(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】副反応性が低いリブロースリン酸3-エピメラーゼのモチーフ及びそれを含む酵素
(51)【国際特許分類】
C12P 19/02 20060101AFI20241007BHJP
C12N 9/90 20060101ALI20241007BHJP
C12N 15/61 20060101ALI20241007BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20241007BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20241007BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20241007BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20241007BHJP
【FI】
C12P19/02
C12N9/90 ZNA
C12N15/61
C12N1/15
C12N1/21
C12N1/19
C12N5/10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023128141
(22)【出願日】2023-08-04
(62)【分割の表示】P 2021549965の分割
【原出願日】2020-04-29
【審査請求日】2023-09-04
(31)【優先権主張番号】10-2019-0059697
(32)【優先日】2019-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】508139664
【氏名又は名称】シージェイ チェイルジェダン コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】CJ CHEILJEDANG CORPORATION
【住所又は居所原語表記】CJ Cheiljedang Center,330,Dongho-ro,Jung-gu,Seoul,Republic Of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ユン,サン ヨン
(72)【発明者】
【氏名】ソン,ピョン-サム
(72)【発明者】
【氏名】チョ,ヒョン クク
(72)【発明者】
【氏名】パク,ヒョン チョン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ソン ファン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ソンチェ
(72)【発明者】
【氏名】パク,イル ヒャン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ソン ボ
【審査官】岡部 佐知子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2004/042043(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/132871(WO,A1)
【文献】国際公開第03/084986(WO,A1)
【文献】韓国登録特許第10-1965509(KR,B1)
【文献】NCBI,ribulose-phosphate 3-epimerase [Thermoflavimicrobium dichotomicum],GenBank Accession No.WP_093231204,2017年08月01日,htpps://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/WP_093231204.1/
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C12N 9/90
C12P 19/02
C12N 1/15
C12N 1/21
C12N 1/19
C12N 5/10
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プシコース-6-リン酸を生産するためのリブロースリン酸3-エピメラーゼの使用であって、前記リブロースリン酸3-エピメラーゼは、配列番号1のアミノ酸配列からなるモチーフIおよび配列番号3のアミノ酸配列からなるモチーフIIIを含み、
前記リブロースリン酸3-エピメラーゼは、配列番号2のアミノ酸配列からなるモチーフIIを含まない、
使用。
【請求項2】
前記リブロースリン酸3-エピメラーゼは、前記配列番号1のアミノ酸配列からなる前記モチーフIおよび前記配列番号3のアミノ酸配列からなる前記モチーフIIIを有さない酵素と比較して、プシコースをフルクトースに変換する活性がないか、または5%以下である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記リブロースリン酸3-エピメラーゼは、配列番号4または5のアミノ酸配列からなるモチーフをさらに含む、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
前記リブロースリン酸3-エピメラーゼは、N末端のアミノ酸から173番目~184番目の位置に前記モチーフIを含む、請求項1に記載の使用。
【請求項5】
前記リブロースリン酸3-エピメラーゼは、N末端のアミノ酸から136番目~150番目の位置に前記モチーフIIIを含む、請求項1に記載の使用。
【請求項6】
前記リブロースリン酸3-エピメラーゼは、50℃~90℃の温度でプシコース-6-リン酸3-エピマー化活性を有する、請求項1に記載の使用。
【請求項7】
前記リブロースリン酸3-エピメラーゼは、クトノモナス(Chthonomonas)、ゲオバチルス(Geobacillus)、マヘラ(Mahella)、サーモアナエロバクテリウム(Thermoanaerobacterium)、テピダナエロバクター(Tepidanaerobacter)、アルデンティカテナ(Ardenticatenia)、フィルミクテス(Firmicutes)、エアリバチルス(Aeribacillus)、エプロピシウム(Epulopiscium)及びサーモフラビミクロビウム(Thermoflavimicrobium)属からなる群から選択されるいずれかの由来のものである、請求項1に記載の使用。
【請求項8】
前記リブロースリン酸3-エピメラーゼは、クトノモナス・カリディロセア(Chthonomonas calidirosea)T49、ゲオバチルス属8(Geobacillus sp.8)、ゲオバチルス・サーモカテニュラタス(Geobacillus thermocatenulatus)、マヘラ・アウストラリエンシス(Mahella australiensis)50-1 BON、サーモアナエロバクテリウム属PSU-2(Thermoanaerobacterium sp.PSU-2)、サーモアナエロバクテリウム・サーモサッカロリチカム(Thermoanaerobacterium thermosaccharolyticum)、テピダナエロバクター・シントロフィカス(Tepidanaerobacter syntrophicus)、アルデンティカテナ・バクテリウム(Ardenticatenia bacterium)、フィルミクテス・バクテリウムHGW-Firmicutes-5(Firmicutes bacterium HGW-Firmicutes-5)、エアリバチルス・パリダス(Aeribacillus pallidus)、エプロピシウム属SCG-B05WGA-EpuloA1(Epulopiscium sp.SCG-B05WGA-EpuloA1)及びサーモフラビミクロビウム・ディコトミカム(Thermoflavimicrobium dichotomicum)からなる群から選択されるいずれかの由来のものである、請求項1に記載の使用。
【請求項9】
前記リブロースリン酸3-エピメラーゼは、配列番号15~26のアミノ酸配列、及び前記アミノ酸配列のうち、前記モチーフI及びIIIを除く領域と少なくとも26%の同一性を有するアミノ酸配列からなる群から選択されるいずれかの配列からなるものである、請求項1に記載の使用。
【請求項10】
プシコース-6-リン酸を生産するための、請求項1~9のいずれか一項に記載のリブロースリン酸3-エピメラーゼをコードする核酸の使用。
【請求項11】
プシコース-6-リン酸を生産するための、請求項10に記載の核酸を含む形質転換体の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、リブロースリン酸3-エピメラーゼであって、特にプシコース3-エピマー化活性の低いリブロースリン酸3-エピメラーゼ、それを含むプシコース-6-リン酸又はプシコース生産用組成物、及びそれを用いてプシコース-6-リン酸又はプシコースを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プシコース(アルロース)は、フルクトース(fructose)の3位の炭素のエピマーであり、自然界に極少量存在する希少糖(rare sugar)として知られる単糖類である。甘味度は砂糖の約70%であるが、ほとんどゼロカロリーであり、血糖上昇抑制や脂肪合成抑制などの機能により、機能性食品に用いられる新たな食品原料として多くの関心を集めている。
【0003】
これらの特徴により、プシコースは砂糖代替甘味料として様々な食品への使用が考慮されているが、自然界に極めて少量しか存在しないので、プシコースを効率的に製造する方法の必要性が高まっている。
【0004】
プシコース製造方法の1つとして、グルコース(glucose)又はグルコース-1-リン酸(glucose-1-phosphate)、グルコース-6-リン酸(glucose-6-phosphate)及びフルクトース-6-リン酸への変換を経てプシコース-6-リン酸を生産する工程が知られているが(特許文献1)、より効率的かつ経済的なプシコース生産のための技術開発の要求が高まっている。
【0005】
プシコース3-エピメラーゼ(D-psicose 3-epimerase, EC 5.1.3.30)は、フルクトース(D-fructose)を3-エピマー化(3-epimerization, 3位の炭素のエピマー化)することによりアルロースを生産する酵素として知られている。上記酵素を用いて単一酵素反応によりフルクトースからアルロースを生産する場合、基質であるフルクトースと産物であるアルロース間に一定レベルの反応平衡(reaction equilibrium)が存在する(産物/基質=約20%~35%)。よって、前記単一酵素反応を用いて高純度のアルロースを製造する場合、反応生成物から高濃度のフルクトースを分離して除去する追加精製工程が必要である。
【0006】
また、従来から知られているプシコース-6-リン酸3-エピメラーゼは、プシコース3-エピマー化活性を有するので、プシコース-6-リン酸3-エピマー化特異的酵素とは言えず、実際にプシコース生産にも適さない(特許文献2,3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】韓国公開特許第10-2018-0004023号公報
【文献】国際公開第2018/129275号
【文献】国際公開第2018/112139号
【非特許文献】
【0008】
【文献】KwangsooKim et. al (Crystal Structure of d-Psicose 3-epimerase from Agrobacterium tumefaciens and its Complex with True Substrate d-FructoseVolume 361, Issue 5, 1 September 2006, Pages 920-931)
【文献】Pearson et al (1988)[Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85]: 2444
【文献】Rice et al., 2000, Trends Genet. 16: 276-277
【文献】Needleman and Wunsch, 1970, J. Mol. Biol. 48: 443-453
【文献】Devereux, J., et al, Nucleic Acids Research 12: 387 (1984)
【文献】Atschul, [S.] [F.,] [ET AL, J MOLEC BIOL 215]: 403 (1990)
【文献】Guide to Huge Computers, Martin J. Bishop, [ED.,] Academic Press, San Diego,1994
【文献】[CARILLO ETA/.](1988) SIAM J Applied Math 48: 1073
【文献】Smith and Waterman, Adv. Appl. Math (1981) 2:482
【文献】Schwartz and Dayhoff, eds., Atlas Of Protein Sequence And Structure, National Biomedical Research Foundation, pp. 353-358 (1979)
【文献】Gribskov et al(1986) Nucl. Acids Res. 14: 6745
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本出願人は、プシコース3-エピマー化活性に影響を与える特異的なモチーフ配列の探索により、特定モチーフが特異的にプシコース-6-リン酸3-エピマー化に重要であることを確認した。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本出願は、リブロースリン酸3-エピメラーゼを提供することを目的とする。
【0011】
また、本出願は、リブロースリン酸3-エピメラーゼをコードする核酸を提供することを目的とする。
【0012】
さらに、本出願は、リブロースリン酸3-エピメラーゼをコードする核酸を含む形質転換体を提供することを目的とする。
【0013】
さらに、本出願は、リブロースリン酸3-エピメラーゼ、それを発現する微生物、又は前記微生物の培養物を含むプシコース-6-リン酸生産用組成物を提供することを目的とする。
【0014】
さらに、本出願は、フルクトース-6-リン酸(fructose-6-phosphate)にリブロースリン酸3-エピメラーゼ、それを発現する微生物、又は前記微生物の培養物を接触させるステップを含むプシコース-6-リン酸製造方法を提供することを目的とする。
【0015】
さらに、本出願は、リブロースリン酸3-エピメラーゼ、それを発現する微生物、又は前記微生物の培養物を含むプシコース生産用組成物を提供することを目的とする。
【0016】
さらに、本出願は、フルクトース-6-リン酸(fructose-6-phosphate)にリブロースリン酸3-エピメラーゼ、それを発現する微生物、又は前記微生物の培養物を接触させるステップを含むプシコース製造方法を提供することを目的とする。
【発明の効果】
【0017】
本出願のリブロースリン酸3-エピメラーゼは、特定モチーフを含まないのでプシコース3-エピマー化活性が低いだけでなく、耐熱性を有するのでプシコース生産などの産業的活用に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】リブロースリン酸3-エピメラーゼ(配列番号9:KPL22606)のアミノ酸配列から予測されるタンパク質構造を示す図である。
【
図2】従来から知られているプシコース-6-リン酸3-エピメラーゼ(ADL69228;実線)及び本出願の酵素(配列番号20;点線)のHPLCクロマトグラムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本出願について具体的に説明する。なお、本出願で開示される一態様の説明及び実施形態は共通事項について他の態様の説明及び実施形態にも適用される。また、本出願で開示される様々な要素のあらゆる組み合わせが本出願に含まれる。さらに、以下の具体的な記述に本出願が限定されものではない。
【0020】
上記目的を達成するために、本出願の一態様は、リブロースリン酸3-エピメラーゼを提供する。
【0021】
具体的には、本出願のリブロースリン酸3-エピメラーゼは、配列番号1のアミノ酸配列からなるモチーフI、及び配列番号3のアミノ酸配列からなるモチーフIIIを含み、高活性及び耐熱性を有するリブロースリン酸3-エピメラーゼであってもよく、より具体的には、配列番号2のアミノ酸配列からなるモチーフIIを含まないものであるが、これらに限定されるものではない。
【0022】
本出願における「リブロースリン酸3-エピメラーゼ」とは、リブロースリン酸3-エピメラーゼ活性が知られているか、リブロースリン酸3-エピメラーゼ活性を有する酵素を意味し、特にフルクトース-6-リン酸3-エピメラーゼ又はプシコース-6-リン酸3-エピメラーゼ(psicose-6-phosphate 3-epimerase)として作用するものを意味する。前記リブロースリン酸3-エピメラーゼには、フルクトース-6-リン酸3-エピメラーゼ又はプシコース-6-リン酸3-エピメラーゼ(psicose-6-phosphate 3-epimerase)の活性を有するものであれば、一部の配列が欠失、改変、置換、保存的置換又は付加されたアミノ酸配列も含まれる。
【0023】
具体的には、本出願の酵素は、プシコース-6-リン酸をフルクトース-6-リン酸に、又はフルクトース-6-リン酸をプシコース-6-リン酸に可逆的に変換する活性を有する酵素であり、本出願における「リブロースリン酸3-エピメラーゼ」は、「プシコース-6-リン酸3-エピメラーゼ」又は「酵素」と相互交換的に用いられる。
【0024】
本出願の酵素は、グルコース-1-リン酸(D-glucose-1-phosphate)、グルコース-6-リン酸(D-glucose-6-phosphate)又はフルクトース-6-リン酸(D-fructose-6-phosphate)を混合するとプシコース-6-リン酸に変換する酵素であってもよい。例えば、本出願の酵素は、同量のプシコース-6-リン酸、グルコース-1-リン酸、グルコース-6-リン酸及びフルクトース-6-リン酸を混合した際のプシコース-6-リン酸への変換率が1%以上、10%以上又は30%以上であってもよい。このような本出願の酵素の選択的活性により、複数の酵素及び基質を同時に用いる同時酵素反応(one-pot enzymatic conversion)において高いプシコース変換率を示す。
【0025】
本出願における「モチーフ」とは、酵素配列内の特定配列を有する部位(領域)であって、タンパク質の特定機能又は活性を有する配列を意味し、微生物種間で保存されている配列であるが、これに限定されるものではない。本出願のリブロースリン酸3-エピメラーゼは、配列番号1のアミノ酸配列からなるモチーフI、及び配列番号3のアミノ酸配列からなるモチーフIIIを含むものであってもよい。さらに、配列番号2のアミノ酸配列からなるモチーフIIを含まないことを特徴とし、モチーフIIを含まないので、前記酵素は、プシコース-3-エピマー化活性が低いことを特徴とするものであるが、これに限定されるものではない。
【0026】
具体的には、前記酵素は、モチーフI及びIIIを含まない酵素と比較して、プシコースをフルクトースに変換する活性が5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、1%以下であるか、又は活性がないものであるが、これらに限定されるものではない。
【0027】
また、本出願の酵素は、配列番号4又は5のアミノ酸配列からなるモチーフをさらに含むものであってもよい。
【0028】
本出願の酵素は、特定モチーフを含むこと、又は必ず含むことを特徴とし、かつ、特定モチーフを含まないことを特徴とする。具体的には、本出願のモチーフI及びIIIは、酵素が基質及び/又は金属イオン(例えば、Mg、Mn、Znなど)と一部又は全部結合して反応する部位(結合部位,binding site)に含まれ、酵素自体の活性は保持しつつ、副反応性を低くするものであってもよい。より具体的には、モチーフI及びIIIは、前記結合部位内のTIM-barrel foldに含まれるものであってもよい。特定モチーフを「含む」酵素は、当該モチーフ以外に、他のモチーフ、ドメイン、アミノ酸配列、断片などをさらに含んでもよく、含まなくてもよく、特定モチーフを「必ず含む」酵素は、当該モチーフを必ず含むことにより目的とする性質又は特性が得られ、やはり当該モチーフ以外に、他のモチーフ、ドメイン、アミノ酸配列、断片などをさらに含んでもよく、含まなくてもよいが、これらに限定されるものではない。特定モチーフを「含まない」酵素は、当該モチーフに対応する配列を酵素中に含まず、当該モチーフの位置に他のアミノ酸配列の挿入、置換、欠失又はそれらの組み合わせが行われたものであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0029】
また、本出願の酵素に含まれるモチーフ又は含まれないモチーフは、互いに独立して含まれるか又は含まれないものであり、特定の順序や位置に限定して配列されるものではない。
【0030】
例えば、本出願の酵素は、配列番号1のモチーフIのみを含む酵素であるか、配列番号1のモチーフI、及び配列番号3のモチーフIIIを含み、配列番号2のモチーフIIを含まない酵素であるか、配列番号1のモチーフI、配列番号3のモチーフIII、並びに配列番号4及び5のモチーフを含み、配列番号2のモチーフIIを含まない酵素であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0031】
本出願における「モチーフI」は、配列番号1のアミノ酸配列からなるものであってもよいが、配列番号1のアミノ酸配列の活性に影響を及ぼさない無意味なアミノ酸残基の挿入、置換、欠失などを有する配列も本出願のモチーフIに該当することは言うまでもない。
モチーフI(配列番号1):V-D-G
【0032】
モチーフIはリブロースリン酸3-エピメラーゼの基質及び金属イオンと反応する結合部位(binding site)に含まれるものであってもよいが、これらに限定されるものではない。具体的には、前記モチーフは、リブロースリン酸3-エピメラーゼのN末端の最初のアミノ酸から173番目~184番目のアミノ酸に位置するものであるが、これに限定されるものではない。すなわち、モチーフIの最初のアミノ酸残基であるバリン(V)は、リブロースリン酸3-エピメラーゼのN末端の最初のアミノ酸から173番目~182番目の間に位置し、モチーフIの最後の残基であるグリシン(G)は、175番目~184番目の間に位置するが、これに限定されるものではない。
【0033】
また、モチーフIは、1番目のβシート構造-コイル構造-αヘリックス構造-2番目のβシート構造が連結されたドメインにおいて、2番目のβシートのC末端から最初のアミノ酸残基が始まるものであってもよく、前記ドメインは、結合部位に含まれる構造であってもよく、一部領域が重なる構造であってもよい。(
図1)。
【0034】
本出願における「モチーフII」は、配列番号2のアミノ酸配列からなるものであってもよいが、配列番号2のアミノ酸配列の活性に影響を及ぼさない無意味なアミノ酸残基の挿入、置換、欠失などを有する配列も本出願のモチーフIIに該当することは言うまでもない。
モチーフII(配列番号2):M-X-X-D-P-G(Xは任意のアミノ酸残基)
【0035】
モチーフIIは、リブロースリン酸3-エピメラーゼのN末端領域に含まれるものであるが、これに限定されるものではない。具体的には、前記モチーフは、リブロースリン酸3-エピメラーゼのN末端の最初のアミノ酸から136番目~150番目のアミノ酸に位置するものであるが、これに限定されるものではない。すなわち、モチーフIIの最初のアミノ酸残基であるメチオニン(M)は、リブロースリン酸3-エピメラーゼのN末端の最初のアミノ酸から136番目~145番目の間に位置し、モチーフIIの最後の残基であるグリシン(G)は、141番目~150番目の間に位置するが、これに限定されるものではない。また、モチーフIIは、1番目のβシート構造-コイル構造-αヘリックス構造-2番目のβシート構造が連結されたドメインにおいて、1番目のβシートのC末端から最初のアミノ酸残基が始まるものであってもよく、前記ドメインは、結合部位に含まれる構造であってもよく、一部領域が重なる構造であってもよく、また、前記ドメインは、モチーフIを含むドメインと同じものであってもよい(
図1)。
【0036】
具体的には、前記Xには任意のアミノ酸が含まれるが、これらに限定されるものではなく、より具体的には、トレオニン(T)、バリン(V)であるが、これらに限定されるものではない。さらに具体的には、モチーフIIはM-(T/A/M/L)-(V/N/I)-D-P-Gの配列を含むが、これに限定されるものではない。
【0037】
本出願における「モチーフIII」は、配列番号3のアミノ酸配列からなるものであってもよいが、配列番号3のアミノ酸配列の活性に影響を及ぼさない無意味なアミノ酸残基の挿入、置換、欠失などを有する配列も本出願のモチーフIIIに該当することは言うまでもない。
モチーフIII(配列番号3):M-X-X-X’-P-G(Xは任意のアミノ酸残基)
【0038】
モチーフIIIは、リブロースリン酸3-エピメラーゼのN末端領域に含まれるものであってもよいが、これに限定されるものではない。具体的には、前記モチーフは、リブロースリン酸3-エピメラーゼのN末端の最初のアミノ酸から136番目~150番目のアミノ酸に位置するものであるが、これに限定されるものではない。すなわち、モチーフIIIの最初のアミノ酸残基であるメチオニン(M)は、リブロースリン酸3-エピメラーゼのN末端の最初のアミノ酸から136番目~145番目の間に位置し、モチーフIIIの最後の残基であるグリシン(G)は、141番目~150番目の間に位置するが、これに限定されるものではない。また、モチーフIIIは、1番目のβシート構造-コイル構造-αヘリックス構造-2番目のβシート構造が連結されたドメインにおいて、1番目のβシートのC末端から最初のアミノ酸残基が始まるものであってもよく、前記ドメインは、結合部位に含まれる構造であってもよく、一部領域が重なる構造であってもよく、また、前記ドメインは、モチーフIを含むドメインと同じものであってもよい(
図1)。
【0039】
より具体的には、モチーフII及びIIIは、本出願の酵素を並べた際に同じ位置に含まれるモチーフであるが、これに限定されるものではない。
【0040】
具体的には、前記Xには任意のアミノ酸が含まれてもよいが、これらに限定されるものではなく、より具体的には、トレオニン(T)、アラニン(A)、メチオニン(M)、ロイシン(L)、バリン(V)、アスパラギン(N)、イソロイシン(I)であるが、これらに限定されるものではない。
【0041】
また、前記X’には、アスパラギン酸(D)を除く任意のアミノ酸が含まれるが、これらに限定されるものではなく、具体的には、アミノ酸残基に電荷を有さないアミノ酸や、正電荷(posivitve charge)を有するアミノ酸が含まれてもよい。より具体的には、前記電荷を有さないアミノ酸には、極性アミノ酸、非極性アミノ酸の両方が含まれ、セリン、トレオニン、システイン、アスパラギン、グルタミン、グリシン、アラニン、プロリン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニンのいずれかであってもよい。また、前記正電荷を有するアミノ酸は、リシン、アルギニン、ヒスチジンのいずれかであってもよい。例えば、アスパラギン(N)、リシン(K)が含まれる。より具体的には、モチーフIIIはM-(T/A/M/L)-(V/N/I)-N-P-Gの配列を含むが、これに限定されるものではない。
【0042】
本出願の酵素は、配列番号4のアミノ酸配列からなるモチーフをさらに含むものであってもよいが、配列番号4のアミノ酸配列の活性に影響を及ぼさない無意味なアミノ酸残基の挿入、置換、欠失などを有する配列も本出願の酵素に含まれることは言うまでもない。
配列番号4:S-X-M/I-C(Xは任意のアミノ酸残基)
【0043】
配列番号4のアミノ酸配列を有するモチーフは、リブロースリン酸3-エピメラーゼのN末端領域に含まれるものであってもよいが、これに限定されるものではない。具体的には、前記モチーフは、リブロースリン酸3-エピメラーゼのN末端の最初のアミノ酸から5番目~20番目、より具体的には7番目~19番目のアミノ酸に位置するものであるが、これらに限定されるものではない。すなわち、配列番号4のアミノ酸配列を有するモチーフの最初のアミノ酸残基であるセリン(S)は、リブロースリン酸3-エピメラーゼのN末端の最初のアミノ酸から7番目~16番目の間に位置し、配列番号4のアミノ酸配列を有するモチーフの最後の残基であるシステイン(C)は10番目~19番目の間に位置するが、これに限定されるものではない。また、配列番号4のモチーフは、βシート構造の後に形成されるものであってもよく、具体的には、βシート構造の後に形成されるαヘリックス構造に配列番号4のモチーフ配列の一部が含まれてもよい。
【0044】
具体的には、前記Xには任意のアミノ酸が含まれるが、これらに限定されるものではなく、より具体的には、メチオニン、イソロイシン、ロイシン又はバリンであるが、これらに限定されるものではない。さらに具体的には、配列番号4のアミノ酸配列からなるモチーフは、SIMC(配列番号27)、SMMC(配列番号28)、SLMC(配列番号29)又はSVMC(配列番号30)の配列を含むが、これらに限定されるものではない。
【0045】
本出願の酵素は、配列番号5のアミノ酸配列からなるモチーフをさらに含むものであってもよいが、配列番号5のアミノ酸配列の活性に影響を及ぼさない無意味なアミノ酸残基の挿入、置換、欠失などを有する配列も本出願の酵素に含まれることは言うまでもない。
配列番号5:G-X-X-X-X-F/L(Xは任意のアミノ酸残基)
【0046】
配列番号5のアミノ酸配列からなるモチーフは、リブロースリン酸3-エピメラーゼのC末端領域に含まれるものであってもよいが、これに限定されるものではない。具体的には、前記リブロースリン酸3-エピメラーゼのN末端のアミノ酸から190番目~210番目、より具体的には196番目~210番目のアミノ酸に位置するものであるが、これらに限定されるものではない。すなわち、配列番号5のアミノ酸配列からなるモチーフの最初のアミノ酸残基であるグリシン(G)は、リブロースリン酸3-エピメラーゼのN末端の最初のアミノ酸から196番目~205番目の間に位置し、配列番号5のアミノ酸配列からなるモチーフの最後の残基であるフェニルアラニン(F)は、201番目~210番目の間に位置するが、これに限定されるものではない。また、配列番号5のモチーフは、βシート構造の後に形成されるものであってもよく、具体的には、βシート構造の後に形成されるαヘリックス構造に配列番号5のモチーフ配列の一部が含まれてもよい。
【0047】
具体的には、配列番号5のアミノ酸配列からなるモチーフの各Xは、互いに独立してトレオニン、セリン、グリシン、ロイシン、システイン、イソロイシン、アスパラギン、リシン、アラニン、バリン又はグルタミンであってもよいが、これらに限定されるものではない。より具体的には、配列番号5のアミノ酸配列からなるモチーフは、GNSGLF(配列番号31)、GSSGLFGSSSLF(配列番号32)、GSTSLF(配列番号33)、GTAGLF(配列番号34)、GTKGLF(配列番号35)、GTQSLF(配列番号36)、GTSCLF(配列番号37)、GTSGLF(配列番号38)、GTSSIF(配列番号39)、GTSGIF(配列番号40)、GTSSLF(配列番号41)又はGTSSVF(配列番号42)のアミノ酸配列を含むが、これらに限定されるものではない。本出願の酵素は、配列番号4及び/又は5のモチーフを含むので、フルクトース-6-リン酸をプシコース-6-リン酸に変換する活性が高いことを特徴とする。
【0048】
本出願のモチーフに含まれる各アミノ酸残基は、互いに独立して組み合わせることによりモチーフを構成することができる。
【0049】
本出願のリブロースリン酸3-エピメラーゼは、特定モチーフ、すなわちIIを含まないので、プシコース3-エピマー化活性が非常に低く、それはフルクトース-6-リン酸からプシコース-6-リン酸を製造する過程の副反応を低くするので、最終産物であるプシコースが高い収率で得られることを示唆する。また、他の酵素(例えば、プシコース-6-リン酸ホスファターゼ)と組み合わせるとプシコースを生産するのに効果的である。
【0050】
本出願のαヘリックス(α-helix)構造、βシート(β-sheet)構造、コイル(coil)構造は、非特許文献1などで言及されている通常の定義で理解され、前記αヘリックスは、Right handed alpha helixであってもよい。前記構造は、NMR、X-ray crystallographyなどの周知の方法を直接行うか、アミノ酸配列に基づいてRosetta又はウェブサーバ(I-TASSER、ROBETTAなど)を用いることにより、予測、取得することができる。
【0051】
また、本出願において、構造が集合したドメインは、構造1-構造2などの形態で表示することができる。
【0052】
また、本出願のリブロースリン酸3-エピメラーゼは、クトノモナス(Chthonomonas)、ゲオバチルス(Geobacillus)、マヘラ(Mahella)、サーモアナエロバクテリウム(Thermoanaerobacterium)、テピダナエロバクター(Tepidanaerobacter)、アルデンティカテナ(Ardenticatenia)、フィルミクテス(Firmicutes)、エアリバチルス(Aeribacillus)、エプロピシウム(Epulopiscium)及びサーモフラビミクロビウム(Thermoflavimicrobium)属からなる群から選択されるいずれかの由来のものであってもよく、より具体的には、クトノモナス・カリディロセア(Chthonomonas calidirosea)T49、ゲオバチルス属8(Geobacillus sp. 8)、ゲオバチルス・サーモカテニュラタス(Geobacillus thermocatenulatus)、マヘラ・アウストラリエンシス(Mahella australiensis)50-1 BON、サーモアナエロバクテリウム属PSU-2(Thermoanaerobacterium sp. PSU-2)、サーモアナエロバクテリウム・サーモサッカロリチカム(Thermoanaerobacterium thermosaccharolyticum)、テピダナエロバクター・シントロフィカス(Tepidanaerobacter syntrophicus)、アルデンティカテナ・バクテリウム(Ardenticatenia bacterium)、フィルミクテス・バクテリウムHGW-Firmicutes-5(Firmicutes bacterium HGW-Firmicutes-5)、エアリバチルス・パリダス(Aeribacillus pallidus)、エプロピシウム属SCG-B05WGA-EpuloA1(Epulopiscium sp. SCG-B05WGA-EpuloA1)及びサーモフラビミクロビウム・ディコトミカム(Thermoflavimicrobium dichotomicum)からなる群から選択されるいずれかの由来のものであるが、これらに限定されるものではない。
【0053】
また、本出願のリブロースリン酸3-エピメラーゼは、配列番号15~26のアミノ酸配列からなる群から選択されるいずれかの配列を含むものであるか、又は配列番号15~26のアミノ酸配列からなる群から選択されるいずれかの配列からなるものであってもよいが、これらに限定されるものではない。より具体的には、前記酵素は、配列番号19、20又は22のアミノ酸配列からなるものであるが、これらに限定されるものではない。
【0054】
あるいは、本出願のリブロースリン酸3-エピメラーゼは特定モチーフの有無が酵素活性に重要な影響を及ぼすので、前記モチーフ領域を除く酵素配列は配列同一性が低くてもよい。具体的には、前記アミノ酸配列のうち、モチーフI及びIIIを除く領域と26%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%以上、モチーフI、III、配列番号4及び5の領域を除く領域と24%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなる群から選択されるいずれかの配列からなるものであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0055】
また、配列番号15~26のいずれかのアミノ酸配列、又はそれと70%以上の相同性(homology)もしくは同一性(identity)を有するアミノ酸配列を含んでもよいが、これらに限定されるものではない。具体的には、前記アミノ酸には、配列番号15~26の配列、及び前記配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%以上の相同性又は同一性を有するアミノ酸が含まれる。また、そのような相同性又は同一性を有し、前記タンパク質に相当する効能を示すアミノ酸配列であれば、一部の配列が欠失、改変、置換又は付加されたアミノ酸配列を有するタンパク質も本出願に含まれることは言うまでもない。
【0056】
すなわち、本出願に「特定配列番号で表されるアミノ酸配列を有するタンパク質」と記載されていても、当該配列番号のアミノ酸配列からなるタンパク質と同一又は相当する活性を有するものであれば、一部の配列が欠失、改変、置換、保存的置換又は付加されたアミノ酸配列を有するタンパク質であっても本出願に用いられることは言うまでもない。例えば、前記酵素と同一又は相当する活性を有するものであれば、前記アミノ酸配列の前後へのタンパク質の機能を変更しない配列の付加や、自然に発生し得る突然変異、その非表現突然変異(silent mutation)又は保存的置換を除外するものではなく、そのような配列の付加や突然変異を有するものも本出願に含まれることは言うまでもない。
【0057】
本出願における「相同性(homology)」又は「同一性(identity)」とは、2つの与えられたアミノ酸配列又は塩基配列が互いに関連する程度を意味し、百分率で表される。
【0058】
本出願における相同性及び同一性は、しばしば相互交換的に用いられる。
【0059】
保存されている(conserved)ポリヌクレオチド又はポリペプチドの配列相同性又は同一性は標準的な配列アルゴリズムにより決定され、用いられるプログラムにより確立されたデフォルトギャップペナルティが共に用いられてもよい。実質的には、相同性を有するか(homologous)又は同じ(identical)配列は、中程度又は高いストリンジェントな条件(stringent conditions)下において、一般に配列全体又は全長の少なくとも約50%、60%、70%、80%又は90%以上ハイブリダイズすることができる。そのハイブリダイゼーションは、ポリヌクレオチドがコドンの代わりに縮退コドンを有するようにするものであってもよい。
【0060】
任意の2つのポリヌクレオチド又はポリペプチド配列が相同性、類似性又は同一性を有するか否かは、例えば非特許文献2のようなデフォルトパラメーターと「FASTA」プログラムなどの公知のコンピュータアルゴリズムを用いて決定することができる。あるいは、EMBOSSパッケージのニードルマンプログラム(EMBOSS: The European Molecular Biology Open Software Suite, 非特許文献3)(バージョン5.0.0又はそれ以降のバージョン)で行われるように、ニードルマン=ウンシュ(Needleman-Wunsch)アルゴリズム(非特許文献4)を用いて決定することができる(GCGプログラムパッケージ(非特許文献5)、BLASTP、BLASTN、FASTA(非特許文献6,7,8)を含む)。例えば、国立生物工学情報センターのBLAST又はClustal Wを用いて相同性、類似性又は同一性を決定することができる。
【0061】
ポリヌクレオチド又はポリペプチドの相同性、類似性又は同一性は、例えば非特許文献9に開示されているように、例えば非特許文献4などのGAPコンピュータプログラムを用いて、配列情報を比較することにより決定することができる。要約すると、GAPプログラムは、2つの配列のうち短いものにおける記号の総数で、類似する配列記号(すなわち、ヌクレオチド又はアミノ酸)の数を割った値と定義している。GAPプログラムのためのデフォルトパラメーターは、(1)一進法比較マトリクス(同一性は1、非同一性は0の値をとる)及び非特許文献10に開示されているように、非特許文献11の加重比較マトリクス(又はEDNAFULL(NCBI NUC4.4のEMBOSSバージョン)置換マトリクス)と、(2)各ギャップに3.0のペナルティ、及び各ギャップの各記号に追加の0.10ペナルティ(又はギャップ開放ペナルティ10、ギャップ延長ペナルティ0.5)と、(3)末端ギャップに無ペナルティとを含む。よって、本出願における「相同性」又は「同一性」は、配列間の関連性(relevance)を示す。
【0062】
一方、本出願のリブロースリン酸3-エピメラーゼは耐熱性を有するが、これに限定されるものではない。
【0063】
本出願における「耐熱性」とは、高温環境においても酵素の活性を失わずに本来の活性を示す性質を意味し、酵素の耐熱性は標的産物を生産する工程で様々な利点となる。具体的には、本出願のリブロースリン酸3-エピメラーゼは、40℃以上、より具体的には50℃以上、さらに具体的には60℃以上でプシコース-6-リン酸3-エピマー化活性を有するものであるが、これらに限定されるものではない。一層具体的には、本出願の酵素は、pH5.0~10.0、50℃~90℃の条件でプシコース-6-リン酸3-エピマー化活性を1分間~24時間有するものであるが、これに限定されるものではない。
【0064】
本出願のリブロースリン酸3-エピメラーゼは、前記酵素自体又はそれを発現するDNAを菌株に形質転換し、それを培養して培養物を得て、前記培養物を破砕し、カラムなどにより精製したものであってもよい。前記形質転換用菌株としては、大腸菌(Escherichia coli)、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterum glutamicum)、アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)又はバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、今後もGRAS(Generally Recognized as Safe)菌株での形質転換の可能性はある。
【0065】
本出願のリブロースリン酸3-エピメラーゼの精製方法は、特に限定されるものではなく、本出願の技術分野で通常用いられる方法を用いることができる。例えば、クロマトグラフィー、熱処理、吸着、濾過、イオン精製などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。前記精製方法は、1つだけ行ってもよく、2種以上の方法を共に行ってもよい。
【0066】
本出願の他の態様は、前記リブロースリン酸3-エピメラーゼをコードする核酸又は前記核酸を含むベクターを提供する。
【0067】
本出願における「核酸」は、DNA又はRNA分子を包括する意味で用いられ、核酸における基本構成単位であるヌクレオチドには、天然ヌクレオチドだけでなく、糖又は塩基部位が改変されたアナログも含まれる。
【0068】
本出願の核酸は、単位体であるヌクレオチドが共有結合により連結されたDNA又はRNA配列であってもよく、具体的には、配列番号15~26のアミノ酸配列のDNA化変換(アミノ酸を61個のcodonに改変)の際に可能な全ての種類のうちいずれかのヌクレオチド配列であってもよく、より具体的には、本出願の配列番号15~26のアミノ酸配列のいずれかのアミノ酸配列に翻訳される各ヌクレオチドと90%以上、95%以上、97%以上、99%以上又は100%の相同性、類似性又は同一性を有し、翻訳されて目的とする酵素活性を示す核酸であってもよい。コドンの縮退(codon degeneracy)により、活性が同一のタンパク質、翻訳(Transcription)後のアミノ酸配列が同一の、具体的には配列番号15~26のいずれかのアミノ酸配列からなるタンパク質又はそれと相同性、類似性又は同一性を有するタンパク質に翻訳されるポリヌクレオチドも本出願に含まれることは言うまでもない。より具体的には、本出願の核酸は、配列を特に表記せず、配列番号15~26のアミノ酸配列に翻訳(translation)可能なあらゆるDNAコドンの種類からなるものであるが、これに限定されるものではない。
【0069】
また、公知の遺伝子配列から製造されるプローブ、例えば前記塩基配列の全部又は一部に対する相補配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることにより本出願の酵素をコードする配列であればいかなるものでもよい。
【0070】
前記「ストリンジェントな条件(stringent condition)」とは、ポリヌクレオチド間の特異的ハイブリダイゼーションを可能にする条件を意味する。このような条件は、文献(例えば、J. Sambrook et al., 同上)に具体的に記載されている。例えば、相同性(homology)又は同一性(identity)の高い遺伝子同士、80%以上、85%以上、具体的には90%以上、より具体的には95%以上、さらに具体的には97%以上、特に具体的には99%以上の相同性又は同一性を有する遺伝子同士をハイブリダイズし、それより相同性又は同一性の低い遺伝子同士をハイブリダイズしない条件、又は通常のサザンハイブリダイゼーション(southern hybridization)の洗浄条件である60℃、1×SSC、0.1%SDS、具体的には60℃、0.1×SSC、0.1%SDS、より具体的には68℃、0.1×SSC、0.1%SDSに相当する塩濃度及び温度において、1回、具体的には2回~3回洗浄する条件が挙げられる。
【0071】
ハイブリダイゼーションは、たとえハイブリダイゼーションの厳格さに応じて塩基間のミスマッチ(mismatch)が可能であっても、2つの核酸が相補的配列を有することが求められる。「相補的」とは、互いにハイブリダイゼーションが可能なヌクレオチド塩基間の関係を表すために用いられるものである。例えば、DNAにおいて、アデノシンはチミンに相補的であり、シトシンはグアニンに相補的である。よって、本出願には、実質的に類似する核酸配列だけでなく、全配列に相補的な単離された核酸フラグメントが含まれてもよい。
【0072】
具体的には、相同性又は同一性を有するポリヌクレオチドは、55℃のTm値でハイブリダイゼーションステップが行われるハイブリダイゼーション条件と前述した条件を用いて検知することができる。また、前記Tm値は、60℃、63℃又は65℃であってもよいが、これらに限定されるものではなく、その目的に応じて当業者により適宜調節される。
【0073】
ポリヌクレオチドをハイブリダイズする適切な厳格さはポリヌクレオチドの長さ及び相補性の程度に依存し、変数は当該技術分野で公知である。
【0074】
本出願における「ベクター」とは、好適な宿主内で標的変異型タンパク質を発現させることができるように、好適な調節配列に作動可能に連結された本出願の酵素をコードする核酸の塩基配列を含有するDNA産物を意味する。前記調節配列には、転写を開始するプロモーター、その転写を調節するための任意のオペレーター配列、好適なmRNAリボソーム結合部位をコードする配列、並びに転写及び翻訳の終結を調節する配列が含まれる。ベクターは、好適な宿主細胞内に形質転換されると、宿主ゲノムに関係なく複製又は機能することができ、ゲノム自体に組み込まれてもよい。
【0075】
本出願に用いられるベクターは、宿主細胞内で複製可能なものであれば特に限定されるものではなく、当該技術分野で公知の任意のベクターが用いられてもよい。通常用いられるベクターの例としては、天然状態又は組換え状態のプラスミド、コスミド、ウイルス及びバクテリオファージが挙げられる。例えば、ファージベクター又はコスミドベクターとしては、pWE15、M13、MBL3、MBL4、IXII、ASHII、APII、t10、t11、Charon4A、Charon21Aなどを用いることができ、プラスミドベクターとしては、pBR系、pUC系、pBluescriptII系、pGEM系、pTZ系、pCL系、pET系などを用いることができる。具体的にはpDZ、pACYC177、pACYC184、pCL、pECCG117、pUC19、pBR322、pMW118、pCC1BACベクターなどを用いることができる。
【0076】
本出願のさらに他の態様は、本出願の酵素をコードする核酸又は本出願の酵素をコードする核酸を含むベクターを含む形質転換体を提供する。
【0077】
本出願における「酵素をコードする核酸を含む形質転換体」又は「酵素をコードする核酸を含むベクターを含む形質転換体」とは、本出願のリブロースリン酸3-エピメラーゼが発現するように組換えられた微生物を意味する。例えば、リブロースリン酸3-エピメラーゼをコードする核酸を含むか、又はリブロースリン酸3-エピメラーゼをコードする核酸を含むベクターで形質転換されることにより、前記リブロースリン酸3-エピメラーゼを発現する宿主細胞又は微生物を意味する。本出願の目的上、前記形質転換体が発現するリブロースリン酸3-エピメラーゼは、配列番号15~26のいずれかのアミノ酸配列からなるものであるが、これに限定されるものではない。
【0078】
本出願における「形質転換」とは、本出願のリブロースリン酸3-エピメラーゼをコードする核酸を含むベクターを宿主細胞に導入することにより、宿主細胞内で前記核酸がコードするタンパク質を発現させることを意味する。形質転換された核酸は、宿主細胞内で発現するものであれば、宿主細胞の染色体内に挿入されて位置するか、染色体外に位置するかに関係なく、いかなるものでもよい。また、前記核酸は、本出願のリブロースリン酸3-エピメラーゼをコードする核酸をコードするDNAやRNAを含むものである。前記核酸は、宿主細胞に導入されて発現するものであれば、いかなる形態で導入されるものでもよい。例えば、前記核酸は、自ら発現する上で必要な全ての要素を含む遺伝子構造体である発現カセット(expression cassette)の形態で宿主細胞に導入されるものでもよい。通常、前記発現カセットは、前記核酸に作動可能に連結されたプロモーター(promoter)、転写終結シグナル、リボソーム結合部位及び翻訳終結シグナルを含む。前記発現カセットは、自己複製可能な発現ベクター形態であってもよい。また、前記核酸は、それ自体の形態で宿主細胞に導入され、宿主細胞において発現に必要な配列と作動可能に連結されたものであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0079】
また、前記「作動可能に連結」されたものとは、本出願のプシコース-6-リン酸のホスファターゼをコードする核酸の転写を開始及び媒介するプロモーター配列と前記遺伝子配列が機能的に連結されたものを意味する。
【0080】
前記核酸又はベクターの染色体内への挿入は、当該技術分野で公知の任意の方法、例えば相同組換え(homologous recombination)により行うことができるが、これに限定されるものではない。前記染色体に挿入されたか否かを確認するための選択マーカー(selection marker)をさらに含んでもよい。選択マーカーは、ベクターで形質転換された細胞を選択、すなわち標的核酸分子が挿入されたか否かを確認するためのものであり、薬物耐性、栄養要求性、細胞毒性剤に対する耐性、表面変異型タンパク質の発現などの選択可能表現型を付与するマーカーが用いられる。選択剤(selective agent)で処理した環境においては、選択マーカーを発現する細胞のみ生存するか、異なる表現形質を示すので、形質転換された細胞を選択することができる。
【0081】
本出願のベクターを形質転換する方法は、核酸を細胞内に導入するいかなる方法であってもよく、当該分野において公知であるように、宿主細胞に適した標準技術を選択して行うことができる。例えば、エレクトロポレーション(electroporation)、リン酸カルシウム(CaPO4)沈殿、塩化カルシウム(CaCl2)沈殿、レトロウイルス感染(retroviral infection)、微量注入法(microinjection)、ポリエチレングリコール(PEG)法、DEAE-デキストラン法、カチオン性リポソーム法、酢酸リチウム-DMSO法などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0082】
前記宿主細胞としては、DNAの導入効率が高く、導入されたDNAの発現効率が高い宿主を用いることが好ましく、例えばコリネ属微生物、エシェリキア属微生物、セラチア属微生物、バチルス属微生物、サッカロマイセス・セレビシエ属微生物又はピキア属微生物が挙げられ、具体的には大腸菌(E. coli)が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、GRAS菌株の全てに適用することができる。
【0083】
より具体的には、本出願の形質転換体は、E.coil BL21(DE3)/pET-CJ-ef7、E.coil BL21(DE3)/pET-CJ-ef12又はE.coil BL21(DE3)/pET-CJ-ef15であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0084】
本出願のさらに他の態様は、リブロースリン酸3-エピメラーゼ、それを発現する微生物、又は前記微生物の培養物を含むプシコース-6-リン酸生産用組成物を提供する。
【0085】
本出願のプシコース-6-リン酸生産用組成物は、フルクトース-6-リン酸をプシコース-6-リン酸に変換する活性を示すリブロースリン酸3-エピメラーゼ、それを発現する微生物、又は前記微生物の培養物を含むので、前記組成物をフルクトース-6-リン酸と接触(反応)させると、前記フルクトース-6-リン酸からプシコース-6-リン酸を生産することができる。
【0086】
具体的には、前記組成物は、フルクトース-6-リン酸を基質としてさらに含んでもよいが、これに限定されるものではない。
【0087】
本出願のプシコース-6-リン酸生産用組成物は、プシコース-6-リン酸生産用組成物に通常用いられる任意の好適な賦形剤をさらに含んでもよい。このような賦形剤としては、例えば保存剤、湿潤剤、分散剤、懸濁化剤、緩衝剤、安定化剤、等張化剤などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0088】
本出願のプシコース-6-リン酸生産用組成物は、金属イオン又は金属塩をさらに含んでもよい。一実施例において、前記金属イオンは、2価の陽イオンであり、具体的には、Ni、Mg、Ni、Co、Mn、Fe及びZnからなる群から選択される少なくとも1種の金属イオンである。より具体的には、本出願のプシコース-6-リン酸生産用組成物は、金属塩をさらに含み、さらに具体的には、前記金属塩は、NiSO4、MgSO4、MgCl2、NiCl2、CoSO4、CoCl2、MnCl2、MnSO4、FeSO4及びZnSO4からなる群から選択される少なくとも1種である。
【0089】
本出願のさらに他の態様は、フルクトース-6-リン酸(fructose-6-phosphate)にリブロースリン酸3-エピメラーゼ、それを発現する微生物、又は前記微生物の培養物を接触させるステップを含むプシコース-6-リン酸製造方法を提供する。
【0090】
本出願のリブロースリン酸3-エピメラーゼは、フルクトース-6-リン酸をプシコース-6-リン酸に変換する活性を示すので、前記リブロースリン酸3-エピメラーゼ、それを発現する微生物、又は前記微生物の培養物をフルクトース-6-リン酸に接触させると、前記フルクトース-6-リン酸からプシコース-6-リン酸を生産することができる。
【0091】
前記フルクトース-6-リン酸及びプシコース-6-リン酸に接触させて反応させる条件は、基質や酵素などを考慮して当業者が適宜選択することができる。
【0092】
具体的には、前記フルクトース-6-リン酸及びリブロースリン酸3-エピメラーゼに接触させてプシコース-6-リン酸を生産するステップは、pH5.0~9.0、温度40℃~80℃、及び/又は2時間~24時間の条件で行われるものであってもよく、より具体的にはpH6.0~pH8.0、温度40℃~60℃、及び/又は20時間~24時間の条件で行われるものであり、さらに具体的にはpH7.0、温度50℃、24時間の条件で行われるものであるが、これらに限定されるものではない。
【0093】
本出願のプシコース-6-リン酸製造方法は、製造したプシコース-6-リン酸を回収及び/又は精製するステップをさらに含んでもよいが、これらに限定されるものではない。
【0094】
前記プシコース-6-リン酸を回収及び/又は精製するステップは、当該技術分野で公知の方法で行うことができ、特定の方法に限定されるものではない。
【0095】
本出願のさらに他の態様は、リブロースリン酸3-エピメラーゼ、それを発現する微生物、又は前記微生物の培養物を含むプシコース生産用組成物を提供する。具体的には、前記組成物は、フルクトース-6-リン酸を基質としてさらに含むものであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0096】
本出願のプシコース生産用組成物は、フルクトース-6-リン酸からプシコース-6-リン酸を製造するリブロースリン酸3-エピメラーゼ以外に、プシコースを生産するのに必要な酵素、例えばプシコース-6-リン酸のリン酸を脱リン酸化してプシコースを生産するプシコース-6-リン酸ホスファターゼをさらに含むことによりプシコースを生産するものであってもよい。
【0097】
具体的には、本出願のプシコース生産用組成物は、グルコース-6-リン酸-イソメラーゼ、ホスホグルコムターゼ、ポリホスフェートグルコキナーゼ、α-グルカンホスホリラーゼ、デンプンホスホリラーゼ、マルトデキストリンホスホリラーゼ又はスクロースホスホリラーゼ、α-アミラーゼ、プルラナーゼ、イソアミラーゼ、α-グルカノトランスフェラーゼ、グルコアミラーゼ、スクラーゼ及びプシコース-6-リン酸ホスファターゼからなる群から選択される1つ以上の酵素、それを発現する微生物、又は前記微生物の培養物をさらに含むものであってもよく、具体的にはプシコース-6-リン酸ホスファターゼをさらに含むものであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0098】
より具体的には、本出願のプシコース生産用組成物は、(a)(i)デンプン、マルトデキストリン、スクロースもしくはその組み合わせ、グルコース、グルコース-1-リン酸、グルコース-6-リン酸もしくはフルクトース-6-リン酸、(ii)ホスフェート(phosphate)、(iii)プシコース-6-リン酸ホスファターゼ、(iv)グルコース-6-リン酸-イソメラーゼ、(v)ホスホグルコムターゼもしくはグルコキナーゼ、及び/又は(vi)α-グルカンホスホリラーゼ、デンプンホスホリラーゼ、マルトデキストリンホスホリラーゼ、スクロースホスホリラーゼ、α-アミラーゼ、プルラナーゼ、イソアミラーゼ、グルコアミラーゼもしくはスクラーゼをさらに含むか、(b)項目(a)の酵素を発現する微生物、又は項目(a)の酵素を発現する微生物の培養物をさらに含んでもよいが、これらに限定されるものではない。
【0099】
しかし、これらは例示にすぎず、本出願のリブロースリン酸3-エピメラーゼを用いてプシコースを生産できるものであれば、本出願のプシコース生産用組成物に含まれる酵素や、プシコース生産に用いられる基質はいかなるものでもよい。
【0100】
具体的には、本出願のデンプン/マルトデキストリンホスホリラーゼ(starch/maltodextrin phosphorylase, EC 2.4.1.1)及びα-グルカンホスホリラーゼは、ホスフェート(phosphate)をグルコースにリン酸化転移させてデンプン又はマルトデキストリンからグルコース-1-リン酸を生産する活性を有するタンパク質であればいかなるタンパク質であってもよい。前記デンプン/マルトデキストリンホスホリラーゼ(starch/maltodextrin phosphorylase, EC 2.4.1.1)及びα-グルカンホスホリラーゼは、ホスフェート(phosphate)をグルコースにリン酸化転移させてデンプン又はマルトデキストリンからグルコース-1-リン酸を生産する活性を有するタンパク質であればいかなるタンパク質であってもよい。前記スクロースホスホリラーゼ(sucrose phosphorylase, EC 2.4.1.7)は、ホスフェートをグルコースにリン酸化転移させてスクロースからグルコース-1-リン酸を生産する活性を有するタンパク質であればいかなるタンパク質であってもよい。上記デンプン液化・糖化酵素であるα-アミラーゼ(α-amylase, EC 3.2.1.1)、プルラナーゼ(pullulanse, EC 3.2.1.41)、イソアミラーゼ(isoamylase, EC 3.2.1.68)、4-α-グルカノトランスフェラーゼ(4-α-glucanotransferase, EC 2.4.1.25)及びグルコアミラーゼ(glucoamylase, EC 3.2.1.3)は、デンプン又はマルトデキストリンを脱分枝化されたマルトオリゴ糖又はグルコースに変換する活性を有するタンパク質であればいかなるタンパク質であってもよい。前記スクラーゼ(sucrase, EC 3.2.1.26)は、スクロースをグルコースに変換する活性を有するタンパク質であればいかなるタンパク質であってもよい。本出願のホスホグルコムターゼ(phosphoglucomutase, EC 5.4.2.2)は、グルコース-1-リン酸をグルコース-6-リン酸に変換する活性を有するタンパク質であればいかなるタンパク質であってもよい。ポリホスフェートグルコキナーゼ(polyphosphate glucokinase, EC 2.7.1.63)は、ポリホスフェートのリン酸をグルコースに転移させてグルコース-6-リン酸に変換する活性を有するタンパク質であればいかなるタンパク質であってもよい。本出願のグルコース-6-リン酸-イソメラーゼは、グルコース-6-リン酸をフルクトース-6-リン酸に変換する活性を有するタンパク質であればいかなるタンパク質であってもよい。本出願のプシコース-6-リン酸ホスファターゼは、プシコース-6-リン酸をプシコースに変換する活性を有するタンパク質であればいかなるタンパク質であってもよい。より具体的には、前記プシコース-6-リン酸ホスファターゼは、非可逆的にプシコース-6-リン酸をプシコースに変換する活性を有するタンパク質であってもよい。
【0101】
本出願のプシコース生産用組成物に含まれる酵素は、複数の酵素及び基質を同時に使用する同時酵素反応(one-pot enzymatic conversion)において高いプシコース変換率を示す。
【0102】
本出願のプシコース生産用組成物は、当該プシコース生産用組成物に通常用いられる任意の好適な賦形剤をさらに含んでもよい。このような賦形剤としては、例えば保存剤、湿潤剤、分散剤、懸濁化剤、緩衝剤、安定化剤、等張化剤などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0103】
本出願のプシコース生産用組成物は、金属イオン又は金属塩をさらに含んでもよい。一実施例において、前記金属イオンは、2価の陽イオンであってもよく、具体的には、Ni、Mg、Ni、Co、Mn、Fe及びZnからなる群から選択される少なくとも1種の金属イオンである。より具体的には、本出願のプシコース生産用組成物は、金属塩をさらに含み、さらに具体的には、前記金属塩は、NiSO4、MgSO4、MgCl2、NiCl2、CoSO4、CoCl2、MnCl2、MnSO4、FeSO4及びZnSO4からなる群から選択される少なくとも1種である。
【0104】
本出願のさらに他の態様は、フルクトース-6-リン酸にリブロースリン酸3-エピメラーゼ、それを発現する微生物、又は前記微生物の培養物を接触させるステップを含むプシコース製造方法を提供する。
【0105】
具体的には、本出願のプシコース製造方法は、フルクトース-6-リン酸にリブロースリン酸3-エピメラーゼ、前記リブロースリン酸3-エピメラーゼを発現する微生物、又は前記リブロースリン酸3-エピメラーゼを発現する微生物の培養物を接触させ、前記フルクトース-6-リン酸をプシコース-6-リン酸に変換するステップと、前記プシコース-6-リン酸にプシコース-6-リン酸ホスファターゼ、それを発現する微生物、又は前記微生物の培養物を接触させ、プシコース-6-リン酸をプシコースに変換するステップとを順に含むものであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0106】
また、本出願のプシコース製造方法は、前記フルクトース-6-リン酸をプシコース-6-リン酸に変換するステップの前に、グルコース-6-リン酸(Glucose-6-phosphate)にグルコース-6-リン酸-イソメラーゼ、前記グルコース-6-リン酸-イソメラーゼを発現する微生物、又は前記グルコース-6-リン酸-イソメラーゼを発現する微生物の培養物を接触させ、前記グルコース-6-リン酸をフルクトース-6-リン酸に変換するステップをさらに含んでもよい。
【0107】
本出願のプシコース製造方法は、前記グルコース-6-リン酸をフルクトース-6-リン酸に変換するステップの前に、グルコース-1-リン酸(Glucose-1-phosphate)にホスホグルコムターゼ、前記ホスホグルコムターゼを発現する微生物、又は前記ホスホグルコムターゼを発現する微生物の培養物を接触させ、前記グルコース-1-リン酸をグルコース-6-リン酸に変換するステップをさらに含んでもよい。
【0108】
本出願のプシコース製造方法は、前記グルコース-6-リン酸をフルクトース-6-リン酸に変換するステップの前に、グルコース(Glucose)にポリホスフェートグルコキナーゼ、前記ポリホスフェートグルコキナーゼを発現する微生物、又は前記ポリホスフェートグルコキナーゼを発現する微生物の培養物、及びポリホスフェートを接触させ、前記グルコースをグルコース-6-リン酸に変換するステップをさらに含んでもよい。
【0109】
本出願のプシコース製造方法は、前記グルコース-1-リン酸をグルコース-6-リン酸に変換するステップの前に、デンプン、マルトデキストリン、スクロース又はその組み合わせにα-グルカンホスホリラーゼ、デンプンホスホリラーゼ、マルトデキストリンホスホリラーゼもしくはスクロースホスホリラーゼ、前記ホスホリラーゼを発現する微生物、又は前記ホスホリラーゼを発現する微生物の培養物、及びホスフェートを接触させ、前記デンプン、マルトデキストリン、スクロース又はその組み合わせをグルコース-1-リン酸に変換するステップをさらに含んでもよい。
【0110】
本出願のプシコース製造方法は、前記デンプン、マルトデキストリン、スクロース又はその組み合わせをグルコース-1-リン酸に変換するステップの前に、デンプン、マルトデキストリン、スクロース又はその組み合わせにα-アミラーゼ、プルラナーゼ、イソアミラーゼ、グルコアミラーゼもしくはスクラーゼ、前記α-アミラーゼ、プルラナーゼ、イソアミラーゼ、グルコアミラーゼもしくはスクラーゼを発現する微生物、又は前記α-アミラーゼ、プルラナーゼ、イソアミラーゼ、グルコアミラーゼもしくはスクラーゼを発現する微生物の培養物を接触させ、前記デンプン、マルトデキストリン、スクロース又はその組み合わせをグルコースに変換するステップをさらに含んでもよい。
【0111】
本出願のプシコース製造方法に用いられるリブロースリン酸3-エピメラーゼ、プシコース-6-リン酸ホスファターゼ、α-グルカンホスホリラーゼ、ホスホグルコムターゼ(又はホスホマンノムターゼ)、グルコース-6-リン酸イソメラーゼ、プシコース-6-リン酸-3-エピメラーゼ(又はリブロース-5-リン酸-3-エピメラーゼ)、プルラナーゼ(又はイソアミラーゼ)、4-α-グルカノトランスフェラーゼ、ポリホスフェートグルコキナーゼなどは、最終産物であるプシコースに対する副反応がないか、少ないものであってもよい。
【0112】
本出願のプシコース製造方法は、高濃度のデンプンを分解してリン酸・糖変換酵素との複合的な組み合わせにより最適/最大のプシコースを生産するものであり、プシコースの最大生産性の確保のために、最大8種類の酵素を組み合わせて用いる。
【0113】
第一に、デンプンを分解してグルコース-1-リン酸を生産する酵素であるグルカンホスホリラーゼ(glucan phosphorylase, glycogen phosphorylase, EC 2.4.1.1)は、α-1,4結合のデンプンから特異的にグルコース-1-リン酸(glucose-1-phosphate)を生成する。第二に、このように生成されたグルコース-1-リン酸をグルコース-6-リン酸(glucose-6-phosphate)に変換するホスホグルコムターゼ(phosphoglucomutase, EC 2.7.5.1)又はホスホマンノムターゼ(phosphomannomutase, EC 5.4.2.8)が中間の複合酵素反応に用いられる。第三に、使用酵素として、グルコース-6リン酸をフルクトース-6-リン酸(fructose-6-phosphate)に変換するグルコース-6-リン酸イソメラーゼ(glucose-6-phosphate isomerase, EC 5.3.1.9)が用いられる。第四に、本出願のフルクトース-6-リン酸をプシコース-6-リン酸に変換する酵素であるフルクトース-6-リン酸-3-エピメラーゼを用いると、可逆反応によりプシコース-6-リン酸を生成することができる。
【0114】
さらに、デンプン利用率を高める目的で、アミロペクチン(amylopectin)のα-1,4以外のα-1,6結合の枝分かれ(Branch)結合を分解するために、プルラナーゼ(pullulanase, EC 3.2.1.41)又はイソアミラーゼ(isoamylase EC 3.2.1.68)酵素が共に用いられ、また、グルカンホスホリラーゼのデンプン活用を向上させるために、グルカノトランスフェラーゼ(4-alpha-glucanotransferase, EC 2.4.1.25)が用いられてもよい。相対的に活性の低い基質であるマルトース(maltose)又は他のオリゴ糖にα-1,4結合の形態でオリゴ糖を結合すると、細分化されたデンプン基質の利用率を高めることができる。さらに、ポリホスフェートグルコキナーゼ(polyphosphate-glucose phosphotransferase, EC 2.7.1.63)を用いると、デンプン使用後に分解されたグルコースから複合酵素反応によりさらにプシコースを生産することができる。
【0115】
また、本出願のプシコース製造方法において、本出願の接触は、pH5.0~9.0、具体的にはpH6.0~8.0で行われる。
【0116】
本出願のプシコース製造方法において、本出願の接触は、温度40℃~80℃、具体的には温度40℃~60℃又は50℃~60℃で行われる。
【0117】
本出願のプシコース製造方法において、本出願の接触は、2時間~24時間、具体的には6~24時間行われる。
【0118】
本出願のプシコース製造方法において、本出願の接触は、pH5.0~9.0、温度40℃~80℃、及び/又は2時間~24時間の条件で行われる。具体的には、前記接触は、pH6.0~8.0、温度40℃~60℃もしくは50℃~60℃、及び/又は6時間~24時間の条件で行われる。
【0119】
本出願のプシコース製造方法は、プシコースを精製するステップをさらに含んでもよい。本出願の精製は、特に限定されるものではなく、本出願の技術分野で通常用いられる方法を用いることができる。例えば、クロマトグラフィー、分別結晶、イオン精製などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。前記精製方法は、1つだけ行ってもよく、2種以上の方法を共に行ってもよい。例えば、クロマトグラフィーによりプシコース生成反応物を精製してもよい。前記クロマトグラフィーによる糖の分離は、分離しようとする糖とイオン樹脂に付着した金属イオン間の小さな結合力の差を用いて行うことができる。
【0120】
また、本出願は、本出願の精製するステップの前又は後に、脱色及び/又は脱塩を行うステップをさらに含んでもよい。前記脱色及び/又は脱塩を行うことにより、不純物のない、より精製されたプシコース反応物が得られる。
【実施例】
【0121】
以下、実施例を挙げて本出願を詳細に説明するが、これらは本出願の理解を助けるためのものにすぎず、本出願がこれらに限定されるものではない。
【0122】
本出願において、アミノ酸は次の略語又はアミノ酸名で表示される。
【0123】
【実施例1】
【0124】
各酵素の組換え発現ベクター及び形質転換微生物の作製
本出願のプシコース製造経路に必要な各酵素を提供するために耐熱性酵素の遺伝子を選択し、さらに高活性のエピマー化活性のためにS-X-M-C(配列番号4)又はG-X-X-X-X-F(配列番号5)のアミノ酸配列を有する酵素の遺伝子を選択した(表2)。
【0125】
前述したように選択したアミノ酸の遺伝子は、遺伝子合成又は各分譲菌株の染色体DNA(genomic DNA)から各遺伝子を重合酵素連鎖反応(PCR)により増幅し、増幅した各DNAは、DNA assembly methodsを用いて大腸菌発現用プラスミドベクターpET21a(Novagen社)に挿入することにより、組換え発現ベクターを作製した。前記発現ベクターは、通常の形質転換方法[参照:Sambrook et al. 1989]で大腸菌(E. coli)BL21(DE3)菌株にそれぞれ形質転換することにより、形質転換微生物を作製した。
【0126】
具体的には、配列番号6~26のプシコース-6-リン酸3-エピメラーゼを大腸菌(E. coli)BL21(DE3)菌株にそれぞれ形質転換した。それらのうち前記方法により製造した配列番号19、20、22の形質転換微生物を2019年4月16日付けで国際寄託機関である韓国微生物保存センター(KCCM)に寄託番号KCCM12494P(E.coil BL21(DE3)/pET-CJ-fep19)、KCCM12495P(E.coil BL21(DE3)/pET-CJ-fep20)、KCCM12496P(E.coil BL21(DE3)/pET-CJ-fep22)として寄託した。
【実施例2】
【0127】
組換え酵素の作製
組換え酵素を作製するために、LB液体培地5mlを含む培養チューブに実施例1で作製した各形質転換微生物を接種し、600nmでの吸光度が2.0になるまで37℃の振盪培養器で種菌培養を行った。LB液体培地を含む培養フラスコに種菌培養を行った培養液を接種して本培養を行った。600nmでの吸光度が2.0になったら1mM IPTGを添加して組換え酵素の発現生産を誘導した。前記培養過程における攪拌速度は180rpmとし、培養温度は37℃が保持されるようにした。培養液を8,000×g、4℃で20分間遠心分離して菌体を回収した。回収した菌体を50mM Tris-HCl(pH8.0)緩衝液で2回洗浄し、同じ緩衝液に懸濁して超音波細胞破砕機で細胞を破砕した。細胞破砕物を13,000×g、4℃で20分間遠心分離して上清のみ回収した。前記上清からHis-tagアフィニティークロマトグラフィーを用いて組換え酵素を精製し、50mM Tris-HCl(pH8.0)緩衝液で透析し、その後反応に用いた。
【実施例3】
【0128】
プシコース-6-リン酸3-エピメラーゼのモデリング、プシコース3-エピマー化活性の確認、及び配列の比較
リブロース-リン酸-3-エピメラーゼとして公知の配列番号9のアミノ酸配列をI-TASSER、Phyre2、Galaxyweb serverに入力してタンパク質構造を分析した。
【0129】
その結果、前記酵素は、β-sheetが中心に位置し、それをα-helix構造が覆うTIM-barrel foldを有することが確認された。プシコース又はプシコース-6-リン酸結合部位と予想される構造(TIM-barrel fold)内のモチーフI(V-D-G)及びIII(M-X-X-X’-P-G)を選定した(
図1, Blue dotted circle (motif I), Red dotted circle (motif III), example structure-model (配列番号9))。
【0130】
一方、従来から知られているプシコース-6-リン酸3-エピメラーゼ(ADL69228,WP_034772999,WP_029098887;特許文献2,特許文献3)はプシコースをエピマー化してフルクトースを生産する活性を示すので、プシコース生産収率を低減する。
【0131】
よって、本発明者らは、構造的に(M-X-X-D-P-G)のアスパラギン酸(D)は負電荷(Negative charge)によりプシコースの3-エピマー化活性に影響を与えるものと予測し、プシコースの3-エピマー化活性に影響を与えないものと予測されるモチーフIII(M-X-X-X’-P-G)のうちX’がアスパラギン酸と異なる電荷を有するN/Kを有する酵素を選択した(WP_085113038,PKM55438,WP_117016900)。
【0132】
その結果、酵素中の特定モチーフの種類によってプシコース3-エピマー化活性が変化し得ることが確認された。
【実施例4】
【0133】
リブロース-リン酸-3-エピメラーゼのプシコース-6-リン酸変換活性の確認
本出願のプシコース-6-リン酸に変換する酵素であるリブロース-リン酸-3-エピメラーゼの活性を確認するために、50mMフルクトース-6-リン酸又は20mMグルコース-1-リン酸を50mM Tris-HCl(pH7.0)、50mM Sodium-posphate(pH6~7)、又は50mM Potassium-posphate(pH6~7)緩衝液に懸濁し、その後ホスホグルコムターゼ又はホスホマンノムターゼ、グルコース-6-リン酸イソメラーゼ、プシコース-6-リン酸ホスファターゼ、及び実施例2で作製した組換えリブロース-リン酸-3-エピメラーゼをそれぞれ0.1unit/mlで添加し、45℃~70℃で1~24時間反応させた。
【0134】
プシコース3-エピメラーゼの活性分析のために、プシコースを50mM Tris-HCl(pH7.0)、50mM Sodium-posphate(pH6~7)、又は50mM Potassium-posphate(pH6~7)緩衝液に1%(w/v)の濃度で懸濁し、その後リブロース-リン酸-3-エピメラーゼを0.1unit/mlで添加し、45℃~70℃で1~24時間反応させた。HPLCを用いてグルコース、フルクトース、プシコース生成の有無を分析した。HPLC分析は、SP_0810(Shodex社)カラムとAminex HPX-87C(Bio-RAD社)カラムを用いて、80℃で移動相として0.6ml/minの流速で流して行い、Refractive Index Detector(RID)で検出し、前記酵素とそれぞれ混合して生成される一般の糖であるグルコース、フルクトース、プシコースを定性及び定量評価することにより確認するものとした。定量評価においては、LC感度、速い基質変換速度、及び基質濃度による自然発生的な実験誤差を考慮して、初期プシコース濃度に対するフルクトース変換率の許容誤差を5%以下に設定した。
【0135】
表2はプシコース6リン酸3-エピマー化活性を示す複数のリブロース-リン酸-3-エピメラーゼのうち、M-X-X-N/K-P-G及びV-D-Gモチーフの有無を基準にプシコース3-エピマー化活性のない酵素を区分したものであり、この表から、特定モチーフ、具体的には配列番号1のモチーフを含み、配列番号2のモチーフを含まず、その代わりに同じ位置に配列番号3のモチーフを含む酵素がプシコース6-リン酸に特異的に高いエピマー化活性を有することが確認される。また、配列A、Bから分かるように、Motif I、IIIが含まれると、プシコース6-リン酸に特異的に高いエピマー化活性を有することが確認される。
【0136】
【0137】
また、本出願の配列番号20のアミノ酸配列を有する酵素は、従来から知られているプシコース-6-リン酸3-エピメラーゼに比べて、フルクトース生成が大幅に低いことが確認された(
図2)。
【0138】
これは、前記モチーフの存在有無がアルロース生産収率に重要な役割を果たすことを示唆するものである。
【0139】
また、配列番号4及び/又は配列番号5を含む配列において、プシコース6リン酸3-エピマー化活性が高まることが確認された。
【実施例5】
【0140】
複合酵素(多重酵素)反応によるプシコース生産活性の分析
マルトデキストリンからプシコースを生産するために、グルカンホスホリラーゼ、プルラナーゼ、4-α-グルカノトランスフェラーゼ、ホスホグルコムターゼ、グルコース-6-リン酸-イソメラーゼ、プシコース-6-リン酸ホスファターゼ、及び本出願のフルクトース-6-リン酸-3-エピメラーゼを同時に(one-pot)反応させた。
【0141】
具体的には、1~5mM MgCl2、10~50mMリン酸ナトリウム(Sodium phosphate pH7.0)に5%(w/v)マルトデキストリンを添加した溶液に上記7種の酵素をそれぞれ0.1 unit/mlで添加し、50℃の温度で12時間反応させた。
【0142】
反応終了後に、HPLCを用いて反応生成物におけるプシコースを分析した。HPLC分析は、Aminex HPX-87C(Bio-RAD社)カラムを用いて、80℃で移動相として0.6ml/minの流速で流して行い、Refractive Index Detectorで検出した。その結果、複合酵素反応によりマルトデキストリンからプシコースが生成されることが確認された。
【0143】
【0144】
以上の説明から、本出願の属する技術分野の当業者であれば、本出願がその技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態で実施できることを理解するであろう。なお、上記実施例はあくまで例示的なものであり、限定的なものでないことを理解すべきである。本出願には、明細書ではなく請求の範囲の意味及び範囲とその等価概念から導かれるあらゆる変更や変形された形態が含まれるものと解釈すべきである。
【配列表】