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特許7567038外科用ロボットシステムにおける外部負荷をかけられた状態のバックラッシュ、摩擦、及びコンプライアンスを有する外科用器具の制御
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  • 特許-外科用ロボットシステムにおける外部負荷をかけられた状態のバックラッシュ、摩擦、及びコンプライアンスを有する外科用器具の制御 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】外科用ロボットシステムにおける外部負荷をかけられた状態のバックラッシュ、摩擦、及びコンプライアンスを有する外科用器具の制御
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/30 20160101AFI20241007BHJP
【FI】
A61B34/30
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023513377
(86)(22)【出願日】2020-08-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-20
(86)【国際出願番号】 US2020048224
(87)【国際公開番号】W WO2022046058
(87)【国際公開日】2022-03-03
【審査請求日】2023-06-26
(31)【優先権主張番号】17/004,840
(32)【優先日】2020-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516133124
【氏名又は名称】バーブ サージカル インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Verb Surgical Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】セン・エイチ・トゥットクン
(72)【発明者】
【氏名】ハリリ・アリレザ
【審査官】槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-521740(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0276933(US,A1)
【文献】特表2013-528066(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0195664(US,A1)
【文献】国際公開第2010/109932(WO,A1)
【文献】特表2018-532531(JP,A)
【文献】特表2019-528139(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0228563(US,A1)
【文献】特表2019-530517(JP,A)
【文献】特表2017-515615(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 34/30-34/37
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科用器具の制御のための外科用ロボットシステムであって、
トランスミッションを通して、第1のアクチュエータ及び第2のアクチュエータによって作動される、外科用エンドエフェクタと、
前記第1のアクチュエータ及び前記第2のアクチュエータのホーミングの一部として、静的プリテンションを作成するために前記第1のアクチュエータ及び前記第2のアクチュエータを反対に駆動することと、前記第1のアクチュエータ及び前記第2のアクチュエータを協調して駆動して、前記静的プリテンションを維持しながら前記外科用エンドエフェクタを移動させることと、を行うように構成されているコントローラと、を備え
前記外科用エンドエフェクタが、ロボットアームに接続された外科用ツールを備え、前記静的プリテンションが、前記トランスミッションのバックラッシュを固定し、前記コントローラが、前記バックラッシュを維持しながら、前記第1のアクチュエータ及び前記第2のアクチュエータを駆動して、前記外科用ツールを動作させるように構成されている、外科用ロボットシステム。
【請求項2】
前記コントローラが、トルク制御モードで前記静的プリテンションを適用するように駆動するように構成されており、位置制御モードで前記外科用エンドエフェクタを移動させるために駆動するように構成されている、請求項1に記載の外科用ロボットシステム。
【請求項3】
前記コントローラが、前記第1のアクチュエータを前記第2のアクチュエータとは反対に動作させることによって、前記静的プリテンションを適用するように駆動することと、前記第1のアクチュエータ及び前記第2のアクチュエータを互いに協働して動作させることによって、前記外科用エンドエフェクタを移動させるために駆動することと、を行うように構成されている、請求項1に記載の外科用ロボットシステム。
【請求項4】
前記コントローラが、前記外科用エンドエフェクタに外部負荷がかかっている間に、前記外科用エンドエフェクタを移動させるように構成されており、前記外科用エンドエフェクタが、前記第1のアクチュエータ及び前記第2のアクチュエータの両方に送信される同じ位置コマンドによって移動される、請求項1に記載の外科用ロボットシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、外科用ロボットシステムの外科用ロボットアーム内にアクチュエータを有する外科用ロボットツールの制御に関する。他の実施形態についても説明される。
【背景技術】
【0002】
外科用ロボットシステムは、手術中の外科医に、外科的処置の1つ又は2つ以上の作用をロボットで実施する能力を与える。外科用ロボットシステムでは、ステープラ、内視鏡、クランプ、切断ツール、スプレッダ、針、エネルギーエミッタなどの外科用ツール又は器具のエンドエフェクタが、外科用ロボットアームのロボット関節に機械的に結合され、その結果、ロボット関節の動き又は作動が、エンドエフェクタの回転、枢動、又は直線の動きを直接引き起こすようにする(例えば、ステープラによるステープリング、内視鏡カメラの回転、把持ジョーの枢動、又は針の並進)。ツールがロボットアームのツール駆動装置に取り付けられると(例えば、接触して)、操作者コマンドによって動きが生じ、取り付けられたツールの機能を起動させ得る。
【0003】
ツール駆動装置とツールのエンドエフェクタと間のトランスミッションは、バックラッシュ及び内部摩擦に加えて、大きなコンプライアンスを有し得る。運動に抵抗する負荷及び運動を補助する負荷など、異なる外部負荷条件の下で、エンドエフェクタが運動コマンドに正確に従うことが重要である。エンドエフェクタを制御するために2つのアクチュエータが接続されている場合、アクチュエータのうちの1つによって適用された力又はトルクは、内部摩擦及びコンプライアンスのために、第2のアクチュエータには伝わらない場合がある。特にトランスミッションが異なる外部負荷を受ける場合、バックラッシュ、摩擦、及びコンプライアンスを正確に制御することは困難である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
前置きとして、以下に記載される好ましい実施形態は、外科用ロボットシステムにおける外科用器具の制御のための方法、システム、命令、及びコンピュータ可読媒体を含む。複数のアクチュエータが、トルク制御において互いに反対に作動することによって、静的プリテンションを確立する。静的プリテンションは、コンプライアンス及び弾性を低減又は除去し、バックラッシュ幅を低減する。ツールを駆動するために、次いで、アクチュエータは、正確な制御を提供しながら動きが静的プリテンションを維持するように、位置モード制御で互いに協働して移動される。
【0005】
第1の態様では、外科用ロボットシステム内の外科用器具を制御するための方法が提供される。第1のモータと係合する第1のリンケージ及び第2のモータと係合する第2のリンケージが作動される。第1のリンケージ及び第2のリンケージは、外科用器具のエンドエフェクタに機械的に結合する。第1のモータ及び第2のモータは、互いに反対のトルク制御の下で動作する。制御は、作動により閾値トルクに達するときに、第1のモータ及び第2のモータのトルク制御から位置制御に移行される。エンドエフェクタは、第1のモータ及び第2のモータの位置制御に駆動される。第1のモータ及び第2のモータは、互いに協働して動作する。
【0006】
第2の態様では、外科用ロボットシステムが提供される。外科用エンドエフェクタは、トランスミッションを通して第1のアクチュエータ及び第2のアクチュエータによって作動される。コントローラは、第1のアクチュエータ及び第2のアクチュエータのホーミング中に静的プリテンションを適用するために第1のアクチュエータ及び第2のアクチュエータを反対に駆動し、第1のアクチュエータ及び第2のアクチュエータを協調して駆動して、静的プリテンションを維持しながら外科用エンドエフェクタを移動させるように構成される。
【0007】
第3の態様では、外科用ロボットシステム内の外科用ツールを制御するための方法が提供される。アクチュエータと外科用ツールとの間の係合カップリングのコンプライアンスによる変動バックラッシュは、外科用ツールの作動に対して互いに反対に駆動されるアクチュエータで克服される。外科用ツールは、アクチュエータを駆動することにより、係合した接続カップリングを通して作動される。
【0008】
本発明は、以下の請求項によって定義され、この項におけるいずれも、これらの請求項の制限としてとられるべきではない。本発明の更なる態様及び利点は、好ましい実施形態と併せて以下に考察され、その後独立して、又は組み合わせて特許請求され得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本発明の実施形態は、添付図面の図において、限定としてではなく例として例解され、図中、同様の参照記号は、類似の要素を示す。本開示における本発明の「1つの(an)」又は「1つの(one)」実施形態への言及は、必ずしも同じ実施形態に対するものではなく、それらは、少なくとも1つを意味することに留意されたい。また、簡潔さ及び図の総数を低減する目的で、所与の図が、本発明の1つより多くの実施形態の特徴を例解するために使用され得、図中のすべての要素が、所与の実施形態に必要とされるわけではない場合がある。
図1】手術場の例示的な外科用ロボットシステムの描写図である。
図2】外科用ロボットアームのツール駆動装置に対する外科用ツールの係合のためのシステムの例解である。
図3】外科用ツールを制御するための外科用ロボットシステムを示すブロック図である。
図4】複数のアクチュエータを使用してエンドエフェクタの正確な制御を提供するための集中モデルを例解している。
図5】静的プリテンションが、位置制御のために異なる方法で適用された図4の集中モデルを示す。
図6】静的プリテンションが、位置制御のために異なる方法で適用された図4の集中モデルを示す。
図7】外科用ロボットシステムにおける外科用ツールの制御方法の一実施形態のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
制御アルゴリズムは、外部負荷をかけられている状態で関節のバックラッシュ、摩擦、及びコンプライアンスを有する外科用器具を制御する。冗長アクチュエータは、バックラッシュ及びコンプライアンスを機械的に補正する。制御アルゴリズムは、ホーミングステージ中に両方のアクチュエータから反対方向のバイアスを適用するなどして、冗長アクチュエータを使用して静的プリテンションを作成する。このバイアスは、静的プリテンションを維持しながら、協働してアクチュエータを動作させている間など、動作全体を通して保たれる。
【0011】
図1図3は、外科用ロボットシステムの態様を示す。図1は、外科用ロボットシステムの一例を示す。図2は、エンドエフェクタを作動させるためのモータを有するツール駆動装置への外科用ツールの例示的な接続を示す。図3は、エンドエフェクタを作動させるための例示的な制御配置を示す。異なるアクチュエータ及び/又はエンドエフェクタ配置を有する他のロボットシステムを使用し得る。図4図6は、バックラッシュ及びコンプライアンスを低減するための静的プリテンションの作成を表す集中モデルの例を示している。図7は、静的プリテンションを使用する外科用ツールの制御方法の一実施形態を示す。
【0012】
図1は、手術場内の例示的な外科用ロボットシステム1の描写図である。外科用ロボットシステム1は、ユーザコンソール2、制御タワー3、及び外科用プラットフォーム5、例えば、テーブル、ベッドなど、にある1つ又は2つ以上の外科用ロボットアーム4、を含む。外科用ロボットシステム1は、患者6に対して手術を実施するために使用される任意の数のデバイス、ツール、又は付属品を組み込むことができる。例えば、外科用ロボットシステム1は、手術を実施するために使用される1つ又は2つ以上の外科用ツール7を含み得る。外科用ツール7は、ステープリング、切断、把持、突き刺し、又はエネルギー放出など、外科手術を実行するため、その遠位端(外科用ツール7が取り付けられるロボット外科用アーム4の遠位端でもある)にエンドエフェクタを有し得る。
【0013】
各外科用ツール7は、手術中に手動で、ロボットで、又はその両方で操作され得る。例えば、外科用ツール7は、患者6の内部解剖学的構造に入る、見る、又は操作するために使用されるツールであり得る。一実施形態では、外科用ツール7は、患者の組織をステープリングすることができるステープラである。外科用ツール7は、ベッドのそばの操作者8の手によって直接手動で制御され得るか、又は外科用ツール7が取り付けられている外科用ロボットアーム4の動きを作動させるための電子コマンドを送ることを介して、ロボット制御され得る。外科用ロボットアーム4は、テーブル据え付けシステムとして示されているが、他の構成では、外科用ロボットアーム4は、カート、天井若しくは側壁、又は別の好適な構造的支持体に据え付けられ得る。
【0014】
一般に、外科医などの遠隔操作者9は、ユーザコンソール2を使用して、外科用ロボットアーム4及び取り付けられた外科用ツール7を遠隔的に操作する、例えば、遠隔操作し得る。ユーザコンソール2は、図1に示すように、外科用ロボットシステム1の残りの部分と同じ手術室に位置し得る。しかしながら、他の環境では、ユーザコンソール2は、隣接する部屋若しくは近くの部屋に位置し得るか、又は遠隔地、例えば、異なる建物、都市、若しくは国に位置し得る。ユーザコンソール2は、座席10、足踏み式制御装置13、1つ又は2つ以上のハンドヘルド型ユーザインターフェースデバイス、UID14、及び、例えば、患者6内の手術部位の視野を表示するように構成された少なくとも1つのユーザディスプレイ15を備え得る。例示的なユーザコンソール2では、遠隔操作者9は座席10に座ってユーザディスプレイ15を見ながら、外科用ロボットアーム4及び外科用ツール7(外科用アーム4の遠位端に据え付けられる)を遠隔制御するために、足踏み式制御装置13及びハンドヘルド型UID14を操作している。
【0015】
いくつかの変形形態では、ベッドのそばの操作者9はまた、「ベッド上」モードで外科用ロボットシステム1を動作させ得、ベッドのそばにいる操作者8(ユーザ)は、患者6のそばにいて、i)例えば、片手で保持されたハンドヘルド型UID14を用いて外科用ロボットアーム4に取り付けられたロボット駆動ツール(エンドエフェクタを有する)、及びii)手動腹腔鏡ツールを同時に操作している。例えば、ベッドのそばの操作者の左手は、外科用ロボット構成要素を制御するためにハンドヘルド型UIDを操作している場合があり、一方で、ベッドのそばの操作者の右手は、手動腹腔鏡ツールを操作している場合がある。したがって、これらの変形形態では、ベッドのそばの操作者8は、患者6に対してロボット支援型低侵襲手術及び手動腹腔鏡手術の両方を実施し得る。
【0016】
例示的な処置(手術)の間、患者6は、麻酔を達成するために、滅菌されて準備され覆われている。手術部位への初期アクセスは、(手術部位へのアクセスを容易にするために)外科用ロボットシステム1のアームが収容構成又は撤収構成にある間に、手動で実施され得る。アクセスが完了すると、その外科用ロボットアーム4を含む外科用ロボットシステム1の初期位置決め又は準備が実施され得る。次に、手術は、ユーザコンソール2の遠隔操作者9が足踏み式制御装置13及びUID14を利用して、手術を実施するための様々なエンドエフェクタ及びおそらく撮像システムを操作することで進行する。手動支援はまた、組織の引き込み、手動再位置決めの実施、及び外科用ロボットアーム4のうちの1つ又は2つ以上に対するツール交換などのタスクを実施し得る、滅菌ガウンを着たベッドのそばの要員、例えば、ベッドのそばの操作者8によって、処置ベッド又はテーブルで提供され得る。また、ユーザコンソール2の遠隔操作者9を支援するために、非滅菌要員が存在し得る。処置又は手術が完了すると、外科用ロボットシステム1及びユーザコンソール2は、洗浄又は滅菌などの術後処置及びユーザコンソール2を介した医療記録の入力又は印刷を容易にする状態に構成又は設定され得る。
【0017】
一実施形態では、遠隔操作者9は、外科用ロボットシステム1内のロボットアームアクチュエータ17を移動させるための入力コマンドを提供するために、UID14を保持して移動させる。UID14は、例えば、コンソールコンピュータシステム16を介して、外科用ロボットシステム1の残りの部分に通信可能に結合され得る。UID14は、UID14の動き、例えば、UIDのハンドヘルド型ハウジングの位置及び配向、に対応する空間状態信号を生成することができ、空間状態信号は、ロボットアームアクチュエータ17の運動を制御するための入力信号であり得る。外科用ロボットシステム1は、空間状態信号から導出された制御信号を使用して、アクチュエータ17の比例運動を制御し得る。一実施形態では、コンソールコンピュータシステム16のコンソールプロセッサは、空間状態信号を受信し、対応する制御信号を生成する。外科用ロボットアーム4のセグメントを移動させるためにアクチュエータ17がどのようにエネルギーを与えられているかを制御するこれらの制御信号に基づいて、アームに取り付けられた対応する外科用ツールの動きは、UID14の動きを模倣し得る。同様に、遠隔操作者9とUID14との間の対話は、例えば、外科用ツール7の把持器のジョーを閉鎖して、患者6の組織を把持させる把持制御信号を生成することができる。
【0018】
外科用ロボットシステム1は、いくつかのUID14を含み得、それぞれの制御信号は、それぞれの外科用ロボットアーム4のアクチュエータ及び外科用ツール(エンドエフェクタ)を制御するUID14ごとに生成される。例えば、遠隔操作者9は、第1のUID14を移動させて、左側のロボットアーム内にあるアクチュエータ17の運動を制御し得、アクチュエータは、その外科用ロボットアーム4内のリンケージ、歯車などを移動させることによって応答する。同様に、遠隔操作者9による第2のUID14の動きは、別のアクチュエータ17の運動を制御し、これは、外科用ロボットシステム1の他のリンケージ、歯車などを移動させる。外科用ロボットシステム1は、患者の右側のベッド又はテーブルに固定された右外科用ロボットアーム4及び患者の左側にある左外科用ロボットアーム4を含み得る。アクチュエータ17は、外科用ロボットアーム4の関節の回転を駆動して、例えば、患者に対して、そのアームに取り付けられた外科用ツール7の内視鏡又は把持器の配向を変更するように制御される1つ又は2つ以上のモータを含み得る。同じ外科用ロボットアーム4内のいくつかのアクチュエータ17の運動は、特定のUID14から生成された空間状態信号によって制御することができる。UID14はまた、それぞれの外科用ツール把持器の運動を制御することができる。例えば、各UID14は、患者6内の組織を把持するために外科用ツール7の遠位端で把持器のジョーを開放又は閉鎖するアクチュエータ、例えば、直線アクチュエータの運動を制御するために、それぞれの把持信号を生成することができる。UID14のうちの1つ又は2つ以上は、患者9の組織へのステープリングの適用を起動するなど、ステープラの運動を制御することもできる。
【0019】
いくつかの態様では、外科用プラットフォーム5とユーザコンソール2との間の通信は、制御タワー3を通じたものであり得、これは、ユーザコンソール2から(より具体的には、コンソールコンピュータシステム16から)受信したユーザコマンドを外科用プラットフォーム5上の外科用ロボットアーム4に送信されるロボット制御コマンドに変換し得る。制御タワー3はまた、外科用プラットフォーム5からユーザコンソール2に状態及びフィードバックを送信し得る。外科用プラットフォーム5とユーザコンソール2と制御タワー3との間の通信接続は、様々なデータ通信プロトコルの任意の好適なものを使用して、有線及び/又は無線リンクを介し得る。任意の有線接続が、手術室の床及び/又は壁若しくは天井に任意選択的に内蔵され得る。外科用ロボットシステム1は、手術室内のディスプレイ、並びにインターネット又は他のネットワークを介してアクセス可能である遠隔ディスプレイを含む、1つ又は2つ以上のディスプレイにビデオ出力を提供し得る。ビデオ出力又はフィードはまた、プライバシーを確保するために暗号化され得、ビデオ出力のすべて又は部分は、サーバ又は電子医療記録システムに保存され得る。
【0020】
図2は、外科用ロボットシステム1のサブシステム又は一部を例解している。この一部は、外科用ツール240を外科用ロボットアーム220のツール駆動装置230に係合させるためのものである。外科用ロボットアーム220は、図1に関して例解及び考察される外科用ロボットシステム1の外科用ロボットアーム4のうちの1つであり得る。コントローラ210は、例えば、図1の制御タワー3又はユーザコンソール2の一部であり得る。
【0021】
外科用ツール240がツールドライバ230と係合すると、コントローラ210は、ホーミング(例えば、駆動装置による外科用ツールの制御のための外科用ツールに対する駆動装置の位置の識別)を実施し得る。ホーミングには、コンプライアンス及びバックラッシュを低減するために、静的プリテンションを追加することが含まれ得る。プリテンションが追加されると、コントローラ210は、ツール駆動装置230の駆動装置を動作させて、静的プリテンションを維持しながら外科用ツール240のエンドエフェクタを動作させる。
【0022】
異なる外科用ツール(例えば、外科用ツール240、並びに他の取り外し可能な外科用ツール-図示せず)を、ツール駆動装置230に(一度に1つずつ)選択的に取り付け得る。これは、例えば、人間のユーザが外科用ツール240のハウジングを手で保持し、この外科用ツール240を、1つ又は2つ以上のツールディスク(例えば、ツールディスク244-i)が存在する外科用ツール240の外面が、1つ又は2つ以上の駆動ディスク(例えば、駆動ディスク234-j)が存在するツール駆動装置230の外面と接触するまで、矢印280の方向に移動させることによって行われ得る。図示の例では、ツール駆動装置230は、外科用ロボットアーム220の遠位端部分における外科用ロボットアーム220のセグメントである。アーム220の近位端部分は、図2には示されていないが、上述の図1においてその例を見ることができる外科用テーブルなど、外科用ロボットプラットフォームに固定されている。
【0023】
コントローラ210は、ユーザ入力デバイスの動作を模倣するエンドエフェクタ246の動作(その位置及び配向、並びにその外科用機能)が達成される外科用ロボットアーム220(駆動ディスク234を含む)内の様々な電動関節の運動を制御する役割を担う。これは、外科用ツール240がツール駆動装置230から力又はトルクを伝達するように係合されたときに、外科用ツール240内の機械的トランスミッション245を介して達成される。コントローラ210は、例えば、図1の制御タワー3の一部として、プログラムされたプロセッサとして実装され得る。コントローラ210は、ローカル又は遠隔のユーザ入力(例えば、ジョイスティック、タッチコントロール、ウェアラブルデバイス、又はコンソールコンピュータシステム16を介して通信する他のユーザ入力デバイス)を介して受信した1つ又は2つ以上のユーザコマンドに応答し得る。代替的に、コントローラ210は、1つ又は2つ以上の自律コマンド若しくは制御(例えば、コントローラ210又はコンソールコンピュータシステム16によって実行されている訓練された外科的機械学習モデルから受信される)、又はそれらの組み合わせに応答し得る。コマンドは、ロボットアーム220の動き及びその取り付けられたエンドエフェクタ246の動作を指示する。
【0024】
エンドエフェクタ246は、ジョー、切断ツール、内視鏡、スプレッダ、インプラントツール、ステープラなどの任意の外科用器具であり得る。異なるエンドエフェクタ246を各々有する異なる外科用ツールは、外科又は他の医療処置中に使用するために、ロボットアーム220に選択的に取り付ける(一度に1つずつ)ことができる。図2の例に描写されているエンドエフェクタ246は、外科用ツール240の遠位端に位置するジョーである。
【0025】
ロボットアーム220は、アクチュエータ238-jなどの1つ又は2つ以上のアクチュエータが存在するツール駆動装置230を含む。各アクチュエータ238は、1つ又は2つ以上のそれぞれの電気モータ(例えば、ブラシレス永久磁石dcモータ)を有する線形又は回転アクチュエータであり得、その駆動シャフトは、トランスミッション(例えば、所与の歯車低減比を達成する歯車列236)を介してそれぞれの駆動ディスク234-jに結合され得る。ツール駆動装置230は、ツール駆動装置230の平面状の又は平坦な表面上に配置され得る1つ又は2つ以上の駆動ディスク234を含み、この図は、平坦な表面の同じ平面上に配置されたいくつかのそのような駆動ディスクを示している。各駆動ディスク(例えば、駆動ディスク234-j)は、ツール駆動装置230の外面上に露出されており、(例えば、スナップ、摩擦、又は他の嵌合特徴部を介してしっかりと締結するために)外科用ツール240の嵌合ツールディスク244-jを機械的に係合するように設計されており、これら2つの間の直接トルク伝達を可能にする。これは、例えば、外科用ツール240の平面状の又は平坦な表面と、ツール駆動装置230の対応する又は嵌合する平面状の又は平坦な表面と、を互いに接触させたときに起こり得る。
【0026】
更に、モータドライバ回路(図示されていないが、例えば、ツール駆動装置230内に、又は外科用ロボットアーム220内の他の場所に設置され得る)は、アクチュエータ238のうちの1つ又は2つ以上の構成モータの入力駆動端子に電気的に結合されている。モータドライバ回路は、コントローラ210によって設定又は制御することができるモータドライバ回路入力に従って、例えば、モータの速度、位置、又はトルクを調節するために、モータによって引き出される電力を操作する。
【0027】
嵌合駆動ディスク234-jがそれぞれのツールディスク244-jに機械的に係合されると、駆動ディスク234-jの動力回転により、ツールディスク244-jが回転し、例えば、2つのディスクが1つとして回転し得、それによって、例えば、歯車、ケーブル、チェーン、及び/又は外科用ツール240内の別のリンケージ若しくはトランスミッション245などエンドエフェクタ246に接続された残りのトランスミッション245に運動を伝え、エンドエフェクタ246の動き及び動作を制御する。エンドエフェクタ246は、トランスミッション245に機械的に結合され、これは、アクチュエータ238に機械的に結合される。アクチュエータ238からエンドエフェクタ246に運動を伝えるための歯車、ケーブル、チェーン、ロッド、ねじ駆動部、ラックアンドピニオン、及び/又は他のリンケージは、トランスミッション236、245又はリンケージである。外科用エンドエフェクタ246は、アクチュエータ238の動きがエンドエフェクタ246の動き又は動作を引き起こすように、トランスミッション236、245を介して接続される。トランスミッション236、245のコンプライアンス及び弾性は、アクチュエータ238による運動に対するエンドエフェクタ246の正確な応答性を低下させ得る。
【0028】
異なる外科ツール240は、回転、関節運動、開放、閉鎖、伸長、引き込み、圧力の適用など、それらのエンドエフェクタによって動きが実施される、動きの種類及び自由度の数に基づいて、異なる数のツールディスクを有し得る。更に、外科用ツール240内で、2つ又は3つ以上のツールディスク244は、エンドエフェクタ246の単一の運動に寄与して、嵌合駆動ディスク234をそれぞれ駆動している2つ又は3つ以上のモータによる負荷分散などの目標を達成し、及び/又はトランスミッション236、245、若しくはアクチュエータ238からエンドエフェクタ246への機械的リンケージにおけるコンプライアンス及び/又はバックラッシュの低減のために静的プリテンションを適用し得る。トランスミッション236、245は、エンドエフェクタ246を複数のアクチュエータ238に機械的にリンクする。両方のアクチュエータ238は、それぞれのトランスミッションを通してエンドエフェクタ246を制御するように動作する。例えば、外科用ツール240内で、トランスミッション245は、2つの駆動ディスク234からのトルクを(それぞれのツールディスク244を介して)変換して、同じ自由度で相補的な行為を実施し、例えば、第1の駆動ディスク234-iは、外科用ツール230のハウジング内でドラムを回転させて、ケーブルの一端を取り込み、第2の駆動ディスク234-jは、外科用ツール230のハウジング内で別のドラムを回転させて、ケーブルの他端を取り込む。別の例として、単一の軸に沿ったエンドエフェクタの伸長及び短縮は、2つのツールディスク234-i、234-jを使用して達成され得、例えば、異なるケーブルを介して、1つのケーブルは伸長を実施して、別のケーブルは引き込みを実施する。これは、同様に1つの自由度(例えば、単一の動き軸に沿って長手方向に伸長及び短縮する)で移動するが、その全動き範囲を制御するために単一のツールディスクのみを必要とするエフェクタとは対照的である。別の例として、エンドエフェクタ246がジョーである場合、2つ又は3つ以上のツールディスク244が、負荷分散のためにジョーの運動を協働的に制御し得る。
【0029】
いくつかの実施形態では、外科用ツール240が最初にツール駆動装置230に取り付けられるか、又は設置されると、ツールディスクは、対応する駆動ディスクと実質的に同一平面上かつ同軸に整合され(ただし、ツール及び駆動ディスクはおそらくまだうまく係合されていない)、コントローラ210は、最初に外科用ツール240の種類を検出する。外科用ツール240がツール駆動装置230に取り付けられ、その結果、ツールディスクが整合され、対応する駆動ディスク上に重ねられた(機械的に係合する必要はないが)後、及びツールディスク情報が得られた、例えば、コントローラ210によって読み取られた後、コントローラ210は係合プロセスを実施して、それぞれの駆動ディスク234に取り付けられると予想されるすべてのツールディスク244がそれぞれの駆動ディスク234と機械的に係合されたときを検出する(例えば、それらの機械的係合が達成された、又はツール駆動装置230がツール240と係合したとみなされる)。すなわち、外科用ツール240をツール駆動装置230に取り付けることは、対応する駆動ディスク234とツールディスク244との機械的係合に必要な適切な嵌合を必ずしも保証しない(例えば、嵌合特徴の不整合による)。係合プロセスは、対応する駆動ディスク234-jを駆動するアクチュエータ(例えば、アクチュエータ238-j)の1つ又は2つ以上のモータを起動させることを含み得る。次いで、アクチュエータ238-jの1つ又は2つ以上の監視されたモータ動作パラメータに基づいて、後者が駆動ディスク234-jを駆動している間、ツールディスク244-iと駆動ディスク234-jとの機械的係合を検出することができる。このプロセスは、それぞれのツールディスク244に現在取り付けられていると予想される(ツール駆動装置230の)駆動ディスク234ごとに繰り返され得る(例えば、現在取り付けられている特定の外科用ツール240について得られたツールディスク情報に基づいて決定される)。
【0030】
特定の種類の外科用ツール240がツール駆動装置230に取り付けられたことを検出すると、コントローラ210は、その種類の外科用ツール240に以前に関連付けられたツール駆動装置230の1つ又は2つ以上のアクチュエータ(例えば、モータ)を起動させる。いくつかの実施形態では、外科用ツール240の対応する駆動ディスク234に関連付けられた各アクチュエータ238は、同時に、連続して、又は同時及び連続起動の組み合わせで起動され得る。図3は、そのハウジングの嵌合表面上に同一平面的に配置された、ツールディスク244-iなどの4つのツールディスクを利用する外科用ツール240の例を例解している。ツールディスク244のうちの2つは、エンドエフェクタ246の動き及び/又は起動の少なくとも一部に寄与する。係合すると、駆動ディスク234はツールディスク244と同心円状に整合される。それらのそれぞれのディスク面は、互いに接触するようになり、黒丸として描写されているそのディスク面上の結合特徴(例えば、伸長部及び戻り止め)が係合する。この特定の例では、2つの相補的な特徴が機械的係合のために整合されると、結合特徴(例えば、伸長部)の各々は、特徴(例えば、戻り止め又はくぼみ)のいずれかに収まるようにサイズ化される。例えば、ピン-キャビティの各対がインターロックされるときに、係合が提供される。
【0031】
図3は、外科用ツール240、ツール駆動装置230、及びコントローラ210の例を示すブロック図である。そのプログラムされたプロセッサ312を含むコントローラ210は、例えば、制御タワー3内の共有マイクロプロセッサ及びプログラムメモリとして、外科用ロボットシステム1(図1)に統合され得る。代替的に、コントローラ210は、手術室とは異なる部屋、又は図1に示される手術場とは異なる建物などの遠隔コンピュータで実装され得る。更に、コントローラ210はまた、例解されていないが、ロボットアームとそれに取り付けられたツール240の手動制御を可能にし得るユーザインターフェースハードウェア(例えば、キーボード、タッチスクリーン、マイク、スピーカ)、電力デバイス(例えば、バッテリ)、並びに外科用手ロボットシステムを制御するための電子デバイスに典型的に関連付けられる他の構成要素も含み得る。
【0032】
メモリ314は、プロセッサ312による実行のための命令を記憶するために、1つ又は2つ以上のプロセッサ312(ここでは単純化のために一般に「プロセッサ」と称される)に結合される。いくつかの実施形態では、メモリは非一時的であり、ツール制御装置320及び係合制御装置316を含む1つ又は2つ以上のプログラムモジュール(例えば、アルゴリズム又は命令セット)を記憶し得、これらの命令は、本明細書に記載の係合及び制御プロセスを実施するようにプロセッサ312を構成する。言い換えれば、プロセッサ312は、ツール制御装置320及び係合制御装置316の一部としてメモリ314に記憶されたプログラム、ルーチン、又は命令の実行の制御下で動作して、本明細書に記載される態様及び特徴に従って方法又はプロセスを実行し得る。
【0033】
ツール駆動装置230への外科用ツール240の取り付けを検出することに応答して、係合制御装置316は、ツールディスク344-iと対応する駆動ディスク334-iとの係合など、ツールディスク244と対応する駆動ディスク234(アクチュエータ駆動型である)との機械的係合を検出するためのプロセスを実施する(又はむしろ実施するためのプロセッサ312を構成する)。係合制御装置316は、ディスク234を駆動するためのツールディスク244の係合を検出したことに基づいて、又は係合を検出せずに満了したカウントダウンタイマに基づいて、外科用ロボットシステムの操作者に通知を生成する。通知は、係合が生じていて、外科用ツール240の使用準備ができていること、又は係合が生じていず、外科用ツール240が再取り付けされるべきであることのいずれかを示し得る。
【0034】
係合後、コントローラ210は、アクチュエータ238を定位置に戻すように構成される。アクチュエータ238のゼロ又は開始位置が確立されて、エンドエフェクタ246が確立された又は初期状態に置かれる(例えば、ジョーが開放している、又はステープラがステープリングしていない)。最初に係合したときのアクチュエータ238の位置は、確立された状態として割り当てられ得る。代替的に、アクチュエータ238は、エンドエフェクタ246が確立された状態に移行したことを、アクチュエータ238に提供される感知電流などによって検出するように動作する。このホーミングは、係合制御装置316、ツール制御装置320、又は別個の制御の一部として実施され得る。
【0035】
コントローラ210は、アクチュエータ238を制御して静的プリテンションを適用するように構成されている。静的プリテンションは、トランスミッション236、245のコンプライアンス及び/又は弾性を考慮して、トランスミッション236、245のバックラッシュを固定又は設定する。異なるアクチュエータ238からエンドエフェクタ246へのトランスミッション236、245のスラックは除去又は低減され、トランスミッション236、245のコンプライアンスによるバックラッシュの量を固定する。複数のアクチュエータ238がエンドエフェクタ246に接続されている場合、トランスミッション236、245が大きなコンプライアンスを有する場合でも、静的プリテンションによってエンドエフェクタ246の同時制御が可能になる。
【0036】
静的プリテンションは、係合後及び患者の組織に対してエンドエフェクタ246を動作させるための制御前に最初に適用される。この静的プリテンションの適用は、ホーミング又は別個の制御の一部として発生するため、係合制御装置316、ツール制御装置320、又は別の制御プロセスの一部であり得る。
【0037】
静的プリテンションを作成するために、異なるアクチュエータ238が互いに反対に動作する。2つのアクチュエータ238がトランスミッション236、245を通してエンドエフェクタ246に接続する場合、一方のアクチュエータ238は他方のアクチュエータ238の反対に動作する。例えば、同じ方向に回っている(それらのそれぞれの駆動ディスク234が同じ方向に回っている)2つ又は3つ以上のアクチュエータ238は、外科用ツール240の内側にある同じ出力シャフトを駆動している(対応するツールディスクに接続されている外科用ツール240内のトランスミッション236、245による)。ここで、2つのアクチュエータ238が反対方向に移動するように信号伝達される場合、トランスミッション236、245のコンプライアンスが除去又は低減される。駆動ディスク234が対応するツールディスク244と係合する場合、反対の動きがトランスミッション236、245にプリテンションをかける。他の実施形態では、アクチュエータ238は、両方が回転して同じ方向に移動するが、一方のアクチュエータ238がより多く回転するようにエンドエフェクタ246を異なる量だけ移動させようとすることによって、互いに反対に動作する(例えば、別のアクチュエータ238が回転しないか、回転が少なくなる)。
【0038】
一方又は両方のアクチュエータのモータ動作パラメータを監視して、所望のレベルのプリテンションを検出することができる。プリテンションを適用する制御はトルク制御モードである。一方又は両方のモータによって流れる電流は、トランスミッション236、245のテンションの閾値レベルが生じるまで監視される。閾値トルクがトランスミッション236、245に適用されると、静的レベルのプリテンションが適用される。これにより、所望の静的プリテンションが提供される。代替的な実施形態では、他の制御モードが使用され得る。
【0039】
図4図6は、静的プリテンションの作成を示す単純化された集中モデルを例解している。エンドエフェクタ246の運動(例えば、一次元の運動)を正確に制御するために、2つのアクチュエータ238がトランスミッション236、245を通してエンドエフェクタ246にリンクされる。アクチュエータ238は、この集中モデルにおけるエンドエフェクタ246を表すブロック内に位置する。このモデルには、アクチュエータ238とエンドエフェクタ246のブロックの内側接触面との間にバックラッシュギャップが含まれる。アクチュエータ238は、一般にトランスミッションスラックを表すばね定数kを有する可撓性表面を通して、ブロックの内面と接触する。アクチュエータ238に作用する2つの抵抗力、すなわちi)摩擦力、ii)ばね定数kspringを有する既存のばね力がモデル化される。エンド-エフェクタブロックの正確な制御は、アクチュエータ(制御入力)の感覚情報(位置、電流、トルクなど)のみを使用して実施される。エンドエフェクタブロックの実際の位置は直接測定されないが、推定され、正確に制御される。
【0040】
図4では、エンドエフェクタブロックの実際の位置が、バックラッシュ+コンプライアンス領域(すなわち、エンドエフェクタブロックが位置決め可能なウェル)のどこにもある可能性があるため、既存のバックラッシュとトランスミッションのコンプライアンス及び/又は弾力性が問題である。更に、エンドエフェクタ246の運動に抵抗する外力とそれを支持する外力は両方とも、バックラッシュ及びコンプライアンス領域内でブロックの位置変更を引き起こし、アクチュエータセンサ測定値はこの位置変更を捕捉しない。
【0041】
異なる方向から来る外力に抵抗しながら、ブロックの運動を制御するための2つのアクチュエータマッピング設定がある。図5及び図6は、これらの2つの制御方式を表示している。図5は、互いに反対に離れて移動した(すなわち、エンドエフェクタ246を反対方向に移動させるために移動している)アクチュエータ238を示している。図6は、互いに反対に互いに向かって移動した(すなわち、エンドエフェクタ246を反対方向に移動させるために移動している)アクチュエータ238を示している。図5又は図6のいずれかの配置における任意の外力設定に対して、アクチュエータ238のうちの1つは、自由に移動するエンドエフェクタブロックに抵抗する。図5及び図6は、エンドエフェクタ246に適用されるアクチュエータ238の静的プリテンションの適用を表す。
【0042】
小さな機構の弾力性、大きなkの存在下で、アクチュエータマッピング設定は、マスタースレーブ制御方式で実装することができる。アクチュエータ238の一方が運動を導き、他方のアクチュエータ238が運動に抵抗し、バックラッシュが閉鎖され、アクチュエータ238とブロックの内面との間に常に接触面があることを確実にする。この制御方式では、機構の内部バックラッシュが完全に消費されるように、スレーブアクチュエータ238から適用される抵抗力がマスタアクチュエータ238を通過することが重要である。トランスミッション236、245に比較的大きなコンプライアンス及び弾性がある場合、マスタースレーブアクチュエータマッピング方式はうまく機能しない場合がある。大きいコンプライアンスのため、その領域の幅が変化する(つまり、大きくなる)ため、バックラッシュ領域を完全に取り除くことは不可能になり得る。アクチュエータ238は、限定された定格トルク出力能力しか有しておらず、より強力なアクチュエータ238を使用すると、トランスミッション236、245を塑性変形させ、機械的故障を引き起こす可能性がある。
【0043】
マスタースレーブ配置の代わりに、静的プリテンションが適用される。静的プリテンションは、ホーミングルーチン中、又は係合後及びエンドエフェクタ246の外科手術前に適用される。静的テンションは、図5及び図6に示されるようにブロック内面に適用されている反対方向で各アクチュエータ238から適用される定義済みの較正トルクなどの閾値に基づいて適用される。
【0044】
外科手術中、コントローラ210は、アクチュエータ238を制御して外科用エフェクタ246を移動させるように構成される。例えば、アクチュエータ238は、ステープリングのために移動されるか、又は位置を変更する。静的プリテンションを適用した後、操作者は、エンドエフェクタ246の運動又は動作の命令を含む、外科用ロボットアーム220の1つ又は2つ以上の関節の運動を命令し得る。上で考察されるように、コマンドは、ツール制御装置320の一部として、ツール駆動装置230の1つ又は2つ以上のアクチュエータ238にエネルギーを与えるためにコントローラ210が提供する対応する制御信号に変換される空間状態信号として(例えば、所望のモータ速度又は電流及び回転方向)1つ又は2つ以上のUID14から受信されるか、又は発信される。エンドエフェクタ246が、患者の組織からなど何らかの外部負荷をかけられているか又は受けている間、エンドエフェクタ246は、動作するなどして移動する。
【0045】
アクチュエータ238は、互いに反対ではなく、互いに協働して移動するように動作する。2つ又は3つ以上のツールディスク244が同じ自由度でエンドエフェクタ246の運動を伝える場合のように、エンドエフェクタ246の運動を協働的に制御する2つ又は3つ以上のアクチュエータ238を用いて、コントローラ210は、エンドエフェクタ246を移動させるときに、アクチュエータが相補的に動作することを保証するために、協働制御技法を更に実施する。例えば、エンドエフェクタ246のジョーの開放、閉鎖、ステープリング、又は把持力の適用を制御するために2つ又は3つ以上のアクチュエータが使用されるとき、コントローラ210は、マルチアクチュエータ動作制御技法を利用して位置コマンドを送り、エンドエフェクタ246を命令された位置又は動作(例えば、ステープリング)に移動させる。例えば、同じ位置コマンドが両方のアクチュエータ238に送られる(例えば、同じ極性(そのモータの回転方向)及び同じモータ電流値がアクチュエータ238の各々に供給される)。しかし、いくつかの実施形態では、アクチュエータの運動が互いにどのように補完するかについて、例えば、アクチュエータ238の回転方向が異なるとき、極性を反転し、モータの属性が異なるとき、ゲイン(例えば、命令されたモータ電流の)を調整するなど、何らかの補償があり得る。
【0046】
アクチュエータ238は、静的プリテンションを維持しながら位置を変更する。バックラッシュ及び/又はコンプライアンス補償は、手術中のエンドエフェクタ246の制御においても提供される。バックラッシュギャップは、制御中、維持される。両方のアクチュエータ238は、エンドエフェクタ246の一次元動作空間に沿って同じ方向にエンドエフェクタを移動させるように動作する。この動作のためのアクチュエータ238の開始相対位置は、トランスミッション236、245に適用された静的プリテンションを有するので、この協働的又は同じ動きは、エンドエフェクタ246をシフトしている間、静的プリテンションを維持することをもたらす。例えば、アクチュエータ238は、コンプライアンス及び/又は弾性を低減又は除去するためにプリテンションにより位置決めされたとき(図5及び図6を参照)、両方とも同じ方向に同じ量移動する。その結果、アクチュエータ238によってトランスミッション236、245に適用されたテンションは、集中モデルにおいてアクチュエータ238及びエンドエフェクタブロック246を同じ方向及び量にシフトしている間、依然として存在する。
【0047】
制御のトルクモードを使用してプリテンションが確立されると、コントローラ210は、ツール制御装置320のための位置制御モードに切り替わる。所望のプリテンショントルクに達するときに、制御は、両方のアクチュエータ238の位置制御方式に切り替えられる。位置制御は、アクチュエータ238の対応する位置又は相対位置を互いに保持するために使用される。この時点で、図5又は図6に示されるマッピング方式のうちの1つが確立される。アクチュエータ位置はゼロとしてマークされ(定位置など)、マークされたゼロアクチュエータ位置に対する各アクチュエータの位置制御が使用される。アクチュエータ238を同じ量だけ移動させる位置コマンドがアクチュエータ238に送られる。これらの位置コマンド(例えば、両方のアクチュエータ238への同じ位置コマンド)は、アクチュエータ238間の相対距離、したがってバックラッシュが動作全体を通して同じままであることを確実にする。アクチュエータ238のモータの駆動シャフトは、トランスミッション236、245の違いに対してスケーリングされるように、エンドエフェクタ246の動きの同じ量及び方向に対して位置を変更するために回転される。
【0048】
変動バックラッシュの影響は、機構のコンプライアンスにより、静的プリテンションでバックラッシュ幅を固定する(例えば、ホーミングルーチンで固定する)ことにより、除去又は低減される。外科手術において、トランスミッション236、245は、プリテンションによる運動コマンドに正確に追従しながら、あらゆる外力の外乱に抵抗する。外力による位置追跡誤差は、機構の弾性変形のみによるものであり得る。
【0049】
図7は、外科用ロボットシステムにおける外科用ツール又は器具の制御方法の一実施形態を示している。この方法は、ツールの動作の制御において、ツールのコンプライアンス及び/又は弾性によるバックラッシュの低減を使用する。
【0050】
この方法は、図1図2、及び図3の外科用ロボットシステム又は別の外科用ロボットシステムによって実施される。この方法は、外科用ステープラによる組織のステープリングなど、2つ又は3つ以上のモータが外科用ツールの同じ運動を駆動する場合に実施される。コントローラ又は他のコントローラのプロセッサは、アクチュエータ238、エンドエフェクタ246、及びアクチュエータ238とエンドエフェクタ246との間のリンケージ(例えば、トランスミッション236、245)を使用して方法を実施する。この方法は、エンドエフェクタ246以外の外科用ツールの他の関節又は可動部分に対して実施され得る。
【0051】
これらの行為は、図示の順序又は異なる順序で実施される。例えば、行為700及び702は、同時に、又は1つの行為の一部として実施される。別の例として、行為708及び710は、同時に、又は1つの行為の一部として実施される。
【0052】
追加の、異なる、又はより少ない行為が提供され得る。例えば、行為706は、移行が他の制御モードの間である場合、又は同じ制御モードが、ツールにプリテンションをかけることと動作させることの両方に使用される場合には実施されない(例えば、トルク制御モードの代わりにテンションを適用するために位置モードで較正された位置決めを使用する)。係合、ホーミング、ユーザ入力、ディスプレイ、及び/又は手術のための行為が含まれ得る。
【0053】
行為700では、コントローラは、アクチュエータから外科用ツール240のエンドエフェクタ246などの外科用ツール240への接続のコンプライアンス及び/又は弾性による変動バックラッシュを克服する。リンケージ又は複数のリンケージの弾力性は、行為700で使い尽くされるか、又は低減される。テンション又はトルクを適用することにより、バックラッシュ幅が低減又は排除される。
【0054】
行為702では、モータ又はアクチュエータの動作又は作動によって低減が提供される。他の実施形態では、低減は、他の方法で実施される。
【0055】
モータは、バックラッシュを低減するために作動又は動作する。モータは、互いに反対に動作する。例えば、一方のモータを移動させてエンドエフェクタ246をステープリングさせるか、又は動作させ、他方のモータを異なる方向に移動させ(すなわち、ステープリングさせない、又は動作させない)、所定の位置に保持し、又は一方のモータによる動きの程度に逆らってあまり移動させない。協働するために、2つのモータは、同じ程度に移動する。対抗するために、2つのモータは、異なる程度に移動する。反対に移動することの結果は、リンケージの引き締め又はリンケージの弾力性の一部の除去である。エンドエフェクタを通してリンケージに沿って適用される不均等な力により、バックラッシュ幅が低減する。テンションは、リンケージを通して適用される。テンションは、アクチュエータ238のモータと係合したエンドエフェクタ246へのリンケージを使用した反対の作動からもたらされる。
【0056】
一実施形態では、作動は、トルク制御下で行われる。モータによって適用されるトルクが監視される。モータは、所与のトルクを適用するように制御される。一方又は両方のモータが閾値トルクに達するときに、リンケージ及びエンドエフェクタ246を通して閾値量のテンションが適用される。テンションに達すると、モータは、互いに対して追加のトルクを適用せず、バックラッシュを消費する静的なプリテンションを提供する。
【0057】
行為700で低減させるための行為702の作動は、ホーミングの一部として実施される。行為700の前に、外科用ツール240はツール駆動装置230と係合される2つ又は3つ以上のアクチュエータ238が係合されて、エンドエフェクタの1つの関節又は所与の一次元動作を制御する。係合すると、ホーミングが実施される。ホーミングは、係合が検出されると、アクチュエータの位置(すなわち、シャフトの回転角度)をゼロ位置として割り当て得る。代替的に、他のホーミングが使用される。行為700のテンションは、制御された関節(例えば、エンドエフェクタ246)を使用してホーミング後又は外科手術前に適用される。代替的に、行為700のテンションが適用され、次いで、ホーミングが実施される(例えば、閾値量のテンション又はトルクがアクチュエータによって提供されるシャフト回転角度にゼロ又は初期位置を割り当てる)。いずれの場合も、行為700の低減は、ホーミングプロセスの一部として実施される。静的プリテンションは、患者に使用する外科用ツール240を準備するために適用されるプロセスの一部として、係合及びホーミングの一部として確立される。
【0058】
行為706では、コントローラは、行為702の作動又は行為700の低減により閾値トルクに達するときに、トルク制御から位置制御に移行する。バックラッシュ幅を低減するためにテンションを適用するために、モータをトルク制御下で動作させる。モータは、リンケージの所望の静的テンションに対応する所与量のトルクを提供するように動作する。モータの電流の流れ又は他の動作特性を監視して、リンケージ及びエンドエフェクタ246を通して一方のモータから他方のモータに適用されるトルク又は力を測定し得る。電流の流れは、トルクに関係する。閾値トルクは、異なる外科用ツール240及び/又は用途に対して異なり得る。閾値は、実験的に決定されるか、モータとリンケージの設計を使用したシミュレーションに基づいて決定される。
【0059】
トルクに達すると、モータは、テンションを提供する相対的な角回転を有する。これらの相対的な角回転を維持するため、制御は、位置制御モードに移行する。歯車運動が動き又は力に対して異なるスケールの回転をもたらす場合、動作中に同じプリテンションを提供しながら相対的な角回転がシフトし得る。駆動シャフトの位置(すなわち、角回転又は配向)は、定位置としてマークされ、及び/又は別の方法で記憶され、回転量が、位置制御モード下での位置変更の間、閾値トルクの許容範囲又はその許容範囲内にプリテンションを維持するようにする。
【0060】
行為708では、コントローラは、外科用ツール240を駆動する。駆動の制御は、位置制御モードである。モータの駆動シャフトの角回転又は配向は、エンドエフェクタ246又は外科用ツール240の他の部分を駆動して、エンドエフェクタ246又は外科用ツール240の他の部分を動作させるように制御される。回転量を命令するなど、マークした位置からの偏差が使用される。
【0061】
行為710は、ツール240の駆動の一実施形態を示す。係合したモータでツール240を動作させるために、他のアプローチが使用され得る。
【0062】
行為710では、コントローラは、モータを作動させる。モータとエンドエフェクタ246との係合接続は、作動モータからエンドエフェクタ246へ力を伝達する。位置制御モードでは、所与量回転するなど、モータを動作させて位置を変更する。
【0063】
モータは、互いに協働してアクチュエータを動作させる。モータは、リンケージに基づいてエンドエフェクタの同じ運動を引き起こす方向に回転する。運動量は、両方のモータによって提供される。例えば、両方のモータが同じ方向に同じ量だけ移動する。同じコマンドを各モータに提供し得る。スケーリングされた寄与がある場合、一方のモータが他方のモータより多かれ少なかれ移動し得る。リンケージがエンドエフェクタ246との逆接続を提供する場合、モータは、協働して、互いから反対方向に(互いに反対にではなく)移動し得る。
【0064】
行為708では、外科用器具240は、外部負荷をかけられて動作する。エンドエフェクタ上の組織からの力又は複数の力が克服される。静的プリテンションにより、外部負荷の方向及び/又は量に関係なく、位置制御は、ツールの動作を提供する。エンドエフェクタ246などの外科用ツール240は、ホーミング後に外科的使用(例えば、組織ステープリング)のために動作する。外科用器具を一方向に回転、動作、又は並進させる遠隔操作中に、トランスミッション236、245、又はアクチュエータ238から外科用ツール240のエンドエフェクタ246への他のリンケージに依存して、2つのモータが特定の方向に回転する(例えば、両方のモータが同じ方向に回転する、又はもう1つのモータが一方向に回転し、別のモータが異なる方向に回転する)。駆動シャフトの位置は、現在の位置(例えば、マークされた位置又は開始位置)から別の位置に移動するように制御される。
【0065】
行為708の動作は、静的プリテンションを維持しながら行われる。モータは、行為710で作動され、協働して移動する。モータは、リンケージを通して所望のテンションを適用する位置又はトルクで始動するため、協働作動により、モータ間のテンション又は相対トルクを保ちながら、エンドエフェクタを動作させる。位置モードでは、モータを移動させてエンドエフェクタ246の同じ運動を生じさせると、バックラッシュ幅を変更することなく、モータを一緒に移動させる。これは、可変量の外部負荷でも発生する。
【0066】
本発明の例解された実施形態に関する上記の説明は、以下の要約に記載されるものを含め、包括的であること、又は本発明を開示された正確な形態に限定することを意図するものではない。本発明の特定の実施形態及び実施例は、例解目的で本明細書に記載されているが、当業者が認識するように、本発明の範囲内で様々な修正が可能である。これらの修正は、上記の詳細な説明に照らして本発明に対して行うことができる。下記の特許請求の範囲で使用される用語は、本発明を本明細書に開示される特定の実施形態に限定するものと解釈されるべきではない。むしろ、本発明の範囲は、下記の特許請求の範囲によって全体的に決定され、これは、請求項解釈の確立された原則に従って解釈されるものである。
【0067】
〔実施の態様〕
(1) 外科用ロボットシステムにおける外科用器具の制御方法であって、
第1のモータと係合する第1のリンケージと、第2のモータと係合する第2のリンケージと、を作動させることであって、前記第1のリンケージ及び前記第2のリンケージが、前記外科用器具のエンドエフェクタに機械的に結合され、前記第1のモータ及び前記第2のモータが、互いに反対にトルク制御下で動作する、作動させることと、
閾値トルクに達するときに、前記第1のモータ及び前記第2のモータの前記トルク制御から位置制御に移行することと、
前記第1のモータ及び前記第2のモータの位置制御において、前記エンドエフェクタを駆動することであって、前記第1のモータ及び前記第2のモータが、互いに協調して動作する、駆動することと、を含む、方法。
(2) 作動させることが、前記第1のモータ及び前記第2のモータから前記第1のリンケージ及び前記第2のリンケージを通して前記エンドエフェクタへのバックラッシュを消費することを含む、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記外科用器具が、前記第1のモータ及び前記第2のモータによって制御される前記エンドエフェクタのための一次元運動を有し、作動させることが、前記第1のリンケージを用いて前記エンドエフェクタを第1の方向に駆動するために、前記第1のモータを作動させることと、前記第2のリンケージを用いて前記エンドエフェクタを前記第1の方向とは反対の第2の方向に駆動するために、前記第2のモータを作動させることと、を含む、実施態様1に記載の方法。
(4) 作動させることが、前記エンドエフェクタを用いて、前記第1のモータ及び前記第2のモータをホーミングすることを含み、駆動することが、前記ホーミング後に手術中に前記エンドエフェクタを駆動することを含む、実施態様1に記載の方法。
(5) 作動させることが、前記ホーミング中に静的プリテンションを適用することを含み、前記静的プリテンションが、前記閾値トルクに対応し、駆動することが、前記静的プリテンションを維持して駆動することを含む、実施態様4に記載の方法。
【0068】
(6) 移行することが、制御モードを前記トルク制御から前記位置制御に変更することを含む、実施態様1に記載の方法。
(7) 移行することが、前記トルク制御のために、前記第1のモータ及び/又は前記第2のモータによる電流の流れを感知することと、前記電流の流れをトルクに関連付けることと、を含む、実施態様1に記載の方法。
(8) 駆動することが、前記第1のモータ及び前記第2のモータの駆動シャフトの相対位置が前記エンドエフェクタに外部負荷をかけられて維持された状態で、前記第1のモータ及び前記第2のモータによって、前記第1のリンケージ及び前記第2のリンケージを移動させることを含む、実施態様1に記載の方法。
(9) 移行することが、前記第1のモータ及び前記第2のモータの駆動シャフトの位置をマークすることを含み、前記位置制御において駆動することが、前記マークされた位置からの前記駆動シャフトの位置を制御することを含む、実施態様1に記載の方法。
(10) 駆動することが、前記エンドエフェクタが前記第1のモータ及び前記第2のモータの制御下で移動するときに、前記第1のモータ及び前記第2のモータの駆動シャフトの同じ相対位置が維持されるように、同じ位置コマンドを用いて、前記第1のモータ及び前記第2のモータを制御することを含む、実施態様1に記載の方法。
【0069】
(11) 外科用器具の制御のための外科用ロボットシステムであって、
トランスミッションを通して、第1のアクチュエータ及び第2のアクチュエータによって作動される、外科用エンドエフェクタと、
前記第1のアクチュエータ及び前記第2のアクチュエータのホーミング中に、静的プリテンションを適用するために前記第1のアクチュエータ及び前記第2のアクチュエータを反対に駆動することと、前記第1のアクチュエータ及び前記第2のアクチュエータを協調して駆動して、前記静的プリテンションを維持しながら前記外科用エンドエフェクタを移動させることと、を行うように構成されているコントローラと、を備える、外科用ロボットシステム。
(12) 前記外科用エンドエフェクタが、ロボットアームに接続されたステープラを備え、前記静的プリテンションが、前記トランスミッションのバックラッシュを固定し、前記コントローラが、前記バックラッシュを維持しながら、前記第1のアクチュエータ及び前記第2のアクチュエータを駆動して、ステープリングさせるように構成されている、実施態様11に記載の外科用ロボットシステム。
(13) 前記コントローラが、トルク制御モードで前記静的プリテンションを適用するように駆動するように構成されており、位置制御モードで前記外科用エンドエフェクタを移動させるために駆動するように構成されている、実施態様11に記載の外科用ロボットシステム。
(14) 前記コントローラが、前記第1のアクチュエータを前記第2のアクチュエータとは反対に動作させることによって、前記静的プリテンションを適用するように駆動することと、前記第1のアクチュエータ及び前記第2のアクチュエータを互いに協働して動作させることによって、前記外科用エンドエフェクタを移動させるために駆動することと、を行うように構成されている、実施態様11に記載の外科用ロボットシステム。
(15) 前記コントローラが、前記外科用エンドエフェクタに外部負荷がかかっている間に、前記外科用エンドエフェクタを移動させるように構成されており、前記外科用エンドエフェクタが、前記第1のアクチュエータ及び前記第2のアクチュエータの両方に送信される同じ位置コマンドによって移動される、実施態様11に記載の外科用ロボットシステム。
【0070】
(16) 外科用ロボットシステムにおける外科用ツールの制御方法であって、
アクチュエータと前記外科用ツールとの間の係合されたカップリングのコンプライアンスによる変動バックラッシュを、前記外科用ツールの作動に対して互いに反対に駆動される前記アクチュエータを用いて克服することと、
前記アクチュエータを駆動することによって、前記係合されたカップリングを通して、前記外科用ツールを作動させることと、を含む、方法。
(17) 克服することが、トルク制御モードで制御することを含み、作動させることが、位置制御モードで制御することを含む、実施態様16に記載の方法。
(18) 作動させることが、互いに協働して前記アクチュエータを駆動することを含む、実施態様16に記載の方法。
(19) 作動させることが、前記外科用ツールに外部負荷をかけられて駆動することを含む、実施態様16に記載の方法。
(20) 克服することが、前記外科用ツールに対する前記アクチュエータのホーミングの一部として克服することを含み、作動させることが、ホーミングされたときの前記アクチュエータへの同じコマンドを用いて作動させることを含む、実施態様16に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7