(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】浸水検知装置
(51)【国際特許分類】
G01F 23/00 20220101AFI20241007BHJP
G08B 25/04 20060101ALI20241007BHJP
G08B 21/10 20060101ALI20241007BHJP
G08B 23/00 20060101ALI20241007BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20241007BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20241007BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20241007BHJP
G01F 23/24 20060101ALI20241007BHJP
【FI】
G01F23/00 D
G08B25/04 K
G08B21/10
G08B23/00 530C
H01M10/44 Q
H01M10/48 P
H02J7/00 302C
G01F23/24 Z
(21)【出願番号】P 2023133774
(22)【出願日】2023-08-21
【審査請求日】2023-10-10
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】596100812
【氏名又は名称】京セラコミュニケーションシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092956
【氏名又は名称】古谷 栄男
(74)【代理人】
【識別番号】100101018
【氏名又は名称】松下 正
(72)【発明者】
【氏名】吉村 柾輝
(72)【発明者】
【氏名】熊澤 孝一
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-066488(JP,A)
【文献】特開2007-278762(JP,A)
【文献】特開2021-060268(JP,A)
【文献】特開2018-132307(JP,A)
【文献】国際公開第2018/207266(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 23/00
G08B 21/00-31/00
H01M 10/42-10/48
H02J 7/00
G01F 23/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の監視対象箇所に設けられた複数の浸水検知装置と、当該浸水検知装置と通信可能に設けられたサーバ装置と、前記サーバ装置と通信可能に設けられた端末装置とを備えた浸水検知システムであって、
前記浸水検知装置は、
浸水を検知する位置に設けられ、浸水によって起電力を生じる水電池と、
前記水電池の出力電力を蓄電する蓄電池と、
水電池または蓄電池から電力供給を受けて動作する制御回路と、
を備え、
前記制御回路は、
前記水電池が浸水したことによって生じた電力によって駆動し、
水電池の出力電圧を取得し、当該出力電圧の値に応じて状況を判断する浸水判断手段と、
判断した状況を通信回路を用いてサーバ装置に送信する通信手段と、
を備え、
前記制御回路は、浸水がなくなってからも、所定時間の間、浸水時に電力の蓄積された蓄電池からの電力供給を受けて、浸水判断手段および通信手段を動作させることを特徴としており、
前記サーバ装置は、
前記浸水検知装置からの状況を受信して、当該浸水検知装置の設けられた監視対象箇所に関連づけて記録し、
前記端末装置は、
前記サーバ装置に記録された各監視対象箇所に関連づけられた状況を取得して出力することを特徴とする浸水検知システム。
【請求項2】
浸水を検知する位置に設けられ、浸水によって起電力を生じる水電池と、
前記水電池の出力電力を蓄電する蓄電池と、
水電池または蓄電池から電力供給を受けて動作する制御回路と、
を備えた浸水検知装置であって、
前記制御回路は、
前記水電池が浸水したことによって生じた電力によって駆動し、
水電池の出力電圧を取得し、当該出力電圧の値に応じて状況を判断する浸水判断手段と、
判断した状況を通信回路を用いてサーバ装置に送信する通信手段と、
を備え、
前記制御回路は、浸水がなくなってからも、所定時間の間、浸水時に電力の蓄積された蓄電池からの電力供給を受けて、浸水判断手段および通信手段を動作させることを特徴とする浸水検知装置。
【請求項3】
請求項2の浸水検知装置において、
前記浸水判断手段は、
水電池の出力電圧が第1の所定値以上であると、状況を「浸水検知」であると判断し、
水電池の出力電圧が第2の所定値以下であると、状況を「浸水解消」と判断することを特徴とする浸水検知装置。
【請求項4】
請求項3の浸水検知装置において、
前記浸水判断手段は、
水電池の出力電圧が第1の所定値を超えた状態が第1の所定時間継続すると、状況を「浸水継続」であると、さらに判断し、
水電池の出力電圧が第2の所定値以下である状態が第2の所定時間継続すると、状況を「浸水解消継続」と判断することを特徴とする浸水検知装置。
【請求項5】
請求項2の浸水検知装置において、
前記制御回路は、前記水電池が水に浸されて起動し、データ取得モード用のスイッチ操作によってデータ取得モードとなり、
データ取得モードにおいて、前記通信回路を用いて、設定サーバ装置から動作設定パラメータを受信するデータ取得手段をさらに備え、
前記データ取得モードにおいては、前記通信手段は、前記状況の送信をしないことを特徴とする浸水検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、浸水の有無を検知する浸水検知装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
集中豪雨などによって洪水が発生し、建物や道路が浸水する事態が生じている。このような浸水状況を各地点においてリアルタイムに検知して報知することができれば、住民避難などに利用して被害を予防したり小さくしたりすることができる。
【0003】
このような目的で、浸水を検知する装置が提案されている、たとえば、特許文献1には、
図20に示すような浸水検知装置2が開示されている。
【0004】
制御回路6・通信部8は、電池10によって電力を供給されて動作する。制御回路6は、水電池4の出力電圧を監視している。
【0005】
浸水が生じるまでは、水電池4は出力電圧を出さない。浸水が生じて、水電池4が水没すると、水電池4は出力電圧を生じる。制御回路6は、この出力電圧が大きくなったことを検知し、水没があったことを検知する。
【0006】
制御回路6は、通信部8を用いて、水没があった旨の信号をサーバ装置(図示せず)に送信する。
【0007】
図20に示すような浸水検知装置2を、各監視場所に設けておけば、サーバ装置において、いずれの場所が浸水したかを得ることができる。
【0008】
なお、特許文献1の浸水検知装置2では、制御回路6は、水電池4の生成した電圧を検知するようにしているので、検知のために制御回路6の側から電圧や電流を与える必要が無い。したがって、電池10を長く持たせることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1のような従来技術では次のような問題があった。
【0011】
従来技術においては、電池10の寿命を長く保持し、浸水検知措置2の監視時間を長くすることができている。とはいえ、長期の使用によって電池10が消耗すると、浸水検知装置2が機能せず、浸水を検知できない事態が想定される。
【0012】
この発明は、上記のような問題点を解決して、電池消耗による浸水検知ミスを防ぐことのできる浸水検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明の独立して適用可能ないくつかの特徴を列挙する。
【0014】
(1)(2)この発明に係る浸水検知システムは、複数の監視対象箇所に設けられた複数の浸水検知装置と、当該浸水検知装置と通信可能に設けられたサーバ装置と、前記サーバ装置と通信可能に設けられた端末装置とを備えた浸水検知システムであって、前記浸水検知装置は、浸水を検知する位置に設けられ、浸水によって起電力を生じる水電池と、前記水電池の出力電力を蓄電する蓄電池と、水電池または蓄電池から電力供給を受けて動作する制御回路とを備え、前記制御回路は、水電池の出力電圧を取得し、当該出力電圧の値に応じて状況を判断する浸水判断手段と、判断した状況を通信回路を用いてサーバ装置に送信する通信手段とを備え、
前記制御回路は、浸水がなくなってからも、所定時間の間、浸水時に電力の蓄積された蓄電池からの電力供給を受けて、浸水判断手段および通信手段を動作させることを特徴としており、前記サーバ装置は、前記浸水検知装置からの状況を受信して、当該浸水検知装置の設けられた監視対象箇所に関連づけて記録し、前記端末装置は、前記サーバ装置に記録された各監視対象箇所に関連づけられた状況を取得して出力することを特徴とする浸水検知システム。
【0015】
したがって、電池の消耗による浸水検知不良を生じるおそれの少ない浸水検知装置を提供することができる。
【0016】
(3)この発明に係る浸水検知装置は、浸水判断手段が、水電池の出力電圧が第1の所定値以上であると、状況を「浸水検知」であると判断し、水電池の出力電圧が第2の所定値以下であると、状況を「浸水解消」と判断することを特徴としている。
【0017】
したがって、浸水の有無を適切に判断することができる。
【0018】
(4)この発明に係る浸水検知装置は、浸水判断手段が、水電池の出力電圧が第1の所定値を超えた状態が第1の所定時間継続すると、状況を「浸水継続」であると、さらに判断し、水電池の出力電圧が第2の所定値以下である状態が第2の所定時間継続すると、状況を「浸水解消継続」と判断することを特徴としている。
【0019】
したがって、より正確に浸水状況を判断することができる。
【0020】
(5)この発明に係る浸水検知装置は、制御回路が、データ取得モードにおいて、前記通信回路を用いて、設定サーバ装置から動作設定パラメータを受信するデータ取得手段をさらに備えることを特徴としている。
【0021】
したがって、設定サーバ装置から動作設定パラメータを得ることができる。
【0022】
(6)この発明に係る浸水検知装置は、浸水を検知する位置に設けられた枠体の中に設けられ、浸水によって起電力を生じる水電池と、水電池から電力供給を受けて動作する制御回路と、を備えた浸水検知装置であって、前記制御回路は、水を検知するセンサの出力を取得し、当該センサの出力に応じて状況を判断する浸水判断手段と、判断した状況を通信回路を用いてサーバ装置に送信する通信手段とを備え、前記枠体は、前記水電池が起電力を生じるために必要な水位より上に水を導入・排出するための孔を有していることを特徴としている。
【0023】
したがって、電池の消耗による浸水検知不良を生じるおそれの少ない浸水検知装置を提供することができる。
【0024】
(7)この発明に係る浸水検知装置は、浸水を検知する位置に設けられ、浸水によって起電力を生じる水電池と、水電池から電力供給を受けて動作する制御回路とを備えた浸水検知装置であって、前記制御回路は、水電池からの電力供給によって動作を行っている間は、所定間隔にて、水没している旨の状況を、通信回路を用いてサーバ装置に送信することを特徴としている。
【0025】
したがって、電池の消耗による浸水検知不良を生じるおそれの少ない浸水検知装置を提供することができる。
【0026】
(8)この発明に係る浸水検知装置は、浸水を検知する位置に設けられ、浸水によって起電力を生じる水電池と、水電池から電力供給を受けて動作する制御回路とを備えた浸水検知装置であって、前記制御回路は、水電池の出力電圧を取得し、当該出力電圧が所定値を超えていると水没であると判断する浸水判断手段と、前記水没である旨の判断を通信回路を用いてサーバ装置に送信する通信手段とを備えている。
【0027】
したがって、電池の消耗による浸水検知不良を生じるおそれの少ない浸水検知装置を提供することができる。
【0028】
「浸水判断手段」は、実施形態においては、ステップS5、S10、S15、S20がこれに対応する。
【0029】
「通信手段」は、実施形態においては、ステップS6、S11、S16、S21などがこれに対応する。
【0030】
「装置」とは、1台のコンピュータによって構成されるものだけでなく、ネットワークなどを介して接続された複数のコンピュータによって構成されるものも含む概念である。したがって、本発明の手段(あるいは手段の一部でもよい)が複数のコンピュータに分散されている場合、これら複数のコンピュータが装置に該当する。
【0031】
「プログラム」とは、CPUにより直接実行可能なプログラムだけでなく、ソース形式のプログラム、圧縮処理がされたプログラム、暗号化されたプログラム、オペレーティングシステムと協働してその機能を発揮するプログラム等を含む概念である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】第1の実施形態による浸水検知装置50の機能構成である。
【
図4】浸水検知装置50のハードウエア構成である。
【
図5】管理サーバ装置S(端末装置T)のハードウエア構成である。
【
図6】制御プログラム70のフローチャートである。
【
図7】制御プログラム70のフローチャートである。
【
図8】制御プログラム70のフローチャートである。
【
図9】制御プログラム70のフローチャートである。
【
図11】基地局B1~B4と追跡サーバ装置Cを示す図である。
【
図16】他の例による電源室57、計測室59の構造を示す図である。
【
図17】第2の実施形態による浸水検知装置50の機能構成図である。
【
図19】他の例による制御プログラムのフローチャートである。
【
図20】従来の浸水検知装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
1.第1の実施形態
1.1機能的構成
図1に、この発明の一実施形態による浸水検知装置の機能構成図を示す。
【0034】
水電池30は、水に反応して起電力を生じるものである。制御回路20は、この水電池30からの電力を電源として動作するので、水電池30が水没するまで、制御回路20は動作しない。
【0035】
水電池30が水没すると、制御回路20に電力が供給されて動作を開始する。動作を開始した制御回路20の浸水判断手段22は、水電池30の出力電圧を計測し、出力電圧が第1所定値以上であれば、状況を「浸水検知」であると判断する。
【0036】
通信手段24は、通信回路26を用いて、判断した状況(上記では「浸水検知」)をサーバ装置(図示せず)に送信する。
【0037】
水が退いて、水電池30が水没しなくなると、水電池の出力電圧は低下し、ついには出力電圧はなくなる。したがって、制御回路20は、水電池30からの電力供給を受けることができなくなる。
【0038】
しかし、水電池30が浸水していた間、その出力電圧は蓄電池32に与えられている。蓄電池32の出力電圧は、制御回路20を動作させるための電源として与えられている。したがって、水が退いた後も、蓄電池32に蓄えられた電力によって、制御回路20の動作は継続される。
【0039】
このようにして動作が継続された制御回路20の浸水判断手段22は、水電池30の出力電圧を計測し、出力電圧が第2の所定値以下であれば、状況を「浸水解消」と判断する。
【0040】
通信手段24は、通信回路26を用いて、判断した状況(上記では「浸水解消」)をサーバ装置(図示せず)に送信する。
【0041】
蓄電池32の電力が使い果たされると、初期状態に戻って、制御回路20が停止する。
【0042】
この実施形態では、水電池30を電源として制御回路20を動作させているので、浸水が生じるまでは無駄な電力消費がない。また、水没した水電池30の出力電圧を蓄電する蓄電池32を設け、これによっても制御回路20を動作可能としている。したがって、水没解消後も、制御回路20が動作して状況をサーバ装置に送信することができる。
【0043】
1.2浸水検知装置の外観
図2に、浸水検知装置50の物理的構造を示す。筐体52の下部には、水電池30が設けられている。筐体52の最下部および側面には、開口53が設けられており、浸水時に筐体52の中に水が導入されるようになっている。
【0044】
水電池30の上部には、水密室56が設けられ、蓋58によって閉じることで内部が水密に保たれる構造となっている。水密室56の内部には、制御回路20が設けられ、浸水時においても水に浸されることがないようにされている。
【0045】
水電池30と制御回路20は、制御回路20の水密を保ちつつ、電源線25によって接続されている。電源線25は、制御回路20の電源端子に接続されるとともに、水密室56内に設けられた蓄電池32に接続されている。
【0046】
また、筐体52には、水密に保持されたボタンスイッチ21が設けられ、制御回路20に接続されている。
【0047】
筐体52の背面には、ネジ(図示せず)などにより蓋54が取り付けられてカバーがなされる。
【0048】
このような浸水検知措置50は、監視対象箇所の電柱や電信柱や街灯柱などに取り付けられる。
【0049】
1.3システム構成およびハードウエア構成
図3に、浸水検知システムのシステム構成を示す。浸水検知装置50は、LPWA(Low Power Wide Area)などの無線電波を送信する。追跡サーバ装置Cは、基地局(図示せず)を介して、浸水検知装置50からの情報を取得するとともに、浸水検知装置50の位置を取得する。
【0050】
管理サーバ装置Sは、インターネットを介して、追跡サーバ装置Cと通信可能である。管理サーバ装置Sは、浸水検知装置50から情報やその位置を取得することができる。
【0051】
したがって、管理サーバ装置Sには、各浸水検知装置50によって検知された状況が記録されることになる。端末装置Tは、インターネットを介して、管理サーバ装置Sに記録された各浸水検知装置50の状況を取得することができる。
【0052】
図4に、浸水検知装置50のハードウエア構成を示す。この実施形態では、CPU60を用いて制御回路20を構成するようにしている。
【0053】
CPU60には、メモリ62、LPWA通信回路26、不揮発性メモリ64、ボタンスイッチ21、電圧センサ66が接続されている。LPWA通信回路26は、LPWA方式による無線通信にて、無線電波を送信する回路である。
【0054】
不揮発性メモリ64には、オペレーティングシステム68、制御プログラム70が記録されている。制御プログラム70は、オペレーティングシステム68と協働してその機能を発揮するものである。
【0055】
上記の制御回路20は、水電池30または蓄電池32からの電力を電源電圧として動作する。なお、蓄電池32は、水電池30によって充電されるように接続されている。電圧センサ66は、水電池30の出力電圧(起電力)を計測するものである。
【0056】
図5に、管理サーバ装置Sのハードウエア構成を示す。CPU80には、メモリ81、ディスプレイ82、SSD83、DVD-ROMドライブ84、キーボード/マウス85、通信回路86が接続されている。
【0057】
通信回路86は、インターネットに接続するための回路である。SSD83には、オペレーティングシステム87およびサーバプログラム88が記録されている。サーバプログラム88は、オペレーティングシステム87と協働してその機能を発揮するものである。これらプログラムは、DVD-ROM89に記録されていたものを、DVD-ROMドライブ84を介してインストールしたものである(ダウンロードなどによってインストールしてもよい)。
【0058】
端末装置Tのハードウエア構成も同様である。
図5のかっこ内に、端末装置Tを指す場合の符号を示した。なお、端末装置Tにおいては、サーバプログラム88に代えて、端末プログラム98がSSD93に記録されている。
【0059】
1.4浸水検知処理
図6に、浸水検知装置50の制御プログラム70のフローチャートを示す。前述のように、制御回路20は、水電池30の出力電圧を電源として動作する。したがって制御回路20は、水没が生じるまで動作しない。すなわち、LPWA通信回路26による電波の送信がない。これにより、管理サーバ装置Sは、当該浸水検知装置50においては、浸水が生じていないと判断することができる。
【0060】
災害や異常気象などにより、電柱などに取り付けられた浸水検知装置50のところまで増水があると、水電池30が浸水して起電力を生じる。したがって、水電池30の出力電圧が、制御回路20の最低駆動電圧(たとえば、1.5V)を超えると、制御回路20が起動する。また、水電池30の出力電圧は、蓄電池32にも与えられる。したがって、蓄電池32は、水電池30によって充電されることになる。
【0061】
起動すると、CPU60は、状況を「平常」にセットし不揮発性メモリ64に記録する(ステップS1)。既に、浸水が生じているのでCPU60が起動しているのであるが、何らかの誤動作の可能性もあるので、以下に示すように、所定条件が整って初めて状況を「浸水」に変化させる。
【0062】
CPU60は、ステップS2において現在の状況を判断し、ここでは「平常」であるので、ステップS3に進む。
【0063】
CPU60は、電圧センサ66から水電池30の出力電圧の計測値を取得する(ステップS3)。CPU60は、取得した計測電圧が所定値(たとえば、2V)以上であるかを判断する(ステップS4)。所定値以上でなければ、ステップS7に進んで、計測待機時間(たとえば、15秒)を空けて、ステップS2以下を繰り返し実行する。
【0064】
水電池30の出力電圧が所定値以上であれば、所定値以上が第1所定時間(たとえば、10分)継続したかどうかを判断する(ステップS5)。第1所定時間継続していなければ、ステップS7を経て、ステップS2以下を繰り返し実行する。第1所定時間継続していれば、CPU60は、状況を「浸水」と判断する。このように、浸水している状態を示す水電池30の電圧が所定時間継続して所定値を超えたことにより、「浸水」であると判断しているので、誤判断を防止することができる。
【0065】
さらに、CPU60は、状況として「浸水」を記録するとともに、LPWA通信回路26によって、現在の状況を送信する(ステップS6)。
【0066】
図10に、LPWA通信回路26から送信される送信データの構造を示す。IDは、LPWA通信回路26(すなわち浸水検知装置50)に対して固有に付される識別符号であり、製造時にLPWA通信回路26の中に予め記録されている。イベントは、浸水検知装置50の状況を表すデータであり、イベントの対応表に示すように0~3のそれぞれに対して状況が対応付けられている。電池電圧は、電圧センサ66によって検出した水電池30の電圧を示すデータである。
【0067】
LPWA通信回路26から送信されたLPWAの電波は、各地に設けられた基地局のうち浸水検知装置50の近傍の基地局によって受信される。
図11に、浸水検知装置50、基地局B1~B4、追跡サーバ装置Cの関係を示す。浸水検知装置50のLPWA通信回路26からの電波は、基地局B1、B2、B3、B4によって受信される。各基地局B1~B4では、受信した電波からデータを復調し、受信した際の電波強度とともに追跡サーバ装置Cに送信する。
【0068】
追跡サーバ装置Cは、これらデータ(ID・イベント・電池電圧・受信日時など)を受けて、管理サーバ装置Sに送信する。また、この際、基地局B1~B4において受信した電波強度に基づいて、浸水検知装置50の位置および位置精度(誤差半径)を算出し、これも併せて管理サーバ装置Sに送信する。算出した位置の正確性は、算出に用いた基地局の数によって変化する。すなわち、多くの基地局からの電波強度に基づいて推定を行った場合には位置精度が高くなり、少ない基地局からの電波強度に基づいて推定を行った場合には位置精度が低くなる。
【0069】
このように基地局の数などによって決まる精度を、誤差半径として算出するようにしている。おおむね、算出された位置を中心とした誤差半径内に正しい位置があるということができる。
【0070】
管理サーバ装置SのCPU80(以下、管理サーバ装置Sと省略することがある)は、ID・受信日時・イベント・電池電圧・位置を、追跡サーバ装置Cから受信し状況データとして、SSD83に記録する。
【0071】
図12に、記録された状況データを示す。浸水検知装置50ごとに(すなわちIDごとに)、イベントの種類、発生日時(追跡サーバ装置30が受信した日時)、位置、電池電圧が記録される。
図12においては、前述のステップS6にて送信された「浸水」(イベント=0)が記録されている。
【0072】
図6に戻って、ステップS6において「浸水」を送信した後、CPU60は、ステップS7を経て、ステップS2を実行する。ステップS2においては、現在の状況が「浸水」に変化したので、
図7のステップS8に進む。
【0073】
CPU60は、電圧センサ66の計測電圧(水電池30の出力電圧値)を取得する(ステップS8)。CPU60は、計測電圧が所定値以上であるかを判断する(ステップS9)。
【0074】
所定値以上であれば、当該所定値以上の状態が第2所定時間(たとえば「浸水」と判断してからさらに10分)継続しているかを判断する(ステップS10)。第2所定時間継続していなければ、ステップS12を経て、ステップS8以下を繰り返し実行する。第2所定時間継続していれば、CPU60は、状況を「浸水継続」と判断し、LPWA通信回路26から送信する。これにより、浸水の状況が続いていることが、管理サーバ装置Sに記録される。
【0075】
以後、計測電圧が所定値以上である状態が続くと、第2の所定時間ごとに、「浸水継続」が送信され、管理サーバSに記録されることになる。
図13に、このよにして管理サーバ装置Sに記録された状況データを示す。
【0076】
浸水検知装置50において水が退くと、浸水の度合いに応じて水電池30の出力電圧が低下し、ついには電圧を出力しなくなる。ただし、制御回路20は、水電池30からの電圧がなくなっても、水電池30によって充電されていた蓄電池32によって動作を継続する。
【0077】
CPU60は、
図7のステップS9において、水電池30の計測電圧が所定値を下回ると、
図8のステップS13に処理を進める。ステップS13において、CPU60は、計測電圧を取得し、これが所定値未満であるかを判断する(ステップS13、S14)。
【0078】
所定値未満の状態が第1所定時間継続していなければ、CPU60は、ステップS17を経て、ステップS13以下を繰り返して実行する。所定値未満の状態が第1所定時間継続していれば、CPU60は、状況を「浸水解消」と判断し、LPWA通信回路26から送信する(ステップS16)。
【0079】
CPU60は、「浸水解消」と判断すると、
図6のステップS2を経て、
図9のステップS18に進む。ステップS19において、CPU60は、計測電圧を取得し、これが所定値未満であるかを判断する(ステップS18、S19)。
【0080】
所定値未満の状態が第2所定時間継続(たとえば、浸水解消と判断してからさらに10分)していなければ、CPU60は、ステップS22を経て、ステップS18以下を繰り返して実行する。所定値未満の状態が第2所定時間継続していれば、CPU60は、状況を「浸水解消継続」(すなわち「平常」)と判断し、LPWA通信回路26から送信する(ステップS21)。
【0081】
以後、計測電圧が所定値以上である状態が続くと、第2の所定時間ごとに、「浸水解消継続」が送信され、管理サーバSに記録されることになる。
図13に、このようにして管理サーバ装置Sに記録された状況データを示す。
【0082】
その後、蓄電池32の電力を消費すると、電源供給がなくなった制御回路20は動作を停止することになる。
【0083】
以上のようにして、管理サーバ装置Sに蓄積された各浸水検知装置50の状況は、端末装置Tから閲覧することができる。たとえば、
図15に示すように、管理サーバ装置Sにおいて、各浸水検知装置50の位置と状況を、地図上に配置したマップを生成し、端末装置Tに送信することができる。たとえば、「浸水継続」の浸水検知装置50をマークSPで示し、「浸水解除継続」の浸水検知装置50をマークSPFで示し、浸水に至っていない浸水検知装置50をマークFで示すことで、いずれの地域が浸水状況にあるかを容易に判断することができる。
【0084】
1.5パラメータの設定
浸水検知装置50を設置する前(あるいは設置後)に、測定電圧のしきい値、第1の所定時間、第2の所定時間などを、不揮発性メモリ64に記録する必要がある。予め、これらのディフォルト値は記録されているが、それを変更して使用したい場合には、以下のようにして実施する。
【0085】
まず、水電池30を水に浸して、制御回路20を駆動させる。その後、操作者によって、ボタンスイッチ21(
図2参照)がダブルクリックされると、CPU60は、パラメータ設定モードとなり、LPWA通信回路26によって、設定データのダウンロード要求を送信する。
【0086】
これを受けた追跡サーバ装置C(設定サーバ装置)は、当該浸水検知装置50に対し、設定データを送信する。浸水検知装置50のLPWA通信回路26は、設定データを受信し、これに基づき、測定電圧のしきい値、第1の所定時間、第2の所定時間などを、不揮発性メモリ64に記録する。
【0087】
また、CPU60は、上記の処理を行っているうちに、「浸水」「浸水継続」などの情報が誤って送信されないように、状況の送信を停止するようにしている。
【0088】
1.6変形例(その他)
(1)上記実施形態では、「浸水検知」として、「浸水」および「浸水継続」の2段階に分けて送信するようにし、「浸水解除」として、「浸水解消」および「浸水解消継続」の2段階に分けて送信するようにしている。しかし、1段階でもよく、3段階以上に分けて送信するようにしてもよい。
【0089】
(2)上記実施形態では、第1・第2の所定時間を、浸水時と浸水解除時において同じ時間としている。しかし、第1・第2の所定時間を、浸水時と浸水解除時において異なる値としてもよい。
【0090】
(3)上記実施形態では、計測電圧のしきい値を、浸水時と浸水解除時において同じ値としている。しかし、しきい値を、浸水時と浸水解除時において異なる値としてもよい。
【0091】
(4)上記実施形態では、LPWA通信を用いて電波を送信するようにしている。しかし、携帯電話における無線通信などその他の無線通信を用いてもよい。また、電話線、信号線、電力線などを用いて有線通信によってサーバ装置に情報を送信するようにしてもよい。
【0092】
(5)上記実施形態では、浸水検知装置50の位置を、追跡サーバ装置Cが電波強度に基づいて算出するようにしている。しかし、浸水検知装置50を設置する際に、装置のIDに対応付けて設置位置を管理サーバ装置Sに記録するようにしてもよい。
【0093】
(6)上記実施形態では、管理サーバ装置Sに蓄積された状況を地図として端末装置Tに送信している。しかし、蓄積データのリストなど他の形式にて端末装置Tに送信してもよい。
【0094】
(7)上記実施形態では、水電池30と制御回路20を一つの筐体52内に収納している。しかし、水電池30と制御回路20を離して設けるようにしてもよい。
【0095】
(8)上記実施形態では、水が退いた後も制御回路20が動作できるように、水電池30の出力を蓄電池32に充電して用いるようにしている。しかし、
図16に示すような構造にして、蓄電池32を用いないようにしてもよい。
【0096】
筐体52の下部には、電源室57(枠体)と計測室59が横並びに設けられている。計測室59の底部には開口59aが設けられ、浸水時に計測室59に水が導かれるようになっている。計測室59に導かれた水は、上部の連通孔57aを通って、電源室57に導かれる。なお、この際、スムースに電源室59に水を導入するため、開口57bが設けられている。
【0097】
したがって、浸水時には、電源室57も計測室59も水で満たされることになる。電源室57には水電池30が設けられているので、これにより制御回路20が動作する。上記実施形態では、制御回路20は水電池30の出力電圧を計測したが、この例では、2つの電極35(センサ)の間の抵抗値(静電容量やインダクタンスなどでもよい)を計測している。これにより、浸水しているか否かを判断することができる。
【0098】
水が退いて浸水が解消されると、計測室59の水はなくなり、計測される抵抗値は無限大になる。したがって、水が退いたことを検知することができる。また、この際、電源室57(枠体)においては、水電池30が起電力を生じることのできる水位より上(好ましくは、水電池30が完全に水没する水位より上)にのみ孔57a、57bが設けられている。したがって、水が退いた後も電源室57には水が残存することになる。残存した水によって水電池30が電圧を出力し、この水が蒸発するまでは、水電池30の起電力によって制御回路20を動作させることができる。
【0099】
なお、上記では、計測室59に電極35によるセンサを設けているが、これに代えて、水電池30をセンサとして用いるようにしてもよい。制御回路20は、計測室59の水電池30の出力電圧を計測することで、浸水の有無を判断することができる。
【0100】
(9)上記実施形態では、
図1に示す各手段を、CPU60を用いて実現している。しかし、その一部または全部を論理回路によって構成してもよい。
【0101】
(10)上記実施形態および変形例は、互いに任意に組み合わせて実施可能である。また、他の実施形態および変形例と組み合わせて実施可能である。
【0102】
2.第2の実施形態
2.1機能的構成
図17に、この発明の一実施形態による浸水検知装置の機能構成図を示す。
【0103】
水電池30は、水に反応して起電力を生じるものである。制御回路20は、この水電池30からの電力を電源として動作するので、水電池30が水没するまで、制御回路20は動作しない。
【0104】
水電池30が水没すると、制御回路20に電力が供給されて動作を開始する。動作を開始した制御回路20の浸水判断手段22は、水電池30の出力電圧を計測し、出力電圧が所定値以上であれば、水没していると判断する。通信手段24は、所定期間ごとに水没している旨を通信回路26を用いて送信する。
【0105】
水が退いて、水電池30の出力電圧が低下し制御回路20が動作しなくなると(あるいは、制御回路20が動作しているが水電池30の出力電圧が所定値未満となると)、水没している旨の送信はなくなる。
【0106】
この実施形態では、水没によって水電池30が起電力を生じ、これによって制御回路20を動作させて水没である旨を送信するようにしている。したがって、余分な電力を必要とせず、水没を検知することができる。
【0107】
2.2浸水検知装置の外観
浸水検知装置50の外観は、第1の実施形態における
図2と同様である。
【0108】
2.3システム構成およびハードウエア構成
システム構成は、第1の実施形態における
図3と同様である。また、ハードウエア構成も、第1の実施形態における
図4、
図5と同様である。ただし、この実施形態では、浸水検知装置50のハードウエア構成を示す
図4において、蓄電池32は設けられていない。
【0109】
2.4浸水検知処理
図18に、浸水検知装置50の制御プログラム70のフローチャートを示す。前述のように、制御回路20は、水電池30の出力電圧を電源として動作する。したがって制御回路20は、水没が生じるまで動作しない。すなわち、LPWA通信回路26による電波の送信がない。これにより、管理サーバ装置Sは、当該浸水検知装置50においては、浸水が生じていないと判断することができる。
【0110】
災害や異常気象などにより、電柱などに取り付けられた浸水検知装置50のところまで増水があると、水電池30が浸水して起電力を生じる。したがって、水電池30の出力電圧が、制御回路20の最低駆動電圧(たとえば、1.5V)を超えると、制御回路20が起動する。
【0111】
起動すると、電圧センサ66から水電池30の出力電圧の計測値を取得する(ステップS3)。CPU60は、取得した計測電圧が所定値(たとえば、2V)以上であるかを判断する(ステップS4)。所定値以上でなければ、ステップS7に進んで、計測待機時間(たとえば、15秒)を空けて、ステップS2以下を繰り返し実行する。
【0112】
水電池30の出力電圧が所定値以上であれば、所定値以上が第1所定時間(たとえば、10分)継続したかどうかを判断する(ステップS5)。第1所定時間継続していなければ、ステップS7を経て、ステップS2以下を繰り返し実行する。第1所定時間継続していれば、CPU60は、状況を「水没」と判断する。
【0113】
さらに、CPU60は、状況として「水没している旨」を記録するとともに、LPWA通信回路26によって、現在の状況を送信する(ステップS6)。
【0114】
水が退いて、水電池30の出力電圧が低下すると、所定値以上の継続がなくなるので、「水没している旨」は送信されない。また、水電池30の出力がさらに低下すると、制御回路20の動作が停止し、「水没している旨」は送信されない。
【0115】
以上のようにして、水没したときにのみ「水没した旨」の信号が送信される。
【0116】
2.6変形例(その他)
(1)上記実施形態では、
図2に示すように、水が退くと水電池30が起電力を生じなくなる構成としている。しかし、
図16の電源室57のように(この場合、計測室59は不要である)、水が退いても水電池30が起電力を出し続ける構造としてもよい
(2)上記実施形態では、電圧センサ66によって水電池30の出力電圧を計測するようにしている。しかし、電圧センサ66を設けずに、処理を行うようにしてもよい。
【0117】
この場合のフローチャートを、
図19に示す。水没が生じるまで、制御回路20が動作せず、「水没した旨」の信号が送信されない点は、上記実施形態と同様である。
【0118】
水没が生じ、水電池30の起電力によって制御回路20が起動すると、所定時間悔過するごとに、「水没した旨」の信号が送信される(ステップS6、S7)。
【0119】
(3)上記実施形態では、
図17に示す各手段を、CPU60を用いて実現している。しかし、その一部または全部を論理回路によって構成してもよい。
【0120】
(4)上記実施形態および変形例は、互いに任意に組み合わせて実施可能である。また、他の実施形態および変形例と組み合わせて実施可能である。
【要約】
【課題】 電池消耗による浸水検知ミスを防ぐことのできる浸水検知装置を提供する。
【解決手段】 水電池30が水没すると、制御回路20に電力が供給されて動作を開始する。動作を開始した制御回路20の浸水判断手段22は、水電池30の出力電圧を計測し、出力電圧が第1所定値以上であれば、状況を「浸水検知」であると判断する。通信手段24は、通信回路26を用いて、判断した状況(上記では「浸水検知」)をサーバ装置(図示せず)に送信する。
水が退いた後も、蓄電池32に蓄えられた電力によって、制御回路20の動作は継続される。制御回路20の浸水判断手段22は、水電池30の出力電圧を計測し、出力電圧が第2の所定値以下であれば、状況を「浸水解消」と判断する。通信手段24は、通信回路26を用いて、判断した状況(上記では「浸水解消」)をサーバ装置(図示せず)に送信する。蓄電池32の電力が使い果たされると、初期状態に戻って、制御回路20が停止する。
【選択図】
図1