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特許7567037LIDARシステムにおける角度分解能および検出感度のための選択的サブバンド処理
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】LIDARシステムにおける角度分解能および検出感度のための選択的サブバンド処理
(51)【国際特許分類】
   G01S 17/34 20200101AFI20241007BHJP
   G01S 17/42 20060101ALI20241007BHJP
【FI】
G01S17/34
G01S17/42
【請求項の数】 27
(21)【出願番号】P 2023512774
(86)(22)【出願日】2020-08-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-14
(86)【国際出願番号】 US2020048725
(87)【国際公開番号】W WO2022039758
(87)【国際公開日】2022-02-24
【審査請求日】2023-08-28
(31)【優先権主張番号】16/999,954
(32)【優先日】2020-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521095112
【氏名又は名称】エヴァ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100119792
【弁理士】
【氏名又は名称】熊崎 陽一
(72)【発明者】
【氏名】ビスワナサ クマール バルガブ
(72)【発明者】
【氏名】クラウス ペリン ホセ
(72)【発明者】
【氏名】ムートリ ラジェンドラ ツシャール
(72)【発明者】
【氏名】レズク ミナ
【審査官】佐藤 宙子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0241139(US,A1)
【文献】特開2020-020677(JP,A)
【文献】特表2020-501130(JP,A)
【文献】特開2020-098146(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00- 7/51
G01S 13/00-13/95
G01S 17/00-17/95
G01C 3/00- 3/32
G01B 11/00-11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周波数変調連続波(FMCW)光検出および測距(LIDAR)システムであって、
プロセッサと、
同プロセッサによって実行されると、前記LIDARシステムに下記a~dを実行させるプログラム命令を格納するメモリと、
a.距離に依存する時間領域のベースバンド信号のサンプルを受信する
b.前記ベースバンド信号のサンプルをサブバンド生成器により時間領域でサブバンドに分割する
c.時間領域で分割した前記サブバンドを、サブバンド分類基準に基づいてサブバンド識別器により複数のサブバンドタイプに分類する。ここで、前記サブバンド分類基準は、前記サブバンドにおけるピーク信号エネルギー、前記サブバンドにおける平均信号対ノイズ比、および前記サブバンドにおけるピーク信号対ノイズ比のうちの少なくとも一つ以上に基づくものである。
d.前記複数のサブバンドタイプに基づいて時間領域および周波数領域で前記サブバンドに対するサブバンド処理パラメータを選択する
前記サブバンド生成器および前記サブバンド識別器に連携し、前記サブバンド処理パラメータに基づいて時間領域および周波数領域で前記サブバンドを処理する複数のサブバンドプロセッサと、を備える、LIDARシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のLIDARシステムであって、
前記各サブバンドの帯域幅と中心周波数との組み合わせが第1サブバンド処理パラメータを構成しており、
加えて、前記プロセッサが、前記複数のサブバンドプロセッサの各々に下記aおよびbを実行させる、LIDARシステム。
a.ブロックサンプラで時間領域サンプルブロックを生成する。このブロックサンプラの積分時間は、前記各サブバンドタイプに関連するターゲット検出確率に基づく第2サブバンド処理パラメータを構成する。
b.DFTプロセッサによって時間領域サンプルブロックに離散フーリエ変換(DFT)を実行し、周波数領域のサブバンドを生成する。このDFTの長さは、前記各サブバンドタイプに関連する距離分解能に基づく第3サブバンド処理パラメータを構成し、同DFTの周波数は前記各サブバンドタイプに関連する角度分解能に基づく第4サブバンド処理パラメータを構成する。
【請求項3】
請求項2に記載のLIDARシステムであって、
前記プロセッサが、前記複数のサブバンドプロセッサの各々に下記aおよびbを実行させる、LIDARシステム。
a.ピーク検索プロセッサにより前記各周波数領域のサブバンドにおける信号ピーク、信号対ノイズ比(SNR)ピークおよび/または閾値SNRを超える平均SNRを検索する。
b.周波数領域プロセッサにより前記各周波数領域のサブバンドをデジタルフィルタでフィルタリングする。前記デジタルフィルタの長さは、前記サブバンドタイプに基づく第5のサブバンド処理パラメータを構成する。
【請求項4】
請求項1に記載のLIDARシステムであって、
前記サブバンド分類基準は、さらに、シーン特性、相対的なターゲット速度、方位角スキャン角度、仰角スキャン角度、および以前のフレームに基づく予測ターゲットのうちの少なくとも一つ以上に基づくものである、LIDARシステム。
【請求項5】
請求項1に記載のLIDARシステムであって、
第1タイプのサブバンドプロセッサにより処理される第1タイプのサブバンドは、予め定義された近距離ターゲットに対応する第1の周波数閾値よりも小さい周波数を含むサブバンドからなり、
第2タイプのサブバンドプロセッサにより処理される第2タイプのサブバンドは、予め定義された遠距離ターゲットに対応する第2の周波数閾値よりも大きい周波数を含むサブバンドからなり、
第3のタイプのサブバンドプロセッサにより処理される第3タイプのサブバンドは、予め定義された中距離ターゲットに対応する前記第1の周波数閾値と前記第2の周波数閾値との間の周波数を含むサブバンドからなり、
加えて、前記サブバンド分類基準は、前記サブバンドの中心周波数および帯域幅のうちいずれか一つ以上である、LIDARシステム。
【請求項6】
請求項1に記載のLIDARシステムであって、
第1タイプのサブバンドプロセッサにより処理される第1タイプのサブバンドは、予め定義された近距離ターゲットに対応する第1のエネルギー閾値よりも大きいピークエネルギーを含むサブバンドからなり、
第2タイプのサブバンドプロセッサにより処理される第2タイプのサブバンドは、予め定義された遠距離ターゲットに対応する第2のエネルギー閾値以下のピークエネルギーを含むサブバンドからなり、
第3のタイプのサブバンドプロセッサにより処理される第3タイプのサブバンドは、予め定義された中距離ターゲットに対応する前記第1のエネルギー閾値と前記第2のエネルギー閾値との間のピークエネルギーを含むサブバンドからなる、LIDARシステム。
【請求項7】
請求項1に記載のLIDARシステムであって、
第1タイプのサブバンドプロセッサにより処理される第1タイプのサブバンドは、予め定義された近距離ターゲットに対応する第1のSNR閾値より大きい平均SNRを含むサブバンドからなり、
第2タイプのサブバンドプロセッサによって処理される第2タイプのサブバンドは、予め定義された遠距離ターゲットに対応する第2のSNR閾値より小さい平均SNRを含むサブバンドからなり、
第3タイプのサブバンドプロセッサにより処理される第3タイプのサブバンドは、予め定義された中距離ターゲットに対応する前記第1のSNR閾値と前記第2のSNR閾値との間の平均SNR閾値を含むサブバンドからなる、LIDARシステム。
【請求項8】
周波数変調連続波(FMCW)光検出および測距(LIDAR)システムにおける方法であって、
距離に依存する時間領域のベースバンド信号のサンプルを受信するステップと、
前記ベースバンド信号のサンプルを時間領域でサブバンドに分割するステップと、
前記サブバンドをサブバンド分類基準に基づいて複数のサブバンドタイプに分類するステップであって、前記サブバンド分類基準は、前記サブバンドにおけるピーク信号エネルギー、前記サブバンドにおける平均信号対ノイズ比、および前記サブバンドにおけるピーク信号対ノイズ比のうちの少なくとも一つ以上に基づくものであるステップと、
前記複数のサブバンドタイプに基づいて時間領域および周波数領域で前記サブバンドのサブバンド処理パラメータを選択するステップと、
選択された前記サブバンド処理パラメータを用いて時間領域および周波数領域で前記サブバンドを処理するステップと、を含む、方法。
【請求項9】
請求項に記載のLIDARシステムにおける方法であって、
前記各サブバンドの帯域幅と中心周波数の組み合わせが第1サブバンド処理パラメータを構成しており、
加えて、時間領域における前記サブバンドの処理は、下記aおよびbのステップを含む、方法。
a.ブロックサンプラで時間領域サンプルブロックを生成する。このブロックサンプラの積分時間は、前記各サブバンドタイプに関連するターゲット検出確率に基づく第2サブバンド処理パラメータを構成する。
b.DFTプロセッサによって時間領域サンプルブロックに離散フーリエ変換(DFT)を実行し、周波数領域のサブバンドを生成する。このDFTの長さは、前記各サブバンドタイプに関連する距離分解能に基づく第3サブバンド処理パラメータを構成し、同DFTの周波数は前記各サブバンドタイプに関連する角度分解能に基づく第4サブバンド処理パラメータを構成する。
【請求項10】
請求項に記載のLIDARシステムにおける方法であって、
周波数領域における前記サブバンドの処理は、下記aおよびbのステップを含む、方法。
a.周波数領域プロセッサにより前記各周波数領域のサブバンドをデジタルフィルタでフィルタリングする。前記デジタルフィルタの長さは、前記サブバンドタイプに基づく第5のサブバンド処理パラメータを構成する。
b.ピーク検索プロセッサにより前記各周波数領域のサブバンドにおける信号ピーク、信号対ノイズ比(SNR)ピーク、または閾値SNRを超える平均SNRを検索する。
【請求項11】
請求項に記載のLIDARシステムにおける方法であって、
前記サブバンド分類基準は、さらに、シーン特性、相対的なターゲット速度、方位角スキャン角度、仰角スキャン角度、および前のフレームに基づく予測ターゲットのうちの少なくとも一つ以上に基づくものである、方法。
【請求項12】
請求項に記載のLIDARシステムにおける方法であって、
第1タイプのサブバンドプロセッサにより処理される第1タイプのサブバンドは、予め定義された近距離ターゲットに対応する第1の周波数閾値よりも小さい周波数を含むサブバンドからなり、
第2タイプのサブバンドプロセッサにより処理される第2タイプのサブバンドは、予め定義された遠距離ターゲットに対応する第2の周波数閾値よりも大きい周波数を含むサブバンドからなり、
第3のタイプのサブバンドプロセッサにより処理される第3タイプのサブバンドは、予め定義された中距離ターゲットに対応する前記第1の周波数閾値と前記第2の周波数閾値との間の周波数を含むサブバンドからなり、
加えて、前記サブバンド分類基準は、前記サブバンドの中心周波数および帯域幅のうちいずれか一つ以上である、方法。
【請求項13】
請求項に記載のLIDARシステムにおける方法であって、
第1タイプのサブバンドプロセッサにより処理される第1タイプのサブバンドは、予め定義された近距離ターゲットに対応する第1のエネルギー閾値よりも大きいピークエネルギーを含むサブバンドからなり、
第2タイプのサブバンドプロセッサにより処理される第2タイプのサブバンドは、予め定義された遠距離ターゲットに対応する第2のエネルギー閾値以下のピークエネルギーを含むサブバンドからなり、
第3のタイプのサブバンドプロセッサにより処理される第3タイプのサブバンドは、予め定義された中距離ターゲットに対応する前記第1のエネルギー閾値と前記第2のエネルギー閾値との間のピークエネルギーを含むサブバンドからなる、方法。
【請求項14】
請求項に記載のLIDARシステムにおける方法であって、
第1タイプのサブバンドプロセッサにより処理される第1タイプのサブバンドは、予め定義された近距離ターゲットに対応する第1のSNR閾値より大きい平均SNRを含むサブバンドからなり、
第2タイプのサブバンドプロセッサにより処理される第2タイプのサブバンドは、予め定義された遠距離ターゲットに対応する第2のSNR閾値より小さい平均SNRを含むサブバンドからなり、
第3タイプのサブバンドプロセッサにより処理される第3タイプのサブバンドは、予め定義された中距離ターゲットに対応する前記第1のSNR閾値と前記第2のSNR閾値との間の平均SNR閾値を含むサブバンドからなる、方法。
【請求項15】
周波数変調連続波(FMCW)光検出および測距(LIDAR)システムであって、
距離に依存する時間領域のベースバンド信号のサンプルを受信しかつ同サンプルを信号調整し、信号調整後の前記サンプルを統合して時間領域サンプルブロックを生成する時間領域処理サブシステムと、
前記時間領域処理サブシステムに連携して離散フーリエ変換(DFT)を実行し、前記時間領域サンプルブロックを前記ベースバンド信号の周波数領域サブバンドに変換する離散フーリエ変換(DFT)プロセッサと、
前記DFTプロセッサおよび前記時間領域処理サブシステムに連携して、前記周波数領域でサブバンドを生成し、同サブバンドをサブバンド分類基準に基づいて複数のサブバンドタイプに分類し、かつ分類後の各サブバンドをサブバンドタイプに応じたサブバンド処理パラメータで処理する周波数領域処理サブシステムと、を備え
前記サブバンド分類基準は、前記サブバンドにおけるピーク信号エネルギー、前記サブバンドにおける平均信号対ノイズ比、および前記サブバンドにおけるピーク信号対ノイズ比のうちの少なくとも一つ以上に基づくものである、LIDARシステム。
【請求項16】
請求項15に記載のLIDARシステムであって、
前記時間領域処理サブシステムは、
前記距離に依存する時間領域のベースバンド信号のサンプルを信号調整する時間領域プリプロセッサと、
前記時間領域プリプロセッサおよび前記周波数領域処理サブシステムに連携して、前記信号調整後のサンプルを統合して時間領域サンプルブロックを生成するサンプルブロック生成器と、を備えており、
前記サンプルブロック生成器で前記信号調整後のサンプルを統合して前記時間領域サンプルブロックを生成するときの積分時間は、前記各サブバンドタイプに関連付いたターゲット検出確率に基づく第1サブバンド処理パラメータを構成する、LIDARシステム。
【請求項17】
請求項15に記載のLIDARシステムであって、
前記DFTの長さは、前記各サブバンドタイプに関連する距離分解能に基づく第2サブバンド処理パラメータを構成し、前記DFTの周波数は、前記各サブバンドタイプに関連付いた角度分解能に基づく第3サブバンド処理パラメータを構成する、LIDARシステム。
【請求項18】
請求項16に記載のLIDARシステムであって、
前記周波数領域処理サブシステムは、
周波数領域で前記サブバンドを生成するものであって、前記各サブバンドの帯域幅と中心周波数の組み合わせが第4サブバンド処理パラメータを構成するサブバンド生成器と、
前記サブバンド生成器および前記サンプルブロック生成器と連携して前記周波数領域の前記各サブバンドをタイプ別に分類し、このサブバンドタイプに基づいてサブバンド処理パラメータを選択するサブバンド識別器と、
前記サブバンド生成器および前記サブバンド識別器と連携して前記各サブバンドを調整し、前記各サブバンド内の信号ピークと信号対ノイズ比(SNR)のピークおよび平均を検出し、さらに、前記各サブバンドを後処理する複数の周波数領域処理チェーンと、を備える、LIDARシステム。
【請求項19】
請求項18に記載のLIDARシステムであって、
前記複数の周波数領域処理チェーンの各々は、
前記サブバンドタイプに基づいて各サブバンドをフィルタリングする周波数領域プロセッサであって、この周波数領域プロセッサ内のデジタルフィルタの長さが、各サブバンドタイプに関連する帯域幅に基づく第5サブバンド処理パラメータを構成する周波数領域プロセッサと、
前記周波数領域プロセッサに連携し、前記サバンドタイプに基づいてエネルギーピークを選択的に検索するピーク検索プロセッサと、
前記サブバンドタイプに基づいてLIDARポイントクラウド内のノイズを除去するためにポイントを選択的にフィルタリングする周波数領域ポストプロセッサと、を備えるLIDARシステム。
【請求項20】
請求項15に記載のLIDARシステムであって、
前記サブバンド分類基準は、さらに、シーン特性、相対的なターゲット速度、方位角スキャン角度、仰角スキャン角度、および前のフレームに基づく予測ターゲットのうちの少なくとも一つ以上に基づくものである、LIDARシステム。
【請求項21】
請求項15に記載のLIDARシステムであって、
第1タイプのサブバンド処理チェーンにより処理される第1タイプのサブバンドは、予め定義された近距離ターゲットに対応する第1の周波数閾値よりも小さい周波数を含むサブバンドからなり、
第2タイプのサブバンド処理チェーンにより処理される第2タイプのサブバンドは、予め定義された遠距離ターゲットに対応する第2の周波数閾値よりも大きい周波数を含むサブバンドからなり、
第3のタイプの前記サブバンド処理チェーンにより処理される第3タイプのサブバンドは、予め定義された中距離ターゲットに対応する前記第1の周波数閾値と前記第2の周波数閾値との間の周波数を含むサブバンドからなり、
加えて、前記サブバンド分類基準は、前記サブバンドの中心周波数および帯域幅のうちいずれか一つ以上である、LIDARシステム。
【請求項22】
請求項15に記載のLIDARシステムであって、
第1タイプのサブバンド処理チェーンにより処理される第1タイプのサブバンドは、予め定義された近距離ターゲットに対応する第1のエネルギー閾値よりも大きいピークエネルギーを含むサブバンドからなり、
第2タイプのサブバンド処理チェーンにより処理される第2タイプのサブバンドは、予め定義された遠距離ターゲットに対応する第2のエネルギー閾値以下のピークエネルギーを含むサブバンドからなり、
第3のタイプのサブバンド処理チェーンにより処理される第3タイプのサブバンドは、予め定義された中距離ターゲットに対応する前記第1のエネルギー閾値と前記第2のエネルギー閾値との間のピークエネルギーを含むサブバンドからなる、LIDARシステム。
【請求項23】
請求項15に記載のLIDARシステムであって、
第1タイプのサブバンド処理チェーンにより処理される第1タイプのサブバンドは、予め定義された近距離ターゲットに対応する第1のSNR閾値より大きい平均SNRを含むサブバンドからなり、
第2タイプのサブバンド処理チェーンにより処理される第2タイプのサブバンドは、予め定義された遠距離ターゲットに対応する第2のSNR閾値より小さい平均SNRを含むサブバンドからなり、
第3タイプのサブバンド処理チェーンにより処理される第3タイプのサブバンドは、予め定義された中距離ターゲットに対応する前記第1のSNR閾値と前記第2のSNR閾値との間の平均SNR閾値を含むサブバンドからなる、LIDARシステム。
【請求項24】
周波数変調連続波(FMCW)光検出および測距(LIDAR)システムにおける方法であって、
距離に依存する時間領域のベースバンド信号のサンプルを時間領域処理サブシステムで受信するステップと、
サンプルブロック生成器を用いて時間領域で前記サンプルを統合してサンプルブロックを生成するステップと、
時間領域の前記サンプルブロックをDFTプロセッサの離散フーリエ変換 (DFT) により周波数領域サンプルブロックに変換するステップと、
サブバンド生成器を用いて前記ベースバンド信号の周波数領域サンプルブロックに基づいて周波数領域のサブバンドを生成するステップと、
サブバンド識別器を用いてサブバンド分類基準に基づいて前記サブバンドを複数のサブバンドタイプに分類するステップであって、前記サブバンド分類基準は、前記サブバンドにおけるピーク信号エネルギー、前記サブバンドにおける平均信号対ノイズ比、およびサブバンドにおけるピーク信号対ノイズ比のうち少なくとも一つ以上を含むステップと、
前記サブバンドタイプに基づいてサブバンド処理パラメータを選択するステップと、
前記サブバンドに対応して選択された前記サブバンド処理パラメータを用いて、前記各周波数領域のサブバンドを処理するステップと、を含む方法。
【請求項25】
請求項24に記載のLIDARシステムにおける方法であって、
前記サンプルブロック生成器の積分時間が、前記各サブバンドタイプに関連するターゲット検出確率に基づく第1サブバンド処理パラメータを構成し、
前記DFTの長さが、前記各サブバンドタイプに関連する距離分解能に基づく第2サブバンド処理パラメータを構成し、
前記DFTの周波数が、前記各サブバンドタイプに関連する角度分解能に基づく第3サブバンド処理パラメータを構成し、
前記各サブバンドの帯域幅と中心周波数の組み合わせが、第4サブバンド処理パラメータを構成する、方法。
【請求項26】
請求項24に記載のLIDARシステムにおける方法であって、
前記各周波数領域のサブバンドを処理するステップは、
前記サブバンドタイプに応じて前記周波数領域の各サブバンドを選択的にフィルタリングするとともに、周波数領域プロセッサにおけるデジタルフィルタの長さが、各サブバンドタイプに関連する帯域幅に基づく第5サブバンド処理パラメータを構成するステップと、
前記サブバンドタイプに応じて前記周波数領域のサブバンド内でエネルギーピークまたは信号対ノイズ比(SNR)ピークを選択的に検索するステップと、
前記サブバンドタイプに応じてLIDARポイントクラウド内のノイズを除去するためにポイントを選択的にフィルタリングするステップと、を含む方法。
【請求項27】
請求項24に記載のLIDARシステムにおける方法であって、
前記サブバンド分類基準は、さらに、シーン特性、相対的なターゲット速度、方位角、仰角、および前のフレームに基づく予測ターゲットのうち少なくとも一つ以上を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、米国特許法第119条(e)に基づき2020年8月21日に出願された米国特許出願第16/999,954号の優先権を主張するものであり、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、光検出および測距(LIDAR)システムに関するもので、詳しくは、時間領域と周波数領域において低周波および高周波のサブバンドを選択的に処理し、角度分解能とターゲット検出感度を向上させるようにしたLIDARシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
周波数変調連続波(FMCW)LIDARシステムは、ターゲットに向けて周波数変調された光を照射するために波長可変レーザを使用し、またターゲットからの後方散乱光または反射光を検出するために送信信号のローカルコピーを備えたコヒーレント受信器を使用する。そして、同受信器において、ローカルコピーと、ターゲットまでの往復時間だけ遅延して戻るリターン信号とを混合することで、各ターゲットごとにビート周波数を生成する。
【0004】
ビート周波数とターゲットの距離との間には線形(直線的)な関係があり、ターゲットの距離はビート周波数を計測することで求めることができる。一般に、近距離のターゲットは受信器で強い低周波のビート周波数信号を発生させ、遠距離のターゲットは弱い高周波のビート周波数信号を発生させる。
【0005】
遠距離のターゲットからの弱いリターン信号を検出するための従来の信号処理方法は、角度分解能や距離分解能など他の指標の測定を劣化させ、近距離ターゲットの検出の信頼性を低下させるおそれがある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、本発明の態様、すなわち、LIDARシステムおよびその方法においてサブバンドを選択的に処理することで遠距離ターゲットの検出確率を高めつつ近距離ターゲットの角度分解能および距離分解能を向上させる各発明の態様について説明する。
【0007】
本発明の一態様による、周波数変調連続波(FMCW)LIDARシステムは、プロセッサと、同プロセッサによって実行されるプログラム命令を格納するメモリとを備えており、
前記プロセッサにより前記プログラム命令が実行されると、距離に依存する時間領域ベースバンド信号のサンプルを受信し、サブバンド生成器により同サンプルを時間領域のサブバンドに分割し、サブバンド識別器により同サブバンドを複数のサブバンドタイプに分類し、同サブバンドタイプに基づいて時間領域および周波数領域のサブバンドに対するサブバンド処理パラメータを選択する。
本発明の一態様において、複数のサブバンドプロセッサは、前記サブバンド生成器および前記サブバンド識別器に連携し、前記サブバンド処理パラメータに基づいて時間領域および周波数領域のサブバンドを処理する。
【0008】
本発明の一態様による、周波数変調連続波(FMCW)光測距センサ(LIDAR)システムは、
前記各サブバンドの帯域幅と中心周波数の組み合わせが第1のサブバンド処理パラメータを構成しており、
加えて、前記プロセッサが、前記複数のサブバンドプロセッサの各々に下記aおよびbを実行させる。
a.ブロックサンプラで時間領域サンプルブロックを生成する。このブロックサンプラの積分時間は、前記各サブバンドタイプに関連するターゲット検出確率に基づく第2サブバンド処理パラメータを構成する。
b.DFTプロセッサによって前記時間領域サンプルブロックに離散フーリエ変換(DFT)を実行し、周波数領域のサブバンドを生成する。このDFTの長さは、前記各サブバンドタイプに関連する距離分解能に基づく第3サブバンド処理パラメータを構成し、同DFTの周波数は前記各サブバンドタイプに関連する角度分解能に基づく第4サブバンド処理パラメータを構成する。
【0009】
本発明の一態様において、前記プロセッサは、前記複数のサブバンドプロセッサの各々に下記aおよびbを実行させる。
a.ピーク検索プロセッサにより前記各周波数領域のサブバンドにおける信号ピーク、信号対ノイズ比(SNR)ピークおよび/または閾値SNRを超える平均SNRを検索する。
b.周波数領域プロセッサにより前記各周波数領域のサブバンドをデジタルフィルタでフィルタリングする。前記デジタルフィルタの長さは、前記サブバンドタイプに基づく第5のサブバンド処理パラメータを構成する。
本発明の一態様において、前記サブバンドを分類するサブバンド分類基準は、前記サブバンドにおけるピーク信号エネルギー、前記サブバンドにおける平均信号対ノイズ比、および前記サブバンドにおけるピーク信号対ノイズ比のうちの少なくとも一つ以上に基づく。
本発明の一態様において、前記サブバンド分類基準は、シーン特性、相対的なターゲット速度(EGO速度)、方位角スキャン角度、仰角スキャン角度、および前のフレームに基づく予測ターゲットのうちの少なくとも一つ以上に基づく。
【0010】
本発明の一態様の前記LIDARシステムにおいて、
第1タイプのサブバンドプロセッサにより処理される第1タイプのサブバンドは、予め定義された近距離ターゲットに対応する第1の周波数閾値よりも小さい周波数を含むサブバンドからなり、
第2タイプのサブバンドプロセッサにより処理される第2タイプのサブバンドは、予め定義された遠距離ターゲットに対応する第2の周波数閾値よりも大きい周波数を含むサブバンドからなり、
第3のタイプのサブバンドプロセッサにより処理される第3タイプのサブバンドは、予め定義された中距離ターゲットに対応する前記第1の周波数閾値と前記第2の周波数閾値との間の周波数を含むサブバンドからなり、
加えて、前記サブバンド分類基準は、前記サブバンドの中心周波数および帯域幅のうちいずれか一つ以上である。
【0011】
本発明の一態様の前記LIDARシステムにおいて、
第4タイプのサブバンドプロセッサにより処理される第4タイプのサブバンドは、予め定義された近距離ターゲットに対応する第1のエネルギー閾値よりも大きいピークエネルギーを含むサブバンドからなり、
第5タイプのサブバンドプロセッサにより処理される第5タイプのサブバンドは、予め定義された遠距離ターゲットに対応する第2のエネルギー閾値以下のピークエネルギーを含むサブバンドからなり、
第6のタイプのサブバンドプロセッサにより処理される第6タイプのサブバンドは、予め定義された中距離ターゲットに対応する前記第1のエネルギー閾値と前記第2のエネルギー閾値との間のピークエネルギーを含むサブバンドからなる。
【0012】
本発明の一態様の前記LIDARシステムにおいて、
第7タイプのサブバンドプロセッサにより処理される第7タイプのサブバンドは、予め定義された近距離ターゲットに対応する第1のSNR閾値より大きい平均SNRを含むサブバンドからなり、
第8タイプのサブバンドプロセッサによって処理される第8タイプのサブバンドは、予め定義された遠距離ターゲットに対応する第2のSNR閾値より小さい平均SNRを含むサブバンドからなり、
第9タイプのサブバンドプロセッサにより処理される第9タイプのサブバンドは、予め定義された中距離ターゲットに対応する前記第1のSNR閾値と前記第2のSNR閾値との間の平均SNR閾値を含むサブバンドからなる。
【0013】
本発明の一態様による周波数変調連続波(FMCW)光検出および測距(LIDAR)システムにおける方法は、
距離に依存する時間領域のベースバンド信号のサンプルを受信するステップと、
前記ベースバンド信号のサンプルを時間領域でサブバンドに分割するステップと、
前記サブバンドをサブバンド分類基準に基づいて複数のサブバンドタイプに分類するステップと、
前記複数のサブバンドタイプに基づいて時間領域および周波数領域で前記サブバンドに応じたサブバンド処理パラメータを選択するステップと、
選択された前記サブバンド処理パラメータを用いて時間領域および周波数領域で前記サブバンドを処理するステップと、を含む。
【0014】
本発明の一態様による前記LIDARシステムにおける方法は、
前記各サブバンドの帯域幅と中心周波数の組み合わせが第1サブバンド処理パラメータを構成しており、
加えて、時間領域における前記サブバンドの処理は、下記aおよびbのステップを含む。
a.ブロックサンプラで時間領域サンプルブロックを生成する。このブロックサンプラの積分時間は、前記各サブバンドタイプに関連するターゲット検出確率に基づく第2サブバンド処理パラメータを構成する。
b.DFTプロセッサによって時間領域サンプルブロックに離散フーリエ変換(DFT)を実行し、周波数領域のサブバンドを生成する。このDFTの長さは、前記各サブバンドタイプに関連する距離分解能に基づく第3サブバンド処理パラメータを構成し、同DFTの周波数は前記各サブバンドタイプに関連する角度分解能に基づく第4サブバンド処理パラメータを構成する
【0015】
本発明の一態様による前記LIDARシステムにおける方法は、
周波数領域における前記サブバンドの処理は、下記aおよびbのステップを含む。
a.周波数領域プロセッサにより前記各周波数領域のサブバンドをデジタルフィルタでフィルタリングする。前記デジタルフィルタの長さは、前記サブバンドタイプに基づく第5サブバンド処理パラメータを構成する。
b.ピーク検索プロセッサにより前記各周波数領域のサブバンドにおける信号ピーク、信号対ノイズ比(SNR)ピーク、または閾値SNRを超える平均SNRを検索する。
【0016】
本発明の一態様による前記LIDARシステムにおける方法において、
前記サブバンド分類基準は、前記サブバンドにおけるピーク信号エネルギー、前記サブバンドにおける平均信号対ノイズ比、および/または前記サブバンドにおけるピーク信号対ノイズ比のうちの少なくとも一つ以上に基づく。
また、本発明の一態様による前記LIDARシステムにおける方法において、
前記サブバンド分類基準は、シーン特性、相対的なターゲット速度、方位角スキャン角度、仰角スキャン角度、および前のフレームに基づく予測ターゲットのうちの少なくとも一つ以上に基づく。
【0017】
本発明の一態様による周波数変調連続波(FMCW)光検出および測距(LIDAR)システムは、
距離に依存する時間領域のベースバンド信号のサンプルを受信しかつ同サンプルを信号調整し、信号調整後の前記サンプルを統合して時間領域サンプルブロックを生成する時間領域処理サブシステムを備える。
また、同FMCW-LIDARシステムは、前記時間領域処理サブシステムに連携して離散フーリエ変換(DFT)を実行し、前記時間領域サンプルブロックを前記ベースバンド信号の周波数領域サブバンドに変換する離散フーリエ変換(DFT)プロセッサを備える。
また、同FMCW-LIDARシステムは、前記DFTプロセッサおよび前記時間領域処理サブシステムに連携して、前記周波数領域でサブバンドを生成し、同サブバンドをサブバンド分類基準に基づいて複数のサブバンドタイプに分類し、かつ分類後の各サブバンドをサブバンドタイプに応じたサブバンド処理パラメータで処理する周波数領域処理サブシステムと、を備える。
【0018】
本発明の一態様による前記LIDARシステムにおいて、
前記時間領域処理サブシステムは、
前記距離に依存する時間領域のベースバンド信号のサンプルを信号調整する時間領域プリプロセッサと、
前記時間領域プリプロセッサおよび前記周波数領域処理サブシステムに連携して、前記信号調整後のサンプルを統合して時間領域サンプルブロックを生成するサンプルブロック生成器と、を備えており、
前記サンプルブロック生成器で前記信号調整後のサンプルを統合して前記時間領域サンプルブロックを生成するときの積分時間は、前記各サブバンドタイプに関連するターゲット検出確率に基づく第1サブバンド処理パラメータを構成する。
【0019】
本発明の一態様による前記LIDARシステムにおいて、
前記DFTの長さは、前記各サブバンドタイプに関連する距離分解能に基づく第2サブバンド処理パラメータを構成し、前記DFTの周波数は、前記各サブバンドタイプに関連する角度分解能に基づく第3サブバンド処理パラメータを構成する。
【0020】
本発明の一態様による前記LIDARシステムにおいて、
前記周波数領域処理サブシステムは、
周波数領域で前記サブバンドを生成するものであって、前記各サブバンドの帯域幅と中心周波数の組み合わせが第4サブバンド処理パラメータを構成するサブバンド生成器を備える。
また、前記周波数領域処理サブシステムは、
前記サブバンド生成器および前記時間領域処理サブシステムと連携して前記周波数領域の前記各サブバンドをタイプ別に分類し、このサブバンドタイプに基づいてサブバンド処理パラメータを選択するサブバンド識別器を備える。
また、前記周波数領域処理サブシステムは、
前記サブバンド生成器および前記サブバンド識別器と連携して前記各サブバンドを調整し、前記各サブバンド内の信号ピークと信号対ノイズ比(SNR)のピークおよび平均を検出し、さらに、前記各サブバンドを後処理する複数の周波数領域処理チェーンを備える。
【0021】
本発明の一態様による前記LIDARシステムにおいて、
前記複数の周波数領域処理チェーンの各々は、
前記サブバンドタイプに基づいて各サブバンドをフィルタリングする周波数領域プロセッサであって、この周波数領域プロセッサ内のデジタルフィルタの長さが、各サブバンドタイプに関連付いた帯域幅に基づく第5サブバンド処理パラメータを構成する周波数領域プロセッサと、
前記周波数領域プロセッサに連携し、前記サバンドタイプに基づいてエネルギーピークを選択的に検索するピーク検索プロセッサと、
前記サブバンドタイプに基づいてLIDARポイントクラウド内のノイズを除去するためにポイントを選択的にフィルタリングする周波数領域ポストプロセッサと、を備える。
【0022】
本発明の一態様による前記LIDARシステムにおいて、
前記サブバンド分類基準は、前記サブバンドにおけるピーク信号エネルギー、前記サブバンドにおける平均信号対ノイズ比、および/または前記サブバンドにおけるピーク信号対ノイズ比のうちの少なくとも一つ以上に基づく。
また、本発明の一態様による前記LIDARシステムにおいて、
前記サブバンド分類基準は、シーン特性、相対的なターゲット速度(EGO速度)、方位角スキャン角度、仰角スキャン角度、および以前のフレームに基づく予測ターゲットのうちの少なくとも一つ以上に基づく。
【0023】
本発明の一態様による、周波数変調連続波(FMCW)光検出および測距(LIDAR)システムにおける方法は、
距離に依存する時間領域のベースバンド信号のサンプルを時間領域処理サブシステムで受信するステップと、
サンプルブロック生成器を用いて前記サンプルを統合して時間領域サンプルブロックを生成するステップと、
前記時間領域サンプルブロックをDFTプロセッサの離散フーリエ変換 (DFT) により周波数領域サンプルブロックに変換するステップと、
サブバンド生成器を用いて前記周波数領域サンプルブロックに基づいて周波数領域のサブバンドを生成するステップと、
サブバンド識別器を用いてサブバンド分類基準に基づいて前記サブバンドを複数のサブバンドタイプに分類するステップと、
前記サブバンドタイプに基づいてサブバンド処理パラメータを選択するステップと、
前記サブバンドに対応して選択された前記サブバンド処理パラメータを用いて、前記各周波数領域のサブバンドを処理するステップと、を含む。
【0024】
本発明の一態様による前記LIDARシステムにおける方法において、
前記サンプルブロック生成器の積分時間が、前記各サブバンドタイプに関連するターゲット検出確率に基づく第1サブバンド処理パラメータを構成し、
前記DFTの長さが、前記各サブバンドタイプに関連する距離分解能に基づく第2サブバンド処理パラメータを構成し、
前記DFTの周波数が、前記各サブバンドタイプに関連する角度分解能に基づく第3サブバンド処理パラメータを構成し、
前記各サブバンドの帯域幅と中心周波数の組み合わせが、第4サブバンド処理パラメータを構成する。
【0025】
本発明の一態様による前記LIDARシステムにおける方法において、
前記各周波数領域のサブバンドを処理するステップは、
前記サブバンドタイプに応じて前記周波数領域の各サブバンドを選択的にフィルタリングするとともに、このデジタルフィルタの長さが、各サブバンドタイプに関連付いた帯域幅に基づく第5サブバンド処理パラメータを構成するステップと、
前記サブバンドタイプに応じて前記周波数領域のサブバンド内でエネルギーピークまたは信号対ノイズ比(SNR)ピークを選択的に検索するステップと、
前記サブバンドタイプに応じて LIDARポイントクラウド内のノイズを除去するためにポイントを選択的にフィルタリングするステップと、を含む。
本発明の一態様による前記LIDARシステムにおける方法において、
前記サブバンド分類基準は、前記サブバンドにおけるピーク信号エネルギー、前記サブバンドにおける平均信号対ノイズ比、およびサブバンドにおけるピーク信号対ノイズ比のうち少なくとも一つ以上を含む。
また、本発明の一態様による前記LIDARシステムにおける方法において、
前記サブバンドタイピング基準は、シーン特性、相対的なターゲット速度(EGO速度)、方位角、仰角、および以前のフレームに基づく予測ターゲットのうち少なくとも一つ以上を含む。
【図面の簡単な説明】
【0026】
本発明の種々の態様を明確にするために、後述の詳細な説明(実施形態)で参照される図面を示す。なお図中の同一の符号は同一の要素である。
【0027】
図1】本発明の実施形態によるLIDARシステム例を示すブロック図である。
【0028】
図2】本発明の実施形態によるLIDAR波形の一例を示す時間-周波数ダイアグラムである。
【0029】
図3】本発明の実施形態による、時間領域および周波数領域における選択的サブバンド処理を用いるLIDARシステムを示すブロック図である。
【0030】
図4】本発明の実施形態による時間領域のサブバンド生成器を示すブロック図である。
【0031】
図5】本発明の実施形態による時間領域の他のサブバンド生成器を示すブロック図である。
【0032】
図6A-6C】本発明の実施形態によるサブバンド選択例を示す振幅-周波数ダイアグラムである。
【0033】
図7A】本発明の実施形態による、ターゲット角度分解能を向上させるための時間領域における選択的なサブバンド信号処理の一例を示す時間-振幅ダイアグラムである。
【0034】
図7B】本発明の実施形態による、ターゲット検出確率を向上させるための時間領域における選択的サブバンド信号処理の一例を示す時間-振幅ダイアグラムである。
【0035】
図8】本発明の実施形態による、時間領域および周波数領域における選択的サブバンド処理の方法を示すフローチャートである。
【0036】
図9】本発明の実施形態による、周波数領域における選択的なサブバンド処理を用いるLIDARシステムを示すブロック図である。
【0037】
図10】本発明の実施形態によるサブバンド識別器を示すブロック図である。
【0038】
図11】本発明の実施形態による、周波数領域における選択的サブバンド処理の方法を示すフローチャートである。
【0039】
図12】本発明の実施形態によるサブバンド処理装置を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の実施形態によるLIDARシステムとその方法を説明する。
本実施形態は、時間領域および/または周波数領域で生成されたターゲットのリターン信号の周波数サブバンドを選択的に処理する距離測定のためのLIDARシステムおよびその方法である。これにより、遠距離のターゲットの検出確率を向上させつつ、近距離のターゲットの角度分解能と距離分解能を向上させることができる。
本発明の実施形態におけるLIDARシステムは、輸送、製造、計測、医療、セキュリティシステムなど、任意のセンシング市場に導入することができる。その他、実施形態で説明されるLIDARシステムは、自動運転支援システムや自動運転車の空間認識を支援する周波数変調連続波(FMCW)デバイスのフロントエンド(前置型)パーツとして実装される。
【0041】
図1に一実施形態によるLIDARシステム100を示す。LIDARシステム100には、複数のコンポーネントが組み込まれているが、図示より少ないコンポーネントであってもよく、または追加コンポーネントを含んでもよい。
図1に示すように、LIDARシステム100は、フォトニクスチップ上に実装された光学回路101を有する。光学回路101には、アクティブ光学部品とパッシブ光学部品とが組み込まれる。アクティブ光学部品は、光信号を生成、増幅、および/または検出するようになっており、異なる波長の光ビームを有し、一つ以上の光増幅器、一つ以上の光学的な検出器等を含む。
【0042】
フリースペースオプティクス115は、光信号を伝送し適切な入力/出力ポートにルーティングおよび操作するための一つ以上の光導波路を備える。フリースペースオプティクス115には、タップ、波長分割多重器(WDM)、スプリッタ/コンバイナ(分割器/合成器)、偏光ビームスプリッタ(PBS)、コリメータ、カプラ等の一つ以上の光学部品が含まれる。加えて、フリースペースオプティクス115には、偏波状態を変換し、たとえば偏光ビームスプリッタ(PBS)を使用して受信偏光光を光検出器に直接誘導するための部品が含まれる場合がある。また、フリースペースオプティクス115には、周波数の異なる光ビームを軸(例.速軸)上の異なる角度に偏向する回折素子がさらに含まれる場合がある。
【0043】
本実施形態のLIDARシステム100は、一つ以上のスキャンミラーを有する光スキャナ102を備えている。これらのスキャンミラーは、スキャンパターンに従って環境をスキャンする光信号を誘導するために、回折素子の速軸に直交または実質的に直交する軸(例.遅軸)に沿って回転可能になっている。
たとえば、スキャンミラーは一つまたは複数のガルバノメータによって回転可能である。光スキャナ102は、また環境内の任意の物体に反射した光を受信し、光学回路101のパッシブ光学(回路)部品に戻るリターン光ビームにする。リターン光ビームは、たとえば偏光ビームスプリッタによって光検出器に向けられる。
なお、光スキャナ102には、ミラーやガルバノメータに加えて、四分の一波長板、レンズ、反射防止コーティングされた光学窓などの部品が含まれる場合がある。
【0044】
LIDARシステム100には、光学回路101および光スキャナ102を制御およびサポートするために、LIDAR制御装置110が設けられる。LIDAR制御装置110には、LIDARシステム100に必要な処理デバイスが含まれる。処理デバイスはマイクロプロセッサ、中央処理装置などの汎用処理デバイスであり、具体的には、複合命令セット演算(CISC)マイクロプロセッサ、縮小命令セットコンピュータ(RISC)マイクロプロセッサ、超長命令語(VLIW)マイクロプロセッサ、または他の命令セットを実装するプロセッサ、あるいは、命令セットの組み合わせを実装するプロセッサである。また、上記処理デバイスは、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA:現場プログラム可能ゲートアレイ)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、ネットワークプロセッサ等の特殊用途処理デバイスの一つ以上であってもよい。
一実施形態では、LIDAR制御システム110には、ここで説明される処理装置を実行するためのデータおよび命令を格納するメモリが含まれる場合がある。このメモリは、例えば、読み取り専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、プログラマブル読み取り専用メモリ(PROM)、消去可能なプログラマブル読み取り専用メモリ(EPROM)、電気的に消去可能なプログラマブル読み取り専用メモリ(EEPROM)、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブ(HDD)などの磁気ディスクメモリ、コンパクトディスク読み取り専用(CD-ROM)やコンパクトディスク読み書きメモリ(CD-RW)などの光ディスクメモリ、または他の種類の非揮発性メモリである。
【0045】
LIDAR制御装置110には、DSPなどの信号処理ユニット112が設けられる。これにより、LIDAR制御装置110は、光学ドライバ103を制御するためのデジタル制御信号を出力する。デジタル制御信号は、信号変換ユニット106を介してアナログ信号に変換される。信号変換ユニット106にはたとえばデジタル/アナログ変換器が含まれる。
光学ドライバ103は、光学回路101のアクティブ光学部品に駆動信号を送り、レーザや増幅器などの光源を駆動する。他の一実施形態においては、複数の光源を駆動するために、複数の光学ドライバ103および信号変換ユニット106を設けてもよい。
【0046】
LIDAR制御装置110はまた、光スキャナ102に対してデジタル制御信号を出力するように構成される。モーション制御装置105は、LIDAR制御装置110から受信した制御信号に基づいて、光スキャナ102のガルバノメータを制御することができる。具体的には、デジタル/アナログ変換器を使用して、LIDAR制御装置110からの座標ルーティング情報を、光スキャナ102のガルバノメータによって処理可能な信号に変換することができる。
また、モーション制御装置105は、光スキャナ102のコンポーネントの位置または動作に関する情報をLIDAR制御装置110に送り返すこともできる。具体的には、アナログ/デジタル変換器を使用して、ガルバノメータの位置に関する情報をLIDAR制御装置110が処理可能な信号に変換することができる。
【0047】
LIDAR制御装置110は、入力されたデジタル信号を解析するように構成される。これに関連して、LIDARシステム100には、光学回路101で受信された一つまたは複数のビームを測定するための光受信器104が設けられる。具体的には、光受信器104としての基準ビーム受信器は、アクティブ光学部品からの基準ビームの振幅を測定し、アナログ/デジタル変換器により同基準ビーム受信器からの信号を、LIDAR制御装置110で処理可能な信号に変換する。また、光受信器104としてのターゲット受信器は、ビート周波数変調光信号の形でターゲットの距離と速度に関する情報をもつ光信号を計測する。この場合、光信号の反射ビームは、ローカル発振器からの第2の信号(ローカルコピー)と混合されてもよい。
光受信器104には、ターゲット受信器からの信号をLIDAR制御装置110によって処理可能な信号に変換する高速アナログ/デジタル変換器を設けることができる。本実施形態では、光受信器104からの信号は、LIDAR制御装置110に受信される前に、信号調整ユニット107による信号調整を施される。たとえば信号調整ユニット107では、光受信器104からの信号に対して、オペアンプによる受信信号の増幅が行われ、増幅された信号がLIDAR制御装置110に送られる。
【0048】
LIDARシステム100には、環境の画像をキャプチャするように構成された一つ以上の撮像装置108、同システムの地理的位置を提供するように構成された全地球測位システム(GPS)109、または他のセンサ入力を設けることもできる。
また、LIDARシステム100には画像処理装置114を設けることができる。この場合、同画像処理装置114は、撮像装置108および全地球測位システム(GPS)109から画像および地理的位置を受信し、画像および位置またはそれに関連する情報を、LIDAR制御装置110またはそれに接続された他の装置に送信するように構成される。
【0049】
LIDARシステム100は、非縮退光学光源を用いて二次元で距離および速度を同時に測定するように構成される。この機能により、周囲環境の距離、速度、方位および高さ(標高)について遠距離測定がリアルタイムで可能になる。
【0050】
本実施形態におけるスキャンプロセスは、光学ドライバ103およびLIDAR制御装置110から開始される。LIDAR制御装置110は、光学ドライバ103に一つまたは複数の光ビームをそれぞれ変調するように指示し、これらの変調信号は光学回路101のパッシブ光学回路を通ってフリースペースオプティクス115のコリメータに伝送される。同コリメータは、この光ビームを光スキャナ102に向けて誘導し、光スキャナ102はモーション制御装置105で事前にプログラムされたパターンで環境をスキャンする。
光学回路101には、光が光学回路101を出る際に偏光を変換する偏光波板(PWP)を設けてもよい。この場合、偏光波板は四分の一波板または半波板を採用することができる。偏光された光ビームの一部は、光学回路101に戻るように反射される場合もある。たとえば、LIDARシステム100で使用されるレンズ・コリメータシステムは、自然な反射特性または反射コーティングを有する場合があり、これにより光ビームの一部が光学回路101に反射される。
【0051】
環境から反射された光信号は、光学回路101を通して受信器(光受信器104)に送られる。このとき、反射光の偏光が変化しているため偏光光の一部とともに偏光ビームスプリッタに送られる。その結果、反射された光信号は、光源と同じ光ファイバまたは波導路には戻らず、それぞれ異なる光受信器に反射される。これらの信号は互いに干渉し、混合信号を生成する。ターゲットから戻ってくる各ビーム信号は、時間シフトされた波形を生成し、これら2つの波形間の時間的位相差によって光受信器(光検出器)で計測されるビート周波数が生成される。そして、この混合信号は光受信器104で処理される。
【0052】
光受信器104で受信したアナログ信号は、ADC(アナログ/デジタル変換器)によりデジタル信号に変換される。次いで、同デジタル信号は、LIDAR制御装置110に送信される。同装置の信号処理ユニット112は、同デジタル信号を受信しそれらを処理する。
本実施形態において、信号処理ユニット112は、モーション制御装置105およびガルバノメータ(図示されない)から位置データを受信し、画像処理装置114から画像データを受信することができる。これにより、信号処理ユニット112は、光スキャナ102が追加ポイントを走査する際に、環境内のポイントの範囲と速度に関する情報を有する3Dポイントクラウドを生成することができる。信号処理ユニット112はまた、3Dポイントクラウドを画像データと重ね合わせて、周囲の物体の速度および距離を決定する場合もある。このユニットによるシステムはさらに衛星ベースのナビゲーション位置データを処理して正確な全地球的位置情報を提供する場合もある。
【0053】
図2は、LIDARシステム100のようなLIDARシステムで使用可能なFMCWスキャン信号201の時間-周波数ダイアグラム200である。この例において、スキャン信号201の波形は、チャープ帯域幅Δfおよびチャープ周期Tを持つ鋸波形(鋸「チャープ」)であり、fFM(t)とラベル付けされている。鋸波の傾きは、k =(Δf/ T)となる。
【0054】
図2にはまたターゲットリターン信号202が示される。fFM(t-Δt)で示されるターゲットリターン信号202は、スキャン信号201の時間遅延バージョンであり、Δtは、スキャン信号201によるターゲットへの照射往復時間である。この往復時間は Δt=2R/v で表すことができる。ここで、R はターゲットの距離、v は光ビームの速度である光速cである。したがって、同ターゲットの距離R は、R=c(Δt/2) として計算できる。
リターン信号202がスキャン信号と光学的に混合されると、距離依存の差周波数(「ビート周波数」)Δf(t)が生成される。ビート周波数Δf(t)は、鋸波の傾きkによって時間遅延Δtに線形(直線的)に関連付けられる。つまり、Δf(t) =kΔt として表される。ターゲット距離RはΔt に比例するため、ターゲット距離Rは R =(c/2)(Δf(t)/k) として計算できる。すなわち、距離Rは、ビート周波数Δf(t)に線形(直線的)に関連付けられる。
ビート周波数Δf(t)は、LIDARシステム100の光受信器104でアナログ信号として生成される。このビート周波数は、LIDARシステム100の信号調整ユニット107内のアナログ/デジタル変換器(ADC)によってデジタル信号に変換される。
このようにしてデジタル化されたビート周波数信号は、LIDARシステム100内の信号処理ユニット(例えば、信号処理ユニット112)でデジタル処理される。
ただし、ターゲットがLIDARシステム100に対して速度を有する場合、ターゲットのリターン信号には一般に周波数オフセット(ドップラーシフト)が生じることに注意する必要がある。ドップラーシフトは別途検出されてリターン信号の周波数を補正するために使用されるため、図2では説明の簡略化のためドップラーシフトは表示されない。
また、ADCのサンプリング周波数は、エイリアシングを発生させずにシステムで処理可能な最高のビート周波数に設定される。一般的に処理可能な最高周波数はサンプリング周波数の半分(すなわち「ナイキスト制限」)である。例えば、制限のないADCのサンプリング周波数が1ギガヘルツである場合、エイリアシングなしで処理できる最高ビート周波数(ΔfRmax)は500メガヘルツである。この制限は、システムの最大ターゲット距離Rmax=(c/2)(ΔfRmax/k)で決まり、これは鋸波の傾きkを変更することによって調整することができる。
本実施形態では、データサンプルはADCから連続的に得られるが、下記に説明する後続のデジタル処理は、「時間セグメント」に分割され、LIDARシステム100内の周期性に関連付けられることがある。たとえば時間セグメントは、一定数のチャープ周期T、または前述の光スキャナの方位における回転数に対応する。
【0055】
図3に、選択的な時間領域および周波数領域の処理を用いて遠距離ターゲットの検出性能を向上させ、近距離ターゲットの距離分解能および角度分解能を向上させるための信号処理装置300のブロック図を示す。
信号処理装置300は、例えば、LIDARシステム100の信号処理ユニット112のサブシステムまたはコンポーネントとして構成されるもので、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、またはハードウェア、ファームウェア、およびソフトウェアのいずれかを組み合わせて実装することができる。
【0056】
本実施形態の信号処理装置300には、時間領域処理サブシステム310、第1タイプの1つ以上のサブバンドを処理するサブバンドプロセッサ320、第2タイプの1つ以上のサブバンドを処理するサブバンドプロセッサ330、および第3タイプの1つ以上のサブバンドを処理するサブバンドプロセッサ340が設けられる。
【0057】
時間領域処理サブシステム310は、周波数変調連続波(FMCW)LIDARシステム(ここではLIDARシステム100)における距離に依存する時間領域ベースバンド信号ΔfR(t)のデジタルサンプルの連続ストリームを受信する。そして、サブバンドタイプ別の基準に基づいて時間領域でベースバンド信号を周波数サブバンドに分割し、サブバンドタイプ別の基準に基づいて、時間領域および周波数領域における周波数サブバンドのサブバンド処理パラメータを選択するように構成される。
【0058】
時間領域処理サブシステム310には、距離に依存するベースバンド信号のサンプルを調整するための時間領域プリプロセッサ311が設けられる。信号調整には、例えば、バンド制限やハミングまたはハン窓関数などのバンド整形が含まれる。これにより、時間から周波数への変換など、後続の信号処理操作でのノイズと不要な信号変換アーティファクトが低減される。
信号調整された時間領域サンプルは、N個の周波数制限された時間領域サブバンド(Nは1より大きい整数)を生成するサブバンド生成器312に送られる。これらのサブバンドには、最大N個の異なる中心周波数とN個の異なる帯域幅が含まれ、各サブバンドは重複(オーバーラップ)または非重複(ノンオーバーラップ)になるように生成される。各サブバンドは、低周波のサブバンドがLIDARシステム100に近いターゲットに対応し、高周波のサブバンドがLIDARシステム100から遠いターゲットに対応するように、ベースバンド信号の0からΔfRmaxまでの全スペクトルをカバーすることができる。
【0059】
一般に近距離の低周波サブバンドには、検出が容易な高エネルギーの信号が含まれるが、遠距離の高周波サブバンドには、信号分散と経路損失により低エネルギーの信号が含まれ、検出がより困難になる。また、LIDARシステム100に近いターゲットは、時間的に近接しているため、距離の近接に対応して高い距離分解能および角度分解能が必要であり、LIDARシステム100はこれらのターゲットを正確に追跡して回避する必要がある。
【0060】
本実施形態において、上記サブバンドはタイプに応じて分類される。第1タイプのサブバンド(Type 1)は、最大近距離のターゲットに対応する予め定められた低周波数閾値未満の周波数を含むサブバンド、第2タイプのサブバンド(Type 2)は、最小遠距離のターゲットに対応する予め定められた高周波数閾値を超える周波数を含むサブバンド、第3タイプのサブバンド(Type 3)は、中間範囲のターゲット距離に対応する低周波数閾値と高周波数閾値の間の周波数を含むサブバンドである場合がある。
各サブバンドプロセッサ内のサブバンドは、固定または可変の帯域幅を有し、重複または非重複のいずれであってもよい。また、固定または可変の中心周波数を有するものであってもよい。
上記サブバンドを定義するために、周波数以外の指標、または周波数に加えて他の指標を採用してもよい。例えば、上記サブバンドは、ピークまたは平均信号エネルギー、ピークまたは平均信号対ノイズ比などにより定義することができる。また、ターゲットが方位角と仰角においてどこに位置しているかの情報、以前のスキャンに基づくターゲットの角速度および半径速度等により定義することもできる。
信号処理装置300の例では、3つのサブバンドプロセッサ320,330,340を使用することが例示されているが、本発明としてはこれらに制限されるものではない。
【0061】
図4は、時間領域のサブバンド生成器312に関する実施形態であって、上記のような時間領域サブバンドを生成することができる時間領域サブバンド生成器400を示すブロック図である。
サブバンド生成器400は、N個のダウンコンバータ(0からN-1)のバンク401を備えている。これにより、入力信号Δf(t)をN個の異なる中心周波数に変換し、N個のサブバンド0からN-1に対応させる。次いで、これらのダウンコンバータ信号は、バンク402のN個のフィルタおよびダウンサンプラによって帯域制限され、ダウンサンプリングされ、N個のサブバンド0からN-1として生成される。重複(オーバーラップ)するサブバンドは、ダウンコンバータの周波数とフィルタ帯域幅を調整することにより作成することができる。
一実施形態では、サブバンドの中心周波数は均等に分布するものであってもよく、N個のサブバンドの帯域幅はすべて同じであってもよい。他の実施形態では、サブバンドの中心周波数が均等に分布していない(例えば、周波数の増加とともに間隔が広がる)場合があり、サブバンドの帯域幅は均等に分布していない(サブバンドの中心周波数とともに増加する)場合がある。
【0062】
図5は、時間領域サブバンド生成器312に関する他の実施形態であって、均一または非均一な時間領域サブバンドを生成することができる時間領域サブバンド生成器500を示すブロック図である。
サブバンド生成器500には、1:Nダウンサンプラ501が設けられており、サンプル入力信号Δf(t)を受信し、フィルタバンク502に分配する。このとき、FILTER 0は、0、N、2N、...のサンプルを受け取り、FILTER 1は、1、N+1、2N+1、...のサンプルを受け取るように設定される。
フィルタバンク502のフィルタの中心周波数は、サブバンド生成器400で説明したように、均一または不均一に間隔を空けてもよいし、均一または非均一な帯域幅を有してもよい。フィルタバンク502の出力は、離散フーリエ変換エンジン503に供給されて高速フーリエ変換(FFT)を実行することができる。
【0063】
ベースバンド信号の周波数成分は、LIDARシステム100の最大距離(範囲)に相当する最大周波数Δfmaxまでのすべての周波数成分が含まれている可能性があるが、対応する距離にターゲットが存在しないために、すべての周波数成分が存在しないことがある。
図6A図6Cは、ベースバンド信号のエネルギーが3つのサブバンドに制限された場合の異なるサブバンドの生成方法の例を示している。
図6Aは、サブバンドが均一な帯域幅で非重複(ノンオーバーラップ)である場合の最も単純な場合を示すスペクトル601を示しており、信号エネルギーがサブバンドn-1、n、n+1(0<n<N)に制限されている。
図6Bは、均一な帯域幅で均一な重複(オーバーラップ)がある場合のスペクトル602を示しており、このような生成方法はサブバンドの端部での性能の低下を回避するために使用される場合がある。
図6Cは、サブバンドに均一でない帯域幅と、均一でない重複(オーバーラップ)がある第3のケースのスペクトル603を示しており、このような生成方法は、図6Bと比較して処理オーバーヘッドを低減することができる。
【0064】
図3に示すように、サブバンド生成器312は、タイプ1のサブバンドをタイプ1サブバンドプロセッサ320に提供し、タイプ2のサブバンドをタイプ2サブバンドプロセッサ330に提供し、タイプ3のサブバンドをタイプ3サブバンドプロセッサ340に提供するように構成される。
加えて、時間領域処理サブシステム310には、サブバンド生成器312によって生成されたサブバンドを検出し、サブバンドプロセッサ320,330,340において、周波数領域および時間領域のサブバンドタイプと追加のサブバンド分類基準に基づいてサブバンドの処理パラメータを選択するためのサブバンド識別器313が設けられる。
上記のサブバンド分類基準としては、周波数に加えて、ピークまたは平均信号エネルギーやピークまたは平均信号対ノイズ比などが含まれる場合がある。他の実施形態では、サブバンド分類基準には、ターゲット環境(シーン特性)の特性、つまり、ターゲットの密度、ドップラーシフトから導かれる相対半径ターゲット速度(EGO速度)、角速度、方位角および仰角に基づくスキャン視野(FOV)内の位置、および前回のスキャンに基づくターゲットの予測位置なども含まれる場合がある。
【0065】
上記のように、タイプ1のサブバンドはタイプ1サブバンドプロセッサ320に、タイプ2のサブバンドはタイプ2サブバンドプロセッサ330に、タイプ3のサブバンドはタイプ3サブバンドプロセッサ340にそれぞれ連携される。図3の例では、タイプ1サブバンドプロセッサ320には、k個の処理チェーン1からkが含まれ、タイプ2サブバンドプロセッサ330には、k+1からmまでのm-k個の処理チェーンが含まれ、タイプ3サブバンドプロセッサ340には、m+1からnまでのn-m個の処理チェーンが含まれる。
サブバンドプロセッサ320,330,340の各処理チェーンには、ブロックサンプラ321、離散フーリエ変換(DFT)プロセッサ322、ピーク検索プロセッサ323、および周波数領域(FD)プロセッサ324が含まれる。各処理チェーンのサブバンド処理パラメータは、対応するデータおよび制御ライン360を用いてサブバンド識別器313によってサブバンド分類基準に基づいて制御される。
後述するように、サブバンド処理パラメータには、各サブバンドの適合帯域幅、各ブロックサンプラの積分時間、各DFTの長さと周期、および周波数領域プロセッサのデジタルフィルタの長さ等が含まれる。以下では、サブバンドプロセッサ320、330、または340の一つの典型的な処理チェーンを説明する。
【0066】
一実施形態では、サブバンドプロセッサ(320,330,340)は、データライン350を介してサブバンド生成器312からのサブバンドサンプルのストリームを受信し、処理する。ストリーム内の各サブバンドサンプルは、時間領域ベースバンド信号のサンプルレートに対応する持続時間を有する。
ブロックサンプラ321は、サブバンドサンプルを時間領域サンプルブロックに積分する。ブロックサンプラの積分時間は、サブバンド識別器313によって制御されるサブバンド処理パラメータの1つである。例えば、遠距離のターゲットに対応する高周波数のサブバンドであるタイプ3サブバンドは、信号分散や経路損失により、一般に低い信号エネルギーと低い信号対ノイズ比(SNR)を有する。このため、高周波サブバンドの積分時間を長くすることで、ノイズから信号を引き出すことができる。
逆に、近距離のターゲットに対応する低周波数のタイプ1サブバンドの場合、一般に信号エネルギーとSNRが高くなるため積分時間を短縮することができる。
中距離のサブバンド信号であるタイプ3の場合、積分時間は、タイプ1サブバンドとタイプ2サブバンドの積分時間の中間に位置することになる。
【0067】
ブロックサンプラ321の積分時間は角度分解能とも関連する。これは、例えばLIDARシステム100の光学スキャナー102など、LIDARシステムの光学スキャナーが方位角において高い角速度(秒あたりの度数で測定される)を有するため、角度分解能が時間に比例するためである。したがって、信号エネルギーが高い近距離のターゲットの場合、ブロックサンプラの積分時間を短縮することで角度分解能が向上する。
【0068】
ブロックサンプラ321によって生成された時間領域サンプルブロックは、DFTプロセッサ322によって受信され、サブバンド識別器313によって提供される処理パラメータに基づいて周波数領域のサブバンドに変換される。DFTプロセッサ322には、2つのサブバンド処理パラメータ、すなわち、DFT長さ(DFT内の点の数)とDFT周期(DFTの持続時間)を関連付けることができる。
与えられた積分時間と与えられた帯域幅を有する時間領域サンプルブロックに対して、より長いDFTはより小さい周波数ビンとより高い周波数分解能を生成し、FMCW -LIDARシステムにおいてはより高い距離分解能に対応する。一方、一定のDFT長さの場合のDFT周期は、光学スキャナのスキャンミラーの角度回転に対応するため、同システムの角度分解能に影響を与える。
【0069】
図7Aは、近距離のターゲットに関連する低い周波数の信号に適した距離および角度分解能を向上させるための時間-周波数ダイアグラム701を示す。この例では、短い持続時間でより長い長さのDFT(図7Aの例では16点)を使用する。
図7Bは、遠距離のターゲットに関連するより高い周波数の信号に適した距離および角度分解能を向上させるための時間-周波数ダイアグラム702を示す。この例では、長い持続時間で短いDFT(図7Bの例では4点)を使用する。
【0070】
サブバンドプロセッサ320,330,340の各処理チェーンには、それぞれ対応するDFTプロセッサ322の出力における各周波数ビンを検索するピーク検索プロセッサ323が設けられる。各ピーク検索プロセッサ323は、ターゲット環境の3D LIDARクラウドモデルにおけるポイントを確立するために、LIDARシステムの視野(FOV)内のターゲットに相関する周波数ビン内のエネルギーピーク、信号対ノイズ比(SNR)ピークおよび/または平均SNRを検索する。
【0071】
タイプ1サブバンドプロセッサ320等の各処理チェーンには、3D LIDARポイントクラウド内のターゲット距離およびターゲット角度を決定するように構成された周波数領域のポストプロセッサ(FDプロセッサ)324を設けてもよい。ポストプロセッシング(後処理)は特に限定されないが、DFTプロセッサ322によって生成された周波数領域サブバンド信号の再サンプリング、時間平均化、およびデジタルフィルタリングなどが含まれる。上記のデジタルフィルタの長さは、サブバンド識別器によって追加のサブバンド処理パラメータとして使用されることがある。
【0072】
図8は、例えば信号処理装置300を含むFMCW-LIDARシステムで実装される例示的な方法800を示すフローチャートである。
方法800は、ステップ(操作)802で開始され、周波数変調連続波(FMCW)LIDARシステムにおける距離依存の時間領域ベースバンド信号のサンプルを、時間領域処理コンポーネント(例えば時間領域処理サブシステム310)で受信する。
次いで、ステップ(操作)804で、上記ベースバンド信号のサンプルを時間領域のサブバンドに分割する(例えば、サブバンド生成器312を使用)。
次いで、ステップ(操作)806で、分割後のサブバンドをサブバンド分類基準に基づいて複数のサブバンドタイプに分類する(例えば、サブバンド識別器313を使用)。
次いで、ステップ(操作)808で、複数のサブバンドタイプに基づいて、時間領域および周波数領域のサブバンドの処理パラメータを選択する(例えば、サブバンド識別器313を使用)。
その後、ステップ(操作)810で、選択されたサブバンド処理パラメータで、時間領域および周波数領域のサブバンドを処理し(例えば、ブロックサンプラー321、DFTプロセッサ322、ピーク検索プロセッサ323、および周波数領域プロセッサ324を使用)、方法800を完了する。
【0073】
図9は、他の実施形態による信号処理装置900を示すブロック図である。この実施形態では、周波数領域における選択的信号処理を使用して、サブバンド分類基準に従ってサブバンドを分類し、これに対応するサブバンド処理パラメータを選択してサブバンドを処理する。
信号処理装置900は、例えばLIDARシステム100の信号処理ユニット112のサブシステムまたはコンポーネントとして構成されるもので、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェアのいずれか、またはハードウェア、ファームウェアおよびソフトウェアのいずれかの組み合わせで実装することができる。
【0074】
信号処理装置900には、時間領域処理サブシステム910が設けられる。時間領域処理サブシステム910は、周波数変調連続波(FMCW)光検出および測距(LIDAR)システムにおける距離依存の時間領域ベースバンド信号のサンプルを受信しかつ信号調整し、信号調整されたサンプルを統合して時間領域のサンプルブロックを生成する。
信号処理装置900にはまた、時間領域処理サブシステム910に連携するDFTプロセッサ920が設けられる。DFTプロセッサ920は、同サブシステムによる時間領域のサンプルブロックを時間領域ベースバンド信号の周波数領域サブバンドに変換する。
加えて、信号処理装置900には、DFTプロセッサに連携する周波数領域処理サブシステム930が設けられる。同サブシステムは、上記周波数領域でサブバンドを生成し、サブバンドをタイプ別に分類し、サブバンドタイプに基づいて選択されたサブバンド処理パラメータを使用して各サブバンドを処理する。
【0075】
時間領域処理サブシステム910には、距離に依存するベースバンド信号のサンプルを信号調整するための時間領域プリプロセッサ911が設けられる。時間領域プリプロセッサ911は、前述した信号処理装置300の時間領域プリプロセッサ311と同様なものを用いることができる。
【0076】
事前に信号調整された時間領域サンプルは、サンプルブロック生成器912に送られ、前述の信号処理装置300におけるブロックサンプラ321に関して説明したように、同サンプルの統合により時間領域のサンプルブロックとして生成される。ここで、サンプルブロックの統合時間(積分時間)は、前述の信号処理装置300に関して説明したように、サブバンド分類基準に基づいて選択された処理パラメータである。
【0077】
サンプルブロック生成器912によるサンプルブロックは、DFTプロセッサ920に送られる。DFTプロセッサ920は、時間領域サンプルブロックを周波数領域のサブバンドに変換する。このDFTの長さと周期もサブバンド分類基準に基づいて選択された処理パラメータとすることができる。
DFTプロセッサ920は、一例として時間領域のブロックサンプルをベースバンド信号のフルスペクトルに変換するように構成される。特に限定されるものではないが、例えば、ベースバンドスペクトルが0ヘルツ(Hz)から500メガヘルツ(MHz)までカバーする場合、エイリアシングを回避するために時間領域の必要なナイキストサンプリングレートは1ギガヘルツ(GHz)になる。DFTプロセッサが32点のDFTを実行する場合、DFTプロセッサの出力は500 MHzにわたる16の周波数ビンで構成され、各周波数ビンは個別に31.25 MHzの範囲になる。
【0078】
DFTプロセッサ920の出力は、周波数領域処理サブシステム930に送られる。周波数領域処理サブシステム930には、周波数領域でサブバンドを生成するサブバンド生成器931が設けられる。サブバンド生成器931は、前述のシステム300のサブバンド生成器312と同様に、周波数領域でN個のサブバンドを生成するように構成することができる。サブバンド生成器931で生成されるサブバンドの中心周波数と帯域幅も、サブバンド分類基準に基づいて選択された処理パラメータとすることができる。サブバンド生成器931は、DFTプロセッサ920の出力をアップサンプリングまたはダウンサンプリングしてもよい。
【0079】
周波数領域処理サブシステム930にはまた、サブバンド生成器931、サンプルブロック生成器912、およびDFTプロセッサ920に連携するサブバンド識別器932が設けられる。サブバンド識別器932はサブバンド分類基準に基づいてサブバンドをタイプ別に分類し、サブバンドタイプに基づいて周波数領域の各サブバンドに対するサブバンド処理パラメータを選択する。
【0080】
図10は、一実施形態によるサブバンド識別器932を示すブロック図であり、サブバンドを選択的に処理するためにサブバンド識別器932によって使用されるアルゴリズム1000のフローチャートである。
サブバンド識別器932は、各サブバンドについて、ステップ(操作)1001でサブバンド内のピークエネルギーが所定のエネルギー閾値よりも大きいかどうか、ステップ(操作)1002でサブバンド内の平均SNRが所定のSNR閾値よりも大きいかどうか、またはステップ(操作)1003でサブバンド内のピークSNRが所定のピークSNR閾値より大きいかどうか判断する。これらの条件のいずれかが満たされている場合、ステップ(OR操作)1004で該当サブバンドをさらに検討および処理するために選択する。
【0081】
同時に、ステップ(操作)1006において、サブバンド識別器932はシーン情報(シーン特性)を処理し、高い角度分解能を必要とする重要な方位角または仰角、および高い距離分解能を必要とする任意の距離を決定する。シーン情報には、ターゲット密度の一般的な特徴、ターゲットの速度、および前のLIDARスキャンフレームからのターゲットの検出または予測などが含まれる。
【0082】
ステップ(操作)1007では、高い角度分解能を必要とする重要な方位角または仰角、および高い距離分解能を必要とする任意の距離(サブバンド周波数)を現在のスキャン領域に基づいてリアルタイムの方位角と仰角と比較する。この結果は、ステップ(操作)1004のOR演算の結果と論理AND演算(操作1005)で比較され、サブバンドを分類する。
その後、ステップ(操作)1008で重要な(すなわち高分解能が必要な)サブバンドの数をシステムの処理能力に基づいて決定される最大数に制限する。これらのサブバンドには、衝突回避などの重要度に基づいて優先順位が付けられる。ステップ(操作)1008の出力は、周波数領域処理サブシステム930のサブバンド処理チェーンで使用されるサブバンド処理パラメータである。
【0083】
前述の図9に示すように、周波数領域処理サブシステム930は、サブバンド生成器931およびサブバンド識別器932と連携するN個の周波数領域処理チェーンを備える。これらの周波数領域処理チェーンは、各サブバンドを調整し、各サブバンドでのエネルギーピークまたは信号対ノイズ比(SNR)ピークを検出し、検出可能なエネルギーピークまたはSNRピークがある場合に各サブバンドでターゲット距離とターゲット角度を決定する。
【0084】
各周波数領域処理チェーンには、サブバンドタイプに基づいてサブバンドを選択的にフィルタリングする周波数領域(FD)プリプロセッサ933-n(1≦n≦N)が設けられる。また、FDプリプロセッサ933-nに連携して、サブバンドタイプに基づいてエネルギーピークを選択的に検索するピーク検索プロセッサ934-nが設けられ、さらにサブバンドタイプに基づいて、3次元(3D)LIDARポイントクラウド内のノイズを除去するためにポイントを選択的にフィルタリングする周波数ドメイン(FD)ポストプロセッサ935-nが設けられる。
これらの操作の処理パラメータ(例えば、プリおよびポスト処理用のデジタルフィルタの長さ)は、必要に応じてサブバンド識別器932によってサブバンド分類基準に基づいて選択される。
【0085】
一実施形態では、所定の上限周波数閾値未満の周波数を含む周波数サブバンドに対して、FDプリプロセッサ933-nは同周波数サブバンドの帯域幅以下の帯域幅を有するフィルタを含み、ピーク検出プロセッサ934-nは、所定の下限閾値よりも大きい検出閾値を有するピーク検出エンジンを含み、周波数領域(FD)ポストプロセッサ935-nは、所定の上限閾値よりも大きいノイズ除去閾値を有するポイントクラウドフィルタを含む。
【0086】
図11は、信号処理装置900を備えるFMCW-LIDARシステムで実行される、サブバンドを選択的に処理するための方法1100を示すフローチャートである。
方法1100は、ステップ(操作)1102で開始され、距離に依存する時間領域ベースバンド信号のサンプルを時間領域処理サブシステム(例えばサブシステム910を使用)で受信する。
ステップ(操作)1104では、受信したサンプルを統合して時間領域のサンプルブロックを生成する(例えばサンプルブロック生成器生成器912でサンプルを積分)。
次いで、ステップ(操作)1106では、離散フーリエ変換(DFT)プロセッサ(例えばDFTプロセッサ920を使用)でサンプルブロックを時間領域から周波数領域に変換する。
ステップ(操作)1108では、周波数領域でサブバンドを生成する(例えばサブバンド生成器931を使用)。
次いで、ステップ(操作)1110で上記サブバンドをサブバンドタイプに基づいて複数のサブバンドタイプに分類する(例えばサブバンド識別器932を使用)。
次いで、ステップ(操作)1112で上記サブバンドタイプに基づいて(例えばサブバンド識別器932を使用)、サブバンド処理パラメータ(サブバンドの帯域幅や周波数、積分時間、DFTの長さと周期、デジタルフィルタの長さなど)を選択する。
その後、ステップ(操作)1114で、選択されたサブバンド処理パラメータ(例えばサブバンド識別器932から)を使用して、各周波数サブバンドを(例えば処理チェーン933-n、934-n、および935-nを使用)対応するサブバンドに対して処理し、方法1000を完了する。
【0087】
図12は、前述の実施形態に基づいて周波数サブバンドを選択的に処理するための処理システム1200(LIDARシステム)を示すブロック図である。
処理システム1200は、LIDARシステム100の信号調整ユニット107および信号処理ユニット112のコンポーネントと同一または類似のコンポーネントを含む。処理装置1200はまた、LIDARシステムで使用するために設計された一般目的処理装置または特殊目的処理装置のいずれかであるプロセッサ1201を含む。
プロセッサ1201は、メモリ1202に連携するように構成される。このメモリ1202は、プロセッサ1201の実行に伴って、ここで説明される方法1100を実行するための命令を含む任意タイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(例えば、RAM、ROM、PROM、EPROM、EEPROM、フラッシュメモリ、磁気ディスクメモリ、または光ディスクメモリ)である。
特に、メモリ1202には、距離に依存する時間領域のベースバンド信号のサンプルを受信するための命令1204(例えば、時間領域処理サブシステム(モジュール)310において)、サブバンド分類基準に基づいてベースバンド信号のサンプルを周波数サブバンドに分割するための命令1206(例えば、時間領域処理サブシステム(モジュール)310において)、およびサブバンド分類基準に基づいて時間領域および周波数領域の周波数サブバンドに対するサブバンド処理パラメータを選択する命令1208(例えば、サブバンドプロセッサ320、330および340において)が含まれる。
【0088】
前述した説明では、本発明の実施形態を理解しやすくするために、特定のシステム、コンポーネント、方法などの具体例を複数示しているが、当業者であればこれらの具体例の説明がなくても本発明を実施しうる。また、公知のコンポーネントや方法はその詳細が省略されていたり、単純なブロック図の形式で示されることがあるが、これは本発明の理解を容易にするためである。したがって、開示された内容は単に例示であり、一事例は他の例示と異なる場合があっても、本発明の範囲内に含まれる場合がある。
【0089】
本明細書において「一実施形態」または「実施形態」という表現が使用される場合、それらの実施形態に関連して説明された特定の特徴、構造、または特性が少なくとも一つの実施形態に含まれていることを意味する。したがって、本明細書のいくつかの箇所で「一実施形態において」または「実施形態において」という表現が現れている場合、必ずしも同じ実施形態を示すものではない。
【0090】
ここで説明されている方法の操作は特定の順序で示されているが、各方法の操作の順序は変更されることがあり、特定の操作を逆順で行ってもよいし、少なくとも一部の操作を他の操作と同時に行ってもよい。異なる操作の指示または補助的な操作は、断続的または交互に行うことができる。
【0091】
上記の本発明に関する実施形態の説明は、その抽象的な概念説明を含め本発明をこれらに限定するものではない。本明細書において説明された実施形態や具体例は、本発明の説明の目的で記載されるものであり、本件技術分野における当業者が認識する範囲で種々の同等な変更を行うことができる。
ここで使用される「例」または「例示的」の語は、事例または例示として役立つように使用されている。「例」または「例示的」と説明された態様や造形がどのようなものであっても他の態様や造形に対して優れたものとして解釈されるべきではない。「例」または「例示的」という用語の使用は、概念を具体的な形で示すことを意図している。
本明細書において使用される「または」の用語は、排他的な「または」ではなく、包括的な「または」として解釈されることを意図している。つまり、特に指定されていない限り、あるいは文脈から明らかでない限り、「XはAまたはBを含む」という表現は、自然な包括的な並び替えのいずれかを意味する。つまり、XがAを含む場合、XがBを含む場合、あるいはXがAとBの両方を含む場合、すべての前述の場合において、「X はAまたはBを含む」という条件を満たすものとする。
さらに、本明細書および添付された特許請求の範囲の請求項で使用される冠詞「a」と「an」は、特に指定されていない限り、文脈から単数形であることが明らかでない場合には「1つまたは複数」を意味するものと解釈される。
さらに、明細書において「第1」、「第2」、「第3」、「第4」のような用語が使用される場合、これらの用語は異なる要素を区別するためのラベルとして使用されるもので、数字の指定に従って必ずしも順序を示すものではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A-6C】
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12