(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】組電池およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/204 20210101AFI20241007BHJP
H01M 50/211 20210101ALI20241007BHJP
H01M 50/105 20210101ALI20241007BHJP
H01M 50/289 20210101ALI20241007BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20241007BHJP
H01M 10/6555 20140101ALI20241007BHJP
H01M 10/647 20140101ALI20241007BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20241007BHJP
【FI】
H01M50/204 401H
H01M50/211
H01M50/105
H01M50/289
H01M10/613
H01M10/6555
H01M10/647
H01M10/625
(21)【出願番号】P 2023040504
(22)【出願日】2023-03-15
(62)【分割の表示】P 2018197981の分割
【原出願日】2018-10-19
【審査請求日】2023-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】507357232
【氏名又は名称】株式会社AESCジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】海野 誠
【審査官】瀧口 博史
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-214606(JP,A)
【文献】特開2012-164476(JP,A)
【文献】特開2002-033084(JP,A)
【文献】特開2000-090975(JP,A)
【文献】特開2015-118938(JP,A)
【文献】特開2015-165460(JP,A)
【文献】特開2011-175849(JP,A)
【文献】特開2006-196230(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/204
H01M 50/211
H01M 50/105
H01M 50/548
H01M 10/04
H01M 10/0585
H01M 10/6555
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム外装電池が複数積層された組電池であって、
前記フィルム外装電池は、フィルム外装材を有する外装ケースに発電要素が収容されてなり、
前記外装ケースは、端子を導出する第1の封止部と、端子を導出しない第2の封止部と、を有し、
前記第2の封止部は、少なくとも一部が前記発電要素の外形の面のうち最大面積を有する少なくとも1つの面側に形成され、
前記組電池は、
前記第2の封止部の一部であって前記発電要素に重なる部分を、第3の封止部とすると、
少なくとも一部の層間において、前記発電要素の外形の面のうち最大面積を有する少なくとも1つの面側であって、前記第3の封止部が形成されている面側に、放熱板が配置されており、
前記第3の封止部および前記放熱板による、前記最大面積を有する少なくとも1つの面
を含む平面への投射面積は、前記最大面積を有する少なくとも1つの面
の面積の40%以上100%以下である、
組電池。
【請求項2】
前記第3の封止部の封止面積は、前記最大面積を有する少なくとも1つの面
の面積の40%以上である、
請求項1に記載の組電池。
【請求項3】
隣り合う前記フィルム外装電池は、前記第3の封止部を有する面同士が対向する状態、および、前記第3の封止部を有さない面同士が対向する状態のいずれか一方の状態で、積層されている、
請求項1又は2に記載の組電池。
【請求項4】
前記第3の封止部を有する面が同じ方向を向くように、前記フィルム外装電池が複数積層されている、
請求項1又は2に記載の組電池。
【請求項5】
前記最大面積を有する少なくとも1つの面
の面積の80%以上が、前記第3の封止部および前記放熱板で押圧された状態で、固定されている、
請求項1から4のいずれか1項に記載の組電池。
【請求項6】
前記放熱板は、隣り合う前記フィルム外装電池の間において、一方の前記フィルム外装電池における前記第3の封止部と重ならないように配置されている、
請求項1から5のいずれか1項に記載の組電池。
【請求項7】
前記放熱板は、隣り合う前記フィルム外装電池の間において、前記放熱板の一部が一方の前記フィルム外装電池における前記第3の封止部の全体と重なり、且つ、前記放熱板の他部が前記一方の前記フィルム外装電池における前記第3の封止部と重ならないように、配置されている、
請求項1から5のいずれか1項に記載の組電池。
【請求項8】
重なった部分における前記放熱板と前記第3の封止部とによる合計の厚みは、重ならない部分の前記放熱板の厚みと実質的に同一である、
請求項7に記載の組電池。
【請求項9】
前記放熱板は、隣り合う前記フィルム外装電池の間において、双方の前記フィルム外装電池における前記第3の封止部と重ならないように配置されている、
請求項1から5のいずれか1項に記載の組電池。
【請求項10】
前記放熱板は絶縁性をもつ、
請求項1から
9のいずれか1項に記載の組電池。
【請求項11】
フィルム外装電池を複数積層して組電池を製造する、組電池の製造方法であって、
前記フィルム外装電池は、フィルム外装材を有する外装ケースに発電要素が収容されてなり、
前記外装ケースは、端子を導出する第1の封止部と、端子を導出しない第2の封止部と、を有し、
前記第2の封止部は、少なくとも一部が前記発電要素の外形の面のうち最大面積を有する少なくとも1つの面側に形成されており、
前記製造方法は、
前記第2の封止部の一部であって前記発電要素に重なる部分を、第3の封止部とすると、
少なくとも一部の層間において、前記発電要素の外形の面のうち最大面積を有する少なくとも1つの面側であって、前記第3の封止部が形成されている面側に、放熱板が配置されており、
前記第3の封止部および前記放熱板による、前記最大面積を有する少なくとも1つの面
を含む平面への投射面積は、前記最大面積を有する少なくとも1つの面
の面積の40%以上100%以下である、
組電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、組電池およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウムイオン電池に代表される二次電池は、電動自転車、電動バイク、自動車などにも搭載されており、高エネルギー密度化、長寿命、高安全性といった二次電池の高性能化の要求が高まっている。この要求に対し、外装容器として形状の自由度が高く、軽量な可撓性を有するフィルム外装材を用いたフィルム外装電池が知られている。さらに、大きな電力が必要とされる場合、複数のフィルム外装電池を接続した組電池が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、フィルム外装電池の外装容器構造に関する技術が開示されている。
図19は特許文献1に開示されたフィルム外装電池を示す図であり、
図20は
図19のXX-XX断面図である。
図19および
図20で示すフィルム外装電池は、発電要素7がラミネートフィルム5Aを有するラミネート外装体5で覆われており、集電端子6がラミネート外装体5の外部に引き出されている。発電要素7は、正極1、負極2、およびそれらに挟まれた電解質層3でなり、正極1および負極2はそれぞれ集電端子6に接続されている。また、このフィルム外装電池は、封口部4A、4Bでなる封口部4が発電要素7上で接着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
二次電池は使用において外装容器の中に収容される発電要素を保護することが必要である。すなわち、発電要素を構成する正極、負極、セパレータといった部材が落下や振動などの衝撃により当初の形状からのずれや変形が生じることで二次電池本来の性能が毀損される可能性が高まるため、外装容器によって保護することが重要となる。
【0006】
また、フィルム外装電池の長寿命化、高安全性を達成する上で、フィルム外装電池を所定の圧力で均一に押圧し固定することが必要となる。フィルム外装電池を含む二次電池は長期間充放電を行ない使用していくうちに、多少であれ二次電池を構成する部材同士が反応を起こしてガスが発生する。この二次電池内部で発生したガスが二次電池を膨張させ、寿命、電池特性、安全性に影響を与えるためである。
【0007】
ところが、特許文献1に記載の技術では、発電要素に重なるように封止部を設ける構造のフィルム外装電池を複数重ね合わせた組電池を機器に搭載する場合、フィルム外装電池の外装ケースの封止部と封止部以外の部分で段差による隙間が生じてしまう。この生じた隙間によって発電要素の最大面積を有する面を均一に押圧することができなくなり、長寿命化、高安全性といった特性の低下が懸念される。
【0008】
一方で、特許文献1に記載の技術を適用してフィルム外装電池を複数重ね合わせて組電池を製造する場合に、上記隙間を埋めようとすると熱がこもり放熱性が悪くなるという問題も生じ得る。
【0009】
本開示の目的は、上述した課題を解決するフィルム外装電池を備えた組電池およびその製造方法を提供することにある。上記課題は、フィルム外装電池同士を重ね合わせて組電池を構成するに際し、フィルム外装電池を最適な状態で固定しつつ、放熱性を良好にしながら体積効率を向上させて高エネルギー密度化を達成することができない、というものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本開示の第1の態様に係る組電池は、フィルム外装電池が複数積層された組電池であって、前記フィルム外装電池は、フィルム外装材を有する外装ケースに発電要素が収容されてなり、前記外装ケースは、端子を導出する第1の封止部と、端子を導出しない第2の封止部と、を有し、前記第2の封止部は、前記発電要素の外形の面のうち最大面積を有する少なくとも1つの面側に形成され、前記組電池は、前記第2の封止部の一部であって前記発電要素に重なる部分を、第3の封止部とすると、前記発電要素の外形の面のうち最大面積を有する少なくとも1つの面側であって、前記第3の封止部が形成されている面側に、放熱板が配置されており、前記第3の封止部および前記放熱板による、前記最大面積を有する少なくとも1つの面への投射面積は、前記最大面積を有する少なくとも1つの面の面積の40%以上である。
【0011】
本開示の第2の態様に係る組電池の製造方法は、フィルム外装電池を複数積層して組電池を製造する、組電池の製造方法であって、前記フィルム外装電池は、フィルム外装材を有する外装ケースに発電要素が収容されてなり、前記外装ケースは、端子を導出する第1の封止部と、端子を導出しない第2の封止部と、を有し、前記第2の封止部は、前記発電要素の外形の面のうち最大面積を有する少なくとも1つの面側に形成されており、前記製造方法は、前記第2の封止部の一部であって前記発電要素に重なる部分を、第3の封止部とすると、前記発電要素の外形の面のうち最大面積を有する少なくとも1つの面側であって、前記第3の封止部が形成されている面側に、放熱板を配置し、前記第3の封止部および前記放熱板による、前記最大面積を有する少なくとも1つの面への投射面積は、前記最大面積を有する少なくとも1つの面の面積の40%以上である。
【発明の効果】
【0012】
本開示により、フィルム外装電池同士を重ね合わせて組電池を構成するに際し、フィルム外装電池を最適な状態で固定しつつ、放熱性を良好にしながら体積効率を向上させて高エネルギー密度化を達成することが可能な組電池およびその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態1に係る組電池に備えられるフィルム外装電池の一構成例を示す平面図である。
【
図2】
図1で示すフィルム外装電池の一例を示すII-II断面図である。
【
図3】
図1で示すフィルム外装電池の他の例を示すII-II断面図である。
【
図4】実施形態1に係る組電池の一構成例を示す断面図である。
【
図5】実施形態2に係る組電池の一構成例を示す断面図である。
【
図6】実施形態3に係る組電池に備えられるフィルム外装電池の一構成例を示す平面図である。
【
図7】
図6で示すフィルム外装電池の一例を示すVII-VII断面図である。
【
図8】実施形態3に係る組電池の一構成例を示す断面図である。
【
図9】実施形態4に係る組電池の一構成例を示す断面図である。
【
図10】実施形態5に係る組電池の一構成例を示す断面図である。
【
図11】実施形態6に係る組電池の一構成例を示す断面図である。
【
図12】実施形態7に係る組電池の一構成例を示す断面図である。
【
図13】実施形態8に係る組電池の一構成例を示す断面図である。
【
図14】実施形態9に係る組電池に備えられるフィルム外装電池の一構成例を示す平面図である。
【
図15】
図14で示すフィルム外装電池の一例を示すXV-XV断面図である。
【
図16】実施形態9に係る組電池の一構成例を示す断面図である。
【
図17】実施形態10に係る組電池の一構成例を示す断面図である。
【
図18】実施形態11に係る組電池の一構成例を示す断面図である。
【
図19】特許文献1に記載のフィルム外装電池の構造を示す平面図である。
【
図20】
図19で示すフィルム外装電池のXX-XX断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、実施形態について説明する。なお、実施形態において、同一又は同等の要素には、同一の符号を付し、重複する説明は省略される。
【0015】
(実施形態1)
実施形態1に係る組電池に関し、まずその組電池に備えられるフィルム外装電池について、
図1~
図3を参照しながら説明する。
図1は実施形態1に係る組電池に備えられるフィルム外装電池の一構成例を示す平面図で、
図2は
図1のII-II断面図である。
【0016】
図1および
図2に示すように、本実施形態に係る組電池に備えられるフィルム外装電池101aは、発電要素104をフィルム外装材108で覆い、第1の端子102および第2の端子103を外部に導出し、封止した構造となっている。このように、フィルム外装電池101aは、フィルム外装材108を有する外装ケース(外装容器)に発電要素104が収容されている。なお、
図1等では、フィルム外装材108からなる外装ケースを用いているが、外装ケースはフィルム外装材を有していればよい。
【0017】
上記の封止は、第1の封止部105および第2の封止部106を少なくとも含む封止部でなされている。つまり、外装ケースは、少なくとも第1の封止部105および第2の封止部106を有する。ここで、第1の封止部105は、端子(この例では第1の端子102および第2の端子103)を導出する封止部である。また、第2の封止部106は、端子を導出しない封止部である。第1の端子102は発電要素104に含まれる正極、負極のいずれか一方に接続されており、第2の端子103は他方に接続されている。
【0018】
また、
図1および
図2に示すように、発電要素104は直方体である。第2の封止部106は、発電要素104の外形の面のうち発電要素104の最大面積を有する1つの面側で、フィルム外装材108の表面に裏面を接着することで形成されている。なお、本実施形態を含め、後述の実施形態においても、基本的に発電要素104が直方体であることを前提として説明するが、例えば略直方体であってもよく、上記最大面積を有する1つの面が規定できればよい。
【0019】
以下の説明のために、第2の封止部106の一部であり、発電要素104に重なる部分を、第3の封止部107と称して説明する。補足すると、第3の封止部107は、第2の封止部106の一部であって、発電要素104と重なる部分(位置的に重なる部分)を指す。
【0020】
次に、フィルム外装電池101aの他の例について、
図3を参照しながら説明する。
図3は、
図1に示すフィルム外装電池101aの他の例を示す断面図であって、
図1のII-II断面図である。
図3に示すフィルム外装電池101aは、第2の封止部106が発電要素104の最大面積を有する1つの面でフィルム外装材108の同一面同士が接着されており、この点が
図2の構成例との差異となる。
図3の構成例におけるその他の点は、その効果も含めて
図2の構成例と同様である。
【0021】
図3における第3の封止部107は、上述のようにフィルム外装材108の同一面同士が接着されているため、
図2における第3の封止部107と異なり、非接着部分と接着部分との間に隙間を有するように描いている。但し、実際には折り目を除いて隙間なく折られていてもよいし、折り目も含めてほぼ隙間なく折られていてもよい。なお、後述する
図4等の各図についても同様である。
【0022】
次に、本実施形態に係る組電池について、
図4を併せて参照しながら説明する。
図4は、実施形態1に係る組電池の一構成例(組電池の構造の一例)を示す断面図で、
図3のフィルム外装電池101aを複数積層した組電池の一構成例を示す断面図である。
【0023】
図4に示すように、本実施形態に係る組電池100aは、
図1および
図3で示すフィルム外装電池101aが複数積層された電池、つまり、上述のようなフィルム外装電池101aを複数、層状に配置した電池である。
【0024】
以下、積層するフィルム外装電池101aの発電要素104、フィルム外装材108、第3の封止部107について、1つのフィルム外装電池に含まれるものを、それぞれ発電要素104a、フィルム外装材108a、第3の封止部107aとして説明する。同様に、上記1つのフィルム外装電池と隣り合うフィルム外装電池に含まれるものを、それぞれ発電要素104b、フィルム外装材108b、第3の封止部107bとして説明する。
【0025】
特に、組電池100aでは、第3の封止部107a,107b同士が積層方向の位置で重ならず、且つ第3の封止部107a,107bを有する面同士が対向する状態(対向状態と称す)で、複数のフィルム外装電池101aを積層している。つまり、組電池100aでは、隣り合うフィルム外装電池101aを、第3の封止部107a,107bが対向し且つ両者の積層方向への投射位置が重ならないように、配置している。また、組電池100aは、隣り合うフィルム外装電池101aを、第3の封止部107を有さない面同士が対向する状態(非対向状態と称す)で積層している。このように、組電池100aは、対向状態および非対向状態のいずれか一方の状態で、隣り合うフィルム外装電池101aを積層している。
【0026】
図4の断面図には第1の端子102および第2の端子103は図示されないが、組電池100aは、第3の封止部107a,107bが向かい合うように上下反転させたフィルム外装電池101aを交互に積層して、それらを直列に接続している。なお、ここでの上下反転は、第1の端子102と第2の端子103とを結ぶ直線回りでの回転を想定して説明している。そのため、積層するフィルム外装電池101aにおいて交互に第1の端子102および第2の端子103の極性を入れ替えておくとよい。すなわち、第1の端子102が正極端子であり第2の端子103が負極端子であるフィルム外装電池101aと、第1の端子102が負極端子であり第2の端子103が正極端子であるフィルム外装電池101aと、を製作する。そして、それらを第3の封止部107a,107bが向かい合うように交互に積層すればよい。但し、並列に接続することもでき、その場合には上述のような極性の入れ替えを行わず、第3の封止部107a,107bが向かい合うようにフィルム外装電池101aを交互に積層すればよい。
【0027】
そして、本実施形態に係る組電池100aは、
図4に示すように、隣り合うフィルム外装電池101a同士の間に放熱板109a,109bを配設している。なお、本実施形態および他の実施形態に係る組電池では、隣り合うフィルム外装電池の間に放熱板を挟み込むように配置するため、構造によっては隣り合うフィルム外装電池同士が接触する場合と接触しない場合とがある。
図4では、非接着部分と接着部分との間において両者が接触する例を挙げている。
【0028】
放熱板109a,109bの配置について、より具体的に説明する。なお、放熱板109a,109bに共通の特徴について説明する際には、それらを総称して放熱板109とする。
【0029】
放熱板109aは、発電要素104aの外形の面のうち最大面積を有する1つの面側であって、第3の封止部107aが形成されている面側に配置されている(重ねられるように配置されている)。同様に、放熱板109bは、発電要素104bの外形の面のうち最大面積を有する1つの面側であって、第3の封止部107bが形成されている面側に配置されている。
【0030】
図4において2枚の放熱板109a,109bで例示したように、隣り合うフィルム外装電池101aの間に設ける放熱板109は2枚以上設けておくことができる。なお、放熱板109a,109bは共に、発電要素104aの外形の面のうち最大面積を有する1つの面側であって、第3の封止部107aが形成されている面側に配置されている、と言うこともできる。同様に、放熱板109a,109bは共に、発電要素104bの外形の面のうち最大面積を有する1つの面側であって、第3の封止部107bが形成されている面側に配置されている、と言うこともできる。
【0031】
また、放熱板の一部と言える放熱板109aは、隣り合うフィルム外装電池の間において、一方のフィルム外装電池における第3の封止部107aと重ならないように配置されている。同様に、放熱板の他部と言える放熱板109bは、隣り合うフィルム外装電池の間において、他方のフィルム外装電池における第3の封止部107bと重ならないように配置されている。
【0032】
また、
図4で図示したように、放熱板109aの厚みと第3の封止部107aの厚みが実質的に同じであり、放熱板109bの厚みと第3の封止部107bの厚みが実質的に同じであることが好ましい。1つのフィルム外装電池101a単位で見た場合に、放熱板109aとセットで均一の厚みを保てるようになり、隣のフィルム外装電池101aと重ねて押圧した際に圧力がほぼ均等に伝わるようになるためである。なお、放熱板109aと第3の封止部107aとの弾性等の違いも考慮して、それらの厚みが押圧時に同じになるように決めておくこともできる。
【0033】
但し、
図4の例のように隣り合うフィルム外装電池101aにおける第3の封止部107a,107bが向かい合っている配置であれば、これらの厚みが実質的に同一でなくてもよい。具体的には、これらの厚みが実質的に同一でない場合でも、第3の封止部107aと放熱板109bとの合計の厚みが第3の封止部107bと放熱板109aとの合計の厚みと実質的に同一であれば同様の効果が得られる。
【0034】
また、
図4に示す組電池100aでは、第3の封止部107a,107bが存在しない側についても、放熱板109cを配設している。放熱板109cは、発電要素104(ここでは発電要素104b)の外形の面のうち最大面積を有する1つの面側において、その最大面積以上の面積を有することが好ましい。これにより、組電池100aとして構成された場合(押圧された場合)においても発電要素104を均一に押圧することができる。但し、放熱板109cは設けなくてもよい。
【0035】
そして、本実施形態に係る組電池100aは、第3の封止部107および放熱板(放熱板109a、又は、双方の放熱板109a,109b)による、上記最大面積を有する1つの面への投射面積が、上記最大面積を有する1つの面の面積の40%以上である。
図4の例においてもこの条件を満たすことになる。
【0036】
ここで、投射面積とは、対象部分を上記1つの面へ投射(投影)したときの面積を指す。よって、組電池100aにおいて第3の封止部107と放熱板109とが重なっている場合、上記投射面積は、その重なっている部分の面積と重なっていない部分の面積との合計となる。
図4の例の場合、1番目の定義として、発電要素104aについての上記投射面積は、放熱板109aの面積と第3の封止部107aの面積を合計した値と定義することができる。若しくは、
図4の例の場合、2番目の定義として、発電要素104aについての上記投射面積は、放熱板109bの面積と第3の封止部107aの面積を合計した値と定義することができる。若しくは、
図4の例の場合、3番目の定義として、発電要素104aについての上記投射面積は、放熱板109bと第3の封止部107aとで形成される投射面積と放熱板109aの面積を合計した値と定義することができる。
【0037】
以下、上述した40%以上の条件や同等の下限値を示す条件、並びに上限値を示す条件について、1,2番目の投射面積のうち小さい方の面積を採用して説明し、場合によって3番目の投射面積を採用して説明する。
【0038】
図4では、その一例として、第3の封止部107aおよび放熱板109a,109bによる上記投射面積が上記1つの面の面積の80%以上である例を挙げているが、上記1つの面からはみ出す部材が放熱板であれば、100%を超えてもよい。
【0039】
このような構成により、本実施形態に係る組電池100aは、発電要素104の最大面積を有する1つの面の80%以上が押圧された状態で固定される。つまり、本実施形態では、隣り合うフィルム外装電池101aの境界において2つの第3の封止部107a,107bおよび2つの放熱板109a,109bで形成される押圧領域の面積は、発電要素104aの最大面積を有する面の80%以上となる。また、この押圧領域の面積は、発電要素104bの最大面積を有する面の80%以上ともなる。押圧領域とは、積層時に押圧できる領域を指す。
【0040】
なお、
図4では、積層したフィルム外装電池101aのうち、両端(
図4における上端から4つおよび下端から2つを図示し、他のフィルム外装電池101aの記載は省略している。また、6以下のフィルム外装電池101aを積層することもできる。これらの点は、後述する他の実施形態における各図でも同様である。また、
図4および後述する他の実施形態における組電池の各図では、断面形状を見易くするために、部材間において空間を描いている。しかし、実際の組電池は、その製造時に、フィルム外装電池および後述の放熱板が層状に配置された状態で、両側から押圧されて固定されることになる。よって、実際の組電池では、各図に対し、積層方向(図面上での縦方向)の隙間が埋められた状態となる。また、本実施形態および他の実施形態に係る組電池では、図示する方向に設置して用いられることに限らず、
図4の上側と下側を同じ水平面状に置くなどして横向きに設置することもできる。
【0041】
また、第3の封止部107aおよび放熱板109による投射面積が発電要素104aの外形の面のうちの最大面積を有する面の80%以上の面積である例を挙げたが、上述したように40%以上の面積であればよい。例えば第3の封止部107aおよび放熱板109bによる投射面積が40%~50%程度であっても、隣り合うフィルム外装電池101a同士を第3の封止部107a,107bが対向し且つ両者の積層方向への投射位置が重ならないように配置しておけばよい。隣の第3の封止部107bの面積で押圧領域を補うように構成することが可能であるためである。この点については後述する実施形態4,5の例として挙げる。また、第3の封止部107aおよび放熱板109bによる投射面積は、望ましくは発電要素104aの外形の面のうちの最大面積の45%以上の面積を有し、より望ましくは47%以上の面積を有する。また、第3の封止部107bおよび放熱板109bによる投射面積は、望ましくは発電要素104bの外形の面のうちの最大面積の45%以上の面積を有し、より望ましくは47%以上の面積を有する。
【0042】
また、第3の封止部107および放熱板109による投射面積についての面積比を規定したが、放熱板109は第3の封止部107に重ねることもできるため、第3の封止部107のみについての面積比を規定することもできる。
【0043】
具体的には、第3の封止部107の封止面積は、望ましくは発電要素104の外形の面のうちの最大面積を有する1つの面の40%以上の面積を有し、より望ましくは45%以上の面積を有し、さらに望ましくは47%以上の面積を有する。つまり、本実施形態では、隣り合うフィルム外装電池101aの境界において2つの第3の封止部107a,107bで形成される封止領域の面積は、発電要素104の最大面積を有する1つの面の80%以上である。また、この面積は、望ましくは90%以上であり、より望ましくは94%以上である。また、第3の封止部107は、上記最大面積の50%以下の面積を有する。つまり、2つの第3の封止部107a,107bで形成される封止領域の面積は、上記最大面積の100%以下となる。
【0044】
この例のような条件により、組電池100aは、隣り合うフィルム外装電池101aを第3の封止部107a,107bが対向し且つ両者の積層方向への投射位置が重ならないように配置することができる。これにより、例えば、押圧時に発電要素104に加えられる押圧力の均一化も図ることができ、また放熱板109を第3の封止部107より薄くすることで積層方向の発電要素104の密度が高まり、組電池100aの体積効率を上げることができる。
【0045】
このように、第3の封止部107で面積比を規定した場合であっても、放熱板109の一部又は全部を第3の封止部107に重ねるように配置することで、放熱板109および第3の封止部107の投射面積で規定した上述の条件を満たす構成とすることができる。一例のみ挙げるが、例えば、第3の封止部107と放熱板109とによる上記投射面積を、上記最大面積を有する1つの面の面積の40%以上とした上で、第3の封止部107の封止面積を上記1つの面の面積の10%以上50%以下とすることもできる。
【0046】
但し、放熱板109の面積や厚みについては、組電池100aを搭載する対象、求められる基準などによって、決めればよい。また、1つのフィルム外装電池101aと放熱板109とのセットで見た場合の、第3の封止部107と放熱板109との面積の比率は問わない。
【0047】
次に、放熱板109の材料について説明する。なお、放熱板109cも同様である。
放熱板109は、放熱性を有する板状の部材である。放熱板109は、少しでも熱伝導性を有する素材で生成されていれば、放熱性をもつと言える。放熱板109は、金属製である方が熱伝導性(放熱性)の点で好ましいと言える。金属としては、例えばアルミニウム、鉄、銅などが挙げられるが、これに限ったものではない。
【0048】
一方で、安全性を最大限に考慮すると、万が一の事態として、隣り合うフィルム外装電池101a間でプラス端子とマイナス端子とがショートする事態も想定しておくことが望ましい。なお、上述のようなショートは、外装ケースとして用いるフィルム外装材108がその内層側にアルミニウムなどの金属を用いている場合で、且つ、内層の金属が剥き出しになる場合に、生じ得る。内層の金属は、組電池全体への衝撃などの何らかの理由で、フィルム外装材108の外層(絶縁性をもつ層)の中央部又は端部が破損するなどにより剥き出しになる可能性がある。
【0049】
このような観点では、放熱板109は、電気伝導性がない(絶縁性をもつ)ようにすることが好ましいと言える。放熱板109は、例えばプラスチック製とするなどにより絶縁性をもたせることができる。但し、放熱板109に絶縁性をもたせるようにするための材料としては、プラスチックに限ったものではない。このように放熱板109に絶縁性をもたせることにより、組電池100aは、その構成要素であるフィルム外装電池101a単体毎に絶縁性を保つことができ、1つのフィルム外装電池101aで不具合が生じたとしてもそれ単体で不具合を完結させることができる。
【0050】
また、放熱性を優先するか、安全性を優先するか、つまり放熱板109を金属製(電気伝導性有り)にするか、絶縁性をもつものとするかは、組電池100aを搭載する対象、求められる基準などによって決めればよい。
【0051】
また、放熱性を向上させるために、放熱板109は、上記最大面積を有する1つの面に平行に設けられた複数の貫通孔を有することが好ましい。特に、組電池を構成した状態においても貫通孔の両端は他の部材で塞がれていないように構成しておくことが、放熱性の観点から好ましいと言える。なお、段ボールに設けられている貫通孔のように、各貫通孔は一直線状であることが好ましいが、これに限ったものではない。また、貫通孔に限らず、放熱板にエンボス加工を施すなどして溝を設けても、放熱性を向上させることができる。
【0052】
このように、本実施形態に係る組電池では、隣り合うフィルム外装電池同士の間に放熱板を設け、フィルム外装電池をその第3の封止部と放熱板とにより最適な状態で固定する構造をもつ。特に、組電池として、フィルム外装電池を何層も重ねた場合、組電池の内部に熱がこもることになってしまうが、隣り合うフィルム外装電池の間に放熱板を挟み込むことによって、組電池の放熱性を高めることができる。
【0053】
よって、本実施形態に係る組電池によれば、フィルム外装電池を最適な状態で固定しつつ、放熱性を良好にしながら体積効率を向上させて高エネルギー密度化を達成することができる。そのため、本実施形態によれば、長寿命で安全性の高い組電池を提供することができる。このような組電池は、例えば、自動車等の移動体に搭載した場合でも移動体の振動に耐えることができる。なお、
図4では、
図1および
図3で示すフィルム外装電池101aを積層した例を図示したが、
図1および
図2で示すフィルム外装電池101aを積層した場合にも同様である。
【0054】
(実施形態2)
図5は、実施形態2に係る組電池の一構成例を示す断面図である。
図5に示すように、本実施形態に係る組電池100bは、実施形態1に係る組電池100aにおいて、第3の封止部107a,107bおよび放熱板109a,109bの幅をいずれも短くしたものである。組電池100bは、この点において、
図4で示した組電池100aと異なる。本実施形態に係る組電池100bにおけるその他の点は、放熱板の位置関係を除き実施形態1に係る組電池と同様でありその説明を一部省略するが、実施形態1で説明した様々な例が適宜利用できる。例えば、本実施形態では、
図2で示した構成例のように、フィルム外装材108の表面に裏面を接着することで第2の封止部107が形成された構成のフィルム外装電池101aを採用することができる。
【0055】
組電池100bも、組電池100aと同様に、第3の封止部107a,107b同士が積層方向の位置について重ならず、且つ第3の封止部107a,107bを有する面同士が対向するように、複数のフィルム外装電池101aを積層している。但し、組電池100bでは、第3の封止部107a,107bが同一面になるように積層されている。
【0056】
そして、放熱板109aは、発電要素104aの外形の面のうち最大面積を有する1つの面側であって、第3の封止部107aが形成されている面側に配置されている。同様に、放熱板109bは、発電要素104bの外形の面のうち最大面積を有する1つの面側であって、第3の封止部107bが形成されている面側に配置されている。また、組電池100bでは、放熱板109a,109bも第3の封止部107a,107bと同一面になるように積層されている。ここで、放熱板109aは第3の封止部107aの先端側において第3の封止部107aと同一面になるように配設され、放熱板109bは第3の封止部107bの先端側において第3の封止部107bと同一面になるように配設される。
【0057】
なお、
図5において、放熱板109a,109bは共に、発電要素104aの外形の面のうち最大面積を有する1つの面側であって、第3の封止部107aが形成されている面側に配置されている、と言うこともできる。同様に、放熱板109a,109bは共に、発電要素104bの外形の面のうち最大面積を有する1つの面側であって、第3の封止部107bが形成されている面側に配置されている、と言うこともできる。
【0058】
また、本実施形態においても、放熱板の一部と言える放熱板109aは、隣り合うフィルム外装電池の間において、一方のフィルム外装電池における第3の封止部107aと重ならないように配置されている。同様に、放熱板の他部と言える放熱板109bは、隣り合うフィルム外装電池の間において、他方のフィルム外装電池における第3の封止部107bと重ならないように配置されている。
【0059】
また、本実施形態では、
図5で図示したように、放熱板109aの厚みと第3の封止部107aの厚みが実質的に同じであり、放熱板109bの厚みと第3の封止部107bの厚みが実質的に同じとなっている。1つのフィルム外装電池101a単位で見た場合に、放熱板109aとセットで均一の厚みを保てるようになり、隣のフィルム外装電池101aと重ねて押圧した際に圧力がほぼ均等に伝わるようになるためである。なお、放熱板109aと第3の封止部107aとの弾性等の違いも考慮して、それらの厚みが押圧時に同じになるように決めておくこともできる。
【0060】
また、
図5に示す組電池100bでも、組電池100aと同様に、第3の封止部107a,107bが存在しない側に放熱板109cを配設しているが、放熱板109cは設けなくてもよい。
【0061】
そして、本実施形態に係る組電池100bは、組電池100aと異なり、第3の封止部107a,107b、放熱板109a,109bとが積層方向の位置で重なっている領域はない。しかし、本実施形態に係る組電池100bは、組電池100aと同様に、第3の封止部107および放熱板(放熱板109a、又は、双方の放熱板109a,109b)による上記投射面積が、上記最大面積を有する1つの面の面積の40%以上である。
【0062】
図5では、その一例として、第3の封止部107aおよび放熱板109a,109bによる上記投射面積が上記1つの面の面積の40%以上75%以下である例を挙げている。
【0063】
なお、この例は、一方のフィルム外装電池と放熱板109aを1セットと見た場合、第3の封止部107aおよび放熱板109aによる上記投射面積が上記1つの面の面積の40%以上50%以下である例に相当する。この例では、他方のセットも同様に、第3の封止部107bおよび放熱板109bによる上記投射面積が上記1つの面の面積の40%以上50%以下である。第3の封止部107aおよび放熱板109aによる投射面積は、望ましくは発電要素104aの外形の面のうちの最大面積の45%以上50%以下の面積を有し、より望ましくは47%以上50%以下の面積を有する。また、第3の封止部107bおよび放熱板109bによる投射面積は、望ましくは発電要素104bの外形の面のうちの最大面積の45%以上50%以下の面積を有し、より望ましくは47%以上50%以下の面積を有する。
【0064】
このような構成により、本実施形態に係る組電池100bは、発電要素104の最大面積を有する1つの面の80%以上(上記一例として100%以上)が押圧された状態で固定される。つまり、本実施形態では、隣り合うフィルム外装電池101aの境界において2つの第3の封止部107a,107bおよび2つの放熱板109a,109bで形成される押圧領域の面積は、発電要素104aの最大面積を有する面の80%以上となる。また、この押圧領域の面積は、発電要素104bの最大面積を有する面の80%以上ともなる。
【0065】
また、本実施形態においても、第3の封止部107の封止面積は、発電要素104の外形の面のうちの最大面積を有する1つの面の40%以上の面積を有するように構成することができる。同様に、本実施形態においても、第3の封止部107の封止面積は上記1つの面のより45%以上の面積を有し、さらに47%以上の面積を有するように構成することができる。本実施形態では、放熱板109を第3の封止部107に重ねないため、第3の封止部107の封止面積が大きくなるほど、放熱板109の面積を小さくする。但し、放熱板109の面積は大きいほど、放熱性は良いため、その点を考慮して設計するとよい。
【0066】
上述のように、組電池100bは、組電池100aと異なり、第3の封止部107a,107b、放熱板109a,109bとが積層方向の位置で重なっている領域はない。また、組電池100bでも、押圧時に発電要素104に加えられる押圧力の均一化も図ることができる。よって、本実施形態に係る組電池によれば、実施形態1に係る組電池と比べ積層方向で見た発電要素の密度が高く、実施形態1による効果に加え、より体積効率を向上させることができる。
【0067】
(実施形態3)
実施形態3に係る組電池に関し、まずその組電池に備えられるフィルム外装電池について、
図6および
図7を参照しながら説明する。
図6は実施形態3に係る組電池に備えられるフィルム外装電池の一構成例を示す平面図で、
図7は
図6のVII-VII断面図である。
【0068】
図6および
図7に示すように、本実施形態に係る組電池に備えられるフィルム外装電池101bは、第2の封止部106におけるフィルム外装材108の同一面での封止起点が発電要素104の端部から始まる。フィルム外装電池101bは、この点において、
図1および
図3で示したフィルム外装電池101aと異なる。本実施形態におけるフィルム外装電池101bにおけるその他の点は、その効果も含めて実施形態1におけるフィルム外装電池101aと同様である。例えば、本実施形態では、
図2で示した構成例のように、フィルム外装材108の表面と裏面とを接着した構成を採用することもできる。
【0069】
次に、本実施形態に係る組電池について、
図8を併せて参照しながら説明する。
図8は、実施形態3に係る組電池の一構成例を示す断面図で、
図6および
図7のフィルム外装電池101bを複数積層した組電池の一構成例を示す断面図である。
【0070】
図8に示すように、本実施形態に係る組電池100cは、実施形態1においてフィルム外装電池101aの代わりにフィルム外装電池101bを積層し、それに合わせて放熱板109を配置したものである。本実施形態に係る組電池100cにおけるその他の点は、実施形態1に係る組電池と同様でありその説明を一部省略するが、実施形態1で説明した様々な例が適宜利用できる。
【0071】
本実施形態に係る組電池100cは、第3の封止部107a,107b同士が積層方向の位置について重ならず、且つ第3の封止部107a,107bを有する面同士が対向するように、複数のフィルム外装電池101bを積層している。この点においては、組電池100cは、実施形態1に係る組電池100aと同様である。
【0072】
本実施形態に係る組電池100cは、実施形態1においてフィルム外装電池101aを積層した方法と同様に、第3の封止部107a,107bが向かい合うように上下反転させたフィルム外装電池101bを交互に積層して、それらを直列に接続している。本実施形態においても、実施形態1と同様に、並列に接続することもできる。
【0073】
そして、本実施形態に係る組電池100cにおいても、
図8に示すように、隣り合うフィルム外装電池101b同士の間に放熱板109a,109bを配設している。組電池100cにおいては、放熱板109aは第3の封止部107aの先端側において第3の封止部107aと同一面になるように配設され、放熱板109bは第3の封止部107bの先端側において第3の封止部107bと同一面になるように配設される。また、組電池100cでも、組電池100aと同様に、第3の封止部107a,107bが存在しない側についても、放熱板109cを配設しているが、放熱板109cは設けなくてもよい。
【0074】
また、本実施形態に係る組電池100cは、実施形態1と同様に、発電要素104の最大面積を有する1つの面の80%以上が押圧された状態で、固定されている。その他、第3の封止部107aおよび放熱板109a,109bによる投射面積と発電要素104aの外形の面のうちの最大面積を有する面の面積との面積比等についても、実施形態1と同様である。また、本実施形態においても、第3の封止部107は、望ましくは発電要素104の外形の面のうちの最大面積の40%以上の面積を有するように構成することができるなど、第3の封止部107に関する面積比についても実施形態1と同様である。
【0075】
以上、本実施形態に係る組電池によれば、実施形態1と同様の効果を奏する。さらに、本実施形態に係る組電池によれば、フィルム外装電池101bにおいてフィルム外装材108の同一面同士が接着された位置が端の方に存在するため、発電要素104の主な部分において押圧時に均等に力を加えることができる。
【0076】
(実施形態4)
図9は、実施形態4に係る組電池の一構成例を示す断面図である。
図9に示すように、本実施形態に係る組電池100dは、実施形態3に係る組電池100cにおいて、第3の封止部107a,107bの幅をいずれも短くし且つ放熱板109a,109bの代わりに1枚の放熱板109abを配設したものである。組電池100dは、この点において、
図8で示した組電池100cと異なる。本実施形態に係る組電池100dにおけるその他の点は、実施形態3に係る組電池と同様でありその説明を一部省略するが、実施形態3で説明した様々な例が適宜利用できる。
【0077】
組電池100dも、組電池100cと同様に、第3の封止部107a,107b同士が積層方向の位置について重ならず、且つ第3の封止部107a,107bを有する面同士が対向するように、複数のフィルム外装電池101aを積層している。但し、組電池100bでは、第3の封止部107a,107bおよび放熱板109abが同一面になるように積層されている。
【0078】
ここで、放熱板109abは、第3の封止部107aの先端と第3の封止部107bの先端との間に配設されている。放熱板109abの面積は、例えば、発電要素104の外形の面のうち最大面積を有する面の面積の50%以上80%以下とすることができる。その場合、第3の封止部107a,107bはいずれも、例えば発電要素104の外形の面のうち最大面積を有する面の面積の10%以上25%以下とすることができる。
【0079】
また、このような第3の封止部107a,107bおよび放熱板109abの配置により、本実施形態に係る組電池100dは、発電要素104の最大面積を有する1つの面の80%以上(
図9では100%にやや及ばない程度)が押圧された状態で固定される。また、このような配置であり、押圧力の均一化を図るために、本実施形態でも、放熱板109abの厚みと第3の封止部107a,107bの厚みが実質的に同じとなっている。なお、組電池100dでも、第3の封止部107a,107bが存在しない側について放熱板109cを配設しているが、放熱板109cは設けなくてもよい。
【0080】
上述のように、組電池100dは、組電池100cと異なり、第3の封止部107a,107bおよび放熱板109abが積層方向の位置で重なっている領域はない。また、上述のように、組電池100dでも、押圧時に発電要素104に加えられる押圧力の均一化も図ることができる。よって、本実施形態に係る組電池によれば、実施形態3に係る組電池と比べ積層方向で見た発電要素の密度が高く、実施形態3による効果に加え、放熱板の枚数を減らすことができるだけでなく、より体積効率を向上させることができる。
【0081】
また、本実施形態によれば、実施形態2による効果に加えて、より単純な構造の放熱板を採用することができる。例えば、フィルム外装電池101b同士の間につき1枚の放熱板109abを設けるだけで、実施形態2による放熱効果と同様の放熱効果が得られ、その製造時の部品数および工数を減らすことができる。
【0082】
(実施形態5)
図10は、実施形態5に係る組電池の一構成例を示す断面図である。
図10に示すように、本実施形態に係る組電池100eは、実施形態4に係る組電池100dにおいて、
図6および
図7で示したフィルム外装電池101bを次のように異ならせたものである。
【0083】
すなわち、本実施形態におけるフィルム外装電池101bは、その平面図は
図6で示されるようなものとなるが、その断面図が
図10に示したようなものとなる。より具体的には、本実施形態におけるフィルム外装電池101bでは、第2の封止部106が発電要素104の側面(最大面積を有しない面の1つ)から始まり、発電要素104に沿って配されている。さらに、本実施形態におけるフィルム外装電池101bは、発電要素104の上記側面および最大面積を有する1つの面でフィルム外装材108の同一面同士が接着されている。
【0084】
その他の点は、本実施形態に係る組電池100eにおいても、効果も含めて実施形態4と同様であり、その説明を省略するが、フィルム外装電池101bを積層した場合に接着の起点が積層の邪魔にならず、より高密度化が図れるという効果も奏する。
【0085】
(実施形態6)
図11は、実施形態6に係る組電池の一構成例を示す断面図である。
図11に示すように、本実施形態に係る組電池100fは、実施形態3に係る
図8の組電池100cにおいて、放熱板109a,109bの代わりにそれらを一体に構成した放熱板109abを積層した点が異なる。
【0086】
また、本実施形態に係る組電池100fでは、隣り合うフィルム外装電池の間において、放熱板109abの一部が一方のフィルム外装電池における第3の封止部107aの全体と重なるように配置されている。さらに、組電池100fは、放熱板109abの他部が第3の封止部107aと重ならないように配置されている。同様に、この組電池100fでは、放熱板109abの一部が他方のフィルム外装電池における第3の封止部107bの全体と重なり、且つ、放熱板109abの他部が第3の封止部107bと重ならないように、配置されている。
【0087】
ここで、放熱板109abは、放熱板109abと第3の封止部107aとによる合計の厚みが、放熱板109abと第3の封止部107bとによる合計の厚みと実質的に同じに構成されている。これにより、押圧時の発電要素104への力を均一化することができる。
【0088】
その他の点は、本実施形態に係る組電池100fにおいても、効果も含めて実施形態3と同様であり、その説明を省略するが、実施形態3に比べて放熱板の品数および設置工数が少ないという効果も奏する。
【0089】
なお、
図11では、
図6および
図7で示すようなフィルム外装電池101bを積層して組電池100fを構成したが、その代わりに
図10内で例示したようなフィルム外装電池を積層することもできる。
【0090】
(実施形態7)
図12は、実施形態7に係る組電池の一構成例を示す断面図である。実施形態1~6では、隣り合うフィルム外装電池を対向状態および非対向状態のいずれか一方の状態で積層した例(配置した例)を挙げたが、本実施形態では、隣り合うフィルム外装電池をすべて非対向状態で積層している。つまり、
図12に示すように、本実施形態に係る組電池100gは、非対向状態で隣り合うフィルム外装電池101bを積層したものとすることができる。
【0091】
具体的には、組電池100gは、
図6および
図7で示すフィルム外装電池101bを、第3の封止部107を積層方向に同方向に向けて配置し、それらを直列に接続している。また、本実施形態においても、並列に接続することもできる。なお、直接に接続する場合は、第1の端子102が正極端子であり第2の端子103が負極端子であるフィルム外装電池101bと、第1の端子102が負極端子であり第2の端子103が正極端子であるフィルム外装電池101bと、を製作する。そして、それらを1つおきに
図12の水平方向(発電要素104の幅方向)に回転させ、第3の封止部107が同じ方向を向くように交互に積層すればよい。
【0092】
また、組電池100gは、隣り合うフィルム外装電池101bの間に放熱板109gが挟み込まれている。放熱板109gは、第3の封止部107に重なる部分と重ならない部分とを有し、双方の部分において第3の封止部107と合わせた厚みを実質的に同じにしている。
【0093】
このように、本実施形態に係る組電池100gでは、重なった部分における放熱板109gと第3の封止部107とによる合計の厚みは、重ならない部分の放熱板109gの厚みと実質的に同一であるようにしている。
【0094】
また、組電池100gでは、第3の封止部107および放熱板109gによる投射面積が発電要素104の外形の面のうち最大面積を有する1つの面の面積の約100%である例を挙げている。これにより、組電池100gでは、上記1つの面の80%以上である約100%が、第3の封止部107および放熱板109gで押圧された状態で、固定されている。なお、本実施形態においても、例えば、第3の封止部107の封止面積を上記1つの面の面積の40%以上50%以下などとして構成することができる。
【0095】
その他の点は、本実施形態に係る組電池100gにおいても、効果も含めて例えば実施形態6と同様であり、その説明を省略するが、例えば実施形態6に比べて積層方向で見た発電要素の密度が低く体積効率が悪くなるものの、積層工程が容易になる。なお、
図12では、
図6および
図7で示すようなフィルム外装電池101bを積層して組電池100fを構成したが、その代わりに
図10内で例示したようなフィルム外装電池を積層することもできる。
【0096】
(実施形態8)
図13は、実施形態8に係る組電池の一構成例を示す断面図である。
図13に示すように、本実施形態に係る組電池100hは、実施形態7に係る組電池100gにおいて、放熱板109gを放熱板109hに変更したものである。放熱板109hは、第3の封止部107の先端側において第3の封止部107と同一面になるように配設される。
【0097】
その他の点は、本実施形態に係る組電池100hにおいても、効果も含めて実施形態7と同様であり、その説明を省略するが、実施形態7に比べ、放熱効果は小さくなるものの積層方向で見た発電要素の密度が高く、より体積効率を向上させることができる。なお、
図13では、
図6および
図7で示すようなフィルム外装電池101bを積層して組電池100gを構成したが、その代わりに
図10内で例示したようなフィルム外装電池を積層することもできる。また、本実施形態では、フィルム外装電池101cをn個毎(nは2以上の整数)に上下反転させ、一部で第3の封止部107同士が向かい合う部分を有するように積層した構造とすることもできる。その場合にも、隣り合うフィルム外装電池101c間につき1つの放熱板109gが配設される。
【0098】
(実施形態9)
実施形態9に係る組電池に関し、まずその組電池に備えられるフィルム外装電池について、
図14および
図15を参照しながら説明する。
図14は、実施形態9に係る組電池に備えられるフィルム外装電池の一構成例を示す平面図で、
図15は、
図14のXV-XV断面図である。
【0099】
図14および
図15に示すように、本実施形態に係る組電池に備えられるフィルム外装電池101cは、フィルム外装材108における発電要素104の最大面積を有する1つの面の大部分に第2の封止部106が形成されている。フィルム外装電池101cは、この点において、
図6および
図7で示したフィルム外装電池101bと異なる。本実施形態におけるフィルム外装電池101cにおけるその他の点は、その効果も含めて実施形態3におけるフィルム外装電池101bと同様である。例えば、本実施形態では、
図2で示した構成例のように、フィルム外装材108の表面と裏面とを接着した構成を採用することもできる。なお、
図14では、第1の封止部105は第2の封止部106により見えておらず、
図1等において点線で示していた発電要素104は第3の封止部107により見えていない。
【0100】
上記大部分について説明する。特に、本実施形態では、第3の封止部107(第2の封止部106の一部であり、発電要素104と重なる部分)による封止面積は、発電要素104の最大面積を有する1つの面の面積の80%以上である。この封止面積は、望ましくは上記1つの面の面積の90%以上であり、より望ましくは94%以上である。
【0101】
また、第3の封止部107は、発電要素104と重なる部分であるため、この封止面積は上記1つの面の面積の100%以下の面積となる。つまり、この封止面積は、上記1つの面の面積の80%以上100%以下であることが望ましく、90%以上100%以下であることがより望ましく、94%以上100%以下であることがさらに望ましい。
【0102】
第3の封止部107の封止面積が上記1つの面の面積の100%以下の面積となる場合、この封止面積は、フィルム外装電池101cの外形の面のうち最大面積を有する1つの面における当該最大面積以下となる。つまり、第3の封止部107は、フィルム外装電池101cの外形の面のうち最大面積を有する1つの面以下の寸法である。
【0103】
次に、本実施形態に係る組電池について、
図16を併せて参照しながら説明する。
図16は、実施形態9に係る組電池の一構成例を示す断面図で、
図14および
図15のフィルム外装電池101cを複数積層した組電池の一構成例を示す断面図である。
【0104】
図16に示すように、本実施形態に係る組電池100iは、
図13で例示する実施形態8において、フィルム外装電池101bの代わりに
図14および
図15で示すフィルム外装電池101cを積層し、放熱板109hの代わりに放熱板109iを配置している。本実施形態に係る組電池100iにおけるその他の点は、実施形態8に係る組電池と同様でありその説明を一部省略するが、実施形態8で説明した様々な例が適宜利用できる。
【0105】
放熱板109iは、第3の封止部107とほぼ重なるように配設され、両者の面積は実質的に同じ又は前者の方が大きいものとする。よって、第3の封止部107について上述した面積比については、放熱板109iにおいても同様に適用でき、また、両者が重なり合うため両者による投射面積についても同様に適用できると言える。
【0106】
本実施形態によれば、実施形態8に比べ、積層方向で見た発電要素の密度が低く体積効率が低下するものの、放熱効果を大きくすることができる。なお、
図16において、フィルム外装電池101cを2つ毎に上下反転させ、第3の封止部107同士が向かい合う部分を有するように積層した構造とすることもできる。その場合にも、隣り合うフィルム外装電池101c間につき1つの放熱板109iが配設される。
【0107】
(実施形態10)
図17は、実施形態10に係る組電池の一構成例を示す断面図である。
図17に示すように、本実施形態に係る組電池100jは、実施形態9に係る組電池100iにおいて、
図14および
図15で示したフィルム外装電池101cを次のように異ならせたものである。
【0108】
すなわち、本実施形態におけるフィルム外装電池101cは、その平面図は
図14で示されるようなものとなるが、その断面図が
図10内に示したようなものとなる。より具体的には、本実施形態におけるフィルム外装電池101cでは、第2の封止部106が発電要素104の側面(最大面積を有しない面の1つ)から始まり、発電要素104に沿って配されている。さらに、本実施形態におけるフィルム外装電池101cは、発電要素104の上記側面および最大面積を有する1つの面でフィルム外装材108の同一面同士が接着されている。
【0109】
その他の点は、本実施形態に係る組電池100jにおいても、効果も含めて実施形態9と同様であり、その説明を省略するが、フィルム外装電池101cを積層した場合に接着の起点が積層の邪魔にならず、より高密度化が図れるという効果も奏する。
【0110】
(実施形態11)
図18は、実施形態11に係る組電池の一構成例を示す断面図である。
図18に示すように、本実施形態に係る組電池100kは、実施形態10に係る組電池100jにおいて、放熱板109iを挟む数を1つのフィルム外装電池101c毎ではなく、2つ毎に配置したものである。
【0111】
その他の点は、本実施形態に係る組電池100kにおいても、効果も含めて実施形態11と同様であり、その説明を省略するが、実施形態10に比べ放熱効果は小さくなるものの積層方向で見た発電要素の密度が高く、より体積効率を向上させることができる。なお、本実施形態では、放熱板109iをフィルム外装電池2個毎に挟んだ例を挙げたが、n個毎に挟むことができる。また、図示しないが、本実施形態と同様に、実施形態9に係る組電池100iにおいて、放熱板109iをn個毎に挟むように変更することもできる。
【実施例】
【0112】
次に、上述した様々な実施形態について、以下の実施例および比較例を用いて説明する。
【0113】
正極には正極活物質LiNi0.8Co0.15Al0.05O2と導電付与剤としてカーボンブラックとバインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVDF)を94:3:3となるように混合したものを用いた。負極には負極活物質として表面被覆黒鉛と導電付与剤としてカーボンブラックとバインダーとしてPVDFを96:1:3となるように混合したものを用いた。セパレータにはポリプロピレンからなる多孔性のセパレータを用いた。また、セパレータを介し、正極と負極を交互に10層積層したものを発電要素とした。
【0114】
これをフィルム外装材からなる外装ケースに収容し、封止することでフィルム外装電池を得た。封止形状については各実施形態および比較例のフィルム外装電池の各形態になるようにそれぞれ作成した。第3の封止部は、実施形態1の
図3、実施形態5の
図10中のフィルム外装電池、実施形態1の
図4、実施形態5の
図10については発電要素の最大面積の50%となるようにした。また、第3の封止部は、実施形態9の
図14,
図15、実施形態9の
図16については発電要素の最大面積の100%となるようにした。また、実施形態9の
図16および比較例のフィルム外装電池の組電池はいずれも4個のフィルム外装電池を重ね合わせたものとした。
【0115】
発電要素の最大面積を有する面(1つの面、以下同様)の面積が130mm×70mmとなるようにし、各実施形態の形状について最大面積を有する面の加圧の有無で45℃、200サイクル後の容量維持率を測定した。その結果を表1に示す。
【0116】
【0117】
まず、フィルム外装電池単体での結果を考察する。
発電要素の最大面積を有する面の面積寸法が同一の「130mm×70mm」である場合を例にとって説明する。加圧無の場合、容量維持率は実施形態1の
図3、実施形態5の
図10中のフィルム外装電池、実施形態9の
図14,
図15に差はほとんど見られず実施形態の構造による差異は少ないことがわかる。
【0118】
一方、加圧有の場合(実施形態9の
図14,
図15)では、第3の封止部が発電要素の最大面積を有する面の100%を均一に加圧するため、発電要素が均一に保持されたことが電池性能の向上に寄与したと考えられる。
【0119】
次に組電池(実施形態1の
図4、実施形態5の
図10、実施形態9の
図16)での結果を考察する。
発電要素の最大面積を有する面の面積寸法が同一の「130mm×70mm」である場合を例にとって説明する。加圧無の場合をみると、容量維持率に差はほとんど見られず実施形態の構造による差異は少ないことがわかる。
【0120】
一方、加圧有の場合では発電要素の最大面積を有する面の100%を均一に加圧するため、発電要素が均一に保持されたことが電池性能の向上に寄与したと考えられる。
【0121】
次に発電要素の最大面積を有する面の面積による差を考察する。
実施形態1の
図4で比較すると、加圧無の場合、発電要素の最大面積を有する面の面積が大きくなるにしたがって容量維持率が低下する傾向が見られる。この傾向は、フィルム外装電池が外装ケース内部の大気圧を下げ、外圧によってフィルム外装電池の形状を維持する構造が特徴であることに起因すると考えられる。すなわち、この傾向は、上記特徴により、発電要素の最大面積を有する面の面積が大きくなることで、形状保持力が低下し易いことに起因すると考えられる。
【0122】
一方、加圧有の場合、発電要素の最大面積を有する面の面積をしっかりと加圧することで形状保持力を維持することができ、発電要素の最大面積を有する面の面積によらず効果が得られる。この結果から、発電要素の最大面積を有する面の面積が大きいほど加圧する効果が高いことが判明した。発電要素の最大面積を有する1つの面の面積が20000mm2以上であることが望ましいと言える。
【0123】
次に発電要素の最大面積を有する面の面積の直交する2辺の長さの比率(縦横比)による差を考察する。
最大面積を有する面の面積が同一で直交する2辺の長さの比率が異なる「200mm×200mm」と「400mm×100mm」を比較した。その結果、加圧無の場合、同じ面積であっても2辺の長さの比率が大きい「400mm×100mm」のほうが、容量維持率が悪化する傾向が見られる。これを加圧有にすると「200mm×200mm」、「400mm×100mm」のいずれでも高い容量維持率を得られている。この結果から直交する2辺の比率が異なる形状を有する場合ほど、加圧することによる改善効果が高いことが判明した。発電要素の最大面積を有する1つの面の縦横比が1:k(k≧4)であることが望ましいと言える。
【0124】
続いて、発電要素の最大面積を有する面の面積を「400mm×100mm」とし、第3の封止部が発電要素の最大面積を有する面の面積を覆う比率を変更したフィルム外装電池を用意した。そして、フィルム外装電池単体および組電池いずれの場合も発電要素の最大面積を有する面を加圧した状態で45℃、200サイクル後の容量維持率を測定した。その結果を、フィルム外装電池については表2に示し、組電池については表3に示す。
【0125】
【0126】
【0127】
表2から、フィルム外装電池単体を加圧した場合、発電要素の最大面積を有する面を加圧する割合が35%とすると加圧無よりも容量維持率が悪化することが判明した。
【0128】
組電池とした場合のうち、実施形態1の
図4、実施形態5の
図10は2つのフィルム外装電池を反転させ第3の封止部が同一面に配されるようにしている。よって、表3では、実施形態1の
図4、実施形態5の
図10については、隣り合う2つのフィルム外装電池の境界において第3の封止部が覆う発電要素の最大面積を有する面の面積の割合を記載している。表3から、発電要素の最大面積を有する面の面積を覆う比率が80%以上の状態で加圧されると、組電池として容量維持率が良くなることが確認された。
【0129】
以上では、放熱板を挟まない実施例を挙げたが、実施形態9~11のような単純に第3の封止部と同程度の面積をもつ放熱板を挟んだ場合は無論、押圧領域などの点でほぼ同等の効果が得られる。また、実施形態1~8において第3の封止部の一部の代わりに又は第3の封止部に加えて放熱板を挟んだ場合でも、押圧領域などの点において上記実施例とほぼ同等の効果が得られる。つまり、実施形態1~8において上記第3の封止部による封止面積を、第3の封止部および放熱板の双方による投射面積と置き換えた場合でも、押圧領域などの点において上記実施例とほぼ同等の効果が得られる。よって、上述した各実施形態では、実施例で示した効果に加えて、放熱板を挟むことで放熱効果を加えることができる。
【0130】
<他の実施形態>
上述した各実施形態では、第3の封止部はすべてを封止しているが、間欠的に封止部を設ける構造としても構わない。例えば、
図1、
図6、および
図14では、第2の封止部106およびその一部である第3の封止部107は、端子を導出しない側のすべてで封止されるように描いている。但し、この封止は、フィルム外装電池の性能を維持するために必要な封止幅が確保されるようになされていればよく、フィルム外装材108が封止部の外側に延在した形状や、断片的に封止された形状であっても構わない。
【0131】
また、上述した各実施形態では、発電要素が直方体である例を挙げているが、これに限らず、発電要素はそれ以外の多面体等の形状を有するものであってもよく、例えば、ある面が非平面であってもよい。但し、体積効率を向上させるためには、少なくとも最大面積を有する2面が平行な形状であることが好ましく、さらにこの2面が平行な平面であることがより好ましいと言える。
【0132】
また、上述した各実施形態では、第1の封止部は、フィルム外装電池の両端に設けられ、それぞれの端部から第1の端子および第2の端子が導出されているが、一方の端部から双方の端子が導出されていてもよい。
【0133】
また、第2の封止部は、発電要素の外形の面のうち最大面積を有する1つの面側に形成されることを前提としたが、最大面積を有する面が2以上存在する場合には、発電要素の外形の面のうち最大面積を有する少なくとも1つの面側に形成されていればよい。つまり、第2の封止部は、発電要素の外形の面のうち最大面積を有する2つ以上の面側に形成しておくこともできる。この場合、上述した各実施形態において、「1つの面」を「少なくとも1つの面」と読み替えることで、上述した説明が援用できる。但し、フィルム外装電池を積層して組電池を構成する際に、積み上げる高さが増すため、各実施形態で説明したように、第2の封止部は1つの面側に形成されることが好ましいと言える。
【0134】
また、発電要素の外形の面のうち最大面積を有する面が2つ以上存在する場合には、第3の封止部の封止面積が、発電要素の外形の面のうち最大面積を有する1つの面における当該最大面積以下であっても、当該最大面積より大きくてもよい。後者の場合、第3の封止部は、2面以上に形成されている場合に、発電要素の外形の面のうち最大面積を有する1つの面より大きくすることができる。
【0135】
また、上述した各実施形態に係る組電池では、同一のフィルム外装電池を用いているが、第1の端子および第2の端子の極性(正極、負極)の組み合わせや複数の異なる形状のフィルム外装電池を用いて構成しても問題ない。
【0136】
また、組電池において、特定のフィルム外装電池が劣化し交換するような場合、交換したフィルム外装電池の外見を変更することにより、目視で判断することが可能となる効果も得られる。
【0137】
また、本開示は、フィルム外装電池を複数積層して組電池を製造する、組電池製造方法の形態も含むことができる。なお、この組電池製造方法において、フィルム外装電池の製造方法は、問わず、上述した様々な実施形態におけるフィルム外装電池が製造できればよい。
【0138】
上記組電池製造方法は、発電要素の外形の面のうち上記最大面積を有する少なくとも1つの面側であって、第3の封止部が形成されている面側に、放熱板を配置する。この際、第3の封止部および放熱板による、上記最大面積を有する少なくとも1つの面への投射面積は、上記最大面積を有する少なくとも1つの面の面積の40%以上であるように配置する。なお、第3の封止部は、第2の封止部の一部であって発電要素に重なる部分とする。その他の応用例については、各実施形態において説明した通りであり、その説明を省略する。
【0139】
なお、本開示は上述した様々な実施形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。また、本開示は、それぞれの実施形態を適宜組み合わせて実施されてもよい。
【0140】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
<付記>
【0141】
(付記1)
フィルム外装電池が複数積層された組電池であって、
前記フィルム外装電池は、フィルム外装材を有する外装ケースに発電要素が収容されてなり、
前記外装ケースは、端子を導出する第1の封止部と、端子を導出しない第2の封止部と、を有し、
前記第2の封止部は、前記発電要素の外形の面のうち最大面積を有する少なくとも1つの面側に形成され、
前記組電池は、
前記第2の封止部の一部であって前記発電要素に重なる部分を、第3の封止部とすると、
前記発電要素の外形の面のうち最大面積を有する少なくとも1つの面側であって、前記第3の封止部が形成されている面側に、放熱板が配置されており、
前記第3の封止部および前記放熱板による、前記最大面積を有する少なくとも1つの面への投射面積は、前記最大面積を有する少なくとも1つの面の面積の40%以上である、
組電池。
【0142】
(付記2)
前記第3の封止部の封止面積は、前記最大面積を有する少なくとも1つの面の40%以上である、
付記1に記載の組電池。
【0143】
(付記3)
隣り合う前記フィルム外装電池は、前記第3の封止部を有する面同士が対向する状態、および、前記第3の封止部を有さない面同士が対向する状態のいずれか一方の状態で、積層されている、
付記1又は2に記載の組電池。
【0144】
(付記4)
前記第3の封止部を有する面が同じ方向を向くように、前記フィルム外装電池が複数積層されている、
付記1又は2に記載の組電池。
【0145】
(付記5)
前記最大面積を有する少なくとも1つの面の80%以上が、前記第3の封止部および前記放熱板で押圧された状態で、固定されている、
付記1から4のいずれか1項に記載の組電池。
【0146】
(付記6)
前記放熱板は、隣り合う前記フィルム外装電池の間において、一方の前記フィルム外装電池における前記第3の封止部と重ならないように配置されている、
付記1から5のいずれか1項に記載の組電池。
【0147】
(付記7)
前記放熱板の厚みは、前記第3の封止部の厚みと実質的に同一である、
付記6に記載の組電池。
【0148】
(付記8)
前記放熱板は、隣り合う前記フィルム外装電池の間において、前記放熱板の一部が一方の前記フィルム外装電池における前記第3の封止部の全体と重なり、且つ、前記放熱板の他部が前記一方の前記フィルム外装電池における前記第3の封止部と重ならないように、配置されている、
付記1から5のいずれか1項に記載の組電池。
【0149】
(付記9)
重なった部分における前記放熱板と前記第3の封止部とによる合計の厚みは、重ならない部分の前記放熱板の厚みと実質的に同一である、
付記8に記載の組電池。
【0150】
(付記10)
前記放熱板は絶縁性をもつ、
付記1から9のいずれか1項に記載の組電池。
【0151】
(付記11)
放熱板は金属製である、
付記1から9のいずれか1項に記載の組電池。
【0152】
(付記12)
前記放熱板は、前記最大面積を有する少なくとも1つの面に平行に設けられた複数の貫通孔を有する、
付記1から11のいずれか1項に記載の組電池。
【0153】
(付記13)
前記最大面積を有する少なくとも1つの面の面積が20000mm2以上である、
付記1から12のいずれか1項に記載の組電池。
【0154】
(付記14)
前記最大面積を有する少なくとも1つの面の縦横比が1:k(k≧4)である、
付記1から13のいずれか1項に記載の組電池。
【0155】
(付記15)
フィルム外装電池を複数積層して組電池を製造する、組電池の製造方法であって、
前記フィルム外装電池は、フィルム外装材を有する外装ケースに発電要素が収容されてなり、
前記外装ケースは、端子を導出する第1の封止部と、端子を導出しない第2の封止部と、を有し、
前記第2の封止部は、前記発電要素の外形の面のうち最大面積を有する少なくとも1つの面側に形成されており、
前記製造方法は、
前記第2の封止部の一部であって前記発電要素に重なる部分を、第3の封止部とすると、
前記発電要素の外形の面のうち最大面積を有する少なくとも1つの面側であって、前記第3の封止部が形成されている面側に、放熱板を配置し、
前記第3の封止部および前記放熱板による、前記最大面積を有する少なくとも1つの面への投射面積は、前記最大面積を有する少なくとも1つの面の面積の40%以上である、
組電池の製造方法。
【符号の説明】
【0156】
100a、100b、100c、100d、100e、100f、100g、100h、100i、100j、100k 組電池
101a、101b,101c フィルム外装電池
102 第1の端子
103 第2の端子
104、104a、104b 発電要素
105 第1の封止部
106 第2の封止部
107、107a、107b 第3の封止部
108、108a、108b フィルム外装材
109、109a、109b、109c、109ab、109g、109h、109i 放熱板