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特許7567017ダブルデッキエレベータの群管理制御装置およびダブルデッキエレベータの群管理制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】ダブルデッキエレベータの群管理制御装置およびダブルデッキエレベータの群管理制御方法
(51)【国際特許分類】
   B66B 1/18 20060101AFI20241007BHJP
【FI】
B66B1/18 D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023212977
(22)【出願日】2023-12-18
【審査請求日】2023-12-18
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】杉原 俊雄
【審査官】山田 拓実
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/164882(WO,A1)
【文献】特開2019-031354(JP,A)
【文献】特開2020-026346(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/00-1/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上かごと下かごとからなるダブルデッキエレベータを複数台群管理し、
行先階が指定された乗場呼びの情報を登録する乗場呼び登録部と、
利用者の操作により前記乗場呼び登録部に新たな乗場呼びの情報が登録され、前記新たな乗場呼びの行先階が前記複数台のダブルデッキエレベータのサービス対象階のうちの最上階または最下階であるときに、前記複数台のダブルデッキエレベータ内の前記行先階に着床可能なかごそれぞれについて、前記新たな乗場呼びに割り当てた場合に、この割り当てたかごと同一号機の別かごに前記利用者が乗り込む誤乗が発生する可能性があるか否かを判定する誤乗判定部と、
前記複数台のダブルデッキエレベータのかごのうち、前記誤乗判定部で前記誤乗が発生する可能性があると判定されたかご以外のいずれかのかごを、前記新たな乗場呼びに対して割り当てる割当かご決定部と、を備えるダブルデッキエレベータの群管理制御装置。
【請求項2】
前記誤乗判定部は、
前記利用者の操作により前記乗場呼び登録部に新たな乗場呼びの情報が登録され、前記新たな乗場呼びに関する行先階が前記複数台のダブルデッキエレベータのサービス対象階のうちの最上階または最下階であるときに、前記複数台のダブルデッキエレベータ内の前記行先階に着床可能なかごのうち、第1の条件「減速中であり、同一号機別かごが減速開始時に停止することを決めた階が前記乗場呼びの操作が行われた乗場呼び発生階である」、または、第2の条件「停車中であり、同一号機別かごが無人且つ次の走行方向が定まっていない状態ではない」のいずれかの条件を満たすかごを、前記乗場呼びに割り当てた場合に前記誤乗が発生する可能性があると判定する、請求項1に記載のダブルデッキエレベータの群管理制御装置。
【請求項3】
前記誤乗判定部は、
前記利用者の操作により前記乗場呼び登録部に新たな乗場呼びの情報が登録され、前記新たな乗場呼びに関する行先階が前記複数台のダブルデッキエレベータのサービス対象階のうちの最上階または最下階であるときに、前記複数台のダブルデッキエレベータ内の前記行先階に着床可能なかごのうち、前記乗場呼び発生階から前記乗場呼びの行先階に向かう方向と同じ方向に走行しており、現時点で減速を開始した場合に停車可能な階と前記乗場呼び発生階との階床差が所定値未満であるかごを、前記乗場呼びに割り当てた場合に前記誤乗が発生する可能性があると判定する、請求項1に記載のダブルデッキエレベータの群管理制御装置。
【請求項4】
前記誤乗判定部は、
前記利用者の操作により前記乗場呼び登録部に新たな乗場呼びの情報が登録され、前記新たな乗場呼びに関する行先階が前記複数台のダブルデッキエレベータのサービス対象階のうちの最上階または最下階であるときに、前記複数台のダブルデッキエレベータ内の前記行先階に着床可能なかごのうち、前記乗場呼び発生階から前記乗場呼びの行先階に向かう方向と同じ方向に走行して前記乗場呼び発生階を通り過ぎた位置にあるが、同一号機別かごは前記乗場呼び発生階を通り過ぎていない位置にあるかごを、前記乗場呼びに割り当てた場合に前記誤乗が発生する可能性があると判定する、請求項1に記載のダブルデッキエレベータの群管理制御装置。
【請求項5】
前記誤乗判定部は、
前記利用者の操作により前記乗場呼び登録部に新たな乗場呼びの情報が登録され、前記新たな乗場呼びに関する行先階が前記複数台のダブルデッキエレベータのサービス対象階のうちの最上階または最下階であるときに、前記複数台のダブルデッキエレベータ内の前記行先階に着床可能なかごのうち、前記乗場呼び発生階から前記乗場呼びの行先階に向かう方向と逆方向に走行しており、同一号機別かごが前記乗場呼び発生階を通り過ぎておらず、同一号機別かごが現時点で減速を開始した場合に停車可能な階と前記乗場呼び発生階との階床差が所定値未満であるかごを、前記乗場呼びに割り当てた場合に前記誤乗が発生する可能性があると判定する、請求項1に記載のダブルデッキエレベータの群管理制御装置。
【請求項6】
上かごと下かごとからなるダブルデッキエレベータを複数台群管理し、
行先階が指定された乗場呼びの情報を登録する乗場呼び登録部を備えたダブルデッキエレベータの群管理制御装置が、
利用者の操作により前記乗場呼び登録部に新たな乗場呼びの情報が登録され、前記新たな乗場呼びの行先階が前記複数台のダブルデッキエレベータのサービス対象階のうちの最上階または最下階であるときに、前記複数台のダブルデッキエレベータ内の前記行先階に着床可能なかごそれぞれについて、前記新たな乗場呼びに割り当てた場合に、この割り当てたかごと同一号機の別かごに前記利用者が乗り込む誤乗が発生する可能性があるか否かを判定しと、
前記複数台のダブルデッキエレベータのかごのうち、前記誤乗が発生する可能性があると判定されたかご以外のいずれかのかごを、前記新たな乗場呼びに対して割り当てる、ダブルデッキエレベータの群管理制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ダブルデッキエレベータの群管理制御装置およびダブルデッキエレベータの群管理制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のエレベータを統括して制御するシステムを、エレベータの群管理制御システムという。特に、各エレベータが、上かごと下かごを連結したダブルデッキエレベータから構成される群管理制御システムを、ダブルデッキ群管理制御システムと呼ぶ。
【0003】
エレベータの群管理制御システムでは、利用者が乗場呼びの登録操作を行うと、最も効率よく利用者を輸送できるように、当該乗場呼びに対して応答する乗りかご(割当かご)を決定する割当処理を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2013/164882号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ダブルデッキエレベータに関する乗場呼びへの割当処理を行う場合には上かごと下かごとを区別して処理を行う。一方で、乗場での呼び登録を、乗場行先階登録装置により行先階を入力することで行う場合は、乗場行先階登録装置は、行先階を入力した利用者に対し、割当号機を表示するが、それが上かごであるか下かごであるかは報知しない。
【0006】
乗場行先階登録装置を用いて呼び登録を行った場合は、割当かごが出発階で応答すると、行先階への呼びが自動的に登録される。従って、利用者は、かご内では行先階の呼びボタンを操作しない。あるいは、そのようなエレベータでは、かご内に行先階の呼びボタンが設置されていないこともある。
【0007】
利用者が乗場呼び操作を行った階の乗場に、この利用者に対して割り当てた乗りかごと、同一号機で別のかごが先に着床して戸開すると、戸開した乗りかごに利用者が誤乗車することが考えられる。乗場行先階登録装置に行先階を入力した利用者が戸開したかごに誤乗車すると、誤乗車したかごでは、行先階への呼びが自動登録されないので、その利用者は行先階で降車することができない。
【0008】
このような事態を避けるためには、同一号機の別かごが、登録された呼びと同じ方向で先着および戸開した時点で、割当かごを先着したかごに変更する、割当変更を行えばよい。
【0009】
一方で、ダブルデッキエレベータでは、最上階のように上かごでのみサービス可能な階、または最下階のように下かごのみサービス可能な階がある。そのため、利用者によっては、上かごまたは下かごの一方でしか、行先階まで到達できないこともある。そのような利用者に対し、割当かごの同一号機別かごが先着し戸開した場合は、この先着したかごでは、その利用者の行先階への呼びを自動登録できないので、先着したかごに割当変更をすることができない。
【0010】
従って、上かごまたは下かごでのみ到達可能な行先階に移動する利用者は、先着したかごを避け、本来の割当かごの応答を待ってから乗車する必要があるが、先着したかごに間違えて乗車する可能性があり、利用しづらいという問題があった。
【0011】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、ダブルデッキエレベータの群管理制御において、発生した乗場呼びに対して精度良く乗りかごの割当処理を実行することが可能なダブルデッキエレベータの群管理制御装置およびダブルデッキエレベータの群管理制御方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するための実施形態によればダブルデッキエレベータの群管理制御装置は、誤乗判定部と割当かご決定部とを備える。誤乗判定部は、利用者の操作により行先階が指定された乗場呼びの情報が登録され、この乗場呼びの行先階が複数台のダブルデッキエレベータのサービス対象階のうちの最上階または最下階であるときに、この行先階に着床可能なかごそれぞれについて、この乗場呼びに割り当てた場合に、この割り当てたかごと同一号機の別かごに利用者が乗り込む誤乗が発生する可能性があるか否かを判定する。割当かご決定部は、誤乗が発生する可能性があると判定されたかご以外のいずれかのかごを乗場呼びに対して割り当てる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一実施形態によるダブルデッキエレベータの群管理制御装置を利用したダブルデッキ群管理制御システムのブロック図である。
図2A】一実施形態によるダブルデッキエレベータの群管理制御装置が実行する割当かご決定処理の動作を示すフローチャートである。
図2B】一実施形態によるダブルデッキエレベータの群管理制御装置が実行する割当かご決定処理の動作を示すフローチャートである。
図3】一実施形態によるダブルデッキエレベータの群管理制御装置が制御対象とするエレベータにおいて、乗場呼びに対して仮割当かごが順方向に走行しており、仮割当かごのアドバンサ階と乗場呼び発生階との階床差が所定値未満の場合を示す説明図である。
図4】一実施形態によるダブルデッキエレベータの群管理制御装置が制御対象とするエレベータにおいて、乗場呼びに対して仮割当かごが背後方向に走行しており、同一号機別かごが順方向に走行している場合を示す説明図である。
図5】一実施形態によるダブルデッキエレベータの群管理制御装置が制御対象とするエレベータにおいて、乗場呼びに対して仮割当かごおよび同一号機別かごが背後方向に走行している場合を示す説明図である。
図6】一実施形態によるダブルデッキエレベータの群管理制御装置が制御対象とするエレベータにおいて、乗場呼びに対して仮割当かごが逆方向に走行しており、同一号機別かごが乗場呼び発生階を通り過ぎておらず、同一号機別かごのアドバンサ階と乗場呼び発生階との階床差が所定値未満の場合を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態を説明するにあたり、本実施形態に関して前提となるエレベータシステムの技術内容について、説明する。
【0015】
複数のエレベータを一括して制御するシステムを、エレベータの群管理制御システムという。エレベータの乗場に設置された乗場行先階登録装置(HDC; Hall Destination Controller)を有するエレベータの群管理システムを、DCS(Destination Control System)という。HDCは、利用者が行先階を入力すると、入力した利用者に対し、乗車すべき号機を表示する装置である。各エレベータが2階建構造のダブルデッキエレベータとなっているDCSを、ダブルデッキDCSという。
【0016】
利用者がHDCで行先階を入力して乗場呼び操作を行うと、乗車すべき号機が表示される。利用者は乗場で、表示された号機の扉の前で待ち、その号機が行先階に向かう方向である順方向を走行方向として、この乗場呼び操作が行われた階である乗場呼び発生階に着床および戸開したら、乗車する。例えば、2階から8階へ向かう利用者にA号機に割当てられた場合は、A号機が上方向を走行方向として戸開したら利用者は乗車する。
【0017】
ダブルデッキエレベータは号機ごとに上かごと下かごを有するが、利用者は乗場呼び操作を行った際に上かごと下かごのどちらに乗るべきかまでは指示されていないので、割り当てられた号機で、最初に乗場呼び発生階に順方向で戸開したかごに乗車する。ここで、エレベータがどちらの方向に走行しているかは、応答したときのアナウンスや、乗場のランタンの表示などに基づいて利用者は判断することができる。
【0018】
ダブルデッキDCSでは、新たに発生した乗場呼びに対し、号機だけでなく、上かごと下かごのどちらで利用者を輸送するかもスケジュールに含めて割当かごを決めるように、割当処理を行っている。例えば、上記の利用者が行った乗場呼び操作で発生した乗場呼びには「A号機上かご」が割り当てられる。
【0019】
利用者はかごに乗車した際、行先階のボタンを押す必要はない。乗場で入力した行先階の情報はエレベータ制御装置に送信されているので、乗車したかごは利用者の行先階で戸開する。そのため利用者は、かごの中で何も操作しなくても行先階で降りることができる。ただし、かご内にかご呼びボタンを設置し、このボタンで操作した階で下車できるように構成したDCSもある。特に、一部の階に上下方向の呼びを登録する乗場呼び登録装置を設置したDCS(ハイブリッドDCS)では、かご内にかご呼びボタンを設置する必要がある。
【0020】
ダブルデッキDCSでは、利用者の乗場呼びに割り当てられたかごと同じ号機で別のかごが、利用者が行先階に向かう方向と同じ方向を走行方向として乗場呼び発生階に着床および戸開する場合が考えられる。この場合、利用者は割り当てられたかごと間違って、戸開したかごに乗車する可能性が高い。なぜなら、利用者には上かご・下かごのどちらに乗車するかは指示されておらず、上かご・下かごは同じ乗場ドアで戸開するので、上かごと下かごとを区別して乗車することが難しいからである。
【0021】
なお、乗場にかごが着床してドアが開くときは、このかごが上下どちらの方向へ向かうかを、ランタンやアナウンスで利用者に報知することが基本となっている。従って、乗場呼びに割り当てられたかごと同一号機別かごが先着しても、利用者の行先階に向かう方向とは反対方向に走行するかごが戸開した場合は、利用者が誤乗する可能性は低く、大きな問題とはならない。一方で、乗場呼びに割り当てられたかごの同一号機別かごが、利用者の行先階に向かう方向と同じ方向を走行方向として、割り当てられたかごよりも早く乗場呼び発生階を経由する場合に、利用者が誤乗する可能性が高くなり、問題が発生する。
【0022】
このような事態が発生した場合には原則として、ダブルデッキDCS側で乗場呼びへの割り当てを上かごから下かごに切り替えて、下かごでサービスするように運行スケジュールを変更する。このようなスケジュールの変更を、先着かごへの割当変更という。この考え方は、上かごと下かごとを入れ替えても成立する。
【0023】
このような割当変更は、利用者の出発階および行先階を、下かごおよび上かごの両方でサービスできる号機に限り可能である。行先階の8階が最上階の場合は、8階は上かごしかサービスできないので、下かごが先に出発階に応答して利用者が誤乗してしまうと、利用者は8階へ行くことができない。従って、2階で乗車し8階で降車するための呼び入力がHDCに行われた時点で、上かごの応答よりも前に、下かごが先に2階を経由するリスクがある号機は選ばないようにする必要がある。
【0024】
一般的には、上かごまたは下かごの一方しかサービスできない階は、最上階と最下階であるため、乗場呼びに割り当てたかごと同一号機別かごが、呼びと同一方向に向かって先に乗場呼び発生階を経由することで、利用者の乗り誤乗が発生するリスクがあるのは、以下の場合に限られる。
【0025】
(1) 乗場呼びで示される方向が上方向であり、行先階が最上階であり、最初に割り当てられたかごが所定号機の上かごであり、この上かごの応答よりも前に同一号機の下かごが上方向を走行方向として乗場呼び発生階を経由する場合
(2) 乗場呼びで示される方向が下方向であり、行先階が最下階であり、最初に割り当てられたかごが所定号機の下かごであり、この下かごの応答よりも前に同一号機の下かごが下方向を走行方向として乗場呼び発生階を経由する場合
上記(1)、(2)の場合は、乗場呼びで示される方向を入れ替えれば同じことを示しているので、以降は乗場呼びで示される方向が上方向の場合について説明する。
【0026】
以下に、ダブルデッキ群管理制御システムの実施形態として、上記のような問題が発生しうる乗場呼びが発生した場合に、割当かごと同一号機別かごが先に到着して、利用者が本来の行先階に行けなくなる問題が起きるか否かを判断する場合について、図面を用いて説明する。
【0027】
〈一実施形態による群管理制御装置を利用したダブルデッキ群管理制御システムの構成〉
本発明の一実施形態による群管理制御装置を利用したダブルデッキ群管理制御システムの構成について、図1を参照して説明する。本実施形態によるダブルデッキ群管理制御システム1は、m階建ての建物内に設置された複数台のダブルデッキエレベータ(A号機エレベータ10A、B号機エレベータ10B、およびC号機エレベータ10C)と、各階の乗場に設置された乗場行先階登録装置20-1~20-mと、群管理制御装置30とを備える。本実施形態のダブルデッキ群管理制御システム1は、建物内の各階に乗場行先階登録装置(HDC)20-1~20-mが設置された行先階制御システム(DCS)を用いて構成されている。本実施形態においては建物内に設置されるダブルデッキエレベータが3台の場合について説明するが、この数には限定されず、2台または4台以上であってもよい。
【0028】
A号機エレベータ10Aは、上かご11Aと、下かご12Aと、A号機制御装置13Aとを有する。A号機制御装置13Aは、上かご11Aおよび下かご12Aの位置情報、走行状況情報、戸開閉状況情報、荷重状態情報、かご呼び登録情報等を、エレベータ情報として群管理制御装置30に出力する。またA号機制御装置13Aは、群管理制御装置30からの割り当て指令によりA号機エレベータ10Aを呼びの登録階へ応答させ、該当するかごを戸開させる。
【0029】
B号機エレベータ10BおよびC号機エレベータ10Cは、A号機エレベータ10Aと同様の構成を有するため、詳細な説明は省略する。
【0030】
乗場行先階登録装置20-1~20-mはそれぞれ、乗場の利用者が、行先階を指定してかご11A~11C、12A~12Cのいずれかを呼ぶ乗場呼びを登録するための装置である。乗場行先階登録装置20-1~20-mはそれぞれ、乗場呼びを登録した利用者に対し、乗車すべき号機の識別情報を出力する。
【0031】
以降、乗場行先階登録装置20-1~20-mのうちいずれであるかを特定しない場合には、乗場行先階登録装置20と記載する。同様に、A号機制御装置13A、B号機制御装置13B、C号機制御装置13Cのうちいずれであるかを特定しない場合には、制御装置13と記載する。
【0032】
群管理制御装置30は、A号機エレベータ10A、B号機エレベータ10B、およびC号機エレベータ10Cを群管理する。群管理制御装置30は、乗場呼び登録部31と、判定ルール記憶部32と、エレベータ情報取得部33と、割当かご決定部34と、割当情報出力部35と、割当変更部36と、誤乗判定部37とを有する。
【0033】
乗場呼び登録部31は、乗場行先階登録装置20-1~20-mから取得した乗場呼びの情報を受け付けて登録する。
【0034】
判定ルール記憶部32は、新たな乗場呼びに所定のかごを割り当てた場合に、この割り当てたかごと同一号機の別かごに、この乗場呼びを登録した利用者が乗り込む誤乗が発生する可能性があるか否かを判定するために予め設定された判定ルールの情報を記憶する。
【0035】
エレベータ情報取得部33は、各制御装置13A、13B、および13Cから出力されるエレベータ情報を取得する。
【0036】
割当かご決定部34は、新たに発生した乗場呼びと、登録済みの呼びとに対して、全体的に最も効率よく利用者を輸送できるように、この新たに発生した乗場呼びに割り当てるかご(割当かご)を決定する。割当かご決定部34は、割当かごを決定する際に、後述するように誤乗判定部で誤乗が発生する可能性があると判定されたかご以外のいずれかのかごを、乗場呼びに割り当てる。
【0037】
割当情報出力部35は、割当かご決定部34が決定した割当かごの情報に基づいて、該当するエレベータの制御装置へ割り当て指令を出力するとともに、乗場呼び登録操作が行われた乗場行先階登録装置20に、決定した割当かごに対応する号機情報を通知する。
【0038】
割当変更部36は、割当かご決定部34が決定した乗場呼びに対する割当かごと同一号機の別かごが、乗場呼び発生階に乗場呼びで示される方向と同一方向に向かって先着して戸開した際に、乗場呼びに対する割当かごを先着した同一号機別かごに変更し、直ちに応答させる。ただし割当変更部36は、乗場呼びの行先階がエレベータ10A、10B、10Cのサービス階のうちの最上階または最下階であるときには、乗場呼びに対する割当かごの変更を行わない。
【0039】
誤乗判定部37は、乗場呼びの行先階がエレベータ10A、10B、10Cのサービス対象階のうちの最上階または最下階であるときに、この行先階に着床可能なかごそれぞれについて、この乗場呼びに割り当てた場合に、割り当てたかごと同一号機の別かごに、乗場呼びを登録した利用者が乗り込む誤乗が発生する可能性があるか否かを判定する。
【0040】
〈一実施形態によるダブルデッキ群管理制御システムの動作〉
本実施形態によるダブルデッキ群管理制御システム1の動作について説明する。以下の説明において、「アドバンサ階」とは、エレベータが走行している場合においては、現時点で減速を開始した場合に停車可能な階を示し、エレベータが減速中の場合においては、減速開始時に停止することを決めた階を示し、エレベータが停車中の場合においては、停車中の階を示す。また、「割当候補かご」とは、発生した乗場呼びに対し、現在の割当処理で割当てようとしているかごを示す。ただし、まだそのかごに割り当てを決定する前の段階である。また、「順方向」とは、かごが方向転換せずに乗場呼びに応答できるような走行方向を示し、かごの現在の走行方向と乗場呼びの方向とが同じ場合と、かごが停止しており無方向の場合、つまり次の走行方向が定まっていない状態の場合に成立する。また、「逆方向」とは、かごが1回方向転換すると乗場呼びに応答できるような走行方向を示し、かごの現在の走行方向と乗場呼びの方向とが異なる場合に成立する。また、「背後方向」とは、かごが2回方向転換すると乗場呼びに応答できるような走行方向を示し、かごの現在の走行方向と乗場呼びの方向とが同じであるが、かごが乗場呼び発生階を通り過ぎた位置にある場合に成立する。
【0041】
図2A図2Bは、本実施形態によるダブルデッキ群管理制御システム1が稼動する際に群管理制御装置30が実行する割当かご決定処理の動作を示すフローチャートである。
【0042】
建物内のいずれかの階床の乗場の乗場行先階登録装置20で利用者が行先階としてサービス対象階の最上階の情報を入力して乗場呼び登録操作を行うと、群管理制御装置30の乗場呼び登録部31に当該乗場呼びXの情報が登録される(S1の「YES」)。
【0043】
乗場呼びXの情報が登録されると、割当かご決定部34が、乗場呼びXの行先階が終端階、つまりエレベータ10A、10B、10Cのサービス対象階のうちの最上階または最下階であるか否かを判定する(S2)。ここでは、割当かご決定部34は乗場呼びXの行先階がサービス対象階の最上階であると判定したものとする。この時点では、割当かご決定部34は、最上階に停車可能なかごである上かご11A、上かご11B、および上かご11Cのすべてを、乗場呼びXに対する割当候補かごとして認識する。
【0044】
割当かご決定部34が乗場呼びXの行先階が最上階であると判定すると(S2の「YES」)、誤乗判定部37が、誤乗判定処理をエレベータ(号機)ごとに実行するループ処理を開始する。誤乗判定処理では、乗場呼びXに対して各号機の上かごを仮割当した場合に、利用者の誤乗が発生する可能性があるか否かを判定する。
【0045】
誤乗判定部37は、まずA号機エレベータ10Aに関する誤乗判定処理として、乗場呼びXに上かご11Aを仮割当した場合に、利用者の誤乗が発生する可能性があるか否かを判定する。
【0046】
誤乗判定部37は、A号機エレベータ10Aが停車中または減速中のときには(S3の「YES」)、上かご11Aが、[条件1] 減速中であり、仮割当かごである上かご11Aの同一号機別かご、つまり下かご12Aのアドバンサ階が乗場呼び発生階である、[条件2] 停車中であり、下かご12A内が無人且つ次の走行方向が定まっていない状態ではない、の2つの条件のいずれかを満たすか否かを判定する(S4)。ここで誤乗判定部37は、いずれかの条件を満たす場合(S4の「YES」)には、上かご11Aについて、乗場呼びXを割り当てた場合に誤乗が発生する可能性があると判定する(S5)。
【0047】
ステップS4において、[条件1]および[条件2]のいずれも満たさない場合(S4の「NO」)には、下かご12が乗場呼び発生階以外に着床した後、上かご11Aが乗場呼び発生階に着床するまでA号機エレベータ10Aの運行が継続する。この場合は、上かご11Aよりも先に、下かご12Aが乗場呼びXの方向に走行して乗場呼び発生階を経由することは考え難いため、上かご11Aを割当候補かごとして残す。
【0048】
ステップS3においてA号機エレベータ10Aが停車中または減速中ではないと判定したときには(S3の「NO」)、ステップS6に移行する。ステップS6において誤乗判定部37は、通常のエレベータ群管理制御において用いられている「デッドバンドチェック」による方式を用いて、誤乗判定処理を行う。
【0049】
以下に、「デッドバンドチェック」について説明する。一般的に、群管理システムでは、個別の号機を制御するエレベータ制御装置と、群管理制御装置とが別機器となっている場合が多く、群管理制御装置が乗場呼びに割り当てるかごを決定してから、エレベータ制御装置がその決定を反映した制御を始めるまでに、時間的な遅れが発生する。また、群管理制御装置が割当かごを決める際に、把握している各号機の状態(アドバンサ階や走行状況、走行方向など)を示す情報は各エレベータ制御装置から送信された情報であるが、伝送には遅れを伴うため、割当処理を行う段階ではこれらの情報はある程度古くなっている。
【0050】
このため、群管理制御装置が乗場呼びに対し、アドバンサ階が乗場呼び発生階である走行中の号機を割り当てたとしても、号機情報の鮮度や制御の遅れの問題から、割り当てたかごが乗場呼び発生階を通り過ぎてしまうことがある。
【0051】
この問題に対応するため、割当処理時における、割当候補かごのアドバンサ階と乗場呼び発生階との間の階床差が閾値Th未満の場合は、この割当候補かごに対する割当の優先度を下げる対応を行う。例えば閾値Th=2の場合、6階発8階行きの乗場呼びを登録した場合、上方向に走行中であり、アドバンサ階が5階または6階のかごは、6階を通り過ぎてしまうリスクがあることを考慮して、この乗場呼びに割当てにくくする。アドバンサ階が4階以下のかごは、確実に6階に停車可能と判断し、通常通りに割り当て可能とする。
【0052】
このように、乗場呼び発生階がアドバンサ階に対し順方向にあるが、アドバンサ階が乗場呼び発生階に近づきすぎているかごは、通過を懸念して乗場呼びへの割り当てを控えることを「デッドバンドチェック」と呼ぶ。デッドバンドチェックは、通常の群管理システムでも取り入れられている。ステップS6において誤乗判定部37は、このデッドバンドチェックの方式を、誤乗判定処理に応用する。
【0053】
誤乗判定部37は、仮割当した上かご11Aが乗場呼びXに対して順方向、つまり上方向に走行しており、上かご11Aのアドバンサ階と乗場呼び発生階との階床差が閾値Th1=2未満か否かを判定する(S6)。
【0054】
上かご11Aが上方向に走行しているが上かご11Aのアドバンサ階と乗場呼び発生階との階床差が閾値Th1=2未満の場合には(S6の「YES」)、上かご11Aが着床に間に合わずに乗場呼び発生階を通り過ぎ、下かご12Aが乗場呼び発生階に着床する懸念がある。
【0055】
図3は、一例として、利用者U1が6階で最上階8階を行先階とする乗場呼びX1の登録操作を行ったときのA号機エレベータ10Aの上かご11Aおよび下かご12Aの位置と乗場呼びX1の乗場呼び発生階との関係を示す説明図である。図内において、△印は乗場呼び発生階、つまり乗場呼びに応答する際のかごの出発階を示し、○印は乗場呼びの行先階を示す。乗場呼びX1が乗場呼び登録部31に登録されたとき、上かご11Aおよび下かご12Aは上方向に走行中であり、上かご11Aのアドバンサ階が5階である。
【0056】
この状態で乗場呼びX1に対して上かご11Aを仮割当した場合、上かご11Aのアドバンサ階「5階」と乗場呼び発生階「6階」との階床差「1」が閾値Th1=2未満であるため、上かご11Aの6階での着床が間に合わず、上かご11Aよりも先に下かご12Aが6階に着床して戸開し、利用者U1が下かご12Aに誤乗する可能性がある。この場合、利用者U1が乗り込んだ下かご12Aは7階で折り返すため、利用者U1は8階に行くことができない。その後上かご11Aが6階→8階の順に着床および戸開するが、6階で戸開したときには利用者U1は既に下かご12Aに乗り込んだ後となる。
【0057】
このような事態の発生を回避するため、誤乗判定部37は、上かご11Aが上方向に走行しているが上かご11Aのアドバンサ階と乗場呼び発生階との階床差が閾値Th1=2未満の場合には、上かご11Aについて、乗場呼びX1を割り当てた場合に誤乗が発生する可能性があると判定する(S5)。
【0058】
ステップS6において「仮割当した上かご11Aが上方向に走行しており上かご11Aのアドバンサ階と乗場呼び発生階との階床差が閾値Th1=2未満」の状態ではないとき(S6の「NO」)には、誤乗判定部37は、上かご11Aが乗場呼びX1に対して背後方向に走行しており、同一号機別かごの下かご12Aが順方向に走行しているか否かを判定する(S7)。
【0059】
この「乗場呼びX1に対して上かご11Aが背後方向に走行しており、同一号機別かごの下かご12Aが順方向に走行している」場合は、図4に示すように、上かご11Aのアドバンサ階が乗場呼び発生階を通り過ぎているが、下かご12Aのアドバンサ階が乗場呼び発生階を通り過ぎておらず、着床に間に合う可能性がある場合が該当する。
【0060】
この場合、上かご11Aよりも先に下かご12Aが乗場呼び発生階に着床して戸開し、利用者U1が誤乗する可能性がある。そのため、誤乗判定部37は、乗場呼びに対して上かご11Aが背後方向に走行しており、下かご12Aが順方向に走行している場合には(S6の「YES」)、上かご11Aについて、乗場呼びX1を割り当てた場合に誤乗が発生する可能性があると判定する(S5)。
【0061】
図5に示すように、下かご12Aのアドバンサ階も乗場呼び発生階を通り過ぎている場合には、上かご11Aおよび下かご12Aともに6階への着床は間に合わず乗場呼び発生階を通り過ぎた状態となるため、乗場呼びX1を上かご11Aに割り当てても問題はない。
【0062】
ステップS7において「上かご11Aが乗場呼びに対して背後方向に走行しており、下かご12Aが順方向に走行している」状況ではないとき(S7の「NO」)には、誤乗判定部37は、上かご11Aが乗場呼びに対して逆方向、つまり下方向に走行している場合における誤乗発生の可能性を検討する。
【0063】
上方向の乗場呼びX1が登録された際に、乗場呼び発生階よりも上方にあり下方向に走行中の上かご11Aを仮割当する場合、下かご12Aは下方向に走行して乗場呼び発生階を経由するため、利用者U1の誤乗が発生する可能性は低い。しかし、乗場呼びX1に割り当てた号機の制御が開始されるまでに時間を要するため、その間に下かご12Aが乗場呼び発生階に着床して走行方向を反転させる可能性がある。この場合、下かご12Aが上かご11Aよりも先に、上方向を走行方向として乗場呼び発生階で戸開した状態になる。
【0064】
図6は、既に上かご11Aが割当られた乗場呼びX2がある状態で、利用者U2が乗場呼びX3の登録操作を行った場合における、上かご11Aおよび下かご12Aの位置と乗場呼びX3の乗場呼び発生階との関係を示す図である。乗場呼びX2は、乗場呼び発生階、つまり応答する際のかごの出発階が7階で、行先階が2階の呼びである。乗場呼びX3は、乗場呼び発生階が3階で、行先階が8階の呼びである。乗場呼びX3が乗場呼び登録部31に登録されたとき、上かご11Aおよび下かご12Aは下方向に走行中であり、下かご12Aのアドバンサ階が4階である。
【0065】
この状態で乗場呼びX3に対して上かご11Aを割り当てたときに、この割り当ての決定よりも前に、上かご11Aを乗場呼びX2に応答させるために上かご11Aをいずれかの階で停止させて走行方向を上方向に反転させることが決定されたとする。ここで、下かご12Aのアドバンサ階と乗場呼びX3の乗場呼び発生階との階床差が閾値Th2未満であると、下かご12Aが乗場呼びX3の乗場呼び発生階で停止して走行方向を反転させる可能性がある。具体的には、下かご12Aのアドバンサ階「4階」と乗場呼びX2の乗場呼び発生階「3階」との階床差「1」が閾値Th2=2未満であると、下かご12Aが3階で停止して走行方向を反転させる可能性がある。
【0066】
この場合、下かご12Aが、3階で走行方向が上方向に反転された状態で停止するため、利用者U2が下かご12Aに間違って乗り込む可能性がある。
【0067】
このような事態の発生を回避するため、誤乗判定部37は、乗場呼びX3に対して上かご11Aが逆方向に走行しており、下かご12Aが乗場呼び発生階を通り過ぎておらず、下かご12Aのアドバンサ階と乗場呼び発生階との階床差が閾値Th2未満である場合には(S8の「YES」)、上かご11Aについて、乗場呼びX3を割り当てた場合に誤乗が発生する可能性があると判定する(S5)。
【0068】
図6の場合においては、誤乗判定部37は、下かご12Aのアドバンサ階が3階または4階のときに、乗場呼び発生階「3階」との階床差「1」が閾値Th2=2未満となり、利用者U2の誤乗が発生する可能性があると判定する。一方で、下かご12Aのアドバンサ階が5階以上の階床のときには、上かご11Aおよび下かご12Aの走行方向が反転する前に乗場呼びX3に対する応答が運行スケジュールに反映されるため、下かご12Aが3階に着床する際には走行方向が下方向の状態となる。そのため、利用者U2による下かご12Aへの誤乗が発生する可能性は低い。この場合、上かご11Aが3階で走行方向を上方向として戸開し、その後、8階→7階→2階の順に移動して戸開することで、乗場呼びX3およびX2に応答する。
【0069】
また、下かご12Aのアドバンサ階が2階または1階のときには、下かご12Aが走行方向を下方向として乗場呼びX3の乗場呼び発生階「3階」を通り過ぎるため、下かご12Aが上かご11Aよりも先に、上方向に走行して3階を経由する可能性はなく、利用者U2による下かご12Aへの誤乗が発生する可能性はない。
【0070】
誤乗判定部37は、ステップS3~S8の処理により、乗場呼びXに上かご11Aを仮割当した場合に、利用者の誤乗が発生する可能性があるか否かの判定結果を保持する。その後、誤乗判定部37は号機ごとにステップS3~S8をループ処理し、上かご11Bおよび11Cについても、乗場呼びXに仮割当した場合に利用者の誤乗が発生する可能性があるか否かを判定してその判定結果を保持する。
【0071】
すべての号機について誤乗判定処理が終了すると、ステップS9に移行し、割当かご決定部34が、誤乗判定部37により誤乗が発生する可能性があると判定された号機以外の号機を割り当て候補とし、乗場呼びXに対する割当かごを決定する(S9)。ここでの割当かごの決定方法には、既存の方法を用いる。例えば、新たに登録された乗場呼びXと、既に登録済みの他の呼びそれぞれについて利用者の待ち時間の予測値を算出し、新たに登録された乗場呼びXを所定のかごの運行スケジュールに追加したときに、全号機における待ち時間の総和の増加量が最小となるかごを、乗場呼びXに割り当てるようにしてもよい。
【0072】
割当情報出力部35は、割当かご決定部34が決定した割当かごに対応する号機の情報を、乗場呼び登録操作が行われた乗場行先階登録装置20に通知する。この号機の情報を受信した乗場行先階登録装置20は、受信した情報を出力することで、利用者が乗車すべき号機を報知する。
【0073】
また割当情報出力部35は、割当かご決定部34が決定した割当かごの情報に対応する制御装置13へ、乗場呼びXの割り当て指令を出力する。割り当て指令を受信した制御装置13は、対応するかごを乗場呼びXの乗場呼び発生階に着床させ、その後行先階に移動するように制御する。
【0074】
ステップS2において、割当かご決定部34が、乗場呼びXの行先階が終端階ではないと判定したときには(S2の「NO」)、乗場呼びXに対する割当候補かごとした上かご11A、上かご11B、および上かご11Cの中から、割当かごを決定する(S9)。
【0075】
上述したように割当処理を実行しているときに、割当変更部36が、割当かご決定部34が決定した乗場呼びに対する割当かごと同一号機の別かごが、乗場呼び発生階に乗場呼びで示される方向と同一方向に向かって先着して戸開したことを検知すると、乗場呼びに対する割当かごを先着した同一号機別かごに変更し、直ちに応答させる。ただし割当変更部36は、乗場呼びの行先階がエレベータ10A、10B、10Cのサービス階のうちの最上階または最下階であるときには、乗場呼びに対する割当かごの変更を行わない。
【0076】
以上の実施形態によれば、ダブルデッキエレベータの群管理制御において、新しく登録された終端階行きの乗場呼びに対して割当かごを決定する際に、同一号機別かごが先に経由するリスクのある号機を避けて割り当てかごを決定することができる。これにより、利用者が割り当てられたかごと異なるかごに誤乗して行先階で降りられなくなるという事態の発生を回避することができる。特に本実施形態では、群管理制御装置における情報の鮮度および乗場呼びへの割り当て情報が制御に反映されるまでの時間の遅れ等を考慮したデッドバンドチェックの考え方を用いることで、より高い精度で誤乗の発生の可能性を判定することができる。
【0077】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0078】
1…ダブルデッキ群管理制御システム、10A…A号機エレベータ、10B…B号機エレベータ、10C…C号機エレベータ、13A…A号機制御装置、13B…B号機制御装置、13C…C号機制御装置、20-1~20-m…乗場行先階登録装置、30…群管理制御装置、31…乗場呼び登録部、32…判定ルール記憶部、33…エレベータ情報取得部、34…割当かご決定部、35…割当情報出力部、36…割当変更部、37…誤乗判定部
【要約】
【課題】ダブルデッキエレベータの群管理制御において、発生した乗場呼びに対して精度良く乗りかごの割当処理を実行することが可能なダブルデッキエレベータの群管理制御装置を提供する。
【解決手段】実施形態によればダブルデッキエレベータの群管理制御装置は、誤乗判定部と割当かご決定部とを備える。誤乗判定部は、利用者の操作により行先階が指定された乗場呼びの情報が登録され、この乗場呼びの行先階が複数台のダブルデッキエレベータのサービス対象階のうちの最上階または最下階であるときに、この行先階に着床可能なかごそれぞれについて、この乗場呼びに割り当てた場合に、この割り当てたかごと同一号機の別かごに利用者が乗り込む誤乗が発生する可能性があるか否かを判定する。割当かご決定部は、誤乗が発生する可能性があると判定されたかご以外のいずれかのかごを乗場呼びに対して割り当てる。
【選択図】図1
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6