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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】床の構造体
(51)【国際特許分類】
   E02D 29/045 20060101AFI20241007BHJP
   E02D 29/02 20060101ALI20241007BHJP
   E04B 5/32 20060101ALI20241007BHJP
   E04B 5/43 20060101ALI20241007BHJP
   E21F 15/00 20060101ALI20241007BHJP
【FI】
E02D29/045 Z
E02D29/02 302
E02D29/02 308
E04B5/32 Z
E04B5/43 Z
E21F15/00
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2023155656
(22)【出願日】2023-09-21
(62)【分割の表示】P 2022097795の分割
【原出願日】2018-03-05
(65)【公開番号】P2023175846
(43)【公開日】2023-12-12
【審査請求日】2023-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】508321823
【氏名又は名称】株式会社イノアック住環境
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202223
【弁理士】
【氏名又は名称】軸見 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 大輔
【審査官】佐久間 友梨
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-138091(JP,A)
【文献】特開平11-323904(JP,A)
【文献】特許第2781828(JP,B2)
【文献】韓国公開特許第2020-0089383(KR,A)
【文献】特開2010-242468(JP,A)
【文献】特開2002-068799(JP,A)
【文献】実開昭59-74248(JP,U)
【文献】特開2006-2562(JP,A)
【文献】特開2004-116062(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 1/00
E01C 23/10
E02D 29/02
29/045
E21F 15/00
E04B 5/32
5/43
E04G 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地面に開口部を有する地下空間の底面を基盤面とし、前記基盤面よりも高い位置に施工された床の構造体であって、
前記基盤面上に形成され、複数の支柱を有する支持体と、
前記開口部を閉塞するように、前記支持体の上に設置された床材と、
前記基盤面と前記床材と前記地下空間の壁部とによって閉じられた領域に充填され、前記支持体と一体化された充填材と、を備え
前記充填材は、硬質ポリウレタンフォームである床の構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は長期使用が可能で、基盤面よりも高い位置に施工された床の構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の床の構造体の施工方法では、特許文献1に示されるように、側壁に囲まれた空間に充填材が充填されてから、該充填材の上に床材が設置されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第2775693号(段落[0002]、図2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の床の構造体の施工方法では、充填材が充填されてから床材が設置されるため、床の使用が可能となるまで時間がかかっていた。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、早期から床の使用が可能な床の構造体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためになされた発明の第1態様は、基盤面よりも高い位置に床を施工する床の施工方法であって、前記基盤面上に、複数の支柱を有する支持体を形成し、
前記支持体の上に床材を設置し、前記基盤面と前記床材との間の空間に充填材を充填して、前記充填材と前記支持体とを一体化させる床の施工方法である。
【0007】
発明の第2態様は、前記支持体を囲む側壁を形成し、前記床材と前記側壁とによって閉じられた前記空間に前記充填材を充填する第1態様に記載の床の施工方法である。
【0008】
発明の第3態様は、前記側壁を形成するにあたり、前記側壁を前記支柱に連結する第2態様に記載の床の施工方法である。
【0009】
発明の第4態様は、地面に開口部を有する地下空間の底面を前記基盤面とし、前記開口部を閉塞するように、前記床材を前記支持体の上に設置し、前記床材と前記地下空間の壁部とによって閉じられた前記空間に前記充填材を充填する第1態様に記載の床の施工方法である。
【0010】
発明の第5態様は、前記充填材として硬質ポリウレタンフォームを用いる第1態様から第4態様の何れか1の態様に記載の床の施工方法である。
【0011】
発明の第6態様は、前記支持体の形成にあたり、前記複数の支柱の上端部同士の間に横架材を水平に架け渡すと共に、前記横架材に根太材を固定し、前記根太材を、断面門形状の本体部と、前記本体部の各脚部の下端部から外方に張り出したフランジ部と、を有する構造とし、前記本体部の頂部に前記床材を固定する第1態様から第5態様の何れか1の態様に記載の床の施工方法である。
【0012】
発明の第7態様は、前記横架材を断面円形状とし、前記横架材に外側から嵌合する円環状の嵌合部と、前記嵌合部から外側に張り出した張出片とからなる連結金具を準備し、前記横架材に前記根太材を固定するにあたり、前記横架材に前記連結金具の前記嵌合部を外側から嵌合させ、前記連結金具の前記張出片と、前記根太材のフランジ部とを重ねて固定する第6態様に記載の床の施工方法である。
【発明の効果】
【0013】
[発明の第1態様~第5態様]
発明の第1態様によれば、支持体の上に床材を設置するという簡易的な構造を先に施工するので、早期から床の使用が可能となる。そして、床材と基盤面との間の空間に充填材を充填することで、支持体と一体化した充填材によっても床材が支持されるようになる。これにより、床の長期的な使用が可能となる。
【0014】
なお、床の施工は、以下のように行ってもよい。即ち、発明の第2態様のように、支持体を囲む側壁を形成し、床材と側壁とによって閉じられた空間に充填材を充填することで行ってもよいし、発明の第4態様のように、地面に開口部を有する地下空間の底面を基盤面とし、開口部を閉塞するように床材を支持体の上に設置し、床材と地下空間の壁部とによって閉じられた空間に充填材を充填することで行ってもよい。前者の床の例としては、プラットホームの床やステージの床などが挙げられる。後者の床の例としては、地下通路や地下室を埋めて、その開口部に形成された床が挙げられる。
【0015】
そして、支持体を囲む側壁を形成する場合、側壁を支柱に連結させる構造とすれば、側壁が安定的に固定される(発明の第3態様)。
【0016】
なお、充填材には、硬質ポリウレタンフォームを用いてもよいし(発明の第5態様)、コンクリート、土砂又は気泡混合軽量土等を用いてもよい。充填材として使用する硬質ポリウレタンフォームとしては、あらかじめ発泡させておいた硬質ポリウレタンフォームからなるブロック、あらかじめ発泡させておいた硬質ポリウレタンフォームの粉砕物、現場で主剤(A液)と硬化剤(B液)とからなる2液の液体原料を反応させ、吹き付けることにより形成される硬質ポリウレタンフォーム(現場発泡による硬質ポリウレタンフォーム)等が挙げられる。充填材に現場発泡による硬質ポリウレタンフォームを用いれば、基盤面と床材との間の空間における狭い隙間にも充填材を隙間無く充填させることができる。なお、充填材は、あらかじめ発泡させておいた硬質ポリウレタンフォームからなるブロックやその粉砕物と、現場発泡による硬質ポリウレタンフォームとが組み合わされて構成されていてもよい。
【0017】
[発明の第6態様]
発明の第6態様によれば、根太材を、断面門形状の本体部を有する構造としたので、床材を安定的に根太材の頂部に固定することができる。さらに、根太材を、本体部の各脚部の下端部から張り出したフランジ部を有する構造としたので、根太材のフランジ部を利用して、容易に根太材を横架材に固定することができる。
【0018】
[発明の第7態様]
発明の第7態様によれば、連結金具が、円環状の嵌合部から張出片が外側に張り出した構造になっているので、横架材が断面円形状であっても、その横架材に嵌合部を嵌合させた状態で、張出片と根太材とを固定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1実施形態に係る床を備えるプラットホームの斜視図
図2】プラットホームのA-A断面図
図3】プラットホームのB-B断面図
図4】連結金具の側断面図
図5】(A)パネル材の斜視図、(B)帯材の端部を示す拡大図
図6】(A)側壁固定部の斜視図、(B)側断面図
図7】床の施工工程を説明するための側断面図
図8】床の施工工程を説明するための側断面図
図9】壁面材固定部の壁面材への固定を説明するための斜視図
図10】充填材の充填を説明するための模式図
図11】第2実施形態に係る床を備える地下充填体の(A)側断面図、(B)昇降部周辺の拡大側断面図
図12】地下充填体のC-C断面図
図13】床の施工工程を説明するための側断面図
図14】充填材の充填を説明するための模式図
図15】他の実施形態に係る連結金具の(A)側断面図、(B)側面図、(C)斜視図
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1に示されるように、本実施形態の床10は、電車等の乗客の乗降の場となるプラットホーム100の床であって、線路Rが敷設されている地面Gよりも高い位置に施工されている。具体的には、図2に示されるように、プラットホーム100では、床10を構成する床材11が、地面Gの上に立設された支持体20によって下方から支持されている。なお、本実施形態では、地面Gが支持体20を支える基盤面となっている。
【0021】
また、プラットホーム100には、支持体20の四方(手前側、奥側、左右側)を囲む側壁30と、床材11と側壁30によって閉じられた空間に充填された充填材40と、が備えられている。そして、床材11は、支持体20に一体化された充填材40によっても下方から支持されている。なお、充填材40は、現場発泡による硬質ポリウレタンフォームで構成されている。
【0022】
図2に示されるように、支持体20は、複数の支柱21と、複数の支柱21の間に水平に架け渡された横架材22と、を備えている。支柱21は、支柱21の高さを調整するためのジャッキ21Aの上に柱本体21Bを取り付けてなる。ジャッキ21Aは、例えば、ねじジャッキで構成されている。柱本体21Bは、断面円形状に形成されていて、例えば、円形パイプで構成されている。なお、支持体20では、プラットホーム100の幅方向に所定数の支柱21を並べてなる支柱21の組がプラットホーム100の長手方向に複数組並べられている。
【0023】
横架材22には、プラットホーム100の長手方向に沿って延在する第1横架材22Aとプラットホーム100の幅方向に沿って延在する第2横架材22Bの2種類が存在する。第1横架材22Aと第2横架材22Bはそれぞれ、支柱21にクランプ等の固定金具によって固定されている。第1横架材22Aと第2横架材22Bは共に、断面円形状に形成されていて、例えば、円形パイプで構成されている。
【0024】
図4に示されるように、第1横架材22Aの中には、複数の支柱21の上端部同士の間に架け渡される上端横架材22Jが存在する。そして、この上端横架材22Jに、連結金具23を介して根太材24が固定されている。
【0025】
連結金具23は、円環状に形成された嵌合部23Aと、嵌合部23Aから径方向外側に張り出した張出片23Bと、からなる。嵌合部23Aの内径は上端横架材22Jの外径と略同じになっていて、嵌合部23Aは上端横架材22Jに外側から嵌合している。張出片23Bは、嵌合部23Aの周方向で180度離れた2箇所から張り出していて、それら2つの張出片23B,23Bは共に、水平に配置されている。なお、嵌合部23Aは、ねじ締結により上端横架材22Jに固定されている。
【0026】
根太材24は、断面門形状の本体部24Hの1対の脚部24K,24Kにおけるそれぞれの下端部から外方にフランジ部24Fが張り出した構造になっている。フランジ部24Fは、連結金具23の張出片23Bの上に重ねて固定されている。そして、本体部24Hの頂部24Tの上に床材11がビス止めされている。なお、フランジ部24Fと張出片23Bは、ねじ締結により固定されている。
【0027】
図1に示されるように、床材11は、複数のパネル材12をプラットホーム100の長手方向に並べてなる。図5に示されるように、パネル材12は、連結部材14によって複数の帯材13が幅方向に連結されてなる。具体的には、連結部材14は、断面L字状をなし、L字の一方の辺部を下方に向けた状態で帯材13の幅方向に延在している。そして、連結部材14におけるL字の他方の辺部が複数の帯材13の下面に宛がわれた状態で、連結部材14が複数の帯材13にビス止めされている。
【0028】
図5に示されるように、帯材13は、厚み方向で対向する1対の主壁13A,13Aが複数の連絡壁13Bによって連絡された構造をなしている。なお、連絡壁13Bは、帯材13の長手方向に沿って延在する。
【0029】
図2に示されるように、側壁30は、鉛直に配置された複数の壁面材31を、プラットホーム100の高さ方向と長手方向に複数並べてなる。壁面材31は、上述した帯材13と同じ構造になっていて、1対の主壁31A,31Aが複数の連絡壁31Bによって連絡されてなる。そして、壁面材31は、主壁31Aの幅方向が鉛直を向くように配置されている。
【0030】
側壁30の各壁面材31は、側壁連結部50によって支持体20の支柱21に連結されている。これにより、側壁30の安定化が図られている。図6(A)に示されるように、側壁連結部50は、支柱21に固定される支柱固定部51と、壁面材31に固定される壁面材固定部52と、が連結されてなる。
【0031】
具体的には、支柱固定部51は、上述した連結金具23と同様の構造をなし、支柱21に外側から嵌合する嵌合部51Aから張出片51Bが外側に張り出してなる。また、壁面材固定部52は、ベースプレート52Pから螺子シャフト52Sが起立した構造になっている。ここで、壁面材31のうち支持体20側を向く主壁31Aには、主壁31Aの外縁から内側へ延びたスリット31Sが形成されていて、壁面材固定部52のベースプレート52Pが壁面材31の内側に受容されると共に、螺子シャフト52Sがスリット31Sに挿通されている。そして、ベースプレート52Pが、ねじ締結によって主壁31Aに固定されると共に、螺子シャフト52Sが、ねじ締結によって張出片51Bに固定されている。
【0032】
なお、床材11と側壁30との間、側壁30と地面Gとの間、複数の帯材13の間、複数の壁面材31の間などは、パッキン等のシール材(図示略)によってシールされている。
【0033】
本実施形態の床10は、以下のようにして施工される。まず、図7(A)に示されるように、地面Gの上に支持体20が立設され(支持体形成工程)、支持体20の上に床材11が設置される(床材設置工程)。次いで、図7(B)に示されるように、支持体20を囲む側壁30が形成される(側壁構成工程)。側壁30が形成されると、図8(A)に示されるように、床材11と側壁30によって閉じられた空間S1に充填材40が充填される(充填工程)。そして、充填材40が支持体20と一体化すると、図8(B)に示されるように、プラットホーム100が完成すると共に、支持体20及び充填材40によって下方から支持される床10が完成する。
【0034】
支持体形成工程の詳細は以下の通りである。支持体形成工程では、まず、複数の支柱21が地面Gの上に立てられると共に、それら複数の支柱21の間に横架材22が架け渡される。複数の支柱21は、線路R(図1参照)の延在方向と該延在方向と直交する方向とに沿って並べられる。各支柱21の高さは、必要に応じて、ジャッキ21Aにより調整される。なお、支柱21を立てる作業に先立って、線路Rに最も近い列に並べられる支柱21と線路Rから最も遠い列に並べられる支柱21とには、支柱固定部51(図6(A)参照)が固定される。
【0035】
横架材22は、支柱21に予め固定されたクランプ等の固定金具(図示せず)によって支柱21に固定される。線路Rの延在方向に沿って配置された横架材22は、第1横架材22Aとなり、線路Rと直交する方向に沿って配置された横架材22は、第2横架材22Bとなる。また、第1横架材22Aとなる横架材22のうち支柱21の上端部同士に架け渡される横架材22は、上端横架材22Jとなる。ここで、上端横架材22Jとなる横架材22には、予め、連結金具23(図4参照)が固定されていて、上端横架材22Jとなる横架材22は、連結金具23の張出片23Bが水平となるように配置される。
【0036】
上端横架材22Jが複数の支柱21の間に架け渡されると、連結金具23に根太材24が固定される。具体的には、根太材24のフランジ部24Fが連結金具23の張出片23Bの上に重ねられて、フランジ部24Fと張出片23Bがねじ締結される。以上により、支持体形成工程が終了する。このように、本実施形態では、上端横架材22Jと根太材24の間に介在する連結金具23が、円環状の嵌合部23Aから張出片23Bが外側に張り出した構造になっているので、横架材22が断面円形状であっても、その横架材22に嵌合部23Aを嵌合させた状態で、張出片23Bに根太材24を固定することが可能となる。
【0037】
床材設置工程の詳細は以下の通りである。床材設置工程では、複数のパネル材12が支持体20の根太材24の上に並べられて根太材24(詳細には、根太材24の頂部24T)にビス止めされる。ここで、根太材24の本体部24Hは、断面門形状になっているので、床材11を根太材24に安定的に固定することが可能となる。
【0038】
複数のパネル材12は、線路Rの延在方向に並べられる。各パネル材12は、連結部材14(図5参照)を下向きにして、帯材13の幅方向が線路Rと略平行となるように配置される。なお、床材設置工程の時間短縮を図るために、複数のパネル材12は、床材設置工程に先立って準備される。パネル材12は、複数の帯材13が幅方向に並べられ、それら複数の帯材13が連結部材14で連結されることで形成される。
【0039】
複数のパネル材12が根太材24に固定されると、床10を構成する床材11が支持体20の上に設置され、床材設置工程が終了する。なお、床材設置工程終了時の床10は、支持体20のみによって下方から支持されていて、支持体20は、床10の短期的な使用に耐え得る程度の強度を有している。ここで、短期的な使用とは、特定の期間のみ存続することを目的として建設され、特定の期間後には解体される使われ方であり、所謂、仮設構造物としての使用である。具体的な期間は、目的や用途、メンテナンスの頻度等にもよるが、一般的には、6箇月から1年程度である。これに対し、長期的な使用とは、使用期限を設けず、継続的に使用することを目的として建設される使われ方であり、所謂、本設構造物、あるいは恒久構造物としての使用である。
【0040】
側壁形成工程の詳細は以下の通りである。側壁形成工程では、複数の壁面材31が支持体20を四方から囲むように配置されると共に、各壁面材31が支柱21に固定される。壁面材31は、スリット31Sが形成された主壁31Aを支持体20側に向けて、主壁31Aが鉛直となるように配置される。詳細には、複数の壁面材31は、支持体20の周りに並べられると共に、上下に段積みされる。壁面材31同士の間の隙間、壁面材31と地面Gの間の隙間、及び、壁面材31と床材11の間の隙間は、シール材によってシールされる。
【0041】
壁面材31には、予め壁面材固定部52が固定されていて、壁面材固定部52の螺子シャフト52Sが、支柱21に固定された支柱固定部51の張出片51Bにねじ締結される。螺子シャフト52Sが張出片51Bにねじ締結されると、壁面材31が支柱21に固定される。複数の壁面材31が支柱21に固定されると、側壁30が完成し、側壁形成工程が終了する。そして、側壁形成工程が終了すると、床材11の下方に、床材11と側壁30とによって閉じられた空間S1が形成される。なお、側壁30には、空間S1の出入口が確保される。出入口は、例えば、側壁30のうち線路Rの延在方向の一端部に配置される。
【0042】
なお、壁面材固定部52は、以下のようにして、壁面材31に固定される。即ち、図9に示されるように、壁面材固定部52のベースプレート52Pが1対の主壁31A,31Aの間に差し込まれると共に、螺子シャフト52Sがスリット31Sに通される。そして、ベースプレート52Pが、スリット31Sを備えた主壁31Aに締結される。
【0043】
充填工程の詳細は以下の通りである。充填工程では、充填材40としての硬質ポリウレタンフォームの発泡原液が空間S1内に吹き付けられる。充填材40は、空間S1の出入口から遠い側(例えば、線路Rの延在方向の他端部)から該出入口に近い側へ向かって充填される。そして、空間S1の全体が充填材40で満たされると、支持体20が充填材40に埋没する。以上により、充填工程が終了する。なお、充填材40は、床材11と側壁30によって閉じられた空間S1に充填されるので、充填材40の飛散を防ぐ養生が不要となる。さらに、床材11の設置のための充填材40の上面を平らに仕上げる工程が不要となる。また、充填材40が硬質ポリウレタンフォームで構成されることで、床材11、支持体20及び側壁30を構成する部材(例えば、パネル材12や支柱21)の防錆が図られる。本実施形態では、現場にてポリオールや架橋剤、発泡剤等を主成分とする主剤(A液)とイソシアネートを主成分とする硬化剤(B液)との2液を高圧で吐出(撹拌)することにより、吹き付けを行っている。なお、A液、B液共に常温で液状となっている。
【0044】
ここで、発泡原液が発泡硬化して硬質ポリウレタンフォームとなる過程で発熱が起こるため、発泡原液の吹き付けは、所定量ずつ行われる。従って、充填材40は、空間S1のうち出入口から遠い側の端部から出入口へ向かって、層状に形成される。なお、発泡原液は、床材11の下面と側壁30の内面に優先的に吹き付けられる。具体的には、最初に形成される充填材40の第1層40K1は、床材11の下面と側壁30の内面に接するシェル状に形成され(図10(A))、2番目以降に形成される充填材40の第2層40K2及び第3層40K3は、第1層40K1の内側に縦壁状に形成される(図10(B)参照)。そして、第1層40K1の内側部分が充填材40で満たされると、その充填材40に対して出入口に近い側から、第1層40K1と同様のシェル状の層が形成され、その層の内側部分に複数の縦壁状の層が形成される。
【0045】
充填工程が終了して、充填材40が支持体20と一体化すると、プラットホーム100(図1参照)が完成し、図2で示した床10が完成する。そして、床10が支持体20だけでなく充填材40によっても支持されることで、床10の長期的な使用が可能となる(本設構造物となる)。
【0046】
本実施形態の床10の施工方法では、支持体形成工程の終了後、側壁形成工程及び充填工程の前に、床材設置工程を行う。床材設置工程では、支持体20の上に床材11が設置されることで、簡易的に床10が形成され、床10の短期的な使用が可能となる。これにより、施工完了まで待つことなく早期に床10の使用が可能となる。しかも、本実施形態では、充填工程によって、床材11が、支持体20だけでなく充填材40によっても下方から支持されるので、施工終了時には、床10の長期的な使用が可能となる。
【0047】
また、本実施形態では、充填材40が現場発泡による硬質ポリウレタンフォームを直接吹き付けることで構成されているので、空間S1において、支持体20を構成する各部品同士の間の隙間(例えば、横架材22や根太材24と床材11との間の隙間、支柱21と側壁30との間の隙間)に充填材40が充填され易くなる。その結果、充填材40により空間S1が隙間無く充填され、床材11の支持の安定化が図られる。
【0048】
また、充填材40が現場発泡による硬質ポリウレタンフォームを直接吹き付けることで構成されているので、充填材40を床材11の下面から下側へ向かって充填することが可能となり、充填材40に空隙が発生することが抑えられ、充填材40を隙間なく充填することができる。このため、床材11と支持体20と側壁30とが充填材40により一体化され、床材11は、床材11と支持体20と側壁30とが充填材40を介して一体化した状態で支持されるようになる。これにより、プラットホーム100を強固な本設構造物とすることができ、床10の長期的な使用が可能となる。また、充填材40が硬質ポリウレタンフォームで構成される場合、充填材40が軽量なため、プラットホーム100自体も軽量化が図られる。これにより、施工後に地盤沈下等により、プラットホーム100が傾いたり、変形することを防ぐことが可能となる。
【0049】
本実施形態では、連結金具23と支柱固定部51とが同じ構造になっているので、連結金具23と支柱固定部51の共通化が図られる。さらに、パネル材12を構成する帯材13と壁面材31とが同じ構造になっているので、帯材13と壁面材31の共通化が図られる。
【0050】
[第2実施形態]
図11(A)に示されるように、本実施形態の床10Vは、地下通路210を埋める地下充填体200によって形成される。地下通路210は、複数の地点に設けられた出入口211において地面Gに開口した複数の開口部211Aと、開口部211Aから地下へと向かう昇降部230と、地面Gと略平行に延びて昇降部230同士を連絡する通路本体220と、を備えている。なお、図11(B)の例では、昇降部230に階段230Kが形成されているが、スロープが形成されてもよい。
【0051】
地下充填体200は、地下通路210の全体(即ち、昇降部230及び通路本体220の全体)に充填されている。地下充填体200の上部は開口部211Aを閉塞し、地下充填体200の上面が地面Gと面一となっている。そして、地下充填体200のうち開口部211Aから露出する部分によって床10Vが構成されている。
【0052】
図12に示されるように、地下充填体200は、床材11、支持体20及び充填材40を備える点で上記第1実施形態のプラットホーム100と共通し、側壁30を備えない点でプラットホーム100と異なっている。地下充填体200における床材11、支持体20及び充填材40の構造については、上記第1実施形態と同じになっているので、同一の符号を付すことで説明を省略する。
【0053】
地下充填体200における床材11は、地下通路210の開口部211Aを閉塞している。また、地下充填体200における支持体20は、地下通路210の地下床面BFの上に立設されている。地下床面BFは、通路本体220の床面BF1及び昇降部230の床面BF2で構成され、支持体20を支える基盤面となっている。図11(B)に示される例では、支持体20は、昇降部230の床面BF2の上にのみ立設されていて、支柱21は、階段230Kの踏面(即ち、上側を向く面)の上に立てられている。
【0054】
本実施形態の床10Vの施工方法は、支持体形成工程、床材設置工程及び充填工程を含む点で上記第1実施形態の床10の施工方法と共通し、側壁形成工程を含まない点で床10の施工方法と異なっている。以下では、床10Vの施工方法における支持体形成工程、床材設置工程及び充填工程について、上記第1実施形態の床10の施工方法における支持体形成工程、床材設置工程及び充填工程と相違する部分を主に説明する。
【0055】
支持体形成工程では、複数の支柱21が地下通路210の地下床面BF(昇降部230の床面BF2)の上に立てられる(図13(A)参照)。本実施形態では、複数の支柱21は、階段230Kの踏面の上に立てられる。なお、複数の支柱21の上端は高さを揃えられ、地下通路210の開口部211Aより若干下方に配置される。
【0056】
床材設置工程では、複数のパネル材12が地下通路210の複数の開口部211Aを閉塞するように並べられる。そして、開口部211Aを閉塞する床材11が複数のパネル材12によって形成され、床材11と地下通路210の壁部(詳細には、地下通路210の床壁212と側壁213と天井壁221)とによって閉じられた空間S2が形成される。このとき、特定の開口部211Aを閉塞する床材11には、充填工程において作業者が出入りするための進入口(図示せず)が形成される。なお、床材設置工程が終了すると、支持体20のみによって支持される床10Vが簡易的に形成される。
【0057】
充填工程では、特定の開口部211Aとは異なる開口部211Aから該特定の開口部211Aに向かって、空間S2に充填材40として現場発泡による硬質ポリウレタンフォームが吹き付けられて充填される。充填材40は、複数回に分けて層状に形成される。具体的には、最初に形成される充填材40の第1層40L1は、特定の開口部211Aとは異なる開口部211Aを閉塞する床材11の下面全体を覆うように水平に形成され(図14(A)参照)、2番目以降に形成される充填材40の第2層40L2、第3層40L3及び第4層40L4は、第1層40L1の下方に縦壁状に形成される(図14(B)参照)。そして、第1層40L1の下方部分が充填材40で満たされると、その充填材40に対して特定の開口部211Aに近い側から、第2層40L2と同様の縦壁状の層が形成される。
【0058】
本実施形態の床10Vの施工方法によっても、床材設置工程の終了時に、床10Vを形成する床材11が支持体20のみによって支持されるので、施工完了まで待つことなく早期に床10Vの使用が可能となる。また、充填工程によって、床材11が、支持体20だけでなく充填材40によっても下方から支持されるので、施工終了時には、床10Vの長期的な使用が可能となる。また、本実施形態の床10Vの施工方法では、側壁形成工程が含まれないので、施工期間の短縮が図られる。
【0059】
[他の実施形態]
(1)充填材40は、コンクリートや土砂、気泡混合軽量土によって構成されていてもよい。この場合、充填工程において、コンクリートや土砂で構成された充填材40が、上側へ向かって堆積される。
【0060】
また、充填材40は、あらかじめ発泡させておいた硬質ポリウレタンフォームからなるブロックやその粉砕物と現場発泡による硬質ポリウレタンフォームを組み合わせることによって構成されていてもよい。このとき、充填工程では、硬質ポリウレタンフォームからなる複数のブロックやその粉砕物が空間S1,S2内に配置されるとともに、該ブロックやその粉砕物と床材11及び側壁30との隙間に硬質ポリウレタンフォームの発泡原液が吹き付けられる。ここで、現場発泡による硬質ポリウレタンフォームは、発熱反応によって高温となるところ、あらかじめ発泡させておいたブロックやその粉砕物を併せて用いることで、充填工程における硬質ポリウレタンフォームの発熱量を抑えることが可能となる。
【0061】
(2)上記第1実施形態では、地面Gより高い位置に形成された床10が、プラットホーム100の床であったが、地面Gより高い位置に形成される床であればよく、例えば、ステージの床であってもよい。
【0062】
(3)上記第1実施形態において、地面G上に立設されている既存の側壁(例えば、地面Gより高い位置に施工された屋外プールの側壁や、塀など)を側壁30として利用してもよい。支持体20を四方から囲む既存の側壁を側壁30として利用すれば、側壁形成工程が不要となる。なお、既存の側壁を側壁30の一部として利用してもよい。この場合でも、側壁形成工程の施工期間の短縮が図られる。
【0063】
(4)上記第2実施形態では、地下充填体200によって埋められるものの例として地下通路210が示されたが、地下の空間であればよく、例えば、地下室、地下倉庫、地下ピット等であってもよい。
【0064】
(5)上記実施形態では、連結金具23の張出片23Bが、嵌合部23Aの2箇所からが張り出していたが、図15(A)に示されるように、連結金具23の張出片23Bが、嵌合部23Aの1箇所のみから張り出していてもよい。
【0065】
(6)上記実施形態では、上端横架材22Jへの根太材24の連結が連結金具23を介して行われていたが、図15(B)に示されるように、連結金具23の代わりに、U字ボルトを用いてもよい。このとき、U字ボルトの内側に上端横架材22Jが配置され、U字ボルトの両端部が根太材24の1対のフランジ部のそれぞれにねじ締結される。なお、図15(C)に示されるように、プラットホーム100の幅方向に延在させた上端横架材22JにU字ボルトを介して根太材24を連結してもよい。このとき、U字ボルトが根太材24のフランジ部24Fにねじ締結される。なお、プラットホーム100の幅方向に延在させた上端横架材22Jに、根太材24のフランジ部24Fを直接ビス止めしてもよい。このように、根太材24のフランジ部24Fを利用して、容易に根太材24を上端横架材22Jに固定することができる。
【0066】
(7)上記実施形態では、第1横架材22Aと第2横架材22Bが断面円形状に形成されていたが、第1横架材22Aと第2横架材22Bが断面角形状に形成されていてもよく、例えば角形パイプで構成されていてもよい。この場合、連結金具23を介さずに、根太材24のフランジ部24Fを直接上端横架材22Jに固定することが可能となる。また、支持体20が根太材24を備えずに、床材11が直接上端横架材22Jにビス止めされてもよい。
【符号の説明】
【0067】
10,10V 床
11 床材
20 支持体
30 側壁
40 充填材
100 プラットホーム
200 地下充填体
210 地下通路
図1
図2
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