(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】搬送システム
(51)【国際特許分類】
B65G 47/90 20060101AFI20241007BHJP
B23Q 7/04 20060101ALI20241007BHJP
【FI】
B65G47/90 Z
B23Q7/04 A
B23Q7/04 H
(21)【出願番号】P 2023508268
(86)(22)【出願日】2021-03-24
(86)【国際出願番号】 JP2021012298
(87)【国際公開番号】W WO2022201369
(87)【国際公開日】2022-09-29
【審査請求日】2024-03-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001531
【氏名又は名称】弁理士法人タス・マイスター
(72)【発明者】
【氏名】安田 浩
(72)【発明者】
【氏名】柏木 悟
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 啓祐
【審査官】内田 茉李
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-540374(JP,A)
【文献】特開2007-210757(JP,A)
【文献】実開昭62-029203(JP,U)
【文献】特開2005-118930(JP,A)
【文献】特開平11-138381(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 47/90
B23Q 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送物を保持する保持装置から該搬送物を取り出して、所定の
工作機械に搬送する搬送システムであって、
移動台を有し、該移動台を前記保持装置に対する作業位置と、前記
工作機械に対する作業位置とに移動させる搬送装置と、
前記移動台上に配設された移送装置及びロボットと、
前記移動台、移送装置及びロボットの作動を制御する制御装置とを備え、
前記移送装置は、前記搬送物に係合可能に設けられた係合部材、及び該係合部材を水平面内で予め定められた方向に進退させる進退機構を備え、
前記制御装置は、少なくとも、前記搬送装置の移動台を前記保持装置に対して設定された作業位置に移動させる第1移動動作と、前記進退機構により前記係合部材を進出させて、対象となる前記搬送物に係合させる係合動作と、前記進退機構により前記係合部材を後退させて、該搬送物を前記保持装置から取り出す取り出し動作とを順次実行させた後、前記移動台を前記
工作機械に対して設定された作業位置に移動させる第2移動動作と、前記進退機構により前記係合部材を進出させて、搬送した搬送物を前記
工作機械に搬入する搬入動作と、前記進退機構により前記係合部材を後退させる後退動作とを、順次実行させるように構成され
、
更に、前記移送装置は、前記ロボットが搬送可能なワークとは、異なる重量又は形状のワークを搬送可能に構成されていることを特徴とする搬送システム。
【請求項2】
前記移送装置の進退機構は、前記係合部材を前記方向に向けて進出させる動作と、元の位置に後退させる動作とを実行可能に構成されるとともに、更に、前記係合部材を前記方向とは逆方向に向けて進出させる動作と、元の位置に後退させる動作とを実行可能に構成され、
前記制御装置は、前記搬入動作において、前記進退機構により前記係合部材を前記方向とは逆方向に進出させて、搬送した搬送物を前記
工作機械に搬入するように構成されていることを特徴とする請求項1記載の搬送システム。
【請求項3】
前記移送装置は、前記係合部材を鉛直軸回りに旋回させる旋回機構を更に備え、
前記制御装置は、前記取り出し動作を実行させた後、前記第2移動動作を実行させたときに、前記係合部材の進退方向が前記
工作機械に向いた状態となるように、前記旋回機構によって前記係合部材を旋回させる旋回動作を実行させるとともに、前記第2移動動作以降の動作を実行させるように構成されていることを特徴とする請求項1記載の搬送システム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記旋回動作と第2移動動作とを、並行して実行させるように構成されていることを特徴とする請求項3記載の搬送システム。
【請求項5】
前記移送装置は、前記係合部材を昇降させる昇降機構を更に備え、
前記制御装置は、前記係合動作において、前記進退機構により前記係合部材を進出させた後、前記昇降機構により前記係合部材を上昇させることによって、該係合部材を前記搬送物に係合させるように構成され、更に、前記搬入動作において、前記進退機構により前記係合部材を進出させて、搬送した搬送物を
工作機械に搬入した後、前記昇降機構により前記係合部材を降下させるように構成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の搬送システム。
【請求項6】
前記制御装置は、前記搬送装置及び前記移送装置の動作と、前記ロボットの動作との、少なくとも一部の動作が並行して実行されるように、前記搬送装置及び前記移送装置と、前記ロボットとを、動作させるように構成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の搬送システム。
【請求項7】
前記搬送装置は、前記移動台を前記
工作機械に対して設定された作業位置から離隔した退避位置に移動可能に構成されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の搬送システム。
【請求項8】
前記搬送装置は、前記移動台を前記保持装置に対して設定された作業位置から離隔した退避位置に移動可能に構成されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の搬送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送物を保持する保持装置から当該搬送物を取り出して、所定の産業機械に搬送する搬送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
前記保持装置から搬送物を取り出して、所定の産業機械に搬送可能な搬送装置として、従来、特開2009-184826号公報に開示されたフォークリフトが知られている。
【0003】
このフォークリフトは、荷物を積載可能に形成されたフォークと、上下方向に延び、前記フォークを上下方向にスライド可能に支持する第1支軸と、前記フォークを前記第1支軸に沿って昇降させる第1昇降装置と、荷物を把持可能に構成されたアームと、同じく上下方向に延び、前記アームを上下方向にスライド可能に支持する第2支軸と、前記アームを前記第2支軸に沿って昇降させる第2昇降装置とを備えている。また、前記アームは、前記第2支軸に対し、これと交差する方向に揺動可能に支持されるとともに、屈曲若しくは湾曲可能に構成され、また、伸縮可能に構成されている。
【0004】
このフォークリフトによれば、荷物を把持可能に構成されたアームを備えているので、運搬する荷物が不定形なものであっても、梱包等の作業を行うことなくアームを用いてフォークに積載することができ、また、運搬する荷物が不定型な重量物であっても、クレーン等を用いることなくアームを用いてフォークやフォーク上のパレットに積載することができるので、不定形な荷物の荷役運搬作業を容易に行うことができる、とのことである。
【0005】
また、前記アームを前記第2支軸に対し揺動可能に設けているので、当該アームの先端部の可動範囲を広くすることができ、例えば、斜め前方の荷物をフォークに載置する際に、フォークリフトの向き等を微調整することなく、アームを揺動させるだけで荷物を把持することができるため、荷役運搬作業を円滑、且つ迅速に行うことができる、とのことである。
【0006】
更に、前記アームを、屈曲若しくは湾曲可能に構成することで、より安定的に荷物を把持又は保持することができ、また、アームの先端位置の微調整を容易に行うことができるため、荷物をより安定的に把持又は保持することができ、荷役運搬作業を円滑、且つ迅速に行うことができ、また、アームを、伸縮可能に構成することで、アームの移動態様がより多様になり、アームの利便性がさらに向上する、とのことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、産業機械の分野、とりわけ工作機械の分野では、近年、更なる汎用化及び自動化が進められており、汎用化の面から見ると、加工対象物については、軽量の物から大重量の物までを、また、大きさについても小型の物から大型の物までを一つの工作機械で加工することができるようになっている。更に、加工に用いる工具についても、工具マガジンに格納可能な標準の大きさの工具から、大重量或いは大型の工具までが一つの工作機械の加工で用いられるようになってきている。
【0009】
そして、このように汎用化された工作機械の自動化を図るために、多種多様なワークを工作機械に搬入し、また当該工作機械から搬出することができ、或いは、工具マガジンに収納できないような大重量或いは大型の工具を工作機械の工具保持部に対して着脱することができる搬送装置(搬送システム)の提供が望まれている。
【0010】
ところが、このように汎用化された工作機械を自動化するにあたり、従来、これに適した搬送装置は存在しなかった。上述のように、従来、特開2009-184826号公報に開示されたフォークリフトが提案されているが、このフォークリフトは人が操作するように構成されているため、自動化には対応することができない。
【0011】
本発明は、以上の実情に鑑みなされたものであって、多種多様な搬送物を産業機械に対して搬送することができる自動化された搬送システムの提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するための本発明は、
搬送物を保持する保持装置から該搬送物を取り出して、所定の産業機械に搬送する搬送システムであって、
移動台を有し、該移動台を前記保持装置に対する作業位置と、前記産業機械に対する作業位置とに移動させる搬送装置と、
前記移動台上に配設された移送装置及びロボットと、
前記移動台、移送装置及びロボットの作動を制御する制御装置とを備え、
前記移送装置は、前記搬送物に係合可能に設けられた係合部材、及び該係合部材を水平面内で予め定められた方向に進退させる進退機構を備え、
前記制御装置は、少なくとも、前記搬送装置の移動台を前記保持装置に対して設定された作業位置に移動させる第1移動動作と、前記進退機構により前記係合部材を進出させて、対象となる前記搬送物に係合させる係合動作と、前記進退機構により前記係合部材を後退させて、該搬送物を前記保持装置から取り出す取り出し動作とを順次実行させた後、前記移動台を前記産業機械に対して設定された作業位置に移動させる第2移動動作と、前記進退機構により前記係合部材を進出させて、搬送した搬送物を前記産業機械に搬入する搬入動作と、前記進退機構により前記係合部材を後退させる後退動作とを、順次実行させるように構成された搬送システムに係る。
【0013】
この搬送システムによれば、前記保持装置に保持された搬送物を、前記制御装置による制御の下で、以下のようにして、当該保持装置から取り出して、所定の産業機械に搬送する。
【0014】
即ち、制御装置は、まず、前記移動台を駆動して、該移動台を前記保持装置に対して設定された作業位置に移動させる(第1移動動作)。次に、制御装置は、前記進退機構を駆動して前記係合部材を進出させ、当該係合部材を対象となる前記搬送物に係合させた後、当該係合部材を後退させて、対象の搬送物を前記保持装置から取り出し、この後、前記移動台を駆動して、当該移動台を前記産業機械に対して設定された作業位置に移動させる(第2移動動作)。ついで、制御装置は、前記進退機構を駆動し、前記係合部材を進出させて、搬送した搬送物を前記産業機械に搬入した後(搬入動作)、前記係合部材を後退させる(後退動作)。
【0015】
この搬送システムでは、以上の動作によって、保持装置に保持された搬送物を当該保持装置から取り出して産業機械に自動的に搬送することができる。また、この搬送システムでは、移動台上に設けられた移送装置によって、搬送物を搬送するようにしているので、移動台及び移送装置の耐荷重等を適宜設定することで、大型の重量の重い搬送物であっても、これを適切に搬送することができる。
【0016】
一方、保持装置に保持された比較的小型且つ軽量の搬送物を産業機械に搬送する際には、前記ロボットにより、これを実行することができる。例えば、制御装置により、前記移動台を駆動して、該移動台を前記保持装置に対して設定された作業位置に移動させた後、ロボットを駆動して、対象の搬送物を保持装置から取り出し、次に、前記移動台を駆動して、当該移動台を前記産業機械に対して設定された作業位置に移動させた後、ロボットを駆動して、搬送した搬送物を産業機械に搬入する。
【0017】
尚、この構成の搬送システムは、保持装置へのアクセス方向と、産業機械へのアクセス方向とが同じ方向となるように、当該保持装置と産業機械とを配設した場合に、好適に適用することができる。
【0018】
また、前記産業機械には、前記工作機械の他に、一般的に定義される鉱山機械、化学機械、環境装置、動力伝導装置、タンク、業務用洗濯機、ボイラ・原動機、プラスチック機械、風水力機械、運搬機械及び製鉄機械等が含まれ、必要に応じて、これらの機械に前記搬送システムを適用することができる。
【0019】
上記搬送システムにおいて、前記移送装置の進退機構は、前記係合部材を前記方向に向けて進出させる動作と、元の位置に後退させる動作とを実行可能に構成されるとともに、更に、前記係合部材を前記方向とは逆方向に向けて進出させる動作と、元の位置に後退させる動作とを実行可能に構成され、
前記制御装置は、前記搬入動作において、前記進退機構により前記係合部材を前記方向とは逆方向に進出させて、搬送した搬送物を前記産業機械に搬入するように構成されていても良い。
【0020】
このように構成された搬送システムは、前記保持装置へのアクセス方向と、前記産業機械へのアクセス方向とが逆方向となり、且つ向かい合うように当該保持装置と産業機械とを配設した場合に、好適に適用することができる。
【0021】
また、前記搬送システムにおいて、前記移送装置は、前記係合部材を鉛直軸回りに旋回させる旋回機構を更に備え、
前記制御装置は、前記取り出し動作を実行させた後、前記第2移動動作を実行させたときに、前記係合部材の進退方向が前記産業機械に向いた状態となるように、前記旋回機構によって前記係合部材を旋回させる旋回動作を実行させるとともに、前記第2移動動作以降の動作を実行させるように構成されていても良い。
【0022】
このように構成された搬送システムによれば、前記保持装置へのアクセス方向と、前記産業機械へのアクセス方向とが任意の角度で交差するように、当該保持装置と産業機械が配設されていても、前記係合部材を旋回機構によって旋回させることにより、当該係合部材の進退方向が前記産業機械に向いた状態にすることができるので、当該産業機械に対して前記搬入動作を実行することができる。
【0023】
また、前記搬送システムにおいて、前記制御装置は、前記旋回動作と第2移動動作とを、並行して実行させるように構成されていても良い。このようにすれば、当該搬送システムの動作時間を短縮することができる。
【0024】
また、前記搬送システムにおいて、前記移送装置は、前記係合部材を昇降させる昇降機構を更に備え、
前記制御装置は、前記係合動作において、前記進退機構により前記係合部材を進出させた後、前記昇降機構により前記係合部材を上昇させることによって、該係合部材を前記搬送物に係合させるように構成され、更に、前記搬入動作において、前記進退機構により前記係合部材を進出させて、搬送した搬送物を産業機械に搬入した後、前記昇降機構により前記係合部材を降下させるように構成されていても良い。
【0025】
また、前記搬送システムにおいて、前記制御装置は、前記搬送装置及び前記移送装置の動作と、前記ロボットの動作との、少なくとも一部の動作が並行して実行されるように、前記搬送装置及び前記移送装置と、前記ロボットとを、動作させるように構成されていても良い。
【0026】
前記搬送システムにおいて、前記搬送装置は、前記移動台を前記産業機械に対して設定された作業位置から離隔した退避位置に移動可能に構成されていても良い。
【0027】
前記搬送システムにおいて、前記搬送装置は、前記移動台を前記保持装置に対して設定された作業位置から離隔した退避位置に移動可能に構成されていても良い。
【発明の効果】
【0028】
以上のように、本発明に係る搬送システムによれば、保持装置に保持された搬送物を当該保持装置から取り出して産業機械に自動的に搬送することができる。また、この搬送システムでは、移動台上に設けられた移送装置によって、搬送物を搬送するようにしているので、移動台及び移送装置の耐荷重等を適宜設定することで、大型の重量の重い搬送物であっても、これを適切に搬送することができる。また、保持装置に保持された比較的小型且つ軽量の搬送物を産業機械に搬送する際には、前記ロボットにより、これを実行することができる。このように、本発明に係る搬送システムによれば、多種多様な搬送物を産業機械に対して自動的に搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る加工システムを示した正面図である。
【
図2】本実施形態に係る加工システムを示した平面図である。
【
図4】本実施形態に係る移動台及び移送装置を示した図であって、
図2における矢示B-B方向から見た図に相当する断面図である。
【
図5】本実施形態に係る工作機械を示した図であって、
図2における矢視C-C方向の図である。
【
図6】本実施形態に係る搬送システムの動作を説明するための説明図である。
【
図7】本実施形態に係る搬送システムの動作を説明するための説明図である。
【
図8】本実施形態に係る搬送システムの動作を説明するための説明図である。
【
図9】本実施形態に係る搬送システムの動作を説明するための説明図である。
【
図10】本実施形態に係る搬送システムの動作を説明するための説明図である。
【
図11】本実施形態に係る搬送システムの動作を説明するための説明図である。
【
図12】本実施形態に係る搬送システムの動作を説明するための説明図である。
【
図13】本実施形態に係る搬送システムの動作を説明するための説明図である。
【
図14】本実施形態に係る搬送システムの動作を説明するための説明図である。
【
図15】本実施形態に係る搬送システムの動作を説明するための説明図である。
【
図16】本実施形態に係る搬送システムの動作を説明するための説明図である。
【
図17】本実施形態に係る搬送システムの動作を説明するための説明図である。
【
図18】本実施形態に係る搬送システムの動作を説明するための説明図である。
【
図19】本実施形態に係る搬送システムの動作を説明するための説明図である。
【
図20】本実施形態に係る搬送システムの動作を説明するための説明図である。
【
図21】本実施形態に係る搬送システムの動作を説明するための説明図である。
【
図22】本実施形態に係る搬送システムの動作を説明するための説明図である。
【
図23】本実施形態に係る搬送システムの動作を説明するための説明図である。
【
図24】本実施形態に係る搬送システムの動作を説明するための説明図である。
【
図25】本実施形態に係る搬送システムの動作を説明するための説明図である。
【
図26】本実施形態に係る搬送システムの動作を説明するための説明図である。
【
図27】本実施形態に係る搬送システムの動作を説明するための説明図である。
【
図28】本実施形態に係る搬送システムの動作を説明するための説明図である。
【
図29】本実施形態に係る搬送システムの動作を説明するための説明図である。
【
図30】本実施形態に係る搬送システムの動作を説明するための説明図である。
【
図31】本実施形態に係る搬送システムの動作を説明するための説明図である。
【
図32】本実施形態に係る搬送システムの動作を説明するための説明図である。
【
図33】本実施形態に係る搬送システムの動作を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明に係る具体的な実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1~
図5示すように、本実施形態に係る加工システム1は、産業機械としての工作機械10、保持装置20及び搬送システム40から構成される。
【0031】
前記工作機械10は、従来公知の構成を備えるものであり、その詳しい説明は省略するが、概略構成について説明すると、
図1及び
図5に示すように、主軸(図示せず)に装着されたチャック11、工具を保持する工具主軸12、振止装置13、加工領域を開閉する扉15、操作盤16及び数値制御装置17などを備えている。前記チャック11は、後述するワークWの一端を把持するのもで、当該ワークWはチャック11把持された状態で主軸(図示せず)の回転によってその軸中心に所定の回転速度で回転し、また、主軸(図示せず)の割り出し動作によって、主軸の軸線を中心として、当該軸線周りに所定の角度で割り出される。
【0032】
また、前記工具主軸12は、旋削用の工具を固定した状態で保持可能であるとともに、穴あけ加工やフライス加工用の回転工具を回転可能に保持することができるようになっており、適宜送り機構(図示せず)によって、X軸、Y軸及びZ軸方向に移動するようになっている。また、この工作機械10は、一般的に使用される工具が格納された工具マガジン(図示せず)を有する工具交換装置(図示せず)を備えており、前記工具主軸12に装着される工具は、この工具交換装置によって交換される。
【0033】
前記X軸は鉛直軸であり、Z軸はX軸と直交する水平軸であって、前記主軸(図示せず)の軸線と平行な軸であり、Y軸はX軸及びZ軸と直交する水平軸である。尚、以下の説明では、本例の加工システム1が配設される3次元空間の基準軸として、前記X軸、Y軸及びZ軸の3軸を用いて説明する。
【0034】
前記振止装置13は、適宜駆動装置(図示せず)により前記Z軸方向に移動可能に設けられており、前記チャック11に把持されたワークWの他方端の外周面を2つの支持部材14によって下方から回転自在に支持する装置であり、当該支持部材14は上昇した支持位置と降下した退避位置に昇降されるようになっている。また、前記扉15は適宜駆動装置(図示せず)により前記Z軸方向に移動して加工領域を開閉する。
【0035】
斯くして、この工作機械10では、数値制御装置17による制御の下で、チャック11に把持されたワークWを所定の回転速度で回転させた状態で、工具主軸12に装着された固定工具により、当該ワークWに対して旋削加工を行うことができ、また、チャック11に把持されてワークWを停止させた状態、若しくは主軸(図示せず)によりその軸線周りに所定の送り速度で回転させた状態で、工具主軸12に装着された回転工具により、当該ワークWに対して穴あけ加工やフライス加工などを行うことができるようになっている。このように、本例の工作機械10では、旋削加工、穴あけ加工及びフライス加工などの複合的な加工を行うことができる。
【0036】
前記保持装置20は、
図2に示すように、前記Y軸方向において、前記工作機械10と所定の間隔を空けて配設されるもので、
図1に示す正面から見て、前記Z軸方向左側に配設されたワーク保持装置21、及び右側に配設された工具保持装置30を備えている。
【0037】
前記ワーク保持装置21は、前記Z軸に沿って配設された基台22と、この基台22上に、正面から見てZ軸方向右側に配設された第1ステーション23、及び左側に配設された第2ステーション26を備えている。尚、本例のワークWは、フォークエンドであり、円筒部と、この円筒部から軸線方向に沿って平行に突出する2つのフォーク部とから構成される。また、第1ステーション23、及び第2ステーション26には、適宜供給手段によって、外部からワークWが供給される。
【0038】
前記第1ステーション23は、前記基台22上に配設された支持台24、及びこの支持台24上に前記Z軸方向に沿って所定間隔で立設された2つのワーク支持フレーム25,25を備え、このワーク支持フレーム25,25により、それぞれワークWの円筒部を支持する。同様に、前記第2ステーション26は、前記基台22上に配設された支持台27、及びこの支持台27上に前記Z軸方向に沿って所定間隔で立設された2つのワーク支持フレーム28,28を備え、このワーク支持フレーム28,28により、それぞれワークWの円筒部を支持する。尚、これらワーク支持フレーム25,25、及びワーク支持フレーム28,28はそれぞれY軸方向に所定間隔で形成された2つの支持部を有しており、この支持部により、それぞれワークWを2点支持する。
【0039】
前記工具保持装置30は、基台31、及びこの基台31上に立設された工具保持フレーム32を備える。工具保持フレーム32は門形に形成されたフレームであり、本例では、3本の工具T(T1,T2,T3)が工具保持フレーム32の水平部分に所定間隔を空けて鉛直に保持される。尚、この工具保持装置30には、前記工具マガジン(図示せず)に格納できない規格外の工具であって、工具としては重量の重い長尺の工具Tが保持される。
【0040】
前記搬送システム40は、前記工作機械10と保持装置20との間に配設された搬送装置41、移送装置45、ロボット70、及び前記ワーク保持装置21の上方に配設されたハンド収容装置75を備えている。
【0041】
前記搬送装置41は、前記Z軸に沿って配設された搬送基台42と、この搬送基台42上に配設され、前記Z軸に沿って移動可能に設けられた移動台43と、この移動台43を移動させる駆動装置(図示せず)とから構成される。前記搬送基台42には、前記Z軸に沿って配設されたガイドレールが設けられており、前記移動台43は、このガイドレールにより案内されて、Z軸方向に移動する。
【0042】
また、前記駆動装置(図示せず)は、例えば、前記Z軸に沿って搬送基台42に配設されたラック(図示せず)と、前記移動台43に設けられたピニオンギア(図示せず)及びこのピニオンギア(図示せず)を駆動するモータ(図示せず)とから構成される。前記ピニオンギア(図示せず)は前記ラック(図示せず)に噛合しており、前記モータ(図示せず)によりピニオンギア(図示せず)を回転させることで、ピニオンギア(図示せず)とラック(図示せず)との噛合関係によって、移動台43が前記Z軸に沿って移動する。尚、移動台43の位置は、例えば、前記Z軸に沿って前記搬送基台42に配設されたスケール(図示せず)、及び移動台43に設けられて前記スケール(図示せず)の位置を読み取る読取器(図示せず)から構成される位置検出装置(図示せず)によって検出することができる。この移動台43は、前記工作機械10に対して設定された作業位置、前記ワーク保持装置21に対して設定された作業位置、及び前記工具30に対して設定された作業位置に移動することができる。
【0043】
前記移送装置45は、
図2及び
図4に示すように、前記搬送装置41の移動台43上に配設された移送基台46、この移送基台46上に設けられた第1移送台47、第2移送台48及び第3移送台49、この第3移送台49上に設けられた二個一対の支持部材50,50、前記第1移送台47、第2移送台48及び第3移送台49を水平軸である共通のH軸方向に進退させる進退機構51、前記移送基台46を旋回させる旋回機構58、並びに前記移送基台46を昇降させる昇降機構60などを備えている。尚、前記第1移送台47、第2移送台48及び第3移送台49は、それぞれガイドレールに案内されて、前記H軸方向に進退可能に設けられている。
【0044】
尚、前記移送基台46は、下側の第1構造体46aと、上側の第2構造体46bとから構成され、前記第1移送台47は当該第2構造体46b上に設けられている。また、第1構造体46aは、その上部側が前記第2構造体46bに挿入された状態で当該第2構造体46bと連結されるとともに、第2構造体46bは第1構造体46aに対して昇降可能となっている。
【0045】
前記進退機構51は、第1移送台47に設けられた第1ピニオンギア52及び第2ピニオンギア53と、第2移送台48に設けられた第3ピニオンギア54の3つのピニオンギアと、これらを駆動するモータ(図示せず)と、前記搬送基台46に設けられたラック55、前記第2移送台48に設けたラック56及び前記第3移送台49に設けたラック(図示せず)などから構成される。そして、前記第1ピニオンギア52は前記ラック55に噛合し、前記第2ピニオンギア53は前記ラック56に噛合し、前記第3ピニオンギア54は前記第3移送台49に設けられた図示しない前記ラックに噛合している。
【0046】
斯くして、この進退機構51では、前記第1ピニオンギア52と前記ラック55との噛合関係によって、前記第1移送台47が前記H軸方向に進退し、前記第2ピニオンギア53と前記ラック56との噛合関係によって、前記第2移送台48が前記H軸方向に進退するとともに、前記第3ピニオンギア54と図示しない前記ラックとの噛合関係によって前記第3移送台49が前記H軸方向に進退する。
【0047】
尚、第1移送台47の移送基台46に対する位置は、H軸に沿って移送基台46に配設した第1スケール(図示せず)、及び第1移送台47に設けられてこの第1スケール(図示せず)の位置を読み取る第1読取器(図示せず)から構成される第1位置検出装置(図示せず)によって検出することができる。同様に、第2移送台48の第1移送台47に対する位置は、H軸に沿って第1移送台47に配設した第2スケール(図示せず)、及び第2移送台48に設けられてこの第2スケール(図示せず)の位置を読み取る第2読取器(図示せず)から構成される第2位置検出装置(図示せず)によって検出することができ、また、第3移送台49の第2移送台48に対する位置は、H軸に沿って第2移送台48に配設した第3スケール(図示せず)、及び第3移送台49に設けられてこの第3スケール(図示せず)の位置を読み取る第3読取器(図示せず)から構成される第3位置検出装置(図示せず)によって検出することができる。
【0048】
前記支持部材50は、進退方向に沿って、所定の間隔を空けて前記第3移送台49上に配設されており、前記進退方向に沿ってそれぞれ設けられた2つの支持部50a,50aによって前記ワークWの円筒部を支持することができるようになっている。尚、前記第3移送台49は、その前記支持部材50,50間に、進出方向の先端から奥側(後退方向)に向けて形成された切り欠き部49aを備えている。
【0049】
前記旋回機構58は、前記移送基台46を鉛直軸であるV軸を中心として旋回させる機構であり、移送基台46の下端部に連結された平歯車59と、前記移動台43に設けられて前記平歯車59に噛合するピニオンギア(図示せず)と、このピニオンギア(図示せず)を駆動するモータ(図示せず)から構成される。このモータ(図示せず)によって駆動されるピニオンギア(図示せず)により前記平歯車59が回転し、当該平歯車59の回転によって前記移送基台46がV軸を中心として、
図2に示した矢示D-E方向に旋回する。
【0050】
前記昇降機構60は、前記移送基台46の第2構造体46bを昇降させる機構であり、前記第1構造体46aに配設された油圧シリンダ61と、この油圧シリンダ61のシリンダ室内に嵌挿されたピストン62と、油圧シリンダ61のシリンダ室に供給管63,64を介して圧油を供給する圧油供給源(図示せず)とから構成される。油圧シリンダ61は、その軸線がV軸に沿って配設され、前記ピストン62の上端部が前記第2構造体46bに接続されている。斯くして、前記圧油供給源(図示せず)から供給管64を介して、下側のシリンダ室に圧油を供給することで、前記ピストン62の作用によって前記第2構造体46bが上昇し、逆に、圧油供給源(図示せず)から供給管63を介して、上側のシリンダ室に圧油を供給することで、前記ピストン62の作用により前記第2構造体46bが降下する。
【0051】
前記ロボット70は、6軸の多関節型ロボットであり、そのアームの先端部にハンド保持部71を備えており、このハンド保持部71に前記ハンド収容装置75に保持されたハンドを把持可能になっている。そして、このロボット70は、ハンドを3次元空間内の任意の位置に移動させることができ、また、任意の姿勢をとらせることができる。
【0052】
前記ハンド収容装置75は、前記ワーク保持装置21の上方に設けられるもので、図示しない支持手段によってZ軸方向に沿って支持される支持フレーム79と、この支持フレーム79により、Z軸方向に沿って所定間隔で支持される3つのハンド保持フレーム76,77,78を備えており、このハンド保持フレーム76,77,78内にそれぞれハンドが収容されている。
【0053】
前記制御装置80は、CPU、RAM、ROMなどを含むコンピュータから構成され、前記搬送装置41、移送装置45及びロボット70などの作動を制御して、前記ワーク保持装置21に保持されたワークWを搬送して、前記工作機械10に供給するワーク搬送動作、並びに前記工具保持装置30に保持された工具Tを搬送して、前記工作機械10の工具主軸12に装着する工具搬送動作を実行する。以下、この制御装置80による動作制御について説明する。
【0054】
[ワーク搬送動作]
以下、前記ワーク保持装置21に保持されたワークWを、搬送システム40の移送装置45により搬送して、前記工作機械10に供給するワーク搬送動作について、
図6~
図20に基づいて説明する。尚、
図6~
図20では、明確性の見地から特に記入した場合を除いて、符号の記入を省略しているが、この
図6~
図20においても、
図1~
図5で用いた符号が適用(参照)され、以下では、
図1~
図5で示した符号を用いて説明する。
【0055】
また、動作開始前には、搬送装置41の移動台43は、
図2におけるZ軸方向右端部に設定された原位置(退避位置)に位置しているものとする。また、移送装置45の第1移送台47、第2移送台48及び第3移送台49は、
図4に示すように、移送基台46の上方の位置にあたる後退端に位置しており、その進退方向であるH軸は前記Z軸に対して平行になっており、前記第2構造体46bは降下状態にあるものとする。一方、工作機械10は、その前扉15が開状態にあり、また、振止装置13はZ軸方向右側の後退端に位置しているものとする。
【0056】
また、以下では、ワーク保持装置21の第1ステーション23に保持されたワークWを工作機械10に供給する態様について説明するが、第1ステーション26に保持されたワークWを供給する場合も同様の態様を採る。
【0057】
制御装置80は、まず、進退機構51を駆動して、第1移送台47をH軸方向に進出させるとともに、搬送装置41の駆動装置(図示せず)を駆動して、移動台43をZ軸方向左側に向けて移動させて、ワーク保持装置21の第1ステーション23に対して設定された作業位置に位置決めした後(この状態につき
図2参照)、旋回機構58を駆動して、移送基台46を矢示D方向に90°旋回させる(
図6、
図7参照)。尚、第2ステーション26に対しても同様に作業位置が設定されている。
【0058】
次に、制御装置80は、進退機構51を駆動して、第2移送台48及び第3移送台49をH軸方向に進出させて、その第3移送台49上に設けられた支持部材50,50を、ワーク支持フレーム25,25によって支持されたワークWの下方に位置させる(
図8及び
図9参照)。尚、このとき、支持部材50,50は、
図9に示すように、右側のワーク支持フレーム25を挟む位置に在り、当該右側のワーク支持フレーム25は、第3移送台49に形成された切り欠き部49a内に位置している。
【0059】
ついで、制御装置80は、昇降機構60を駆動して移送基台46の第2構造体46bを上昇させる(
図10参照)。これにより、ワーク支持フレーム25,25に支持されていたワークWは、支持部材50,50により支持された状態で上方に移動し、ワーク支持フレーム25,25による支持状態から解放される。ついで、制御装置80は、進退機構51を駆動して、
図11に示すように第2移送台48及び第3移送台49を後退させて、これらが後退端まで後退した後、旋回機構58を駆動して、
図12に示すように、移送基台46を矢示E方向に90°旋回させる。
【0060】
次に、制御装置80は、搬送装置41の駆動装置(図示せず)を駆動して、移動台43をZ軸方向左側に向けて移動させて、工作機械10に対して設定された作業位置に位置決めした後(
図13参照)、旋回機構58を駆動して、
図14に示すように、移送基台46を矢示E方向に90°旋回させる。次に、制御装置80は、進退機構51を駆動して、
図15に示すように、第2移送台48及び第3移送台49をH軸方向に進出させる。これにより、支持部材50,50によって支持されたワークWの軸線が、主軸(図示せず)及びチャック11の軸線と同軸となる。
【0061】
次に、制御装置80は、搬送装置41の駆動装置(図示せず)を駆動して、移動台43をZ軸方向左側に移動させて、ワークWをチャック11の把持位置に位置決めした後(
図16参照)、工作機械10にワークWのセッティング完了信号を送信する。そして、このようにしてセッティング完了信号を受信すると、工作機械10は、チャック11によりワークWを把持するとともに、振止装置13をZ軸に沿ってチャック11に向けて移動させて、その支持部材14をワークWの右側端部の下方に位置決めした後、当該支持部材14を上昇させて、この支持部材14によりワークWの右側端部を支持させ(
図17参照)、この後、ワーク把持完了信号を制御装置80に送信する。
【0062】
そして、このワーク把持完了信号を受信すると、制御装置80は、次に、昇降機構60を駆動して移送基台46の第2構造体46bを降下させた後、第2移送台48及び第3移送台49をH軸方向に後退させ(
図18参照)、この後、搬送装置41の駆動装置(図示せず)を駆動して、移動台43をZ軸方向右側に向けて、当該工作機械10に対して設定された前記作業位置に移動させ(
図19参照)、次に、旋回機構58を駆動して、
図20に示すように、移送基台46を矢示D方向に90°旋回させ、旋回完了後に、退出信号を工作機械10に送信する。そして、退出信号を受信すると、工作機械10は前扉15を閉じて、ワークWに対して所定の加工を実行する。一方、制御装置80は、搬送装置41の駆動装置(図示せず)を駆動して、移動台43をZ軸方向右側に移動させて原位置(退避位置)に復帰させる。
【0063】
制御装置80は、以上の動作制御によって、ワーク保持装置21に保持されたワークWを搬送システム40により搬送して、工作機械10に供給する。
【0064】
[工具搬送動作]
次に、前記工具保持装置30に保持された工具Tを搬送システム40のロボット70により搬送して、前記工作機械10に工具主軸12に装着する工具搬送動作について、
図21~
図33に基づいて説明する。尚、
図21~
図33では、明確性の見地から特に記入した場合を除いて、符号の記入を省略しているが、この
図21~
図33においても、
図1~
図5で用いた符号が適用(参照)され、以下では、
図1~
図5で示した符号を用いて説明する。
【0065】
また、動作開始前には、搬送装置41の移動台43は、
図2におけるZ軸方向右端部に設定された原位置(退避位置)に位置しているものとする。また、移送装置45の第1移送台47、第2移送台48及び第3移送台49は、
図2に示した状態にあるものとする。一方、工作機械10は、その前扉15が開状態にあり、振止装置13はZ軸方向右側の後退端に位置しているものとする。また、工具主軸12は
図1及び
図5に示す位置にあり、工具Tは装着されておらず、その保持穴はチャック11側に向いて、中心軸がZ軸と平行になっているものとする。
【0066】
また、ロボット70のハンド保持部71にはハンドが保持されていないものとする。また、以下では、
図2における最も左側に保持される工具T
1を工具主軸12に装着するものとし、
図22に示すように、この工具T
1を把持するハンド72は、最も右側に配置されたハンド保持フレーム76に収納されているものとする。同様に、工具T
2を把持するハンド73はハンド保持フレーム77に収納され、工具T
3を把持するハンド74はハンド保持フレーム78に収納されている。尚、この例では、工具T
1を工具主軸12に装着する態様について説明するが、工具T
2,T
3についても同様の態様を採る。
【0067】
制御装置80は、まず、搬送装置41の駆動装置(図示せず)を駆動して、移動台43をZ軸方向左側に向けて移動させて、ロボット70をハンド保持フレーム76に対して設定された作業位置に位置決めした後、ロボット70を動作させて、そのハンド保持部71により、ハンド保持フレーム76内に収容されたハンド72を保持させた後(
図21、
図22参照)、当該ハンド72をハンド保持フレーム76から取り出させる。尚、この作業位置は、ハンド保持フレーム76,77,78について個別に設定されている。
【0068】
次に、制御装置80は、搬送装置41の駆動装置(図示せず)を駆動して、移動台43をZ軸方向右側に向けて移動させて、ロボット70を工具T
1に対して設定された作業位置に位置決めし、ついで、ロボット70を動作させて、そのハンド72により、工具保持フレーム32に保持された工具T
1を把持させた後(
図23~26参照)、把持した工具T
1を工具保持フレーム32から取り出す(
図27、
図28参照)。
【0069】
次に、制御装置80は、搬送装置41の駆動装置(図示せず)を駆動して、移動台43をZ軸方向左側に向けて移動させて、ロボット70を工作機械10に対して設定された作業位置(工具装着位置)に位置決めした後(
図29、
図30参照)、ロボット70を動作させて、ハンド72に把持した工具T
1をZ軸に対して平行となるようにした姿勢で工作機械10内に搬入して、工具主軸12の保持穴に挿入した後(
図31、
図32参照)、工作機械10に工具挿入信号を送信する。そして、工作機械10は、この工具挿入信号を受信して、工具主軸12により工具T
1を把持した後、把持完了信号を制御装置80に送信する。
【0070】
次に、制御装置80は、この把持完了信号を受信した後、ロボット70を工作機械10に侵入する前の姿勢に戻し(
図33参照)、この後、搬送装置41の駆動装置(図示せず)を駆動して、移動台43をZ軸方向右側に移動させて原位置(退避位置)に復帰させる。
【0071】
制御装置80は、以上の動作制御によって、工具保持装置30に保持された工具Tを搬送システム40により搬送して、工作機械10に供給する。
【0072】
以上のように、本例の加工システム1によれば、ワーク保持装置21に保持されたワークW、並びに工具保持装置30に保持された工具Tを工作機械10に対して、自動的に搬送して装着することができる。また、本例の搬送システム1では、移動台43上に設けられた移送装置45によって、搬送物を搬送するようにしているので、移動台43及び移送装置45の耐荷重等を適宜設定することで、大型の重量の重いワークWであっても、これを適切に搬送することができる。
【0073】
一方、保持装置20に保持された比較的小型且つ軽量の搬送物、例えば、工具保持装置30に保持された工具Tを工作機械10に搬送する際には、ロボット70により、これを実行することができる。
【0074】
このように、本例の加工システム1(搬送システム40)によれば、重量の重い大型の搬送物は移送装置45により搬送することができ、比較的小型且つ軽量の搬送物については、ロボット70により搬送することができ、多種多様な搬送物を工作機械10に供給することができる。
【0075】
また、本例の搬送システム40では、移動台43上に、それぞれ重量の重い移送装置45及びロボット70を配設しているので、例えば、第3移送台49の支持部材50にワークWを支持させた状態で、第1移送台47、第2移送台48及び第3移送台49を進出させることにより、第1移送台47、第2移送台48及び第3移送台49が移動台43からオーバハングした状態になっても、ロボット70がカウンタバランスとして作用するため、移動台43には大きな偏荷重が作用することなく、安定した状態で移動させることができる。同様に、ロボット70のハンド72が工具Tを把持した状態で、移動台43からオーバハングした状態になった場合には、移送装置45がカウンタバランスとして作用する。
【0076】
また、本例では、搬送システム1が待機状態にあるときには、移動台43を工作機械10及びワーク保持装置20に対して設定された作業位置から離れた退避位置に退避させておくことができるので、例えば、工作機械10やワーク保持装置20に対して、天井クレーンを用いた作業を行う必要がある場合にも、移送装置45やロボット70が邪魔になって、当該作業に支障をきたすのを防止することができ、また、工作機械10やワーク保持装置20に対してオペレータが作業する際にも、その作業を支障なく行うことができる。
【0077】
以上、本発明の具体的な実施の形態について説明したが、本発明が採り得る態様は、何ら上例のものに限定されるものではない。
【0078】
例えば、上例では、進退機構51により、第1移送台47、第2移送台48及び第3移送台49を、移送基台46上から一方向側にオーバハングさせるように構成したが、このような構成に限られるものではなく、進退機構51は、更に、第1移送台47、第2移送台48及び第3移送台49を、移送基台46上から反対方向側にオーバハングさせるように構成されていても良い。
【0079】
このようにすれば、支持部材50によりワークWを支持した状態の第1移送台47、第2移送台48及び第3移送台49を後退させて、ワーク保持装置21からワークWを搬出した後(
図11参照)、更に、第1移送台47、第2移送台48及び第3移送台49を後退させて移送基台46上に収め、この後、移動台43を工作機械10の作業位置に位置決めし、ついで、第1移送台47、第2移送台48及び第3移送台49を反対方向にオーバハングするように移動させることで、支持部材50により支持したワークWを工作機械10に搬入することができ、しかる後、
図14~
図18に示した動作を実行することにより、ワークWを工作機械10に装着することができる。尚、この動作の後には、第1移送台47、第2移送台48及び第3移送台49を後退させて移送基台46上に収めた後、移動台43を原位置である退避位置に移動させる。
【0080】
斯くして、このような態様では、移送基台46を旋回させる必要が無いため、上例の旋回機構58は設ける必要は無い。
【0081】
また、上例では、工作機械10と保持装置20(ワーク保持装置21及び工具保持装置30)とを対向するように配設したが、このような配置関係に限られるものではなく、例えば、
図2において、工作機械10を180°反転させた状態で、ワーク保持装置21の左側に配設しても良い。このように配置すれば、支持部材50によりワークWを支持した状態の第1移送台47、第2移送台48及び第3移送台49を後退させて、ワーク保持装置21からワークWを搬出した後(
図11参照)、このままの状態で、移動台43を工作機械10の作業位置に位置決めし、以後、
図14~
図18に相当する動作を実行することにより、ワークWを工作機械10に装着することができる。尚、この場合にも、移送基台46を旋回させる必要が無いため、上例の旋回機構58を設ける必要は無い。
【0082】
また、上例では、ワークWをワーク保持装置21から取り出す際に、第2移送台48及び第3移送台49を進出させて、支持部材50,50をワークWの下方に位置させた後、昇降機構60を駆動して移送基台46の第2構造体46bを上昇させることにより、ワークWを支持部材50,50によって支持する態様としたが、このような態様に限られるものではなく、ワーク支持フレーム25,25を昇降させるように構成し、支持部材50,50をワークWの下方に位置させた後、ワーク支持フレーム25,25を降下させることにより、ワークWを支持部材50,50によって支持するような態様としても良い。
【0083】
また、上例のワーク搬送動作、及び工具搬送動作における各動作は、これらを順次実行するようにしても良いが、動作の時間短縮のために、干渉などの支障がない限り、複数の動作を同時に並行して実行するようにしても良い。
【0084】
また、上例では、産業機械の一例として、工作機械10を挙げて説明したが、本発明を適用し得る産業機械は、例示した工作機械10に限られるものではなく、実現可能な範囲において、一般的に定義される鉱山機械、化学機械、環境装置、動力伝導装置、タンク、業務用洗濯機、ボイラ・原動機、プラスチック機械、風水力機械、運搬機械及び製鉄機械等が含まれる。
【0085】
繰り返しになるが、上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではない。当業者にとって変形および変更が適宜可能である。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲内と均等の範囲内での実施形態からの変更が含まれる。
【符号の説明】
【0086】
1 加工システム
10 工作機械
11 チャック
12 工具主軸
13 振止装置
14 支持部材
15 前扉
16 操作盤
20 保持装置
21 ワーク保持装置
22 基台
23 第1ステーション
24 支持台
25 ワーク支持フレーム
26 第2ステーション
27 支持台
28 ワーク支持フレーム
30 工具保持装置
31 基台
32 工具保持フレーム
40 搬送システム
41 搬送装置
42 搬送基台
43 移動台
45 移送装置
46 移送基台
47 第1移送台
48 第2移送台
49 第3移送台
50 支持部材
51 進退機構
52,53,54 ピニオンギア
55,56 ラック
58 旋回機構
60 昇降機構
61 油圧シリンダ
62 ピストン
63,64 供給管
70 ロボット
71 ハンド保持部
75 ハンド収容装置
76,77,78 ハンド保持フレーム
79 フレーム
80 制御装置