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特許7566961静注用ガナキソロン製剤ならびにてんかん重積状態および他の発作性障害の治療におけるその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】静注用ガナキソロン製剤ならびにてんかん重積状態および他の発作性障害の治療におけるその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/57 20060101AFI20241007BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241007BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20241007BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20241007BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20241007BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20241007BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20241007BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20241007BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20241007BHJP
   A61K 47/28 20060101ALI20241007BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20241007BHJP
   A61K 47/40 20060101ALI20241007BHJP
   A61K 47/69 20170101ALI20241007BHJP
   A61P 25/08 20060101ALI20241007BHJP
   A61K 31/515 20060101ALI20241007BHJP
   A61K 31/05 20060101ALI20241007BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20241007BHJP
   A61P 9/02 20060101ALI20241007BHJP
【FI】
A61K31/57
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K9/08
A61K9/19
A61K47/02
A61K47/10
A61K47/12
A61K47/26
A61K47/28
A61K47/32
A61K47/40
A61K47/69
A61P25/08
A61K31/515
A61K31/05
A61P9/10
A61P9/02
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2023042531
(22)【出願日】2023-03-17
(62)【分割の表示】P 2017540743の分割
【原出願日】2016-02-08
(65)【公開番号】P2023078301
(43)【公開日】2023-06-06
【審査請求日】2023-04-11
(31)【優先権主張番号】62/112,943
(32)【優先日】2015-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509031132
【氏名又は名称】マリナス ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チャン ミングバオ
(72)【発明者】
【氏名】グロワキー レイモンド シー
【審査官】清野 千秋
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-517299(JP,A)
【文献】Marinus Pharmaceuticals, Inc. Enters Into Use Agreement With CyDex Pharmaceuticals, Inc. for Use of,[online],[2019年10月24日検索],2014年08月12日,インターネット,<URL:https://www.marinuspharma.com/investors/news/news-2014/38-marinus-pharmaceuticals-inc-ente
【文献】Epilepsia,2013年,54(Suppl. 6),pp. 93-98
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/57
A61P 43/00
A61K 45/00
A61K 9/08
A61K 9/19
A61K 47/02
A61K 47/10
A61K 47/12
A61K 47/26
A61K 47/28
A61K 47/32
A61K 47/40
A61K 47/69
A61P 25/08
A61K 31/515
A61K 31/05
A61P 9/10
A61P 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それを必要とする対象におけるてんかん重積状態の治療のための薬剤の製造のためのガナキソロンを含む医薬品組成物の使用であって、前記医薬品組成物は、静脈内ボーラスおよび持続静脈内注入として投与されることを特徴とする使用。
【請求項2】
請求項1に記載の使用であって、
前記対象が、ヒトであることを特徴とする使用。
【請求項3】
請求項1に記載の使用であって、
前記てんかん重積状態が、痙攣性てんかん重積状態であるか、または非痙攣性てんかん重積状態であることを特徴とする使用。
【請求項4】
請求項1に記載の使用であって、
前記対象が、難治性てんかん重積状態を有することを特徴とする使用。
【請求項5】
請求項1に記載の使用であって、
前記対象が、超難治性てんかん重積状態を有することを特徴とする使用。
【請求項6】
請求項1に記載の使用であって、
前記てんかん重積状態が、少なくとも5時間抑制されることを特徴とする使用。
【請求項7】
請求項1に記載の使用であって、
前記ガナキソロンを含む製剤の静脈内約15分後投与でてんかん重積状態が抑制されることを特徴とする使用。
【請求項8】
請求項1に記載の使用であって、
前記対象が、EEG(脳波)によってモニターされることを特徴とする使用。
【請求項9】
請求項1に記載の使用であって、
前記対象における発作活動が、EEGによってモニターされることを特徴とする使用。
【請求項10】
請求項1に記載の使用であって、前記ガナキソロンを含む製剤が、少なくとも1つ以上の別の活性薬剤とともに静脈内に投与されることを特徴とする使用。
【請求項11】
請求項10に記載の使用であって、
前記別の活性薬剤が、抗痙攣薬であることを特徴とする使用。
【請求項12】
請求項10に記載の使用であって、
前記別の活性薬剤が、ベンゾジアゼピン系麻酔薬、バルビツール酸系麻酔薬、または非バルビツール酸系麻酔薬であることを特徴とする使用。
【請求項13】
請求項1に記載の使用であって、
前記静脈内ボーラスが、前記対象において約600ng/mL~約900ng/mLのガナキソロン血漿C max となり、前記持続注入が、注入期間中の前記対象においてガナキソロン血漿C max の少なくとも約25%のガナキソロン血漿濃度を維持することを特徴とする使用。
【請求項14】
請求項1に記載の使用であって、
前記医薬品組成物が、水溶液であることを特徴とする使用。
【請求項15】
請求項1に記載の使用であって、
前記医薬品組成物が、懸濁液ではないことを特徴とする使用。
【請求項16】
請求項1に記載の使用であって、
前記医薬品組成物が、シクロデキストリンをさらに含むことを特徴とする使用。
【請求項17】
請求項1に記載の使用であって、
前記医薬品組成物中のガナキソロンの濃度が、約1mg/mL~約5mg/mLであることを特徴とする使用。
【請求項18】
請求項16に記載の使用であって、
前記シクロデキストリンが、スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリンを含み、前記ガナキソロンに対する前記スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリンのw/w比が、約52:1~約70:1であることを特徴とする使用。
【請求項19】
請求項18に記載の使用であって、
前記シクロデキストリンが、スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリンを含み、前記ガナキソロンに対する前記スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリンのw/w比が、約60:1であることを特徴とする使用。
【請求項20】
請求項18に記載の使用であって、
前記シクロデキストリンが、スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリンを含み、前記ガナキソロンに対する前記スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリンのw/w比が、約70:1であることを特徴とする使用。
【請求項21】
請求項1に記載の使用であって、
前記医薬品組成物が、リン酸緩衝液をさらに含むことを特徴とする使用。
【請求項22】
請求項21に記載の使用であって、
前記リン酸緩衝液が、一塩基性リン酸緩衝液と二塩基性リン酸緩衝液の組合せであって、それぞれのリン酸緩衝液の濃度が、2mM~50mMであることを特徴とする使用。
【請求項23】
請求項1に記載の使用であって、
前記医薬品組成物が、約6.0~約6.8のpHを有することを特徴とする使用。
【請求項24】
請求項1に記載の使用であって、
前記医薬品組成物が、張度調整剤をさらに含むことを特徴とする使用。
【請求項25】
請求項24に記載の使用であって、
前記張度調整剤が、塩化ナトリウムであることを特徴とする使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静注用ガナキソロン製剤ならびにてんかん重積状態および他の発作性障害の治療におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
てんかん重積状態(SE)とは、重篤な発作性障害であり、該てんかん患者は、5分を超えて継続する発作、または発作間に発作から回復しない1回を超える発作を5分間のうちに発症する。場合によっては、痙攣発作は数日または数週間も継続することがある。救急外来において、てんかん重積状態には従来の抗痙攣薬により治療される。ベンゾジアゼピン系薬剤(BZs)のようなGABA受容体モジュレータは一次治療薬である。BZs単独投与に反応しない患者には、通常、麻酔薬またはバルビツール酸系薬剤をBZsと組み合わせて治療する。ベンゾジアゼピン系薬剤および少なくとも1種の追加の抗てんかん薬を投与されたてんかん重積状態患者の約23~43%は、治療に反応せず、難治性と判断される(ロセッティ(Rossetti),A.O.およびローウェンスタイン(Lowenstein),D.H.,Lancet Neurol.(2011)10(10):922-930.)。現時点では、これらの患者に対する妥当な治療の選択肢はない。難治性てんかん重積状態(RSE)患者の死亡率は高く、RSE患者の大半は、RSE以前の臨床状態に戻ることはない。SEで入院した患者の約15%は、超難治性SE(SRSE)と呼ばれるRSE患者の亜群に分けられ、この群の患者は、麻酔治療開始後、24時間以上発作が継続する、または再発を繰り返す。SRSEは、高い死亡率および罹患率に関連する(ショルボン(Shorvon),S.,およびフェルリシ(Ferlisi),M.,Brain,(2011)134(10):2802-2818.)。
【0003】
非経口投与用アロプレグナノロンは、難治性てんかん重積状態に対する治療薬として提案された(ロガウスキー(Rogawski),M.A.,et al.,Epilepsia,(2013)54:93-98.)。しかし、アロプレグナノロンは、半減期が非常に短く、活性型ステロイドである5α-ジヒドロプロゲステロンに代謝されるため、アロプレグナノロンはRSE治療のための理想的な選択薬とは言えない。
【0004】
別の重篤な発作性障害は、女性および小児に発症するPCDH19関連てんかん(PCDH19 female pediatric epilepsy)であり、米国の約15,000~30,000名の女性に発症している。この遺伝性障害は、ほとんどが数週間継続することのある焦点性の群発発作であり、生後早期に発症する発作に関連する。PCDH19遺伝子の突然変異が、アロプレグナノロンレベルの低下に関連するが、アロプレグナノロンを用いた治療は、上記の理由によって理想的な選択とは言えない。現時点では、女性および小児に発症するPCDH19関連てんかんに対する承認された治療法はない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】ロセッティ(Rossetti),A.O.およびローウェンスタイン(Lowenstein),D.H.,Lancet Neurol.(2011)10(10):922-930.
【文献】ショルボン(Shorvon),S.,およびフェルリシ(Ferlisi),M.,Brain,(2011)134(10):2802-2818.
【文献】ロガウスキー(Rogawski),M.A.,et al.,Epilepsia,(2013)54:93-98.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、てんかん重積状態、難治性てんかん重積状態、超難治性てんかん重積状態、および女性および小児に発症するPCDH19関連てんかんなどの発作性障害に対する別の治療が必要である。本開示は、この必要性を満たし、本明細書に記載されている追加の利点を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、ガナキソロン、スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリン、および水を含有する注射用ガナキソロン製剤を提供する。該ガナキソロンおよびスルホブチルエーテル-β-シクロデキストリンは、包接複合体に含まれてもよい。スルホブチルエーテルβ-シクロデキストリンは、商品名CAPTISOL(登録商標)(Ligand Pharmaceuticals)で市販されており、シクロデキストリン分子当たり平均6~7のスルホブチルエーテル基を有する。本開示は、さらに、注射の際に水で復元してもよいガナキソロン/スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリン製剤の凍結乾燥粉末を提供する。
【0008】
本開示は、さらに、発作性障害、脳卒中、または外傷性脳損傷の患者を治療する方法であって、ガナキソロン、スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリン、および水を含有する注射用ガナキソロン製剤を有効量で投与することを含む方法を提供する。
【0009】
本開示は、ガナキソロンが唯一の活性薬剤である治療法、およびガナキソロン/スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリン製剤を別の活性薬剤と組み合わせて投与する方法を含む。
【0010】
本開示は、ガナキソロン/スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリン製剤を単独で、または少なくとも1種の追加の活性薬剤と共に用いる投与計画を含む治療法を含む。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】ガナキソロンの可溶化に必要なCAPTISOL:ガナキソロンの重量:重量比が52:1であることを示す、HPLCで測定した溶液中のガナキソロン濃度(mg/mL)のCAPTISOL濃度(mg/mL)に対するプロットである。
図2】ガナキソロン-CAPTISOL溶液を注入したラットにおけるガナキソロンの血漿曝露量を示す図である。ガナキソロン:CAPTISOL比は1:60(w/w)であった。
図3A】SE発症15分後、溶媒、アロプレグナノロン(15mg/kg)、またはガナキソロン(12または15mg/kg静注)をラットに投与した場合を示す図である。平均FFTパワーは、各動物におけるベースライン値を続く値から減算した後、平均して示される;したがって、各治療においてベースライン=0。各パネル(A~F)は、次の時点におけるEEGパワーの平均±SEMを示す:-135分=ベースライン;-75分=スコポラミン;-45分=ピロカルピン;-15分=てんかん重積状態発症;0分=投与後(PD)0~15分;15分=PD15~30分;30分=PD30~60分;60分=PD1~2時間;120分=PD2~3時間;180分=PD3~5時間。垂直な破線=最初の投与後の時点、0~15分。
図3B】SE発症15分後、溶媒、アロプレグナノロン(15mg/kg)、またはガナキソロン(12または15mg/kg静注)をラットに投与した場合を示す図である。
図3C】SE発症15分後、溶媒、アロプレグナノロン(15mg/kg)、またはガナキソロン(12または15mg/kg静注)をラットに投与した場合を示す図である。
図3D】SE発症15分後、溶媒、アロプレグナノロン(15mg/kg)、またはガナキソロン(12または15mg/kg静注)をラットに投与した場合を示す図である。
図3E】SE発症15分後、溶媒、アロプレグナノロン(15mg/kg)、またはガナキソロン(12または15mg/kg静注)をラットに投与した場合を示す図である。
図3F】SE発症15分後、溶媒、アロプレグナノロン(15mg/kg)、またはガナキソロン(12または15mg/kg静注)をラットに投与した場合を示す図である。
図4A】SE発症の60分後、溶媒、アロプレグナノロン(15mg/kg)、またはガナキソロン(12または15mg/kg静注)をラットに投与した場合を示す図である。平均FFTパワーは、各動物におけるベースライン値を続く値から減算した後、平均して示される;したがって、各治療においてベースライン=0。各パネル(A~F)は、次の時点におけるEEGパワーの平均±SEMを示す:-180分=ベースライン;-120分=スコポラミン;-90分=ピロカルピン;-60分=てんかん重積状態発症;0分=投与後(PD)0~15分;15分=PD15~30分;30分=PD30~60分;60分=PD1~2時間;120分=PD2~3時間;180分=PD3~5時間。垂直な破線=最初の投与後の時点、0~15分。
図4B】SE発症の60分後、溶媒、アロプレグナノロン(15mg/kg)、またはガナキソロン(12または15mg/kg静注)をラットに投与した場合を示す図である。
図4C】SE発症の60分後、溶媒、アロプレグナノロン(15mg/kg)、またはガナキソロン(12または15mg/kg静注)をラットに投与した場合を示す図である。
図4D】SE発症の60分後、溶媒、アロプレグナノロン(15mg/kg)、またはガナキソロン(12または15mg/kg静注)をラットに投与した場合を示す図である。
図4E】SE発症の60分後、溶媒、アロプレグナノロン(15mg/kg)、またはガナキソロン(12または15mg/kg静注)をラットに投与した場合を示す図である。
図4F】SE発症の60分後、溶媒、アロプレグナノロン(15mg/kg)、またはガナキソロン(12または15mg/kg静注)をラットに投与した場合を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[定義]
本明細書で特に指摘しない限り、値の範囲の列挙は、その範囲内に含まれる個々の値を個別に言及する簡便な方法として役立つよう意図されているだけであり、個々の値は、あたかも本明細書に個別に列挙されているかのように本明細書に組み込まれる。すべての範囲の終点はその範囲内に含まれ、独立して組み合わせ可能である。本明細書で特に指摘しない限り、または明らかに文脈に矛盾しない限り、本明細書に記載されたすべての方法は、適当な順序で実施され得る。任意のもしくはすべての実施例または例示的な言葉(例えば、「such as」)の使用は、例示として意図されているだけであり、別に主張されていない限り、本発明の範囲に制限を与えるものではない。本明細書中のいかなる言葉も、本発明の実施に必須なものとして主張されていないいかなる要素も示唆すると解釈すべきではない。
【0013】
本明細書で用いる用語「a」および「an」は、量の限定を意味するものではなく、言及されている項目が少なくとも1つ存在することを意味する。
【0014】
本明細書で用いる用語「about」は、用語「approximately」と同じ意味で用いられる。当業者が理解しているとおり、「約」の厳密な境界は、組成物の構成成分によって異なる。例示的に、用語「約」を用いる場合、値が言及されている値からわずかに、すなわち、プラスまたはマイナス0.1%~10%外れていることを示唆しているが、これらの値も有効で安全である。したがって、言及されている範囲をわずかに外れている組成物も本発明の請求の範囲内に包含される。
【0015】
「活性薬剤」は、任意の化合物、要素、または混合物であり、単独または他の薬剤と組み合わせて患者に投与する場合、直接的または間接的な生理学的作用を患者に及ぼす。該活性薬剤が化合物である場合、該化合物の様々な多形体と同様に、塩、その遊離化合物または塩の溶媒和物(水和物を含む)、結晶および非結晶の形態も含まれる。化合物は、立体中心、立体軸などの1つ以上の不斉要素、例えば、不斉炭素原子を有してもよく、このため、該化合物は様々な立体異性体として存在し得る。これらの化合物は、例えば、ラセミ体または光学活性体であり得る。2つ以上の不斉要素を有する化合物の場合、これらの化合物は、さらにジアステレオマの混合物であり得る。不斉中心を有する化合物の場合、純粋な形の光学異性体およびそれらの混合物のすべてが包含されるものと理解されるべきである。さらに、炭素-炭素二重結合を有する化合物は、Z体およびE体を生じてもよく、これらの化合物のすべての異性体は本発明に含まれる。これらの状況において、単一のエナンチオマ、すなわち光学活性体は、不斉合成、光学的に純粋な前駆体からの合成、またはラセミ体の分割によって得られる。ラセミ体の分割は、例えば、分割剤の存在下における結晶化、またはキラルHPLCカラムなどを用いたクロマトグラフィなどの従来の方法によっても達成し得る。
【0016】
本明細書で用いる用語「含有する(comprising)」、「含む(including)」、および「含む(containing)」は、制限するものではない。他の列挙されていない要素は、これらの移行句を用いて主張されている実施形態に存在してもよい。「含有する(comprising)」、「含む(containing)」、または「含む(including)」が、移行句として使用されている場合、本特許請求の範囲内に他の要素が含まれてもよく、またさらに実施形態を構成してもよい。オープンエンドの移行句「含む(comprising)」は、中間の移行句(intermediate transitional phrase)「本質的に~からなる(consisting essentially of)」、およびクローズエンドの句(close-ended phrase)「~からなる(consisting of)」を包含する。
【0017】
「ボーラス用量」とは、短時間、例えば、1~30分間で投与される比較的大量の医薬品のである。
【0018】
maxは、最大濃度の時点における血漿中の活性濃度の測定濃度である。
【0019】
用語「包接複合体」は、ガナキソロン分子とシクロデキストリン分子との複合体を意味することを意図する。ガナキソロン分子は、シクロデキストリン分子の疎水性の空洞中に部分的に挿入されていると考えられる。特定の非限定的な実施形態において、該包接複合体は、1つのガナキソロン分子および1つのスルホブチルエーテル-β-シクロデキストリン分子を有し、ガナキソロンとスルホブチルエーテル-β-シクロデキストリンとの割合は1:1となっている。
【0020】
注入投与は非経口投与であり、通常、静脈内投与であるが、硬膜外投与など、他の非経口投与経路が、いくつかの実施形態に含まれる。注入投与は、ボーラス投与よりも長い時間をかけて、例えば、少なくとも15分、少なくとも30分、少なくとも1時間、少なくとも2時間、少なくとも3時間、または少なくとも4時間の時間をかけて行われる。
【0021】
「患者」は、医学的治療を必要としているヒトまたはヒト以外の動物である。医学的治療には、障害または損傷など、既存の状態の治療が含まれる。特定の実施形態において、治療には、予防的治療(prophylactic or preventative treatment)または診断治療も含まれる。
【0022】
「軽減した刺激」とは、可溶化が不十分である注射用ガナキソロン製剤で生じる刺激よりも弱い刺激である。該軽減した刺激は、患者にとって許容可能であり、患者のコンプライアンスに好ましくない影響を与えることのない、注射部位または筋肉部位における軽微から軽度の刺激である。
【0023】
「治療上有効な量」または「有効量」とは、薬理効果が得られる医薬剤の量である。用語「治療上有効な量」は、例えば、予防的な有効量を含む。ガナキソロンの「有効量」は、過度の有害な副作用を伴わない、望ましい薬理効果または治療的改善を得るために必要な量である。該ガナキソロンの有効量は、特定の患者および疾患に応じ、当業者によって選択されることになる。「有効量」または「治療上有効な量」は、ガナキソロンの代謝、年齢、体重、対象の全身状態、治療対象となる状態、治療対象となる状態の重症度、および処方医師の判断における差異によって、対象毎に変更することができる。
【0024】
「治療する」または「治療」は、障害または疾患を抑制すること、例えば、障害もしくは疾患の発症を阻止すること、障害もしくは疾患を緩和すること、障害もしくは疾患の退行を引き起こすこと、疾患もしくは障害によって引き起こされた状態を緩和すること、または疾患もしくは障害の症状を軽減することなど、障害または疾患の任意の治療について言及している。
【0025】
[化学的な記載]
ガナキソロン(CAS登録番号38398-32-2、3α-ヒドロキシ,3β-メチル-5α-プレグナン-20-オン)は、てんかんおよび他の中枢神経系障害の治療に有用な抗痙攣活性を有す合成ステロイドである。
【化1】
3α-ヒドロキシ,3β-メチル-5α-プレグナン-20-オン
ガナキソロン
【0026】
ガナキソロンは、経口投与後のヒト血漿において比較的長い半減期、約20時間を有す(ノーリア(Nohria),V.andギラー(Giller),E.,Neurotherapeutics,(2007)4(1):102-105)。さらに、ガナキソロンは短いTmaxを有し、これは、治療効果のある血中濃度へ直ちに到達することを意味する。このため、初期のボーラス用量(負荷投与量)は必要とされず、このことは、他の治療よりも有利であることを示している。ガナキソロンは、成人および小児のてんかん患者における発作を治療するために有用である。
【0027】
米国特許第5,134,127号および第5,376,645号(各ステラ(Stella)ら)は、スルホアルキルエーテルシクロデキストリン誘導体、および経口投与、鼻腔内投与、または静脈内および筋肉内投与を含む非経口投与用の水不溶性薬剤のための可溶化剤としてのその使用を開示している。ステラ(Stella)らは、水不溶性薬剤とスルホアルキルエーテルシクロデキストリン誘導体の包接複合体およびこれらの包接複合体を含有する医薬品組成物を開示している。開示されたスルホアルキルエーテルシクロデキストリン誘導体の例には、β-シクロデキストリンのモノ-スルホブチルエーテルおよびβ-シクロデキストリンのモノスルホプロピルエーテルが含まれる。Ligand Pharmaceuticalsによって市販されているCAPTISOLは、シクロデキストリン分子当たり平均6~7のスルホブチルエーテル基を有するスルホブチルエーテルβ-シクロデキストリンである。CAPTISOLは、非晶質物質として市販されており、分子当たり6.5の置換基数に基づく平均分子量が2163g/モルである。
【0028】
[注射用置換β-シクロデキストリン-ガナキソロン製剤]
本開示は、CAPTISOL-ガナキソロン包接複合体を含有する製剤を含む、注射用置換β-シクロデキストリンガナキソロン製剤を提供する。本明細書中に開示されている注射用置換β-シクロデキストリンガナキソロン製剤には、筋肉内、静脈内、動脈内、脊髄内、およびくも膜下腔内注射に適した製剤が含まれる。注射用製剤には、静脈内注入に適した非経口投与用製剤が含まれる。
【0029】
本開示は、CAPTISOLのような置換-β-シクロデキストリンとガナキソロンの包接複合体、および薬学的に許容される担体を含有する注射用置換β-シクロデキストリンガナキソロン製剤を提供する。特定の実施形態において、本開示の置換β-シクロデキストリンガナキソロン製剤は、水性非経口投与用または注射用製剤の剤形であるものとする。
【0030】
ガナキソロンは、水に非常に溶け難く(<0.001mg/mL)、このため、水性注射剤として製剤化することは困難である。本発明者は、ガナキソロンと、CAPTISOLのような置換β-シクロデキストリンを複合化することによって、ガナキソロンの水溶性が、水性注射剤として製剤化が可能となるまでに十分増大する可能性があることを発見した。この結果、置換β-シクロデキストリンは、注射部位におけるガナキソロンの析出を抑制し、刺激を低下させ、注射部位の許容できない刺激を伴わない注射を可能にする。
【0031】
本開示で提供される注射用置換β-シクロデキストリンガナキソロン製剤は、水性製剤または水に速やかに溶解して注射用製剤が得られる、凍結乾燥剤形を含む水性製剤または粉末製剤である。本開示は、凍結乾燥ガナキソロン粉末がガナキソロンおよびスルホブチルエーテル-β-シクロデキストリンを含有し、該製剤がガナキソロン1.0%~2.0重量%である実施形態を含む。
【0032】
本開示は、0.25mg/mL、0.5mg/mL、1.0mg/mL、1.5mg/mL、2.0mg/mL、2.5mg/mL、3.0mg/mL、3.5mg/mL、4.0mg/mL、4.5mg/mL、5.0mg/mL、5.5mg/mL、6.0mg/mL、6.5mg/mL、7.0mg/mL、7.5mg/mL、8.0mg/mL、8.5mg/mL、9.0mg/mL、10mg/mL、11mg/mL、12mg/mL、13mg/mL、または約15mg/mLの濃度でガナキソロンを含有する注射用置換β-シクロデキストリンガナキソロン製剤を提供する。終点として、前述の置換β-シクロデキストリン濃度のいずれか2つを含む範囲のすべても、本開示に含まれる。例えば、本開示は、約0.5mg/mL~約15mg/mL、約1.0mg/mL~約10mg/mL、約2.0mg/mL~約8.0mg/mL、または約4.0mg/mL~約8.0mg/mLのガナキソロンを含有する置換β-シクロデキストリンガナキソロン製剤を含む。本開示は、約2.0mg/mL~約8.0mg/mLのガナキソロンを含有する(例えば、包接複合体中)水性注射用ガナキソロン/スルホブチルエーテルβ-シクロデキストリン製剤を含む実施形態を含む。
【0033】
置換β-シクロデキストリンはガナキソロンに対して、重量:重量比で、約10:1~100:1、または約40:1~約80:1、または約52:1~約80:1、または約52:1~約85:1、または約55:1~約70:1、または約55:1~約65:1、または約55:1であるものとする。製剤中または注射時にガナキソロンが析出することを阻害または防止するために必要な、ガナキソロンに対する置換β-シクロデキストリンの比は、用いられた特定の種類の置換-β-シクロデキストリンによって異なる。CAPTISOLを用いる場合、CAPTISOL:ガナキソロンの比は、約52:1~約85:1、または約55:1~約70:1、または約55:1~約65:1、または約55:1である必要がある。置換β-シクロデキストリンは、ガナキソロンの可溶化を補助するためのガナキソロン複合化に必要な量より多い量で存在してもよい。
【0034】
本明細書中に開示されているすべての製剤において、ガナキソロンおよびスルホブチルエーテル-β-シクロデキストリンは、包接複合体に含まれてもよく、該包接複合体は、ガナキソロン:スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリンが1:1の複合体でもよい。
【0035】
特定の実施形態において、ガナキソロンとスルホブチルエーテル-β-シクロデキストリンの包接複合体は、スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリン濃度が30%w/vの水中、該複合体から得られるガナキソロンの量を測定した場合、少なくとも2.0mg/mLのガナキソロン(または少なくとも0.1mg/mL、または少なくとも1.0mg/mL、または少なくとも1.5mg/mL)をもたらす。特定の実施形態において、該ガナキソロン濃度は、約0.1mg/mL~約15mg/mL、または約1mg/mL~約10mg/mL、または約1mg/mL~約5mg/mLである。
【0036】
特定の実施形態において、ガナキソロンは、注射用製剤の総重量に基づき、約0.1~約5重量%、または約0.2~約2.5重量%、または約0.5~約1.5重量%の量で、水性注射用製剤中に存在するであろう。
【0037】
本開示は、さらに、ガナキソロンに対する置換β-シクロデキストリンの比が、約52:1以上である限り、置換β-シクロデキストリンを濃度5mg/mL、10mg/mL、50mg/mL、100mg/mL、150mg/mL、200mg/mL、250mg/mL、300mg/mL、350mg/mL、400mg/mL、450mg/mL、500mg/mL、550mg/mL、600mg/mL、650mg/mL、または700mg/mLで含有する注射用置換β-シクロデキストリンガナキソロン製剤を提供する。終点として、前述の置換β-シクロデキストリン濃度のいずれか2つを含む範囲のすべても、本開示に含まれる。例えば、本開示は、約5mg/mL~約500mg/mL、または約50mg/mL~約500mg/mL、または約100mg/mL~約400mg/mLの置換β-シクロデキストリンを含有する置換β-シクロデキストリンガナキソロン製剤を含む。本開示は、置換β-シクロデキストリンガナキソロン製剤が、約25mg/mL~約400mg/mLのスルホブチルエーテル-β-シクロデキストリンを含有する実施形態を含む。
【0038】
ガナキソロンは、置換-β-シクロデキストリンと複合体を形成することとなり、この複合体は、水に溶解して注射用製剤を形成してもよい。しかし、ガナキソロンと置換-β-シクロデキストリンの物理的混合物は、本開示の範囲内である。
【0039】
本開示の置換-β-シクロデキストリン-ガナキソロン製剤は、水を加えて復元し、水性注射用製剤を形成する、ガナキソロンと置換-β-シクロデキストリンの乾燥した物理的混合物または乾燥した包接複合体から形成されてもよい。代替方法として、該水性注射用製剤は、凍結乾燥し、後に水で復元してもよい。
【0040】
本開示は、上記ガナキソロン-スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリン製剤が、さらに、酢酸、クエン酸、酒石酸、リン酸、またはトリエタノールアミン(TRIS)緩衝液などの緩衝液、pHを望ましいレベルに調整するための酸または塩基緩衝液を含有する実施形態を含む。いくつかの実施形態において、該望ましいpHは、2.5~11.0、3.5~9.0、または5.0~8.0、または6.0~8.0、または6.8~7.6、または6.80~7.10、または約7.4である。該置換β-シクロデキストリン-ガナキソロン製剤に有用な酸緩衝液の例には、シュウ酸、マレイン酸、フマル酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、酢酸、メタンスルホン酸、ヒスチジン、コハク酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、エタンスルホン酸などが含まれる。上記の酸の酸性塩を用いてもよい。該製剤に有用な塩基緩衝液の例には、炭酸ナトリウムおよび炭酸水素ナトリウムなどの炭酸および重炭酸系、ならびにリン酸一水素ナトリウムおよびリン酸二水素ナトリウムなどのリン酸緩衝系が含まれる。特定の実施形態において、該緩衝液はリン酸緩衝液である。特定の実施形態において、該緩衝液はリン酸緩衝生理食塩水である。特定の実施形態において、該緩衝液は、リン酸二水素カリウムまたは二塩基性リン酸緩衝液のような一塩基性および二塩基性リン酸緩衝液の混合物である。リン酸緩衝系の各構成成分の濃度は、約5mM~約20mM、約10mM~約200mM、または約20mM~約150mM、または約50mM~約100mMであるとする。
【0041】
本開示は、上記ガナキソロン-スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリン製剤のpHが、約6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、または7.4である実施形態を含む。
【0042】
上記製剤は、ナトリウムまたはカリウムなどの電解質を含有してもよい。本開示は、該製剤が塩化ナトリウム約0.5%~約1.5%(生理食塩水)である実施形態を含む。
【0043】
上記製剤は、張度調整剤を含有してもよく、このため、ヒト血漿と等張である。該製剤に有用な張度調整剤の例には、以下に限定されないが、デキストロース、マンニトール、塩化ナトリウム、またはグリセリンが含まれる。特定の実施形態において、等張化剤は0.9%塩化ナトリウムである。
【0044】
上記注射用置換シクロデキストリン-ガナキソロン製剤は、非水性担体を含有してもよい。非水性担体には、ガナキソロンと適合性があり、該剤形における望ましい薬理学的な放出プロファイルを提供することができる薬学的に許容される任意の添加物が含まれる。担体材料には、例えば、懸濁化剤、界面活性剤、可溶化剤、安定剤、滑沢剤、湿潤剤、希釈剤などが含まれる。「薬学的に適合性のある担体材料」には、以下に限定されないが、アカシアゴム、ゼラチン、コロイド状二酸化ケイ素、グリセロリン酸カルシウム、乳酸カルシウム、マルトデキストリン、グリセリン、ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン(PVP)、コレステロール、コレステロールエステル、カゼインナトリウム、大豆レシチン、タウロコール酸、ホスホチジルコリン(phosphotidylcholine)、塩化ナトリウム、リン酸三カルシウム、リン酸水素二カリウム、セルロースおよびセルロース複合体、糖類、ステアロイル乳酸ナトリウム、カラギーナン、モノグリセリド、ジグリセリド、アルファ化デンプンなどが含まれてもよい。
【0045】
上記注射用置換β-シクロデキストリン-ガナキソロン製剤は、さらに、エタノールなどの非水性希釈剤、1種以上の多価アルコール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール)、油性担体、または前述のものの任意の組合せを含有してもよい。
【0046】
上記注射用置換β-シクロデキストリン-ガナキソロン製剤は、さらに、保存剤を含む。該保存剤は、細菌の増殖を阻害するために用いられてよい。非経口製剤に適した保存剤には、ベンジルアルコール、クロロブタノール、2-エトキシエタノール、パラベン(メチル、エチル、プロピル、ブチル、およびその組合せ)、安息香酸、ソルビン酸、クロルヘキシデン、フェノール、3-クレゾール、チメロサール、およびフェニル水銀塩が含まれる。
【0047】
上記注射用置換β-シクロデキストリン-ガナキソロン製剤は、CAPTISOLのような置換β-シクロデキストリンに包接されたガナキソロンの望ましい可溶化および流動性を確実にするため、コーティング剤または界面活性剤を任意選択で含有してもよい。
【0048】
界面活性剤には、レシチン(リン脂質類)、トリオレイン酸ソルビタンおよび他のソルビタンエステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類(例えば、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(TWEEN20、ポリソルベート20としても公知、CAS登録番号9005-64-5)およびモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(TWEEN80、ICI Speciality Chemicals、ポリソルベート80としても公知(CAS登録番号9005-65-6)などの市販のTWEEN)、ポロキサマ類(例えば、ポロキサマ188(PLURONIC F68)およびポロキサマ338(PLURONIC F108)、これらはエチレンオキシドとプロピレンオキシドからなるブロック共重合体である、ならびにポロキサマ407、これはプロピレングリコールと2ブロックのポリエチレングリコールからなるトリブロック共重合体である)、硫酸コレステロールナトリウムまたは他のコレステロール塩、ならびにデオキシコール酸ナトリウム、コール酸ナトリウム、グリコール酸(glycholate)ナトリウム、デオキシコール酸の塩、グリコール酸(glycholic acid)の塩、ケノデオキシコール酸の塩、およびリトコール酸の塩などの胆汁酸塩などの化合物が含まれる。
【0049】
ある実施形態において、本開示は、(1)ガナキソロン、2~約8mg/mL、(2)CAPTISOL、約100~約400mg/mL、(3)pHを約7.0~約7.5に調整するためのリン酸緩衝液、および(4)水を含有する注射用置換β-シクロデキストリン-ガナキソロン製剤を含む。該注射用β-シクロデキストリン-ガナキソロン製剤は、例えば、0.2μm濾過膜を用い、無菌濾過してもよい。該注射用β-シクロデキストリン-ガナキソロン製剤は、保存および復元のため、オートクレーブ処理または凍結乾燥を行ってもよい。
【0050】
本開示は、本開示に記載されており、さらに下記要件を満たす任意の注射用β-シクロデキストリン-ガナキソロン製剤を含む。安定した製剤が得られる限り、下記要件のいずれも組合せ可能である。開示されている注射用β-シクロデキストリン-ガナキソロン注射用製剤のいずれにおいても、ガナキソロンおよびスルホブチルエーテル-β-シクロデキストリンは、包接複合体の形態である。
【0051】
(a)上記注射用β-シクロデキストリン-ガナキソロン製剤は、界面活性剤を含有し、該界面活性剤は、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポロキサマ、コレステロール塩、または胆汁酸塩である。
【0052】
(b)上記注射用β-シクロデキストリン-ガナキソロン製剤は、界面活性剤約0.05~約15重量%である。
【0053】
(c)上記注射用β-シクロデキストリン-ガナキソロン製剤は、界面活性剤を含有し、ここで、該界面活性剤はポリソルベート80である。
【0054】
(d)上記注射用β-シクロデキストリン-ガナキソロン製剤は、緩衝液を含有する。
【0055】
(e)上記注射用β-シクロデキストリン-ガナキソロン製剤は、pHが約6.8~約7.6の緩衝液を含有する。
【0056】
(f)上記注射用β-シクロデキストリン-ガナキソロン製剤は、リン酸緩衝液を含有する。特定の実施形態において、該リン酸緩衝液は、リン酸緩衝生理食塩水である。該緩衝液は、一塩基性リン酸緩衝液と二塩基性リン酸緩衝液の組合せであり、ここで、各リン酸緩衝液の濃度は2mM~50mMである。特定の実施形態において、該リン酸緩衝液は、一塩基性リン酸緩衝液と二塩基性リン酸緩衝液の組合せであり、ここで、各リン酸緩衝液の濃度は2mM~50mMである。
【0057】
(g)上記注射用β-シクロデキストリン-ガナキソロン製剤は、ガナキソロンを2mg/mL~8mg/mLの濃度で含有し、ガナキソロンに対するスルホブチルエーテル-β-シクロデキストリンのw/w比は、約52:1~約90:1、または約52:1~約80:1、または約55:1~約70:1、または少なくとも55:1の範囲内であり、該製剤は、緩衝液を含有して6.7~7.3のpHを有し、また該製剤は、0.5~15重量%の界面活性剤、または約1~約10重量%の界面活性剤、または約10重量%の界面活性剤を含有する。
【0058】
(h)上記注射用スルホブチルエーテルβ-シクロデキストリン-ガナキソロン製剤は、ガナキソロンを1mg/mL~5mg/mLの濃度で含有し、スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリンの重量%は、20%~40%、または25%~35%、または約30%スルホブチルエーテルβ-シクロデキストリンであり、また該製剤は、次の少なくとも1つを5%~20%、5%~15%、または約10%(重量%)で含有する:界面活性剤、エタノール、グリセリン、またはプロピレングリコール。特定の実施形態において、本製剤は、レシチン(リン脂質類)、トリオレイン酸ソルビタンおよび他のソルビタンエステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類(例えば、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタンおよびモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンなどの市販のTWEEN)、ポロキサマ類(例えば、ポロキサマ188(PLURONIC F68)およびポロキサマ338(PLURONIC F108)、これらはエチレンオキシドとプロピレンオキシドからなるブロック共重合体である、ならびにポロキサマ407、これはプロピレングリコールと2ブロックのポリエチレングリコールからなるトリブロック共重合体である)、硫酸コレステロールナトリウムまたは他のコレステロール塩、ならびに胆汁酸塩から選択される界面活性剤を含有してもよい。
【0059】
(i)上記注射用β-シクロデキストリン-ガナキソロン製剤は、保存剤を含有する。特定の実施形態において、該保存剤は、ベンジルアルコール、クロロブタノール、2-エトキシエタノール、パラベン(メチル、エチル、プロピル、ブチル、およびその組合せを含む)、安息香酸、ソルビン酸、クロルヘキシデン、フェノール、3-クレゾール、チメロサール、またはフェニル第二水銀塩である。
【0060】
(j)上記スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリンは、包接複合体の形態であり、ここで、スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリン濃度が約30%w/vの水中、該複合体から得られるガナキソロンの量を測定した場合、該包接複合体から、少なくとも2.0mg/mLのガナキソロンが得られる。
【0061】
(k)上記注射用β-シクロデキストリン-ガナキソロン製剤は、エタノール、例えば、1~20%(体積/体積)、5~15%(v/v)、または約10%エタノール(v/v)を含有する。
【0062】
(l)上記注射用β-シクロデキストリン-ガナキソロン製剤は、湿潤剤を含有する。特定の実施形態において、上記可溶化剤は、例えば、1~20%(体積/体積)、5~15%(v/v)、または約10%(v/v)のグリセリンまたはプロピレングリコールである。
【0063】
[凍結乾燥β-シクロデキストリン-ガナキソロン製剤]
本開示は、本明細書中に開示されているすべての製剤の凍結乾燥剤形を含む。
【0064】
本開示は、CAPTISOLのような置換-β-シクロデキストリンとガナキソロンの包接複合体、および薬学的に許容される担体を含有する注射用置換β-シクロデキストリンガナキソロン製剤を提供する。特定の実施形態において、該置換β-シクロデキストリンガナキソロン製剤は、水に溶解し、投与前に水溶液とする凍結乾燥剤形である。本開示は、該凍結乾燥ガナキソロン製剤が、水で復元することによって澄明な溶液を得ることができる実施形態を含む。該凍結乾燥剤形は、さらに、増量剤、安定剤、緩衝液(またはpH調整剤)、張度調整剤、または前述のものの任意の組合せを含有してもよい。特定の実施形態において、該凍結乾燥製剤は、1種以上の界面活性剤、緩衝液、および保存剤を含有する。
【0065】
増量剤は、低濃度の上記有効成分、または本事例の場合、低濃度の上記包接複合体を有す、凍結乾燥製剤にとって有用である。増量剤には、マンニトール、ラクトース、スクロース、トレハロース、ソルビトール、グルコース、ラフィノース、グリシン、ヒスチジン、ポリエチレングリコール(PEG)、およびポリビニルピロリドン(PVP)が含まれる。
【0066】
凍結乾燥中に活性薬剤から水和殻が除去されると、不安定になる可能性がある。特定の実施形態において、上記凍結乾燥剤形は、安定剤を含有する。安定剤には、以下に限定されないが、研究室の環境で測定され得る機械的、化学的、および温度ストレスを含め、一定期間にわたり該製剤の望ましい性状を維持する物質が含まれる。このような性状には、ラベルに表記された力価に一致する濃度が得られ、純度を維持する安定した粒径または均質性が含まれる。
【0067】
適当な安定剤には、スクロース、トレハロース、グルコース、およびラクトースなどの糖類が含まれる。
【0068】
[治療法]
本開示は、てんかん重積状態、難治性てんかん重積状態、超難治性てんかん重積状態、女性および小児に発症するPCDH19関連てんかん、および他の発作性障害を治療する方法であって、これらの発作性障害のいずれかを発症している患者に有効量の上記注射用置換β-シクロデキストリン-ガナキソロン製剤を投与することを含む方法を含む。
【0069】
上記注射用置換β-シクロデキストリン-ガナキソロン製剤で治療してもよい発作性障害には、てんかん重積状態、例えば、痙攣性てんかん重積状態、例えば、早期のてんかん重積状態、既存の(established)てんかん重積状態、難治性てんかん重積状態、超難治性てんかん重積状態、例えば、超難治性全般性てんかん重積状態;非痙攣性てんかん重積状態、例えば、全般性てんかん重積状態、複雑部分発作重積状態;発作、例えば、急性反復性発作、群発発作、点頭痙攣、レノックス-ガストー症候群、ウエスト症候群、女性および小児に発症するPCDH19関連てんかん、および月経随伴性てんかんが含まれる。
【0070】
上記注射用置換β-シクロデキストリン-ガナキソロン製剤は、さらに、低血糖、電解質失調、高熱、脳の感染症(脳炎、マラリア、髄膜炎、トキソプラズマ症、またはアメーバ感染症による脳の感染症など)、処方薬に対する有害反応、またはアルコールもしくは薬物の過剰摂取により引き起こされた発作などの誘発性発作の治療に使用されてもよい。
【0071】
本開示は、さらに、外傷性脳損傷および脳卒中を治療するために注射用置換β-シクロデキストリン-ガナキソロン製剤を使用する方法であって、最近外傷性脳損傷を負ったまたは最近脳卒中を発症した患者に有効量の該製剤を投与することを含む方法を含む。
【0072】
本開示は、さらに、神経変性障害から生じる発作を治療する方法を含む。このような神経変性障害には、パーキンソン病、アルツハイマ病、筋萎縮性側索硬化症、およびハンチントン病が含まれる。本開示は、多発性硬化症などの炎症性障害から生じる発作を治療する方法を含む。本開示は、ニーマンピック病C型、テイサックス病、バッテン病、サンドホフ病、およびゴーシェ病を含むリソソーム蓄積症から生じる発作性障害を治療する方法を含む。
【0073】
治療法には、発作、外傷性脳損傷、または脳卒中を発症している患者を、注射用置換β-シクロデキストリン-ガナキソロン製剤の1回の注射投与(ボーラス用量)によって治療することが含まれる。該1回の注射は、筋肉内または静脈内投与であってもよい。該1回の注射の投与量は、約1mg/kg~約20mg/kg、約2mg/kg~約15mg/kg、約2mg/kg~約10mg/kg、または約2mg/kg~約8mg/kgであってもよい。治療法には、さらに、1~10日間の期間にわたり、該注射用β-シクロデキストリン-ガナキソロン製剤を複数回注射投与することが含まれる。該注射は、1~24時間の間隔で投与されてもよい。該注射用置換β-シクロデキストリン-ガナキソロン製剤を、1時間、2時間、4時間、6時間、8時間、12時間、または24時間毎に注射する投与スケジュールは、本明細書に含まれている。該注射用置換β-シクロデキストリン-ガナキソロン製剤を、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10日間注射する投与スケジュールは、本明細書に含まれている。
【0074】
治療法には、発作、外傷性脳損傷、または脳卒中を発症している患者を、前段落に記載されているとおり、1~10日間の期間にわたる、注射用置換β-シクロデキストリン-ガナキソロン製剤の1回以上のボーラス用量投与、続く該注射用置換β-シクロデキストリン-ガナキソロン製剤の静脈内注入によって治療することが含まれる。特定の実施形態において、該ボーラス用量は、約1~約30、約1~約15、約1~約10、または約1~約5、または約5分間の期間にわたり投与され、続いて、1,2,3,4、または5時間以内に静脈内注入が開始される。
【0075】
いくつかの実施形態において、先にボーラス用量を投与し、または投与せずに、注射用置換β-シクロデキストリン-ガナキソロン製剤は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10日間連続で静脈内注入投与として投与される。該注入投与は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10mg/kg/時間の速度、または約1mg/kg/時間~約10mg/kg/時間もしくは2mg/kg/時間~約8mg/kg/時間の範囲内の速度で施されてもよい。
【0076】
いくつかの実施形態において、(ボーラス用量の投与、非投与にかかわらず)上記注入投与後は、第1段階の減量投与量、および任意選択で第2段階の減量投与量、任意選択で第3段階の減量投与量での注入投与が行われる。いくつかの実施形態において、該第1段階の投与量は、該注入投与量の95%、90%、85%、80%、75%、70%、65%、60%、55%、50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、または5%である。いくつかの実施形態において、該第1段階の投与量は、該注入投与量の95~50%、75~50%、85~50%、90~50%、80~50%、または75~100%の間である。ある実施形態において、該第1段階の投与量は、該注入投与量の75%である。いくつかの実施形態において、該第2段階の投与量は、該第1段階の減量投与量の95%、90%、85%、80%、75%、70%、65%、60%、55%、50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、または5%である。いくつかの実施形態において、該第2段階の投与量は、該第1段階の減量投与量の95~30%、75~30%、85~30%、60~30%、70~30%、50~30%、または50~40%の間である。ある実施形態において、該第2段階の投与量は、該注入投与量の50%である。いくつかの実施形態において、該第3段階の投与量は、該第2段階の注入投与量の95%、90%、85%、80%、75%、70%、65%、60%、55%、50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、または5%である。いくつかの実施形態において、該第3段階の投与量は、該第2段階の減量投与量の50~5%、40~5%、30~5%、25~5%、25~10%、25~20%、または25~40%の間である。ある実施形態において、該第3段階の減量投与量は、該注入投与量の25%である。
【0077】
本開示は、発作性障害(ここで、該発作性障害は、てんかん重積状態、難治性てんかん重積状態、超難治性てんかん重積状態、または女性および小児に発症するPCDH19関連てんかんである)を治療する方法であって、患者に有効量の上記ガナキソロン/スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリン製剤を投与することを含む方法を含む。
【0078】
本開示は、発作性障害、脳卒中、または外傷性脳損傷を治療する方法であって、患者に有効量の上記ガナキソロン/スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリン製剤を投与することを含み、ここで、ガナキソロンの投与量が、約1mg/kg~約200mg/kgである方法を含む。
【0079】
特定の実施形態において、上記ガナキソロン/スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリン製剤は、筋肉内または静脈内に投与される。
【0080】
本開示は、上記ガナキソロン/スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリン製剤を、該ガナキソロン製剤の1回のボーラス用量として上記患者に投与する実施形態を含む。特定の実施形態において、該1回のボーラス用量によって、該患者におけるガナキソロンの血漿Cmaxが約100ng/mL~約1000ng/mLとなるために十分な量のガナキソロンが供給される。
【0081】
本開示は、上記ガナキソロン/スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリン製剤を、ボーラス用量として投与し、該ボーラス用量によって、該患者におけるガナキソロンの血漿Cmaxが約600ng/mL~約900ng/mLとなるために十分な量のガナキソロンが供給される実施形態を含む。
【0082】
本開示は、上記ガナキソロン/スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリン製剤を、ボーラス用量として投与し、該ボーラス用量を10分未満で投与し、Cmaxが投与完了後1時間以内に生じる実施形態を含む。
【0083】
本開示は、上記ガナキソロン/スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリン製剤を、1回のボーラス用量として投与し、該1回のボーラス用量が約1mg/kg~約20mg/kgのガナキソロンを含有する実施形態を含む。または、任意選択で該1回のボーラス用量は、約2mg/kg~約15mg/kgのガナキソロン、または約4mg/kg~約10mg/kgのガナキソロン、または約1mg/kg~約30mg/kgのガナキソロンを含有する。
【0084】
本開示は、上記ガナキソロン/スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリン製剤の複数回のボーラス用量を上記患者に投与する実施形態を含む。特定の実施形態において、該複数回のボーラス用量は、1~10日間にわたり、1~24時間の間隔で投与されてもよい。特定の実施形態において、各ボーラス用量によって、該患者におけるガナキソロンの血漿Cmaxが約100ng/mL~約1000ng/mLとなるために十分な量のガナキソロンが供給される。特定の実施形態において、ボーラス用量間の間隔は、約10~約24時間であり、最初のCmaxに達した時点から、ガナキソロン血漿濃度は、ボーラス用量間のいずれの時点でも100ng/mLを下回らない。特定の実施形態において、ボーラス用量間の間隔は、20~24時間であり、最初のCmaxに達した時点から、上記患者のガナキソロン血漿濃度は、最初のCmaxの25%を下回らない。特定の実施形態において、各ボーラス用量は、約1mg/kg~約20mg/kgのガナキソロンを含有する。または、任意選択で該1回のボーラス用量は、約2mg/kg~約15mg/kgのガナキソロン、または約4mg/kg~約10mg/kgのガナキソロン、または約1mg/kg~約30mg/kgのガナキソロンを含有する。
【0085】
特定の実施形態において、上記方法は、最初のボーラス用量を投与し、または投与せずに、上記患者に上記ガナキソロン/スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリン製剤の注入を施すことを含む。特定の実施形態において、上記注入は、最初のボーラス用量を投与せずに、1~10日間連続で、1~10mg/kg/時間の速度で施される。
【0086】
特定の実施形態において、上記方法は、約1mg/kg~約20mg/kgのガナキソロンを含有する上記ガナキソロン/スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリン製剤の最初のボーラス用量を投与し、続いて、24時間以内に該ガナキソロン製剤の注入を、1~10日間連続で、1~10mg/kg/時間の速度で施すことを含む。
【0087】
特定の実施形態において、上記方法は、上記ガナキソロン/スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリン製剤の最初のボーラス用量を投与し、続いて、注入投与を行い、ここで、該最初のボーラス用量によって、該患者におけるガナキソロンの最初の血漿Cmaxが約100ng/mL~約1000ng/mLとなるために十分な量のガナキソロンが供給され、続く注入投与が完了するまで、上記患者のガナキソロン血漿濃度は、該最初のCmaxの25%を下回らないことを含む。
【0088】
特定の実施形態において、上記方法は、上記ガナキソロン/スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリン製剤の最初のボーラス用量を投与し、ここで、該最初のボーラス用量によって、上記患者におけるガナキソロンの最初の血漿Cmaxが約100ng/mL~約1000ng/mLとなるために十分な量のガナキソロンが供給され、次に、該患者におけるガナキソロンの血漿濃度がCmaxの少なくとも40%となるために十分な一定量の該ガナキソロン製剤の注入を該患者に施し、続いて、漸減用量でガナキソロンの注入を施し、これによって、該注入が完了した際に該患者におけるガナキソロンの血漿濃度は、Cmaxの20%を下回ることを含む。
【0089】
[併用療法]
本開示は、ガナキソロンが唯一の活性薬剤である実施形態およびガナキソロンを1種以上の別の活性薬剤と組み合わせて投与する実施形態を含む。別の活性薬剤と組み合わせて使用する場合、ガナキソロンと該別の活性薬剤は、同じ製剤中に組み合わせてもよく、または個々に投与されてもよい。該別の活性薬剤の投与中にガナキソロンを投与してもよく(同時投与)または該別の活性薬剤の投与前または投与後にガナキソロンを投与してもよい(連続投与)。
【0090】
本開示は、上記別の活性薬剤が抗痙攣薬である実施形態を含む。抗痙攣薬には、GABA受容体モジュレータ、ナトリウムチャネル遮断薬、GAT-1 GABA輸送体モジュレータ、GABAアミノ基転移酵素モジュレータ、電位依存性カルシウムチャネル遮断薬、およびペルオキシソーム増殖因子活性化アルファモジュレータが含まれる。
【0091】
本開示は、上記患者に麻酔薬または鎮静剤をガナキソロンと組み合わせて投与する実施形態を含む。上記麻酔薬または鎮静剤は、医学的に昏睡を誘発するために十分な濃度または全身麻酔を誘発するために有効な濃度など、上記患者の意識を消失させるために十分な濃度で投与されてもよい。または、該麻酔薬または鎮静剤は、意識消失を誘発するために十分ではないが、鎮静のために有効なより少ない投与量で投与されてもよい。
【0092】
患者にプロポフォール、ペントバルビタール、またはチオペンタールなどの麻酔薬を1回投与し、一時的な昏睡または深い意識消失状態を生じる際に、医学的に誘発された昏睡が生じる。全身麻酔は、手術中に疼痛を認識しない十分な意識消失を引き起こすため、特定の医薬品を用いた治療である。医学的に誘発された昏睡または全身麻酔のために使用される薬剤には、バルビツール酸系および非バルビツール酸系麻酔薬を含む、吸入麻酔薬および麻酔薬が含まれる。
【0093】
吸入麻酔薬には、デスフルラン、エンフルラン、塩化エチル、ハロタン、イソフルラン、メトキシフルラン、セボフルレン、およびトリクロロエチレンが含まれる。
【0094】
静注用非バルビツール酸系麻酔薬には、アトラクリウム、シサトラクリウム、エトミデート、ケタミン、プロポフォール、およびロクロニウムが含まれる。
【0095】
バルビツール酸系には、アモバルビタール、メトヘキシタール、ペントバルビタール、フェノバルビタール、セコバルビタール、チアミラール、およびチオペンタールが含まれる。
【0096】
ベンゾジアゼピン系は、抗痙攣薬および麻酔薬のいずれとしても使用される。麻酔薬として有用なベンゾジアゼピン系には、ジアゼパム、フルニトラゼパム、ロラゼパム、およびミダゾラムが含まれる。
【0097】
本開示は、無感覚を誘発するために、プロポフォールをガナキソロンと組み合わせて投与することを含む。プロポフォールは、用量範囲または0.5~50mg/kgの範囲の投与量で投与される。無感覚は、10~50mg/kgの最初のボーラス用量によって誘発され、続いて、追加の断続的なボーラス用量または10~50mg/kgによって無感覚を維持する。無感覚は、さらに、プロポフォール3~18mg/kg/分の注入によって維持されてもよい。
【0098】
本開示は、ペントバルビタールナトリウムを静脈内または筋肉内注射によってガナキソロンと組み合わせて投与し、無感覚を誘発することを含む。ペントバルビタールは、成人に対して1回の100~500mgもしくは100~200mgの筋肉内もしくは静脈内注射として投与されてもよく、または小児患者に対して1回の2~6mg/kgのIMもしくはIV注射として投与されてもよい。てんかん重積状態患者にペントバルビタールを高用量で投与し、昏睡を誘発してもよく、その後、ガナキソロンをペントバルビタールと組み合わせて投与し、難治性の発作を治療してもよい。昏睡を誘発するために使用されたペントバルビタール投与量には、1~2時間にわたって投与する5~15mg/kgまたは10~35mg/kgの負荷投与量、続いて、1mg/kg/時間~5mg/kg/時間で12~48時間投与する維持投与量、発作が消失した時点から12時間毎に0.25~0.5mg/kg/時間ずつ漸減する投与量が含まれる。
【0099】
本開示は、チオペンタールナトリウムをガナキソロンと組み合わせて投与することを含む。チオペンタールは、3~5mg/kgのボーラスとして投与され、続いて、発作が消失するまで3~5分毎に1~2mg/kgの追加のボーラス投与が可能であり、最大総投与量は10mg/kgまでとする。チオペンタールが最大ボーラス用量10mg/kgに到達した後、チオペンタールは、3~5mg/kg/時間での注入が可能である。
【0100】
本開示は、ミダゾラムをガナキソロンと組み合わせて投与することを含む。ミダゾラムは、0.5mg/kg~5mg/kgの負荷投与量として投与され、続いて、1~5μg/kg/時間の注入が可能である。
【0101】
昏睡、無感覚、または鎮静を誘発するために別の活性薬剤を投与する各実施形態において、ガナキソロンは、注射用置換-β-シクロデキストリンガナキソロン製剤として投与され、同時にまたは連続して別の活性薬剤も投与され、本明細書に明記されるガナキソロン投与のための投与スケジュールのいずれかに従って投与される。
【0102】
本開示の注射用置換-β-シクロデキストリンガナキソロン製剤は、別の抗痙攣薬と併用投与してもよい。抗痙攣薬は、多くの薬剤クラスを含み、ガナキソロンと組み合わせて使用してもよい昏睡を誘発する麻酔薬および鎮静剤とある程度重複する。本開示の注射用置換-β-シクロデキストリンガナキソロン製剤と組み合わせて使用してもよい抗痙攣薬には、パラアルデヒドなどのアルデヒド類;スチリペントールなどの芳香族アリルアルコール類;メチルフェノバルビタールおよびバルベキサクロンに加えて上記のものも含むバルビツール酸系;アルプラゾラム、ブレタゼニル、ブロマゼパム、ブロチゾラム、クロルジアゼポキシド、シノラゼパム、クロナゼパム、クロラゼプ酸、クロバザム、クロチアゼパム、クロキサゾラム、デロラゼパム、ジアゼパム、エスタゾラム、エチゾラム、ロフラゼプ酸エチル、フルニトラゼパム、フルラゼパム、フルトプラゼパム、ハラゼパム、ケタゾラム、ロプラゾラム、ロラゼパム、ロルメタゼパム、メダゼパム、ミダゾラム、ニメタゼパム、ニトラゼパム、ノルダゼパム、オキサゼパム、フェネナゼパム、ピナゼパム、プラゼパム、プレマゼパム、ピラゾラム、クアゼパム、テマゼパム、テトラゼパム、およびトリアゾラムを含むベンゾジアゼピン系;臭化カリウムなどの臭化物類;カルバマゼピン、オキシカルバゼピン、およびエスリカルバゼピン酢酸塩などのカルボキサミド類;バルプロ酸、バルプロ酸ナトリウム、およびジバルプロエクスナトリウムなどの脂肪酸類;トピラマートなどのフルクトース誘導体類;ガバペンチンおよびプレガバリンなどのGABA類似体類、エトトイン、フェニトイン、メフェニトイン、およびホスフェニトインなどのヒダントイン類;アロプレグナノロンなどの他の神経ステロイド、パラメタジオン、トリメタジオン、およびエタジオンなどのオキサゾリジンジオン、ベクラミドなどのプロピオン酸系;プリミドンなどのピリミジンジオン類、ブリバラセタム、レベチラセタム、およびセレトラセタムなどのピロリジン類、エトスクシミド、ペンスクシミド、およびメスクシミドなどのスクシンイミド類;アセタゾラミド、スルチアム、メタゾラミド、およびゾニサミドなどのスルホンアミド類;ラモトリギンなどのトリアジン系、フェネツリドおよびフェナセミドなどの尿素類;フェルバメートなどのNMDA拮抗剤類、ならびに、バルプロミドおよびバルノクタミドなどのバルプロイルアミド類;ならびにペランパネル。特定の実施形態において、本開示は、注射用スルホブチルエーテルβ-シクロデキストリン-ガナキソロン製剤をジアゼパムと組み合わせて使用することを含む。ジアゼパムは、注射用スルホブチルエーテルβ-シクロデキストリン-ガナキソロンと組み合わせてもよく、または個別の剤形で投与されてもよい。例えば、本開示は、1mg/mL~10mg/mLのガナキソロン、25%~35%(重量%)のスルホブチルエーテルβ-シクロデキストリン、および1mg/mL~40mg/mLのジアゼパム、または約2mg/mL~約20mg/mLのジアゼパムを含有する注射用スルホブチルエーテルβ-シクロデキストリン-ガナキソロン製剤を含む。
(1)a)包接複合体中にガナキソロンおよびスルホブチルエーテル-β-シクロデキストリン;および
b)水
を含有する、水性注射用ガナキソロン製剤。
(2)(1)に記載の製剤であって、前記ガナキソロンおよびスルホブチルエーテル-β-シクロデキストリンを含む複合体は、ガナキソロン:スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリンが1:1の複合体を含む、製剤。
(3)(1)または(2)に記載の製剤であって、前記ガナキソロンの濃度が、約0.1mg/mL~約15mg/mLである、製剤。
(4)(1)から(3)のいずれか1つに記載の製剤であって、さらに、前記製剤中0.5%~1.5%の濃度の塩化ナトリウムを含有する、製剤。
(5)(1)から(4)のいずれか1つに記載の製剤であって、前記ガナキソロンに対する前記スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリンのw/w比が、約52:1以上である、製剤。
(6)(1)から(4)のいずれか1つに記載の製剤であって、前記ガナキソロンに対する前記スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリンのw/w比が、約52:1~約80:1の範囲内である、製剤。
(7)(6)に記載の製剤であって、前記ガナキソロンに対する前記スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリンのw/w比が、約55:1である、製剤。
(8)(1)から(7)のいずれか1つに記載の製剤であって、5mg/mL~800mg/mLの前記スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリンを含有する、製剤。
(9)(1)から(8)のいずれか1つに記載の製剤であって、界面活性剤を含有する、製剤。
(10)(9)に記載の製剤であって、前記界面活性剤が、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポロキサマ、コレステロール塩、または胆汁酸塩である、製剤。
(11)(10)に記載の製剤であって、前記製剤は、前記界面活性剤が約0.5~約15重量%である、製剤。
(12)(11)に記載の製剤であって、前記界面活性剤が、ポリソルベート80である、製剤。
(13)(1)から(12)のいずれか1つに記載の製剤であって、pHが、約2.5~11.0の範囲内である、製剤。
(14)(1)から(13)のいずれか1つに記載の製剤であって、さらに、緩衝液を含有すること、製剤。
(15)(14)に記載の製剤であって、pHが、約6.8~約7.6である、製剤。
(16)(14)または(15)に記載の製剤であって、前記緩衝液が、リン酸緩衝液である、製剤。
(17)(16)に記載の製剤であって、前記緩衝液が、リン酸緩衝生理食塩水である、製剤。
(18)(16)に記載の製剤であって、前記緩衝液が、一塩基性リン酸緩衝液と二塩基性リン酸緩衝液の組合せであって、ここで、それぞれのリン酸緩衝液の濃度が、2mM~50mMである、製剤。
(19)(1)に記載の製剤であって、
前記ガナキソロンの濃度が2mg/mL~8mg/mLであり、
前記ガナキソロンに対する前記スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリンのw/w比が、約52:1~約90:1の範囲内であり;
前記製剤が、緩衝液を含有し、pHが6.7~7.3であり;
前記製剤が、0.5~15重量%の界面活性剤を含有する;
製剤。
(20)(1)に記載の製剤であって、
前記ガナキソロンの濃度が1mg/mL~5mg/mLであり;
前記スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリンの重量パーセントが25%~35%であり;
前記製剤が、界面活性剤、エタノール、グリセリン、またはプロピレングリコールうちの少なくとも1つを5%~15%(重量%)含有する;
製剤。
(21)(1)から(19)のいずれか1つに記載の製剤であって、さらに、保存剤を含有する、製剤。
(22)(20)に記載の製剤であって、前記保存剤が、ベンジルアルコール、クロロブタノール、2-エトキシエタノール、パラベン(メチル、エチル、プロピル、ブチル、およびその組合せを含む)、安息香酸、ソルビン酸、クロルヘキシデン、フェノール、3-クレゾール、チメロサール、またはフェニル第二水銀塩である、製剤。
(23)(22)に記載の製剤であって、前記包接複合体が、スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリンの濃度が約30%w/vの水中、前記複合体から得られるガナキソロンの量を測定した場合、少なくとも2.0mg/mLのガナキソロンをもたらす、製剤。
(24)ガナキソロンおよびスルホブチルエーテル-β-シクロデキストリンを含有する凍結乾燥ガナキソロン製剤であって、前記ガナキソロン製剤が、ガナキソロン1.0%~1.5%である、凍結乾燥ガナキソロン製剤。
(25)(1)から(23)のいずれか1つに記載のガナキソロン製剤を含む、凍結乾燥ガナキソロン製剤。
(26)(25)に記載の凍結乾燥ガナキソロン製剤であって、さらに、界面活性剤、緩衝液、および保存剤のうち1種以上を含有する、凍結乾燥ガナキソロン製剤。
(27)(24)から(26)のいずれか1つに記載の凍結乾燥ガナキソロン製剤であって、前記凍結乾燥ガナキソロン製剤が、水で復元することによって澄明な溶液を得ることができる、凍結乾燥ガナキソロン製剤。
(28)(27)に記載の凍結乾燥ガナキソロン製剤であって、さらに、増量剤を含有する、凍結乾燥ガナキソロン製剤。
(29)(28)に記載の凍結乾燥ガナキソロン製剤であって、前記増量剤が、マンニトール、ラクトース、スクロース、トレハロース、ソルビトール、グルコース、ラフィノース、グリシン、ヒスチジン、ポリエチレングリコール(PEG)、またはポリビニルピロリドン(PVP)である、凍結乾燥ガナキソロン製剤。
(30) 発作性障害、脳卒中、または外傷性脳損傷の患者を治療する方法であって、(1)から(29)のいずれか1つに記載のガナキソロン製剤を治療上有効な量で投与することを含む、方法。
(31)(30)に記載の方法であって、前記発作性障害が、てんかん重積状態、難治性てんかん重積状態、超難治性てんかん重積状態、または女性および小児に発症するPCDH19関連てんかんである、方法。
(32)(30)または(31)に記載の方法であって、前記ガナキソロンの投与量が、約1mg/kg~約200mg/kgである、方法。
(33)(30)から(32)のいずれか1つに記載の方法であって、前記ガナキソロン製剤を、筋肉内または静脈内に投与する、方法。
(34)(30)から(33)のいずれか1つに記載の方法であって、前記患者に前記ガナキソロン製剤の1回のボーラス用量を投与することを含む、方法。
(35)(34)に記載の方法であって、前記ボーラス用量によって、前記患者におけるガナキソロンの血漿C max が約100ng/mL~約1000ng/mLとなるために十分な量のガナキソロンが供給される、方法。
(36)(34)に記載の方法であって、前記ボーラス用量によって、前記患者におけるガナキソロンの血漿C max が約600ng/mL~約900ng/mLとなるために十分な量のガナキソロンが供給される、方法。
(37)(34)から(36)のいずれか1つに記載の方法であって、前記ボーラス用量を10分未満で投与し、C max が投与完了後1時間以内に生じる、方法。
(38)(34)に記載の方法であって、前記1回のボーラス用量が、約1mg/kg~約20mg/kgのガナキソロンを含有する、方法。
(39)(30)から(33)のいずれか1つに記載の方法であって、前記患者に前記ガナキソロン製剤の複数回のボーラス用量を投与することを含む、方法。
(40)(39)に記載の方法であって、前記複数回のボーラス用量は、1~10日間にわたり、1~24時間の間隔で投与される、方法。
(41)(39)に記載の方法であって、各ボーラス用量によって、前記患者におけるガナキソロンの血漿C max が約100ng/mL~約1000ng/mLとなるために十分な量のガナキソロンが供給される、方法。
(42)(41)に記載の方法であって、前記ボーラス用量間の間隔は、約10~約24時間であり、最初のC max に達した時点から、前記ガナキソロンの血漿濃度は、ボーラス用量間のいずれの時点でも100ng/mLを下回らない、方法。
(43)(41)に記載の方法であって、前記ボーラス用量間の間隔は、約20~約24時間であり、最初のC max に達した時点から、前記患者の前記ガナキソロンの血漿濃度は、ボーラス用量間のいずれの時点でも最初のC max の25%を下回らない、方法。
(44)(39)から(43)のいずれか1つに記載の方法であって、各ボーラス用量が、約1mg/kg~約20mg/kgの前記ガナキソロンを含有する、方法。
(45)(30)から(32)のいずれか1つに記載の方法であって、最初のボーラス用量を投与し、または投与せずに、前記患者に前記ガナキソロン製剤の静脈内注入を施すことを含む、方法。
(46)(45)に記載の方法であって、最初のボーラス用量を投与せずに、前記静脈内注入を、1~10日間連続で、1~10mg/kg/時間の速度で施すことを含む、方法。
(47)(45)に記載の方法であって、約1mg/kg~約20mg/kgのガナキソロンの最初のボーラス用量を投与し、続いて、24時間以内に前記ガナキソロン製剤の静脈内注入を、1~10日間連続で、1~10mg/kg/時間の速度で施すことを含む、方法。
(48)(47)に記載の方法であって、前記最初のボーラス用量によって、前記患者におけるガナキソロンの最初の血漿C max が約100ng/mL~約1000ng/mLとなるために十分な量のガナキソロンが供給され、前記注入が完了するまで、前記患者の前記ガナキソロンの血漿濃度は、最初のC max の25%を下回らない、方法。
(49)(47)に記載の方法であって、前記最初のボーラス用量によって、前記患者における前記ガナキソロンの最初の血漿C max が約100ng/mL~約1000ng/mLとなるために十分な量のガナキソロンが供給され、次に、前記患者における前記ガナキソロンの血漿濃度がC max の少なくとも40%となるために十分な一定量の前記ガナキソロン製剤の静脈内注入を前記患者に施し、続いて、漸減用量で前記ガナキソロン製剤の静脈内注入を施し、これによって、前記静脈内注入の投与が完了した際に前記患者における前記ガナキソロンの血漿濃度は、C max の20%を下回る、方法。
(50)(30)から(49)のいずれか1つに記載の方法であって、前記ガナキソロン製剤が、第1の活性薬剤であり、少なくとも1種の別の活性薬剤と同時にまたは連続して投与される、方法。
(51)(50)に記載の方法であって、前記少なくとも1種の別の活性薬剤が、抗痙攣薬または麻酔薬/鎮静剤である、方法。
(52)(51)に記載の方法であって、前記少なくとも1種の別の活性薬剤が、GABA 受容体モジュレータ、ナトリウムチャネル遮断薬、GAT-1 GABA輸送体モジュレータ、GABAアミノ基転移酵素モジュレータ、電位依存性カルシウムチャネル遮断薬、およびペルオキシソーム増殖因子活性化アルファモジュレータから選択される抗痙攣薬である、方法。
(53)(51)に記載の方法であって、前記少なくとも1種の別の活性薬剤が、吸入麻酔薬(デスフルラン、エンフルラン、塩化エチル、ハロタン、イソフルラン、メトキシフルラン、セボフルレン、およびトリクロロエチレンを含む)、静注用非バルビツール酸系麻酔薬(アトラクリウム、シサトラクリウム、エトミデート、ケタミン、プロポフォール、およびロクロニウムを含む)、バルビツール酸系麻酔薬(アモバルビタール、メトヘキシタール、ペントバルビタール、フェノバルビタール、セコバルビタール、チアミラール、およびチオペンタールを含む)、およびベンゾジアゼピン系麻酔薬(ジアゼパム、フルニトラゼパム、ロラゼパム、およびミダゾラムを含む)から選択される麻酔薬/鎮静剤である、方法。
(54)(51)に記載の方法であって、前記別の活性薬剤が、麻酔薬/鎮静剤であり、前記患者に昏睡を誘発するために十分な投与量の前記麻酔薬/鎮静剤を投与する、方法。
(55)(54)に記載の方法であって、前記別の活性薬剤が、バルビツール酸系である、方法。
(56)(54)に記載の方法であって、前記別の活性薬剤が、ペントバルビタールまたはチオペンタールである、方法。
(57)(54)に記載の方法であって、前記別の活性薬剤が、プロポフォールである、方法。
(58)(50)に記載の方法であって、第1の別の活性薬剤が、抗痙攣薬であり、第2の別の活性薬剤が、麻酔薬/鎮静剤である、方法。
(59)(58)に記載の方法であって、前記抗痙攣薬が、カルバマゼピン、チアガビン、レベチラセタム、ラモトリギン、プレガバリン、ガバペンチン、またはフェニトインであり、前記麻酔薬/鎮静剤が、ペントバルビタール、チオペンタール、またはプロポフォールである、方法。
【実施例
【0103】
<実施例1>
[注射用ガナキソロン製剤の調製]
CAPTISOL水溶液に対するガナキソロンの溶解度は、溶解度相図を作成することによって最初に確定された。過量のガナキソロンを、既知の濃度のCAPTISOL水溶液に加えて42時間振盪し、平衡状態に到達させた。該ガナキソロン溶液を、HPLCバイアル中に0.45μmシリンジフィルタを通して濾過した。HPLCによって、該濾液のガナキソロン濃度を定量分析した。該結果は表1に要約されている。加えたCAPTISOLのモルに対し、溶液中のガナキソロンのモルをプロットした。水に対するガナキソロンの溶解度は、CAPTISOLの添加と共に直線的に上昇することが認められ、これは、ガナキソロンとCAPTISOLが1:1の複合体を形成することを示唆する。加えたCAPTISOLの重量(mg)に対する溶液中のガナキソロンの重量(mg)のプロット(図1)から、平衡状態におけるガナキソロンの可溶化に必要な、ガナキソロンに対するCAPTISOLの重量:重量比は、約52:1であることが示された。
【0104】
【表1】
【0105】
注射用溶液を調製するため、過量のガナキソロンを400mg/mLCAPTISOL水溶液に加える。該溶液を、少なくとも一晩振盪し、0.45ミクロンフィルタを通して濾過する。濾過した溶液のガナキソロン濃度は、HPLCによって確定される。該ガナキソロン/CAPTISOL溶液(400mg/mLCAPTISOL水溶液中7.68mg/mL)を生理食塩水で希釈し、0.9%生理食塩水中、3.84mg/mL、0.77mg/mL、および0.39mg/mLのガナキソロン溶液を得る。すべての溶液は、澄明で、いかなる沈殿物も認められなかった。凍結および解凍後、該ガナキソロン溶液は、いかなる沈殿物も認められないままであった。
【0106】
<実施例2>
[注射用ガナキソロン-CAPTISOL溶液(5mg/mL)の調製]
最初に、ガナキソロン(0.50g)を、スパチュラを用いた手作業で滅菌注射用水中30%w/vCAPTISOL溶液の少量(約20mL)と混合し、均一なペーストを形成した。次に、30%w/vCAPTISOL溶液の追加の量(約40mL)を加えてスラリーを得た。該懸濁液を、マグネチックスターラバーを用いて20分間撹拌した。該懸濁液を、プローブ超音波処理器(probe sonicator)を用いて2時間超音波処理した。超音波処理中、該CAPTISOL溶液の総量が99.58mLに達するまで、追加の30%w/vCAPTISOL溶液を加えた。次に、撹拌した製剤を、68.5℃で約2.5時間加熱し、溶液を得た。熱を除去し、該溶液を、室温で約2時間撹拌した。蒸発によって減少した体積を水で補充した。該澄明溶液を、0.2μmナイロン膜フィルタに通して滅菌濾過した。
【0107】
<実施例3>
[凍結乾燥ガナキソロン-CAPTISOL粉末の調製]
40%w/vCAPTISOL6.6mLにガナキソロン42.6mgを溶解してガナキソロン-CAPTISOL溶液を調製し、1時間撹拌した(少量の溶解しなかったガナキソロンを、0.45μmシリンジフィルタを通して濾過することによって除去し、澄明溶液を得た)。該溶液をドライアイス/アセトン浴中で凍結し、2日間凍結乾燥することによって、さらさらした白色粉末2.859gを得た。該凍結乾燥粉末のガナキソロン濃度は、HPLCによって定量分析され、1.26重量%であったが、これは、理論上よりもわずかに少ない(1.49重量%)。該凍結乾燥粉末を水で復元し、澄明な溶液を得た。
【0108】
<実施例4>
[緩衝化ガナキソロン-CAPTISOL溶液]
一塩基性リン酸カリウム(19.6mg)および二塩基性リン酸ナトリウム七水和物(93.3mg)を、最初のpHが4.53である30%Captisol(20mL)中3mg/mLガナキソロン溶液に加えた。該混合液を1分間超音波処理し、pH6.95の澄明な溶液を得た。該溶液約10mLを、密閉したガラスバイアルに入れた非緩衝化対照溶液と共に、マグネチックスターラで撹拌しながら80℃で維持した。該サンプルの残りの10mLを、対照として5℃で維持した。67時間後および5日目に、一定量を採取した。これらのサンプルをHPLCによって定量分析し、結果は表2に示す。
【0109】
【表2】
【0110】
<実施例5>
[ポリソルベート80を含有する注射用ガナキソロン-30%CAPTISOL溶液]
20mLシンチレーションバイアル中の10%ポリソルベート80水溶液500μLと粉末化ガナキソロン(50mg)を混合した。該混合液を撹拌してガナキソロンを湿潤させた。次に、30%Captisol溶液を形成するために十分な固形Captisol(3.2g)を該バイアルに加え、該バイアル内容物を混合した。次に、脱イオン水(8.0g)を加え、該混合液を、室温で一晩激しく撹拌し、濁った溶液を得た。一定量を0.2μmシリンジフィルタを通して濾過し、ガナキソロン濃度をHPLCによって定量分析したところ、4.28mg/mLであった。
【0111】
本実施例の方法によって、以下の注射用ガナキソロン-30%Captisol溶液を調製した。
(a)エタノールを含有するガナキソロン-30%Captisol溶液。
30%Captisol中のガナキソロンを、10%v/vエタノール存在下で一晩激しく撹拌し、3.16mg/mLガナキソロン溶液を得た。
(b)グリセリンを含有するガナキソロン-30%Captisol溶液
30%Captisol中のガナキソロンを、10%v/vグリセリン存在下で一晩激しく撹拌し、3.45mg/mLガナキソロン溶液を得た。
(c)プロピレングリコールを含有するガナキソロン-30%Captisol溶液
30%Captisol中のガナキソロンを、10%v/vプロピレングリコール存在下で一晩激しく撹拌し、2.53mg/mLガナキソロン溶液を得た。
【0112】
<実施例6>
[事前に乾燥しているガナキソロンおよびCAPTISOLの混合物を用いたガナキソロン/30%CAPTISOL溶液の調製]
粉末化ガナキソロン(125mg)を100mLビーカに入れた。次に、Captisol粉末(7.9g)を該ビーカに加えた。該混合物を、マグネチックスターラバーで5分間撹拌して混合した。脱イオン水(20.1g)をプラスチックカップに量り取った。該水の約半量を該ビーカに加え、内容物を30分間激しく撹拌し、均一混合物を得た。残りの水を加え、該ビーカをパラフィンフィルムで覆った。該内容物を、室温で一晩激しく撹拌し、4.61mg/mLガナキソロン溶液を得た。90時間の撹拌後、該ガナキソロン濃度に変化はなかった。
【0113】
<実施例7>
[ガナキソロン-CAPTISOL溶液を注射および注入したラットにおけるガナキソロンの血漿濃度]
雌雄のCrl:CD(SD)ラット、100~300g(Charles River Laboratories、Raleigh、North Carolina)の3つの群に、滅菌注射用水中のガナキソロン-CAPTISOL溶液を、8~24時間の持続静脈内注入で投与した(ガナキソロン:CAPTISOL=1:60、w/w)。第1群には、1mg/kg/時間の速度で注入した。第2群には、2.5mg/kg/時間の速度で注入した。第3群では、雄ラットには、3.5mg/kg/時間の速度で注入し、雌には、1.75mg/kg/時間で注入した。ガナキソロンの経時的な血漿濃度プロファイルは、図2に示す。
【0114】
<実施例8>
[ラットでのピロカルピン誘発てんかん重積状態に対するガナキソロンの効果]
本試験は、12または15mg/kgで静脈内投与(IV)されたCAPTISOL-ガナキソロン(GNX)製剤が、ピロカルピンによって誘発されたてんかん重積状態(SE)を抑制する効果を有するかを判定するために設計された。比較として、アロプレグナノロン(Allo)(15mg/kg;IV)も評価された。本試験において、被験薬は、SE発症の15または60分後に投与され、溶媒(30%Captisol)と比較された。
【0115】
SEを誘発するためのピロカルピン投与の前および後のラットにおける皮質EEG活動を記録した。動物には、発作誘発の確実性を強化および向上させるためにLiClを、ピロカルピンによる末梢コリン作動性の副作用を減少させるためにスコポラミンをあらかじめ投与した。SE発症後、EEG活動を5時間記録し、0.3~96Hzの周波数の範囲にわたるEEGパワーの変化を判断することによって抗痙攣活性を測定した。
【0116】
[試験化合物]
表3に記載された化合物は、ピロカルピンによって誘発されたてんかん重積状態の試験に使用される。
【0117】
【表3】
【0118】
[動物]
該試験には、雄のスプラーグドーリーラットを用いた。ラットには、EEG電極および頚静脈カテーテルを外科的に埋め込んだ。記録時点での平均体重は、321±3g(269~351g)であった。
【0119】
EEG電極を麻酔されたラットに外科的に埋め込んだ。また、動物には、手術前に消炎鎮痛剤(RIMADYL、(カルプロフェン))および皮下局所麻酔薬を投与した。ステンレス鋼ネジ電極を、該ネジの先端が頭蓋骨内面と同一平面になるように頭蓋骨に長期的に埋め込んだ(0-80×1/4”、Plastics-One、Roanoke、VA)。1つの電極は、ブレグマの3.0mm前方および正中線の2mm左側に位置し、2つ目は、ブレグマの4.0mm後方および正中線の2.5mm右側に位置した。該電極周囲の頭蓋骨表面を、super glueおよび歯科用アクリルで塞ぎ、EEG電極リード線を、歯科用アクリルを用いて頭蓋骨に取り付けたプラスチック基部(plastic pedestal)の中に挿入した。創縁は、3種混合の抗生剤クリーム(亜鉛バシトラシン、硫酸ネオマイシン、硫酸ポリミキシンB;Walgreens)で処置した。手術後、動物には、抗生剤を投与し(アンピシリン、50mg/kgを0.4mL/kgのIP)、さらに、手術後にチュアブル投与量(約10mg)のRimadylを投与した。1週間、該動物をEEG手術から回復させた。
【0120】
EEG手術の1週間後、ラットに頚静脈カテーテル(JVC)を埋め込んだ。ラットには、消炎/鎮痛剤を投与し、次に麻酔し、仰臥位にした。首の右腹側外側面の皮膚を切開し、外頚静脈を露出させ、次に、これを周囲の筋膜から切り離した。心臓に戻る血流を塞ぐため、該静脈を前方で結紮した。2箇所目は、静脈切開およびカテーテル挿入の間、該血管を緊張させておくため、該静脈を後方で緩く結紮した。該静脈を切開した後、PEカテーテル(3Fr)を該静脈に挿入し、約30mm心臓側に進め、先端を下行大静脈と右心房の接合部に配置した。採血によって、カテーテルの開通性を確認した後、後方の結紮を解き、カテーテルを「ヘパリンロック」溶液(ヘパリン5単位/mL生理食塩水)で洗い流して滅菌したステンレス鋼ピンを差し込んだ。次に、該カテーテルを皮下組織をくぐらせて肩甲骨の間、頭の後方から体外に出した。最後に、該カテーテルを皮膚に縫合した後、すべての創傷を、縫合糸または創傷クリップを用いて閉じた。手術後すぐに、該動物を覚醒させ、カテーテルの開通性を検査した。また、疼痛および炎症を最小限に抑えるため、動物には、手術後にチュアブル投与量(約10mg)のRimadylを投与した。
【0121】
1週間、該動物をJVC手術から回復させた。開通性を維持するため、頚静脈カテーテルを、0.1mLのヘパリン溶液(5単位/mL)で1日1回洗い流した。手術の日、上記洗浄液は、アンピシリンスルバクタム(50mg/kg)を含有していた。いずれかのカテーテルの洗浄が困難になった場合は、該動物の数および日付を記録し、該動物を除外するか、可能であれば溶媒群に振り分けた。
【0122】
[EEGの記録手順]
EEGの記録のため、記録前の午後、各ラットには、LiClを投与し、記録用容器(recording container)(30×30×30cmで金網格子天井)に入れた。スコポラミン投与前、動物は、絶食させず、自由に食物および水を摂取できるようにしていたが、スコポラミン投与時に食物は取り外した。該記録用容器は、換気扇、天井照明、およびビデオカメラを備えた消音キャビネットの中に配置した。
【0123】
皮質EEGシグナルは、接続されたケーブルを介して整流器(Plastics-One、Roanoke、VA)に送られ、次に、増幅器(A-M Systems model1700;1000×ゲイン)に送られ、バンドパスフィルタリングされ(0.3~1000Hz)、最終的に、National Instruments(Austin、TX)のデータ取得ソフトウェア(Labview5.1)およびハードウェア(PCI-MIO-16E-4)によって作動しているICELUS取得装置/睡眠評価ソフトウェア(sleep scoring software)(M.Opp、U.Michigan)を用いて1秒間に512サンプルがデジタル化された。
【0124】
[薬剤投与群]
表4は、本試験に用いられた薬剤投与群を示す。頚静脈カテーテルが閉塞した動物以外、すべての注入は、頚静脈カテーテルを介して行われた。これらの動物は、尾静脈から注射された。
【0125】
【表4】
【0126】
[発作誘発、治療、および記録の手順]
3日間連続1日1回のセッションで、動物を評価した。試験スケジュールは、表5に示す。SE発症時点は、観察によって判断して記録され、該動物には、SE発症15または60分後のいずれかに、溶媒、アロプレグナノロン、またはガナキソロンを投与した。ラットは、ピロカルピン投与約2、15、30、60、120および240分後における行動変化を観察された。各動物は、記録が終了した後、治療5時間後に安楽死させた。
【0127】
【表5】
【0128】
[発作前、発作中、および発作後のEEG分析]
EEGパワー(mV/Hz)を、上記ICELUSソフトウェアを用い、1~96Hzの1Hz周波数ビンにおけるフーリエ解析(高速フーリエ変換、FFT)によって解析した(最も低い周波数ビンは、「0~5Hz」にあることが示唆されているが、技術的に記録された最も低い周波数は、0.3Hzであった。)。周波数の範囲は以下のとおりである:デルタ、0~5Hz(0.3~4.99Hz)、シータ5~10Hz、ベータ10~30Hz、ガンマ-30~50Hz、ガンマ-2 50~70Hz、ガンマ-3 70~96Hz。EEGパワーの解析は、連続する5分間隔にわたる平均パワー値を確定することで成立する。大振幅低周波のEEG活動による偏った結果を最小限に抑えるため、FFT振幅を対数変換した。記録開始からスコポラミン投与までの期間をベースラインEEGとし、この期間、すべての動物は同程度の活動状態であると思われるため、動物すべてのEEGパワーの正規化に用いた。ベースラインを正規化するため、ベースライン期間全体および全周波数の範囲にわたる(0~96Hz)対数換算FFT値を合計すると、1つの正規化定数Knormが得られた:
【0129】
【数1】
f=周波数(Hz);t=時間(分)
【0130】
次の解析のため、Knormを、すべてのFFTパワー値(各周波数およびすべての時点)から減算した。この手順によって、各動物におけるベースラインEEGパワーの合計の平均値が、0に等しくなる結果を生じ、その後のすべての動物におけるベースラインの周波数曲線は、密接に重なり合うこととなる。
【0131】
EEGパワーのデータは、最初に以下の作業時点において平均化された:ベースライン、スコポラミン、ピロカルピン、SE(SE発症と治療の間の時間)、および投与後の間欠期間:0~15、15~30、30~60分、1~2時間、2~3時間、および3~5時間。
【0132】
[結果]
表6は、アロプレグナノロンまたはガナキソロンを発作発症15分後に投与した場合の治療効果の要約であり、表7は、アロプレグナノロンまたはガナキソロンを発作発症60分後に投与した場合の治療効果の要約である。
【0133】
周波数の範囲に関係なく、溶媒群において、投与時点から投与の約2時間後までのEEGパワーにほとんど低下は認められなかったが、その後、EEGパワーは、投与の2~5時間後までにベースラインに向かって低下した。この低下は、より高周波の範囲において顕著であった。
【0134】
アロプレグナノロンを15mg/kg、発作発症15分後に投与した場合、投与1時間後までSEに大幅な低下を生じ、次第に作用が衰えた。投与2時間後には、この群におけるSEは、ほぼ溶媒群のレベルまで戻った。60分間投与延期後、投与後の最初の15分に0~5および5~10Hzの周波数の範囲で、SEに大幅な低下を生じた。この症例では、SEは、投与2時間後までに溶媒レベルまで戻り、そのレベルを維持した。5~10Hzでは、SEにおける低下の持続は1時間未満であり、より高周波では、約15分のみであった。統計学的に、アロプレグナノロンは、SE発症60分後に投与した場合、最初の15分間SEを抑制したのみであるのに対し、60分後に投与した場合、30Hz未満で2~3時間、30Hz超で最大1時間の抑制が認められた。
【0135】
ガナキソロンを12および15mg/kgで投与した場合、いずれの投与レベルにおいても、全体的なSE振幅の非常に大幅な低下を生じる質的に同等の結果をもたらした。
【0136】
SE発症15分後に投与した場合、GNXは、全周波数の範囲にわたり、5時間まで、EEGパワーをベースラインレベルまたはベースラインを下回るレベルに低下させた。5~70Hzでは、EEGパワーは、ベースラインレベル付近まで低下し、投与5時間後まで、そのレベルを維持した。0~5Hzでは、EEGパワーは、約90分間、ベースラインを下回るレベルに低下し、70~96Hzでは、EEGパワーは、全5時間、ベースラインを下回るレベルを維持した。しかし、30Hz超のEEGパワーは、2~5時間の間、溶媒群との差異がなく、これは、ベースラインEEGパワーレベルとの有意差がなかったことを示唆している。さらに注目すべきことは、より高周波の範囲では、溶媒群のEEGパワーが、2時間後にベースラインに戻っており、このため、GNXと溶媒群との間に有意差はなかった。
【0137】
SE発症60分後に投与した場合、EEGパワーは、同様に大幅な低下を生じたが、70Hzまでの周波数においてベースラインレベルを下回ることはなかった。70~96Hzでは、EEGパワーは、投与1~4時間後まで、ベースラインを下回るまで低下したようであった。GNXを発症の60分後に投与した場合と15分後に投与した場合の効果間の主な差異は、(1)より高周波数(>30Hz)で、投与後の最初の15分間には顕著な低下がみられないこと、および(2)上記薬剤が、特により高周波数における2~3時間の時点でより強力であるように思われる作用であった。再び、該EEGパワーレベルは、投与5時間後まで、ベースラインレベルを維持したが、溶媒群のEEGレベルも、30Hz超の周波数の範囲でベースラインレベルに戻ったため、該薬剤は効果を示さなかった。これに対し、0~5Hzでは、EEGパワーは、溶媒群で高いレベルを維持し、GNXは、12mg/kg群で、著しい低下を示した。
【0138】
【表6】
【0139】
【表7】
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F