(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】接触スリーブを備えた高圧遮断器、および、その高圧遮断器の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01H 33/662 20060101AFI20241007BHJP
【FI】
H01H33/662 E
(21)【出願番号】P 2023515216
(86)(22)【出願日】2021-09-03
(86)【国際出願番号】 EP2021074405
(87)【国際公開番号】W WO2022053410
(87)【国際公開日】2022-03-17
【審査請求日】2023-05-01
(31)【優先権主張番号】102020211516.8
(32)【優先日】2020-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】521001582
【氏名又は名称】シーメンス エナジー グローバル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SIEMENS ENERGY GLOBAL GMBH & CO. KG
(74)【代理人】
【識別番号】110003317
【氏名又は名称】弁理士法人山口・竹本知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【氏名又は名称】山本 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100169627
【氏名又は名称】竹本 美奈
(72)【発明者】
【氏名】グリューンラー,ロベルト
(72)【発明者】
【氏名】クリップシュタイン,シュテファン
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-536429(JP,A)
【文献】特開2010-272445(JP,A)
【文献】実開昭57-119437(JP,U)
【文献】特表2005-518635(JP,A)
【文献】実開昭59-016037(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 11/00 - 11/06
H01H 33/60 - 33/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空遮断バルブ(2)を少なくとも1つ備えた高圧遮断器(1)であって、前記真空遮断バルブ(2)が前記高圧遮断器(1)の少なくとも1つのホルダー(5、6)によって支承されており、前記真空遮断バルブ(2)が少なくとも2つの接触子(3、4)を有し、これらの接触子が前記少なくとも1つのホルダー(5、6)に結合されている高圧遮断器(1)において、
少なくとも1つの接触子(3、4)が前記少なくとも1つのホルダー(5、6)に接触スリーブ(9)を介して結合されて
おり、
前記接触スリーブ(9)が前記少なくとも1つの接触子(3、4)上に焼き嵌めされている、
ことを特徴とする高圧遮断器(1)。
【請求項2】
前記少なくとも2つの接触子(3、4)が前記少なくとも1つのホルダー(5、6)に、1つの接触スリーブ(9)を介して結合されていることを特徴とする請求項1に記載の高圧遮断器(1)。
【請求項3】
前記接触スリーブ(3、4)が、前記少なくとも1つの接触子(3、4)と前記少なくとも1つのホルダー(5、6)との間に機械的に安定した直接的な電気接触を生成するように形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の高圧遮断器(1)。
【請求項4】
前記接触スリーブ(9)が、前記少なくとも1つのホルダー(5、6)に溶接接続(10)により結合されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の高圧遮断器(1)。
【請求項5】
前記接触スリーブ(9)が前記少なくとも1つの接触子(3、4)上に取り付けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の高圧遮断器(1)。
【請求項6】
前記接触スリーブ(9)がアルミニウムを含む、および/または、アルミニウム製であり、
および/または、
前記少なくとも1つの接触子(3、4)が銅を含む、および/または、銅製であり、
および/または、
前記少なくとも1つのホルダー(5、6)がアルミニウムを含む、および/または、アルミニウム製である、
ことを特徴とする請求項1から
5のいずれか1項に記載の高圧遮断器(1)。
【請求項7】
前記接触スリーブ(9)が中空の円筒形であることを特徴とする請求項1から
6のいずれか1項に記載の高圧遮断器(1)。
【請求項8】
前記接触スリーブ(9)が中空の円錐台形であることを特徴とする請求項1から
7のいずれか1項に記載の高圧遮断器(1)。
【請求項9】
前記接触スリーブ(9)がパイプ状に形成されていることを特徴とする請求項1から
8のいずれか1項に記載の高圧遮断器(1)。
【請求項10】
前記接触スリーブ(9)がパイプ状に形成されており、そのパイプの一方の側は開口されており、他方の側は閉鎖されており、
前記パイプの閉鎖された側が、平らな底板の形に形成されている、
ことを特徴とする請求項1から
9のいずれか1項に記載の高圧遮断器(1)。
【請求項11】
前記真空遮断バルブ(2)が少なくとも1つの固定接触子(3)および少なくとも1つの可動接触子(4)を含み、
前記固定接触子(3)が固定されたホルダー(5)と結合されており、
および/または、
前記可動接触子(4)がホルダー(6)の可動スライドピース(7)と結合されており、前記可動スライドピース(7)が前記ホルダー(6)の固定されたホルダースリーブ(8)内に配設されている、
ことを特徴とする請求項1から
10のいずれか1項に記載の高圧遮断器(1)。
【請求項12】
数キロボルトから1200キロボルトの範囲までの電圧を開閉するように構成されていることを特徴とする請求項1から
11のいずれか1項に記載の高圧遮断器(1)。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1項に記載の高圧遮断器(1)の製造方法であって、前記高圧遮断器(1)の少なくとも1つのホルダー(5、6)により支承される真空遮断バルブ(2)を少なくとも1つ備え、前記真空遮断バルブ(2)が少なくとも2つの接触子(3、4)を有し、これらの接触子が少なくとも1つのホルダー(5、6)と結合されるように構成された高圧遮断器(1)の製造方法において、
少なくとも1つの接触子(3、4)と前記少なくとも1つのホルダー(5、6)との結合が、
接触スリーブ(9)を介して行われ、
および/または、
スプレー、プレス、スパッタリング、電気化学的な被着、ねじ止めおよび/または前記少なくとも1つの接触子(3、4)上への焼き嵌めにより、前記少なくとも1つの接触子(3、4)と結合される接触スリーブ(9)を介して行われる、
ことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧遮断器の少なくとも1つのホルダーによって支承された真空遮断バルブを少なくとも1つ備えた高圧遮断器、および、その高圧遮断器の製造方法に関する。この場合、この真空遮断バルブは少なくとも2つの接触子を有し、これらの接触子は少なくとも1つのホルダーと結合されている。
【0002】
高圧遮断器は、1200kV以下の電圧範囲で、かつ、数千アンペア以下の電流範囲で電圧を開閉するように形成されている。高圧遮断器は、例えば、支持体上に少なくとも1つの開閉接点を備えたハウジングを含む。このハウジングは、例えば、特に、セラミック、シリコーンおよび/または複合材料からなる絶縁体であり、その絶縁体は、例えば円筒形の中空体であり、沿面漏れ電流を長く延ばすために、特に、外周部に複数の傘状のリブを備えている。碍子形高圧遮断器とは対照的に、タンク形高圧遮断器ではハウジングが接地されており、このハウジングは例えば中空円筒形の金属製タンクからなり、その内部には少なくとも1つの開閉接点が配設されている。
【0003】
その開閉接点は少なくとも2つの接触子、例えば、1つの固定接触子および1つの可動接触子を含み、これらの接触子は、例えば、鋼、アルミニウムおよび/または銅のような導電性材料から成っている。これに代えてまたはこれに加えて、1つの開閉接点が例えば少なくとも2つの可動接触子を含むことができる。この場合、2つの可動接触子を有する実施例は、本発明における1つの固定接触子および1つの可動接触子に類似しており、簡略化のために以降ではこれ以上は説明しない。開閉接点のこれらの接触子は、高圧遮断器内に配設されるか、または、複数のホルダーによって支承され、特に、移動可能に、もしくは、固定して支承されており、ハウジングによって特に気密に封止されている。
【0004】
ハウジングは絶縁ガスまたは遮断ガス、特にSF6および/または清浄空気で満たされている。これらの開閉接点は、例えば、定格電流接触子および/またはアーク接触子を含み、遮断ガスにより、駆動装置のような高圧遮断器の特定の装置および周辺部から、電気的に絶縁される。SF6のような遮断ガスは気候に有害であり、および/または、毒性成分を含む可能性がある。遮断ガスが高圧遮断器から漏れるのを防ぐためには、ハウジングの気密で永続的なシールが必要であり、それは複雑で高価であり、コストがかかる。高圧遮断器の寿命の終わりの、特に遮断ガスの環境に優しい廃棄処理も複雑でコスト高になる。環境に優しい代案は、上述した典型的なハウジング内で真空バルブを使用することである。
【0005】
上述のような典型的なハウジングを使用することにより、電力系統内の高圧遮断器の簡単でコスト効率の良い交換、および、特に多数の高圧遮断器の簡単でコスト効率の良い製造が可能となる。例えばSF6のような環境に有害な遮断ガスを環境にやさしい遮断ガス、例えば清浄空気、すなわち、乾燥され浄化された空気、で置き換えるためには、典型的なハウジングにおいて必要な絶縁距離を保持するために、定格電流系およびアーク放電接点系を真空遮断バルブに置き換える必要がある。
【0006】
真空遮断バルブは、ハウジングの内部で少なくとも2つの外部電気接続部の間に、機械的に安定に、電気を電導するように配設され、接続されている。この場合、この電気接続部は、例えば、高圧ケーブル、発電者および/または電力使用者の接続のための接続端子の形態で形成されている。高圧遮断器用の真空遮断バルブの構造は、例えば特許文献1で知られている。その真空遮断バルブは、円形で直線状の円筒形のハウジングを備え、この円筒の内部は排気されている。このハウジングは、セラミック製のまたは複数のセラミック部品でできた、例えば、直線円筒形の2つの同一の半部分で構成されており、これらの2つの半部分は1つの金属円筒または1つの金属部分を介してハウジングの中央部で複数の移行部品と結合されている。これらの移行部品はハウジング内のシールド電極またはシールドとして形成されている。
【0007】
この真空遮断バルブは開閉のために少なくとも1つの電気接点を備え、この電気接点は1つの固定接触子および1つの可動接触子を有する。これらの接触子は真空遮断バルブ内で皿状に構成されており、真空封止されている。これらの接触子は外側に向けてボルトの形状で案内され、各々が、例えば、高圧遮断器の接続端子の形状の外部の電気接続部に接続されている。可動接触子はベローズを介して真空密に、真空遮断バルブ内に移動可能に案内され、支承されている。
【0008】
閉路する時には、可動接触子は、両接触子間の機械的および電気的接触が確立するまで固定接触子に向かって移動する。開路する時には、可動接触子は、両接触子間の電気接触が遮断され、かつ、印加された電圧において電気的フラッシュオーバを回避するのに十分な距離がとれるまで固定接触子から離される。高電圧では両接触子間の距離が大きいことが必要である。真空遮断バルブは、内部で十分な距離を確保できるように、長い形状に作られている。真空遮断バルブのハウジングのセラミック製のまたは複数のセラミック部品で作られた直線状の円筒形の半部分は、例えば、いくつかの部品で構成されており、これらの部品は複数の金属部品を介して複数の移行部に結合されている。これらの移行部は、それぞれ、ハウジング内のシールド電極またはシールドとして製作されている。例えば銅および/または鋼で作られた金属部品を介してのハウジングのセラミック部品の接合は、例えばろう付けによって行われる。
【0009】
真空遮断バルブの複数の接触子の、これら接触子を支承するための特に複数のホルダーへの連結、ひいては、高圧遮断器の駆動装置および/または複数の固定された導電部への連結は、クランプ結合によって行われる。これらのホルダーは、例えば、アルミニウム製および/または鋼製である。アルミニウムは質量が小さく、駆動装置の加速度を少ないエネルギー消費で可動接触子に伝えることができ、さらに、固定接触子を高圧遮断器内で軽量のホルダーで簡単かつ安価に固定することができる。真空遮断バルブの接触子は高い通電性能を目的として、例えば銅で作られている。これらの接触子とそれぞれのホルダーとの結合は特にアルミニウムと銅部品との間でクランプ結合によって行われる。嵌め合い式のクランプ結合には2つの電気的な接触箇所が含まれており、これらが遮断器内の過大な加熱および電気的損失をもたらす。数千アンペアに達する非常に高い電流では、非常に大きい電気的損失が発生する可能性があり、遮断器内の高温が損傷および/または破壊につながる可能性がある。例えばねじ止めにより圧着されるクランプ結合は着脱可能で、技術的に複雑であり、それが高い故障率と高コストをもたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】欧州特許出願公開第EP0102317A2号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、上述した問題点を解決する高圧遮断器、および、その高圧遮断器の、特に上述した高圧遮断器の製造方法を提供することにある。特にこの課題は、少なくとも1つの真空遮断バルブが機械的に安定して配設され支承されており、故障率が低く、閉路状態において電気損失が小さく、特に大電流での発熱が小さい高圧遮断器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この課題は、請求項1の特徴を有する高圧遮断器により、および/または、高圧遮断器、特に前述の高圧遮断器の請求項15による製造方法により解決される。本発明による高圧遮断器の有利な形態、および/または、本発明による高圧遮断器、特に上述した高圧遮断器の製造方法の有利な形態は従属請求項に記載されている。主たる請求項の主題は互いに、および、従属請求項の特徴と組み合わせることができ、ならびに、従属請求項の特徴は相互に組み合わせることができる。
【0013】
本発明による高圧遮断器は少なくとも1つの真空遮断バルブを備え、この真空遮断バルブは高圧遮断器の少なくとも1つのホルダーによって支承されており、この場合、この真空遮断バルブは少なくとも2つの接触子を有し、これらの接触子は少なくとも1つのホルダーと結合されている。少なくとも1つの接触子が1つの接触スリーブを介して少なくとも1つのホルダーと結合されている。
【0014】
接触スリーブにより、少なくとも1つの接触子と少なくとも1つのホルダーとの、機械的に安定で、良好な導電性の結合が可能となり、この結合は恒久的で、簡単に、低コストで実施することができる。少なくとも1つの接触子および少なくとも1つのホルダーとの接触スリーブの境界面を経由する接触抵抗が小さいので、特に、接触スリーブおよび/または接触子、ならびに、ホルダーおよびそれらの境界面での発熱が少なくなり、特に数千アンペアまでの範囲の電流を流すことが可能となる。
【0015】
これらの少なくとも2つの接触子は少なくとも1つのホルダーに、特に、それぞれが1つのホルダーに、それぞれ1つの接触スリーブを介して結合することができる。これにより、高圧遮断器の閉路状態において、高圧遮断器を経由する、特に、両方の接触子およびそれらのホルダーを経由する、良好な導電性結合が得られる。この接触スリーブにより、高い機械的な安定性および上述した良好な電気的特性が得られ、これは上述の利点を有する。
【0016】
この接触スリーブは、少なくとも1つの接触子と少なくとも1つのホルダーとの間に機械的に安定した直接的な電気接触を生成するように形成することができる。直接的な接触により、特に高い機械的な安定度および特に良好な電気的特性が得られる。こうして、高圧遮断器の閉路状態において、高圧遮断器を経由する、特に、両方の接触子およびそれらのホルダーを経由する、良好な導電性結合が得られ、これは上述の利点を有する。
【0017】
この接触スリーブは少なくとも1つのホルダーに、溶接接続、特に電子ビーム溶接接続により結合することができる。溶接接続、特に電子ビーム溶接接続は機械的な安定度が高く、簡単に、低コストで実施することができ、特に大電流時に、溶接接続を通る電気的な損失が少なく、発熱の少ない良好な電気の流れが可能となる。
【0018】
この接触スリーブは少なくとも1つの接触子上に取り付けることができ、特に、スプレーにより、および/または、プレスにより、および/または、スパッタリングにより、および/または、電気化学的に被着することができる。この接触スリーブは嵌め合い式に取り付けることができる。こうすることで、この結合を経由する高い電気伝導度すなわち低い接触抵抗を備えた、接触スリーブと接触子との高い機械的強度が得られる。これにより、接触スリーブの高い強度および良好な電気的特性を備えた低コストの取り付けが可能となり、この場合、様々な形状の接触スリーブを簡単に、かつ、低コストで作ることが可能である。空気のような包含物を含まない、接触スリーブと接触子との結合も可能であり、これは上述した利点を有する。この場合、スプレーは特にコスト的に有利であり、プレスは特に3次元印刷により多数の形状の製作を可能とし、スパッタリングからは高強度で良好な電気的特性を備えた接触スリーブが得られ、電気化学的な堆積は非常に低コストで、接触スリーブの良好な電気的特性および高い強度を備えており、これら複数の方法の組み合わせにより、正確に定義された特性を備えた接触スリーブを得ることができ、ならびに、適切な材料において特定の、所望の、および/または、規定された特性を得ることができる。
【0019】
この接触スリーブは少なくとも1つの接触子上に焼き嵌めすることができる。この接触スリーブは嵌め合い式に焼き嵌めすることができる。焼き嵌めは簡単、低コストで短時間のプロセスであり、低い電気抵抗で特に機械的に高い安定度が得られる適切な材料を使用した接触スリーブの前加工品の使用が可能となる。嵌め合い式の焼き嵌めは、嵌め合い式の取り付けについて既述した利点を有する。
【0020】
この接触スリーブは少なくとも1つの接触子上にねじ止めすることができる。ねじ結合は繰り返し着脱可能であり、機械的な安定性が高い。ねじ結合の場合でも、接触面積が大きければ良好な導電性が得られ、大電流時の発熱が少なくなる。
【0021】
この接触スリーブはアルミニウムを含むかおよび/またはアルミニウム製とすることができる。アルミニウムは安価、軽量で、高い電気伝導度、高い熱伝導度および高い機械的強度を有する。特に可動接点では、重量が軽いので、少ないエネルギー消費で高速の開閉速度が得られる。その少なくとも1つの接触子は銅を含むおよび/または銅製とすることができる。銅の電気伝導度は非常に高く、したがって大電流時の発熱が小さい。銅の熱伝導度は大きく、機械的に安定である。その少なくとも1つのホルダーはアルミニウムを含むかおよび/またはアルミニウム製とすることができ、これは接触スリーブについて上述した利点につながる。
【0022】
この接触スリーブは中空の円筒形、特に直線状の円筒形とすることができる。円筒は簡単に製作可能であり、安定性が高く、さらに、外皮面積が大きく、これは接触面積として役立ち、これによって、大電流時に電流損失と発熱が小さくなる。
【0023】
この接触スリーブは中空の円錐台形、特に直線状の円錐台形とすることができる。これにより、円筒形の接触スリーブよりも大きい面積が得られ、上述した利点が得られる。特に、円筒形の外側形状および円錐台形の内側形状により、接触子との接触面積が大きく、製作が簡単で、例えば溶接によりホルダーへの結合が簡単な、接触スリーブを得ることができる。
【0024】
この接触スリーブはパイプ状に形成されており、特に1つの貫通開口を有する。これにより、この接触スリーブは簡単に、速やかに接触子上に取り付けることができ、機械的な安定性が高く、特に焼き嵌め法によって接触面積が大きい。
【0025】
この接触スリーブはパイプ状に形成することができ、そのパイプの一方の側は開口されており、他方の側は閉鎖または封鎖されていて、このパイプの閉鎖された側は特に平らな底板の形に形成されている。この平らな底板を介して、この接触スリーブは、特に面状に溶接および/またはろう付けされて、ホルダーに取り付けることができ、機械的な安定性が高く、良好な電気的特性を有する。
【0026】
この真空遮断バルブは少なくとも1つの固定接触子および少なくとも1つの可動接触子を含み、その固定接触子は特に1つの接触スリーブを介して1つの固定されたホルダーと結合することができる、および/または、その可動接触子は特に1つの接触スリーブを介して1つのホルダーの可動スライドピース、この可動スライドピースはそのホルダーの固定されたホルダースリーブ内に配設することができる、と結合することができる。これによって、開閉時に少ないエネルギー消費で容易に移動可能な接触子を備えた、機械的に安定した高圧遮断器が可能となり、この高圧遮断器は良好な電気的特性、特に、閉路された状態においてこの高圧遮断器を経由する高い電気伝導度および低抵抗を有している。
【0027】
この高圧遮断器は数キロボルトから1200キロボルトの範囲までの電圧を開閉するように構成することができる。上述した利点は大電流および/または高電圧時に特に有利に生じる。
【0028】
高圧遮断器の製造方法、特に上述した、その高圧遮断器の少なくとも1つのホルダーにより支承される真空遮断バルブを少なくとも1つ備え、この真空遮断バルブが少なくとも2つの接触子を有し、これらの接触子が少なくとも1つのホルダーと結合されるように構成された高圧遮断器の製造方法は、少なくとも1つの接触子と少なくとも1つのホルダーとの結合が、特に導電性が良好で機械的に安定なように、1つの接触スリーブを介して行われ、特に、接触スリーブと少なくとも1つのホルダーとの間の溶接接続を有する接触スリーブを介して行われ、および/または、スプレー、プレス、スパッタリング、電気化学的な被着、ねじ止めおよび/または少なくとも1つの接触子上への焼き嵌めにより、少なくとも1つの接触子と結合される1つの接触スリーブを介して行われる、ことを含む。
【0029】
高圧遮断器の、特に上述した高圧遮断器の請求項15による製造方法の利点は、請求項1による高圧遮断器の利点と同様であり、その逆も然りである。
【0030】
以下、
図1から
図10に、従来技術による高圧遮断器および本発明による実施例を模式的に示し、より詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】従来技術による、真空遮断バルブ2を備えた高圧遮断器1の一部を側面から見た部分断面模式図であり、真空遮断バルブ2がクランプによってホルダー3に固定されている。
【
図2】本発明による、真空遮断バルブ2を備えた高圧遮断器1の断面模式図であり、この真空遮断バルブ2はその2つの接触子(3、4)を介してホルダー(5、6)により支承されており、これらの接触子(3、4)は円筒形の接触スリーブ9を介してそれぞれのホルダー(5、6)と結合されている。
【
図3】
図2の高圧遮断器1の一部の断面模式図であり、この高圧遮断器は固定接触子3のホルダー5を備え、このホルダーは固定されたホルダースリーブ8を有し、これが接触スリーブ9を介して固定接触子3と結合されている。
【
図4】
図2の高圧遮断器1の一部の断面模式図であり、この高圧遮断器は可動接触子4のホルダー6を備え、このホルダーは可動なスライドピース7を有し、これが接触スリーブ9を介して可動接触子4と結合されている。
【
図5】本発明による、真空遮断バルブ2を備えた高圧遮断器1の断面模式図であり、この真空遮断バルブ2はその2つの接触子(3、4)を介してホルダー(5、6)により支承されており、これらの接触子(3、4)は内側が円錐台形の接触スリーブ9を介してそれぞれのホルダー(5、6)と結合されている。
【
図6】
図5の高圧遮断器1の一部の断面模式図であり、この高圧遮断器は固定接触子3のホルダー5を備え、このホルダーは固定されたホルダースリーブ8を有し、これが接触スリーブ9を介して固定接触子3と結合されている。
【
図7】
図5の高圧遮断器1の一部の断面模式図であり、この高圧遮断器は可動接触子4のホルダー6を備え、このホルダーは可動なスライドピース7を有し、これが接触スリーブ9を介して可動接触子4と結合されている。
【
図8】本発明による、真空遮断バルブ2を備えた高圧遮断器1の断面模式図であり、この真空遮断バルブ2はその2つの接触子(3、4)を介してホルダー(5、6)により支承されており、これらの接触子(3、4)は円筒形の接触スリーブ9を介してねじ締めによりそれぞれのホルダー(5、6)と結合されている。
【
図9】
図8の高圧遮断器1の一部の断面模式図であり、この高圧遮断器は固定接触子3のホルダー5を備え、このホルダーが固定されたホルダースリーブ8を有し、これが接触スリーブ9を介して固定接触子3と結合されている。
【
図10】
図8の高圧遮断器1の一部の断面模式図であり、この高圧遮断器は可動接触子4のホルダー6を備え、このホルダーが可動なスライドピース7を有し、これが接触スリーブ9を介して可動接触子4と結合されている。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は、従来技術による高圧遮断器1の一部を側面から見た部分断面模式図である。この高圧遮断器1は1つの真空遮断バルブ2を備えており、この真空遮断バルブはクランプによってホルダー3に固定されている。
図1には、特に銅製の可動接触子4と、この可動接触子4の特にアルミニウム製の例えば銀メッキしたホルダー6とを備えた真空遮断バルブ2の片側が示されている。
【0033】
このホルダー6はクランプ装置の形に形成されているか、または、クランプ装置を含んでおり、このクランプ装置は繰り返し着脱可能な締め付けによって接触子4の円筒形端部をホルダー6に機械的に固定し、接触子4とホルダー6との電気伝導を可能にする。クランプされていない状態では、このホルダーは外皮面が開いているか、または、隙間が形成されている。クランプするために、接触子4の例えば円筒形の端部がホルダー6の開口部に挿入される。
図1で上半分に円形に表示されている穴を例えばねじ締めすることにより、ホルダー6を押圧することによって、その隙間が閉じられ、接触子4は繰り返し着脱可能なクランプ装置により、機械的に安定に、導電性を有して、クランプされる。
【0034】
図2に、本発明による高圧遮断器1の断面を模式図で示す。この高圧遮断器1は1つの真空遮断バルブ2を備えており、この真空遮断バルブはその2つの接触子3、4を介してホルダー5、6によって支承されている。接触子3、4は特に円筒形の接触スリーブを介してそれぞれのホルダー5、6に結合されている。
図3に、真空遮断バルブ2の固定接触子3が拡大表示されており、これは固定接触子3のホルダー5と結合されている。ホルダー5は例えばフランジとして形成されており、このフランジは高圧遮断器1のハウジングに固定されている。簡略化のために、これらの図面にはこのハウジングは示されていない。
【0035】
図4に、真空遮断バルブ2の可動接触子4が拡大表示されており、これは可動接触子4のホルダー6と結合されている。可動接触子4のホルダー6は固定されたホルダースリーブ8ないしホルダーフランジを含み、これは例えば高圧遮断器1のハウジングに固定されている。固定されたホルダースリーブ8内に、例えばスライドディスクおよび/またはスライドシリンダーの形態の可動なスライドピース7が配設されている。可動接触子4は機械的に強固に、導電性を有して、可動スライドピース7に固定されている。可動なスライドピース7は固定ホルダースリーブ8内に移動可能に配設されており、例えば摺動接点を介して導電的に固定ホルダースリーブ8と接続されている。
【0036】
接触子3および4はそれぞれ1つの特に中空円筒形の接触スリーブ9を備えており、この接触スリーブの円筒の一方の側は円板状の円筒底板で閉じられている。接触スリーブ9の例えば内側と外側は円筒形であり、内側の形は外側と同じで、単に小さいだけであり、内側の形は接触子3および4のそれぞれの端部の形と同じである。接触スリーブ9の円板状の円筒底板の側で、ホルダー5、6は例えば溶接により、特に電子ビーム溶接により、接触スリーブ9に固定されている。
【0037】
固定接触子3の側では、ホルダー5は、スリーブまたは中空の円筒および/またはパイプの形であり、真空遮断バルブ2とは反対側に特にフランジを有しており、内側には例えば複数の通気孔を有する1つの円板が形成されており、中央部には円筒形の突出部がある。接触スリーブ9は、特に電子ビーム溶接によりホルダー5の突出部に固定されている。ホルダー5と接触スリーブ9は、例えば同一材料、特にアルミニウム製であるかおよび/またはアルミニウム、特にアルミニウム合金を含む。接触スリーブ9は固定接触子3の端部に嵌め合い的に配設されている。この接触スリーブ9は、例えば、焼き嵌めされ、スプレーされ、プレスされ、スパッタリングされおよび/または電気化学的に被着されている。
【0038】
例えば、焼き嵌め、スプレー、プレス、スパッタリングによりおよび/または電気化学的な被着により、機械的に強固に、電気的および熱的に良好な伝導度を有するように、固定接触子3上に固定された接触スリーブ9によって、ホルダー5と真空遮断バルブ2との間の電気的および熱的に良好な接触が得られる。この接触スリーブ9は特に電子ビーム溶接により、機械的に強固に、電気的および熱的に良好な伝導度を有して固定接触子3のホルダー5に固定されている。その結果、特に数アンペアから数百アンペアの範囲の大電流が流れても、この接触部の発熱による大きな電気損失や発熱は生じない。特に接触部の接触抵抗が大きいことにより高温または多量の熱が発生すると、高圧遮断器1の破損や破壊につながりかねない。
【0039】
可動接触子4の側では、
図4に示すように、ホルダーは、固定されたホルダースリーブまたは中空円筒および/またはパイプの形をしており、真空遮断バルブ2とは反対側に特にフランジを有している。固定されたホルダースリーブ8内に、移動可能なスライドピース7が上述したように配設されており、移動可能に支承されている。このスライドピース7は、特に高圧遮断器1の開閉時に、駆動装置および/または運動機構の要素によって移動される。このことは簡略化のために図面には示されていない。例えば、スライドディスクおよび/または内部円板を備えたスライドシリンダーの形のスライドピース7は特に中央部に円筒形の突出部を有している。接触スリーブ9は、特に電子ビーム溶接によりスライドピース7の突出部に固定されている。
【0040】
ホルダースリーブ8および/またはスライドピース7ならびに接触スリーブ9は、例えば同一材料、特にアルミニウム製であるか、および/または、アルミニウム、特にアルミニウム合金を含む。接触スリーブ9は可動接触子4の端部に嵌め合い的に配設されている。この接触スリーブ9は、例えば、焼き嵌めされ、スプレーされ、プレスされ、スパッタリングされ、および/または、電気化学的に被着されている。
【0041】
例えば、焼き嵌め、スプレー、プレス、スパッタリングにより、および/または、電気化学的な被着により、機械的に強固に、電気的および熱的に良好な伝導度を有して可動接触子4に固定された接触スリーブ9によって、ホルダー6と真空遮断バルブ2との間の電気的および熱的に良好な接触が得られる。この接触スリーブ9は特に電子ビーム溶接により、機械的に強固に、電気的および熱的に良好な伝導度を有して可動接触子4のホルダー6またはスライドピース7に固定されている。その結果、固定接触子3とホルダー5との接触部について上述したように、特に数アンペアから数百アンペアの範囲の大電流が流れても、この接触部の発熱による大きな電気損失や発熱は生じず、このことは前述した利点を有する。
【0042】
図5から
図7は、本発明による高圧遮断器1の他の実施例を示す。この高圧遮断器1は
図2から
図4の高圧遮断器1に類似しているが、この場合は、内側の接触スリーブ9および接触子3と4の端部が円筒形ではなく円錐台形である。その結果、接触スリーブ9と各接触子3,4との接触面積が、
図2から
図4の実施例に比べて拡大されている。拡大された接触面積は接触抵抗を減少させ、したがって、電気的損失および発熱を減少させ、上述の利点を有する。
【0043】
図8から
図10は、本発明による高圧遮断器1の他の実施例を示す。この高圧遮断器1は
図2から
図4、および、
図5から
図7の高圧遮断器1に類似しているが、この場合は、それぞれの接触スリーブ9とそれぞれの接触子3、4の端部とは、ねじ結合によって互いに結合されている。これらの接触スリーブ9は、接触子3および4のそれぞれの端部にねじ止めされている。接触子3および4の端部は、この目的のためにねじ形に形成されており、これらの接触スリーブ9は、内側に特に嵌合するねじ山を有する。第1のステップにおいて、接触スリーブ9は、ホルダー5および6、ないし、可動スライドピース7に、例えば溶接、特に電子ビーム溶接によって固定することができる。第2のステップでは、接触子3および4は、それぞれのホルダー5および6に、ないし、可動スライドピース7にねじ止めすることができ、この場合は、例えば溶接時に発生する高温により真空遮断バルブ2を損傷または破壊することはない。
【0044】
上述の複数の実施例は、互いに組み合わせることができ、および/または、従来技術と組み合わせることができる。例えば接触スリーブ9をねじ形に形成し、接触子3、4内にそれぞれねじ込むことができる。複数の形状と複数の結合の組み合わせも同様に可能である。溶接接続の代わりに例えばろう付け接続を使用することができる。1つ、または、例えば直列および/または並列に接続された複数の真空遮断バルブ2を使用することができる。
【0045】
真空遮断バルブ2は、35 kVおよび/または145 kVまでの開閉用に構成されている。簡略化のために、この真空遮断バルブ2の個々の要素または部品は、図面には詳細には示されていない。この真空遮断バルブ2は例えば円筒形に形成されており、複数の導電性接触子、特に、例えば銅製の、1つの可動接触子および1つの固定接触子を備えており、これらの接触子の端部がセラミック製の、真空にされた中空絶縁体から突き出ている。この場合、この中空絶縁体の可動接触子側は金属ベローズにより気密に封止されており、固定接触子側は固定された金属ディスクまたは固定された金属蓋により気密に封止されている。真空遮断バルブは、例えばシールド電極のような他の要素または部品を含むが、これらについては以下では詳しくは説明しない。
【0046】
ホルダー5、6、ないし、ホルダースリーブ8は例えば中空パイプ状に形成されており、その端部に外部へ向けて案内される固定フランジを備えている。代案では、これらのホルダーは高圧遮断器1のハウジングの一体化された部分とすることができる。空間的に固定されたホルダースリーブ8と可動スライドピース7とを備えたホルダー6、および、ホルダー5は例えば中空パイプ状に形成されており、この中空パイプ内に真空遮断バルブ2が嵌め込み挿入されており、例えばシールにより気密封止されている。
【0047】
この高圧遮断器1は、遮断ガス、特にSF6および/または清浄空気が充填されたハウジング、これは簡略化のために図面には示されていない、を有することができる。このハウジングは、例えば、特に、気密封止された中空絶縁体であり、沿面漏れ電流を低減するためにセラミック、シリコーンおよび/または複合材料からなる複数のリブを外周部に備えている。あるいは、このハウジングは、例えば、気密封止された金属タンクであり、このタンクは電気的にアースされている。これらのホルダーから、この高圧遮断器1を電力系統へ、特に発電者および/または消費者および/または電力ケーブルへ、電気的に接続するための接続端子がハウジングから外部向きに案内されている。この高圧遮断器1はさらに、特にそれ自身を基礎上に配設するための支持体を備えている。この高圧遮断器1はさらに、駆動装置、特にばね式駆動装置、および、開閉時に可動接触子を駆動するための運動機構の要素、例えば、ギアおよび少なくとも1つの駆動ロッドを有している。
【0048】
この高圧遮断器1は1つの可動接触子および1つの固定接触子で構成されている。これに代えてまたはこれに加えて、さらなる複数の接触子を含むことができる、および/または、少なくとも2つの可動接触子を含むことができる。これらの接触子は銅製である。これに代えてまたはこれに加えて、他の材料、例えば、鋼および/またはアルミニウムを含むことができる。その接触スリーブはアルミニウム製である。これに代えてまたはこれに加えて、他の材料、例えば、銅および/または鋼を含むことができる。そのホルダーはアルミニウム製である。これに代えてまたはこれに加えて、他の材料、例えば、鋼および/または銅を含むことができる。
【0049】
特に銅製の接触子3、4を備えた真空遮断バルブ2と、特にアルミニウム製のホルダー5、6、ないし、ホルダー6の可動スライドピース7との、機械的に安定で、良好な導電性の結合は、典型的な、特に嵌め合い式のクランプ結合では実現するのが難しい。接触子3、4と、ホルダー5、6、特にスライドピース7との間に、本発明による接触スリーブ9を使用することにより、真空遮断バルブ2の接触子3、4とホルダー5、6、ないし、可動スライドピース7との間の、特に高速駆動動作時に機械的に安定で、良好な導電性を有し、大きな発熱が発生しない移行または接触が可能となる。良好な熱伝導性により、特に、真空遮断バルブ2からの廃熱の良好な排出が可能となる。これにより、真空遮断バルブ2の損傷および/または破壊のリスクが低減される、および/または、排除される。
【符号の説明】
【0050】
1 高圧遮断器
2 真空遮断バルブ
3 固定接触子
4 可動接触子
5 固定接触子のホルダー
6 可動接触子のホルダー
7 可動スライドピース
8 固定されたホルダースリーブ
9 接触スリーブ
10 溶接接続