセル列(任意列)の単セルは各々の正極が同一方向を指向する姿勢とされる。また、該任意列に隣接するセル列(隣接列)の単セルは、各々の正極が、前記任意列の単セルの正極と逆方向を指向する姿勢とされる。
【0003】
このため、任意列の単セルの正極と、隣接列の単セルの負極とが同一方向を指向する。そして、正極と負極がバスバーを介して電気的に接続される。すなわち、任意列の単セルと隣接列の単セルとが電気的に直列接続された状態となる。
【0004】
ケースの、例えば、底面にはコネクタが設けられており、該コネクタは、電動車両等の外部機器に設けられたコネクタに係合される。すなわち、コネクタ同士が電気的に接続される。そして、バッテリパックからの電力が前記2個のコネクタを介して外部機器に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-216366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
放電容量や電圧を大きくするべく、ケース内に複数個のコアパックを収容することが想定される。この構成を具現化するに際し、互いに対向するコアパックの、コネクタから最も離間したセル列同士を、バスバーを介して電気的に直列接続することが考えられる(図3参照)。この場合、コネクタの正極に最も近接するセル列と、この隣接列とに橋架されたバスバーは、全バスバーの中で電位が最高となる。一方、コネクタの負極に最も近接するセル列と、この隣接列とに橋架されたバスバーでは、全バスバーの中で電位が最低となる。そして、ケース内では、電位が最低であるバスバーと、電位が最高であるバスバーとが対向する。
【0007】
ここで、バッテリパック自体はシールがなされているものの、万一、バッテリパック内に雨水等が浸入した場合、電位が最低であるバスバーと、電位が最高であるバスバーとの間で短絡が起こる懸念がある。特に、これら2個のバスバーの電位差が大きいときには、短絡の可能性が大きくなると予想される。
【0008】
本発明は上記した問題を解決するためになされたもので、バッテリパック内に水が浸入した場合等においても、バスバー同士の間の短絡電流を可及的に低減し得るバッテリパックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するために、本発明の一実施形態によれば、第1電極及び第2電極を有する単セルを複数個保持して構成される第1コアパック及び第2コアパックと、前記第1コアパック及び前記第2コアパックを互いに対向するように収容したケースとを備えるバッテリパックにおいて、
前記第1コアパック及び前記第2コアパックは、複数個の前記単セルを保持するとともに絶縁体からなる第1コアパック側ホルダ、第2コアパック側ホルダをそれぞれ有し、
前記第1コアパック側ホルダ内及び前記第2コアパック側ホルダ内で、第1電極が同一方向を指向する姿勢とされた複数個の前記単セルによって第1セル群が形成され、且つ第1電極が前記第1セル群の前記単セルの第1電極と逆方向を指向する姿勢とされた複数個の前記単セルによって第2セル群が形成されるとともに、前記第1セル群と前記第2セル群が交互に配置され、
さらに、前記第1コアパック側ホルダの、前記ケースの内壁に臨む第1端部で前記第1セル群の前記単セルと、前記第2セル群の前記単セルとを電気的に接続する第1セル群間連絡バスバーと、
前記第1コアパック側ホルダの、前記第1端部の裏側であり且つ前記第2コアパック側ホルダに臨む第2端部で前記第1セル群の前記単セルと、前記第2セル群の前記単セルとを電気的に接続する第2セル群間連絡バスバーと、
前記第2コアパック側ホルダの、前記第2端部に対向する第3端部で前記第1セル群の前記単セルと、前記第2セル群の前記単セルとを電気的に接続する第3セル群間連絡バスバーと、
前記第2コアパック側ホルダの、前記第3端部の裏側であり且つ前記ケースの内壁に臨む第4端部で前記第1セル群の前記単セルと、前記第2セル群の前記単セルとを電気的に接続する第4セル群間連絡バスバーと、
前記第1コアパック側ホルダ内の、電流の流れ方向最下流に位置する前記第1セル群又は前記第2セル群の前記単セルと、前記第2コアパック側ホルダ内の、電流の流れ方向最上流に位置する前記第1セル群又は前記第2セル群の前記単セルとを電気的に直列接続するコアパック間連絡バスバーと、
を備え、
前記第1コアパック側ホルダの前記第2端部側に配設された第1遮蔽壁、又は、前記第2コアパック側ホルダの前記第3端部側に配設された第2遮蔽壁の少なくとも一方を有し、
前記第1遮蔽壁が存在し、且つ前記第2セル群間連絡バスバーが、前記第1遮蔽壁よりも前記第2遮蔽壁から離間する位置で前記第1コアパック側ホルダに保持されるか、又は、前記第2遮蔽壁が存在し、且つ前記第3セル群間連絡バスバーが、前記第2遮蔽壁よりも前記第1遮蔽壁から離間する位置で前記第2コアパック側ホルダに保持されているバッテリパックが提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、互いに対向する第2セル群間連絡バスバーと第3セル群間連絡バスバーの間に第1遮蔽壁又は第2遮蔽壁の少なくとも一方が介在する。第1遮蔽壁が第2セル群間連絡バスバーを覆うか、又は、第2遮蔽壁が第3セル群間連絡バスバーを覆っているので、第2セル群間連絡バスバーと第3セル群間連絡バスバーの間に短絡電流が流れることが抑制される。
【0011】
すなわち、仮にバッテリパックのケース内に水が浸入した場合であっても、両バスバーの間で短絡が起こることは困難である。また、第2セル群間連絡バスバーと第3セル群間連絡バスバーの間で短絡が起こったとしても、上記したように第1遮蔽壁が第2セル群間連絡バスバーを覆い、且つ第2遮蔽壁が第3セル群間連絡バスバーを覆っているため、短絡電流を十分に抑制することが可能である。このため、単セル、ひいてはバッテリパックの発熱を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施の形態に係るバッテリパックの概略全体斜視図である。
図2図1のバッテリパックの概略分解斜視図である。
図3図1のバッテリパックの概略側面断面図である。
図4図1のバッテリパックの概略斜視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係るバッテリパックにつき好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1図4は、それぞれ、本実施の形態に係るバッテリパック10の概略全体斜視図、概略分解斜視図、長手方向に沿った概略側面断面図、概略斜視断面図である。このバッテリパック10は、両端が開口した中空四角柱形状のケース12と、該ケース12の中空内部に収容される第1コアパック14、第2コアパック16とを有する。この中のケース12は、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる素材に対して押出成形を施すことで作製される。この場合、ケース12は、強度に優れるとともに軽量であり、且つ熱伝導度が高いために伝熱効率に優れる。しかも、安価であるので、ケース12を低コストで得ることができる。
【0015】
ケース12の底側の開口は、ボトムケース18で閉塞される。該ボトムケース18の底面には、放電時に第1コアパック14、第2コアパック16から電力を取り出す一方、充電時に第1コアパック14、第2コアパック16に電力を供給するためのコネクタ20が設けられる。コネクタ20は、正極端子部と負極端子部(いずれも図示せず)を有する。
【0016】
さらに、ボトムケース18と第1コアパック14、第2コアパック16の間には、これら第1コアパック14、第2コアパック16の温度や電圧を管理するコントロールユニットであるバッテリマネージメントユニット(BMU)24が挿入される。BMU24は、外部機器(電動車両等)や充電装置と通信を行う通信部を兼ねる。
【0017】
一方、ケース12の天井側の開口は、トップケース26で閉塞される。該トップケース26には、ユーザがバッテリパック10を持ち上げたり、搬送したりするときに把持するための取っ手28がアーチ形状に形成される。
【0018】
第1コアパック14は、複数の単セル30を保持する第1コアパック側ホルダ31aを含む。ここで、該第1コアパック側ホルダ31aは、第1セルホルダ32aと、中空の第1バスバーホルダ33aを有する。この中の第1セルホルダ32aには、複数個の収容孔34aが貫通形成される。収容孔34aの直径は、単セル30の直径に対応する。また、収容孔34aの長さは、単セル30の高さに対応する。単セル30は、その長手方向がバッテリパック10の長手方向(上下方向)に対して直交する姿勢とされ、この状態で、収容孔34aに個別に挿入されて保持される。
【0019】
また、第1セルホルダ32aには、第1バスバーホルダ33aに臨む端部が該第1バスバーホルダ33aの枠状端部に嵌合された際、第1バスバーホルダ33aを堰き止めるためのストッパ用段部35aが周回するように設けられる。
【0020】
一方の第2コアパック16も同様に、第2セルホルダ32bと第2セルホルダ32bを有する第2コアパック側ホルダ31bを含む。単セル30は、第2セルホルダ32bに貫通形成された複数個の収容孔34bに、その長手方向がバッテリパック10の長手方向(上下方向)に対して直交する姿勢とされた状態で個別に挿入されて保持される。また、第2セルホルダ32bには、第2バスバーホルダ33bに臨む端部が該第2バスバーホルダ33bの枠状端部に嵌合された際、第2バスバーホルダ33bを堰き止めるためのストッパ用段部35bが周回するように設けられる。
【0021】
第1コアパック側ホルダ31aを構成する第1セルホルダ32aは、ケース12の内壁に臨む端部を有し、且つ第1バスバーホルダ33aは、その裏側となり第2コアパック側ホルダ31bに対向する端部を有する。以下、第1セルホルダ32aの、ケース12の内壁に臨む端部を「第1端部」、第1バスバーホルダ33aの、第2コアパック側ホルダ31bに対向する端部を「第2端部」と指称する。
【0022】
一方、第2コアパック側ホルダ31bを構成する第2バスバーホルダ33bは、第2端部に対向する端部を有し、且つ第2セルホルダ32bは、その裏側であり且つケース12の内壁に臨む端部を有する。以下、第2バスバーホルダ33bの、第1コアパック側ホルダ31aに対向する端部を「第3端部」、第2セルホルダ32bの、ケース12の内壁に臨む端部を「第4端部」と指称する。
【0023】
図2に示すように、第1セルホルダ32aの第1端部、及び第2セルホルダ32bの第4端部には、複数個の係合凹部36がそれぞれ形成される。また、第1バスバーホルダ33aの第2端部、及び第2バスバーホルダ33bの第3端部の各近傍には、複数個の係合孔38が形成されている。後述するように、係合凹部36及び係合孔38は、第1セル群間連絡バスバー56a~第4セル群間連絡バスバー56dのいずれかを保持するためのものである。
【0024】
さらに、第1バスバーホルダ33aには、第2端部を閉塞して端面を形成する第1遮蔽壁40aが設けられる。同様に、第2バスバーホルダ33bには、第3端部を閉塞して端面を形成する第2遮蔽壁40bが設けられる。これら第1遮蔽壁40a及び第2遮蔽壁40bには、貫通孔42がそれぞれ形成されている。貫通孔42は、第2セル群間連絡バスバー56bと単セル30の正極又は負極、第3セル群間連絡バスバー56cと単セル30の正極又は負極を溶接する溶接具を通すためのものである。
【0025】
第1バスバーホルダ33aの上部には、第1遮蔽壁40aよりも第1端部側に偏倚した位置に第1差込スリット44aが形成される。同様に、第2バスバーホルダ33bの上部には、第2遮蔽壁40bよりも第4端部側に偏倚した位置に第2差込スリット44bが形成される。
【0026】
単セル30は円柱形状をなし、軸方向の両端部に正極端子、負極端子がそれぞれ設けられている。正極は、例えば、第1電極であり、この場合、負極は、正極とは逆の極性の第2電極である。このような単セル30の構成は周知であり、従って、正極端子及び負極端子の図示や詳細な説明は省略する。
【0027】
単セル30の好適な例としては、リチウムイオン二次電池が挙げられるが、特にこれに限定されるものではない。その他の好適な例としては、ニッケル水素電池やニッケルカドミウム電池等が挙げられる。
【0028】
第1コアパック側ホルダ31aの収容孔34a内に挿入された単セル30は、その長手方向に直交する横方向に沿って並列される。以下、横方向に並ぶ複数個の単セル30によって形成される一列を「セル群」と表記する。
【0029】
第1コアパック側ホルダ31aにおいて、コネクタ20に最近接する最下のセル群では、単セル30は、負極が第2コアパック16に臨む姿勢とされている。また、該最下の直上のセル群では、単セル30は、正極が第2コアパック16に臨む姿勢とされている。以下、負極が第2コアパック16に臨む姿勢の単セル30からなるセル群を「第1セル群」、正極が第2コアパック16に臨む姿勢の単セル30からなるセル群を「第2セル群」と指称する。
【0030】
最下の第2セル群の直上は第1セル群であり、この第1セル群の直上は第2セル群である。このように、第1セル群と第2セル群は交互に配設される。すなわち、隣接するセル群同士では、逆極性の電極端子が同一方向を臨む。
【0031】
本実施の形態では、第1コアパック14に4個の第1セル群と3個の第2セル群が設けられている。以下、区別を容易にするべく、第1セル群の参照符号を、下方から上方に向かう順に50a、50b、50c、50dとする。また、第2セル群の参照符号を、下方から上方に向かう順に52a、52b、52cとする。なお、以下において、「第1セル群の正極(又は負極)」は「第1セル群を形成する単セル30の正極(又は負極)」を意味し、同様に、「第2セル群の正極(又は負極)」は「第2セル群を形成する単セル30の正極(又は負極)」を意味する。
【0032】
最下の、換言すれば、コネクタ20に最も近接する第1セル群50aの正極は、コネクタ20の正極端子部に対し、正極側連絡バスバー54を介して電気的に接続されている。正極側連絡バスバー54は、第1端部に配置されるとともに、第1セル群50aを形成する単セル30の正極同士を電気的に並列接続する。
【0033】
第1セル群50aの負極と第2セル群52aの正極は、前記第2端部において隣接するセル群同士に跨がる第2セル群間連絡バスバー56bを介して電気的に直列接続される。そして、第2セル群52aの負極と第1セル群50bの正極が、前記第1端部において隣接するセル群同士に跨がる第1セル群間連絡バスバー56aを介して電気的に直列接続される。なお、第2セル群間連絡バスバー56bは、第1セル群50aを形成する単セル30の負極同士、第2セル群52aを形成する単セル30の正極同士を電気的に並列接続する役割も果たす。同様に、第1セル群間連絡バスバー56aは、第2セル群52aを形成する単セル30の負極同士、第1セル群50bを形成する単セル30の正極同士を電気的に並列接続する。
【0034】
以降も同様に、第1セル群間連絡バスバー56aは、第1端部に臨んで上下に隣接するセル群同士(単セル30の電極同士)を電気的に直列接続する。一方、第2セル群間連絡バスバー56bは、第2端部に臨んで上下に隣接するセル群同士(単セル30の電極同士)を電気的に直列接続する。勿論、同一のセル群を形成する単セル30の電極同士は、第1セル群間連絡バスバー56a又は第2セル群間連絡バスバー56bにより、電気的に並列接続される。
【0035】
第2コアパック16も同様に、第1コアパック14の第1セル群50a~50dの正極と同一方向を指向する第1セル群と、負極が第1コアパック14の第2セル群52a~52cの負極と同一方向を指向する第2セル群を含む。すなわち、第2コアパック16内で第1セル群を形成する単セル30の正極と、第2セル群を形成する単セル30の負極は、第1コアパック14に臨む。
【0036】
第2コアパック16において、コネクタ20に最近接する最下のセル群は第1セル群であり、その直上は、最下の第2セル群である。また、この第2セル群の直上は第1セル群である。すなわち、第2コアパック16においても、第1セル群と第2セル群が交互に配設される。本実施の形態では、第2コアパック16に4個の第1セル群と3個の第2セル群が設けられている。以下、区別を容易にするべく、第1セル群の参照符号を、下方から上方に向かう順に50e、50f、50g、50hとする。また、第2セル群の参照符号を、下方から上方に向かう順に52d、52e、52fとする。
【0037】
最下の、換言すれば、コネクタ20に最も近接する第1セル群50eの負極は、コネクタ20の負極端子部に対し、負極側連絡バスバー58を介して電気的に接続されている。負極側連絡バスバー58は、第4端部に配置されるとともに、第1セル群50eを形成する単セル30の負極同士を電気的に並列接続する。
【0038】
第1セル群50eの正極と第2セル群52dの負極は、前記第3端部において隣接するセル群同士に跨がる第3セル群間連絡バスバー56cを介して電気的に直列接続される。そして、第2セル群52dの正極と第1セル群50fの負極が、前記第4端部において隣接するセル群同士に跨がる第4セル群間連絡バスバー56dを介して電気的に直列接続される。第3セル群間連絡バスバー56cは、第1セル群50eを形成する単セル30の正極同士、第2セル群52dを形成する単セル30の負極同士を電気的に並列接続する役割を兼ねる。同様に、第4セル群間連絡バスバー56dは、第2セル群52dを形成する単セル30の正極同士、第1セル群50fを形成する単セル30の負極同士を電気的に並列接続する。
【0039】
以降も同様に、第3セル群間連絡バスバー56cは、第3端部に臨んで上下に隣接するセル群同士(単セル30の電極同士)を電気的に直列接続する。一方、第4セル群間連絡バスバー56dは、第4端部に臨んで上下に隣接するセル群同士(単セル30の電極同士)を電気的に直列接続する。同一のセル群を形成する単セル30の電極同士が、第3セル群間連絡バスバー56c又は第4セル群間連絡バスバー56dによって電気的に並列接続されることは勿論である。
【0040】
第1セル群間連絡バスバー56a~第4セル群間連絡バスバー56dの各側部からは、係合用タブ部60(係合部)が突出する。第1セル群間連絡バスバー56a及び第4セル群間連絡バスバー56dの係合用タブ部60は、第1セルホルダ32a、第2セルホルダ32bの係合凹部36に係合される。この係合により、第1セル群間連絡バスバー56a及び第4セル群間連絡バスバー56dが、第1セルホルダ32a、第2セルホルダ32bにそれぞれ保持される。なお、正極側連絡バスバー54と第1セルホルダ32a、負極側連絡バスバー58と第2セルホルダ32bも同様である。
【0041】
そして、第2セル群間連絡バスバー56b及び第3セル群間連絡バスバー56cの係合用タブ部60は、第1バスバーホルダ33a、第2バスバーホルダ33bの係合孔38に係合される。これにより、第2セル群間連絡バスバー56b及び第3セル群間連絡バスバー56cが、第1バスバーホルダ33a、第2バスバーホルダ33bにそれぞれ保持される。
【0042】
第1バスバーホルダ33aの係合孔38は、第1遮蔽壁40aよりも第1端部側に偏倚している。従って、第2セル群間連絡バスバー56bは、第1遮蔽壁40aよりも第2遮蔽壁40bから離間して第1バスバーホルダ33aの内方に位置決め固定される。また、第2バスバーホルダ33bの係合孔38が第2遮蔽壁40bよりも第4端部側に偏倚していることから、第3セル群間連絡バスバー56cは、第2遮蔽壁40bよりも第1遮蔽壁40aから離間するようにして第2バスバーホルダ33bの内方に位置決め固定される。
【0043】
なお、係合用タブ部60を係合孔38に係合する際には、第2セル群間連絡バスバー56bないし第3セル群間連絡バスバー56cを弾性変形域内で湾曲して拘束すればよい。この状態で係合用タブ部60を係合孔38に挿入した後、第2セル群間連絡バスバー56bないし第3セル群間連絡バスバー56cを拘束から解放する。この解放に伴い、第2セル群間連絡バスバー56bないし第3セル群間連絡バスバー56cが弾性作用によって元の板形状に戻る。
【0044】
さらに、第2コアパック16の最上に位置する第1セル群50hの正極は、第1コアパック14の最上に位置する第1セル群50dの負極に対し、コアパック間連絡バスバー66を介して電気的に直列接続される。すなわち、コアパック間連絡バスバー66は、第2コアパック16内の、コネクタ20から最も離間した第1セル群50hの正極と、第1コアパック14内の、コネクタ20から最も離間した第1セル群50dの負極とを電気的に接続する。
【0045】
コアパック間連絡バスバー66は、第1セル群50dを形成する単セル30の正極同士を電気的に並列接続する第1接続部68と、第1セル群50hを形成する単セル30の負極同士を電気的に並列接続する第2接続部70と、両接続部68、70に跨がって略360°湾曲したブリッジ部72とを有する。第1接続部68は第1差込スリット44aに通され、第1遮蔽壁40aよりも第2遮蔽壁40bから離間する。一方、第2接続部70は第2差込スリット44bに通され、第2遮蔽壁40bよりも第1遮蔽壁40aから離間する。従って、ブリッジ部72のみが第1バスバーホルダ33a、第2バスバーホルダ33bから露呈する。
【0046】
このような構成において、全てのセル群間連絡バスバーの電位を比較すると、後述する理由から、コネクタ20の負極端子部に最も近接する第1セル群50eと、その直上の第2セル群52dとを接続する第3セル群間連絡バスバー56cの電位が最低となる。その一方で、コネクタ20の正極端子部に最も近接する第1セル群50aと、その直上の第2セル群52aとを接続する第2セル群間連絡バスバー56bが、全てのセル群間連絡バスバーの中で電位が最高となる。以下、他のセル群間連絡バスバーとの区別を容易にするべく、電位が最低となる第3セル群間連絡バスバー56cを「最低電位バスバー56c’」、電位が最高となる第2セル群間連絡バスバー56bを「最高電位バスバー56b’」と表記する。図3から諒解されるように、最低電位バスバー56c’と最高電位バスバー56b’は、第1遮蔽壁40a及び第2遮蔽壁40bを隔てて互いに対向する位置関係にある。
【0047】
ケース12の内壁と、該ケース12に臨む第1セル群間連絡バスバー56a、第4セル群間連絡バスバー56dとの間には、放熱部材としての放熱シート80が介挿される。放熱シート80は、弾性に富み且つ第1セルホルダ32a又は第2セルホルダ32bと、ケース12の内壁との間で圧縮された状態を維持し得るものが好適に選定される。この場合、放熱シート80が、第1コアパック14又は第2コアパック16と、ケース12の内壁とに対して広面積で密着するからである。
【0048】
本実施の形態に係るバッテリパック10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次にその作用効果について説明する。
【0049】
バッテリパック10を電動車両等の外部機器に装着する場合、ユーザは、取っ手28を把持してバッテリパック10を当該外部機器まで搬送し、コネクタ20と外部機器のコネクタとが電気的に接続されるようにしてバッテリパック10を外部機器のバッテリ装着部に収容する。コネクタ20がボトムケース18の底面に設けられている(図1参照)ので、バッテリパック10は、通常、長手方向が重力方向に沿って延在する姿勢、又は、長手方向が重力方向に対して若干傾斜した姿勢となる。そして、外部機器のスタータスイッチをONにすることにより、ケース12内の各単セル30から外部機器に電力が供給される。すなわち、各単セル30からの放電がなされる。
【0050】
ここで、上下に隣接するセル群同士は第1セル群間連絡バスバー56a~第4セル群間連絡バスバー56dを介して電気的に直列接続されており、また、コネクタ20の負極端子部には負極側連絡バスバー58を介して第1セル群50eの負極が接続されるとともに、正極端子部には、正極側連絡バスバー54を介して第1セル群50aの正極が接続されている。さらに、第2コアパック16内の第1セル群50hの正極と、第1コアパック14内の第1セル群50dの負極とが、コアパック間連絡バスバー66を介して接続されている。従って、電子は、負極端子部→第1セル群50e→第2セル群52d→第1セル群50f→第2セル群52e→第1セル群50g→第2セル群52f→第1セル群50h→第1セル群50d→第2セル群52c→第1セル群50c→第2セル群52b→第1セル群50b→第2セル群52a→第1セル群50a→正極端子部の順に移動する。従って、全てのセル群間連絡バスバーの中では、コネクタ20の負極端子部に最も近接する第1セル群50eと、その直上の第2セル群52dとを接続する第3セル群間連絡バスバー56cの電位が最低となる。すなわち、第1セル群50eと第2セル群52dを接続する第3セル群間連絡バスバー56cは、最低電位バスバー56c’である。
【0051】
その一方で、コネクタ20の正極端子部に最も近接する第1セル群50aと、その直上の第2セル群52aとを接続する第2セル群間連絡バスバー56bが、全てのセル群間連絡バスバーの中で電位が最高となる。すなわち、第1セル群50aと第2セル群52aを接続する第2セル群間連絡バスバー56bは、最高電位バスバー56b’である。なお、互いに対向する第2セル群間連絡バスバー56b、第3セル群間連絡バスバー56c同士の電位差は、コネクタ20から離間するに従って小さくなる。
【0052】
最低電位バスバー56c’と最高電位バスバー56b’が第1遮蔽壁40a及び第2遮蔽壁40bで隔てられていないバッテリパックでは、万一、バッテリ装着部からバッテリパック10のケース12内に水が浸入した場合、最低電位バスバー56c’と最高電位バスバー56b’の間で短絡が起こる懸念がある。最低電位バスバー56c’と最高電位バスバー56b’の電位差が、互いに対向するその他の第2セル群間連絡バスバー56b、第3セル群間連絡バスバー56c同士の電位差よりも大きく、しかも、これら最低電位バスバー56c’及び最高電位バスバー56b’が、セル群間連絡バスバーの中でボトムケース18に最近接しているからである。
【0053】
これに対し、本実施の形態に係るバッテリパック10では、最低電位バスバー56c’と最高電位バスバー56b’が第1遮蔽壁40a及び第2遮蔽壁40bで隔てられている。第1遮蔽壁40a、第2遮蔽壁40bは、樹脂等の絶縁体からなる第1バスバーホルダ33a、第2バスバーホルダ33bの本体部と一体的に設けられており、絶縁性を示す。このため、最低電位バスバー56c’と最高電位バスバー56b’の間で短絡電流が流れることが回避される。すなわち、最低電位バスバー56c’と最高電位バスバー56b’の間に第1遮蔽壁40a及び第2遮蔽壁40bを介挿したことにより、両バスバー56b’、56c’の間で短絡が起こる懸念を払拭することができる。
【0054】
なお、第1遮蔽壁40a及び第2遮蔽壁40bには、上記したように貫通孔42が形成されている。この貫通孔42内に水が浸入すると、最低電位バスバー56c’と最高電位バスバー56b’の間で短絡電流が流れる可能性がある。しかしながら、貫通孔42内での最低電位バスバー56c’、最高電位バスバー56b’の露出面積は極僅かであり、このため、短絡電流が十分に抑制される。
【0055】
最低電位バスバー56c’、最高電位バスバー56b’よりも上方の第2セル群間連絡バスバー56b、第3セル群間連絡バスバー56c同士の電位差は、さほど大きくはない。しかも、上記と同様に、貫通孔42内での第2セル群間連絡バスバー56b、第3セル群間連絡バスバー56cの露出面積は極僅かである。従って、最低電位バスバー56c’、最高電位バスバー56b’以外の第2セル群間連絡バスバー56b、第3セル群間連絡バスバー56cの間でも、短絡電流が十分に抑制される。
【0056】
以上のように、本実施の形態によれば、短絡が起こる懸念を十分に払拭することができる。しかも、短絡が起こったとしても、その電流値は小さい。すなわち、各単セル30に流れる短絡電流が十分に抑制される。このため、単セル30の発熱量が小さい。従って、該単セル30、ひいてはバッテリパック10の温度が過度に上昇することを回避することができる。
【0057】
しかも、第1遮蔽壁40a及び第2遮蔽壁40bに溶接具を通すための貫通孔42を形成しているので、第2セル群間連絡バスバー56bと単セル30の第1電極又は第2電極との接合や、第3セル群間連絡バスバー56cと単セル30の第1電極又は第2電極との接合が困難となることが回避される。
【0058】
本発明は、上記した実施の形態に特に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0059】
例えば、各単セル30の負極を第1電極とし、且つ正極を第2電極とするようにしてもよい。
【0060】
また、第1遮蔽壁40a及び第2遮蔽壁40bの双方を同時に設ける必要は特になく、第1遮蔽壁40a又は第2遮蔽壁40bのいずれか一方のみを設けるようにしてもよい。ただし、短絡電流を抑制する効果を目的とする場合では、第1遮蔽壁40a及び第2遮蔽壁40bの双方をともに設けることがより好ましい。
【符号の説明】
【0061】
10…バッテリパック 12…ケース
14、16…第1、第2コアパック 20…コネクタ
24…BMU 30…単セル
32a、32b…第1、第2セルホルダ 36…係合凹部
38…係合孔 40a、40b…第1、第2遮蔽壁
42…貫通孔 50a~50h…第1セル群
52a~52f…第2セル群 54…正極側連絡バスバー
56a~56d…第1~第4セル群間連絡バスバー
56b’…最高電位バスバー 56c’…最低電位バスバー
58…負極側連絡バスバー 60…係合用タブ部
66…コアパック間連絡バスバー
図1
図2
図3
図4